JP2004250574A - バイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法 - Google Patents

バイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法 Download PDF

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Satoshi Hirata
悟史 平田
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正晴 笹倉
Yoshitaka Kajihata
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Abstract

【課題】木質バイオマスなどのバイオマスを用いた固定床ガス化炉のシミュレーションにおいて、精度良くガス化炉内部状態を推算できるモデル化方法を提供する。
【解決手段】シミュレーションの解析精度を高めるために、固定床ガス化炉の内部を複数の反応層に細分化し、また、ガス化炉内部で発生した生成ガスを循環させる。これにより、炉内の状態を精度良く表すことが可能となり、炉内の温度分布、生成ガス組成分布等を詳細に把握することが可能となる。このようにして実験を最小限にして、精度良くガス化炉内部状態を推算できるシミュレーションモデルを確立した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロセスシミュレーションソフトを使用して、バイオマス用固定床ガス化炉の内部現象を精度良く推算することを可能とするモデル化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のガス化反応のシミュレーションでは、炉内で起こっている反応をひとまとめにして計算を行い、得られる生成ガスの組成、流量、温度が実験値とよく合致していることを説明しているものが多い。先行技術としては、石炭ガス化プロセスのシミュレーション及びガス化炉内の諸現象を数値流体解析により予測、評価する際に、石炭の熱分解によって生成する揮発分の成分を擬似成分CHxOyと仮定して石炭ガス化をモデリングするという方法があるが(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、この方法でも炉内で起こる反応をひとまとめにして計算を行っている。また、この技術は石炭ガス化に関するものであり、バイオマスを用いるものではない。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−356681号公報
【特許文献2】
特開2002−356682号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
バイオマスのうち、例えば、木質バイオマスは賦存量が多く、COニュートラルな資源としてエネルギー利用が期待されている。しかし、木質バイオマスは組成、熱分解反応ともに複雑であるため、精度の良いガス化シミュレーションを行うことが困難であった。
【0005】
本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、木質バイオマスなどのバイオマスを用いた固定床ガス化炉のシミュレーションにおいて、ガス化炉内部での反応過程を細分化したシミュレーションモデルを構築することにより、精度の高いガス化シミュレーションを行うことが可能となるモデル化方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法は、固定床ガス化炉によるバイオマスのガス化シミュレーションを行うに際して、ガス化炉の内部を反応過程によって複数の反応層に分割し、ガス化炉内部で発生した生成ガスの循環ラインを必要な反応層間に設けて、ガス化炉内部で起こっている反応・現象を細分化したシミュレーションモデルを構築し、精度良くガス化炉内部状態(炉内の温度分布、生成ガス組成分布等)を推算するように構成されている。
【0007】
上記の方法において、固定床ガス化炉の内部を複数の反応層に分割する場合、各反応層のうち必要なものをさらに分割して反応層を細分化し、ガス化炉内の状態をさらに精度良く表すようにすることができる。
また、上記の方法において、生成ガスの循環ラインは1つ前段の反応層と接続するものとする。
【0008】
また、生成ガスの循環ラインを設けるに際し、反応層がさらに複数に分割されている場合、さらに分割された反応層では、最下層に生成ガスの循環ラインを設けて前段の反応層と接続することが好ましい。また、前段の反応層がさらに分割された反応層の場合は、生成ガスの循環ラインを分割された反応層の最上層に接続することが好ましい。
