JP2004240342A - 賦香された楽器 - Google Patents
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Abstract
【課題】より簡単な方法でしかも楽しく、高齢者や知的障害者の意識など精神的な高まりを可能とする楽器を提供すること。
【解決手段】フレグランス及び/又はフレーバーで楽器を賦香する。
楽器として、とくにピアノ、オルガンなどの鍵盤楽器や鈴、マラカス、フルーツシェイカーなどの打楽器を選択することがより好ましい。
フレグランス及び/又はフレーバーとしては、日常嗅ぐ機会のある花でイメージしやすいフレグランスや天然に存在する果物や花など、菓子、コーヒーなどの飲食品のような具体的なものを想起できるフレーバーが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】フレグランス及び/又はフレーバーで楽器を賦香する。
楽器として、とくにピアノ、オルガンなどの鍵盤楽器や鈴、マラカス、フルーツシェイカーなどの打楽器を選択することがより好ましい。
フレグランス及び/又はフレーバーとしては、日常嗅ぐ機会のある花でイメージしやすいフレグランスや天然に存在する果物や花など、菓子、コーヒーなどの飲食品のような具体的なものを想起できるフレーバーが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は賦香された楽器に関する。さらに詳しくは、賦香された鍵盤楽器又は打楽器に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来から、高齢者あるいは知的障害者などに対して、意識の向上、意欲の増大化などが図られていた。これは、高齢者あるいは知的障害者などがより好ましい状態になれば結構なことであるし、少なくとも現状を維持することにより、本人あるいは周囲の者への負担が増大することを妨げるものである。
最近、とくに高年齢者が増大化する傾向にあり、高齢者対策の一環として高齢者の意識の現状維持あるいはさらなる向上、高年齢者の意欲回復などが盛んに行われてきた。
【0003】
意識の向上、意欲の増大化などを図るために幾つかの方法が提供されているが、その中の1つの方法として、音楽や楽器を利用する方法が知られている。この方法は、楽器から発せられる音同士が微妙に影響しあい、美しさ、優雅さ、奥深さなどが精神心理面で微妙に働きあい、影響を与え、それ自身が有する特性のためか、一定の効果をもたらしている。
【0004】
また、知的障害者に対する障害排除あるいは機能回復を図る目的で各種障害者への働きかけが行われている。そこでも、音楽や楽器を利用することが行われており、それなりの効果が得られているが、さらなる効果が得られる新しい手段・方法の開発が望まれていた。
【0005】
本発明者らは、音楽や楽器を利用した上記方法を細かく観察している最中に、次のようなことに気づいた。すなわち、高齢者や障害者の意識向上などを目的とする場において、対象とされる高齢者あるいは障害者などが、音楽や楽器に関心を示す割合がそう高くはないこと、また一度関心を示した者でも、その関心を保っている時間はそう長くはないことに気がついた。
【0006】
そこで、本発明の課題は、より簡単、かつ楽しい方法で精神的な意識を高める方法を提供することにある。さらにはより簡単、かつ楽しい方法で意識を高めると共に意識を高めるよう促進すること、あるいはそれらを持続させること、また周囲の物事に興味や関心を持たせ、それらを長く持続させる方法を提供することにある。とくに幼児、高齢者、知的障害者などに対して、有効な方法を提供することにある。そのうえ、本発明の課題は、より簡単、かつ楽しい方法で上記精神的な意欲・意識などを高める方法を実現するため利用する器具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中、賦香された楽器を高齢者や障害児に与えると、該楽器に興味を示し、意欲的な行動をとることに気が付き、さらに研究を重ね、遂に本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、
楽器をフレグランス及び/又はフレーバーで賦香することを特徴とする賦香された楽器、とくにリズム楽器
を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
まず、本発明が規定する楽器に関しては、本発明の目的を達成することができる楽器であれば特に限定されない。具体的に例示すると、トライアングル、シンバル、銅鑼、鉄琴、木琴、マリンバ、カスタネット、鈴、マラカス、フルーツシェイカー、太鼓、タンバリン、ティンパニー、ドラムなどの打楽器、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、ギター、マンドリン、ウクレレ、ハープ、琴などの弦楽器、オーボエ、クラリネット、サキソフォン、トランペット、ホルン、チューバ、オカリナ、フルート、ピッコロ、ハーモニカ、各種笛などの管楽器、オルガン、ピアノ、アコーディオンなどの鍵盤楽器が挙げられる。さらには、各種電子楽器も含まれる。
【0010】
それらの中でも好ましい楽器は、オルガンやピアノなどの鍵盤楽器、木琴、タンバリン、カスタネット、鈴、マラカス、フルーツシェイカーなどの打楽器が好ましい。楽器を利用する者が手を動かすことなどにより音が生まれること、すなわち意識と行動とが影響しあうと共に音を出すために複雑な技術を必要としないことが1つの理由である。
特に鈴、マラカス、フルーツシェイカーなどのリズム打楽器(本発明ではリズム楽器ということがある)が好ましい。片手で持つことができ、幼児や高齢者、障害者なども簡単に持つことができることが一つの理由である。
【0011】
