JP2004279259A - 音収集システム - Google Patents
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Abstract
【課題】音場を通過するレーザ光を計測することにより、振動板を用いずに、かつ、比較的広い領域において、空気そのものから音を収集する。
【解決手段】音収集システムは、音の伝播に伴う気圧変化がその領域における光の速度を変化させることを利用して音を収集する。光の速度変化は空気の屈折率変化として検出することができる。具体的には、複数の反射部材を対向配置して、例えば略矩形の空間を作る。反射部材としては、例えば反射鏡などを利用することができる。レーザ光源などからの光を反射部材に入射し、複数回の反射を起こさせることにより、反射部材の配置により規定される領域、即ち、反射部材により反射された光が伝搬している領域が、音収集の対象領域となる。そして、音収集の対象領域内の光の一部を取り出すことにより、対象領域内における空気の屈折率変化を検出する。前述のように、空気の屈折率変化は音の伝播に起因して生じるものであるので、検出された空気の屈折率変化に基づいて、対象領域内の音圧を所定の演算により求めることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】音収集システムは、音の伝播に伴う気圧変化がその領域における光の速度を変化させることを利用して音を収集する。光の速度変化は空気の屈折率変化として検出することができる。具体的には、複数の反射部材を対向配置して、例えば略矩形の空間を作る。反射部材としては、例えば反射鏡などを利用することができる。レーザ光源などからの光を反射部材に入射し、複数回の反射を起こさせることにより、反射部材の配置により規定される領域、即ち、反射部材により反射された光が伝搬している領域が、音収集の対象領域となる。そして、音収集の対象領域内の光の一部を取り出すことにより、対象領域内における空気の屈折率変化を検出する。前述のように、空気の屈折率変化は音の伝播に起因して生じるものであるので、検出された空気の屈折率変化に基づいて、対象領域内の音圧を所定の演算により求めることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザなどを利用した音収集システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
音を収集する装置として従来からマイクロフォンが知られている。ダイナミックマイクロフォンやコンデンサマイクロフォンに代表される多くのマイクロフォンは、原理的に振動板を用いるものである。音は空気の振動であり、上記のようなマイクロフォンは音により生じる振動板の振動を電気信号として取り出す。
【0003】
音は微少な気圧変化を伴って空気中を伝播し、そこを通過する光の速度を変化させる。光の速度変化は空気の屈折率を変化させる。この性質に着目し、レーザ光を用いて空気中から音を直接的に検出する研究や(非特許文献1を参照)、空気の屈折率変調を光学的に検出する音場可視化法に関する研究(非特許文献2を参照)などが行われている。
【0004】
【非特許文献1】
園田義人,“レーザー光により可聴音を直接検出する方法(光波マイクロフォン)の提案と基本特性−オプトホンの開発−,”信学技報,EA2002−7,SP2002−7(2002−04)
【非特許文献2】
中村健太郎,上羽貞行,“音圧感度の検討−空気の屈折率変調を光学的に検出する音場可視化法(I)−,”音講論集,2001−10(1−7−9)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、音場を通過するレーザ光を計測することにより、振動板を用いずに、かつ、比較的広い領域において、空気そのものから音を収集することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの観点では、音収集システムは、光源と、前記光源からの光を複数回反射させるように対向配置された複数の反射部材と、前記反射部材の配置により規定される領域であり、かつ、前記光が伝播する領域である対象領域内における光の速度変化を検出する検出手段と、検出された光の速度変化に基づいて、前記対象領域内における音圧を求める演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の音収集システムは、音の伝播に伴う気圧変化がその領域における光の速度を変化させることを利用して音を収集する。具体的には、複数の反射部材を対向配置して、例えば略矩形の空間を作る。反射部材としては、例えば反射鏡などを利用することができる。レーザ光源などからの光を反射部材に入射し、複数回の反射を起こさせることにより、反射部材の配置により規定される領域、即ち、反射部材により反射された光が伝搬している領域が、音収集の対象領域となる。そして、音収集の対象領域内の光の一部を取り出すことにより、対象領域内における光の速度変化を検出する。前述のように、光の速度変化は音の伝播に起因して生じるものであるので、検出された光の速度変化に基づいて、対象領域内の音圧を所定の演算により求めることができる。光の速度変化は、例えば光の屈折率変化として検出することができる。
