JP2004272890A - Hsiモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法 - Google Patents

Hsiモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 科学的かつ客観的かつシンプルであるHSIモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法を提供する。
【解決手段】 HSIモデルの構築方法において、ロジスティック回帰分析を行い、その結果によって得られるロジスティック回帰モデルを用いてHSIモデルを構築するHSIモデルの構築方法、HEP調査及びHEP分析の評価基準として、前記の方法で構築されたHSIモデルを用いる生態系定量評価方法、及び前記の方法で実施されたHEPの予測評価に基づいて、計画、設計、施工、維持管理を行う環境保全措置方法。
【効果】 本発明は、科学的かつ客観的かつシンプルであるHSIモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法を提供することを可能とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、HSIモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法に関するものである。1999年に環境影響評価法が施行されたことにより、環境保全措置としてミティゲーションの位置付けが明確にされるようになった。ミティゲーションは、開発事業が環境に及ぼす影響を軽減する措置のことであり、事業の内容と環境の状態に応じて、回避、低減、代償という手段に細分化されている。回避ミティゲーションは、開発事業の計画を変更し、生態系への影響を避ける方法である。低減ミティゲーションは、開発事業による生態系への影響が避けられない時に、その影響を最小限に抑える方法である。代償ミティゲーションは開発事業によってやむを得ず失われる生態系に対して、新たに別の場所に生態系を創出することによって、その影響を補償する方法である(非特許文献1参照)。しかし、これらのミティゲーションを行うには、開発によって失われる生態系や新たに創出される生態系等の定量的な評価を行い、それらを比較する方法が必要となるが、わが国には未だ存在していない。この問題を解決する方法として期待されているのが、アメリカで開発されたHEP(Habitat Evaluation Procedures:ハビタット評価手続き)と呼ばれている生態系定量評価方法である(非特許文献1〜4参照)。そして、HEPの予測評価には、その基準となる野生生物種ごとのHSI(Habitat Suitability Index:ハビタット適性指数)モデルの構築が必要である。さらに、HEPの予測評価に基づいた環境保全措置が必要となる。本発明は、HSIモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法を提供するものとして有用である。
アメリカでは、すでに連邦政府機関のUSFWSなどで250種以上の野生生物種についてのHSIモデルが構築されている(非特許文献4参照)。アメリカのHSIモデルの構築方法は、対象種のハビタットに関する既存の文献をもとにして、専門家の長年の経験にもとづいてモデルを構築するという方法をとっている。これは、専門家の判断に頼っている経験的な部分が多く、統計分析が用いられておらず、モデルの合理性が欠けているため客観性に乏しいという問題点がある。そのため、モデルそのものは、科学的な意味合いを持っていない。同じ対象種であっても、モデルの作成者によってハビタット変数やモデルの線の傾きなどモデルの内容に隔たりが生じてしまい、HEPの予測評価による生態系定量評価及びHEPの予測評価に基づいた環境保全措置に影響してしまう恐れもある。
日本におけるHSIモデルの研究は、雨嶋ら「トウキョウサンショウウオのハビタット適性指数(HSI)モデル(案)の作成とHEPのケーススタディについて」(非特許文献5参照)に記載されているトウキョウサンショウウオのHSIモデルや、林文慶ら「ウェットランドの再生技術−HSIを用いたチゴガニの生息環境評価−」(非特許文献6参照)に記載されているチゴガニのHSIモデルが試行的に作成されているだけであり、ほとんど未着手の状態である。これらのHSIモデルは、アメリカのHSIモデルの構築方法を用いており、統計分析は行われず、客観性に乏しいという欠点がある。
近年、日本における生態系定量評価方法としてHEPが注目されており議論されているが、以上にあげた客観性に欠ける部分に疑問をもっている専門家も少なくない。仮に、日本において、このようなHSIモデルがHEPに適用されれば、合意形成ツールとしての役割を果たすことができないため、環境保全措置に悪影響が出る可能性が十分に考えられるのである。
森本幸裕・亀山章 編集(2001):ミティゲーション:ソフトサイエンス社,354pp 田中章(1998):生態系評価システムとしてのHEP:島津康男 編集 環境アセスメントここが変わる:環境技術研究協会,81−96 田中章(2000):環境アセスメントにおける定量的生態系評価手法−代償ミティゲーションとの関係において−:第4回国際影響評価学会日本支部研究発表会論文集 国際影響評価学会日本支部,15−20 田中章(2002):何をもって生態系を復元したといえるのか?−生態系復元の目標設定とハビタット評価手続きHEPについて:ランドスケープ研究65(4),282−285 環境アセスメント学会(2002):2002年度研究発表会論文要旨集,136−144 環境アセスメント学会(2002):2002年度研究発表会論文要旨集,154−159