これら楽器にフレグランス及び/又はフレーバーを用いて賦香、すなわち香り付けする。賦香する方法は特に限定されないが、例えば、フレグランス及び/又はフレーバーを紙、不織布、綿、シリカゲル、木、軽石、貝殻、焼結金属、ケイ酸カルシウムなどの多孔質体などに染み込ませ楽器内部に収納する方法、フレグランス及び/又はフレーバーをマイクロカプセル化したり、溶媒に溶かしたりしたのち、インク状あるいは溶液状にして楽器表面あるいは楽器内部に塗布する方法、フレグランス及び/又はフレーバーをエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂やポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂に混入させてフィルム状あるいはシート状に成形し、このフィルムあるいはシートを楽器表面あるいは内部に配置する方法、フレグランス及び/又はフレーバーを楽器内あるいは楽器周辺部の一定の部位あるいは付置した容器に保持しておき、外部からの刺激に応じて初めて一定部位あるいは容器に保持されたフレグランス及び/又はフレーバーを放出させる方法、フレグランス及び/又はフレーバーを直接楽器表面に吹きつける方法などを例示することができる。
【0012】
具体的な楽器に対する賦香方法について例示すると、例えばオルガンやピアノの鍵盤楽器では、鍵盤下あるいは楽器前面に設置した容器内にフレグランス及び/又はフレーバーを保持させておき、鍵盤が指で叩かれることから生じる空気圧や振動や電気信号により芳香させる方法が挙げられる。
太鼓などの打楽器には、マイクロカプセル化したフレグランス及び/又はフレーバーを含む溶液、分散液、インクなどで楽器の叩かれる表面やバチなどの叩く部分の表面をコーティングしたり、フレグランス及び/又はフレーバーを含むフィルムあるいはシートを楽器の叩かれる表面やバチなどの叩く部分の表面に配置させ、バチなどを叩くことにより芳香させる方法が挙げられる。
【0013】
弦楽器では、弦にフレグランス及び/又はフレーバー含有液を染み込ませ、摩擦や振動により芳香させる方法が挙げられる。
電子楽器では、電子制御するマイクロチップ部位に埋め込んだフレグランス及び/又はフレーバーを電子信号によってフレグランス及び/又はフレーバー含有部位を刺激し、芳香させる方法が挙げられる。
【0014】
マラカスの場合では、マラカス内部に収容させる粒子の表面に前記フレグランス及び/又はフレーバー含有液あるいはフレグランス及び/又はフレーバーのマイクロカプセルを含む液を吹きつけ、その後に該賦香された粒子をマラカス内部に収める方法が挙げられる。また他の方法として、フレグランス及び/又はフレーバーを比較的硬い多孔質体粒子に染み込ませ、その後に該賦香された粒子をマラカス内部に収める方法が挙げられる。このときマラカスに粒子径よりも短い細長い窓あるいは細かな孔を多数空けておくと、粒子はマラカスの外部にこぼれることなく、粒子表面あるいは粒子内部のフレグランス及び/又はフレーバーが揮散されやすくなるので、より好都合である。
【0015】
次ぎに上記フレグランス及び/又はフレーバーについて説明する。
上記フレグランス及び/又はフレーバーとしては、上記楽器を使用する者、とくに幼児や高年齢者が好ましい香りであると思えるようなものであれば特に限定されない。また、フレグランスを用いるときには人に対して安全性のあることを確認した上で使用することが好ましい。
【0016】
それらフレグランス及び/又はフレーバーは日常生活において用いられるものであり、天然物から抽出して得られる植物性フレーバー、または天然物中の香気を物理、化学的に処理して分離した単離フレグランス及び/又はフレーバー、化学合成などにより得られる合成フレグランス及び/又はフレーバー、バイオ技術によって得られる発酵フレーバーなどを用いることができる。具体的には、「合成香料」(印藤元一著、化学工業日報社)や「香料の実際知識」(印藤元一著、東洋経済新報社)などに記載されているフレグランス及び/又はフレーバー全般である。
【0017】
さらに、フレグランス及び/又はフレーバー単品だけでなく、単品を組み合わせた調合香料であってもよく、香水をはじめとする化粧品、石鹸、洗剤、歯磨き、口腔剤、浴剤、室内および自動車用芳香剤などのトイレタリー、菓子、チューインガム、各種飲料、酒類、一般食品、乳製品、畜肉食品、調味料、飼料などのフレーバーなどがあり、これらはすでに公知のものであり、独自に調製することができる。
【0018】
これらのフレグランス及び/又はフレーバーは水溶性、油溶性いずれでもよく、香料の形態、形状についても特に限定されるものではない。
【0019】
フレグランスとしては、例えば、花の香料であればバラ、ジャスミン、ラベンダー、水仙,沈丁花、梅、桜、クチナシ、キンモクセイ、ユリ、カーネーション、藤、スズラン、菊、フリージア、シクラメン、ハネーサックル、ヘリオトロープ、ライラック、ミモザ、チュベローズ、バイオレット、イランイラン等香料として使われる香りであればどのような香りでも良いが、好ましくはバラ、ラベンダー、水仙,沈丁花、梅、クチナシ、キンモクセイ、藤など日常嗅ぐ機会のある花をイメージしやすいフレグランスがのぞましい。
【0020】
フレーバーとしては、フレーバーの匂いを嗅いだときに具体的なものの名前を想起できるようなものが好ましい。即ち、人が香料の匂いを嗅いだときに、天然に存在する果物や花など、菓子、コーヒーなどの飲食品のような具体的なものを想起できるフレーバーが好適である。
【0021】
果物のフレーバーとしてはオレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツなどのシトラス類、イチゴ、ブルーベリーなどのベリー類、パイナップル、マンゴー、バナナなどのトロピカルフルーツ類、マスカットや巨峰などのぶどう類の他、チェリー類、メロン、洋なし、キウイ、リンゴ、ピーチなどの香料が挙げられるが、オレンジ、リンゴ、バナナ、イチゴ、ピーチ、ぶどうなど香りをイメージしやすい果物の香料がより好ましい。
食品のフレーバーとしては、コーヒー、紅茶、ココア、緑茶、種々のフルーツジュース、野菜ジュースやコーラ、サイダー、ラムネなどの炭酸飲料、果汁飲料、乳飲料、キャラメル・ドロップ・チョコレート・チューインガム・焼菓子・生菓子等の菓子類などに使うフレーバー、アイスクリーム・ラクトアイス・氷菓などの冷菓類などに使うフレーバー、ハム・ソーセージなどの畜肉加工品類などに使うフレーバーや畜肉の酵素分解物や植物蛋白の加水分解物などをもとに作られたチキン・ビーフなどに使うフレーバー、またガーリック・オニオン・カレーなどのスパイスフレーバーも使うことができる。
