【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮着火式内燃機関に係り、特に、燃焼形態の改善により排ガスの清浄化を図った圧縮着火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関、特にディーゼルエンジンに対する環境対応の要請が近年益々高まっており、その排ガスの改善が急務となっている。このため、黒煙などの煤を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)や、NOxを還元浄化するNOx触媒等種々の後処理技術が目覚ましい発展を遂げているが、やはり燃焼形態そのものを改善する方が抜本的対策に繋がり望ましい。
【0003】
通常のディーゼル燃焼は、筒内圧力及び温度が十分高まっている圧縮上死点付近(一般的には10°BTDC〜10°ATDC程度)で単段(1回)の燃料噴射を行い、その燃料を所定の着火遅れ期間を経た後一部着火させ、その後燃料の拡散に応じて燃料の蒸発、空気との混合及び燃焼を進行させ、火炎を順次乱流状態で拡散させながら燃焼を行うという拡散燃焼の形態を採る。
【0004】
一方、近年の排ガスに対するスモークやNOx低減要求の高まりに対しては、様々な改良がなされてきている。NOxの低減にはEGR(Exthaust Gas Recirculation:排気再循環)が有効であることが従来から知られており、広く実現されている。しかし、EGRは排ガスを環流するため、スモークの悪化を回避できない。
【0005】
また、通常燃焼では急激な初期燃焼による筒内圧力の急増が生じ、大きな燃焼騒音が発生する場合がある。そこでこれを防止するため、通常のタイミングで行われるメイン噴射(主噴射)の前に、少量のパイロット噴射を実行するという2段噴射を行うことがある。この場合、パイロット噴射による燃料が着火して火種が作られた後、この火種を基にメイン噴射による燃料が燃焼されるため、急激な初期燃焼及び筒内圧力の急増が抑えられ、燃焼騒音が防止される。なおこのときの燃焼形態は基本的に拡散燃焼と同様である。
【0006】
しかしこのような通常のパイロット・メイン噴射では、パイロット噴射を行うことでスモークが悪化してしまうという問題がある。
【0007】
【非特許文献1】
「自動車技術会論文集(vol.28)」,No.1,1997−1,p.41
【非特許文献2】
「自動車技術会論文集(vol.28)」,No.2,1997−4年,p.29
【特許文献1】
特開2000−310150号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年、これらの技術に対して新たな燃焼システムが提唱されている。
【0009】
一つは、NOxとスモークとの同時低減を目的としたMK(Modulated Kinetics)燃焼と称するものである。これは低温予混合燃焼とも表現できるもので、その概略は以下の通りである。即ち、NOx低減には燃焼温度の低下が有効であるため、これを比較的大量のEGRによって行う。するとスモークの増加が懸念されるが、これは燃料の予混合化で対処する。予混合化には、通常より早期に燃料噴射を行う早期噴射と、通常より遅い時期に燃料噴射を行うリタード噴射との二つの方法があるが、早期噴射は着火時期制御の困難性等問題を抱えていることから、リタード噴射を採用する。まとめていえば、大量EGRとリタード噴射との組み合せによりNOxとスモークとの同時低減を図るのがMK燃焼である。なお参考文献としては非特許文献1及び2等がある。
【0010】
しかしながら、MK燃焼では、圧縮上死点以降で単段噴射を行い、比較的長期の予混合化期間を経て緩やかに着火、燃焼させるため、燃費の悪化を招き易く、また筒内温度が低いため燃焼が不安定であり、失火や白煙を生じやすい。また大量のEGRを実行することが前提となるため、スモークの低減効果も大きく期待できない。
【0011】
一方、特許文献1に示されるように、パイロット噴射を通常より早期のタイミングで行い、メイン噴射を、パイロット噴射無しでは失火するようなタイミングで行うようにするものがある。これはNOxのさらなる低減を狙いとしている。
【0012】
しかし、これはNOx低減には有効であるものの、パイロット噴射による連続的な燃焼がやはりメイン噴射の前に発生し、パイロット噴射による燃焼によりスモークが発生するため、スモークの悪化要因となる。
【0013】
従って、これらの技術では特にスモークの改善が困難であり、今後の厳しい排ガス規制に対処するには必ずしも十分でない。
【0014】
そこで、スモークを低減させるために、メイン噴射の後に比較的小量のポスト噴射を実行することが提案されている。ポスト噴射を行うことによって、燃焼室内における空気余剰領域に燃料が供給されるため、空気の利用度が向上すると共に、ポスト噴射の燃料噴霧エネルギにより乱流が生じるため拡散燃焼が向上し、スモークが低減する。特に、ターボチャージャを備えた内燃機関では、ポスト噴射により排気温度が上昇し、ブースト圧が上昇するため、スモーク低減効果が高い。
【0015】
しかしながら、ポスト噴射は圧縮上死点後の比較的遅いタイミングで燃料を噴射するため、燃料が完全燃焼しずらく、未燃燃料が増加してHC、COが増加してしまうという欠点がある。
【0016】
そこで、以上の問題に鑑みて本発明は創案され、その目的は、パイロット噴射を行い且つ圧縮上死点以降にメイン噴射を行う圧縮着火式内燃機関において、パイロット噴射の量とタイミングとを適正化することによってスモークを抑制し、かつポスト噴射を実行してもHC、COが増加しないようにすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、筒内の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、該燃料噴射弁から噴射される燃料の量とタイミングとをエンジン運転状態に基づき制御するようにした圧縮着火式内燃機関において、圧縮上死点前に上記燃料噴射弁から比較的少量のパイロット噴射を実行させ、その後圧縮上死点以降に上記燃料噴射弁から比較的多量のメイン噴射を実行させるようにし、且つ、上記パイロット噴射における燃料噴射量と燃料噴射タイミングとを、そのパイロット噴射による最大熱発生率が60kJ/s以下になるように設定し、さらに、上記メイン噴射よりも後に上記燃料噴射弁からポスト噴射を実行させるようにしたものである。
【0018】
ここで、上記ポスト噴射における燃料噴射量と燃料噴射タイミングとを、ポスト噴射によって噴射された燃料が、上記メイン噴射によって噴射された燃料の燃焼によって筒内温度が略ピークになるときに燃焼するように設定しても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
図1に本実施形態に係る圧縮着火式内燃機関を示す。ここでいう圧縮着火式内燃機関とは、筒内の燃焼室に噴射された燃料を筒内の圧縮により自己着火させる形式のエンジンをいい、代表的にはディーゼルエンジン、特に本実施形態ではコモンレール式燃料噴射装置を備えたコモンレール式ディーゼルエンジンである。図は便宜上単気筒で示すが、当然多気筒であってもよい。
