JP2004285531A - 化学パルプの蒸解方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明が解決しようとする課題は、リグノセルロース物質を原料として、クラフトパルプ蒸解法、修正クラフトパルプ蒸解法、アルカリパルプ蒸解法、亜硫酸パルプ蒸解法のいずれか一つの蒸解法で化学パルプを製造する場合において、蒸解時の脱リグニン速度をさらに向上させる技術を提供することにある。
【解決手段】木材チップなどのリグノセルロース物質をクラフトパルプ蒸解法、修正クラフトパルプ蒸解法、アルカリパルプ蒸解法、亜硫酸パルプ蒸解法のいずれか一つの蒸解法で化学パルプを製造する蒸解工程において、リグノセルロース物質と蒸解液の混合物にマイクロ波を照射することにより、蒸解時の脱リグニン速度を向上させる。
【解決手段】木材チップなどのリグノセルロース物質をクラフトパルプ蒸解法、修正クラフトパルプ蒸解法、アルカリパルプ蒸解法、亜硫酸パルプ蒸解法のいずれか一つの蒸解法で化学パルプを製造する蒸解工程において、リグノセルロース物質と蒸解液の混合物にマイクロ波を照射することにより、蒸解時の脱リグニン速度を向上させる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は化学パルプの蒸解方法に関する。さらに詳細には、クラフト蒸解法、修正クラフトパルプ蒸解法、アルカリパルプ蒸解法(ソーダ法)、亜硫酸パルプ蒸解法のいずれか一つの蒸解法によりリグノセルロース物質をパルプ化するにあたり、マイクロ波加熱により脱リグニン速度を著しく向上した蒸解方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ波加熱は一般に300MHzから300GHzの範囲の電磁波による誘電加熱方法であり、1〜100MHzの高周波やラジオ波のような誘導加熱とは分けて分類されている。加熱や乾燥のようにマイクロ波をエネルギーとして利用できる周波数はISM帯域(Frequency Allocation for Industrial,Scientific and Medical Purposes)として国際的に承認されている。日本国内ではこの帯域中の2,450、5,800、24,150MHzが承認された周波数であるが、915MHzも無線設備規則第65条を満たしていれば、工業用途の加熱用に利用することができる。
【0003】
マイクロ波の加熱原理は、電磁波によって生じる媒体中に存在するイオン電流と分子の双極子回転によっている。加熱や乾燥では対象とする媒体が水であることが多いが、水媒体の場合は後者の双極子回転の加熱原理が支配的である。電界強度E(V/m)、マイクロ波周波数f(Hz)、比誘電率ε′減衰係数tanδから次式により発熱量P(W/m3)を計算できる。
P=kE2fε′tanδ…(式1)
式1中のε′とtanδは物質固有の値であり、ε′tanδは損失係数と呼ばる。この値が大きいほどマイクロ波の吸収および発熱が大きくなる。周波数2,450MHzにおける水の損失係数は、25、55、85℃でそれぞれ12.3、4.62、3.10という大きな値である。従って、水媒体の加熱や乾燥にマイクロ波照射が極めて有効であることが知られている。
【0004】
マイクロ波の特徴としては、次のことが挙げられる。
(1)内部まで短時間に加熱できる。
(2)被加熱物以外の加熱の必要がなく、物体への高効率直接加熱である。
(3)損失係数の違いを利用する選択加熱が可能。
(4)エネルギー伝播が光速度であるため高速加熱が可能。
(5)密閉場で任意の雰囲気中や真空中での加熱が可能。
(6)マイクロ波発生に伴う騒音、熱気、排ガスの発生が無い。
(7)熱風や赤外線照射などの他の加熱法と併用が容易である。
【0005】
前記の特徴を利用して、マイクロ波加熱は、食品の調理・殺菌、ゴムの加硫、木材の乾燥、セラミックスの焼結に既に応用されている。また、廃棄物処理および迅速分析法の前処理としても利用されている。近年は有機合成や無機合成における反応速度を高める目的でマイクロ波を利用することが急速な勢いで研究されている。
【0006】
紙パルプ製造においてマイクロ波を利用した従来の技術としては以下が挙げられる。
(1)化学的蒸解または機械的処理プロセスを受けさせることなしに、含水セルロース材料のセルロース繊維を分離ないし離解する方法に関して、チップ状のリグノセルロース材料にマイクロ波エネルギー処理プロセスを受けさせ、リグノセルロース物質を破裂させるほど急速に加熱することにより、セルロース繊維を分離する技術が特許登録され、既に公知文献となっている(特許文献1参照。)。
(2)セルロース系材料を酸化剤で処理しパルプの最終白色度を高めることに関して、酸化剤の存在下、マイクロ波を照射する技術が開示されている。酸化剤としては、過酸化化合物、酸素、オゾン、過マンガン酸塩、塩素、二酸化塩素、次亜塩素酸塩、亜塩素酸が挙げられている(特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特許第1018467号明細書
【特許文献2】