また、これらの方法においては、固定床ガス化炉によるバイオマスのガス化シミュレーションを行うに際し、生成ガスの循環ラインには生成ガスを一部流すものとしてシミュレーションモデルを構築する。
【0009】
また、これらの方法においては、バイオマスとして、水分、灰分を含む木質バイオマスを用いることができる。
また、これらの方法においては、固定床ガス化炉として、炉内部を乾燥層、熱分解層、燃焼層及び還元層に分割し、炉内で発生した生成ガスの一部を循環させて生成ガスを炉下部から抜き出すダウンドラフト型固定床ガス化炉を用いることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。
本発明では、シミュレーションの解析精度を高めるために、固定床ガス化炉の内部を複数の反応層に細分化し、また、ガス化炉内部で発生した生成ガスの一部を循環させることを特徴としている。このようにして実験を最小限にして、精度良くガス化炉内部状態を推算できるシミュレーションモデルを確立した。
【0011】
図1〜図8は、本発明の実施の第1形態として、ダウンドラフト型固定床ガス化炉の反応層と生成ガス循環ラインの配置の具体例を示している。本実施の形態では、固定床ガス化炉のモデル化を行う上で、ガス化炉内部を複数の反応層に分割し、各反応層をそのまま使用するか、もしくは各反応層を必要に応じてさらに細分化している。また、ガス化炉の内部で起こっている生成ガスの流れを、例えば、熱分解層から乾燥層、燃焼層から熱分解層の間に生成ガスの循環ラインを設けることで表現している。なお、図面においては、バイオマス、灰分、チャー等の固体の流れは(S)で表し、燃焼用空気、生成ガス等のガスの流れは(G)で表している。
【0012】
本実施の形態において、バイオマスとしては、水分、灰分を含む木質バイオマス(一例として、間伐材、林地残材、木屑、建築廃材など)を用いることができるが、他のバイオマス、例えば、下水汚泥、畜産廃棄物、農産廃棄物、水産廃棄物など生物由来の物質全般も使用することができる。また、後述するバイオマスのガス化をシミュレーションするためのモデル化方法は、汎用のプロセスシミュレーションソフト、一例として、HYSYS(Aspen Technology Inc.社)、ASPEN−Plus(Aspen TechnologyInc.社)、PRO/II(Invensys plc社)等を使用することによって、バイオマスのガス化プロセスにおけるガス化炉の物質収支、エネルギー収支、化学平衡などの種々のシミュレーションを行うことができる。
【0013】
図1は、固定床ガス化炉10の内部を乾燥層、熱分解層、燃焼層、還元層の並び方で4種類の反応層に分割し、1つの乾燥層12、燃焼層16と、複数の熱分解層14a、14b、還元層18a、18bとを組み合わせた例を示している。図1では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の中ほどに供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、燃焼層と熱分解層の間に設けてモデル化を行っている。この場合、複数に分割された反応層では、生成ガス循環ラインを最下層の反応層(図1では熱分解層14b)から1つ前の反応層(図1では乾燥層12)に接続するようにし、1つ前の反応層が複数に分割されているときは、生成ガス循環ラインを分割された反応層の中の1層目(図1では熱分解層14a)に接続するようにしてモデル化を行う。また、本実施の形態は、ダウンドラフト型固定床ガス化炉の場合であり、生成ガスの循環ラインには生成ガスを一部流すものとしてモデル化を行う。
【0014】
本実施の形態のシミュレーションモデルでは、木質バイオマスを例にとって考えると、乾燥層では木質バイオマス中の水分が蒸発し、熱分解層ではバイオマスの熱分解が行われ、燃焼層ではチャー、タール等の可燃物が部分燃焼し、還元層ではチャーのガス化等が行われる。具体的な一例として、ガス化炉10に供給したバイオマス(CH1.40.6+xHO(液体)+灰分)は、各反応層で主として以下のような反応が行われるものとする。
【0015】
▲1▼乾燥層(例えば、60〜200℃)ではバイオマスの乾燥が行われる。
CH1.40.6+灰分(固体)+xHO(液体)→CH1.40.6+灰分(固体)+xHO(気体)
▲2▼熱分解層(例えば、200〜600℃)では乾燥バイオマスが熱分解される。
CH1.40.6→CH、CO、CO、H、HO、C(チャー)、タール、灰分(固体)
C(固体)+CO→2CO、C(固体)+HO→CO+H、CH→C(固体)+2H
▲3▼燃焼層(例えば、600〜1300℃)では可燃物が部分酸化(燃焼)される。
C(固体)、タール、HやCO等の可燃ガス+O→CO、CO、HO(気体)等
▲4▼還元層(例えば、800〜600℃)ではチャーのガス化が行われる。
C(固体)+CO→2CO、C(固体)+HO→CO+H
