JP2004320131A - デジタル加入者回線用データ通信システムおよび制御方法、終端装置、デジタル加入者回線集線装置、atmスイッチ - Google Patents
デジタル加入者回線用データ通信システムおよび制御方法、終端装置、デジタル加入者回線集線装置、atmスイッチ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】トラフィック遅延やスループット低下を招くことなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供する。
【解決手段】終端装置2では、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスに対応するPPPoEリンク6A,6BをBAS5との間で並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づきこれら通信品質クラスのいずれかに分類し、各ユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を、当該クラスを示す値0または1に設定して送信する。DSLAM3では、終端装置2からのATMセルがQoS保証契約に基づかない場合は当該ATMセルのCLP識別子を「1」に設定する。ATMスイッチ4では、輻輳が発生した際、DSLAM3から受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄する。
【選択図】 図1
【解決手段】終端装置2では、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスに対応するPPPoEリンク6A,6BをBAS5との間で並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づきこれら通信品質クラスのいずれかに分類し、各ユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を、当該クラスを示す値0または1に設定して送信する。DSLAM3では、終端装置2からのATMセルがQoS保証契約に基づかない場合は当該ATMセルのCLP識別子を「1」に設定する。ATMスイッチ4では、輻輳が発生した際、DSLAM3から受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル加入者回線用データ通信システムに関し、特にデジタル加入者回線を用いてデータ通信を行う際、個々のセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムおよびその制御方法、終端装置、デジタル加入者回線集線装置、ATMスイッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターネットに代表されるパケット通信網の普及、さらにはパケット通信網でデータ通信される情報量の増大に伴い、利用者の通信端末からパケット通信網へアクセスするための通信回線として、より広帯域な通信回線が求められている。
このような通信回線の1つとして、既存のメタリックの電話加入者線を使用して高速データ通信を実現するデジタル加入者回線(デジタル加入者線)いわゆるxDSL(x Digital Subscriber Line)が普及しつつある。
【0003】
デジタル加入者回線は、既存のメタリックの電話加入者線を使用することからデータ通信周波数帯域がある程度制限されるため、そのデータ通信帯域の割り当てや伝送速度などに応じて各種の回線種別が用意されている。
例えば、通信端末から網側への上り方向と網側から通信端末への下り方向の帯域が非対称なものとしては、ADSL(Asymmetric DSL:非対称型デジタル加入者回線)やVDSL(Very−High−bit−rate DSL:超高速デジタル加入者線)などがある。
また、上り方向と下り方向の帯域が対称なものとしては、SDSL(Symmetcric DSL:対称型デジタル加入者線)やHDSL(High−bit−rate DSL:高速デジタル加入者線)がある。
【0004】
図12に、デジタル加入者回線を用いた一般的なデータ通信システムを示す。ここでは、利用者にインターネット8へのアクセスサービスを提供する際に用いられるデータ通信システムが例として示されており、終端装置2、デジタル加入者回線集線装置3、ATMスイッチ4、およびアクセスサーバ5が設けられている。
一般に、この種のデータ通信システムでは、利用者の通信端末1からパケット通信網を構成するISP(Internet Service Provider)網7やインターネット8へのデータは、ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)伝送方式に基づき、一般的なパケットを分割してより小さなデータ単位すなわちATMセルで高速伝送される(例えば、特許文献1、特許文献2など参照)。
【0005】
終端装置(DSL Customer Edge Device)2は、そのデジタル加入者回線の回線種別に応じたモデムを搭載し、利用者の通信端末1を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線2Aを終端制御し、通信端末1からのユーザデータをパケット化した後にATMセル化し、デジタル加入者回線2Aを介して網側へ送信する装置である。
デジタル加入者回線集線装置(以下、DSLAMという:Digital Subscriber Line Access Multiplexer)3は、交換局内に設けられたATMセル多重化装置からなり、デジタル加入者回線2Aを介して複数の終端装置2を収容し、これら終端装置2からのATMセルを広帯域通信回線3Aを介して網側へ送信する装置である。
【0006】
ATMスイッチ4は、交換局に設けられたATMセル単位でデータ交換処理を行うことによりATM網を構成する装置であり、広帯域通信回線3Aを介して複数のDSLAM3を収容し、これらDSLAM3からのATMセルを広帯域通信回線4Aを介して網側へ送信する装置である。
アクセスサーバ(以下、BASという:Broadband Access Server)5は、ATMスイッチ4を収容するとともにISP網7と接続され、ATMスイッチ4からのATMセルをセッションフローごとにパケット化してISP網7へ送信する装置である。
【0007】
終端装置2では、BAS5でATMセルをパケット化する際に他のフローのATMセルと識別するため、ユーザデータの送信に先立って、そのユーザデータをやり取りする論理的な接続関係すなわちセッションごとに、Ethernet(登録商標)プロトコルをベースとしたPPP(Point−to−Point Protocol)を用いて、論理的なPPPoE(Point−to−Point Protocol on Ethernet)リンク6をBAS5との間で確立する。
【0008】
したがって、通信端末1からのユーザデータは、終端装置2でPPPoEリンク6に対応するPPPoEパケットにパケット化され、さらにATMセルに格納されて送信される。
このATMセルは、DSLAM3、ATMスイッチ4を介してBAS5で受信されてパケット化され、PPPoEリンク6に対応する元のPPPoEパケットが組み立てられることになる。
【0009】
終端装置2やBAS5では、PPPoEパケットとATMセルとの間で、分割および組立処理を行う。このような分割および組立処理は、ATMアダプションレイヤ5(AAL:ATM Adaptation Layer 5)と呼ばれるプロトコルに基づき実行される。
図13にAAL5におけるデータユニットのマッピング例を示す。PPPoEパケットをATMセル化する場合は、まず、AAL5のサブレイヤであるAAL−CS(Convergence Sublayer)に基づき、PPPoEパケットのヘッダ情報およびユーザデータ全体をユーザデータとし、その前後に所定の制御情報であるヘッダとトレイラが付加されデータユニットとして一体化される。
【0010】
次に、このデータユニットがAAL5のサブレイヤであるAAL−SAR(Segment and Reassembly)に基づき分割され、得られたペイロードの前後に所定の制御情報であるヘッダとトレイラが付加されデータユニットとして一体化される。最後に、そのデータユニットがATMレイヤと呼ばれるプロトコルに基づき、ATMセルの情報フィールドに格納されるとともに、所定の制御情報であるセルヘッダが付加されてATMセルが生成される。
また、ATMセルからPPPoEパケットを組み立てる場合は、前述と逆の処理が行われる。
【0011】
一方、このようなデータ通信システムでは、ATMスイッチ4における統計多重効果を見越したネットワーク設計が行われている。これは、ATMスイッチ4に収容されるDSLAM3から入力されるATMセルの通常の予想伝送量を、そのDSLAM3が持つATMセルの最大伝送可能容量より小さく見積もることが可能であることから、ATMスイッチ4での処理能力に比較して多くのDSLAM3を収容するという設計である。
したがって、いくつかのDSLAM3から予想伝送量を上回るATMセルが入力された場合、ATMスイッチ4では、その伝送処理が追いつかず輻輳状態となり、いずれかのATMセルが廃棄されることになる。
【0012】
このような輻輳時におけるATMセルの廃棄可否を通信品質として利用者に提供する場合、上位レイヤで指定されている通信品質クラスを確認する必要がある。
従来のデータ通信システムでは、図14に示すように、ATMスイッチ9で、各セッションフローに対応する仮想チャネル(VC:Virtual Cannel)ごとにATMセルをAAL5のデータユニットまで組み上げ、輻輳時にはそのデータユニット単位で優先転送/廃棄制御を行うものとなっていた。
【0013】
例えばATMスイッチ9に、VC1〜VCnのATMセルが各DSLAMから混在して入力される場合、入力バッファ91でこれらATMセルを受信し、AAL5組立部92でAAL5のデータユニットを組み立て、出力バッファ93で一時的に保持する。
そして、送信する際はAAL5セル化部95でデータユニットをATMセル化し、BASへ送信する。
【0014】
そして、当該ATMスイッチ9で輻輳状態となった場合、輻輳制御部94では、出力バッファ93に保持されている各データユニットのうち、当該PPPoEパケットのPPPoEセッションヘッダを参照して優先廃棄の設定有無を確認し、その優先廃棄が設定されているフローのデータユニットを優先して廃棄することにより、輻輳状態を回避するものとなっていた。
したがって、例えば図14では、VC1の廃棄優先フローのデータユニット93Aが、VC1の非優先廃棄フローのデータユニット93Bや他のVCの非優先廃棄フローのデータユニット93Cより優先的に廃棄されることになる。
【0015】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【0016】
【特許文献1】
特開2002−064486号公報
【特許文献2】