特開昭60−88191号公報
【0008】
木材などのリグノセルロース物質を原料として化学パルプを製造する場合、熱エネルギーを多量に必要とする工程としては、蒸解工程と漂白工程がある。従来の技術で記述したように、パルプ製造の漂白工程でマイクロ波を利用した技術は既にあるが、化学パルプ製造の蒸解工程でマイクロ波を利用した技術はまだ確立されていない。
【0009】
木材などのリグノセルロース物質からクラフトパルプ法(以下、KP蒸解法と記述)、修正クラフトパルプ蒸解法(以下、修正KP蒸解法と記述)、アルカリパルプ法(以下、AP蒸解法と記述)、亜硫酸パルプ法(以下、SP蒸解法と記述)などの蒸解方法で化学パルプを製造する場合、蒸解歩留を向上させると共に蒸解速度を高め、パルプ品質の向上を図ることは蒸解方法の違いに関係なく、極めて重要なことである。
【0010】
KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれかの蒸解法においても、蒸解の最高温度への昇温と、最高温度での保持などのため加熱には、蒸解液に蒸気を吹き込む直接加熱、蒸気を熱源とするヒーター(熱交換器)により蒸解液を加熱する間接加熱、または直接加熱と関節加熱の組み合わせが、従来から行われてきた。
【0011】
KP蒸解法によるパルプの製造方法は、蒸解廃液から熱量や蒸解薬品としてアルカリ分を回収できる製造方法として確立されている。また、原料として特定の樹種を選ばない等の利点から、現在では世界の紙パルプの主要国で代表的な化学パルプの製造法となっている。KP蒸解工程では、木材チップなどのリグノセルロース物質は、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムが主成分である白液で蒸解される。また、蒸解液にアントラキノンなどのキノン系化合物を触媒量添加して蒸解することにより、針葉樹材、広葉樹材の樹種を選ばず蒸解速度が速くなり、蒸解薬品および蒸気の節減をはじめとして蒸解釜のパルプ生産効率が向上するとともに、同一カッパー価におけるパルプ収率が向上するため、原木の節減が可能となる等の効果が得られる。以前には、蒸解釜は主にバッチ法であったが、現在では蒸解度の向上やパルプ収率、強度の向上を目指した連続式蒸解釜が多数を占めている。連続式釜蒸解法はさらに改良され、MCC法、EMCC法、ITC法、Lo−Solids法等の修正KP蒸解法へと変換している。
【0012】
しかしながら、上記のような蒸解促進薬品、助剤および連続式蒸解釜を採用しても目標とするカッパー価を有する未晒パルプを得るには高温で長時間の蒸解を必要とするのが現状である。KP蒸解法や修正KP蒸解法では、140〜150℃までは急速に昇温させ、最高温度160〜180℃で保持する。最高温度までの昇温時間を含む全蒸解時間は、通常、ライナー用で1〜3時間、未晒パルプ用で2〜3時間、漂白パルプ用で4〜6時間と言われている。
【0013】
KP蒸解法では、低品質のクラフトパルプを急速蒸解で製造する場合のみ、蒸気を蒸解釜底部のノズルから直接導入することがある。しかしこれ以外のKP蒸解法と修正KP蒸解法ではヒーターによる間接加熱が主である。ヒーターとしては、洗浄ヒーター、トランスファー循環ヒーター、MCC循環ヒーターなど蒸解液が循環するゾーン毎にヒーターが設置され、蒸解温度を制御している。
【0014】
AP蒸解法は蒸解液に水酸化ナトリウムを使用する蒸解方法であり、前記のKP蒸解法に先立ち確立された蒸解法であるが、KP蒸解法と同様に木材チップの蒸解には、高温で長時間を必要とする。蒸解液は蒸気により、直接加熱または間接加熱されている。
【0015】
亜硫酸パルプ法は、亜硫酸を吸収する塩基の種類と蒸解液のpHとの組み合わせで種々の蒸解方法があり、それぞれ蒸解条件が異なっている。また製造するパルプの使用用途により製造するパルプ品質が異なることからも、蒸解条件が大きく異なっている。しかし、いずれの蒸解法でも、高温で長時間の蒸解を施す必要がある。通常、蒸解時間は5〜24時間である。通常の蒸解温度は、酸性亜硫酸蒸解で125〜150℃、重亜硫酸塩蒸解で160〜166℃、アルカリ性亜硫酸塩蒸解で140〜180℃である。蒸解液の循環装置の無い釜では底部に蒸気を吹き込んだり、循環装置があれば循環ポンプ出口にインジェクターを設けて蒸気を入れるという直接加熱が行われている。また、ヒーターによる間接加熱も行われている。
【0016】
以上のように、KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれも、木材チップをパルプ化するには蒸気を使用した直接または間接加熱により蒸解液の液温を高め、長時間の蒸解反応を行っている状況である。このことから、脱リグニン速度の更なる促進による蒸解時間の短縮が可能な蒸解方法の開発が望まれている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、木材チップなどのリグノセルロース物質を原料として、KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれか一つの蒸解法で化学パルプを製造する場合において、蒸解時の脱リグニン速度をさらに向上させる技術を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
