JP2004219788A - 光スイッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】小型でかつ集積化が容易で、しかも製造が容易な光スイッチを提供する。
【解決手段】コア部を有し、そのコア部とクラッド部とによって光導波路が内部に形成された撓み変形可能な導波路シートと、光導波路を切断するように導波路シートの一方の面に形成された切り込みを含みその切り込みの対向する2つの切断面を接近又は離隔させることにより光導波路を開閉する開閉機構部と、導波路シートを導波路シートが開閉機構部において撓み変形可能に保持する基板を含み、開閉機構部は導波路シート電極と基板電極との間に印加される電圧に対応する静電力で光導波路を撓ませることによって光導波路を開閉させる。
【選択図】 図2
【解決手段】コア部を有し、そのコア部とクラッド部とによって光導波路が内部に形成された撓み変形可能な導波路シートと、光導波路を切断するように導波路シートの一方の面に形成された切り込みを含みその切り込みの対向する2つの切断面を接近又は離隔させることにより光導波路を開閉する開閉機構部と、導波路シートを導波路シートが開閉機構部において撓み変形可能に保持する基板を含み、開閉機構部は導波路シート電極と基板電極との間に印加される電圧に対応する静電力で光導波路を撓ませることによって光導波路を開閉させる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光スイッチ、特に、光通信、光情報処理等の分野における使用に適した光路切替手段としての光スイッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
光導波路を横断するように設けられた切り込みの間隙を、接近および離隔させることによって光の進路を選択する光スイッチは例えば、特許文献1に開示されている(例えば、特許文献1の図7および図8参照。)。
より具体的には、特許文献1に開示された従来例の光スイッチでは、駆動手段を用いてフィルム状の導波路シートの交差部を板材の厚み方向に変位させることによって、切り込みの間隙の状態を変え、光路の切替を行う。切り込みが開いている場合には、交差部に到達した光は切り込み部に生じた空気層によって、導波路と空気層との界面にて反射して進行方向を変えて伝播する。一方、切り込みが閉じている場合には、空気層がないために光は進行方向を変えることなく伝播する。この光スイッチにおいては、切り込み部の状態を変化させる駆動手段として、プッシュロッドを使用している。
【0003】
また、非特許文献1には、上に示した導波路交差部に切り込みの入ったフィルム状の光導波路を備えた光スイッチにおいて、駆動手段としてピエゾアクチュエータを適用し得ることが示されている。
これらの先行例の光スイッチは、製造が容易で光損失が少なく大規模化に対応でき、屈折率整合オイルを用いバブルの発生によって切り換えを行う方式で問題となる切替異常や光路周辺の焼損の発生のないという利点がある。
【0004】
【特許文献1】
特開 2002−174784号公報
【非特許文献1】
OFC 2002 ( Optical Fiber Communication Conference, 2002 年 3 月 19 日) TuC2 ( T.Saito, S.Tabata, A.Sugitatsu and T.Hatta ”Mechanical optical switch using flexible polymeric waveguide” )
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の光スイッチでは、駆動機構と光導波路部材とが別個に必要となり、多数のピエゾ素子やプッシュロッドと光導波路部材の位置調整が必要であるという問題点があった。光スイッチを低コストで実現するためには、光スイッチを更に小型にし、かつ集積化し、しかもアセンブリの簡略化を図ることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、小型でかつ集積化が容易で、しかも製造が容易な光スイッチを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために、本発明に係る光スイッチは、コア部を有し、そのコア部とそのコア部の周りのクラッド部とによって光導波路が内部に形成された撓み変形可能な導波路シートと、少なくとも上記光導波路を切断するように上記導波路シートの一方の面に形成された切り込みを含みその切り込みの対向する2つの切断面を接近又は離隔させることにより上記光導波路を開閉する開閉機構部とを備えた光スイッチにおいて、上記導波路シートを、上記導波路シートが上記開閉機構部において撓み変形可能に保持する基板をさらに含み、上記開閉機構部は上記導波路シートに形成された導波路シート電極と上記基板に形成された基板電極との間に印加される電圧に対応する静電力で上記光導波路を撓ませることによって光導波路を開閉させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態の光スイッチについて説明する。
実施の形態1.
本発明に係る実施の形態1の光スイッチは、図1及び図2に示すように、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1の間に、撓み変形可能な、例えば高分子材料からなるフィルム状の導波路シート3が配置されることにより構成されており、光導波路の交差部に設けられた切り込み32によって光信号を伝播させる光導波路を切り換えることができる光スイッチである。
ここで、特に本実施の形態1の光スイッチは、切り込み32を含んで構成された開閉機構部において、切り込み32の周辺部の導波路シート3を静電力により撓み変形させてその切り込みの2つの切断面を接近又は離隔させることにより光導波路31の開閉を制御している。
【0009】
(導波路シート3の構成)
本実施の形態1において、導波路シート3には、互いに交わることのない2つの第1の光導波路31aと、互いに交わることのない2つの第2の光導波路31bとが形成されており、第1の光導波路31aはそれぞれ2つの第2の光導波路31bと交わっている(この交わっている部分を交差部という。)。
尚、本実施の形態1では、好ましい形態として、2つの第1の光導波路31aは互いに平行に形成されており、第2の光導波路31bは互いに平行に形成され、第1の光導波路31aはそれぞれ2つの第2の光導波路31bと直交している。すなわち、本実施の形態1では、光導波路31を格子状に配置している(図3)。
【0010】
また、実施の形態1において、第1と第2の光導波路31a,31bは、図3及び図4に示すように、導波路シート3の内部に光を導波させる方向に線状に埋め込まれたコア部分34と、その周りのクラッド部により構成される。ここで、コア部分34は言うまでもなく、導波路シート3を構成する材料より屈折率の高い材料により構成されるものであり、クラッド部38はコア部分34より屈折率の小さい材料からなり、例えば、導波路シート3を構成する材料そのものにより構成することができる。
尚、本明細書において、第1の光導波路31aを構成するコア部分と第2の光導波路31bを構成するコア部分を区別する必要があるときは、第1の光導波路31aを構成するコア部分を第1のコア部分と呼び、第2の光導波路31bを構成するコア部分を第2のコア部分と呼ぶ。
尚、光導波路が交わるとは、それらを構成するコア部分が互いに交わっていることを意味する。
【0011】
また、本実施の形態1の導波路シート3において、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部は、以下のように構成されている(図5)。
まず、交差部において、切り込み32が、交差した第1の光導波路31aと第2の光導波路31bとのなす角がほぼ同じになるような方向に形成される。尚、好ましくは、交差部の中心軸(第1の光導波路31aと第2の光導波路31bとが交差した中心)が切り込み32の中心軸とほぼ一致するように、切り込み部における対向するコア間の間隙が光導波路を伝播する光信号の波長の 1/4程度になるように、切り込み32は形成される。
【0012】
また、本発明における切り込み32は、導波路シート3を貫通するものではなく、上部ガラス基板2に対向する上面から切り込みを入れた場合には、少なくともコア部分を超えて切り込まれるものではあるが下面側の一部は繋がっている(すなわち、導波路シート3のある位置における厚み方向に注目したときに、ある部分では切れていて他の部分ではつながっている部分37が残っている。)。 このように、一部分で導波路シートがつながっていることにより、対向する光導波路の位置がずれにくく、光信号を低損失で伝播し得る。
また、切り込みは光導波路を構成するコア部分を超えさらに、クラッド部分よりも深い位置まで切り込まれていることが好ましい。
【0013】
また、実施の形態1において、導波路シート3には、導波路シート3を貫通するスリット33が導波路の交差部を中心として同心円状に形成されている。
ここでは、スリット33は、図6に示すように、等間隔の3つの円周上に、導波路における光の伝播に影響を与えないように導波路31の部分及びその近傍を除いて形成されており、スリット間に位置する導波路シート3と導波路シート3の他の部分は、導波路31の部分とその近傍で繋がっている。
このスリット33は、開閉機構部における導波路シート3の剛性を小さくするものである(力に対する変形量を大きくする。)。このスリット33により、本実施の形態1では、比較的小さな静電力でスイッチの開閉が可能となり、開閉駆動電圧を小さくできる。
【0014】
また、本実施の形態1では、図6(導波路シート3の切り込み32に沿った断面図)に示すように、切り込み32は最も内側のスリット(最内周スリット)の内側では導波路シート3を貫通することなく下面側の一部分37で繋がり、最内周スリットの外側では導波路シート3を貫通するように形成されている。
このように形成された切り込み32を有している実施の形態1における開閉駆動機構では、最内周スリットの外側における導波路シート3の静電力に対する変位量を大きくできるので、より小さな駆動電圧で光スイッチの開閉を制御できる。
【0015】
また、導波路シート3の表面(両面)に金属膜が設けられており、これにより駆動用の導波路シート電極35,36が構成される。
【0016】
(ガラス基板1,2)
次に、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1について説明する。
本実施の形態1において、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1は、導波路シートを挟み込むことによって、導波路シート3のうちの開閉機構部を構成する部分を撓み変形可能に保持するための基板である。
尚、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1とは同じ構成であるので、ここでは両者を含め単にガラス基板1,2として説明する。
【0017】
すなわち、ガラス基板1,2は、導波路シート3を挟み込んだときに、第1の光導波路31aと光導波路31bの交差部の中心軸と一致する軸を有する例えば台形錐形状のピボット12と、そのピボット12の周りに形成されたドーナツ状の凹部11とを有している。そして、この凹部11の底面には電極13が形成され、その電極13の上に絶縁膜14が形成されて、この電極13によって導波路シート電極との間に静電力を生じさせる基板電極が構成される(図8)。
従って、ピボット12の間隔は導波路シート3の光導波路31のピッチとほぼ等しいものとなる。
また、凹部11の外周は、導波路シート3を挟み込んだときに、最も外側に位置する最外周スリットより外側に位置するように設定される。
【0018】
以上のように構成された下部ガラス基板1と上部ガラス基板2とを、下部ガラス基板1をピボット12の軸と光導波路31aと光導波路31bの交差部における軸がそれぞれ一致するように導波路シート3の下面に対向させ、上部ガラス基板2をピボット22の軸と光導波路31aと光導波路31bの交差部における軸がそれぞれ一致するように導波路シート3の上面に対向させて、導波路シート3を挟み込む。
【0019】
