JP2004292445A - 糖尿病治療薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来の薬物療法では血糖のコントロールが困難な難治性糖尿病の患者に有効な糖尿病治療薬を提供する。
【解決手段】 セロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬を含むことを特徴とする糖尿病治療薬。
【選択図】 なし

Description

本発明は、糖尿病治療薬に関する。具体的には、セロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害剤、特にミルナシプラン又はフルボキサミンを含む糖尿病治療薬に関する。
糖尿病にはインスリン依存性(I型)のものと非インスリン依存性(II型)のものとがあり、前者においては定期的なインスリン注射が必須であるが、後者の治療にあっては、食事療法及び運動療法がまず試みられ、それでも血糖のコントロールができない場合に薬物療法が併用される。薬物療法としては、経口血糖降下薬の投与がまず試みられ、それによる効果が十分でない場合にインスリン投薬(通常は注射)が行われるのが一般的である。経口血糖降下薬として従来から用いられているものには、主としてインスリン分泌刺激作用をもつスルホニル尿素類(アセトヘキサミド、トラザミド、グリメピリド等)やフェニルアラニン誘導体(ナテグリニド、レパグリニド等)のほか、主としてインスリン抵抗性改善作用をもつピオグリタゾンやロジグリタゾン、小腸からの糖の吸収を遅延させる作用をもつα−グルコシダーゼ阻害薬としてボグリボースやアカルボース、あるいはビグアナイド薬としてメトホルミンやブホルミン等がある。
また、糖尿病患者は慢性合併症として細小血管障害や動脈硬化症を併発しやすいので、糖尿病合併症の予防や治療も糖尿病患者の管理上は重要な役割をもっている。II型糖尿病患者や肥満ないしインスリン抵抗性がある患者では、脂肪細胞から分泌されるホルモンであるアディポネクチンの血中濃度は健常者よりも低値を呈し、インスリン抵抗性の改善に応じて上昇するため、そのような患者の治療にはアディポネクチンの投与が有効であるという報告が出ている(非特許文献1乃至6)。また、近年、血中アディポネクチン濃度の低下は動脈硬化を引き起こす因子にあげられ、逆に、血中アディポネクチン濃度の上昇は抗動脈硬化作用を有するという報告もある(非特許文献7及び8)。
一方、うつ病を治療の対象とした抗うつ薬として、以前から用いられている三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミノトリプチリン等、作用機序としてはセロトニンやノルアドレナリンのニューロンへの再取り込みを阻害するとされる)に加えて、近年はある種の抗精神病薬(たとえばスルピリド)やセロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬(シブトラミン、フルボキサミン、パロキセチン、フルオキセチン、シタロプラム、ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシン等)も用いられている。最近、これらセロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬について、抗うつ作用のほかに、抗不安作用、抗尿失禁作用、抗肥満作用、鎮痛作用、アルドース還元酵素阻害剤と併用した場合の抗糖尿病合併症作用、抗認識障害作用等を有することが報告されている(たとえば特許文献1及び2)。
Arita Y. et al., Biochem. Biophys. Res. Com., 257, 79-83, 1999 Yamauchi T. et al., Nature Med., 7, 941-946, 2001 Berg A.H. et al., Nature Med., 7, 947-953, 2001 Weyer C. et al., J. Clin. Endcrinol. Metab., 86, 1930-1935, 2001 Lindsay R.S. et al., Lancet, 360, 57-58, 2002 Stefan N. et al., Diabetes, 50, 1884-1888, 2002 Maeda N. et al., Diabetes, 50, 2094-2099, 2001 Yang W.S. et al., Diabetes Care, 25, 376-380, 2002 米国特許第6380200号明細書 国際公開第01/062341号パンフレット
