JP2004304879A - 超電導機器の許容通電電流検知装置およびそれを用いた電力システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電力供給源から負荷に至る電力系統に接続された、超電導体を含む超電導機器の許容通電電流を検知する装置であって、前記超電導機器に、超電導状態を保ちつつ通電している状態で、通電電流の周期より短い時間、重畳電流を供給する電流源と、前記超電導機器で発生した電圧信号を測定する手段と、前記電圧信号に基づいて前記超電導機器の許容通電電流を検知する手段とを有する超電導機器の許容通電電流検知装置。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導機器の許容通電電流検知装置およびそれを用いた電力システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高温超電導体の材料開発が多くの研究機関や企業において積極的に行われ、高温超電導体を用いた電力用ケーブル、トランス、限流器など電力用の超電導機器の実用化に向けた研究開発が進められている。例えば、超電導限流器は、超電導体の超電導状態から常電導状態への転移の際に発生する抵抗を利用して、電流供給を停止するものである。現状の超電導限流器は、容量が小さく電力システムに適用するには不十分であるが、素子構造の改良や限流素子の直並列化による大容量化が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような電力用の超電導機器を電力系統に接続して使用している際に超電導機器に不具合を生じると、品質の高い電力を安定的に供給することができなくなるので、超電導機器には非常に高い信頼性が要求される。超電導機器の不具合の一つに、超電導体の臨界電流が劣化して、許容通電電流値が低くなることが挙げられる。そのため、超電導機器の設置時および定期検査時に許容通電電流値を検知して、劣化している場合には迅速にメンテナンスや交換を行うことが必要である。
【0004】
一般に、超電導体の許容通電電流は、想定される臨界電流に近い電流を流した際に発生する微小な電圧を測定することにより評価される。ところが、電力系統での通常通電時には、超電導機器の電流容量を超電導体の臨界電流の50〜90%程度に設定している。このため、通常通電を行っている状態では電圧が発生しないのが普通であり、超電導機器の臨界電流が大幅に劣化した場合などの異常時にのみ電圧が発生する。こうした異常時に電圧を検出できたとしても、機器の損壊につながるという問題がある。一方、超電導機器を電力系統から切り離して、許容通電電流を評価しようとすると、代替機器の設置や切り替えなどの煩雑な作業が発生する。
【0005】
以上のような背景から、通常の使用状態すなわち電力系統に接続して通常通電している状態で、超電導機器の許容通電電流を測定して異常を検知できるようにすることが望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−204845号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電力用の超電導機器を電力系統に接続した状態で、許容通電電流を検知できる装置およびそれを用いた電力システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様に係る超電導機器の許容通電電流検知装置は、電力供給源から負荷に至る電力系統に接続された、超電導体を含む超電導機器の許容通電電流を検知する装置であって、前記超電導機器に、超電導状態を保ちつつ通電している状態で、通電電流の周期より短い時間、重畳電流を供給する電流源と、前記超電導機器で発生した電圧信号を測定する手段と、前記電圧信号に基づいて前記超電導機器の許容通電電流を検知する手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る装置において、前記電流源はパルス電流源であり、前記重畳電流として通電電流のピークに同期したパルス電流を供給することが好ましい。
【0010】
本発明に係る装置は、さらに、前記超電導機器で発生した電圧が超電導体の長さ当り1μV/cm以上になるまで重畳電流を増加させるように電流源を制御する制御器を有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る装置において、前記超電導機器の許容通電電流を検知する手段は、前記超電導機器で発生した電圧から、前記超電導機器のインダクタンスと接続抵抗による電圧とを除去した電圧に基づいて、前記超電導機器の許容通電電流を決定することが好ましい。