【0022】
かくして、得られた賦香された楽器は広い使い道があるが、具体的に例示すると教習具、とくに幼児用あるいは児童・生徒用教習具として使用できる。また、成人、とくに高齢者の意識や意欲向上と持続など精神的な面での改善のための用具として使用でき、痴呆化予防のための用具としても使用できる。また、障害児の意識・意欲向上のための用具、障害者への音楽療法に際しての用具あるいは補助具などなどとして使用することができる。
【0023】
すなわち、本発明は、
フレグランス及び/又はフレーバーで賦香することを特徴とする賦香された楽器を用いた幼児用あるいは児童・生徒用教習具、
上記賦香された楽器を用いた高齢者の精神的な面での改善用用具や痴呆予防具、
上記賦香された楽器を用いた障害者への音楽療法の用具あるいは補助具、
などを包含する。
さらに、本発明は、
上記賦香された楽器を用いることを特徴とする高齢者や障害者の意欲・意識の改善方法、
上記賦香された楽器を用いることを特徴とする障害者の意欲・意識の改善方法、
などを包含する。
【0024】
本発明の賦香された楽器の使用例を以下説明する。
例えば.高齢者福祉施設内にて高齢者に集合してもらう。高齢者に手渡す本発明の賦香された楽器として、異なるフレーバーで賦香した数種類の鈴を予め用意してあるので、一人一人に本発明の賦香されたな鈴を手渡す。高齢者は手渡された鈴から好ましい香りが発せられることに気づき、興味を持ち、関心を示すと共に、隣に居る者が持つ鈴にも関心を示した。
【0025】
指導者の合図に従い、高齢者はスピーカーから聞こえる音楽にあわせて鈴を鳴らし始めた。鈴を振ることにより発せられる音と共に香りが発せられ、楽しそうな高齢者が多かった。
集合してもらった人たちに渡す楽器は全ての人に対して同じ楽器を1種類渡してもよいが、集合してもらった人を幾つかのグループに分けて、それぞれのグループ毎に異なる楽器を渡してもよい。
また、楽器としては同じであるが、その大きさや形や音色、賦香したフレグランス及び/又はフレーバーの種類、さらには楽器表面に施された模様などを変えた楽器を集合してもらった人に渡してもよい。
【0026】
本発明の1つの特徴は、楽器に予め各種方法でフレグランス及び/又はフレーバー発生部位を設けておき、楽器演奏者自身が楽器を演奏することで、芳香が感じられるように工夫したことであり、これを言い換えれば楽器使用者が楽器を利用して音を発生させると共に芳香も出させるようにしたことである。これにより、楽器演奏者あるいは楽器使用者が楽器に対して興味や関心を示し、音に対しても興味や関心を示すようになり、ひいては、楽器演奏者あるいは楽器使用者自身の身の周りの物に興味や関心を持つきっかけとなり、意識の向上や意欲の増大化が期待されるのである。
【0027】
【実施例】
以下に実施例および応用例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 賦香された楽器の調製
木製のマラカスを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、下記調合香料を染み込ませた直径約3mmのシリカゲル粒子をマラカス内に収納させた。シリカゲル粒子の量は取り出した小さな粒子と同体積となるように調整した。また、キリでマラカス表面に多数の孔を開けた。
【0028】
[比較例1] 賦香されていない楽器の調製
実施例1と同じ木製のマラカスを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、実施例1で用いたシリカゲルであって、下記調合香料を染み込ませていないシリカゲル粒子をマラカス内に収納させた。シリカゲル粒子の量は実施例1と同量である。
【0029】
イチゴフレーバーの調製
下記処方によりイチゴフレーバーを調製した。
【0030】
[実施例2] 賦香された楽器の調製
プラスチック製のフルーツシェイカーを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、下記調合香料を染み込ませた直径約3mmの焼結金属粒子をフルーツシェイカー内に収納させた。焼結金属粒子の量は取り出した小さな粒子と同体積となるように調整した。また、キリでフルーツシェイカー表面に多数の孔を開けた。
【0031】
[比較例2] 賦香されていない楽器の調製
実施例2と同じプラスチック製のフルーツシェイカーを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、実施例2で用いた焼結金属粒子であって、下記調合香料を染み込ませていない焼結金属粒子をフルーツシェイカー内に収納させた。焼結金属粒子の量は実施例2と同量である。
【0032】
リンゴフレーバーの調製
下記処方に従い、リンゴフレーバーを調製した。
【0033】
[応用例1]
実施例2で調製した賦香されたフルーツシェイカー1個および賦香されていないフルーツシェイカー1個、合計2個を知的障害児1人に与え、20人の障害児の表情を観察する実験を行った。フルーツシェイカーの使い方を説明した後、フルーツシェイカーを使って遊ばせ、遊んでいる様子をビデオ撮影した。
障害児の中から2人の障害児(A・B)を任意に選び、フルーツシェイカーから揮散される香りを嗅いでいる時間を次の方法で測定した。遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、賦香されたフルーツシェイカーで遊んでいる時間、すなわち香りを嗅いでいる時間をコマ送りでカウントすることから知り、実験した時間もコマ送りでカウントできるので、実験した時間と香りを嗅いでいる時間を比較した。
得られた結果を表1に示した。
【0034】
また、賦香されたフルーツシェイカーを与えられた障害児の遊んでいる様子と、賦香されていないフルーツシェイカーを与えられた障害児の遊んでいる様子とを比較・観察した。
