JP2004299174A - 液滴吐出装置 - Google Patents

液滴吐出装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2004299174A
JP2004299174A JP2003093433A JP2003093433A JP2004299174A JP 2004299174 A JP2004299174 A JP 2004299174A JP 2003093433 A JP2003093433 A JP 2003093433A JP 2003093433 A JP2003093433 A JP 2003093433A JP 2004299174 A JP2004299174 A JP 2004299174A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
residual vibration
ink
unit
droplet discharge
ejection
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003093433A
Other languages
English (en)
Inventor
Katsunori Tajima
功規 田島
Osamu Shinkawa
修 新川
Yusuke Sakagami
裕介 坂上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2003093433A priority Critical patent/JP2004299174A/ja
Publication of JP2004299174A publication Critical patent/JP2004299174A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Coating Apparatus (AREA)

Abstract

【課題】各種センサを用いることなく、液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度を、容易かつ確実に調整することができる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明の液滴吐出装置は、駆動回路により駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動により変位する振動板とを有し、前記駆動回路によりアクチュエータを駆動し、キャビティ内の液体をノズルから液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置であって、前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度を調整する温度調整手段を有することを特徴とする。
【選択図】図43

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液滴吐出装置の一つであるインクジェットプリンタは、複数のノズルからインク滴(液滴)を吐出して所定の用紙上に画像形成を行う装置であり、一般的に環境温度に応じて印刷を制御することが行われている。例えば、インクジェットプリンタでは、ノズルから吐出されるインク量は環境温度の影響を受けるため、環境温度を測定してその温度に応じて予め設定された吐出駆動波形を選択して吐出するインク量を制御している。
また、インクジェットプリンタでは、所定の印刷品質を実現できることを保証する温度の動作保証範囲が設定され、この動作保証範囲内において周辺温度に対する制御が行われる。なお、動作保証範囲外においても決められた温度制御が行われるが、所定の印刷品質等を保証できないのが普通である。
【0003】
このため従来では、以下の方法が提案されている。
インク溜りの内部に、インク液温を検出する液温センサが備えられており、CPUによりこれらがモニタされている。インク供給路には、インク供給口の近傍にインク加熱器およびその後方に液温センサを配置している。インク溜りに供給されるインクは、インク加熱器で所望の温度に加熱され、液温センサによりインク液温をモニタし、インク温度が適切な温度になるようにインク加熱器での加熱をフィードバック制御して、インクの吐出量を制御する方法である(例えば、特許文献1など)。
しかしなから、前記特許文献1に開示されている方法では、インク溜りの内部、インク流路、あるいはインクカートリッジ内に各種センサを設置する必要があり、その結果、インクジェットヘッドやインクカートリッジが大型化し、ひいては、装置全体が大型化し、また、製造コストアップを招くという問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−137250号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各種センサを用いることなく、液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度を、容易かつ確実に調整することができる液滴吐出装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出装置は、駆動回路により駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動により変位する振動板とを有し、前記駆動回路によりアクチュエータを駆動し、キャビティ内の液体をノズルから液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置であって、
前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度を調整する温度調整手段を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の液滴吐出装置は、駆動回路により駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動により変位する振動板とを有し、前記駆動回路によりアクチュエータを駆動し、キャビティ内の液体をノズルから液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置であって、
前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度を検出する温度検出手段を有し、該温度検出手段からの検出値に基づいて、前記キャビティ内の液体の温度を調整する温度調整手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の液滴吐出装置では、前記温度検出手段からの検出値に応じて、前記駆動回路により生成する駆動波形を補正するよう構成されるのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記温度検出手段からの検出値に応じて、前記液滴吐出ヘッドが吐出する液滴の数量を補正するよう構成されるのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の振幅を含むのが好ましい。
【0009】
本発明の液滴吐出装置では、前記振動板の残留振動の振幅量が、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度に対応するのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段により、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の目標温度に対応する振幅量の基準値と、検出された前記残留振動の振幅量との差である偏差量を求め、該偏差量が可及的に0または所定範囲内になるように前記キャビティ内の液体の温度を調整するのが好ましい。
【0010】
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段により、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の目標温度に対応する振幅量の基準値と、検出された前記残留振動の振幅量との差である偏差量を求め、
該偏差量が品質保証範囲内になると、液滴の吐出動作の開始を許可する吐出動作開始許可手段を有するのが好ましい。
【0011】
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段により、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の目標温度に対応する振幅量の基準値と、検出された前記残留振動の振幅量との差である偏差量を求め、
液滴の吐出動作中において、該偏差量が正常範囲から外れると、前記液滴の吐出動作を停止するのが好ましい。
【0012】
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段は、前記キャビティ内の液体を加熱および/または冷却し得る加熱・冷却手段を有するのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段は、前記加熱・冷却手段に対し、比例制御補正を行う比例演算器、PI制御補正を行うPI制御演算器およびPID制御補正を行うPID制御演算器のうちの少なくとも1つを有するのが好ましい。
【0013】
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振するのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する前記アクチュエータの静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振するのが好ましい。
【0014】
本発明の液滴吐出装置では、前記発振回路は、前記アクチュエータの静電容量成分と、前記アクチュエータに接続される抵抗素子の抵抗成分とによるCR発振回路を構成するのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段は、前記発振回路の出力信号における発振周波数の変化に基づいて生成される所定の信号群により、前記振動板の残留振動の電圧波形を生成するF/V変換回路を含むのが好ましい。
【0015】
本発明の液滴吐出装置では、前記温度調整手段は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形を所定の波形に整形する波形整形回路を含むのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記波形整形回路は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形から直流成分を除去するDC成分除去手段を含み、
前記温度調整手段は、前記DC成分除去手段によって直流成分を除去された電圧波形のピーク値である前記残留振動の波高値を検出するピーク検出手段を含むのが好ましい。
【0016】
本発明の液滴吐出装置では、前記アクチュエータは、静電式アクチュエータであるのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記アクチュエータは、圧電素子のピエゾ効果を利用した圧電アクチュエータであるのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記アクチュエータは、通電により発熱する発熱体を備える膜沸騰式アクチュエータであるのが好ましい。
【0017】
本発明の液滴吐出装置では、前記振動板は、前記キャビティ内の圧力の変化に追従して弾性的に変形するのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドの吐出異常をその原因とともに検出する吐出異常検出手段を有するのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記吐出異常検出手段により前記液滴吐出ヘッドの吐出異常が検出された場合、前記液滴吐出ヘッドに対し、その吐出異常の原因に応じて、前記吐出異常の原因を解消させる回復処理を行う回復手段を有するのが好ましい。
【0018】
本発明の液滴吐出装置では、前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の周期を含み、
前記吐出異常検出手段は、前記振動板の残留振動の周期が所定の範囲の周期よりも短いときには、前記キャビティ内に気泡が混入したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が所定の閾値よりも長いときには、前記ノズル付近の液体が乾燥により増粘したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が前記所定の範囲の周期よりも長く、前記所定の閾値よりも短いときには、前記ノズルの出口付近に紙粉が付着したものと判定するのが好ましい。
本発明の液滴吐出装置では、前記液滴吐出装置は、インクジェットプリンタを含むのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図59を参照して本発明の液滴吐出装置の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態は例示として挙げるものであり、これにより本発明の内容を限定的に解釈すべきではない。なお、以下、本実施形態では、本発明の液滴吐出装置の一例として、インク(液状材料)を吐出して記録用紙に画像をプリントするインクジェットプリンタを用いて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタ1の構成を示す概略図である。なお、以下の説明では、図1中、上側を「上部」、下側を「下部」という。
ここで、本発明の要部(特徴)は、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の振動板の残留振動(減衰振動)の振動パターンに基づくキャビティ内のインク(液体)の温度の検出(推定)や、それに基づく、インクの温度調整(温度制御)等であるが、本発明の理解を容易にするため、まずは、インクジェットプリンタ1の構成や動作(作用)を一通り説明し、その後、前記本発明の要部について説明する。
【0021】
図1に示すインクジェットプリンタ1は、装置本体2を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ21と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口22と、上部面に操作パネル7とが設けられている。
操作パネル7は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(表示手段)Mと、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。この操作パネル7の表示部Mは、報知手段として機能する。
【0022】
また、装置本体2の内部には、主に、往復動する印字手段(移動体)3を備える印刷装置(印刷手段)4と、記録用紙(液滴受容物)Pを印刷装置4に対し供給・排出する給紙装置(液滴受容物搬送手段)5と、印刷装置4及び給紙装置5を制御する制御部(制御手段)6とを有している。
制御部6の制御により、給紙装置5は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、印字手段3の下部近傍を通過する。このとき、印字手段3が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、印字手段3の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査及び副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
【0023】
印刷装置4は、印字手段3と、印字手段3を主走査方向に移動(往復動)させる駆動源となるキャリッジモータ41と、キャリッジモータ41の回転を受けて、印字手段3を往復動させる往復動機構42とを備えている。
印字手段3は、複数のヘッドユニット35と、各ヘッドユニット35にインクを供給するインクカートリッジ(I/C)31と、各ヘッドユニット35およびインクカートリッジ31を搭載したキャリッジ32とを有している。
【0024】
なお、インクカートリッジ31として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、印字手段3には、各色にそれぞれ対応したヘッドユニット35(この構成については、後に詳述する。)が設けられることになる。ここで、図1では、4色のインクに対応した4つのインクカートリッジ31を示しているが、ヘッドユニット3は、その他の色、例えば、ライトシアン、ライトマゼンダ、ダークイエローなどのインクカートリッジ31をさらに備えるように構成されてもよい。
【0025】
往復動機構42は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸422と、キャリッジガイド軸422と平行に延在するタイミングベルト421とを有している。
キャリッジ32は、往復動機構42のキャリッジガイド軸422に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト421の一部に固定されている。
【0026】
キャリッジモータ41の作動により、プーリを介してタイミングベルト421を正逆走行させると、キャリッジガイド軸422に案内されて、印字手段3が往復動する。そして、この往復動の際に、印刷されるイメージデータ(印刷データ)に対応して、ヘッドユニット35の各インクジェットヘッド100から適宜インク滴が吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0027】
給紙装置5は、その駆動源となる給紙モータ51と、給紙モータ51の作動により回転する給紙ローラ52とを有している。
給紙ローラ52は、記録用紙Pの搬送経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ52aと駆動ローラ52bとで構成され、駆動ローラ52bは給紙モータ51に連結されている。これにより、給紙ローラ52は、トレイ21に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置4に向かって1枚ずつ送り込んだり印刷装置4から1枚ずつ排出したりようになっている。なお、トレイ21に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
【0028】
制御部6は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)やディジタルカメラ(DC)等のホストコンピュータ8から入力された印刷データに基づいて、印刷装置4や給紙装置5等を制御することにより記録用紙Pに印刷処理を行うものである。また、制御部6は、操作パネル7の表示部Mにエラーメッセージ等を表示させ、あるいはLEDランプ等を点灯/点滅させるとともに、操作部から入力された各種スイッチの押下信号に基づいて、対応する処理を各部に実行させるものである。
【0029】
図2は、本発明のインクジェットプリンタの主要部を概略的に示すブロック図である。この図2において、本発明のインクジェットプリンタ1は、ホストコンピュータ8から入力された印刷データなどを受け取るインターフェース部(IF:Interface)9と、制御部6と、キャリッジモータ41と、キャリッジモータ41を駆動制御するキャリッジモータドライバ43と、給紙モータ51と、給紙モータ51を駆動制御する給紙モータドライバ53と、ヘッドユニット35と、ヘッドユニット35を駆動制御するヘッドドライバ33と、吐出異常検出手段10と、回復手段24と、操作パネル7とを備える。前記制御部6と前記吐出異常検出手段10とで、後述する温度検出手段の主要部が構成される。なお、吐出異常検出手段10、回復手段24及びヘッドドライバ33については、詳細を後述する。
【0030】
この図2において、制御部6は、印刷処理や吐出異常検出処理などの各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)61と、ホストコンピュータ8からIF9を介して入力される印刷データを図示しないデータ格納領域に格納する不揮発性半導体メモリの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)(記憶手段)62と、後述する吐出異常検出処理などを実行する際に各種データを一時的に格納し、あるいは印刷処理などのアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)63と、各部を制御する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリの一種であるPROM64とを備えている。なお、制御部6の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0031】
上述のように、印字手段3は、各色のインクに対応した複数のヘッドユニット35を備える。また、各ヘッドユニット35は、複数のノズル110と、これらの各ノズル110にそれぞれ対応する静電アクチュエータ120とを備える。すなわち、ヘッドユニット35は、1組のノズル110および静電アクチュエータ120を有してなるインクジェットヘッド100(液滴吐出ヘッド)を複数個備えた構成になっている。そして、ヘッドドライバ33は、各インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する駆動回路18と、切替手段23とから構成される(図16参照)。なお、静電アクチュエータ120の構成については後述する。
【0032】
また、制御部6には、図示しないが、例えば、インクカートリッジ31のインク残量、ヘッドユニット35の位置、湿度等の印刷環境等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。
制御部6は、IF9を介して、ホストコンピュータ8から印刷データを入手すると、その印刷データをEEPROM62に格納する。そして、CPU61は、この印刷データに所定の処理を実行して、この処理データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ33、43、53に駆動信号を出力する。各ドライバ33、43、53を介してこれらの駆動信号が入力されると、ヘッドユニット35の複数の静電アクチュエータ120、印刷装置4のキャリッジモータ41及び給紙装置5がそれぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷処理が実行される。
【0033】
次に、印字手段3内の各ヘッドユニット35の構造を説明する。図3は、図1に示すヘッドユニット35(インクジェットヘッド100)の概略的な断面図であり、図4は、1色のインクに対応するヘッドユニット35の概略的な構成を示す分解斜視図であり、図5は、図3および図4に示すヘッドユニット35を適用したヘッドユニットのノズル面の一例を示す平面図である。なお、図3および図4は、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
【0034】
図3に示すように、ヘッドユニット35は、インク取り入れ口131、ダンパ室130およびインク供給チューブ311を介して、インクカートリッジ31に接続されている。ここで、ダンパ室130は、ゴムからなるダンパ132を備えている。このダンパ室130により、キャリッジ32が往復走行する際のインクの揺れおよびインク圧の変化を吸収することができ、これにより、ヘッドユニット35に所定量のインクを安定的に供給することができる。
【0035】
また、ヘッドユニット35は、シリコン基板140を挟んで、上側に同じくシリコン製のノズルプレート150と、下側にシリコンと熱膨張率が近いホウ珪酸ガラス基板(ガラス基板)160とがそれぞれ積層された3層構造をなしている。中央のシリコン基板140には、独立した複数のキャビティ(圧力室)141(図4では、7つのキャビティを示す)と、1つのリザーバ(共通インク室)143と、このリザーバ143を各キャビティ141に連通させるインク供給口(オリフィス)142としてそれぞれ機能する溝が形成されている。各溝は、例えば、シリコン基板140の表面からエッチング処理を施すことにより形成することができる。このノズルプレート150と、シリコン基板140と、ガラス基板160とがこの順序で接合され、各キャビティ141、リザーバ143、各インク供給口142が区画形成されている。
【0036】
これらのキャビティ141は、それぞれ短冊状(直方体状)に形成されており、後述する振動板121の振動(変位)によりその容積が可変であり、この容積変化によりノズル110からインク(液状材料)を吐出するよう構成されている。ノズルプレート150には、各キャビティ141の先端側の部分に対応する位置に、ノズル110が形成されており、これらが各キャビティ141に連通している。また、リザーバ143が位置しているガラス基板160の部分には、リザーバ143に連通するインク取入れ口131が形成されている。インクは、インクカートリッジ31からインク供給チューブ311、ダンパ室130を経てインク取入れ口131を通り、リザーバ143に供給される。リザーバ143に供給されたインクは、各インク供給口142を通って、独立した各キャビティ141に供給される。なお、各キャビティ141は、ノズルプレート150と、側壁(隔壁)144と、底壁121とによって、区画形成されている。
【0037】
独立した各キャビティ141は、その底壁121が薄肉に形成されており、底壁121は、その面外方向(厚さ方向)、すなわち、図3において上下方向に弾性変形(弾性変位)可能な振動板(ダイヤフラム)として機能するように構成されている。したがって、この底壁121の部分を、以後の説明の都合上、振動板121と称して説明することもある(すなわち、以下、「底壁」と「振動板」のいずれにも符号121を用いる)。
【0038】
ガラス基板160のシリコン基板140側の表面には、シリコン基板140の各キャビティ141に対応した位置に、それぞれ、浅い凹部161が形成されている。したがって、各キャビティ141の底壁121は、凹部161が形成されたガラス基板160の対向壁162の表面に、所定の間隙を介して対峙している。すなわち、キャビティ141の底壁121と後述するセグメント電極122の間には、所定の厚さ(例えば、0.2ミクロン程度)の空隙が存在する。なお、前記凹部161は、例えば、エッチングなどで形成することができる。
【0039】
ここで、各キャビティ141の底壁(振動板)121は、ヘッドドライバ33から供給される駆動信号によってそれぞれ電荷を蓄えるための各キャビティ141側の共通電極124の一部を構成している。すなわち、各キャビティ141の振動板121は、それぞれ、後述する対応する静電アクチュエータ120の対向電極(コンデンサの対向電極)の一方を兼ねている。そして、ガラス基板160の凹部161の表面には、各キャビティ141の底壁121に対峙するように、それぞれ、共通電極124に対向する電極であるセグメント電極122が形成されている。また、図3に示すように、各キャビティ141の底壁121の表面は、シリコンの酸化膜(SiO)からなる絶縁層123により覆われている。このように、各キャビティ141の底壁121、すなわち、振動板121と、それに対応する各セグメント電極122とは、キャビティ141の底壁121の図3中下側の表面に形成された絶縁層123と凹部161内の空隙とを介し、対向電極(コンデンサの対向電極)を形成