木材チップなどのリグノセルロース物質をKP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれか一つの蒸解法で化学パルプを製造する蒸解工程において、リグノセルロース物質と蒸解液の混合物にマイクロ波を照射することにより、蒸解時の脱リグニン速度を向上させる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる木材原料としては、広葉樹、針葉樹であればいかなるものでも良く、特に限定されるものではない。本発明が適用される蒸解法としては、化学パルプ化方法であれば良く、KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法が挙げられる。蒸解温度制御のための加熱方式と蒸解時間を除き、各蒸解法における蒸解温度、圧力、蒸解液組成、液比、蒸解薬剤添加率などの他の蒸解条件は公知の範囲で実施することができる。
【0020】
KP蒸解法の公知の条件としては、蒸解液の硫化度は5〜75%、有効アルカリ添加率は絶乾木材重量当り5〜30重量%、蒸解温度は130〜170℃を挙げることができる。助剤を使用するKP蒸解または修正KP蒸解法として、ポリサルファイド蒸解法、クラフトアントラキノン蒸解法、ポリサルファイドアントラキノン蒸解法が挙げられ、これらの蒸解液組成や前記の蒸解温度、圧力、蒸解液組成、液比、蒸解薬剤添加率などの蒸解反応条件は公知の方法で実施できる。蒸解方式は、連続蒸解法或いはバッチ蒸解法のどちらでもよい。
【0021】
使用するキノン系の蒸解助剤としては、公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノンおよび前記キノン系化合物のアルキル基、アルデヒド基、アミノ基、フッ素基等の置換体、あるいは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、更にはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種あるいは2種以上添加されてもよく、その添加率は公知の0.001〜1.0重量%の範囲で実施できる。
【0022】
AP蒸解法の条件も、前述したKP、修正KP蒸解法と同様に、蒸解温度制御のための加熱方式と蒸解時間を除く、他の蒸解条件は公知の範囲で実施できる。
【0023】
SP蒸解法には、亜硫酸を吸収する塩基の種類と蒸解液のpHとの組み合わせで種々の蒸解方法がある。塩基の種類としては、カルシウム・ベース、マグネシウムベース、アンモニア・ベース、ナトリウム・ベースの4種類がある。蒸解液のpHによる分類では、酸性亜硫酸法、重亜硫酸法(バイサルファイト法)、微酸性亜硫酸法(ASCP法)、中性亜硫酸法(SCP法)の4種類がある。また、多段蒸解法も開発されている。各蒸解法を次に示す。
(1)カルシウム・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:Ca−酸性SP法
▲2▼多段蒸解法:Kramfors法
(2)マグネシウム・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:Mg−酸性SP法
▲2▼重亜硫酸法:Magnefite法
▲3▼多段蒸解法:Weyerhaeuser法
(3)アンモニア・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:NH4−酸性SP法
▲2▼重亜硫酸法:Hudson Pulp社法
▲3▼微酸性亜硫酸法:NH4−ASCP法
▲4▼中性亜硫酸法:NH4−NSSC法
▲5▼多段蒸解法:Saugrugs Foreningen法
(4)ナトリウム・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:Na−酸性SP法
▲2▼重亜硫酸法:arbiso法、SAAP法
▲3▼微酸性亜硫酸法:Na−ASCP法
▲4▼中性亜硫酸法:Na−NSSC法
▲5▼多段蒸解法:Stora法、Stora−Billerud法、Sivola法
更にバッチ蒸解と連続蒸解があるが、いずれの蒸解方法にも本発明を適用できる。蒸解温度は各蒸解法によってまちまちであるが、蒸解温度制御のための加熱方式と蒸解時間を除く、他の蒸解条件は、各蒸解法の公知の範囲で実施できる。
【0024】