CH+HO→CO+3H
【0016】
生成ガスの循環ラインは、燃焼層よりも上側、すなわち、熱分解層と乾燥層の間、及び燃焼層と熱分解層の間に設けており、上記の反応で発生した生成ガスや水蒸気の一部等が循環するものとする。生成した可燃性の合成ガス(CH、CO、H、CO、HO、N、タールの一部等を含む)は、固体であるC(チャー)及び灰分とともに炉底部から抜き出し、生成ガスを分離して取り出す。ダウンドラフト型固定床ガス化炉では、炉内部で発生した生成ガスを循環させることで、タール分を燃焼層で燃焼・分解することができ、炉底部から取り出す可燃性の生成ガスにはタール分がほとんど含まれない。また、乾燥層で蒸発させた水分を凝縮水として生成ガスから分離除去する場合には水分を低減できるので、生成ガス中の水分含有量も少ない。タール分の少ない可燃性ガスとすることで、ガスエンジン等への利用が容易になる。
【0017】
このようなシミュレーションモデルの解析には、上述したようなプロセスシミュレーションソフトを使用し、固定床ガス化炉の運転の状態を解析する。プロセスシミュレーションソフトの一例として、上述したHYSYSを使用する場合は、バイオマス、灰分の物性データをHYSYSのデータバンクに登録して使用することができる。また、バイオマスの含水率、灰分量等を設定するとともに、バイオマスのガス化炉への投入量を設定する。さらに、ガス化炉に供給する燃焼用空気の量を決定する。本発明の方法により構築したシミュレーションモデルでは、上記のように、ガス化炉の内部を細分化し、生成ガスの流れを表現することで、得られる計算結果は精度が高くなり、ガス化炉の内部温度分布、生成ガス組成分布等を良好に再現することができる。その結果、実装置での異常高温、腐食等の運転トラブルの回避、運転・設計条件の最適化の検討が容易となる。
【0018】
図2は、固定床ガス化炉10の内部を乾燥層、熱分解層、還元層、燃焼層の並び方で4種類の反応層に分割し、1つの乾燥層12、燃焼層16と、複数の熱分解層14a、14b、還元層18a、18bとを組み合わせた例を示している。図2では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の下部(底部)に供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、還元層と熱分解層、燃焼層と還元層の間に設けてモデル化を行っている。図2では、燃焼層の上に還元層が配置されるものとし、生成ガスの循環ラインは燃焼層よりも上側に設けている。他の構成及び作用等は、図1の場合と同様である。
【0019】
図3は、固定床ガス化炉10の内部を乾燥層12、熱分解層14、燃焼層16、還元層18の並び方で4種類の反応層に分割したもので、各反応層が1つの場合の例を示している。図3では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の中ほどに供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、燃焼層と熱分解層の間に設けてモデル化を行っている。他の構成及び作用等は、図1の場合と同様である。
【0020】
図4は、固定床ガス化炉10の内部を乾燥層12、熱分解層14、還元層18、燃焼層16の並び方で4種類の反応層に分割したもので、各反応層が1つの場合の例を示している。図4では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の下部(底部)に供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、還元層と熱分解層、燃焼層と還元層の間に設けてモデル化を行っている。他の構成及び作用等は、図2の場合と同様である。
【0021】
図5は、固定床ガス化炉10の内部を乾燥層、熱分解層、燃焼層、還元層の並び方で4種類の反応層に分割したもので、各反応層が複数の場合、すなわち、乾燥層12a、12b、熱分解層14a、14b、燃焼層16a、16b、還元層18a、18bを組み合わせた例を示している。図5では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の中ほどに供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、燃焼層と熱分解層の間に設けてモデル化を行っている。他の構成及び作用等は、図1の場合と同様である。
【0022】
図6は、固定床ガス化炉10の内部を乾燥層、熱分解層、還元層、燃焼層の並び方で4種類の反応層に分割したもので、各反応層が複数の場合、すなわち、乾燥層12a、12b、熱分解層14a、14b、還元層18a、18b、燃焼層16a、16bを組み合わせた例を示している。図6では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の下部(底部)に供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、還元層と熱分解層、燃焼層と還元層の間に設けてモデル化を行っている。他の構成及び作用等は、図2の場合と同様である。