【0021】
1がエンジン本体で、これはシリンダ(筒)2、シリンダヘッド3、ピストン4、吸気ポート5、排気ポート6、吸気弁7、排気弁8、燃料噴射弁としてのインジェクタ9等から構成される。シリンダ2内に燃焼室10が形成され、燃焼室10内にインジェクタ9から燃料が噴射される。ピストン4の頂部にキャビティ11が形成され、キャビティ11は燃焼室10の一部をなす。キャビティ11は底部中央が隆起したリエントラント型燃焼室の形態をなす。インジェクタ9から噴射される燃料は常にキャビティ11内に到達する。これは燃料がシリンダ2側壁等に付着すると未燃HC排出等の問題が生じるからである。
【0022】
吸気ポート5は吸気管12に、排気ポート6は排気管13にそれぞれ接続される。またこのエンジンにはターボチャージャ14が設けられ、排気エネルギを利用して吸気を過給するようになっている。15がタービン、16がコンプレッサである。コンプレッサ16の上流側に吸気量を検出するための吸気量センサ17が設けられ、コンプレッサ16の下流側に吸気を冷却するためのインタクーラ18が設けられる。ただし、本発明はターボチャージャの無い自然吸気エンジンにも有効であることはいうまでもない。
【0023】
さらにこのエンジンはEGR装置19も具備している。EGR装置19は、吸気管12と排気管13とを結ぶEGR管20と、EGR量を調節するためのEGR弁21と、EGR弁21の上流側にてEGRガスを冷却するEGRクーラ22とを備える。吸気管12においては、EGR管20との接続部の上流側にて吸気を適宜絞るための吸気絞り弁23が設けられる。
【0024】
インジェクタ9はコモンレール24に接続され、そのコモンレール24に貯留された噴射圧力相当の高圧燃料(20〜200MPa)がインジェクタ9に常時供給されている。コモンレール24には高圧ポンプ25により加圧圧送された燃料が随時供給される。
【0025】
このエンジンを電子制御するため電子制御ユニット(以下ECUという)26が設けられる。ECU26は各種センサ類から実際のエンジン運転状態を検出し、このエンジン運転状態に基づきインジェクタ9、EGR弁21、吸気絞り弁23、及び高圧ポンプ25からの燃料圧送量を調節する調量弁(図示せず)等を制御する。前記センサ類としては前記吸気量センサ17の他、アクセル開度センサ、エンジン回転センサ、コモンレール圧センサ(いずれも図示せず)等が含まれ、実際の吸気量、アクセル開度、エンジン回転速度(回転数)、エンジンのクランク角、コモンレール圧等がECU26により検知されるようになっている。
【0026】
インジェクタ9は、ECU26によりON/OFFされる電磁ソレノイドを有し、電磁ソレノイドがONのとき開状態となって燃料を噴射すると共に、電磁ソレノイドがOFFのとき閉状態となって燃料噴射を停止する。ECU26は、主にエンジン回転速度とアクセル開度とから目標燃料噴射量と目標燃料噴射タイミング(時期)とを決定し、実際にそのタイミングが到来したと同時に、目標燃料噴射量に応じた時間だけ電磁ソレノイドをONする。目標燃料噴射量が多いほどON時間は長期である。またECU26は、エンジンの運転状態に応じて目標コモンレール圧を決定し、実際のコモンレール圧が目標コモンレール圧に近づくようコモンレール圧をフィードバック制御する。
【0027】
インジェクタ9はシリンダ2と略同軸に位置され、複数の噴孔から同時に放射状に燃料を噴射する。各燃料噴霧の軸線Lとシリンダ中心Cとのなす角は常に一定である。
【0028】
次に、このエンジンにおける燃料噴射制御の内容を説明する。
【0029】
図2はクランク角に対しての燃料噴射の態様及び燃焼状態を示したグラフである。横軸がクランク角である。縦軸については、最下段の(a)図がインジェクタ9の電磁ソレノイドに流れるソレノイド電流、(b)図が熱発生率(秒間当たりの熱発生量;kJ/s)である。なお、(b)図の熱発生率は筒内圧力の実測値から求めた計算結果である。
【0030】
(a)図に示されるように、このエンジンでは、比較的少量のパイロット噴射と比較的多量のメイン噴射とによる2段噴射を実行する。具体的には、ECU26により、エンジン運転状態に基づく目標燃料噴射タイミングと目標燃料噴射量とを、予め定められたマップ等に従ってパイロット噴射及びメイン噴射各々について決定し、それぞれの目標燃料噴射タイミングが到来したら、それぞれの目標燃料噴射量に応じた時間だけインジェクタ9をONし、それぞれの目標燃料噴射タイミングと目標燃料噴射量とに見合ったパイロット噴射とメイン噴射とを実行する。
【0031】
図は、メイン噴射のタイミング及び量と、パイロット噴射の量とを一定とし、パイロット噴射のタイミングのみを変化させた四つの噴射形態▲1▼〜▲4▼を併記している。▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼のパイロット噴射タイミングはそれぞれ48°BTDC(−48°ATDC、以下同様)、38°BTDC、28°BTDC、18°BTDCである。メイン噴射タイミングは5°ATDCである。なおこれらタイミングは全てインジェクタ9のON開始時刻で規定している。
【0032】
一般的なパイロット噴射タイミングはなるべくメイン噴射に近付けるように設定される。現在広く使われているハードウェアの制約下では2500rpm以下の中低速回転において15〜20°BTDC程度であるので、▲4▼は一般的なパイロット噴射タイミングといえる。これに対して、▲3▼、▲2▼、▲1▼という順でパイロット噴射タイミングが順次早期化ないし進角(アドバンス)されている。
【0033】
一方、本実施形態のメイン噴射タイミングは圧縮上死点TDC以降に設定され、同一の運転条件における一般的なメイン噴射タイミングに比較して遅角側に設定される。即ちメインリタード噴射が実行されるのである。これは筒内温度が低下した領域で燃料の希薄化、予混合化を促進してスモークの低減を図るためである。
【0034】
(b)図から理解されるように、▲3▼、▲4▼の場合、パイロット噴射による熱発生率の顕著なピークが見られ、▲1▼、▲2▼の場合このような顕著なピークは見られない。そして▲1▼から▲4▼へとパイロット噴射タイミングが遅角化されるにつれ、熱発生率のピーク値(極大値)は大きくなる傾向にある。▲3▼、▲4▼の場合、ピーク発生時期でパイロット噴射による燃料(軽油)が連続的な着火或いは燃焼を生じ、そのためスートが発生しているものと予測される。従って▲3▼、▲4▼のパイロット噴射タイミングはあまり好ましいものではない。
【0035】
逆に、▲1▼、▲2▼の場合のように、パイロット噴射タイミングが早いほど、筒内圧力及び筒内温度が低い状態で燃料が噴射されるので、着火可能な筒内圧力及び筒内温度に達するまでに十分な予混合化が可能になり、熱発生率の顕著なピークは生じず、スートの発生もないと考えられる。
【0036】