本発明では、従来から行われてきた、蒸気吹き込みによる直接加熱や、強制循環蒸解液を蒸気ヒーターで間接加熱することの全てを、マイクロ波照射による加熱に換えることもできるし、従来の加熱の一部をマイクロ波照射による加熱に置き換えても良い。KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれかの一つの蒸解法において、各蒸解釜内部にあるリグノセルロース物質と蒸解液との混合物に対してマイクロ波を照射する。マイクロ波の周波数は300MHz〜300GHz(波長1mm〜1m)である。実用性と効率を考慮すると1GHz〜50GHzが最適である。このマイクロ波は空間を自由に伝播するが、金属があると反射され、誘電体中では吸収される。従って、マイクロ波を吸収しない材質、例えばテフロン(登録商標)、石英等で蒸解釜内部をライニングすることが望ましい。さらに、マイクロ波の照射方式は連続照射、パルス照射いずれでもよい。
【0025】
本発明のマイクロ波加熱により、蒸解時の脱リグニンが加速されるメカニズムの詳細は明らかではないが、次のようなことが考えられる。Diels−Alder反応、Ene型反応等、人名有機反応ではマイクロ波加熱法を採用することで、ヒータ等の熱源による従来加熱法に比べ、反応速度が1桁から3桁大きくなることおよび収率が数倍向上することが下記の文献(1)で報告されている。また、マイクロ波照射下におけるフルベンとアルケンの環状付加反応において、通常加熱反応では得られない生成物が得られることが明らかとなっており、マイクロ波加熱法では前例のない反応が起こる可能性があることが下記の文献(2)で示唆されている。従って、マイクロ波照射により脱リグニン活性種とリグニンの反応速度が大幅に向上したことが、本発明の効果発現の主要因であると考えられる。ただし、従来加熱法では起こり得ない新規脱リグニン反応が一部起こっている可能性も否定できない。
(1)G.Majetich,et al.,J.Microwav.Pow.Electromag.Ener.,30,27(1995)
(2)B.C.,Hong,et al.,Org.Lett..,4(4),663(2002)
【0026】
【実施例】
次に実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。日本製紙株式会社のパルプ製造工場で採取したラジアタパイン材のチップをウイリーミルにて粉砕した木粉を以下の実施例、比較例で使用した。目標カッパー価は24〜30である。
【0027】
【実施例1】
AP蒸解法の実施例である。反応容器に、木粉5g、アントラキノン10mg、1N水酸化ナトリウム水溶液50ml(液比10)を入れ、マイクロ波反応加速システム(CEM社、2455MHz、1500W、連続波)を使用し、170℃まで昇温させた。170℃で所定時間(30、60分間)保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0028】
【比較例1】
ステンレス製小型ボンベ(容量100ml)に、木粉5g、アントラキノン10mg、1N水酸化ナトリウム水溶液50ml(液比10)を入れ、ボンベを蒸気加熱器に入れ170℃まで昇温させた。170℃で所定時間(30、60分間)保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0029】
【実施例2】
KP蒸解法の実施例である。反応容器に、木粉5g、クラフト蒸解液(有効アルカリ:40g/L、硫化度:22%)を液比10となるように入れ、マイクロ波反応加速システム(CEM社、2455MHz、1500W、連続波)を使用し170℃まで昇温させた。170℃で30分間保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0030】
【比較例2】
ステンレス製小型ボンベ(容量100ml)に、木粉5g、クラフト蒸解液(有効アルカリ:40g/L、硫化度:22%)を液比10となるように入れ、このボンベを蒸気加熱器に入れ170℃まで昇温させた。170℃で30分間保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1からAP蒸解法(ソーダアントラキノン)およびKP蒸解法のいずれにおいても、蒸気加熱方式よりもマイクロ波加熱方式の方が同一蒸解時間で比較すると、カッパー価が低く、脱リグニンが促進されていることが解る。特に蒸解途中のカッパー価の差が極めて大きい。
【0033】
【発明の効果】
木材チップをKP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれか一つの蒸解法でパルプ化する際、蒸気を使用する直接加熱方式または間接加熱方式の全部または一部を、マイクロ波照射による加熱方式に変更することにより、蒸解薬品の脱リグニン反応を更に促進でき、短時間の蒸解が可能となる。また、このことにより、既存の蒸解釜ではパルプ生産量の増加の効果を期待でき、蒸解釜を新設する場合には、蒸解釜の規模を小さくできるいう効果が期待できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は化学パルプの蒸解方法に関する。