JP2004305261A - 生体組織補填体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体再生機能を保持しつつ移植による免疫拒絶反応の発生を抑制することができる生体組織補填体とその製造方法を提供すること。
【解決手段】腸骨等から採取した骨髄液を遠心分離機にかけて旋回することにより、比重の重い骨髄細胞を抽出する。骨髄細胞には、骨髄間葉系幹細胞やT細胞12等の免疫細胞が含まれている。そして、分離した骨髄細胞を所定の培養容器内に投入した培地と混合する。培地として、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)と、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)と、抗生剤とを例えば84:15:1の割合で混合したものに、除去物質としてT細胞12の抗体14を挿入したものを用いる。抗体14は、培地中に0.1%程度存在するように調整されているものとした。
【選択図】 図2
【解決手段】腸骨等から採取した骨髄液を遠心分離機にかけて旋回することにより、比重の重い骨髄細胞を抽出する。骨髄細胞には、骨髄間葉系幹細胞やT細胞12等の免疫細胞が含まれている。そして、分離した骨髄細胞を所定の培養容器内に投入した培地と混合する。培地として、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)と、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)と、抗生剤とを例えば84:15:1の割合で混合したものに、除去物質としてT細胞12の抗体14を挿入したものを用いる。抗体14は、培地中に0.1%程度存在するように調整されているものとした。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体組織補填材から生体組織の欠損部を補填する生体組織補填体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨等の生体組織の欠損部に、骨補填材等の生体組織補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる。
【0003】
一方、術後の骨欠損部の修復速度を高めるために、患者から採取した骨髄間葉系幹細胞を骨補填材とともに培養することにより製造される培養骨等の生体組織補填体を使用することが提案されている。培養されることにより骨補填材を足場にして増殖した多くの骨髄間葉系幹細胞を含む骨補填体を骨欠損部に補填するので、手術後に体内で細胞を増殖させる方法と比較すると、自家骨に置換されるまでの日数を大幅に短縮することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、骨髄間葉系幹細胞を患者以外の第三者から採取する際、幹細胞とともに免疫細胞も採取されるので、骨髄間葉系幹細胞の培養過程で免疫細胞も培養される。そのため、免疫細胞が具備された生体組織補填体を患者に移植すると免疫拒絶反応を引き起こす不都合が考えられる。この免疫拒絶反応を起こす免疫細胞として、例えばT細胞が知られている。
このT細胞を免疫学的な方法によって標識する方法が従来から提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
【非特許文献1】
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第三0巻,第10号,p.46−49
【非特許文献2】
URL:http://www.shiyaku−daiichi.jp/catalog_pub/shiyaku/milty1.html
【非特許文献3】
URL:http://www.shiyaku−daiichi.jp/catalog_pub/shiyaku/milty3.html
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の生体組織補填体の製造方法では、免疫拒絶反応を抑えるためにHLA(ヒト白血球抗原)の一致する細胞を使用しようとしても、HLAが合致する第三者の数が限られて一致させるのが極めて困難であるという問題があった。
そのため、HLAが一致しない細胞を使用した場合、免疫拒絶反応を低減するために患者に免疫抑制剤を投与し続ける必要があるが、継続的な投与は患者に身体的、経済的に大きな負担を強いる問題があった。