(構成)している。したがって、振動板121と、セグメント電極122と、これらの間の絶縁層123及び空隙とにより、静電アクチュエータ120の主要部が構成される。
【0040】
図3に示すように、これらの対向電極の間に駆動電圧を印加するための駆動回路18を含むヘッドドライバ33は、制御部6から入力される印字信号(印字データ)に応じて、これらの対向電極間の充放電を行う。ヘッドドライバ(電圧印加手段)33の一方の出力端子は、個々のセグメント電極122に接続され、他方の出力端子は、シリコン基板140に形成された共通電極124の入力端子124aに接続されている。なお、シリコン基板140には不純物が注入されており、それ自体が導電性をもつために、この共通電極124の入力端子124aから底壁121の共通電極124に電圧を供給することができる。また、例えば、シリコン基板140の一方の面に金や銅などの導電性材料の薄膜を形成してもよい。これにより、低い電気抵抗で(効率良く)共通電極124に電圧(電荷)を供給することができる。この薄膜は、例えば、蒸着あるいはスパッタリング等によって形成すればよい。ここで、本実施形態では、例えば、シリコン基板140とガラス基板160とを陽極接合によって結合(接合)させるので、その陽極結合において電極として用いる導電膜をシリコン基板140の流路形成面側(図3に示すシリコン基板140の上部側)に形成している。そして、この導電膜をそのまま共通電極124の入力端子124aとして用いる。なお、本発明では、例えば、共通電極124の入力端子124aを省略してもよく、また、シリコン基板140とガラス基板160との接合方法は、陽極接合に限定されない。
【0041】
図4に示すように、ヘッドユニット35は、複数のノズル110が形成されたノズルプレート150と、複数のキャビティ141、複数のインク供給口142、1つのリザーバ143が形成されたシリコン基板(インク室基板)140と、絶縁層123とを備え、これらがガラス基板160を含む基体170に収納されている。基体170は、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料等で構成されており、この基体170にシリコン基板140が固定、支持されている。
【0042】
なお、ノズルプレート150に形成されたノズル110は、図4では簡潔に示すためにリザーバ143に対して略並行に直線的に配列されているが、ノズルの配列パターンはこの構成に限らず、通常は、例えば、図5に示すノズル配置パターンのように、段をずらして配置される。また、このノズル110間のピッチは、印刷精度(dpi)に応じて適宜設定され得るものである。なお、図5では、4色のインク(インクカートリッジ31)を適用した場合におけるノズル110の配置パターンを示している。
【0043】
図6は、図3のIII−III断面の駆動信号入力時の各状態を示す。ヘッドドライバ33から対向電極間に駆動電圧が印加されると、対向電極間にクーロン力が発生し、底壁(振動板)121は、初期状態(図6(a))に対して、セグメント電極122側へ撓み、キャビティ141の容積が拡大する(図6(b))。この状態において、ヘッドドライバ33の制御により、対向電極間の電荷を急激に放電させると、振動板121は、その弾性復元力によって図中上方に復元し、初期状態における振動板121の位置を越えて上部に移動し、キャビティ141の容積が急激に収縮する(図2(c))。このときキャビティ141内に発生する圧縮圧力により、キャビティ141を満たすインク(液状材料)の一部が、このキャビティ141に連通しているノズル110からインク滴として吐出される。
【0044】
各キャビティ141の振動板121は、この一連の動作(ヘッドドライバ33の駆動信号によるインク吐出動作)により、次の駆動信号(駆動電圧)が入力されて再びインク滴を吐出するまでの間、減衰振動をしている。以下、この減衰振動を残留振動とも称する。振動板121の残留振動は、ノズル110やインク供給口142の形状、あるいはインク粘度等による音響抵抗rと、流路内のインク重量によるイナータンスmと、振動板121のコンプライアンスCmとによって決定される固有振動周波数を有するものと想定される。
【0045】
上記想定に基づく振動板121の残留振動の計算モデルについて説明する。図7は、振動板121の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。このように、振動板121の残留振動の計算モデルは、音圧Pと、上述のイナータンスm、コンプライアンスCm及び音響抵抗rとで表せる。そして、図7の回路に音圧Pを与えた時のステップ応答を体積速度uについて計算すると、次式が得られる。
【0046】
【数1】
Figure 2004299174
【0047】
この式から得られた計算結果と、別途行ったインク滴の吐出後の振動板121の残留振動の実験における実験結果とを比較する。図8は、振動板121の残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。この図8に示すグラフからも分かるように、実験値と計算値の2つの波形は、概ね一致している。
【0048】
さて、ヘッドユニット35の各インクジェットヘッド100では、前述したような吐出動作を行ったにもかかわらずノズル110からインク滴が正常に吐出されない現象、すなわち液滴の吐出異常(ヘッド異常)が発生する場合がある。この吐出異常が発生する原因としては、後述するように、(1)キャビティ141内への気泡の混入、(2)ノズル110付近でのインクの乾燥・増粘(固着)、(3)ノズル110出口付近への紙粉付着、等が挙げられる。
【0049】
この吐出異常が発生すると、その結果としては、典型的にはノズル110から液滴が吐出されないこと、すなわち液滴の不吐出現象が現れ、その場合、記録用紙Pに印刷(描画)した画像における画素のドット抜けを生じる。また、吐出異常の場合には、ノズル110から液滴が吐出されたとしても、液滴の量が過少であったり、その液滴の飛行方向(弾道)がずれたりして適正に着弾しないので、やはり画素のドット抜けとなって現れる。このようなことから、以下の説明では、液滴の吐出異常のことを単に「ドット抜け」と言う場合もある。
【0050】
また、インクジェットヘッド100の吐出異常(ヘッド異常)には、前述したような吐出動作を行ったにもかかわらずノズル110からインク滴が正常に吐出されない現象が発生した場合のみならず、インクジェットヘッド100が前述したような吐出動作を行ったときノズル110からインク滴が正常に吐出されない現象が発生し得る状態にある場合も含まれる。
【0051】
以下においては、図8に示す比較結果に基づいて、インクジェットヘッド100のノズル110に発生する印刷処理時のドット抜け(吐出異常)現象(液滴不吐出現象)の原因別に、振動板121の残留振動の計算値と実験値がマッチ(概ね一致)するように、音響抵抗r及び/またはイナータンスmの値を調整する。まず、ドット抜けの1つの原因であるキャビティ141内への気泡の混入について検討する。図9は、図3のキャビティ141内に気泡Bが混入した場合のノズル110付近の概念図である。この図9に示すように、発生した気泡Bは、キャビティ141の壁面に発生付着しているものと想定される(図9では、気泡Bの付着位置の一例として、気泡Bがノズル110付近に付着している場合を示す)。
【0052】
このように、キャビティ141内に気泡Bが混入した場合には、キャビティ141内を満たすインクの総重量が減り、イナータンスmが低下するものと考えられる。また、気泡Bは、キャビティ141の壁面に付着しているので、その径の大きさだけノズル110の径が大きくなったような状態となり、音響抵抗rが低下するものと考えられる。
【0053】
したがって、インクが正常に吐出された図8の場合に対して、音響抵抗r、イナータンスmを共に小さく設定して、気泡混入時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図10のような結果(グラフ)が得られた。図8及び図10のグラフから分かるように、キャビティ141内に気泡が混入した場合には、正常吐出時に比べて周波数が高くなる特徴的な残留振動波形が得られる。なお、音響抵抗rの低下などにより、残留振動の振幅の減衰率も小さくなり、残留振動は、その振幅をゆっくりと下げていることも確認することができる。
【0054】
次に、ドット抜けのもう1つの原因であるノズル110付近でのインクの乾燥(固着、増粘)について検討する。図11は、図3のノズル110付近のインクが乾燥により固着した場合のノズル110付近の概念図である。この図11に示すように、ノズル110付近のインクが乾燥して固着した場合、キャビティ141内のインクは、キャビティ141内に閉じこめられたような状況となる。このように、ノズル110付近のインクが乾燥、増粘した場合には、音響抵抗rが増加するものと考えられる。
【0055】
したがって、インクが正常に吐出された図8の場合に対して、音響抵抗rを大きく設定して、ノズル110付近のインク乾燥固着(増粘)時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図12のような結果(グラフ)が得られた。なお、図12に示す実験値は、数日間図示しないキャップを装着しない状態でヘッドユニット35を放置し、ノズル110付近のインクが乾燥、増粘したことによりインクを吐出することができなくなった(インクが固着した)状態における振動板121の残留振動を測定したものである。図8及び図12のグラフから分かるように、ノズル110付近のインクが乾燥により固着した場合には、正常吐出時に比べて周波数が極めて低くなるとともに、残留振動が過減衰となる特徴的な残留振動波形が得られる。これは、インク滴を吐出するために振動板121が図3中下方に引き寄せられることによって、キャビティ141内にリザーバ143からインクが流入した後に、振動板121が図3中上方に移動するときに、キャビティ141内のインクの逃げ道がないために、振動板121が急激に振動できなくなるため(過減衰となるため)である。
【0056】
次に、ドット抜けのさらにもう1つの原因であるノズル110出口付近への紙粉付着について検討する。ここで、本発明において、「紙粉」とは、単に記録用紙などから発生した紙粉のみに限らず、例えば、紙送りローラ(給紙ローラ)などのゴムの切れ端や、空気中に浮遊するごみなどを含むノズル110付近に付着してインク滴(液滴)吐出の妨げとなるすべてのものをいう。
【0057】
図13は、図3のノズル110出口付近に紙粉が付着した場合のノズル110付近の概念図である。この図13に示すように、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合、キャビティ141内から紙粉を介してインクが染み出してしまうとともに、ノズル110からインクを吐出することができなくなる。このように、ノズル110の出口付近に紙粉が付着し、ノズル110からインクが染み出している場合には、振動板121からみてキャビティ141内及び染み出し分のインクが正常時よりも増えることにより、イナータンスmが増加するものと考えられる。また、ノズル110の出口付近に付着した紙粉の繊維によって音響抵抗rが増大するものと考えられる。
【0058】
したがって、インクが正常に吐出された図8の場合に対して、イナータンスm、音響抵抗rを共に大きく設定して、ノズル110の出口付近への紙粉付着時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図14のような結果(グラフ)が得られた。図8及び図14のグラフから分かるように、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合には、正常吐出時に比べて周波数が低くなる特徴的な残留振動波形が得られる(ここで、紙粉付着の場合、インクの乾燥の場合よりは、残留振動の周波数が高いことも、図12及び図14のグラフから分かる。)。なお、図15は、この紙粉付着前後におけるノズル110の状態を示す写真である。ノズル110の出口付近に紙粉が付着すると、紙粉に沿ってインクがにじみ出している状態を、図15(b)から見出すことができる。
【0059】
ここで、ノズル110付近のインクが乾燥して増粘した場合と、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合とでは、いずれも正常にインク滴が吐出された場合に比べて減衰振動の周波数が低くなっている。これら2つのドット抜け(インク不吐出:吐出異常)の原因を振動板121の残留振動の波形から特定するために、例えば、減衰振動の周波数や周期、位相において所定のしきい値を持って比較するか、あるいは、残留振動(減衰振動)の周期変化や振幅変化の減衰率から特定することができる。
【0060】
このようにして、各インクジェットヘッド100におけるノズル110からのインク滴が吐出されたときの振動板121の残留振動の変化(振動パターン)、特に、その周波数(振動パターン)の変化によって、各インクジェットヘッド100の吐出異常(ヘッド異常)を検出することができる。また、その場合の残留振動の周波数を正常吐出時の残留振動の周波数と比較することにより、吐出異常(ヘッド異常)の原因を特定することもできる。
【0061】
次に、吐出異常検出手段10について説明する。図16は、図3に示す吐出異常検出手段10の概略的なブロック図である。この図16に示すように、吐出異常検出手段10は、発振回路11と、F/V変換回路12と、波形整形回路15とから構成される残留振動検出手段16と、この残留振動検出手段16によって検出された残留振動波形データから周期や振幅などを計測する計測手段17と、この計測手段17によって計測された周期などに基づいてインクジェットヘッド100の吐出異常(ヘッド異常)を判定する判定手段20とを備えている。吐出異常検出手段10では、残留振動検出手段16は、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動に基づいて、発振回路11が発振し、その発振周波数からF/V変換回路12および波形整形回路15において振動波形を形成して、検出する。そして、計測手段17は、検出された振動波形に基づいて残留振動の周期などを計測し、判定手段20は、計測された残留振動の周期などに基づいて、印字手段3内の各ヘッドユニット35が備える各インクジェットヘッド100の吐出異常を検出、判定する。以下、吐出異常検出手段10の各構成要素について説明する。
【0062】
まず、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動の周波数(振動数)を検出するために、発振回路11を用いる方法を説明する。図17は、図3の静電アクチュエータ120を平行平板コンデンサとした場合の概念図であり、図18は、図3の静電アクチュエータ120から構成されるコンデンサを含む発振回路11の回路図である。なお、図18に示す発振回路11は、シュミットトリガのヒステリシス特性を利用するCR発振回路であるが、本発明はこのようなCR発振回路に限定されず、アクチュエータ(振動板を含む)の静電容量成分(コンデンサC)を用いる発振回路であればどのような発振回路でもよい。発振回路11は、例えば、LC発振回路を利用した構成としてもよい。また、本実施形態では、シュミットトリガインバータを用いた例を示して説明しているが、例えば、インバータを3段用いたCR発振回路を構成してもよい。
【0063】
図3に示すインクジェットヘッド100では、上述のように、振動板121と非常にわずかな間隔(空隙)を隔てたセグメント電極122とが対向電極を形成する静電アクチュエータ120を構成している。この静電アクチュエータ120は、図17に示すような平行平板コンデンサと考えることができる。このコンデンサの静電容量をC、振動板121およびセグメント電極122のそれぞれの表面積をS、2つの電極121、122の距離(ギャップ長)をg、両電極に挟まれた空間(空隙)の誘電率をε(真空の誘電率をε0、空隙の比誘電率をεrとすると、ε=ε0・εr)とすると、図17に示すコンデンサ(静電アクチュエータ120)の静電容量C(x)は、次式で表される。
【0064】
【数2】
Figure 2004299174
【0065】
なお、式(4)のxは、図17に示すように、振動板121の残留振動によって生じる振動板121の基準位置からの変位量を示している。
この式(4)から分かるように、ギャップ長g(ギャップ長g−変位量x)が小さくなれば、静電容量C(x)は大きくなり、逆にギャップ長g(ギャップ長g−変位量x)が大きくなれば、静電容量C(x)は小さくなる。このように、静電容量C(x)は、(ギャップ長g−変位量x)(xが0の場合は、ギャップ長g)に反比例している。なお、図3に示す静電アクチュエータ120では、空隙は空気で満たされているので、比誘電率ε=1である。
【0066】
また、一般に、液滴吐出装置(本実施形態では、インクジェットプリンタ1)の解像度が高まるにつれて、吐出されるインク滴(インクドット)が微小化されるので、この静電アクチュエータ120は、高密度化、小型化される。それによって、インクジェットヘッド100の振動板121の表面積Sが小さくなり、小さな静電アクチュエータ120が構成される。さらに、インク滴吐出による残留振動によって変化する静電アクチュエータ120のギャップ長gは、初期ギャップgの1割程度となるため、式(4)から分かるように、静電アクチュエータ120の静電容量の変化量は非常に小さな値となる。
【0067】
この静電アクチュエータ120の静電容量の変化量(残留振動の振動パターンにより異なる)を検出するために、以下のような方法、すなわち、静電アクチュエータ120の静電容量に基づいた図18のような発振回路を構成し、発振された信号に基づいて残留振動の周波数(周期)を解析する方法を用いる。図18に示す発振回路11は、静電アクチュエータ120から構成されるコンデンサ(C)と、シュミットトリガインバータ111と、抵抗素子(R)112とから構成される。
【0068】
シュミットトリガインバータ111の出力信号がHighレベルの場合、抵抗素子112を介してコンデンサCを充電する。コンデンサCの充電電圧(振動板121とセグメント電極122との間の電位差)が、シュミットトリガインバータ111の入力スレッショルド電圧V+に達すると、シュミットトリガインバータ111の出力信号がLowレベルに反転する。そして、シュミットトリガインバータ111の出力信号がLowレベルとなると、抵抗素子112を介してコンデンサCに充電されていた電荷が放電される。この放電によりコンデンサCの電圧がシュミットトリガインバータ111の入力スレッショルド電圧V−に達すると、シュミットトリガインバータ111の出力信号が再びHighレベルに反転する。以降、この発振動作が繰り返される。
【0069】
ここで、上述のそれぞれの現象(気泡混入、乾燥、紙粉付着、及び正常吐出)におけるコンデンサCの静電容量の時間変化を検出するためには、この発振回路11による発振周波数は、残留振動の周波数が最も高い気泡混入時(図10参照)の周波数を検出することができる発振周波数に設定される必要がある。そのため、発振回路11の発振周波数は、例えば、検出する残留振動の周波数の数倍から数十倍以上、すなわち、気泡混入時の周波数よりおよそ1桁以上高い周波数となるようにしなければならない。この場合、好ましくは、気泡混入時の残留振動の周波数が正常吐出の場合と比較して高い周波数を示すため、気泡混入時の残留振動周波数が検知可能な発振周波数に設定するとよい。そうしなければ、吐出異常の現象に対して正確な残留振動の周波数を検出することができない。そのため、本実施形態では、発振周波数に応じて、発振回路11のCRの時定数を設定している。このように、発振回路11の発振周波数を高く設定することにより、この発振周波数の微小変化に基づいて、より正確な残留振動波形を検出することができる。
【0070】
なお、発振回路11から出力される発振信号の発振周波数の周期(パルス)毎に、測定用のカウントパルス(カウンタ)を用いてそのパルスをカウントし、初期ギャップgにおけるコンデンサCの静電容量で発振させた場合の発振周波数のパルスのカウント量を測定したカウント量から減算することにより、残留振動波形について発振周波数毎のデジタル情報が得られる。これらのデジタル情報に基づいて、デジタル/アナログ(D/A)変換を行うことにより、概略的な残留振動波形が生成され得る。このような方法を用いてもよいが、測定用のカウントパルス(カウンタ)には、発振周波数の微小変化を測定することができる高い周波数(高解像度)のものが必要となる。このようなカウントパルス(カウンタ)は、コストをアップさせるため、吐出異常検出手段10では、図19に示すF/V変換回路12を用いている。
【0071】
図19は、図16に示す吐出異常検出手段10のF/V変換回路12の回路図である。この図19に示すように、F/V変換回路12は、3つのスイッチSW1、SW2、SW3と、2つのコンデンサC1、C2と、抵抗素子R1と、定電流Isを出力する定電流源13と、バッファ14とから構成される。このF/V変換回路12の動作を図20のタイミングチャート及び図21のグラフを用いて説明する。
【0072】
まず、図20のタイミングチャートに示す充電信号、ホールド信号及びクリア信号の生成方法について説明する。充電信号は、発振回路11の発振パルスの立ち上がりエッジから固定時間trを設定し、その固定時間trの間Highレベルとなるようにして生成される。ホールド信号は、充電信号の立ち上がりエッジに同期して立ち上がり、所定の固定時間だけHighレベルに保持され、Lowレベルに立ち下がるようにして生成される。クリア信号は、ホールド信号の立ち下がりエッジに同期して立ち上がり、所定の固定時間だけHighレベルに保持され、Lowレベルに立ち下がるようにして生成される。なお、後述するように、コンデンサC1からコンデンサC2への電荷の移動及びコンデンサC1の放電は瞬時に行われるので、ホールド信号及びクリア信号のパルスは、発振回路11の出力信号の次の立ち上がりエッジまでにそれぞれ1つのパルスが含まれればよく、上記のような立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジに限定されない。
【0073】
きれいな残留振動の波形(電圧波形)を得るために、図21を参照して、固定時間tr及びt1の設定方法を説明する。固定時間trは、静電アクチュエータ120が初期ギャップ長gのときにおける静電容量Cで発振した発振パルスの周期から調整され、充電時間t1による充電電位がC1の充電範囲のおよそ1/2付近となるように設定される。また、ギャップ長gが最大(Max)の位置における充電時間t2から最小(Min)の位置における充電時間t3の間で、コンデンサC1の充電範囲を超えないように充電電位の傾きが設定される。すなわち、充電電位の傾きは、dV/dt=Is/C1によって決定されるため、定電流源13の出力定電流Isを適当な値に設定すればよい。この定電流源13の出力定電流Isをその範囲内でできるだけ高く設定することによって、静電アクチュエータ120によって構成されるコンデンサの微小な静電容量の変化を高感度で検出することができ、静電アクチュエータ120の振動板121の微小な変化を検出することが可能となる。
【0074】
次いで、図22を参照して、図16に示す波形整形回路15の構成を説明する。図22は、図16の波形整形回路15の回路構成を示す回路図である。この波形整形回路15は、残留振動波形を矩形波として判定手段20に出力するものである。この図22に示すように、波形整形回路15は、2つのコンデンサC3(DC成分除去手段)、C4と、2つの抵抗素子R2、R3と、2つの直流電圧源Vref1、Vref2と、増幅器(オペアンプ)151と、比較器(コンパレータ)152とから構成される。なお、残留振動波形の波形整形処理において、検出される波高値をそのまま出力して、残留振動波形の振幅を計測するように構成してもよい。
【0075】
F/V変換回路12のバッファ14の出力には、静電アクチュエータ120の初期ギャップgに基づくDC成分(直流成分)の静電容量成分が含まれている。この直流成分は各インクジェットヘッド100によりばらつきがあるため、コンデンサC3は、この静電容量の直流成分を除去するものである。そして、コンデンサC3は、バッファ14の出力信号におけるDC成分を除去し、残留振動のAC成分のみをオペアンプ151の反転入力端子に出力する。
【0076】
オペアンプ151は、直流成分が除去されたF/V変換回路12のバッファ14の出力信号を反転増幅するとともに、その出力信号の高域を除去するためのローパスフィルタを構成している。なお、このオペアンプ151は、単電源回路を想定している。オペアンプ151は、2つの抵抗素子R2、R3による反転増幅器を構成し、入力された残留振動(交流成分)は、−R3/R2倍に振幅される。
【0077】
また、オペアンプ151の単電源動作のために、その非反転入力端子に接続された直流電圧源Vref1によって設定された電位を中心に振動する、増幅された振動板121の残留振動波形が出力される。ここで、直流電圧源Vref1は、オペアンプ151が単電源で動作可能な電圧範囲の1/2程度に設定されている。さらに、このオペアンプ151は、2つのコンデンサC3、C4により、カットオフ周波数1/(2π×C4×R3)となるローパスフィルタを構成している。そして、直流成分を除去された後に増幅された振動板121の残留振動波形は、図20のタイミングチャートに示すように、次段の比較器(コンパレータ)152でもう一つの直流電圧源Vref2の電位と比較され、その比較結果が矩形波として波形整形回路15から出力される。なお、直流電圧源Vref2は、もう一つの直流電圧源Vref1を共用してもよい。
【0078】
次に、図20に示すタイミングチャートを参照して、図19のF/V変換回路12及び波形整形回路15の動作を説明する。上述のように生成された充電信号、クリア信号及びホールド信号に基づいて、図19に示すF/V変換回路12は動作する。図20のタイミングチャートにおいて、静電アクチュエータ120の駆動信号がヘッドドライバ33を介してインクジェットヘッド100に入力されると、図6(b)に示すように、静電アクチュエータ120の振動板121がセグメント電極122側に引きつけられ、この駆動信号の立ち下がりエッジに同期して、図6中上方に向けて急激に収縮する(図6(c)参照)。
【0079】
この駆動信号の立ち下がりエッジに同期して、駆動回路18と吐出異常検出手段10とを切り替える駆動/検出切替信号がHighレベルとなる。この駆動/検出切替信号は、対応するインクジェットヘッド100の駆動休止期間中、Highレベルに保持され、次の駆動信号が入力される前に、Lowレベルになる。この駆動/検出切替信号がHighレベルの間、図18の発振回路11は、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動に対応して発振周波数を変えながら発振している。
【0080】
上述のように、駆動信号の立ち下がりエッジ、すなわち、発振回路11の出力信号の立ち上がりエッジから、残留振動の波形がコンデンサC1に充電可能な範囲を超えないように予め設定された固定時間trだけ経過するまで、充電信号は、Highレベルに保持される。なお、充電信号がHighレベルである間、スイッチSW1はオフの状態である。
