JP2004271313A - 飛散花粉の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】局所的な地域別に花粉の影響を評価し、もって中長期的な生活環境の改善にも役立つことのできる飛散花粉の評価方法を提供する。
【解決手段】関心領域である「ある市」に設置した各花粉センサ20で測定した1時間ごとの大気中の花粉濃度を入力し、この花粉濃度を地域ごとに時間積分して、特定の期間における飛散花粉の評価を行う。このため、花粉情報システムサーバ10のデータ収集手段111を介して入力した各花粉センサ20の花粉濃度から、データ補間部112によりデータを2次元的に補間して局所的な地域別の花粉濃度を求め、この局所的な地域別の花粉濃度を地域花粉積分量算出部113によりそれぞれ時間積分して地域花粉積分量を求める(地域花粉積分量=前日までの地域花粉積分量+当日の代表値)。このように求めた地域花粉積分量は、飛散花粉の評価を行う有益な指標とされる。
【選択図】 図1
【解決手段】関心領域である「ある市」に設置した各花粉センサ20で測定した1時間ごとの大気中の花粉濃度を入力し、この花粉濃度を地域ごとに時間積分して、特定の期間における飛散花粉の評価を行う。このため、花粉情報システムサーバ10のデータ収集手段111を介して入力した各花粉センサ20の花粉濃度から、データ補間部112によりデータを2次元的に補間して局所的な地域別の花粉濃度を求め、この局所的な地域別の花粉濃度を地域花粉積分量算出部113によりそれぞれ時間積分して地域花粉積分量を求める(地域花粉積分量=前日までの地域花粉積分量+当日の代表値)。このように求めた地域花粉積分量は、飛散花粉の評価を行う有益な指標とされる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地域性を評価することのできる飛散花粉の評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、スギやヒノキなどから春先に放出される花粉がアレルゲンとなって起こる花粉症が、社会的な問題にまで発展してきた。特に、関東や関西などの都市部では、花粉症患者は人口の2割程度存在すると見積もられている。日本では、スギ、ヒノキが花粉症の主原因の植物であるため、一般に花粉症や花粉情報といえば、スギ、ヒノキを意味することが多い。しかし、実際には、花粉症の原因となる植物は、スギやヒノキだけでなく、たとえば、イネ、ブタクサ、ハンノキ、スズメノテツポウ、シラカバ、ケヤキ、カモガヤ、オオアワガエリ、ヨモギ、アキノキリンソウ、カナムグラ、など10種類以上が知られている。欧米ではむしろブタクサが有名である。
【0003】
さて、このような花粉が、大気中に飛散し、移流、拡散する際における花粉濃度の表現としては、従来はダーラム法(非特許文献1)を用い、1日の間でプレパラート上に堆積した花粉の個数を測定して得られる花粉粒子付着数を、そのままの物理量(個/平方センチ)か、あるいはそれを4段階に指標化して、「非常に多い」、「多い」、「やや多い」、「少ない」といった表現で表していた。普通、テレビやインターネットなどのメディアで公開される花粉情報は、ほとんどすべて、このような評価方法によって行われていた。また、一部のインターネットのホームページでは(非特許文献2)、花粉粒子付着数を累計することで、シーズン中に飛散する花粉総量を見積もることも行われているが、それは散点的な地域や関東地方全域といったものである。このため、かかる見積もりは、例えば着目する植物種の生態的な年次動向の評価を行うようなものであり、地域性を比較して評価するといったものではなかった。
【0004】
一方、最近、パーティクルカウンタ(非特許文献3)の原理を用いて大気中に浮遊する花粉の量を直接測定する浮遊粒子測定法が現れてきた。ダーラム法では、前日の測定結果を元に当日の飛散量を予測するしか方法がなかったことに比べ、この方式を用いれば、当日の花粉飛散状態を、遅延時間が1時間程度の準リアルタイムで測定し、情報を公開することが可能になった。ちなみに、花粉の量(花粉濃度)は、ダーラム法と異なり、個/立方mの単位で表現される。
【0005】
また、着目する植物種の植生分布、花粉放出モデル、気象データ、大気移流拡散モデルを元にシミュレーション予測技術を用いて、地図上に2kmメッシュ程度の細かさでマッピングし、準リアルタイムに花粉の浮遊分布状態(花粉濃度分布状態)を推計することも行われている(非特許文献4)。
【0006】
【非特許文献1】
東京都衛生局発行、「花粉一口メモ」、平成14年版
【非特許文献2】
慈恵医大耳鼻科の花粉症のページ、「花粉飛散累積、品川」 検索日2003年3月5日 インターネット
<http://www.tky.3web.ne.jp/ ̄imaitoru/GIF%20fo%20HP/sugikafun.gif>
【非特許文献3】
M.hirano らNTT Review,13(6)巻,49ページ,2001年
【非特許文献4】
J.J. Delaunay ら、電気学会研究会資料,MSS−02−24,2002年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、花粉症はアレルギ反応であり、花粉に接すれば接するほど症状が進行すると予想されることから、中長期的な観点からは、住環境における花粉の量と期間との積分値が重要な指標となるものと考えられる。テンポラリな花粉の飛散状態は、常に、風向、風速、天候などの気象条件に大きく左右されるし、地域によって花粉濃度は大きく異なることから、局所的な地域別にそれを評価することが非常に有意義と考えられるが、これまでそのような評価は行われていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、局所的な地域別に花粉の影響を評価し、もって中長期的な生活環境の改善にも役立つことのできる飛散花粉の評価方法を提供することを主たる目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明者らは、花粉のアレルギ症状は、花粉に接する期間と接する量の積分値が重要な指標になることなどに着目し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、前記課題を解決した本発明の飛散花粉の評価方法(請求項1)は、大気中に飛散し、移流、拡散する花粉に関し、大気中の花粉濃度を、局所的な地域別に特定の期間で時間積分することにより、地域花粉積分量を算出することを特徴とする。
この構成によれば、発生源から発生して(風により)飛散し、(風により)移流、(風により)拡散する大気中の花粉の、時間(あるいは日)ごとの濃度を局所的な地域別に積分(加算)する。この積分により得られた地域花粉積分量は、後記する実施形態のように生活環境に関連した様々な指標とすることができ、飛散花粉の客観的な評価を行うことができる。
【0011】
また、本発明の飛散花粉の評価方法(請求項2)は、関心領域に設置した各測定ポイントで測定した所定時間ごとの大気中の花粉濃度を入力し、この花粉濃度を地域ごとに時間積分して、特定の期間における飛散花粉の評価を行うものである。そして、この飛散花粉の評価方法は、データ収集手段を介して入力した各測定ポイントにおける花粉濃度から、データ補間手段によりデータを2次元的に補間して局所的な地域別の花粉濃度を求めるステップ、前記局所的な地域別の花粉濃度を積分手段によりそれぞれ積分して地域花粉積分量を求めるステップ、を含むことを特徴とする。
この構成においては、請求項1の発明と同様に地域花粉積分量が算出される。なお、この構成においては、データ補間手段によりデータを補間するので、測定ポイントの数を減らすことが可能になる。
【0012】
また、本発明の飛散花粉の評価方法(請求項3)は、請求項1または請求項2の構成において、粘着性表面への単位面積当りの花粉粒子付着数、もしくは大気の単位体積当りの浮遊花粉粒子数で表され、特定の期間は、着目する植物種の花粉が飛び始める日(例えば花粉飛散開始日)から、任意の日まで、もしくは花粉が飛ばなくなる日まで(例えば花粉飛散終了日)とすることを特徴とする。