上述したように、環境保全措置を行うには、科学的かつ客観的かつシンプルであるHSIモデルの構築方法、HSIモデルを評価基準としたHEPによる生態系定量評価方法及びHEPの予測評価に基づいた環境保全措置方法が必要である。
本発明の目的は、統計分析を用いた、科学的かつ客観的かつシンプルであるHSIモデルの構築方法、HSIモデルを評価基準としたHEPによる生態系定量評価方法及びHEPの予測評価に基づいた環境保全措置方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1) HSIモデルの構築方法において、(a)対象種を選定する、(b)生存必須条件を選定する、(c)調査項目を選定する、(d)生息指標調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(e)生息環境調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(f)生息指標調査と生息環境調査で得られたデータをもとにロジスティック回帰分析を行い、その結果によって得られる統計分析モデルを用いてHSIモデルを構築する、(g)上記(f)においてロジスティック回帰分析を行う際に、統計分析を用いてハビタット変数の選択を行う、ことを特徴とするHSIモデルの構築方法。
(2)生息指標調査で得られたデータを従属変数とし、生息環境調査で得られたデータを独立変数としたロジスティック回帰分析を行うことを特徴とする前記(1)に記載のHSIモデルの構築方法。
(3)ハビタット変数を選択する方法として、ステップワイズ法を用いることを特徴とする前記(1)に記載のHSIモデルの構築方法。
(4)ロジスティック回帰分析の結果によって得られるロジスティック回帰モデルを用いてHSIモデルを構築することを特徴とする前記(1)に記載のHSIモデルの構築方法。
(5)ロジスティック回帰分析の結果によって得られるロジスティック回帰モデルが、予測確率をHSIとした時、下記の数2
Figure 2004272890
(但し、B:係数、X:変数、B0:定数とする。また、実際のHSIの値の範囲は、0<HSI<1となるため、HSIの値を四捨五入して、0≦HSI≦1)で表されることを特徴する前記(4)に記載のHSIモデルの構築方法。
(6)生態系定量評価方法において、(a)対象種を選定する、(b)生存必須条件を選定する、(c)調査項目を選定する、(d)生息指標調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(e)生息環境調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(f)生息指標調査と生息環境調査で得られたデータをもとにロジスティック回帰分析を行い、その結果によって得られる統計分析モデルを用いてHSIモデルを構築する、(g)上記(f)においてロジスティック回帰分析を行う際に、統計分析を用いてハビタット変数の選択を行う、(h)HEP調査及びHEP分析の評価基準として、上記(a)〜(g)の過程によって構築されたHSIモデルを用いる、ことを特徴とする生態系定量評価方法。
(7)環境保全措置方法において、(6)に記載の生態系定量評価方法を用いて得られたHEPの予測評価に基づいて、計画、設計、施工、維持管理を行う、ことを特徴とする環境保全措置方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。本発明では、多変量解析の一つであるロジスティック回帰分析の結果から得られるロジスティック回帰モデルを用いた、科学的かつ客観的かつシンプルであるHSIモデルの構築方法の提供を可能とする。さらに、HSIモデルを評価基準としたHEPによる生態系定量評価方法及びHEPの予測評価に基づいた環境保全措置方法の提供を可能とする。
本発明の方法を図1のフローチャートに基づいて説明する。
最初に、HSIモデルの構築方法について説明する。
まず、対象種の選定を行う。対象種の選定基準の一例を挙げると、同様な生息場所や環境条件要求性をもつ種群を代表する生態的指標種、群集における生物間相互作用と多様性の要をなしているキーストン種、生育地面積要求性の大きいアンブレラ種、美しさや魅力によって世間に特定の生育場所の保護をアピールすることに役立つ象徴種、希少性や絶滅の危険の高い危急種などが例示される(鷲谷いづみ・矢原徹(1996):保全生態学入門:文一総合出版,270pp)。対象種は、これらに代表される選定基準に基づいて適宜選定される。
次に、生存必須条件の選定を行う。対象種の生活史や生息状況などを考慮し、例えば、繁殖、越冬、餌場、外敵からの隠れ場等から選定する。これらは、対象種に応じて適宜選定される。
次に、調査項目の選定では、生息指標調査の調査項目および生息環境調査の調査項目の選定を行う。例えば、生存必須条件を繁殖とした場合、対象種の繁殖に関する生息指標要因から生息指標調査の項目を選定する。また、対象種の繁殖に関する生息環境要因から生息環境調査の項目を選定する。これらの生息指標調査の項目および生息環境調査の項目は、対象種に応じて適宜選定される。
次に、生息指標調査では、選定された調査項目について調査を実施し、所定の測定条件でそれらを測定する。対象種に応じて所定の測定基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。
次に、生息環境調査では、選定された調査項目について調査を実施し、所定の測定条件でそれらを測定する。対象種に応じて所定の測定基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。
