JP2004298299A - 視覚再生補助装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】網膜に複数の刺激電極を当接させて網膜を構成する細胞を電気刺激することにより視覚の再生を行うための視覚再生補助装置において、複数の刺激電極を形成するための基板を有し、少なくとも刺激電極を形成する部分の基板形状は渦巻状に形成されており、弾力性や屈曲性をある程度有するため、網膜が有する曲面に合わせて各電極を網膜の広い範囲において密着させることができる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工的に視覚信号を与えるための視覚再生補助装置に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、失明治療技術の一つとして、電極等を有する眼内埋埴装置(体内装置)を眼内に設置し、網膜を構成する細胞を電気刺激して視覚の再生を試みる視覚再生補助装置の研究がされている。このような視覚再生補助装置には、体外にて撮像された映像を光信号や磁気信号に変換した後、眼内に設置された体内装置に送信して網膜を構成する細胞を刺激する方法(以下、体外撮像型と記す 特許文献1参照)や、網膜にフォトダイオードアレイ等からなる体内装置を設置し、画像をフォトダイオードアレイに受像(受光)させて細胞を電気刺激する方法(以下、体内撮像型と記す 特許文献2参照)等が考えられている。
このような体外撮像型や体内撮像型の視覚再生補助装置を用いて網膜を構成する細胞を電気刺激する場合、生体適合性の良い樹脂等からなる板状の基板に電極を複数個設置し、この電極を網膜に当接させて細胞を電気刺激するようにしている。
【特許文献1】
米国特許5935155号明細書
【特許文献2】
米国特許5024223号明細書
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、眼球は球形状であるために網膜はその形状に沿って曲面を有しており、従来の視覚再生補助装置に用いられる板状の基板では、網膜の広い範囲において電極を密着させることが難しい。このため、従来の視覚再生補助装置を用いて広い視野を得ることが困難であった。
上記従来技術の問題点に鑑み、網膜の広い範囲に対して電極を密着させることができ、広い範囲の視野を得ることができる視覚再生補助装置を提供することを技術課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0005】
(1) 網膜に複数の刺激電極を当接させて網膜を構成する細胞を電気刺激することにより視覚の再生を行うための視覚再生補助装置において、前記複数の刺激電極を形成するための基板を有し、少なくとも前記刺激電極を形成する部分の基板形状は渦巻状に形成されていることを特徴とする。
(2) (1)の視覚再生補助装置において、前記基板は軟性の樹脂材料にて形成されていることを特徴とする。
(3) 網膜に複数の刺激電極を当接させて網膜を構成する細胞を電気刺激することにより視覚の再生を行うための視覚再生補助装置において、前記複数の刺激電極を形成するための基板を有し、少なくとも前記刺激電極を形成する部分の基板形状はケーブル状に形成されていることを特徴とする。
(4) (3)の視覚再生補助装置において、前記刺激電極は前記ケーブル状の基板の周囲にリング状に形成されていることを特徴とする。
(5) (1)〜(4)の視覚再生補助装置において、レーザ光を用いて前記刺激電極が形成された基板を網膜に固定保持させることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は実施の形態で使用する視覚再生補助装置の要部構成を示し、図2は視覚再生補助装置の外観を示した概略図である。
1は視覚再生補助装置であり、外界を撮影するための体外装置10と網膜を構成する細胞に電気刺激を与え、視覚の再生を促す体内装置20とからなる。体外装置10は図1、図2に示すように、患者が掛けるバイザー11と、バイザー11に取り付けられるCCDカメラからなる撮影装置12と、外部デバイス13、コイルからなる送信手段14にて構成されている。