以上のようにして構成された実施の形態1の光スイッチにおいて、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部とその周り(切り込み及び同心円状に形成されたスリット)を含んで光導波路を開閉する開閉機構部が構成される。このように構成された開閉機構部では、図10の断面図に示すように、光導波路31の交差部はガラス基板1,2のピボット12,22によって変位が拘束され、その周囲の部分はガラス基板による支持がない(凹部11によって空間が構成されている)ためガラス基板の凹部の範囲で変形が可能である。
【0020】
すなわち、実施の形態1において、開閉機構部は、
(1)第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部とその近傍(切り込み32及び同心円状に形成されたスリットを含む)と、
(2)第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部を上下方向に動かないように(上記導波路シートにおける交差部分と下部基板との間隔及び該交差部分と上部基板との間隔が変化しないように)固定するピボット12と、
(3)交差部の周辺の導波路シートの撓み変形を可能にするための対向する凹部11によって構成される空間と、
(4)凹部11の底面に形成された基板電極とそれに対向する導波路シート電極と、
によって構成される。
【0021】
以下に本実施の形態1の光スイッチの動作を説明する。(基本動作)
本実施の形態1の光スイッチは、下部ガラス基板1の基板電極及び/又は上部ガラス基板2の基板電極と、導波路シート3に形成された導波路シート電極との間に適当な電圧を印加することによって、ガラス基板1,2と導波路シートの間で電界に起因する静電力を生じさせ、導波路シートを変形させるものである。
【0022】
たとえば、導波路シート3の切り込み32がない側の下面に対向させた下部ガラス基板1の基板電極13と、導波路シート3の導波路シート電極36との間に電位差を与えると、図11に示すように、導波路シート3はピボット12の外側の凹部11内で下側に湾曲するように変形し、図12に示すように、交差部に設けた切り込み32はその間隔を広げるように変形する。
なお、図11においては、簡略化してガラス基板1,2、導波路シート3と基板電極13,23のみを図示している。
【0023】
また、導波路シート3の導波路の交差部の切り込みが形成された側の上面に対向した上部ガラス基板2の基板電極23と、導波路シート3の導波路シート電極35の間に電位差を与えると、図13に示すように、導波路シートはピボット12の外側の凹部11内で上側に湾曲するように変形し、図14に示すように、交差部に設けた切り込み32はその間隔を狭め、対向する切断面が接近するように変形する。 なお、図13においては簡略化して、ガラス基板1,2、導波路シート3と基板電極13,23のみを図示している。
【0024】
即ち、導波路シート3に設けた導波路シート電極35,36を接地し、下部ガラス基板1の基板電極と上部ガラス基板2の基板電極13,23のいずれに電圧を印加するかを選択することによって、導波路シート3の切り込み部の間隙の幅を伝播する光信号の波長の 1/4 以上の状態(以下、離隔状態)あるいは伝播する光信号の波長の1/4以下の状態(以下、接近状態)のどちらかの状態に制御することができる。
【0025】
(実施の形態1の光スイッチの動作)
次に、上述した基本動作を基に、本実施の形態1に係る入射ポート及び出射ポートをそれぞれ2つずつ備えた光スイッチの動作を説明する。
本実施の形態1の光スイッチでは、各開閉機構部において、光導波路の交差部の切り込み32は、ほぼ直角に交差した二つの光導波路となす角がほぼ同じになるような方向に形成されている。従って、切り込み32の切断面間の間隙が離隔状態である場合には、図15に示すようにある方向、例えば、図15において、71の符号を付して示す方向から交差部に入射した光信号は、交差部において切り込みの切断面で反射されて、図15において、72の符号を付して示すように進路を変える。
また、同様に74の符号を付して示す方向から入射した光信号は73の符号を付して示す方向に進路を変える。
【0026】
一方、切り込み部の間隙が接近状態である場合には、図16に示すように、例えば、図16において71の符号を付して示す方向から交差部に入射した光信号は、交差部において切り込み32の影響を受けずに、図16において73の符号を付して示す方向に進行方向を変えることなく直進する。
また、同様に74の方向から入射した光信号は72の方向に直進する。
【0027】
次に、互いに交わることのない2つの第1の光導波路31aと、互いに交わることのない2つの第2の光導波路31bとを有し、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bとの交差部にそれぞれ構成された4つの開閉機構部を備えた実施の形態1の光スイッチの動作について説明する。
【0028】
図17は、実施の形態1の光スイッチ動作を説明するために、入出力ポート及び開閉機構部を符号を付して定義した模式図である。
まず、第1の光導波路31aの一端であるポート200、201を入射ポートとし、第2の光導波路31bの一端であるポート300、301を出射ポートとした場合以下のようにスイッチ動作をさせることができる。
尚、以下の説明において、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部は、単に交差部という。
【0029】
例えば、
開閉機構部100において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部101において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部110において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部111において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
とすれば、入射ポート200と出射ポート300が回線接続され、入射ポート201と出射ポート301が回線接続される。
【0030】
また、 開閉機構部100において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部101において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部110において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部111において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
とすれば、入射ポート200と出射ポート301が回線接続され、入射ポート201と出射ポート300が回線接続される。
【0031】
このように、任意の入射ポートと接続している光導波路と任意の出射ポートと接続している光導波路とが交わった交差部の切り込み部の状態を接近又は離隔制御することによって、任意の入射ポートと任意の出射ポートとの回線接続を行うことができる。
【0032】
また、実施の形態1の光スイッチでは、第1の光導波路31aの他端であるポート400、401、第1の光導波路31aの他端である500、501も利用するとさらに以下のような動作も可能である。
【0033】
例えば、それぞれの開閉機構部100,101,110,111における各交差部の状態を、
開閉機構部100の交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部101の交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部110の交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部111の交差部の切り込み部の間隙を接近、
とすれば、入射ポート201と出射ポート300が回線接続され、入射ポート200から入射した信号光をポート400から取り出すことができ、かつ別の信号光をポート501から入射して、出射ポート301から出射することができ、光分岐挿入機能(光ADM機能)を実現できる。
【0034】
以上のように、本実施の形態1の光スイッチは、第1と第2の光導波路の交差部に設けられた開閉機構部においてそれぞれ、導波路シート電極35と基板電極24との間又は導波路シート電極36と基板電極14との間の、いずれに電圧を印加するかを所望に応じて選択することによって、2×2 の光回線接続機能、光分岐挿入機能を実現できる。
【0035】
以下、図18〜図20を参照しながら本実施の形態1の光スイッチの製造方法について説明する。
<ガラス基板作製工程>
本製造方法ではまず、下部ガラス基板1を用意する(図18(a))。 次に、凹部11をフッ酸あるいはバッファフッ酸によるエッチングによって形成する(図18(b))。 尚、ここでは、ガラス基板の凹部を作製するためにフッ酸、バッファフッ酸によるエッチングを適用した例を示しているが、CHF3ガス等によるドライエッチングによって作製してもよい。
【0036】
次に、凹部11及び下部ガラス基板1の上面に金属膜を成膜した後、その金属膜を凹部11の底面及び下部ガラス基板1上の配線パターンが残るようにパターニングをして、基板電極13およびそれに電圧を印加するための配線パターン17を形成する。 さらに、基板電極13及び配線パターン17上にSiO2等の絶縁膜14を成膜してパターニングすることにより形成する(図18(c))。尚、配線パターン17及びその上に形成された絶縁膜は、製造方法を説明するための図面以外の図面には、図を簡略化するために図示はしていない。
次に、レジスト材料を凹部11を埋め込むように形成し(図18(d))、CMP研磨(ケミカル・メカニカル・ポリッシュ)により平坦化する(図19(a))。
【0037】
<導波路シート作製工程>
まず、平坦化された下部ガラス基板上に、導波路シート電極36を成膜する(図19(a))。 次に、例えば、フッ素化ポリイミドからなる光導波路のクラッド材料をスピンコート等により形成した上に、例えば、フッ素化ポリイミドからなるコア材料をスピンコート等により例えば、5μmの厚さに形成する。ここで、コア材料は、クラッド材料より屈折率を高くする必要があるが、コアとクラッドの双方をフッ素化ポリイミドを用いて構成した場合であっても、分子構造を変えることにより屈折率を変えることができる。
そして、そのコア材料膜を光導波路に対応するパターンにパターニングした後、ふたたびクラッド材料をスピンコート等によりパターニングされたコアを覆うように形成する(図19(b))。
尚、図19(b)では、クラッド材料とコア材料とを区別することなく、導波路シート3全体を示しているが、上述のように導波路シート3の内部にはパターンニングされたコア部が形成されている。
【0038】
次に、導波路シート3の上に導波路シート電極35を成膜して(図19(c))、スリット33を導波路シート電極35、導波路シート3及び導波路シート電極36を貫通するように、例えば、ドライエッチングにより形成する(図19(d))。
尚、ここでは、導波路シートの剛性を低くするためのスリットをエッチングによって作製する例を示したが、鋭利な刃物、あるいは打ち抜き等によって作製してもよい。
【0039】
次に、例えば、鋭利な刃物等により、光導波路の交差部に切り込み32を形成する(図19(e))。
尚、切り込みは刃物以外のもの又は方法、例えば、ドライエッチング、あるいは打ち抜き等によって作製してもよい。
切り込み32を形成した後、凹部を平坦化するために埋め込んでいたレジスト15をアッシャ、レジスト剥離剤等によるエッチングによって除去する(図20(a))。
【0040】
最後に、図18(a)〜図18(c)に示した方法と同様にして作製された上部ガラス基板2を、その凹部が下部ガラス基板1の凹部と対向するように導波路シート3上に例えば、UV硬化型接着剤により接合する(図20(b))。
ここでは、導波路シートを作製した下部ガラス基板ともう一方の上部ガラス基板との接合にUV硬化型接着剤を用いた例を示したが、その他の種々の方法を適用でき、例えば、導波路シートが劣化しない温度範囲で使用できる熱硬化型接着剤を用いてもよいし、2枚のガラス基板を機械的に挟み込むように固定してもよい。
