JP2004272674A - 予測システム及び予測方法 - Google Patents

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恒一 高山
Yusaku Yamamoto
有作 山本
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Abstract

【課題】過去の損失額と過去の気象、経済指標データに基づいて相関関係を求め、複数の要因を表す指標と損失額との相関関係を求める。
【解決手段】気象変動及び経済活動状況等の外部要因と事業リスクの相関関係を解析し、気象シミュレーションと経済変動シミュレーション等外部要因の予測シミュレーションから今後起こり得る状況を作り出し、売上げ等の事業成果との相関関係を当てはめることにより損益等の事業リスクを予測する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、気象変動及び経済活動状況等の外部要因と事業リスクの相関関係を解析し、損益等の事業リスクを予測する予測システム及び予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
市場には、天候により販売量が変化する商品があり、製造業や物流業では、天候により販売量が変化して損益がに影響が生じる。例えば、エアコン製造業においては、6月から7月の気温が低いと販売台数が減少して、利益が減少し、過剰在庫による在庫費増加による損失が発生する。このような損失額を予測して、事業リスクを最小化するために、従来は、図6(a)に示すように、一つの気象データ(例えば、降水日、降水量、最高気温)と損失とを軸とする2次元平面上に過去の損失額を図示して、最小二乗法等を用いて気象データと損失の相関関係を直線で近似して求めていた。この場合、気象データが定まると損失額は一意に決まるとの仮定が前提となっている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−222605号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、製造業や物流業における損失額は、複数の要因から生じることがある。例えば、エアコン製造業においける損失は、6月から7月の気温が低い日数だけでなく、この時期の湿度にも関係がある。また消費者の購入はその時点での消費者物価指数等の経済状況にも依存している。ところが、前述した従来の損失の予測方法では、一つの要因毎にデータと損失額の相関関係を求めているため、複数の要因と損失額との相関を求めることができない。
【0005】
従って、本発明の第一の目的は、過去の損失額と過去の気象データ、経済指標データに基づいて相関関係を求める、複数の要因を表すデータと損失額の相関関係を求めることである。
【0006】
また、本発明の第二の目的は、複数のデータとの相関関係に対して、これらの条件を同時に満たす予測して、損失額及びその損失額の確率を示すことである。従来の損失予測方法では、気象データと損失額との関係を直線で近似しており、この値を用いて計算すると丸め込みによる誤差が大きくなる。また、損失額と指標の関係を一意的に決めているため、最終的に求まった損失額及び損失額リスクは指標の振れ幅を示している。
【0007】
また、本発明の第三の目的は、丸め込み誤差を減らすこと、気象や経済動向の振れ幅ではなく、損失額の振れ幅を求めること、である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、計算手段と記憶手段とを備え、気象変動その他の外部要因に伴う事業リスクを予測する予測システムであって、前記記憶手段には、当該事業の過去の売上データを記録した売上データベースと、過去の気象データ(例えば、過去の気温、湿度、降水、降雪、日照時間等)を記録した気象データベースと、過去の外的要因データ(例えば、過去の平均株価、消費者物価指数等の経済指標データや、交通量、通信料等の社会的インフラに関するデータ)を記録した外部要因データベースと、を有し、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算して、前記気象データ及び前記外的要因データを変数とした売上額分布を算出する売上額分布算出手段と、将来の気象及び外的要因について複数の予測を生成するシミュレーション手段と、前記シミュレーション手段によって生成された気象又は外的要因の予測の各々について、複数の気象予測シナリオ及び外的要因予測シナリオを発生させるシナリオ発生手段と、前記シナリオの1つと条件が一致する相関データを抽出する相関データ抽出手段と、前記相関データの売上額分布に適合する値を生成して売上シナリオを生成する売上シナリオ生成手段と、前記売上シナリオから売上額を算出して、気象条件及び外的要因条件による売上額を生成する売上額生成手段と、を備える。
