JP2004321501A - 生体補綴部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体内埋入後、極めて早期に骨と結合可能で、且つ、置換が必要な時に簡便に除去可能な生体補綴部材を提供すること。
【解決手段】高分子材料のハイドロゲルからなる生体補綴部材であって、前記ハイドロゲルはその構造水中にカルシウムイオンを含有するとともに、前記高分子材料の側鎖にOH基を結合してなる生体補綴部材。ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に、高分子材料の原料と、アルコキシシラン化合物とを溶解する工程と、この溶解液を急冷して、前記高分子材料の側鎖にOH基が結合した、前記高分子材料のハイドロゲルを得る工程と、このハイドロゲルを蒸留水に浸漬して前記ジメチルスルホキシドを抽出する工程、および、前記高分子材料のハイドロゲルを水溶性カルシウム化合物の飽和水溶液に浸漬し、前記ハイドロゲル中にカルシウムイオンを導入する工程とから生体補綴部材を製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】高分子材料のハイドロゲルからなる生体補綴部材であって、前記ハイドロゲルはその構造水中にカルシウムイオンを含有するとともに、前記高分子材料の側鎖にOH基を結合してなる生体補綴部材。ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に、高分子材料の原料と、アルコキシシラン化合物とを溶解する工程と、この溶解液を急冷して、前記高分子材料の側鎖にOH基が結合した、前記高分子材料のハイドロゲルを得る工程と、このハイドロゲルを蒸留水に浸漬して前記ジメチルスルホキシドを抽出する工程、および、前記高分子材料のハイドロゲルを水溶性カルシウム化合物の飽和水溶液に浸漬し、前記ハイドロゲル中にカルシウムイオンを導入する工程とから生体補綴部材を製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、整形外科及びスポーツ外科等の分野で使用される医療用人工骨及び軟骨などの生体補綴部材であって、生体内で表面に自発的に生成するアパタイトを介して骨と結合し、ハイドロゲルの優れた対合軟骨への親和性を利用した生体補綴部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在のところ、人工骨軟骨と呼ばれる製品は市販されていない。しかし、これまでに筏、玄等によって、ポリビニルアルコール(以下、PVAと云う)を応用した人工骨軟骨が開発されている。具体的には、PVA粉末をジメチルスルホキシド(以下、DMSOと云う)及び水に溶解させたゲルを射出成型法等で加工成型したハイドロゲルである(非特許文献1参照)。
【0003】
ところが、PVAは異物反応によって比較的厚い線維性皮膜でカプセル化される生体親和性の低い材料であり、組織との結合は機械的な噛み合わせだけに頼っていたものである。従って、長期間の生体内埋入においては、ずれや緩みを生じる問題を抱えていた。このため、生体親和性の改善もしくは骨組織や軟組織と直接結合する生体活性の付与が望まれていた。
【0004】
また、これまでに、リン酸カルシウム粒子を直接PVAと混合する手法も提案されている(特許文献1参照)。しかし、この手法ではPVA自体の生体親和性は改善されておらず、長期間移入後には、ハイドロキシアパタイトの溶出により異物反応を引き起こす恐れがある。
【0005】
一方、チタンファイバーを編みこんで作製されたメッシュを、金型等を用い成型し、ファイバーを編みこむことで作製される多孔体と、PVAハイドロゲルとこのチタンファイバーとを組み合わせた生体補綴部材(人工椎間板)が開発されている。この生体補綴部材は、上下に配した前記多孔体の間にPVAハイドロゲルを配したもので、PVAハイドロゲルのクッションと接する前記多孔体の部分にPVAハイドロゲルが設けられ、両者が結合している。そして、PVAハイドロゲルが設けられていない前記多孔体の骨と接する他方の端部において、骨組織が多孔体中に成長侵入することで、生体補綴部材と骨とが結合するものであった。(特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】
玄 丞烋 他:ポリビニルアルコール濃厚水溶液の低温結晶化によるゲル生成. 高分子論文集, 46:673−680, 1989.
