JP2004278715A - シリンダーヘッド用メタルガスケット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】それぞれ金属板からなり、シリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔2aと、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード2bと、前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔2cと、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード2dとを有し、互いに重ね合わされる二枚の基板2と、金属板からなり、前記二枚の基板間に介挿される副板3と、前記副板の少なくとも片面上に形成されて、前記基板の前記各環状ビードと重なるとともにその環状ビードの頂部と対向するように前記環状ビードよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、前記基板の前記各シリンダー孔を環状に囲む硬質金属めっき層5と、を具えてなるシリンダーヘッド用メタルガスケットである。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関のシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に介挿されるシリンダーヘッド用メタルガスケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のメタルガスケットとしては、例えば、それぞれ金属板からなる二枚の基板と、それらの基板より薄い板厚の金属板からなり、それらの基板間に介挿される副板とを具え、前記各基板が、内燃機関のシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔と、各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記内燃機関のシリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔とを有し、前記副板が、基板と同様のシリンダー穴と冷却水穴とを有するメタルガスケットが知られており、かかるメタルガスケットにおいては、その副板に、基板の各シリンダー孔の周囲の環状ビードと重なるシリンダー孔周辺部をそれより外側の外方部よりも厚くする段差構造を設けて、基板の環状ビードの線圧を上昇させることで、シリンダー内の燃焼ガスに対するシール性能を向上させる場合がある。
【0003】
上記段差構造としては従来、例えば図12に示すように、それぞれ鋼板(SUS 301H 0.2t 等)からなる二枚の基板2間に介挿される副板3を、基板2の各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bと重なるシリンダー孔周辺部3aとそれより外側に位置する外方部3bとで互いに異なる板厚の薄鋼板(SUS 301H 0.2t, 0.3t 等)で構成して所要の段差になるようにし、それらシリンダー孔周辺部3aと外方部3bとをレーザー溶接で結合した段差構造S1が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、図中符号1はメタルガスケット、LWはレーザー溶接部を示す。
【0004】
また例えば図13に示すように、それぞれ鋼板からなる二枚の基板2間に介挿される単一板厚の薄鋼板(SUS 301H 0.1t 等)からなる副板3の、基板2の各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bと重なるシリンダー孔周辺部3aにこれも薄鋼板(SUS 301H 0.1t 等)からなるシム板4を重ねて所要の段差になるようにし、それら副板3とシム板4とをレーザー溶接で結合した段差構造S2も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、例えば図14に示すように、それぞれ鋼板からなる二枚の基板2間に介挿される単一板厚の薄鋼板(SUS 301H 0.05t等)からなる副板3の、基板2の各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bと重なるシリンダー孔周辺部3aに折り返し曲げ加工により折り重ね部3cを形成して所要の段差になるようにした段差構造S3も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−243531号公報、第3図
【特許文献2】
特開平10−61772号公報
【特許文献3】
特開平8−121597号公報、第4図
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最初に記した従来の段差構造S1では、所定のガスケット形状とするためのシリンダー孔周辺部3aと外方部3bとの位置合せが難しいため、ガスケット形状に求められている高い精度を満たすには専用の位置合せ治具と高精度のレーザー溶接装置が不可欠となり、ガスケットが高価なものになってしまうという問題があった。
【0008】
また二番目に記した従来の段差構造S2では、シム板4の板厚が段差量となり、工業的に流通している薄鋼板の板厚が現状では50μm (0.05mm) 区切りであるため、10μm (0.01mm) 単位での高精度な段差量の設定ができず、また100 μm 以下の薄板ではレーザー溶接による歪みや変形や浮きの発生で段差機能の確保が困難となり、しかも最初の段差構造と同様、専用の位置合せ治具と高精度のレーザー溶接装置が不可欠となり、ガスケットが高価なものになってしまうという問題があった。
【0009】
そして三番目に記した従来の段差構造S3では、単一板厚の薄鋼板を折り返し曲げ加工することから、その薄鋼板の板厚が段差量となるため、二番目の段差構造S2と同様、10μm (0.01mm) 単位での高精度な段差量の設定ができず、しかも折り返し曲げ加工は絞り加工を用いて行うため、折り重ね部3cの形状の自由度が低く、割れの発生なしに充分広い半径方向幅の折り重ね部3cを形成するのは、特に薄鋼板では困難であるという問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