この構成によれば、評価の基準が明確化される。なお、花粉飛散開始日は、例えば「連続して2日以上、1個/平方cm以上の花粉が測定された最初の日」とすることができる。
【0013】
また、本発明の飛散花粉の評価方法(請求項4)は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項の構成において、着目する植物種の植生分布、花粉放出モデル、気象データ、大気移流拡散モデルを基にシミュレーション予測した花粉濃度により算出されることを特徴とする。
【0014】
なお、本発明は、関心領域における飛散花粉の評価を行うために、コンピュータに、前記関心領域に設置された各測定ポイントにおける所定時間ごとの大気中の花粉濃度を入力するステップ、入力した各測定ポイントにおける花粉濃度から、データ補間手段により2次元的に補間して局所的な地域別の花粉濃度を求めるステップ、前記局所的な地域別の花粉濃度を積分して前記地域花粉積分量を求めるステップ、を実行させるプログラムとすることができる。また、この構成のプログラムでは、前記各測定ポイントにおける所定時間ごとの大気中の花粉濃度を、コンピュータのシミュレーションで求めたものとすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態(第1から第3実施形態)を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する(1)第1実施形態は、着目する植物種について、花粉センサからの実測値から「ある市」における地域花粉積分量を算出する実施形態である。また、(2)第2実施形態は、着目する植物種について、花粉センサの実測値から関東地域における地域花粉積分量を算出する実施形態である。また、(3)第3実施形態は、シミュレーションの結果から地域花粉積分量を算出する実施形態である。
【0016】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態は、着目する植物種であるスギについて、スギの花粉濃度の実測値から地域別花粉積分量を算出する実施形態である。この第1実施形態で参照する図において、図1は、飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。
【0017】
(花粉情報システム)
図1において、符号10は花粉情報システムサーバであり、符号20は関心領域に設置した各測定ポイントに該当する各花粉センサである。
【0018】
花粉情報システム1の中核をなす花粉情報システムサーバ10は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)などからなる主制御手段11、ハードディスクなどからなる記憶手段12、通信ボードなどからなる通信手段13を含んで構成される。このうち、主制御手段11は、花粉情報システムサーバ10を統括的に制御する機能を有する。また、主制御手段11は、各花粉センサ20からのデータを該センサ20に対してリクエストすることで収集する機能を有するデータ収集部111、データを2次元的に補間する機能を有するデータ補間部(データ補間手段)112、補間したデータから地域花粉積分量を算出する機能を有する地域花粉積分量算出部(積分手段)113を含んで構成される。また、記憶手段12は、データ収集部111が収集したデータや地域花粉積分量などを記憶する機能を有する。また、通信手段13は、図示しないルータ(Router)を介して各花粉センサ20からデータを入力する機能を有する。
【0019】
花粉センサ20は、パーティクルカウンタを用いた浮遊花粉粒子測定法による大気中のスギの花粉濃度(個/立方m)を測定する機能を有している。なお、各花粉センサ20は、公衆電話網で花粉情報システムサーバ10に接続されており、該サーバ10が各花粉センサ20にデータのリクエストを行うことで、花粉濃度の1時間値を花粉情報システムサーバ10に送信するようになっている。
なお、パーティクルカウンタは、ダーラム法よりも短い時間間隔で花粉濃度を測定することが可能である。ちなみに、この第1実施形態では、花粉センサ20は、関心領域である「ある市」にA〜Jの10箇所設置してあるものとする。
【0020】
(地域別花粉積分量の算出)
以下、第1の実施形態の花粉情報システム1により地域別花粉積分量を算出する方法を、図1および表2を参照しつつ図2および図3に沿って説明する。図2は、第1実施形態の飛散花粉の評価方法における地域花粉積分量を算出するフローチャートである。
【0021】
まず、特定の期間、花粉濃度の定期的な多点測定を行う(S11)。即ち、ステップS11では、ある市(以下エリアという)において設定されたA〜Jの10箇所の測定点で、スギの花粉濃度を所定時間ごとに測定する。表1は、測定結果を示す表である。なお、表中の数値の単位は、個/立方m(1立方m当りの花粉の個数)である。ちなみに表1は、1日単位で表現されているが、前記のとおり花粉濃度の測定間隔(所定の間隔)が1時間であることから、1時間値を24回足し合わせて(積分して)1日の値としている。
【0022】
【表1】
【0023】
次に、2次元的な補間と地図化を行う(S12)。即ち、ステップS12では、24km×24kmのエリア(関心領域)を12×12の2kmメッシュに分割し、メッシュA〜Jの測定値は、それが所在するメッシュの値とし(つまり実測値とし)、エリア内の他のメッシュの値(代表値)を補間推定する(つまり2次元的に補間する)。補間に際しては、例えばスプライン補間を行う。ちなみに、汎用の数値解析ツールには、一般的にこのような補間機能が付属している。なお、ここでのメッシュは、請求項の「局所的な地域」に該当する。
【0024】
図3は、花粉濃度の2次元的な補間と地図化を模式的に示す図であるが、このうち図3(a)は、白地図を表示した地図レイヤを示している。また、図3(b)は、特定の日(3月7日)の花粉濃度を表示した花粉濃度レイヤを示している。また、図3(c)は、地域別花粉積分量を表示した地域別花粉積分量レイヤを示している。これらの各レイヤは、コンピュータ処理により重ね合わせることができる。
【0025】
次に、花粉濃度の各メッシュの値(地域の値、任意の区画の値)を時間(日)で積分し、地域花粉積分量を算出する(S13)。このステップS13での計算式は例えば次の式1になり、メッシュごとに値が積分される。
(式1);地域花粉積分量=前日までの地域花粉積分量+当日のメッシュの値
【0026】
なお、この例での当日のメッシュの値は、メッシュAからJについては測定値(実測値)であり、その他のメッシュについては、スプライン補間により2次元的に補間して推定したメッシュの値である。
【0027】
ステップS13が終了するとステップS11に移行し、ステップS11からステップS13までが繰り返して実行される。この繰り返しは、例えばスギ花粉飛散開始日からスギ花粉飛散終了日まで、つまり特定の期間、行われる。
【0028】
なお、図3(c)は、地域花粉積分量を図示している。例えば、図3(b)に示される特定の日の飛散分布は、風向、風速などの気象によって影響を受けるが、図3(c)の地域花粉積分量は、このエリアの統計的な気象風土を含んだ、花粉飛散の地域特性をより的確に示すものと考えられる。
【0029】
以上説明した第1実施形態によれば、花粉センサ20から収集した花粉濃度(実測値)から地域花粉積分量を確実に算出することができる。
【0030】
なお、メッシュの値は、評価対象となる全エリア(関心領域)内での実測、推計、補間、平均化などにより得られる花粉濃度の値である。ちなみに、数km間隔で関心領域の全域を網羅して花粉濃度の実測を行うことは、経済的や労力的に困難であるが、本実施形態では、少ない地点を適当に決め(花粉センサ20を設置し)、得られた花粉濃度の実測値を基に、データ補間部112が2次元的に補間することで、エリア全域の花粉濃度分布を推計することとしている。よって、実際に花粉センサ20を全ての局所的な地域(メッシュ)に設置する必要はない。もちろんこの記載は、本実施形態についてのものであり、本発明において、関心領域の全ての局所的な地域に花粉センサ20を設置する構成を排除するものではない。なお、メッシュデータ(メッシュの値)の方がデータとしての取り扱いが容易であるが、任意の区画に対して表現する場合には、メッシュデータを区画に対して按分する手法をとれば算出できる。
