JP2004256460A - イリジウム錯体および光学活性アミンの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】アミンから不斉水素化反応によって光学活性アミンを製造するに際して、高収率で高立体選択的に光学活性アミン化合物を生成させる触媒を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を、Yは有機酸残基を、Lはイリジウム原子に配位できる光学活性化合物を示す)
で表されるイリジウム錯体。
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を、Yは有機酸残基を、Lはイリジウム原子に配位できる光学活性化合物を示す)
で表されるイリジウム錯体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はイリジウム錯体およびイリジウム錯体を不斉水素化反応触媒として使用する光学活性アミン化合物の製造方法に関するものである。本発明は、特にイミン化合物をイリジウム錯体の存在下、不斉水素化することを特徴とする光学活性アミン化合物の新規製造方法に関するものである。さらに詳しくは、医薬品の合成中間体として有用な、光学活性アミン化合物の実用性に優れた新しい製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学活性なアミン化合物を合成する場合、天然由来のアミン化合物を用いるか、あるいはラセミ体のアミン化合物を合成し、光学活性なカルボン酸を用いて光学分割する方法などが常法であった。しかしながら、前者の方法は原料物質を入手する困難性などの点で、また、後者の場合はせっかく光学分割しても希望する化合物は光学分割する前に存在している量を越えることが出来ないという不都合さが残っていた。それらの点を解決するために、近年、イミン類の触媒的不斉水素化反応による合成法が盛んに研究されてきた。例えばロジウム錯体を用いる方法(例えば、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1684 (1991))や、ルテニウム錯体を用いる方法(例えば、Inorg. Chem. Acta, 222, 85(1994))などが知られている。ところが、使用するロジウム金属の価格が高いこと、またロジウム金属よりも比較的安価なルテニウム金属を用いた場合、調製されるルテニウム錯体がやや不安定であり、さらに生成されるアミンの光学純度もさほど高くはない、などの指摘がなされている。価格が比較的安いイリジウム金属を採用した錯体を用いる研究報告もあるが、高活性な触媒を得るために添加剤を必要とする(例えば、Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 558, 35 (1990)や、Chem. Lett., 955 (1995))。添加剤を用いないイリジウム錯体の研究報告として、J. Am. Chem. Soc., 9400, 112 (1990)があるが、生成するアミンの光学純度が低いという問題点があった。
【0003】
また、イリジウム−カルボキシラト錯体触媒をイミンの不斉水素化反応に用いると、添加剤を併用することなく高収率、高立体選択的に光学活性アミン化合物が得られることが報告されている(特開平11−335334、第51回錯体化学討論会講演要旨集, 327 (2a−A07) (2001.9.28〜31)、日本化学会第81春季年会講演予稿集I, 499 (1PB−059) (2002.3.26〜29)、モレキュラーキラリティー2002要旨集, 47 (PS−3) (2002.6.6))。しかしながら、これらの報告にはハロゲン配位子に塩素原子を用いた錯体が記載されているのみで、この錯体を用いても基質によっては低い触媒活性しか得られないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不斉合成反応、特にイミン類の不斉水素化反応の触媒として優れた性能(化学選択性、エナンチオ選択性、触媒活性)を有するイリジウム錯体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するイリジウム錯体が、不斉水素化反応に有効な触媒となることを見出した。また、本発明者らはこのイリジウム錯体が、イミン化合物の不斉水素化反応に、優れた触媒活性およびエナンチオ選択性をあるいはジアステレオ選択性を発揮することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0006】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は以下の各発明を包含する。
【0007】
(1) 下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を、Yは有機酸残基を、Lはイリジウム原子に配位できる光学活性化合物を示す)
で表されるイリジウム錯体、
(2) 有機酸残基がR1CO2、R2SO3又は(R3)2PO2
(R1は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を示し、二つのR3が結合して環を形成していてもよい)
で表わされることを特徴とする前記(1)記載のイリジウム錯体、
(3) イリジウム原子に配位できる光学活性化合物が二座配位性化合物であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のイリジウム錯体、
(4) 二座配位性化合物が軸不斉に基づく光学活性体であることを特徴とする前記(3)記載のイリジウム錯体、
(5) 下記一般式(2)
【化3】
(式中、R4及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。R5はR4と異なって、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。また、R4,R5及びR6の内の二つが結合して環を形成していてもよい)
で表されるイミン化合物を、下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、X、Y及びLは前記と同じ意味を示す)
で表されるイリジウム錯体存在下に不斉水素化することを特徴とする一般式(3)
【化4】
(式中、R4、R5及びR6は前記と同じ、*は不斉炭素を意味する)
で表される光学活性アミンの製造方法、
(6) 前記(1)記載のイリジウム錯体の光学活性アミンを製造するための使用、
(7) 前記(1)記載のイリジウム錯体の存在下にイミンを不斉水素化反応に付することを特徴とする光学活性アミンの製造方法、
に関する。
【0008】
以下、本発明のイリジウム錯体について説明する。
本発明のイリジウム錯体は、イリジウム原子に一つのハロゲン原子、水素原子および有機酸残基が配位したイリジウムの中性錯体である。
ここで、Xは臭素原子あるいはヨウ素原子を示す。
【0009】
有機酸残基とは、有機酸からプロトンとして水素原子が一つ除去された構造のものを表し、具体的にはカルボン酸残基(R1CO2)、スルホン酸残基(R2SO3)及びリン酸残基((R3)2PO2)の残基が挙げられる。
【0010】
カルボン酸残基であるR1CO2におけるR1としては、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基が挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基の置換基としては炭素数1〜4のアルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。具体的な置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。また、置換基を有してもよいフェニル基あるいはナフチル基において、その置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子などが挙げられる。
【0011】