さらに詳細には、クラフト蒸解法、修正クラフトパルプ蒸解法、アルカリパルプ蒸解法(ソーダ法)、亜硫酸パルプ蒸解法のいずれか一つの蒸解法によりリグノセルロース物質をパルプ化するにあたり、マイクロ波加熱により脱リグニン速度を著しく向上した蒸解方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ波加熱は一般に300MHzから300GHzの範囲の電磁波による誘電加熱方法であり、1〜100MHzの高周波やラジオ波のような誘導加熱とは分けて分類されている。加熱や乾燥のようにマイクロ波をエネルギーとして利用できる周波数はISM帯域(Frequency Allocation for Industrial,Scientific and Medical Purposes)として国際的に承認されている。日本国内ではこの帯域中の2,450、5,800、24,150MHzが承認された周波数であるが、915MHzも無線設備規則第65条を満たしていれば、工業用途の加熱用に利用することができる。
【0003】
マイクロ波の加熱原理は、電磁波によって生じる媒体中に存在するイオン電流と分子の双極子回転によっている。加熱や乾燥では対象とする媒体が水であることが多いが、水媒体の場合は後者の双極子回転の加熱原理が支配的である。電界強度E(V/m)、マイクロ波周波数f(Hz)、比誘電率ε′減衰係数tanδから次式により発熱量P(W/m3)を計算できる。
P=kE2fε′tanδ…(式1)
式1中のε′とtanδは物質固有の値であり、ε′tanδは損失係数と呼ばる。この値が大きいほどマイクロ波の吸収および発熱が大きくなる。周波数2,450MHzにおける水の損失係数は、25、55、85℃でそれぞれ12.3、4.62、3.10という大きな値である。従って、水媒体の加熱や乾燥にマイクロ波照射が極めて有効であることが知られている。
【0004】
マイクロ波の特徴としては、次のことが挙げられる。
(1)内部まで短時間に加熱できる。
(2)被加熱物以外の加熱の必要がなく、物体への高効率直接加熱である。
(3)損失係数の違いを利用する選択加熱が可能。
(4)エネルギー伝播が光速度であるため高速加熱が可能。
(5)密閉場で任意の雰囲気中や真空中での加熱が可能。
(6)マイクロ波発生に伴う騒音、熱気、排ガスの発生が無い。
(7)熱風や赤外線照射などの他の加熱法と併用が容易である。
【0005】
前記の特徴を利用して、マイクロ波加熱は、食品の調理・殺菌、ゴムの加硫、木材の乾燥、セラミックスの焼結に既に応用されている。また、廃棄物処理および迅速分析法の前処理としても利用されている。近年は有機合成や無機合成における反応速度を高める目的でマイクロ波を利用することが急速な勢いで研究されている。
【0006】
紙パルプ製造においてマイクロ波を利用した従来の技術としては以下が挙げられる。
(1)化学的蒸解または機械的処理プロセスを受けさせることなしに、含水セルロース材料のセルロース繊維を分離ないし離解する方法に関して、チップ状のリグノセルロース材料にマイクロ波エネルギー処理プロセスを受けさせ、リグノセルロース物質を破裂させるほど急速に加熱することにより、セルロース繊維を分離する技術が特許登録され、既に公知文献となっている(特許文献1参照。)。
(2)セルロース系材料を酸化剤で処理しパルプの最終白色度を高めることに関して、酸化剤の存在下、マイクロ波を照射する技術が開示されている。酸化剤としては、過酸化化合物、酸素、オゾン、過マンガン酸塩、塩素、二酸化塩素、次亜塩素酸塩、亜塩素酸が挙げられている(特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特許第1018467号明細書
【特許文献2】
特開昭60−88191号公報
【0008】
木材などのリグノセルロース物質を原料として化学パルプを製造する場合、熱エネルギーを多量に必要とする工程としては、蒸解工程と漂白工程がある。従来の技術で記述したように、パルプ製造の漂白工程でマイクロ波を利用した技術は既にあるが、化学パルプ製造の蒸解工程でマイクロ波を利用した技術はまだ確立されていない。
【0009】
木材などのリグノセルロース物質からクラフトパルプ法(以下、KP蒸解法と記述)、修正クラフトパルプ蒸解法(以下、修正KP蒸解法と記述)、アルカリパルプ法(以下、AP蒸解法と記述)、亜硫酸パルプ法(以下、SP蒸解法と記述)などの蒸解方法で化学パルプを製造する場合、蒸解歩留を向上させると共に蒸解速度を高め、パルプ品質の向上を図ることは蒸解方法の違いに関係なく、極めて重要なことである。
【0010】
KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれかの蒸解法においても、蒸解の最高温度への昇温と、最高温度での保持などのため加熱には、蒸解液に蒸気を吹き込む直接加熱、蒸気を熱源とするヒーター(熱交換器)により蒸解液を加熱する間接加熱、または直接加熱と関節加熱の組み合わせが、従来から行われてきた。
【0011】