以上のようにして、本実施の形態1の光スイッチは製造される。
【0041】
以上のように、本実施の形態1の製造方法によれば、光スイッチの構成要素にそれぞれ適した材料からなる膜を成膜して所定の形状に加工(パターンニング、中空構造加工等も含む)するという方法により、開閉機構部と光導波路等を一体的に作製することができるため、別個に部品を加工して組み立てる方法に比較して、部材間の位置調整が不要である等、製造が容易であるという効果がある。 また、本実施の形態1の製造方法によれば、いわなる半導体製造技術を応用して作製しているので、駆動手段として静電力を用いていることと相俟って、光スイッチの小型化、集積化、アセンブリの簡略化を実現できるという効果がある。 さらに、比較的安価なガラスを基板に用いているため、光スイッチを安価に作製することができるという効果がある。
【0042】
また、本実施の形態1の光スイッチは、導波路シート3の両面に導波路シート電極を形成し、下部ガラス基板1及び上部ガラス基板2の両方にそれぞれ凹部11を形成して各凹部11の底面にそれぞれ基板電極を形成しているので、例えば、切り込み32を作製する際に、切り込み32の間隙(切断面間の間隔)にばらつきが生じた場合であっても、電圧を印加する電極をいずれかに選択することによって導波路シートの切り込み部の間隙の幅を離隔状態あるいは接近状態のどちらかの状態に確実に制御することができる。
【0043】
以上の実施の形態1の光スイッチは、導波路シート3に設けたスリット33によって、導波路シート3の厚み方向の剛性を下げることができ(スリットが形成されていない場合に比較して、静電力に対する撓み変形量を大きくできる)、より小さい印加電圧で、離隔あるいは接近の状態の変化を実現することができる。また、実施の形態1の光スイッチでは、絶縁膜14,24によって、ガラス基板側1,2の基板電極13,23と導波路シート3の導波路シート電極35,36との短絡を防ぐことができる。
【0044】
また、本実施の形態1では、図9等に示すように、隣接する開閉機構部の間では導波路シート3を、2枚の下部と上部ガラス基板1,2が密着して挟み込んでいるので、隣接する開閉機構部の導波路シート3のたわみ変形に影響されることなく、各々の開閉機構部は独立して開閉制御することが可能である。
【0045】
本実施の形態1の光スイッチでは、開閉機構部において、下部ガラス基板1と導波路シート3の間、及び上部ガラス基板2と導波路シート3の間の両方で、静電力を働かせて、スイッチを開閉しているので、切り込み部の間隙を接近状態および離隔状態の切り替えをより確実にできる。
【0046】
しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、下部ガラス基板1と導波路シート3の間、及び上部ガラス基板2と導波路シート3の間のいずれか一方において静電力を働かせて、スイッチを開閉するようにしてもよい。
このようにすると製造工程の簡略化が図れ、製造が容易となる。
【0047】
また、実施の形態1の光スイッチでは、ガラス材料からなる基板を用いているので、光スイッチを安価に製造することができる。
【0048】
以上の実施の形態1では、2つの入射ポートと、2つの出射ポートを有する光スイッチの例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、さらに多くの入射ポート及び出射ポートを有する光スイッチに適用することもでき、より大きな規模の、入射ポート数N、出射ポート数Nの N×Nの光回線接続、光分岐挿入を行い得る光スイッチを実現できる。
もちろん、入射ポート数1、出射ポート数1として、光信号の単純なオン/オフ機能を、また、入射ポート数1、出射ポート数Nとして、単純な出力先選択機能を実現することができる。
また、本発明では、入射ポート数と出射ポート数が異なっていてもよい。
【0049】
また、実施の形態1では、下部及び上部ガラス基板1,2に設けた基板電極の形状を凹部底面に対応させて円形としたが、本発明は、導波路シートの表面に設けた電極と基板電極との間の静電力によって導波路シートを変形させることできればよく、電極形状により限定されるものではない。
【0050】
さらに、実施の形態1では、下部及び上部ガラス基板1,2に設けた凹部の平面形状を円形としたが、本発明は、光導波路の交差部の切り込みが離隔、あるいは接近するのに充分な変形ができればよく、凹部の形状により限定されるものではない。
【0051】
また、本実施の形態1の製造方法では、下部及び上部ガラス基板をエッチングすることによって凹部を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、凹部を形成すべき領域以外に SiO2等を堆積させることにより凹部を作製してもよい。
【0052】
さらに、本実施の形態1では、開閉機構部における導波路シート3の剛性を下げるために、1つの開閉機構部あたり12本のスリットを交差部を中心として同心円状に形成するようにしたが、本発明は導波路シート3の厚み方向の剛性を下げられればよく(撓みやすくできればよく)、スリットの方向、本数に限定されるものではない。
【0053】
また、本発明では、導波路シート3の厚み方向の剛性を下げるように、スリットに代えて、穴を形成するようにしてもよい。 さらに、スリット、穴のように貫通していなくてもよく、後述するように、光導波路以外の、光信号の伝播に影響を与えない部分のシートの厚みを薄くしたり、シート内を空洞にしてもよい。
【0054】
またさらに、本実施の形態1では、好ましい形態として、入射ポートから延びる光導波路群(複数の第1の導波路)と出射ポートがら延びる光導波路群(第2の導波路)とはほぼ直角に交差するようにしたが、本発明はこれに限られるものではない。
すなわち、切り込み部が離隔状態であるときに、交差部(切り込みの切断面)に入射した光信号のうち、入射してきた方向に戻る光及び対向する導波路に伝播する光の量を充分に小さくできかつ交差する光導波路に向けて低損失で進行方向を変えることができ、
切り込み部が接近状態であるときに、直進する光信号のうち交差する光導波路方向に伝播される光の量が充分に小さくできるような角度であればよく、必ずしも直角に交差していなくてもよい。
【0055】
本実施の形態1では、好ましい形態として、導波路シートの剛性を低くするためのスリットを設けているが、本発明において、スリットは必須の要件ではない。
【0056】
実施の形態2.
本発明に係る実施の形態2の光スイッチは、実施の形態1の下部及び上部ガラス基板に代えて、半導体基板701を用いたものである。
すなわち、実施の形態2の光スイッチにおいて、半導体基板701は、図21の断面図に示すように、Si等の半導体材料からなる半導体基板701を用い、半導体基板701の凹部711の底面に絶縁膜715を介して基板電極713を形成した上にさらに絶縁膜714を形成している。
尚、実施の形態2の光スイッチにおいて、ガラス基板を上述の半導体基板に代える他は、実施の形態1と同様に構成される。
【0057】
また、Siからなる半導体基板を用いた実施の形態2の光スイッチの製造方法は、実施の形態1の製造方法において、以下のように変更すればよい。
すなわち、
(1)凹部711を形成するためのエッチングには、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用い、
(2)凹部711を埋め込む部材としてTEOS(テトラエトキシシラン)を用い、
(3)凹部711に埋め込んだTEOSのエッチングにはフッ酸を用いればよい。
上記(1)〜(3)について変更する以外は、実施の形態1の製造方法と同様にして実施の形態2の光スイッチを作製することができる。
【0058】
以上の実施の形態2の光スイッチは、実施の形態1と同様の作用効果を有する上さらに、電圧を印加する電極を選択するための制御回路(例えば、トランジスターやダイオード等を含む制御回路)を半導体基板701上に作製することが可能となり、制御回路を含めた光スイッチを小型化することが可能になる。
【0059】
実施の形態3.
本発明に係る実施の形態3の光スイッチは、実施の形態1の下部及び上部ガラス基板に代えて、樹脂基板601を用いたものである。
すなわち、実施の形態3の光スイッチにおいて、樹脂基板601は、図22の断面図に示すように、射出成形等によって凹部が一体的に成形された樹脂基板(たとえば、レジストに対して高い選択比を持つポリプロピレン等の材料)601を用いている以外は、実施の形態1の光スイッチと同様に構成される。
【0060】
また、本実施の形態3における樹脂基板601は、射出成形により形成された樹脂からなる以外に、凹部611がなだらかにへこむ形状で構成されているという特徴があり、その形状により以下のような実施の形態1及び2には無い利点がある。
ここで、なだらかにへこむ凹部とは、水平方向(光を進行させる方向を含む平面上の方向)に対して傾斜が徐々に変化する面によって構成される凹部をいい、導波路シート3を湾曲させたときに、その湾曲に沿うような面により構成された凹部である。
【0061】
このような凹部611に基板電極613を形成するようにすれば、図23に示すように、基板電極613,623と導波路シート3の導波路シート電極36,35の間の距離が凹部611の形状に対応して徐々に変化し、電極間が接近している部分と離れている部分ができ、電極間距離の小さい箇所で比較的大きな静電力が生じる。
これにより、より効果的に導波路シートを湾曲させることができ、実施の形態1及び2に比較してより、小さい制御電圧によってスイッチの開閉が可能となる。
【0062】
以上のように、実施の形態3の光スイッチは、実施の形態1と同様の作用効果を有し、さらに実施の形態1に比較してより、小さい制御電圧によってスイッチの開閉(回線切替)が可能となる。
【0063】
また、上述のなだらかな面で構成された凹部611は、本実施の形態3のように、例えば、樹脂を射出成形により作製することができ、その場合には、比較的安価な樹脂を用いて簡単にかつ量産性よく基板を作製できるので、光スイッチを安価に作製することができる。
なお、図23においては、図を簡略化して、説明に必要な、樹脂基板601,602、導波路シート3とそれぞれの基板電極613のみを示している。
【0064】
また、実施の形態3では、樹脂基板を用いているので、射出成形等で作製することができ、凹部をなだらかにへこむ形状にすることが容易でありかつ、基板を射出成形等で作製することができるため、光スイッチを安価に製造することができる。
【0065】
実施の形態4.
実施の形態1〜3においては、上下の基板にそれぞれ凹部と基板電極を設けていたが、光導波路の交差部の切り込みの間隙の幅を伝播する光信号の波長の1/4以上として、電圧印加がない場合に離隔状態となる程度とし、図24のように切り込みのある側に位置する上部ガラス基板2のみに、凹部および基板電極23を設けるようにしてもよい。
【0066】
この場合、開閉機構部における下部ガラス基板1上は、例えば薄いレジストを介して導波路シート3を形成して、形成した後にその薄いレジストを除去することにより、下部ガラス基板1と導波路シート3とを分離して、開閉機構部において導波路シート3が撓み変形できるようにする。尚、図24に示すように、導波路シート3の切り込みが形成された部分はピボット22と下部ガラス基板1とによって挟まれて固定されている。
このように構成された実施の形態4の光スイッチにおいて、切り込みの両側の導波路シートを上部ガラス基板2に形成された凹部内で静電力によって撓み変形させると、切り込み部が接近状態となって、スイッチが閉じられた状態になる。
【0067】
以上の実施の形態4の光スイッチは、実施の形態1〜3に比較して、構成を簡単にできる。
すなわち、下部ガラス基板1に凹部を形成する必要がなく、また、平坦化工程も不要で工程を簡略化でき、光スイッチを安価に製造できる。
【0068】
以上の実施の形態4では、実施の形態1と同様のガラス基板を用いたものについて説明したが、本実施の形態4はガラス基板に限定されるものではなく、例えば半導体基板や樹脂基板を用いても良い。
また、本実施の形態4は凹部の形状により限定されるものではなく、例えば、実施の形態3で示した曲面を有する凹部であってもよい。
【0069】
実施の形態5.