次に、生息指標調査と生息環境調査で得られたデータをもとにロジスティック回帰分析を行って、その結果から得られるロジスティック回帰モデルを用いてHSIモデルを構築する。この際に、生息指標調査で得られたデータを従属変数とし、生息環境調査で得られたデータを独立変数としたロジスティック回帰分析を行う。また、独立変数間に極めて強い相関関係があると多重共線性の影響によりモデルに基づく解析ができないため、極めて強い相関関係があると認められる独立変数同士は、同じモデルに入らないようにすることが望ましい(長田理(2001):Stat View 多変量解析入門:OMS,97-104)。また、ステップワイズ法によって選択された独立変数を、対象種の生息環境要因に関する限定要因であるハビタット変数とする。
上記ハビタット変数を選択する方法としては、例えば、ステップワイズ法が用いられる。しかし、これらの方法に限定されるものではなく、それらと同様の方法であれば適宜使用することができる。
また、上記ロジスティック回帰モデルとしては、好適には、例えば、予測確率をHSIとした時、下記の数3で表される。
Figure 2004272890
但し、B:係数、X:変数、B0:定数とする。また、実際のHSIの値の範囲は、0<HSI<1となるため、HSIの値を四捨五入して、0≦HSI≦1とする。
後記する本発明の一実施例に示されるように、上記方法によりHSIモデルを構築できることが分かった。この場合、独立変数を、例えば、連続変数としてだけではなく、ダミー変数として扱うことにより、より現実的なHSIモデルに改良することも適宜可能である。
次に、生態系定量評価方法について説明する。生態系定量評価方法は、前記のHSIモデルの構築方法により構築されたHSIモデルに基づいて実施される。
まず、HEP調査を行い、所定の条件でそれらを調査する。HEP調査では、構築されたHSIモデルに基づいて、所定の調査項目および調査基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。
次に、HEP分析を行い、所定の条件でそれらを分析する。HEP分析では、HEP調査に基づいた所定の分析項目および分析基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。また、後記する本発明の一実施例で用いた数式については、それらに限定されるものではなく、それらと同様の方法であれば、適宜変更することが可能である。
生態系定量評価方法の一例を挙げると、開発地におけるネット・ロスと代替地におけるネット・ゲインの比較、複数の開発地におけるネット・ロスの比較、複数の代替地におけるネット・ゲインの比較等が挙げられる。また、評価期間やHSIや開発地または代替地の面積等を含めて検討する。このような比較を行うことにより、後記される環境保全措置方法において実施される回避ミティゲーション、低減ミティゲーション、代償ミティゲーション、もしくはこれらを組み合わせた方法の検討が行われる。また、後記する本発明の一実施例における生態系定量評価方法は、目的に応じて適宜変更が可能である。また、評価の結果をGIS等で表示することで、より充実した方法となる。
次に、環境保全措置方法について説明する。環境保全措置方法は、前記の生態系定量評価方法よって得られたHEPの予測評価に基づいて実施される。
まず、計画を行い、所定の条件でそれらを計画する。計画では、HEPの予測評価に基づいて所定の計画項目及び計画基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。
次に、設計を行い、所定の条件でそれらを設計する。設計では、前記の計画に基づいて所定の設計項目及び設計基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。
次に、施工を行い、所定の条件でそれらを施工する。施工では、前記の設計に基づいて所定の施工項目および施工基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。
次に、維持管理を行い、所定の条件でそれらを維持管理する。維持管理では、前記の施工に基づいて所定の維持管理項目及び維持管理基準等を予め設定し、それらに基づいて実施される。また、モニタリングにより問題点が生じた場合は、計画、設計、施工の各段階へフィードバックされて、妥当性を検証し修正を行う。
後記する本発明の一実施例における環境保全措置方法は、目的に応じて適宜変更が可能である。また、環境保全措置によって得られた結果をGIS等で表示することで、より充実した方法となる。
本発明により、1)HEPの評価基準となる科学的かつ客観的かつシンプルであるHSIモデルの構築方法を提供できる、2)HEPの対象種となりうる野生生物種のHSIモデルの構築が可能である、3)ハビタット変数が少数の有効な変数に選択されるため、HSIモデルの構築を容易にすることができる、4)本発明によって構築されたHSIモデルを評価基準としたHEPによる生態系定量評価方法及びHEPの予測評価に基づいた環境保全措置方法を実施する際には、明確な目標設定や効率的な調査によって、調査員及び作業員の労働力を最小限にとどめることができ、調査期間及び工事期間の短縮化やコスト削減を可能とする、5)「新・生物多様性国家戦略」で謳われている自然再生事業への適用、環境アセスメントにおける合意形成ツールの構築、希少種の生息地の保全、エコロジカルネットワークの計画、環境マップの作成、環境教育の題材、及び里山の保全を可能とする、という格別の効果が奏される。
次に、本発明の一実施例として、繁殖期におけるコゲラ(Dendrocopos kizuki)を対象種としたHSIモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法を図と表を用いて具体的に説明する。
まず、HSIモデルの構築方法について説明する。
調査地は、東京都内の国立市、国分寺市、小金井市、小平市、多摩市、調布市、府中市の7つの市に存在する面積0.2ha〜77.1haの17ヶ所の広葉樹林とした。これらの調査地は、東京都現存植生図(1996・1997)の武蔵府中・吉祥寺・立川(縮尺1:25,000)における凡例のコナラ−クヌギ群集、又は、緑の多い住宅地、樹群をもった公園・墓地など、ケヤキ−シラカシ屋敷林に属している。