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、免疫細胞等の識別技術を応用して、生体再生機能を保持しつつ移植による免疫拒絶反応の発生を抑制することができる生体組織補填体とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る生体組織補填体の製造方法は、生体組織から採取した体液内の幹細胞を培養して組織細胞に分化させる工程を備え、該工程中に、前記体液に含まれる免疫細胞を除去する除去物質を添加することを特徴とする。
この生体組織補填体の製造方法によれば、生体組織補填体の移植前に免疫細胞を除去するので、HLAが一致しない患者以外の第三者の体液を用いても免疫拒絶反応の発生を軽減できる生体組織補填体を低コストで製造することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記生体組織補填体の製造方法において、前記除去物質として前記免疫細胞の抗体を用いることが好ましい。
この生体組織補填体の製造方法によれば、除去物質が抗体なので、免疫細胞機能を不活化して、培地交換の際に培地に付着させることなく容易に除去することができる。
また、前記除去物質として、前記免疫細胞の抗体と、該抗体に付着させた被吸着物質とを用いることが好ましい。
この生体組織補填体の製造方法によれば、抗体にさらに被吸着物質が付着しているので、免疫細胞機能を不活化するとともに、吸着物質を挿入して被吸着物質を吸着させることによって免疫細胞を分離して、被吸着物質とともに免疫細胞を除去することができる。
【0009】
本発明では、前記生体組織補填体の製造方法であって、前記免疫細胞がT細胞であることが好ましい。
この生体組織補填体の製造方法によれば、T細胞に特有な抗体としてT細胞の持つ抗原基に対する抗体を選択できる。これにともない、免疫抑制剤を使用しなくても免疫拒絶反応の一つであるGVH(Graft versus Host)反応を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る生体組織補填体は、生体組織から採取した体液内の幹細胞を培養して組織細胞に分化させる途中に、前記体液が備える免疫細胞を除去する除去物質が添加されて製造されることを特徴とする。
この生体組織補填体によれば、欠損部にそのまま移植しても免疫拒絶反応を起こさずに欠損部周囲の組織を活性化して組織を再生することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態に係る生体組織補填体とその製造方法について、図1から図3を参照して説明する。なお、本実施形態では生体組織として骨を対象とする。
本実施形態に係る骨補填体(生体組織補填体)10の製造方法は、図1に示すように、培養工程Sを備える。
この培養工程Sは、さらに、一次培養工程(S01)と二次培養工程(S02)とを備える。
一次培養工程(S01)は、腸骨等(生体組織)から採取した骨髄液(体液)内の骨髄間葉系幹細胞(幹細胞)を培地内で培養する工程である。また、二次培養工程(S02)は、骨補填材11に骨髄間葉系幹細胞を付着させて骨芽細胞(組織細胞)に分化させて骨気質を産生し、骨補填材11を足場として生体組織形成作用を生じさせて骨補填体10とする工程である。
【0012】
一次培養工程(S01)では、図2に示すように、まず、腸骨等から骨髄液を採取する。採取した骨髄液を遠心分離機にかけて旋回することにより、比重の重い骨髄細胞を抽出する。この骨髄細胞には、骨髄間葉系幹細胞やT細胞12等の免疫細胞が含まれている。
そして、分離した骨髄細胞を所定の培養容器内に投入した培地と混合する。
培地として、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)と、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)と、抗生剤とを例えば84:15:1の割合で混合したものに、除去物質13として図3に示すようにT細胞12に作用する抗体14を添加する。
抗体14は、T細胞12の持つ抗原基(CD3、CD4、CD8、Thy1等)のうち、CD4及びCD8に対するモノクロナール抗体(例えば、抗CD4抗体及び抗CD8抗体:シグマ社製)であって、培地中に0.1%程度存在するように調整されている。
ここで、CD4は、いわゆるヘルパーT細胞のマーカーとして考えられるもので、抗CD4抗体で細胞を染色することによって他の血球細胞とヘルパー細胞とを識別する。
CD8は、細胞傷害性T細胞のマーカーとして考えられるもので、抗CD8抗体で細胞を染色することによって他の血球細胞と細胞傷害性T細胞とを識別する。
【0013】
続いて、培養容器内に混合した骨髄細胞と培地とをインキュベータ内に配置して、所定の温度(例えば、37±0.5℃)及びCO2濃度(例えば、0.5%)等の培養条件に維持する。
このとき、図3に示すように、抗体14がT細胞12に付着してT細胞12の活性機能の一部を中和して不活化する。