スルホン酸残基であるR2SO3におけるR2としては、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、フェニル基、p−トリル基、トリフルオロメチル基などが例示される。
【0012】
リン酸残基である(R3)2PO2におけるR3としては、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を示し、更には二つのR3が結合して環を形成していてもよいものが挙げられる。具体的には、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。二つのR3が結合して形成してもよい環としては、(ビフェニル−2,2’−ジイル)ジオキシ基、(1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ジオキシ基などが挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基の置換基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子などが挙げられる。
【0013】
Lで表されるイリジウムに配位できる光学活性化合物としては、配位する原子として窒素原子又はリン原子を有するものが好ましい。さらに好ましくは二座配位性化合物であり、具体的には、光学活性ビスホスフィン類、光学活性ジアミン類、光学活性ビスオキサゾリン類が挙げられる。さらに光学活性ビスホスフィン類としては、軸不斉を有するものが好ましい。
【0014】
光学活性ビスホスフィン類としては,例えば本出願前公知の光学活性ビスホスフィン化合物が挙げられ、その一つとして一般式(4)
【化5】
(式中、R7及びR8は、同一又は異なっていてもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、パラ位及びメタ位が炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素数1〜6のアルコキシル基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)又はハロゲン原子(例えば塩素、臭素等)で置換されていてもよいフェニル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。具体的には2,2’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、BINAPという)、2,2’−ビス−(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、Tol−BINAPという)、2,2’−ビス−(ジ−m−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、DM−BINAPという)、2,2’−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cp−BINAP)、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cy−BINAP)等が挙げられる。
【0015】
また、光学活性ビスホスフィン類の一つとしては更に一般式(5)
【化6】
(式中、R9及びR10は、同一又は異なっていてもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、パラ位及びメタ位が上記した炭素数1〜6のアルキル基、上記した炭素数1〜6のアルコキシル基又は上記したハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示す)
で表されるビスホスフィン化合物を挙げることができる。具体的には、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル(以下、H8−BINAPという)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル等がある。
【0016】
さらに、光学活性ビスホスフィン類の一つとしては下記一般式(6)
【化7】
(式中、R11及びR12は、同一又は異なっていてもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、パラ位及びメタ位が上記した炭素数1〜6のアルキル基、上記した炭素数1〜6のアルコキシル基又は上記したハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示す。R13,R14,R15、R16,R17及びR18は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、または上記した炭素数1〜6のアルキル基あるいは上記した炭素数1〜6のアルコキシル基を示し、R13,R14及びR15の内の二つが結合して例えば下記するように酸素を環構成員としてもよい5〜6員環などの環を形成していてもよく、R16,R17及びR18の内の二つが結合して前記と同様の環を形成していてもよい。ただし、R15及びR16は水素原子になることはない。)
で表されるホスフィン化合物が挙げられる。
【0017】
具体的には、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、(4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)(DM−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)(DTBM−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)(Cy−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラ(トリフルオロメチル)−5,5’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,6−ジ(トリフルオロメチル)−4’,6’−ジメチル−5’−メトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジフェニルホスフィノ−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、1,11−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,7−ジヒドロベンゾ[c,e]オキセピン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’−テトラメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシ−1,1’−ビフェニルも用いることができる。
【0018】
さらに用いることのできる他の光学活性ビスホスフィン化合物としては、N,N−ジメチル−1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1−置換−3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス{(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ}エタン、1,2−ビス(2,5−2置換ホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−2置換ホスホラノ)エタン、1−(2,5−2置換ホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1−(2,5−2置換ホスホラノ)−2−(ジ(置換フェニル)ホスフィノ)ベンゼン、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等が挙げられる。もちろんこの発明に用いることのできるホスフィン配位子はこれらに何ら限定されるものではない。なお、前記式中の置換とは、置換可能な基で置換されていることを示すものである。置換基としては、上記したアルキル基、アルコキシ基、及びハロゲン原子以外に例えば水酸基、アミノ基、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジ置換アミノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基等も挙げられる。
