JP2004330226A - 継目無し鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数のロールスタンドを設けたリテインド式マンドレルミルを用いて素管を圧延する継目無し鋼管の製造方法において、前記素管が前記ロールスタンドの第1スタンドで圧延を完了するまで、前記素管に挿入されるマンドレル速度を一定に保持し、その後マンドレル速度を加速することを特徴とする継目無し鋼管の製造方法である。この継目無し鋼管の製造方法では、一層の内面品質の向上を図るために、加速されたマンドレル速度が、最終スタンドの圧延完了時において最終スタンドを通過する素管速度とほぼ同等になるように制御するのが望ましい。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マンネスマン・マンドレルミル製管法による継目無し鋼管の製造方法に関し、さらに詳しくはリテインド式マンドレルミルを用いた内面品質の良好な継目無し鋼管の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
継目無し鋼管の熱間製造方法としてマンネスマン・マンドレルミル製管法が用いられるが、なかでも内面品質に優れ、寸法精度も良好なことから、マンドレルミル圧延方法が採用されている。
【0003】
マンドレルミル圧延で継目無し鋼管を製造するには、中実の丸ビレットをピアサーミルを用いて中空素管にした後、マンドレルミルにおいて前記素管を減肉・延伸圧延し、さらにストレッチレデューサまたはサイザーで縮径または定径圧延することにより、所定の寸法を有する製品に製造される。
【0004】
マンドレルミル圧延では、中空素管の内面にマンドレルを挿入し、その中空素管を複数の丸孔型ロールから構成されるロールスタンドで圧延することにより、中空素管が丸孔型ロールとマンドレルの間で減肉及び延伸される。このとき、素管の減肉及び延伸にともなってロールスタンドを通過する素管速度は、逐次速くなる。これに対応するため、ロールスタンドを構成する丸孔型ロールの回転速度は、入側の第1スタンドから出側の最終スタンドにかけて順次高速に設定されている。
【0005】
このマンドレルミル圧延には、圧延中にマンドレルの軸方向の動きを全く拘束せず、素管との摩擦によってマンドレルも自由に引き込まれて移動するフロート式マンドレルミル圧延法と、圧延中にマンドレル後端を保持して、マンドレルの軸方向速度を所定の速度に制御するリテインド式マンドレルミル圧延法がある。圧延される鋼管製品の寸法精度は、リテインド式マンドレルミル圧延法が優れる。
【0006】
このリテインド式マンドレルミルを用いて中空素管を圧延する場合には、素管内面をマンドレルによって拘束すると同時に、複数スタンドの丸孔型ロールによって素管外面を拘束しながら軸方向に送りを与えることにより、素管を減肉及び延伸する。特に、13%Cr鋼のような高合金鋼を製造する場合には、材料の変形抵抗が大きいため圧延負荷が増加し、素管とマンドレルとの間に大きな摩擦力が作用することからマンドレル表面が焼付き易くなる。
【0007】
上述の通り、ロールスタンドを通過する素管速度は出側にかけて速くなることから、圧延される素管の後端では、一層表面焼付きが発生し易くなる。表面焼付きが発生すると、これに起因して内面に軸方向の筋状疵が発生し、内面品質が著しく悪化する。
【0008】
具体的には、圧延される素管の後端が第1スタンドを通過した後、各スタンドを通過するたびに素管速度が増加する一方、マンドレル速度は一定であるため、素管とマンドレルとの速度差が大きくなり、マンドレルの表面焼付きが素管の後端で発生し易くなる。この表面焼付きの発生により、内面品質を悪化させるだけでなく、素管とマンドレルとの間の摩擦力をさらに増加させ、マンドレルの軸方向速度を制御するリテインド装置の負荷が増大し、動力装置が過負荷で停止する等の操業トラブルが発生することがある。
【0009】
従来から、このようなトラブルへの対応として種々の対策がとられてきた。まず、一般的な対策として、マンドレルバー表面に塗布する潤滑剤の膜厚を増やし、潤滑性を向上させる方法が提案されている。例えば、特許文献1では、マンドレルミル圧延中にマンドレルの保持力を測定し、この保持力を指標の一つとして、潤滑剤の膜厚、供給量、種類の一つ乃至一つ以上を調整することを特徴とするマンドレルミル圧延方法が提案されている。しかし、特許文献1で提案されるマンドレルミル圧延方法では、結果として潤滑剤の使用量が増加し、製造コストの増加をともなうことになる。
【0010】