【0031】
また、本実施形態でいう地域とは、典型的には数kmメッシュ、あるいは市町村などの行政区画サイズなど、住民の住環境や生活エリアを代表するスケールを意味することとするが、更に細かいメッシュなどでもよい。
また、地域花粉積分量を、積分した日数(回数)で除して、つまり積分後の値を積分した回数で除して、1日当りの平均値や1時間当りの平均値で表示してもよい。
【0032】
また、花粉濃度の表現方法は、従来のダーラム法(粘着性表面への単位面積当たりの花粉粒子付着数)によるものであっても、浮遊粒子測定法(パーティクルカウンタ)によるものであっても、差し支えない。時間積分は、ダーラム法の測定値に対しては、測定値は1日当りの値になっているため、日単位で積分する。また、浮遊粒子測定法は、通常1時間単位で単位体積当たりの花粉濃度を測定することから、時間単位の積分が好ましい(もちろん日単位でもよい)。積分する期間は、着目する植物種が、着目する領域(関心領域)において、花粉を放出し始める日(いわゆる花粉飛散開始日)から始めて、シーズン中の任意の日までの累積、あるいは、花粉飛散終了日までとすることができる。得られた地域花粉積分量は、直感的な把握を容易にするため、適当な閾値を用いて数階調のレベルに指標化したりマップ化して、表すことが好ましい。
【0033】
ちなみに、従来において、例えばダーラム法で測定した花粉量を花粉シーズンで累積して、「今年関東地方は昨年よりも**%多かった」というような、総量評価は既にあったが、この場合、本実施形態に比べてかなり範囲が広く、漠然とした広いエリアについての比較である。
【0034】
なお、このように算出された地域花粉積分量は、次のように有益に使われる(飛散花粉の評価方法として活用することができる)。
(1) 即ち、地域花粉積分量は、花粉症の人が居住地を選択するときの有益な指標になる。例えば、花粉症の人が、地域花粉積分量が多い場所を避けて住居を選ぶといったことができるようになる。ちなみに、現在のように東京を2分割するような情報では、居住地の選択の指標にはならない。本実施形態のように細かいメッシュに分けることにより、花粉症の人が居住地を選択するときの重要な指標となる。
(2) 通常、地域によって花粉量(花粉濃度)が異なることから、場合によっては地域花粉積分量が地価を算定する際、或いは不動産鑑定を行う際の一つの算定要素となる。
(3) 不動産業者が顧客への不動産紹介の際に、生活環境に関する情報として顧客にこの地域花粉積分量を提供することができる。
(4) 地域花粉積分量は、医療機関が花粉症看者の動態調査を行う際の指標としたり、患者数の予想や治療薬の準備の指標としたりすることができる。
(5) ある地域の花粉(積算)量を低下させるには、どの植林地域に対して対策を行うと効果的なのかといった、行政サイドの意思決定の際における指標とすることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、着目する植物種であるスギについて、スギの花粉濃度の実測値から地域別花粉積分量を算出する実施形態である。この第2実施形態で参照する図において、図4は、飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。図5は、関東地方の地域花粉積分量をマップ化してWebページに掲載した図である。なお、第1実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0036】
図4において、符号30はWebサーバであり、符号40はWeb端末である。Webサーバ30には、Webブラウザで閲覧するコンテンツを提供するWWWサーバソフトがインストールしてある。また、Web端末40には、情報閲覧用のWebブラウザソフトがインストールしてある。この第2実施形態の花粉情報システム1Aにおいては、浮遊粒子測定法の測定器(花粉センサ20)を、例えば伊東、熊谷、水戸などに18台設置し、スギの花粉濃度を1時間毎に常時測定を行うシステムを構築してある。
【0037】
この第2実施形態での花粉情報システムサーバ10は、関東地方をメッシュサイズ2kmの100×100メッシュに分割し、第1実施形態と同様な手法で、花粉センサ20の設置ポイントの測定値をメッシュの値とする機能を有する。また、他のメッシュエリアは、第1実施形態と同様にスプライン補間により、2次元的な補間によって推定値とする機能を有する。また、この100×100のメッシュデータを1時間ごとに積算し、スギ花粉の飛散開始日から測定当日までの累積データ(地域花粉積分量)を算出する機能を有する。また、この算出した地域花粉積分量をマップ化する機能を有する。なお、このマップは、Webサーバ30により公開され、一般ユーザや契約ユーザのWeb端末40により閲覧される。
【0038】
図5は、関東地方の地域花粉積分量をマップ化しているが、このマップは、花粉シーズ当初から測定当日(x月x日)までを積分したものである。なお、このマップは、実際のものとは必ずしも一致しないものである。
【0039】
この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、少ない花粉センサ20の数で、確実に地域花粉積分量を算出することができる。また、地域花粉積分量を直感的に理解できるように視覚化してWeb(インターネット)上に公開することができる。なお、地域花粉積分量の意義などについては、第1実施形態と同じである。
【0040】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態は、着目する植物種であるスギについて、スギの花粉濃度をシミュレーションにより求め、そのシミュレーションの結果から地域花粉積分量を算出する実施形態である。
【0041】
より具体的には、第3実施形態は、関東地方およびその周囲の山岳地帯を含む広域エリアにおけるスギの植生分布のメッシュデータ、スギから1時間ごと(所定時間ごと)に放出される花粉飛散量を計算する花粉放出モデル、天候、気温、風速、風向などの気象データ、各メッシュから発生するスギ花粉の移流拡散を計算する大気移流拡散モデル、を含む花粉飛散分布予測シミュレータを用いて、関東地方を100×100の2kmメッシュで分割し、1時間毎のスギ花粉の飛散分布を計算する。計算に用いるパラメータは、計算結果を定期的に実測値と比較し、修正する。この各メッシュの1時間値(花粉濃度の1時間値)を、花粉飛散開始日から花粉飛散終了日まで累計することにより、地域花粉積分量のマップデータを得る。
【0042】
この第3実施形態で参照する図において、図6は、飛散花粉の評価方法に利用される花粉飛散分布予測シミュレータの構成を示す図である。
【0043】
図6に示すように、花粉飛散分布予測シミュレータ5は、データレイヤ51、モデルレイヤ52、センサレイヤ53、表示レイヤ54を含んで、単一あるいは複数のコンピュータ上に構成される。この花粉飛散分布予測シミュレータ5は、開花、花粉粒の放出、移流、拡散などの花粉伝搬に関与したすべての主要プロセスを含んでいる。
【0044】
ちなみに、本実施形態での花粉放出モデルは、下に示す参考文献の川島および高橋により提案されている標準放出モデル(標準花粉放出モデル)でもよいし、これを改良したJ.J.ドロネーの改良型(本願出願人による2003年2月24日特許出願)のモデルでもよい。なお、J.J.ドロネーの改良型花粉放出モデルは、花粉アベイラビリティ(花粉放出可能量)と花粉放出を別々にモデルしているので(つまり花粉生成と花粉放出の違いを明示しており)、従来の花粉放出モデルよりも、自然現象により近い状態での花粉粒放出量を予測でき、ひいては空中花粉量(花粉濃度)の予測をより自然現象に即したものにできる。
(参考文献) Kawashima, S., Y. Takahashi(1995). Modeling and simulation of mesoscale dispersion processes for airborne cedar pollen. Grana 34; 142−150
