JP2004216379A - 生ごみ処理基材とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 微生物による生分解効果の持続性に優れて耐用寿命が長く、しかも生分解率が高く、従来廃棄していた樹皮を有効活用し、工程数削減によりコストを低減でき、高価なバクテリア製剤を使用する必要のない、コスト面においても有利な生ごみ処理基材とその製造方法を提供すること。
【解決手段】 生ごみ処理基材を、木材を砕いてなる木材粒状物1と、杉またはその他の針葉樹の樹皮を砕いてなる樹皮粒状物2と、から構成する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、微生物を用いて生ごみを生分解する生ごみ処理装置に用いるための生ごみ処理基材とその製造方法に係り、特に、樹皮を有効活用した、生分解率の高い生ごみ処理基材とその製造方法に関する。
近年、一般家庭や営業店舗、事業所などからでる野菜、魚、肉、残飯等各種の生ごみを、好気性細菌等の微生物の有する有機物分解能を利用して水と炭酸ガスなどに生分解する生ごみ処理装置が開発され、使用されている。生ごみ処理装置は一般に、発酵槽、攪拌手段、換気手段等から構成される装置である。装置の発酵槽中に、微生物を保持し、これを繁殖させることのできる微生物培養基材(菌床)を入れておき、発生した生ごみを順次発酵槽に投入し、発酵槽内で攪拌、換気などを施すことにより、該基材中の生ごみ分解能を有する微生物による生分解作用が機能し、生ごみが水と炭酸ガスなどに分解するものである。
生ごみ処理装置において用いられる微生物培養基材としては、おが粉や木材チップ等の木材粒状物、ピートモス、木炭粒、イネ科穀物の外皮など、いくつかの種類のものが提案されている(特開平8-1133号公報、特開平8-39041号公報、特開平8−168744号公報、他)が、特に製材工程における廃棄物であるおが粉を始めとした木材粒状物は、広く微生物培養基材、生ごみ処理基材として用いられている。
従来、生ごみ処理基材として市販され、広く用いられているおが粉は、樹皮を剥皮処理した原木や製材屑を切削し、細かく粉砕することにより製造されている。暗色を呈する樹皮を剥皮することにより、色彩的な点において、より視覚的な訴求力を有する生ごみ処理基材商品を提供することができる。また細かく粉砕することにより、微生物の培養、繁殖に必要な表面の表面積が大きくなり、生分解率を高めることができる。これら市販され、広く用いられているおが粉は、また、その粒径の変動が概して大きくなく、この点においても、生ごみ処理基材商品の視覚的な訴求力に寄与し得る可能性を有する。
また、同じく従来広く用いられている生ごみ処理基材としては、広葉樹の樹皮を粉砕したものがあり、これに、生ごみを分解するのに適した微生物を用いたバクテリア製剤を添加して、生ごみ処理が行われている。
特開平8-1133号公報 特開平8-39041号公報 特開平8−168744号公報
しかし、従来のおが粉による生ごみ処理基材では、使用により基材が生ごみ中の水分等を吸収することによって固結物を形成してしまう。固結物形成により基材の表面積が減少し、空隙が少なくなり、生ごみ分解に特に有効な好気性微生物の繁殖が抑制される。このため、微生物による分解能力が短期で低下し、生ごみを効率的に分解できなくなり、悪臭や汚水の発生が増加する。すなわち、微生物が生分解効果を発揮できる基材としての耐用寿命が短いという問題があった。そのため、効率的な生ごみ処理を長期間可能にする、寿命の長い微生物培養基材、生ごみ処理基材の開発が求められていた。
また、従来の広葉樹樹皮粉砕物による生ごみ処理基材では、基材である広葉樹樹皮自体の生分解速度が速いため、基材としての寿命が短く、悪臭や汚水の発生が多く、そのために基材の交換頻度が高くなり、コストと労力がかかるという問題があった。その上、基材に添加するバクテリア製剤は高価な物であり、コスト面で有利な代替手段が求められていた。
さらに、従来のおが粉による生ごみ処理基材では原木の樹皮は剥皮されるが、剥皮工程には相当のコストがかかり、かつ新たな廃棄物を産出することにもなるため、係る樹皮の有効活用が求められていた。
また、従来のおが粉による生ごみ処理基材では、使用されているおが粉の約70%が輸入木材の製材屑であり、防虫剤、薫蒸処理剤等の化学物質汚染や、海中貯木による塩分含有の問題があった。すなわち、これらを微生物培養基材、生ごみ処理材として生ごみを処理する場合、化学物質等により微生物の生分解能や繁殖が阻害されたり、さらに分解処理産物を土壌改良資材等として二次利用する際の、土壌汚染、作物や人畜に対する悪影響等、問題があった。一方では、国内山林における間伐材放棄による森林健全育成の阻害も問題視されており、間伐材の資源化、有効活用が、求められていた。
本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解決し、微生物による生分解効果の持続性に優れて耐用寿命が長く、しかも生分解率が高く、生ごみ分解性能が高い生ごみ処理基材とその製造方法を提供することである。また、従来廃棄していた樹皮を有効活用し、工程数削減によりコストを低減できる、生ごみ処理基材とその製造方法を提供することである。