こうして、骨髄間葉系幹細胞を培養容器の底面に付着しながら成長する一方、不活化したT細胞12は培地に付着しづらく、培養容器内の細胞浮遊液中に浮遊する。そして、一次培養工程(S01)期間中に定期的に培地を交換する際に、培地に付着しないT細胞12は古い培地とともに除去される。そして、新たな培地とともに抗体14をさらに添加することによって、残ったT細胞12も次々に不活化して除去し、最終的に培養容器の底面に付着している骨髄間葉系幹細胞のみを抽出する。
【0014】
続いて、二次培養工程(S02)について説明する。
二次培養工程(S02)では、図2に示すように、まず、β−TCPの多孔体により構成されているブロック状の骨補填材11を骨髄間葉系幹細胞が培養された培養容器内に投入して、表面に骨髄間葉系幹細胞を付着させる。
その後、培養容器内に新しい骨形成培地を供給・混合する。この骨形成培地には、MEM、FBSの他にデキサメタゾンやβグリセロフォスフェートのような分化誘導因子やビタミンCのような栄養剤を混合する。
この培養容器を所定の温度(例えば、37±0.5℃)及びCO2濃度(例えば、0.5%)等の培養条件に維持し、所定の培養期間(例えば、6週間)内で骨形成培地を交換しながら培養する。
この培養によって、骨髄間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞と産生された骨基質とを有し骨形成作用が備えられた骨補填体10を得る。
【0015】
この生体組織補填体の製造方法によれば、T細胞12に特有な抗体としてT細胞12の持つ抗原基に対する抗体14を培地に投入してT細胞12を不活化して除去するので、低コストにT細胞12を除去することができる。また、製造した骨補填体10を患者に移植しても、免疫抑制剤を使用することなく免疫拒絶反応の一つであるGVH(Graft versus Host)反応を抑制することができる。
【0016】
次に、本発明に係る第2の実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した構成要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
第2の実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では 除去物質13として抗体14としたのに対して、第2の実施形態では除去物質15として抗体14に磁性粒子(被吸着物質)16を付着させたものとした点である。
【0017】
本実施形態に係る生体組織補填体の製造方法は、培養工程S1を備え、培養工程S1は、一次培養工程(S11)と二次培養工程(S02)とを備える。以下、各工程について説明する。
一次培養工程(S11)では、図5に示すようにまず、T細胞12の持つ抗原基のうち、CD3及びCD4に対するモノクロナール抗体(例えば、抗CD4抗体及び抗CD8抗体:シグマ社製)14に磁性粒子16(例えば、ダイナル社製)を物理吸着させた除去物質15を作成する。
次に、図4に示すように容器に採取した骨髄液(例えば、10ml)に除去物質15(例えば、100μl)を添加する。所定の時間(例えば、30分間)経過後、容器外壁に吸着物質として磁石を近接する。この際、図5に示すように、抗体14がT細胞12に付着してT細胞12の活性を中和して不活化するとともに、磁性粒子16が磁石17に吸引されて容器内壁に吸着する。この状態で骨髄液のみを別の容器に移し替える。こうして、T細胞12を抗体14及び磁性粒子16とともに骨髄液内から除去する。
【0018】
その後、採取した骨髄液から骨髄細胞を抽出する。この骨髄細胞には、T細胞12は含まれないので、分離した骨髄細胞を所定の培養容器内に投入した培地と混合して培養し、培地交換を繰り返して最終的に培養容器の底面に付着している骨髄間葉系幹細胞のみを抽出する。
そして、二次工程(S02)を経て、骨補填体10を得る。
この生体組織補填体の製造方法によれば、低コストでより確実にT細胞12を骨髄液から除去することができる。
【0019】
なお、除去物質15を、骨髄液内ではなく培養中の細胞浮遊液内に添加し、培地交換時に上述と同様に磁石17を近接させることによっても同様にT細胞12を除去することができる。
また、被吸着物質としてビオチンで抗CD4抗体及び抗CD8抗体を標識した抗CD4抗体及び抗CD8抗体試薬(例えば、シグマ社製)を添加してもよい。この場合、骨髄液を収納する容器内壁に吸着物質として予めアビチン(例えば、シグマ社製)をコーティングしておく。すると、アビチンとビオチンとが特異的に結合するので、磁性粒子16の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