糖尿病患者の治療においては、まず血糖値の低下(による各種症状の軽減)が急務であるが、糖尿病患者、殊に肥満に併発したII型糖尿病患者は過食の傾向を有し、食事療法の栄養指導をしても実生活ではなかなか遵守できないため、食事療法との併用を前提とした従来の薬物療法では血糖のコントロールが困難な難治性糖尿病があることが臨床的に経験されている。本発明は、そのような場合に有効な糖尿病治療薬を提供しようとするものである。
本発明は、セロトニンおよび/またはノルアドレナリン再取り込み阻害薬(但しシブトラミンおよびパロキセチンを除く)を含むことを特徴とする糖尿病治療薬を提供し、これにより上記課題を解決するものである。シブトラミンを除いたのは、前記特許文献1の中で、選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるシブトラミンがII型糖尿病によるグルコース耐性障害の治療に用いられたことがある旨、記載されているからである。また、パロキセチンを除いたのは、後述するように、他のセロトニンおよび/またはノルアドレナリン阻害薬に比べ、糖尿病治療薬としての効果が低いと認められたからである。なお、本発明において、糖尿病治療薬とは、糖尿病患者に対し、結果的に血糖降下をもたらす薬効を有するものをいい、その作用機序が直接的である(たとえばインスリン分泌刺激作用を通じて)か、あるいは間接的である(たとえば食行動の是正作用を通じて)かを問わない。
セロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、及びそれら両者の取り込みをに阻害するものが含まれ、好適には、ミルナシプラン、フルボキサミン、デュロキセチン、ベンラファキシン、フルオキセチン、シタロプラム等が挙げられる。
本発明におけるセロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬は、健常者に15〜150mg/日の用量で単独投与しても血糖を降下させる作用は示さないが、糖尿病患者、殊に肥満を併発したII型糖尿病患者に対しては、それ自体として血糖降下作用をもつため、単独で投与しても有効である。しかしながら、さらに他の経口血糖降下薬、たとえばインスリン分泌刺激薬、インスリン抵抗性改善薬、ビグアナイド薬、α−グルコシダーゼ阻害薬等と併用したり、インスリン注射と併用することにより、それらの血糖降下作用を増強して血糖コントロールの効果をより高めるような用い方をすることが好ましい。
また、本発明におけるセロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害剤は、糖尿病患者の食行動を是正する作用をもつ場合があり、これを利用して食事療法と併用すれば、全体として糖尿病治療の効果を高めることができる。これにより、従来、血糖コントロールが困難であった一部のII型糖尿病患者に対しても治療の効果を上げることが可能となる。このような実施形態に特に有効な化合物はフルボキサミンであるが、フルボキサミン単独投与では摂食抑制効果のない場合が多く、その作用機序は依然として明らかでない。しかしながら、フルボキサミンを、セロトニン5−HT2C受容体に対して選択的拮抗作用を有する化合物と併用すると、ほぼ確実に患者の摂食行動が抑制されることがわかった。そのようなセロトニン5−HT2C受容体に対する選択的拮抗薬としては、下記式(1)の構造を有するSB242084、すなわち6−クロロ−5−メチル−1−[2−(2−メチルピリド−3−イルオキシ)ピリド−5−イル−カルバモイル]−インドリンが代表的なものであるが、フルボキサミンと併用できる化合物は必ずしもこれに限定されるわけではない。なお、フルボキサミンを糖尿病治療薬として用いる場合には、他の経口血糖降下薬と併用することがより効果的であるが、未だ高血糖症状を呈していない過食の抑制を通じて糖尿病になるのを防止するための糖尿病予防薬として用いる場合には、他の経口血糖降下薬は不要である。
Figure 2004292445
本発明におけるセロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害剤は、経口投与が可能であり、またそれが好ましい。従って、従来の経口血糖降下薬と併用する場合には、それらと組合わせて経口内服剤とすることもできるし、あるいは、そのような経口内服剤とインスリン製剤とを組合せたキットとすることもできる。用量は、他の血糖降下剤との併用の有無や患者の症状に合わせて決められるが、単独投与の場合には一般に15〜150mg/日程度とする。