【0081】
固定時間trが経過し、充電信号がLowレベルになると、その充電信号の立ち下がりエッジに同期して、スイッチSW1がオンされる(図19参照)。そして、定電流源13とコンデンサC1とが接続され、コンデンサC1は、上述のように、傾きIs/C1で充電される。充電信号がLowレベルである期間、すなわち、発振回路11の出力信号の次のパルスの立ち上がりエッジに同期してHighレベルになるまでの間、コンデンサC1は充電される。
【0082】
充電信号がHighレベルになると、スイッチSW1はオフ(オープン)となり、定電流源13とコンデンサC1は切り離される。このとき、コンデンサC1には、充電信号がLowレベルの期間t1の間に充電された電位(すなわち、理想的にはIs×t1/C1(V))が保存されている。この状態で、ホールド信号がHighレベルになると、スイッチSW2がオンされ(図19参照)、コンデンサC1とコンデンサC2が、抵抗素子R1を介して接続される。スイッチSW2の接続後、2つのコンデンサC1、C2の充電電位差によって互いに充放電が行われ、2つのコンデンサC1、C2の電位差が概ね等しくなるように、コンデンサC1からコンデンサC2に電荷が移動する。
【0083】
ここで、コンデンサC1の静電容量に対してコンデンサC2の静電容量は、約1/10以下程度に設定されている。そのため、2つのコンデンサC1、C2間の電位差によって生じる充放電で移動する(使用される)電荷量は、コンデンサC1に充電されている電荷の1/10以下となる。したがって、コンデンサC1からコンデンサC2へ電荷が移動した後においても、コンデンサC1の電位差は、それほど変化しない(それほど下がらない)。なお、図19のF/V変換回路12では、コンデンサC2に充電されるときF/V変換回路12の配線のインダクタンス等により充電電位が急激に跳ね上がらないようにするために、抵抗素子R1とコンデンサC2により一次のローパスフィルタを構成している。
【0084】
コンデンサC2にコンデンサC1の充電電位と概ね等しい充電電位が保持された後、ホールド信号がLowレベルとなり、コンデンサC1はコンデンサC2から切り離される。さらに、クリア信号がHighレベルとなり、スイッチSW3がオンすることにより、コンデンサC1がグラウンドGNDに接続され、コンデンサC1に充電されていた電荷が0となるように放電動作が行なわれる。コンデンサC1の放電後、クリア信号はLowレベルとなり、スイッチSW3がオフすることにより、コンデンサC1の図19中上部の電極がグラウンドGNDから切り離され、次の充電信号が入力されるまで、すなわち、充電信号がLowレベルになるまで待機している。
【0085】
コンデンサC2に保持されている電位は、充電信号の立ち上がりのタイミング毎、すなわち、コンデンサC2への充電完了のタイミング毎に更新され、バッファ14を介して振動板121の残留振動波形として図22の波形整形回路15に出力される。したがって、発振回路11の発振周波数が高くなるように静電アクチュエータ120の静電容量(この場合、残留振動による静電容量の変動幅も考慮しなければならない)と抵抗素子112の抵抗値を設定すれば、図20のタイミングチャートに示すコンデンサC2の電位(バッファ14の出力)の各ステップ(段差)がより詳細になるので、振動板121の残留振動による静電容量の時間的な変化をより詳細に検出することが可能となる。
【0086】
以下同様に、充電信号がLowレベル→Highレベル→Lowレベル・・・と繰り返し、上記所定のタイミングでコンデンサC2に保持されている電位がバッファ14を介して波形整形回路15に出力される。波形整形回路15では、バッファ14から入力された電圧信号(図20のタイミングチャートにおいて、コンデンサC2の電位)の直流成分がコンデンサC3によって除去され、抵抗素子R2を介してオペアンプ151の反転入力端子に入力される。入力された残留振動の交流(AC)成分は、このオペアンプ151によって反転増幅され、コンパレータ152の一方の入力端子に出力される。コンパレータ152は、予め直流電圧源Vref2によって設定されている電位(基準電圧)と、残留振動波形(交流成分)の電位とを比較し、矩形波を出力する(図20のタイミングチャートにおける比較回路の出力)。
【0087】
次に、インクジェットヘッド100のインク滴吐出動作(駆動)と吐出異常検出動作(駆動休止)との切り替えタイミングについて説明する。図23は、駆動回路18と吐出異常検出手段10との切替手段23の概略を示すブロック図である。なお、この図23では、図16に示すヘッドドライバ33内の駆動回路18をインクジェットヘッド100の駆動回路として説明する。図20のタイミングチャートでも示したように、吐出異常検出処理は、インクジェットヘッド100の駆動信号と駆動信号の間、すなわち、駆動休止期間に実行されている。
【0088】
図23において、静電アクチュエータ120を駆動するために、切替手段23は、最初は駆動回路18側に接続されている。上述のように、駆動回路18から駆動信号(電圧信号)が振動板121に入力されると、静電アクチュエータ120が駆動し、振動板121は、セグメント電極122側に引きつけられ、印加電圧が0になるとセグメント電極122から離れる方向に急激に変位して振動(残留振動)を開始する。このとき、インクジェットヘッド100のノズル110からインク滴が吐出される。
【0089】
駆動信号のパルスが立ち下がると、その立ち下がりエッジに同期して駆動/検出切替信号(図20のタイミングチャート参照)が切替手段23に入力され、切替手段23は、駆動回路18から吐出異常検出手段(検出回路)10側に切り替えられ、静電アクチュエータ120(発振回路11のコンデンサとして利用)は吐出異常検出手段10と接続される。
【0090】
そして、吐出異常検出手段10は、上述のような吐出異常(ドット抜け)の検出処理を実行し、波形整形回路15の比較器152から出力される振動板121の残留振動波形データ(矩形波データ)を計測手段17によって残留振動波形の周期や振幅などに数値化する。本実施形態では、計測手段17は、残留振動波形データから特定の振動周期を測定し、その計測結果(数値)を判定手段20に出力する。
【0091】
具体的には、計測手段17は、比較器152の出力信号の波形(矩形波)の最初の立ち上がりエッジから次の立ち上がりエッジまでの時間(残留振動の周期)を計測するために、図示しないカウンタを用いて基準信号(所定の周波数)のパルスをカウントし、そのカウント値から残留振動の周期(特定の振動周期)を計測する。なお、計測手段17は、最初の立ち上がりエッジから次の立ち下がりエッジまでの時間を計測し、その計測された時間の2倍の時間を残留振動の周期として判定手段20に出力してもよい。以下、このようにして得られた残留振動の周期をTwとする。
【0092】
判定手段20は、計測手段17によって計測された残留振動波形の特定の振動周期など(計測結果)に基づいて、ノズルの吐出異常(ヘッド異常)の有無、吐出異常(ヘッド異常)の原因、比較偏差量などを判定し、その判定結果を制御部6に出力する。制御部6は、EEPROM(記憶手段)62の所定の格納領域にこの判定結果を保存する。そして、駆動回路18からの次の駆動信号が入力されるタイミングで、駆動/検出切替信号が切替手段23に再び入力され、駆動回路18と静電アクチュエータ120とを接続する。駆動回路18は、一旦駆動電圧を印加するとグラウンド(GND)レベルを維持するので、切替手段23によって上記のような切り替えを行っている(図20のタイミングチャート参照)。これにより、駆動回路18からの外乱などに影響されることなく、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動波形を正確に検出することができる。
【0093】
なお、本発明では、残留振動波形データは、比較器152により矩形波化したものに限定されない。例えば、オペアンプ151から出力された残留振動振幅データは、比較器152により比較処理を行うことなく、A/D変換を行う計測手段17によって随時数値化され、その数値化されたデータに基づいて、判定手段20により吐出異常の有無などを判定し、この判定結果を記憶手段62に記憶するように構成してもよい。
【0094】
また、ノズル110のメニスカス(ノズル110内インクが大気と接する面)は、振動板121の残留振動に同期して振動するため、インクジェットヘッド100は、インク滴の吐出動作後、このメニスカスの残留振動が音響抵抗rによって概ね決まった時間で減衰するのを待ってから(所定の時間待機して)、次の吐出動作を行っている。本発明では、この待機時間を有効に利用して振動板121の残留振動を検出しているので、インクジェットヘッド100の駆動に影響しない吐出異常検出を行うことができる。すなわち、インクジェットプリンタ1(液滴吐出装置)のスループットを低下させることなく、インクジェットヘッド100のノズル110の吐出異常検出処理を実行することができる。
【0095】
上述のように、インクジェットヘッド100のキャビティ141内に気泡が混入した場合には、正常吐出時の振動板121の残留振動波形に比べて、周波数が高くなるので、その周期は逆に正常吐出時の残留振動の周期よりも短くなる。また、ノズル110付近のインクが乾燥により増粘、固着した場合には、残留振動が過減衰となり、正常吐出時の残留振動波形に比べて、周波数が相当低くなるので、その周期は正常吐出時の残留振動の周期よりもかなり長くなる。また、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合には、残留振動の周波数は、正常吐出時の残留振動の周波数よりも低く、しかし、インクの乾燥時の残留振動の周波数よりも高くなるので、その周期は、正常吐出時の残留振動の周期よりも長く、インク乾燥時の残留振動の周期よりも短くなる。
【0096】
したがって、正常吐出時の残留振動の周期として、所定の範囲Trを設け、また、ノズル110出口に紙粉が付着した場合における残留振動の周期と、ノズル110の出口付近でインクが乾燥した場合における残留振動の周期とを区別するために、所定のしきい値(所定の閾値)T1を設定することにより、このようなインクジェットヘッド100の吐出異常の原因を決定することができる。判定手段20は、上記吐出異常検出処理によって検出された残留振動波形の周期Twが所定の範囲の周期であるか否か、また、所定のしきい値よりも長いか否かを判定し、それによって、吐出異常(ヘッド異常)の原因を判定する。
【0097】
次に、本発明の液滴吐出装置の動作を、上述のインクジェットプリンタ1の構成に基づいて説明する。まず、1つのインクジェットヘッド100のノズル110に対する吐出異常検出処理(駆動/検出切替処理を含む)について説明する。図24は、吐出異常検出・判定処理を示すフローチャートである。印刷される印字データ(フラッシング動作における吐出データでもよい)がホストコンピュータ8からインターフェース(IF)9を介して制御部6に入力されると、所定のタイミングでこの吐出異常検出処理が実行される。なお、説明の都合上、この図24に示すフローチャートでは、1つのインクジェットヘッド100、すなわち、1つのノズル110の吐出動作に対応する吐出異常検出処理を示す。
【0098】
まず、印字データ(吐出データ)に対応する駆動信号がヘッドドライバ33の駆動回路18から入力され、それにより、図20のタイミングチャートに示すような駆動信号のタイミングに基づいて、静電アクチュエータ120の両電極間に駆動信号(電圧信号)が印加される(ステップS101)。そして、制御手段6は、駆動/検出切替信号に基づいて、吐出したインクジェットヘッド100が駆動休止期間であるか否かを判断する(ステップS102)。ここで、駆動/検出切替信号は、駆動信号の立ち下がりエッジに同期してHighレベルとなり(図20参照)、制御手段6から切替手段23に入力される。
【0099】
駆動/検出切替信号が切替手段23に入力されると、切替手段23によって、静電アクチュエータ120、すなわち、発振回路11を構成するコンデンサは、駆動回路18から切り離され、吐出異常検出手段10(検出回路)側、すなわち、残留振動検出手段16の発振回路11に接続される(ステップS103)。そして、後述する残留振動検出処理を実行し(ステップS104)、計測手段17は、この残留振動検出処理において検出された残留振動波形データから所定の数値を計測する(ステップS105)。ここでは、上述のように、計測手段17は、残留振動波形データからその残留振動の周期を計測する。
【0100】
次いで、判定手段20によって、計測手段の計測結果に基づいて、後述する吐出異常判定処理が実行され(ステップS106)、その判定結果を制御部6のEEPROM(記憶手段)62の所定の格納領域に保存する。そして、ステップS108においてインクジェットヘッド100が駆動期間であるか否かが判断される。すなわち、駆動休止期間が終了して、次の駆動信号が入力されたか否かが判断され、次の駆動信号が入力されるまで、このステップS108で待機している。
【0101】
次の駆動信号のパルスが入力されるタイミングで、駆動信号の立ち上がりエッジに同期して駆動/検出切替信号がLowレベルになると(ステップS108で「yes」)、切替手段23は、静電アクチュエータ120との接続を、吐出異常検出手段(検出回路)10から駆動回路18に切り替えて(ステップS109)、この吐出異常検出処理を終了する。
【0102】
なお、図24に示すフローチャートでは、計測手段17が残留振動検出処理(残留振動検出手段16)によって検出された残留振動波形から周期を計測する場合について示したが、本発明はこのような場合に限定されず、例えば、計測手段17は、残留振動検出処理において検出された残留振動波形データから、残留振動波形の位相差や振幅などの計測を行ってもよい。
【0103】
次に、図24に示すフローチャートのステップS104における残留振動検出処理(サブルーチン)について説明する。図25は、残留振動検出処理を示すフローチャートである。上述のように、切替手段23によって、静電アクチュエータ120と発振回路11とを接続すると(図24のステップS103)、発振回路11は、CR発振回路を構成し、静電アクチュエータ120の静電容量の変化(静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動)に基づいて、発振する(ステップS201)。
【0104】
上述のタイミングチャートなどに示すように、発振回路11の出力信号(パルス信号)に基づいて、F/V変換回路12において、充電信号、ホールド信号及びクリア信号が生成され、これらの信号に基づいてF/V変換回路12によって発振回路11の出力信号の周波数から電圧に変換するF/V変換処理が行われ(ステップS202)、F/V変換回路12から振動板121の残留振動波形データが出力される。F/V変換回路12から出力された残留振動波形データは、波形整形回路15のコンデンサC3により、DC成分(直流成分)が除去され(ステップS203)、オペアンプ151により、DC成分が除去された残留振動波形(AC成分)が増幅される(ステップS204)。
【0105】
増幅後の残留振動波形データは、所定の処理により波形整形され、パルス化される(ステップS205)。すなわち、本実施形態では、比較器152において、直流電圧源Vref2によって設定された電圧値(所定の電圧値)とオペアンプ151の出力電圧とが比較される。比較器152は、この比較結果に基づいて、2値化された波形(矩形波)を出力する。この比較器152の出力信号は、残留振動検出手段16の出力信号であり、吐出異常判定処理を行うために、計測手段17に出力され、この残留振動検出処理が終了する。
【0106】
次に、図24に示すフローチャートのステップS106における吐出異常判定処理(サブルーチン)について説明する。図26は、制御部6及び判定手段20によって実行される吐出異常判定処理を示すフローチャートである。判定手段20は、上述の計測手段17によって計測された周期などの計測データ(計測結果)に基づいて、該当するインクジェットヘッド100からインク滴が正常に吐出したか否か、正常に吐出していない場合、すなわち、吐出異常の場合にはその原因が何かを判定する。
【0107】
まず、制御部6は、EEPROM62に保存されている残留振動の周期の所定の範囲Tr及び残留振動の周期の所定のしきい値T1を判定手段20に出力する。残留振動の周期の所定の範囲Trは、正常吐出時の残留振動周期に対して、正常と判定できる許容範囲を持たせたものである。これらのデータは、判定手段20の図示しないメモリに格納され、以下の処理が実行される。
【0108】
図24のステップS105において計測手段17によって計測された計測結果が判定手段20に入力される(ステップS301)。ここで、本実施形態では、計測結果は、振動板121の残留振動の周期Twである。
ステップS302において、判定手段20は、残留振動の周期Twが存在するか否か、すなわち、吐出異常検出手段10によって残留振動波形データが得られなかったか否かを判定する。残留振動の周期Twが存在しないと判定された場合には、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110は吐出異常検出処理においてインク滴を吐出していない未吐出ノズルであると判定する(ステップS306)。また、残留振動波形データが存在すると判定された場合には、続いて、ステップS303において、判定手段20は、その周期Twが正常吐出時の周期と認められる所定の範囲Tr内にあるか否かを判定する。
【0109】
残留振動の周期Twが所定の範囲Tr内にあると判定された場合には、対応するインクジェットヘッド100からインク滴が正常に吐出されたことを意味し、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110は正常にインク滴と吐出した(正常吐出)と判定する(ステップS307)。また、残留振動の周期Twが所定の範囲Tr内にないと判定された場合には、続いて、ステップS304において、判定手段20は、残留振動の周期Twが所定の範囲Trよりも短いか否かを判定する。
【0110】
残留振動の周期Twが所定の範囲Trよりも短いと判定された場合には、残留振動の周波数が高いことを意味し、上述のように、インクジェットヘッド100のキャビティ141内に気泡が混入しているものと考えられ、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のキャビティ141に気泡が混入しているもの(気泡混入)と判定する(ステップS308)。
【0111】
また、残留振動の周期Twが所定の範囲Trよりも長いと判定された場合には、続いて、判定手段20は、残留振動の周期Twが所定のしきい値T1よりも長いか否かを判定する(ステップS305)。残留振動の周期Twが所定のしきい値T1よりも長いと判定された場合には、残留振動が過減衰であると考えられ、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110付近のインクが乾燥により増粘しているもの(乾燥)と判定する(ステップS309)。
【0112】
そして、ステップS305において、残留振動の周期Twが所定のしきい値T1よりも短いと判定された場合には、この残留振動の周期Twは、Tr<Tw<T1を満たす範囲の値であり、上述のように、乾燥よりも周波数が高いノズル110の出口付近への紙粉付着であると考えられ、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110出口付近に紙粉が付着しているもの(紙粉付着)と判定する(ステップS310)。
【0113】
このように、判定手段20によって、対象となるインクジェットヘッド100の正常吐出あるいは吐出異常の原因などが判定されると(ステップS306〜S310)、その判定結果は、制御部6に出力され、この吐出異常判定処理を終了する。
各インクジェットヘッド100に対応する判定結果は、後述する図24のステップS107において、処理対象となるインクジェットヘッド100と関連付けられて、制御部6のEEPROM(記憶手段)62の所定の格納領域に記憶される。
【0114】
次に、複数のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100、すなわち、複数のノズル110を備えるインクジェットプリンタ1を想定し、そのインクジェットプリンタ1における吐出選択手段(ノズルセレクタ)182と、各インクジェットヘッド100の吐出異常検出・判定のタイミングについて説明する。
なお、以下では、説明を分かりやすくするため、印字手段3が備える複数のヘッドユニット35のうちの1つのヘッドユニット35について説明し、また、このヘッドユニット35は、5つのインクジェットヘッド100a〜100eを備える(すなわち、5つのノズル110を備える)ものとするが、本発明では、印字手段3が備えるヘッドユニット35の数量や、各ヘッドユニット35が備えるインクジェットヘッド100(ノズル110)の数量は、それぞれ、いくつであってもよい。
【0115】
図27〜図30は、吐出選択手段182を備えるインクジェットプリンタ1における吐出異常検出・判定タイミングのいくつかの例を示すブロック図である。以下、各図の構成例を順次説明する。
図27は、複数(5つ)のインクジェットヘッド100a〜100eの吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段10が1つの場合)である。この図27に示すように、複数のインクジェットヘッド100a〜100eを有するインクジェットプリンタ1は、駆動波形を生成する駆動波形生成手段181と、いずれのノズル110からインク滴を吐出するかを選択することができる吐出選択手段182と、この吐出選択手段182によって選択され、駆動波形生成手段181によって駆動される複数のインクジェットヘッド100a〜100eとを備えている。なお、図27の構成では、上記以外の構成は図2、図16および図23に示したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0116】
なお、本実施形態では、駆動波形生成手段181および吐出選択手段182は、ヘッドドライバ33の駆動回路18に含まれるものとして説明するが(図27では、切替手段23を介して2つのブロックとして示しているが、一般的には、いずれもヘッドドライバ33内に構成される)、本発明はこの構成に限定されず、例えば、駆動波形生成手段181は、ヘッドドライバ33とは独立した構成としてもよい。
【0117】
この図27に示すように、吐出選択手段182は、シフトレジスタ182aと、ラッチ回路182bと、ドライバ182cとを備えている。シフトレジスタ182aには、図2に示すホストコンピュータ8から出力され、制御部6において所定の処理をされた印字データ(吐出データ)と、クロック信号(CLK)が順次入力される。この印字データは、クロック信号(CLK)の入力パルスに応じて(クロック信号の入力の度に)シフトレジスタ182aの初段から順次後段側にシフトして入力され、各インクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データとしてラッチ回路182bに出力される。なお、後述する吐出異常検出処理では、印字データではなくフラッシング(予備吐出)時の吐出データが入力されるが、この吐出データとは、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eに対する印字データを意味している。
【0118】
ラッチ回路182bは、ヘッドユニット35のノズル110の数、すなわち、インクジェットヘッド100の数に対応する印字データがシフトレジスタ182aに格納された後、入力されるラッチ信号によってシフトレジスタ182aの各出力信号をラッチする。ここで、CLEAR信号が入力された場合には、ラッチ状態が解除され、ラッチされていたシフトレジスタ182aの出力信号は0(ラッチの出力停止)となり、印字動作は停止される。CLEAR信号が入力されていない場合には、ラッチされたシフトレジスタ182aの印字データがドライバ182cに出力される。シフトレジスタ182aから出力される印字データがラッチ回路182bによってラッチされた後、次の印字データをシフトレジスタ182aに入力し、印字タイミングに合わせてラッチ回路182bのラッチ信号を順次更新している。
【0119】
ドライバ182cは、駆動波形生成手段181と各インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120とを接続するものであり、ラッチ回路182bから出力されるラッチ信号で指定(特定)された各静電アクチュエータ120(インクジェットヘッド100a〜100eのいずれかあるいはすべての静電アクチュエータ120)に駆動波形生成手段181の出力信号(駆動信号)を入力し、それによって、その駆動信号(電圧信号)が静電アクチュエータ120の両電極間に印加される。
【0120】
この図27に示すインクジェットプリンタ1は、複数のインクジェットヘッド100a〜100eを駆動する1つの駆動波形生成手段181と、各インクジェットヘッド100a〜100eのいずれかのインクジェットヘッド100に対して吐出異常(インク滴不吐出)を検出する吐出異常検出手段10と、この吐出異常検出手段10によって得られた吐出異常の原因などの判定結果を保存(格納)する記憶手段62と、駆動波形生成手段181と吐出異常検出手段10とを切り替える1つの切替手段23とを備えている。したがって、このインクジェットプリンタ1は、駆動波形生成手段181から入力される駆動信号に基づいて、ドライバ182cによって選択されたインクジェットヘッド100a〜100eのうちの1つまたは複数を駆動し、駆動/検出切替信号が吐出駆動動作後に切替手段23に入力されることによって、切替手段23が駆動波形生成手段181から吐出異常検出手段10にインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120との接続を切り替えた後、振動板121の残留振動波形に基づいて、吐出異常検出手段10によって、そのインクジェットヘッド100のノズル110における吐出異常(インク滴不吐出)を検出し、吐出異常の場合にはその原因を判定するものである。
【0121】
そして、このインクジェットプリンタ1は、1つのインクジェットヘッド100のノズル110について吐出異常を検出・判定すると、次に駆動波形生成手段181から入力される駆動信号に基づいて、次に指定されたインクジェットヘッド100のノズル110について吐出異常を検出・判定し、以下同様に、駆動波形生成手段181の出力信号によって駆動されるインクジェットヘッド100のノズル110についての吐出異常を順次検出・判定する。そして、上述のように、残留振動検出手段16が振動板121の残留振動波形を検出すると、計測手段17がその波形データに基づいて残留振動波形の周期などを計測し、判定手段20が、計測手段17の計測結果に基づいて、正常吐出か吐出異常か、および、吐出異常(ヘッド異常)の場合には吐出異常の原因を判定して、記憶手段62にその判定結果を出力する。
【0122】
このように、この図27に示すインクジェットプリンタ1では、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110についてインク滴吐出駆動動作の際に順次吐出異常を検出・判定する構成としているので、吐出異常検出手段10と切替手段23とを1つずつ備えるだけでよく、吐出異常を検出・判定可能なインクジェットプリンタ1の回路構成をスケールダウンできるとともに、その製造コストの増加を防止することができる。