次に、対象種の選定を行った。対象種はキツツキ類のコゲラとした。その理由としては、キツツキ類は、森林生態系のキーストン種とみなされることが多い(松岡茂・高田由紀子(1999):キツツキ類にとっての立枯れ木と森林管理における立枯れ木の扱い:日本鳥学会誌47(2),33−48)。キーストン種とは、生物群集における生物間相互作用と多様性のキーストン(要石)の役割をなしている種をいう(鷲谷いづみ・矢原徹(1996):保全生態学入門:文一総合出版,270pp)。キツツキ類は繁殖やねぐらのための樹洞を自ら掘ることができる。このような種を一次樹洞営巣種と呼び、これによってつくられた樹洞は、自ら樹洞をつくることができないスズメやシジュウカラなどの二次樹洞営巣種に貴重な生息環境を提供しているからである(松岡茂・高田由紀子(1999):キツツキ類にとっての立枯れ木と森林管理における立枯れ木の扱い:日本鳥学会誌47(2),33−48)。
次に、生存必須条件を選定した。生存必須条件は繁殖とした。この理由は、コゲラは非繁殖期には環境選好が少ないために様々な樹林でみられるのに対して、繁殖期には広葉樹の立枯木や枯枝を含む生木を営巣木として利用するため、営巣環境が制約されることを考慮したためである(土橋信夫(1989):東京都板橋区でつがいで個体識別され、繁殖したコゲラ:Strix8,161−168)、(松岡茂(1979):オオアカゲラの早い繁殖開始の生態的意義:TORI28,63−75)、(杉山禎彦・赤塚隆幸(1999):都市公園におけるコゲラの巣の乗取りと思われる行動:STRIX Vol.17,165−172)、(多賀レア(1988):東京都馬事公苑におけるコゲラの営巣記録:Strix7,291−295)。本発明の一実施例で定義する営巣木とは、コゲラが立枯木と枯枝を含む生木において、抱卵期から育雛期に利用しているのを確認したサンプルをいう。
次に、調査項目の選定を行った。生息指標調査の項目は、営巣木が存在する環境と営巣木が存在しない環境の確認とした。この理由は、生存必須条件を繁殖としたため、コゲラの生息指標要因として営巣木が存在する環境と営巣木が存在しない環境が重要になると考慮したためである。
次に、生息環境調査の項目について説明する。高木層の植被率と亜高木層の植被率と低木層の植被率は、コゲラは開けたところで繁殖するといわれているため、その指標として選定した(土橋信夫(1989):東京都板橋区でつがいで個体識別され、繁殖したコゲラ:Strix8,161−168)、(石田健(1991):コゲラ営巣誘致の成功例とキツツキ類の保護のための人工営巣木利用に関する考察:Strix10,239−246)、(多賀レア(1988):東京都馬事公苑におけるコゲラの営巣記録:Strix7,291−295)。胸高直径と樹高は、樹木のサイズを把握することを目的に選定した。立枯木または枯枝を含む生木(以下、これを営巣可能木という)の密度は、コゲラが営巣木として利用するのは、営巣可能木に限られることから、その密度を測定するために選定した。立木密度は、コゲラは開けたところに繁殖するといわれているため、その指標として選定した(土橋信夫(1989):東京都板橋区でつがいで個体識別され、繁殖したコゲラ:Strix8,161−168)、(石田健(1991):コゲラ営巣誘致の成功例とキツツキ類の保護のための人工営巣木利用に関する考察:Strix10,239−246)、(多賀レア(1988):東京都馬事公苑におけるコゲラの営巣記録:Strix7,291−295)。
生息指標調査は、広葉樹林において営巣木が存在する環境(以下、これを「営巣木あり」という)については、調査地を任意に踏査し、コゲラの飛翔経路や給餌活動、雛の鳴き声をもとに、コゲラが繁殖に利用した営巣木を確認した。営巣木を中心に10m×10mのコドラートを調査区として設置した。営巣木が存在しない環境(以下、これを「営巣木なし」という)については、調査地を50m×50mのメッシュで区切り、そのメッシュをランダムにサンプリングして、選ばれたメッシュ内の代表的な林分において、営巣木が存在しないことを確認し、10m×10mのコドラートを調査区として設置した。このようにして、「営巣木あり」と「営巣木なし」の確認を行った。調査期間は、2002年3月下旬〜10月下旬にかけて行った。
生息環境調査は、生息指標調査で設定した調査区において行った。階層は、高さ8m以上を高木層、高さ2〜8mを亜高木層、高さ0.5〜2mを低木層とした。測定項目は、各階層の植被率と、胸高直径5cm以上で樹高2m以上の樹木の胸高直径と樹高、および、営巣可能木の密度と全体の立木密度とした。また、営巣可能木のうち、枯枝を含む生木は幹から30cmの部分の枯枝の直径を測定した。調査期間は、2002年7月下旬〜10月下旬にかけて行った。
分析には、統計ソフトSPSS11.0の二項ロジスティック回帰分析を用いた。ロジスティック回帰分析とは、二者択一の値をとる従属変数と、様々な要因を表す独立変数を用いて事象の起こる確率を0から1の範囲で予測する分析手法である(石村貞夫(2001):SPSSによる多変量データ解析の手順 第2版:東京図書,24-39)、(長田理(2001):Stat View 多変量解析入門:OMS,97-104)。ロジスティック回帰モデルは、予測確率をHSIとした時に、下記の数4で表される。
Figure 2004272890
但し、B:係数、X:変数、B:定数とする。(石村貞夫(2001):SPSSによる多変量データ解析の手順 第2版:東京図書,24-39)。本発明の一実施例では、生息指標調査で得られたデータを従属変数とし、「営巣木あり」を「1」、「営巣木なし」を「0」とした。また、生息環境調査で得られたデータを独立変数とした。