【0008】
上記の音収集システムの一態様では、前記光源及び前記検出手段は、レーザ光を前記反射部材に対して照射するとともに前記反射部材により反射されたレーザ光を受光するレーザドップラー振動計により構成することができる。この場合は、レーザ光源と検出手段とを単一の装置として構成することができる。
【0009】
上記の音収集システムの一態様では、前記反射部材を所定の間隔をもって対向配置することにより、前記対象領域を略矩形の領域とすることができる。これにより、所定の面積を有する広い領域内における音圧を測定することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0011】
音は微少な気圧変化を伴って空気中を伝播し,そこを通過する光の速度を変化させる。光の速度変化は空気の屈折率変化を生じさせる。そこで、測定対象となる音場を通過するレーザ光の波長を計測することにより、振動板を用いずに空気そのものから音を収集することが可能であると考えられる。本発明は、振動板を用いずに空気中から音を直接検出することによる音収集システムを提供するものである。
【0012】
[音収集の原理]
本発明による音収集の基本原理に関連して、音圧による空気の屈折率の変化について考える。前述のように、音が発生させる気圧変化により音場内の光の速度が変化し、それは空気の屈折率変化を生じさせる。よって、音圧と空気の屈折率変化の関係がわかれば、音圧の絶対値測定が可能になる。
【0013】
断熱変化の気体の状態方程式より、体積変化率ΔV/Vと屈折率変化Δnの間に次の関係が成り立つと考える。
【0014】
【数1】
【0015】
大気圧Po、空気の比熱比γ、密度ρ、音速cとして
【0016】
【数2】
【0017】
および
【0018】
【数3】
【0019】
が成り立つので空気の屈折率変化Δnと音圧pの関係は次式で表される。
【0020】
【数4】
【0021】
この関係式に基づき、音圧を、その音圧に起因する空気の屈折率変化に基づいて求めることができる。即ち、測定対象となる音場内の屈折率変化を検出すれば、上記式(4)を利用して音圧を求めることができる。
【0022】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例は、レーザを用いた平面マイクロフォンに関するものである。前述のように、音は微小な気圧変化を伴って空気中を伝播し、そこを通過する光の速度を変化させる。光の速度変化は、空気の屈折率として検出することができる。2枚の反射鏡間における超音波による空気の疎密状態を、光路長変化としてレーザドップラー振動計(Laser Doppler Velocimeter、以下「LDV」と記す。)を用いて測定する研究が行われている(前述の非特許文献1を参照)。そこで、この方法を用いて可聴音帯域の音波を検出する。以下、この手法を用いた音収集装置を、「レーザ平面マイクロフォン」又は、「レーザドップラーマイクロフォン(LDM)と呼ぶ。
【0023】
(I)構成
対向配置した反射鏡間でレーザを反射させ、その間に音波を通過させる。対向配置した反射鏡により、測定対象となる音場が規定されることになる。図1の上段に示すように、LDVは、本来は振動している物体にレーザを照射し、反射してきたレーザ光と参照光との干渉によるドップラー現象を読み取ることで振動を測定するものである。しかし、図1下段に示すように、物体が振動していない状態でその間に騒音場がある場合には、LDVを用い、空気の屈折率変化によるレーザ光の位相変調から空中音場を測定することが出来る。そこで、レーザ光を反射鏡間で複数回反射させて音を収集する構成を採用した。
【0024】
具体的には、図2(a)に示すように、平行に並べられた反射鏡間21、22及びキュービックミラー23を使用してレーザを複数回反射させる。LDV20から出力されたレーザは、これらミラーにより複数回反射され、光路長L’を伝播してLDV20に戻る。LDV20は、屈折率の変化を光路長の変位ΔL’として測定できる。LDV20でが計測される振動速度VLDV[m/s]と音場の周波数f,媒質の屈折率変化Δnの関係は次式で表される。