その結果、賦香されていないフルーツシェイカーを与えられた障害児はただ振って遊んでいるだけであるのに対して、賦香されたフルーツシェイカーを与えられた障害児は振って遊ぶ他に、フルーツシェイカーを嗅いでみたり、噛んだりして興味を示した。
この結果から、楽器と音楽だけよりも香りを取り入れた方が障害児は意欲的に活動するのではないかと考えられる。
【0035】
表1
【0036】
[応用例2]
知的障害児20人にマラカスの使い方を説明した後、実施例1で調製したマラカス及び比較例1で調製したマラカスを与え、マラカスを使って遊ばせた。障害児の中から任意の一人の障害児(C)に着目し、2種類のマラカスで遊んでいる様子をビデオ撮影した。
【0037】
遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、障害児(C)が手にした賦香されたフルーツシェイカーを1分間の間に振った回数、および賦香されていないフルーツシェイカーを1分間の間に振った回数を3分間にわたってカウントした。得られた結果を表2に示した。
遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、コマ送りでのカウントの結果、障害児Cの実験時間は5分35秒、香りを嗅いでいる時間は11.1秒であった。
遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、10秒毎に障害児の表情を、障害児の全体から評価した。評価は下記評価項目に従い、5人が行った。なお、このときには賦香されたマラカスか賦香されていないマラカスかについては伝えていない。
【0038】
表情の評価項目は下記の通りである。
1.楽しそう、2.はしゃいでいる、3.集中している、4.おもしろそう、5.興味がありそう、6.興味がなさそう、7.迷っている、8.つまらなそう、9.悩んでいる、10.ぼーっとしている、
1.から5.までの項目は積極的な評価項目と考えられ、6.から10.までの項目は消極的な評価項目と考えられる。
なお、障害児の表情に対する5人の評価結果が同じではないときには、評価数が多い評価項目をもって、表情に対する評価結果とした。
【0039】
上記評価結果から、時間の経過による表情の変化(推移)を数値化し、数値化表を作成した。
この数値化表を作成する手順は次の通りである。縦、横それぞれに表情の評価項目に対応する1〜10を目盛った表を作成する。次に、例えば、評価項目が1から5に変化(推移)したときには、縦の欄が1のところで横の欄の5のところに1を置く。以下、同様な操作を行い、全ての変化(推移)を上記目盛った表内に1を置く。目盛った表内の全ての欄について置かれた1の数の和をそれぞれ記載し、数値化表が完成される。
その結果を表3および表4に示した。
【0040】
表2 フルーツシェイカーを振った1分間あたりの回数
【0041】
表3 賦香されたマラカスで遊んだときの表情の変化(推移)の数値化表
表中、一番左の欄および一番上の欄に記載されている数字は表情の評価項目を示し、上記評価項目の説明にて説明されている数字に対応する。(以下、同様)
【0042】
表4 賦香されていないマラカスで遊んだとき表情の変化(推移)の数値化表
【0043】
かくして完成された数値化表を基にして表情の推移確率を算出する。具体的な方法は次の通りである。表情の推移確率は、観察された遊び時間中のある表情(a)から次の表情(e)へ変化(推移)した回数を、観察された遊び時間中の各表情(a)の合計で除して得られた数値に100をかけた値(%)で表した。(具体的には表情(1)から表情(5)に変化(推移)する確率は、表情(1)から表情(5)に変化(推移)した回数2を表情(5)の合計数9で除して得られた数値に100をかけた値(%)で表した。)。総計欄は各表情の合計数を表情の層合計数で除して得られた数値に100をかけた値(%)で表した。
得られた結果を表5および表6に示した。
また、その他の評価結果を表6の次に記載した。
【0044】
表5 賦香されたマラカスで遊んだときの表情の推移確率
【0045】
表6 賦香されていないマラカスで遊んだときの表情の推移確率
【0046】
本発明の賦香された楽器を使用することにより、次のような効果をもたらすことができるといえる。
(1) 表情の変化(推移)の数値化表(表3および表4)の結果から:
表3では、ぼーっとした表情(10)から積極的な項目(1.から5.まで)の表情に変化(推移)した回数は18であるのに対し、ぼーっとした表情(10)から消極的な項目(6.から10.まで)の表情に変化(推移)した回数は4である。
一方、表4では、ぼーっとした表情(10)から積極的な項目(1.から5.まで)の表情に変化(推移)した回数は6であるのに対し、ぼーっとした表情(10)から消極的な項目(6.から10.まで)の表情に変化(推移)した回数は12である。
これを表7に示した。
表7 ぼーっとした表情からどのような表情に変化(推移)したか
この表から、賦香されたマラカスで遊ぶことは有効であるといえる。また、音楽療法に香りを取り入れた方が、楽器と音楽だけより被験者が意欲的に活動するのではないかと考えられた。
【0047】
(2) また、表情の推移確率(表5および表6)の結果から:
表5の総計の欄から、積極的な項目(1.から5.まで)の表情にいたる推移確率はより高いのに対して、表6の総計の欄から、積極的な項目(1.から5.まで)の表情にいたる推移確率はより低いといえる。
表5および表6の総計をまとめて見ると、次のような表7を得られる。
【0048】
表7
この表から賦香されていないマラカスのときには積極的な評価項目の合計は50%でしかないのに対して、賦香されたマラカスのときには65%に達した。
このことからも賦香されたマラカスを使用することが有効であるといえる。また、音楽療法に香りを取り入れた方が、楽器と音楽だけより被験者が意欲的に活動するのではないかと考えられた。
【0049】
【発明の効果】