この発明は上記課題を有利に解決して安価で段差量の制御の自由度の高い優れたメタルガスケットを提供することを目的とするものであり、請求項1記載のこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットは、それぞれ金属板からなり、内燃機関のシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記内燃機関のシリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有し、互いに重ね合わされる二枚の基板と、金属板からなり、前記二枚の基板間に介挿される副板と、前記副板の少なくとも片面上に形成されて、前記基板の前記各環状ビードと重なるとともにその環状ビードの頂部と対向するように前記環状ビードよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、前記基板の前記各シリンダー孔を環状に囲む硬質金属めっき層と、を具えてなるものである。
【0011】
かかるシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、二枚の基板間に介挿される副板の少なくとも片面上に形成された硬質金属めっき層が、基板の各環状ビードと重なるとともにその環状ビードの頂部と対向するようにその環状ビードよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、基板の各シリンダー孔を環状に囲んで段差構造を構成するので、二枚の基板の環状ビードの頂部に加わる線圧が高くなって、シリンダーボア内の燃焼ガス圧に対し高いシール性能を発揮することができる。しかもこのメタルガスケットによれば、硬質金属めっき層が金属からなるので、特に高熱にさらされるシリンダー孔周りの環状ビードのための段差構造として高いシール性能を維持することができ、また硬質金属めっき層がめっき工程により形成されるためその厚さの調節も容易であるので、環状ビードと外周ビードとの締付力のバランスを最適にする段差量を容易に得ることができる。
【0012】
なお、この発明のメタルガスケットにおいては、請求項2に記載のように、前記副板に、前記基板の前記環状ビードと重なるとともに頂部同士が対向するように山形断面形状の環状ビードが形成されていてもよく、このようにすれば、環状ビードが三段に重なるので、より高いシール性能を得ることができる。
【0013】
また、請求項3記載のこの発明のメタルガスケットは、それぞれ金属板からなり、内燃機関のシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記内燃機関のシリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有し、互いに重ね合わされる二枚の基板と、前記二枚の基板の一方もしくは両方の、他方の基板に向く面上に形成されて、前記基板の前記各環状ビードと重なるとともにその環状ビードの頂部と対向するように前記環状ビードよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、前記基板の前記各シリンダー孔を環状に囲む硬質金属めっき層と、を具えてなるものである。
【0014】
このシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、二枚の基板の一方もしくは両方の、他方の基板に向く面上に形成された硬質金属めっき層が、基板の各環状ビードと重なるとともにその環状ビードの頂部と対向するようにその環状ビードよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、基板の各シリンダー孔を環状に囲んで段差構造を構成するので、二枚構成のメタルガスケットでも、二枚の基板の環状ビードの頂部に加わる線圧が高くなって、シリンダーボア内の燃焼ガス圧に対し高いシール性能を発揮することができる。しかもこのメタルガスケットによれば、硬質金属めっき層が金属からなるので、特に高熱にさらされるシリンダー孔周りの環状ビードのための段差構造として高いシール性能を維持することができ、また硬質金属めっき層がめっき工程により形成されるためその厚さの調節も容易であるので、環状ビードと外周ビードとの締付力のバランスを最適にする段差量を容易に得ることができる。
【0015】
この発明においては、前記硬質金属めっき層は、ニッケル、ニッケル・リン、または銅からなり、硬度がHv60以上のものであると好ましい。二枚の基板の環状ビードの頂部に加わる高い線圧に対し潰れることなく耐えて、シール性能の低下を防止することができるからである。
【0016】
また、この発明においては、複数の前記シリンダー孔に関する前記硬質金属めっき層の段差量の分布は、複数の前記シリンダーボアに関する前記内燃機関の剛性分布に対応していると好ましい。内燃機関の剛性の低い部分では剛性の高い部分より段差量を大きくすると、シール性能のバランスがとれるからである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第1実施例の全体を示す平面図、図2は、図1のA−A線に沿う断面図、図3(a),(b)は、上記第1実施例のメタルガスケットの副板に硬質金属めっき層を設ける方法を示す説明図であり、図中先の図12〜図14に示すと同様の部分はそれと同一の符号にて示す。すなわち、符号1はメタルガスケット、2は基板、3は副板をそれぞれ示す。
【0018】
上記第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1は、それぞれ外側面(シリンダーブロックおよびシリンダーヘッドに対向する面)のみ厚さ25μm のNBRからなるラバー層のラバーコートを施された鋼板(SUS 301H 0.2t)からなり互いに重ね合わされる二枚の基板2と、それらの基板2間に介挿されるラバーコートなしの鋼板(SUS 301H 0.2t)からなる副板3とを具えている。
【0019】
