JP2004317318A - 紫外線測定法、及び紫外線測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】紫外線受光素子によって測定された実測値し(ステップ100)、当該実測値を、紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線と前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値に基づき補正し、特定の紫外線情報を求める(ステップ102)。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生活環境に存在する紫外線を容易に測定し、例えば、人体に直接作用する紫外線量などの特定の紫外線情報を取得することが可能な紫外線測定方法、及び紫外線測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球の環境問題の最大の問題の一つとして、オゾン層の破壊による地上での紫外線量が増加していることが挙げられる。このような紫外線は皮膚ガンの発生やDNAの損傷による光過敏症の増大、光老化などの健康に重大な影響を及ぼすほか、しみやそばかすなどの美容上の問題となる肌への影響が大きい。
【0003】
このため生活環境における紫外線の測定は美容や医療などで必要性が増してきた。
【0004】
これに対して、紫外線量の測定には専用の紫外線検量装置を必要とし、またこのような専用のUV測定装置を身につけることは面倒であり、このような点からも紫外線を簡単に測定することは従来できなかった。
【0005】
紫外線の生体に及ぼす影響はいろいろある。このため測定する紫外線が何を意味するのかによって紫外線量としてはいろいろな表示方法がある。紫外線全体量(290〜400nm)を示す方法、UVA領域(320〜400nm)のみ感度をもつ紫外線センサーを用いて測定する方法、さらにUVB領域(290〜320nm)にのみ感度を有する紫外線センサーを用いる方法などである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの紫外線を測定する紫外線センサーは、例えば、皮膚の日焼け症状を発生させる紅斑曲線に合致した特性では無いし、定義波長領域でデルタ関数的に切り出した測定値ではなく、特定の分光感度曲線の中で代表的な波長での感度で校正されているものである。この紅斑曲線から求められた指標はUV指数と呼ばれている。
【0007】
UV指数は正午前後の1時間の紫外線に対して紅斑曲線の重みをかけたエネルギー量である。一般にUV指数は太陽紫外線から10数段階に定量的に区分けされるが、人の感覚に合わせた言葉表現で5段階に区分されている。
【0008】
UV指数はUVB領域の波長毎に重みを付けて求められる。したがって、分光照度から求める以外には正確な値は求められず、大型の測定器によるしかなく手軽に測定できなかった。また、紅斑紫外線に合わせた分光感度の測定器では逆にUVAなどの紫外線が測定できず、しみそばかすなどの美容などに大きな影響を及ぼす窓越しの紫外線に対する注意ができなくなるなどの問題があった。
【0009】
このように、特定の紫外線情報を簡易に測定できる方法がないのが現状であり、改善が求められている。
【0010】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、予め分光特性のわかった紫外線受光素子の実測値から、特定の作用曲線に対する特定の紫外線情報を手軽にかつ簡便に常時測定することを可能とし、同時に紫外線全量も測定できる紫外線測定方法、及び紫外線測定装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
本発明の紫外線測定方法は、特定の分光感度を持つ紫外線受光素子を用いた紫外線測定方法であって、
前記紫外線受光素子によって測定された実測値を、前記紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線による前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値に基づき補正し、特定の紫外線情報を求めることを特徴とする。
【0012】