特開2003−060807号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のジタル加入者回線用データ通信システムでは、ATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要があるため、処理コストが増大するとともに、その処理時間によるトラフィック遅延やスループット低下が生ずるという問題点があった。
また、ATMスイッチでAAL5のデータユニットに対して優先廃棄制御を行うために、上位レイヤに基づく処理が必要となり、実装コストが高くなるという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、トラフィック遅延やスループット低下を招くことなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供できるデジタル加入者回線用データ通信システムおよびその制御方法、終端装置、デジタル加入者回線集線装置、ATMスイッチを提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムは、通信端末を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線を終端制御し、通信端末からのユーザデータをパケット化した後ATMセル化し、デジタル加入者回線を介して網側へ送信する終端装置と、デジタル加入者回線を介して複数の終端装置を収容し、これら終端装置からのATMセルを広帯域通信回線を介して網側へ送信するデジタル加入者回線集線装置と、広帯域通信回線を介して複数のデジタル加入者回線集線装置を収容し、これらデジタル加入者回線集線装置からのATMセルを網側へ送信するとともに、輻輳発生時には各ATMセルのCLP識別子の内容に基づき当該ATMセルの高優先転送/廃棄制御を行うATMスイッチと、ATMスイッチを収容するとともにパケット通信網と接続され、ATMスイッチからのATMセルを通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとにパケット化してパケット通信網へ送信するアクセスサーバとを備え、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムを前提とするものである。
【0019】
そして、終端装置では、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、デジタル加入者回線集線装置では、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信し、ATMスイッチでは、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するようにしたものである。
【0020】
また、本発明にかかるデジタル加入者回線用データ通信方法は、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるデジタル加入者回線用データ通信制御方法であって、終端装置で、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信するステップと、デジタル加入者回線集線装置で、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信するステップと、ATMスイッチで、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するステップとを実行するようにしたものである。
【0021】
また、本発明にかかる終端装置は、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられる終端装置であって、ユーザデータをそのセッションフローに基づき高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスのいずれかに分類するクラス分類部と、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立するととともに、ユーザデータをPPPoEに基づきパケット化するPPPoE処理部と、このPPPoE処理部からのパケットをATMセル化し、そのうち高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信するATMドライバとを備えるものである。
【0022】
また、本発明にかかるデジタル加入者回線集線装置は、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるデジタル加入者回線集線装置であって、終端装置から受信した、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子を「0」に設定されたATMセルと、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子を「1」に設定されたATMセルとを、QoS保証契約の有無に基づきそれぞれのクラスに分類するクラス分類部と、このクラス分類部でQoS保証契約無しのクラスに分類されたATMセルは当該CLP識別子を強制的に「1」に設定して送信し、QoS保証契約有りのクラスに分類されたATMセルは当該CLP識別子の内容を維持して送信するCLP識別子書換部とを備えるものである。
【0023】
また、本発明にかかるATMスイッチは、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるATMスイッチであって、ATMスイッチから受信した、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子が「0」に設定されたATMセルと、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子が「1」に設定されたATMセルとを一時的に保持し、順次アクセスサーバへ送信する出力バッファと、自装置内で輻輳が発生した際、出力バッファで保持しているATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄する輻輳制御部とを備えるものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムについて説明する。図1は本発明の一実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの構成を示すブロック図である。
なお、図1において、前述の図12と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0025】
以下では、一般的なADSL(Asymmetric DSL:非対称型デジタル加入者回線)を介して、利用者にインターネット8へのアクセスサービスを提供する際に用いられるデータ通信システムを例として説明する。
また、このデジタル加入者回線用データ通信システムは、双方向通信が可能であるが、以下では本発明に関連する、通信端末1からインターネット8へ送信される上り方向のデータ転送処理について説明する。
【0026】
このデジタル加入者回線用データ通信システムには、終端装置2、デジタル加入者回線集線装置3、ATMスイッチ4、およびアクセスサーバ5が設けられている。
一般に、この種のデータ通信システムでは、利用者の通信端末1からパケット通信網を構成するISP(Internet Service Provider)網7やインターネット8へのデータは、ATM(Asynchoronous Transfer Mode:非同期転送モード)伝送方式に基づき、パケット通信網で用いるパケットを分割してより小さなデータ単位すなわちATMセルで高速伝送される。
【0027】
終端装置(DSL Customer Edge Device)2は、そのデジタル加入者回線の回線種別に応じたモデムを搭載し、利用者の通信端末1を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線2Aを終端制御し、通信端末1からのユーザデータをパケット化した後にATMセル化し、デジタル加入者回線2Aを介して網側へ送信する装置である。
デジタル加入者回線集線装置(以下、DSLAMという:Digital Subscriber Line Access Multiplexer)3は、交換局内に設けられたATMセル多重化装置からなり、デジタル加入者回線2Aを介して複数の終端装置2を収容し、これら終端装置2からのATMセルを広帯域通信回線3Aを介して網側へ送信する装置である。
【0028】
ATMスイッチ4は、交換局に設けられたATMセル単位でデータ交換処理を行うことによりATM網を構成する装置であり、広帯域通信回線3Aを介して複数のDSLAM3を収容し、これらDSLAM3からのATMセルを広帯域通信回線4Aを介して網側へ送信する装置である。
アクセスサーバ(以下、BASという:Broadband Access Server)5は、ATMスイッチ4を収容するとともにISP網7と接続され、ATMスイッチ4からのATMセルをセッションフローごとにパケット化してISP網7へ送信する装置である。
【0029】
本実施の形態では、ATMセルを伝送するATM網において、輻輳状態が発生した場合に、各ATMセルのヘッダ情報に設けられているCLP(Cell Loss Priority)識別子に基づき、ATMセル単位で優先廃棄制御が行われることに着目し、各ユーザデータのセッションフローごとに要求される通信品質をそのCLP識別子に対応付けることにより、利用者に対して所望の通信品質を提供するようにしたものである。
【0030】
具体的には、終端装置2で、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンク6A(第1のPPPoEリンク),PPPoEリンク6B(第2のPPPoEリンク)をBAS5との間で並列的に確立し、通信端末1からのユーザデータをそのセッションフローに基づきこれら通信品質クラスのいずれかに分類し、これらクラスに分類されたユーザデータから生成した各ATMセルについて、そのクラスに対応して当該CLP識別子を設定した後、各ATMセルを送信するようにしたものである。
【0031】
次に、図2を参照して、終端装置2について詳細に説明する。図2は終端装置2の機能ブロック図である。
この終端装置2には、機能ブロックとして、フロー識別部21、クラス分類部22、PPPoE処理部23、およびATMドライバ24が設けられている。
フロー識別部21では、通信端末1からLANなどのデータリンク1Aを介して入力されたユーザデータに付加されている制御情報を参照し、その制御情報に基づきセッションフローを識別する。
【0032】
図3にIPパケットのデータグラムを示す。ユーザデータの代表例であるIPパケットには、その制御情報として各種識別子からなるヘッダ情報が付加されている。
例えば、図3(a)に示すIPv4(IP version 4)のヘッダ情報には、DSCP(DiffServ Code Point)、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、プロトコルタイプなどの識別子が設けられており、これら識別子に基づきフロー識別部21でユーザデータのセッションフローを識別できる。
