JP2004290108A - 動物において生殖腺の発達を促進させる方法 - Google Patents

動物において生殖腺の発達を促進させる方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004290108A
JP2004290108A JP2003088231A JP2003088231A JP2004290108A JP 2004290108 A JP2004290108 A JP 2004290108A JP 2003088231 A JP2003088231 A JP 2003088231A JP 2003088231 A JP2003088231 A JP 2003088231A JP 2004290108 A JP2004290108 A JP 2004290108A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
animal
expression
development
thyroid hormone
day
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003088231A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Yoshimura
崇 吉村
Shizufumi Ebihara
史樹文 海老原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nagoya University NUC
Original Assignee
Nagoya University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nagoya University NUC filed Critical Nagoya University NUC
Priority to JP2003088231A priority Critical patent/JP2004290108A/ja
Priority to EP04005580A priority patent/EP1462102A1/en
Priority to US10/807,377 priority patent/US20040242525A1/en
Publication of JP2004290108A publication Critical patent/JP2004290108A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/185Acids; Anhydrides, halides or salts thereof, e.g. sulfur acids, imidic, hydrazonic or hydroximic acids
    • A61K31/19Carboxylic acids, e.g. valproic acid
    • A61K31/195Carboxylic acids, e.g. valproic acid having an amino group
    • A61K31/197Carboxylic acids, e.g. valproic acid having an amino group the amino and the carboxyl groups being attached to the same acyclic carbon chain, e.g. gamma-aminobutyric acid [GABA], beta-alanine, epsilon-aminocaproic acid or pantothenic acid
    • A61K31/198Alpha-amino acids, e.g. alanine or edetic acid [EDTA]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/43Enzymes; Proenzymes; Derivatives thereof
    • A61K38/44Oxidoreductases (1)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12YENZYMES
    • C12Y197/00Other oxidoreductases (1.97)
    • C12Y197/01Other oxidoreductases (1.97) other oxidoreductases (1.97.1)
    • C12Y197/0101Thyroxine 5'-deiodinase (1.97.1.10), i.e. deiodinase I or II
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2217/00Genetically modified animals
    • A01K2217/05Animals comprising random inserted nucleic acids (transgenic)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2227/00Animals characterised by species
    • A01K2227/30Bird
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K48/00Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)