【0025】
【数5】
【0026】
式(2)及び式(5)より、実際のLDVの測定値VLDVから音圧は次式で求められる。
【0027】
【数6】
【0028】
この演算は演算部27において行われる。こうして、LDVで計測される振動速度VLDVに基づいて音圧を測定することができる。
【0029】
(II)S/Nの検討
上記のレーザ平面マイクロフォンでは、反射鏡20、21間の距離、反射回数によるレーザ光の光路長の違いによって収集される音のS/Nに違いが出ると考えられる。そこで、反射鏡間の距離、反射回数を変化させてレーザ光の光路長と収集されるS/Nを測定した。
【0030】
具体的には、図2(b)に示す装置を用いて反射鏡間距離および反射回数を変化させて収集される音のS/Nを測定した。スピーカより周波数250,500,1000,2000,4000Hzの純音を再生し、レーザの光路長を変化させて収集される音のS/Nを測定した。また、同じ光路長でも反射回数を多くした場合と少なくした場合(光路長9mを0.5m×17回とした場合と4.5m×1回とした場合)の収集される音のS/Nの違いも測定した。なお、LDVと反射鏡はいずれも除振台上に設置し、振動の影響を排除した。光路長を1m〜81mまで変化させて収集された音の光路長とS/Nとの関係を示すグラフを図3に示す。
【0031】
次に、光路長は同じ9mであるが、反射回数が1回と17回とで異なる場合の、収集されるS/Nの違いを測定した。その結果を図4に示す。
【0032】
以上の結果より、光路長を長くとった方がS/Nが向上すること、及び、同じ光路長であればS/Nは反射回数に依存しないことが理解される。
【0033】
(III)指向特性の検討
本実施形態のレーザ平面マイクロフォンは、図5に示すように反射鏡31間に張り巡らされたレーザ33によって音を収集するので、反射鏡31間を通過する音波35を平面で受音していると考えることが出来る。そこで0.6m×0.5mの平面で受音した場合の指向特性の理論値および測定値を図6(a)及び(b)に示す。同図に示すように、本レーザ平面マイクロフォンによる測定値は、理論値に近いものとなった。
【0034】
(IV)野外騒音測定への応用
本システムを実際にある道路における道路騒音の測定に用いた。測定には上記構成のレーザ平面マイクロフォン40および騒音計45を用い、図7に示す配置で騒音を測定した。なお、反射鏡41、42および騒音計マイク45はいずれも地面より1mの高さに設置した。
【0035】
レーザ平面マイクロフォン40と騒音計45の出力を一旦録音し,実時間分析器で1/3オクターブバンド分析(指数形時間重み付け特性F,5秒間のパワー平均)した結果を図8に示す。図示のように、2000Hz以下の帯域ではほぼ従来の騒音計と同じ特性が得られた。なお、高域におけるノイズの原因は、測定機器自体によるもの、および反射鏡の精度による問題などが考えられる。
【0036】
(V)特徴
以上のように、本実施形態のレーザ平面マイクロフォンは反射鏡間でレーザ光を複数回反射させ音を検出するものであり、複数の反射鏡の配置により規定される平面(受音面)に対して入射する全ての音による光の速度変化を同時に検出する。よって、広い面積での受音が可能であると同時に鋭い指向性を持つマイクロフォンを実現できる。なお、上記の実施例では、空気の屈折率変化を利用して音圧に起因する光の速度変化を検出することとしているが、これは単なる一例であり、他の量を利用して音圧による光の速度変化を検出するようにシステムを構成することも可能である。
【0037】
これにより、従来のダイナミックマイクロフォン、コンデンサマイクロフォンでは実現が困難であった広い面積を通過する音響パワーレベルの計測、あるいは特定部位の遮音測定などを実現することが出来る。実際には空港における航空機騒音の測定や空中からの地表騒音のリモートセンシングに用いることが考えられる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、音場を通過するレーザ光を計測することにより、振動板を用いずに、比較的広い領域において、空気そのものから音を収集することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る音収集手法を概念的に説明する図である。
【図2】実施形態に係るレーザ平面マイクロフォンの構成を概念的に示す図である。
【図3】レーザ平面マイクロフォンのレーザ光路長とS/Nとの関係を示す図である。
【図4】レーザ平面マイクロフォンのレーザ光反射回数とS/Nとの関係を示す図表である。
【図5】レーザ平面マイクロフォンの指向特性測定概念を示す図である。