【0020】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、除去物質13、15を一次培養工程(S01又はS11)で使用する培地、又は骨髄液或いは継代時の細胞浮遊液に挿入したが、二次培養工程(S02)で使用する骨形成培地や細胞浮遊液に挿入しても同様の作用・効果を得ることができる。
また、抗体も上述に限らず、T細胞の持つ抗原基に対するものであればよく、1種類でも別の組み合わせでも構わない。
さらに、免疫細胞としてT細胞のみならず、B細胞等の他の免疫細胞及びこれらを組み合わせた細胞を対象としてもよい。
被吸着物質も、骨形成作用に影響を及ぼさないものであって吸着物質との特異的な結合作用を有するものであれば、上記のものに限らなくても構わない。
【0021】
また、体液は、骨髄液に限らず、末梢血、さい帯血でも良く、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞等の体細胞が含まれるものであれば良い。生体組織も、骨組織のみならず、軟骨組織、筋肉組織、あるいは皮下組織等任意の生体組織を再生するために利用することも可能である。
生体組織補填材としても、生体組織に親和性のある材料なら何でも良く、生体吸収性の材料なら更に良い。多孔体でも良い。
多孔体としては、β―TCPのみならず、リン酸カルシウム系セラミックス、コラーゲン、ポリ乳酸等やこれらを組み合わせたものでも構わない。
【0022】
【発明の効果】
以上説明した本発明においては以下の効果を奏する。
本発明の生体組織補填体の製造方法によれば、除去物質を添加するので、患者以外の第三者から採取した体液を使用しても、移植後患者に免疫抑制剤を投与し続けることなく免疫拒絶反応を抑制することができる。また、免疫拒絶反応を抑制するので、適用範囲の広い生体組織補填体を提供することができる。
また、本発明の生体組織補填体によれば、移植した欠損部周囲の組織を活性化して、組織を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態における生体組織補填体の製造フローを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態における培養工程フローを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるT細胞の除去過程を示す概要図である。
【図4】本発明の第2実施形態における培養工程フローを示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるT細胞の除去過程を示す概要図である。
【符号の説明】
10 骨補填体(生体組織補填体)
12 T細胞(免疫細胞)
13、15 除去物質
14 抗体
16 磁性粒子(被吸着物質)
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体組織補填材から生体組織の欠損部を補填する生体組織補填体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨等の生体組織の欠損部に、骨補填材等の生体組織補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる。
【0003】
一方、術後の骨欠損部の修復速度を高めるために、患者から採取した骨髄間葉系幹細胞を骨補填材とともに培養することにより製造される培養骨等の生体組織補填体を使用することが提案されている。培養されることにより骨補填材を足場にして増殖した多くの骨髄間葉系幹細胞を含む骨補填体を骨欠損部に補填するので、手術後に体内で細胞を増殖させる方法と比較すると、自家骨に置換されるまでの日数を大幅に短縮することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、骨髄間葉系幹細胞を患者以外の第三者から採取する際、幹細胞とともに免疫細胞も採取されるので、骨髄間葉系幹細胞の培養過程で免疫細胞も培養される。そのため、免疫細胞が具備された生体組織補填体を患者に移植すると免疫拒絶反応を引き起こす不都合が考えられる。この免疫拒絶反応を起こす免疫細胞として、例えばT細胞が知られている。
このT細胞を免疫学的な方法によって標識する方法が従来から提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
【非特許文献1】
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第三0巻,第10号,p.46−49
【非特許文献2】
URL:http://www.shiyaku−daiichi.jp/catalog_pub/shiyaku/milty1.html