Abstract

【課題】家禽や家畜の繁殖制御に利用できる新たな技術を提供することが、本発明の課題である。
【解決手段】本発明により、動物に甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン様の活性を有する類縁体を投与することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法が与えられた。更に本発明により、動物にII型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子を導入することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法と、II型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする、形質転換動物が与えられた。本発明の方法は、鳥類における光周性(季節性測時機構)の分子機構の解明を通じて、動物の性腺の発達を促進させるための新たな方法を提供するものである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動物に甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン様の活性を有する類縁体を投与することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法に関する。更に本発明は、動物にII型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子を導入することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法に関する。更に本発明は、II型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする、形質転換動物に関する。
【0002】
【従来の技術】
鳥類において、可視範囲内の光線の刺激により、視床下部における性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌及び下垂体による性腺刺激ホルモン(LH)の分泌が制御されることが認められている。光に反応することにより起こることが知られているこのような現象は、光周性(季節性測時機構:photoperiodic time measurement 、以下PTMと称する)と呼ばれ、PTMを制御している領域は中枢神経系(視床下部)にあると考えられている。
【0003】
性腺刺激ホルモンは卵巣や精巣の機能に影響を及ぼすために、家禽などの繁殖は上記のPTMによる制御を受けている。この性質のために、ウズラやニワトリなどの家禽を飼育するにあたって、光線照射を調節することにより採卵を管理することが行われている。例えばニワトリにおいて、日照14〜16時間の長日条件下で産卵させ、日照12時間以下の短日条件下で産卵を休止させる、という方法によって採卵の生産性向上が図られている。
【0004】
更に家禽のみならず、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜も光周期によって繁殖が制御され、一定の季節に繁殖することが知られている。具体的には、ウマの場合には日照時間の延長がメスの卵巣機能を活性化するために、主として春に繁殖する。一方、ヒツジの場合には日照時間の短縮がメスの卵巣機能を活性化するために、主として秋に繁殖する。そのために、ウマは長日繁殖動物、ヒツジは短日繁殖動物であるといわれている。
【0005】
短日繁殖動物のヒツジにおいて、松果体より夜間放出されるホルモンであるメラトニンを投与することによって短日条件と類似した状態を人工的に作り、ヒツジの生産性を制御する方法が産業的に利用されている。しかしメラトニンを用いる方法は一部の短日繁殖動物でのみ有効であり、長日繁殖動物や家禽などの鳥類では無効であるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
家禽の繁殖制御のための技術としては、上記の光線管理法以外には確立された技術はこれまで知られていなかった。そこで、種々の家禽や家畜において、その繁殖を制御するための新たな手段が求められていた。よって本発明の課題は、中枢神経系においてPTMを制御するメカニズムを解析することにより、家禽の繁殖制御に利用することができる新たな技術を提供することである。そのような新規な技術が提供されたならば、畜産業のみならず、絶滅の危機にある種の救済などにも役立つものと思われる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、動物に甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン様の活性を有する類縁体を投与することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法を提供するものである。更に本発明は、動物にII型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子を導入することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法を提供するものである。更に本発明は、II型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする、形質転換動物を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
チロキシン(以下Tと称する)と3,5,3’−トリヨードチロニン(以下Tと称する)は甲状腺が分泌する主要ホルモン(甲状腺ホルモン)であり、生体における熱産生作用に関与している。Tは甲状腺から分泌されるのみならず、脱ヨウ素酵素によって末梢においても作られる。またTと類似する分子として、T(3,5,3’−トリヨードチロニン)とヨウ素の結合位置が異なるリバーストリヨードチロニン(3,5,5’−トリヨードチロニン、以下RTと称する)の存在も知られている。ホルモンとしての活性はTよりTの方が強く、RTは非活性である。TとT構造を以下の図1に示す。