【図6】レーザ平面マイクロフォンの指向特性の測定結果を示すグラフである。
【図7】レーザ平面マイクロフォンによる騒音測定装置例を示す。
【図8】レーザ平面マイクロフォンによる騒音測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
20 LDV
21、22 反射鏡
22 演算部
23 キュービックミラー
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザなどを利用した音収集システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
音を収集する装置として従来からマイクロフォンが知られている。ダイナミックマイクロフォンやコンデンサマイクロフォンに代表される多くのマイクロフォンは、原理的に振動板を用いるものである。音は空気の振動であり、上記のようなマイクロフォンは音により生じる振動板の振動を電気信号として取り出す。
【0003】
音は微少な気圧変化を伴って空気中を伝播し、そこを通過する光の速度を変化させる。光の速度変化は空気の屈折率を変化させる。この性質に着目し、レーザ光を用いて空気中から音を直接的に検出する研究や(非特許文献1を参照)、空気の屈折率変調を光学的に検出する音場可視化法に関する研究(非特許文献2を参照)などが行われている。
【0004】
【非特許文献1】
園田義人,“レーザー光により可聴音を直接検出する方法(光波マイクロフォン)の提案と基本特性−オプトホンの開発−,”信学技報,EA2002−7,SP2002−7(2002−04)
【非特許文献2】
中村健太郎,上羽貞行,“音圧感度の検討−空気の屈折率変調を光学的に検出する音場可視化法(I)−,”音講論集,2001−10(1−7−9)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、音場を通過するレーザ光を計測することにより、振動板を用いずに、かつ、比較的広い領域において、空気そのものから音を収集することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの観点では、音収集システムは、光源と、前記光源からの光を複数回反射させるように対向配置された複数の反射部材と、前記反射部材の配置により規定される領域であり、かつ、前記光が伝播する領域である対象領域内における光の速度変化を検出する検出手段と、検出された光の速度変化に基づいて、前記対象領域内における音圧を求める演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の音収集システムは、音の伝播に伴う気圧変化がその領域における光の速度を変化させることを利用して音を収集する。具体的には、複数の反射部材を対向配置して、例えば略矩形の空間を作る。反射部材としては、例えば反射鏡などを利用することができる。レーザ光源などからの光を反射部材に入射し、複数回の反射を起こさせることにより、反射部材の配置により規定される領域、即ち、反射部材により反射された光が伝搬している領域が、音収集の対象領域となる。そして、音収集の対象領域内の光の一部を取り出すことにより、対象領域内における光の速度変化を検出する。前述のように、光の速度変化は音の伝播に起因して生じるものであるので、検出された光の速度変化に基づいて、対象領域内の音圧を所定の演算により求めることができる。光の速度変化は、例えば光の屈折率変化として検出することができる。
【0008】
上記の音収集システムの一態様では、前記光源及び前記検出手段は、レーザ光を前記反射部材に対して照射するとともに前記反射部材により反射されたレーザ光を受光するレーザドップラー振動計により構成することができる。この場合は、レーザ光源と検出手段とを単一の装置として構成することができる。
【0009】
上記の音収集システムの一態様では、前記反射部材を所定の間隔をもって対向配置することにより、前記対象領域を略矩形の領域とすることができる。これにより、所定の面積を有する広い領域内における音圧を測定することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0011】
音は微少な気圧変化を伴って空気中を伝播し,そこを通過する光の速度を変化させる。光の速度変化は空気の屈折率変化を生じさせる。そこで、測定対象となる音場を通過するレーザ光の波長を計測することにより、振動板を用いずに空気そのものから音を収集することが可能であると考えられる。本発明は、振動板を用いずに空気中から音を直接検出することによる音収集システムを提供するものである。
【0012】
[音収集の原理]