【0033】
また図3(b)に示すIPv6(IP version 6)のヘッダ情報には、送信元IPアドレスや宛先IPアドレスのほか、トラフィッククラス、フローラベル、NextHeaderなどの識別子が設けられており、これら識別子を利用できる。
さらにこれらIPヘッダに後続するTCPヘッダ(図示せず)には、送信側通信端末で使用するポート番号が付加されており、このような識別子を利用できる。
【0034】
クラス分類部22は、フロー識別部21で識別された各フローを予め設定されている設定内容に基づき、ユーザデータを高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスのいずれかに分類する。
例えば所定の宛先IPアドレスを持つパケットについて、ATM網側で廃棄されることなく高優先で転送する場合は、予め終端装置2で、その宛先IPアドレスと高優先転送クラスとを対応付けて設定しておくことにより、その宛先IPアドレスを持つセッションフローを高優先転送クラスが分類される。
【0035】
PPPoE処理部23は、ユーザデータの送信に先立ってBAS5との間で、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンク6A,PPPoEリンク6Bを並列的に確立し、ユーザデータをこれらリンクのいずれかに対応するPPPoEパケットにパケット化して出力する。
【0036】
図4にPPPoEパケットのデータグラムを示す。PPPoE処理部23では、ユーザデータをパケット化する際、そのユーザパケットについてクラス分類部22で分類したクラスを示す値を、PPPoEパケットのPPPoEセッションヘッダ200に設けられているセッションID201へ設定する。
例えば、当該ユーザパケットのセッションフローが高優先転送クラスに分類されている場合は、セッションID201として「0」を設定し、当該ユーザパケットのセッションフローが高優先転送クラスに分類されている場合は、セッションID201として「1」を設定する。
【0037】
ATMドライバ24は、PPPoE処理部23からのPPPoEパケットをAAL(ATMアダプションレイヤ:ATM Adaptation Layer)5に基づきATMセル化してDSLAM3へ送信する。
図5にATMセルのデータグラムを示す。ATMドライバ24では、PPPoEをATMセル化する際、そのPPPoEパケットのセッションID201の値に基づきATMヘッダ210のCLP識別子211を設定する。
【0038】
このとき、高優先転送クラスのPPPoEパケットをセル化した場合はCLP識別子211に「0」を設定し、高優先廃棄クラスのPPPoEパケットをセル化した場合はCLP識別子211に「1」を設定する。
例えば前述したように、セッションID201として高優先転送クラスの際は「0」を設定し、高優先廃棄クラスの際は「1」を設定した場合、そのセッションID201の値をCLP識別子211へ設定するだけでよい。
【0039】
本実施の形態では、前述のように高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスの2つの通信品質クラスにそれぞれ異なるセッションを割り当て、PPPoEパケットをATMセル化する際、そのPPPoEパケットが属するセッションのセッションIDに基づき、ATMセルのCLP識別子を設定するようにしたので、PPPoEの通信品質クラスに基づきATMセルのCPL識別子を容易に設定できる。
また、PPPoEでは、通常、セッションIDごとにPPPoEリンクを形成する必要がある。したがって、本実施の形態では、このような2つの通信品質クラスをそれぞれ異なるセッションに割り当てるため、それぞれの通信品質クラスに対応したPPPoEリンクを終端装置2とBAS5との間に予め確立するようにしている。
【0040】
次に、図6を参照して、DSLAM3について詳細に説明する。図6は、DSLAM3の機能ブロック図である。
このDSLAM3には、機能ブロックとして、入力バッファ31、クラス分類部32、CLP識別子書換部33、および、出力バッファ34が設けられている。
入力バッファ31は、デジタル加入者回線2Aを介して各ユーザサイトの終端装置2からATMセルを受信し一時的に保持する。
【0041】
クラス分類部32は、予めサービス提供者と利用者との間で取り交わしたQoS保証契約の有無に基づき、QoS保証契約を行った契約ユーザクラスとQoS保証契約を行っていない非契約ユーザクラスのいずれかへ、受信した各ATMセルを分類する。
この際、DSLAM3では、各利用者の通信端末1が予め固定的に対応付けられた収容位置(インターフェース)に収容される。したがって、例えばQoS保証契約の有無と各利用者の通信端末の収容位置とを、DSLAM3内に設けたマッピング情報で対応付けておくことにより、受信した収容位置に基づき各ATMセルをクラス分けすることができる。
【0042】
CLP識別子書換部33は、クラス分類部32でクラス分けされたATMセルのうち、非契約ユーザクラスに分類された各ATMセルについて、そのATMセルのCLP識別子を強制的に「1」へ書き換え、出力バッファ34から送信する。また、契約ユーザクラスに分類された各ATMセルについては、そのATMセルのCLP識別子の内容を維持したまま書き換えを行わず、出力バッファ34から送信する。
したがって、ATM網ではQoS保証契約を行っていない利用者のATMセルについてはすべて高優先廃棄クラスとして処理される。また、QoS保証契約を行った利用者のATMセルについては、そのCLP識別子の内容が示す高優先転送/廃棄クラスとして処理される。
【0043】
現行のAAL5では、パケットをセル化する際、CLP識別子には高優先転送クラスを示す「0」を設定している。またQoS保証契約を行っていない非契約ユーザからCLP識別子が「0」のATMセルが送信される場合もある。
本実施の形態では、DSLAM3にクラス分類部32とCLP識別子書換部33を設けて、QoS保証契約外のATMセルとQoS保証契約したATMセルとを正確に区別するようにしたので、QoS保証契約を結んだ利用者に対して高い通信品質を提供できるとともに、これを価値のある有料サービスとして提供できる。
【0044】
次に、図7を参照して、ATMスイッチ4について詳細に説明する。図7は、ATMスイッチ4の機能ブロック図である。
このATMスイッチ4には、機能ブロックとして、入力バッファ41、出力バッファ42、および輻輳制御部43が設けられている。
入力バッファ41は、広帯域通信回線3Aを介して各DSLAM3からATMセルを受信し一時的に保持する。
【0045】
出力バッファ42は、入力バッファ41で受信されたATMセルを、一時保持し、広帯域通信回線4Aを介してBAS5へ順次送信する。
輻輳制御部43は、出力バッファ42内のATMセルが所定しきい値より多く蓄積されて輻輳状態となった場合、出力バッファ42内に蓄積されている各ATMセルのうち、そのCLP識別子が高優先廃棄クラスを示すATMセルを、AAL5のデータユニット単位で優先的に廃棄して輻輳状態を緩和する。なお、データユニット単位は、各ATMセルのペイロード部に格納されているデータセットのヘッダに基づき識別される。
したがって、輻輳状態が発生した場合、ATMスイッチでは、終端装置2やDSLAM3でCLP識別子に「1」が設定された高優先廃棄クラスのATMセルが優先的に廃棄され、CLP識別子に「0」が設定された高優先転送クラスのATMセルが優先的に転送される。
【0046】
次に、図8を参照して、BAS5について詳細に説明する。図8は、BAS5の機能ブロック図である。
このBAS5には、機能ブロックとして、ATM処理部51、PPPoE処理部52、および転送処理部53が設けられている。
ATM処理部51は、広帯域通信回線4Aを介してATMスイッチ4から受信したATMセルを、AAL5に基づいて各セッションフローごとに元のPPPoEへ組み上げる。
【0047】
PPPoE処理部52は、ユーザデータの送信に先立って、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンク6A,PPPoEリンク6Bを、終端装置2のPPPoE処理部23との間で並列的に確立するとともに、ATM処理部51から入力されたPPPoEパケットのPPPoEヘッダを除去し、ユーザデータを抽出する。
転送処理部53は、PPPoE処理部52で抽出されたユーザデータをIPパケットとしてISP網7へ送信する。
【0048】
このように、本実施の形態では、終端装置で、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、DSLAMで、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信するようにしたものである。
【0049】
そして、ATMスイッチで、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するようにしたものである。
したがって、ATMスイッチ4での輻輳廃棄制御は、ATMレイヤで行うことができ、本実施の形態によれば、従来のようにATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要がなくなる。これにより、輻輳廃棄制御に起因するトラフィック遅延やスループット低下を回避できる。
【0050】
また、ATMスイッチから構成されるATM網が予め有する優先廃棄制御機能を利用して、セッションフローごとに要求されるユーザデータに対する通信品質をそのCLP識別子に対応付けることにより、利用者に対して所望の通信品質を提供するようにしたので、終端装置でATMセルのCLP識別子として1ビットの情報を制御するという処理で実現できる。
これにより、データ通信システムを構成する既存のDSLAMやATMスイッチで大幅な実装変更をする必要がなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供でき、極めて効果的なQoS制御を実現できる。
【0051】
次に、図9および図10を参照して、本実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの動作について説明する。図9はデジタル加入者回線用データ通信システムの動作を示すシーケンス図である。図10はデジタル加入者回線用データ通信システムのプロトコルスタックを示す説明図である。
まず、終端装置2では、ユーザデータの送信に先立ってBAS5との間で、高優先転送クラスフロー用のPPPoEリンク6Aと高優先廃棄クラスフロー用のPPPoEリンク6Bとを確立する(ステップ100,101)。
PPPoEリンクを確立する手順については、例えば図11に示すように、一般的な公知の技術に基づくものであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0052】
その後、終端装置2では、通信端末1からのユーザデータの受信に応じて(ステップ110)、そのユーザデータを高優先転送クラスまたは高優先廃棄クラスのいずれかに分類し、それぞれ対応するPPPoEリンク6A,6BのPPPoEパケットとしてパケット化し(ステップ111)、そのPPPoEパケットをATMセル化する(ステップ112)。