【非特許文献3】
URL:http://www.shiyaku−daiichi.jp/catalog_pub/shiyaku/milty3.html
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の生体組織補填体の製造方法では、免疫拒絶反応を抑えるためにHLA(ヒト白血球抗原)の一致する細胞を使用しようとしても、HLAが合致する第三者の数が限られて一致させるのが極めて困難であるという問題があった。
そのため、HLAが一致しない細胞を使用した場合、免疫拒絶反応を低減するために患者に免疫抑制剤を投与し続ける必要があるが、継続的な投与は患者に身体的、経済的に大きな負担を強いる問題があった。
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、免疫細胞等の識別技術を応用して、生体再生機能を保持しつつ移植による免疫拒絶反応の発生を抑制することができる生体組織補填体とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る生体組織補填体の製造方法は、生体組織から採取した体液内の幹細胞を培養して組織細胞に分化させる工程を備え、該工程中に、前記体液に含まれる免疫細胞を除去する除去物質を添加することを特徴とする。
この生体組織補填体の製造方法によれば、生体組織補填体の移植前に免疫細胞を除去するので、HLAが一致しない患者以外の第三者の体液を用いても免疫拒絶反応の発生を軽減できる生体組織補填体を低コストで製造することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記生体組織補填体の製造方法において、前記除去物質として前記免疫細胞の抗体を用いることが好ましい。
この生体組織補填体の製造方法によれば、除去物質が抗体なので、免疫細胞機能を不活化して、培地交換の際に培地に付着させることなく容易に除去することができる。
また、前記除去物質として、前記免疫細胞の抗体と、該抗体に付着させた被吸着物質とを用いることが好ましい。
この生体組織補填体の製造方法によれば、抗体にさらに被吸着物質が付着しているので、免疫細胞機能を不活化するとともに、吸着物質を挿入して被吸着物質を吸着させることによって免疫細胞を分離して、被吸着物質とともに免疫細胞を除去することができる。
【0009】
本発明では、前記生体組織補填体の製造方法であって、前記免疫細胞がT細胞であることが好ましい。
この生体組織補填体の製造方法によれば、T細胞に特有な抗体としてT細胞の持つ抗原基に対する抗体を選択できる。これにともない、免疫抑制剤を使用しなくても免疫拒絶反応の一つであるGVH(Graft versus Host)反応を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る生体組織補填体は、生体組織から採取した体液内の幹細胞を培養して組織細胞に分化させる途中に、前記体液が備える免疫細胞を除去する除去物質が添加されて製造されることを特徴とする。
この生体組織補填体によれば、欠損部にそのまま移植しても免疫拒絶反応を起こさずに欠損部周囲の組織を活性化して組織を再生することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態に係る生体組織補填体とその製造方法について、図1から図3を参照して説明する。なお、本実施形態では生体組織として骨を対象とする。
本実施形態に係る骨補填体(生体組織補填体)10の製造方法は、図1に示すように、培養工程Sを備える。
この培養工程Sは、さらに、一次培養工程(S01)と二次培養工程(S02)とを備える。
一次培養工程(S01)は、腸骨等(生体組織)から採取した骨髄液(体液)内の骨髄間葉系幹細胞(幹細胞)を培地内で培養する工程である。また、二次培養工程(S02)は、骨補填材11に骨髄間葉系幹細胞を付着させて骨芽細胞(組織細胞)に分化させて骨気質を産生し、骨補填材11を足場として生体組織形成作用を生じさせて骨補填体10とする工程である。
【0012】
一次培養工程(S01)では、図2に示すように、まず、腸骨等から骨髄液を採取する。採取した骨髄液を遠心分離機にかけて旋回することにより、比重の重い骨髄細胞を抽出する。この骨髄細胞には、骨髄間葉系幹細胞やT細胞12等の免疫細胞が含まれている。
そして、分離した骨髄細胞を所定の培養容器内に投入した培地と混合する。
培地として、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)と、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)と、抗生剤とを例えば84:15:1の割合で混合したものに、除去物質13として図3に示すようにT細胞12に作用する抗体14を添加する。