【0007】
【特許文献1】
特開平1−305959号公報
【0008】
【特許文献2】
特許登録第2858141号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この生体補綴部材は、前述のように多孔体の内部に骨を成長侵入させていくことで骨との結合力が得られるものである。したがって、骨が充分に成長侵入するまでの期間が長く、それまでの間、固定力が非常に低く、補綴が不安定となること、ならびに、何らかの理由で置換が必要な場合に、生体補綴部材の除去が困難であるという課題を有していた。
【0010】
このような従来技術の課題に鑑み、本発明は、生体内埋入後、極めて早期に骨と結合可能で、且つ、置換が必要な時に簡便に除去可能な生体補綴部材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため請求項1の生体補綴部材は、高分子材料のハイドロゲルからなる生体補綴部材であって、前記ハイドロゲルはその構造水中にカルシウムイオンを含有するとともに、前記高分子材料の側鎖にOH基を結合したことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、生体補綴部材が含有するカルシウムとOH基と、生体内の体液に含まれるリンとが化合して生体補綴部材の表面にリン酸カルシウム系化合物である水酸化アパタイトが形成される。本発明の生体補綴部材は、カルシウムをイオン状態で含有するので、カルシウムの反応性が非常に高い。一方、OH基が高分子材料の主鎖ではなく、側鎖に結合しており、OH基の反応性も高い。したがって、アパタイトが非常に早期に形成される。そして、本発明の生体補綴部材によれば、生体内に埋入後、表面にアパタイトが形成され、このアパタイトが骨組織と結合するが、生体補綴部材の内部には骨が侵入するものではないので、置換が必要な時に、アパタイト層と生体補綴部材の表面との界面で両者を切り離すことで、生体補綴部材を容易に除去することができる。
【0013】
なお、前記高分子材料としては、PVAなどのビニル系の他に、メタルクリレート系、エステル系等の生体為害性のない任意のものを用いることができる。
【0014】
前記構造水とは、ハイドロゲルの内部に含まれる水成分を意味する。この構造水中にカルシウムイオンが含まれている。この構造水に抗生物質、抗ガン剤、骨形成因子、培養骨軟骨細胞等の生理活性を高める薬剤を添加しても良い。
【0015】
前記生体補綴部材のアパタイト形成能を高めるために、カルシウムイオンについては、カルシウム水溶液濃度0.01 mol/ml(適当)で作製しても良いが、濃度が高いほど、アパタイト形成能は高くなる。
【0016】
高分子材料の側鎖に結合するOH基の量的指標の記載は難しいが、添加するシラン化合物は20重量%以上が望ましいと考える。
【0017】
なお、構造水中にカルシウムイオンが含有されていることの確認は次のように行なうことができる。
【0018】
構造水中へのカルシウムイオンが含有されていることの確認は誘導結合プラズマ (ICP)発光分光分析により、含有元素を抽出することで可能である。
【0019】
また、高分子材料の側鎖にOH基が結合していることの確認は次のように行なうことができる。
【0020】
高分子材料へのOH基の導入については後述の実施例1に示す、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)分析を行ない調べることができる。例えば、図1に、VTS導入の有無によるPVAゲルのFT−IRスペクトルの比較を示したが、VTSを導入したゲルにおいては、VTSによるSi−O、またシラノール基のゲル化反応によるSi−O−Siに帰属されるピークが見られた。これにより、生体内中で、Si−OHが導入されると考えられる。
【0021】
ところで、以上のハイドロゲルは、高い生体親和性や生体活性を発現する上に、ハイドロゲルの独特の性質により生体軟骨修復材、生体骨修復材、ならびに組織補填材としても利用出来るが、その形態は、円柱状、板状、ブロック状、シート状、繊維状、ペレット状等、任意のものが選択可能である。また、適応対象としても、人工関節、骨補填材、人工椎体、人工椎間板、人工髄核、骨プレート、骨布、骨スクリュー、軟骨プラグ等、様々なものが可能である。更に、金属やセラミックスと複合化して利用することも可能である。
【0022】
次に、請求項2の生体補綴部材は、前記OH基がSi−OH基であることを特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、Si−OH基は、他の−OHや−COOHに比べ、比較的分子運動が自由であるため、アパタイト形成時における核となり易い。したがって、生体内埋入後、より早期にアパタイトが形成される。
【0024】
また、請求項3の生体補綴部材の製造方法は、ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に高分子材料の原料とアルコキシシラン化合物とを溶解する工程と、この溶解液を急冷して前記高分子材料の側鎖にOH基が結合した前記高分子材料のハイドロゲルを得る工程と、このハイドロゲルを蒸留水に浸漬して前記ジメチルスルホキシドを抽出する工程、および、前記高分子材料のハイドロゲルを水溶性カルシウム化合物の飽和水溶液に浸漬し前記ハイドロゲル中にカルシウムイオンを導入する工程とを含むことを特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、ハイドロゲルを構成する高分子材料の側鎖にOH基が結合することができ、ハイドロゲルにカルシウムイオンを導入することができ、さらに高分子材料とアルコキシシラン化合物とがランダムに共重合したハイドロゲルを構成することができる。そして、共重合体の側鎖にSi−OH基を持ったハイドロゲルが得られる。