本発明におけるセロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬の中で、肝チトクロームP450阻害活性が認められる薬物(たとえばフルボキサミン)は、薬物相互作用の発現により肝機能障害を併発するケースがありうる。そのような薬物であっても、前記15〜150mg/日の用量で健常動物やうつ病患者に投与した際には、肝機能障害を併発することは比較的少ないとされているが、臨床的経験上、糖尿病患者、特に肥満を伴う患者に対し上記用量で投与すると、肝機能障害を併発するケースにしばしば遭遇する。そのような副作用を防止し、より安全に前記薬物の糖尿病治療薬としての効果を発現させるためには、セロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬とウルソデオキシコール酸とを合わせて投与することが好ましく、そのように両者を配合した経口内服剤又はキットも、本発明の好ましい実施形態である。この場合、セロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬1部に対し、ウルソデオキシコール酸6〜2部の割合での配合が好ましい。この配合割合は、セロトニン及び/又はノルアドレナリン再取り込み阻害薬の投与量が100mg/日以下の場合には1:6〜1:3、投与量が100mg/日を超える場合には1:3〜1:2とすることが好ましい。
以下に実施例を示すことにより、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(症例)
42才男性、糖尿病、肥満、うつ病
(治療経過)
糖尿病に対してはグリメピリド1mg/日及びメトホルミン500mg/日を内服固定継続投与し、うつ病に対してはスルピリド150mg/日を内服固定継続投与したことに加え、抗うつ剤として、最初の4週間(第1期)はフルボキサミン150mg/日、続く4週間(第2期)はパロキセチン40mg/日、さらに続く4週間(第3期)はミルナシプラン150mg/日を併用投与した。患者の症状及び行動の変化を観察し、耐糖能、Body mass index(BMI)及び血中アディポネクチン濃度を4週目ごとに測定した。結果を表1に示す。
Figure 2004292445
(症状と行動の変化)
抗うつ剤をフルボキサミンからパロキセチンに変更後、過食行動が増悪し、不規則な時間に食事摂取行動が認められ、体重増加をきたした。また、睡眠障害が増悪して昼夜逆転の生活リズムをきたした。ミルナシプランに変更後は、過食行動、夜間の不規則な食事摂取が改善され、体重が減少し、昼夜逆転行動は完全に正常化して睡眠障害も軽快した。
(検査所見)
抗うつ剤としてフルボキサミンを投与中の血糖値は、空腹時はほぼ正常からごく軽度に高値の範囲であるが、食後高血糖を呈し、HbA1cは7.1を呈し、肥満からくるインスリン抵抗性による耐糖能障害の状態であった。抗うつ剤をパロキセチンに変更後、軽度の耐糖能の増悪、血中アディポネクチン濃度の低下を認めた。ミルナシプランに変更後は、HbA1cと食後高血糖の顕著な改善と、血中アディポネクチン濃度の上昇が認められた。
上記に見られるミルナシプラン投与後の顕著な耐糖能の改善の機序としては、インスリン抵抗性の改善効果が考えられる。このインスリン抵抗性の改善の原因の1つとして、ミルナシプランによる脂肪分解作用に伴う体重減少が挙げられるが、ミルナシプラン投与後の体重やBMIはフルボキサミン投与後と同様であるにも拘わらず、HbA1cや食後高血糖はフルボキサミン投与中に比べ顕著に改善されたことから、脂肪分解や体重減少以外の因子によるインスリン抵抗性改善が、上記血糖降下作用をもたらしたと考えられる。
たとえば、上記血糖降下作用の1つの機序として、ミルナシプランとインスリン分泌刺激薬やビグアナイド薬との併用がもたらした血糖降下作用の増強効果が考えられる。また、ミルナシプランに変更後、HbA1cの低下に対応して血中アディポネクチン濃度が上昇したことより、血中アディポネクチン濃度の上昇がインスリン抵抗性の改善に寄与し、血糖下降を促したともいえる。さらに、ミルナシプランによって交感神経末端からのノルアドレナリン分泌が促進され、インスリンとは無関係に筋肉、脂肪細胞、肝臓などの組織へのグルコースの取り込みが促進されたとも考えられる。さらに、ミルナシプランが摂食行動を制御し、過食や偏食といった異常を是正することで、糖尿病患者や肥満患者に見られる摂取エネルギーの制御障害を改善したり、二次的に膵臓からのインスリン分泌異常を改善する作用をもたらしたともいえる。さらに、ミルナシプランが運動療法の効果を増強したとも考えられる。なお、前記患者に対し、その後、グリメピリドとメトホルミンの投与を中止し、ミルナシプラン150mg/日を単独投与したところ、4週間後に体重114kg、BMI40.9、HbAlc5.9、食後2時間血糖116mg/dlを呈したことより、ミルナシプラン単独投与での血糖降下作用もあることが認められた。