【0019】
光学活性ジアミン化合物としては、下記一般式(7)
【化8】
(式中、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25及びR26は水素、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、ウレタン基又はスルホニル基等であり、R21、R22、R23及びR24はこれらが結合している炭素が不斉炭素になるように同じか又は異なる基であり、水素、アルキル基、単環又は多環の芳香族炭化水素基、飽和または不飽和炭化水素基等を示す。)
で表される光学活性ジアミン化合物が挙げられる。
飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分枝状又は環状の炭素数1〜6のアルキル基、不飽和炭化水素基としては、ビニル基、プロパルギル基、プロペニル基、ブチニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基もしくはアルキニル基、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
【0020】
具体的には、光学活性の1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘプタンジアミン、2,3−ジメチルヘプタンジアミン、1−メチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−ベンジル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジナフチルエチレンジアミンなどが挙げられる。
【0021】
光学活性ビスオキサゾリン類としては、下記一般式(8)
【化9】
(式中、R27、R28、R29及びR30はこれらが結合している炭素が不斉炭素になるように同じか又は異なる基であり、水素原子(但し、R27及びR28は同時に水素原子ではなく、R29及びR30は同時に水素原子ではない。)、上記したと同様の炭素数1〜6のアルキル基、上記したと同様の炭素数1〜6のアルキル基及び上記したと同様の炭素数1〜6のアルコキシ基及び上記したと同様のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、又は上記したと同様の炭素数1〜6のアルキル基及び上記したと同様の炭素数1〜6のアルコキシ基及び上記したと同様のハロゲン原子で置換されていてもよいベンジル基を表す。Aはフェニレン基、ビフェニレン基又はビナフチレン基を表し、ビフェニレン基及ビナフチレン基である場合は軸不斉構造を有してもよい。)
で表される光学活性ビスオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0022】
これらの光学活性化合物と錯体を形成するために用いることができるイリジウム化合物としては、例えばJ. Chem. Soc. (A), 3413 (1971)又はInorg. Chim. Acta., 420(1972)に記載のジ−μ−ブロモビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム([IrBr(cod)]2)、Z. Naturforsch. 41b, 76 (1986)に記載のジ−μ−ヨードビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム([IrI(cod)]2)等が挙げられる。
【0023】
本発明のイリジウム錯体は、これらのイリジウム化合物と上記光学活性化合物を反応させ、ついで有機酸と反応させることにより調製できる。光学活性化合物の量はイリジウム化合物のイリジウム原子に対してほぼ等モル量とすると好ましい結果を得ることができる。
【0024】
これらの反応は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒の具体例としてはトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を単独あるいは二種以上の混合溶媒を用いることが好ましい。
【0025】
上記有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ピバル酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、トルイル酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、(R)−あるいは(S)−リン酸水素1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル等のリン酸などが挙げられる。有機酸の使用量は、イリジウム原子に対してほぼ10等量程度までの範囲内とすることが好ましい。このようにして得た本発明のイリジウム錯体を不斉水素化触媒として用いると、高い触媒活性と高い光学純 度を有する化合物を得ることができる。
【0026】
以下、本発明の光学活性アミン化合物の製造法に関して説明する。
この本発明のイリジウム錯体は、特にイミン化合物の不斉水素化反応の触媒として有用である。本発明のイリジウム錯体を不斉水素化反応の触媒として使用する場合は、上記イリジウム錯体製造のための反応後に例えば濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、洗浄、再結晶などの精製法により錯体の純度を高めてから使用してもよいが、錯体を精製することなく不斉水素化反応触媒として使用してもよい。
【0027】
本発明の光学活性アミンの製造法の原料である、イミン化合物は水素化反応によって光学活性アミンを製造できるものならどのようなものでもよく、下記一般式(2)
【化10】
(式中、R4及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。R5はR4と異なって、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。また、R4,R5及びR6の内の二つが結合して環を形成していてもよい)
で表される化合物が好ましい。
【0028】
ここで、アルキル基としては炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐されたアルキル基が、アルケニル基としては炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐されたアルケニル基が好ましい。シクロアルキル基としては炭素数5〜7のシクロアルキル基が、シクロアルケニル基としては炭素数5〜7のシクロアルケニル基が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられ、アラルキル基としては炭素数1〜3のアルキル基にアリール基が置換されたものである。上記置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が好ましい。これらの基及びその置換基の例示は上記より明らかである。
【0029】
これらイミン化合物はカルボニル化合物とアミン化合物との脱水縮合反応により容易に生成される。上記カルボニル化合物としては芳香環を有するカルボニル化合物あるいは脂肪族炭化水素基を有するカルボニル化合物が挙げられる。芳香環を有するカルボニル化合物の具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、プチロフェノン、フェニル−2−プロパノン、1−インダノン、2−インダノン、1−テトラロン、2−テトラロン等が好ましく、それらカルボニル化合物とくに芳香環上には、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基が置換されていてもよい。