【0026】
共重合体のメリットは、共重合体とすることで、均質なハイドロゲルが作製できる。共重合体でなければ、海−島構造をとり、お互いの材料界面からの破壊等が考えられる。また、その不均一性によりアパタイトが形成する部分、形成しない部分が混在し、結果として異物反応を引き起こすことが考えられる。
【0027】
また、ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に、高分子材料の原料と、アルコキシシラン化合物とを溶解することで、材料の生体活性を飛躍的に増大させることができる。これは、アルコキシシラン化合物のアルキルシロキサン結合(R−O−Si)が、加水分解してシラノール基(Si−OH)を生成し材料表面でのアパタイト生成足場を提供するからである。アルコキシシラン化合物として、ビニルトリメトキシシラン(VTS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等の単一または複合したものが添加される。
【0028】
なお、側鎖にOH基を形成するために、前記アルコキシシラン化合物の他に、−COOHを提供する酢酸ビニルアルコールが考えられる。ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルアルコールをけん化して得られるが、このけん化度をコントロールするもしくは、酢酸ビニルそのものを共重合させても良い。その他には、ジルコニアゲル(Zr−OH)、酸化タンタルゲル(Ta−OH)、酸化ニオブゲル(Nb−OH)などがある。
【0029】
次に、請求項4の製造方法は、前記高分子材料がポリビニルアルコールであり、且つ前記アルコキシシラン化合物がビニルトリメトキシシランであることを特徴とする。
【0030】
かかる構成によれば、主鎖が、ビニルにであり、ハイドロゲルを構成するのポリビニルアルコールと共通性があるため、均質なハイドロゲルを作製することが出来る。
【0031】
また、請求項5の製造方法は、前記水溶性カルシウム化合物が塩化カルシウムであることを特徴とする。
【0032】
かかる構成によれば、塩化カルシウムは、水に対して非常に高い溶解度を持っており、高カルシウムイオン濃度の飽和水溶液が作製できる。そして、この溶液は約pH 9のアルカリ性であり、アパタイト形成を促進させる。
【0033】
また、請求項6の製造方法は、前記水溶性カルシウム化合物がリン酸三カルシウムであることを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、リン酸カルシウムは、カルシウムイオンだけでなく、リンイオンも供給できるため、アパタイト形成に有利である。
【0035】
以下、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。
【0036】
【実施例】
実施例1
DMSOに水を加えた溶液に、ビニルトリメトキシシラン(以下、VTSと云う。)を加えた。得られた混合溶液に重合度8800のPVAを溶解し、120〜140℃で溶融した後、−15℃にて急冷しPVAゲルを作製した。各々は表1に示す組成とした。このハイドロゲルを蒸留水に浸漬し、DMSOの抽出除去を行なった。
【0037】
【表1】
【0038】
ゲルへのシラノール(Si−OH)基の導入についてフーリエ変換赤外分光(FT−IR)分析を行ない調べた。図1に、VTS導入の有無によるPVAゲルのFT−IRスペクトルの比較を示す(図1には、代表的帰属のみ示す)。VTSを導入したゲルにおいては、VTSによるSi−O、またシラノール基のゲル化反応によるSi−O−Siに帰属されるピークが1000〜1100 cm−1付近に見られた。また、760 cm−1付近にSi−Cに帰属されるピークが見られた。つまり、VTSをゲルに添加することで、ゲル構造中へシラノール基が導入されることが確認された。
【0039】
上記に示すシラノール基導入PVAゲルを塩化カルシウム(CaCl2)の飽和水溶液に1時間浸漬し構造水の置換を行なった。得られたPVAゲルについて、生体活性の評価を行なった。なお、表中mass%は体積%を示す。
【0040】
生体活性の評価については、次に示す方法に依った。則ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの水溶液と塩酸を用いてpHを7.25に調整した表2に示す濃度で含有する水溶液(以下、これを擬似体液と云う。)を用いた、アパタイト析出反応に基づいて行なった。擬似体液中で短期間にアパタイトを形成する物質は高い生体親和性や生体活性を示すことが確かめられている。上記方法で準備したゲルを擬似体液に浸漬した後、ゲル表面のアパタイト形成について、X線回折分析および電子顕微鏡で調べた。
【0041】
【表2】
【0042】
擬似体液浸漬前後のPVAゲルについて、X線回折分析で調べた結果を図2に示す。擬似体液浸漬後のPVAゲル表面には、アパタイトに帰属されるピークが見られた。
【0043】
図3に、擬似体液浸漬後の代表的な顕微鏡観察結果を示す。図3から、擬似体液に浸漬後7日経過後では既にPVAの表面が微細なアパタイト結晶粒子で覆われていることが分かる。つまり、表1に示されるPVAゲルは短期間でアパタイトを形成し、高い生体活性を付与されたことが確認された。