本発明の紫外線測定方法では、地上の紫外線の割合が天気に多く影響されないことに基づき、紫外線受光素子によって測定し、例えば、上記実測値を上記全体領域の予測値と特定領域の予測値との比を掛けて補正を行う。このため、簡易に且つ簡易な構成で、天候に関わらず、実測値の中から特定の紫外線情報を取得し、同時に紫外線の全量も取得することができる。
【0013】
本発明の紫外線測定方法においては、さらに、太陽高度情報に基づき特定の紫外線情報を補正することがよい。また、本発明の紫外線測定方法においては、太陽高度情報は、緯度情報と日時情報とに基づき求めることがよい。
【0014】
太陽の高度によっては、成層圏を透過した紫外線の波長分布は、オゾン層の透過距離が異なるため、太陽高度情報に基づき特定の紫外線情報を補正することで、任意の太陽高度での紫外線情報を取得することができる。このため、天気に関わらず、場所、日時に応じた、特定の紫外線情報を取得することができる。
【0015】
本発明の紫外線測定方法においては、作用曲線が紅斑曲線であることがよい。これにより、人体に直接作用する紫外線量を取得することができる。なお、作用曲線としては、紅斑曲線の他に、例えば、DNAに影響を及ぼす作用曲線など紫外線が影響を及ぼす任意の作用曲線を選択することができる。
【0016】
一方、本発明の紫外線測定装置は、
特定の分光感度を持つ紫外線受光素子と、
前記紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線と前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値を記憶した記憶手段と、
前記紫外線受光素子によって測定された実測値を、前記紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線と前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値に基づき補正して、特定の紫外線情報を求める補正手段と、
を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の紫外線測定装置においては、さらに、太陽高度情報を取得するための太陽高度情報取得手段を有することができる。また、太陽高度情報として、緯度情報及び日時情報を取得することができる。また、前記特定の作用曲線を、紅斑曲線とすることができる。
【0018】
本発明の紫外線測定装置では、上述のように、予め分光特性のわかった紫外線受光素子の実測値から、特定の作用曲線に対する特定の紫外線情報を手軽にかつ簡便に常時測定することを可能とし、同時に紫外線全量も測定できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
地上に到達する太陽光の紫外線(太陽紫外線)は酸素の吸収のため、200nmよりも長波長となる。さらに成層圏オゾンによる吸収は360nmから300nmに亘っている。このなかで320nm以下のオゾンの吸収は強く320nm以下の紫外線はUVBと呼ばれ、400〜320nmをUVAと呼ばれる。
【0020】
太陽紫外線においては、同一の日時であれば天候によらずほぼUVBとUBAの比は一定であるとの報告がある。UVB量は上空の成層圏のオゾン層を横切る吸収によって決まる。そのため地上の紫外線は波長範囲が狭いため散乱や反射の波長による違いは無視でき、天気によって多く影響されないと考えられる。
【0021】
したがって、あらかじめ分光感度特性(例えば200nm〜700nm )の分かっている紫外線素子による実測値(対流圏下)に対して、必要な領域で各波長に対する重み付けをして太陽光スペクトルから求めた紫外線の全体領域の予測値と当該全体領域の予測値の特定領域における特定領域の予測値との比で補正することによって特定領域の紫外線情報を求めることができる。つまり、例えば、特定領域における特定領域の予測値を、紅斑曲線による予測値(紅斑紫外線予測量)とした場合、測定した実測値から紅斑紫外線量を推定し、UV指数を求めることができる。
【0022】
なお、UV指数は、太陽スペクトルに紫外線受光素子の分光特性をかけてもとめた紫外線強度と、当該測定紫外線強度にさらに紅斑曲線を重みとしてかけた紫外線強度と実際の測定値とから求めることができる。
【0023】
次に、実測値UV0から特定の紫外線測定値(特定の紫外線情報)UV(λ)を求める補正についてさらに詳しく説明する。
【0024】
まず、求める特定の作用曲線を持つ領域の特定の紫外線測定値UV(λ)は、