【0007】
外部デバイス13には、撮影装置12からの撮影データを電気刺激パルス用データに変換するためのパルス信号変換手段13aと、視覚再生補助装置1(体外装置10及び体内装置20)の電力供給を行うためのバッテリー13bからなる(図4参照)。送信手段14はパルス信号変換手段13aにて変換された刺激パルス信号用データ、及び体内装置20を駆動させるための電力を電磁波として体内装置20に伝送(無線送信)することができる。また、送信手段14の中心には磁石14aが取り付けられている。磁石14aは送信手段14によるデータ伝送効率を向上させるとともに後述する受信手段24との位置固定にも使用される。
【0008】
バイザー11は眼鏡形状を有しており、患者の眼前に装着して使用することができるようになっている。また、撮影装置12はバイザー11の前面に取り付けてあり、患者に認知させる被写体を撮影することができる。
体内装置20は、網膜を構成する細胞を電気刺激するための刺激電極が設けられる基板21、体外装置10からの電磁波を受信するコイルからなる受信手段24、ケーブル25、内部デバイス26等にて構成されている。
【0009】
図3(a)は眼内に置かれる基板21の外観を示した図であり、図3(b)は図3(a)のA方向から見たときの概略断面図である。
基板21は生体適合性の良い軟性の材料を使用しており、本実施の形態ではポリイミドを用いている。基板21は略長板形状からなっており、その先端には渦巻形状を有した渦巻部分21aが形成されている。渦巻部分21aの裏側(紙面裏側)には、網膜を構成する細胞を電気刺激するための電極23が複数個所定の間隔(等間隔)にて形成されており、多点電極を形成している。また、渦巻部分21aはこのような形状により、弾力性や屈曲性をある程度有するため、網膜が有する曲面に合わせて各電極23を網膜に密着させることができる。
【0010】
また、各電極23には各々独立した電線(リード線)27が接続されており、図3(b)に示すように、各リード線27は渦巻部分21aの裏側から基端側に延び、基板21の基端側表面(紙面表側)に設けられた内部デバイス26に接続されている。なお、基板21の渦巻部分21aの裏側に電極23を形成させるには、内部デバイス26から渦巻部分21aの裏側に向けて予め形成しておく。この基板21の裏面に絶縁性の感光性樹脂を塗布した後、フォトリソグラフィ法によりリード線27の先端が露出するように孔を開け、この孔に金、白金等の導電性金属材料を付着、堆積させることにより電極23を形成することができる。また、形成する電極23の個数に対応した数だけのリード線27を基板21上の一平面に形成させることが難しい場合には、基板21上にリード線27の形成層を複数積層させる立体回路の構成をとるようにすることもできる。また、絶縁性材料にて被覆された極細線ワイヤーを絶縁シートで挟み込むことによってリード線27を形成するようにすることもできる。
また、内部デバイス26は、ケーブル25を介して受信手段24と接続されており、受信手段24にて受信されたパルス信号用データを基に、視覚を得るための電気パルス信号に変換するための変換回路や変換した電気パルス信号を各電極23に必要に応じて送信させるための制御手段を有している。
【0011】
このような内部デバイス26や電極23が設けられた基板21を眼内に設置する場合には、図示なき鋲状のタックや生体適合性の良い接着剤等にて患者眼Eの網膜Erに固定することができる。また、光凝固手術等の眼科手術に用いるレーザ照射装置を用いて、レーザ光を基板21に照射させて網膜Erと基板21とを接着させることもできる。
【0012】
レーザ光を用いて基板21を網膜Erに接着させる場合には、所定の波長の光束を吸収しやすく、熱融着が生じやすい樹脂材料等にて基板21の周囲を被覆しておく。その後、基板21を網膜Erに当接させた後、接着させたい箇所にレーザ光を照射させ、被覆した樹脂材料を融解して生体組織に接着させればよい。熱融着が生じやすい樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。また、このような樹脂に赤色等のレーザ光の波長を吸収しやすい色素を重合又は混合させることにより、レーザ光の吸収効率を高めることができる。