抗体14は、T細胞12の持つ抗原基(CD3、CD4、CD8、Thy1等)のうち、CD4及びCD8に対するモノクロナール抗体(例えば、抗CD4抗体及び抗CD8抗体:シグマ社製)であって、培地中に0.1%程度存在するように調整されている。
ここで、CD4は、いわゆるヘルパーT細胞のマーカーとして考えられるもので、抗CD4抗体で細胞を染色することによって他の血球細胞とヘルパー細胞とを識別する。
CD8は、細胞傷害性T細胞のマーカーとして考えられるもので、抗CD8抗体で細胞を染色することによって他の血球細胞と細胞傷害性T細胞とを識別する。
【0013】
続いて、培養容器内に混合した骨髄細胞と培地とをインキュベータ内に配置して、所定の温度(例えば、37±0.5℃)及びCO2濃度(例えば、0.5%)等の培養条件に維持する。
このとき、図3に示すように、抗体14がT細胞12に付着してT細胞12の活性機能の一部を中和して不活化する。
こうして、骨髄間葉系幹細胞を培養容器の底面に付着しながら成長する一方、不活化したT細胞12は培地に付着しづらく、培養容器内の細胞浮遊液中に浮遊する。そして、一次培養工程(S01)期間中に定期的に培地を交換する際に、培地に付着しないT細胞12は古い培地とともに除去される。そして、新たな培地とともに抗体14をさらに添加することによって、残ったT細胞12も次々に不活化して除去し、最終的に培養容器の底面に付着している骨髄間葉系幹細胞のみを抽出する。
【0014】
続いて、二次培養工程(S02)について説明する。
二次培養工程(S02)では、図2に示すように、まず、β−TCPの多孔体により構成されているブロック状の骨補填材11を骨髄間葉系幹細胞が培養された培養容器内に投入して、表面に骨髄間葉系幹細胞を付着させる。
その後、培養容器内に新しい骨形成培地を供給・混合する。この骨形成培地には、MEM、FBSの他にデキサメタゾンやβグリセロフォスフェートのような分化誘導因子やビタミンCのような栄養剤を混合する。
この培養容器を所定の温度(例えば、37±0.5℃)及びCO2濃度(例えば、0.5%)等の培養条件に維持し、所定の培養期間(例えば、6週間)内で骨形成培地を交換しながら培養する。
この培養によって、骨髄間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞と産生された骨基質とを有し骨形成作用が備えられた骨補填体10を得る。
【0015】
この生体組織補填体の製造方法によれば、T細胞12に特有な抗体としてT細胞12の持つ抗原基に対する抗体14を培地に投入してT細胞12を不活化して除去するので、低コストにT細胞12を除去することができる。また、製造した骨補填体10を患者に移植しても、免疫抑制剤を使用することなく免疫拒絶反応の一つであるGVH(Graft versus Host)反応を抑制することができる。
【0016】
次に、本発明に係る第2の実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した構成要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
第2の実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では 除去物質13として抗体14としたのに対して、第2の実施形態では除去物質15として抗体14に磁性粒子(被吸着物質)16を付着させたものとした点である。
【0017】
本実施形態に係る生体組織補填体の製造方法は、培養工程S1を備え、培養工程S1は、一次培養工程(S11)と二次培養工程(S02)とを備える。以下、各工程について説明する。
一次培養工程(S11)では、図5に示すようにまず、T細胞12の持つ抗原基のうち、CD3及びCD4に対するモノクロナール抗体(例えば、抗CD4抗体及び抗CD8抗体:シグマ社製)14に磁性粒子16(例えば、ダイナル社製)を物理吸着させた除去物質15を作成する。
次に、図4に示すように容器に採取した骨髄液(例えば、10ml)に除去物質15(例えば、100μl)を添加する。所定の時間(例えば、30分間)経過後、容器外壁に吸着物質として磁石を近接する。この際、図5に示すように、抗体14がT細胞12に付着してT細胞12の活性を中和して不活化するとともに、磁性粒子16が磁石17に吸引されて容器内壁に吸着する。この状態で骨髄液のみを別の容器に移し替える。こうして、T細胞12を抗体14及び磁性粒子16とともに骨髄液内から除去する。
【0018】
その後、採取した骨髄液から骨髄細胞を抽出する。この骨髄細胞には、T細胞12は含まれないので、分離した骨髄細胞を所定の培養容器内に投入した培地と混合して培養し、培地交換を繰り返して最終的に培養容器の底面に付着している骨髄間葉系幹細胞のみを抽出する。