UV(λ)=ΣF(λ)S(λ)R(λ)・・・式(1)
で求められる。
ここで、Fは重み(たとえば紅斑曲線)、Sは紫外受光素子の分光感度、Rは太陽の分光放射強度を示す。
【0025】
このため、紫外線受光素子の分光感度と太陽スペクトルから予測される全体領域の予測値UV1は、F(λ)=1として
UV1=ΣS(λ)R(λ)・・・式(2)
で表される。
【0026】
また、特定の作用曲線と紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値UVFは、
UVF=ΣF(λ)S(λ)R(λ)・・・式(3)
で表される。
【0027】
そして、実測値を、全体領域の予測値UV1と特定領域の予測値UVFとの比で補正することで、紫外線測定値UV(λ)は、
UV(λ)=実測値×(UVF/UV1)=実測値×(ΣF(λ)S(λ)R(λ)/ΣS(λ)R(λ))・・・式(4)
で求められる。
【0028】
このため、紅斑曲線と分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される予測値UVE(紅斑紫外線予測値UVE)は、
UVE=ΣE(λ)S(λ)R(λ)・・・式(5)
表され(ここで、E(λ)は、紅斑曲線による重みを示す。)、
【0029】
そして、実測値を、全体領域の予測値UV1と紅斑紫外線予測値UVEとの比で補正することで、紅斑紫外線量Eは、
E=実測値×(UVE/UV1)=実測値×(ΣE(λ)S(λ)R(λ)/ΣS(λ)R(λ))・・・式(6)
で求められる。
【0030】
このとき、R(λ)が夏の分光放射照度に基づくものであればほぼ夏の紅斑紫外線量に対応する。この関係は天気が晴れ以外の曇りや雨でもこの関係は成立する。
【0031】
次に、特定の紫外線測定値UV(λ)としての紅斑紫外線量Eに対する太陽高度による補正について説明する。
【0032】
−太陽高度とオゾン層の透過距離−
320nmより短波長の紫外線と320nmより長波長の紫外線強度の比は成層圏のオゾン層を横切る吸収長つまり、太陽高度つまり月日による南中高度と日周運動による太陽高度から求められる吸収長により求められる。
【0033】
したがって、オゾン濃度が一定とすれば日時と場所(緯度)がわかれば太陽高度が決定でき、オゾン層の透過距離を推定できる。
【0034】
例えば、東京の場合、分光放射照度から求めた夏の南中近くでのUVB/UVと冬のUVB/UVの比は直達の場合には5.5%と3%である。朝は太陽高度が低いため短波長紫外線が少なくなり、UVB/UV比は夏でも1%程度になる。したがってUV全量から日時を規定すればUVB量は推定できる。
【0035】
一方、紅斑紫外線量はUVBよりさらに短波長側となりその比の変化は大きくなる。この紅斑紫外線量は大気の透過距離による減衰を求めることによって推定することができる。太陽からの紫外線が成層圏でのオゾンによる吸収により減衰し、対流圏の大気状態で吸収・散乱・反射などの影響を受ける。雲による散乱の波長依存性は空気分子による散乱(レーリー散乱)と異なり、波長依存性がほとんどない(Mie散乱)。
【0036】
このときの紫外線全量はおおよそ紫外線全域を測定する紫外線測定素子による実測値UV0で表すことができる。例えば曇りや雨の日でも、全紫外線強度を求めれば、その中に含まれる320nmより短波長の紫外線強度は時間と位置を表す緯度で決まる太陽高度から求めることができる。つまり、太陽高度からオゾン層の透過距離が求めれ、波長での減衰が分かり任意の太陽高度での紅斑紫外線量を求めることができる。
【0037】
なお、波長による減衰の定数をあらかじめ知っていれば実測値と太陽高度の関係から紅斑紫外線量にかぎらず特定の紫外線量(特定の紫外線情報)を推定することができる。
【0038】
例えば、図1に示す紅斑曲線に対する紅斑紫外線量は一般的に、UV指数が1時間の積算であることから、
紅斑紫外線量=紅斑曲線×太陽紫外線分光照度×3600秒・・・式(7)
で表される。
【0039】
従って、任意の太陽高度での紅斑紫外線量
紅斑紫外線量=太陽高度補正係数×実測値を補正して求められた紅斑紫外線量・・・式(8)
で求められる。ここで、太陽高度補正係数=定数×紅斑係数(太陽高度)である。
【0040】
このため、測定者の生活地域(緯度情報)と日時により、太陽紫外線実測値(紫外線全量)から紅斑紫外線量が求められ、UV指数も求めることができる。なお、日本でのオゾン濃度の変動は年間でプラスマイナス10%程度ある。
