JP2004294380A - 水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動モニタリングが可能であり、精度の高い水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法を提供する。
【解決手段】水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、水中の光の鉛直分布を分光的に測定できる測定器から、5バンドの光の照度消散係数を計算し、この照度消散係数の鉛直分布と、別に採水・化学処理して測定したクロロフィルaをニューラルネットワークシミュレーションを用いて比較し、相関関係を求め、この相関関係を用いて、自動観測される光の鉛直分布データからクロロフィルaの鉛直分布を算出する。
【選択図】 図1
【解決手段】水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、水中の光の鉛直分布を分光的に測定できる測定器から、5バンドの光の照度消散係数を計算し、この照度消散係数の鉛直分布と、別に採水・化学処理して測定したクロロフィルaをニューラルネットワークシミュレーションを用いて比較し、相関関係を求め、この相関関係を用いて、自動観測される光の鉛直分布データからクロロフィルaの鉛直分布を算出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニューラルネットワークを用いた水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、二酸化炭素量の増大による温暖化が指摘されるなど、地球規模での気候変動に注目が集まっている。気候の理解、変動の予測には、地球規模での熱エネルギー・物質の循環を正確に把握することが不可欠であるが、十分な知見があるとはいえないのが現状である。地球規模での物質循環を考えるとき、海洋の役割は非常に重要であり、海洋表層における光合成−二酸化炭素固定は地球全体の半分程度を担うと言われている。
【0003】
しかし、それを正確に観測することは非常に困難である。現状での観測は、人工衛星の観測データからの推測と、採水・培養実験等で行われているが、人工衛星データからの推定には精度的に疑問が多く、採水・培養による観測では非常に多くの労力と専門知識・技術が必要になる。そこで、本願発明者らは、実際の海域において自動的にモニタリング観測を行う装置の開発を行っている。
【0004】
ここで、関連する研究の状況について説明する。
【0005】
クロロフィルa、ひいては植物プランクトンの鉛直分布は非常に重要な情報であるが、採水・化学処理して観測する方法が既に確立されており、その方法が取られることが多い。採水せずに測定できる方法を探っている例としては、下記非特許文献1があるが、これはニューラルネットワークを用いた本発明とはかけ離れている。
【0006】
また、ニューラルネットワークを用いてクロロフィル濃度を推定しようという試みは、非特許文献2によってなされているが、これは衛星観測用で、鉛直分布を求めるのでなく、広い範囲での水平分布を求めることを目的としており、本発明の特徴である照度消散係数は使用されていない。また、衛星で得られるデータからは、照度消散係数を求めることはできない。
【0007】
【非特許文献1】
Jasmine et.al(2001)American Meteorological Society
【非特許文献2】
田中、(2001)ニューラルネットワークを用いた海色リモートセンシング用水中アルゴリズムの開発研究、博士論文 東海大学、pp.96
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
海洋における光合成−基礎生産を考える上で、海洋における生産者、つまり、植物プランクトンの量を把握することは必要不可欠である。植物プランクトンの量、濃度は光合成色素(葉緑素)であるクロロフィルa濃度で表すのが一般的である。現在、海表面におけるクロロフィルaは人工衛星によって観測できるが、上述したように、精度の面で多少問題もあり、なにより海表面の観測を行うのみなので海中の植物プランクトンの量に関しては全く分からない。
【0009】
また、クロロフィルa濃度を採水して化学処理・測定する方法については、多くの知見が既にあり、比較的容易に正確に測定できるが、この方法には人手が必要であり、自動モニタリング装置には採用できない。また、植物プランクトンが光合成を行うときに発する蛍光を測定する方法もあるが、精度の面で満足できない。
【0010】