ここにおける二枚の基板2はそれぞれ、図1に示すように、内燃機関のシリンダーブロックの四つのシリンダーボアにそれぞれ対応して形成された四つのシリンダー孔2a(図1では左のシリンダー孔2aから順に、#1,#2,#3,#4シリンダーボアに対応する)と、各シリンダー孔2aの周囲に形成された山形断面形状(いわゆるフルビード形状)の環状ビード2bと、上記内燃機関のシリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して各環状ビード2bの外側周辺部に形成された複数の冷却水孔2cと、複数の環状ビード2bおよびそれらの周囲に位置する複数の冷却水孔2cを全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状(いわゆるハーフビード形状)の外周ビード2dとを有している。
【0020】
またここにおける副板3は、図3(a)に示すように、上記基板2の各シリンダー孔2aに対応するシリンダー孔3dと、上記基板2の冷却水孔2cのうちの幾つかに対応する冷却水孔3eとを有している。
【0021】
この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1はさらに、図2に示すように、副板3の両面上に両面分合計厚さ49〜51μm (詳細は表1参照)の硬質金属めっき層5を具えており、この硬質金属めっき層5は、図3(b)に示す如く副板3の両面上の各シリンダー孔3dの周辺部に例えば電気めっき工程や溶融金属めっき工程により形成されたニッケル(硬度Hv255)からなるもので、副板3とともに二枚の基板2間に介挿されると、基板2の各環状ビード2bと重なるとともに、その環状ビード2bの頂部と対向するように環状ビード2bよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、副板3の各シリンダー孔3dひいてはそれが対応する基板2の各シリンダー孔2aを環状に囲むものである。
【0022】
かかる第1実施例のメタルガスケット1によれば、二枚の基板2間に介挿される副板3の両面上に形成された硬質金属めっき層5が、基板2の各環状ビード2bと重なるとともにその環状ビード2bの頂部と対向するようにその環状ビード2bよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、基板2の各シリンダー孔2aを環状に囲んで段差量略50μm の段差構造S4を構成するので、二枚の基板2の環状ビード2bの頂部に加わる線圧が高くなって、後述の如く、シリンダーボア内の燃焼ガス圧に対し高いシール性能を発揮することができる。
【0023】
しかもこの第1実施例のメタルガスケット1によれば、硬質金属めっき層5がニッケルからなるので、特に高熱にさらされるシリンダー孔2a周りの環状ビード2bのための段差構造として高いシール性能を維持することができ、また硬質金属めっき層5がめっき工程により形成されるため,その層厚さの調節も容易であるので、環状ビード2bと外周ビード2dとの締付力のバランスを最適にする段差量を容易に得ることができる。
【0024】
さらにこの第1実施例のメタルガスケット1によれば、二枚の基板2がそれぞれ鋼板の外側面をラバー層で被覆するラバーコートを施されているので、それらのラバー層がシリンダーブロックおよびシリンダーヘッドのデッキ面の微細な傷や加工痕を埋めてミクロシールの機能を果たすことで、シール性能を高めることができる。
【0025】
なお、平坦な副板3の両面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第1実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の合計厚さ(段差量)を四つのシリンダー孔2aに関して一律に80μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第2実施例とする。この第2実施例によれば、段差量が第1実施例より大きいので、後述の如く、第1実施例よりも高いシール性能を発揮することができる。
【0026】
また、平坦な副板3の両面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第1実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の合計厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#2,#3で#1,#4より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ49μm 、81μm 、79μm 、50μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第3実施例とし、さらに、平坦な副板3の両面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第1実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の合計厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#2,#3で#1,#4より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ47μm 、105 μm 、103 μm 、50μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第4実施例とする。これら第3および第4実施例によれば、段差量が内燃機関の剛性分布に対応しているので、後述の如く、先の実施例よりも高いシール性能を発揮することができる。
【0027】
図4は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第5実施例の、図1と同様の位置での断面図であり、この第2実施例のメタルガスケット1は、副板3の片面(図では上側の面)上に例えば電気めっき工程や溶融金属めっき工程により形成されたニッケル(硬度Hv255)からなる厚さ49〜51μm (詳細は表1参照)の硬質金属めっき層5を具えて段差量略50μm の段差構造S5を構成している点のみが先の第1実施例と異なっており、それ以外は第1実施例と同一の構成とされている。この第5実施例によっても、先の第1実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