本発明に係る実施の形態5の光スイッチは、実施の形態1〜4の光スイッチにおけるスリット32に代えて薄肉部39を形成したものであり(図25(a)(b))、それ以外の点は、実施の形態1〜4と同様に構成される。
このように、光の導波に影響しない部分の導波路シートの厚さを薄くしても(薄肉部39を形成して)、剛性を小さくすることができ(同一の力に対して大きく湾曲するようにでき)、低電圧駆動が可能となる。
尚、図25に示す構造では、好ましい形態として薄肉部39を、交差部を中心として扇形の平面形状に形成しているが、光の導波に影響しないように剛性が小さくできればよく、扇形に限定されるものではない。
【0070】
また、図25では、導波路シートの両面から所定の厚さの部分が除去されるように薄肉部39を形成するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、図26(a)に示すように、導波路シート3の上面(切り込みが形成された面)から所定の厚さの部分が除去されるように薄肉部39を形成してもよいし、図26(b)に示すように、導波路シート3の下面(切り込みの無い面)から所定の厚さの部分が除去されるように薄肉部39を形成してもよい。
【0071】
本発明に係る実施の形態5の光スイッチは、実施の形態1〜4の光スイッチにおけるスリット32に代えて薄肉部39を形成したものであり(図25(a)(b))、それ以外の点は、実施の形態1〜4と同様に構成される。
このように、光の導波に影響しない部分の導波路シートの厚さを薄くしても(薄肉部39を形成して)、剛性を小さくすることができ(同一の力に対して大きく湾曲するようにでき)、低電圧駆動が可能となる。
【0072】
実施の形態6.
本発明に係る実施の形態6の光スイッチは、実施の形態1〜4の光スイッチにおけるスリット32に代えて空洞40を形成したものであり(図27(a)(b))、それ以外の点は、実施の形態1〜4と同様に構成される。
このように、光の導波に影響しない部分の導波路シート内に空洞40を形成しても、剛性を小さくすることができ、低電圧駆動が可能となる。
尚、図27に示す構造では、好ましい形態として空洞40を、交差部を中心として扇形に形成しているが、光の導波に影響しないように剛性が小さくできればよく、扇形に限定されるものではない。
また、本発明に係る光スイッチにおいて、開閉機構部の導波路シートには撓み変形による力を切り込み部を開閉させるための力として利用するために最低限の強度が必要とされることから、扇型の空洞において補強部40aを形成して、低電圧駆動のための柔軟性と強度との間の調整を図っている。
【0073】
変形例.
以上説明したように、実施の形態1では、凹部11の底面を平坦にして、その平坦な底面に基板電極13を形成するようにした。
また、実施の形態3では、凹部611を導波路シート3を湾曲させたときに、その湾曲に沿うような曲面により構成した。
しかしながら、本発明はこれらの形状に限られるものではなく、凹部11の底面は、導波路シート3を湾曲させたときに、その湾曲した導波路シートに沿って凹部11の深さが変化するように階段状に形成されていてもよい(図28)。
尚、図28において、凹部11の底面を二段に形成した例を示しているが、より多くの段差を設けてもよいことは言うまでもない。
このようにして、導波路シート3の撓み量の大きい部分に対応する凹部11の深さを、段差を設けることにより撓み量に応じて深くすることによって、実施の形態3と同様、より効果的に導波路シートを湾曲させることができ、実施の形態1及び2に比較してより、小さい制御電圧によってスイッチの開閉が可能となる。
【0074】
このような底面に段差を有する凹部は、凹部を形成するためのエッチングを複数に分けて複数回行ったり、SiO2等の堆積時にマスクを代えて複数回行う等の方法により形成することができる。
【0075】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る光スイッチは、光導波路が内部に形成された撓み変形可能な導波路シートにおいて上記光導波路を切断するように上記導波路シートの一方の面に形成された切り込みを含みその切り込みの対向する2つの切断面を接近又は離隔させることにより上記光導波路を開閉する開閉機構部とを備えた光スイッチであって、上記導波路シートを、上記導波路シートが上記開閉機構部において撓み変形可能に保持する基板をさらに含み、上記開閉機構部は上記導波路シートに形成された導波路シート電極と上記基板に形成された基板電極との間に印加される電圧に対応する静電力で上記光導波路を撓ませることによって光導波路を開閉させている。
これにより、小型でかつ集積化が容易で、しかも製造が容易な光スイッチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態1の光スイッチの構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1の光スイッチの分解斜視図である。
【図3】実施の形態1の導波路シートの平面図である。
【図4】実施の形態1の導波路シートの部分断面図である。
【図5】図3の導波路シートの1つの開閉機構部に対応する部分を拡大して示す拡大平面図である。
【図6】図5のVI−VI線についての断面図である。
【図7】実施の形態1の上部及び下部ガラス基板の平面図である。
【図8】実施の形態1の上部及び下部ガラス基板における凹部の部分を拡大して示す断面図である。
【図9】実施の形態1の光スイッチにおける1つの開閉機構部の部分を拡大して示す断面図である。
【図10】図9の断面図をさらに拡大して示す断面図である。
【図11】実施の形態1の光スイッチの1つの開閉機構部において、導波路シートを湾曲させたときの様子を示す断面図である。
【図12】図11の断面図において、切り込み部付近をさらに拡大して示す断面図である。
【図13】実施の形態1の光スイッチの1つの開閉機構部において、導波路シートを図11とは異なる方向に湾曲させたときの様子を示す断面図である。
【図14】図13の断面図において、切り込み部付近をさらに拡大して示す断面図である。
【図15】実施の形態1の1つの開閉機構部において、切り込みが離隔状態にあるときの光の進路を模式的に示す平面図である。
【図16】実施の形態1の1つの開閉機構部において、切り込みが接近状態にあるときの光の進路を模式的に示す平面図である。
【図17】実施の形態1において、入出力ポートと開閉機構部とに符号を付して示す平面図である。
【図18】実施の形態1の光スイッチの製造方法において、下部ガラス基板を加工する工程の流れを示す断面図である。
【図19】実施の形態1の光スイッチの製造方法において、下部ガラス基板上に導波路シートを形成する工程の流れを示す断面図である。
【図20】実施の形態1の光スイッチの製造方法において、導波路シートを下部ガラス基板と上部ガラス基板とによって撓み可能に保持する工程を示す断面図である。
【図21】本発明に係る実施の形態2の光スイッチにおける凹部及び基板電極が形成された半導体基板の断面図である。
【図22】本発明に係る実施の形態3の光スイッチにおける凹部が形成された樹脂基板の断面図である。
【図23】本発明に係る実施の形態3の光スイッチにおける開閉機構部の断面図である。
【図24】本発明に係る実施の形態4の光スイッチにおける開閉機構部の断面図である。
【図25】本発明に係る実施の形態5の導波路シートの開閉機構部における平面図(a)と断面図(b)である。
【図26】本発明に係る実施の形態5の導波路シートの開閉機構部における断面図(a)とその変形例の断面図(b)である。
【図27】本発明に係る実施の形態6の導波路シートの開閉機構部における平面図(a)と断面図(b)である。
【図28】本発明に係る変形例の光スイッチにおける凹部及び基板電極が形成された基板の断面図である。
【符号の説明】
1 下部ガラス基板、2 上部ガラス基板、3 導波路シート、11,611,711 凹部、12 ピボット、13,23,613,623,713 基板電極、14,24,714,715 絶縁膜、15 レジスト、17 配線パターン、31 光導波路、31a 第1の光導波路、31b 第2の光導波路、32切り込み、33 スリット、34 コア部分、35,36 導波路シート電極、38 クラッド部、39 薄肉部、40 空洞、100,101,110,111 開閉機構部、200,201 入射ポート、300,301 出射ポート、601,602 樹脂基板、701 半導体基板。
【発明の属する技術分野】
本発明は光スイッチ、特に、光通信、光情報処理等の分野における使用に適した光路切替手段としての光スイッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
光導波路を横断するように設けられた切り込みの間隙を、接近および離隔させることによって光の進路を選択する光スイッチは例えば、特許文献1に開示されている(例えば、特許文献1の図7および図8参照。)。
より具体的には、特許文献1に開示された従来例の光スイッチでは、駆動手段を用いてフィルム状の導波路シートの交差部を板材の厚み方向に変位させることによって、切り込みの間隙の状態を変え、光路の切替を行う。切り込みが開いている場合には、交差部に到達した光は切り込み部に生じた空気層によって、導波路と空気層との界面にて反射して進行方向を変えて伝播する。一方、切り込みが閉じている場合には、空気層がないために光は進行方向を変えることなく伝播する。この光スイッチにおいては、切り込み部の状態を変化させる駆動手段として、プッシュロッドを使用している。
【0003】
また、非特許文献1には、上に示した導波路交差部に切り込みの入ったフィルム状の光導波路を備えた光スイッチにおいて、駆動手段としてピエゾアクチュエータを適用し得ることが示されている。
これらの先行例の光スイッチは、製造が容易で光損失が少なく大規模化に対応でき、屈折率整合オイルを用いバブルの発生によって切り換えを行う方式で問題となる切替異常や光路周辺の焼損の発生のないという利点がある。
【0004】
【特許文献1】
特開 2002−174784号公報
【非特許文献1】
OFC 2002 ( Optical Fiber Communication Conference, 2002 年 3 月 19 日) TuC2 ( T.Saito, S.Tabata, A.Sugitatsu and T.Hatta ”Mechanical optical switch using flexible polymeric waveguide” )
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の光スイッチでは、駆動機構と光導波路部材とが別個に必要となり、多数のピエゾ素子やプッシュロッドと光導波路部材の位置調整が必要であるという問題点があった。光スイッチを低コストで実現するためには、光スイッチを更に小型にし、かつ集積化し、しかもアセンブリの簡略化を図ることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、小型でかつ集積化が容易で、しかも製造が容易な光スイッチを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために、本発明に係る光スイッチは、コア部を有し、そのコア部とそのコア部の周りのクラッド部とによって光導波路が内部に形成された撓み変形可能な導波路シートと、少なくとも上記光導波路を切断するように上記導波路シートの一方の面に形成された切り込みを含みその切り込みの対向する2つの切断面を接近又は離隔させることにより上記光導波路を開閉する開閉機構部とを備えた光スイッチにおいて、上記導波路シートを、上記導波路シートが上記開閉機構部において撓み変形可能に保持する基板をさらに含み、上記開閉機構部は上記導波路シートに形成された導波路シート電極と上記基板に形成された基板電極との間に印加される電圧に対応する静電力で上記光導波路を撓ませることによって光導波路を開閉させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態の光スイッチについて説明する。
実施の形態1.