また、特許文献2では、リテインド式マンドレル圧延に際して、マンドレルに作用させる張力または圧縮力に対応する電動機の出力トルク基準と、前記電動機の出力トルクの実績値とが一致するように前記電動機の出力トルクを制御するトルク制御装置を備えたマンドレルバー張力制御装置が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2で開示されるマンドレルバー張力制御装置では、素管が全てのロールスタンドで圧延中の場合でも、潤滑剤の消費等により張力が変動する。このため、マンドレル速度が変化することになり、素管の長手方向に肉厚変動(偏肉)が発生し、寸法精度が悪化する恐れがある。同時に、トルク制御装置を備える必要から設備費用が上昇する。
【0012】
さらに、特許文献3では、マンドレルミル圧延中にマンドレルバーの保持速度を、各ロールスタンドにおける入口圧延速度の0.25倍以上、かつ出口圧延速度の1.5倍以下に制御する圧延方法が提案されている。特許文献3で提案される圧延方法では、定常の圧延状態において所期の効果を達成することができるが、マンドレルに加わる圧延負荷や摩擦力が増加する被圧延材の後端での制御が考慮されておらず、新たな改善が必要とされる。
【0013】
【特許文献1】
特開平05−309403号公報
【特許文献2】
特開平06−170417号公報
【特許文献3】
特開平08−294711号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
リテインド式マンドレルミル圧延において、圧延材の内面品質の向上を図る手段として、マンドレルに塗布する潤滑剤の膜厚を増加し、潤滑性を向上させたり、マンドレルに作用させる張力または圧縮力を制御することは、原理的には有効な手段であるが、潤滑コストの増加や設備コストの上昇をともなうことになる。また、圧延中にマンドレルバーの保持速度を、各ロールスタンドにおいて制御する方法であっても、定常の圧延状態と異なる被圧延材(素管)の後端での制御を考慮しなければ、必ずしも効果が一定しないという問題を有する。
【0015】
さらに、例えば、13%Cr鋼のような高合金鋼を圧延する際には、材料の変形抵抗が大きく、圧延される中空素管内面とマンドレルバー表面との間で焼付きを生じ易い。焼付きが発生すると、素管内面に軸方向の筋状疵が発生し、製品とする場合に多大の手入れ工数および費用を要するという問題がある。また、マンドレル表面にも軸方向の筋状疵を生じ、それが甚だしい場合には数十本圧延するごとにマンドレルを交換しなければならず、著しくマンドレル寿命を短縮させることになる。
【0016】
本発明は、このようなリテインド式マンドレルミル圧延による継目無し鋼管の製造上の問題点に鑑みてなされたものであり、素管の後端に発生し易い表面焼付きを抑制し、13%Cr鋼のような高合金鋼を大量生産する場合であっても、内面品質及び操業性を損なうことなく、また、潤滑剤の使用量増加による製造コストの上昇を抑制する継目無し鋼管の製造方法を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決するためなされたものであり、次の(1)及び(2)の継目無し鋼管の製造方法を要旨としている。
(1) 複数のロールスタンドを設けたリテインド式マンドレルミルを用いて素管を圧延する継目無し鋼管の製造方法において、前記素管が前記ロールスタンドの第1スタンドで圧延を完了するまで、前記素管に挿入されるマンドレル速度を一定に保持し、その後マンドレル速度を加速することを特徴とする継目無し鋼管の製造方法である。
(2) 上記(1)の継目無し鋼管の製造方法では、内面品質の向上に加え、偏肉率を低減して寸法精度を改善するため、第2スタンド乃至最終スタンドにおいて加速されたマンドレル速度が、当該ロールスタンドを通過する素管速度の40%〜100%に制御することが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
リテインド式マンドレル圧延による継目無し鋼管の製造時には、ロールスタンドでの圧延後半になるほど、素管内面とマンドレルとの摩擦力が増加し、マンドレル表面への負荷は急増する。これは、圧延開始時に比べ、圧延後半では圧延の進行にともない潤滑剤が消費されて、マンドレル上の潤滑剤量が減少するのに加え、素管が延伸することによって素管の単位面積当たりの潤滑量が減少し、さらに、素管の減肉及び延伸加工によって、素管速度が速くなり、素管とマンドレルとの速度差が大きくなって、相対すべり長さが大きくなるためである。
【0019】
このような現象を解消するため、ロールスタンド圧延の後半段階でマンドレルを加速したところ、マンドレルの表面焼付き防止に有効であることが確認できた。本発明の製造方法はかかる知見に基づいて完成されたものであり、圧延される素管がロールスタンドの第1スタンドで圧延を完了するまで、前記素管に挿入されるマンドレル速度を一定に保持し、その後マンドレル速度を加速することを特徴としている。