本発明による音収集の基本原理に関連して、音圧による空気の屈折率の変化について考える。前述のように、音が発生させる気圧変化により音場内の光の速度が変化し、それは空気の屈折率変化を生じさせる。よって、音圧と空気の屈折率変化の関係がわかれば、音圧の絶対値測定が可能になる。
【0013】
断熱変化の気体の状態方程式より、体積変化率ΔV/Vと屈折率変化Δnの間に次の関係が成り立つと考える。
【0014】
【数1】
【0015】
大気圧Po、空気の比熱比γ、密度ρ、音速cとして
【0016】
【数2】
【0017】
および
【0018】
【数3】
【0019】
が成り立つので空気の屈折率変化Δnと音圧pの関係は次式で表される。
【0020】
【数4】
【0021】
この関係式に基づき、音圧を、その音圧に起因する空気の屈折率変化に基づいて求めることができる。即ち、測定対象となる音場内の屈折率変化を検出すれば、上記式(4)を利用して音圧を求めることができる。
【0022】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例は、レーザを用いた平面マイクロフォンに関するものである。前述のように、音は微小な気圧変化を伴って空気中を伝播し、そこを通過する光の速度を変化させる。光の速度変化は、空気の屈折率として検出することができる。2枚の反射鏡間における超音波による空気の疎密状態を、光路長変化としてレーザドップラー振動計(Laser Doppler Velocimeter、以下「LDV」と記す。)を用いて測定する研究が行われている(前述の非特許文献1を参照)。そこで、この方法を用いて可聴音帯域の音波を検出する。以下、この手法を用いた音収集装置を、「レーザ平面マイクロフォン」又は、「レーザドップラーマイクロフォン(LDM)と呼ぶ。
【0023】
(I)構成
対向配置した反射鏡間でレーザを反射させ、その間に音波を通過させる。対向配置した反射鏡により、測定対象となる音場が規定されることになる。図1の上段に示すように、LDVは、本来は振動している物体にレーザを照射し、反射してきたレーザ光と参照光との干渉によるドップラー現象を読み取ることで振動を測定するものである。しかし、図1下段に示すように、物体が振動していない状態でその間に騒音場がある場合には、LDVを用い、空気の屈折率変化によるレーザ光の位相変調から空中音場を測定することが出来る。そこで、レーザ光を反射鏡間で複数回反射させて音を収集する構成を採用した。
【0024】
具体的には、図2(a)に示すように、平行に並べられた反射鏡間21、22及びキュービックミラー23を使用してレーザを複数回反射させる。LDV20から出力されたレーザは、これらミラーにより複数回反射され、光路長L’を伝播してLDV20に戻る。LDV20は、屈折率の変化を光路長の変位ΔL’として測定できる。LDV20でが計測される振動速度VLDV[m/s]と音場の周波数f,媒質の屈折率変化Δnの関係は次式で表される。
【0025】
【数5】
【0026】
式(2)及び式(5)より、実際のLDVの測定値VLDVから音圧は次式で求められる。
【0027】
【数6】
【0028】
この演算は演算部27において行われる。こうして、LDVで計測される振動速度VLDVに基づいて音圧を測定することができる。
【0029】
(II)S/Nの検討
上記のレーザ平面マイクロフォンでは、反射鏡20、21間の距離、反射回数によるレーザ光の光路長の違いによって収集される音のS/Nに違いが出ると考えられる。そこで、反射鏡間の距離、反射回数を変化させてレーザ光の光路長と収集されるS/Nを測定した。
【0030】
具体的には、図2(b)に示す装置を用いて反射鏡間距離および反射回数を変化させて収集される音のS/Nを測定した。スピーカより周波数250,500,1000,2000,4000Hzの純音を再生し、レーザの光路長を変化させて収集される音のS/Nを測定した。また、同じ光路長でも反射回数を多くした場合と少なくした場合(光路長9mを0.5m×17回とした場合と4.5m×1回とした場合)の収集される音のS/Nの違いも測定した。なお、LDVと反射鏡はいずれも除振台上に設置し、振動の影響を排除した。光路長を1m〜81mまで変化させて収集された音の光路長とS/Nとの関係を示すグラフを図3に示す。
【0031】
次に、光路長は同じ9mであるが、反射回数が1回と17回とで異なる場合の、収集されるS/Nの違いを測定した。その結果を図4に示す。
【0032】
以上の結果より、光路長を長くとった方がS/Nが向上すること、及び、同じ光路長であればS/Nは反射回数に依存しないことが理解される。
【0033】
(III)指向特性の検討