本発明に係る実施の形態1の光スイッチは、図1及び図2に示すように、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1の間に、撓み変形可能な、例えば高分子材料からなるフィルム状の導波路シート3が配置されることにより構成されており、光導波路の交差部に設けられた切り込み32によって光信号を伝播させる光導波路を切り換えることができる光スイッチである。
ここで、特に本実施の形態1の光スイッチは、切り込み32を含んで構成された開閉機構部において、切り込み32の周辺部の導波路シート3を静電力により撓み変形させてその切り込みの2つの切断面を接近又は離隔させることにより光導波路31の開閉を制御している。
【0009】
(導波路シート3の構成)
本実施の形態1において、導波路シート3には、互いに交わることのない2つの第1の光導波路31aと、互いに交わることのない2つの第2の光導波路31bとが形成されており、第1の光導波路31aはそれぞれ2つの第2の光導波路31bと交わっている(この交わっている部分を交差部という。)。
尚、本実施の形態1では、好ましい形態として、2つの第1の光導波路31aは互いに平行に形成されており、第2の光導波路31bは互いに平行に形成され、第1の光導波路31aはそれぞれ2つの第2の光導波路31bと直交している。すなわち、本実施の形態1では、光導波路31を格子状に配置している(図3)。
【0010】
また、実施の形態1において、第1と第2の光導波路31a,31bは、図3及び図4に示すように、導波路シート3の内部に光を導波させる方向に線状に埋め込まれたコア部分34と、その周りのクラッド部により構成される。ここで、コア部分34は言うまでもなく、導波路シート3を構成する材料より屈折率の高い材料により構成されるものであり、クラッド部38はコア部分34より屈折率の小さい材料からなり、例えば、導波路シート3を構成する材料そのものにより構成することができる。
尚、本明細書において、第1の光導波路31aを構成するコア部分と第2の光導波路31bを構成するコア部分を区別する必要があるときは、第1の光導波路31aを構成するコア部分を第1のコア部分と呼び、第2の光導波路31bを構成するコア部分を第2のコア部分と呼ぶ。
尚、光導波路が交わるとは、それらを構成するコア部分が互いに交わっていることを意味する。
【0011】
また、本実施の形態1の導波路シート3において、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部は、以下のように構成されている(図5)。
まず、交差部において、切り込み32が、交差した第1の光導波路31aと第2の光導波路31bとのなす角がほぼ同じになるような方向に形成される。尚、好ましくは、交差部の中心軸(第1の光導波路31aと第2の光導波路31bとが交差した中心)が切り込み32の中心軸とほぼ一致するように、切り込み部における対向するコア間の間隙が光導波路を伝播する光信号の波長の 1/4程度になるように、切り込み32は形成される。
【0012】
また、本発明における切り込み32は、導波路シート3を貫通するものではなく、上部ガラス基板2に対向する上面から切り込みを入れた場合には、少なくともコア部分を超えて切り込まれるものではあるが下面側の一部は繋がっている(すなわち、導波路シート3のある位置における厚み方向に注目したときに、ある部分では切れていて他の部分ではつながっている部分37が残っている。)。 このように、一部分で導波路シートがつながっていることにより、対向する光導波路の位置がずれにくく、光信号を低損失で伝播し得る。
また、切り込みは光導波路を構成するコア部分を超えさらに、クラッド部分よりも深い位置まで切り込まれていることが好ましい。
【0013】
また、実施の形態1において、導波路シート3には、導波路シート3を貫通するスリット33が導波路の交差部を中心として同心円状に形成されている。
ここでは、スリット33は、図6に示すように、等間隔の3つの円周上に、導波路における光の伝播に影響を与えないように導波路31の部分及びその近傍を除いて形成されており、スリット間に位置する導波路シート3と導波路シート3の他の部分は、導波路31の部分とその近傍で繋がっている。
このスリット33は、開閉機構部における導波路シート3の剛性を小さくするものである(力に対する変形量を大きくする。)。このスリット33により、本実施の形態1では、比較的小さな静電力でスイッチの開閉が可能となり、開閉駆動電圧を小さくできる。
【0014】
また、本実施の形態1では、図6(導波路シート3の切り込み32に沿った断面図)に示すように、切り込み32は最も内側のスリット(最内周スリット)の内側では導波路シート3を貫通することなく下面側の一部分37で繋がり、最内周スリットの外側では導波路シート3を貫通するように形成されている。
このように形成された切り込み32を有している実施の形態1における開閉駆動機構では、最内周スリットの外側における導波路シート3の静電力に対する変位量を大きくできるので、より小さな駆動電圧で光スイッチの開閉を制御できる。
【0015】
また、導波路シート3の表面(両面)に金属膜が設けられており、これにより駆動用の導波路シート電極35,36が構成される。
【0016】
(ガラス基板1,2)
次に、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1について説明する。
本実施の形態1において、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1は、導波路シートを挟み込むことによって、導波路シート3のうちの開閉機構部を構成する部分を撓み変形可能に保持するための基板である。
尚、上部ガラス基板2と下部ガラス基板1とは同じ構成であるので、ここでは両者を含め単にガラス基板1,2として説明する。
【0017】
すなわち、ガラス基板1,2は、導波路シート3を挟み込んだときに、第1の光導波路31aと光導波路31bの交差部の中心軸と一致する軸を有する例えば台形錐形状のピボット12と、そのピボット12の周りに形成されたドーナツ状の凹部11とを有している。そして、この凹部11の底面には電極13が形成され、その電極13の上に絶縁膜14が形成されて、この電極13によって導波路シート電極との間に静電力を生じさせる基板電極が構成される(図8)。
従って、ピボット12の間隔は導波路シート3の光導波路31のピッチとほぼ等しいものとなる。
また、凹部11の外周は、導波路シート3を挟み込んだときに、最も外側に位置する最外周スリットより外側に位置するように設定される。
【0018】
以上のように構成された下部ガラス基板1と上部ガラス基板2とを、下部ガラス基板1をピボット12の軸と光導波路31aと光導波路31bの交差部における軸がそれぞれ一致するように導波路シート3の下面に対向させ、上部ガラス基板2をピボット22の軸と光導波路31aと光導波路31bの交差部における軸がそれぞれ一致するように導波路シート3の上面に対向させて、導波路シート3を挟み込む。
【0019】
以上のようにして構成された実施の形態1の光スイッチにおいて、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部とその周り(切り込み及び同心円状に形成されたスリット)を含んで光導波路を開閉する開閉機構部が構成される。このように構成された開閉機構部では、図10の断面図に示すように、光導波路31の交差部はガラス基板1,2のピボット12,22によって変位が拘束され、その周囲の部分はガラス基板による支持がない(凹部11によって空間が構成されている)ためガラス基板の凹部の範囲で変形が可能である。
【0020】
すなわち、実施の形態1において、開閉機構部は、
(1)第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部とその近傍(切り込み32及び同心円状に形成されたスリットを含む)と、
(2)第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部を上下方向に動かないように(上記導波路シートにおける交差部分と下部基板との間隔及び該交差部分と上部基板との間隔が変化しないように)固定するピボット12と、
(3)交差部の周辺の導波路シートの撓み変形を可能にするための対向する凹部11によって構成される空間と、
(4)凹部11の底面に形成された基板電極とそれに対向する導波路シート電極と、
によって構成される。
【0021】
以下に本実施の形態1の光スイッチの動作を説明する。(基本動作)
本実施の形態1の光スイッチは、下部ガラス基板1の基板電極及び/又は上部ガラス基板2の基板電極と、導波路シート3に形成された導波路シート電極との間に適当な電圧を印加することによって、ガラス基板1,2と導波路シートの間で電界に起因する静電力を生じさせ、導波路シートを変形させるものである。
【0022】
たとえば、導波路シート3の切り込み32がない側の下面に対向させた下部ガラス基板1の基板電極13と、導波路シート3の導波路シート電極36との間に電位差を与えると、図11に示すように、導波路シート3はピボット12の外側の凹部11内で下側に湾曲するように変形し、図12に示すように、交差部に設けた切り込み32はその間隔を広げるように変形する。
なお、図11においては、簡略化してガラス基板1,2、導波路シート3と基板電極13,23のみを図示している。
【0023】
また、導波路シート3の導波路の交差部の切り込みが形成された側の上面に対向した上部ガラス基板2の基板電極23と、導波路シート3の導波路シート電極35の間に電位差を与えると、図13に示すように、導波路シートはピボット12の外側の凹部11内で上側に湾曲するように変形し、図14に示すように、交差部に設けた切り込み32はその間隔を狭め、対向する切断面が接近するように変形する。 なお、図13においては簡略化して、ガラス基板1,2、導波路シート3と基板電極13,23のみを図示している。
【0024】
即ち、導波路シート3に設けた導波路シート電極35,36を接地し、下部ガラス基板1の基板電極と上部ガラス基板2の基板電極13,23のいずれに電圧を印加するかを選択することによって、導波路シート3の切り込み部の間隙の幅を伝播する光信号の波長の 1/4 以上の状態(以下、離隔状態)あるいは伝播する光信号の波長の1/4以下の状態(以下、接近状態)のどちらかの状態に制御することができる。
【0025】
(実施の形態1の光スイッチの動作)
次に、上述した基本動作を基に、本実施の形態1に係る入射ポート及び出射ポートをそれぞれ2つずつ備えた光スイッチの動作を説明する。
本実施の形態1の光スイッチでは、各開閉機構部において、光導波路の交差部の切り込み32は、ほぼ直角に交差した二つの光導波路となす角がほぼ同じになるような方向に形成されている。従って、切り込み32の切断面間の間隙が離隔状態である場合には、図15に示すようにある方向、例えば、図15において、71の符号を付して示す方向から交差部に入射した光信号は、交差部において切り込みの切断面で反射されて、図15において、72の符号を付して示すように進路を変える。
また、同様に74の符号を付して示す方向から入射した光信号は73の符号を付して示す方向に進路を変える。
【0026】
一方、切り込み部の間隙が接近状態である場合には、図16に示すように、例えば、図16において71の符号を付して示す方向から交差部に入射した光信号は、交差部において切り込み32の影響を受けずに、図16において73の符号を付して示す方向に進行方向を変えることなく直進する。
また、同様に74の方向から入射した光信号は72の方向に直進する。
【0027】
次に、互いに交わることのない2つの第1の光導波路31aと、互いに交わることのない2つの第2の光導波路31bとを有し、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bとの交差部にそれぞれ構成された4つの開閉機構部を備えた実施の形態1の光スイッチの動作について説明する。
【0028】
図17は、実施の形態1の光スイッチ動作を説明するために、入出力ポート及び開閉機構部を符号を付して定義した模式図である。
まず、第1の光導波路31aの一端であるポート200、201を入射ポートとし、第2の光導波路31bの一端であるポート300、301を出射ポートとした場合以下のようにスイッチ動作をさせることができる。
尚、以下の説明において、第1の光導波路31aと第2の光導波路31bの交差部は、単に交差部という。
【0029】
例えば、
