JP2004223089A - 枕カバー - Google Patents
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Abstract
【課題】清潔感、印刷適性、触感に優れ、エンボス性も良好で、使用後のリサイクルが可能で、さらに廃棄した場合にも分解性を有し、環境に与える影響の少ない、コスト的にも安価な枕カバーの提供を課題とする。
【解決手段】マーセル化パルプ及び木材パルプからなり、好ましくはマーセル化パルプと木材パルプの重量比が10:90〜50:50となる混抄シートから枕カバーを製造する。また、この混抄シートは合成繊維を含有してもよく、マーセル化パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%であることが好ましい。
【解決手段】マーセル化パルプ及び木材パルプからなり、好ましくはマーセル化パルプと木材パルプの重量比が10:90〜50:50となる混抄シートから枕カバーを製造する。また、この混抄シートは合成繊維を含有してもよく、マーセル化パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%であることが好ましい。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材パルプを含有する混抄シートから成る枕カバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
枕カバーは、枕本体の汚れを防止する、あるいは色や外観の変化を楽しむために使用されるものである。航空機、バス、鉄道車両等の乗り物の座席のヘッドレスト、あるいは病院、旅館等で使用する枕には、不特定多数の人が利用することから使い捨ての枕カバーが使用される。この枕カバーは、直接あるいは頭髪に接することから、使用時の接触感がよく、清潔感に優れ、使い捨ての場合にはできるだけ安価なものが望まれる。
【0003】
従来、枕カバーとして合成繊維の不織布が使用されてきた。合成繊維の不織布から成る枕カバーは柔軟で感触が良く、取り扱い時に適当な強度を有し、比較的安価であるが、使用後リサイクルができないこと、分解しないため焼却することが必要であることなどの問題がある。特に、焼却する場合には、焼却時の高温による焼却炉の破損、有害なガスの発生などの問題も生じる。
【0004】
また、枕カバーの機能として頭髪の油脂分あるいは頭髪に付着している整髪料等を吸収することが求められる。合成繊維の不織布はこの機能を有するものの、一般的に合成繊維の不織布は地合ムラが大きく、未使用の状態にもかかわらず、あたかも油脂分や整髪料が付着しているように見えるため、清潔感の点で不十分であった。
【0005】
さらに図柄等を印刷する場合、通常のインクでは鮮明な印刷ができないので、特殊なインクを使用する必要があり、コストの面でも問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、全繊維分の60重量%以上が針葉樹パルプであるシートから構成され、かつ柔軟剤を含有した枕カバーが提案されているが(特許文献1参照)、柔軟剤の添加には手間がかかり、また、エンボス処理をしても、凹凸模様を深く出すことも困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−276329号公報(請求項1)
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、清潔感、印刷適性、触感に優れ、エンボス性も良好で、使用後のリサイクルが可能で、さらに廃棄した場合にも分解性を有し環境に与える影響の少ない、コスト的にも安価な枕カバーの提供をすることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マーセル化パルプ及び木材パルプを含有する混抄シートより枕カバーを製造することで、前記の課題が解決されることを見出した。このような枕カバーを得るには、マーセル化パルプと木材パルプの重量比は10:90〜50:50であることが好ましい。また、マーセル化パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の枕カバーは、マーセル化パルプ及び木材パルプを含有する混抄シートから製造されるものである。
【0010】
本発明で使用されるマーセル化パルプは、原料パルプをアルカリ水溶液で処理したものである。この時に使用されるマーセル化パルプの原料は特に制限されるものでは無く、針葉樹、広葉樹、非木材繊維等を使用することができる。非木材繊維としては、例えば、ケナフ、ジュート、リンター、マニラ麻、竹、わら、バガス、エスパルト等から選択することが可能である。
【0011】