そこで、本発明は、上記状況に鑑みて、近年各方面で利用されているニューラルネットワークシミュレーションをこの問題に適用し、観測誤差の影響を軽減しつつ、比較的簡易に正確なクロロフィルa濃度の推定ができる水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、水中の光の鉛直分布を分光的に測定できる測定器から、複数バンドの光の照度消散係数を計算し、この照度消散係数の鉛直分布と、別に採水・化学処理して測定したクロロフィルaとをニューラルネットワークシミュレーションを用いて比較し、相関関係を求め、この相関関係を用いて、自動観測される光の鉛直分布データからクロロフィルaの鉛直分布を算出することを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記複数バンドは短波長側の5バンドであることを特徴とする。
【0013】
〔3〕上記〔1〕記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記相関関係を求める相関関係式の設定おいて、中間層を第1層と第2層の2層とすることを特徴とする。
【0014】
〔4〕上記〔3〕記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記第1層が40ニューロン、前記第2層が12ニューロンとすることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
まず、水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定原理について説明する。
【0017】
まず予め、光の鉛直分布を自動モニタリング装置で計測し、また別に、その場でのクロロフィルa鉛直分布を採水・化学処理して測定しておく。次に、短波長側5波、つまり、412,443,490,520,565(nm)の光について、その照度消散係数(光の減衰率)を求め、この照度消散係数の鉛直分布とクロロフィルa鉛直分布の相関関係を、ニューラルネットワークを用いて求める。
【0018】
次に、データセットの作成について説明する。
【0019】
実際の海洋において、下向き照度(下向きの光の強さ)Ed(μE/m2 /s)と、クロロフィルaを観測する。このクロロフィルaは蛍光分析法などでできるだけ正確に測定する。採水して化学処理、測定する以上、全ての水深で測定することは困難であるが、できるだけ多くの水深での値を測定する。下向き照度を鉛直0.5〜1m毎程度に測定することで、同程度の空間(鉛直)分解能の照度消散係数を得ることができる。
【0020】
Ed1 =Ed2 ×exp(−K×dz)
ここで、Ed1 :ある水深における下向き照度(μE/m2 /s)
Ed2 :別の水深における下向き照度(μE/m2 /s)
dz:Ed1 とEd2 の水深の差(m)
K:照度消散係数
このように、照度を直接利用するのではなく、照度の比ともいえる照度消散係数を用いることにより、観測誤差、特に測定器のキャリブレーションや器差による影響を小さくすることができる。
【0021】
上記した方法で、ある水深におけるクロロフィルa(蛍光分析法などで測定)と、その水深における照度消散係数、季節、水深、その他条件下でのデータを収集し、ニューラルネットワーク学習用データセットとする。本発明では、約2年分の観測を基に、7000程のデータで構成されるデータセットを用意した。
【0022】
次に、ニューラルネットワークは、任意のパラメータ間の相関関係を自動的に推定し、モデル化するシミュレーションである。複数の入力パラメータと複数の出力パラメータの相関を求めることが一般的で、入力と出力の間を繋ぐ中間パラメータを設定することも多い。
【0023】
図1は本発明の実施例を示すニューラルネットワークモデルの相関関係模式図である。
【0024】
この図において、1は入力層、2は第1の中間層、3は第2の中間層、4は出力層を示している。
【0025】
入力層1が5バンドの照度消散係数であり、出力層4がクロロフィルa濃度となる。中間層は第1の中間層2を40ニューロン、第2の中間層3を12ニューロンに設定した。
【0026】
図2はその各ニューロンでの処理を示す図である。
【0027】
この図において、11は入力値u,u1 〜u5 (前階層の出力値)、12は重み付け定数ω,ω1 〜ω5 、13はニューロン値v〔Σ(u×ω)〕、14は出力値:1/(1+e−v)シグモイド関数をかけたものであり、次の層への入力値となる。
【0028】
ニューロンは、前層のニューロンの出力値u11に重み付け定数ω12を掛け合わせた値の総和であるニューロン値v13を持つ。第1の中間層2なら5つの、第2の中間層3なら40個の、出力層4なら12個の総和となる。このニューロン値v13をシグモイドと呼ばれる関数にかけたものが、このニューロンの出力値u14であり、次層への入力値となる。この関係式で求めた出力値と、採水・化学処理して測定したデータセット中のクロロフィルaの値を比較し、より一致するように重み付け定数ω12(この場合692個ある)を最適化する。様々な季節、水深、光の量などの条件下でのデータセットで比較を繰り返し、すべてに対してよりよく一致するような重み付け定数ω12を探す。これがニューラルネットワークの概念である。なお、ここでは約2年分のデータをもとに相関関係を求めている。