【0123】
図28は、複数のインクジェットヘッド100の吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段10の数がインクジェットヘッド100の数と同じ場合)である。この図28に示すインクジェットプリンタ1は、1つの吐出選択手段182と、5つの吐出異常検出手段10a〜10eと、5つの切替手段23a〜23eと、5つのインクジェットヘッド100a〜100eに共通の1つの駆動波形生成手段181と、1つの記憶手段62とを備えている。なお、各構成要素は、図27の説明において既に上述しているので、その説明を省略し、これらの接続について説明する。
【0124】
図27に示す場合と同様に、吐出選択手段182は、ホストコンピュータ8から入力される印字データ(吐出データ)とクロック信号CLKに基づいて、各インクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データをラッチ回路182bにラッチし、駆動波形生成手段181からドライバ182cに入力される駆動信号(電圧信号)に応じて、印字データに対応するインクジェットヘッド100a〜100eの静電アクチュエータ120を駆動させる。駆動/検出切替信号は、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する切替手段23a〜23eにそれぞれ入力され、切替手段23a〜23eは、対応する印字データ(吐出データ)の有無にかかわらず、駆動/検出切替信号に基づいて、インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120に駆動信号を入力後、駆動波形生成手段181から吐出異常検出手段10a〜10eにインクジェットヘッド100との接続を切り替える。
【0125】
すべての吐出異常検出手段10a〜10eにより、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eの吐出異常を検出・判定した後、その検出処理で得られたすべてのインクジェットヘッド100a〜100eの判定結果が、記憶手段62に出力され、記憶手段62は、各インクジェットヘッド100a〜100eの吐出異常の有無および吐出異常の原因を所定の保存領域に格納する。
【0126】
このように、この図28に示すインクジェットプリンタ1では、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110に対応して複数の吐出異常検出手段10a〜10eを設け、それらに対応する複数の切替手段23a〜23eによって切替動作を行って、吐出異常検出およびその原因判定を行っているので、一度にすべてのノズル110について短時間に吐出異常検出およびその原因判定を行うことができる。
【0127】
図29は、複数のインクジェットヘッド100の吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段10の数がインクジェットヘッド100の数と同じであり、印字データがあるときに吐出異常検出を行う場合)である。この図29に示すインクジェットプリンタ1は、図28に示すインクジェットプリンタ1の構成に、切替制御手段19を追加(付加)したものである。本実施形態では、この切替制御手段19は、複数のAND回路(論理積回路)ANDa〜ANDeから構成され、各インクジェットヘッド100a〜100eに入力される印字データと、駆動/検出切替信号とが入力されると、対応する切替手段23a〜23eにHighレベルの出力信号を出力するものである。
【0128】
各切替手段23a〜23eは、切替制御手段19のそれぞれ対応するAND回路ANDa〜ANDeの出力信号に基づいて、駆動波形生成手段181からそれぞれ対応する吐出異常検出手段10a〜10eへ、対応するインクジェットヘッド100a〜100eの静電アクチュエータ120との接続を切り替える。具体的には、対応するAND回路ANDa〜ANDeの出力信号がHighレベルであるとき、すなわち、駆動/検出切替信号がHighレベルの状態で対応するインクジェットヘッド100a〜100eに入力される印字データがラッチ回路182bからドライバ182cに出力されている場合には、そのAND回路に対応する切替手段23a〜23eは、対応するインクジェットヘッド100a〜100eへの接続を、駆動波形生成手段181から吐出異常検出手段10a〜10eに切り替える。
【0129】
印字データが入力されたインクジェットヘッド100に対応する吐出異常検出手段10a〜10eにより、各インクジェットヘッド100の吐出異常の有無および吐出異常の場合にはその原因を検出した後、その吐出異常検出手段10は、その検出処理で得られた判定結果を記憶手段62に出力する。記憶手段62は、このように入力された(得られた)1または複数の判定結果を所定の保存領域に格納する。
【0130】
このように、この図29に示すインクジェットプリンタ1では、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110に対応して複数の吐出異常検出手段10a〜10eを設け、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データがホストコンピュータ8から制御部6を介して吐出選択手段182に入力されたときに、切替制御手段19によって指定された切替手段23a〜23eのみが所定の切替動作を行って、インクジェットヘッド100の吐出異常検出およびその原因判定を行っているので、吐出駆動動作をしていないインクジェットヘッド100についてはこの検出・判定処理を行わない。したがって、このインクジェットプリンタ1によって、無駄な検出および判定処理を回避することができる。
【0131】
図30は、複数のインクジェットヘッド100の吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段10の数がインクジェットヘッド100の数と同じであり、各インクジェットヘッド100を巡回して吐出異常検出を行う場合)である。この図30に示すインクジェットプリンタ1は、図29に示すインクジェットプリンタ1の構成において吐出異常検出手段10を1つとし、駆動/検出切替信号を走査する(検出・判定処理を実行するインクジェットヘッド100を1つずつ特定する)切替選択手段19aを追加したものである。
【0132】
この切替選択手段19aは、図29に示す切替制御手段19に、制御部6から入力される走査信号(選択信号)に基づいて、複数のインクジェットヘッド100a〜100eに対応するAND回路ANDa〜ANDeへの駆動/検出切替信号の入力を走査する(選択して切り替える)セレクタ191を追加したものである。この切替制御手段19の走査(選択)順は、シフトレジスタ182aに入力される印字データの順、すなわち、複数のインクジェットヘッド100の吐出順であってもよいが、単純に複数のインクジェットヘッド100a〜100eの順であってもよい。
【0133】
走査順がシフトレジスタ182aに入力される印字データの順である場合、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに印字データが入力されると、その印字データはラッチ回路182bにラッチされ、ラッチ信号の入力によりドライバ182cに出力される。印字データのシフトレジスタ182aへの入力、あるいはラッチ信号のラッチ回路182bへの入力に同期して、印字データに対応するインクジェットヘッド100を特定するための走査信号が切替選択手段19aのセレクタ191に入力され、対応するAND回路に駆動/検出切替信号が出力される。
【0134】
その対応するAND回路は、ラッチ回路182bから入力された印字データと、セレクタ191から入力された駆動/検出切替信号と加算演算することにより、Highレベルの出力信号を対応する切替手段23に出力する。そして、切替選択手段19aからHighレベルの出力信号が入力された切替手段23は、対応するインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120への接続を、駆動波形生成手段181から吐出異常検出手段10に切り替える。
吐出異常検出手段10は、印字データが入力されたインクジェットヘッド100の吐出異常を検出し、吐出異常がある場合にはその原因を判定した後、その判定結果を記憶手段62に出力する。そして、記憶手段62は、このように入力された(得られた)判定結果を所定の保存領域に格納する。
【0135】
また、走査順が単純なインクジェットヘッド100a〜100eの順である場合、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに印字データが入力されると、その印字データはラッチ回路182bにラッチされ、ラッチ信号の入力によりドライバ182cに出力される。印字データのシフトレジスタ182aへの入力、あるいはラッチ信号のラッチ回路182bへの入力に同期して、印字データに対応するインクジェットヘッド100を特定するための走査(選択)信号が切替選択手段19aのセレクタ191に入力され、対応するAND回路に駆動/検出切替信号が出力される。
【0136】
ここで、切替選択手段19aのセレクタ191に入力された走査信号により定められたインクジェットヘッド100に対する印字データがシフトレジスタ182aに入力されたときには、それに対応するAND回路の出力信号がHighレベルとなり、切替手段23は、対応するインクジェットヘッド100への接続を、駆動波形生成手段181から吐出異常検出手段10に切り替える。しかしながら、上記印字データがシフトレジスタ182aに入力されないときには、AND回路の出力信号はLowレベルであり、対応する切替手段23は、所定の切替動作を実行しない。
【0137】
切替手段23によって切替動作が行われた場合には、上記と同様に、吐出異常検出手段10は、印字データが入力されたインクジェットヘッド100の吐出異常を検出し、吐出異常がある場合にはその原因を判定した後、その判定結果を記憶手段62に出力する。そして、記憶手段62は、このように入力された(得られた)判定結果を所定の保存領域に格納する。
【0138】
なお、切替選択手段19aで特定されたインクジェットヘッド100に対する印字データがないときには、上述のように、対応する切替手段23が切替動作を実行しないので、吐出異常検出手段10による吐出異常検出処理を実行する必要はないが、そのような処理が実行されてもよい。切替動作が行われずに吐出異常検出処理が実行された場合、吐出異常検出手段10の判定手段20は、図26のフローチャートに示すように、対応するインクジェットヘッド100のノズル110を未吐出ノズルであると判定し(ステップS306)、その判定結果を記憶手段62の所定の保存領域に格納する。
【0139】
このように、この図30に示すインクジェットプリンタ1では、図28または図29に示すインクジェットプリンタ1とは異なり、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110に対して1つの吐出異常検出手段10のみを設け、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データがホストコンピュータ8から制御部6を介して吐出選択手段182に入力され、それと同時に走査(選択)信号により特定されて、その印字データに応じて吐出駆動動作をするインクジェットヘッド100に対応する切替手段23のみが切替動作を行って、対応するインクジェットヘッド100の吐出異常検出およびその原因判定を行っているので、より効率的にヘッドユニット35の各インクジェットヘッド100の吐出異常検出およびその原因判定を行うことができる。
【0140】
また、図28または図29に示すインクジェットプリンタ1とは異なり、図30に示すインクジェットプリンタ1は、吐出異常検出手段10を1つのみ備えていればよいので、図28および図29に示すインクジェットプリンタ1に比べ、インクジェットプリンタ1の回路構成をスケールダウンすることができるとともに、その製造コストの増加を防止することができる。
【0141】
次に、図27〜図30に示すプリンタ1の動作、すなわち、複数のインクジェットヘッド100を備えるインクジェットプリンタ1における吐出異常検出処理(主に、検出タイミング)について説明する。吐出異常検出・判定処理(多ノズルにおける処理)は、各インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120がインク滴吐出動作を行ったときの振動板121の残留振動を検出し、その残留振動の周期に基づいて、該当するインクジェットヘッド100に対し吐出異常(ドット抜け、インク滴不吐出)が生じているか否か、ドット抜け(インク滴不吐出)が生じた場合には、その原因が何であるかを判定している。このように、本発明では、インクジェットヘッド100によるインク滴(液滴)の吐出動作が行われれば、これらの検出・判定処理を実行できるが、インクジェットヘッド100がインク滴を吐出するのは、実際に記録用紙Pに印刷(プリント)している場合だけでなく、フラッシング動作(予備吐出あるいは予備的吐出)をしている場合もある。以下、この2つの場合について、吐出異常検出・判定処理(多ノズル)を説明する。
【0142】
ここで、フラッシング(予備吐出)処理とは、図1では図示していないキャップの装着時や、記録用紙P(メディア)にインク滴(液滴)がかからない場所において、ヘッドユニット35のすべてのあるいは対象となるノズル110からインク滴を吐出するヘッドクリーニング動作である。このフラッシング処理(フラッシング動作)は、例えば、ノズル110内のインク粘度を適正範囲の値に保持するために、定期的にキャビティ141内のインクを排出する際に実施したり、あるいは、インク増粘時の回復動作としても実施したりされる。さらに、フラッシング処理は、インクカートリッジ31を印字手段3に装着した後に、インクをキャビティ141に初期充填する場合にも実施される。
【0143】
また、ノズルプレート(ノズル面)150をクリーニングするためにワイピング処理(ヘッドユニット35のヘッド面に付着している付着物(紙粉やごみなど)を、図1では図示していないワイパで拭き取る処置)を行う場合があるが、このときノズル110内が負圧になって、他の色のインク(他の種類の液滴)を引込んでしまう可能性がある。そのため、ワイピング処理後に、ヘッドユニット35のすべてのノズル110から一定量のインク滴を吐出させるためにもフラッシング処理が実施される。さらに、フラッシング処理は、ノズル110のメニスカスの状態を正常に保持して良好な印字を確保するためにも適時に実施され得る。
【0144】
まず、図31〜図33に示すフローチャートを参照して、フラッシング処理時における吐出異常検出・判定処理について説明する。なお、これらのフローチャートは、図27〜図30のブロック図を参照しながら説明する(以下、印字動作時においても同様)。図31は、図27に示すインクジェットプリンタ1のフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【0145】
所定のタイミングにおいて、インクジェットプリンタ1のフラッシング処理が実行されるとき、この図31に示す吐出異常検出・判定処理が実行される。制御部6は、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに1ノズル分の吐出データを入力し(ステップS401)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS402)、この吐出データがラッチされる。そのとき、切替手段23は、その吐出データの対象であるインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120と駆動波形生成手段181とを接続する(ステップS403)。
【0146】
そして、吐出異常検出手段10によって、インク吐出動作を行ったインクジェットヘッド100に対して、図24のフローチャートに示す吐出異常検出・判定処理が実行される(ステップS404)。ステップS405において、制御部6は、吐出選択手段182に出力した吐出データに基づいて、図27に示すインクジェットプリンタ1のすべてのインクジェットヘッド100a〜100eのノズル110について吐出異常検出・判定処理が終了したか否かを判断する。そして、すべてのノズル110についてこれらの処理が終わっていないと判断されるときには、制御部6は、シフトレジスタ182aに次のインクジェットヘッド100のノズル110に対応する吐出データを入力し(ステップS406)、ステップS402に移行して同様の処理を繰り返す。
【0147】
また、ステップS405において、すべてのノズル110について上述の吐出異常検出および判定処理が終わったと判断される場合には、制御部6は、ラッチ回路182bにCLEAR信号を入力し、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図27に示すインクジェットプリンタ1における吐出異常検出・判定処理を終了する。
【0148】
上述のように、この図27に示すプリンタ1における吐出異常検出・判定処理では、1つの吐出異常検出手段10と1つの切替手段23とから検出回路が構成されているので、吐出異常検出処理および判定処理は、インクジェットヘッド100の数だけ繰り返されるが、吐出異常検出手段10を構成する回路はそれほど大きくならないという効果を有する。
【0149】
次いで、図32は、図28および図29に示すインクジェットプリンタ1のフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。図28に示すインクジェットプリンタ1と図29に示すインクジェットプリンタ1とは回路構成が若干異なるが、吐出異常検出手段10および切替手段23の数が、インクジェットヘッド100の数に対応する(同じである)点で一致している。そのため、フラッシング動作時における吐出異常検出・判定処理は、同様のステップから構成される。
【0150】
所定のタイミングにおいて、インクジェットプリンタ1のフラッシング処理が実行されるとき、制御部6は、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに全ノズル分の吐出データを入力し(ステップS501)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS502)、この吐出データがラッチされる。そのとき、切替手段23a〜23eは、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eと駆動波形生成手段181とをそれぞれ接続する(ステップS503)。
【0151】
そして、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する吐出異常検出手段10a〜10eによって、インク吐出動作を行ったすべてのインクジェットヘッド100に対して、図24のフローチャートに示す吐出異常検出・判定処理が並列的に実行される(ステップS504)。この場合、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される(図24のステップS107)。
【0152】
そして、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS505)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図28および図29に示すインクジェットプリンタ1における吐出異常検出処理および判定処理を終了する。
【0153】
上述のように、この図28および図29に示すプリンタ1における処理では、インクジェットヘッド100a〜100eに対応する複数(この実施形態では5つ)の吐出異常検出手段10と複数の切替手段23とから検出および判定回路が構成されているので、吐出異常検出・判定処理は、一度にすべてのノズル110について短時間に実行され得るという効果を有する。
【0154】
次いで、図33は、図30に示すインクジェットプリンタ1のフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。以下同様に、図30に示すインクジェットプリンタ1の回路構成を用いて、フラッシング動作時における吐出異常検出処理および原因判定処理について説明する。
所定のタイミングにおいて、インクジェットプリンタ1のフラッシング処理が実行されるとき、まず、制御部6は、走査信号を切替選択手段19aのセレクタ191に出力し、この切替選択手段19aにより、最初の切替手段23aおよびインクジェットヘッド100aを設定(特定)する(ステップS601)。そして、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに全ノズル分の吐出データを入力し(ステップS602)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS603)、この吐出データがラッチされる。そのとき、切替手段23aは、インクジェットヘッド100aの静電アクチュエータ120と駆動波形生成手段181とを接続している(ステップS604)。
【0155】
そして、インク吐出動作を行ったインクジェットヘッド100aに対して、図24のフローチャートに示す吐出異常検出・判定処理が実行される(ステップS605)。この場合、図24のステップS103において、セレクタ191の出力信号である駆動/検出切替信号と、吐出データとがAND回路ANDaに入力され、AND回路ANDaの出力信号がHighレベルとなることにより、切替手段23aは、インクジェットヘッド100aの静電アクチュエータ120と吐出異常検出手段10とを接続する。そして、図24のステップS106において実行される吐出異常判定処理の判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100(ここでは、100a)と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される(図24のステップS107)。
【0156】
ステップS606において、制御部6は、吐出異常検出・判定処理がすべてのノズルに対して終了したか否かを判断する。そして、まだすべてのノズルについて吐出異常検出・判定処理が終了していないと判断された場合には、制御部6は、走査信号を切替選択手段19aのセレクタ191に出力し、この切替選択手段19aにより、次の切替手段23bおよびインクジェットヘッド100bを設定(特定)し(ステップS607)、ステップS603に移行して、同様の処理を繰り返す。以下、すべてのインクジェットヘッド100について吐出異常検出・判定処理が終了するまでこのループを繰り返す。
【0157】
また、ステップS606において、すべてのノズル110について吐出異常検出処理および判定処理が終了したと判断される場合には、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS608)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図30に示すインクジェットプリンタ1における吐出異常検出処理および判定処理を終了する。
【0158】
上述のように、図30に示すインクジェットプリンタ1における処理では、複数の切替手段23と1つの吐出異常検出手段10から検出回路が構成され、切替選択手段19aのセレクタ191の走査信号により特定され、吐出データに応じて吐出駆動をするインクジェットヘッド100に対応する切替手段23のみが切替動作を行って、対応するインクジェットヘッド100の吐出異常検出および原因判定を行っているので、より効率的に各インクジェットヘッド100吐出異常検出および原因判定を行うことができる。
【0159】
なお、このフローチャートのステップS602では、シフトレジスタ171にすべてのノズル110に対応する吐出データを入力しているが、図31に示すフローチャートのように、切替選択手段19aによるインクジェットヘッド100の走査順に合わせて、シフトレジスタ182aに入力する吐出データを対応する1つのインクジェットヘッド100に入力し、1ノズル110ずつ吐出異常検出・判定処理を行ってもよい。
【0160】
次に、図34および図35に示すフローチャートを参照して、印字動作時におけるインクジェットプリンタ1の吐出異常検出・判定処理について説明する。図27に示すインクジェットプリンタ1においては、主に、フラッシング動作時における吐出異常検出処理および判定処理に適しているので、印字動作時のフローチャートおよびその動作説明を省略するが、この図27に示すインクジェットプリンタ1においても印字動作時に吐出異常検出・判定処理が行われてもよい。
【0161】
図34は、図28および図29に示すインクジェットプリンタ1の印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。ホストコンピュータ8からの印刷(印字)指示により、このフローチャートの処理が実行(開始)される。制御部6を介してホストコンピュータ8から印字データが吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに入力されると(ステップS701)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS702)、その印字データがラッチされる。このとき、切替手段23a〜23eは、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eと駆動波形生成手段181とを接続している(ステップS703)。
【0162】
そして、インク吐出動作を行ったインクジェットヘッド100に対応する吐出異常検出手段10は、図24のフローチャートに示す吐出異常検出・判定処理を実行する(ステップS704)。この場合、各インクジェットヘッド100に対応するそれぞれの判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される。
【0163】
ここで、図28に示すインクジェットプリンタ1の場合には、切替手段23a〜23eは、制御部6から出力される駆動/検出切替信号に基づいて、インクジェットヘッド100a〜100eを吐出異常検出手段10a〜10eに接続する(図24のステップS103)。そのため、印字データの存在しないインクジェットヘッド100では、静電アクチュエータ120が駆動していないので、吐出異常検出手段10の残留振動検出手段16は、振動板121の残留振動波形を検出しない。一方、図29に示すインクジェットプリンタ1の場合には、切替手段23a〜23eは、制御部6から出力される駆動/検出切替信号と、ラッチ回路182bから出力される印字データとが入力されるAND回路の出力信号に基づいて、印字データの存在するインクジェットヘッド100を吐出異常検出手段10に接続する(図24のステップS103)。
【0164】