本発明におけるマーセル化処理は、アルカリ水溶液にパルプを浸漬して行うことができる他、噴霧等によってアルカリ水溶液をパルプ中に含浸させることによって行うこともできる。アルカリ水溶液としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の苛性アルカリ及び炭酸塩等のアルカリ水溶液を使用することが好ましい。マーセル化処理を進めるとセルロースは著しく膨潤し、セルロースの結晶構造も、セルロースIからアルカリセルロースI、そしてさらにより安定的な結晶形をとるアルカリセルロースIIへと変化する。上記のアルカリセルロースI及びアルカリセルロースIIは、洗浄・乾燥されることによってセルロースIIに変化する。また、セルロースIIは種々の試薬に対する吸着性が高く、反応しやすくなっている。
【0012】
本発明で使用するマーセル化パルプにおいては、パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%となるように、一連の処理を行うことが好ましい。セルロースIIの含有量が50重量%未満であると、柔軟性を得ることができない。マーセル化処理は公知の方法によって行えば良く、通常は、パルプをアルカリ水溶液中に浸漬し、室温で10分〜24時間程度処理すれば良い。セルロースIIの含有量は次式により算出される。
【0013】
セルロースII含有量(%)=(I−II)/(III−II)×100
ここでIIは原料パルプ(セルロースI含有量100%)、IIIは完全にマーセル化処理したパルプ(セルロースII含有量100%)それぞれの、2θ=19.8°におけるバックグラウンドの強度を差引いた結晶性干渉強度である。また、Iは測定しようとする試料の2θ=19.8°における結晶性干渉強度である(北海道大学工学部研究報告No.75、p125)。
【0014】
水酸化ナトリウムを例に取ると、マーセル化パルプ中のセルロースIIの含有量を50〜100重量%とする為に必要なアルカリ水溶液の濃度は9重量%以上50重量%以下であり、好ましくは12〜25重量%である。なお、マーセル化処理は、アルカリ水溶液の濃度が9〜25重量%の場合には10〜40℃で行うことが好ましい。パルプをマーセル化処理した後のアルカリ水溶液は、必要に応じて濾過や遠心分離などによってパルプから分離し、再使用することができる。
【0015】
本発明においては、アルカリ水溶液によるマーセル化処理によってパルプ中に多量のアルカリ分が残存するので、水や酸水溶液による洗浄によってアルカリ分を除去することが好ましい。酸水溶液としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の鉱酸またはこれらの酸性塩、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等の亜鉛塩を水に溶解したものが使用される。
【0016】
本発明では、マーセル化パルプとして嵩高パルプを使用することが望ましい。嵩高パルプを使用することで、より嵩高で、柔軟性に優れた枕カバーを得ることができる。本発明で使用される嵩高パルプは、原料パルプをアルカリ水溶液を用いてマーセル化処理した後、50〜100℃の温水を用いて処理する(以下、単に「温水処理」とする)ことにより製造される。温水処理を行うことで、マーセル化パルプよりさらに嵩高なパルプを得ることができる。
【0017】
嵩高パルプの原料は特に制限されるものではなく、針葉樹、広葉樹、非木材繊維等を使用することができる。非木材繊維としては、例えば、ケナフ、ジュート、リンター、マニラ麻、竹、わら、バガス、エスパルト等から選択することが可能である。本発明においては、これらの材種を、亜硫酸塩パルプ化(サルファイト法。これによって得られたパルプをSPとする。)あるいはクラフトパルプ化(クラフト法。これによって得られたパルプをKPとする。)するか、SPやKPをさらに化学的に精製して、α−セルロース含有量を高めた溶解パルプ(DP)をマーセル化パルプの原料として使用する。
【0018】
本発明で使用する嵩高パルプにおいては、嵩高パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%となるように、一連の処理を行うことが好ましい。マーセル化処理は前述の方法に従って行えば良い。
【0019】
次に、本発明におけるマーセル化処理後の温水処理について説明する。この処理には50〜100℃の温水を使用する必要があり、好ましくは70〜100℃の温水を使用する。50℃未満の温水で処理しても、十分に嵩高であるパルプは得られない。アルカリ分を除去する工程を経てから温水処理する場合には、50〜100℃の温水で連続的に洗浄することによって、実質的に一工程で洗浄から温水処理までの工程を行ってもよい。また、温水処理におけるpHは3〜12、好ましくは5〜10である。pHがこの範囲外であると、セルロースの加水分解が顕著となり、嵩高化に悪影響を与えるだけではなく収率も低下する。
【0020】
温水処理は、30分以上行うことが好ましく、2時間以上行うことがより好ましい。しかしながら、処理時間が5時間を超えても嵩高化の効果は頭打ちとなる。また、温水処理時に撹拌等の手段によってパルプ繊維をある程度屈曲化させると、さらに嵩高化されたパルプが得られるので好ましい。