【0013】
一方、ケーブル25は絶縁性を有し生体適合性の高い材料にて被覆されている。図1及び図2に示すように、ケーブル25は患者の側頭部に埋埴された受信手段24から側頭部に沿って皮膚下を患者眼に向かって延び、患者の上まぶたの内側を通して眼窩に入れられる。眼窩に入れられたケーブル25は、強膜外或いは強膜の内側を通り、基板21に設けられた内部デバイス26に接続される。
また、受信手段24の中心には、送信手段14と同様に磁石24aが取り付けられており、埋埴された受信手段24上に送信手段14を位置させることにより、磁力によって送信手段14と受信手段24とがくっつき合い、送信手段14が側頭部に保持されるようになっている。
なお、このような体内装置20において、電極23以外の構成部分には、図示なきエポキシ樹脂やパリレン等の生体適合性の良いコーティング剤にて被膜されており、電気回路への体液等の接触を防ぐようにしている。
【0014】
以上のような構成を備える視覚再生補助装置において、視覚再生のための動作を図4に示す制御系のブロック図を基に説明する。
初めに患者眼の水晶体を既知の白内障手術装置等によって乳化吸引し、取り除いておく。次に、患者眼の角膜耳側輪部から所定距離(例えば1.5mm程度)離れた部位の強膜を7〜8mm程度切開することにより、挿入口を作成し、ここから体内装置20(基板21)を眼内に挿入させる。その後、渦巻部分21aを黄斑部周辺に位置させるとともに網膜Erの曲面に渦巻部分21aを合わせることにより、電極23を網膜Erに密着させる。また、受信手段24は患者の側頭部に埋殖させておく。その後、送信手段14を磁力にて受信手段24に保持させるとともにバイザー11を装着し、視覚の再生を行う。
【0015】
従来の基板は平板形状を有するために、網膜Erの広い範囲の曲面に電極23を密着させることは困難であった。しかしながら本実施の形態では、電極23が形成される基板の先端部分を渦巻形状とすることにより、図5に示すように、網膜Erの曲面に合わせることができ、従来に比べ、より広い範囲の網膜に対して電極を密着させることができる。その結果、広い範囲の視野を得ることができる。
撮影装置12により撮影された被写体の撮影データは、信号変換手段13aによって所定の帯域内の信号(電気刺激パルス用データ)に変換され、送信手段14より電磁波として体内装置20側に送信される。また同時に信号変換手段13aは、バッテリー13bから供給されている電力を前述した信号(電気刺激パルス用データ)の帯域と異なる帯域の信号(電力用信号)に変換し、電磁波として体内装置20側に送信する。
【0016】
体内装置20側では、体外装置10より送られてくる電気刺激パルス用データと電力用データとを受信手段24で受信し、内部デバイス26に送る。内部デバイス26では受けとった信号から電気刺激パルス用データが使用する帯域の信号を抽出する。内部デバイス26は抽出した電気刺激パルス用データに基づいて、各電極23から出力させる電気刺激パルス信号を形成し、各電極23から出力させ、視覚の再生を促す。
以上のような本実施の形態における基板21先端の形状(渦巻形状)は、加齢性黄斑変性症等の中心視野の欠損が生じるような場合において、中心視野に対応する網膜を広い範囲で電気刺激する必要がある場合に特に有効である。
【0017】
次に第2の実施形態として網膜色素変性症等の周辺視野の欠損が生じる場合において、この周辺視野に対応する網膜を広い範囲で電気刺激するための視覚再生補助装置を図面を基に説明する。なお、第2の実施形態では、主に前述した実施形態の視覚再生補助装置と異なる構成部分について説明し、共通の要素については前述の実施形態で説明した構成を援用する。図6は第2の実施形態で使用する基板の概略構成を示した図である。
【0018】
図6(a)に示すように、基板21の先端部分には細長い紐状のケーブル部分21bが形成されている。ケーブル部分21bは、基板21と同材料でもよいが、絶縁性及び柔軟性を持つとともに生体適合性の良い材料であれば良い。また、ケーブル部分21bは、埋殖する眼内の周囲(網膜上)を少なくとも2〜3重程度這わせるだけの長さを有している。