ステップS705において、制御部6は、インクジェットプリンタ1の印字動作が終了したか否かを判断する。そして、印字動作が終わっていないと判断されるときには、制御部6は、ステップS701に移行して、次の印字データをシフトレジスタ182aに入力し、同様の処理を繰り返す。また、印字動作が終了したと判断されるときには、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS706)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図28および図29に示すインクジェットプリンタ1における吐出異常検出処理および判定処理を終了する。
【0165】
上述のように、図28および図29に示すインクジェットプリンタ1は、複数の切替手段23a〜23eと、複数の吐出異常検出手段10a〜10eとを備え、一度にすべてのインクジェットヘッド100に対して吐出異常検出・判定処理を行っているので、これらの処理を短時間に行うことができる。また、図29に示すインクジェットプリンタ1は、切替制御手段19、すなわち、駆動/検出切替信号と印字データとを加算演算するAND回路ANDa〜ANDeをさらに備え、印字動作を行うインクジェットヘッド100のみに対して切替手段23による切替動作を行っているので、無駄な検出を行うことなく、吐出異常検出処理および判定処理を行うことができる。
【0166】
次いで、図35は、図30に示すインクジェットプリンタ1の印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。ホストコンピュータ8からの印刷指示により、図30に示すインクジェットプリンタ1においてこのフローチャートの処理が実行される。まず、切替選択手段19aは、最初の切替手段23aおよびインクジェットヘッド100aを予め設定(特定)しておく(ステップS801)。
【0167】
制御部6を介してホストコンピュータ8から印字データが吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに入力されると(ステップS802)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS803)、その印字データがラッチされる。ここで、切替手段23a〜23eは、この段階では、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eと駆動波形生成手段181(吐出選択手段182のドライバ182c)とを接続している(ステップS804)。
【0168】
そして、制御部6は、インクジェットヘッド100aに印字データがある場合には、切替選択手段19aによって吐出動作後静電アクチュエータ120が吐出異常検出手段10に接続され(図24のステップS103)、図24(図25)のフローチャートに示す吐出異常検出・判定処理を実行する(ステップS805)。そして、図24のステップS106において実行される吐出異常判定処理の判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100(ここでは、100a)と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される(図24のステップS107)。
【0169】
ステップS806において、制御手段6は、すべてのノズル110(すべてのインクジェットヘッド100)について上述の吐出異常検出・判定処理を終了したか否かを判断する。そして、すべてのノズル110について上記処理が終了したと判断される場合には、制御部6は、走査信号に基づいて、また最初のノズル110に対応する切替手段23aを設定し(ステップS808)、すべてのノズル110について上記処理が終了していないと判断される場合には、次のノズル110に対応する切替手段23bを設定する(ステップS807)。
【0170】
ステップS809において、制御手段6は、ホストコンピュータ8から指示された所定の印字動作が終了したか否かを判断する。そして、まだ印字動作が終了していないと判断された場合には、次の印字データがシフトレジスタ182aに入力され(ステップS802)、同様の処理を繰り返す。印字動作が終了したと判断された場合には、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS810)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図30に示すインクジェットプリンタ1における吐出異常検出・判定処理を終了する。
【0171】
以上のように、本発明の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)は、振動板121と、振動板121を変位させる静電アクチュエータ120と、内部に液体が充填され、振動板121の変位により、該内部の圧力が変化(増減)されるキャビティ141と、キャビティ141に連通し、キャビティ141内の圧力の変化(増減)により液体を液滴として吐出するノズル110とを有するインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100を複数個備え、さらに、これらの静電アクチュエータ120を駆動する駆動波形生成手段181と、複数のノズル110のうちいずれのノズル110から液滴を吐出するかを選択する吐出選択手段182と、振動板121の残留振動を検出し、この検出された振動板121の残留振動に基づいて、液滴の吐出の異常を検出する1つまたは複数の吐出異常検出手段10と、静電アクチュエータ120の駆動による液滴の吐出動作後、駆動/検出切替信号や印字データ、あるいは走査信号に基づいて、静電アクチュエータ120を駆動波形生成手段181から吐出異常検出手段10に切り替える1つまたは複数の切替手段23とを備え、一度(並列的)にあるいは順次に複数のノズル110の吐出異常を検出することとした。
【0172】
したがって、本発明の液滴吐出装置および液滴吐出ヘッドの吐出異常検出・判定方法によって、吐出異常検出およびその原因判定を短時間に行うことができるとともに、吐出異常検出手段10を含む検出回路の回路構成をスケールダウンすることができ、液滴吐出装置の製造コストの増加を防止することができる。また、静電アクチュエータ120の駆動後、吐出異常検出手段10に切り替えて吐出異常検出および原因判定を行っているので、アクチュエータの駆動に影響を与えることがなく、それによって、本発明の液滴吐出装置のスループットを低下または悪化させることがない。また、所定の構成要素を備えている既存の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ)に、吐出異常検出手段10を装備することも可能である。
【0173】
また、本発明の液滴吐出装置は、上記構成と異なり、複数の切替手段23と、切替制御手段19と、1つあるいはノズル110の数量と対応する複数の吐出異常検出手段10とを備え、駆動/検出切替信号および吐出データ(印字データ)、あるいは、走査信号、駆動/検出切替信号および吐出データ(印字データ)に基づいて、対応する静電アクチュエータ120を駆動波形生成手段181または吐出選択手段182から吐出異常検出手段10に切り替えて、吐出異常検出および原因判定を行うこととした。
【0174】
したがって、本発明の液滴吐出装置によって、吐出データ(印字データ)が入力されていない、すなわち、吐出駆動動作をしていない静電アクチュエータ120に対応する切替手段は切替動作を行わないので、無駄な検出・判定処理を回避することができる。また、切替選択手段19aを利用する場合には、液滴吐出装置は、1つの吐出異常検出手段10のみを備えていればよいので、液滴吐出装置の回路構成をスケールダウンすることができるとともに、液滴吐出装置の製造コストの増加を防止することができる。
【0175】
次に、本発明の液滴吐出装置におけるインクジェットヘッド100(ヘッドユニット35)に対し、吐出異常(ヘッド異常)の原因を解消させる回復処理を実行する構成(回復手段24)について説明する。図36は、図1に示すインクジェットプリンタ1の上部から見た概略的な構造(一部省略)を示す図である。この図36に示すインクジェットプリンタ1は、図1の斜視図で示した構成以外に、インク滴不吐出(ヘッド異常)の回復処理を実行するためのワイパ300とキャップ310とを備える。
【0176】
回復手段24が実行する回復処理としては、各インクジェットヘッド100のノズル110から液滴を予備的に吐出するフラッシング処理と、後述するワイパ300(図37参照)によるワイピング処理と、後述するチューブポンプ320によるポンピング処理(ポンプ吸引処理)が含まれる。すなわち、回復手段24は、チューブポンプ320およびそれを駆動するパルスモータと、ワイパ300およびワイパ300の上下動駆動機構と、キャップ310の上下動駆動機構(図示せず)とを備え、フラッシング処理においてはヘッドドライバ33およびヘッドユニット35などが、また、ワイピング処理においてはキャリッジモータ41などが回復手段24の一部として機能する。フラッシング処理については上述しているので、以降、ワイピング処理およびポンピング処理について説明する。
【0177】
ここで、ワイピング処理とは、ヘッドユニット35のノズルプレート150(ノズル面)に付着した紙粉などの異物をワイパ300により拭き取る処理のことをいう。また、ポンピング処理(ポンプ吸引処理)とは、後述するチューブポンプ320を駆動して、ヘッドユニット35の各ノズル110から、キャビティ141内のインクを吸引して排出する処理をいう。このように、ワイピング処理は、上述のようなインクジェットヘッド100の液滴の吐出異常の原因の1つである紙粉付着の状態における回復処理として適切な処理である。また、ポンプ吸引処理は、前述のフラッシング処理では取り除けないキャビティ141内の気泡を除去し、あるいは、ノズル110付近のインクが乾燥によりまたはキャビティ141内のインクが経年劣化により増粘した場合に、増粘したインクを除去する回復処理として適切な処理である。なお、それほど増粘が進んでおらず粘度がそれほど大きくない場合には、上述のフラッシング処理による回復処理も行われ得る。この場合、排出するインク量が少ないので、スループットやランニングコストを低下させずに適切な回復処理を行うことができる。
【0178】
複数のヘッドユニット35を有する印字手段3は、キャリッジ32に搭載され、2本のキャリッジガイド軸422にガイドされてキャリッジモータ41により、図中その上端に備えられた連結部34を介してタイミングベルト421に連結して移動する。キャリッジ32に搭載された印字手段3は、キャリッジモータ41の駆動により移動するタイミングベルト421を介して(タイミングベルト421に連動して)主走査方向に移動可能である。なお、キャリッジモータ41は、タイミングベルト421を連続的に回転させるためのプーリの役割を果たし、他端側にも同様にプーリ44が備えられている。
【0179】
また、キャップ310は、ヘッドユニット35のノズルプレート150(図5参照)のキャッピングを行うためのものである。キャップ310には、その底部側面に孔が形成され、後述するように、チューブポンプ320の構成要素である可撓性のチューブ321が接続されている。なお、チューブポンプ320については、図39において後述する。
【0180】
記録(印字)動作時には、所定のインクジェットヘッド100(液滴吐出ヘッド)の静電アクチュエータ120を駆動しながら、ヘッドユニット35(印字手段3)を主走査方向、すなわち、図36中左右に移動し、また、記録用紙Pを副走査方向、すなわち、図36中下方に移動することにより、インクジェットプリンタ(液滴吐出装置)1は、ホストコンピュータ8から入力された印刷データ(印字データ)に基づいて所定の画像などを記録用紙Pに印刷(記録)する。
【0181】
図37は、図36に示すワイパ300とヘッドユニット35との位置関係を示す図である。この図37において、ヘッドユニット35とワイパ300は、図36に示すインクジェットプリンタ1の図中下側から上側を見た場合の側面図の一部として示される。ワイパ300は、図37(a)に示すように、ヘッドユニット35のノズル面、すなわち、ヘッドユニット35のノズルプレート150と当接可能なように、上下移動可能に配置される。
【0182】
ここで、ワイパ300を利用する回復処理であるワイピング処理について説明する。ワイピング処理を行う際、図37(a)に示すように、ノズル面(ノズルプレート150)よりもワイパ300の先端が上側に位置するように図示しない駆動装置によってワイパ300は上方に移動される。この場合において、キャリッジモータ41を駆動して図中左方向(矢印の方向)にヘッドユニット35を移動させると、ワイピング部材301がノズルプレート150(ノズル面)に当接することになる。
【0183】
なお、ワイピング部材301は可撓性のゴム部材等から構成されるので、図37(b)に示すように、ワイピング部材301のノズルプレート150と当接する先端部分は撓み、その先端部によってノズルプレート150(ノズル面)の表面をクリーニング(拭き掃除)する。これにより、ノズルプレート150(ノズル面)に付着した紙粉などの異物(例えば、紙粉、空気中に浮遊するごみ、ゴムの切れ端など)を除去することができる。また、このような異物の付着状態に応じて(異物が多く付着している場合には)、ヘッドユニット35にワイパ300の上方を往復移動させることによって、ワイピング処理を複数回実施することもできる。
【0184】
図38は、ポンプ吸引処理時における、ヘッドユニット35と、キャップ310およびポンプ320との関係を示す図である。チューブ321は、ポンピング処理(ポンプ吸引処理)におけるインク排出路を形成するものであり、その一端は、上述のように、キャップ310の底部に接続され、他端は、チューブポンプ320を介して排インクカートリッジ340に接続されている。
【0185】
キャップ310の内部底面には、インク吸収体330が配置されている。このインク吸収体330は、ポンプ吸引処理やフラッシング処理においてインクジェットヘッド100のノズル110から吐出されるインクを吸収して、一時貯蔵する。なお、インク吸収体330によって、キャップ310内へのフラッシング動作時に、吐出された液滴が跳ね返ってノズルプレート150を汚すことを防止することができる。
【0186】
図39は、図38に示すチューブポンプ320の構成を示す概略図である。この図39(B)に示すように、チューブポンプ320は、回転式ポンプであり、回転体322と、その回転体322の円周部に配置された4つのローラ323と、ガイド部材350とを備えている。なお、ローラ323は、回転体322により支持されており、ガイド部材350のガイド351に沿って円弧状に載置された可撓性のチューブ321を加圧するものである。
【0187】
このチューブポンプ320は、軸322aを中心にして回転体322を図39に示す矢印X方向に回転させることにより、チューブ321に当接している1つまたは2つのローラ323が、Y方向に回転しながら、ガイド部材350の円弧状のガイド351に載置されたチューブ321を順次加圧する。これにより、チューブ321が変形し、このチューブ321内に発生した負圧により、各インクジェットヘッド100のキャビティ141内のインク(液状材料)がキャップ310を介して吸引され、気泡が混入し、あるいは乾燥により増粘した不要なインクがノズル110を介して、インク吸収体330に排出され、このインク吸収体330に吸収された排インクがチューブポンプ320を介して排インクカートリッジ340(図38参照)に排出される。
【0188】
なお、このチューブポンプ320は、図示しないパルスモータなどのモータにより駆動される。パルスモータは、制御部6により制御される。チューブポンプ320の回転制御に対する駆動情報、例えば、回転速度、回転数が記述されたルックアップテーブル、シーケンス制御が記述された制御プログラムなどは、制御部6のPROM64などに格納されており、これらの駆動情報に基づいて、制御部6のCPU61によってチューブポンプ320の制御が行われている。
【0189】
次に、回復手段24の動作(吐出異常回復処理)を説明する。図40は、本発明のインクジェットプリンタ1(液滴吐出装置)における吐出異常回復処理を示すフローチャートである。上述の吐出異常検出・判定処理(図24のフローチャート参照)において吐出異常のノズル110が検出され、その原因が判定されると、印刷動作(印字動作)などを行っていない所定のタイミングで、ヘッドユニット35が所定の待機領域(例えば、図36においてヘッドユニット35のノズルプレート150をキャップ310で覆う位置、あるいは、ワイパ300によるワイピング処理を実施可能な位置)まで移動されて、吐出異常回復処理が実行される。
【0190】
まず、制御部6は、図24のステップS107において制御部6のEEPROM62に保存された各ノズル110に対応する判定結果を読み出す(ステップS901)。ステップS902において、制御部6は、この読み出した判定結果に吐出異常のノズル110があるか否かを判定する。そして、吐出異常のノズル110がないと判定された場合、すなわち、すべてのノズル110から正常に液滴が吐出された場合には、そのまま、この吐出異常回復処理を終了する。
【0191】
一方、いずれかのノズル110が吐出異常であったと判定された場合には、ステップS903において、制御部6は、その吐出異常と判定されたノズル110が紙粉付着であるか否かを判定する。そして、そのノズル110の出口付近に紙粉が付着していないと判定された場合には、ステップS905に移行し、紙粉が付着していると判定された場合には、上述のワイパ300によるノズルプレート150へのワイピング処理を実行する(ステップS904)。
【0192】
ステップS905において、続いて、制御部6は、上記吐出異常と判定されたノズル110が気泡混入であるか否かを判定する。そして、気泡混入であると判定された場合には、制御部6は、すべてのノズル110に対してチューブポンプ320によるポンプ吸引処理を実行し(ステップS906)、この吐出異常回復処理を終了する。
【0193】
一方、気泡混入でないと判定された場合には、制御部6は、上記計測手段17によって計測された振動板121の残留振動の周期の長短に基づいて、チューブポンプ320によるポンプ吸引処理または吐出異常と判定されたノズル110のみもしくはすべてのノズル110に対するフラッシング処理を実行し(ステップS907)、この吐出異常回復処理を終了する。
【0194】
次に、本発明のインクジェットプリンタ(液滴吐出装置)1の要部(特徴)である、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100の振動板121の残留振動(減衰振動)の振動パターンに基づくキャビティ141内のインク(液体)の温度の検出(推定)や、それに基づく、インクの温度調整(温度制御)等について説明する。
【0195】
本発明のインクジェットプリンタ1は、インク温度検出手段および加熱・冷却手段を有するインク温度調整手段を備えており、インクの温度を測定する温度センサをはじめとする各種センサを用いることなく、前記インク温度検出手段により、インクジェットヘッド100のキャビティ141内のインクの温度(以下、単に「インク温度」とも言う)を検出(推定)する。そして、前記インク温度調整手段は、その検出されたインクの温度に応じて、駆動回路18における駆動波形制御等を行うとともに、インクを適正な温度(粘度)にするためにインクを加熱、または冷却するための、後述するヒータ(加熱器)や冷却器等の加熱・冷却手段の制御を行う。これにより、インクの温度変化による画像の劣化を防止し、印刷品質を良好に維持することができる。
【0196】
まずは、各種センサを用いることなく、インク温度を測定するための原理について説明する。
図41には、振動板121の残留振動(減衰振動)時の振幅量(残留振幅量)(F/V値)の変化、すなわち、残留振動波形が、温度との相関関係としてグラフで示されている。この図41のグラフから理解できるように、インク温度が、5℃、20℃、30℃、45℃と変化すると、残留振動波形は、それぞれ、曲線a、曲線b、曲線c、曲線dが示すように、その振幅量(F/V値)が大きくなる。すなわち、インクの温度が上昇するにつれて、インクの粘度(インク粘度)が低下し、振幅量(F/V値)が増大する。この相関関係を利用することにより、振動板121の残留振動の振幅量(F/V値)に基づいてインク温度(インク粘度)を検出(推定)することができる。
【0197】
前記インク温度(インク粘度)と、振動板121の残留振動の振幅量(振動パターン)との関係を示す、例えば、テーブルや演算式等の検量線は、実験的に求めることができる。
従って、インク温度と残留振動の振幅量(振動パターン)との関係を示すテーブルや演算式等の検量線を予め作成しておき(例えば、EEPEOM62に記憶しておき)、残留振動の振幅量(振動パターン)を検出し、その検出値と前記検量線とを用いて、インク温度(インク粘度)を検出(推定)することができる。
【0198】
ここで、インク温度とインク粘度との間には、インク温度が上昇すると、インク粘度が低下するという所定の関係があり(この関係を示す検量線は実験的に求めることができる)、このため、本発明では、インク温度とインク粘度とのいずれを検出(推定)して各制御を行ってもよい。すなわち、本発明における「インク温度」には、インク温度およびインク粘度の両方の概念が含まれる。
【0199】
なお、以下の説明では、基本的には、インク温度に統一して説明を行うが、インク粘度と言う場合もある。
また、本発明における「インク温度」の検出(推定)には、振動板121の残留振動の振幅量(振動パターンにおける所定の情報)を検出し、その検出値からインク温度またはインク温度に対応する値を求めることのみならず、振動板121の残留振動の振幅量(振動パターンにおける所定の情報)を検出することも含まれる。
【0200】
以上のことを前提として、インク温度の検出手順(推定手順)をさらに詳しく説明する。
まず、振動板121の残留振振動の振幅量(残留振幅量)を計測(検出)する。これは、前述した吐出異常検出手段10の残留振動検出手段16と、後述するピーク検出手段とで行われる。すなわち、前述したように、残留振動検出手段16は、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動に基づいて、発振回路11が発振し、その発振周波数からF/V変換回路12および波形整形回路15において残留振動波形Wを形成して、検出する(図23参照)。そして、ピーク検出手段により、この残留振動波形Wのピーク値、すなわち、残留振動波形Wの波高値の最大値(最大波高値)を検出する。
【0201】
次いで、インクの温度検出をするインクジェットヘッド100(ノズル110)毎に予めEEPROM62に記憶されている基準値Tと、前記測定された振幅量とを比較し、その差である偏差量(差分値)εを求める。この偏差量εは、下式(式5)で求められる。
偏差量ε=(基準値T)−(測定された振幅量)・・・(式5)
基準値Tは、インクの粘度が適正になるような基準温度(目標温度)における振幅量の値である。この基準値Tとしては、例えば、インク温度が25℃のときの振幅量の値等を用いることができるが、25℃に限定されないことは言うまでもない。
【0202】
また、記憶されている基準値Tは、インク温度を推定する複数のインクジェットヘッド100(ノズル110)を1群として、各群毎に1つの値が記憶されている。すなわち、ノズル群の数だけ基準値Tの値を記憶させている。
ここで、本実施形態では、振幅量として、残留振動波形Wの最大の振幅量(最大波高値:振幅量のピーク値)を用いており、これにより、より適正な偏差量εを求めることができる。なお、振幅量として、残留振動波形Wのうちの、どの部分の振幅量(波高値)を用いてもよいことは言うまでもない。
【0203】
インク温度が基準温度(目標温度)よりも低い場合には、検出される振幅量は、インク温度が基準温度のときの振幅量より低く、偏差量εは、正(+)となる。また、インク温度が低い程、偏差量εの絶対値は、大きくなる。
逆に、インク温度が基準温度よりも高い場合には、検出される振幅量は、インク温度が基準温度のときの振幅量より高く、偏差量εは、負(−)となる。また、インク温度が高い程、偏差量εの絶対値は、大きくなる。
【0204】
求められた偏差量εが図42に示す整定範囲(品質保証範囲)(例えば、基準温度±1℃)内である場合、または、印刷可能範囲(正常範囲)内の場合は、後述するヒータや冷却器の駆動制御を行いつつ、または、その駆動制御を停止し、測定された振幅量に応じて、駆動回路18の駆動波形生成手段181が生成する駆動波形(電圧波形)の補正や、印刷データ(印字データ)の補正を行って印刷(印字)を行う。
【0205】
また、ヒータや冷却器の駆動制御においては、求められた偏差量ε値に基づいて、ヒータ電流制御信号の値(冷却器電流制御信号の値)であるCV値を求める。このCV値は、上述したヒータ(冷却器)をON、OFF動作させるための制御信号であり、その正/負は、偏差量εと同じである。
CV値が正の値である場合には、ヒータをON、または、冷却器をOFF、または、ヒータをONかつ冷却器をOFFさせる。
【0206】
一方、CV値が負の値である場合には、冷却器をON、または、ヒータをOFF、または、冷却器をONかつヒータをOFFさせる。
すなわち、CV値が正の値である場合は、偏差量εが正の値であり、インク温度が基準温度(目標温度)よりも低くなっているので、インク温度を上げるための制御(例えば、ヒータをON)を行う。
逆に、CV値が負の値である場合は、偏差量εが負の値であり、インク温度が基準温度よりも高くなっているので、インク温度を下げるための制御(例えば、冷却器をON)を行う。
【0207】
これらの場合、偏差量εが可及的に0または所定範囲内になるように、すなわち、インク温度が、可及的に基準温度と一致するように、または所定範囲内になるように、温度調整を行う。
例えば、ヒータおよび冷却器に対し、CV値に基づいて、後述する比例制御補正(P制御補正)、PI制御補正およびPID制御補正のうちのいずれかを行う。
【0208】
また、偏差量εが印刷可能範囲外、ずなわち、図42に示す印刷実行不可能範囲X(ε>max:印刷可能範囲の上限の閾値)、または印刷実行不可能範囲Y(ε<min:印刷可能範囲の下限の閾値)となった場合には、図2に示すの表示部Mに、その旨を表示して、使用者に報知し、インクジェットプリンタ1が印刷動作(液滴の吐出動作)中であれば、その印刷動作を停止し、偏差量εが整定範囲となるような所定の回復動作(例えば、ヒータのON/OFFや冷却器のON/OFF)などの処理が行われる。
【0209】
なお、印刷実行不可能範囲Xを特定するための上限の閾値max、印刷実行不可能範囲Yを特定するための下限の閾値mim、整定範囲、印刷可能範囲等は、それぞれ、予め実験により求めておき、EPPROM62等に記憶させておく。
また、表示部Mに表示する内容としては、「印刷が不可能」であることを使用者に認識させる内容、インクカートリッジの交換を使用者に促す表示などが挙げられる。
【0210】
次に、以上の手順を図42を参照しつつ時系列で説明する。
インクジェットプリンタ1の電源(図示せず)がONされると、偏差量εが可及的に0または所定範囲内になるように、すなわち、インク温度が可及的に基準温度(目標温度)に一致するように、または所定範囲内になるように、ヒータの制御、または、冷却器の制御が行われる。この制御は、偏差量εが整定範囲内になるまで行われる。また、この場合の偏差量εは、インクジェットプリンタ1のチューブポンプ320によるポンプ吸引処理を行った後、フラッシング処理を行うことにより検出される。
次に、偏差量εが整定範囲内であることが判定されると、印刷動作を許可する指令が例えば、図2に示すCPU61から出されて印刷が開始できる状態となる。
【0211】