【0023】
図7は、バイオマスと燃焼用空気(又は酸素)を固定床ガス化炉10における同じ反応層(乾燥層12)に供給するものであり、炉内部を乾燥層12、熱分解層14、燃焼層16、還元層18の並び方で4種類の反応層に分割したものであって、各反応層が1つの場合の例を示している。生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、燃焼層と熱分解層の間に設けてモデル化を行っている。なお、図7では、燃焼用空気を分割した反応層の上部に供給しており、生成ガスは下方に向かう押出し流れの傾向となるため、生成ガスの循環量は少ないものとなる。他の構成及び作用等は、図1、図3の場合と同様である。
【0024】
図8は、バイオマスと燃焼用空気(又は酸素)を固定床ガス化炉10における同じ反応層(乾燥層12)に供給するものであり、炉内部を乾燥層、熱分解層、燃焼層、還元層の並び方で4種類の反応層に分割したものであって、1つの乾燥層12、熱分解層14、燃焼層16と、複数の還元層18a、18bとを組み合わせた例を示している。生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、燃焼層と熱分解層の間に設けてモデル化を行っている。なお、図8では、燃焼用空気を分割した反応層の上部に供給しており、生成ガスは下方に向かう押出し流れの傾向となるため、生成ガスの循環量は少ないものとなる。他の構成及び作用等は、図1、図3の場合と同様である。
【0025】
図9、図10は、本発明の実施の第2形態として、アップドラフト型固定床ガス化炉の反応層と生成ガス循環ラインの配置の具体例を示している。本実施の形態では、固定床ガス化炉のモデル化を行う上で、ガス化炉内部を複数の反応層に分割し、各反応層をそのまま使用するか、もしくは各反応層を必要に応じてさらに細分化している。また、ガス化炉の内部で発生した生成ガスは、燃焼層、還元層、熱分解層、そして乾燥層へと順次上方向に流れる。
【0026】
図9は、固定床ガス化炉20の内部を乾燥層12、熱分解層14、還元層18、燃焼層16の並び方で4種類の反応層に分割したもので、各反応層が1つの場合の例を示している。図9では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の下部(底部)に供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスは燃焼層、還元層、熱分解層、そして乾燥層へと順次上方向に流れるものとしてモデル化を行っている。本実施の形態は、燃焼用空気を炉下部から供給して生成ガスを炉上部から抜き出すアップドラフト型固定床ガス化炉の場合である。他の構成及び作用等は、実施の第1形態の場合と同様である。
【0027】
図10は、固定床ガス化炉20の内部を乾燥層、熱分解層、還元層、燃焼層の並び方で4種類の反応層に分割したもので、1つの乾燥層12、熱分解層14、燃焼層16と、複数の還元層18a、18bとを組み合わせた例を示している。図10では、燃焼用空気(又は酸素)を分割した反応層の下部(底部)に供給しており、燃焼用空気の供給位置近傍が燃焼層となるように分割した反応層を配置し、生成ガスは一層ずつ順次上方向に流れる。本実施の形態は、燃焼用空気を炉下部から供給して生成ガスを炉上部から抜き出すアップドラフト型固定床ガス化炉の場合である。他の構成及び作用等は、図9及び実施の第1形態の場合と同様である。
【0028】
図11は、本発明の実施の第3形態として、その他の型の固定床ガス化炉の反応層と生成ガス循環ラインの配置の具体例を示している。図11は、固定床ガス化炉22の内部を乾燥層12、熱分解層14、燃焼層16、還元層18の4種類の反応層に分割したもので、複数の反応層に分岐する場合、例えば、熱分解層14から燃焼層16及び還元層18に分岐するように反応層を配置するものとした例を示している。図11では、燃焼用空気(又は酸素)の供給位置近傍が燃焼層16となるようにし、熱分解層14の下で燃焼層16から離れた位置に還元層18が配置されるものとする。生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、還元層と熱分解層の間に設けてモデル化を行っている。なお、各反応層を必要に応じてさらに細分化するものとしても良い。他の構成及び作用等は、実施の第1形態の場合と同様である。
【0029】