分析するにあたって、広葉樹林には大小さまざまなサイズの樹木が存在するため、胸高直径、樹高、幹から30cm部分の枯枝の直径は、営巣木の最小値を切り捨ての基準として、その値以上のデータを用いた。
また、独立変数間に極めて強い相関関係があると多重共線性の影響によりモデルに基づく解析ができないため(長田理(2001):Stat View 多変量解析入門:OMS,97-104)、独立変数間の相関係数の絶対値が0.8以上となる独立変数同士は、同じモデルに入らないようにした。胸高直径と樹高については、一般に強い相関関係があることが知られているために、両者を合わせて幹の材積に相当するD2H(D:胸高直径、H:樹高)の100mのコドラート内の和(以下、これをD2Hの和という)を変数として扱った。よって、独立変数は、高木層の植被率、亜高木層の植被率、低木層の植被率、D2Hの和、営巣可能木の密度、立木密度の6つとした。
分析は、営巣可能木の密度のデータをそれぞれ連続変数とダミー変数で扱った2通りの方法で行った。以下、連続変数で扱った分析をタイプ1、ダミー変数で扱った分析をタイプ2という。
独立変数の選択は、ステップワイズ法(変数増加法)を用いた。また、基準は尤度比とし、ステップワイズにおける確率は、投入、除去ともに0.20とした。
HSIモデルの構築は、ロジスティック回帰分析の結果をもとに行うこととした。
以下、結果について述べる。
調査区のサンプル数は、「営巣木あり」が13サンプル、「営巣木なし」が62サンプルで合計75サンプルとなった。
営巣木の最小値は、胸高直径は13cmであり、樹高は3.0mであり、幹から30cm部分の枯枝の直径は8cmであったことから、これをコゲラが営巣木として利用できる最小のサイズと判断し、切り捨ての基準となる最小値として、その値以上のデータを用いた。
営巣可能木の密度については、連続変数は、0本/100m、1本/100m、2本/100m、3本/100mとした。ダミー変数は、0本/100m、1本以上/100mとした。
独立変数間で相関係数が最も高かったのは、タイプ1とタイプ2の分析ともに、D2Hの和と立木密度であり0.517であった。よって、独立変数間に極めて強い相関関係がないと判断したことから、分析には6つの独立変数を投入することとした。
ロジスティック回帰分析の結果を表1に示す。ステップワイズ法によって選択された独立変数は、タイプ1とタイプ2の分析ともに高木層の植被率と営巣可能木の密度であった。以下、高木層の植被率をV1とし、営巣可能木の密度をV2とする。
係数は、ロジスティック回帰モデルの係数を示す。有意確率は、0.05未満であれば予測に有意な独立変数と判断する。オッズ比は、独立変数が1単位増加することによるオッズの増加度合を表す。オッズ比の範囲は0〜∞であり、1を中心として1より大きくなるほど、独立変数がHSIに対して正の影響が強くなる。また、オッズ比が1より小さくなるほど、独立変数がHSIに対して負の影響が強くなる。オッズ比が1のときは、独立変数とHSIの間に関連はない。
タイプ1では、有意確率はV1が0.040、V2が0.000であり両者ともに予測に有意であった。オッズ比はV1が0.969、V2が5.918であり、HSIに対してV1が負、V2が正の影響を与える結果になった。
タイプ2では、有意確率はV1が0.014、V2が0.700であり、V1は予測に有意であり、V2は予測に有意でないという結果になった。一方で、オッズ比はV1が0.931、V2が480671.765となり、特にV2がHSIに極めて強い正の影響を与える結果になった。
HosmerとLemeshowの検定は、有意確率が0.05より大きいと求めたモデルはデータに適合していることを表す。タイプ1は0.103であり、タイプ2は0.837であった。よって、両者はともに求めたモデルはデータに適合していた。
NagelkerkeのR2は、モデルの寄与率を表す。値の範囲は0〜1であり、この値は高いほどモデルのあてはまりが良いとされている。タイプ1は0.416であり、タイプ2は0.656であった。よって、タイプ2がタイプ1よりもあてはまりが良かった。
Figure 2004272890
以上の分析の結果をもとにHSIモデルを作成した。
繁殖期におけるコゲラのHSIモデルの概要を図2に示した。本HSIモデルが適用できる植生タイプは、東京都内の広葉樹林である。生存必須条件を繁殖とした。ハビタット変数は、V1:高木層の植被率、V2:営巣可能木の密度とした。
タイプ1のHSIモデルは、下記の数5で表される。
Figure 2004272890
グラフを図3に示す。このモデルは、V2が高い時に、V1が低いほど高いHSIが得られる。
タイプ2のHSIモデルは、下記の数6で表される。
Figure 2004272890
グラフを図4に示す。このモデルは、V2が1本以上/100mの時に、V1が低いほど高いHSIが得られ、V2が0本/100mの時は、HSIは常に0.0となった。
HSIモデルの精度を比較するために正答率を表2に示した。HSIの値は、小数第3位を四捨五入して、小数第2位の値で分析を行った。HSIの値の範囲は、0≦HSI≦1とした。予測値は、0.0≦HSI<0.5を「営巣木なし」とし、0.5≦HSI≦1.0を「営巣木あり」と判別した。正答率は、予測値/観測値×100%で求めた。タイプ1とタイプ2はともに、「営巣木あり」は30%台で、「営巣木なし」の90%台よりも低い正答率となった。全体の正答率は、タイプ2がタイプ1よりも幾分高くなった。
Figure 2004272890
2つのHSIモデルについて考察する。タイプ1のHSIモデルには不自然な点がある。それは、V2が0本/100mであってもV1が0%の時に、HSIが0.2以上になってしまうことである。実際にはV2が1本以上/100m存在しなければ、コゲラは繁殖することはできない。タイプ1では分析の結果、有意確率はV1とV2ともに予測に有意であり、オッズ比もV1とV2ともにHSIに影響を与える結果となった。また、HosmerとLemeshowの検定の結果、求めたモデルはデータに適合していたことから、統計的な問題点はみられなかった。しかし、このモデルは、前述したように不自然な点が生じたことや、NagelkerkeのR2の結果、タイプ2よりもあてはまりが良くなかったことから、タイプ1は現実的なHSIモデルとして不適当であると考えられる。