【0021】
本発明の枕カバー用混抄シートは良好な地合を確保するために木材パルプを使用する。木材パルプとしては、樹種は特に限定されないが、柔軟性付与のためには繊維長が長いものが好ましい。パルプの種類としては、化学パルプ、機械パルプのいずれも使用できるが、柔軟性、印刷適性、清潔感の点から漂白した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を使用することが好ましい。NBKPを使用する場合はCSF500〜700ml程度に軽度に叩解されていることが好ましい。木材パルプを使用することによって、合成繊維のみから成る不織布よりも良好な地合のシートが得られる。
【0022】
マーセル化パルプと木材パルプの混合割合は、重量比で10:90〜50:50であることが好ましい。マーセル化パルプの配合率が10重量%未満であると、シートは柔軟性が不十分で、厚みも低下するため、深いエンボスが入らなくなる。また、マーセル化パルプの配合率が50重量%を超えると、強度の低下、地合の悪化が起こり、さらに印刷適性及び清潔感も不良となる。
【0023】
本発明の枕カバーは、マーセル化パルプ及び木材パルプの他に合成繊維を含有してもよい。合成繊維としては、任意の合成繊維を選択することが可能であるが、融点が100〜180℃の熱融着繊維が好ましい。例えば、三井化学株式会社よりSWPの商品名で市販されているポリオレフィン系合成パルプを使用することにより、エンボス加工時に凹凸模様の型崩れを起こしにくく、意匠性を付与することができる。合成繊維の配合量は50重量%以下が好ましく、50重量%を越えると柔軟性が低下してしまう。
【0024】
本発明の枕カバーの製造のために使用する混抄シートを製造するには、抄紙機によって抄造すればよい。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機等の紙の抄造において通常使用されるものでよい。枕カバーは、混抄シートを裁断・加工して常法に従って作成する。
【0025】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、説明中、%は重量%を示す。
【0026】
<マーセル化パルプ(原料A)の製造と調成>
市販針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の未叩解品に、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液をパルプ濃度が5%となるように加え、20℃で30分間浸漬してマーセル化処理した。次に、十分に水洗してpHを7に調整した。なお、得られたマーセル化パルプのセルロースIIの含有率は100%であった。このマーセル化パルプ(原料A)のCSFは750mlであった。
【0027】
<嵩高パルプ(原料B)の製造と調成>
市販針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の未叩解品に、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液をパルプ濃度が5%となるように加え、20℃で30分間浸漬してマーセル化処理した。次に、十分に水洗してpHを7に調整した後、パルプ濃度が5%となるように温水を加えて70℃で2時間処理し、次いで遠心脱水機を用いてパルプと温水を分別した。なお、得られた嵩高パルプのセルロースIIの含有率は100%であった。この嵩高パルプ(原料B)のカナダ標準フリーネス(以下、CSFとする)は750mlであった。
【0028】
<NBKP(原料C)の調成>
市販NBKPをダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、CSF650mlの原料Cを得た。
【0029】
<合成繊維(原料D)>
ポリオレフィン合成パルプ(商品名:SWP E790(平均繊維長1.6mm、密度0.96g/cm3、融点135℃のパルプ状多分岐繊維)、三井化学株式会社製)を使用した。
【0030】
[実施例1]
原料(A)及び(C)より配合重量比率がA/C=25/75となるように紙料を調成し、湿潤紙力増強剤を加えて、長網抄紙機にて、坪量30g/m2となるように抄紙し、枕カバーを作成した。
【0031】
[実施例2]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=10/90となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバー用の混抄シートを作成した。
【0032】
[実施例3]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=25/75となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0033】