【0029】
なお、ニューラルネットワークシミュレーションには、ドイツのStuttgart大学にて開発されたSNNS(Stuttgart Neural Network Simulator)Ver.4.2を使用している。
【0030】
前述した相関関係を式の形にすると、次のようになる。
【0031】
V1 =Σ5 i=1 〔u(1,i)×ω(i)〕 …(1)
u(2,j)=1/〔1−exp(V1)〕 …(2)
V2 =Σ40 j=1 〔u(2,j)×ω(6)〕 …(3)
u(3,k)=1/〔1−exp(V2)〕 …(4)
V3 =Σ12 k=1 〔u(3,k)×ω(7)〕 …(5)
ここで、u(1,5):入力値 照度消散係数5波長分
V3 :出力値 クロロフィルa推定値
ω:重み付け定数
本発明は、海洋基礎生産計測システムに搭載される光センサーからのデータをもとに、採水・化学処理等を行うことなく、高精度のクロロフィルa、ひいては植物プランクトン生物量を推定することができる。
【0032】
したがって、ニューラルネットワークシミュレーションを用いたことで、通常では検出が困難な相関関係を推定できる。これにより、自動モニタリング装置のデータから簡便に比較的精度良くクロロフィルaを推定できる。
【0033】
図3は本発明の方法で推定したクロロフィルa濃度と、採水・化学処理して実測したクロロフィルa濃度を比較した図である。この図において、横軸は実測したクロロフィルa濃度(mg/m3 )、縦軸は本発明により推定したクロロフィルa濃度(mg/m3 )を示している。
【0034】
ここで、サンプル数は45とした結果、相関係数は0.84となった。
【0035】
上記したように、本発明の推定方法は、水中の光の鉛直分布を分光的に測定できる測定器から、5バンドの光の照度消散係数(光の減衰率)を計算し、この照度消散係数の鉛直分布と、別に採水・化学処理して測定したクロロフィルaをニューラルネットワークシミュレーションを用いて比較し、相関関係を求めた。この相関関係を用いて、自動観測される光の鉛直分布データからクロロフィルaの鉛直分布を算出する。
【0036】
特に、本発明は、測定した水中照度から得られるいろいろなデータの中で、照度消散係数を用いたことで、クロロフィルaの推定が可能になったのであり、また、測定誤差の軽減を図ることができる。
【0037】
また、ニューラルネットワークシミュレーションを用いてクロロフィルaの鉛直分布を推定するという方法は始めてであり、比較的簡易に正確な推定ができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0039】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、ニューラルネットワークを用いて比較的簡易で正確なクロロフィルaの推定ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すニューラルネットワークモデルの相関関係模式図である。
【図2】図1で示した各ニューロンでの処理を示す図である。
【図3】本発明の方法で推定したクロロフィルa濃度と、採水・化学処理して実測したクロロフィルa濃度を比較した図である。
【符号の説明】
1 入力層
2 第1の中間層
3 第2の中間層
4 出力層
11 入力値u,u1 〜u5 (前階層の出力値)
12 重み付け定数ω,ω1 〜ω5
13 ニューロン値v〔Σ(u×ω)〕
14 出力値:1/(1+e−v)シグモイド関数をかけたもの
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニューラルネットワークを用いた水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、二酸化炭素量の増大による温暖化が指摘されるなど、地球規模での気候変動に注目が集まっている。気候の理解、変動の予測には、地球規模での熱エネルギー・物質の循環を正確に把握することが不可欠であるが、十分な知見があるとはいえないのが現状である。地球規模での物質循環を考えるとき、海洋の役割は非常に重要であり、海洋表層における光合成−二酸化炭素固定は地球全体の半分程度を担うと言われている。
【0003】
しかし、それを正確に観測することは非常に困難である。現状での観測は、人工衛星の観測データからの推測と、採水・培養実験等で行われているが、人工衛星データからの推定には精度的に疑問が多く、採水・培養による観測では非常に多くの労力と専門知識・技術が必要になる。そこで、本願発明者らは、実際の海域において自動的にモニタリング観測を行う装置の開発を行っている。
【0004】
ここで、関連する研究の状況について説明する。
【0005】