タイプ2のHSIモデルは、V2が1本以上/100m存在し、V1が低い条件であれば、高いHSIが得られる。また、V2が0本/100mの時にHSIは常に0.0になるため、タイプ1のHSIモデルのような不自然さはない。つまり、このモデルは広葉樹林内において、V2が1本以上/100mの時に、V1が低いほどコゲラは繁殖しやすくなり、V2が0本/100mであれば、V1の条件に関わらずコゲラは繁殖できないことを示している。実際にコゲラは、比較的開けているところに存在する立枯木や枯枝を含む生木を営巣木として繁殖する。タイプ2では分析の結果、V2のオッズ比は極めて高いことから、V2がHSIに対して極めて強い正の影響を与えるという結果になった。これは、コゲラは営巣可能木が存在しなければ繁殖できないという特徴と一致する。また、HosmerとLemeshowの検定の結果、求めたモデルはデータに適合していたことや、NagelkerkeのR2の結果、タイプ1よりもあてはまりが良かったことから、タイプ2を用いてHSIモデルとすることは現実的に妥当であると考えられる。その一方で、V2の有意確率が予測に有意でないという統計的な問題が生じた。この原因は、「営巣木あり」のサンプル数が13と少なかったことによるものと考えられる。また、モデルの正答率が低かったことから、今後は、調査方法の改善や、さらにサンプルを追加して実際の環境アセスメントでの使用に耐えられるようにモデルの精度を高めていく必要がある。
また、本HSIモデルでは、10m×10mのコドラート内の分析であるため、コゲラのナワバリは考慮されていない。ナワバリを考慮するためには、GISデータを用いて広域的な視点を考慮したHSIモデルを構築する必要がある。今後は、GISデータを用いたHSIモデルやGISデータと現地でとってきたデータを併用したHSIモデルを構築することも課題である。
次に、HSIモデルの構築方法の特徴について考察する。HSIモデルに先進的に取り組んできたアメリカでは、HSIは0.0〜1.0の範囲で示すモデルが一般的である。これは、表現が簡明であり、一般市民による合意形成の手続きである環境アセスメントの評価方法として適しているためである。本発明のHSIモデルの構築方法は、HSIを0.0〜1.0の間で予測を立てるため、ロジスティック回帰分析は、アメリカで用いられているHSIモデルの特徴を生かすことができている。また、従属変数を「営巣木あり」と「営巣木なし」というように2値でデータをとるため、個体数密度のデータを必要としないので、希少種で個体数が少ない場合にも、HSIモデルが構築できるという利点がある。また、ステップワイズ法を用いているので、ハビタット変数は少数の有効な変数を選択できる。そのため、この方法で構築されたHSIモデルに基づいて生態系定量評価方法および環境保全措置方法を実施する際には、明確な目標設定や効率的な調査によって調査員および作業員の労働力を最小限にとどめることができ、コスト削減を可能とする。
次に、生態系定量評価方法について説明する。ここでは、架空の代償ミティゲーションの事例から、本発明の一実施例の繁殖期におけるコゲラのHSIモデルを用いて、HEPの予測評価を行う。事例はプロジェクトAとプロジェクトBを挙げてそれらを比較する。HSIモデルは数6を用いた。今回の分析に用いたV1とVのデータは実測値もしくは目標値を用いた。また、開発地と代替地ともに事業を実施する場合をケース1とし、事業を実施しない場合をケース2とする。
プロジェクトAについて説明する。プロジェクトAは、早急な開発事業が求められており、事業を20年間で完了しなければならない。開発地は、3.3haの広葉樹林であり、宅地造成により全ての広葉樹林が消失する。代替地は3.3haであり、開発地と同じ面積しか確保できなかった。現在は、工場跡地で裸地となっており、ここに広葉樹林を造成する。方法は、予め代替地を造成してから開発を行うこととする。
プロジェクトBについて説明する。プロジェクトBは、早急な開発事業が求められており、事業を20年間で完了しなければならない。開発地は、3.3haの広葉樹林であり、宅地造成により全ての広葉樹林が消失する。代替地は7.7haであり、開発地の2倍強の面積を確保できた。現在は、工場跡地で裸地となっており、ここに広葉樹林を造成する。方法は、開発地に生息する動植物等を代替地に移設し、更に、植林等を行うこととする。
HEP調査について説明する。プロジェクトAとプロジェクトBにおいてHEP調査を行う。調査項目は、数6より、V1:高木層の植被率とV:営巣可能木の密度とする。調査区は、開発地および代替地において、50m×50mのメッシュで区切り、メッシュの中央に10m×10mのコドラートを調査区とする。プロジェクトAの結果は、表3と表4に示し、プロジェクトBの結果は、表5と表6に示した。
HEP分析について説明する。プロジェクトAとプロジェクトBにおいてHEP分析を行う。最初に、HEP分析に用いる用語について説明する。HU(Habitat Unit/ハビタット・ユニット)とは、HEPの基本単位である。
累積的HUとは、開発地又は代替地における評価期間とHSIと面積を考慮した値である。累積的HUは数7で表される。
Figure 2004272890
但し、Y1:評価期間の最初の年、Y2:評価期間の最後の年、HSI1:評価期間の最初の年における開発地又は代替地のHSI、HSI2:評価期間の最後の年における開発地又は代替地のHSI、S1:評価期間の最初の年における開発地又は代替地の面積、S2:評価期間の最後の年における開発地又は代替地の面積、とする(日本生態系協会(2001):ヘップ(HEP)国際セミナーテキスト,113pp)。