[実施例4]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=50/50となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0034】
[実施例5]
原料(B)、(C)及び(D)の配合重量比率がB/C/D=20/50/30となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0035】
[比較例1]
原料(C)のみより紙料を調整した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0036】
[比較例2]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=80/20となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0037】
[参考例]
実際に航空機内で使用されている合成繊維の不織布から成る市販の枕カバーである。
【0038】
実施例、比較例及び参考例で得られた枕カバー用混抄シートについて、調湿後JIS規格に準拠してシート密度、強度、クラークこわさを測定した。また、地合、印刷濃度、裂断長、離解性についても下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
・地合:試料に光を当てて透かして繊維の分布状態を観察し、○:良い、△:普通、×:悪いの4段階で評価した。
・印刷適性:グラビア印刷試験機(熊谷理器工業株式会社製)を用いて、試料に黒インク(商品名PSW92型、東洋インキ製造株式会社製)で印刷し、印刷・印字状態を目視で、○:良い、△:普通、×:悪いの3段階で評価した。
・離解性:JIS P8209パルプ試験用手抄き紙調成方法に示されている標準離解機(Tappi標準離解機:3000rpm)を用いて、常温の水道水に約2.5cm角に裁断したシートをパルプ濃度3%となる量を離解し、パルプ状になるまでの時間を測定した。離解時間が13分以下のものを○:良い、13分を超えるものを×:悪いと評価した。
【0039】
【表1】
実施例1〜5に示される本発明の枕カバー用混抄シートは、比較例1の針葉樹晒しクラフトパルプから成るものに比べてクラークこわさが低いことから触感に優れており、地合、印刷適性、強度にも優れている。また、離解性にも優れることからリサイクル適性も十分である。また、マーセル化パルプの配合率が50%を超えた比較例2では、強度が弱くなり、地合、印刷適性とも良好ではない。
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材パルプを含有する混抄シートから成る枕カバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
枕カバーは、枕本体の汚れを防止する、あるいは色や外観の変化を楽しむために使用されるものである。航空機、バス、鉄道車両等の乗り物の座席のヘッドレスト、あるいは病院、旅館等で使用する枕には、不特定多数の人が利用することから使い捨ての枕カバーが使用される。この枕カバーは、直接あるいは頭髪に接することから、使用時の接触感がよく、清潔感に優れ、使い捨ての場合にはできるだけ安価なものが望まれる。
【0003】
従来、枕カバーとして合成繊維の不織布が使用されてきた。合成繊維の不織布から成る枕カバーは柔軟で感触が良く、取り扱い時に適当な強度を有し、比較的安価であるが、使用後リサイクルができないこと、分解しないため焼却することが必要であることなどの問題がある。特に、焼却する場合には、焼却時の高温による焼却炉の破損、有害なガスの発生などの問題も生じる。
【0004】
また、枕カバーの機能として頭髪の油脂分あるいは頭髪に付着している整髪料等を吸収することが求められる。合成繊維の不織布はこの機能を有するものの、一般的に合成繊維の不織布は地合ムラが大きく、未使用の状態にもかかわらず、あたかも油脂分や整髪料が付着しているように見えるため、清潔感の点で不十分であった。
【0005】
さらに図柄等を印刷する場合、通常のインクでは鮮明な印刷ができないので、特殊なインクを使用する必要があり、コストの面でも問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、全繊維分の60重量%以上が針葉樹パルプであるシートから構成され、かつ柔軟剤を含有した枕カバーが提案されているが(特許文献1参照)、柔軟剤の添加には手間がかかり、また、エンボス処理をしても、凹凸模様を深く出すことも困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−276329号公報(請求項1)