(症例)
39才男性、糖尿病
(現病歴)
生来、知能障害があり、精神薄弱。3年前に糖尿病と診断され通院中。経口血糖降下薬の投与を受けていたが、食事療法が守れず高血糖状態が持続し、2002年4月1日から18日までインスリン治療導入のために入院。母親と共に栄養指導とインスリン自己注射(ペンフィルN、朝16単位、夕8単位)及び自己血糖測定の指導をして退院。退院後、間食が多くなり、医療従事者の指導や両親が制止を促すも制御不能となり、血糖コントロールが不良化して入院となる。
(既往歴)
左鼠径部リンパ節炎手術(2001年9月30日)。
(家族歴)
特記すべき疾患なし。
(身体所見)
身長160cm、体重74kg、BMI27.2、血圧140/70、脈拍88/分、体温36.4℃、表情:やや険しい、頭頚部及び胸部:正常、腹部:やや脂肪過多、圧痛なし、肝脾腫なし、四肢:正常。
(神経学的所見)
振動覚とアキレス腱反射の低下。
(検査所見)
TP:7.2、TBil:0.5、GOT:37、GPT:38、LDH:243、ALP:374、g−GTP:54、BUN:15、Cr:1.2、Na:133、K:4.1、CL:95、TCHO:304、HDL−C:40、TG:708、グルコース:493、HbA1c:11.0、CRP:0.1、WBC:5600、RBC:4890000、Hb:14.1、Ht:40.4、Plt:239000、HBsAg(−)、HCVAb(−)。
尿:糖(+++)、蛋白(+++)、アセトン体(−)、鮮血(−)。
24h尿蛋白定量:1463mg/日(正常20−60mg/日)、Ccr:30.6(88.5−155.4L/日)、24h尿中C−ペプチド:3.1(24−118mg/日)、甲状腺ホルモン:正常、コーチゾール:正常。
胸腹部X線:異常なし、心電図:異常なし。
(初期治療)
糖尿病食:1600kcal/日、蛋白質:0.8g/kg/日。
血糖降下薬:メトホルミン750mg、ボグリボース0.9mg内服。
インスリン注射:ペンフィルN、朝20単位、夕10単位。
(行動異常)
入院後も病棟を抜け出してコンビニで間食をしているのを職員が発見し注意するがきかない。母親も含めて栄養指導を行うが、本人には栄養指導不可能と判断される。
(治療経過)
インスリン注射:ペンフィルN、朝16単位、夕10単位。
前記内服薬にフルボキサミンを併用投与。
血糖値の経過は下記表2のとおり。
Figure 2004292445
以上のように、食事療法が遵守できず、不規則な食事摂取と過食行動が栄養指導で是正不可能なケースで、インスリン治療や従来の経口糖尿病薬を使用してもコントロールが困難な場合に、フルボキサミンの併用投与により、血糖のコントロールが短期間に顕著に改善した。
フルボキサミンの抗うつ作用効果は通常3週間以上経過した後に現れることから、上記フルボキサミンの血糖降下作用は抗うつ作用とは別の作用機序に基づくものと判断される。すなわち、フルボキサミンの血糖降下作用の機序の1つは、栄養指導で制御不可能であった摂食行動を是正することにより、糖尿病の食事療法を補助して血糖降下をもたらしたと考えられる。また、メトホルミン、ボグリボース又はインスリンとの併用で、それらの血糖降下作用を増強した結果と考えることもできる。フルボキサミンの投与によりインスリン投与量を増量することなく短期間に高血糖をかいぜんさせることができ、さらにインスリン投与量を減量することも経過的に可能になった。フルボキサミンの投与後、治療期間中に、眼底出血の誘発や糖尿病網膜症の増悪は認められなかった。
ただし、一方において、フルボキサミン投与前は正常であった肝機能が、血糖及び高血圧症が改善したにも拘わらず、フルボキサミン投与後4週目にGOT33、GPT71を呈し、肝機能障害をきたした。臨床経過よりフルボキサミンによる副作用と判断し、フルボキサミン100mgとウルソデオキシコール酸300mgの配合された治療キット薬を用いると、2週間後にはGOT17、GPT24となり肝機能は正常化した。上記キット薬投与後28日目でHbAlc8.4を呈し、血糖のコントロールは改善傾向にあった。このように、フルボキサミンのような肝チトクロームP450阻害活性が認められる選択的セロトニン再取り込み阻害薬は肝機能障害を併発するケースがあり、特に糖尿病や肥満患者に使用する才にはその併発頻度が高い。前記フルボキサミン100mgとウルソデオキシコール酸300mgの配合治療薬により、フルボキサミンの血糖降下作用に影響を及ぼすことなく、肝機能障害の副作用を抑制し、より安全に使用することが可能となる。