以上説明した本発明の実施の形態では、固定床ガス化炉の内部を乾燥層、熱分解層、燃焼層、還元層の4種類の反応層に分割し、各反応層を分割せずに使用するか、もしくは必要に応じて2つに分割し、生成ガスの循環ラインは熱分解層と乾燥層、燃焼層と熱分解層などの間に設けてモデル化を行ったが、本発明は上述したような反応層及び生成ガス循環ラインの配置等に限定されるものではない。なお、各反応層をより細かく分割して計算を行うことで、ガス化炉の内部温度分布及びガス化炉内部生成ガス組成は、より実験データに近い計算結果となることが期待されるが、計算時間や、ガス化炉の内部温度分布や生成ガス組成分布など得られる計算結果と実験データを比較・検討した場合、現実的には、熱分解層及び還元層の2つの反応層をさらに2つ程度に分割し、乾燥層及び燃焼層は1つの反応層として計算することが好ましいと考えられる。
【0030】
つぎに、図1に示す構成の固定床ガス化炉を用いて木質バイオマスを定常状態でガス化する場合のシミュレーションモデルの解析を実施する。計算にはプロセスシミュレーションソフトであるHYSYSを使用するが、プロセスシミュレーションソフトは特に限定されるものではない。また、計算を行う際に、木質バイオマスの分子式をC202412、灰分の分子式をCaOで代表するものとするが、この分子式に限られるものではない。木質バイオマスは含水率を20wt%、灰分を0.5wt%とし、90kg/hでガス化炉に投入するものとする。ガス化炉に供給する燃焼用空気の量は、木質バイオマスを完全燃焼するのに必要な空気量を1とした場合の0.3を供給するものとする。ガスの循環量は、各層の想定温度、すなわち、乾燥層:60〜200℃、熱分解層:200〜600℃、燃焼層:600〜1300℃、還元層:800〜600℃、となるように調節する。反応層がさらに複数に分割されている場合には、分割された層の中で最も後段(下段)にある層が上記の想定温度となるように調節する。
【0031】
表1には、上記のシミュレーションモデルの計算結果と図1に示す固定床ガス化炉による実験データを示している。表1の結果からわかるように、構築したシミュレーションモデルによる生成ガスの組成、流量、熱量の計算値と、図1に示すダウンドラフト型固定床ガス化炉による生成ガスの組成、流量、熱量の実験データ(実測値)とを比較すると、本モデルによる計算結果は実験データを非常に良く近似しているものである。図12に、ガス化炉内部の生成ガス組成分布(計算結果)と実測データを比較したグラフを示す。また、図13に、ガス化炉内部の温度分布の計算結果を示す。これらのことから、本発明のモデル化方法はバイオマスのガス化条件を検討するのに有効であることがわかる。また、実際にはデータを収集することが難しいガス化炉内部の生成ガス組成分布、温度分布等の状態を推測することが可能となり、実装置で異常高温や腐食等の運転トラブルを回避したり、運転・設計条件の最適化を検討する上で、本発明のモデル化方法は非常に有効であることがわかる。
【0032】
【表1】
Figure 2004250574
【0033】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) 固定床ガス化炉の内部を細分化し、生成ガスの流れを考慮した解析方法であるため、炉内の状態を精度良く表すことが可能となり、炉内部の温度分布や生成ガス組成分布等をより正確に把握することができる。
(2) 固定床ガス化炉において、炉内温度分布や生成ガス組成分布等を詳細に把握することが可能となったので、実装置での異常高温や腐食等の運転トラブルの回避、運転・設計条件の最適化の検討が容易になる。
(3) 本発明のモデル化方法を用いることで、例えば、ダウンドラフト型固定床ガス化炉による木質バイオマスのガス化反応を精度良くシミュレーションすることができ、ガス化条件の検討に非常に有効である。これにより、ガス化炉で得られた可燃性の生成ガスをエネルギーとして有効利用することも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の一例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図2】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の他の例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図3】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の他の例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図4】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の他の例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図5】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