なお、平坦な副板3の片面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第5実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の厚さ(段差量)を四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ一律に80μm および100 μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第6実施例および第7実施例とする。これら第6,第7実施例によれば、段差量が第5実施例より大きいので、後述の如く、第5実施例よりも高いシール性能を発揮することができる。
【0029】
また、平坦な副板3の片面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第5実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#2,#3で#1,#4より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ50μm 、82μm 、83μm 、49μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第8実施例とし、さらに、平坦な副板3の片面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第5実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#2,#3で#1,#4より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ47μm 、105 μm 、103 μm 、50μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第9実施例とする。これら第8および第9実施例によれば、段差量が内燃機関の剛性分布に対応しているので、後述の如く、先の実施例よりも高いシール性能を発揮することができる。
【0030】
一方、平坦な副板3の両面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第1実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の合計厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#1,#4で#2,#3より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ82μm 、49μm 、51μm 、80μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第10実施例とし、さらに、平坦な副板3の両面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第1実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の合計厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#1,#4で#2,#3より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ100 μm 、50μm 、50μm 、100 μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第11実施例とする。これら第10および第11実施例によれば、段差量が内燃機関の剛性分布に対応しているので、後述の如く、先の実施例よりも高いシール性能を発揮することができる。
【0031】
また、平坦な副板3の片面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第5実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#1,#4で#2,#3より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ81μm 、48μm 、50μm 、81μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第12実施例とし、さらに、平坦な副板3の片面上にニッケルの硬質金属めっき層5を具える第5実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5の厚さ(段差量)を、内燃機関の四つのシリンダーボアに関するその内燃機関の剛性分布が#1,#4で#2,#3より低い場合に対応させて、図1では左から順に四つのシリンダー孔2aに関してそれぞれ103 μm 、49μm 、49μm 、102 μm としたものをこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第13実施例とする。これら第12および第13実施例によれば、段差量が内燃機関の剛性分布に対応しているので、後述の如く、先の実施例よりも高いシール性能を発揮することができる。
【0032】
さらにここでは、上記第1〜第6および第8〜第13実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5がニッケル・リン(Hv868)からなるものを第14〜第25実施例とし、また、上記第1〜第6および第8〜第13実施例と同様の構成で、硬質金属めっき層5が銅(Hv95)からなるものを第26〜第37実施例とする。
【0033】
図5は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第38実施例の、図1と同様の位置での断面図であり、この第38実施例のメタルガスケット1は副板3に、基板2の環状ビード2bと重なるとともに下側の基板2の環状ビード2bと頂部同士が対向するように山形断面形状の環状ビード3fが形成されていて、その副板3の片面(環状ビード3fの突出側の面)上に例えば電気めっき工程や溶融金属めっき工程により形成されたニッケル(硬度Hv255)からなる、内燃機関の剛性分布に対応した厚さ49〜81μm (詳細は表1参照)の硬質金属めっき層5を具えて段差構造S6を構成している点のみが先の第8実施例と異なっており、それ以外は第8実施例と同一の構成とされている。この第38実施例によれば環状ビード2b,3fが三段に重なるので、後述の如く、先の第8実施例よりも高いシール性能を得ることができる。
【0034】