【0030】
脂肪族炭化水素基を有するカルボニル化合物の具体例としては、クロロアセトン、メトキシアセトン、アセトール、2−ヘキサノン、3−メチル−2−ブタノン等が好適である。また、上記アミン化合物としてはベンジルアミン、3,4−メトキシベンジルアミン、o−ニトロベンジルアミン、ジ(p−メトキシフェニル)メチルアミン、トリフェニルメチルアミン、p−メトキシフェニルジフェニルメチルアミン、5−ジベンゾスベリルアミン等が好適である。
【0031】
前記カルボニル化合物とアミン化合物との縮合反応により得られるイミン化合物としては,N−(α−メチルベンジリデン)ベンジルアミン、(α−メチル−3’−メトキシベンジリデン)ベンジルアミン、3,4−ジヒドロ−5−メチル−2H−ピロール、5−n−ブチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール、3,4−ジヒドロ−5−エチル−2H−ピロール、3,4−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ピロール、2−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン、2−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン等が挙げられる。
【0032】
次に不斉水素化方法について説明する。不斉水素化される基質である一般式(2)で表される上記イミン化合物を例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒やテトヒドロフラン、ジエチルエーテル、塩化メチレン、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルまたはこれらの混合溶媒などの不斉水素化反応を阻害しない溶媒に溶解し、基質に対して通常1/10〜1/5000、好ましくは約1/50〜1/1,000モルの触媒を加え、通常水素圧約10〜100kg/cm2、好ましくは約30〜70kg/cm2、通常温度約−20〜100℃、好ましくは約20〜80℃で通常約5〜30時間、好ましくは約10〜20時間水素化を行うと光学活性なアミン化合物が得られる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例中において下記の分析機器を用いた。
核磁気共鳴スペクトル; MERCURY300−C/H (VARIAN)
1H NMR (300.09 MHz)
31 P NMR (121.49 MHz)
融点; MP−500D (Yanako)
赤外吸収スペクトル; FT/IR−230 (JASCO Corp.)
ガスクロマトグラフィー(GLC); GC−14A (Shimadzu Corp.)
【0034】
〔実施例1〕
[IrBr(H)(OCOCH3){(S)−binap}]の合成
アルゴン雰囲気下、100mL枝付きナスフラスコに、[IrBr(cod)]2 73mg (0.096 mmol)、(S)−BINAP 121mg (0.194 mmol) を入れ、トルエン15mLに溶解し、室温で一時間撹拌した。反応液に酢酸56μL(0.97 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンから再結晶し、表題化合物(119 mg, 薄黄色固体)を得た。収率66%。
mp: >120℃ (dec.)
1H NMR (C6D6):δ; 6.34−8.25 (m, 32H), 1.59 (s, 3H), −25.19 (dd, J = 23, 19 Hz, 1H)
31P{1H} NMR (C6D6):δ; 1.28 (d, J = 17 Hz), −1.93 (d, J = 17 Hz)
IR (KBr) ; 2268 cm−1 (m, Ir−H伸縮)
【0035】
〔実施例2〕
[IrI(H)(OCOCH3){(S)−binap}]の合成
[IrBr(cod)]2の代わりに [IrI(cod)]2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、[IrI(cod)]2 102mg (0.119 mmol) (S)−BINAP 151mg (0.242 mmol)、酢酸69μL (1.2 mmol)から、表題化合物(183 mg, 薄黄色固体)を得た。収率80%。
mp: >105℃ (dec.)
1H NMR (C6D6):δ; 6.34−8.24 (m, 32H), 1.55 (s, 3H), −24.94 (dd, J = 23, 17 Hz, 1H)
31P{1H} NMR (C6D6):δ; −0.68 (d, J = 15 Hz), −1.54 (d, J = 15 Hz)
IR (KBr) ; 2270 cm−1 (m, Ir−H伸縮)
【0036】
〔実施例3〜4および比較例1〕
3,4−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ピロールの不斉水素化反応
アルゴン雰囲気下、100mL枝付きナスフラスコに、[IrX(H)(OAc){(S)−binap}](0.014 mmol) (Xはハロゲン原子を示す)、3,4−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ピロール 226mg(1.56 mmol)を入れ、トルエン2.9mLに溶解し、室温で一時間撹拌した。反応液をオートクレーブに移し、50℃、水素圧6MPaで18時間撹拌した。得られた結果を表1に示す。Acはアセチル基を示す。
<反応転化率の分析>
GLCにてキャピラリーカラムDB−1(J&W Scientific社製)を用いて測定した。
<光学純度の測定>
得られたアミンをトリフルオロアセトアミド化した後、GLCにてキャピラリーカラムChirasil−DEX CB(Chrompack社製)を用いて測定した。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明で規定するイリジウム錯体を触媒とすることによって、特に添加剤を併用することなく、高収率、高立体選択的に光学活性アミン化合物を得ることができる。これらの光学活性アミン化合物はいろいろな化合物の合成中間体として有用であり、とくに医薬品の合成中間体として有効である。
【発明の属する技術分野】
本発明はイリジウム錯体およびイリジウム錯体を不斉水素化反応触媒として使用する光学活性アミン化合物の製造方法に関するものである。本発明は、特にイミン化合物をイリジウム錯体の存在下、不斉水素化することを特徴とする光学活性アミン化合物の新規製造方法に関するものである。さらに詳しくは、医薬品の合成中間体として有用な、光学活性アミン化合物の実用性に優れた新しい製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学活性なアミン化合物を合成する場合、天然由来のアミン化合物を用いるか、あるいはラセミ体のアミン化合物を合成し、光学活性なカルボン酸を用いて光学分割する方法などが常法であった。しかしながら、前者の方法は原料物質を入手する困難性などの点で、また、後者の場合はせっかく光学分割しても希望する化合物は光学分割する前に存在している量を越えることが出来ないという不都合さが残っていた。それらの点を解決するために、近年、イミン類の触媒的不斉水素化反応による合成法が盛んに研究されてきた。例えばロジウム錯体を用いる方法(例えば、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1684 (1991))や、ルテニウム錯体を用いる方法(例えば、Inorg. Chem. Acta, 222, 85(1994))などが知られている。ところが、使用するロジウム金属の価格が高いこと、またロジウム金属よりも比較的安価なルテニウム金属を用いた場合、調製されるルテニウム錯体がやや不安定であり、さらに生成されるアミンの光学純度もさほど高くはない、などの指摘がなされている。価格が比較的安いイリジウム金属を採用した錯体を用いる研究報告もあるが、高活性な触媒を得るために添加剤を必要とする(例えば、Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 558, 35 (1990)や、Chem. Lett., 955 (1995))。添加剤を用いないイリジウム錯体の研究報告として、J. Am. Chem. Soc., 9400, 112 (1990)があるが、生成するアミンの光学純度が低いという問題点があった。