印刷が実行されているときには、インク滴がインクジェットヘッド100のノズル110から吐出されたときの振動板121の残留振動を利用して、偏差量εが検出され、その検出された偏差量εに基づいて、ヒータまたは冷却器の制御が行われる。また、偏差量εに応じて、駆動回路18の駆動波形生成手段181が生成する駆動波形(電圧波形)の補正や、印刷データ(印字データ)の補正を行って印刷(印字)を行う。
【0212】
また、印刷が実行されているときは、偏差量εが、整制範囲を超えても、定印刷可能範囲内であれば、前記、偏差量εに応じて、駆動回路18の駆動波形生成手段181が生成する駆動波形の補正や、印刷データの補正を行って印刷を行う。
また、印刷動作が行われず、非印字時間(インクジェットヘッド100の休止期間等)が長い場合においては、インクジェットヘッド100の周囲の環境温度変化により、偏差量εが印刷可能範囲を逸脱して、印刷不可能範囲X、または印刷不可能範囲Yの領域に達したときは、上述した電源ON時の場合と同様の処理が行われる。
【0213】
なお、ヒータや冷却器を制御する場合、フラッシング処理は、インクジェットヘッド100(ノズル110)が良好な状態に回復するまでの回数を予め指定して行い、回復後は、検出用に選択設定されたインクジェットヘッド100だけを駆動してインクの温度制御を行うようにしてもよい。
また、インク温度が高い場合(min>ε)で冷却器がない構成では、印刷までの待機時間を利用した自然冷却、あるいは、チューブポンプ320によるポンプ吸引処理時にキャビティ141内のインクを入れ替えることによってインク温度を下げるように構成することも可能である。
【0214】
また、キャビティ141がヒータに近いインクジェットヘッド100から得られるデータ(偏差量ε)は、温度が上昇しすぎて粘度が低下しているので、下限の閾値minより小さいか否かの判定のための値として検出し、一方、キャビティ141がインク供給口142に近いインクジェットヘッド100またはキャビティ141が冷却器に近いインクジェットヘッド100は、温度が低下しすぎて粘度が大きいので、そこから得られるデータ(偏差量ε)は、上限の閾値maxの値より大きいか否かの判定のための値として検出することができる。
【0215】
また、偏差量εの検出用のインクジェットヘッド100を選択する場合、特定の位置に設けられている1つのインクジェットヘッド100を選択してもよく、また、特定の位置に設けられているキャビティ141を複数選択し、それらのキャビティ141から得られる複数の偏差量εを平均化することによって得る構成でもよい。
【0216】
また、偏差量εの検出用のインクジェットヘッド100は、そのキャビティ141がヒータあるいは冷却器から一番遠い位置に設けてあるインクジェットヘッド100を代表して使う構成、ヒータあるいは冷却器から一番近い位置および一番遠い位置に設けてあるインクジェットヘッド100を併用する構成、ヒータあるいは冷却器から一番近い位置と一番遠い位置とに設けてあるインクジェットヘッド100の間に存在する複数のインクジェットヘッド100を併用する構成などが挙げられる。なお、前記ヒータあるいは冷却器から一番近い位置と一番遠い位置とに設けてあるインクジェットヘッド100の間に存在する複数のインクジェットヘッド100を併用する構成によれば、ヘッドユニット35内の温度分布が均一になることを確認することができる。
【0217】
加熱・冷却手段は、インクジェットヘッド100のキャビティ141内のインクの加熱のみ可能な加熱手段、冷却のみ可能な冷却手段、加熱および冷却の両方が可能な手段(例えば、加熱手段および冷却手段を設ける構成)のいずれでもよい。なお、加熱手段、冷却手段、加熱および冷却の両方が可能な手段は、それぞれ、特に限定されず、例えば、加熱手段としては、ヒータ、ペルチェ素子などの発熱素子が挙げられ、冷却手段としては、例えば、ペルチェ素子などの冷却素子が挙げられ、加熱および冷却の両方が可能な手段としては、例えば、ペルチェ素子などが挙げられる。
【0218】
この場合、加熱・冷却手段は、少なくとも加熱機能を有するのが好ましく、加熱機能および冷却機能を有するのがより好ましい。加熱機能および冷却機能を有する場合には、インク温度の制御をより迅速かつ確実に行うことができる。
そして、加熱機能および冷却機能を設ける場合、加熱手段と冷却手段とを設ける構成でもよいが、例えば、ペルチェ素子などのように、加熱と冷却の両方が行えるような手段を採用すると一層望ましい構成となる。
【0219】
前記加熱・冷却手段の具体例としては、例えば、ヒータ、ペルチェ素子などの発熱素子、あるいはペルチェ素子などの冷却素子をインクカードリッジ31、インクの流路、インクジェットヘッド100内の所望箇所に設ける構成などが挙げられる。
また、特開2002−337360号公報に示されているように。ヒータ、ペルチェ素子などの発熱素子、あるいはペルチェ素子などの冷却素子をインクカードリッジ31や、インクの流路、インクジェットヘッド100外部の所望箇所に設ける構成も好適である。
【0220】
一方、冷却手段としては、大きく分けて、空冷式、水冷式が挙げられ、空冷式の場合は、放熱版を設ける構成(特開2002−103478号公報)や空冷ファンを取り付ける構成などが挙げられる。また、水冷式の場合、インクカートリッジ31、インクの流路、インクジェットヘッド100の外周面にポンプで水を循環させる構成などが挙げられるが、加熱・冷却手段はこれらの手段に限定されるものではない。
【0221】
次に、検出されたインク温度、すなわち、振幅量(偏差量ε)に応じて行われる印刷データ(印字データ)の補正(補正処理)について説明する。
図52は、インク温度に応じて、印刷データを補正して印字処理を実行するための構成を示すブロック図である。
上述したように、インクジェットプリンタ1は、ホストコンピュータ8からIF9を介して印刷データを受信すると、制御部6は、その印刷データ(印字データ)をEEPROM(記憶手段)62に格納し、所定の変換処理をした後に、印字データ修正手段38に出力する。また、図示しない温度検出手段は、インクジェットヘッド100の振動板121の残留振動波形からインク温度(偏差量ε)を検出し、その検出したインク温度(偏差量ε)を同様に印字データ修正手段38に出力する。印字データ修正手段38は、温度出手段から入力されたインク温度に基づいて、印字データを補正(修正)して、その修正された印字データを吐出選択手段182に出力する。吐出選択手段182は、上述のように、入力された印字データに基づいて、いずれのインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120を駆動するか選択し、その選択に基づいて、複数のインクジェットヘッド100は、インク滴の吐出動作を行う。
【0222】
ここで、印字データ修正手段38は、予めEEPROM62に記憶されている印字データの補正のためのテーブル等の検量線に基づいて印字データを修正する。インク温度が低下すると、1回の吐出動作によって吐出されるインク滴の量が減少するので、この印字データ修正手段38は、入力された吐出回数(入力データ)をそのままインクジェットヘッド100に吐出させず、入力よりも多い吐出回数となるように印字データを補正してその補正された吐出回数だけ吐出するように印字データを修正する。
【0223】
次に本発明に係る液滴吐出装置が適用された1例を図面に基づいて詳細に説明する。
図43には、本発明に係る液滴吐出装置の要部であって、偏差量εを検出等する回路構成500が示されている。なお、この回路構成500は、インクジェットプリンタ1に装備されている。
【0224】
同図において、回路構成500には、インクジェットヘッド100や静電アクチュエータ120(ヘッド/アクチュエータ503と称する)を駆動するための駆動手段501と、偏差量εを算出するのに必要な静電容量の変化を検出するための検出手段502と、それら駆動手段501と検出手段502とを切り替えてヘッド/アクチュエータ503へ接続させるスイッチ504を備えている。
【0225】
また、検出手段502の出力信号を取り込んで所定の処理(後述)を行うピーク検出手段505と、ピーク検出手段505からの出力信号が入力されてその信号が保持される保持手段(記憶手段)506と、保持手段506からの出力信号と、予め設定されたZV信号が入力される減算器507と、偏差量εの上限の閾値maxと、下限の閾値minを設定しておくための上下限値検出回路508とを有している。
【0226】
さらに、減算器507からの出力が入力されるPID演算器600と、PID演算器600の出力信号CV(ヒータ511へ供給する電流量を制御するためのヒータ電流制御用の電圧値)の極性を検出する極性検出手段509と、極性検出手段509の検出結果に基づいて、ヒータ511を駆動制御するヒータ駆動手段700を駆動させるか、または、駆動させないかの切り替えを行うスイッチ510とを備えている。なお、ヒータ駆動手段700が駆動されない場合には、極性検出手段509の出力は抵抗512を介して接地されるように構成されている。
【0227】
なお、図43中、ZVは、予め設定された設定粘度指示値(目標温度)における残留振動ピーク値(最大波高値)の値、RZVは残留振動ピーク値(最大波高値)を示し、この場合、偏差量εは下式(式6)で与えられる。
偏差量ε=ZVーRZV・・・(式6)
すなわち、ZVは、式(式5)における予め設定された基準値Tであり、RZVは、式(式5)における測定された振幅量のピーク値(最大波高値)を意味する。
【0228】
次に、ピーク検出手段505を説明する。
図23に示す波形整形回路15のオペアンプ151の出力信号(残留振動波形W)は、ピーク検出手段505に入力される。ピーク検出手段505は、例えば、図44の回路図(ピークホールド回路)に示すような回路構成を有し、上述した振動板121の残留振動波形の振幅のピーク値(波高値)をホールド(保持)するためのものである。
【0229】
図44に示すピーク検出手段505では、残留振動波形(減衰振動波形)の電圧値により、ダイオードDp2、抵抗Rp2を介してコンデンサCp1を充電する。バッファAp2は、コンデンサCp1に充電された電圧値を出力する。このコンデンサCp1の充電電圧は、抵抗Rp2を介して、非反転増幅器Ap1の反転入力端子に接続されている。バッファAp2の出力電圧は、ダイオードDp2の順方向電圧分だけ充電電圧が低下しているために、入力信号の残留振動波形Wの電圧と電位差が発生し、その電位差分を補うようにコンデンサCp1が充電される。したがって、このピーク検出手段(ピークホールド回路)505は、ダイオードDp2の順方向電圧分をキャンセルするような構成となっている。
【0230】
一方、残留振動波形Wの電圧がほぼ0となった場合にバッファ電圧との電位差が最大となり、ダイオードDp2に大きな逆バイアスがかかるため、このピークホールド回路は、バッファAp2の出力電圧>残留振動波形Wの電圧値の状態で、ダイオードDp1の順方向電圧以上となったときにダイオードDp1が導通し、非反転増幅器Ap1の入力端子間の電位をダイオードDp1の順方向電圧に保持している。したがって、ダイオードDp2は、バッファ電圧+ダイオードDp1の順方向電圧の逆バイアスに抑えるように構成されている。なお、バッファAp2の出力電圧は、A/D変換器ADによってデジタルデータに変換され、このデジタルに数値化された残留振動のピーク電圧を判定手段20に出力するように構成されてもよい。
【0231】
次にピーク検出手段505の動作等を図45に示したタイミングチャートを参照しつつ説明すると、スイッチ504に駆動/検出切り替え信号SDが入力されると、駆動/切り替え信号SDの立ち上がりをタイミングとして、スイッチ504が検出手段502側に切り替わり、インクジェットプリンタ1のヘッド/アクチュエータ503は、インク滴を吐出しない駆動休止期間になる。
【0232】
この駆動休止期間では、駆動/検出切替信号SDの立ち上がりをタイミングとして、振動板121の残留振動(減衰振動)にともなう電圧値が検出手段502で検出され、前述したように、図44中非反転増幅器Ap1に残留振動波形Wの電圧値として入力される。このとき、ピーク検出手段505では、残留振動のピーク値RZVが検出され、その値は保持指令信号Lsが保持手段506に入力されるタイミングで保持手段506に保持(記憶)される。この場合、駆動/検出切替信号SDの立ち下りのタイミングで、保持指示信号Lsが立ち上がり、また、駆動/検出切替信号SDの立ち下がりのタイミングで、スイッチ504が駆動手段501側に切り替わり、インクジェットプリンタ1のヘッド/アクチュエータ503は、再び駆動手段501で駆動される。
【0233】
なお、保持指示信号Lsの立ち下がりをタイミングとして、ピーク検出手段505にはReset信号が入力され、これにより、ピーク検出手段505が保持する残留振動ピーク値は、値0まで減少する(クリアされる)。また、予め設定された粘度指示値ZVと残留振動ピーク値RZVとの差、すなわち上式(式6)から偏差量εが減算器507で算出されてPID演算器600に入力される。
【0234】
また、この実施形態では、印刷可能範囲を設定するための、上限の閾値maxと下限の閾値minとが予め設定してある。その設定は、上下限値検出回路508に設定するように構成されている。
なお、駆動/検出切替信号SD、保持指令信号Ls、Reset信号は、例えばインクジェットプリンタ1に備えられている図2中のCPU61が出力タイミングを制御している。また、上限の閾値maxや下限の閾値minは、例えば、図2中のホストコンピュータ8から入力して設定する構成などが挙げられる。
【0235】
次に、ヒータ駆動手段700は、演算器701(Ap)と、トランジスタ702(Trs)と、抵抗703(Rs)とを備えている。ヒータ511からトランジスタ702を介して抵抗703に流れる電流をIoutとすると、下式(式7)が成り立つ。
Vs=Iout×Rs・・・(式7)
ここで、Vsは演算器701の反転端子に印加される電圧であり、Rsは抵抗703の抵抗値である。
【0236】
上式(式7)中の電圧Vsは、演算器701の反転入力端子に入力されて負帰還回路を構成しており、ヒータ電流制御用の電圧CVは演算器701の非反転入力端子に入力される。そして、演算器701は、ヒータ電流制御電圧CVと、反転入力端子電圧Vsとの電位差が値0となるように、トランジスタ702を制御するので、抵抗703を流れる電流は上式(式7)を変形して得られる関係式Ioutt=CV/Rsによって決定される結果、ヒータ511に通電される電流量は、ヒータ電流制御用の電圧CVに比例した電流値で駆動されることになる。
【0237】
なお、インクの温度変化(粘度変化)を残留振動波形Wの波高値変化量から推定(特定)するためには、インクジェットヘッド100のインク吐出動作が必要であり、ヒータ511のフィードバック制御のためのデータサンプリング時間は、アクチュエータ120の駆動周期となる。また、特定のインクジェットヘッド100、静電アクチュエータ120を温度センサ(粘度センサ)として用いるので、フラッシング処理においてヒータ511を制御することが好ましい。
【0238】
そして、フラッシング処理において、インクジェットヘッド100のキャビティ141内のインク温度が駆動に適した温度になるように、ヒータ電流制御電圧CV値を整定させてから、印字駆動モードに移行させ、アクチュエータ120の駆動中においては、複数のインクジェットヘッド100のなかから任意に選択してフィードバック制御に必要なデータを得ることにより、偏差量εが整定範囲内となり、その結果整定されたインク温度(インク粘度)が保持されるようにヒータ511の制御を行うようにするのが好ましい。
【0239】
次に、PID演算器600は、演算回路601、602、603、と、増幅器604、605、606および加算器607と、図示しない切替スイッチとを備えている。この切替スイッチにより、演算回路601の出力が増幅器604を介して加算器607に入力されると、PID演算器600は、P(比例)演算器として機能し、PID演算器600から出力されるヒータ電流制御電圧CVは、下式(式8)で与えられる。この場合、ヒータ511を比例制御補正によって動作制御する。CV=Kpε・・・(式8)
【0240】
また、切替スイッチにより、演算回路601の出力が増幅器604を介して加算器607に入力されるとともに、演算回路602の出力が増幅器605を介して加算器607に入力される場合、PID演算器600は、PI演算器として機能し、そのときPID演算器600から出力されるヒータ電流制御電圧CVは、下式(式9)で与えられる。この場合、ヒータ511はPI制御補正によって動作制御される。
CV=Kpε+Ki/Ti∫εdt・・・(式9)
【0241】
さらに、切替スイッチにより、演算回路601の出力が増幅器604を介して加算器607に入力されるとともに、演算回路602の出力が増幅器605を介して加算器607に入力され、かつ演算回路603の出力が増幅器606を介して加算器607に入力される場合、PID演算器600は、PID演算器として機能し、そのときPID演算器600から出力されるヒータ電流制御電圧CVは、下式(式10)で与えられる。この場合、ヒータ511はPID制御補正によって動作制御される。
CV=Kpε+Ki/Ti∫εdt+KdTddε/dt・・・(式10)
なお、前記切替スイッチを備えたPID演算器600を、P(比例)演算器、PI演算器、PID演算器のいずれかに変更してもよい。
【0242】
次に、回路構成500で行われる処理手順をフローチャートに基づいて説明する。なお、以下に説明する処理手順は、例えば、CPU61で行われる。
図46は、残留振動波形Wのピーク値RZVを検出するための処理(駆動/検出処理:J)を示すフローチャートである。
同図において、印刷動作、あるいはフラッシング処理等の動作をヘッド/アクチュエータ503に行わせるための駆動電圧が静電アクチュエータ120に印可されると(ステップSS100)、駆動電圧の印加を終了させる指示(駆動/検出切り替え信号SDの入力等)があるまでステップSS100の状態が維持される(ステップSS101で「NO」)。
【0243】
ここで、駆動電圧の印加の終了を指示があると(ステップSS101で「YES」)スイッチ504により、静電アクチュエータ120が、ピーク値RZVを検出する検出手段502側に切り替えられ(ステップSS102)、振動板121の残留振動波形Wの最大波高値(ピーク値RZV)を検出する処理が、検出手段502、ピーク検出手段505、保持手段506を主体とする構成により行われる(ステップSS103)。
この動作は、前述した通り(図24示す吐出異常検出・判定処理と略同様)であるので、その説明は、省略する。
【0244】
そして、図45のタイミングチャートで説明したように、ピーク検出手段505によりピーク値RZVが得られるまで待機し(ステップSS104で「NO」)、ピーク値RZVが検出されると(ステップSS104で「YES」)、保持指示信号Lsが保持手段506に入力されて、ピーク値RZVが保持手段506に保持(記憶)される(ステップSS105)。
【0245】
続いて、アクチュエータ120に電圧を印可するためのスイッチ504の切り替え動作がなされて(ステップSS106)、アクチュエータ120を引き続き駆動される場合、ピーク値RZVをさらに検出する場合には(ステップSS107で「NO」)、ステップSS100に戻って同様の処理を行い、アクチュエータ120の駆動を停止される場合、またはピーク値RZVの検出を行わない場合には(ステップSS107で「YES」)、この処理を終了する。
【0246】
次に、図47および図48に示すフローチャートに従って、インクジェットプリンタ1のCPU61で行われる処理手順を説明する。
インクジェットプリンタ1の電源がONとされると(ステップSS108)、印刷開始までの時間が(待機時間)が長いかどうかが判定され、待機時間長い場合には(ステップSS109で「YES」)しばらく印字動作が行われていないので、印字動作が良好に行えるようにインクジェットヘッド100をクリーニングするための処理が行われる。すなわち、チューブポンプ320によるポンプ吸引処理が行われ(ステップSS110)、所定(予め設定されている)の吸引動作時間が経過するまで(ステップSS111で「NO」)、ポンプ320での吸引動作が行われる。なお、ステップSS109で、待機時間が長くないときは(ステップSS109「NO」)、後述するステップSS112に進む。
【0247】
そして、所定の吸引動作時間が経過すると(ステップSS111で「YES」)、フラッシング処理が開始され(ステップSS112)、静電アクチュエータ120等を駆動させるための駆動条件の初期設定が行われ(ステップSS113)、ピーク値RZVの検出に使用するキャビティ141(ノズル110)が選択されて設定(EEPROM62等に記憶)される(ステップSS114)。
【0248】
次に、図46に示す前述した駆動/検出処理Jが行われ、その結果から偏差量εが、上式の(式6)によって求められる。すなわち、予め設定されていた、粘度指示値ZVに相当する信号と、保持手段506に保持されていたピーク値RZVに相当する信号が減算器507に入力されて、それらの差分が偏差量εとして減算器507から出力される(ステップSS115)。
【0249】
そして、偏差量εの値が、予め設定されている下限の閾値mimよりも小さい場合(min>ε)には(ステップSS116で「YES」)、印刷実行不可能範囲にあるので、印字動作(アクチュエータ120の動作等)を停止させ(ステップSS117)、表示部Mに「印字が不可能」であることを表示する(ステップSS118)。また、この場合には、待機時間の測定を開始する(ステップSS119)。
その測定は設定待機時間が経過するまで行われ(ステップSS120で「NO」)、その設定待機時間が経過すると(ステップSS120で「YES」)、ポンプ320の吸引時間が設定され(ステップSS121)、ステップSS110に戻って同様の処理を行う。
【0250】
次に、予め設定された下限の閾値mimよりも、偏差量εの方が大きい(min<ε)場合には(ステップSS116で「NO」)、偏差量εが、予め設定された上限の閾値maxよりも大きいか、小さいかが判定され、偏差量εが上限の閾値maxよりも大きい(max<ε)場合には(ステップSS122で「YES」)、表示部Mに「印字が不可能」であることを表示する(ステップSS123)。また、偏差量εが上限の閾値maxよりも小さい(min<ε<max)場合には(ステップSS122で「NO」)、ステップSS124に進んで後述する処理(ステップSS124以降の処理)が行われる。
【0251】
すなわち、PID演算器600によりヒータ511のヒータ電流制御用の電圧値CVを算出し(ステップSS124)、その算出結果を極性検出手段509に入力して、極性を判定する。ヒータ電流制御用の電圧値CVの値が「正」の場合には(ステップSS125で「YES」)、電圧値CVに基づいてヒータ駆動手段700によりヒータ511の駆動が制御されてインク温度が上昇され(ステップSS126)、電圧値CVの値が「負」の場合には(ステップSS125で「NO」)、制御量は値「0」とされ、ヒータ511は作動せず(ステップSS130)、フラッシング処理を終了させて(ステップSS129)、図48のフローチャートAに進む。
【0252】
また、ステップSS126に続いて、偏差量εが整定範囲内か否か判定され(図42参照)、整定範囲内であれば(ステップSS127で「YES」)、ステップSS123での表示を取り消す(ステップSS128)とともに、フラッシング処理も終了させて(ステップSS129)、印刷動作(印字動作)を許可し、図48のフローチャートAに進む。なお、ステップSS127で、偏差量εが整定範囲外のときは(ステップSS127で「NO」)、ステップSS114の次の図46に示す前述した駆動/検出処理Jを行う。
【0253】
印字開始の指令がホストコンピュータ8等から入力されると(ステップSS131「YES」)、ピーク値RZVの検出に使用するキャビティ141(ノズル110)が選択されて設定(EEPROM62等に記憶)される(ステップSS132)。そして、偏差量εに基づいてアクチュエータ120等の駆動条件が設定され(ステップSS133)、ピーク値RZVを検出するための図46に示す前述した駆動/検出処理Jが実行される。
【0254】
次いで、偏差量εが減算器507で算出されて出力され(ステップSS134)、偏差量εの値が、予め設定されている下限の閾値mimよりも小さい場合(min>ε)には(ステップSS135「YES」)、印刷実行不可能範囲にあるので、印字動作(アクチュエータ120の動作等)を停止させ(ステップSS136)、表示部Mに「印字が不可能」であること表示し(ステップSS137)、インクジェットヘッド100を回復領域に移動させて(ステップSS138)、ポンプ320の吸引時間を設定し(ステップSS139)、図47のステップSS110に戻って、前述したポンプ吸引処理等のインクジェットヘッド100のクリーニング等の処理を行って、以降のステップを実行する。
【0255】
次に、予め設定された下限の閾値mimよりも、偏差量εの方が大きい(min<ε)場合には(ステップSS135で「NO」)、偏差量εが、予め設定された上限の閾値maxよりも大きいか、小さいかが判定され、偏差量εが上限の閾値maxよりも大きい(max<ε)場合には(ステップSS140で「YES」)、ステップSS136に進む。一方、偏差量εが上限の閾値maxよりも小さい(min<ε<max)場合には(ステップSS140で「NO」)、ステップSS141に進んで後述する処理(ステップSS141以降の処理)が行われる。
【0256】
すなわち、PID演算器600によりヒータ511のヒータ電流制御用の電圧値CVを算出し(ステップSS141)、その算出結果を極性検出手段509に入力して、極性を判定する。ヒータ電流制御用の電圧値CVの値が「正」の場合には(ステップSS142で「YES」)、電圧値CVに基づいてヒータ駆動手段700によりヒータ511の駆動が制御されてインク温度が上昇され(ステップSS143)、電圧値CVの値が「負」の場合には(ステップSS142で「NO」)、制御量は値「0」とされ、ヒータ511は作動せず(ステップSS147)、ステップSS144に進む。
【0257】
ステップSS144では、印字を終了させる指示があるか否かが判定され、印字を終了させる指示があれば(ステップSS144で「YES」)、インクジェットヘッド100を回復領域に移動させる処理が行われ(ステップSS145)、電源OFFのタイミングで(ステップSS146で「YES」)、この処理が終了する。
【0258】
また、ステップSS144で印字の終了指示がない場合には(ステップSS144で「NO」)、ステップSS132に進んで同様の処理が行われ、ステップSS146で電源OFFの指示がない場合は(ステップSS146で「NO」)、インクジェットヘッド100を回復領域に待機させた状態で(ステップSS148)ステップSS131に進む。
なお、ステップSS131で、印字開始の指示がない場合(ステップSS131で「NO」)には一定の時間だけ待って(ステップSS149で「YES」)図47のステップSS112に進み、一定の時間が経過していない場合には(ステップSS149で「NO」)ステップSS131に戻って同様の処理を行う。
【0259】
以上説明したように、このインクジェットプリンタ1は、温度センサ等の各種センサを用いることなく、振動板121の残留振動の振幅量(偏差量ε)を検出することで、インク温度が印刷可能範囲内になるように、ヒータの制御が行われ、良好な印刷動作が行えるように構成されている。