【0012】
本発明に係る装置は、前記超電導機器で発生した電圧が所定の値に達したときに、前記電流源および電圧測定手段を、前記電力系統から切り離すスイッチを有することが好ましい。
【0013】
本発明の他の態様に係る電力システムは、電力供給源と負荷とこれらの間に接続された超電導体を含む超電導機器とを有する電力系統と、前記超電導機器に、超電導状態を保ちつつ通電している状態で、通電電流の周期より短い時間、重畳電流を供給する電流源と、前記超電導機器で発生した電圧信号を測定する手段と、前記電圧信号に基づいて前記超電導機器の許容通電電流を検知する手段と、前記超電導機器をバイパスするバイパス電流経路とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電力システムは、前記超電導機器と前記負荷との間に、通電電流の周波数以外の電気信号を除去するフィルタ回路を有することが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1を参照して、本発明の実施形態に係る電力システムの概略的な構成を説明する。図1は、電力供給源(変電所)と負荷としての各種電力消費系統との間に、超電導機器として超電導限流器を接続した電力系統を含む電力システムを示している。図1には図示しないが、発電所間で電力の貸し借りをするために複数の発電所が連結され、また1つの発電所からは複数の変電所に電力が送られる。
【0016】
図1に示すように、図示しない発電所から送電される66kVの電力は変電所100で6.6kVに降圧されて複数の負荷(電力消費系統)へ送電される。図1では、負荷の例として、一般家庭(A系統)、工場(B系統)、病院(C系統)を示している。
【0017】
このような電力システムにおいて、たとえば図中のB系統のX地点で短絡事故が発生した場合、インピーダンスが急激に低下するため、B系統に電流が集中する。その結果、C系統への送電容量が低下して、電圧の低下などの不具合が生じる。その対策として、各電力系統には遮断器101が設けられ、短絡事故が起こった際に即座にその電力系統を遮断して他の電力系統から切り離すようにしている。しかし、遮断器101が動作するまでにはミリ秒オーダーの時間を要するため、瞬時の停電または電圧低下も許されない電力系統を連結することができないのが現状である。この問題を解決するために、各電力系統に超電導限流器102が接続される。超電導限流器102は許容量以上の電流が流れると瞬時に常伝導に転移して抵抗を発生し、大電流が流れるのを防ぐ。ただし、従来は超電導限流器102の異常などを簡便に検知することはできなかった。
【0018】
本発明の実施形態に係る電力システムでは、超電導限流器102に対して許容通電電流検知装置103を設けている。詳細は後述するが、許容通電電流検知装置103は超電導限流器102に電力系統に接続して通常通電電流を流したままで超電導限流器102の許容通電電流の検知を可能にする。したがって、超電導限流器102の劣化を速やかに判定してメンテナンスや交換が可能となり、電力システムの安定性を向上できる。
【0019】
本発明の実施形態に係る電力システムでは、切り替えスイッチ105を介して、超電導限流器102をバイパスするバイパス電流経路106を設けてもよい。この構成では、許容通電電流検知装置103によって超電導限流器102の許容通電電流の低下がないか常に監視し、低下が見られた場合には中央集中制御センター107に警報を送り、そこからの制御信号により切り替えスイッチ105を動作させて、バイパス電流経路106または図示しない予備の超電導限流器に切り替えてメンテナンスを行うようにできる。
【0020】
図2および図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る超電導限流器の許容通電電流検知装置を説明する。図2は通常通電時における超電導限流器の接続状況を示す構成図である。図3は許容通電電流検知装置と超電導限流器との接続状況を示す構成図である。
【0021】
図2および図3に示すように、超電導限流器1は冷却容器2に設置され、液体窒素または冷凍機により77K以下に冷却されている。超電導限流器1は、電力供給源3(発電所、変電所など)と負荷4としての電力消費系統との間に直列接続されている。超電導限流器1は、電力系統で短絡事故が発生し大電流が流れる際に抵抗を発生し、電流を停止する作用を有する。