【0003】
また、イリジウム−カルボキシラト錯体触媒をイミンの不斉水素化反応に用いると、添加剤を併用することなく高収率、高立体選択的に光学活性アミン化合物が得られることが報告されている(特開平11−335334、第51回錯体化学討論会講演要旨集, 327 (2a−A07) (2001.9.28〜31)、日本化学会第81春季年会講演予稿集I, 499 (1PB−059) (2002.3.26〜29)、モレキュラーキラリティー2002要旨集, 47 (PS−3) (2002.6.6))。しかしながら、これらの報告にはハロゲン配位子に塩素原子を用いた錯体が記載されているのみで、この錯体を用いても基質によっては低い触媒活性しか得られないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不斉合成反応、特にイミン類の不斉水素化反応の触媒として優れた性能(化学選択性、エナンチオ選択性、触媒活性)を有するイリジウム錯体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するイリジウム錯体が、不斉水素化反応に有効な触媒となることを見出した。また、本発明者らはこのイリジウム錯体が、イミン化合物の不斉水素化反応に、優れた触媒活性およびエナンチオ選択性をあるいはジアステレオ選択性を発揮することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0006】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は以下の各発明を包含する。
【0007】
(1) 下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を、Yは有機酸残基を、Lはイリジウム原子に配位できる光学活性化合物を示す)
で表されるイリジウム錯体、
(2) 有機酸残基がR1CO2、R2SO3又は(R3)2PO2
(R1は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を示し、二つのR3が結合して環を形成していてもよい)
で表わされることを特徴とする前記(1)記載のイリジウム錯体、
(3) イリジウム原子に配位できる光学活性化合物が二座配位性化合物であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のイリジウム錯体、
(4) 二座配位性化合物が軸不斉に基づく光学活性体であることを特徴とする前記(3)記載のイリジウム錯体、
(5) 下記一般式(2)
【化3】
(式中、R4及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。R5はR4と異なって、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。また、R4,R5及びR6の内の二つが結合して環を形成していてもよい)
で表されるイミン化合物を、下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、X、Y及びLは前記と同じ意味を示す)
で表されるイリジウム錯体存在下に不斉水素化することを特徴とする一般式(3)
【化4】
(式中、R4、R5及びR6は前記と同じ、*は不斉炭素を意味する)
で表される光学活性アミンの製造方法、
(6) 前記(1)記載のイリジウム錯体の光学活性アミンを製造するための使用、
(7) 前記(1)記載のイリジウム錯体の存在下にイミンを不斉水素化反応に付することを特徴とする光学活性アミンの製造方法、
に関する。
【0008】
以下、本発明のイリジウム錯体について説明する。
本発明のイリジウム錯体は、イリジウム原子に一つのハロゲン原子、水素原子および有機酸残基が配位したイリジウムの中性錯体である。
ここで、Xは臭素原子あるいはヨウ素原子を示す。
【0009】
有機酸残基とは、有機酸からプロトンとして水素原子が一つ除去された構造のものを表し、具体的にはカルボン酸残基(R1CO2)、スルホン酸残基(R2SO3)及びリン酸残基((R3)2PO2)の残基が挙げられる。
【0010】
カルボン酸残基であるR1CO2におけるR1としては、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基が挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基の置換基としては炭素数1〜4のアルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。具体的な置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。また、置換基を有してもよいフェニル基あるいはナフチル基において、その置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子などが挙げられる。
【0011】
スルホン酸残基であるR2SO3におけるR2としては、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、フェニル基、p−トリル基、トリフルオロメチル基などが例示される。
【0012】
リン酸残基である(R3)2PO2におけるR3としては、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を示し、更には二つのR3が結合して環を形成していてもよいものが挙げられる。具体的には、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。二つのR3が結合して形成してもよい環としては、(ビフェニル−2,2’−ジイル)ジオキシ基、(1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ジオキシ基などが挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基の置換基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子などが挙げられる。
【0013】
Lで表されるイリジウムに配位できる光学活性化合物としては、配位する原子として窒素原子又はリン原子を有するものが好ましい。さらに好ましくは二座配位性化合物であり、具体的には、光学活性ビスホスフィン類、光学活性ジアミン類、光学活性ビスオキサゾリン類が挙げられる。さらに光学活性ビスホスフィン類としては、軸不斉を有するものが好ましい。
【0014】
光学活性ビスホスフィン類としては,例えば本出願前公知の光学活性ビスホスフィン化合物が挙げられ、その一つとして一般式(4)
【化5】
(式中、R7及びR8は、同一又は異なっていてもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、パラ位及びメタ位が炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素数1〜6のアルコキシル基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)又はハロゲン原子(例えば塩素、臭素等)で置換されていてもよいフェニル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。具体的には2,2’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、BINAPという)、2,2’−ビス−(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、Tol−BINAPという)、2,2’−ビス−(ジ−m−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、DM−BINAPという)、2,2’−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cp−BINAP)、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cy−BINAP)等が挙げられる。