クロロフィルa、ひいては植物プランクトンの鉛直分布は非常に重要な情報であるが、採水・化学処理して観測する方法が既に確立されており、その方法が取られることが多い。採水せずに測定できる方法を探っている例としては、下記非特許文献1があるが、これはニューラルネットワークを用いた本発明とはかけ離れている。
【0006】
また、ニューラルネットワークを用いてクロロフィル濃度を推定しようという試みは、非特許文献2によってなされているが、これは衛星観測用で、鉛直分布を求めるのでなく、広い範囲での水平分布を求めることを目的としており、本発明の特徴である照度消散係数は使用されていない。また、衛星で得られるデータからは、照度消散係数を求めることはできない。
【0007】
【非特許文献1】
Jasmine et.al(2001)American Meteorological Society
【非特許文献2】
田中、(2001)ニューラルネットワークを用いた海色リモートセンシング用水中アルゴリズムの開発研究、博士論文 東海大学、pp.96
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
海洋における光合成−基礎生産を考える上で、海洋における生産者、つまり、植物プランクトンの量を把握することは必要不可欠である。植物プランクトンの量、濃度は光合成色素(葉緑素)であるクロロフィルa濃度で表すのが一般的である。現在、海表面におけるクロロフィルaは人工衛星によって観測できるが、上述したように、精度の面で多少問題もあり、なにより海表面の観測を行うのみなので海中の植物プランクトンの量に関しては全く分からない。
【0009】
また、クロロフィルa濃度を採水して化学処理・測定する方法については、多くの知見が既にあり、比較的容易に正確に測定できるが、この方法には人手が必要であり、自動モニタリング装置には採用できない。また、植物プランクトンが光合成を行うときに発する蛍光を測定する方法もあるが、精度の面で満足できない。
【0010】
そこで、本発明は、上記状況に鑑みて、近年各方面で利用されているニューラルネットワークシミュレーションをこの問題に適用し、観測誤差の影響を軽減しつつ、比較的簡易に正確なクロロフィルa濃度の推定ができる水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、水中の光の鉛直分布を分光的に測定できる測定器から、複数バンドの光の照度消散係数を計算し、この照度消散係数の鉛直分布と、別に採水・化学処理して測定したクロロフィルaとをニューラルネットワークシミュレーションを用いて比較し、相関関係を求め、この相関関係を用いて、自動観測される光の鉛直分布データからクロロフィルaの鉛直分布を算出することを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記複数バンドは短波長側の5バンドであることを特徴とする。
【0013】
〔3〕上記〔1〕記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記相関関係を求める相関関係式の設定おいて、中間層を第1層と第2層の2層とすることを特徴とする。
【0014】
〔4〕上記〔3〕記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記第1層が40ニューロン、前記第2層が12ニューロンとすることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
まず、水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定原理について説明する。
【0017】
まず予め、光の鉛直分布を自動モニタリング装置で計測し、また別に、その場でのクロロフィルa鉛直分布を採水・化学処理して測定しておく。次に、短波長側5波、つまり、412,443,490,520,565(nm)の光について、その照度消散係数(光の減衰率)を求め、この照度消散係数の鉛直分布とクロロフィルa鉛直分布の相関関係を、ニューラルネットワークを用いて求める。
【0018】
次に、データセットの作成について説明する。
【0019】
実際の海洋において、下向き照度(下向きの光の強さ)Ed(μE/m2 /s)と、クロロフィルaを観測する。このクロロフィルaは蛍光分析法などでできるだけ正確に測定する。採水して化学処理、測定する以上、全ての水深で測定することは困難であるが、できるだけ多くの水深での値を測定する。下向き照度を鉛直0.5〜1m毎程度に測定することで、同程度の空間(鉛直)分解能の照度消散係数を得ることができる。
【0020】
Ed1 =Ed2 ×exp(−K×dz)
ここで、Ed1 :ある水深における下向き照度(μE/m2 /s)
Ed2 :別の水深における下向き照度(μE/m2 /s)
dz:Ed1 とEd2 の水深の差(m)
K:照度消散係数