【0009】
【発明の作用及び効果】
本発明では、計算手段と記憶手段とを備え、気象変動その他の外部要因に伴う事業リスクを予測する予測システムであって、前記記憶手段には、当該事業の過去の売上データを記録した売上データベースと、過去の気象データを記録した気象データベースと、過去の外的要因データを記録した外部要因データベースと、を有し、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算して、前記気象データ及び前記外的要因データを変数とした売上額分布を算出する売上額分布算出手段と、将来の気象及び外的要因について複数の予測を生成するシミュレーション手段と、前記シミュレーション手段によって生成された気象又は外的要因の予測の各々について、複数の気象予測シナリオ及び外的要因予測シナリオを発生させるシナリオ発生手段と、前記シナリオの1つと条件が一致する相関データを抽出する相関データ抽出手段と、前記相関データの売上額分布に適合する値を生成して売上シナリオを生成する売上シナリオ生成手段と、前記売上シナリオから売上額を算出して、気象条件及び外的要因条件による売上額を生成する売上額生成手段と、を備えるので、気象現象、経済動向との相関が不明であった売上額に対する評価が可能となった。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態の予測システムの構成を示すブロック図である。
【0012】
本発明の実施の形態の予測システムは、相関関係分析及び予測シナリオを生成する計算機105と、相関指標を選択するための入力装置104と、演算結果を表示する画面108とで構成されており、計算機105には予測演算に使用するデータを記憶する記憶装置101〜103、106、107、109、110が接続されている。
【0013】
記憶装置は、過去の気象データを記録した気象データ記憶部101と、過去の経済指標データを記録した経済データ記憶部102と、過去の売上データを記録した売上記憶部103と、相関関係の解析結果を記録する相関記憶部106と、予測シナリオを記録する予測シナリオ記憶部107と、損失額を記録する損失記憶部109と、デリバティブによる補償後の損失額を記録する補償後損失記憶部110とからなる。なお、記憶部は、各々個別に設けなくとも、1つの記憶装置に各記憶部101〜103、106、107、109、110の機能を備えるように構成してもよい。逆に、各記憶部に記憶するデータ量が多いときは、一つの記憶部のデータを複数の記憶装置に分けて記録してもよい。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態の予測システムの処理の全体を示す機能ブロック図である。
【0015】
過去の気象データ201、過去の経済指標データ202及び過去の売上データ203を、気象データ記憶部101、経済データ記憶部102及び売上記憶部103から、各々読み出す。そして読み出したデータを用いて、気象データ及び経済指標データと売上額との相関関係を示す確率分布204を求める。つまり、複数の気象データ及び複数の経済指標データと売上額とを軸とする多次元空間に過去のデータをプロットして相関関係を求める。その際、気象データと経済指標データの中の1つの指標と売上額を比較し、同じ売上額に対して複数のデータが存在する場合は、図3(a)に示すように正規分布(確率分布)で近似する。
【0016】
また、同じ売上額に対して複数のデータが存在する場合に、図3(b)に示すように、多次元空間に複数のデータをプロットして、データが存在する領域を図形(例えば、多角形、楕円等の領域の境界を演算可能な図形)によって近似してもよい。このように複数のデータをその存在領域の境界が演算可能に近似することによって、売上シナリオを生成する段階で、積分によって累積演算をすることができ、シュミレーション回数の増加による計算量の増加を抑制することができる。
【0017】
そして、この確率分布やデータ存在領域の図形によって定められる相関関係205を、相関記憶部106に保存する。
【0018】
気象データには、気温、降水量、日照時間、大気状態など複数のデータが存在する。気象予測シミュレーションは、これらの気象データを用いて気温予測、降水予測、日照予測、大気シミュレーションなど複数のシミュレーション206を実行して、所定期間毎(例えば、数日単位や数時間単位)の気象データの変化を求め、気象予測のシナリオ207を生成する。大気シミュレーションのように気温と降水量が同時に決まるときは、そのままのデータを使うが、降水予測、気温予測のように気象要素が別々に定義されるときは、それぞれの結果を組み合わせて気象シナリオを作成する。
【0019】
また、経済指標データとして消費者物価指数、国民総生産、株価などの変化のシミュレーション208を実行して、所定期間毎(例えば、日単位や月間単位)の経済指標の変化を求め、経済予測のシナリオ209を生成する。