また、図6(b)に示すように、ケーブル部分21bの表面には複数の電極23が等間隔にて形成されており、多点電極の構成を有している。また、電極23はケーブル部分の周囲にリング状に形成されており、その各々がケーブル部分21b内部を通る複数のリード線27にそれぞれ接続されている。
【0019】
このような構成を備える体内装置20を患者眼Eに設置する場合には、図7に示すように、黄斑部からかなり離れた網膜上(周辺視野に対応する網膜)にケーブル部分21bを這わせ、電極23を網膜に密着させる。ケーブル部分21bは網膜の曲面に合わせて自在に屈曲できるため、ケーブル部分21bの長さの分だけ網膜上の広い範囲に電極23を設置することができる。また、電極23はケーブル部分21bの周囲沿ってリング状に形成されているため、ケーブル部分21bが網膜に接触していれば、電極23は網膜上に接触することとなる。
また、ケーブル部分21bの固定は前述したタックやレーザ光にて行うことができる。このように周辺視野に対応した網膜上に電極23を設置することができるため、電極23からの電気刺激パルス信号により欠損した周辺視野の再生を促すことができる。
【0020】
以上の実施形態では網膜上に電極を設置(当接)させるものとしているが、これに限るものではなく、網膜下(網膜と脈絡膜との間)に電極を設置して網膜を構成する細胞を刺激することもできる。また、電極を形成させる基板の材料に形状記憶樹脂を用い、体温程度において当接させる網膜の曲面形状に合うような基板形状になるようにしておくことにより、電極が形成された基板を網膜の広い範囲により効率よく設置することが可能である。また、前述した基板21先端の帰依上が渦巻形状となっている視覚再生補助装置においても、渦巻部分を大きく形成しておくことにより、周辺視野の欠損にも対応することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、網膜の広い範囲に対して電極を密着させることができ、広い範囲の視野を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における視覚再生補助装置の要部構成を示した図である。
【図2】本実施形態における視覚再生補助装置の外観を示した図である。
【図3】基板21の概略構成を示した図である。
【図4】本実施形態における視覚再生補助装置における制御系を示したブロック図である。
【図5】電極を網膜に接触させた状態を示した図である。
【図6】本発明における第2の実施形態を示した図である。
【図7】網膜上にケーブル電極を設置した状態を示した図である。
【符号の説明】
1 視覚再生補助装置
10 体外装置
11 バイザー
12 撮影装置
13 外部デバイス
20 体内装置
21 基板
21a 渦巻部分
23 電極
26 内部デバイス
27 リード線
Claims (5)
- 網膜に複数の刺激電極を当接させて網膜を構成する細胞を電気刺激することにより視覚の再生を行うための視覚再生補助装置において、前記複数の刺激電極を形成するための基板を有し、少なくとも前記刺激電極を形成する部分の基板形状は渦巻状に形成されていることを特徴とする視覚再生補助装置。
- 請求項1の視覚再生補助装置において、前記基板は軟性の樹脂材料にて形成されていることを特徴とする視覚再生補助装置。
- 網膜に複数の刺激電極を当接させて網膜を構成する細胞を電気刺激することにより視覚の再生を行うための視覚再生補助装置において、前記複数の刺激電極を形成するための基板を有し、少なくとも前記刺激電極を形成する部分の基板形状はケーブル状に形成されていることを特徴とする視覚再生補助装置
- 請求項3の視覚再生補助装置において、前記刺激電極は前記ケーブル状の基板の周囲にリング状に形成されていることを特徴とする視覚再生補助装置。
- 請求項1〜4の視覚再生補助装置において、レーザ光を用いて前記刺激電極が形成された基板を網膜に固定保持させることを特徴とする視覚再生補助装置。
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