この結果から、本実施形態では、通常より早期のタイミングでパイロット噴射を行うものとする。また本発明者らは、パイロット噴射による熱発生率に着目し、後述の試験を行ったところ、パイロット噴射による熱発生率ピークと、メイン噴射を合わせて実施した場合のスートの発生との間に強い相関関係があることを新たに見出した。そこでパイロット噴射における燃料噴射量と燃料噴射タイミングとを後述のように最適に定めることとした。
【0037】
ところで、図示されるように、▲1▼、▲2▼では▲3▼、▲4▼に比較して熱発生率のピークが生じなかった分、パイロット噴射燃料が、上死点後に実行されるメイン噴射の燃料と共に燃焼する傾向が強くなり、メイン噴射燃料の燃焼時に熱発生率のピーク値が高くなる傾向にある。メイン噴射後に生じる熱発生率のピーク値は、▲1▼で最も高く、以下▲2▼、▲3▼、▲4▼となるにつれ低くなっていく。つまりパイロット噴射が早期に行われる程着火遅れが長くなり、メイン噴射燃料と一緒に一気に燃焼する傾向が強くなる。
【0038】
このように早期パイロット噴射では、通常のパイロット噴射に比べ、上死点後に実行されるメイン噴射後に高い熱発生率のピーク値が得られるので、燃焼が比較的急激に行われ、出力の向上及び燃費低減が見込まれる。
【0039】
前述したように、パイロット噴射タイミングは早期の方が良いということがいえるが、あまりに早期だとピストンがかなり下方に位置するためインジェクタから噴射された燃料がキャビティに入らなくなってしまう。そうなるとシリンダ側壁等に噴射燃料が付着し、オイル希釈化、未燃HC増大等の問題を生じてしまう。従って、パイロット噴射タイミングの進角側の限界は、インジェクタから噴射された燃料がぎりぎりキャビティに入るようなタイミングが好ましい。言い換えれば、図1に示されるように、インジェクタ9から噴射された燃料Lがキャビティ11の入口端縁27を通過するようなクランク角になった時である。このクランク角は通常約50°BTDC程度である。
【0040】
一方、パイロット噴射タイミングの遅角側の限界と、パイロット噴射量とは、上記のような熱発生率及びスートの相関関係を考慮して最適に定めるべきである。即ち、パイロット噴射タイミングをあまりに遅角させたり、パイロット噴射量をあまりに多く設定してしまうと、顕著な熱発生率のピークが生じ、スートが発生してしまう。
【0041】
そこでこれらを決定するために行った試験の結果が図5及び図6である。
【0042】
図5は、パイロット噴射タイミングと、パイロット噴射による最大熱発生率との関係を調べたもので、横軸がパイロット噴射タイミング(°ATDC)、縦軸が最大熱発生率(kJ/s;キロジュール毎秒)である。また図6は、パイロット噴射による最大熱発生率とスート(煤)との関係を調べたもので、横軸がスート(g/kWh)、縦軸が最大熱発生率(kJ/s)である。ここでいう最大熱発生率とは、図2の熱発生率の線図において上死点前に生じているパイロット噴射による熱発生率のピーク値(最大値)のことである。
【0043】
試験は、気筒当たりの排気量約800ccの多気筒エンジンにおける2種類のパイロット噴射量(A;3mm3/st、B;6mm3/st)と、気筒当たりの排気量約400ccの多気筒エンジンにおける1種類のパイロット噴射量(C;1.2mm3/st)とに対して行った。A〜Cそれぞれについて、パイロット噴射タイミングを−10〜−50°ATDCの範囲で変化させてグラフ中の三本の線図A,B,Cを得ている。共通の試験条件としては、エンジンの出力トルクがA〜C各条件で一定になるようにトータルの燃料噴射量が設定され、総噴射量が中負荷程度に設定され、メイン噴射タイミングが圧縮上死点以降に設定される。ここでメイン噴射は、圧縮上死点以降であってパイロット噴射無しでも緩やかに燃焼が進行する程度のタイミングで行われ、且つ、メイン噴射が完了するまでに着火しない程度のタイミングと量とで行われる。ちなみにメイン噴射を上死点前及び上死点付近で行ったのでは即座に着火が始まり、スモーク及びNOxを低減することはできない。
【0044】
なお、これらA,B,Cにそれぞれ対応するのが図2,図3,図4のグラフである。言い換えれば、A,B,Cの各条件における試験の結果に基づき図2,図3,図4のグラフが作成され、さらに図5,図6のグラフが作成される。
【0045】
図5から分かるように、パイロット噴射タイミングが早期化(アドバンス)されるほど最大熱発生率が小さくなる傾向にある。また、パイロット噴射量が少ないほど最大熱発生率が小さくなり、タイミングの遅角化に対する最大熱発生率の上昇率(つまり線図の傾き)も小さくなる傾向にある。
【0046】
次に、図6においては、線図が左側に向かうにつれパイロット噴射タイミングが早期化され、最大熱発生率が減少し、スートも減少する。そして最大熱発生率が60kJ/s以下であれば、A,B,Cいずれの条件においても良好なスートレベルを得られる。
【0047】
そこで、この結果から、パイロット噴射における燃料噴射量と燃料噴射タイミングとは、燃焼室内における最大熱発生率が60kJ/s以下となるような燃料噴射量と燃料噴射タイミングとに設定するものとする。このような燃料噴射量と燃料噴射タイミングとで行われるパイロット噴射を低発熱率パイロット噴射と称す。言い換えれば、最大熱発生率が60kJ/sとなるパイロット噴射量及びタイミングが、噴射量の上限値及びタイミングの遅角側限界値である。これにより、パイロット噴射燃料単独での燃焼が防止され、結果的に上死点以降に実施されるメイン噴射と合わせてスモークが抑制できる。
【0048】
図5に戻って、最大熱発生率が60kJ/s以下となるのは、条件A(3mm3/st)では約−39°ATDC(39°BTDC)以前、条件B(6mm3/st)では約−40°ATDC(40°BTDC)以前、条件C(1.2mm3/st)では約−27°ATDC(27°BTDC)以前である。そこでこれらA,B,Cの条件では各々に対応するパイロット噴射タイミングに設定するものとする。
【0049】
以上のような、最大熱発生率が60kJ/s以下となるようなパイロット噴射を伴う本実施形態の燃焼(噴射)形態を低発熱率パイロット・メイン燃焼(噴射)と称する。この燃焼形態をまとめていうと以下のようになる。まず、上記のような最適量、最適タイミングでパイロット噴射を行うと、この噴射燃料は燃焼室内に十分拡散して希薄化、予混合化し、シリンダ内での燃料が連続的に着火、燃焼することが抑制される。そしてこの状態は圧縮上死点TDCを越えてメイン噴射の燃焼時期まで持続される。上死点以降に設定されたメイン噴射時期においてメイン噴射が実行されると、通常より筒内圧力及び温度が低いため、通常より長期の着火遅れ期間を経て、メイン噴射燃料がパイロット噴射による希薄予混合気と一緒に着火、燃焼する。このとき既にメイン噴射燃料の予混合化も十分進んでいるため、燃焼によるスートの発生は抑えられる。
【0050】
本燃焼方式によれば、リタードメイン噴射に併せて低発熱率パイロット噴射を行うため、単段噴射のリタード燃焼に比べメイン噴射後の予混合化期間を短縮でき、例えば図2の▲1▼に示されるようにメイン噴射後の燃焼をシリンダ内が低温である状態で比較的急激に行うことができる。これにより燃費の悪化を防止できる。またパイロット噴射燃料の予混合化によりメイン噴射燃料燃焼時の筒内温度を高くすることができ、燃焼を安定化させることができる。