【0015】
また、光学活性ビスホスフィン類の一つとしては更に一般式(5)
【化6】
(式中、R9及びR10は、同一又は異なっていてもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、パラ位及びメタ位が上記した炭素数1〜6のアルキル基、上記した炭素数1〜6のアルコキシル基又は上記したハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示す)
で表されるビスホスフィン化合物を挙げることができる。具体的には、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル(以下、H8−BINAPという)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル等がある。
【0016】
さらに、光学活性ビスホスフィン類の一つとしては下記一般式(6)
【化7】
(式中、R11及びR12は、同一又は異なっていてもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、パラ位及びメタ位が上記した炭素数1〜6のアルキル基、上記した炭素数1〜6のアルコキシル基又は上記したハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を示す。R13,R14,R15、R16,R17及びR18は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、または上記した炭素数1〜6のアルキル基あるいは上記した炭素数1〜6のアルコキシル基を示し、R13,R14及びR15の内の二つが結合して例えば下記するように酸素を環構成員としてもよい5〜6員環などの環を形成していてもよく、R16,R17及びR18の内の二つが結合して前記と同様の環を形成していてもよい。ただし、R15及びR16は水素原子になることはない。)
で表されるホスフィン化合物が挙げられる。
【0017】
具体的には、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、(4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)(DM−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)(DTBM−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)(Cy−SEGPHOS)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラ(トリフルオロメチル)−5,5’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,6−ジ(トリフルオロメチル)−4’,6’−ジメチル−5’−メトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジフェニルホスフィノ−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、1,11−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,7−ジヒドロベンゾ[c,e]オキセピン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’−テトラメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシ−1,1’−ビフェニルも用いることができる。
【0018】
さらに用いることのできる他の光学活性ビスホスフィン化合物としては、N,N−ジメチル−1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1−置換−3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス{(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ}エタン、1,2−ビス(2,5−2置換ホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−2置換ホスホラノ)エタン、1−(2,5−2置換ホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1−(2,5−2置換ホスホラノ)−2−(ジ(置換フェニル)ホスフィノ)ベンゼン、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等が挙げられる。もちろんこの発明に用いることのできるホスフィン配位子はこれらに何ら限定されるものではない。なお、前記式中の置換とは、置換可能な基で置換されていることを示すものである。置換基としては、上記したアルキル基、アルコキシ基、及びハロゲン原子以外に例えば水酸基、アミノ基、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジ置換アミノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基等も挙げられる。
【0019】
光学活性ジアミン化合物としては、下記一般式(7)
【化8】
(式中、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25及びR26は水素、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、ウレタン基又はスルホニル基等であり、R21、R22、R23及びR24はこれらが結合している炭素が不斉炭素になるように同じか又は異なる基であり、水素、アルキル基、単環又は多環の芳香族炭化水素基、飽和または不飽和炭化水素基等を示す。)
で表される光学活性ジアミン化合物が挙げられる。
飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分枝状又は環状の炭素数1〜6のアルキル基、不飽和炭化水素基としては、ビニル基、プロパルギル基、プロペニル基、ブチニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基もしくはアルキニル基、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
【0020】
具体的には、光学活性の1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘプタンジアミン、2,3−ジメチルヘプタンジアミン、1−メチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−ベンジル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジナフチルエチレンジアミンなどが挙げられる。
【0021】
光学活性ビスオキサゾリン類としては、下記一般式(8)
【化9】
(式中、R27、R28、R29及びR30はこれらが結合している炭素が不斉炭素になるように同じか又は異なる基であり、水素原子(但し、R27及びR28は同時に水素原子ではなく、R29及びR30は同時に水素原子ではない。)、上記したと同様の炭素数1〜6のアルキル基、上記したと同様の炭素数1〜6のアルキル基及び上記したと同様の炭素数1〜6のアルコキシ基及び上記したと同様のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、又は上記したと同様の炭素数1〜6のアルキル基及び上記したと同様の炭素数1〜6のアルコキシ基及び上記したと同様のハロゲン原子で置換されていてもよいベンジル基を表す。Aはフェニレン基、ビフェニレン基又はビナフチレン基を表し、ビフェニレン基及ビナフチレン基である場合は軸不斉構造を有してもよい。)