このように、照度を直接利用するのではなく、照度の比ともいえる照度消散係数を用いることにより、観測誤差、特に測定器のキャリブレーションや器差による影響を小さくすることができる。
【0021】
上記した方法で、ある水深におけるクロロフィルa(蛍光分析法などで測定)と、その水深における照度消散係数、季節、水深、その他条件下でのデータを収集し、ニューラルネットワーク学習用データセットとする。本発明では、約2年分の観測を基に、7000程のデータで構成されるデータセットを用意した。
【0022】
次に、ニューラルネットワークは、任意のパラメータ間の相関関係を自動的に推定し、モデル化するシミュレーションである。複数の入力パラメータと複数の出力パラメータの相関を求めることが一般的で、入力と出力の間を繋ぐ中間パラメータを設定することも多い。
【0023】
図1は本発明の実施例を示すニューラルネットワークモデルの相関関係模式図である。
【0024】
この図において、1は入力層、2は第1の中間層、3は第2の中間層、4は出力層を示している。
【0025】
入力層1が5バンドの照度消散係数であり、出力層4がクロロフィルa濃度となる。中間層は第1の中間層2を40ニューロン、第2の中間層3を12ニューロンに設定した。
【0026】
図2はその各ニューロンでの処理を示す図である。
【0027】
この図において、11は入力値u,u1 〜u5 (前階層の出力値)、12は重み付け定数ω,ω1 〜ω5 、13はニューロン値v〔Σ(u×ω)〕、14は出力値:1/(1+e−v)シグモイド関数をかけたものであり、次の層への入力値となる。
【0028】
ニューロンは、前層のニューロンの出力値u11に重み付け定数ω12を掛け合わせた値の総和であるニューロン値v13を持つ。第1の中間層2なら5つの、第2の中間層3なら40個の、出力層4なら12個の総和となる。このニューロン値v13をシグモイドと呼ばれる関数にかけたものが、このニューロンの出力値u14であり、次層への入力値となる。この関係式で求めた出力値と、採水・化学処理して測定したデータセット中のクロロフィルaの値を比較し、より一致するように重み付け定数ω12(この場合692個ある)を最適化する。様々な季節、水深、光の量などの条件下でのデータセットで比較を繰り返し、すべてに対してよりよく一致するような重み付け定数ω12を探す。これがニューラルネットワークの概念である。なお、ここでは約2年分のデータをもとに相関関係を求めている。
【0029】
なお、ニューラルネットワークシミュレーションには、ドイツのStuttgart大学にて開発されたSNNS(Stuttgart Neural Network Simulator)Ver.4.2を使用している。
【0030】
前述した相関関係を式の形にすると、次のようになる。
【0031】
V1 =Σ5 i=1 〔u(1,i)×ω(i)〕 …(1)
u(2,j)=1/〔1−exp(V1)〕 …(2)
V2 =Σ40 j=1 〔u(2,j)×ω(6)〕 …(3)
u(3,k)=1/〔1−exp(V2)〕 …(4)
V3 =Σ12 k=1 〔u(3,k)×ω(7)〕 …(5)
ここで、u(1,5):入力値 照度消散係数5波長分
V3 :出力値 クロロフィルa推定値
ω:重み付け定数
本発明は、海洋基礎生産計測システムに搭載される光センサーからのデータをもとに、採水・化学処理等を行うことなく、高精度のクロロフィルa、ひいては植物プランクトン生物量を推定することができる。
【0032】
したがって、ニューラルネットワークシミュレーションを用いたことで、通常では検出が困難な相関関係を推定できる。これにより、自動モニタリング装置のデータから簡便に比較的精度良くクロロフィルaを推定できる。
【0033】
図3は本発明の方法で推定したクロロフィルa濃度と、採水・化学処理して実測したクロロフィルa濃度を比較した図である。この図において、横軸は実測したクロロフィルa濃度(mg/m3 )、縦軸は本発明により推定したクロロフィルa濃度(mg/m3 )を示している。
【0034】
ここで、サンプル数は45とした結果、相関係数は0.84となった。
【0035】
上記したように、本発明の推定方法は、水中の光の鉛直分布を分光的に測定できる測定器から、5バンドの光の照度消散係数(光の減衰率)を計算し、この照度消散係数の鉛直分布と、別に採水・化学処理して測定したクロロフィルaをニューラルネットワークシミュレーションを用いて比較し、相関関係を求めた。この相関関係を用いて、自動観測される光の鉛直分布データからクロロフィルaの鉛直分布を算出する。
【0036】
特に、本発明は、測定した水中照度から得られるいろいろなデータの中で、照度消散係数を用いたことで、クロロフィルaの推定が可能になったのであり、また、測定誤差の軽減を図ることができる。
【0037】