図6は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第39実施例の、図1と同様の位置での断面図であり、この第39実施例のメタルガスケット1は副板3に、基板2の環状ビード2bと重なるとともに下側の基板2の環状ビード2bと頂部同士が対向するように山形断面形状の環状ビード3fが形成されていて、その副板3の両面上に例えば電気めっき工程や溶融金属めっき工程により形成されたニッケル(硬度Hv255)からなる、内燃機関の剛性分布に対応した合計厚さ47〜83μm (詳細は表1参照)の硬質金属めっき層5を具えて段差構造S7を構成する点のみが先の第3実施例と異なっており、それ以外は第3実施例と同一の構成とされている。この第39実施例によれば環状ビード2b,3fが三段に重なるので、先の第3実施例よりも高いシール性能を得ることができる。
【0035】
図7は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第40実施例の、図1と同様の位置での断面図であり、この第40実施例のメタルガスケット1は二枚の基板2の間に副板3を具えていないが、各基板2自体は先の実施例と同様のものである。そしてこの実施例では、片側(図では上側)の基板2の、他方の基板(図では下側の基板)2に向く面(内側面)上に、内燃機関の剛性分布に対応した厚さ49〜82μm (詳細は表1参照)の硬質金属めっき層5を具えており、この硬質金属めっき層5は、基板2のシリンダー孔2aの周辺部に電気めっき工程や溶融金属めっき工程により形成されたニッケル(硬度Hv255)からなるもので、二枚の基板2が重ね合わされると、他方の基板2の各環状ビード2bと重なるとともにその環状ビード2bの頂部と対向するように環状ビード2bよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、基板2の各シリンダー孔2aを環状に囲んで段差構造S8を構成するものである。
【0036】
かかる第40実施例のメタルガスケット1によれば、副板3がないのでガスケットを安価に製造でき、しかも後述の如く、先の第1実施例と概ね同等のシール性能を得ることができる。
【0037】
図8は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第41実施例の、図1と同様の位置での断面図であり、この第41実施例のメタルガスケット1は二枚の基板2の間に副板3を具えていないが、各基板2自体は先の実施例と同様のものである。そしてこの実施例では、両方の基板2の他方の基板2に向く面(内側面)上に、内燃機関の剛性分布に対応した合計厚さ51〜82μm (詳細は表1参照)の硬質金属めっき層5を具えており、この硬質金属めっき層5は、基板2のシリンダー孔2aの周辺部に電気めっき工程や溶融金属めっき工程により形成されたニッケル(硬度Hv255)からなるもので、二枚の基板2が重ね合わされると、他方の基板2の各環状ビード2bと重なるとともにその環状ビード2bの頂部と対向するように環状ビード2bよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、基板2の各シリンダー孔2aを環状に囲んで段差構造S9を構成するものである。
【0038】
かかる第41実施例のメタルガスケット1によれば、副板3がないのでガスケットを安価に製造でき、しかも後述の如く、先の第3実施例と概ね同等のシール性能を得ることができる。
【0039】
以下の表1〜表5は、上記第1実施例〜第41実施例のメタルガスケットと、第1実施例から硬質金属めっき層5を除いた比較例1のメタルガスケットと、第1実施例と同一の段差量を図14の突合せ接合で得た比較例2のメタルガスケットと、第1実施例の硬質金属めっき層5の代わりに錫(Hv15)からなる軟質金属めっき層を設けた比較例3のメタルガスケットと、第38実施例と同様の構成で一律の約50μm の段差量を図14の突合せ接合で得た比較例4のメタルガスケットと、第40実施例と同様の構成で一律の約50μm の段差量を図14の突合せ接合で得た比較例4のメタルガスケットとについて、構成およびシール性能を対比して示すものであり、ここにおけるシール限界圧は、図9に示すように、上記各メタルガスケット1を自動車用エンジンのシリンダーブロックSBとシリンダーヘッドSHとの間に装着してヘッドボルトHBを規定軸力(34.4kN/本)にて締付け、シリンダーボア内のピストンと燃焼室のバルブとを密閉処理した供試体につき、室温雰囲気中で点火プラグ孔からシリンダーボア内にエアーを注入してシリンダーボア内を加圧してシール限界圧を測定した結果を示すものである。
【0040】
これら表1〜表5から、上記各実施例のメタルガスケットのシール性能が同様のビード構造の比較例と比べて大幅に高いことが判る。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
図10(a)〜(d)は、段差構造を有さない比較例1と、第1,第5および第7実施例との気筒(シリンダーボア)別シール限界圧をそれぞれ示す説明図であり、この図からも、上記実施例のメタルガスケットは段差構造を有さないものと比較して大幅にシール性は向上することが判る。
【0047】
図11(a)〜(c)は、段差構造を有さない比較例1および、軟質金属めっき層を有する比較例3と、第1実施例との気筒(シリンダーボア)別シール限界圧をそれぞれ示す説明図であり、この図からも、上記実施例のメタルガスケットは軟質金属めっき層を有するものと比較してシール性は向上することが判る。
【0048】
図12(a)〜(d)は、内燃機関の剛性分布が#1,#4シリンダーボアに関して#2,#3シリンダーボアよりも低い場合に適用した、段差量一律の比較例2と、段差量をそれら#1,#4シリンダーボアに対応するシリンダー孔周りで他のシリンダー孔周りよりも大きくした第10,第12および第13実施例との気筒(シリンダーボア)別シール限界圧をそれぞれ示す説明図であり、この図からも、上記実施例のメタルガスケットは段差量一律のものと比較して大幅にシール性は向上することが判る。
【0049】
図13(a)〜(d)は、内燃機関の剛性分布が#2,#3シリンダーボアに関して#1,#4シリンダーボアよりも低い場合に適用した、段差量一律の比較例2と、段差量をそれら#2,#3シリンダーボアに対応するシリンダー孔周りで他のシリンダー孔周りよりも大きくした第3,第8および第9実施例との気筒(シリンダーボア)別シール限界圧をそれぞれ示す説明図であり、この図からも上記実施例のメタルガスケットは段差量一律のものと比較して大幅にシール性は向上することが判る。