【0044】
実施例2
実施例1と同様、PVAゲルにVTSを添加したゲルについての実施例であるが、置換する構造水をリン酸三カルシウム(TCP)の飽和水溶液としたのが本例である。実施例1と同様に擬似体液に浸漬し、生体活性を評価した。図4にX線回折分析の結果を、図5に電子顕微鏡による観察結果の代表例を示すが、これからも、本例に示すPVAゲルも高い生体活性を付与されたことが確認された。
【0045】
(実験例)
実施例1と同様、PVAゲルにVTSを添加し、CaCl2の水溶液に置換したゲルについての実施例であるが、VTSの添加量、CaCl2の水溶液の濃度を変化させた。実施例1と同様に擬似体液に浸漬し、生体活性を評価した。X線回折分析の結果、および電子顕微鏡による観察結果より、評価した生体活性を表3に示した。これから、VTSの添加量が多いほど、また、CaCl2の水溶液の濃度が高いほど、高い生体活性を示すといえる。
【0046】
【表3】
【0047】
なお、表3において一番上のものと、上から6番目ものは比較例であり、前者はOH基が導入されておらず、後者はカルシウムイオンが導入されていない。いずれも早期のアパタイト形成が見られなかった。
【0048】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る生体補綴部材によれば、前記課題を解決するため請求項1の生体補綴部材は、高分子材料のハイドロゲルからなる生体補綴部材であって、前記ハイドロゲルはその構造水中にカルシウムイオンを含有するとともに、前記高分子材料の側鎖にOH基を結合したことから、生体補綴部材が含有するカルシウムとOH基と、生体内の体液に含まれるリンとが化合して生体補綴部材の表面にリン酸カルシウム系化合物である水酸化アパタイトが形成される。本発明の生体補綴部材は、カルシウムをイオン状態で含有するので、カルシウムの反応性が非常に高い。一方、OH基が高分子材料の主鎖ではなく、側鎖に結合しており、OH基の反応性も高い。したがって、アパタイトが非常に早期に形成される。そして、本発明の生体補綴部材によれば、生体内に埋入後、表面にアパタイトが形成され、このアパタイトが骨組織と結合するが、生体補綴部材の内部には骨が侵入するものではないので、置換が必要な時に、アパタイト層と生体補綴部材の表面との界面で両者を切り離すことで、生体補綴部材を容易に除去することができる。
【0049】
また、前記OH基をSi−OH基とした場合、Si−OH基は、他の−OHや−COOHに比べ、比較的分子運動が自由であるため、アパタイト形成時における核となり易い。したがって、生体内埋入後、より早期にアパタイトが形成される。
【0050】
次に、本発明の生体補綴部材の製造方法によれば、ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に、高分子材料の原料と、アルコキシシラン化合物とを溶解する工程と、この溶解液を急冷して、前記高分子材料の側鎖にOH基が結合した、前記高分子材料のハイドロゲルを得る工程と、このハイドロゲルを蒸留水に浸漬して前記ジメチルスルホキシドを抽出する工程、および、前記高分子材料のハイドロゲルを水溶性カルシウム化合物の飽和水溶液に浸漬し、前記ハイドロゲル中にカルシウムイオンを導入する工程とを含むことから、ハイドロゲルを構成する高分子材料の側鎖にOH基が結合することができ、ハイドロゲルにカルシウムイオンを導入することができ、さらに高分子材料とアルコキシシラン化合物とがランダムに共重合したハイドロゲルを構成することができる。共重合体の側鎖にSi−OH基を持ったハイドロゲルが得られる。共重合体とすることで、均質なハイドロゲルが作製できる。共重合体でなければ、海−島構造をとり、お互いの材料界面からの破壊等が考えられる。また、その不均一性によりアパタイトが形成する部分、形成しない部分が混在し、結果として異物反応を引き起こすことが考えられる。
【0051】
また、前記高分子材料をポリビニルアルコールとし、且つ前記アルコキシシラン化合物をビニルトリメトキシシランとした場合、主鎖が、ビニルであり、ハイドロゲルを構成するのポリビニルアルコールと共通性があるため、均質なハイドロゲルを作製することが出来る。したがって。
【0052】
また、前記水溶性カルシウム化合物を塩化カルシウムとした場合、塩化カルシウムは、水に対して非常に高い溶解度を持っており、高カルシウムイオン濃度の飽和水溶液が作製できる。そして、この溶液は約pH 9のアルカリ性であり、アパタイト形成を促進させる。
【0053】
また、前記水溶性カルシウム化合物をリン酸三カルシウムとした場合、リン酸カルシウムは、カルシウムイオンだけでなく、リンイオンも供給できるため、アパタイト形成に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルコキシシラン化合物を添加した実施例1の生体補綴部材のFT−IR分析の結果を示す線図である。
【図2】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水を塩化カルシウム飽和水溶液に置換した実施例1の生体補綴部材を擬似体液浸漬する前後のX線回折分析結果の線図である。
【図3】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水を塩化カルシウム飽和水溶液に置換した実施例1の生体補綴部材を擬似体液に浸漬した後の電子顕微鏡写真を示す。