KP蒸解法によるパルプの製造方法は、蒸解廃液から熱量や蒸解薬品としてアルカリ分を回収できる製造方法として確立されている。また、原料として特定の樹種を選ばない等の利点から、現在では世界の紙パルプの主要国で代表的な化学パルプの製造法となっている。KP蒸解工程では、木材チップなどのリグノセルロース物質は、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムが主成分である白液で蒸解される。また、蒸解液にアントラキノンなどのキノン系化合物を触媒量添加して蒸解することにより、針葉樹材、広葉樹材の樹種を選ばず蒸解速度が速くなり、蒸解薬品および蒸気の節減をはじめとして蒸解釜のパルプ生産効率が向上するとともに、同一カッパー価におけるパルプ収率が向上するため、原木の節減が可能となる等の効果が得られる。以前には、蒸解釜は主にバッチ法であったが、現在では蒸解度の向上やパルプ収率、強度の向上を目指した連続式蒸解釜が多数を占めている。連続式釜蒸解法はさらに改良され、MCC法、EMCC法、ITC法、Lo−Solids法等の修正KP蒸解法へと変換している。
【0012】
しかしながら、上記のような蒸解促進薬品、助剤および連続式蒸解釜を採用しても目標とするカッパー価を有する未晒パルプを得るには高温で長時間の蒸解を必要とするのが現状である。KP蒸解法や修正KP蒸解法では、140〜150℃までは急速に昇温させ、最高温度160〜180℃で保持する。最高温度までの昇温時間を含む全蒸解時間は、通常、ライナー用で1〜3時間、未晒パルプ用で2〜3時間、漂白パルプ用で4〜6時間と言われている。
【0013】
KP蒸解法では、低品質のクラフトパルプを急速蒸解で製造する場合のみ、蒸気を蒸解釜底部のノズルから直接導入することがある。しかしこれ以外のKP蒸解法と修正KP蒸解法ではヒーターによる間接加熱が主である。ヒーターとしては、洗浄ヒーター、トランスファー循環ヒーター、MCC循環ヒーターなど蒸解液が循環するゾーン毎にヒーターが設置され、蒸解温度を制御している。
【0014】
AP蒸解法は蒸解液に水酸化ナトリウムを使用する蒸解方法であり、前記のKP蒸解法に先立ち確立された蒸解法であるが、KP蒸解法と同様に木材チップの蒸解には、高温で長時間を必要とする。蒸解液は蒸気により、直接加熱または間接加熱されている。
【0015】
亜硫酸パルプ法は、亜硫酸を吸収する塩基の種類と蒸解液のpHとの組み合わせで種々の蒸解方法があり、それぞれ蒸解条件が異なっている。また製造するパルプの使用用途により製造するパルプ品質が異なることからも、蒸解条件が大きく異なっている。しかし、いずれの蒸解法でも、高温で長時間の蒸解を施す必要がある。通常、蒸解時間は5〜24時間である。通常の蒸解温度は、酸性亜硫酸蒸解で125〜150℃、重亜硫酸塩蒸解で160〜166℃、アルカリ性亜硫酸塩蒸解で140〜180℃である。蒸解液の循環装置の無い釜では底部に蒸気を吹き込んだり、循環装置があれば循環ポンプ出口にインジェクターを設けて蒸気を入れるという直接加熱が行われている。また、ヒーターによる間接加熱も行われている。
【0016】
以上のように、KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれも、木材チップをパルプ化するには蒸気を使用した直接または間接加熱により蒸解液の液温を高め、長時間の蒸解反応を行っている状況である。このことから、脱リグニン速度の更なる促進による蒸解時間の短縮が可能な蒸解方法の開発が望まれている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、木材チップなどのリグノセルロース物質を原料として、KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれか一つの蒸解法で化学パルプを製造する場合において、蒸解時の脱リグニン速度をさらに向上させる技術を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
木材チップなどのリグノセルロース物質をKP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれか一つの蒸解法で化学パルプを製造する蒸解工程において、リグノセルロース物質と蒸解液の混合物にマイクロ波を照射することにより、蒸解時の脱リグニン速度を向上させる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる木材原料としては、広葉樹、針葉樹であればいかなるものでも良く、特に限定されるものではない。本発明が適用される蒸解法としては、化学パルプ化方法であれば良く、KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法が挙げられる。蒸解温度制御のための加熱方式と蒸解時間を除き、各蒸解法における蒸解温度、圧力、蒸解液組成、液比、蒸解薬剤添加率などの他の蒸解条件は公知の範囲で実施することができる。
【0020】
KP蒸解法の公知の条件としては、蒸解液の硫化度は5〜75%、有効アルカリ添加率は絶乾木材重量当り5〜30重量%、蒸解温度は130〜170℃を挙げることができる。助剤を使用するKP蒸解または修正KP蒸解法として、ポリサルファイド蒸解法、クラフトアントラキノン蒸解法、ポリサルファイドアントラキノン蒸解法が挙げられ、これらの蒸解液組成や前記の蒸解温度、圧力、蒸解液組成、液比、蒸解薬剤添加率などの蒸解反応条件は公知の方法で実施できる。蒸解方式は、連続蒸解法或いはバッチ蒸解法のどちらでもよい。