で表される光学活性ビスオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0022】
これらの光学活性化合物と錯体を形成するために用いることができるイリジウム化合物としては、例えばJ. Chem. Soc. (A), 3413 (1971)又はInorg. Chim. Acta., 420(1972)に記載のジ−μ−ブロモビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム([IrBr(cod)]2)、Z. Naturforsch. 41b, 76 (1986)に記載のジ−μ−ヨードビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム([IrI(cod)]2)等が挙げられる。
【0023】
本発明のイリジウム錯体は、これらのイリジウム化合物と上記光学活性化合物を反応させ、ついで有機酸と反応させることにより調製できる。光学活性化合物の量はイリジウム化合物のイリジウム原子に対してほぼ等モル量とすると好ましい結果を得ることができる。
【0024】
これらの反応は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒の具体例としてはトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を単独あるいは二種以上の混合溶媒を用いることが好ましい。
【0025】
上記有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ピバル酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、トルイル酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、(R)−あるいは(S)−リン酸水素1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル等のリン酸などが挙げられる。有機酸の使用量は、イリジウム原子に対してほぼ10等量程度までの範囲内とすることが好ましい。このようにして得た本発明のイリジウム錯体を不斉水素化触媒として用いると、高い触媒活性と高い光学純 度を有する化合物を得ることができる。
【0026】
以下、本発明の光学活性アミン化合物の製造法に関して説明する。
この本発明のイリジウム錯体は、特にイミン化合物の不斉水素化反応の触媒として有用である。本発明のイリジウム錯体を不斉水素化反応の触媒として使用する場合は、上記イリジウム錯体製造のための反応後に例えば濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、洗浄、再結晶などの精製法により錯体の純度を高めてから使用してもよいが、錯体を精製することなく不斉水素化反応触媒として使用してもよい。
【0027】
本発明の光学活性アミンの製造法の原料である、イミン化合物は水素化反応によって光学活性アミンを製造できるものならどのようなものでもよく、下記一般式(2)
【化10】
(式中、R4及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。R5はR4と異なって、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。また、R4,R5及びR6の内の二つが結合して環を形成していてもよい)
で表される化合物が好ましい。
【0028】
ここで、アルキル基としては炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐されたアルキル基が、アルケニル基としては炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐されたアルケニル基が好ましい。シクロアルキル基としては炭素数5〜7のシクロアルキル基が、シクロアルケニル基としては炭素数5〜7のシクロアルケニル基が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられ、アラルキル基としては炭素数1〜3のアルキル基にアリール基が置換されたものである。上記置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が好ましい。これらの基及びその置換基の例示は上記より明らかである。
【0029】
これらイミン化合物はカルボニル化合物とアミン化合物との脱水縮合反応により容易に生成される。上記カルボニル化合物としては芳香環を有するカルボニル化合物あるいは脂肪族炭化水素基を有するカルボニル化合物が挙げられる。芳香環を有するカルボニル化合物の具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、プチロフェノン、フェニル−2−プロパノン、1−インダノン、2−インダノン、1−テトラロン、2−テトラロン等が好ましく、それらカルボニル化合物とくに芳香環上には、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基が置換されていてもよい。
【0030】
脂肪族炭化水素基を有するカルボニル化合物の具体例としては、クロロアセトン、メトキシアセトン、アセトール、2−ヘキサノン、3−メチル−2−ブタノン等が好適である。また、上記アミン化合物としてはベンジルアミン、3,4−メトキシベンジルアミン、o−ニトロベンジルアミン、ジ(p−メトキシフェニル)メチルアミン、トリフェニルメチルアミン、p−メトキシフェニルジフェニルメチルアミン、5−ジベンゾスベリルアミン等が好適である。
【0031】
前記カルボニル化合物とアミン化合物との縮合反応により得られるイミン化合物としては,N−(α−メチルベンジリデン)ベンジルアミン、(α−メチル−3’−メトキシベンジリデン)ベンジルアミン、3,4−ジヒドロ−5−メチル−2H−ピロール、5−n−ブチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール、3,4−ジヒドロ−5−エチル−2H−ピロール、3,4−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ピロール、2−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン、2−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン等が挙げられる。
【0032】
次に不斉水素化方法について説明する。不斉水素化される基質である一般式(2)で表される上記イミン化合物を例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒やテトヒドロフラン、ジエチルエーテル、塩化メチレン、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルまたはこれらの混合溶媒などの不斉水素化反応を阻害しない溶媒に溶解し、基質に対して通常1/10〜1/5000、好ましくは約1/50〜1/1,000モルの触媒を加え、通常水素圧約10〜100kg/cm2、好ましくは約30〜70kg/cm2、通常温度約−20〜100℃、好ましくは約20〜80℃で通常約5〜30時間、好ましくは約10〜20時間水素化を行うと光学活性なアミン化合物が得られる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例中において下記の分析機器を用いた。
核磁気共鳴スペクトル; MERCURY300−C/H (VARIAN)
1H NMR (300.09 MHz)
31 P NMR (121.49 MHz)
融点; MP−500D (Yanako)
赤外吸収スペクトル; FT/IR−230 (JASCO Corp.)