【0051】
一方、本燃焼方式は上記のような最適量、最適タイミングでパイロット噴射を行うため、メイン噴射前におけるパイロット噴射燃料の燃焼は発生せず、特許文献1に記載された技術と比較してスモークを改善できる。
【0052】
このように、パイロット噴射を行い且つ圧縮上死点以降にリタードメイン噴射を行う圧縮着火式内燃機関において、パイロット噴射の量とタイミングとを適正化することができ、パイロット噴射によるスモークを抑制することができる。
【0053】
さて、このようにパイロット噴射の量とタイミングとを適正化することによりスモークを抑制できる低発熱率パイロット・メイン燃焼(噴射)であるが、図7に示すように、低発熱率パイロット・メイン燃焼(噴射)におけるメイン噴射の噴射終了後、例えば約28°ATDCで、比較的少量のポスト噴射を実行することで、以下に示すような更なる効果を得られることが分かった。
【0054】
▲1▼.ポスト噴射によりスモークを更に低減できる。また、このとき、従来のポスト噴射に付随する問題であったHC、COの増加を伴うことがない。
【0055】
これを説明すると、ポスト噴射を行うことによって、燃焼室10内における空気余剰領域に燃料が供給されるため、空気の利用度が向上すると共に、ポスト噴射の燃料噴霧エネルギにより乱流が生じるため拡散燃焼が向上し、スモークが低減する。特に、本実施形態のようにターボチャージャ14を備えたエンジンでは、ポスト噴射により排気温度が上昇し、ブースト圧が上昇するため、よりスモークが低減される。
【0056】
図8を用いてスモークが低減するメカニズムを説明する。
【0057】
図8は計算(シミュレーション)によって得られた結果であり、図中横軸がクランク角(°ATDC)である。縦軸は燃料の濃度分布を表しており、上に向かうほど燃料の濃い領域が多く存在することを意味している。図中ラインIがポスト噴射を実行しない場合を示し、ラインIIがポスト噴射を実行した場合を示している。
【0058】
図から明らかなように、ポスト噴射を実行した場合の方が、燃料の濃い領域が少なくなる。これは、ポスト噴射によって空気が有効利用され、燃料が希薄化されたことを意味しており、これによってスモークが低減する。
【0059】
次に、低発熱率パイロット・メイン噴射にポスト噴射を組み合わせてもHC、COが増加しない理由を説明する。
【0060】
「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、ポスト噴射は圧縮上死点後の比較的遅いタイミングで燃料を噴射するため、燃料が完全燃焼しずらく、未燃燃料が増加してHC、COが増加するのであるが、低発熱率パイロット・メイン燃焼では、上述したように、メイン噴射により噴射された燃料が通常より長期の着火遅れ期間を経て着火・燃焼するので、図2、図3及び図4において▲1▼と▲3▼,▲4▼とを比較すると分かるように、メイン噴射による熱発生率のピークが比較的遅く、当然、筒内温度のピークも遅い。従って、ポスト噴射が実行される時期の筒内温度が従来の燃焼方式と比較して高くなり、ポスト噴射により噴射された燃料が燃焼しやすい。つまり、ポスト噴射により噴射された燃料がほぼ完全燃焼できるので、HC、COが増加することはない。
【0061】
ここで、ポスト噴射により噴射された燃料が最適に燃焼できるようにするには、メイン噴射によって噴射された燃料の燃焼によって筒内温度がほぼピークとなるときに、ポスト噴射により噴射された燃料が燃焼するようにするとよい。従って、ポスト噴射の燃料噴射タイミングと燃料噴射量とは、噴射された燃料がメイン噴射によって筒内温度がほぼピークになる時期に燃焼するように設定される。この燃料噴射タイミング及び燃料噴射量は、例えば、パイロット噴射及びメイン噴射の噴射タイミング及び噴射量に基づいて決定され、ECU26は、決定された噴射タイミング及び噴射量に従ってインジェクタ9の電磁ソレノイドをONする。
【0062】
▲2▼.低発熱率パイロット・メイン燃焼の適用運転領域を拡大できる。
【0063】
この理由を説明すると、上述したように低発熱率パイロット・メイン燃焼ではメイン噴射による熱発生率のピークが比較的遅くなるため、筒内温度が低い低負荷運転領域では燃料が完全に燃焼できず、HC、COが排出されてしまう虞がある。従って、低発熱率パイロット・メイン燃焼単独では、低負荷領域での適用はあまり好ましくない。しかしながら、低発熱率パイロット・メイン噴射にポスト噴射を組み合わせることによって、パイロット噴射及びメイン噴射により噴射された燃料の未燃分がポスト噴射により噴射された燃料と共に燃焼できるため、HC、COの排出を低減できる。従って、低負荷領域での適用が可能となり、低発熱率パイロット・メイン燃焼の適用運転領域を拡大できる。
【0064】
このように、低発熱率パイロット・メイン噴射にポスト噴射を組み合わせることで、スモークを更に低減できるうえ、ポスト噴射に付随するHC,COの増加問題を回避できる。また、低発熱率パイロット・メイン燃焼の適用運転領域を拡大できる。
【0065】
なお、本発明の実施の形態は他にも様々なものが採用可能である。
【0066】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、パイロット噴射の量とタイミングとを適正化すると共にポスト噴射を実行することで、排ガスの清浄化を図れるという優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る圧縮着火式内燃機関を示す構成図である。
【図2】パイロット噴射タイミングと熱発生率との関係を示したグラフである。
【図3】パイロット噴射タイミングと熱発生率との関係を示したグラフである。
【図4】パイロット噴射タイミングと熱発生率との関係を示したグラフである。
【図5】パイロット噴射タイミングと最大熱発生率との関係を示したグラフである。
【図6】スートと最大熱発生率との関係を示したグラフである。
【図7】低発熱パイロット・メイン噴射にポスト噴射を組み合わせた状態を示す図である。
【図8】ポスト噴射によりスモークが低減するメカニズムを説明するための図である。
【符号の説明】
1 エンジン本体
2 シリンダ
4 ピストン
9 インジェクタ
10 燃焼室
11 キャビティ
19 EGR装置
24 コモンレール
26 電子制御ユニット(制御手段)
27 入口端縁
L 噴射燃料[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a compression ignition type internal combustion engine, and more particularly to a compression ignition type internal combustion engine which purifies exhaust gas by improving a combustion mode.