本実施形態のレーザ平面マイクロフォンは、図5に示すように反射鏡31間に張り巡らされたレーザ33によって音を収集するので、反射鏡31間を通過する音波35を平面で受音していると考えることが出来る。そこで0.6m×0.5mの平面で受音した場合の指向特性の理論値および測定値を図6(a)及び(b)に示す。同図に示すように、本レーザ平面マイクロフォンによる測定値は、理論値に近いものとなった。
【0034】
(IV)野外騒音測定への応用
本システムを実際にある道路における道路騒音の測定に用いた。測定には上記構成のレーザ平面マイクロフォン40および騒音計45を用い、図7に示す配置で騒音を測定した。なお、反射鏡41、42および騒音計マイク45はいずれも地面より1mの高さに設置した。
【0035】
レーザ平面マイクロフォン40と騒音計45の出力を一旦録音し,実時間分析器で1/3オクターブバンド分析(指数形時間重み付け特性F,5秒間のパワー平均)した結果を図8に示す。図示のように、2000Hz以下の帯域ではほぼ従来の騒音計と同じ特性が得られた。なお、高域におけるノイズの原因は、測定機器自体によるもの、および反射鏡の精度による問題などが考えられる。
【0036】
(V)特徴
以上のように、本実施形態のレーザ平面マイクロフォンは反射鏡間でレーザ光を複数回反射させ音を検出するものであり、複数の反射鏡の配置により規定される平面(受音面)に対して入射する全ての音による光の速度変化を同時に検出する。よって、広い面積での受音が可能であると同時に鋭い指向性を持つマイクロフォンを実現できる。なお、上記の実施例では、空気の屈折率変化を利用して音圧に起因する光の速度変化を検出することとしているが、これは単なる一例であり、他の量を利用して音圧による光の速度変化を検出するようにシステムを構成することも可能である。
【0037】
これにより、従来のダイナミックマイクロフォン、コンデンサマイクロフォンでは実現が困難であった広い面積を通過する音響パワーレベルの計測、あるいは特定部位の遮音測定などを実現することが出来る。実際には空港における航空機騒音の測定や空中からの地表騒音のリモートセンシングに用いることが考えられる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、音場を通過するレーザ光を計測することにより、振動板を用いずに、比較的広い領域において、空気そのものから音を収集することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る音収集手法を概念的に説明する図である。
【図2】実施形態に係るレーザ平面マイクロフォンの構成を概念的に示す図である。
【図3】レーザ平面マイクロフォンのレーザ光路長とS/Nとの関係を示す図である。
【図4】レーザ平面マイクロフォンのレーザ光反射回数とS/Nとの関係を示す図表である。
【図5】レーザ平面マイクロフォンの指向特性測定概念を示す図である。
【図6】レーザ平面マイクロフォンの指向特性の測定結果を示すグラフである。
【図7】レーザ平面マイクロフォンによる騒音測定装置例を示す。
【図8】レーザ平面マイクロフォンによる騒音測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
20 LDV
21、22 反射鏡
22 演算部
23 キュービックミラー
Claims (3)
- 光源と、
前記光源からの光を複数回反射させるように対向配置された複数の反射部材と、
前記反射部材の配置により規定される領域であり、かつ、前記光が伝播する領域である対象領域内における光の速度変化を検出する検出手段と、
検出された光の速度変化に基づいて、前記対象領域内における音圧を求める演算手段と、を備えることを特徴とする音収集システム。 - 前記光源及び前記検出手段は、レーザ光を前記反射部材に対して照射するとともに前記反射部材により反射されたレーザ光を受光するレーザドップラー振動計により構成されることを特徴とする請求項1に記載の音収集システム。
- 前記反射部材は所定の間隔をもって対向配置され、前記対象領域は略矩形の領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の音収集システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003072151A JP2004279259A (ja) | 2003-03-17 | 2003-03-17 | 音収集システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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