ガスクロマトグラフィー(GLC); GC−14A (Shimadzu Corp.)
【0034】
〔実施例1〕
[IrBr(H)(OCOCH3){(S)−binap}]の合成
アルゴン雰囲気下、100mL枝付きナスフラスコに、[IrBr(cod)]2 73mg (0.096 mmol)、(S)−BINAP 121mg (0.194 mmol) を入れ、トルエン15mLに溶解し、室温で一時間撹拌した。反応液に酢酸56μL(0.97 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンから再結晶し、表題化合物(119 mg, 薄黄色固体)を得た。収率66%。
mp: >120℃ (dec.)
1H NMR (C6D6):δ; 6.34−8.25 (m, 32H), 1.59 (s, 3H), −25.19 (dd, J = 23, 19 Hz, 1H)
31P{1H} NMR (C6D6):δ; 1.28 (d, J = 17 Hz), −1.93 (d, J = 17 Hz)
IR (KBr) ; 2268 cm−1 (m, Ir−H伸縮)
【0035】
〔実施例2〕
[IrI(H)(OCOCH3){(S)−binap}]の合成
[IrBr(cod)]2の代わりに [IrI(cod)]2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、[IrI(cod)]2 102mg (0.119 mmol) (S)−BINAP 151mg (0.242 mmol)、酢酸69μL (1.2 mmol)から、表題化合物(183 mg, 薄黄色固体)を得た。収率80%。
mp: >105℃ (dec.)
1H NMR (C6D6):δ; 6.34−8.24 (m, 32H), 1.55 (s, 3H), −24.94 (dd, J = 23, 17 Hz, 1H)
31P{1H} NMR (C6D6):δ; −0.68 (d, J = 15 Hz), −1.54 (d, J = 15 Hz)
IR (KBr) ; 2270 cm−1 (m, Ir−H伸縮)
【0036】
〔実施例3〜4および比較例1〕
3,4−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ピロールの不斉水素化反応
アルゴン雰囲気下、100mL枝付きナスフラスコに、[IrX(H)(OAc){(S)−binap}](0.014 mmol) (Xはハロゲン原子を示す)、3,4−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ピロール 226mg(1.56 mmol)を入れ、トルエン2.9mLに溶解し、室温で一時間撹拌した。反応液をオートクレーブに移し、50℃、水素圧6MPaで18時間撹拌した。得られた結果を表1に示す。Acはアセチル基を示す。
<反応転化率の分析>
GLCにてキャピラリーカラムDB−1(J&W Scientific社製)を用いて測定した。
<光学純度の測定>
得られたアミンをトリフルオロアセトアミド化した後、GLCにてキャピラリーカラムChirasil−DEX CB(Chrompack社製)を用いて測定した。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明で規定するイリジウム錯体を触媒とすることによって、特に添加剤を併用することなく、高収率、高立体選択的に光学活性アミン化合物を得ることができる。これらの光学活性アミン化合物はいろいろな化合物の合成中間体として有用であり、とくに医薬品の合成中間体として有効である。
Claims (7)
- 下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を、Yは有機酸残基を、Lはイリジウム原子に配位できる光学活性化合物を示す)
で表されるイリジウム錯体。 - 有機酸残基がR1CO2、R2SO3又は(R3)2PO2
(R1は水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基を示し、二つのR3が結合して環を形成していてもよい)
で表わされることを特徴とする請求項1記載のイリジウム錯体。 - イリジウム原子に配位できる光学活性化合物が二座配位性化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のイリジウム錯体。
- 二座配位性化合物が軸不斉に基づく光学活性体であることを特徴とする請求項3記載のイリジウム錯体。
- 下記一般式(2)
で表されるイミン化合物を、下記一般式(1)
[IrX(H)(Y)(L)] (1)
(式中、X、Y及びLは前記と同じ意味を示す)
で表されるイリジウム錯体存在下に不斉水素化することを特徴とする一般式(3)
で表される光学活性アミンの製造方法。 - 請求項1記載のイリジウム錯体の光学活性アミンを製造するための使用。
- 請求項1記載のイリジウム錯体の存在下にイミンを不斉水素化反応に付することを特徴とする光学活性アミンの製造方法。
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JP2012072129A (ja) * | 2010-08-30 | 2012-04-12 | Takasago Internatl Corp | イリジウム錯体及び光学活性化合物の製造方法 |
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