の他の例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図6】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の他の例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図7】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の他の例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図8】本発明の実施の第1形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置のさらに他の例(ダウンドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図9】本発明の実施の第2形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の一例(アップドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図10】本発明の実施の第2形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の他の例(アップドラフト型固定床ガス化炉)を示す概念説明図である。
【図11】本発明の実施の第3形態によるモデル化方法を実施する場合の固定床ガス化炉における反応層配置の一例を示す概念説明図である。
【図12】図1に示す構成の固定床ガス化炉を用いて木質バイオマスをガス化する場合のガス化炉内部の生成ガス組成分布(計算結果)を実測データと併せて示したグラフである。
【図13】図1に示す構成の固定床ガス化炉を用いて木質バイオマスをガス化する場合のガス化炉内部の温度分布(計算結果)を示すグラフである。
【符号の説明】
10、20、22 固定床ガス化炉
12、12a、12b 乾燥層
14、14a、14b 熱分解層
16、16a、16b 燃焼層
18、18a、18b 還元層

Claims (8)

  1. 固定床ガス化炉によるバイオマスのガス化シミュレーションを行うに際して、固定床ガス化炉の内部を反応過程によって複数の反応層に分割し、ガス化炉内部で発生した生成ガスの循環ラインを必要な反応層間に設けて、ガス化炉内部で起こっている反応・現象を細分化したシミュレーションモデルを構築し、精度良くガス化炉内部状態を推算することを特徴とするバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
  2. 固定床ガス化炉の内部を複数の反応層に分割し、各反応層のうち必要なものをさらに分割して反応層を細分化し、ガス化炉内の状態をさらに精度良く表す請求項1記載のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
  3. 生成ガスの循環ラインは1つ前段の反応層と接続する請求項1又は2記載のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
  4. 生成ガスの循環ラインは1つ前段の反応層と接続し、反応層のうちさらに分割された反応層では、最下層に生成ガスの循環ラインを設けて前段の反応層と接続する請求項2記載のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
  5. 生成ガスの循環ラインは1つ前段の反応層と接続し、前段の反応層がさらに分割された反応層の場合は、生成ガスの循環ラインを分割された反応層の最上層に接続する請求項2又は4記載のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
  6. 固定床ガス化炉によるバイオマスのガス化シミュレーションを行うに際し、生成ガスの循環ラインには生成ガスを一部流すものとしてシミュレーションモデルを構築する請求項1〜5のいずれかに記載のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
  7. バイオマスとして水分及び灰分を含む木質バイオマスを用いる請求項1〜6のいずれかに記載のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
  8. 固定床ガス化炉として、炉内部を乾燥層、熱分解層、燃焼層及び還元層に分割し、炉内で発生した生成ガスの一部を循環させて生成ガスを炉下部から抜き出すダウンドラフト型固定床ガス化炉を用いる請求項1〜7のいずれかに記載のバイオマス用固定床ガス化炉のモデル化方法。
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