【0021】
使用するキノン系の蒸解助剤としては、公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノンおよび前記キノン系化合物のアルキル基、アルデヒド基、アミノ基、フッ素基等の置換体、あるいは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、更にはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種あるいは2種以上添加されてもよく、その添加率は公知の0.001〜1.0重量%の範囲で実施できる。
【0022】
AP蒸解法の条件も、前述したKP、修正KP蒸解法と同様に、蒸解温度制御のための加熱方式と蒸解時間を除く、他の蒸解条件は公知の範囲で実施できる。
【0023】
SP蒸解法には、亜硫酸を吸収する塩基の種類と蒸解液のpHとの組み合わせで種々の蒸解方法がある。塩基の種類としては、カルシウム・ベース、マグネシウムベース、アンモニア・ベース、ナトリウム・ベースの4種類がある。蒸解液のpHによる分類では、酸性亜硫酸法、重亜硫酸法(バイサルファイト法)、微酸性亜硫酸法(ASCP法)、中性亜硫酸法(SCP法)の4種類がある。また、多段蒸解法も開発されている。各蒸解法を次に示す。
(1)カルシウム・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:Ca−酸性SP法
▲2▼多段蒸解法:Kramfors法
(2)マグネシウム・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:Mg−酸性SP法
▲2▼重亜硫酸法:Magnefite法
▲3▼多段蒸解法:Weyerhaeuser法
(3)アンモニア・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:NH4−酸性SP法
▲2▼重亜硫酸法:Hudson Pulp社法
▲3▼微酸性亜硫酸法:NH4−ASCP法
▲4▼中性亜硫酸法:NH4−NSSC法
▲5▼多段蒸解法:Saugrugs Foreningen法
(4)ナトリウム・ベース
▲1▼酸性亜硫酸法:Na−酸性SP法
▲2▼重亜硫酸法:arbiso法、SAAP法
▲3▼微酸性亜硫酸法:Na−ASCP法
▲4▼中性亜硫酸法:Na−NSSC法
▲5▼多段蒸解法:Stora法、Stora−Billerud法、Sivola法
更にバッチ蒸解と連続蒸解があるが、いずれの蒸解方法にも本発明を適用できる。蒸解温度は各蒸解法によってまちまちであるが、蒸解温度制御のための加熱方式と蒸解時間を除く、他の蒸解条件は、各蒸解法の公知の範囲で実施できる。
【0024】
本発明では、従来から行われてきた、蒸気吹き込みによる直接加熱や、強制循環蒸解液を蒸気ヒーターで間接加熱することの全てを、マイクロ波照射による加熱に換えることもできるし、従来の加熱の一部をマイクロ波照射による加熱に置き換えても良い。KP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれかの一つの蒸解法において、各蒸解釜内部にあるリグノセルロース物質と蒸解液との混合物に対してマイクロ波を照射する。マイクロ波の周波数は300MHz〜300GHz(波長1mm〜1m)である。実用性と効率を考慮すると1GHz〜50GHzが最適である。このマイクロ波は空間を自由に伝播するが、金属があると反射され、誘電体中では吸収される。従って、マイクロ波を吸収しない材質、例えばテフロン(登録商標)、石英等で蒸解釜内部をライニングすることが望ましい。さらに、マイクロ波の照射方式は連続照射、パルス照射いずれでもよい。
【0025】
本発明のマイクロ波加熱により、蒸解時の脱リグニンが加速されるメカニズムの詳細は明らかではないが、次のようなことが考えられる。Diels−Alder反応、Ene型反応等、人名有機反応ではマイクロ波加熱法を採用することで、ヒータ等の熱源による従来加熱法に比べ、反応速度が1桁から3桁大きくなることおよび収率が数倍向上することが下記の文献(1)で報告されている。また、マイクロ波照射下におけるフルベンとアルケンの環状付加反応において、通常加熱反応では得られない生成物が得られることが明らかとなっており、マイクロ波加熱法では前例のない反応が起こる可能性があることが下記の文献(2)で示唆されている。従って、マイクロ波照射により脱リグニン活性種とリグニンの反応速度が大幅に向上したことが、本発明の効果発現の主要因であると考えられる。ただし、従来加熱法では起こり得ない新規脱リグニン反応が一部起こっている可能性も否定できない。
(1)G.Majetich,et al.,J.Microwav.Pow.Electromag.Ener.,30,27(1995)
(2)B.C.,Hong,et al.,Org.Lett..,4(4),663(2002)