【0009】
上記の脱ヨウ素酵素は甲状腺の他、肝臓、腎臓、筋肉、下垂体などの広い範囲に分布している酵素であって、Tの脱ヨウ素反応を触媒してTを生成することが知られている。Tの脱ヨウ素反応には5’−脱ヨウ素酵素と5−脱ヨウ素酵素が関与しており、それぞれTの生成とRTの生成を触媒している。そして、生成したTとRTは、種々のジヨードチロニンに転換される。脱ヨウ素酵素によるTの代謝の様式を図2に示す。
【0010】
5’−脱ヨウ素酵素には、I 型脱ヨウ素酵素、II型脱ヨウ素酵素、III型脱ヨウ素酵素の3種類が存在することが知られている。I 型脱ヨウ素酵素は肝臓と腎臓のミクロソームに含まれる酵素であって、Tの外環の脱ヨウ素化によるTへの変換と、RTから3,3’−ジヨードチロニンへの変換を触媒する。II型脱ヨウ素酵素はI 型脱ヨウ素酵素と同様の作用を有し、脳、下垂体と褐色脂肪に含まれている。またIII型脱ヨウ素酵素は内環にのみ作用し、胎盤と脳に含まれている。
【0011】
本発明者らは下記の実施例において示す様に、光周期が鳥類の生殖を制御する分子機構を検討した。具体的には、ディファレンシャル・サブトラクティブ・ハイブリダイゼーションの手法を用いて、ニホンウズラ(Coturnix coturnix japonica)において光刺激により発現が誘導される遺伝子の解析を行なった。その結果、視床下部内側基底部(medial basal hypothalamus:MBH)において、II型脱ヨウ素酵素(以下D2と称する)の遺伝子の発現が、光によって誘導されることを見出した。よって、光によって誘導されたD2の発現はPTMの制御に関与しているものと思われる。
【0012】
上記で詳細に述べたように、II型脱ヨウ素酵素は末梢において、Tの脱ヨウ素反応を触媒しTを生成する反応を触媒する。そこで、D2の酵素生成物がPTMの制御を介して鳥類の生殖に関与している可能性を考えて、Tをニホンウズラの脳室内に投与した結果、精巣の増大が認められた。この知見は、中枢神経系に存在するD2によってTからTへの変換が起こり、生成したTが生殖腺の発達を促進していることを示すものである。よって本発明は鳥類におけるPTMの分子機構の解明を通じて、甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン様の活性を有する類縁体を投与することからなる、動物の性腺の発達を促進させるための新たな方法を提供するものである。
【0013】
なお、本願明細書において「甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン様の活性を有する類縁体」には主要な甲状腺ホルモンであるTとT、更にはTと同様の活性を有する類縁体が含まれる。そのような類縁体の具体例としては、例えばTETRAC(3,5,3’,5’−Tetraiodothyroacetic acid)を挙げることができるが、それに限定されるものではなく、Tと同様の活性を有する他の化合物もまた含まれるものである。
【0014】
投与方法という点で本発明において最も好ましい態様は、中枢神経系へのTの直接投与、特に脳室内へ直接投与である。Tは活性が低いために、Tを中枢神経系へ投与した場合には効果が得られないか、又は得られても効果はかなり弱いと考えられる。しかしTを静脈投与、経口投与などの方法によって末梢から投与すると、投与されたTの大部分は血液中で代謝されてTになる。よってTを末梢から投与した場合には、血液中で産生されたTが中枢神経系で作用すると考えられ、Tの末梢投与も本発明における好ましい態様の一つである。
【0015】
なお、Tを末梢から投与すると、投与されたTは血液中で代謝されて3,3’−ジヨードチロニン(3,3’−T)等に変換されて、不活性となると考えられる。それを考えると、末梢から投与する場合にはTを投与するよりも、その前駆体であるTを投与する方が好ましいと思われる。Tを末梢投与する場合には、例えば剤型を工夫するなどして、Tが血液中で代謝を受けること防ぐ必要がある。上記の教示に鑑みて、甲状腺ホルモン又はそれと同様の活性を有する類縁体を本発明の目的で投与するにあたり、脳室内投与のみならず、経口投与、静脈投与、動脈投与、腹腔内投与、経皮投与や経粘膜投与などの種々の投与経路を選択することが可能である。
【0016】
下記の実施例において、ニホンウズラに一日あたり0.3ngのTを脳室内投与した際に最大の効果を得ている。本発明において投与するTの量は一日あたり、1pgから10μg、好ましくは10pgから1μg、更に好ましくは0.1ngから100ngである。しかし、本発明において投与するTの用量は、上記の範囲内に限定されるものではなく、投与する化合物、投与する対照である動物の種類や大きさ、更には投与の経路により、最も適切な用量を選択して投与を行うことにより、目的とする効果を得ることができる。
【0017】
また、D2をコードする遺伝子を動物に導入して過剰発現させることにより、該動物においてD2の発現量を増やすことが可能である。遺伝子を導入された動物の体内において、特に中枢神経系においてD2が過剰発現すると、酵素反応の生成物であるTのレベルが増加する。よってD2遺伝子が脳内で恒常的に発現した形質転換動物を作製することにより、該動物において性腺の発達を促進させることができる。
【0018】
本発明において形質転換を行う対象となる動物種は特に限定されるものではなく、鳥類や哺乳類を含む種々の動物においてD2をコードする遺伝子を導入することにより、その性腺の発達を促進させることができる。中でも、ウズラ、ニワトリ、シチメンチョウなどの家禽を用いることは本発明の態様として特に好適である。なお、鳥類における形質転換体の作製は、例えば、A.J.Harvey et al.,“Expression of exogenous protein in the egg white of transgenic chickens”Nature biotechnology, 2002, (19), 396−399において報告されている。
【0019】
更に、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの哺乳類に属する家畜においても、本発明の方法を適用することができると思われる。これらの家畜あるいは上記の家禽にD2をコードする遺伝子を導入することにより、高い繁殖力を有する形質転換動物を作製することが可能である。よって本発明の方法は畜産業の発達に大いに資するものと思われる。