(症例)
78才男性、身長160cm、体重53kg
(治療経過)
II型糖尿病と診断され、ナテグリド270mg/日で治療中は、HBAlcが5.8と良好な血糖コントロールであった。その後、転倒による大腿骨頚部骨折で入院し、入院中に血糖コントロールが悪くなったため、インスリン治療がなされた。退院後、自己注射が困難なため、再びナテグリド270mg/日による治療に戻して経過観察中、満足するまで食べ物を与えないと不穏で大声をあげるようになり、食事摂取量が増加した。次第に血糖コントロールが増悪し、退院後2ヶ月でHbAlCが10.8となった。
そこで、ナテグリド270mg/日は固定とし、フルボキサミンの併用療法を開始した。併用開始後1ヶ月間はフルボキサミン投与量を50mg/日とし、その後75mg/日に増やした。結果を表3に示す。表3に示されるように、フルボキサミン併用後は高血糖が顕著に改善し、併用3ヵ月後には血糖コントロールの良好な治療域に入った。以後、食事を過度に求める不穏や過食は消失し、その後も血糖コントロールは治療域内に安定した。以上のことから、フルボキサミンは経口糖尿病薬(経口血糖降下薬)と併用すると、その強度や量を変えることなく、短期間で高血糖を顕著に改善する作用を有することが判明した。
Figure 2004292445
肥満糖尿病マウスであるKKAyマウス(10週)を12時間明暗サイクル(7時および19時に明暗を切り替え)下で個別ケージにして1週間飼育後、生食水またはミルナシプラン(30mg/kg)0.2mlを1日2回(午前10時と午後7時)7日間、腹腔内投与し、摂食量と体重および血糖の変化を観察した。このミルナシプランの7日間連続投与では、生食水投与群(コントロール)と比べ、日々の摂食量には有意差はなかった(図1)が、体重は有意な減少を示した(Student-t test、P<0.05、図2)。ミルナシプラン投与群は生食水投与群に比べ、4日目と8日目に有意な血糖の減少を認めた(表4)。この所見から、ミルナシプランは、摂食量の低下とは別の機序で高血糖状態を改善することが判明した。一方、正常なC57BL6Jマウスでは、ミルナシプランの同様な7日間投与で日々の摂食、体重、血糖の有意な減少は認められなかった。このことより、ミルナシプランは、肥満状態からの体重減少および糖尿病の高血糖の改善に有効であることが判明した。
Figure 2004292445
C57BL6J雄性マウス(56週)の群を、12時間明暗サイクル(7時と19時)下で個別ケージにして1週間飼育した後、24時間絶食させた。その後、マウスの群を3つの群に分け、暗サイクルに入る1時間前に、第1および第2の群の各マウスには生理的食塩水(生食水)を、第3の群の各マウスにはSB242084(濃度1mg/kg)を、それぞれ0.2mlずつ腹腔内に投与した。次いで30分後に、第1の群の各マウスには生食水を、第2および第3の群の各マウスにはフルボキサミン(濃度30mg/kg)を、それぞれ0.2mlずつ腹腔内に投与した。30分経過後、すなわち暗サイクルに入ると同時に、全群のマウスに対してマウス用の餌を与え1時間の摂食量を測定した。結果を表5に示す。第1の群(生食水前投与+生食水後投与、第2および第3の群に対するコントロール)、第2の群(生食前投与+フルボキサミン後投与)、および第3の群(SB242084前投与+フルボキサミン後投与)の間で比較検討すると、第1および第2の群の間では摂食量の差は認められなかったが、第3の群では第1および第2の群に比べ有意に摂食量が低下した(ANOVA、P<0.05、表5および図3)。なお、これとは別に、上記と同様にして、第4および第5の群のマウスを用意し、第4の群の各マウスには前投与および後投与のいずれについても生食水を投与し、第5の群の各マウスには前投与としてSB242084、後投与として生食水を投与し、それぞれ1時間の摂食量を測定したが、第4の群と第5の群の間では摂食量に有意の差は認められなかった。以上の結果から、SB242084単独あるいはフルボキサミン単独では摂食抑制作用を示さないが、SB242084前投与とフルボキサミン後投与を組み合わせることにより、摂食抑制効果が現れることがわかる。