その際、各ATMセルの通信品質クラスを確認し(ステップ113)、高優先転送クラスのATMセルについてはそのCLP識別子を「0」に設定し(ステップ114)、高優先廃棄クラスのATMセルについてはそのCLP識別子を「1」に設定する(ステップ115)。そして、デジタル加入者回線2Aを介してDSLAM3へATMセルを送信する(ステップ116)。
【0053】
DSLAM3では、終端装置2からのATMセルを受信し、そのATMセルをQoS保証契約の有無に基づき契約ユーザクラスと非契約ユーザクラスとにクラス分けする(ステップ120)。そして、QoS保証契約をしていない非契約ユーザクラスのATMセルについてのみ、そのCLP識別子を高優先廃棄クラスを示す「1」に書き換える(ステップ121)。
そして、これらATMセルを広帯域通信回線3Aを介してATMスイッチ4へ送信する(ステップ122)。
【0054】
ATMスイッチ4では、広帯域通信回線3Aを介してDSLAM3からのATMセルを受信し、これらATMセルを広帯域通信回線4Aを介してBAS5へ送信する(ステップ133)。
この際、ATMスイッチ4で輻輳状態となった場合は、各ATMセルのCLP識別子を確認し(ステップ130)、CLP識別子が「0」のATMセルについては高優先転送制御を行い(ステップ131)、CLP識別子が「1」のATMセルについては高優先廃棄制御を行う(ステップ132)。
BAS5では、ATMスイッチ4からのATMセルを受信し、これらATMセルをPPPoEパケット化し(ステップ140)、さらにIPパケット化し(ステップ141)、得られたIPパケットをISP網7へ送信する(ステップ142)。
【0055】
したがって、図10のプロトコルスタックに示されているように、ATMスイッチ4では、物理レイヤを介してATMセルを受信し、ATMレイヤを介して物理レイヤから送信される。そして、輻輳状態の場合にはATMレイヤでCLP識別子が「1」の高優先廃棄クラスのAMTセルが優先的に廃棄される。
このため、従来のようにATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要がなくなる。これにより、本実施の形態によれば、トラフィック遅延やスループット低下を招くことなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供できる。
【0056】
なお、以上では、一般的なADSL(Asymmetric DSL:非対称型デジタル加入者回線)を介して、インターネットへのアクセスサービスを提供する際に用いられるデータ通信システムを例として説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、各種デジタル加入者回線を用いる場合、あるいは他のネットワークへのアクセスを実現する場合など、ユーザデータを所定通信区間でATMセル化して転送するデータ通信システムであれば、前述と同様に本実施の形態を適用でき、同様の作用効果が得られる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、終端装置で、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、デジタル加入者回線集線装置で、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信するようにしたものである。
【0058】
そして、ATMスイッチで、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するようにしたものである。
したがって、ATMスイッチ4での輻輳廃棄制御は、ATMレイヤで行うことができ、本実施の形態によれば、従来のようにATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要がなくなる。これにより、輻輳廃棄制御に起因するトラフィック遅延やスループット低下を回避できる。
【0059】
また、ATMスイッチから構成されるATM網が予め有する優先廃棄制御機能を利用して、セッションフローごとに要求されるユーザデータに対する通信品質をそのCLP識別子に対応付けることにより、利用者に対して所望の通信品質を提供するようにしたので、終端装置でATMセルのCLP識別子として1ビットの情報を制御するという処理で実現でき、データ通信システムを構成する既存のDSLAMやATMスイッチで大幅な実装変更をする必要がなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供でき、極めて効果的なQoS制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】終端装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】IPヘッダの構成例を示すデータグラムである。
【図4】PPPoEパケットの構成例を示すデータグラムである。
【図5】ATMセルの構成例を示すデータグラムである。
【図6】デジタル加入者回線集線装置(DSLAM)の構成例を示す機能ブロック図である。
【図7】ATMスイッチの構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】アクセスサーバ(BAS)の構成例を示す機能ブロック図である。
【図9】本実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図10】本実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムのプロトコルスタックである。
【図11】一般的なPPPoEリンクの確立手順例を示すシーケンス図である。
【図12】一般的なデジタル加入者回線用データ通信システムの構成を示すブロック図である。
【図13】AAL5におけるデータユニットのマッピング例である。
【図14】従来のATMスイッチの構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
1…通信端末、2…終端装置、21…フロー識別部、22…クラス分類部、23…PPPoE処理部、24…ATMドライバ、3…デジタル加入者回線集線装置(DSLAM)、31…入力バッファ、32…クラス分離部、33…CLP識別子書換部、34…出力バッファ、4…ATMスイッチ、41…入力バッファ、42…出力バッファ、43…輻輳制御部、5…アクセスサーバ(BAS)、51…ATM処理部、52…PPPoE処理部、53…転送処理部、6A…PPPoEリンク(高優先転送クラスフロー用)、6B…PPPoEリンク(高優先廃棄クラスフロー用)、7…ISP網、8…インターネット、200…PPPoEセッションヘッダ、201…セッションID、210…ATMセルヘッダ、211…CLP識別子。
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル加入者回線用データ通信システムに関し、特にデジタル加入者回線を用いてデータ通信を行う際、個々のセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムおよびその制御方法、終端装置、デジタル加入者回線集線装置、ATMスイッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インターネットに代表されるパケット通信網の普及、さらにはパケット通信網でデータ通信される情報量の増大に伴い、利用者の通信端末からパケット通信網へアクセスするための通信回線として、より広帯域な通信回線が求められている。
このような通信回線の1つとして、既存のメタリックの電話加入者線を使用して高速データ通信を実現するデジタル加入者回線(デジタル加入者線)いわゆるxDSL(x Digital Subscriber Line)が普及しつつある。
【0003】
デジタル加入者回線は、既存のメタリックの電話加入者線を使用することからデータ通信周波数帯域がある程度制限されるため、そのデータ通信帯域の割り当てや伝送速度などに応じて各種の回線種別が用意されている。
例えば、通信端末から網側への上り方向と網側から通信端末への下り方向の帯域が非対称なものとしては、ADSL(Asymmetric DSL:非対称型デジタル加入者回線)やVDSL(Very−High−bit−rate DSL:超高速デジタル加入者線)などがある。
また、上り方向と下り方向の帯域が対称なものとしては、SDSL(Symmetcric DSL:対称型デジタル加入者線)やHDSL(High−bit−rate DSL:高速デジタル加入者線)がある。
【0004】
図12に、デジタル加入者回線を用いた一般的なデータ通信システムを示す。ここでは、利用者にインターネット8へのアクセスサービスを提供する際に用いられるデータ通信システムが例として示されており、終端装置2、デジタル加入者回線集線装置3、ATMスイッチ4、およびアクセスサーバ5が設けられている。
一般に、この種のデータ通信システムでは、利用者の通信端末1からパケット通信網を構成するISP(Internet Service Provider)網7やインターネット8へのデータは、ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)伝送方式に基づき、一般的なパケットを分割してより小さなデータ単位すなわちATMセルで高速伝送される(例えば、特許文献1、特許文献2など参照)。
【0005】
終端装置(DSL Customer Edge Device)2は、そのデジタル加入者回線の回線種別に応じたモデムを搭載し、利用者の通信端末1を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線2Aを終端制御し、通信端末1からのユーザデータをパケット化した後にATMセル化し、デジタル加入者回線2Aを介して網側へ送信する装置である。
デジタル加入者回線集線装置(以下、DSLAMという:Digital Subscriber Line Access Multiplexer)3は、交換局内に設けられたATMセル多重化装置からなり、デジタル加入者回線2Aを介して複数の終端装置2を収容し、これら終端装置2からのATMセルを広帯域通信回線3Aを介して網側へ送信する装置である。
【0006】
ATMスイッチ4は、交換局に設けられたATMセル単位でデータ交換処理を行うことによりATM網を構成する装置であり、広帯域通信回線3Aを介して複数のDSLAM3を収容し、これらDSLAM3からのATMセルを広帯域通信回線4Aを介して網側へ送信する装置である。
アクセスサーバ(以下、BASという:Broadband Access Server)5は、ATMスイッチ4を収容するとともにISP網7と接続され、ATMスイッチ4からのATMセルをセッションフローごとにパケット化してISP網7へ送信する装置である。
【0007】