【0020】
を投与する動物の性別は、オス又はメスのいずれかに限定されるものではない。下記の実施例において、Tを投与することによりオスの精巣が発達したことが示されている。生殖腺の発達の機構はオスとメスにおいて共通しており、視床下部から放出される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)によって制御されていることが知られている。オスとメスはその性差に関わらず、脳内において同様の分子メカニズムによって日長を計っているものと考えられるために、Tを投与することによってオスの精巣を発達させることができるのみならず、メスにおいて卵巣を発達させることもできると考えられる。
以下実施例により本発明を具体的かつ詳細に説明する。しかし本発明の範囲は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0021】
【実施例】
(PTMを担っている遺伝子の分析)
鳥類においてPTMを担っている遺伝子を解析するために、ディファレンシャル・サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション解析を試験した。40羽のニホンウズラ(Coturnix coturnix japonica)を8週齢になるまで短日条件下で飼育した。なお、短日条件とは明状態が8時間で暗状態が16時間の条件であり、長日条件とは明状態が16時間で暗状態が8時間の条件をいう。20羽の動物をツァイトゲーバー時間(zeitgeber time : ZT)14で1時間光パルスに曝した。一方他の20羽の動物を暗がりの中で飼育した。
【0022】
光パルス(ZT16)の1時間後、急性の遺伝子発現の変化を避けるために両群の動物を断頭して屠殺し、3mmの脳スライスから視床下部内側基底部(MBH)を採取した。図3に、ディファレンシャル・サブトラクティブ・ハイブリダイゼーションにより、遺伝子を採取するのに用いた脳の領域を示す。図3において、MBHは視床下部内側基底部、MEは正中隆起、OCは視交叉、POAは視索前野、SCNは視交叉上核(suprachiasmatic nucleus)、Pは松果体、Cbは小脳を示す。
【0023】
全RNAを抽出し、ポリ(A)RNAを精製した。製造元の指示書にしたがってディファレンシャル・サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション解析を行った(PCRセレクトcDNAサブトラクションキット、クロンテック)。150クローンの配列解析を行い、それらの遺伝子の発現を、インサイチュハイブリダイゼーションを用いて実証した。
【0024】
図4aは視床下部後内側核(nucleus hypothalamicus posterior medialis:NHPM)において、光により誘導されたD2の発現を示す写真である。なお、矢印は発現しているD2を示す。尚、図4bは光パルスを与えていないコンロトール動物の写真である。ZT14において光パルスを1時間与えて、光パルスの1時間後に脳のサンプルを採取した。また図5aは、NHPMにおける各相でのD2発現を示したグラフである。ZT14は光誘導相内であって、ZT9, ZT21は光誘導層外である。アスタリスクマークは、P<0.01における有意差を示す。
【0025】
その結果、NHPMにおいて、光パルスによるD2の遺伝子の誘導が光誘導相(ZT14)において認められた(図4a,b)。光誘導相外(ZT9, ZT21)における光照射の影響を検討したところ、光誘導されたD2の発現は、ZT9とZT21では観察されなかった。この結果は、D2の光誘導は光誘導相に特異的である(図5a)ことを示唆している。
【0026】
短日下と長日下におけるD2遺伝子の発現プロファイルを解析するために、更にインサイチュハイブリダイゼーションの検討を行った。図5bに、長日下(LD)と短日下(SD)における、時間によるD2遺伝子の発現プロファイルを示す。両群による差は認められず、短日下と長日下の両条件において、どの時間でもD2の発現を検出することはできなかった。
【0027】
また、短日と長日の条件下で飼育した動物において、腹側の漏斗核(infundibular nucleus:IN)と正中隆起(median eminence:ME)におけるD2の発現を示した写真を図6に示す。図6aは、INとMEにおいて長日刺激により誘導されたD2の発現を示す写真であり、図6bは短日条件で飼育したコンロトール動物の写真である。その結果、D2の発現はINとMEにおいても観察された(図6a,b)。そこでD2の発現に対する光パルスの効果(図7a)と時間によるプロファイル(図7b)についても検討を行った。その結果、INとMEにおいて、短日での弱い発現と、長日での強い発現が観察された。
【0028】
上記の結果より、D2の発現は光により誘導されることが見出されたが、発現のプロファイルは脳の領域により異なっていた。NHPMにおいては急性の誘導が観察されたが、継続的な長日の光周期ではその発現は観察されなかった。対照的に、腹側のINとMEにおける発現は長日条件の光周期で増加したが、急性の誘導は観察されなかった。
【0029】
(甲状腺ホルモンの含量と標的部位)
D2はチロキシン(T)を3,5,3’−トリヨードチロニン(T)に変換する酵素であり、主としてチロイドホルモンの作用を担っている。いろいろな状況下でT濃度を狭い範囲に保つことにより、D2は脳Tの局所的な制御において本質的な役割を果たしている。本発明者らは、短い日長と長い日長の下で採取した視床下部内側基底部(MBH:各群について10匹の動物のMBHをプールした)における、TとTの含量を試験した。
【0030】
短日群と長日群における血漿中のTとTの含量を示す(図8a)。また、MBH、SGC(stratum griseum centrale:中心灰白層)、Cb(cerebellum: 小脳)におけるT(図8b)とT(図8c)の含量の検討を行った。その結果、血漿におけるTとTの含量は短日群と長日群で異なっていなかったが(図8a)、MBHにおけるTとT含量は、長い日長の動物では短い日長の動物と比較して約10倍高かった(図8b,c)。しかし、SGCやCbなど他の部位ではこの差は観察されなかった(図8b,c)。