【図4】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水をリン酸三カルシウム飽和水溶液に置換した実施例2の生体補綴部材を擬似体液浸漬する前後のX線回折分析結果の線図である。
【図5】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水をリン酸三カルシウム飽和水溶液に置換した実施例1の生体補綴部材を擬似体液に浸漬した後の電子顕微鏡写真を示す。
【符号の説明】
符号なし
【発明の属する技術分野】
本発明は、整形外科及びスポーツ外科等の分野で使用される医療用人工骨及び軟骨などの生体補綴部材であって、生体内で表面に自発的に生成するアパタイトを介して骨と結合し、ハイドロゲルの優れた対合軟骨への親和性を利用した生体補綴部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在のところ、人工骨軟骨と呼ばれる製品は市販されていない。しかし、これまでに筏、玄等によって、ポリビニルアルコール(以下、PVAと云う)を応用した人工骨軟骨が開発されている。具体的には、PVA粉末をジメチルスルホキシド(以下、DMSOと云う)及び水に溶解させたゲルを射出成型法等で加工成型したハイドロゲルである(非特許文献1参照)。
【0003】
ところが、PVAは異物反応によって比較的厚い線維性皮膜でカプセル化される生体親和性の低い材料であり、組織との結合は機械的な噛み合わせだけに頼っていたものである。従って、長期間の生体内埋入においては、ずれや緩みを生じる問題を抱えていた。このため、生体親和性の改善もしくは骨組織や軟組織と直接結合する生体活性の付与が望まれていた。
【0004】
また、これまでに、リン酸カルシウム粒子を直接PVAと混合する手法も提案されている(特許文献1参照)。しかし、この手法ではPVA自体の生体親和性は改善されておらず、長期間移入後には、ハイドロキシアパタイトの溶出により異物反応を引き起こす恐れがある。
【0005】
一方、チタンファイバーを編みこんで作製されたメッシュを、金型等を用い成型し、ファイバーを編みこむことで作製される多孔体と、PVAハイドロゲルとこのチタンファイバーとを組み合わせた生体補綴部材(人工椎間板)が開発されている。この生体補綴部材は、上下に配した前記多孔体の間にPVAハイドロゲルを配したもので、PVAハイドロゲルのクッションと接する前記多孔体の部分にPVAハイドロゲルが設けられ、両者が結合している。そして、PVAハイドロゲルが設けられていない前記多孔体の骨と接する他方の端部において、骨組織が多孔体中に成長侵入することで、生体補綴部材と骨とが結合するものであった。(特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】
玄 丞烋 他:ポリビニルアルコール濃厚水溶液の低温結晶化によるゲル生成. 高分子論文集, 46:673−680, 1989.
【0007】
【特許文献1】
特開平1−305959号公報
【0008】
【特許文献2】
特許登録第2858141号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この生体補綴部材は、前述のように多孔体の内部に骨を成長侵入させていくことで骨との結合力が得られるものである。したがって、骨が充分に成長侵入するまでの期間が長く、それまでの間、固定力が非常に低く、補綴が不安定となること、ならびに、何らかの理由で置換が必要な場合に、生体補綴部材の除去が困難であるという課題を有していた。
【0010】
このような従来技術の課題に鑑み、本発明は、生体内埋入後、極めて早期に骨と結合可能で、且つ、置換が必要な時に簡便に除去可能な生体補綴部材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため請求項1の生体補綴部材は、高分子材料のハイドロゲルからなる生体補綴部材であって、前記ハイドロゲルはその構造水中にカルシウムイオンを含有するとともに、前記高分子材料の側鎖にOH基を結合したことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、生体補綴部材が含有するカルシウムとOH基と、生体内の体液に含まれるリンとが化合して生体補綴部材の表面にリン酸カルシウム系化合物である水酸化アパタイトが形成される。本発明の生体補綴部材は、カルシウムをイオン状態で含有するので、カルシウムの反応性が非常に高い。一方、OH基が高分子材料の主鎖ではなく、側鎖に結合しており、OH基の反応性も高い。したがって、アパタイトが非常に早期に形成される。そして、本発明の生体補綴部材によれば、生体内に埋入後、表面にアパタイトが形成され、このアパタイトが骨組織と結合するが、生体補綴部材の内部には骨が侵入するものではないので、置換が必要な時に、アパタイト層と生体補綴部材の表面との界面で両者を切り離すことで、生体補綴部材を容易に除去することができる。
【0013】
なお、前記高分子材料としては、PVAなどのビニル系の他に、メタルクリレート系、エステル系等の生体為害性のない任意のものを用いることができる。
【0014】
前記構造水とは、ハイドロゲルの内部に含まれる水成分を意味する。この構造水中にカルシウムイオンが含まれている。この構造水に抗生物質、抗ガン剤、骨形成因子、培養骨軟骨細胞等の生理活性を高める薬剤を添加しても良い。
【0015】