そして、二次工程(S02)を経て、骨補填体10を得る。
この生体組織補填体の製造方法によれば、低コストでより確実にT細胞12を骨髄液から除去することができる。
【0019】
なお、除去物質15を、骨髄液内ではなく培養中の細胞浮遊液内に添加し、培地交換時に上述と同様に磁石17を近接させることによっても同様にT細胞12を除去することができる。
また、被吸着物質としてビオチンで抗CD4抗体及び抗CD8抗体を標識した抗CD4抗体及び抗CD8抗体試薬(例えば、シグマ社製)を添加してもよい。この場合、骨髄液を収納する容器内壁に吸着物質として予めアビチン(例えば、シグマ社製)をコーティングしておく。すると、アビチンとビオチンとが特異的に結合するので、磁性粒子16の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
【0020】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、除去物質13、15を一次培養工程(S01又はS11)で使用する培地、又は骨髄液或いは継代時の細胞浮遊液に挿入したが、二次培養工程(S02)で使用する骨形成培地や細胞浮遊液に挿入しても同様の作用・効果を得ることができる。
また、抗体も上述に限らず、T細胞の持つ抗原基に対するものであればよく、1種類でも別の組み合わせでも構わない。
さらに、免疫細胞としてT細胞のみならず、B細胞等の他の免疫細胞及びこれらを組み合わせた細胞を対象としてもよい。
被吸着物質も、骨形成作用に影響を及ぼさないものであって吸着物質との特異的な結合作用を有するものであれば、上記のものに限らなくても構わない。
【0021】
また、体液は、骨髄液に限らず、末梢血、さい帯血でも良く、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞等の体細胞が含まれるものであれば良い。生体組織も、骨組織のみならず、軟骨組織、筋肉組織、あるいは皮下組織等任意の生体組織を再生するために利用することも可能である。
生体組織補填材としても、生体組織に親和性のある材料なら何でも良く、生体吸収性の材料なら更に良い。多孔体でも良い。
多孔体としては、β―TCPのみならず、リン酸カルシウム系セラミックス、コラーゲン、ポリ乳酸等やこれらを組み合わせたものでも構わない。
【0022】
【発明の効果】
以上説明した本発明においては以下の効果を奏する。
本発明の生体組織補填体の製造方法によれば、除去物質を添加するので、患者以外の第三者から採取した体液を使用しても、移植後患者に免疫抑制剤を投与し続けることなく免疫拒絶反応を抑制することができる。また、免疫拒絶反応を抑制するので、適用範囲の広い生体組織補填体を提供することができる。
また、本発明の生体組織補填体によれば、移植した欠損部周囲の組織を活性化して、組織を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態における生体組織補填体の製造フローを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態における培養工程フローを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるT細胞の除去過程を示す概要図である。
【図4】本発明の第2実施形態における培養工程フローを示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるT細胞の除去過程を示す概要図である。
【符号の説明】
10 骨補填体(生体組織補填体)
12 T細胞(免疫細胞)
13、15 除去物質
14 抗体
16 磁性粒子(被吸着物質)
Claims (5)
- 生体組織から採取した体液内の幹細胞を培養して組織細胞に分化させる工程を備え、
該工程中に、前記体液に含まれる免疫細胞を除去する除去物質を添加することを特徴とする生体組織補填体の製造方法。 - 前記除去物質として、前記免疫細胞の抗体を用いることを特徴とする請求項1記載の生体組織補填体の製造方法。
- 前記除去物質として、前記免疫細胞の抗体と、該抗体に付着させた被吸着物質とを用いることを特徴とする請求項1記載の生体組織補填体の製造方法。
- 前記免疫細胞がT細胞であることを特徴とする請求項1から3の何れか記載の生体組織補填体の製造方法。
- 生体組織から採取した体液内の幹細胞を培養して組織細胞に分化させる途中で、前記体液が備える免疫細胞を除去する除去物質が添加されて製造されることを特徴とする生体組織補填体。
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