【0022】
図2に示すように、超電導限流器1と直列に電流測定装置5が接続され、超電導限流器1と並列に高圧プローブ6および光アイソレーション7を介して電圧測定装置8が接続されている。このように、通常通電時には、超電導限流器1に流れる電流を電流測定装置5によって、超電導限流器1において発生した電圧を電圧測定装置8によって常時観測している。高圧プローブ6および光アイソレーション7は、限流動作時には超電導限流器1に6.6kVまたは66kVの高電圧が印加されるため、1000分の1に降圧するために設けられている。このため、通常通電時に臨界電流のクライテリオンに相当する数mV〜数十mV程度の微小電圧を測定することは困難である。
【0023】
図3は、定期点検時における、本発明の実施形態に係る許容通電電流検知装置と超電導限流器との接続状況を示す構成図である。図3に示すように、破線で囲んだ許容通電電流検知装置9は、パルス電流源10、電圧測定装置11、電流測定装置12、データ処理装置13などの機器を含んでいる。パルス電流源10は超電導限流器1の電流導入端子31、32に接続され、超電導状態を保ちつつ通常通電している状態で、超電導機器1に通電電流の周期より短時間だけ重畳電流を供給する。電圧測定装置11は超電導限流器1の電圧測定端子33、34に接続され、超電導機器で発生した電圧信号を測定する。電流測定装置12は超電導限流器1に流れる電流を観測する。データ処理装置13は電圧測定装置11によって測定された電圧信号に基づいて超電導機器1の許容通電電流を検知する。
【0024】
図4(a)〜(d)に、通常通電電流It、パルス電流源10から供給されるパルス電流Ip、超電導限流器1に流れる電流If、超電導限流器1で発生する電圧Vfの波形を示す。この図に示すように、周波数50Hzの通常通電電流Itのピークに同期させて、パルス電流Ipを重畳させて供給する。その際に、超電導限流器1で発生した電圧Vfをデータ処理装置13に入力し、許容通電電流のクライテリオン(超電導体の長さ当りで1μV/cmの発生電圧)に相当する電圧が発生しているかどうかを判定し、クライテリオンに達するまでパルス電流の大きさを増加させるように、データ処理装置13からパルス電流源10に制御信号を送って制御する。このような手順で、超電導限流器1の許容通電電流を決定し、予め記録しておいた設置時の臨界電流と比較することにより、超電導限流器1の劣化を判定する。
【0025】
図4に示したように、定期点検時に超電導限流器1に通電する、通電電流Itとパルス電流Ipとを重畳させた電流Ifは、周期的な波形を有することが好ましい。これは、周期的な波形であれば簡便に平均化することができ、許容通電電流を検知する精度が向上するためである。超電導限流器1に通電する電流Ifを周期的な波形とするためには、パルス電流Ipの周波数を通電電流Itの周波数の整数倍にして、通電電流Itとパルス電流Ipとを同期させることが好ましい。
【0026】
なお、超電導体に臨界電流を超える電流が流れるとジュール発熱を生じ、その発熱量が大きいと温度上昇し超電導限流器1がクエンチするおそれがある。その場合には大量の液体窒素が蒸発し、最悪の場合は機器の損壊にまで及ぶ。したがって、超電導限流器1をクエンチにまで至らせないようにするために、重畳するパルス電流のピーク値は、設置時の臨界電流の3倍以下、さらには1.5倍以下が好ましい。また、パルス幅は、通電電流の周期の1/2以下、さらには1/10以下が好ましい。
【0027】
一方、パルス電流の周波数が高すぎると、超電導限流器には交流に対するインダクタンスがあるため電圧が発生し、許容通電電流の決定が困難になる。このため、パルス電流の周波数は100kHz以下が好ましい。なお、通常通電時に超電導限流器のインダクタンス以外に接続抵抗による電圧も微小であるが発生する。したがって、さらに許容通電電流の精度を向上させるためには、通常通電時に発生する電圧をモニターしておき、パルス電流を加えた際に発生した電圧から、インダクタンスと接続抵抗による電圧を除去し、その抽出された電圧に基づいて許容通電電流を決定することが好ましい。これらのインダクタンスと接続抵抗による電圧の除去はデータ処理装置13によって行うことが好ましい。
【0028】