すなわち、インク温度を計測するための各種センサが不要であるため、インクジェットヘッド100、ひいてはインクジェットプリンタ1の小型化、ノズル110などの高密度化が可能となるとともに、部品点数が少なくなるのでインクジェットプリンタ1の製造コストダウンを図ることが可能となる。
【0260】
また、インクの温度調整を正確かつ確実に行うことができるので、印刷(画質)品質の劣化、印刷の失敗など、不要(無駄)な印刷をすることがないので、使用者にとっても、印刷用紙Pが無駄になることがなく、印刷に余計な手間が掛かることなく印刷作業の能率を向上させることができる。
また、このインクジェットプリンタ1では、吐出異常の原因を判別することができ、その吐出異常の原因に対応する適切な回復処理(フラッシング処理、ポンプ吸引処理及びワイピング処理のいずれか又は2つ)を実行することができるので、従来の液滴吐出装置におけるシーケンシャルな回復処理とは異なり、回復処理を行った際に発生する無駄な排インクを減らすことができ、それによって、インクジェットプリンタ1全体のスループットの低下又は悪化を防止することができる。
【0261】
また、従来の吐出異常を検出可能な液滴吐出装置に比べ、他の部品(例えば、光学式のドット抜け検出装置など)を必要としないので、インクジェットヘッド100(ヘッドユニット35)、ひいては、インクジェットプリンタ1全体のサイズを大きくすることなく吐出異常を検出することができるとともに、吐出異常(ドット抜け)検出を行うことができるインクジェットプリンタ1の製造コストを低く抑えることができる。
【0262】
また、インク滴吐出動作後の振動板121の残留振動を用いて吐出異常を検出しているので、印字動作の途中でも吐出異常を検出することができる。
なお、本発明では、インク滴(液滴)を吐出しない程度に静電アクチュエータ(アクチュエータ)120を駆動して(空打ちをして)、振動板121の残留振動を検出してもよい。
また、本発明では、報知手段は、前記表示部(表示手段)に限らず、この他、報知手段として、例えば、ランプ等の発光部、ブザーや音声等を発する装置等を用いてもよい。
【0263】
<第2実施形態>
次に本発明に係る液滴吐出装置の第2実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
この実施形態における発明要部を示す回路構成500Aでは、図49に示されるように、図43に示された回路構成500に加えて、冷却器520と、この冷却器520を駆動するための冷却器駆動手段530が備えられている。冷却器駆動手段530は、スイッチ510の一方の端子に接続されており、冷却器520は、ヘッド/アクチュエータ503を冷却できるように構成されている。なお、他の構成は図43に示された回路構成500と同様なので、その説明は省略する。
【0264】
次に、図50および図51に示すフローチャートに従って、インクジェットプリンタ1のCPU61で行われる処理手順を説明する。なお、この実施形態においても、図46に示す前述した駆動/検出処理Jを行って、最大波高値(ピーク値RZV)の値を求める構成とされている。
インクジェットプリンタ1の電源がONとされると(ステップSS200)、印刷開始までの時間が(待機時間)が長いかどうかが判定され、待機時間長い場合には(ステップSS201で「YES」)しばらく印字動作が行われていないので、印字動作が良好に行えるようにインクジェットヘッド100をクリーニングするための処理が行われる。すなわち、チューブポンプ320によるポンプ吸引処理が行われ(ステップSS202)、所定(予め設定されている)の吸引動作時間が経過するまで(ステップSS203で「NO」)、ポンプ320での吸引動作が行われる。なお、ステップSS201で、待機時間が長くないときは(ステップSS201「NO」)、後述するステップSS204に進む。
【0265】
そして、所定の吸引動作時間が経過すると(ステップSS203で「YES」)、フラッシング処理が開始され(ステップSS204)、静電アクチュエータ120等を駆動させるための駆動条件の初期設定が行われ(ステップSS205)、ピーク値RZVの検出に使用するキャビティ141(ノズル110)が選択されて設定(EEPROM62等に記憶)される(ステップSS206)。
【0266】
次に、図46に示す前述した駆動/検出処理Jが行われ、その結果から偏差量εが、上式の(式6)によって求められる。すなわち、予め設定されていた、粘度指示値ZVに相当する信号と、保持手段506に保持されていたピーク値RZVに相当する信号が減算器507に入力されて、それらの差分が偏差量εとして減算器507から出力される(ステップSS207)。
そして、偏差量εの値が、予め設定されている下限の閾値mimよりも小さい場合(min>ε)には(ステップSS208で「YES」)、印刷実行不可能範囲にあるので、表示部Mに「印字が不可能」であることを表示する(ステップSS209)等の処理が行われる。
【0267】
次に、予め設定された下限の閾値mimよりも、偏差量εの方が大きい(min<ε)場合には(ステップSS208で「NO」)、偏差量εが、予め設定された上限の閾値maxよりも大きいか、小さいかが判定され、偏差量εが上限の閾値maxよりも大きい(max<ε)場合には(ステップSS211で「YES」)、表示部Mに「印字が不可能」であることを表示する(ステップSS212)。
【0268】
また、偏差量εが上限の閾値maxよりも小さい(min<ε<max)場合には(ステップSS211で「NO」)、ステップSS210に進んで後述する処理(ステップSS210以降の処理)が行われる。
すなわち、PID演算器600によりヒータ電流制御用の電圧値CVを算出し(ステップSS210)、その算出結果を極性検出手段509に入力して、極性を判定する。ヒータ電流制御用の電圧値CVの値が「正」の場合には(ステップSS213で「YES」)、電圧値CVに基づいてヒータ駆動手段700によりヒータ511の駆動が制御されて温度インク温度が上昇され(ステップSS214)、電圧値CVの値が「負」の場合には(ステップSS213で「NO」)、冷却器駆動手段530を介して冷却器520が駆動されてインク温度が下げられる(ステップSS215)。
【0269】
次に、偏差量εが整定範囲内であるか否かが判定され、整定範囲内であれば(ステップSS216で「YES」)、ステップSS209とステップSS212での表示を取り消し(ステップSS217)、フラッシング処理を終了させ(ステップSS218)、印刷動作(印字動作)を許可し、図51の処理フローFに進む。
【0270】
印字開始の指令がホストコンピュータ8等から入力されると(ステップSS219「YES」)、ピーク値RZVの検出に使用するキャビティ141(ノズル110)が選択されて設定(EEPROM62等に記憶)される(ステップSS220)。そして、偏差量εに基づいてアクチュエータ120等の駆動条件が設定され(ステップSS221)、ピーク値RZVを検出するための図46に示す前述した駆動/検出処理Jが実行される。
【0271】
次いで、偏差量εが減算器507で算出されて出力され(ステップSS222)、偏差量εの値が、予め設定されている下限の閾値mimよりも小さい場合(min>ε)には(ステップSS223「YES」)、印刷実行不可能範囲にあるので、印字動作(アクチュエータ120の動作等)を停止させ(ステップSS224)、表示部Mに「印字が不可能」であることを表示する(ステップSS225)。そして、インクジェットヘッド100をヘッド回復領域に移動させ(ステップSS226)、ポンプ320の吸引時間を設定して(ステップSS227)から図50のステップSS202に戻って、前述したポンプ吸引処理等のインクジェットヘッド100のクリーニング等の処理を行って、以降の処理を実行する。
【0272】
次に、予め設定された下限の閾値mimよりも、偏差量εの方が大きい(min<ε)場合には(ステップSS223で「NO」)、偏差量εが、予め設定された上限の閾値maxよりも大きいか、小さいかが判定され、偏差量εが上限の閾値maxよりも大きい(max<ε)場合には(ステップSS228で「YES」)、ステップSS224に進み、上述と同様の処理が行われる。
【0273】
また、偏差量εが上限の閾値maxよりも小さい(min<ε<max)場合には(ステップSS228で「NO」)、ステップSS229に進んで後述する処理(ステップSS229以降の処理)が行われる。
すなわち、PID演算器600によりヒータ電流制御用の電圧値CVを算出し(ステップSS229)、その算出結果を極性検出手段509に入力して、極性を判定する。ヒータ電流制御用の電圧値CVの値が「正」の場合には(ステップSS230で「YES」)、電圧値CVに基づいてヒータ駆動手段700によりヒータ511の駆動が制御されてインク温度が上昇され(ステップSS231)、電圧値CVの値が「負」の場合には(ステップSS230で「NO」)、冷却器駆動手段530を介して冷却器520が駆動されてインク温度が下げられる(ステップSS232)。
【0274】
次のステップSS233では、印字を終了させる指示があるか否かが判定され、印字を終了させる指示があれば(ステップSS233で「YES」)、インクジェットヘッド100を回復領域に移動させる処理が行われ(ステップSS234)、電源OFFのタイミングで(ステップSS235で「YES」)、この処理が終了する。
【0275】
また、ステップSS233で印字の終了指示がない場合には(ステップSS233で「NO」)、ステップSS220に進んで同様の処理が行われ、ステップSS235で電源OFFの指示がない場合は(ステップSS235「NO」)、インクジェットヘッド100を回復領域に待機させた状態で(ステップSS236)ステップSS219に進む。
【0276】
なお、ステップSS219で、印字開始の指示がない場合(ステップSS219で「NO」)には一定の時間だけ待って(ステップSS237で「YES」)、図50のステップSS204に進み、一定の時間が経過していない場合には(ステップSS237で「NO」)、ステップSS219に戻って同様の処理を行う。
【0277】
この第2実施形態のインクジェットプリンタ1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
そして、この第2実施形態では、ヒータ511と冷却器520とを設けたので、インクの加熱および冷却を行うことができ、これにより、インクの温度調整を迅速かつ確実に行えるという利点がある。
なお、本発明では、ヒータ511を設けずに、ペルチェ素子のみで、加熱と冷却とを行ってもよい。
また、本発明では、ヒータ511を設けずに、冷却器520だけを設けてもよい。
【0278】
<第3実施形態>
次に、本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例について説明する。図53〜図56は、それぞれ、インクジェットヘッド(ヘッドユニット)の他の構成例の概略を示す断面図である。以下、これらの図に基づいて説明するが、前述した実施形態と相違する点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0279】
図53に示すインクジェットヘッド100Aは、圧電素子200の駆動により振動板212が振動し、キャビティ208内のインク(液体)がノズル203から吐出するものである。ノズル(孔)203が形成されたステンレス鋼製のノズルプレート202には、ステンレス鋼製の金属プレート204が接着フィルム205を介して接合されており、さらにその上に同様のステンレス鋼製の金属プレート204が接着フィルム205を介して接合されている。そして、その上には、連通口形成プレート206およびキャビティプレート207が順次接合されている。
【0280】
ノズルプレート202、金属プレート204、接着フィルム205、連通口形成プレート206およびキャビティプレート207は、それぞれ所定の形状(凹部が形成されるような形状)に成形され、これらを重ねることにより、キャビティ208およびリザーバ209が形成される。キャビティ208とリザーバ209とは、インク供給口210を介して連通している。また、リザーバ209は、インク取り入れ口211に連通している。
【0281】
キャビティプレート207の上面開口部には、振動板212が設置され、この振動板212には、下部電極213を介して圧電素子(ピエゾ素子)200が接合されている。また、圧電素子200の下部電極213と反対側には、上部電極214が接合されている。ヘッドドライバ215は、駆動電圧波形を生成する駆動回路を備え、上部電極214と下部電極213との間に駆動電圧波形を印加(供給)することにより、圧電素子200が振動し、それに接合された振動板212が振動する。この振動板212の振動によりキャビティ208の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ208内に充填されたインク(液体)がノズル203より液滴として吐出する。
液滴の吐出によりキャビティ208内で減少した液量は、リザーバ209からインクが供給されて補給される。また、リザーバ209へは、インク取り入れ口211からインクが供給される。
【0282】
図54に示すインクジェットヘッド100Bも前記と同様に、圧電素子200の駆動によりキャビティ221内のインク(液体)がノズルから吐出するものである。このインクジェットヘッド100Bは、一対の対向する基板220を有し、両基板220間に、複数の圧電素子200が所定間隔をおいて間欠的に設置されている。
隣接する圧電素子200同士の間には、キャビティ221が形成されている。キャビティ221の図55中前方にはプレート(図示せず)、後方にはノズルプレート222が設置され、ノズルプレート222の各キャビティ221に対応する位置には、ノズル(孔)223が形成されている。
【0283】
各圧電素子200の一方の面および他方の面には、それぞれ、一対の電極224が設置されている。すなわち、1つの圧電素子200に対し、4つの電極224が接合されている。これらの電極224のうち所定の電極間に所定の駆動電圧波形を印加することにより、圧電素子200がシェアモード変形して振動し(図54において矢印で示す)、この振動によりキャビティ221の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ221内に充填されたインク(液体)がノズル223より液滴として吐出する。すなわち、インクジェットヘッド100Bでは、圧電素子200自体が振動板として機能する。
【0284】
図55に示すインクジェットヘッド100Cも前記と同様に、圧電素子200の駆動によりキャビティ233内のインク(液体)がノズル231から吐出するものである。このインクジェットヘッド100Cは、ノズル231が形成されたノズルプレート230と、スペーサ232と、圧電素子200とを備えている。圧電素子200は、ノズルプレート230に対しスペーサ232を介して所定距離離間して設置されており、ノズルプレート230と圧電素子200とスペーサ232とで囲まれる空間にキャビティ233が形成されている。
【0285】
圧電素子200の図55中上面には、複数の電極が接合されている。すなわち、圧電素子200のほぼ中央部には、第1電極234が接合され、その両側部には、それぞれ第2の電極235が接合されている。第1電極234と第2電極235との間に所定の駆動電圧波形を印加することにより、圧電素子200がシェアモード変形して振動し(図55において矢印で示す)、この振動によりキャビティ233の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ233内に充填されたインク(液体)がノズル231より液滴として吐出する。すなわち、インクジェットヘッド100Cでは、圧電素子200自体が振動板として機能する。
【0286】
図56に示すインクジェットヘッド100Dも前記と同様に、圧電素子200の駆動によりキャビティ245内のインク(液体)がノズル241から吐出するものである。このインクジェットヘッド100Dは、ノズル241が形成されたノズルプレート240と、キャビティプレート242と、振動板243と、複数の圧電素子200を積層してなる積層圧電素子201とを備えている。
【0287】
キャビティプレート242は、所定の形状(凹部が形成されるような形状)に成形され、これにより、キャビティ245およびリザーバ246が形成される。キャビティ245とリザーバ246とは、インク供給口247を介して連通している。また、リザーバ246は、インク供給チューブ311を介してインクカートリッジ31と連通している。
【0288】
積層圧電素子201の図56中下端は、中間層244を介して振動板243と接合されている。積層圧電素子201には、複数の外部電極248および内部電極249が接合されている。すなわち、積層圧電素子201の外表面には、外部電極248が接合され、積層圧電素子201を構成する各圧電素子200同士の間(または各圧電素子の内部)には、内部電極249が設置されている。この場合、外部電極248と内部電極249の一部が、交互に、圧電素子200の厚さ方向に重なるように配置される。
【0289】
そして、外部電極248と内部電極249との間にヘッドドライバ33より駆動電圧波形を印加することにより、積層圧電素子201が図57中の矢印で示すように変形して(図56中上下方向に伸縮して)振動し、この振動により振動板243が振動する。この振動板243の振動によりキャビティ245の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ245内に充填されたインク(液体)がノズル241より液滴として吐出する。
液滴の吐出によりキャビティ245内で減少した液量は、リザーバ246からインクが供給されて補給される。また、リザーバ246へは、インクカートリッジ31からインク供給チューブ311を介してインクが供給される。
【0290】
以上のような圧電素子を備えるインクジェットヘッド100A〜100Dにおいても、前述した静電容量方式のインクジェットヘッド100と同様にして、振動板または振動板として機能する圧電素子の残留振動に基づき、液滴吐出の異常を検出しあるいはその異常の原因を特定することができる。なお、インクジェットヘッド100Bおよび100Cにおいては、キャビティに面した位置にセンサとしての振動板(残留振動検出用の振動板)を設け、この振動板の残留振動を検出するような構成とすることもできる。
【0291】
<第4実施形態>
次に、本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例について説明する。図57は、ヘッドユニット100Hの構成を示す斜視図、図58は、図57に示すヘッドユニット100Hの1色のインク(1つのキャビティ)に対応する概略的な断面図である。以下、これらの図に基づいて説明するが、前述した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。これらの図に示すヘッドユニット100Hは、いわゆる膜沸騰インクジェット方式(サーマルジェット方式)によるもので、支持板410と、基板420と、外壁430および隔壁431と、天板440とが、図57および図58中下側からこの順に接合された構成のものである。
【0292】
基板420と天板440とは、外壁430および等間隔で平行に配置された複数(図示の例では6枚)の隔壁431を介して所定の間隔をおいて設置されている。そして、基板420と天板440との間には、隔壁431によって区画された複数(図示の例では5個)のキャビティ(圧力室:インク室)432が形成されている。各キャビティ432は、短冊状(直方体状)をなしている。
【0293】
また、図57および図58に示すように、各キャビティ432の図58中左側端部(図57中上端)は、ノズルプレート(前板)433により覆われている。このノズルプレート433には、各キャビティ432に連通するノズル(孔)434が形成されており、このノズル434からインク(液状材料)が吐出する。図57では、ノズルプレート433に対しノズル434が直線的に、すなわち列状に配置されているが、ノズルの配置パターンはこれに限定されないことは言うまでもない。列状に配置されたこのノズル434のピッチは、印刷精度(dpi)等に応じて適宜設定することができる。
なお、ノズルプレート433を設けず、各キャビティ432の図57中上端(図58中左端)が開放しており、この開放した開口がノズルとなるような構成のものでもよい。
【0294】
また、天板440には、インク取り入れ口441が形成され、該インク取り入れ口には、インク供給チューブ311を介して、インクカートリッジ31に接続されている。なお、図示されていないが、インク取り入れ口441とインクカートリッジ31との間に、ダンパ室(ゴムからなるダンパを備え、その変形により室内の容積が変化する)を設けることもできる。これにより、キャリッジ32が往復走行する際のインクの揺れやインク圧の変化をダンパ室が吸収し、ヘッドユニット100Hに所定量のインクを安定的に供給することができる。
【0295】
支持板410、外壁430、隔壁431、天板440およびノズルプレート433は、それぞれ、例えばステンレス鋼等の各種金属材料や各種樹脂材料、各種セラミックス等で構成されている。また、基板420は、例えば、シリコン等で構成されている。
基板420の各キャビティ432に対応する箇所には、それぞれ、発熱体450が設置(埋設)されている。各発熱体450は、ヘッドドライバ(通電手段)452により、それぞれ別個に通電され、発熱する。ヘッドドライバ452は、制御部6から入力される印字信号(印字データ)に応じ、発熱体450の駆動信号として例えばパルス状の信号を出力する。
【0296】
また、発熱体450のキャビティ432側の面は、保護膜(耐キャビテーション膜)451で覆われてる。この保護膜451は、発熱体450がキャビティ432内のインクと直接接触するのを防止するために設けられたものである。この保護膜451を設けることにより、発熱体450がインクと接触することによる変質、劣化等を防止することができる。
【0297】
基板420の各発熱体450の近傍であって、各キャビティ432に対応する箇所には、それぞれ、凹部460が形成されている。この凹部460は、例えばエッチング、打ち抜き等の方法により形成することができる。
凹部460のキャビティ432側を遮蔽するように振動板461が設置されている。この振動板461は、キャビティ432内の圧力(液圧)の変化に追従して図58中の上下方向に弾性変形(弾性変位)する。
振動板461の構成材料や厚さは、特に限定されず、適宜設定される。
【0298】
一方、凹部460の他方の側は、支持板410により覆われており、該支持板410の図58中上面の各振動板461に対応する箇所には、それぞれ、セグメント電極462が設置されている。
振動板461とセグメント電極462とは、所定の間隙距離をおいてほぼ平行に配置されている。振動板461とセグメント電極462との間の間隙距離(ギャップ長g)は、特に限定されず、適宜設定される。わずかな間隔距離を隔てて振動板461とセグメント電極462とを配置することにより、平行平板コンデンサを形成することができる。そして、前述したように、振動板461がキャビティ432内の圧力に追従して図58中の上下方向に弾性変形すると、それに応じて振動板461とセグメント電極462と間隙距離が変化し、前記平行平板コンデンサの静電容量Cが変化する。この静電容量Cの変化は、振動板461とセグメント電極462とにそれぞれ導通する共通電極470と外部セグメント電極471との電圧差の変化として現れるので、前述したように、これを検出することにより、振動板461の残留振動(減衰振動)を知ることができる。
【0299】
基板420のキャビティ432外には、共通電極470が形成されている。また、支持板410のキャビティ432外には、外部セグメント電極471が形成されている。
セグメント電極462、共通電極470および外部セグメント電極471の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、金、胴、またはこれらを含む合金等が挙げられる。また、セグメント電極462、共通電極470および外部セグメント電極471は、それぞれ、例えば金属箔の接合、メッキ、蒸着、スパッタリング等の方法により形成することができる。
【0300】
各振動板461と共通電極470とは、導体475により電気的に接続され、各セグメント電極462と各外部セグメント電極471とは、導体476により電気的に接続されている。
導体475、476としては、それぞれ、▲1▼金属線等の導線を配設したもの、▲2▼基板420または支持板410の表面に例えば金、銅等の導電性材料よりなる薄膜を形成したもの、あるいは、▲3▼基板420等の導体形成部位にイオンドーピング等を施して導電性を付与したもの等が挙げられる。
【0301】
以上のようなヘッドユニット100Hは、図58中の上下方向に複数重ねて(他段に)配置することができる。図59では、4色のインク(インクカートリッジ31)を適用した場合におけるノズル434の配置の例を示すが、この場合、複数のヘッドユニット100Hを例えば主走査方向に重ねて配置し、それらの前面に1枚のノズルプレート433を接合した構成とすることができる。
ノズルプレート433上におけるノズル434の配置パターンは、特に限定されないが、図59に示すように、隣り合うノズル列において、ノズル434が半ピッチずれたように配置することができる。
【0302】
次に、ヘッドユニット100Hの作用(作動原理)について説明する。
ヘッドドライバ33から駆動信号(パルス信号)が出力されて発熱体450に通電されると、発熱体450は、瞬時に300℃以上の温度に発熱する。これにより、保護膜451上に膜沸騰による気泡(後述する不吐出の原因となるキャビティ内に混入、発生する気泡とは異なる)480が発生し、該気泡480は瞬時に膨張する。これにより、キャビティ432内に満たされたインク(液状材料)の液圧が増大し、インクの一部がノズル434から液滴として吐出される。
インクの液滴が吐出された直後、気泡480は急激に収縮し、元の状態に戻る。このときのキャビティ432内の圧力変化により振動板461が弾性変形して、次の駆動信号が入力され再びインク滴が吐出されるまでの間、減衰振動(残留振動)を生じる。
【0303】
振動板461が減衰振動を生じると、それに応じて、振動板461と、これと対向するセグメント電極462との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化は、共通電極470と外部セグメント電極471との電圧差の変化として現れるが、これを読み取ることにより、インク滴の不吐出またはその原因を検出、特定することができる。すなわち、ノズル434からインク滴が正常に吐出されたときの共通電極470と外部セグメント電極471との電圧差の変化(静電容量の変化)の様子(パターン)と比較することにより、インク滴が正常に吐出されたか否かを判定することができ、また、インク滴の不吐出の原因毎の様子(パターン)とそれぞれ比較し、特定することにより、インク滴の不吐出の原因を判定することができる。
インク滴の吐出によりキャビティ432内で減少した液量は、インク取り入れ口441から新たなインクがキャビティ432内に供給されて補給される。このインクは、インクカートリッジ31からインク供給チューブ311内を通って供給される。
【0304】
以上、本発明の液滴吐出装置を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、液滴吐出ヘッドあるいは液滴吐出装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、本発明の液滴吐出装置に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0305】