前記生体補綴部材のアパタイト形成能を高めるために、カルシウムイオンについては、カルシウム水溶液濃度0.01 mol/ml(適当)で作製しても良いが、濃度が高いほど、アパタイト形成能は高くなる。
【0016】
高分子材料の側鎖に結合するOH基の量的指標の記載は難しいが、添加するシラン化合物は20重量%以上が望ましいと考える。
【0017】
なお、構造水中にカルシウムイオンが含有されていることの確認は次のように行なうことができる。
【0018】
構造水中へのカルシウムイオンが含有されていることの確認は誘導結合プラズマ (ICP)発光分光分析により、含有元素を抽出することで可能である。
【0019】
また、高分子材料の側鎖にOH基が結合していることの確認は次のように行なうことができる。
【0020】
高分子材料へのOH基の導入については後述の実施例1に示す、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)分析を行ない調べることができる。例えば、図1に、VTS導入の有無によるPVAゲルのFT−IRスペクトルの比較を示したが、VTSを導入したゲルにおいては、VTSによるSi−O、またシラノール基のゲル化反応によるSi−O−Siに帰属されるピークが見られた。これにより、生体内中で、Si−OHが導入されると考えられる。
【0021】
ところで、以上のハイドロゲルは、高い生体親和性や生体活性を発現する上に、ハイドロゲルの独特の性質により生体軟骨修復材、生体骨修復材、ならびに組織補填材としても利用出来るが、その形態は、円柱状、板状、ブロック状、シート状、繊維状、ペレット状等、任意のものが選択可能である。また、適応対象としても、人工関節、骨補填材、人工椎体、人工椎間板、人工髄核、骨プレート、骨布、骨スクリュー、軟骨プラグ等、様々なものが可能である。更に、金属やセラミックスと複合化して利用することも可能である。
【0022】
次に、請求項2の生体補綴部材は、前記OH基がSi−OH基であることを特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、Si−OH基は、他の−OHや−COOHに比べ、比較的分子運動が自由であるため、アパタイト形成時における核となり易い。したがって、生体内埋入後、より早期にアパタイトが形成される。
【0024】
また、請求項3の生体補綴部材の製造方法は、ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に高分子材料の原料とアルコキシシラン化合物とを溶解する工程と、この溶解液を急冷して前記高分子材料の側鎖にOH基が結合した前記高分子材料のハイドロゲルを得る工程と、このハイドロゲルを蒸留水に浸漬して前記ジメチルスルホキシドを抽出する工程、および、前記高分子材料のハイドロゲルを水溶性カルシウム化合物の飽和水溶液に浸漬し前記ハイドロゲル中にカルシウムイオンを導入する工程とを含むことを特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、ハイドロゲルを構成する高分子材料の側鎖にOH基が結合することができ、ハイドロゲルにカルシウムイオンを導入することができ、さらに高分子材料とアルコキシシラン化合物とがランダムに共重合したハイドロゲルを構成することができる。そして、共重合体の側鎖にSi−OH基を持ったハイドロゲルが得られる。
【0026】
共重合体のメリットは、共重合体とすることで、均質なハイドロゲルが作製できる。共重合体でなければ、海−島構造をとり、お互いの材料界面からの破壊等が考えられる。また、その不均一性によりアパタイトが形成する部分、形成しない部分が混在し、結果として異物反応を引き起こすことが考えられる。
【0027】
また、ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に、高分子材料の原料と、アルコキシシラン化合物とを溶解することで、材料の生体活性を飛躍的に増大させることができる。これは、アルコキシシラン化合物のアルキルシロキサン結合(R−O−Si)が、加水分解してシラノール基(Si−OH)を生成し材料表面でのアパタイト生成足場を提供するからである。アルコキシシラン化合物として、ビニルトリメトキシシラン(VTS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等の単一または複合したものが添加される。
【0028】
なお、側鎖にOH基を形成するために、前記アルコキシシラン化合物の他に、−COOHを提供する酢酸ビニルアルコールが考えられる。ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルアルコールをけん化して得られるが、このけん化度をコントロールするもしくは、酢酸ビニルそのものを共重合させても良い。その他には、ジルコニアゲル(Zr−OH)、酸化タンタルゲル(Ta−OH)、酸化ニオブゲル(Nb−OH)などがある。
【0029】
次に、請求項4の製造方法は、前記高分子材料がポリビニルアルコールであり、且つ前記アルコキシシラン化合物がビニルトリメトキシシランであることを特徴とする。
【0030】
かかる構成によれば、主鎖が、ビニルにであり、ハイドロゲルを構成するのポリビニルアルコールと共通性があるため、均質なハイドロゲルを作製することが出来る。
【0031】
また、請求項5の製造方法は、前記水溶性カルシウム化合物が塩化カルシウムであることを特徴とする。
【0032】