【0041】
−太陽高度の計算−
太陽高度(天頂角Z)は、
cosZ=cosD’cosL’+sinD’sinL’cosH・・・式(9)
で求められる。
【0042】
ここで、L’は、観測者の余緯度(緯度Lの余角)、D’は極距離角(赤緯Dの余角)、Hは時角である。
【0043】
また、極距離角D’は、
cosD’=sin23.5°sinα・・・式(10)
で求められる。
【0044】
ここで、α=対象日の地球−太陽間を結ぶ線とその年の春分点での地球−太陽間を結ぶ線とのなす角であり、α=n360°/365.25(nは春分から数えた日数である)である。
【0045】
また、時角Hは、
H=±360°t/24時間・・・式(11)
で求められる。ここで、tは南中時からの時間。負は南中前を表す。
【0046】
なお、これらの情報は、日時は日付と時間の時計機能から入手することができるし、位置情報は限られた生活地域の場合には予め設定された緯度を入力すればよいし、また人工衛星による位置測定装置により随時知ることができる。
【0047】
−太陽高度補正係数C(太陽高度に対するオゾン吸収の影響)の計算−
まず、大気透過距離x(θ)は、太陽高度θ(仰角)、地球の半径r0(6400km),オゾン層の上限の高さr2,オゾン層の下限の高さr1とすると、
x(θ)=−r0sin(θ)+√(r0sin(θ))2+(r2 2+2r2r0)−(−r0sin(θ)+√(r0sin(θ))2+(r1 2+2r1r0))・・・式(12)
で表される。
【0048】
太陽高度の関数として透過距離は、r1=20km,r2=40kmとすると、例えば、x(80°)=20.3km、x(30°)=39.47km、x(15°)= 72.75km、x(0°)=210.3km、となる。
【0049】
透過距離から吸収による減衰量は一般に、
I=I0exp(−kx(θ))(ここでkは吸収係数)・・・式(13)
となるから、
【0050】
全UVの散乱吸収係数をk(λ)、UVB領域のオゾン層での吸収係数をk(λb)(UVBのほかの層での吸収係数は全UVと同じとする。)、成層圏への入射強度を全UV:I0(θ)、UVb:Ib0(θ)とすると、
【0051】
Ib(θ)=Ib0exp(−k(λb)x(θ))×exp(−k(λ)x(θ))・・・式(14)
I(θ)=I0exp(−k(λ)x(θ))・・・式(15)
であり、
【0052】
太陽高度によるUVBとUVの比は、
C=Ib(θ)/I(θ)=(Ib0/I0)exp(−k(λb)x(θ))・・・式(16)
で表され、
【0053】
太陽高度に対するオゾン吸収の影響(オゾンによる吸収効果比)、即ち太陽高度補正係数Cが求められ、紅斑紫外線量Eに対して太陽高度による補正を行うことができる。
【0054】
ここで(Ib0/I0)とk(λb)は、太陽高度の異なる太陽分光放射照度の測定値を比較することによっても求めることができる。
【0055】
以下、実測値から紅斑紫外線量Eを求め、UV指数を求める一例を具体的に示と共に、紅斑紫外線量Eに対する太陽高度による補正の一例も具体的に示す。
【0056】
ここで、多結晶窒化ガリウム半導体による紫外線測素子(富士ゼロックス製UVケアメイトに備えられた紫外線測素子)を使用して太陽紫外線を測定して実測値UV0を求めている。この紫外線測定の分光感度は校正された光源を用いて測定している(図1及び図2参照)。また、夏の太陽スペクトルを浜松ホトニクス社製の分光測定器MP11を用いて290nmから500nmまで測定している(図1及び図2参照)。
【0057】
まず、図1及び図2から、上記式(2)及び式(5)に基づき、紫外線測定装置(素子)の分光感度と太陽スペクトルから予測される予測値UV1と、紅斑紫外線量の予測値UVEとの比は、UVE/UV1=0.006と求められる。
【0058】
そして、実測値UV1に対し、UVE/UV1により補正し、紅斑紫外線強度Eを、上記式(12)に基づき求め、この紅斑紫外線強度Eを1時間の紫外線量として換算すると、UV0が5000μW/cm2の時には108mJ/cm2であり、この結果UV指数としては11であることが求められる。
【0059】
次に、紅斑紫外線量Eに対して、太陽高度情報による補正を行う。ここで、夏と冬のUVB/UV比は、紅斑曲線に多く含まれる波長範囲310〜300nmのUVBで、電総研田無市水平データを使用した。UVは300〜400nm全体の照度を用いる。