【0045】
説明を図6に戻す。花粉飛散分布予測シミュレータ5のデータレイヤ51は、スギの植生分布データ記憶部511、気象予報データ記憶部512、地形データ記憶部513を含んで構成され、メッシュごとの花粉濃度予測に使われるデータを記憶あるいは取得する機能を有している。例えば、気象予報データ記憶部512の気象予報データは、気象予報会社と契約して最新の情報を1時間ごとに取得している。
【0046】
モデルレイヤ52は、風フィールド推定部521、開花日・放出レート推定部522を含んで構成され、花粉放出量と拡散状況を推定する。風フィールド推定部521は、地形データと気象予報データに基づいて、未来時間の風速、風向、グリッド入り温度を予測などする機能を有する。ここでグリッド入り温度は、入力した気象予報データの測定ポイントが比較的粗いことから、もっと細かい、例えば2km×2kmのグリッド(メッシュ)ごとに温度を推定して求めたものである。次に、開花日・放出レート推定部522は、グリッド入り温度などに基づいてスギの雄花の開花日を予測する機能と、花粉の放出レート(単位時間当たりの花粉粒の放出量)を推定する機能を有する。なお、花粉の放出レートは、前記した花粉放出モデルに基づいて決定される。花粉拡散推定部523は、スギの植生分布データと花粉の放出レートに基づいて花粉の放出絶対値を予測する機能と、この放出絶対値と風フィールド推定部521で推定したデータに基づいて、時間依存移流・拡散方程式を解く機能を有する。
【0047】
センサレイヤ53は、花粉濃度推定部531とセンサデータ部532を含んで構成される。花粉濃度推定部531は、花粉拡散推定部523の推定結果に基づいて花粉量(花粉濃度)を空間的に或いは平面的に補間をする機能を有する。また、花粉濃度推定部531は、センサデータ(各測定ポイントにおける測定値)のデータによりモデルを修正する機能を有する。
【0048】
図8は、関東地方におけるスギの植生分布を示したマップである。マップの色が濃い部分がスギの植生分布の多い場所であり、色の薄い場所が植生分布の少ない場所である。ちなみに図8では、スギの植生分布を4レベルの分類インデックス(少ない、やや多い、多い、大変多い)として色分けして定義している。
【0049】
図7は、モデルの修正手順、つまり図6のセンサレイヤ53で行われる後処理スキームを示している。この図7では、実測値(Sensor)とモデル値(Model(t,t+1,…,t+24))との比(Corr(t))をまず算出している。そして、予測値(Forecast(t,t+1,…,t+24))は、モデル値に比を乗じることで算出している。なお、tは時間(現在時刻あるいは基準時刻)を示す。t+24は24時間後を示す。このセンサレイヤ53では、実測値によりモデルの修正がなされることで、花粉濃度の修正がなされる。
【0050】
図6の表示レイヤ54は、花粉濃度マップ作成部541を含んで構成される。この花粉濃度マップ作成部541は、修正された花粉濃度に基づいて、関心領域の花粉濃度マップ(花粉粒の飛散分布マップ)を作成する機能を有する。なお、花粉濃度マップ作成部541は、関心領域の地図データを記憶している。
【0051】
この花粉飛散分布予測シミュレータ5の動作を説明する。
まず、データレイヤ51のスギの植生分布データ記憶部511、気象予報データ記憶部512、地形データ記憶部513に予めデータを収集しておく。このうち、気象予報データ記憶部512には、随時最新の気象予報データを収集しておく。風フィールド推定部521では、気象予報データ記憶部512と地形データ記憶部513のデータに基づいて未来時間の風速、風向などを予測する。開花日・放出レート推定部522では、スギの雄花の開花日の予測を行うと共に、図6に示す放出モデルに基づいた放出レートを計算する。花粉拡散推定部523では、時間依存移流・拡散方程式を解いて花粉粒の拡散状況を計算する。センサレイヤ53では、各観測ポイントにおける空中花粉量の実測データをフィードバックして花粉濃度を修正する。そして、表示レイヤ54では、関心領域の花粉濃度マップを作成する。
【0052】
なお、花粉濃度マップを作成する際にメッシュごとの花粉濃度が算出されているので、つまり局所的な地域別に1時間ごとの花粉濃度のメッシュの値が算出されているので、第1実施形態と同様にして各メッシュの値を積分することで、地域花粉積分量が算出される。
【0053】
図9は、第3実施形態により地域花粉積分量を算出するフローチャートである。この図に示されるように、第3実施形態では、花粉飛散分布予測シミュレータ5による花粉濃度の定期的な2次元シミュレーション(S21)、各メッシュの値(地域の値、任意の区画の値)を時間で積分し、地域花粉積分量を算出する処理(S22)が、繰り返して実行される。
【0054】
この第3実施形態によれば、着目する植物種の植生分布、花粉放出モデル、気象データ、大気移流拡散モデルを基にシミュレーション予測した花粉濃度により地域花粉積分量が算出される。この際、算出されるモデルの修正を除いて、第1実施形態のような花粉センサ20(図1参照)を設置することなく、地域花粉積分量を算出することができる。また、この地域花粉積分量は、第1実施形態と同様に、様々な指標として活用することができる。つまり、飛散花粉の評価方法の指標として活用することができる。
【0055】
以上説明した本発明は、前記した実施形態に記載した事項に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、スギ花粉を例に説明したが、スギ花粉以外に適用してもよい。また、データを補間する実施形態を示したが、花粉センサを多数設置して、データの補間を行うことなく地域花粉積分量を算出することとしてもよい。また、第3実施形態において、花粉放出モデルおよび大気移流拡散モデルを用いたシミュレーションの手段・手法は、特定のものに限定されることはなく、様々なシミュレーションの手段・手法を本発明に適用することができる。また、各発明(実施形態における各機能)は、コンピュータのプログラムとして把握することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の飛散花粉の評価方法によれば、地域花粉積分量を用いることで、花粉症に関連する浮遊花粉(花粉濃度)の時間に影響されない地域性を評価することができる。なお、花粉症患者にとって、住生活環境の改善は切実な問題であるが、地域花粉積分量を指標とすることで、中長期的な住生活環境の改善に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態の飛散花粉の評価方法における地域花粉積分量を算出するフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態の花粉濃度の2次元的な補間と地図化を模式的に示す図である。このうち、(a)は白地図を表示した地図レイヤを、(b)は特定の日(3月7日)の花粉濃度を表示した花粉濃度レイヤを、(c)は地域別花粉積分量を表示した地域別花粉積分量レイヤを、それぞれ示している。
【図4】本発明の第2実施形態の飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態において、関東地方の地域花粉積分量をマップ化してWebページに掲載した図である。
【図6】本発明の第3実施形態の飛散花粉の評価方法に利用される花粉飛散分布予測シミュレータの構成を示す図である。
【図7】図6のセンサレイヤで行われる後処理スキームを示す図である。
【図8】スギの植生分布を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態の飛散花粉の評価方法における地域花粉積分量を算出するフローチャートである。
【符号の説明】
1、1A … 花粉情報システム
10 … 花粉情報システムサーバ
11 … 主制御手段
111… データ収集部(データ収集手段)
112… データ補間部(データ補間手段)
113… 地域花粉積分量算出部(積分手段)
20 … 花粉センサ(測定ポイント)
30 … Webサーバ
40 … Web端末