終端装置2では、BAS5でATMセルをパケット化する際に他のフローのATMセルと識別するため、ユーザデータの送信に先立って、そのユーザデータをやり取りする論理的な接続関係すなわちセッションごとに、Ethernet(登録商標)プロトコルをベースとしたPPP(Point−to−Point Protocol)を用いて、論理的なPPPoE(Point−to−Point Protocol on Ethernet)リンク6をBAS5との間で確立する。
【0008】
したがって、通信端末1からのユーザデータは、終端装置2でPPPoEリンク6に対応するPPPoEパケットにパケット化され、さらにATMセルに格納されて送信される。
このATMセルは、DSLAM3、ATMスイッチ4を介してBAS5で受信されてパケット化され、PPPoEリンク6に対応する元のPPPoEパケットが組み立てられることになる。
【0009】
終端装置2やBAS5では、PPPoEパケットとATMセルとの間で、分割および組立処理を行う。このような分割および組立処理は、ATMアダプションレイヤ5(AAL:ATM Adaptation Layer 5)と呼ばれるプロトコルに基づき実行される。
図13にAAL5におけるデータユニットのマッピング例を示す。PPPoEパケットをATMセル化する場合は、まず、AAL5のサブレイヤであるAAL−CS(Convergence Sublayer)に基づき、PPPoEパケットのヘッダ情報およびユーザデータ全体をユーザデータとし、その前後に所定の制御情報であるヘッダとトレイラが付加されデータユニットとして一体化される。
【0010】
次に、このデータユニットがAAL5のサブレイヤであるAAL−SAR(Segment and Reassembly)に基づき分割され、得られたペイロードの前後に所定の制御情報であるヘッダとトレイラが付加されデータユニットとして一体化される。最後に、そのデータユニットがATMレイヤと呼ばれるプロトコルに基づき、ATMセルの情報フィールドに格納されるとともに、所定の制御情報であるセルヘッダが付加されてATMセルが生成される。
また、ATMセルからPPPoEパケットを組み立てる場合は、前述と逆の処理が行われる。
【0011】
一方、このようなデータ通信システムでは、ATMスイッチ4における統計多重効果を見越したネットワーク設計が行われている。これは、ATMスイッチ4に収容されるDSLAM3から入力されるATMセルの通常の予想伝送量を、そのDSLAM3が持つATMセルの最大伝送可能容量より小さく見積もることが可能であることから、ATMスイッチ4での処理能力に比較して多くのDSLAM3を収容するという設計である。
したがって、いくつかのDSLAM3から予想伝送量を上回るATMセルが入力された場合、ATMスイッチ4では、その伝送処理が追いつかず輻輳状態となり、いずれかのATMセルが廃棄されることになる。
【0012】
このような輻輳時におけるATMセルの廃棄可否を通信品質として利用者に提供する場合、上位レイヤで指定されている通信品質クラスを確認する必要がある。
従来のデータ通信システムでは、図14に示すように、ATMスイッチ9で、各セッションフローに対応する仮想チャネル(VC:Virtual Cannel)ごとにATMセルをAAL5のデータユニットまで組み上げ、輻輳時にはそのデータユニット単位で優先転送/廃棄制御を行うものとなっていた。
【0013】
例えばATMスイッチ9に、VC1〜VCnのATMセルが各DSLAMから混在して入力される場合、入力バッファ91でこれらATMセルを受信し、AAL5組立部92でAAL5のデータユニットを組み立て、出力バッファ93で一時的に保持する。
そして、送信する際はAAL5セル化部95でデータユニットをATMセル化し、BASへ送信する。
【0014】
そして、当該ATMスイッチ9で輻輳状態となった場合、輻輳制御部94では、出力バッファ93に保持されている各データユニットのうち、当該PPPoEパケットのPPPoEセッションヘッダを参照して優先廃棄の設定有無を確認し、その優先廃棄が設定されているフローのデータユニットを優先して廃棄することにより、輻輳状態を回避するものとなっていた。
したがって、例えば図14では、VC1の廃棄優先フローのデータユニット93Aが、VC1の非優先廃棄フローのデータユニット93Bや他のVCの非優先廃棄フローのデータユニット93Cより優先的に廃棄されることになる。
【0015】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【0016】
【特許文献1】
特開2002−064486号公報
【特許文献2】
特開2003−060807号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のジタル加入者回線用データ通信システムでは、ATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要があるため、処理コストが増大するとともに、その処理時間によるトラフィック遅延やスループット低下が生ずるという問題点があった。
また、ATMスイッチでAAL5のデータユニットに対して優先廃棄制御を行うために、上位レイヤに基づく処理が必要となり、実装コストが高くなるという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、トラフィック遅延やスループット低下を招くことなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供できるデジタル加入者回線用データ通信システムおよびその制御方法、終端装置、デジタル加入者回線集線装置、ATMスイッチを提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムは、通信端末を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線を終端制御し、通信端末からのユーザデータをパケット化した後ATMセル化し、デジタル加入者回線を介して網側へ送信する終端装置と、デジタル加入者回線を介して複数の終端装置を収容し、これら終端装置からのATMセルを広帯域通信回線を介して網側へ送信するデジタル加入者回線集線装置と、広帯域通信回線を介して複数のデジタル加入者回線集線装置を収容し、これらデジタル加入者回線集線装置からのATMセルを網側へ送信するとともに、輻輳発生時には各ATMセルのCLP識別子の内容に基づき当該ATMセルの高優先転送/廃棄制御を行うATMスイッチと、ATMスイッチを収容するとともにパケット通信網と接続され、ATMスイッチからのATMセルを通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとにパケット化してパケット通信網へ送信するアクセスサーバとを備え、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムを前提とするものである。
【0019】
そして、終端装置では、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、デジタル加入者回線集線装置では、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信し、ATMスイッチでは、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するようにしたものである。
【0020】
また、本発明にかかるデジタル加入者回線用データ通信方法は、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるデジタル加入者回線用データ通信制御方法であって、終端装置で、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信するステップと、デジタル加入者回線集線装置で、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信するステップと、ATMスイッチで、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するステップとを実行するようにしたものである。
【0021】
また、本発明にかかる終端装置は、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられる終端装置であって、ユーザデータをそのセッションフローに基づき高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスのいずれかに分類するクラス分類部と、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立するととともに、ユーザデータをPPPoEに基づきパケット化するPPPoE処理部と、このPPPoE処理部からのパケットをATMセル化し、そのうち高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信するATMドライバとを備えるものである。
【0022】
また、本発明にかかるデジタル加入者回線集線装置は、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるデジタル加入者回線集線装置であって、終端装置から受信した、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子を「0」に設定されたATMセルと、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子を「1」に設定されたATMセルとを、QoS保証契約の有無に基づきそれぞれのクラスに分類するクラス分類部と、このクラス分類部でQoS保証契約無しのクラスに分類されたATMセルは当該CLP識別子を強制的に「1」に設定して送信し、QoS保証契約有りのクラスに分類されたATMセルは当該CLP識別子の内容を維持して送信するCLP識別子書換部とを備えるものである。
【0023】
また、本発明にかかるATMスイッチは、前述したデジタル加入者回線用データ通信システムと同様の、デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるATMスイッチであって、ATMスイッチから受信した、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子が「0」に設定されたATMセルと、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子が「1」に設定されたATMセルとを一時的に保持し、順次アクセスサーバへ送信する出力バッファと、自装置内で輻輳が発生した際、出力バッファで保持しているATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄する輻輳制御部とを備えるものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムについて説明する。図1は本発明の一実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの構成を示すブロック図である。
なお、図1において、前述の図12と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0025】