【0060】
夏至付近(75°1979 6.23)では、
Ib(75)=Ib0exp(−k(λb)x(75))×exp(−k(λ)x(75))・・・式(17)
I(75)=I0exp(−k(λ)x(70))・・・式(18)
Ib(75)/I(75)=0.0132=(Ib0/I0)exp(−k(λb)x(75))・・・式(19)
と表される。
【0061】
冬至付近(30°1979 12.22)では、
Ib(30)=Ib0exp(−k(λb)x(30))×exp(−k(λ)x(30))・・・式(20)
I(30)=I0exp(−k(λ)x(30))・・・式(21)
Ib(30)/I(30)=0.0048=(Ib0/I0)exp(−k(λb)x(30))・・・式(22)
と表される。
【0062】
次に、75°の透過距離と30°の透過距離は
ln(0.0132/0.0048)=(−k(λb)(x(75)−x(30))・・・式(23)
により求める。
【0063】
これらから、UVB領域のオゾン層での吸収係数k(λb)は、
−k(λb)=ln(0.0132/0.0048)/(x(75)−x(30))=1.0116/(−18.8km)=−0.0538/km・・・式(24)
と求められる。
【0064】
さらに、Ib0/I0は、
Ib0/I0=0.0132/exp(−k(λb)x(75))=0.0132/exp(−0.0538×20.7)=0.0402・・・式(25)
と求められる。
【0065】
これは、成層圏の外では300〜310nmのUVBは、全紫外線に対して4%あることを示している。
【0066】
この結果、任意の太陽高度θでのUVBとUVの比は、
C=Ib(θ)/I(θ)=(0.0402)exp(−0.0538×x(θ))・・・式(26)
で表される。
【0067】
次に、オゾン層透過距離x(θ)は、太陽高度θ(仰角)に対して、地球の半径r0を6400km、オゾン層の上限の高さr2を40km、オゾン層の下限の高さr1を20kmとすると、上記式(12)に基づき、南中高度75°の時点での実測値UV0から求めたその日の紅斑紫外線量Eに対して、例えば、太陽高度30°では透過距離が40kmであるため太陽高度補正係数Cは0.49であり、太陽高度50°では透過距離が26kmであるため太陽高度補正係数Cは0.8となる。
【0068】
このため、同じ観測日で太陽高度が30°の時間であれば実測値UV1×0.006(UVE/UV1)×0.36と求まる。例えば、観測値が5000μWの時のUV指数は4となる。
【0069】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照してさらに詳細に説明する。なお、実質的に同様の機能を有するものには、全図面通して同じ符号を付して説明し、場合によってはその説明を省略することがある。
【0070】
図2は、本発明の実施の形態に係る紫外線測定装置の構成を示す概略構成図である。
【0071】
本実施形態の紫外線測定装置10は、各種情報を表示するための液晶ディスプレイ16(表示手段)と、紫外線の物理量として紫外線情報を検知する紫外線受光素子18と、当該紫外線測定装置10のユーザからの各種情報を入力するための操作パネル20(操作手段:例えば、電源スイッチ、モード切換スイッチ、設定スイッチなど)と、当該紫外線測定装置10によって測定された紫外線強度を示す紫外線情報の出力及び図示しない情報端末装置からの各種情報の入力を可能とするデータ入出力端子22と、を含んで構成されている。
【0072】
紫外線受光素子18としては、可視域に感度があるGaPやSiなどのフォトダイオードなどをフィルターで可視部をカットした紫外線受光素子を用いることができるし、酸化チタンや酸化亜鉛などの酸化物半導体で構成される紫外線受光素子を用いることもできる。紫外線受光素子18としては、光応答が速く、吸収域を組成によって調整でき、表示部に余分なスペースを必要としない小型で薄型などの点や色などのデザイン性に優れた窒化物系化合物半導体で構成された紫外線受光素子が特に望ましい。
【0073】
ただし、本実施形態では、太陽紫外線では散乱の寄与が大きいため、紫外線受光素子18は入射角特性が余弦則に合ったものが望ましい。これは、散乱係数はレーリーの法則で表されるために、散乱係数=定数/(波長)4で表され、快晴時に340nmと300nmでは後者で1.7倍となり、500nmと比べると紫外線は5倍から8倍の散乱係数を持ち散乱の影響が大きくなるからである。