なお、本発明の液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド(上述の実施形態では、インクジェットヘッド100)から吐出する吐出対象液(液滴)としては、特に限定されず、例えば以下のような各種の材料を含む液体(サスペンション、エマルション等の分散液を含む)とすることができる。すなわち、カラーフィルタのフィルタ材料を含むインク、有機EL(Electro Luminescence)装置におけるEL発光層を形成するための発光材料、電子放出装置における電極上に蛍光体を形成するための蛍光材料、PDP(Plasma Display Panel)装置における蛍光体を形成するための蛍光材料、電気泳動表示装置における泳動体を形成する泳動体材料、基板Wの表面にバンクを形成するためのバンク材料、各種コーティング材料、電極を形成するための液状電極材料、2枚の基板間に微小なセルギャップを構成するためのスペーサを構成する粒子材料、金属配線を形成するための液状金属材料、マイクロレンズを形成するためのレンズ材料、レジスト材料、光拡散体を形成するための光拡散材料などである。
【0306】
また、本発明では、液滴を吐出する対象となる液滴受容物は、記録用紙のような紙に限らず、フィルム、織布、不織布等の他のメディアや、ガラス基板、シリコン基板等の各種基板のようなワークであってもよい。
また、本発明は、振動板を有する複数の液滴吐出ヘッドを備える、あらゆる方式(形態)の液滴吐出装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【図2】本発明のインクジェットプリンタの主要部を概略的に示すブロック図である。
【図3】図1に示すヘッドユニット(インクジェットヘッド)の概略的な断面図である。
【図4】図3のヘッドユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図5】4色インクを用いるヘッドユニットのノズルプレートのノズル配置パターンの一例である。
【図6】図3のIII−III断面の駆動信号入力時の各状態を示す状態図である。
【図7】図3の振動板の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。
【図8】図3の振動板の残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。
【図9】図3のキャビティ内に気泡が混入した場合のノズル付近の概念図である。
【図10】キャビティへの気泡混入によりインク滴が吐出しなくなった状態における残留振動の計算値及び実験値を示すグラフである。
【図11】図3のノズル付近のインクが乾燥により固着した場合のノズル付近の概念図である。
【図12】ノズル付近のインクの乾燥増粘状態における残留振動の計算値及び実験値を示すグラフである。
【図13】図3のノズル出口付近に紙粉が付着した場合のノズル付近の概念図である。
【図14】ノズル出口に紙粉が付着した状態における残留振動の計算値及び実験値を示すグラフである。
【図15】ノズル付近に紙粉が付着した前後におけるノズルの状態を示す写真である。
【図16】図3に示す吐出異常検出手段の概略的なブロック図である。
【図17】図3の静電アクチュエータを平行平板コンデンサとした場合の概念図である。
【図18】図3の静電アクチュエータから構成されるコンデンサを含む発振回路の回路図である。
【図19】図16に示す吐出異常検出手段のF/V変換回路の回路図である。
【図20】発振回路から出力する発振周波数に基づく各部の出力信号などのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図21】固定時間tr及びt1の設定方法を説明するための図である。
【図22】図16の波形整形回路の回路構成を示す回路図である。
【図23】駆動回路と検出回路との切替手段の概略を示すブロック図である。
【図24】吐出異常検出・判定処理を示すフローチャートである。
【図25】残留振動検出処理を示すフローチャートである。
【図26】吐出異常判定処理を示すフローチャートである。
【図27】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段が1つの場合)である。
【図28】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段の数がインクジェットヘッドの数と同じ場合)である。
【図29】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段の数がインクジェットヘッドの数と同じであり、印字データがあるときに吐出異常検出を行う場合)である。
【図30】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(吐出異常検出手段の数がインクジェットヘッドの数と同じであり、各インクジェットヘッドを巡回して吐出異常検出を行う場合)である。
【図31】図27に示すインクジェットプリンタのフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図32】図28及び図29に示すインクジェットプリンタのフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図33】図30に示すインクジェットプリンタのフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図34】図28及び図29に示すインクジェットプリンタの印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図35】図30に示すインクジェットプリンタの印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図36】図1に示すインクジェットプリンタの上部から見た概略的な構造(一部省略)を示す図である。
【図37】図36に示すワイパとヘッドユニットとの位置関係を示す図である。
【図38】ポンプ吸引処理時における、ヘッドユニットと、キャップ及びポンプとの関係を示す図である。
【図39】図38に示すチューブポンプの構成を示す概略図である。
【図40】本発明のインクジェットプリンタにおける吐出異常回復処理を示すフローチャートである。
【図41】種々の温度における振動板の残留振動を示すグラフである。
【図42】本発明のインクジェットプリンタを実現するための原理を示す説明図である。
【図43】本発明のインクジェットプリンタの要部を示す回路構成図である。
【図44】図43に示す回路構成に備えられたピーク検出手段の構成図である。
【図45】図44に示すピーク検出手段の動作等を示すタイミングチャートである。
【図46】最大波高値RZVを求めるための処理(駆動/検出処理:J)を示すフローチャートである。
【図47】図43に示す回路構成で行われる処理を示すフローチャートである。
【図48】図43に示す回路構成で行われる処理を示すフローチャートである。
【図49】第2実施形態における要部を示す回路構成図である。
【図50】図49に示す回路構成で行われる処理手順を示すフローチャートである。
【図51】図49に示す回路構成で行われる処理手順を示すフローチャートである。
【図52】インク温度に応じて、印刷データを補正して印字処理を実行するための構成を示すブロック図である。
【図53】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図54】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図55】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図56】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図57】本発明におけるヘッドユニットの他の構成例を示す斜視図である。
【図58】図57に示すヘッドユニットの概略的な断面図である。
【図59】4色インクを用いるヘッドユニットのノズルプレートにおけるノズルの配置パターンの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
1……インクジェットプリンタ 2……装置本体 21……トレイ 22……排紙口 3……印字手段 31……インクカートリッジ 311……インク供給チューブ 32……キャリッジ 33……ヘッドドライバ 34……連結部 35……ヘッドユニット 38……印字データ修正手段 4……印刷装置 41……キャリッジモータ 42……往復動機構 421……タイミングベルト 422……キャリッジガイド軸 43……キャリッジモータドライバ 44……プーリ 5……給紙装置 51……給紙モータ 52……給紙ローラ 52a……従動ローラ 52b……駆動ローラ 53……給紙モータドライバ 6……制御部
61……CPU 62……EEPROM(記憶手段) 63……RAM 64……PROM 7……操作パネル 8……ホストコンピュータ 9……IF 10、10a〜10e……吐出異常検出手段 11……発振回路 111……シュミットトリガインバータ 112……抵抗素子 12……F/V変換回路 13……定電流源 14……バッファ 15……波形整形回路 151……増幅器(オペアンプ) 152……比較器(コンパレータ) 16……残留振動検出手段
17……計測手段 18……駆動回路 181……駆動波形生成手段 182……吐出選択手段 182a……シフトレジスタ 182b……ラッチ回路 182c……ドライバ 19……切替制御手段 19a……切替選択手段 191……セレクタ 20……判定手段 23、23a〜23e……切替手段 24……回復手段 100、100A〜100D、100a〜100e……インクジェットヘッド、100H……ヘッドユニット 110……ノズル 120……静電アクチュエータ 121……振動板(底壁) 122……セグメント電極 123……絶縁層 124……共通電極 124a……入力端子 130……ダンパ室 131……インク取入れ口 132……ダンパ 140……シリコン基板 141……キャビティ 142……インク供給口 143……リザーバ 144……側壁 150……ノズルプレート 160……ガラス基板 161……凹部
162……対向壁 170……基体 200……圧電素子 201……積層圧電素子 202、222、230、240……ノズルプレート 203、223、231、241……ノズル 204……金属プレート 205……接着フィルム 206……連通口形成プレート 207、242……キャビティプレート 208、221、233、245……キャビティ 209、246……リザーバ210、247……インク供給口 211……インク取り入れ口 212、243……振動板 213……下部電極 214……上部電極 215……ヘッドドライバ 220……基板 224……電極 232……スペーサ 234……第1電極 235……第2電極 244……中間層 248……外部電極 249……内部電極 300……ワイパ 301……ワイピング部材 310……キャップ 320……チューブポンプ(回転式ポンプ) 321……(可撓性)チューブ 322……回転体 322a……軸 323……ローラ 330……インク吸収体 340……排インクカートリッジ 350……ガイド部材 351……ガイド 410……支持板 420……基板 430……外壁 431……隔壁 432……キャビティ 433……ノズルプレート(前板) 434……ノズル 440……天板 441……インク取り入れ口 450……発熱体 451……保護膜(キャビテーション膜) 452……ヘッドドライバ 460……凹部 461……振動板 462……セグメント電極 470……共通電極
471……外部セグメント電極 475……導体 476……導体 480……気泡 P……記録用紙 500……回路構成 501……駆動手段 502……検出手段 503……ヘッド/アクチュエータ 504……スイッチ 505……ピーク検出手段 506……保持手段 508……上下限値検出手段 507……減算器 600……PID演算器 601……演算回路 602……演算回路
603……演算回路 604……増幅器 605……増幅器 606……増幅器 607……加算器 509……極性検出手段 510……スイッチ 520……冷却器 530……冷却器駆動手段 700……ヒータ駆動手段 701……演算器 702……トランジスタ 703……抵抗511……ヒータ 512……抵抗 500A……回路構成 Ap1……非反転増幅器 Ap2……バッファ Dp1……ダイオード Dp2……ダイオード Cp1……コンデンサ Rp1……抵抗 Rp2……抵抗 Rp3……抵抗 Tr1……トランジスタ AD……A/D変換器 W……残留振動波形 CV……ヒータ伝量制御用電圧 ZV……設定粘度指数値 RZV……残留振動ピーク値(ピーク値) ε……偏差量(粘度偏差) max……上限閾値 min……下限閾値 X……上限を超えた領域の印字実行不可能範囲 Y……下限よりも小さい領域の印字実行不可能範囲 M……表示部 W……残留振動波形
S101〜S109、S201〜S205、S301〜S310、S401〜S407、S501〜S505、S601〜S608、S701〜S706、S801〜S810、S901〜S907、SS100〜SS149、SS200〜SS237……ステップ、M……表示部

Claims (25)

  1. 駆動回路により駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動により変位する振動板とを有し、前記駆動回路によりアクチュエータを駆動し、キャビティ内の液体をノズルから液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置であって、
    前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度を調整する温度調整手段を有することを特徴とする液滴吐出装置。
  2. 駆動回路により駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動により変位する振動板とを有し、前記駆動回路によりアクチュエータを駆動し、キャビティ内の液体をノズルから液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置であって、
    前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度を検出する温度検出手段を有し、該温度検出手段からの検出値に基づいて、前記キャビティ内の液体の温度を調整する温度調整手段を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
  3. 前記温度検出手段からの検出値に応じて、前記駆動回路により生成する駆動波形を補正するよう構成される請求項2に記載の液滴吐出装置。
  4. 前記温度検出手段からの検出値に応じて、前記液滴吐出ヘッドが吐出する液滴の数量を補正するよう構成される請求項2に記載の液滴吐出装置。
  5. 前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の振幅を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  6. 前記振動板の残留振動の振幅量が、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の温度に対応する請求項5に記載の液滴吐出装置。
  7. 前記温度調整手段により、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の目標温度に対応する振幅量の基準値と、検出された前記残留振動の振幅量との差である偏差量を求め、該偏差量が可及的に0または所定範囲内になるように前記キャビティ内の液体の温度を調整する請求項5または6に記載の液滴吐出装置。
  8. 前記温度調整手段より、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の目標温度に対応する振幅量の基準値と、検出された前記残留振動の振幅量との差である偏差量を求め、
    該偏差量が品質保証範囲内になると、液滴の吐出動作の開始を許可する吐出動作開始許可手段を有する請求項5ないし7のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  9. 前記温度調整手段により、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の目標温度に対応する振幅量の基準値と、検出された前記残留振動の振幅量との差である偏差量を求め、
    液滴の吐出動作中において、該偏差量が正常範囲から外れると、前記液滴の吐出動作を停止する請求項5ないし8のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  10. 前記温度調整手段は、前記キャビティ内の液体を加熱および/または冷却し得る加熱・冷却手段を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  11. 前記温度調整手段は、前記加熱・冷却手段に対し、比例制御補正を行う比例演算器、PI制御補正を行うPI制御演算器およびPID制御補正を行うPID制御演算器のうちの少なくとも1つを有する請求項10に記載の液滴吐出装置。
  12. 前記温度調整手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振する請求項1ないし11のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  13. 前記温度調整手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する前記アクチュエータの静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振する請求項1ないし11のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  14. 前記発振回路は、前記アクチュエータの静電容量成分と、前記アクチュエータに接続される抵抗素子の抵抗成分とによるCR発振回路を構成する請求項13に記載の液滴吐出装置。
  15. 前記温度調整手段は、前記発振回路の出力信号における発振周波数の変化に基づいて生成される所定の信号群により、前記振動板の残留振動の電圧波形を生成するF/V変換回路を含む請求項13または14に記載の液滴吐出装置。
  16. 前記温度調整手段は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形を所定の波形に整形する波形整形回路を含む請求項15に記載の液滴吐出装置。
  17. 前記波形整形回路は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形から直流成分を除去するDC成分除去手段を含み、
    前記温度調整手段は、前記DC成分除去手段によって直流成分を除去された電圧波形のピーク値である前記残留振動の波高値を検出するピーク検出手段を含む請求項16に記載の液滴吐出装置。
  18. 前記アクチュエータは、静電式アクチュエータである請求項1ないし17のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  19. 前記アクチュエータは、圧電素子のピエゾ効果を利用した圧電アクチュエータである請求項1ないし17のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  20. 前記アクチュエータは、通電により発熱する発熱体を備える膜沸騰式アクチュエータである請求項1ないし12のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  21. 前記振動板は、前記キャビティ内の圧力の変化に追従して弾性的に変形する請求項20に記載の液滴吐出装置。
  22. 前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドの吐出異常をその原因とともに検出する吐出異常検出手段を有する請求項1ないし21のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  23. 前記吐出異常検出手段により前記液滴吐出ヘッドの吐出異常が検出された場合、前記液滴吐出ヘッドに対し、その吐出異常の原因に応じて、前記吐出異常の原因を解消させる回復処理を行う回復手段を有する請求項22に記載の液滴吐出装置。
  24. 前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の周期を含み、
    前記吐出異常検出手段は、前記振動板の残留振動の周期が所定の範囲の周期よりも短いときには、前記キャビティ内に気泡が混入したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が所定の閾値よりも長いときには、前記ノズル付近の液体が乾燥により増粘したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が前記所定の範囲の周期よりも長く、前記所定の閾値よりも短いときには、前記ノズルの出口付近に紙粉が付着したものと判定する請求項22または23に記載の液滴吐出装置。
  25. 前記液滴吐出装置は、インクジェットプリンタを含む請求項1ないし24のいずれかに記載の液滴吐出装置。
JP2003093433A 2003-03-31 2003-03-31 液滴吐出装置 Pending JP2004299174A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003093433A JP2004299174A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 液滴吐出装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003093433A JP2004299174A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 液滴吐出装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004299174A true JP2004299174A (ja) 2004-10-28

Family

ID=33406232

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003093433A Pending JP2004299174A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 液滴吐出装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004299174A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100927362B1 (ko) 2006-11-22 2009-11-19 세이코 엡슨 가부시키가이샤 액상체 배치 방법 및 액상체 토출 장치
JP2010094808A (ja) * 2008-10-14 2010-04-30 Seiko Epson Corp 液体吐出装置、及び、その制御方法
CN102649360A (zh) * 2011-02-22 2012-08-29 精工爱普生株式会社 喷嘴状态检测装置及图像形成装置

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100927362B1 (ko) 2006-11-22 2009-11-19 세이코 엡슨 가부시키가이샤 액상체 배치 방법 및 액상체 토출 장치
JP2010094808A (ja) * 2008-10-14 2010-04-30 Seiko Epson Corp 液体吐出装置、及び、その制御方法
US8109589B2 (en) 2008-10-14 2012-02-07 Seiko Epson Corporation Liquid discharging device and method of controlling the same
CN102649360A (zh) * 2011-02-22 2012-08-29 精工爱普生株式会社 喷嘴状态检测装置及图像形成装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4269731B2 (ja) 液滴吐出装置、及びインクジェットプリンタ
US7232199B2 (en) Droplet ejection apparatus and method of detecting and judging ejection failure in droplet ejection heads
JP2004276273A (ja) 液滴吐出装置
US7311373B2 (en) Droplet ejection apparatus including recovery processing with a standby power supply
JP3867791B2 (ja) 液滴吐出装置、及びインクジェットプリンタ
JP2015128870A (ja) 液滴吐出装置
JP3794431B2 (ja) 液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの吐出異常検出・判定方法
JP2017136787A (ja) 液滴吐出装置及び液滴吐出装置における液体使用量の算出方法
JP5273285B2 (ja) 液体吐出装置
JP2004299341A (ja) 液滴吐出装置及び粘度検出方法
JP3900373B2 (ja) 液滴吐出装置およびインクジェットプリンタ
JP2004314459A (ja) 液滴吐出装置及びヘッド異常の予測及び回復方法
JP6040077B2 (ja) 印刷装置および印刷方法
JP4389464B2 (ja) 液滴吐出装置
JP2009101699A (ja) 液滴吐出装置およびインクジェットプリンタ
JP4314849B2 (ja) 液滴吐出装置、インクジェットプリンタ、及び気泡量検出方法
JP6065056B2 (ja) 液滴吐出装置
JP3900372B2 (ja) 液滴吐出装置およびインクジェットプリンタ
JP6724962B2 (ja) 液滴吐出装置
JP2004299174A (ja) 液滴吐出装置
JP5257476B2 (ja) 検出方法および液滴吐出装置
JP2004284190A (ja) 液滴吐出装置
JP2004299140A (ja) 液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の検出・回復方法
JP4314850B2 (ja) 液滴吐出装置、インクジェットプリンタ、及び吐出異常検出方法
JP2004284189A (ja) 液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の検出・回復方法