【0050】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば、硬質金属めっき層5は、硬度がHv60以上の鉄からなるものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第1実施例の全体を示す平面図である。
【図2】上記第1実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】(a),(b)は、上記第1実施例のメタルガスケットの副板に硬質金属めっき層を設ける方法を示す説明図である。
【図4】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第5実施例の、図1と同様の位置での断面図である。
【図5】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第38実施例の、図1と同様の位置での断面図である。
【図6】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第39実施例の、図1と同様の位置での断面図である。
【図7】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第40実施例の、図1と同様の位置での断面図である。
【図8】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの第41実施例の、図1と同様の位置での断面図である。
【図9】上記実施例および比較例のメタルガスケット1のシール限界圧の測定方法を示す説明図である。
【図10】(a)〜(d)は、段差構造を有さない比較例とこの発明の実施例とについてのシール性能をそれぞれ示す説明図である。
【図11】(a)〜(c)は、段差構造を有さない比較例および金属めっき層の材質が異なる比較例とこの発明の実施例とについてのシール性能をそれぞれ示す説明図である。
【図12】(a)〜(d)は、段差量一律の比較例とこの発明の実施例とについてのシール性能をそれぞれ示す説明図である。
【図13】(a)〜(d)は、段差量一律の比較例とこの発明の実施例とについてのシール性能をそれぞれ示す説明図である。
【図14】従来のシリンダーヘッド用メタルガスケットの段差構造の一例を示す、図1と同様の位置での断面図である。
【図15】従来のシリンダーヘッド用メタルガスケットの段差構造の他の一例を示す、図1と同様の位置での断面図である。
【図16】従来のシリンダーヘッド用メタルガスケットの段差構造のさらに他の一例を示す、図1と同様の位置での断面図である。
【符号の説明】
1 メタルガスケット
2 基板
2a, 3d シリンダー孔
2b, 3f 環状ビード
2c, 3e 冷却水孔
2d 外周ビード
3 副板
3a シリンダー孔周辺部
3b 外方部
3c 折り重ね部
4 シム板
5 硬質金属めっき層
HB ヘッドボルト
LW レーザー溶接部
S1〜S9 段差構造
SB シリンダーブロック
SH シリンダーヘッド
Claims (5)
- それぞれ金属板からなり、内燃機関のシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔(2a)と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(2b)と、前記内燃機関のシリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔(2c)と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード(2d)とを有し、互いに重ね合わされる二枚の基板(2)と、
金属板からなり、前記二枚の基板間に介挿される副板(3)と、
前記副板の少なくとも片面上に形成されて、前記基板の前記各環状ビードと重なるとともにその環状ビードの頂部と対向するように前記環状ビードよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、前記基板の前記各シリンダー孔を環状に囲む硬質金属めっき層(5)と、
を具えてなる、シリンダーヘッド用メタルガスケット。 - 前記副板には、前記基板の前記環状ビードと重なるとともに頂部同士が対向するように山形断面形状の環状ビードが形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
- それぞれ金属板からなり、内燃機関のシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔(2a)と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(2b)と、前記内燃機関のシリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔(2c)と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード(2d)とを有し、互いに重ね合わされる二枚の基板(2)と、
前記二枚の基板の一方もしくは両方の、他方の基板に向く面上に形成されて、前記基板の前記各環状ビードと重なるとともにその環状ビードの頂部と対向するように前記環状ビードよりも半径方向内方の位置から半径方向外方の位置まで延在し、前記基板の前記各シリンダー孔を環状に囲む硬質金属めっき層(5)と、
を具えてなる、シリンダーヘッド用メタルガスケット。 - 前記硬質金属めっき層(5)は、ニッケル、ニッケル・リン、または銅からなり、硬度がHv60以上のものであることを特徴とする、請求項1から3までの何れか記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
- 複数の前記シリンダー孔(2a)に関する前記硬質金属めっき層の段差量の分布は、複数の前記シリンダーボアに関する前記内燃機関の剛性分布に対応していることを特徴とする、請求項1から3までの何れか記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
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