[0002]
[Prior art]
In recent years, there has been an increasing demand for environmental measures for internal combustion engines, particularly diesel engines, and there is an urgent need to improve the exhaust gas. For this reason, various post-processing technologies such as a diesel particulate filter (DPF) that collects soot such as black smoke and a NOx catalyst that reduces and purifies NOx have made remarkable progress, but also improve the combustion form itself. It is more desirable to lead to drastic measures.
[0003]
In normal diesel combustion, a single-stage (one-time) fuel injection is performed near the compression top dead center (generally, about 10 ° BTDC to about 10 ° ATDC) where the in-cylinder pressure and temperature are sufficiently high. After a predetermined ignition delay period, the fuel is partially ignited, and then the fuel evaporates, mixes with air, and burns in accordance with the diffusion of the fuel, and the flame is burned while being spread in a turbulent state sequentially. Takes the form of combustion.
[0004]
On the other hand, various improvements have been made in response to recent demands for smoke and NOx reduction for exhaust gas. It has been conventionally known that EGR (Exhaust Gas Recirculation) is effective in reducing NOx, and has been widely realized. However, since EGR recirculates exhaust gas, deterioration of smoke cannot be avoided.
[0005]
Further, in the normal combustion, a sudden increase in the in-cylinder pressure due to the rapid initial combustion may occur, and loud combustion noise may be generated. Therefore, in order to prevent this, a two-stage injection of executing a small amount of pilot injection before the main injection (main injection) performed at a normal timing may be performed. In this case, after the fuel by the pilot injection is ignited and a fire is created, the fuel by the main injection is burned based on the fire, so that a rapid initial combustion and a sharp increase in the in-cylinder pressure are suppressed, and the combustion noise is reduced. Is prevented. The combustion mode at this time is basically the same as the diffusion combustion.
[0006]
However, in such a normal pilot main injection, there is a problem that smoke is deteriorated by performing the pilot injection.
[0007]
[Non-patent document 1]
"Transactions of the Society of Automotive Engineers of Japan (vol. 28)," 1, 1997-1, p. 41
[Non-patent document 2]
"Transactions of the Automotive Engineering Society (vol. 28)", No. 2, 1997-4, p. 29
[Patent Document 1]
JP 2000-310150 A
[0008]
[Problems to be solved by the invention]
In recent years, new combustion systems have been proposed for these technologies.
[0009]
One is called MK (Modulated Kinetics) combustion for the purpose of simultaneously reducing NOx and smoke. This can also be expressed as low-temperature premixed combustion, and its outline is as follows. That is, since reduction of the combustion temperature is effective for NOx reduction, this is performed by a relatively large amount of EGR. There is a concern that smoke will increase, which will be dealt with by premixing the fuel. There are two methods of premixing: early injection, in which fuel is injected earlier than usual, and retarded injection, in which fuel is injected later than usual.Early injection involves problems such as difficulty in controlling ignition timing. We adopt retard injection because we have it. In summary, MK combustion aims to simultaneously reduce NOx and smoke by combining a large amount of EGR and retarded injection. References include Non-Patent Documents 1 and 2.
[0010]
However, in MK combustion, single-stage injection is performed after the compression top dead center, and ignition and combustion are gently performed after a relatively long premixing period, so that fuel consumption is likely to deteriorate, and the cylinder temperature is low. Combustion is unstable, easily causing misfires and white smoke. In addition, since it is assumed that a large amount of EGR is performed, the effect of reducing smoke cannot be greatly expected.
[0011]
On the other hand, as disclosed in Patent Literature 1, there is a technique in which pilot injection is performed at an earlier timing than usual, and main injection is performed at a timing that causes misfire without pilot injection. This aims at further reduction of NOx.
[0012]
However, although this is effective in reducing NOx, continuous combustion by the pilot injection still occurs before the main injection, and smoke is generated by the combustion by the pilot injection, which is a cause of deterioration of the smoke.
[0013]
Therefore, it is particularly difficult to improve smoke with these technologies, and it is not always enough to cope with strict exhaust gas regulations in the future.
[0014]
Therefore, in order to reduce smoke, it has been proposed to execute a relatively small amount of post injection after the main injection. By performing the post-injection, fuel is supplied to the excess air region in the combustion chamber, so that the utilization of air is improved, and turbulence is generated by the fuel spray energy of the post-injection, so that diffusion combustion is improved and smoke is reduced. Reduce. In particular, in an internal combustion engine equipped with a turbocharger, the exhaust temperature rises due to the post injection, and the boost pressure rises, so that the smoke reduction effect is high.
[0015]
However, the post-injection injects fuel at a relatively late timing after the compression top dead center, so that there is a disadvantage that it is difficult for the fuel to completely burn, unburned fuel increases, and HC and CO increase.
[0016]
Accordingly, the present invention was devised in view of the above problems, and an object thereof is to optimize the amount and timing of pilot injection in a compression ignition type internal combustion engine that performs pilot injection and performs main injection after compression top dead center. By doing so, the smoke is suppressed and HC and CO do not increase even if the post injection is executed.
[0017]
[Means for Solving the Problems]
The present invention relates to a compression ignition type internal combustion engine having a fuel injection valve for injecting fuel into a combustion chamber in a cylinder, and controlling the amount and timing of fuel injected from the fuel injection valve based on an engine operating state. In the above, a relatively small amount of pilot injection is executed from the fuel injection valve before the compression top dead center, and then a relatively large amount of main injection is executed from the fuel injection valve after the compression top dead center, and The fuel injection amount and the fuel injection timing in the pilot injection are set so that the maximum heat generation rate by the pilot injection becomes 60 kJ / s or less, and the post injection is executed from the fuel injection valve after the main injection. It is intended to be.
[0018]
Here, the fuel injection amount and the fuel injection timing in the post-injection are set such that the fuel injected by the post-injection burns when the in-cylinder temperature becomes substantially peak due to the combustion of the fuel injected by the main injection. May be set.