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、清潔感、印刷適性、触感に優れ、エンボス性も良好で、使用後のリサイクルが可能で、さらに廃棄した場合にも分解性を有し環境に与える影響の少ない、コスト的にも安価な枕カバーの提供をすることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マーセル化パルプ及び木材パルプを含有する混抄シートより枕カバーを製造することで、前記の課題が解決されることを見出した。このような枕カバーを得るには、マーセル化パルプと木材パルプの重量比は10:90〜50:50であることが好ましい。また、マーセル化パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の枕カバーは、マーセル化パルプ及び木材パルプを含有する混抄シートから製造されるものである。
【0010】
本発明で使用されるマーセル化パルプは、原料パルプをアルカリ水溶液で処理したものである。この時に使用されるマーセル化パルプの原料は特に制限されるものでは無く、針葉樹、広葉樹、非木材繊維等を使用することができる。非木材繊維としては、例えば、ケナフ、ジュート、リンター、マニラ麻、竹、わら、バガス、エスパルト等から選択することが可能である。
【0011】
本発明におけるマーセル化処理は、アルカリ水溶液にパルプを浸漬して行うことができる他、噴霧等によってアルカリ水溶液をパルプ中に含浸させることによって行うこともできる。アルカリ水溶液としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の苛性アルカリ及び炭酸塩等のアルカリ水溶液を使用することが好ましい。マーセル化処理を進めるとセルロースは著しく膨潤し、セルロースの結晶構造も、セルロースIからアルカリセルロースI、そしてさらにより安定的な結晶形をとるアルカリセルロースIIへと変化する。上記のアルカリセルロースI及びアルカリセルロースIIは、洗浄・乾燥されることによってセルロースIIに変化する。また、セルロースIIは種々の試薬に対する吸着性が高く、反応しやすくなっている。
【0012】
本発明で使用するマーセル化パルプにおいては、パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%となるように、一連の処理を行うことが好ましい。セルロースIIの含有量が50重量%未満であると、柔軟性を得ることができない。マーセル化処理は公知の方法によって行えば良く、通常は、パルプをアルカリ水溶液中に浸漬し、室温で10分〜24時間程度処理すれば良い。セルロースIIの含有量は次式により算出される。
【0013】
セルロースII含有量(%)=(I−II)/(III−II)×100
ここでIIは原料パルプ(セルロースI含有量100%)、IIIは完全にマーセル化処理したパルプ(セルロースII含有量100%)それぞれの、2θ=19.8°におけるバックグラウンドの強度を差引いた結晶性干渉強度である。また、Iは測定しようとする試料の2θ=19.8°における結晶性干渉強度である(北海道大学工学部研究報告No.75、p125)。
【0014】
水酸化ナトリウムを例に取ると、マーセル化パルプ中のセルロースIIの含有量を50〜100重量%とする為に必要なアルカリ水溶液の濃度は9重量%以上50重量%以下であり、好ましくは12〜25重量%である。なお、マーセル化処理は、アルカリ水溶液の濃度が9〜25重量%の場合には10〜40℃で行うことが好ましい。パルプをマーセル化処理した後のアルカリ水溶液は、必要に応じて濾過や遠心分離などによってパルプから分離し、再使用することができる。
【0015】
本発明においては、アルカリ水溶液によるマーセル化処理によってパルプ中に多量のアルカリ分が残存するので、水や酸水溶液による洗浄によってアルカリ分を除去することが好ましい。酸水溶液としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の鉱酸またはこれらの酸性塩、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等の亜鉛塩を水に溶解したものが使用される。
【0016】
本発明では、マーセル化パルプとして嵩高パルプを使用することが望ましい。嵩高パルプを使用することで、より嵩高で、柔軟性に優れた枕カバーを得ることができる。本発明で使用される嵩高パルプは、原料パルプをアルカリ水溶液を用いてマーセル化処理した後、50〜100℃の温水を用いて処理する(以下、単に「温水処理」とする)ことにより製造される。温水処理を行うことで、マーセル化パルプよりさらに嵩高なパルプを得ることができる。
【0017】
嵩高パルプの原料は特に制限されるものではなく、針葉樹、広葉樹、非木材繊維等を使用することができる。非木材繊維としては、例えば、ケナフ、ジュート、リンター、マニラ麻、竹、わら、バガス、エスパルト等から選択することが可能である。本発明においては、これらの材種を、亜硫酸塩パルプ化(サルファイト法。これによって得られたパルプをSPとする。)あるいはクラフトパルプ化(クラフト法。これによって得られたパルプをKPとする。)するか、SPやKPをさらに化学的に精製して、α−セルロース含有量を高めた溶解パルプ(DP)をマーセル化パルプの原料として使用する。
【0018】