【0020】
また、気象データ、経済指標データの他に、社会的インフラの整備状況のシュミレーションを実行して予測シナリオを生成して、売上シナリオの生成時に使用してもよい。例えば、高速道路や幹線道路の交通量、貨物船や航空機の便数、通信量の変化をデータとして相関解析を行う。このようにすると、交通インフラの整備に基づく交通量・貨物輸送量の変化や、通信インフラの整備に基づく通信量の予測シナリオ及びこれに基づく売上シナリオを作成して、今後の損失額分布を求めることができ、流通業における損失額解析に適する予測をすることができる。
【0021】
そして、相関関係データ205を相関記憶部106から読み込み、計算機のメモリ上に書き込んで、気象予測シナリオ207及び経済予測シナリオ209を当てはめて、売上シナリオ211を作成する。
【0022】
相関関係が正規分布やデータ存在領域によって規定されてるときは、気象予測シナリオ207及び経済予測シナリオ209を当てはめた段階で、乱数発生部212で正規分布又はデータ存在領域に適した乱数を発生させ、発生した乱数値を相関関係に当てはめて、対応する売上を求め売上シナリオ211を作成する。
【0023】
そして、一定期間の売上シナリオ211を加算して、1つの売上シナリオに対する損失額計算213を行う。そして、各売上シナリオから求めた損失額を累積演算して、損失額分布214を求め、損失額データとして損失記憶部109に保存する(215)。
【0024】
損失額分布214に、デリバティブ補償条件216(デリバティブ対象条件、プレミアム料)を加味して、デリバティブ補償後の損失額計算217をしてから補償後の損失額分布218を表示する。また補償後の損失額分布218を補償後損失記憶部110に保存する。損失額分布214を記憶する損失額記憶部109と補償後の損失額分布218を記憶する補償後損失記憶部110は同じ記憶装置に設けてもよい。損失額分布214、補償後の損失額分布218、気象データ201、経済指標データ202、売上データ203、相関記録205を一つの記憶装置に記憶するように構成してもよい。
【0025】
図4は、過去の売上と過去の気象データ、経済データとの相関関係を求める処理(図2の204)のフローチャートである。
【0026】
初期設定(ステップ401)では、気象データ(気温、降水量、日照時間、大気状態等)、経済指標データ(消費者物価指数、国民総生産、株価等)、気象データと経済指標データとの記録時間間隔、及び、求める売上額が発生するのに必要な期間を操作者が指示する。但し、気象データ及び経済指標データは、本システムで求める気象シナリオ及び経済シナリオの中から選択する。また、初期設定401では、設定した期間の合計の売上額を求めるのか、記録毎の売上額を求めそれを合計するのか選択する。期間合計の売上額を求める場合、期間中の1つの気象データ毎に足し合わせて座標値を作成し、気象データ、経済指標データ、売上額を直行軸とする多次元座標値を配列データとして計算機のメモリ上に保存する。
【0027】
そして、気象データ及び経済指標データの記録間隔と売上げの算出間隔とが等しいか否かを判定する(ステップ402)。
【0028】
気象データ及び経済指標データの記録間隔と売上げの算出間隔とが等しくなければ、売上げの算出間隔と気象データ及び経済指標データの記録間隔とを一致させるため、気象データ及び経済指標データの記録間隔を売上げの算出間隔と等しくしたデータを作成する。この記録間隔の整合は、近接する前後一点のデータから線形補間により、売上げの算出間隔とが等しい気象データの値と経済指標データの値を求める(ステップ403)。
【0029】
そして、売上額の記録時間における過去の気象データ及び経済指標データを求める。求めた気象データ及び経済指標データと売上額とを直行座標とする多次元座標値の配列データとして計算機のメモリ上に保存する。保存に使用する配列のデータ形式は、気象データの座標、経済指標データの座標、売上額の座標、分布フラグ、分布の平均値及び分布の標準偏差を1つのデータ形式とする。計算機で配列をメモリ空間上に定義したとき、全ての配列に初期値として0を代入する(ステップ404)。
【0030】
そして、1種類の指標を表す座標を選び、売上額の値が同じで複数の座標値が存在する場合は、正規分布を仮定して、対象としている2次元空間の全ての座標値と売上値とから平均と標準偏差を求め、配列の分布平均値及び分布標準偏差に代入し、分布フラグに1を代入する。この操作を全ての気象データ、経済指標データに対して実行する(ステップ405)。
【0031】
そして、最後に求めた配列全体を記憶装置(相関記憶部106)に保存する(ステップ406)。
【0032】
図5は、シミュレーションによって生成したシナリオと相関関係分布と対応付け、損失額を求める処理(図2の206〜219)のフローチャートである。