本発明の実施形態に係る電力システムでは、電力供給源に他の電力系統も接続されている場合がある。その電力系統で短絡事故が発生した場合、本発明に使用されている超電導限流器1には高電圧が発生するため許容通電電流検知装置9が破壊されるおそれがある。この問題に対しては、図5および図6に示す構成を採用することが有効である。図5は、パルス電流発生器14の出力部にスイッチ15と高周波トランス16とを設けたパルス電流源10を示している。図6は電圧測定器17の入力部にスイッチ18を設けた電圧測定装置11を示している。これらの図に示すパルス電流源10および電圧測定装置11は、超電導限流器1に発生した電圧が所定値に達したときに、スイッチ15、18をオフして電力系統から切り離すことが可能である。
【0029】
パルス電流を供給した際に超電導限流器1で発生する電圧は数10mVから大きくても1V程度であり、電力系統の電圧6.6kVまたは66kVに比べて非常に小さく、負荷4への影響は非常に小さい。しかし、負荷4によっては周波数の大きいノイズを除去したい場合がある。この問題に対しては、図7に示すように、超電導限流器1と負荷4との間に、パルス電流を加えた際に発生する周波数の大きい電気信号を除去するフィルタ回路19を設置して電力システムを構成することが好ましい。
【0030】
以上においては、超電導機器が超電導限流器である場合について説明したが、超電導機器には超電導ケーブルや超電導トランスなども含まれる。また、許容通電電流検知装置を電力供給源と負荷(電力消費機器)との間に接続される超電導機器とともに電力システムの一部として組み込んだ場合について説明したが、許容通電電流検知装置を移動可能なラックに収納し、超電導機器に適宜接続して定期検査用として使用することもできる。したがって、設置場所が異なる複数の超電導機器の許容通電電流を定期的に調べることができる。また超電導機器を電力系統に接続しない状態でも、本発明に係る装置により許容通電電流を検知できることはいうまでもない。
【0031】
【実施例】
次に具体的な実施例について図を参照しながら説明する。
【0032】
[実施例1]
図8に本実施例における超電導限流器と許容通電電流検知装置を用いた電力システムの構成図を示す。超電導限流器1は冷却容器内2に設置されて液体窒素で77Kに冷却された状態で電力供給源3と負荷4との間に直列接続されている。超電導限流器1は容量が6.6kV(ピーク電圧9.3kV)/1kA(ピーク電流1.4kA)であり、Y系高温超電導薄膜を用いた限流素子を複数枚、直並列接続したモジュールで構成されている。Y系高温超電導薄膜の長さは4mであった。
【0033】
本実施例における許容通電電流検知装置9を破線で示す。超電導限流器1の電流導入端子31、32にはLC共振回路からなるパルス電流源(後により詳細に説明する)が、超電導限流器1の電圧測定端子33、34にはスイッチ18を介して電圧測定装置17がそれぞれ接続されている。電流測定装置12は超電導限流器1に流れる電流を観測する。データ処理装置13は電圧測定装置17によって測定された電圧信号に基づいて超電導機器1の許容通電電流を検知する。
【0034】
パルス電流源は、高周波トランス16(巻線比1:100、応答周波数50〜5kHz)、LC共振回路を切り離すスイッチ15、サイリスタスイッチ22、コンデンサ21、インダクタンス20、コンデンサを充電する充電器23から構成されている。コンデンサ21は複数のコンデンサで構成され、接続数を切り替えることにより容量を可変できる。同様に、インダクタンス20には線路長を選択できる複数の端子が設けられており、線路長を切り替えることによりインダクタンスを可変できる。本実施例ではコンデンサおよびインダクタンスの容量をそれぞれ25μF、1mHに設定した。したがって、サイリスタスイッチ22とスイッチ15をオンした場合、周波数1kHzの電流を流すことができる。また、充電器においてコンデンサの充電電圧を可変できる。例えば100V充電した場合、パルス電流Ipのピーク電流は1.6kAであった。パルス電流の大きさはコンデンサの充電電圧により調整した。
【0035】
図9(a)および(b)に、500A(ピーク電流700A)の通常通電電流Itと、超電導限流器1で発生する電圧Vfの波形を示す。通常通電時には、超電導限流器1にインダクタンスと接続抵抗による電圧が観測され、ピーク電圧は約1.4mVであった。この結果から、接続抵抗は約2μΩであることがわかった。なお、超電導限流器1のインダクタンスは50nH程度と小さく、発生電圧の大部分は接続抵抗によるものであった。
【0036】
図10(a)〜(d)に、通常通電電流に1kA(ピーク電流1.4kA)のパルス電流を重畳させたときに超電導限流器1に流れる電流Ifと、超電導限流器1で発生する電圧Vfの波形を示す。(a)に示すようにパルス電流はサイリスタスイッチ22の操作により通電電流のピークに同期させて供給した。(b)は実測の電圧波形であり、(c)はデータ処理装置13によって1000サイクルの波形を平均化した波形である。(d)は(c)の平均化した電圧から超電導限流器1の接続抵抗とインダクタンスによる電圧を除去した電圧波形である。