【0020】
本発明において、マンドレル速度を加速するタイミングは、ロールスタンドの入側である第1スタンドを素管の後端が通過した後、すなわち、第1スタンドでの圧延完了以降に行う必要がある。この第1スタンドでの圧延完了以前にマンドレルの加速を行うと、マンドレル速度の変化にともなって、圧延中の噛み出しが局部的に大きくなり不均一になって偏肉を生じやすい。
【0021】
したがって、圧延される素管がロールスタンドの第1スタンドで圧延を完了するまで、すなわち、素管の後端が第1スタンドを通過するまで、素管に挿入されるマンドレル速度を一定に保持する必要がある。
【0022】
マンドレル速度は、素管がロールスタンドの第1スタンドで圧延を完了するまで一定に保持され、それ以降加速する必要がある。第1スタンドで圧延する際のマンドレル速度は、素管速度以下で一定に保持するのが望ましい。
【0023】
マンドレル速度はしだいに加速され、最終スタンドでの圧延完了時に最高速度になることが望ましい。このときのマンドレル速度が最終スタンドを通過する素管速度の40%〜100%になるように制御することによって、最も焼付きが起こりやすい最終スタンドでの焼付きを防止できるので、内面品質の向上が図れるので望ましい。
【0024】
図1は、本発明の製造方法におけるマンドレル速度の変化を模式的に示した図であり、同(a)はマンドレル速度を一定の割合で加速した場合を、同(b)はマンドレル速度を段階的に加速した場合を示している。
【0025】
本発明の製造方法では、図1(a)に示すように、素管が第1スタンドを通過した後最終スタンドを通過するまで、マンドレル速度を一定の割合で増加させてもよい。また、図1(b)に示すように、素管の後端が第2スタンドを通過するまでマンドレル速度を一定の速度に保ち、次にマンドレル速度を加速し、素管が第3スタンドを通過するまでマンドレル速度を一定の速度に保ち、これを最終スタンドまで繰り返すことによって、マンドレル速度を段階状に加速してもよい。
【0026】
このとき、マンドレル速度が素管速度を超えるようになると、マンドレルミル圧延中の噛み出しが局部的に大きくなり偏肉が発生し、被圧延材の寸法精度を著しく損なうおそれがある。このため、局部的な偏肉を制御する観点から、マンドレル速度は常に最終スタンドの素管速度以下にするとともに、第2スタンド乃至最終スタンドにおいて加速されたマンドレル速度は、第2スタンド乃至最終スタンドにおける当該ロールスタンドを通過する素管速度以下に保持するのが望ましい。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
上下一対の孔型ロールから構成されるロールスタンドを7組配置したリテインド式マンドレルミルを用い、13%Cr鋼の中空素間を1050℃〜1100℃程度の温度域にて圧延した。実施例1におけるマンドレルミル圧延寸法、マンドレルバー及び潤滑剤の条件を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1では、素管速度はロールスタンドの入口速度で1.7m/sであり、出口速度は4.8m/sであった。これに対し、マンドレル速度は、第1スタンドでの圧延完了まで素管の入口速度と同じ1.7m/sとした。その後、マンドレル速度の加速タイミングを意図的に選択して、加速開始後、最終スタンド圧延完了時のマンドレル速度が、素管の出口速度の50%である2.4m/sになるよう直線的に変化させた。
【0030】
このときの圧延可能本数及び偏肉率を調査し、その結果を表2に示す。表中の圧延可能本数は、圧延後のマンドレルに焼付きが発生し素管内面に疵ができるまでに圧延できた本数を示す。最大偏肉率は、圧延仕上後の最大肉厚をWT MAX、最小肉厚をWT MIN、平均肉厚をWT AVEとした場合に、[(WT MAX−WT MIN)/WT AVE]×100(%)で計算した値のうち、同一断面で最大の値を示す。また、加速タイミングは、マンドレル速度の加速を開始するタイミングを示している。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示す結果から、本発明例である圧延No.2〜6は、いずれも素管の後端が第1スタンドを通過するまではマンドレル速度を1.7m/sに保ち、その後マンドレルの速度を上げることにより、圧延本数及び偏肉率ともに良好な結果であった。
【0033】
これに対し、圧延No.1は、素管の後端が第1スタンドを通過する前にマンドレル速度を加速したため、最大偏肉率は22%と悪化しており、寸法精度が低下している。また、圧延No.7は、マンドレル速度の加速を実施しておらず、圧延本数が15本と著しく低く、また内面品質が低下していた。