開閉機構部100において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部101において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部110において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部111において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
とすれば、入射ポート200と出射ポート300が回線接続され、入射ポート201と出射ポート301が回線接続される。
【0030】
また、 開閉機構部100において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部101において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部110において、交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部111において、交差部の切り込み部の間隙を接近、
とすれば、入射ポート200と出射ポート301が回線接続され、入射ポート201と出射ポート300が回線接続される。
【0031】
このように、任意の入射ポートと接続している光導波路と任意の出射ポートと接続している光導波路とが交わった交差部の切り込み部の状態を接近又は離隔制御することによって、任意の入射ポートと任意の出射ポートとの回線接続を行うことができる。
【0032】
また、実施の形態1の光スイッチでは、第1の光導波路31aの他端であるポート400、401、第1の光導波路31aの他端である500、501も利用するとさらに以下のような動作も可能である。
【0033】
例えば、それぞれの開閉機構部100,101,110,111における各交差部の状態を、
開閉機構部100の交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部101の交差部の切り込み部の間隙を接近、
開閉機構部110の交差部の切り込み部の間隙を離隔、
開閉機構部111の交差部の切り込み部の間隙を接近、
とすれば、入射ポート201と出射ポート300が回線接続され、入射ポート200から入射した信号光をポート400から取り出すことができ、かつ別の信号光をポート501から入射して、出射ポート301から出射することができ、光分岐挿入機能(光ADM機能)を実現できる。
【0034】
以上のように、本実施の形態1の光スイッチは、第1と第2の光導波路の交差部に設けられた開閉機構部においてそれぞれ、導波路シート電極35と基板電極24との間又は導波路シート電極36と基板電極14との間の、いずれに電圧を印加するかを所望に応じて選択することによって、2×2 の光回線接続機能、光分岐挿入機能を実現できる。
【0035】
以下、図18〜図20を参照しながら本実施の形態1の光スイッチの製造方法について説明する。
<ガラス基板作製工程>
本製造方法ではまず、下部ガラス基板1を用意する(図18(a))。 次に、凹部11をフッ酸あるいはバッファフッ酸によるエッチングによって形成する(図18(b))。 尚、ここでは、ガラス基板の凹部を作製するためにフッ酸、バッファフッ酸によるエッチングを適用した例を示しているが、CHF3ガス等によるドライエッチングによって作製してもよい。
【0036】
次に、凹部11及び下部ガラス基板1の上面に金属膜を成膜した後、その金属膜を凹部11の底面及び下部ガラス基板1上の配線パターンが残るようにパターニングをして、基板電極13およびそれに電圧を印加するための配線パターン17を形成する。 さらに、基板電極13及び配線パターン17上にSiO2等の絶縁膜14を成膜してパターニングすることにより形成する(図18(c))。尚、配線パターン17及びその上に形成された絶縁膜は、製造方法を説明するための図面以外の図面には、図を簡略化するために図示はしていない。
次に、レジスト材料を凹部11を埋め込むように形成し(図18(d))、CMP研磨(ケミカル・メカニカル・ポリッシュ)により平坦化する(図19(a))。
【0037】
<導波路シート作製工程>
まず、平坦化された下部ガラス基板上に、導波路シート電極36を成膜する(図19(a))。 次に、例えば、フッ素化ポリイミドからなる光導波路のクラッド材料をスピンコート等により形成した上に、例えば、フッ素化ポリイミドからなるコア材料をスピンコート等により例えば、5μmの厚さに形成する。ここで、コア材料は、クラッド材料より屈折率を高くする必要があるが、コアとクラッドの双方をフッ素化ポリイミドを用いて構成した場合であっても、分子構造を変えることにより屈折率を変えることができる。
そして、そのコア材料膜を光導波路に対応するパターンにパターニングした後、ふたたびクラッド材料をスピンコート等によりパターニングされたコアを覆うように形成する(図19(b))。
尚、図19(b)では、クラッド材料とコア材料とを区別することなく、導波路シート3全体を示しているが、上述のように導波路シート3の内部にはパターンニングされたコア部が形成されている。
【0038】
次に、導波路シート3の上に導波路シート電極35を成膜して(図19(c))、スリット33を導波路シート電極35、導波路シート3及び導波路シート電極36を貫通するように、例えば、ドライエッチングにより形成する(図19(d))。
尚、ここでは、導波路シートの剛性を低くするためのスリットをエッチングによって作製する例を示したが、鋭利な刃物、あるいは打ち抜き等によって作製してもよい。
【0039】
次に、例えば、鋭利な刃物等により、光導波路の交差部に切り込み32を形成する(図19(e))。
尚、切り込みは刃物以外のもの又は方法、例えば、ドライエッチング、あるいは打ち抜き等によって作製してもよい。
切り込み32を形成した後、凹部を平坦化するために埋め込んでいたレジスト15をアッシャ、レジスト剥離剤等によるエッチングによって除去する(図20(a))。
【0040】
最後に、図18(a)〜図18(c)に示した方法と同様にして作製された上部ガラス基板2を、その凹部が下部ガラス基板1の凹部と対向するように導波路シート3上に例えば、UV硬化型接着剤により接合する(図20(b))。
ここでは、導波路シートを作製した下部ガラス基板ともう一方の上部ガラス基板との接合にUV硬化型接着剤を用いた例を示したが、その他の種々の方法を適用でき、例えば、導波路シートが劣化しない温度範囲で使用できる熱硬化型接着剤を用いてもよいし、2枚のガラス基板を機械的に挟み込むように固定してもよい。
以上のようにして、本実施の形態1の光スイッチは製造される。
【0041】
以上のように、本実施の形態1の製造方法によれば、光スイッチの構成要素にそれぞれ適した材料からなる膜を成膜して所定の形状に加工(パターンニング、中空構造加工等も含む)するという方法により、開閉機構部と光導波路等を一体的に作製することができるため、別個に部品を加工して組み立てる方法に比較して、部材間の位置調整が不要である等、製造が容易であるという効果がある。 また、本実施の形態1の製造方法によれば、いわなる半導体製造技術を応用して作製しているので、駆動手段として静電力を用いていることと相俟って、光スイッチの小型化、集積化、アセンブリの簡略化を実現できるという効果がある。 さらに、比較的安価なガラスを基板に用いているため、光スイッチを安価に作製することができるという効果がある。
【0042】
また、本実施の形態1の光スイッチは、導波路シート3の両面に導波路シート電極を形成し、下部ガラス基板1及び上部ガラス基板2の両方にそれぞれ凹部11を形成して各凹部11の底面にそれぞれ基板電極を形成しているので、例えば、切り込み32を作製する際に、切り込み32の間隙(切断面間の間隔)にばらつきが生じた場合であっても、電圧を印加する電極をいずれかに選択することによって導波路シートの切り込み部の間隙の幅を離隔状態あるいは接近状態のどちらかの状態に確実に制御することができる。
【0043】
以上の実施の形態1の光スイッチは、導波路シート3に設けたスリット33によって、導波路シート3の厚み方向の剛性を下げることができ(スリットが形成されていない場合に比較して、静電力に対する撓み変形量を大きくできる)、より小さい印加電圧で、離隔あるいは接近の状態の変化を実現することができる。また、実施の形態1の光スイッチでは、絶縁膜14,24によって、ガラス基板側1,2の基板電極13,23と導波路シート3の導波路シート電極35,36との短絡を防ぐことができる。
【0044】
また、本実施の形態1では、図9等に示すように、隣接する開閉機構部の間では導波路シート3を、2枚の下部と上部ガラス基板1,2が密着して挟み込んでいるので、隣接する開閉機構部の導波路シート3のたわみ変形に影響されることなく、各々の開閉機構部は独立して開閉制御することが可能である。
【0045】
本実施の形態1の光スイッチでは、開閉機構部において、下部ガラス基板1と導波路シート3の間、及び上部ガラス基板2と導波路シート3の間の両方で、静電力を働かせて、スイッチを開閉しているので、切り込み部の間隙を接近状態および離隔状態の切り替えをより確実にできる。
【0046】
しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、下部ガラス基板1と導波路シート3の間、及び上部ガラス基板2と導波路シート3の間のいずれか一方において静電力を働かせて、スイッチを開閉するようにしてもよい。
このようにすると製造工程の簡略化が図れ、製造が容易となる。
【0047】
また、実施の形態1の光スイッチでは、ガラス材料からなる基板を用いているので、光スイッチを安価に製造することができる。
【0048】
以上の実施の形態1では、2つの入射ポートと、2つの出射ポートを有する光スイッチの例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、さらに多くの入射ポート及び出射ポートを有する光スイッチに適用することもでき、より大きな規模の、入射ポート数N、出射ポート数Nの N×Nの光回線接続、光分岐挿入を行い得る光スイッチを実現できる。
もちろん、入射ポート数1、出射ポート数1として、光信号の単純なオン/オフ機能を、また、入射ポート数1、出射ポート数Nとして、単純な出力先選択機能を実現することができる。
また、本発明では、入射ポート数と出射ポート数が異なっていてもよい。
【0049】
また、実施の形態1では、下部及び上部ガラス基板1,2に設けた基板電極の形状を凹部底面に対応させて円形としたが、本発明は、導波路シートの表面に設けた電極と基板電極との間の静電力によって導波路シートを変形させることできればよく、電極形状により限定されるものではない。
【0050】
さらに、実施の形態1では、下部及び上部ガラス基板1,2に設けた凹部の平面形状を円形としたが、本発明は、光導波路の交差部の切り込みが離隔、あるいは接近するのに充分な変形ができればよく、凹部の形状により限定されるものではない。
【0051】
また、本実施の形態1の製造方法では、下部及び上部ガラス基板をエッチングすることによって凹部を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、凹部を形成すべき領域以外に SiO2等を堆積させることにより凹部を作製してもよい。
【0052】
さらに、本実施の形態1では、開閉機構部における導波路シート3の剛性を下げるために、1つの開閉機構部あたり12本のスリットを交差部を中心として同心円状に形成するようにしたが、本発明は導波路シート3の厚み方向の剛性を下げられればよく(撓みやすくできればよく)、スリットの方向、本数に限定されるものではない。
【0053】
また、本発明では、導波路シート3の厚み方向の剛性を下げるように、スリットに代えて、穴を形成するようにしてもよい。 さらに、スリット、穴のように貫通していなくてもよく、後述するように、光導波路以外の、光信号の伝播に影響を与えない部分のシートの厚みを薄くしたり、シート内を空洞にしてもよい。
【0054】
またさらに、本実施の形態1では、好ましい形態として、入射ポートから延びる光導波路群(複数の第1の導波路)と出射ポートがら延びる光導波路群(第2の導波路)とはほぼ直角に交差するようにしたが、本発明はこれに限られるものではない。
すなわち、切り込み部が離隔状態であるときに、交差部(切り込みの切断面)に入射した光信号のうち、入射してきた方向に戻る光及び対向する導波路に伝播する光の量を充分に小さくできかつ交差する光導波路に向けて低損失で進行方向を変えることができ、
切り込み部が接近状態であるときに、直進する光信号のうち交差する光導波路方向に伝播される光の量が充分に小さくできるような角度であればよく、必ずしも直角に交差していなくてもよい。
【0055】
本実施の形態1では、好ましい形態として、導波路シートの剛性を低くするためのスリットを設けているが、本発明において、スリットは必須の要件ではない。
【0056】
実施の形態2.