【0031】
図8により、長日群の動物において、MBHのT含量はD2によって増加するということが確認された。しかし、その様な差は血清や脳の他の部位においては観察されなかった。D2は細胞内におけるプロホルモンTから活性型であるTへの脱ヨード化を触媒し、それはD2が甲状腺ホルモン作用において門番の様に作用し、局所におけるTの利用性を調節していることを示唆している。加えて長日動物のMBHにおいてT含量も増加していた。長日条件下において、Tの取り込みが増加することにより、D2はこの領域でより多くのTを生成するようになる。
【0032】
局所的に生じたTが作用する標的部位を解明するために、チロイドホルモンレセプター(TR)遺伝子(TRα、β、β2、RXRα、γ)の発現を検討した。INとMEにおける、TRα遺伝子(図9a)、TRβ遺伝子(図9b),RXRα遺伝子(図9c)の発現を図9に示す。その結果、INとMEにおいて、TRα、β遺伝子の弱い発現と、RXRα遺伝子の強い発現が観察された(図9a、b、c)。一方、TRβ2とRXRγの発現は検出不可能であった。TRα、βとRXRαの発現は、短い日長でも長い日長でも一日中観察され、律動的な発現は示さなかった。これらの結果は、局所的に生成したTがINとMEで作用することを示している。
【0033】
(Tの投与による性腺の発達)
が性腺の光周反応を仲介しているかについて評価を行うために、Tの脳室内注入が性腺の発達に及ぼす影響を検討した。ベヒクル及びいくつかの用量のT とTを浸透圧ポンプによって第三脳室に注入し、注入前後の精巣の大きさを測定した。T(●)とT(○)の投与による精巣の発達を図10aに示す。動物を短日条件下(明条件8時間、暗条件16時間)に置いた時でさえも、Tを注入すると用量依存的に性腺が成長した(p=0.0128, 一元配置分散分析法, F(5,18)=4.008)。一方Tを注入することによる影響は小さかった(p=0.8111, 一元配置分散分析法, F(3,16)=0.32)。しかし最大用量のTでは精巣の発達が観察されなかった。イオパン酸(IOP)はTからTへの変換を阻害すると知られている。そこで更に、長日条件下においてIOPを注入する効果を検討した(図10b)。図10bに見られるように、長日条件下でIOPは精巣の発達を抑制した(p<0.05)。
【0034】
Follettらは、薬剤用量のチロイドホルモン(TとT)を末梢投与すると、光周期によって誘導されたゴナドトロピンの分泌と性腺の発達を模倣することを示した(Follett B.K. et al.,”Acute effect of thyroid hormones in mimicking photoperiodically induced release of gonadotropins in Japanese quail”J.Comp.Physiol. B 157, 837−843 (1988)、及びFollett B.K.et al.,”Thyroxine can mimic photoperiodically induced gonadal growth in Japanese quail”J.Comp.Physiol. B 157, 829−835 (1988)、を参照)。しかし上記の結果では、ゴナドトロピン遊離においては、TよりもTの効果の方が高く、Follettらの報告の結果と矛盾しているように思われる。
【0035】
しかし血液中において、Tの約1/3がTに、45%がリバースT(RT)に変換されることが知られている。更に、血中においてTは3,3’−ジヨードチロニン(3,3’−T)に変換される。そこで、末梢から投与したTは、中枢神経系においてTとなった作用しているものと思われる。更に長日の条件下において、D2阻害剤であるIOPは精巣の発達を抑制した。この結果は、PTMの制御においてD2が重要であることを明確に示すものである。
【0036】
【発明の効果】
本発明により、動物に甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン様の活性を有する類縁体を投与することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法が与えられた。更に本発明により、動物にII型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子を導入することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法と、II型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする、形質転換動物が与えられた。本発明の方法は、鳥類における光周性(季節性測時機構)の分子機構の解明を通じて、動物の性腺の発達を促進させるための新たな方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、TとTの構造を示す図である。
【図2】図2は、脱ヨウ素酵素によるTの代謝の様式を示す図である。
【図3】図3は、遺伝子を採取するのに用いた脳の領域を示す図である。
【図4】図4は、光により誘導されたD2遺伝子の発現をNHPM(視床下部後内側核)において検出した写真である。
【図5】図5は、D2の発現に対する光パルスの効果と日長の長さの効果をNHPMにおいて検出したグラフである。
【図6】図6は、長日刺激により誘導されたD2遺伝子の発現をINとMEにおいて検出した写真である。
【図7】図7は、D2の発現に対する光パルスの効果と日長の長さの効果をINとMEにおいて検出したグラフである。
【図8】図8は、短日群と長日群における血漿中のTとTの含量(図8a)と、MBH、SGC(stratum griseum centrale:中心灰白層)、Cb(cerebellum: 小脳)におけるT(図8b)とT(図8c)の含量を示すグラフである。
【図9】図9は、INとMEにおける、チロイドホルモンレセプター遺伝子(TRα、β、RXRα)の発現を示す写真である。
【図10】図10は、TとTの投与による精巣の発達と、精巣の発達にIOPが及ぼす効果を示すグラフである。