(実施例2)
実施例1と同じリテインド式マンドレルミルを用い、13%Cr鋼の中空素間を1050℃〜1100℃程度の温度域にて圧延した。実施例2におけるマンドレルミル圧延寸法、マンドレルバー及び潤滑剤の条件は前記表1と同じとした。
【0034】
素管速度はロールスタンドの入口速度で1.7m/sであり、出口速度は4.8m/sであった。マンドレル速度は第1スタンドの圧延完了まで素管の入口速度と同じ1.7m/sとした。その後、第1スタンドの圧延完了後マンドレル速度の加速を開始して、マンドレル速度を最終スタンド(第7スタンド)圧延完了まで加速させた。その際、最終スタンド圧延完了時のマンドレル速度を変化させた。
【0035】
このときの素管出口速度とマンドレル速度との比、圧延本数及び最大偏肉率を調査した。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3の結果から明らかなように、圧延No.9〜10は、マンドレル速度の最大値が素管の出口速度以下となっているので、最大偏肉率が13〜14%に留まっており、寸法精度に優れる。一方、圧延No.13及び14は、マンドレル速度が素管の出口速度を超えることから、最大偏肉率が20〜22%と悪化している。また、圧延No.8は加速を実施しておらず、圧延本数が著しく低い。
【0038】
【発明の効果】
本発明の継目無し鋼管の製造方法によれば、マンドレルの後端に発生し易い表面焼付きを抑制し、13%Cr鋼のような高合金鋼を大量生産する場合であっても、内面品質及び操業性を損なうことなく、さらに偏肉発生の少ない鋼管を提供できる。しかも、鋼管の製造に際し、潤滑剤の使用量増加による製造コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法におけるマンドレル速度の変化を模式的に示す図である。
Claims (2)
- 複数のロールスタンドを設けたリテインド式マンドレルミルを用いて素管を圧延する継目無し鋼管の製造方法において、前記素管を前記ロールスタンドの第1スタンドで圧延を完了するまで、前記素管に挿入されるマンドレル速度を一定に保持し、その後マンドレル速度を加速することを特徴とする継目無し鋼管の製造方法。
- 第2スタンド乃至最終スタンドにおいて加速されたマンドレル速度が、当該ロールスタンドを通過する素管速度の40%〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の継目無し鋼管の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2003127390A JP2004330226A (ja) | 2003-05-02 | 2003-05-02 | 継目無し鋼管の製造方法 |
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Publications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006088107A1 (ja) * | 2005-02-16 | 2006-08-24 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | 継目無鋼管の製造方法 |
JP2006255786A (ja) * | 2005-02-16 | 2006-09-28 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 継目無鋼管の製造方法 |
-
2003
- 2003-05-02 JP JP2003127390A patent/JP2004330226A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP1878514A1 (en) * | 2005-02-16 | 2008-01-16 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Process for producing seamless steel pipe |
EP1878514A4 (en) * | 2005-02-16 | 2009-01-07 | Sumitomo Metal Ind | METHOD FOR PRODUCING A SEAMLESS STEEL TUBE |
JP4706971B2 (ja) * | 2005-02-16 | 2011-06-22 | 住友金属工業株式会社 | 継目無鋼管の製造方法 |
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