【0033】
まず、相関関係を求めるときに使用した気象データ、経済指標データに関するシミュレーションを選択する(ステップ501)。この後で実行する気象、経済シミュレーションには多数の種類が用意されるが、データとして意味のあるシミュレーションのみを実行する。
【0034】
初期設定(ステップ502)では各気象シミュレーション、各経済シミュレーションの実行回数を決める。シミュレーションはそれぞれ1回ずつ実行するのではなく、複数回実行して、多数のシナリオを生成する。シナリオの数が多ければ、売上及び損失額の多くの可能性を考えた予測演算をすることができ、小さい確率で発生する額の大きいリスクを正確に予測することができる。ただし、シナリオ数が多くなると計算時間が長くなるため、このシュミレーション回数は操作者が設定する。
【0035】
また、初期設定(ステップ502)では投資額を設定する。投資額から売上額を減じた額が、後に計算される損失額となる。
【0036】
相関関係を求める際、図4のステップ401の初期設定で設定した期間の合計の売上額を求めるのか、売上の算出間隔毎の売上額を求め、その合計から設定期間の売上額を求めるのか選択している。この設定に合わせて図5のステップ502の初期設定では、設定期間合計の投資額を与えるのか、売上の算出間隔毎の投資額を与えるのかを選択する。
【0037】
そして、選択された気象シミュレーションを実行する(ステップ503)。気象シミュレーションの中には大気シミュレーションのようにすべての気象データを同時に求める方法があり、そのまま気象予測シナリオとしてシナリオ記憶部107に記録する(ステップ504)。また、気象シミュレーションの中には、気温予測シミュレーション、降水予測シミュレーション、日照時間予測シミュレーション、風速予測シミュレーション等のように、指標毎のシミュレーションがある。この場合は複数のシミュレーション結果を組み合わせ、様々な状態を導出した上で、気象予測シナリオとして計算機105のメモリに記録する(ステップ504)。
【0038】
そして、気象シュミレーションの実行(ステップ503)と同時に、選択された経済シミュレーションを実行する(ステップ505)。経済シミュレーションも指標毎に異なるシミュレーションとして実行される場合は、各シミュレーションオ結果を組み合わせ様々な状態を導出した上で、経済予測シナリオとして計算機105のメモリに記録する(ステップ506)。経済予測シナリオも気象予測シナリオと同様に多数生成する。
【0039】
そして、生成した気象予測シナリオと経済予測シナリオとを組み合わせて、全ての状態を示すシナリオを合成して(ステップ507)、シナリオ記憶部106に記録する(ステップ508)。気象予測シナリオと経済予測シナリオの数が多く、これらのデータ量が計算機105のメモリ容量を越える場合は、気象予測シナリオの記録(ステップ504)又は経済予測シナリオの記録(ステップ506)の時点で、記憶装置(シナリオ記憶部106)に一時的に記録してもよい。
【0040】
なお、気象予測シナリオと経済予測シナリオとの合成(ステップ507)の後、計算機105のメモリに一時的に記録された気象予測シナリオと経済予測シナリオは後の処理で用いられないので、メモリから消去する。
【0041】
図4のステップ406で求めた相関関係の解析結果配列を記憶装置から計算機のメモリ上にコピーする(ステップ509)。この後の計算では、解析結果配列の参照が多いため、記憶装置への参照を減らす(メモリへの参照を増やす)ことによって参照時間を減らし、計算の実行時間を短くする。ステップ508で記録したシナリオを1つ取り出し、対象とする気象データ及び経済指標データをメモリ上にある解析結果配列と比較して、対応する相関関係の確率分布が存在するか否かを探す(ステップ510)。
【0042】
解析結果配列に対応する相関関係の確率分布がない場合は、指標値で隣接する前後2点から線形近似して求める。また、その際の売上額を示す分布も正規分布を仮定し、正規分布の平均値と標準偏差は隣接する分布から線形近似で求める。
【0043】
シナリオに対応する解析結果配列が決まった時点で、解析結果配列の分布フラグが0の場合は、同配列の売上額座標を売上額値として採用する(ステップ511)。一方、解析結果配列の分布フラグが1の場合は、同配列の分布の平均値と標準偏差を引用して、正規分布(又は存在領域)に対応する乱数を発生させて、その乱数値に基づいて売上額を1つ決める(ステップ512)。そして、ステップ511及びステップ512の操作を繰り返してシナリオ内の各時点の売上額を求め、その合計演算をしてシナリオの合計売上額を求める(ステップ513)。
【0044】
そして、シナリオの数だけステップ510からステップ513までの操作を行ない、売上額の度数分布を求める。
【0045】