以下では、一般的なADSL(Asymmetric DSL:非対称型デジタル加入者回線)を介して、利用者にインターネット8へのアクセスサービスを提供する際に用いられるデータ通信システムを例として説明する。
また、このデジタル加入者回線用データ通信システムは、双方向通信が可能であるが、以下では本発明に関連する、通信端末1からインターネット8へ送信される上り方向のデータ転送処理について説明する。
【0026】
このデジタル加入者回線用データ通信システムには、終端装置2、デジタル加入者回線集線装置3、ATMスイッチ4、およびアクセスサーバ5が設けられている。
一般に、この種のデータ通信システムでは、利用者の通信端末1からパケット通信網を構成するISP(Internet Service Provider)網7やインターネット8へのデータは、ATM(Asynchoronous Transfer Mode:非同期転送モード)伝送方式に基づき、パケット通信網で用いるパケットを分割してより小さなデータ単位すなわちATMセルで高速伝送される。
【0027】
終端装置(DSL Customer Edge Device)2は、そのデジタル加入者回線の回線種別に応じたモデムを搭載し、利用者の通信端末1を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線2Aを終端制御し、通信端末1からのユーザデータをパケット化した後にATMセル化し、デジタル加入者回線2Aを介して網側へ送信する装置である。
デジタル加入者回線集線装置(以下、DSLAMという:Digital Subscriber Line Access Multiplexer)3は、交換局内に設けられたATMセル多重化装置からなり、デジタル加入者回線2Aを介して複数の終端装置2を収容し、これら終端装置2からのATMセルを広帯域通信回線3Aを介して網側へ送信する装置である。
【0028】
ATMスイッチ4は、交換局に設けられたATMセル単位でデータ交換処理を行うことによりATM網を構成する装置であり、広帯域通信回線3Aを介して複数のDSLAM3を収容し、これらDSLAM3からのATMセルを広帯域通信回線4Aを介して網側へ送信する装置である。
アクセスサーバ(以下、BASという:Broadband Access Server)5は、ATMスイッチ4を収容するとともにISP網7と接続され、ATMスイッチ4からのATMセルをセッションフローごとにパケット化してISP網7へ送信する装置である。
【0029】
本実施の形態では、ATMセルを伝送するATM網において、輻輳状態が発生した場合に、各ATMセルのヘッダ情報に設けられているCLP(Cell Loss Priority)識別子に基づき、ATMセル単位で優先廃棄制御が行われることに着目し、各ユーザデータのセッションフローごとに要求される通信品質をそのCLP識別子に対応付けることにより、利用者に対して所望の通信品質を提供するようにしたものである。
【0030】
具体的には、終端装置2で、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンク6A(第1のPPPoEリンク),PPPoEリンク6B(第2のPPPoEリンク)をBAS5との間で並列的に確立し、通信端末1からのユーザデータをそのセッションフローに基づきこれら通信品質クラスのいずれかに分類し、これらクラスに分類されたユーザデータから生成した各ATMセルについて、そのクラスに対応して当該CLP識別子を設定した後、各ATMセルを送信するようにしたものである。
【0031】
次に、図2を参照して、終端装置2について詳細に説明する。図2は終端装置2の機能ブロック図である。
この終端装置2には、機能ブロックとして、フロー識別部21、クラス分類部22、PPPoE処理部23、およびATMドライバ24が設けられている。
フロー識別部21では、通信端末1からLANなどのデータリンク1Aを介して入力されたユーザデータに付加されている制御情報を参照し、その制御情報に基づきセッションフローを識別する。
【0032】
図3にIPパケットのデータグラムを示す。ユーザデータの代表例であるIPパケットには、その制御情報として各種識別子からなるヘッダ情報が付加されている。
例えば、図3(a)に示すIPv4(IP version 4)のヘッダ情報には、DSCP(DiffServ Code Point)、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、プロトコルタイプなどの識別子が設けられており、これら識別子に基づきフロー識別部21でユーザデータのセッションフローを識別できる。
【0033】
また図3(b)に示すIPv6(IP version 6)のヘッダ情報には、送信元IPアドレスや宛先IPアドレスのほか、トラフィッククラス、フローラベル、NextHeaderなどの識別子が設けられており、これら識別子を利用できる。
さらにこれらIPヘッダに後続するTCPヘッダ(図示せず)には、送信側通信端末で使用するポート番号が付加されており、このような識別子を利用できる。
【0034】
クラス分類部22は、フロー識別部21で識別された各フローを予め設定されている設定内容に基づき、ユーザデータを高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスのいずれかに分類する。
例えば所定の宛先IPアドレスを持つパケットについて、ATM網側で廃棄されることなく高優先で転送する場合は、予め終端装置2で、その宛先IPアドレスと高優先転送クラスとを対応付けて設定しておくことにより、その宛先IPアドレスを持つセッションフローを高優先転送クラスが分類される。
【0035】
PPPoE処理部23は、ユーザデータの送信に先立ってBAS5との間で、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンク6A,PPPoEリンク6Bを並列的に確立し、ユーザデータをこれらリンクのいずれかに対応するPPPoEパケットにパケット化して出力する。
【0036】
図4にPPPoEパケットのデータグラムを示す。PPPoE処理部23では、ユーザデータをパケット化する際、そのユーザパケットについてクラス分類部22で分類したクラスを示す値を、PPPoEパケットのPPPoEセッションヘッダ200に設けられているセッションID201へ設定する。
例えば、当該ユーザパケットのセッションフローが高優先転送クラスに分類されている場合は、セッションID201として「0」を設定し、当該ユーザパケットのセッションフローが高優先転送クラスに分類されている場合は、セッションID201として「1」を設定する。
【0037】
ATMドライバ24は、PPPoE処理部23からのPPPoEパケットをAAL(ATMアダプションレイヤ:ATM Adaptation Layer)5に基づきATMセル化してDSLAM3へ送信する。
図5にATMセルのデータグラムを示す。ATMドライバ24では、PPPoEをATMセル化する際、そのPPPoEパケットのセッションID201の値に基づきATMヘッダ210のCLP識別子211を設定する。
【0038】
このとき、高優先転送クラスのPPPoEパケットをセル化した場合はCLP識別子211に「0」を設定し、高優先廃棄クラスのPPPoEパケットをセル化した場合はCLP識別子211に「1」を設定する。
例えば前述したように、セッションID201として高優先転送クラスの際は「0」を設定し、高優先廃棄クラスの際は「1」を設定した場合、そのセッションID201の値をCLP識別子211へ設定するだけでよい。
【0039】
本実施の形態では、前述のように高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスの2つの通信品質クラスにそれぞれ異なるセッションを割り当て、PPPoEパケットをATMセル化する際、そのPPPoEパケットが属するセッションのセッションIDに基づき、ATMセルのCLP識別子を設定するようにしたので、PPPoEの通信品質クラスに基づきATMセルのCPL識別子を容易に設定できる。
また、PPPoEでは、通常、セッションIDごとにPPPoEリンクを形成する必要がある。したがって、本実施の形態では、このような2つの通信品質クラスをそれぞれ異なるセッションに割り当てるため、それぞれの通信品質クラスに対応したPPPoEリンクを終端装置2とBAS5との間に予め確立するようにしている。
【0040】
次に、図6を参照して、DSLAM3について詳細に説明する。図6は、DSLAM3の機能ブロック図である。
このDSLAM3には、機能ブロックとして、入力バッファ31、クラス分類部32、CLP識別子書換部33、および、出力バッファ34が設けられている。
入力バッファ31は、デジタル加入者回線2Aを介して各ユーザサイトの終端装置2からATMセルを受信し一時的に保持する。
【0041】
クラス分類部32は、予めサービス提供者と利用者との間で取り交わしたQoS保証契約の有無に基づき、QoS保証契約を行った契約ユーザクラスとQoS保証契約を行っていない非契約ユーザクラスのいずれかへ、受信した各ATMセルを分類する。
この際、DSLAM3では、各利用者の通信端末1が予め固定的に対応付けられた収容位置(インターフェース)に収容される。したがって、例えばQoS保証契約の有無と各利用者の通信端末の収容位置とを、DSLAM3内に設けたマッピング情報で対応付けておくことにより、受信した収容位置に基づき各ATMセルをクラス分けすることができる。
【0042】
CLP識別子書換部33は、クラス分類部32でクラス分けされたATMセルのうち、非契約ユーザクラスに分類された各ATMセルについて、そのATMセルのCLP識別子を強制的に「1」へ書き換え、出力バッファ34から送信する。また、契約ユーザクラスに分類された各ATMセルについては、そのATMセルのCLP識別子の内容を維持したまま書き換えを行わず、出力バッファ34から送信する。
したがって、ATM網ではQoS保証契約を行っていない利用者のATMセルについてはすべて高優先廃棄クラスとして処理される。また、QoS保証契約を行った利用者のATMセルについては、そのCLP識別子の内容が示す高優先転送/廃棄クラスとして処理される。
【0043】
現行のAAL5では、パケットをセル化する際、CLP識別子には高優先転送クラスを示す「0」を設定している。またQoS保証契約を行っていない非契約ユーザからCLP識別子が「0」のATMセルが送信される場合もある。
本実施の形態では、DSLAM3にクラス分類部32とCLP識別子書換部33を設けて、QoS保証契約外のATMセルとQoS保証契約したATMセルとを正確に区別するようにしたので、QoS保証契約を結んだ利用者に対して高い通信品質を提供できるとともに、これを価値のある有料サービスとして提供できる。
【0044】
次に、図7を参照して、ATMスイッチ4について詳細に説明する。図7は、ATMスイッチ4の機能ブロック図である。
このATMスイッチ4には、機能ブロックとして、入力バッファ41、出力バッファ42、および輻輳制御部43が設けられている。
入力バッファ41は、広帯域通信回線3Aを介して各DSLAM3からATMセルを受信し一時的に保持する。