【0026】
【実施例】
次に実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。日本製紙株式会社のパルプ製造工場で採取したラジアタパイン材のチップをウイリーミルにて粉砕した木粉を以下の実施例、比較例で使用した。目標カッパー価は24〜30である。
【0027】
【実施例1】
AP蒸解法の実施例である。反応容器に、木粉5g、アントラキノン10mg、1N水酸化ナトリウム水溶液50ml(液比10)を入れ、マイクロ波反応加速システム(CEM社、2455MHz、1500W、連続波)を使用し、170℃まで昇温させた。170℃で所定時間(30、60分間)保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0028】
【比較例1】
ステンレス製小型ボンベ(容量100ml)に、木粉5g、アントラキノン10mg、1N水酸化ナトリウム水溶液50ml(液比10)を入れ、ボンベを蒸気加熱器に入れ170℃まで昇温させた。170℃で所定時間(30、60分間)保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0029】
【実施例2】
KP蒸解法の実施例である。反応容器に、木粉5g、クラフト蒸解液(有効アルカリ:40g/L、硫化度:22%)を液比10となるように入れ、マイクロ波反応加速システム(CEM社、2455MHz、1500W、連続波)を使用し170℃まで昇温させた。170℃で30分間保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0030】
【比較例2】
ステンレス製小型ボンベ(容量100ml)に、木粉5g、クラフト蒸解液(有効アルカリ:40g/L、硫化度:22%)を液比10となるように入れ、このボンベを蒸気加熱器に入れ170℃まで昇温させた。170℃で30分間保持して蒸解した。冷却後、ホモジナイザーで離解し、ガラスフィルターでパルプと黒液を分別した。十分に水洗した後、カッパー価を測定した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1からAP蒸解法(ソーダアントラキノン)およびKP蒸解法のいずれにおいても、蒸気加熱方式よりもマイクロ波加熱方式の方が同一蒸解時間で比較すると、カッパー価が低く、脱リグニンが促進されていることが解る。特に蒸解途中のカッパー価の差が極めて大きい。
【0033】
【発明の効果】
木材チップをKP蒸解法、修正KP蒸解法、AP蒸解法、SP蒸解法のいずれか一つの蒸解法でパルプ化する際、蒸気を使用する直接加熱方式または間接加熱方式の全部または一部を、マイクロ波照射による加熱方式に変更することにより、蒸解薬品の脱リグニン反応を更に促進でき、短時間の蒸解が可能となる。また、このことにより、既存の蒸解釜ではパルプ生産量の増加の効果を期待でき、蒸解釜を新設する場合には、蒸解釜の規模を小さくできるいう効果が期待できる。
Claims (3)
- 化学パルプの蒸解方法であって、リグノセルロース物質をパルプ化する蒸解工程において、リグノセルロース物質と蒸解液との混合物にマイクロ波を照射することを特徴とする化学パルプの蒸解方法。
- 化学パルプの蒸解方法であって、リグノセルロース物質をパルプ化する蒸解工程において、
(1)リグノセルロース物質と蒸解液との混合物へのマイクロ波を照射する方式(2)蒸気による間接または直接に加熱する方式
の両方法により、蒸解温度を制御することを特徴とする化学パルプの蒸解方法。 - 化学パルプの蒸解法が、クラフトパルプ蒸解法、修正クラフトパルプ蒸解法、アルカリパルプ蒸解法、亜硫酸パルプ蒸解法のいずれか一つであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化学パルプの蒸解方法。
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JP2009516086A (ja) * | 2005-11-11 | 2009-04-16 | ケミラ オユイ | 新しいパルプ及びパルプ化の方法 |
WO2010013696A1 (ja) | 2008-07-28 | 2010-02-04 | 国立大学法人京都大学 | マイクロ波照射装置、連結型マイクロ波照射装置、及び植物材料から糖成分を製造する方法 |
WO2012168681A1 (en) * | 2011-06-09 | 2012-12-13 | Biofuels Wales Limited | Treatment of lignocellulosic material |
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- 2003-03-25 JP JP2003082137A patent/JP2004285531A/ja active Pending
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