そして、初期設定(ステップ502)で入力した投資額から、売上額の度数分布を引き、損失額分布を求める(ステップ515)。求めた損失額分布をデータとして記憶装置(損失記憶部109)に記録する(ステップ516)。
【0046】
そして、外部からデリバティブ補償条件として、取引形態、気温や降水量などのデリバティブ対象条件、ストライク値、支払条件、最高支払額、プレミアム料を入力する(ステップ517)。そして、入力されたデリバティブ補償条件によって補償された後の損失額を計算し(ステップ518)、デリバティブ補償後の損失額分布を求める(ステップ519)
この補償後の損失額に基づいてデリバティブ補償条件を変更して、補償後の損失額が小さくなるデリバティブ補償条件再度入力して(ステップ517)、損実額を最小化するデリバティブ補償条件の最適解を求めてもよい。
【0047】
そして、求めた、補償後の損失額分布を、記憶装置(補償後損失記憶部110)に記録する(ステップ520)。
【0048】
売上額は複数の地点の気象、経済状態に依存している場合がある。このときは、各地点の気象データ、経済指標データを独立してデータを生成し、売上額の依存解析を行なう。気象シミュレーションには、一地点の気温予測や降水予測をするものがあるので、地点毎に気温予測シミュレーション、降水予測シミュレーションを実行し、その結果を合成して気象予測シナリオを作成する。
【0049】
地球温暖化のように気象現象には長期間に及ぶ変動がある。また、経済活動状況にもインフレーション等の変動がある。これらの要因を除き正味の売上額を求める。相関関係解析(図2のステップ204)の際、過去の気象データ201及び過去の経済データ202を引用する段階で、長期変動傾向を求め、現在時点の状況に合うように基準を修正する。これにより、現在の状況を基にする気象シミュレーション及び経済シミュレーションを実行するときには、シミュレーションの修正は不要となる。現在の時点を基にしていない予測シナリオを生成する場合は、相関関係解析の前に求めた長期変動傾向をシミュレーションに外挿して予測シナリオを生成する。
【0050】
また、計算機で並列計算が可能な場合は、図2の過去のデータからの売上額の相関関係演算(ステップ204)、気象予測シナリオ生成演算(ステップ206、ステップ207)、経済予測シナリオ生成演算(ステップ208、ステップ209)、売上シナリオ生成演算(ステップ211、ステップ212)、及び、損失額計算及びデリバティブ補償後の損失額計算(ステップ213、ステップ214、ステップ217、ステップ218)を、それぞれ別のプロセッサで実行する。また、多くのプロセッサを備えた並列計算機では、個々データに対する予測処理(ステップ206、ステップ208)を複数のプロセッサで並列して実行する。このようにシナリオ生成演算と損失額計算とを同時に実行することで、実行時間を短縮できる。また、相関関係の記録(ステップ205)とシナリオの記録(ステップ210)とを記憶装置に保存することなく、プロセッサ間のネットワークを通して、各プロセッサのメモリ上で処理するため、記憶装置への記録に要する時間を減少することができ、損失額解析処理の実行時間を短縮することができる。更に、記憶装置の容量が少なくても損失額解析処理を実行できる。
【0051】
このように本発明の実施の形態では、本発明では、計算手段としての計算機105と記憶手段としての記憶装置101〜103、106、107、109、110とを備え、気象変動その他の外部要因に伴う事業リスクを予測する予測システムであって、前記記憶手段には、当該事業の過去の売上データを記録した売上データベースと、過去の気象データを記録した気象データベースと、過去の外的要因データを記録した外部要因データベースと、を有し、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算して、前記気象データ及び前記外的要因データを変数とした売上額分布を算出する売上額分布算出手段と、将来の気象及び外的要因について複数の予測を生成するシミュレーション手段と、前記シミュレーション手段によって生成された気象又は外的要因の予測の各々について、複数の気象予測シナリオ及び外的要因予測シナリオを発生させるシナリオ発生手段と、前記シナリオの1つと条件が一致する相関データを抽出する相関データ抽出手段と、前記相関データの売上額分布に適合する値を生成して売上シナリオを生成する売上シナリオ生成手段と、前記売上シナリオから売上額を算出して、気象条件及び外的要因条件による売上額を生成する売上額生成手段と、を備えるので、気象現象、経済動向との相関が不明であった売上額に対する評価が可能となった。
【0052】
すなわち、過去の売上データ、過去の気象観測データ及び過去の経済指標データ等を記録した記憶装置101、102、103と計算機105とを接続し、損失額と気象データ、経済指標データ等を軸とする多次元空間に、過去の売上データから求めた損失額をプロットすることによって、複数の指標への同時依存関係を求めることができることから、これまで気象現象、経済動向との相関が不明であった損失に対して評価が可能となる。