ネット・ロスとは、開発地において失われるハビタットの価値の合計をいう。算出式は数8で表される。
Figure 2004272890
ネット・ゲインとは、代替地において新たに創出されるハビタットの価値の合計をいう。算出式は数9で表される。
Figure 2004272890
総合HUとは、環境保全措置によって得られる総合的なHUであり、代替地におけるネット・ゲインから開発地におけるネット・ロスを差し引いた値をいう。算出式は数10で表される。
Figure 2004272890
前記した数式を用いてプロジェクトA及びプロジェクトBにおいてHEP分析を行う。プロジェクトAにおける開発地のネット・ロスの結果は表3に示し、代替地のネット・ゲインの結果は表4に示した。
Figure 2004272890
Figure 2004272890
プロジェクトBにおける開発地のネット・ロスの結果は表5に示し、代替地のネット・ゲインの結果は表6に示した。
Figure 2004272890
Figure 2004272890
プロジェクトAは、開発地におけるネット・ロスが7.4HU、代替地におけるネット・ゲインが46.5HUという結果が得られた。これより、総合HUは、数10より、39.1HUとなった。一方、プロジェクトBは、開発地におけるネット・ロスが14.9HU、代替地におけるネット・ゲインが72.4HUという結果が得られた。これより、総合HUは、数10より、57.5HUとなった。以上の結果から、プロジェクトBの総合HUがプロジェクトAの総合HUよりも上回った。これより、プロジェクトBはプロジェクトAよりもハビタットの価値が高いことを考慮した環境保全措置を行うことができるという予測評価が得られたため、後記の環境保全措置方法では、プロジェクトBを採用することにした。
ここで挙げた生態系定量評価方法は一例であり、評価の目的に応じて適宜変更が可能である。
次に、環境保全措置方法について説明する。環境保全措置方法においては、前記した生態系定量評価方法によって得られたHEPの予測評価に基づいて行われる。
まず、計画を行う。計画は、前記の生態系定量評価方法によって得られたHEPの予測評価に基づいて行われる。開発地は、20年間で3.3haの広葉樹林を宅地造成する。これに伴い生態系への影響を考慮し、環境保全措置として、開発地に生息している大径木や根株の採取を行う。また、樹林から採取した種子を発芽させ、苗木の育成を行う。さらに、表土の中には埋土種子が含まれており、現地の植生を復元するためには重要な緑化資源となるため、表土の採取を行うこととする。代替地は、20年間で7.7haの工場跡地を広葉樹林に造成する。ここで、代替地の面積を開発地の面積の2倍強とした理由としては、生物のハビタットは広ければ広いほど有利となるからである。また、できる限りまとまった面積を確保することも重要である。前記の生態系定量評価方法によって得られたHEPの予測評価に基づき、V1とV2を指標として計画し、HEPの対象種となるコゲラが生息しやすい環境を整備する。環境保全措置として、開発地において採取した大径木や根株の移植、樹林で採取した種子を発芽させた苗木の植栽、表土の移設などを行う。
次に、設計を行う。設計は、前記の計画に基づいて環境保全措置を具体化するために行われる。開発地において、大径木や根株の採取、樹林から採取した種子を発芽させた苗木の育成、表土の採取を行うために必要な設計を行う。代替地においては、営巣可能木の樹種は、コナラ、クヌギ、エゴノキ、イヌシデ、ヤマザクラ、ウワミズザクラなどとする(利根川将充(2003):繁殖期におけるコゲラのHSIモデル:東京農工大学大学院修士論文,66pp)。営巣可能木のサイズの基準は、高さ:3.0m、胸高直径:13cm、幹から30cm部分の枯枝の直径は8cmとし、この値以上の条件を満たす立枯木または枯枝を含む生木を対象とする。繁殖期に利用したコゲラの営巣木の密度は、0.7本/haであった(利根川将充(2003):繁殖期におけるコゲラのHSIモデル:東京農工大学大学院修士論文,66pp)。この結果をもとに1haあたりの営巣可能木の植栽密度は、保険の意味を持たせて、4本以上/haとする。50m×50mのメッシュで区切り、それぞれのメッシュの中央に営巣可能木を設置する。更に、植栽された営巣可能木を中心に、10m×10mのコドラートを設置して、HEPの予測評価に基づき、V1を20%以下、V2を1本以上/100mの設計を行うこととする。それ以外の部分は、大径木、株根、苗木などを用いて、約1500本/haの密度で植栽を行うこととする。
次に、施工を行う。施工は、前記の設計に基づいて行われる。開発地では、ブルトーザーやジョベルカーやダンプカー等の重機を用いて、大径木、根径、表土を採取する。また、樹林の林床付近にネットを設置し、樹木の種子を採取し、その種子を発芽させて苗木を育成する。代替地において、ジョベルカーやダンプカーやバックホウ等の重機を用いて、開発地で採取した表土の盛土を行い、大径木や根径の移植を行う。また、開発地において採取した樹木の種子を発芽させて育成した苗木を植栽する。また、V1とV2の条件や営巣可能木の樹種やサイズや配置、植栽の密度等については前記の設計に基づいて行う。
次に、維持管理を行う。維持管理は、前記の施工に基づいて行われる。開発地において、20年間は、前記の施工に基づいて維持管理を行う。代替地において、20年間は、前記の施工に基づいて維持管理を行う。1haあたりの営巣可能木の密度が低い場合は、生木の樹皮を剥ぎ取り枯らす巻き枯らしや薬剤等を用いて営巣可能木として、1haあたりの営巣可能木の密度を高める。また、設置された営巣可能木を中心とした10m×10mのコドラート内においても、皆伐や下草刈りなどによって、V1を20%以下、V2を1本以上/100mを基準として管理を行う。また、モニタリングにより問題点が生じた場合は、計画、設計、施工の各段階へフィードバックされて、妥当性を検証し、修正を行う。