【0037】
超電導限流器1に使用したY系高温超電導薄膜の長さは4mであり、臨界電流のクライテリオン(1μV/cm)に相当する電圧は0.4mVである。(a)と(d)の結果を用いて0.4mVに達した電流値を見積もると約1.7kAであった。この電力システムを長期間使用したところ許容通電電流の低下が見られた。許容通電電流が設置時の臨界電流の80%まで低下したときに警報を発するように設定し、超電導限流器の交換を行うようにした。
【0038】
[実施例2]
実施例1と同様の電力システムにおいて、定期的に許容通電電流を検知している際に、同じ電力供給源に接続された他の電力系統で短絡事故が発生した。図11に、その際に超電導限流器1に流れる電流Ifと、超電導限流器1で発生する電圧Vfの波形を示す。超電導限流器1で発生する電圧がクエンチの判定基準である5Vに達したため、データ処理装置13よりスイッチ15、18に信号を送り、パルス電流源と電圧測定器を電力系統から切り離した。これにより、超電導限流器1の動作に伴って許容通電電流検知装置9に高電圧が印加されるのを避けて破損を免れることができた。
【0039】
[実施例3]
図7に示したように、超電導限流器1と負荷4との間に通電電流の周波数以外の電気信号を除去するフィルタ回路19を接続した電力システムを構成した。図12(a)および(b)に、フィルタ回路19なしの場合とフィルタ回路19ありの場合の負荷に加わる電圧の波形を示す。フィルタ回路19を設けたことにより、超電導限流器1にパルス電流を供給した際に発生する負荷4の電圧低下を防止でき、より安定した電力の供給が可能になった。
【0040】
[実施例4]
図13に本実施例における電力システムを示す。この電力システムでは、発電設備51と電力消費機器52が液体窒素循環装置53により77K以下に冷却された超電導ケーブル54で接続されており、超電導ケーブル54の両端にスイッチ57、57を介して許容通電電流検知装置55が接続されている。また、許容通電電流検知装置55には警報装置56が接続されている。
【0041】
超電導ケーブル54に通常通電電流を供給した状態で、通常通電電流の電流ピークに同期させてパルス幅1msecのパルス電流を重畳させ、パルス電流のピーク値を一定の割合で増加させて1μV/cmの電圧が発生するまで供給することにより、超電導ケーブル54の許容通電電流を検知することができる。
【0042】
通常通電電流が設置時の臨界電流の80%を超えた場合に警報装置6を作動させて合格の警報を発するようにした。一方、許容通電電流が設置時の臨界電流の80%以下になった場合にも警報装置6を動作させて交換のための警報を発するようにし、その警報に基づいて超電導ケーブル54を交換した。また、本実施例に係る許容通電電流検知装置55を有する電力システムでは、液体窒素の温度上昇による許容通電電流の低下を検知して警報を発することもできる。
【0043】
なお、図13には1本の超電導ケーブルしか図示していないが、距離が長い場合には複数の超電導ケーブルを中継し、それぞれの超電導ケーブルに対応して液体窒素循環装置が設けられる。このような場合、本発明に係る許容通電電流検知装置55を全ての超電導ケーブルに接続することが望ましいが、接続スイッチ57によって許容通電電流検知装置55を切り離すことができるので、定期検査のために全ての超電導ケーブルに対応して許容通電電流検知装置55を用意する必要はない。
【0044】
本発明に係る許容通電電流検知装置は、SMES、超電導変圧器など超電導線材を用いた装置、およびこれらの装置を含む電力システムにも応用できる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電力用の超電導機器を電力系統に接続した状態で超電導機器の許容通電電流を検知することができる。これにより、超電導機器の劣化を速やかに判定してメンテナンスや交換が可能となり、安定性に優れた電力システムを構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る電力システムの概略的な構成図。
【図2】超電導限流器の通常通電時における接続状況を示す構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る許容通電電流検知装置と超電導限流器との接続状況を示す構成図。