かかる構成によれば、塩化カルシウムは、水に対して非常に高い溶解度を持っており、高カルシウムイオン濃度の飽和水溶液が作製できる。そして、この溶液は約pH 9のアルカリ性であり、アパタイト形成を促進させる。
【0033】
また、請求項6の製造方法は、前記水溶性カルシウム化合物がリン酸三カルシウムであることを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、リン酸カルシウムは、カルシウムイオンだけでなく、リンイオンも供給できるため、アパタイト形成に有利である。
【0035】
以下、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。
【0036】
【実施例】
実施例1
DMSOに水を加えた溶液に、ビニルトリメトキシシラン(以下、VTSと云う。)を加えた。得られた混合溶液に重合度8800のPVAを溶解し、120〜140℃で溶融した後、−15℃にて急冷しPVAゲルを作製した。各々は表1に示す組成とした。このハイドロゲルを蒸留水に浸漬し、DMSOの抽出除去を行なった。
【0037】
【表1】
【0038】
ゲルへのシラノール(Si−OH)基の導入についてフーリエ変換赤外分光(FT−IR)分析を行ない調べた。図1に、VTS導入の有無によるPVAゲルのFT−IRスペクトルの比較を示す(図1には、代表的帰属のみ示す)。VTSを導入したゲルにおいては、VTSによるSi−O、またシラノール基のゲル化反応によるSi−O−Siに帰属されるピークが1000〜1100 cm−1付近に見られた。また、760 cm−1付近にSi−Cに帰属されるピークが見られた。つまり、VTSをゲルに添加することで、ゲル構造中へシラノール基が導入されることが確認された。
【0039】
上記に示すシラノール基導入PVAゲルを塩化カルシウム(CaCl2)の飽和水溶液に1時間浸漬し構造水の置換を行なった。得られたPVAゲルについて、生体活性の評価を行なった。なお、表中mass%は体積%を示す。
【0040】
生体活性の評価については、次に示す方法に依った。則ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの水溶液と塩酸を用いてpHを7.25に調整した表2に示す濃度で含有する水溶液(以下、これを擬似体液と云う。)を用いた、アパタイト析出反応に基づいて行なった。擬似体液中で短期間にアパタイトを形成する物質は高い生体親和性や生体活性を示すことが確かめられている。上記方法で準備したゲルを擬似体液に浸漬した後、ゲル表面のアパタイト形成について、X線回折分析および電子顕微鏡で調べた。
【0041】
【表2】
【0042】
擬似体液浸漬前後のPVAゲルについて、X線回折分析で調べた結果を図2に示す。擬似体液浸漬後のPVAゲル表面には、アパタイトに帰属されるピークが見られた。
【0043】
図3に、擬似体液浸漬後の代表的な顕微鏡観察結果を示す。図3から、擬似体液に浸漬後7日経過後では既にPVAの表面が微細なアパタイト結晶粒子で覆われていることが分かる。つまり、表1に示されるPVAゲルは短期間でアパタイトを形成し、高い生体活性を付与されたことが確認された。
【0044】
実施例2
実施例1と同様、PVAゲルにVTSを添加したゲルについての実施例であるが、置換する構造水をリン酸三カルシウム(TCP)の飽和水溶液としたのが本例である。実施例1と同様に擬似体液に浸漬し、生体活性を評価した。図4にX線回折分析の結果を、図5に電子顕微鏡による観察結果の代表例を示すが、これからも、本例に示すPVAゲルも高い生体活性を付与されたことが確認された。
【0045】
(実験例)
実施例1と同様、PVAゲルにVTSを添加し、CaCl2の水溶液に置換したゲルについての実施例であるが、VTSの添加量、CaCl2の水溶液の濃度を変化させた。実施例1と同様に擬似体液に浸漬し、生体活性を評価した。X線回折分析の結果、および電子顕微鏡による観察結果より、評価した生体活性を表3に示した。これから、VTSの添加量が多いほど、また、CaCl2の水溶液の濃度が高いほど、高い生体活性を示すといえる。
【0046】
【表3】
【0047】
なお、表3において一番上のものと、上から6番目ものは比較例であり、前者はOH基が導入されておらず、後者はカルシウムイオンが導入されていない。いずれも早期のアパタイト形成が見られなかった。
【0048】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る生体補綴部材によれば、前記課題を解決するため請求項1の生体補綴部材は、高分子材料のハイドロゲルからなる生体補綴部材であって、前記ハイドロゲルはその構造水中にカルシウムイオンを含有するとともに、前記高分子材料の側鎖にOH基を結合したことから、生体補綴部材が含有するカルシウムとOH基と、生体内の体液に含まれるリンとが化合して生体補綴部材の表面にリン酸カルシウム系化合物である水酸化アパタイトが形成される。本発明の生体補綴部材は、カルシウムをイオン状態で含有するので、カルシウムの反応性が非常に高い。一方、OH基が高分子材料の主鎖ではなく、側鎖に結合しており、OH基の反応性も高い。したがって、アパタイトが非常に早期に形成される。そして、本発明の生体補綴部材によれば、生体内に埋入後、表面にアパタイトが形成され、このアパタイトが骨組織と結合するが、生体補綴部材の内部には骨が侵入するものではないので、置換が必要な時に、アパタイト層と生体補綴部材の表面との界面で両者を切り離すことで、生体補綴部材を容易に除去することができる。
【0049】