【0045】
出力バッファ42は、入力バッファ41で受信されたATMセルを、一時保持し、広帯域通信回線4Aを介してBAS5へ順次送信する。
輻輳制御部43は、出力バッファ42内のATMセルが所定しきい値より多く蓄積されて輻輳状態となった場合、出力バッファ42内に蓄積されている各ATMセルのうち、そのCLP識別子が高優先廃棄クラスを示すATMセルを、AAL5のデータユニット単位で優先的に廃棄して輻輳状態を緩和する。なお、データユニット単位は、各ATMセルのペイロード部に格納されているデータセットのヘッダに基づき識別される。
したがって、輻輳状態が発生した場合、ATMスイッチでは、終端装置2やDSLAM3でCLP識別子に「1」が設定された高優先廃棄クラスのATMセルが優先的に廃棄され、CLP識別子に「0」が設定された高優先転送クラスのATMセルが優先的に転送される。
【0046】
次に、図8を参照して、BAS5について詳細に説明する。図8は、BAS5の機能ブロック図である。
このBAS5には、機能ブロックとして、ATM処理部51、PPPoE処理部52、および転送処理部53が設けられている。
ATM処理部51は、広帯域通信回線4Aを介してATMスイッチ4から受信したATMセルを、AAL5に基づいて各セッションフローごとに元のPPPoEへ組み上げる。
【0047】
PPPoE処理部52は、ユーザデータの送信に先立って、高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンク6A,PPPoEリンク6Bを、終端装置2のPPPoE処理部23との間で並列的に確立するとともに、ATM処理部51から入力されたPPPoEパケットのPPPoEヘッダを除去し、ユーザデータを抽出する。
転送処理部53は、PPPoE処理部52で抽出されたユーザデータをIPパケットとしてISP網7へ送信する。
【0048】
このように、本実施の形態では、終端装置で、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した2つのPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、DSLAMで、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信するようにしたものである。
【0049】
そして、ATMスイッチで、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するようにしたものである。
したがって、ATMスイッチ4での輻輳廃棄制御は、ATMレイヤで行うことができ、本実施の形態によれば、従来のようにATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要がなくなる。これにより、輻輳廃棄制御に起因するトラフィック遅延やスループット低下を回避できる。
【0050】
また、ATMスイッチから構成されるATM網が予め有する優先廃棄制御機能を利用して、セッションフローごとに要求されるユーザデータに対する通信品質をそのCLP識別子に対応付けることにより、利用者に対して所望の通信品質を提供するようにしたので、終端装置でATMセルのCLP識別子として1ビットの情報を制御するという処理で実現できる。
これにより、データ通信システムを構成する既存のDSLAMやATMスイッチで大幅な実装変更をする必要がなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供でき、極めて効果的なQoS制御を実現できる。
【0051】
次に、図9および図10を参照して、本実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの動作について説明する。図9はデジタル加入者回線用データ通信システムの動作を示すシーケンス図である。図10はデジタル加入者回線用データ通信システムのプロトコルスタックを示す説明図である。
まず、終端装置2では、ユーザデータの送信に先立ってBAS5との間で、高優先転送クラスフロー用のPPPoEリンク6Aと高優先廃棄クラスフロー用のPPPoEリンク6Bとを確立する(ステップ100,101)。
PPPoEリンクを確立する手順については、例えば図11に示すように、一般的な公知の技術に基づくものであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0052】
その後、終端装置2では、通信端末1からのユーザデータの受信に応じて(ステップ110)、そのユーザデータを高優先転送クラスまたは高優先廃棄クラスのいずれかに分類し、それぞれ対応するPPPoEリンク6A,6BのPPPoEパケットとしてパケット化し(ステップ111)、そのPPPoEパケットをATMセル化する(ステップ112)。
その際、各ATMセルの通信品質クラスを確認し(ステップ113)、高優先転送クラスのATMセルについてはそのCLP識別子を「0」に設定し(ステップ114)、高優先廃棄クラスのATMセルについてはそのCLP識別子を「1」に設定する(ステップ115)。そして、デジタル加入者回線2Aを介してDSLAM3へATMセルを送信する(ステップ116)。
【0053】
DSLAM3では、終端装置2からのATMセルを受信し、そのATMセルをQoS保証契約の有無に基づき契約ユーザクラスと非契約ユーザクラスとにクラス分けする(ステップ120)。そして、QoS保証契約をしていない非契約ユーザクラスのATMセルについてのみ、そのCLP識別子を高優先廃棄クラスを示す「1」に書き換える(ステップ121)。
そして、これらATMセルを広帯域通信回線3Aを介してATMスイッチ4へ送信する(ステップ122)。
【0054】
ATMスイッチ4では、広帯域通信回線3Aを介してDSLAM3からのATMセルを受信し、これらATMセルを広帯域通信回線4Aを介してBAS5へ送信する(ステップ133)。
この際、ATMスイッチ4で輻輳状態となった場合は、各ATMセルのCLP識別子を確認し(ステップ130)、CLP識別子が「0」のATMセルについては高優先転送制御を行い(ステップ131)、CLP識別子が「1」のATMセルについては高優先廃棄制御を行う(ステップ132)。
BAS5では、ATMスイッチ4からのATMセルを受信し、これらATMセルをPPPoEパケット化し(ステップ140)、さらにIPパケット化し(ステップ141)、得られたIPパケットをISP網7へ送信する(ステップ142)。
【0055】
したがって、図10のプロトコルスタックに示されているように、ATMスイッチ4では、物理レイヤを介してATMセルを受信し、ATMレイヤを介して物理レイヤから送信される。そして、輻輳状態の場合にはATMレイヤでCLP識別子が「1」の高優先廃棄クラスのAMTセルが優先的に廃棄される。
このため、従来のようにATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要がなくなる。これにより、本実施の形態によれば、トラフィック遅延やスループット低下を招くことなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供できる。
【0056】
なお、以上では、一般的なADSL(Asymmetric DSL:非対称型デジタル加入者回線)を介して、インターネットへのアクセスサービスを提供する際に用いられるデータ通信システムを例として説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、各種デジタル加入者回線を用いる場合、あるいは他のネットワークへのアクセスを実現する場合など、ユーザデータを所定通信区間でATMセル化して転送するデータ通信システムであれば、前述と同様に本実施の形態を適用でき、同様の作用効果が得られる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、終端装置で、ユーザデータの送信に先立ってアクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、ユーザデータをそのセッションフローに基づき通信品質クラスのいずれかに分類し、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、デジタル加入者回線集線装置で、終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信するようにしたものである。
【0058】
そして、ATMスイッチで、輻輳が発生した際、ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄するようにしたものである。
したがって、ATMスイッチ4での輻輳廃棄制御は、ATMレイヤで行うことができ、本実施の形態によれば、従来のようにATMスイッチにおいて、ATMセルをAAL5のデータユニットまで一旦組み上げ、その後また元のATMセルへセル化する必要がなくなる。これにより、輻輳廃棄制御に起因するトラフィック遅延やスループット低下を回避できる。
【0059】
また、ATMスイッチから構成されるATM網が予め有する優先廃棄制御機能を利用して、セッションフローごとに要求されるユーザデータに対する通信品質をそのCLP識別子に対応付けることにより、利用者に対して所望の通信品質を提供するようにしたので、終端装置でATMセルのCLP識別子として1ビットの情報を制御するという処理で実現でき、データ通信システムを構成する既存のDSLAMやATMスイッチで大幅な実装変更をする必要がなく、低い実装コストでセッションフローごとに所望の通信品質を提供でき、極めて効果的なQoS制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】終端装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】IPヘッダの構成例を示すデータグラムである。
【図4】PPPoEパケットの構成例を示すデータグラムである。
【図5】ATMセルの構成例を示すデータグラムである。
【図6】デジタル加入者回線集線装置(DSLAM)の構成例を示す機能ブロック図である。
【図7】ATMスイッチの構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】アクセスサーバ(BAS)の構成例を示す機能ブロック図である。
【図9】本実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図10】本実施の形態にかかるデジタル加入者回線用データ通信システムのプロトコルスタックである。
【図11】一般的なPPPoEリンクの確立手順例を示すシーケンス図である。
【図12】一般的なデジタル加入者回線用データ通信システムの構成を示すブロック図である。
【図13】AAL5におけるデータユニットのマッピング例である。
【図14】従来のATMスイッチの構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