【0074】
液晶ディスプレイ16には、セイコーエプソン株式会社の表示モジュールであるSEK1054Bを適用している。この表示モジュールは、ドットマトリクス型の液晶表示モジュールであり、96ドット×32ドットの表示面に任意の情報を表示することができ、文字やグラフ等の表示が可能であるり、例えば、測定後その場で簡単なグラフを表示することができ、図示しない外部入出力装置にデータを出力することなく直感的に照度分布等を確認することができる。表示手段には、これに限らず、他の液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等のあらゆるディスプレイを適用することができる。
【0075】
一方、紫外線測定装置10には、内部回路32が備えられている。内部回路32は、紫外線測定装置10全体の動作を司るCPU34(中央演算処理装置:補正手段)、各種情報を記憶するためのメモリ38(記憶手段)、入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換して出力するアナログ/デジタル変換器40(以下、「A/D変換器」という)、入力されたアナログ信号を増幅する増幅回路42、内部回路32の各部に駆動用電力を供給する充電式電池44、及び充電式電池44を充電するときその電圧などを制御するための電源制御回路46を含んで構成されている。なお、同図では錯綜を回避するために、充電式電池44から各部への電力供給路を示す接続線は図示を省略している。
【0076】
内部回路32には、太陽高度取得手段として、位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)受信器24と、日付及び時刻を計時するカレンダ/時計36と、を含んで構成されている。
【0077】
CPU34には、GPS受信器24が接続されている。GPS受信器24は、地球上を周回する複数の衛星(一般に4つの衛星)からの電波を受信する不図示のアンテナが内蔵されると共に当該アンテナによって受信し、電波が到達するまでの時間を求め、それから各衛星までの距離を演算することで位置情報(本実施の形態では、緯度の1次元の情報)を取得するものである。このため、CPU34は位置情報を随時知ることができる。
【0078】
CPU34には日付及び時刻を計時するカレンダ/時計36が接続されている。CPU34はカレンダ/時計36によって計時されている日時情報(月、日、時間)を随時知ることができる。なお、カレンダ/時計36をCPU34に内蔵しておき、ソフトウェアで同様の動作を実現してもよい。
【0079】
また、CPU34にはメモリ38が接続されており、CPU34はメモリ38に対する各種情報の書込み及び読出しを行うことができる。更に、CPU34には液晶ディスプレイ16が接続されており、CPU34は液晶ディスプレイ16に対して各種情報を表示することができる。また、CPU34には操作パネル20の各スイッチが接続されており、CPU34は各スイッチのユーザによる押下状態を随時検知することができる。
【0080】
一方、紫外線受光素子18のセンサ出力端子は増幅回路42を介してA/D変換器40の入力端に接続され、A/D変換器40の出力端はCPU34に接続されている。
【0081】
また、CPU34にはデータ入出力端子22が接続されており、CPU34はデータ入出力端子22を介して各種情報の入出力を行うことができる。なお、データ入出力端子22はCPU34への接続以外に、メモリ38にも直接接続されており、紫外線測定装置10はデータ入出力端子22を介して、外部からメモリ38に直接各種情報を書込むことができると共に、メモリ38から外部へ直接各種情報を読み出すことができるように構成されている。また、データ入出力端子22は、充電式電池44にも電源制御回路46を介して接続されており、紫外線測定装置10は電源制御回路46で電圧などを制御し、データ入出力端子22を介して充電式電池44への充電も行なわれる。
【0082】
紫外線測定装置10では、CPU34が常時安定して駆動する必要があり、本実施の形態のように充電式電池44によって駆動させるためには、CPU34として低消費電力でかつ十分な処理能力が得られるものを適用する必要がある。そこで、この必要性に対応すべく、本実施の形態では、CPU34として日立セミコンダクター社製の「H8/3827R」を適用している。この「H8/3827R」は、演算用のプログラム、一次記憶用の揮発性メモリーの他、アナログ/ディジタル変換回路(図中、A/D変換器40に相当)が内蔵されており、これによって部品点数を削減することができ、装置の低コスト化及び小型化の双方を図ることができる。