5 … 花粉飛散分布予測シミュレータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、地域性を評価することのできる飛散花粉の評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、スギやヒノキなどから春先に放出される花粉がアレルゲンとなって起こる花粉症が、社会的な問題にまで発展してきた。特に、関東や関西などの都市部では、花粉症患者は人口の2割程度存在すると見積もられている。日本では、スギ、ヒノキが花粉症の主原因の植物であるため、一般に花粉症や花粉情報といえば、スギ、ヒノキを意味することが多い。しかし、実際には、花粉症の原因となる植物は、スギやヒノキだけでなく、たとえば、イネ、ブタクサ、ハンノキ、スズメノテツポウ、シラカバ、ケヤキ、カモガヤ、オオアワガエリ、ヨモギ、アキノキリンソウ、カナムグラ、など10種類以上が知られている。欧米ではむしろブタクサが有名である。
【0003】
さて、このような花粉が、大気中に飛散し、移流、拡散する際における花粉濃度の表現としては、従来はダーラム法(非特許文献1)を用い、1日の間でプレパラート上に堆積した花粉の個数を測定して得られる花粉粒子付着数を、そのままの物理量(個/平方センチ)か、あるいはそれを4段階に指標化して、「非常に多い」、「多い」、「やや多い」、「少ない」といった表現で表していた。普通、テレビやインターネットなどのメディアで公開される花粉情報は、ほとんどすべて、このような評価方法によって行われていた。また、一部のインターネットのホームページでは(非特許文献2)、花粉粒子付着数を累計することで、シーズン中に飛散する花粉総量を見積もることも行われているが、それは散点的な地域や関東地方全域といったものである。このため、かかる見積もりは、例えば着目する植物種の生態的な年次動向の評価を行うようなものであり、地域性を比較して評価するといったものではなかった。
【0004】
一方、最近、パーティクルカウンタ(非特許文献3)の原理を用いて大気中に浮遊する花粉の量を直接測定する浮遊粒子測定法が現れてきた。ダーラム法では、前日の測定結果を元に当日の飛散量を予測するしか方法がなかったことに比べ、この方式を用いれば、当日の花粉飛散状態を、遅延時間が1時間程度の準リアルタイムで測定し、情報を公開することが可能になった。ちなみに、花粉の量(花粉濃度)は、ダーラム法と異なり、個/立方mの単位で表現される。
【0005】
また、着目する植物種の植生分布、花粉放出モデル、気象データ、大気移流拡散モデルを元にシミュレーション予測技術を用いて、地図上に2kmメッシュ程度の細かさでマッピングし、準リアルタイムに花粉の浮遊分布状態(花粉濃度分布状態)を推計することも行われている(非特許文献4)。
【0006】
【非特許文献1】
東京都衛生局発行、「花粉一口メモ」、平成14年版
【非特許文献2】
慈恵医大耳鼻科の花粉症のページ、「花粉飛散累積、品川」 検索日2003年3月5日 インターネット
<http://www.tky.3web.ne.jp/ ̄imaitoru/GIF%20fo%20HP/sugikafun.gif>
【非特許文献3】
M.hirano らNTT Review,13(6)巻,49ページ,2001年
【非特許文献4】
J.J. Delaunay ら、電気学会研究会資料,MSS−02−24,2002年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、花粉症はアレルギ反応であり、花粉に接すれば接するほど症状が進行すると予想されることから、中長期的な観点からは、住環境における花粉の量と期間との積分値が重要な指標となるものと考えられる。テンポラリな花粉の飛散状態は、常に、風向、風速、天候などの気象条件に大きく左右されるし、地域によって花粉濃度は大きく異なることから、局所的な地域別にそれを評価することが非常に有意義と考えられるが、これまでそのような評価は行われていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、局所的な地域別に花粉の影響を評価し、もって中長期的な生活環境の改善にも役立つことのできる飛散花粉の評価方法を提供することを主たる目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明者らは、花粉のアレルギ症状は、花粉に接する期間と接する量の積分値が重要な指標になることなどに着目し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、前記課題を解決した本発明の飛散花粉の評価方法(請求項1)は、大気中に飛散し、移流、拡散する花粉に関し、大気中の花粉濃度を、局所的な地域別に特定の期間で時間積分することにより、地域花粉積分量を算出することを特徴とする。
この構成によれば、発生源から発生して(風により)飛散し、(風により)移流、(風により)拡散する大気中の花粉の、時間(あるいは日)ごとの濃度を局所的な地域別に積分(加算)する。この積分により得られた地域花粉積分量は、後記する実施形態のように生活環境に関連した様々な指標とすることができ、飛散花粉の客観的な評価を行うことができる。
【0011】
また、本発明の飛散花粉の評価方法(請求項2)は、関心領域に設置した各測定ポイントで測定した所定時間ごとの大気中の花粉濃度を入力し、この花粉濃度を地域ごとに時間積分して、特定の期間における飛散花粉の評価を行うものである。そして、この飛散花粉の評価方法は、データ収集手段を介して入力した各測定ポイントにおける花粉濃度から、データ補間手段によりデータを2次元的に補間して局所的な地域別の花粉濃度を求めるステップ、前記局所的な地域別の花粉濃度を積分手段によりそれぞれ積分して地域花粉積分量を求めるステップ、を含むことを特徴とする。
この構成においては、請求項1の発明と同様に地域花粉積分量が算出される。なお、この構成においては、データ補間手段によりデータを補間するので、測定ポイントの数を減らすことが可能になる。
【0012】
また、本発明の飛散花粉の評価方法(請求項3)は、請求項1または請求項2の構成において、粘着性表面への単位面積当りの花粉粒子付着数、もしくは大気の単位体積当りの浮遊花粉粒子数で表され、特定の期間は、着目する植物種の花粉が飛び始める日(例えば花粉飛散開始日)から、任意の日まで、もしくは花粉が飛ばなくなる日まで(例えば花粉飛散終了日)とすることを特徴とする。
この構成によれば、評価の基準が明確化される。なお、花粉飛散開始日は、例えば「連続して2日以上、1個/平方cm以上の花粉が測定された最初の日」とすることができる。
【0013】
また、本発明の飛散花粉の評価方法(請求項4)は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項の構成において、着目する植物種の植生分布、花粉放出モデル、気象データ、大気移流拡散モデルを基にシミュレーション予測した花粉濃度により算出されることを特徴とする。
【0014】
なお、本発明は、関心領域における飛散花粉の評価を行うために、コンピュータに、前記関心領域に設置された各測定ポイントにおける所定時間ごとの大気中の花粉濃度を入力するステップ、入力した各測定ポイントにおける花粉濃度から、データ補間手段により2次元的に補間して局所的な地域別の花粉濃度を求めるステップ、前記局所的な地域別の花粉濃度を積分して前記地域花粉積分量を求めるステップ、を実行させるプログラムとすることができる。また、この構成のプログラムでは、前記各測定ポイントにおける所定時間ごとの大気中の花粉濃度を、コンピュータのシミュレーションで求めたものとすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態(第1から第3実施形態)を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する(1)第1実施形態は、着目する植物種について、花粉センサからの実測値から「ある市」における地域花粉積分量を算出する実施形態である。また、(2)第2実施形態は、着目する植物種について、花粉センサの実測値から関東地域における地域花粉積分量を算出する実施形態である。また、(3)第3実施形態は、シミュレーションの結果から地域花粉積分量を算出する実施形態である。