ここで挙げた環境保全措置方法は一例であり、目的に応じて適宜変更が可能である。
本発明のHSIモデルの構築方法によって構築されたHSIモデルを評価基準としたHEPによる生態系定量評価方法及びHEPの予測評価に基づいた環境保全措置方法の活用例について述べる。例えば、近年決定された、「新・生物多様性国家戦略」で謳われている自然再生事業への適用が可能である。また、環境アセスメントにおいて、自治体、コンサルタント、専門家、地域住民等の合意形成ツールを構築することができる。近年、沖縄地方のノグチゲラや東北地方のクマゲラなどの希少種の保護が求められているが、それらの種の生息地を保全する際に、HSIモデルをもとにして生息環境の質の選定や個体群の存続に必要な面積を算出し、環境保全措置を実施することができる。また、エコロジカルネットワークを計画する際に、対象種を設定し、その種のHSIモデルをもとに計画することもできる。さらに、市町村の生物などのシンボル的な種を対象種として、市町村の自然がその種にとってどのくらい生息しやすい環境なのかを環境マップに表示することもできる。環境マップを公開することで、市民が自分の街の環境に対して関心を持つきっかけをつくることも可能であるし、環境教育の題材としても応用できると考えられる。
近年、里山の保全が求められているが、保全の方法の一つとして、雑木林の評価種をコゲラとし、本HSIモデルをもとに保全のあり方について議論することもできるであろう。
以上詳述したように、本発明は、HSIモデルの構築方法、生態系定量評価方法及び環境保全措置方法に係るものであり、本発明により、HEPの評価基準となる科学的かつ客観的かつシンプルであるHSIモデルの構築方法を提供できる。HEPの対象種となりうる野生生物種のHSIモデルの構築が可能である。ハビタット変数が少数の有効な変数に選択されるため、HSIモデルの構築を容易にすることができる。本発明によって構築されたHSIモデルを評価基準としたHEPによる生態系定量評価方法及びHEPの予測評価に基づいた環境保全措置方法を実施する際には、明確な目標設定や効率的な調査によって、調査員及び作業員の労働力を最小限にとどめることができ、調査期間及び工事期間の短縮化やコスト削減を可能とする。本発明は、「新・生物多様性国家戦略」で謳われている自然再生事業への適用、環境アセスメントにおける合意形成ツールの構築、希少種の生息地の保全、エコロジカルネットワークの計画、環境マップの作成、環境教育の題材、里山の保全を可能とする。
本発明のフローチャートである。 繁殖期におけるコゲラのHSIモデルの概要である。 タイプ1のHSIモデルのグラフである。 タイプ2のHSIモデルのグラフである。

Claims (7)

  1. HSIモデルを構築する方法であって、(1)対象種を選定する、(2)生存必須条件を選定する、(3)調査項目を選定する、(4)生息指標調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(5)生息環境調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(6)生息指標調査と生息環境調査で得られたデータをもとにロジスティック回帰分析を行い、その結果によって得られる統計分析モデルを用いてHSIモデルを構築する、(7)上記(6)においてロジスティック回帰分析を行う際に、統計分析を用いてハビタット変数の選択を行う、ことを特徴とするHSIモデルの構築方法。
  2. 生息指標調査で得られたデータを従属変数とし、生息環境調査で得られたデータを独立変数としたロジスティック回帰分析を行うことを特徴とする請求項1に記載のHSIモデルの構築方法。
  3. ハビタット変数を選択する方法として、ステップワイズ法を用いることを特徴とする請求項1に記載のHSIモデルの構築方法。
  4. ロジスティック回帰分析の結果によって得られるロジスティック回帰モデルを用いてHSIモデルを構築することを特徴とする請求項1に記載のHSIモデルの構築方法。
  5. ロジスティック回帰分析の結果によって得られるロジスティック回帰モデルが、予測確率をHSIとした時、下記の数1
    Figure 2004272890
    (但し、B:係数、X:変数、B0:定数とする。また、実際のHSIの値の範囲は、0<HSI<1となるため、HSIの値を四捨五入して、0≦HSI≦1とする)で表されることを特徴する請求項4に記載のHSIモデルの構築方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のHSIモデルの構築方法を用いて生態系定量評価を行う方法であって、(1)対象種を選定する、(2)生存必須条件を選定する、(3)調査項目を選定する、(4)生息指標調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(5)生息環境調査を行い、所定の条件でそれらを測定する、(6)生息指標調査と生息環境調査で得られたデータをもとにロジスティック回帰分析を行い、その結果によって得られる統計分析モデルを用いてHSIモデルを構築する、(7)上記(6)においてロジスティック回帰分析を行う際に、統計分析を用いてハビタット変数の選択を行う、(8)HEP調査及びHEP分析の評価基準として、上記(1)〜(7)の過程によって構築されたHSIモデルを用いる、ことを特徴とする生態系定量評価方法。
  7. 環境保全措置方法において、請求項6に記載の生態系定量評価方法を用いて得られたHEPの予測評価に基づいて、計画、設計、施工、維持管理を行う、ことを特徴とする環境保全措置方法。

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