【0083】
また、メモリ38には、例えば、米国microchip technology社の記憶素子である24LC256を適用することができる。この記憶素子は、小型であるにもかかわらず大容量であるので、紫外線測定装置10を小型化することができる。
【0084】
ここで、紫外線測定装置10におけるメモリ38の記憶内容について説明する。
【0085】
メモリ38には、測定データ(紫外線強度)に関する各種情報を記憶するための部分であるヘッダ部と、実際の測定データを記憶するための部分である測定データ部と、演算用のプログラムを記憶するための部分であるプログラムデータ部と、各種設定値を記憶するための部分である設定値部と、が設けられている。これらプログラムデータ部及び設定値部には、上述した、紅斑紫外線量やUV指数を求める実測値の補正、及び紅斑紫外線量に対する太陽高度情報による補正を行なうための、上記数式(例えば、式(6)、式(8)、式(26)等)に基づく各種演算用プログラム、及び各種設定値(例えば、全体領域の予測値UV1、紅斑紫外線領域の予測値UVE)が記憶されている。
【0086】
なお、本実施の形態では、測定データの外部への漏洩を防止するために測定データに対して所定の暗号化方式にて暗号化を施した後に測定データ部38Cに記憶している。上記ヘッダ部38Aには、このときの暗号化方式を示す情報等が記憶される。なお、暗号化方式は、特に限定されることはなく、種々の技術を適宜選択することができる。
【0087】
次に、図4を参照して、紫外線測定装置10の紫外線の測定時における作用を説明する。なお、図4は、CPU34で実行される紫外線測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0088】
図4のステップ100では、紫外線受光素子18により紫外線測定を行ない、紫外線量の実測値(UV測定値)を取得し、取得した情報(実測値)をメモリ38の測定データ部の未記憶領域に記憶する。そして、ステップ102に移行する。
【0089】
ステップ102では、メモリ38から、ステップ100で取得した情報(実測値UV0)、予め記憶された紫外線受光素子18の分光感度と太陽スペクトルから予測される全体領域の予測値UV1と、予め記憶された紅斑曲線と紫外線受光素子18の分光感度と太陽スペクトルから予測される予測値UVE、を読み出し、上記式(6)に基づき、紅斑紫外線量E(及びUV指数)を求め、取得した情報をメモリ38の測定データ部の未記憶領域に記憶する。
【0090】
そして、ステップ104に移行する。ステップ104では、GPS受信器24から位置情報(緯度情報)取得し、カレンダ/時計36から日時情報(月、日、時間)を取得し、さらにメモリ38からステップ102で取得した情報(紅斑紫外線量E)、上述した任意の太陽高度での紅斑紫外線量を求めるための各種設定値を読み出し、式(26)に基づき太陽高度補正係数を算出し、式(8)に基づき紅斑紫外線量Eを太陽高度補正係数で補正し、任意の太陽高度での紅斑紫外線量(及びUV指数)を求め、取得した情報をメモリ38の測定データ部の未記憶領域に記憶する。そして、処理を終了する。
【0091】
なお、メモリ36に記憶された情報や、取得した情報は、液晶パネルディスプレイ16に表示することができる。
【0092】
本実施形態の紫外線測定装置10は、携帯機器(例えば、時計、携帯電話、携帯電子メール器、携帯ナビケーター、携帯コンピュータ)と一体的に設けたれた形態とすることもできる。
【0093】
この場合、紫外線受光素子18に対しては、電極間に流れる光起電流として取り出すこともできるし、電圧を印加することによって光電流を取出すこともできるが、携帯機器の電力を消費しない観点から、紫外線受光素子18は光起電流型が好ましい。
【0094】
また、本実施形態の紫外線測定装置10では、紫外線受光素子18を携帯機器の表示素子の上に設けられている窓材の裏側に貼りつけるように設置してもよいし、窓材と表示素子面の間に設けてもよい。また、紫外線受光素子18を表示素子面に貼りつけてもよく、また、独自の入射窓を用意した場所に設置してもよい。
【0095】