【0016】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態は、着目する植物種であるスギについて、スギの花粉濃度の実測値から地域別花粉積分量を算出する実施形態である。この第1実施形態で参照する図において、図1は、飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。
【0017】
(花粉情報システム)
図1において、符号10は花粉情報システムサーバであり、符号20は関心領域に設置した各測定ポイントに該当する各花粉センサである。
【0018】
花粉情報システム1の中核をなす花粉情報システムサーバ10は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)などからなる主制御手段11、ハードディスクなどからなる記憶手段12、通信ボードなどからなる通信手段13を含んで構成される。このうち、主制御手段11は、花粉情報システムサーバ10を統括的に制御する機能を有する。また、主制御手段11は、各花粉センサ20からのデータを該センサ20に対してリクエストすることで収集する機能を有するデータ収集部111、データを2次元的に補間する機能を有するデータ補間部(データ補間手段)112、補間したデータから地域花粉積分量を算出する機能を有する地域花粉積分量算出部(積分手段)113を含んで構成される。また、記憶手段12は、データ収集部111が収集したデータや地域花粉積分量などを記憶する機能を有する。また、通信手段13は、図示しないルータ(Router)を介して各花粉センサ20からデータを入力する機能を有する。
【0019】
花粉センサ20は、パーティクルカウンタを用いた浮遊花粉粒子測定法による大気中のスギの花粉濃度(個/立方m)を測定する機能を有している。なお、各花粉センサ20は、公衆電話網で花粉情報システムサーバ10に接続されており、該サーバ10が各花粉センサ20にデータのリクエストを行うことで、花粉濃度の1時間値を花粉情報システムサーバ10に送信するようになっている。
なお、パーティクルカウンタは、ダーラム法よりも短い時間間隔で花粉濃度を測定することが可能である。ちなみに、この第1実施形態では、花粉センサ20は、関心領域である「ある市」にA〜Jの10箇所設置してあるものとする。
【0020】
(地域別花粉積分量の算出)
以下、第1の実施形態の花粉情報システム1により地域別花粉積分量を算出する方法を、図1および表2を参照しつつ図2および図3に沿って説明する。図2は、第1実施形態の飛散花粉の評価方法における地域花粉積分量を算出するフローチャートである。
【0021】
まず、特定の期間、花粉濃度の定期的な多点測定を行う(S11)。即ち、ステップS11では、ある市(以下エリアという)において設定されたA〜Jの10箇所の測定点で、スギの花粉濃度を所定時間ごとに測定する。表1は、測定結果を示す表である。なお、表中の数値の単位は、個/立方m(1立方m当りの花粉の個数)である。ちなみに表1は、1日単位で表現されているが、前記のとおり花粉濃度の測定間隔(所定の間隔)が1時間であることから、1時間値を24回足し合わせて(積分して)1日の値としている。
【0022】
【表1】
【0023】
次に、2次元的な補間と地図化を行う(S12)。即ち、ステップS12では、24km×24kmのエリア(関心領域)を12×12の2kmメッシュに分割し、メッシュA〜Jの測定値は、それが所在するメッシュの値とし(つまり実測値とし)、エリア内の他のメッシュの値(代表値)を補間推定する(つまり2次元的に補間する)。補間に際しては、例えばスプライン補間を行う。ちなみに、汎用の数値解析ツールには、一般的にこのような補間機能が付属している。なお、ここでのメッシュは、請求項の「局所的な地域」に該当する。
【0024】
図3は、花粉濃度の2次元的な補間と地図化を模式的に示す図であるが、このうち図3(a)は、白地図を表示した地図レイヤを示している。また、図3(b)は、特定の日(3月7日)の花粉濃度を表示した花粉濃度レイヤを示している。また、図3(c)は、地域別花粉積分量を表示した地域別花粉積分量レイヤを示している。これらの各レイヤは、コンピュータ処理により重ね合わせることができる。
【0025】
次に、花粉濃度の各メッシュの値(地域の値、任意の区画の値)を時間(日)で積分し、地域花粉積分量を算出する(S13)。このステップS13での計算式は例えば次の式1になり、メッシュごとに値が積分される。
(式1);地域花粉積分量=前日までの地域花粉積分量+当日のメッシュの値
【0026】
なお、この例での当日のメッシュの値は、メッシュAからJについては測定値(実測値)であり、その他のメッシュについては、スプライン補間により2次元的に補間して推定したメッシュの値である。
【0027】
ステップS13が終了するとステップS11に移行し、ステップS11からステップS13までが繰り返して実行される。この繰り返しは、例えばスギ花粉飛散開始日からスギ花粉飛散終了日まで、つまり特定の期間、行われる。
【0028】
なお、図3(c)は、地域花粉積分量を図示している。例えば、図3(b)に示される特定の日の飛散分布は、風向、風速などの気象によって影響を受けるが、図3(c)の地域花粉積分量は、このエリアの統計的な気象風土を含んだ、花粉飛散の地域特性をより的確に示すものと考えられる。
【0029】
以上説明した第1実施形態によれば、花粉センサ20から収集した花粉濃度(実測値)から地域花粉積分量を確実に算出することができる。
【0030】
なお、メッシュの値は、評価対象となる全エリア(関心領域)内での実測、推計、補間、平均化などにより得られる花粉濃度の値である。ちなみに、数km間隔で関心領域の全域を網羅して花粉濃度の実測を行うことは、経済的や労力的に困難であるが、本実施形態では、少ない地点を適当に決め(花粉センサ20を設置し)、得られた花粉濃度の実測値を基に、データ補間部112が2次元的に補間することで、エリア全域の花粉濃度分布を推計することとしている。よって、実際に花粉センサ20を全ての局所的な地域(メッシュ)に設置する必要はない。もちろんこの記載は、本実施形態についてのものであり、本発明において、関心領域の全ての局所的な地域に花粉センサ20を設置する構成を排除するものではない。なお、メッシュデータ(メッシュの値)の方がデータとしての取り扱いが容易であるが、任意の区画に対して表現する場合には、メッシュデータを区画に対して按分する手法をとれば算出できる。
【0031】
また、本実施形態でいう地域とは、典型的には数kmメッシュ、あるいは市町村などの行政区画サイズなど、住民の住環境や生活エリアを代表するスケールを意味することとするが、更に細かいメッシュなどでもよい。
また、地域花粉積分量を、積分した日数(回数)で除して、つまり積分後の値を積分した回数で除して、1日当りの平均値や1時間当りの平均値で表示してもよい。
【0032】
また、花粉濃度の表現方法は、従来のダーラム法(粘着性表面への単位面積当たりの花粉粒子付着数)によるものであっても、浮遊粒子測定法(パーティクルカウンタ)によるものであっても、差し支えない。時間積分は、ダーラム法の測定値に対しては、測定値は1日当りの値になっているため、日単位で積分する。また、浮遊粒子測定法は、通常1時間単位で単位体積当たりの花粉濃度を測定することから、時間単位の積分が好ましい(もちろん日単位でもよい)。積分する期間は、着目する植物種が、着目する領域(関心領域)において、花粉を放出し始める日(いわゆる花粉飛散開始日)から始めて、シーズン中の任意の日までの累積、あるいは、花粉飛散終了日までとすることができる。得られた地域花粉積分量は、直感的な把握を容易にするため、適当な閾値を用いて数階調のレベルに指標化したりマップ化して、表すことが好ましい。
【0033】
ちなみに、従来において、例えばダーラム法で測定した花粉量を花粉シーズンで累積して、「今年関東地方は昨年よりも**%多かった」というような、総量評価は既にあったが、この場合、本実施形態に比べてかなり範囲が広く、漠然とした広いエリアについての比較である。