また、ニューラルネットワークシミュレーションを用いてクロロフィルaの鉛直分布を推定するという方法は始めてであり、比較的簡易に正確な推定ができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0039】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、ニューラルネットワークを用いて比較的簡易で正確なクロロフィルaの推定ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すニューラルネットワークモデルの相関関係模式図である。
【図2】図1で示した各ニューロンでの処理を示す図である。
【図3】本発明の方法で推定したクロロフィルa濃度と、採水・化学処理して実測したクロロフィルa濃度を比較した図である。
【符号の説明】
1 入力層
2 第1の中間層
3 第2の中間層
4 出力層
11 入力値u,u1 〜u5 (前階層の出力値)
12 重み付け定数ω,ω1 〜ω5
13 ニューロン値v〔Σ(u×ω)〕
14 出力値:1/(1+e−v)シグモイド関数をかけたもの
Claims (4)
- 水中の光の鉛直分布を分光的に測定できる測定器から、複数バンドの光の照度消散係数を計算し、該照度消散係数の鉛直分布と、別に採水・化学処理して測定したクロロフィルaとをニューラルネットワークシミュレーションを用いて比較し、相関関係を求め、該相関関係を用いて、自動観測される光の鉛直分布データからクロロフィルaの鉛直分布を算出することを特徴とする水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法。
- 請求項1記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記複数バンドは短波長側の5バンドであることを特徴とする水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法。
- 請求項1記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記相関関係を求める相関関係式の設定おいて、中間層を第1層と第2層の2層とすることを特徴とする水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法。
- 請求項3記載の水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法において、前記第1層が40ニューロン、前記第2層が12ニューロンとすることを特徴とする水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法。
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---|---|---|---|
JP2003090341A JP2004294380A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003090341A JP2004294380A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 水中分光照度からのクロロフィルa鉛直分布の推定方法 |
Publications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102135531A (zh) * | 2010-12-24 | 2011-07-27 | 中国科学院南京地理与湖泊研究所 | 大型浅水湖泊72小时蓝藻水华预测方法 |
CN104569306A (zh) * | 2014-12-24 | 2015-04-29 | 中国科学院重庆绿色智能技术研究院 | 一种预判藻类种群演替和水华的方法 |
CN115615936A (zh) * | 2022-12-05 | 2023-01-17 | 中关村睿宸卫星创新应用研究院 | 基于多源卫星数据计算内陆水域最大叶绿素指数的方法 |
-
2003
- 2003-03-28 JP JP2003090341A patent/JP2004294380A/ja not_active Withdrawn
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CN102135531A (zh) * | 2010-12-24 | 2011-07-27 | 中国科学院南京地理与湖泊研究所 | 大型浅水湖泊72小时蓝藻水华预测方法 |
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CN115615936A (zh) * | 2022-12-05 | 2023-01-17 | 中关村睿宸卫星创新应用研究院 | 基于多源卫星数据计算内陆水域最大叶绿素指数的方法 |
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