本発明に係る実施の形態2の光スイッチは、実施の形態1の下部及び上部ガラス基板に代えて、半導体基板701を用いたものである。
すなわち、実施の形態2の光スイッチにおいて、半導体基板701は、図21の断面図に示すように、Si等の半導体材料からなる半導体基板701を用い、半導体基板701の凹部711の底面に絶縁膜715を介して基板電極713を形成した上にさらに絶縁膜714を形成している。
尚、実施の形態2の光スイッチにおいて、ガラス基板を上述の半導体基板に代える他は、実施の形態1と同様に構成される。
【0057】
また、Siからなる半導体基板を用いた実施の形態2の光スイッチの製造方法は、実施の形態1の製造方法において、以下のように変更すればよい。
すなわち、
(1)凹部711を形成するためのエッチングには、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用い、
(2)凹部711を埋め込む部材としてTEOS(テトラエトキシシラン)を用い、
(3)凹部711に埋め込んだTEOSのエッチングにはフッ酸を用いればよい。
上記(1)〜(3)について変更する以外は、実施の形態1の製造方法と同様にして実施の形態2の光スイッチを作製することができる。
【0058】
以上の実施の形態2の光スイッチは、実施の形態1と同様の作用効果を有する上さらに、電圧を印加する電極を選択するための制御回路(例えば、トランジスターやダイオード等を含む制御回路)を半導体基板701上に作製することが可能となり、制御回路を含めた光スイッチを小型化することが可能になる。
【0059】
実施の形態3.
本発明に係る実施の形態3の光スイッチは、実施の形態1の下部及び上部ガラス基板に代えて、樹脂基板601を用いたものである。
すなわち、実施の形態3の光スイッチにおいて、樹脂基板601は、図22の断面図に示すように、射出成形等によって凹部が一体的に成形された樹脂基板(たとえば、レジストに対して高い選択比を持つポリプロピレン等の材料)601を用いている以外は、実施の形態1の光スイッチと同様に構成される。
【0060】
また、本実施の形態3における樹脂基板601は、射出成形により形成された樹脂からなる以外に、凹部611がなだらかにへこむ形状で構成されているという特徴があり、その形状により以下のような実施の形態1及び2には無い利点がある。
ここで、なだらかにへこむ凹部とは、水平方向(光を進行させる方向を含む平面上の方向)に対して傾斜が徐々に変化する面によって構成される凹部をいい、導波路シート3を湾曲させたときに、その湾曲に沿うような面により構成された凹部である。
【0061】
このような凹部611に基板電極613を形成するようにすれば、図23に示すように、基板電極613,623と導波路シート3の導波路シート電極36,35の間の距離が凹部611の形状に対応して徐々に変化し、電極間が接近している部分と離れている部分ができ、電極間距離の小さい箇所で比較的大きな静電力が生じる。
これにより、より効果的に導波路シートを湾曲させることができ、実施の形態1及び2に比較してより、小さい制御電圧によってスイッチの開閉が可能となる。
【0062】
以上のように、実施の形態3の光スイッチは、実施の形態1と同様の作用効果を有し、さらに実施の形態1に比較してより、小さい制御電圧によってスイッチの開閉(回線切替)が可能となる。
【0063】
また、上述のなだらかな面で構成された凹部611は、本実施の形態3のように、例えば、樹脂を射出成形により作製することができ、その場合には、比較的安価な樹脂を用いて簡単にかつ量産性よく基板を作製できるので、光スイッチを安価に作製することができる。
なお、図23においては、図を簡略化して、説明に必要な、樹脂基板601,602、導波路シート3とそれぞれの基板電極613のみを示している。
【0064】
また、実施の形態3では、樹脂基板を用いているので、射出成形等で作製することができ、凹部をなだらかにへこむ形状にすることが容易でありかつ、基板を射出成形等で作製することができるため、光スイッチを安価に製造することができる。
【0065】
実施の形態4.
実施の形態1〜3においては、上下の基板にそれぞれ凹部と基板電極を設けていたが、光導波路の交差部の切り込みの間隙の幅を伝播する光信号の波長の1/4以上として、電圧印加がない場合に離隔状態となる程度とし、図24のように切り込みのある側に位置する上部ガラス基板2のみに、凹部および基板電極23を設けるようにしてもよい。
【0066】
この場合、開閉機構部における下部ガラス基板1上は、例えば薄いレジストを介して導波路シート3を形成して、形成した後にその薄いレジストを除去することにより、下部ガラス基板1と導波路シート3とを分離して、開閉機構部において導波路シート3が撓み変形できるようにする。尚、図24に示すように、導波路シート3の切り込みが形成された部分はピボット22と下部ガラス基板1とによって挟まれて固定されている。
このように構成された実施の形態4の光スイッチにおいて、切り込みの両側の導波路シートを上部ガラス基板2に形成された凹部内で静電力によって撓み変形させると、切り込み部が接近状態となって、スイッチが閉じられた状態になる。
【0067】
以上の実施の形態4の光スイッチは、実施の形態1〜3に比較して、構成を簡単にできる。
すなわち、下部ガラス基板1に凹部を形成する必要がなく、また、平坦化工程も不要で工程を簡略化でき、光スイッチを安価に製造できる。
【0068】
以上の実施の形態4では、実施の形態1と同様のガラス基板を用いたものについて説明したが、本実施の形態4はガラス基板に限定されるものではなく、例えば半導体基板や樹脂基板を用いても良い。
また、本実施の形態4は凹部の形状により限定されるものではなく、例えば、実施の形態3で示した曲面を有する凹部であってもよい。
【0069】
実施の形態5.
本発明に係る実施の形態5の光スイッチは、実施の形態1〜4の光スイッチにおけるスリット32に代えて薄肉部39を形成したものであり(図25(a)(b))、それ以外の点は、実施の形態1〜4と同様に構成される。
このように、光の導波に影響しない部分の導波路シートの厚さを薄くしても(薄肉部39を形成して)、剛性を小さくすることができ(同一の力に対して大きく湾曲するようにでき)、低電圧駆動が可能となる。
尚、図25に示す構造では、好ましい形態として薄肉部39を、交差部を中心として扇形の平面形状に形成しているが、光の導波に影響しないように剛性が小さくできればよく、扇形に限定されるものではない。
【0070】
また、図25では、導波路シートの両面から所定の厚さの部分が除去されるように薄肉部39を形成するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、図26(a)に示すように、導波路シート3の上面(切り込みが形成された面)から所定の厚さの部分が除去されるように薄肉部39を形成してもよいし、図26(b)に示すように、導波路シート3の下面(切り込みの無い面)から所定の厚さの部分が除去されるように薄肉部39を形成してもよい。
【0071】
本発明に係る実施の形態5の光スイッチは、実施の形態1〜4の光スイッチにおけるスリット32に代えて薄肉部39を形成したものであり(図25(a)(b))、それ以外の点は、実施の形態1〜4と同様に構成される。
このように、光の導波に影響しない部分の導波路シートの厚さを薄くしても(薄肉部39を形成して)、剛性を小さくすることができ(同一の力に対して大きく湾曲するようにでき)、低電圧駆動が可能となる。
【0072】
実施の形態6.
本発明に係る実施の形態6の光スイッチは、実施の形態1〜4の光スイッチにおけるスリット32に代えて空洞40を形成したものであり(図27(a)(b))、それ以外の点は、実施の形態1〜4と同様に構成される。
このように、光の導波に影響しない部分の導波路シート内に空洞40を形成しても、剛性を小さくすることができ、低電圧駆動が可能となる。
尚、図27に示す構造では、好ましい形態として空洞40を、交差部を中心として扇形に形成しているが、光の導波に影響しないように剛性が小さくできればよく、扇形に限定されるものではない。
また、本発明に係る光スイッチにおいて、開閉機構部の導波路シートには撓み変形による力を切り込み部を開閉させるための力として利用するために最低限の強度が必要とされることから、扇型の空洞において補強部40aを形成して、低電圧駆動のための柔軟性と強度との間の調整を図っている。
【0073】
変形例.