本発明により、賦香された楽器、とくに賦香された鍵盤楽器あるいはリズム打楽器が簡単に調製される。この楽器を手にした高齢者、障害者は楽器に関心・興味を示し、楽器に熱中しやすくなることが明らかとなった。本発明の楽器を使用することにより、高齢者あるいは障害者の意識や意欲を高めることが可能となる他、身の周りの物事に関心や興味を抱き、行動する意欲が増し、行動に楽しさを感じるように変化することを期待できるようになった。さらには高齢者の痴呆化への予防をも期待できる。
また、本発明の賦香された楽器は、人に対して安全であるフレグランス及び/又はフレーバーを使用しているので、幼児、高齢者、障害児が使用してもなんら不安・心配がない。
【発明の属する技術分野】
本発明は賦香された楽器に関する。さらに詳しくは、賦香された鍵盤楽器又は打楽器に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来から、高齢者あるいは知的障害者などに対して、意識の向上、意欲の増大化などが図られていた。これは、高齢者あるいは知的障害者などがより好ましい状態になれば結構なことであるし、少なくとも現状を維持することにより、本人あるいは周囲の者への負担が増大することを妨げるものである。
最近、とくに高年齢者が増大化する傾向にあり、高齢者対策の一環として高齢者の意識の現状維持あるいはさらなる向上、高年齢者の意欲回復などが盛んに行われてきた。
【0003】
意識の向上、意欲の増大化などを図るために幾つかの方法が提供されているが、その中の1つの方法として、音楽や楽器を利用する方法が知られている。この方法は、楽器から発せられる音同士が微妙に影響しあい、美しさ、優雅さ、奥深さなどが精神心理面で微妙に働きあい、影響を与え、それ自身が有する特性のためか、一定の効果をもたらしている。
【0004】
また、知的障害者に対する障害排除あるいは機能回復を図る目的で各種障害者への働きかけが行われている。そこでも、音楽や楽器を利用することが行われており、それなりの効果が得られているが、さらなる効果が得られる新しい手段・方法の開発が望まれていた。
【0005】
本発明者らは、音楽や楽器を利用した上記方法を細かく観察している最中に、次のようなことに気づいた。すなわち、高齢者や障害者の意識向上などを目的とする場において、対象とされる高齢者あるいは障害者などが、音楽や楽器に関心を示す割合がそう高くはないこと、また一度関心を示した者でも、その関心を保っている時間はそう長くはないことに気がついた。
【0006】
そこで、本発明の課題は、より簡単、かつ楽しい方法で精神的な意識を高める方法を提供することにある。さらにはより簡単、かつ楽しい方法で意識を高めると共に意識を高めるよう促進すること、あるいはそれらを持続させること、また周囲の物事に興味や関心を持たせ、それらを長く持続させる方法を提供することにある。とくに幼児、高齢者、知的障害者などに対して、有効な方法を提供することにある。そのうえ、本発明の課題は、より簡単、かつ楽しい方法で上記精神的な意欲・意識などを高める方法を実現するため利用する器具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中、賦香された楽器を高齢者や障害児に与えると、該楽器に興味を示し、意欲的な行動をとることに気が付き、さらに研究を重ね、遂に本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、
楽器をフレグランス及び/又はフレーバーで賦香することを特徴とする賦香された楽器、とくにリズム楽器
を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
まず、本発明が規定する楽器に関しては、本発明の目的を達成することができる楽器であれば特に限定されない。具体的に例示すると、トライアングル、シンバル、銅鑼、鉄琴、木琴、マリンバ、カスタネット、鈴、マラカス、フルーツシェイカー、太鼓、タンバリン、ティンパニー、ドラムなどの打楽器、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、ギター、マンドリン、ウクレレ、ハープ、琴などの弦楽器、オーボエ、クラリネット、サキソフォン、トランペット、ホルン、チューバ、オカリナ、フルート、ピッコロ、ハーモニカ、各種笛などの管楽器、オルガン、ピアノ、アコーディオンなどの鍵盤楽器が挙げられる。さらには、各種電子楽器も含まれる。
【0010】
それらの中でも好ましい楽器は、オルガンやピアノなどの鍵盤楽器、木琴、タンバリン、カスタネット、鈴、マラカス、フルーツシェイカーなどの打楽器が好ましい。楽器を利用する者が手を動かすことなどにより音が生まれること、すなわち意識と行動とが影響しあうと共に音を出すために複雑な技術を必要としないことが1つの理由である。
特に鈴、マラカス、フルーツシェイカーなどのリズム打楽器(本発明ではリズム楽器ということがある)が好ましい。片手で持つことができ、幼児や高齢者、障害者なども簡単に持つことができることが一つの理由である。
【0011】
これら楽器にフレグランス及び/又はフレーバーを用いて賦香、すなわち香り付けする。賦香する方法は特に限定されないが、例えば、フレグランス及び/又はフレーバーを紙、不織布、綿、シリカゲル、木、軽石、貝殻、焼結金属、ケイ酸カルシウムなどの多孔質体などに染み込ませ楽器内部に収納する方法、フレグランス及び/又はフレーバーをマイクロカプセル化したり、溶媒に溶かしたりしたのち、インク状あるいは溶液状にして楽器表面あるいは楽器内部に塗布する方法、フレグランス及び/又はフレーバーをエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂やポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂に混入させてフィルム状あるいはシート状に成形し、このフィルムあるいはシートを楽器表面あるいは内部に配置する方法、フレグランス及び/又はフレーバーを楽器内あるいは楽器周辺部の一定の部位あるいは付置した容器に保持しておき、外部からの刺激に応じて初めて一定部位あるいは容器に保持されたフレグランス及び/又はフレーバーを放出させる方法、フレグランス及び/又はフレーバーを直接楽器表面に吹きつける方法などを例示することができる。