【0034】
なお、このように算出された地域花粉積分量は、次のように有益に使われる(飛散花粉の評価方法として活用することができる)。
(1) 即ち、地域花粉積分量は、花粉症の人が居住地を選択するときの有益な指標になる。例えば、花粉症の人が、地域花粉積分量が多い場所を避けて住居を選ぶといったことができるようになる。ちなみに、現在のように東京を2分割するような情報では、居住地の選択の指標にはならない。本実施形態のように細かいメッシュに分けることにより、花粉症の人が居住地を選択するときの重要な指標となる。
(2) 通常、地域によって花粉量(花粉濃度)が異なることから、場合によっては地域花粉積分量が地価を算定する際、或いは不動産鑑定を行う際の一つの算定要素となる。
(3) 不動産業者が顧客への不動産紹介の際に、生活環境に関する情報として顧客にこの地域花粉積分量を提供することができる。
(4) 地域花粉積分量は、医療機関が花粉症看者の動態調査を行う際の指標としたり、患者数の予想や治療薬の準備の指標としたりすることができる。
(5) ある地域の花粉(積算)量を低下させるには、どの植林地域に対して対策を行うと効果的なのかといった、行政サイドの意思決定の際における指標とすることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、着目する植物種であるスギについて、スギの花粉濃度の実測値から地域別花粉積分量を算出する実施形態である。この第2実施形態で参照する図において、図4は、飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。図5は、関東地方の地域花粉積分量をマップ化してWebページに掲載した図である。なお、第1実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0036】
図4において、符号30はWebサーバであり、符号40はWeb端末である。Webサーバ30には、Webブラウザで閲覧するコンテンツを提供するWWWサーバソフトがインストールしてある。また、Web端末40には、情報閲覧用のWebブラウザソフトがインストールしてある。この第2実施形態の花粉情報システム1Aにおいては、浮遊粒子測定法の測定器(花粉センサ20)を、例えば伊東、熊谷、水戸などに18台設置し、スギの花粉濃度を1時間毎に常時測定を行うシステムを構築してある。
【0037】
この第2実施形態での花粉情報システムサーバ10は、関東地方をメッシュサイズ2kmの100×100メッシュに分割し、第1実施形態と同様な手法で、花粉センサ20の設置ポイントの測定値をメッシュの値とする機能を有する。また、他のメッシュエリアは、第1実施形態と同様にスプライン補間により、2次元的な補間によって推定値とする機能を有する。また、この100×100のメッシュデータを1時間ごとに積算し、スギ花粉の飛散開始日から測定当日までの累積データ(地域花粉積分量)を算出する機能を有する。また、この算出した地域花粉積分量をマップ化する機能を有する。なお、このマップは、Webサーバ30により公開され、一般ユーザや契約ユーザのWeb端末40により閲覧される。
【0038】
図5は、関東地方の地域花粉積分量をマップ化しているが、このマップは、花粉シーズ当初から測定当日(x月x日)までを積分したものである。なお、このマップは、実際のものとは必ずしも一致しないものである。
【0039】
この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、少ない花粉センサ20の数で、確実に地域花粉積分量を算出することができる。また、地域花粉積分量を直感的に理解できるように視覚化してWeb(インターネット)上に公開することができる。なお、地域花粉積分量の意義などについては、第1実施形態と同じである。
【0040】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態は、着目する植物種であるスギについて、スギの花粉濃度をシミュレーションにより求め、そのシミュレーションの結果から地域花粉積分量を算出する実施形態である。
【0041】
より具体的には、第3実施形態は、関東地方およびその周囲の山岳地帯を含む広域エリアにおけるスギの植生分布のメッシュデータ、スギから1時間ごと(所定時間ごと)に放出される花粉飛散量を計算する花粉放出モデル、天候、気温、風速、風向などの気象データ、各メッシュから発生するスギ花粉の移流拡散を計算する大気移流拡散モデル、を含む花粉飛散分布予測シミュレータを用いて、関東地方を100×100の2kmメッシュで分割し、1時間毎のスギ花粉の飛散分布を計算する。計算に用いるパラメータは、計算結果を定期的に実測値と比較し、修正する。この各メッシュの1時間値(花粉濃度の1時間値)を、花粉飛散開始日から花粉飛散終了日まで累計することにより、地域花粉積分量のマップデータを得る。
【0042】
この第3実施形態で参照する図において、図6は、飛散花粉の評価方法に利用される花粉飛散分布予測シミュレータの構成を示す図である。
【0043】
図6に示すように、花粉飛散分布予測シミュレータ5は、データレイヤ51、モデルレイヤ52、センサレイヤ53、表示レイヤ54を含んで、単一あるいは複数のコンピュータ上に構成される。この花粉飛散分布予測シミュレータ5は、開花、花粉粒の放出、移流、拡散などの花粉伝搬に関与したすべての主要プロセスを含んでいる。
【0044】
ちなみに、本実施形態での花粉放出モデルは、下に示す参考文献の川島および高橋により提案されている標準放出モデル(標準花粉放出モデル)でもよいし、これを改良したJ.J.ドロネーの改良型(本願出願人による2003年2月24日特許出願)のモデルでもよい。なお、J.J.ドロネーの改良型花粉放出モデルは、花粉アベイラビリティ(花粉放出可能量)と花粉放出を別々にモデルしているので(つまり花粉生成と花粉放出の違いを明示しており)、従来の花粉放出モデルよりも、自然現象により近い状態での花粉粒放出量を予測でき、ひいては空中花粉量(花粉濃度)の予測をより自然現象に即したものにできる。
(参考文献) Kawashima, S., Y. Takahashi(1995). Modeling and simulation of mesoscale dispersion processes for airborne cedar pollen. Grana 34; 142−150
【0045】
説明を図6に戻す。花粉飛散分布予測シミュレータ5のデータレイヤ51は、スギの植生分布データ記憶部511、気象予報データ記憶部512、地形データ記憶部513を含んで構成され、メッシュごとの花粉濃度予測に使われるデータを記憶あるいは取得する機能を有している。例えば、気象予報データ記憶部512の気象予報データは、気象予報会社と契約して最新の情報を1時間ごとに取得している。
【0046】
モデルレイヤ52は、風フィールド推定部521、開花日・放出レート推定部522を含んで構成され、花粉放出量と拡散状況を推定する。風フィールド推定部521は、地形データと気象予報データに基づいて、未来時間の風速、風向、グリッド入り温度を予測などする機能を有する。ここでグリッド入り温度は、入力した気象予報データの測定ポイントが比較的粗いことから、もっと細かい、例えば2km×2kmのグリッド(メッシュ)ごとに温度を推定して求めたものである。次に、開花日・放出レート推定部522は、グリッド入り温度などに基づいてスギの雄花の開花日を予測する機能と、花粉の放出レート(単位時間当たりの花粉粒の放出量)を推定する機能を有する。なお、花粉の放出レートは、前記した花粉放出モデルに基づいて決定される。花粉拡散推定部523は、スギの植生分布データと花粉の放出レートに基づいて花粉の放出絶対値を予測する機能と、この放出絶対値と風フィールド推定部521で推定したデータに基づいて、時間依存移流・拡散方程式を解く機能を有する。
【0047】