[0019]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, preferred embodiments of the present invention will be described in detail with reference to the accompanying drawings.
[0020]
FIG. 1 shows a compression ignition type internal combustion engine according to the present embodiment. Here, the compression ignition type internal combustion engine refers to an engine of a type in which fuel injected into a combustion chamber in a cylinder self-ignites by compression in the cylinder, and is typically a diesel engine, particularly a common rail type in this embodiment. It is a common rail diesel engine equipped with a fuel injection device. Although the figure shows a single cylinder for convenience, a multi-cylinder may of course be used.
[0021]
An engine body 1 includes a cylinder (cylinder) 2, a cylinder head 3, a piston 4, an intake port 5, an exhaust port 6, an intake valve 7, an exhaust valve 8, an injector 9 as a fuel injection valve, and the like. A combustion chamber 10 is formed in the cylinder 2, and fuel is injected from the injector 9 into the combustion chamber 10. A cavity 11 is formed at the top of the piston 4 and forms a part of the combustion chamber 10. The cavity 11 is in the form of a reentrant combustion chamber with a raised bottom center. The fuel injected from the injector 9 always reaches the cavity 11. This is because if fuel adheres to the side wall of the cylinder 2 or the like, a problem such as unburned HC emission occurs.
[0022]
The intake port 5 is connected to an intake pipe 12, and the exhaust port 6 is connected to an exhaust pipe 13. This engine is provided with a turbocharger 14, which supercharges intake air using exhaust energy. 15 is a turbine and 16 is a compressor. An intake air amount sensor 17 for detecting an intake air amount is provided upstream of the compressor 16, and an intercooler 18 for cooling intake air is provided downstream of the compressor 16. However, it goes without saying that the present invention is also effective for a naturally aspirated engine without a turbocharger.
[0023]
The engine also has an EGR device 19. The EGR device 19 includes an EGR pipe 20 connecting the intake pipe 12 and the exhaust pipe 13, an EGR valve 21 for adjusting an EGR amount, and an EGR cooler 22 for cooling EGR gas upstream of the EGR valve 21. Prepare. In the intake pipe 12, an intake throttle valve 23 for appropriately restricting intake air is provided upstream of a connection portion with the EGR pipe 20.
[0024]
The injector 9 is connected to the common rail 24, and high-pressure fuel (20 to 200 MPa) corresponding to the injection pressure stored in the common rail 24 is constantly supplied to the injector 9. The common rail 24 is supplied with fuel pressurized by a high-pressure pump 25 as needed.
[0025]
An electronic control unit (hereinafter, referred to as ECU) 26 is provided for electronically controlling the engine. The ECU 26 detects an actual engine operating state from various sensors, and based on the engine operating state, a metering valve (see FIG. 1) that adjusts the amount of fuel pumped from the injector 9, the EGR valve 21, the intake throttle valve 23, and the high-pressure pump 25. (Not shown). The sensors include an accelerator opening sensor, an engine rotation sensor, a common rail pressure sensor (all not shown), etc., in addition to the intake air amount sensor 17, and include an actual intake air amount, an accelerator opening, an engine rotation speed ( The number of revolutions, the crank angle of the engine, the common rail pressure, and the like are detected by the ECU 26.
[0026]
The injector 9 has an electromagnetic solenoid that is turned on / off by the ECU 26. When the electromagnetic solenoid is on, the injector 9 opens to inject fuel, and when the electromagnetic solenoid is off, closes to stop fuel injection. . The ECU 26 determines the target fuel injection amount and the target fuel injection timing (timing) mainly from the engine rotation speed and the accelerator opening, and at the same time that the timing actually arrives, the time corresponding to the target fuel injection amount is determined. Turn on the electromagnetic solenoid. The ON time is longer as the target fuel injection amount is larger. Further, the ECU 26 determines the target common rail pressure according to the operation state of the engine, and performs feedback control of the common rail pressure so that the actual common rail pressure approaches the target common rail pressure.
[0027]
The injector 9 is located substantially coaxially with the cylinder 2 and injects fuel simultaneously and radially from a plurality of injection holes. The angle between the axis L of each fuel spray and the cylinder center C is always constant.
[0028]
Next, the details of the fuel injection control in this engine will be described.
[0029]
FIG. 2 is a graph showing a fuel injection mode and a combustion state with respect to a crank angle. The horizontal axis is the crank angle. Regarding the vertical axis, the lowermost graph (a) shows the solenoid current flowing through the electromagnetic solenoid of the injector 9, and the lower graph (b) shows the heat generation rate (heat generation amount per second; kJ / s). Note that the heat release rate in FIG. 6B is a calculation result obtained from an actually measured value of the in-cylinder pressure.
[0030]
(A) As shown in the figure, this engine executes a two-stage injection of a relatively small amount of pilot injection and a relatively large amount of main injection. Specifically, the ECU 26 determines the target fuel injection timing and the target fuel injection amount based on the engine operating state for each of the pilot injection and the main injection according to a predetermined map or the like, and the respective target fuel injection timings arrive. Then, the injector 9 is turned ON for a time corresponding to each target fuel injection amount, and the pilot injection and the main injection corresponding to each target fuel injection timing and target fuel injection amount are executed.
[0031]
The figure shows four injection modes (1) to (4) in which the timing and amount of the main injection and the amount of the pilot injection are constant and only the timing of the pilot injection is changed. The pilot injection timings of (1), (2), (3), and (4) are 48 ° BTDC (−48 ° ATDC, the same applies hereinafter), 38 ° BTDC, 28 ° BTDC, and 18 ° BTDC, respectively. The main injection timing is 5 ° ATDC. These timings are all defined by the ON start time of the injector 9.
[0032]
The general pilot injection timing is set so as to be as close as possible to the main injection. Under the constraints of hardware that is currently widely used, since the rotation speed is about 15 to 20 ° BTDC at a low speed of 2500 rpm or less, (4) can be said to be a general pilot injection timing. On the other hand, the pilot injection timing is sequentially advanced or advanced in the order of (3), (2), and (1).
[0033]
On the other hand, the main injection timing of the present embodiment is set after the compression top dead center TDC, and is set to a more retarded side than the general main injection timing under the same operating conditions. That is, the main retarded injection is performed. This is to promote the fuel dilution and premixing in the region where the in-cylinder temperature has decreased, thereby reducing smoke.
[0034]
(B) As can be understood from the figure, in the cases of (3) and (4), a remarkable peak of the heat generation rate due to the pilot injection is observed, and in the cases of (1) and (2), such a remarkable peak is observed. Can not be seen. Then, as the pilot injection timing is retarded from (1) to (4), the peak value (maximum value) of the heat generation rate tends to increase. In the cases of (3) and (4), it is predicted that the fuel (light oil) by the pilot injection continuously ignites or burns at the peak occurrence time, and soot is generated. Therefore, the pilot injection timings of (3) and (4) are not so preferable.