Claims (10)

  1. 動物に甲状腺ホルモン又は甲状腺ホルモン様の活性を有する類縁体を投与することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法。
  2. 前記甲状腺ホルモンがトリヨードチロニンである、請求項1記載の方法。
  3. 前記動物が鳥類又は哺乳類である、請求項1記載の方法。
  4. 前記動物が鳥類である、請求項3記載の方法。
  5. 動物にII型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子を導入することを特徴とする、動物において生殖腺の発達を促進させる方法。
  6. 前記動物が鳥類又は哺乳類である、請求項5記載の方法。
  7. 前記動物が鳥類である、請求項6記載の方法。
  8. II型脱ヨウ素酵素をコードする遺伝子が導入されていることを特徴とする、形質転換動物。
  9. 前記動物が鳥類又は哺乳類である、請求項8記載の方法。
  10. 前記動物が鳥類である、請求項9記載の方法。
JP2003088231A 2003-03-27 2003-03-27 動物において生殖腺の発達を促進させる方法 Pending JP2004290108A (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003088231A JP2004290108A (ja) 2003-03-27 2003-03-27 動物において生殖腺の発達を促進させる方法
EP04005580A EP1462102A1 (en) 2003-03-27 2004-03-09 A method for promoting gonadal growth in an animal
US10/807,377 US20040242525A1 (en) 2003-03-27 2004-03-24 Method for promoting gonadal growth in an animal