センサレイヤ53は、花粉濃度推定部531とセンサデータ部532を含んで構成される。花粉濃度推定部531は、花粉拡散推定部523の推定結果に基づいて花粉量(花粉濃度)を空間的に或いは平面的に補間をする機能を有する。また、花粉濃度推定部531は、センサデータ(各測定ポイントにおける測定値)のデータによりモデルを修正する機能を有する。
【0048】
図8は、関東地方におけるスギの植生分布を示したマップである。マップの色が濃い部分がスギの植生分布の多い場所であり、色の薄い場所が植生分布の少ない場所である。ちなみに図8では、スギの植生分布を4レベルの分類インデックス(少ない、やや多い、多い、大変多い)として色分けして定義している。
【0049】
図7は、モデルの修正手順、つまり図6のセンサレイヤ53で行われる後処理スキームを示している。この図7では、実測値(Sensor)とモデル値(Model(t,t+1,…,t+24))との比(Corr(t))をまず算出している。そして、予測値(Forecast(t,t+1,…,t+24))は、モデル値に比を乗じることで算出している。なお、tは時間(現在時刻あるいは基準時刻)を示す。t+24は24時間後を示す。このセンサレイヤ53では、実測値によりモデルの修正がなされることで、花粉濃度の修正がなされる。
【0050】
図6の表示レイヤ54は、花粉濃度マップ作成部541を含んで構成される。この花粉濃度マップ作成部541は、修正された花粉濃度に基づいて、関心領域の花粉濃度マップ(花粉粒の飛散分布マップ)を作成する機能を有する。なお、花粉濃度マップ作成部541は、関心領域の地図データを記憶している。
【0051】
この花粉飛散分布予測シミュレータ5の動作を説明する。
まず、データレイヤ51のスギの植生分布データ記憶部511、気象予報データ記憶部512、地形データ記憶部513に予めデータを収集しておく。このうち、気象予報データ記憶部512には、随時最新の気象予報データを収集しておく。風フィールド推定部521では、気象予報データ記憶部512と地形データ記憶部513のデータに基づいて未来時間の風速、風向などを予測する。開花日・放出レート推定部522では、スギの雄花の開花日の予測を行うと共に、図6に示す放出モデルに基づいた放出レートを計算する。花粉拡散推定部523では、時間依存移流・拡散方程式を解いて花粉粒の拡散状況を計算する。センサレイヤ53では、各観測ポイントにおける空中花粉量の実測データをフィードバックして花粉濃度を修正する。そして、表示レイヤ54では、関心領域の花粉濃度マップを作成する。
【0052】
なお、花粉濃度マップを作成する際にメッシュごとの花粉濃度が算出されているので、つまり局所的な地域別に1時間ごとの花粉濃度のメッシュの値が算出されているので、第1実施形態と同様にして各メッシュの値を積分することで、地域花粉積分量が算出される。
【0053】
図9は、第3実施形態により地域花粉積分量を算出するフローチャートである。この図に示されるように、第3実施形態では、花粉飛散分布予測シミュレータ5による花粉濃度の定期的な2次元シミュレーション(S21)、各メッシュの値(地域の値、任意の区画の値)を時間で積分し、地域花粉積分量を算出する処理(S22)が、繰り返して実行される。
【0054】
この第3実施形態によれば、着目する植物種の植生分布、花粉放出モデル、気象データ、大気移流拡散モデルを基にシミュレーション予測した花粉濃度により地域花粉積分量が算出される。この際、算出されるモデルの修正を除いて、第1実施形態のような花粉センサ20(図1参照)を設置することなく、地域花粉積分量を算出することができる。また、この地域花粉積分量は、第1実施形態と同様に、様々な指標として活用することができる。つまり、飛散花粉の評価方法の指標として活用することができる。
【0055】
以上説明した本発明は、前記した実施形態に記載した事項に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、スギ花粉を例に説明したが、スギ花粉以外に適用してもよい。また、データを補間する実施形態を示したが、花粉センサを多数設置して、データの補間を行うことなく地域花粉積分量を算出することとしてもよい。また、第3実施形態において、花粉放出モデルおよび大気移流拡散モデルを用いたシミュレーションの手段・手法は、特定のものに限定されることはなく、様々なシミュレーションの手段・手法を本発明に適用することができる。また、各発明(実施形態における各機能)は、コンピュータのプログラムとして把握することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の飛散花粉の評価方法によれば、地域花粉積分量を用いることで、花粉症に関連する浮遊花粉(花粉濃度)の時間に影響されない地域性を評価することができる。なお、花粉症患者にとって、住生活環境の改善は切実な問題であるが、地域花粉積分量を指標とすることで、中長期的な住生活環境の改善に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態の飛散花粉の評価方法における地域花粉積分量を算出するフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態の花粉濃度の2次元的な補間と地図化を模式的に示す図である。このうち、(a)は白地図を表示した地図レイヤを、(b)は特定の日(3月7日)の花粉濃度を表示した花粉濃度レイヤを、(c)は地域別花粉積分量を表示した地域別花粉積分量レイヤを、それぞれ示している。
【図4】本発明の第2実施形態の飛散花粉の評価方法に利用される花粉情報システムの構成を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態において、関東地方の地域花粉積分量をマップ化してWebページに掲載した図である。
【図6】本発明の第3実施形態の飛散花粉の評価方法に利用される花粉飛散分布予測シミュレータの構成を示す図である。
【図7】図6のセンサレイヤで行われる後処理スキームを示す図である。
【図8】スギの植生分布を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態の飛散花粉の評価方法における地域花粉積分量を算出するフローチャートである。
【符号の説明】
1、1A … 花粉情報システム
10 … 花粉情報システムサーバ
11 … 主制御手段
111… データ収集部(データ収集手段)
112… データ補間部(データ補間手段)
113… 地域花粉積分量算出部(積分手段)
20 … 花粉センサ(測定ポイント)
30 … Webサーバ
40 … Web端末
5 … 花粉飛散分布予測シミュレータ
Claims (4)
- 大気中に飛散し、移流、拡散する花粉に関し、大気中の花粉濃度を、局所的な地域別に特定の期間で時間積分することにより、地域花粉積分量を算出することを特徴とする飛散花粉の評価方法。
- 関心領域に設置した各測定ポイントで測定した所定時間ごとの大気中の花粉濃度を入力し、この花粉濃度を地域ごとに時間積分して、特定の期間における飛散花粉の評価を行う評価方法であって、
データ収集手段を介して入力した各測定ポイントにおける花粉濃度から、データ補間手段によりデータを2次元的に補間して局所的な地域別の花粉濃度を求めるステップ、
前記局所的な地域別の花粉濃度を積分手段によりそれぞれ積分して地域花粉積分量を求めるステップ、
を含むことを特徴とする飛散花粉の評価方法。 - 前記花粉濃度は、粘着性表面への単位面積当りの花粉粒子付着数、もしくは大気の単位体積当りの浮遊花粉粒子数で表され、前記特定の期間は、着目する植物種の花粉が飛び始める日から任意の日まで、もしくは花粉が飛ばなくなる日までとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飛散花粉の評価方法。
- 前記地域花粉積分量は、着目する植物種の植生分布、花粉放出モデル、気象データ、大気移流拡散モデルを基にシミュレーション予測した花粉濃度により算出されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の飛散花粉の評価方法。
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