【0053】
また、計算機105においてで気温予測、降水予測、経済動向予測といった複数の予測シミュレーションを実行し、今後起こり得る予測シナリオを作成し、このシナリオ毎に損失額を求めることができる。
【0054】
また、同一の指標値に対して複数の違った値の損失額が存在する場合、各ポイントから求めた平均値と標準偏差から正規分布を仮定する。すなわち、相関を分布として表しているため、小さい確率で発生する巨額損失を正確に評価できる。
【0055】
また、従来法では直線近似により丸め誤差が生じていたが、本手法では分布として扱うため、丸め誤差は無くなる。すなわち、従来の直線近似による丸め込み誤差を含む一意の相関解析を使って求めた損失額分布は、気象予測及び経済予測の振れ幅だけを表していたが、相関を分布として表して気象予測、経済予測を当てはめているため、求めた損失額は気象予測及び経済予測の振れ幅だけでなく、売上額の幅も含めた評価となる。
【0056】
また過去のデータに対して足りない部分に対して正規分布と仮定することによってデータを補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の予測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の予測システムの処理の全体を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の相関関係解析における近似の説明図である。
【図4】本発明の相関関係解析処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の損失額を求める処理のフローチャートである。
【図6】従来の相関関係解析における近似の説明図である。
【符号の説明】
101、102、103、106、107、109、110 記憶装置
104 入力装置
105 計算機
108 表示画面

Claims (19)

  1. 計算手段と記憶手段とを備え、気象変動その他の外部要因に伴う事業リスクを予測する予測システムであって、
    前記記憶手段には、
    当該事業の過去の売上データを記録した売上データベースと、
    過去の気象データを記録した気象データベースと、
    過去の外的要因データを記録した外部要因データベースと、を有し、
    前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算して、前記気象データ及び前記外的要因データを変数とした売上額分布を算出する売上額分布算出手段と、
    将来の気象及び外的要因について複数の予測を生成するシミュレーション手段と、
    前記シミュレーション手段によって生成された気象又は外的要因の予測の各々について、複数の気象予測シナリオ及び外的要因予測シナリオを発生させるシナリオ発生手段と、
    前記シナリオの1つと条件が一致する相関データを抽出する相関データ抽出手段と、
    前記相関データの売上額分布に適合する値を生成して売上シナリオを生成する売上シナリオ生成手段と、
    前記売上シナリオから売上額を算出して、気象条件及び外的要因条件による売上額を生成する売上額生成手段と、を備える予測システム。
  2. 前記売上額分布算出手段は、前記売上額の分布を正規分布によって近似して、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算する請求項1に記載の予測システム。
  3. 前記売上額分布算出手段は、前記売上額の分布の存在領域を演算可能な図形によって近似して、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算する請求項1に記載の予測システム。
  4. 乱数を発生する乱数発生手段を備え、
    前記売上げシナリオ生成手段は、前記乱数発生手段が生成した乱数によって相関データの売上額分布に適合する値を選択して、売上シナリオを生成する請求項1から3のいずれか一つに記載の予測システム。
  5. 前記売上額生成手段は、売上シナリオが変わる度に繰り返し計算して、売上額の合計を求め、投資額から売上額を引いて損失額分布を計算する損失額算出手段を備える請求項1から4のいずれか一つに記載の予測システム。
  6. デリバティブ補償条件を付与するデリバティブ補償条件付与手段と、
    前記損失算出手段は、前記損失額にデリバティブ補償を加味した損失額分布を計算し、
    前記デリバティブ補償を加味した損失額分布によって、デリバティブ補償条件を変更し、