Figure 2004292445
C57BL6J雄性マウス(56週)の群を、実施例1と同様にして、個別ケージ内で1週間飼育した。そのまま(絶食期間なしに)全マウスを3つの群に分け、暗サイクルに入る1時間前に、第6および第7の群の各マウスには生食水を、第8の群の各マウスにはSB242084(濃度1mg/kg)を、それぞれ0.2mlずつ腹腔内投与し、その30分後に、第6の群の各マウスには生食水を、第7および第8の群の各マウスにはフルボキサミン(濃度30mg/kg)を、それぞれ0.2mlずつ腹腔内投与した。30分経過後、すなわち暗サイクルに入ると同時に、全群のマウスに対してマウス用の餌を与え1時間の摂食量を測定した。結果を表6に示す。第6の群(生食水前投与+生食水後投与、第7および第8の群に対するコントロール)、第7の群(生食前投与+フルボキサミン後投与)、および第8の群(SB242084前投与+フルボキサミン後投与)の間で比較すると、第6および第7の群の間では摂食量の差は認められなかったが、第8の群では第6および第7の群に比べ有意に摂食量が低下した(ANOVA、P<0.05、表6および図4)。なお、これとは別に、上記と同様にして、第9および第10の群のマウスを用意し、第9の群の各マウスには前投与および後投与のいずれについても生食水を投与し、第10の群の各マウスには前投与としてSB242084、後投与として生食水を投与し、それぞれ1時間の摂食量を測定したが、第9の群と第10の群の間では摂食量に有意の差は認められなかった。以上の結果から、SB242084単独あるいはフルボキサミン単独では摂食抑制作用を示さないが、SB242084前投与とフルボキサミン後投与とを組み合わせることにより、摂食抑制効果が現れることがわかる。
Figure 2004292445
本発明の糖尿病治療薬は、単独投与もしくは従来の経口血糖降下薬との併行投与でより確実かつ効果的に血糖を下げ、あるいは、摂食抑制作用を通じて効果的に血糖を下げるのに寄与することから、特に、食事療法との併用を前提としたII型の糖尿病の治療に有効である。
実施例4におけるミルナシプランの継続投与と摂食量との関係を示す。 実施例4におけるミルナシプランの継続投与と体重との関係を示す。 実施例5におけるフルボキサミンとSB242084の併用の効果を示す。 実施例6におけるフルボキサミンとSB242084の併用の効果を示す。

Claims (11)

  1. セロトニンおよび/またはノルアドレナリン再取り込み阻害薬(但しシブトラミンおよびパロキセチンを除く)を含むことを特徴とする糖尿病治療薬。
  2. 前記セロトニンおよび/またはノルアドレナリン再取り込み阻害薬が、ミルナシプラン、フルボキサミン、デュロキセチン、ベンラファキシン、フルオキセチンまたはシタロプラムから選択される少なくとも1種である請求項1記載の糖尿病治療薬。
  3. さらに、インスリン分泌刺激薬、インスリン抵抗性改善薬、ビグアナイド薬またはα−グルコシダーゼ阻害薬から選択される少なくとも1種の血糖降下薬を含む請求項1〜3のいずれか記載の糖尿病治療薬。
  4. 前記セロトニンおよび/またはノルアドレナリン再取り込み阻害薬がミルナシプランである請求項1記載の糖尿病治療薬。
  5. 前記セロトニンおよび/またはノルアドレナリン再取り込み阻害薬がフルボキサミンである請求項1記載の糖尿病治療薬。
  6. さらに、インスリン分泌刺激薬、インスリン抵抗性改善薬、ビグアナイド薬またはα−グルコシダーゼ阻害薬から選択される少なくとも1種の血糖降下薬を含む請求項5記載の糖尿病治療薬。
  7. さらに、セロトニン5−HT2c受容体に対して選択的拮抗作用を有する化合物を含む請求項6記載の糖尿病治療薬。
  8. フルボキサミンとセロトニン5−HT2c受容体に対して選択的拮抗作用を有する化合物とを含む糖尿病予防薬。
  9. 請求項1〜8のいずれか記載の糖尿病治療薬または糖尿病予防薬を含んでなる経口内服剤。
  10. 請求項5〜7のいずれか記載の糖尿病治療薬または糖尿病予防薬とウルソデオキシコール酸とを含んでなる経口内服剤。
  11. 請求項1、2、4および5のいずれか記載の糖尿病治療薬を含んでなる経口内服剤と、インスリン、インスリン分泌刺激薬、インスリン抵抗性改善薬、ビグアナイド薬またはα−グルコシダーゼ阻害薬から選択される少なくとも1種の血糖降下薬とを含んでなる製剤とからなる糖尿病治療薬キット。
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