【図4】本発明の実施形態に係る許容通電電流検知装置を超電導限流器に適用した場合の電流波形図。
【図5】本発明の実施形態に係る許容通電電流検知装置のパルス電流源の構成図。
【図6】本発明の実施形態に係る許容通電電流検知装置の電圧測定装置の構成図。
【図7】本発明の実施形態に係る超電導限流器と負荷との間にフィルタ回路を設置した電力システムの構成図。
【図8】本発明の実施例1における超電導限流器と許容通電電流検知装置を用いた電力システムの構成図。
【図9】本発明の実施例1における、超電導限流器に流れる通常通電電流と超電導限流器で発生する電圧の波形図。
【図10】本発明の実施例1における、通常通電電流にパルス電流を重畳させたときに超電導限流器に流れる電流と超電導限流器で発生する電圧の波形図。
【図11】本発明の実施例2における、他の電力系統で短絡事故が発生した際に超電導限流器に流れる電流と超電導限流器で発生する電圧の波形図。
【図12】本発明の実施例3における、フィルタ回路なしの電力システムおよびフィルタ回路なしの電力システムでの負荷に加わる電圧の波形図。
【図13】本発明の実施例4における電力システムの構成図。
【符号の説明】
1…超電導限流器、2…冷却容器、3…電源、4…負荷、5…電流測定装置、6…高圧プローブ、7…光アイソレータ、8…電圧測定器、9…許容通電電流検知装置、10…パルス電流源、11…電圧測定装置、12…電流測定装置、13…データ処理装置、14…パルス電流発生器、15…スイッチ、16…高周波トランス、17…電圧測定器、18…スイッチ、19…フィルタ回路、20…インダクタンス、21…コンデンサ、22…サイリスタスイッチ、23…充電器、31、32…電流導入端子、33、34…電圧測定端子、51…発電設備、52…電力消費機器、53…液体窒素循環装置、54…超電導ケーブル、55…許容通電電流検知装置、56…警報装置、57…スイッチ、100…変電所、101…遮断器、102…超電導限流器、103…許容通電電流検知装置、105…切り替えスイッチ、106…バイパス電流経路、107…中央集中制御センター。
Claims (7)
- 電力供給源から負荷に至る電力系統に接続された、超電導体を含む超電導機器の許容通電電流を検知する装置であって、
前記超電導機器に、超電導状態を保ちつつ通電している状態で、通電電流の周期より短い時間、重畳電流を供給する電流源と、
前記超電導機器で発生した電圧信号を測定する手段と、
前記電圧信号に基づいて前記超電導機器の許容通電電流を検知する手段と
を有することを特徴とする超電導機器の許容通電電流検知装置。 - 前記電流源はパルス電流源であり、前記重畳電流として通電電流のピークに同期したパルス電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の超電導機器の許容通電電流検知装置。
- さらに、前記超電導機器で発生した電圧が超電導体の長さ当り1μV/cm以上になるまで重畳電流を増加させるように電流源を制御する制御器を有することを特徴とする請求項1または2に記載の超電導機器の許容通電電流検知装置。
- 前記超電導機器の許容通電電流を検知する手段は、前記超電導機器で発生した電圧から、前記超電導機器のインダクタンスと接続抵抗による電圧とを除去した電圧に基づいて、前記超電導機器の許容通電電流を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超電導機器の許容通電電流検知装置。
- 前記超電導機器で発生した電圧が所定の値に達したときに、前記電流源および電圧測定手段を、前記電力系統から切り離すスイッチを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超電導機器の許容通電電流検知装置。
- 電力供給源と負荷とこれらの間に接続された超電導体を含む超電導機器とを有する電力系統と、
前記超電導機器に、超電導状態を保ちつつ通電している状態で、通電電流の周期より短い時間、重畳電流を供給する電流源と、
前記超電導機器で発生した電圧信号を測定する手段と、
前記電圧信号に基づいて前記超電導機器の許容通電電流を検知する手段と、
前記超電導機器をバイパスするバイパス電流経路と
を有することを特徴とする電力システム。 - 前記超電導機器と前記負荷との間に、通電電流の周波数以外の電気信号を除去するフィルタ回路を有することを特徴とする請求項6に記載の電力システム。
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