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003088231A JP2004290108A (ja) 2003-03-27 2003-03-27 動物において生殖腺の発達を促進させる方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004290108A true JP2004290108A (ja) 2004-10-21

Family

ID=32821548

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003088231A Pending JP2004290108A (ja) 2003-03-27 2003-03-27 動物において生殖腺の発達を促進させる方法

Country Status (3)

Country Link
US (1) US20040242525A1 (ja)
EP (1) EP1462102A1 (ja)
JP (1) JP2004290108A (ja)

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6573254B1 (en) * 1998-02-03 2003-06-03 University Of Maryland Method for the stimulation of sperm production and gonadal development in animals

Also Published As

Publication number Publication date
US20040242525A1 (en) 2004-12-02
EP1462102A1 (en) 2004-09-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Nakane et al. Photoperiodic regulation of reproduction in vertebrates
Dardente et al. Seasonal breeding in mammals: From basic science to applications and back
Korf Signaling pathways to and from the hypophysial pars tuberalis, an important center for the control of seasonal rhythms
Jansen et al. Thyroid hormone transporters in health and disease
Wood et al. Clocks for all seasons: unwinding the roles and mechanisms of circadian and interval timers in the hypothalamus and pituitary
Sillence Technologies for the control of fat and lean deposition in livestock
Guh et al. The underlying mechanisms of vertebrate seasonal reproduction
Barrett et al. Molecular pathways involved in seasonal body weight and reproductive responses governed by melatonin
Eales Iodine metabolism and thyroid-related functions in organisms lacking thyroid follicles: are thyroid hormones also vitamins?
Ikegami et al. Circadian clocks and the measurement of daylength in seasonal reproduction
Decuypere et al. Thyroid hormone physiology in galliformes: Age and strain related changes in physiological control
Ikegami et al. The hypothalamic–pituitary–thyroid axis and biological rhythms: the discovery of TSH's unexpected role using animal models
Yasuo et al. The hypophysial pars tuberalis transduces photoperiodic signals via multiple pathways and messenger molecules
Ikegami et al. Seasonal time measurement during reproduction
Morgan et al. Photoperiodic signalling through the melatonin receptor turns full circle
Bu et al. Extra-pituitary prolactin (PRL) and prolactin-like protein (PRL-L) in chickens and zebrafish
Wang et al. LPXRFa and its receptor in yellowtail kingfish (Seriola lalandi): molecular cloning, ontogenetic expression profiles, and stimulatory effects on growth hormone and gonadotropin gene expression
CN116059320A (zh) 使用gdf11的治疗防止体重增加、提高葡萄糖耐量并减轻脂肪肝
Kim et al. Effects of recombinant gonadotropin hormones on the expression of vitellogenin, gonadotropin subunits and gonadotropin receptors in cinnamon clownfish, Amphiprion melanopus
JP2004290108A (ja) 動物において生殖腺の発達を促進させる方法
Shepherdley et al. Thyroid hormone deiodinases during embryonic development of the saltwater crocodile (Crocodylus porosus)
Wang et al. Evidence of a role for neuropeptide Y and monoamines in mediating the appetite-suppressive effect of GH
Scanes et al. The physiology of growth hormone in poultry
Patel et al. Production, action, and degradation of somatostatin
Weetman et al. Pharmacotherapeutics of the thyroid gland

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20040811

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060221

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060419

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20060419

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20061219