[0035]
Conversely, as in the cases of (1) and (2), the earlier the pilot injection timing is, the more the fuel is injected in a state where the in-cylinder pressure and the in-cylinder temperature are low. It is considered that sufficient premixing is possible before the temperature is reached, no remarkable peak in heat release rate occurs, and no soot is generated.
[0036]
From this result, in the present embodiment, the pilot injection is performed at an earlier timing than usual. In addition, the present inventors focused on the heat generation rate by the pilot injection, and performed a test described later, and found that the heat generation rate peak by the pilot injection and the generation of soot when the main injection was performed together. We found that there is a strong correlation. Therefore, the fuel injection amount and the fuel injection timing in the pilot injection are determined optimally as described later.
[0037]
By the way, as shown in the figure, in (1) and (2), the pilot injection fuel is executed after the top dead center because the peak of the heat release rate did not occur in comparison with (3) and (4). The tendency to burn with the fuel of the main injection becomes strong, and the peak value of the heat generation rate tends to become high during the combustion of the main injection fuel. The peak value of the heat release rate generated after the main injection is highest in (1), and lowers as (2), (3), and (4) below. That is, the earlier the pilot injection is performed, the longer the ignition delay becomes, and the more likely it is to burn at once with the main injection fuel.
[0038]
As described above, in the early pilot injection, a higher peak value of the heat release rate is obtained after the main injection executed after the top dead center than in the normal pilot injection, so that the combustion is performed relatively sharply, and the output can be improved and Fuel economy is expected to be reduced.
[0039]
As described above, it can be said that the earlier the pilot injection timing is, the more early the pilot injection timing is, so that the fuel injected from the injector does not enter the cavity because the piston is located significantly below. In such a case, the injected fuel adheres to the side wall of the cylinder or the like, causing problems such as oil dilution and increase in unburned HC. Therefore, it is preferable that the limit of the pilot injection timing on the advance side is a timing at which the fuel injected from the injector enters the cavity. In other words, as shown in FIG. 1, the crank angle is such that the fuel L injected from the injector 9 passes through the inlet edge 27 of the cavity 11. This crank angle is usually about 50 ° BTDC.
[0040]
On the other hand, the limit on the retard side of the pilot injection timing and the pilot injection amount should be optimally determined in consideration of the above-described correlation between the heat release rate and the soot. That is, if the pilot injection timing is too retarded or the pilot injection amount is set too large, a remarkable peak in heat generation rate occurs, and soot is generated.
[0041]
Thus, the results of tests performed to determine these are shown in FIGS.
[0042]
FIG. 5 shows the relationship between the pilot injection timing and the maximum heat release rate due to the pilot injection. The horizontal axis represents the pilot injection timing (° ATDC), and the vertical axis represents the maximum heat release rate (kJ / s; kilojoules). Per second). FIG. 6 shows the relationship between the maximum heat release rate by pilot injection and soot (soot). The horizontal axis represents soot (g / kWh), and the vertical axis represents the maximum heat release rate (kJ / s). . The maximum heat release rate referred to here is a peak value (maximum value) of the heat release rate by the pilot injection occurring before the top dead center in the heat release rate diagram of FIG.
[0043]
The test was conducted using two types of pilot injection amounts (A; 3 mm) in a multi-cylinder engine with a displacement of about 800 cc per cylinder. 3 / St, B; 6 mm 3 / St) and one type of pilot injection amount (C; 1.2 mm) in a multi-cylinder engine having a displacement of about 400 cc per cylinder. 3 / St). For each of A to C, the pilot injection timing is changed within the range of -10 to -50 ATDC to obtain three diagrams A, B, and C in the graph. As common test conditions, the total fuel injection amount is set so that the output torque of the engine is constant under each of the conditions A to C, the total injection amount is set to about medium load, and the main injection timing is set to the compression top dead center. Set after the point. Here, the main injection is performed at a timing after the compression top dead center and at such a timing that combustion proceeds slowly even without pilot injection, and at such a timing and amount that ignition does not occur until the main injection is completed. Is By the way, if the main injection is performed before and near top dead center, ignition starts immediately, and smoke and NOx cannot be reduced.
[0044]
The graphs of FIGS. 2, 3, and 4 correspond to A, B, and C, respectively. In other words, the graphs of FIGS. 2, 3, and 4 are created based on the results of the test under the conditions A, B, and C, and the graphs of FIGS. 5 and 6 are created.
[0045]
As can be seen from FIG. 5, the earlier the pilot injection timing is advanced, the smaller the maximum heat release rate tends to be. In addition, the smaller the pilot injection amount, the smaller the maximum heat release rate, and the rate of increase of the maximum heat release rate (that is, the slope of the diagram) with respect to the delay of the timing tends to be small.
[0046]
Next, in FIG. 6, as the diagram goes to the left, the pilot injection timing is advanced, the maximum heat release rate is reduced, and the soot is also reduced. If the maximum heat release rate is 60 kJ / s or less, a good soot level can be obtained under any of the conditions A, B, and C.
[0047]
Therefore, based on this result, the fuel injection amount and the fuel injection timing in the pilot injection are set to the fuel injection amount and the fuel injection timing such that the maximum heat generation rate in the combustion chamber becomes 60 kJ / s or less. Pilot injection performed with such a fuel injection amount and fuel injection timing is referred to as low heat generation rate pilot injection. In other words, the pilot injection amount and the timing at which the maximum heat release rate becomes 60 kJ / s are the upper limit value of the injection amount and the retard side limit value of the timing. As a result, the combustion by the pilot injection fuel alone is prevented, and as a result, the smoke can be suppressed together with the main injection performed after the top dead center.
[0048]
Returning to FIG. 5, the condition that the maximum heat release rate is 60 kJ / s or less is the condition A (3 mm 3 / St) before about −39 ° ATDC (39 ° BTDC) and condition B (6 mm 3 / St) before about −40 ° ATDC (40 ° BTDC) and condition C (1.2 mm 3 / St) is before about -27 ° ATDC (27 ° BTDC). Therefore, under these conditions A, B, and C, the pilot injection timing corresponding to each of them is set.