以上説明したように、実施の形態1では、凹部11の底面を平坦にして、その平坦な底面に基板電極13を形成するようにした。
また、実施の形態3では、凹部611を導波路シート3を湾曲させたときに、その湾曲に沿うような曲面により構成した。
しかしながら、本発明はこれらの形状に限られるものではなく、凹部11の底面は、導波路シート3を湾曲させたときに、その湾曲した導波路シートに沿って凹部11の深さが変化するように階段状に形成されていてもよい(図28)。
尚、図28において、凹部11の底面を二段に形成した例を示しているが、より多くの段差を設けてもよいことは言うまでもない。
このようにして、導波路シート3の撓み量の大きい部分に対応する凹部11の深さを、段差を設けることにより撓み量に応じて深くすることによって、実施の形態3と同様、より効果的に導波路シートを湾曲させることができ、実施の形態1及び2に比較してより、小さい制御電圧によってスイッチの開閉が可能となる。
【0074】
このような底面に段差を有する凹部は、凹部を形成するためのエッチングを複数に分けて複数回行ったり、SiO2等の堆積時にマスクを代えて複数回行う等の方法により形成することができる。
【0075】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る光スイッチは、光導波路が内部に形成された撓み変形可能な導波路シートにおいて上記光導波路を切断するように上記導波路シートの一方の面に形成された切り込みを含みその切り込みの対向する2つの切断面を接近又は離隔させることにより上記光導波路を開閉する開閉機構部とを備えた光スイッチであって、上記導波路シートを、上記導波路シートが上記開閉機構部において撓み変形可能に保持する基板をさらに含み、上記開閉機構部は上記導波路シートに形成された導波路シート電極と上記基板に形成された基板電極との間に印加される電圧に対応する静電力で上記光導波路を撓ませることによって光導波路を開閉させている。
これにより、小型でかつ集積化が容易で、しかも製造が容易な光スイッチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態1の光スイッチの構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1の光スイッチの分解斜視図である。
【図3】実施の形態1の導波路シートの平面図である。
【図4】実施の形態1の導波路シートの部分断面図である。
【図5】図3の導波路シートの1つの開閉機構部に対応する部分を拡大して示す拡大平面図である。
【図6】図5のVI−VI線についての断面図である。
【図7】実施の形態1の上部及び下部ガラス基板の平面図である。
【図8】実施の形態1の上部及び下部ガラス基板における凹部の部分を拡大して示す断面図である。
【図9】実施の形態1の光スイッチにおける1つの開閉機構部の部分を拡大して示す断面図である。
【図10】図9の断面図をさらに拡大して示す断面図である。
【図11】実施の形態1の光スイッチの1つの開閉機構部において、導波路シートを湾曲させたときの様子を示す断面図である。
【図12】図11の断面図において、切り込み部付近をさらに拡大して示す断面図である。
【図13】実施の形態1の光スイッチの1つの開閉機構部において、導波路シートを図11とは異なる方向に湾曲させたときの様子を示す断面図である。
【図14】図13の断面図において、切り込み部付近をさらに拡大して示す断面図である。
【図15】実施の形態1の1つの開閉機構部において、切り込みが離隔状態にあるときの光の進路を模式的に示す平面図である。
【図16】実施の形態1の1つの開閉機構部において、切り込みが接近状態にあるときの光の進路を模式的に示す平面図である。
【図17】実施の形態1において、入出力ポートと開閉機構部とに符号を付して示す平面図である。
【図18】実施の形態1の光スイッチの製造方法において、下部ガラス基板を加工する工程の流れを示す断面図である。
【図19】実施の形態1の光スイッチの製造方法において、下部ガラス基板上に導波路シートを形成する工程の流れを示す断面図である。
【図20】実施の形態1の光スイッチの製造方法において、導波路シートを下部ガラス基板と上部ガラス基板とによって撓み可能に保持する工程を示す断面図である。
【図21】本発明に係る実施の形態2の光スイッチにおける凹部及び基板電極が形成された半導体基板の断面図である。
【図22】本発明に係る実施の形態3の光スイッチにおける凹部が形成された樹脂基板の断面図である。
【図23】本発明に係る実施の形態3の光スイッチにおける開閉機構部の断面図である。
【図24】本発明に係る実施の形態4の光スイッチにおける開閉機構部の断面図である。
【図25】本発明に係る実施の形態5の導波路シートの開閉機構部における平面図(a)と断面図(b)である。
【図26】本発明に係る実施の形態5の導波路シートの開閉機構部における断面図(a)とその変形例の断面図(b)である。
【図27】本発明に係る実施の形態6の導波路シートの開閉機構部における平面図(a)と断面図(b)である。
【図28】本発明に係る変形例の光スイッチにおける凹部及び基板電極が形成された基板の断面図である。
【符号の説明】
1 下部ガラス基板、2 上部ガラス基板、3 導波路シート、11,611,711 凹部、12 ピボット、13,23,613,623,713 基板電極、14,24,714,715 絶縁膜、15 レジスト、17 配線パターン、31 光導波路、31a 第1の光導波路、31b 第2の光導波路、32切り込み、33 スリット、34 コア部分、35,36 導波路シート電極、38 クラッド部、39 薄肉部、40 空洞、100,101,110,111 開閉機構部、200,201 入射ポート、300,301 出射ポート、601,602 樹脂基板、701 半導体基板。
Claims (19)
- コア部を有し、そのコア部とそのコア部の周りのクラッド部とによって光導波路が内部に形成された撓み変形可能な導波路シートと、少なくとも上記光導波路を切断するように上記導波路シートの一方の面に形成された切り込みを含みその切り込みの対向する2つの切断面を接近又は離隔させることにより上記光導波路を開閉する開閉機構部とを備えた光スイッチにおいて、
上記導波路シートを、上記導波路シートが上記開閉機構部において撓み変形可能に保持する基板をさらに含み、上記開閉機構部は上記導波路シートに形成された導波路シート電極と上記基板に形成された基板電極との間に印加される電圧に対応する静電力で上記光導波路を撓ませることによって光導波路を開閉させることを特徴とする光スイッチ。 - 上記基板は、上記導波路シートの他方の面に対向して設けられた第1基板と上記導波路シートの一方の面に対向して設けられた第2基板とからなり、上記導波路シートにおいて上記切り込みが形成された部分は上記第1基板及び上記第2基板との間隔が変化しないように上記第1基板と上記第2基板とによって固定され、その固定部の周辺部に上記導波路シート電極と上記基板電極とが設けられた請求項1記載の光スイッチ。
- 上記開閉機構部において、
上記第1と第2基板のいずれか一方の基板は、中央部に第1ピボットが形成された第1凹部を有し、
上記導波路シートの上記切り込みが形成された部分が上記第1ピボットと上記第1と第2基板のうちの他方の基板とによって挟まれて固定された請求項2記載の光スイッチ。 - 上記第1凹部は、上記導波路シートを湾曲させたときに、その湾曲した導波路シートに沿う曲面を有してなる請求項3記載の光スイッチ。
- 上記第1凹部は、上記導波路シートを湾曲させたときに、その湾曲した導波路シートに沿って深さが変化するように階段状に形成された底面を有する請求項3記載の光スイッチ。
- 上記第1と第2基板のいずれか一方の基板に形成された上記第1凹部の底部に上記基板電極が形成され、その基板電極に対向して上記導波路シート電極が形成された請求項3〜5のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記開閉機構部において、
上記第1基板は、中央部に第1ピボットが形成された第1凹部を有し、
上記第2基板は、中央部に第2ピボットが上記第1ピボットに対向するように形成され、上記第1凹部に対向する第2凹部を有し、
上記導波路シートの上記切り込みが形成された部分が上記第1ピボットと上記第2ピボットとによって挟まれて固定された請求項2記載の光スイッチ。 - 上記第1凹部と上記第2凹部はそれぞれ、上記導波路シートを湾曲させたときに、その湾曲した導波路シートに沿う曲面を有してなる請求項7記載の光スイッチ。
- 上記第1凹部と上記第2凹部はそれぞれ、上記導波路シートを湾曲させたときに、その湾曲した導波路シートに沿って深さが変化するように階段状に形成された底面を有する請求項7記載の光スイッチ。
- 上記第1凹部と第2凹部の底部にそれぞれ上記基板電極が形成され、上記導波路シート電極は上記導波路シートの一方の面と他方の面に上記基板電極にそれぞれ対向するように設けられた請求項7〜9のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記第1基板と上記第2基板はそれぞれ、ガラス材料からなる請求項2〜10のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記第1基板と上記第2基板はそれぞれ、半導体材料からなる請求項2〜10のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記第1基板と上記第2基板はそれぞれ、樹脂材料からなる請求項2〜10のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記導波路シートは、上記第1基板上に成膜されることによって作製された請求項2〜13のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記開閉機構部の上記導波路シートにおいてさらに、上記静電力に対する撓み変形量が大きくなるようにスリット又は穴が形成された請求項1〜14のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記開閉機構部の上記導波路シートにおいてさらに、上記静電力に対する撓み変形量が大きくなるように空洞が設けられた請求項1〜14のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記開閉機構部の上記導波路シートにおいてさらに、上記静電力に対する撓み変形量が大きくなるように薄肉部が設けられた請求項1〜14のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。
- 上記コア部は互いに交わる第1のコア部と第2のコア部を含み、上記導波路シートには上記第1のコア部と上記第2のコア部によってそれぞれ第1の光導波路と第2の光導波路が構成されており、
上記切り込みは、上記第1のコア部と第2のコア部の交差部において、上記第1の光導波路と上記第2の光導波路をそれぞれ光の進行方向に対して斜めに切断するように形成され、
上記切り込みの2つの切断面を接近させたときに、上記第1の光導波路の一端から入射された光を上記第1の光導波路の他端から出力し、上記第2の光導波路の一端から入射された光を上記第2の光導波路の他端から出力し、
上記2つの切断面を離隔させたときに、上記第1の光導波路の一端から入射された光を上記第2の光導波路の他端から出力し、上記第2の光導波路の一端から入射された光を上記第1の光導波路の他端から出力する請求項1〜17のうちのいずれか1つに記載の光スイッチ。 - 上記コア部は、互いに交わることなく形成された複数の上記第1のコア部と、互いに交わることなく形成された複数の上記第2のコア部とを有し、上記第1のコア部と上記第2のコア部の交差部にそれぞれ上記開閉部機構部が構成された請求項18記載の光スイッチ。
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