    前記デリバティブ補償条件付与手段によって再度デリバティブ補償条件を付与し、前記損失算出手段によってデリバティブ補償を加味した損失額分布を計算して、損失額を最小とするデリバティブ補償条件の最適解を算出するデリバティブ補償条件算出手段を備える請求項1から5のいずれか一つに記載の予測システム。
  7. 前記外部要因データベースには、経済活動状況データが記録される請求項1から6のいずれか一つに記載の予測システム。
  8. 前記売上額分布算出手段は、
    前記気象データベース及び外的要因データベースのデータの長期的変動を解析し、該データを修正する長期変動修正手段を有し、
    前記長期的変動によって修正したデータを用いて売上額分布を算出する請求項1から7のいずれか一つに記載の予測システム。
  9. 前記シミュレーション手段は、前記気象データベース及び外的要因データベースのデータの長期的変動の効果を考慮し将来の気象及び外的要因について予測を生成する請求項1から7のいずれか一つに記載の予測システム。
  10. 計算手段と記憶手段を備える予測システムを用いて、気象変動その他の外部要因に伴う事業リスクを予測する予測方法であって、
    前記記憶手段に記憶された売上データベース、気象データベース及び外部要因データベースを用いて、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算して、前記気象データ及び前記外的要因データを変数とした売上額分布を算出し、
    将来の気象及び外的要因について複数の予測を生成し、
    前記生成された気象又は外的要因の予測の各々について、複数の気象予測シナリオ及び外的要因予測シナリオを発生させ、
    前記シナリオの1つと条件が一致する相関データを抽出し、
    前記相関データの売上額分布に適合する値を生成して売上シナリオを生成し、前記売上シナリオから売上額を算出して、気象条件及び外的要因条件による売上額を生成する予測方法。
  11. 前記売上額の分布を正規分布によって近似して、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算する請求項10に記載の予測方法。
  12. 前記売上額の分布の存在領域を演算可能な図形によって近似して、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算する請求項10に記載の予測方法。
  13. 乱数発生手段が生成した乱数によって相関データの売上額分布に適合する値を選択して、売上シナリオを生成する請求項10から12のいずれか一つに記載の予測方法。
  14. 売上シナリオが変わる度に繰り返し計算して、売上額の合計を求め、投資額から売上額を引いて損失額分布を計算する損失額算出手段を備える請求項10から13のいずれか一つに記載の予測方法。
  15. 前記損失額に、付与された条件に基づくデリバティブ補償を加味した損失額分布を計算し、
    前記デリバティブ補償を加味した損失額分布によって、デリバティブ補償条件を変更し、
    再度デリバティブ補償条件を付与し、前記損失算出手段によってデリバティブ補償を加味した損失額分布を計算して、損失額を最小とするデリバティブ補償条件の最適解を算出する請求項10から14のいずれか一つに記載の予測方法。
  16. 前記外部要因データとして、経済活動状況データが記録される請求項10から15のいずれか一つに記載の予測方法。
  17. 前記気象データベース及び外的要因データベースのデータの長期的変動を解析し、該データを修正し、前記長期的変動によって修正したデータを用いて売上額分布を算出する請求項10から16のいずれか一つに記載の予測方法。
  18. 前記気象データベース及び外的要因データベースのデータの長期的変動の効果を考慮し将来の気象及び外的要因について予測を生成する請求項10から16のいずれか一つに記載の予測方法。
  19. 気象変動その他の外部要因に伴う事業リスクの予測を、計算手段及び記憶手段に実行させるプログラムであって、
    前記記憶手段に記憶された売上データベース、気象データベース及び外部要因データベースを用いて、前記売上データ、前記気象データ及び前記外的要因データの相関を演算して、前記気象データ及び前記外的要因データを変数とした売上額分布を算出する手段と、
    将来の気象及び外的要因について複数の予測を生成する手段と、
    前記生成された気象又は外的要因の予測の各々について、複数の気象予測シナリオ及び外的要因予測シナリオを発生させる手段と、
    前記シナリオの1つと条件が一致する相関データを抽出する手段と、
    前記相関データの売上額分布に適合する値を生成して売上シナリオを生成する手段と、
    前記売上シナリオから売上額を算出して、気象条件及び外的要因条件による売上額を生成する手段として機能させるプログラム。
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