本実施形態の紫外線測定装置10では、GPS受信器24により位置情報を取得していたが、これに限定されず、予め、任意の位置情報をメモリ38に記憶させておき、ユーザの指定により所望の位置情報を読み出す形態としてもよいし、PHS(Personal Handy−phone System)を利用して位置情報を取得する形態でもよい。
【0096】
なお、上記実施形態は、限定的に解釈されるものではなく、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能であることは、言うまでもない。
【0097】
【発明の効果】
予め分光特性のわかった紫外線受光素子の実測値から、特定の作用曲線に対する特定の紫外線情報を手軽にかつ簡便に常時測定することを可能とし、同時に紫外線全量も測定できる紫外線測定方法、及び紫外線測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る、紫外線受光素子の実測値、分光感度、太陽スペクトル、及び紅斑曲線を示す関係図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る、紫外線波長と相対影響度との関係を示す関係図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る紫外線測定装置の構成を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る紫外線測定装置の紫外線測定処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 紫外線測定装置
16 液晶ディスプレイ
18 紫外線受光素子
20 操作パネル
22 データ入出力端子
24GPS受信器(太陽高度情報取得手段)
32 内部回路
36 カレンダー/時計(太陽高度情報取得手段)
38 メモリ(記憶手段)
Claims (8)
- 特定の分光感度を持つ紫外線受光素子を用いた紫外線測定方法であって、
前記紫外線受光素子によって測定された実測値を、前記紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線と前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値に基づき補正し、特定の紫外線情報を求めることを特徴とする紫外線測定法。 - さらに、太陽高度情報に基づき前記特定の紫外線情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の紫外線測定法。
- 前記太陽高度情報は、緯度情報と日時情報とに基づき求めることを特徴とする請求項2に記載の紫外線測定法。
- 前記特定の作用曲線が、紅斑曲線であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線測定法。
- 特定の分光感度を持つ紫外線受光素子と、
前記紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線と前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値を記憶した記憶手段と、
前記紫外線受光素子によって測定された実測値を、前記紫外線受光素子の分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される全体領域の予測値、及び特定の作用曲線と前記分光感度と太陽分光放射スペクトルとから予測される特定領域の予測値に基づき補正して、特定の紫外線情報を求める補正手段と、を有することを特徴とする紫外線測定装置。 - さらに、太陽高度情報を取得するための太陽高度情報取得手段を有することを特徴とする請求項5に記載の紫外線測定装置。
- 太陽高度情報として、緯度情報及び日時情報を取得することを特徴とする請求項6に記載の紫外線測定装置。
- 前記特定の作用曲線が、紅斑曲線であることを特徴とする請求項5に記載の紫外線測定装置。
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- 2003-04-16 JP JP2003112131A patent/JP2004317318A/ja active Pending
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