【0012】
具体的な楽器に対する賦香方法について例示すると、例えばオルガンやピアノの鍵盤楽器では、鍵盤下あるいは楽器前面に設置した容器内にフレグランス及び/又はフレーバーを保持させておき、鍵盤が指で叩かれることから生じる空気圧や振動や電気信号により芳香させる方法が挙げられる。
太鼓などの打楽器には、マイクロカプセル化したフレグランス及び/又はフレーバーを含む溶液、分散液、インクなどで楽器の叩かれる表面やバチなどの叩く部分の表面をコーティングしたり、フレグランス及び/又はフレーバーを含むフィルムあるいはシートを楽器の叩かれる表面やバチなどの叩く部分の表面に配置させ、バチなどを叩くことにより芳香させる方法が挙げられる。
【0013】
弦楽器では、弦にフレグランス及び/又はフレーバー含有液を染み込ませ、摩擦や振動により芳香させる方法が挙げられる。
電子楽器では、電子制御するマイクロチップ部位に埋め込んだフレグランス及び/又はフレーバーを電子信号によってフレグランス及び/又はフレーバー含有部位を刺激し、芳香させる方法が挙げられる。
【0014】
マラカスの場合では、マラカス内部に収容させる粒子の表面に前記フレグランス及び/又はフレーバー含有液あるいはフレグランス及び/又はフレーバーのマイクロカプセルを含む液を吹きつけ、その後に該賦香された粒子をマラカス内部に収める方法が挙げられる。また他の方法として、フレグランス及び/又はフレーバーを比較的硬い多孔質体粒子に染み込ませ、その後に該賦香された粒子をマラカス内部に収める方法が挙げられる。このときマラカスに粒子径よりも短い細長い窓あるいは細かな孔を多数空けておくと、粒子はマラカスの外部にこぼれることなく、粒子表面あるいは粒子内部のフレグランス及び/又はフレーバーが揮散されやすくなるので、より好都合である。
【0015】
次ぎに上記フレグランス及び/又はフレーバーについて説明する。
上記フレグランス及び/又はフレーバーとしては、上記楽器を使用する者、とくに幼児や高年齢者が好ましい香りであると思えるようなものであれば特に限定されない。また、フレグランスを用いるときには人に対して安全性のあることを確認した上で使用することが好ましい。
【0016】
それらフレグランス及び/又はフレーバーは日常生活において用いられるものであり、天然物から抽出して得られる植物性フレーバー、または天然物中の香気を物理、化学的に処理して分離した単離フレグランス及び/又はフレーバー、化学合成などにより得られる合成フレグランス及び/又はフレーバー、バイオ技術によって得られる発酵フレーバーなどを用いることができる。具体的には、「合成香料」(印藤元一著、化学工業日報社)や「香料の実際知識」(印藤元一著、東洋経済新報社)などに記載されているフレグランス及び/又はフレーバー全般である。
【0017】
さらに、フレグランス及び/又はフレーバー単品だけでなく、単品を組み合わせた調合香料であってもよく、香水をはじめとする化粧品、石鹸、洗剤、歯磨き、口腔剤、浴剤、室内および自動車用芳香剤などのトイレタリー、菓子、チューインガム、各種飲料、酒類、一般食品、乳製品、畜肉食品、調味料、飼料などのフレーバーなどがあり、これらはすでに公知のものであり、独自に調製することができる。
【0018】
これらのフレグランス及び/又はフレーバーは水溶性、油溶性いずれでもよく、香料の形態、形状についても特に限定されるものではない。
【0019】
フレグランスとしては、例えば、花の香料であればバラ、ジャスミン、ラベンダー、水仙,沈丁花、梅、桜、クチナシ、キンモクセイ、ユリ、カーネーション、藤、スズラン、菊、フリージア、シクラメン、ハネーサックル、ヘリオトロープ、ライラック、ミモザ、チュベローズ、バイオレット、イランイラン等香料として使われる香りであればどのような香りでも良いが、好ましくはバラ、ラベンダー、水仙,沈丁花、梅、クチナシ、キンモクセイ、藤など日常嗅ぐ機会のある花をイメージしやすいフレグランスがのぞましい。
【0020】
フレーバーとしては、フレーバーの匂いを嗅いだときに具体的なものの名前を想起できるようなものが好ましい。即ち、人が香料の匂いを嗅いだときに、天然に存在する果物や花など、菓子、コーヒーなどの飲食品のような具体的なものを想起できるフレーバーが好適である。
【0021】
果物のフレーバーとしてはオレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツなどのシトラス類、イチゴ、ブルーベリーなどのベリー類、パイナップル、マンゴー、バナナなどのトロピカルフルーツ類、マスカットや巨峰などのぶどう類の他、チェリー類、メロン、洋なし、キウイ、リンゴ、ピーチなどの香料が挙げられるが、オレンジ、リンゴ、バナナ、イチゴ、ピーチ、ぶどうなど香りをイメージしやすい果物の香料がより好ましい。
食品のフレーバーとしては、コーヒー、紅茶、ココア、緑茶、種々のフルーツジュース、野菜ジュースやコーラ、サイダー、ラムネなどの炭酸飲料、果汁飲料、乳飲料、キャラメル・ドロップ・チョコレート・チューインガム・焼菓子・生菓子等の菓子類などに使うフレーバー、アイスクリーム・ラクトアイス・氷菓などの冷菓類などに使うフレーバー、ハム・ソーセージなどの畜肉加工品類などに使うフレーバーや畜肉の酵素分解物や植物蛋白の加水分解物などをもとに作られたチキン・ビーフなどに使うフレーバー、またガーリック・オニオン・カレーなどのスパイスフレーバーも使うことができる。
【0022】
かくして、得られた賦香された楽器は広い使い道があるが、具体的に例示すると教習具、とくに幼児用あるいは児童・生徒用教習具として使用できる。また、成人、とくに高齢者の意識や意欲向上と持続など精神的な面での改善のための用具として使用でき、痴呆化予防のための用具としても使用できる。また、障害児の意識・意欲向上のための用具、障害者への音楽療法に際しての用具あるいは補助具などなどとして使用することができる。
【0023】
すなわち、本発明は、
フレグランス及び/又はフレーバーで賦香することを特徴とする賦香された楽器を用いた幼児用あるいは児童・生徒用教習具、