また、前記OH基をSi−OH基とした場合、Si−OH基は、他の−OHや−COOHに比べ、比較的分子運動が自由であるため、アパタイト形成時における核となり易い。したがって、生体内埋入後、より早期にアパタイトが形成される。
【0050】
次に、本発明の生体補綴部材の製造方法によれば、ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に、高分子材料の原料と、アルコキシシラン化合物とを溶解する工程と、この溶解液を急冷して、前記高分子材料の側鎖にOH基が結合した、前記高分子材料のハイドロゲルを得る工程と、このハイドロゲルを蒸留水に浸漬して前記ジメチルスルホキシドを抽出する工程、および、前記高分子材料のハイドロゲルを水溶性カルシウム化合物の飽和水溶液に浸漬し、前記ハイドロゲル中にカルシウムイオンを導入する工程とを含むことから、ハイドロゲルを構成する高分子材料の側鎖にOH基が結合することができ、ハイドロゲルにカルシウムイオンを導入することができ、さらに高分子材料とアルコキシシラン化合物とがランダムに共重合したハイドロゲルを構成することができる。共重合体の側鎖にSi−OH基を持ったハイドロゲルが得られる。共重合体とすることで、均質なハイドロゲルが作製できる。共重合体でなければ、海−島構造をとり、お互いの材料界面からの破壊等が考えられる。また、その不均一性によりアパタイトが形成する部分、形成しない部分が混在し、結果として異物反応を引き起こすことが考えられる。
【0051】
また、前記高分子材料をポリビニルアルコールとし、且つ前記アルコキシシラン化合物をビニルトリメトキシシランとした場合、主鎖が、ビニルであり、ハイドロゲルを構成するのポリビニルアルコールと共通性があるため、均質なハイドロゲルを作製することが出来る。したがって。
【0052】
また、前記水溶性カルシウム化合物を塩化カルシウムとした場合、塩化カルシウムは、水に対して非常に高い溶解度を持っており、高カルシウムイオン濃度の飽和水溶液が作製できる。そして、この溶液は約pH 9のアルカリ性であり、アパタイト形成を促進させる。
【0053】
また、前記水溶性カルシウム化合物をリン酸三カルシウムとした場合、リン酸カルシウムは、カルシウムイオンだけでなく、リンイオンも供給できるため、アパタイト形成に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルコキシシラン化合物を添加した実施例1の生体補綴部材のFT−IR分析の結果を示す線図である。
【図2】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水を塩化カルシウム飽和水溶液に置換した実施例1の生体補綴部材を擬似体液浸漬する前後のX線回折分析結果の線図である。
【図3】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水を塩化カルシウム飽和水溶液に置換した実施例1の生体補綴部材を擬似体液に浸漬した後の電子顕微鏡写真を示す。
【図4】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水をリン酸三カルシウム飽和水溶液に置換した実施例2の生体補綴部材を擬似体液浸漬する前後のX線回折分析結果の線図である。
【図5】アルコキシシラン化合物を添加し、構造水をリン酸三カルシウム飽和水溶液に置換した実施例1の生体補綴部材を擬似体液に浸漬した後の電子顕微鏡写真を示す。
【符号の説明】
符号なし
Claims (6)
- 高分子材料のハイドロゲルからなる生体補綴部材であって、前記ハイドロゲルはその構造水中にカルシウムイオンを含有するとともに、前記高分子材料の側鎖にOH基を結合してなる生体補綴部材。
- 前記OH基がSi−OH基であることを特徴とする請求項1記載の生体補綴部材。
- ジメチルスルホキシドに水を加えた溶液に高分子材料の原料とアルコキシシラン化合物とを溶解する工程と、この溶解液を急冷して前記高分子材料の側鎖にOH基が結合した前記高分子材料のハイドロゲルを得る工程と、このハイドロゲルを蒸留水に浸漬して前記ジメチルスルホキシドを抽出する工程、および、前記高分子材料のハイドロゲルを水溶性カルシウム化合物の飽和水溶液に浸漬して前記ハイドロゲル中にカルシウムイオンを導入する工程とを含むことを特徴とする生体補綴部材の製造方法。
- 前記高分子材料がポリビニルアルコールであり、且つ前記アルコキシシラン化合物がビニルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項3記載の生体補綴部材の製造方法。
- 前記水溶性カルシウム化合物が塩化カルシウムであることを特徴とする請求項3記載の生体補綴部材の製造方法。
- 前記水溶性カルシウム化合物がリン酸三カルシウムであることを特徴とする請求項3記載の生体補綴部材の製造方法。
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WO2007108329A1 (ja) * | 2006-03-20 | 2007-09-27 | Kyoto University | 生体適合性材料の製造方法 |
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2003
- 2003-04-24 JP JP2003120764A patent/JP2004321501A/ja active Pending
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