本発明で使用する嵩高パルプにおいては、嵩高パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%となるように、一連の処理を行うことが好ましい。マーセル化処理は前述の方法に従って行えば良い。
【0019】
次に、本発明におけるマーセル化処理後の温水処理について説明する。この処理には50〜100℃の温水を使用する必要があり、好ましくは70〜100℃の温水を使用する。50℃未満の温水で処理しても、十分に嵩高であるパルプは得られない。アルカリ分を除去する工程を経てから温水処理する場合には、50〜100℃の温水で連続的に洗浄することによって、実質的に一工程で洗浄から温水処理までの工程を行ってもよい。また、温水処理におけるpHは3〜12、好ましくは5〜10である。pHがこの範囲外であると、セルロースの加水分解が顕著となり、嵩高化に悪影響を与えるだけではなく収率も低下する。
【0020】
温水処理は、30分以上行うことが好ましく、2時間以上行うことがより好ましい。しかしながら、処理時間が5時間を超えても嵩高化の効果は頭打ちとなる。また、温水処理時に撹拌等の手段によってパルプ繊維をある程度屈曲化させると、さらに嵩高化されたパルプが得られるので好ましい。
【0021】
本発明の枕カバー用混抄シートは良好な地合を確保するために木材パルプを使用する。木材パルプとしては、樹種は特に限定されないが、柔軟性付与のためには繊維長が長いものが好ましい。パルプの種類としては、化学パルプ、機械パルプのいずれも使用できるが、柔軟性、印刷適性、清潔感の点から漂白した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を使用することが好ましい。NBKPを使用する場合はCSF500〜700ml程度に軽度に叩解されていることが好ましい。木材パルプを使用することによって、合成繊維のみから成る不織布よりも良好な地合のシートが得られる。
【0022】
マーセル化パルプと木材パルプの混合割合は、重量比で10:90〜50:50であることが好ましい。マーセル化パルプの配合率が10重量%未満であると、シートは柔軟性が不十分で、厚みも低下するため、深いエンボスが入らなくなる。また、マーセル化パルプの配合率が50重量%を超えると、強度の低下、地合の悪化が起こり、さらに印刷適性及び清潔感も不良となる。
【0023】
本発明の枕カバーは、マーセル化パルプ及び木材パルプの他に合成繊維を含有してもよい。合成繊維としては、任意の合成繊維を選択することが可能であるが、融点が100〜180℃の熱融着繊維が好ましい。例えば、三井化学株式会社よりSWPの商品名で市販されているポリオレフィン系合成パルプを使用することにより、エンボス加工時に凹凸模様の型崩れを起こしにくく、意匠性を付与することができる。合成繊維の配合量は50重量%以下が好ましく、50重量%を越えると柔軟性が低下してしまう。
【0024】
本発明の枕カバーの製造のために使用する混抄シートを製造するには、抄紙機によって抄造すればよい。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機等の紙の抄造において通常使用されるものでよい。枕カバーは、混抄シートを裁断・加工して常法に従って作成する。
【0025】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、説明中、%は重量%を示す。
【0026】
<マーセル化パルプ(原料A)の製造と調成>
市販針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の未叩解品に、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液をパルプ濃度が5%となるように加え、20℃で30分間浸漬してマーセル化処理した。次に、十分に水洗してpHを7に調整した。なお、得られたマーセル化パルプのセルロースIIの含有率は100%であった。このマーセル化パルプ(原料A)のCSFは750mlであった。
【0027】
<嵩高パルプ(原料B)の製造と調成>
市販針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の未叩解品に、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液をパルプ濃度が5%となるように加え、20℃で30分間浸漬してマーセル化処理した。次に、十分に水洗してpHを7に調整した後、パルプ濃度が5%となるように温水を加えて70℃で2時間処理し、次いで遠心脱水機を用いてパルプと温水を分別した。なお、得られた嵩高パルプのセルロースIIの含有率は100%であった。この嵩高パルプ(原料B)のカナダ標準フリーネス(以下、CSFとする)は750mlであった。
【0028】
<NBKP(原料C)の調成>
市販NBKPをダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、CSF650mlの原料Cを得た。