上記賦香された楽器を用いた高齢者の精神的な面での改善用用具や痴呆予防具、
上記賦香された楽器を用いた障害者への音楽療法の用具あるいは補助具、
などを包含する。
さらに、本発明は、
上記賦香された楽器を用いることを特徴とする高齢者や障害者の意欲・意識の改善方法、
上記賦香された楽器を用いることを特徴とする障害者の意欲・意識の改善方法、
などを包含する。
【0024】
本発明の賦香された楽器の使用例を以下説明する。
例えば.高齢者福祉施設内にて高齢者に集合してもらう。高齢者に手渡す本発明の賦香された楽器として、異なるフレーバーで賦香した数種類の鈴を予め用意してあるので、一人一人に本発明の賦香されたな鈴を手渡す。高齢者は手渡された鈴から好ましい香りが発せられることに気づき、興味を持ち、関心を示すと共に、隣に居る者が持つ鈴にも関心を示した。
【0025】
指導者の合図に従い、高齢者はスピーカーから聞こえる音楽にあわせて鈴を鳴らし始めた。鈴を振ることにより発せられる音と共に香りが発せられ、楽しそうな高齢者が多かった。
集合してもらった人たちに渡す楽器は全ての人に対して同じ楽器を1種類渡してもよいが、集合してもらった人を幾つかのグループに分けて、それぞれのグループ毎に異なる楽器を渡してもよい。
また、楽器としては同じであるが、その大きさや形や音色、賦香したフレグランス及び/又はフレーバーの種類、さらには楽器表面に施された模様などを変えた楽器を集合してもらった人に渡してもよい。
【0026】
本発明の1つの特徴は、楽器に予め各種方法でフレグランス及び/又はフレーバー発生部位を設けておき、楽器演奏者自身が楽器を演奏することで、芳香が感じられるように工夫したことであり、これを言い換えれば楽器使用者が楽器を利用して音を発生させると共に芳香も出させるようにしたことである。これにより、楽器演奏者あるいは楽器使用者が楽器に対して興味や関心を示し、音に対しても興味や関心を示すようになり、ひいては、楽器演奏者あるいは楽器使用者自身の身の周りの物に興味や関心を持つきっかけとなり、意識の向上や意欲の増大化が期待されるのである。
【0027】
【実施例】
以下に実施例および応用例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 賦香された楽器の調製
木製のマラカスを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、下記調合香料を染み込ませた直径約3mmのシリカゲル粒子をマラカス内に収納させた。シリカゲル粒子の量は取り出した小さな粒子と同体積となるように調整した。また、キリでマラカス表面に多数の孔を開けた。
【0028】
[比較例1] 賦香されていない楽器の調製
実施例1と同じ木製のマラカスを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、実施例1で用いたシリカゲルであって、下記調合香料を染み込ませていないシリカゲル粒子をマラカス内に収納させた。シリカゲル粒子の量は実施例1と同量である。
【0029】
イチゴフレーバーの調製
下記処方によりイチゴフレーバーを調製した。
【0030】
[実施例2] 賦香された楽器の調製
プラスチック製のフルーツシェイカーを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、下記調合香料を染み込ませた直径約3mmの焼結金属粒子をフルーツシェイカー内に収納させた。焼結金属粒子の量は取り出した小さな粒子と同体積となるように調整した。また、キリでフルーツシェイカー表面に多数の孔を開けた。
【0031】
[比較例2] 賦香されていない楽器の調製
実施例2と同じプラスチック製のフルーツシェイカーを購入し、内部の小さな粒子を取り出した。次に、実施例2で用いた焼結金属粒子であって、下記調合香料を染み込ませていない焼結金属粒子をフルーツシェイカー内に収納させた。焼結金属粒子の量は実施例2と同量である。
【0032】
リンゴフレーバーの調製
下記処方に従い、リンゴフレーバーを調製した。
【0033】
[応用例1]
実施例2で調製した賦香されたフルーツシェイカー1個および賦香されていないフルーツシェイカー1個、合計2個を知的障害児1人に与え、20人の障害児の表情を観察する実験を行った。フルーツシェイカーの使い方を説明した後、フルーツシェイカーを使って遊ばせ、遊んでいる様子をビデオ撮影した。
障害児の中から2人の障害児(A・B)を任意に選び、フルーツシェイカーから揮散される香りを嗅いでいる時間を次の方法で測定した。遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、賦香されたフルーツシェイカーで遊んでいる時間、すなわち香りを嗅いでいる時間をコマ送りでカウントすることから知り、実験した時間もコマ送りでカウントできるので、実験した時間と香りを嗅いでいる時間を比較した。
得られた結果を表1に示した。
【0034】
また、賦香されたフルーツシェイカーを与えられた障害児の遊んでいる様子と、賦香されていないフルーツシェイカーを与えられた障害児の遊んでいる様子とを比較・観察した。
その結果、賦香されていないフルーツシェイカーを与えられた障害児はただ振って遊んでいるだけであるのに対して、賦香されたフルーツシェイカーを与えられた障害児は振って遊ぶ他に、フルーツシェイカーを嗅いでみたり、噛んだりして興味を示した。
この結果から、楽器と音楽だけよりも香りを取り入れた方が障害児は意欲的に活動するのではないかと考えられる。
【0035】
表1
【0036】
[応用例2]
知的障害児20人にマラカスの使い方を説明した後、実施例1で調製したマラカス及び比較例1で調製したマラカスを与え、マラカスを使って遊ばせた。障害児の中から任意の一人の障害児(C)に着目し、2種類のマラカスで遊んでいる様子をビデオ撮影した。
【0037】
遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、障害児(C)が手にした賦香されたフルーツシェイカーを1分間の間に振った回数、および賦香されていないフルーツシェイカーを1分間の間に振った回数を3分間にわたってカウントした。得られた結果を表2に示した。
遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、コマ送りでのカウントの結果、障害児Cの実験時間は5分35秒、香りを嗅いでいる時間は11.1秒であった。
遊んでいる様子を撮影したビデオを再生して、10秒毎に障害児の表情を、障害児の全体から評価した。評価は下記評価項目に従い、5人が行った。なお、このときには賦香されたマラカスか賦香されていないマラカスかについては伝えていない。
【0038】
表情の評価項目は下記の通りである。
1.楽しそう、2.はしゃいでいる、3.集中している、4.おもしろそう、5.興味がありそう、6.興味がなさそう、7.迷っている、8.つまらなそう、9.悩んでいる、10.ぼーっとしている、
1.から5.までの項目は積極的な評価項目と考えられ、6.から10.までの項目は消極的な評価項目と考えられる。
なお、障害児の表情に対する5人の評価結果が同じではないときには、評価数が多い評価項目をもって、表情に対する評価結果とした。
【0039】
上記評価結果から、時間の経過による表情の変化(推移)を数値化し、数値化表を作成した。
この数値化表を作成する手順は次の通りである。縦、横それぞれに表情の評価項目に対応する1〜10を目盛った表を作成する。次に、例えば、評価項目が1から5に変化(推移)したときには、縦の欄が1のところで横の欄の5のところに1を置く。以下、同様な操作を行い、全ての変化(推移)を上記目盛った表内に1を置く。目盛った表内の全ての欄について置かれた1の数の和をそれぞれ記載し、数値化表が完成される。
その結果を表3および表4に示した。
【0040】
表2 フルーツシェイカーを振った1分間あたりの回数
【0041】
表3 賦香されたマラカスで遊んだときの表情の変化(推移)の数値化表
表中、一番左の欄および一番上の欄に記載されている数字は表情の評価項目を示し、上記評価項目の説明にて説明されている数字に対応する。(以下、同様)
【0042】
表4 賦香されていないマラカスで遊んだとき表情の変化(推移)の数値化表
【0043】
かくして完成された数値化表を基にして表情の推移確率を算出する。具体的な方法は次の通りである。表情の推移確率は、観察された遊び時間中のある表情(a)から次の表情(e)へ変化(推移)した回数を、観察された遊び時間中の各表情(a)の合計で除して得られた数値に100をかけた値(%)で表した。(具体的には表情(1)から表情(5)に変化(推移)する確率は、表情(1)から表情(5)に変化(推移)した回数2を表情(5)の合計数9で除して得られた数値に100をかけた値(%)で表した。)。総計欄は各表情の合計数を表情の層合計数で除して得られた数値に100をかけた値(%)で表した。
得られた結果を表5および表6に示した。
また、その他の評価結果を表6の次に記載した。
【0044】
表5 賦香されたマラカスで遊んだときの表情の推移確率
【0045】
表6 賦香されていないマラカスで遊んだときの表情の推移確率
【0046】
本発明の賦香された楽器を使用することにより、次のような効果をもたらすことができるといえる。
(1) 表情の変化(推移)の数値化表(表3および表4)の結果から:
表3では、ぼーっとした表情(10)から積極的な項目(1.から5.まで)の表情に変化(推移)した回数は18であるのに対し、ぼーっとした表情(10)から消極的な項目(6.から10.まで)の表情に変化(推移)した回数は4である。
一方、表4では、ぼーっとした表情(10)から積極的な項目(1.から5.まで)の表情に変化(推移)した回数は6であるのに対し、ぼーっとした表情(10)から消極的な項目(6.から10.まで)の表情に変化(推移)した回数は12である。
これを表7に示した。
表7 ぼーっとした表情からどのような表情に変化(推移)したか
この表から、賦香されたマラカスで遊ぶことは有効であるといえる。また、音楽療法に香りを取り入れた方が、楽器と音楽だけより被験者が意欲的に活動するのではないかと考えられた。
【0047】
(2) また、表情の推移確率(表5および表6)の結果から:
表5の総計の欄から、積極的な項目(1.から5.まで)の表情にいたる推移確率はより高いのに対して、表6の総計の欄から、積極的な項目(1.から5.まで)の表情にいたる推移確率はより低いといえる。
表5および表6の総計をまとめて見ると、次のような表7を得られる。
【0048】
表7
この表から賦香されていないマラカスのときには積極的な評価項目の合計は50%でしかないのに対して、賦香されたマラカスのときには65%に達した。
このことからも賦香されたマラカスを使用することが有効であるといえる。また、音楽療法に香りを取り入れた方が、楽器と音楽だけより被験者が意欲的に活動するのではないかと考えられた。
【0049】
【発明の効果】
本発明により、賦香された楽器、とくに賦香された鍵盤楽器あるいはリズム打楽器が簡単に調製される。この楽器を手にした高齢者、障害者は楽器に関心・興味を示し、楽器に熱中しやすくなることが明らかとなった。本発明の楽器を使用することにより、高齢者あるいは障害者の意識や意欲を高めることが可能となる他、身の周りの物事に関心や興味を抱き、行動する意欲が増し、行動に楽しさを感じるように変化することを期待できるようになった。さらには高齢者の痴呆化への予防をも期待できる。
また、本発明の賦香された楽器は、人に対して安全であるフレグランス及び/又はフレーバーを使用しているので、幼児、高齢者、障害児が使用してもなんら不安・心配がない。
Claims (2)
- 楽器をフレグランス及び/又はフレーバーで賦香することを特徴とする賦香された楽器。
- 楽器が鍵盤楽器又はリズム楽器である請求項1記載の賦香された楽器。
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2003
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