[0049]
The combustion (injection) mode of the present embodiment involving the pilot injection having the maximum heat release rate of 60 kJ / s or less as described above is referred to as low heat generation rate pilot main combustion (injection). This combustion mode is summarized as follows. First, when pilot injection is performed with the optimal amount and timing as described above, this injected fuel is sufficiently diffused into the combustion chamber to be diluted and premixed, and the fuel in the cylinder is continuously ignited and burned. Is suppressed. This state is maintained beyond the compression top dead center TDC until the combustion timing of the main injection. If the main injection is performed at the main injection timing set after the top dead center, the in-cylinder pressure and temperature are lower than usual, so that after a longer ignition delay period than usual, the main injection fuel becomes lean by pilot injection. Ignite and burn with the mixture. At this time, since the premixing of the main injection fuel has already sufficiently proceeded, the generation of soot due to combustion is suppressed.
[0050]
According to the present combustion system, since the low heat generation rate pilot injection is performed in conjunction with the retardation domain injection, the premixing period after the main injection can be shortened as compared with the single-stage injection retarded combustion. As shown, the combustion after the main injection can be performed relatively rapidly in a state where the temperature in the cylinder is low. Thereby, deterioration of fuel efficiency can be prevented. Further, by premixing the pilot injection fuel, the in-cylinder temperature at the time of combustion of the main injection fuel can be increased, and the combustion can be stabilized.
[0051]
On the other hand, in the present combustion system, the pilot injection is performed at the optimum amount and the optimum timing as described above, so that the combustion of the pilot injection fuel does not occur before the main injection, and the smoke is reduced compared to the technique described in Patent Document 1. Can be improved.
[0052]
As described above, in the compression ignition type internal combustion engine that performs the pilot injection and performs the retard domain injection after the compression top dead center, the amount and timing of the pilot injection can be optimized, and the smoke due to the pilot injection can be suppressed. Can be.
[0053]
By the way, the low heat generation rate pilot main combustion (injection) can suppress the smoke by optimizing the amount and timing of the pilot injection as described above. After the injection of the main injection in (injection), it was found that the following additional effects can be obtained by executing a relatively small amount of post injection at, for example, about 28 ° ATDC.
[0054]
▲ 1 ▼. Smoke can be further reduced by post injection. At this time, there is no accompanying increase in HC and CO, which is a problem associated with the conventional post injection.
[0055]
Explaining this, by performing post-injection, fuel is supplied to the air surplus region in the combustion chamber 10, so that the degree of air utilization is improved, and turbulence is generated due to the fuel spray energy of the post-injection. Combustion is improved and smoke is reduced. In particular, in the engine including the turbocharger 14 as in the present embodiment, the exhaust temperature rises due to the post injection, and the boost pressure rises, so that the smoke is further reduced.
[0056]
The mechanism for reducing smoke will be described with reference to FIG.
[0057]
FIG. 8 shows the result obtained by calculation (simulation), and the horizontal axis in the figure is the crank angle (° ATDC). The vertical axis represents the concentration distribution of the fuel, which means that there are more fuel-rich regions as going upward. In the figure, line I indicates a case where post-injection is not performed, and line II indicates a case where post-injection is performed.
[0058]
As is clear from the figure, the area where the fuel is rich decreases when the post injection is executed. This means that the air has been effectively used by the post-injection and the fuel has been diluted, thereby reducing the smoke.
[0059]
Next, the reason why HC and CO do not increase even when post injection is combined with low heat generation rate pilot main injection will be described.
[0060]
As described in the section of "Problems to be Solved by the Invention", post-injection injects fuel at a relatively late timing after compression top dead center, making it difficult for fuel to completely burn and increasing unburned fuel. As a result, in the low heat generation rate pilot main combustion, the fuel injected by the main injection ignites and burns after a longer ignition delay period than usual, as described above. 2. As can be seen by comparing (1) with (3) and (4) in FIGS. 3, 3 and 4, the peak of the heat generation rate by the main injection is relatively slow, and naturally, the peak of the in-cylinder temperature is also slow. Therefore, the in-cylinder temperature at the time when the post-injection is performed is higher than that in the conventional combustion method, and the fuel injected by the post-injection is easily burned. That is, since the fuel injected by the post-injection can be almost completely burned, HC and CO do not increase.
[0061]
Here, in order that the fuel injected by the post injection can be optimally burned, when the in-cylinder temperature becomes almost a peak due to the combustion of the fuel injected by the main injection, the fuel injected by the post injection is reduced. It is good to burn. Therefore, the fuel injection timing and the fuel injection amount of the post-injection are set so that the injected fuel is burned by the main injection at a time when the in-cylinder temperature substantially reaches a peak. The fuel injection timing and the fuel injection amount are determined based on, for example, the injection timing and the injection amount of the pilot injection and the main injection, and the ECU 26 turns on the electromagnetic solenoid of the injector 9 according to the determined injection timing and the injection amount.
[0062]
▲ 2 ▼. The operating range of low heat release pilot main combustion can be expanded.
[0063]
The reason for this is as follows. As described above, in the low heat rate pilot main combustion, since the peak of the heat generation rate due to the main injection is relatively slow, the fuel cannot be completely burned in the low load operation region where the in-cylinder temperature is low. , HC and CO may be discharged. Therefore, application of the low heat rate pilot main combustion alone in the low load region is not preferable. However, by combining the low heat rate pilot main injection with the post injection, the unburned fuel of the fuel injected by the pilot injection and the main injection can be burned together with the fuel injected by the post injection, so that the emission of HC and CO is reduced. Can be reduced. Therefore, application in a low load region becomes possible, and the applicable operation region of low heat generation rate pilot main combustion can be expanded.
[0064]
As described above, by combining the low heat rate pilot main injection with the post injection, the smoke can be further reduced, and the problem of an increase in HC and CO accompanying the post injection can be avoided. In addition, the applicable operation range of the low heat generation pilot main combustion can be expanded.
[0065]
Note that various other embodiments of the present invention can be adopted.
[0066]
【The invention's effect】
In short, according to the present invention, by optimizing the amount and timing of pilot injection and executing post-injection, an excellent effect of purifying exhaust gas is exhibited.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a configuration diagram showing a compression ignition type internal combustion engine according to an embodiment of the present invention.
FIG. 2 is a graph showing a relationship between a pilot injection timing and a heat generation rate.
FIG. 3 is a graph showing a relationship between a pilot injection timing and a heat generation rate.
FIG. 4 is a graph showing a relationship between a pilot injection timing and a heat generation rate.
FIG. 5 is a graph showing a relationship between a pilot injection timing and a maximum heat release rate.
FIG. 6 is a graph showing the relationship between soot and the maximum heat release rate.
FIG. 7 is a view showing a state in which post-injection is combined with low heat generation pilot main injection.
FIG. 8 is a diagram for explaining a mechanism of reducing smoke by post-injection.
[Explanation of symbols]
1 Engine body
2 cylinder
4 piston
9 Injector
10 Combustion chamber
11 cavities
19 EGR device
24 common rail
26 Electronic control unit (control means)
27 Entrance edge
L Injected fuel