【0029】
<合成繊維(原料D)>
ポリオレフィン合成パルプ(商品名:SWP E790(平均繊維長1.6mm、密度0.96g/cm3、融点135℃のパルプ状多分岐繊維)、三井化学株式会社製)を使用した。
【0030】
[実施例1]
原料(A)及び(C)より配合重量比率がA/C=25/75となるように紙料を調成し、湿潤紙力増強剤を加えて、長網抄紙機にて、坪量30g/m2となるように抄紙し、枕カバーを作成した。
【0031】
[実施例2]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=10/90となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバー用の混抄シートを作成した。
【0032】
[実施例3]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=25/75となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0033】
[実施例4]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=50/50となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0034】
[実施例5]
原料(B)、(C)及び(D)の配合重量比率がB/C/D=20/50/30となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0035】
[比較例1]
原料(C)のみより紙料を調整した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0036】
[比較例2]
原料(B)及び(C)の配合重量比率がB/C=80/20となるように紙料を調成した以外は、実施例1と同様にして枕カバーを作成した。
【0037】
[参考例]
実際に航空機内で使用されている合成繊維の不織布から成る市販の枕カバーである。
【0038】
実施例、比較例及び参考例で得られた枕カバー用混抄シートについて、調湿後JIS規格に準拠してシート密度、強度、クラークこわさを測定した。また、地合、印刷濃度、裂断長、離解性についても下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
・地合:試料に光を当てて透かして繊維の分布状態を観察し、○:良い、△:普通、×:悪いの4段階で評価した。
・印刷適性:グラビア印刷試験機(熊谷理器工業株式会社製)を用いて、試料に黒インク(商品名PSW92型、東洋インキ製造株式会社製)で印刷し、印刷・印字状態を目視で、○:良い、△:普通、×:悪いの3段階で評価した。
・離解性:JIS P8209パルプ試験用手抄き紙調成方法に示されている標準離解機(Tappi標準離解機:3000rpm)を用いて、常温の水道水に約2.5cm角に裁断したシートをパルプ濃度3%となる量を離解し、パルプ状になるまでの時間を測定した。離解時間が13分以下のものを○:良い、13分を超えるものを×:悪いと評価した。
【0039】
【表1】
実施例1〜5に示される本発明の枕カバー用混抄シートは、比較例1の針葉樹晒しクラフトパルプから成るものに比べてクラークこわさが低いことから触感に優れており、地合、印刷適性、強度にも優れている。また、離解性にも優れることからリサイクル適性も十分である。また、マーセル化パルプの配合率が50%を超えた比較例2では、強度が弱くなり、地合、印刷適性とも良好ではない。
Claims (5)
- マーセル化パルプと木材パルプを含有する混抄シートから成る枕カバー。
- マーセル化パルプと木材パルプの重量比が10:90〜50:50である請求項1記載の枕カバー
- 混抄シートが合成繊維を含有する請求項1ないし2記載の枕カバー。
- マーセル化パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%である請求項1〜3の何れかに記載の枕カバー。
- 混抄シートにエンボス処理を施すことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の枕カバー。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014109082A (ja) * | 2012-12-03 | 2014-06-12 | Daio Paper Corp | 包装材 |
JP2018168514A (ja) * | 2017-03-30 | 2018-11-01 | 北越コーポレーション株式会社 | 薬液含浸基材及びその製造方法 |
-
2003
- 2003-01-24 JP JP2003016639A patent/JP2004223089A/ja active Pending
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