1…通信端末、2…終端装置、21…フロー識別部、22…クラス分類部、23…PPPoE処理部、24…ATMドライバ、3…デジタル加入者回線集線装置(DSLAM)、31…入力バッファ、32…クラス分離部、33…CLP識別子書換部、34…出力バッファ、4…ATMスイッチ、41…入力バッファ、42…出力バッファ、43…輻輳制御部、5…アクセスサーバ(BAS)、51…ATM処理部、52…PPPoE処理部、53…転送処理部、6A…PPPoEリンク(高優先転送クラスフロー用)、6B…PPPoEリンク(高優先廃棄クラスフロー用)、7…ISP網、8…インターネット、200…PPPoEセッションヘッダ、201…セッションID、210…ATMセルヘッダ、211…CLP識別子。
Claims (5)
- 通信端末を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線を終端制御し、通信端末からのユーザデータをパケット化した後ATMセル化し、前記デジタル加入者回線を介して網側へ送信する終端装置と、
デジタル加入者回線を介して複数の終端装置を収容し、これら終端装置からのATMセルを広帯域通信回線を介して網側へ送信するデジタル加入者回線集線装置と、
広帯域通信回線を介して複数のデジタル加入者回線集線装置を収容し、これらデジタル加入者回線集線装置からのATMセルを網側へ送信するとともに、輻輳発生時には各ATMセルのCLP識別子の内容に基づき当該ATMセルの高優先転送/廃棄制御を行うATMスイッチと、
前記ATMスイッチを収容するとともに前記パケット通信網と接続され、前記ATMスイッチからのATMセルを通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとにパケット化して前記パケット通信網へ送信するアクセスサーバとを備え、
デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムであって、
前記終端装置は、ユーザデータの送信に先立って前記アクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、前記ユーザデータをそのセッションフローに基づき前記通信品質クラスのいずれかに分類し、前記高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、前記高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、
前記デジタル加入者回線集線装置は、前記終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信し、
前記ATMスイッチは、輻輳が発生した際、前記ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄することを特徴とするデジタル加入者回線用データ通信システム。 - 通信端末を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線を終端制御し、通信端末からのユーザデータをパケット化した後ATMセル化し、前記デジタル加入者回線を介して網側へ送信する終端装置と、
デジタル加入者回線を介して複数の終端装置を収容し、これら終端装置からのATMセルを広帯域通信回線を介して網側へ送信するデジタル加入者回線集線装置と、
広帯域通信回線を介して複数のデジタル加入者回線集線装置を収容し、これらデジタル加入者回線集線装置からのATMセルを網側へ送信するとともに、輻輳発生時には各ATMセルのCLP識別子の内容に基づき当該ATMセルの高優先転送/廃棄制御を行うATMスイッチと、
前記ATMスイッチを収容するとともに前記パケット通信網と接続され、前記ATMスイッチからのATMセルを通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとにパケット化して前記パケット通信網へ送信するアクセスサーバとを備え、
デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるデジタル加入者回線用データ通信制御方法であって、
前記終端装置で、ユーザデータの送信に先立って前記アクセスサーバとの間で高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立し、前記ユーザデータをそのセッションフローに基づき前記通信品質クラスのいずれかに分類し、前記高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、前記高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信し、
前記デジタル加入者回線集線装置で、前記終端装置からのATMセルがQoS保証契約に基づくものでない場合は当該ATMセルのCLP識別子を強制的に「1」に設定して送信し、
前記ATMスイッチで、輻輳が発生した際、前記ATMスイッチから受信したATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄することを特徴とするデジタル加入者回線用データ通信制御方法。 - 通信端末を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線を終端制御し、通信端末からのユーザデータをパケット化した後ATMセル化し、前記デジタル加入者回線を介して網側へ送信する終端装置と、
デジタル加入者回線を介して複数の終端装置を収容し、これら終端装置からのATMセルを広帯域通信回線を介して網側へ送信するデジタル加入者回線集線装置と、
広帯域通信回線を介して複数のデジタル加入者回線集線装置を収容し、これらデジタル加入者回線集線装置からのATMセルを網側へ送信するとともに、輻輳発生時には各ATMセルのCLP識別子の内容に基づき当該ATMセルの高優先転送/廃棄制御を行うATMスイッチと、
前記ATMスイッチを収容するとともに前記パケット通信網と接続され、前記ATMスイッチからのATMセルを通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとにパケット化して前記パケット通信網へ送信するアクセスサーバとを備え、
デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられる終端装置であって、
前記ユーザデータをそのセッションフローに基づき高優先転送クラスおよび高優先廃棄クラスからなる2つの通信品質クラスのいずれかに分類するクラス分類部と、
前記ユーザデータの送信に先立って前記アクセスサーバとの間で前記通信品質クラスにそれぞれ対応した第1および第2のPPPoEリンクを並列的に確立するととともに、前記ユーザデータをPPPoEに基づきパケット化するPPPoE処理部と、
このPPPoE処理部からのパケットをATMセル化し、そのうち前記高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「0」に設定して送信し、前記高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成したATMセルのCLP識別子を「1」に設定して送信するATMドライバとを備えることを特徴とする終端装置。 - 通信端末を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線を終端制御し、通信端末からのユーザデータをパケット化した後ATMセル化し、前記デジタル加入者回線を介して網側へ送信する終端装置と、
デジタル加入者回線を介して複数の終端装置を収容し、これら終端装置からのATMセルを広帯域通信回線を介して網側へ送信するデジタル加入者回線集線装置と、
広帯域通信回線を介して複数のデジタル加入者回線集線装置を収容し、これらデジタル加入者回線集線装置からのATMセルを網側へ送信するとともに、輻輳発生時には各ATMセルのCLP識別子の内容に基づき当該ATMセルの高優先転送/廃棄制御を行うATMスイッチと、
前記ATMスイッチを収容するとともに前記パケット通信網と接続され、前記ATMスイッチからのATMセルを通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとにパケット化して前記パケット通信網へ送信するアクセスサーバとを備え、
デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるデジタル加入者回線集線装置であって、
前記終端装置から受信した、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子を「0」に設定されたATMセルと、前記高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子を「1」に設定されたATMセルとを、QoS保証契約の有無に基づきそれぞれのクラスに分類するクラス分類部と、
このクラス分類部でQoS保証契約無しのクラスに分類されたATMセルは当該CLP識別子を強制的に「1」に設定して送信し、QoS保証契約有りのクラスに分類されたATMセルは当該CLP識別子の内容を維持して送信するCLP識別子書換部とを備えることを特徴とするデジタル加入者回線集線装置。 - 通信端末を収容するとともに網側からのデジタル加入者回線を終端制御し、通信端末からのユーザデータをパケット化した後ATMセル化し、前記デジタル加入者回線を介して網側へ送信する終端装置と、
デジタル加入者回線を介して複数の終端装置を収容し、これら終端装置からのATMセルを広帯域通信回線を介して網側へ送信するデジタル加入者回線集線装置と、
広帯域通信回線を介して複数のデジタル加入者回線集線装置を収容し、これらデジタル加入者回線集線装置からのATMセルを網側へ送信するとともに、輻輳発生時には各ATMセルのCLP識別子の内容に基づき当該ATMセルの高優先転送/廃棄制御を行うATMスイッチと、
前記ATMスイッチを収容するとともに前記パケット通信網と接続され、前記ATMスイッチからのATMセルを通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとにパケット化して前記パケット通信網へ送信するアクセスサーバとを備え、
デジタル加入者回線を介してパケット通信網へアクセスする通信端末に対して、当該通信端末から送信されるユーザデータのセッションフローごとに所望の通信品質を提供するデジタル加入者回線用データ通信システムで用いられるATMスイッチであって、
前記ATMスイッチから受信した、高優先転送クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子が「0」に設定されたATMセルと、前記高優先廃棄クラスに分類されたユーザデータから生成され当該CLP識別子が「1」に設定されたATMセルとを一時的に保持し、順次前記アクセスサーバへ送信する出力バッファと、
自装置内で輻輳が発生した際、前記出力バッファで保持しているATMセルのうち、当該CLP識別子が「0」のATMセルを優先的に転送し、当該CLP識別子が「1」のATMセルを優先的に廃棄する輻輳制御部とを備えることを特徴とするATMスイッチ。
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