また本発明の課題は、高価なバクテリア製剤を使用する必要のない、コスト面においても有利な生ごみ処理基材とその製造方法を提供することである。
さらには、従来廃棄物として処理されてきた国内山林の汚染度の低い間伐材を資源化し、有効活用することのできる、環境および国内資源有効活用に配慮した生ごみ処理基材とその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本願研究者らが鋭意検討した結果、生ごみ処理基材に用いる木材粒状物の粒径を調整すること、生ごみ処理基材の材料として樹皮を添加することにより、また、杉等の針葉樹の樹皮や木材を用いることにより、上記各課題を解決することのできる本発明に至った。すなわち、本願において特許請求または開示される発明は以下のとおりである。
(1)木材を砕いてなる木材粒状物からなる、菌床とするための生ごみ処理基材において、樹皮を砕いてなる樹皮粒状物を含むことを特徴とする、生ごみ処理基材。
(2)前記樹皮粒状物が、杉またはその他の針葉樹の樹皮を砕いてなるものであることを特徴とする、(1)の生ごみ処理基材。
(3)前記生ごみ処理基材において、粒径が0.15mm〜3.35mmである前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の含有量が、合わせて80重量%以上であることを特徴とする、(1)または(2)の生ごみ処理基材。
(4)前記生ごみ処理基材において、粒径が20mm以上である前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の含有量が、合わせて1重量%以下であることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかの生ごみ処理基材。
(5)前記生ごみ処理基材中における前記樹皮粒状物の含有量が、材積として0.4%以上0.8%以下であることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかの生ごみ処理基材。
(6)前記木材粒状物および前記樹皮粒状物からなる前記生ごみ処理基材を目開き3.35mm、2.00mm、0.85mm、0.50mm、0.25mm、および0.15mmの各篩により、7の分級に篩別した場合に、
(A)全分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが14以下であるか、
(B)0.00mm〜3.35mmの範囲の6分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが15以下であるか、
(C)0.25mm〜2.00mmの範囲の3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが9以下であるか、
(D)最大の重量比を与えた分級およびその前後に隣接する分級、計3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが11以下であるか、
少なくとも(A)ないし(D)のいずれか一つの条件を満たすことを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかの生ごみ処理基材。
(7)原木または木材を切削して木材切削物とし、次いで該木材切削物を破砕して木材粒状物とする、生ごみ処理基材の製造方法。
(8)前記生ごみ処理基材の製造に係る工程中において、前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒径を調整するための粒径調整工程を設けることを特徴とする、(7)の生ごみ処理基材の製造方法。
さらに、
(9)菌床とするための生ごみ処理基材であって、該生ごみ処理基材が、樹皮を砕いてなる樹皮粒状物を含むものであることを特徴とする、生ごみ処理基材。
(10)前記樹皮粒状物が、杉またはその他の針葉樹の樹皮を砕いてなるものであることを特徴とする、(9)の生ごみ処理基材。
(11)前記生ごみ処理基材において、粒径が0.15mm〜3.35mmである前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の含有量が、合わせて90重量%以上であることを特徴とする、(1)、(2)、(4)ないし(10)のいずれかの生ごみ処理基材。
(12)前記生ごみ処理基材において、粒径が0.25mm〜2.00mmである前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の含有量が、合わせて80重量%以上であることを特徴とする、(1)、(2)、(4)ないし(10)のいずれかの生ごみ処理基材。
(13)前記生ごみ処理基材において、粒径が3.35mm以上である前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の含有量が、合わせて1重量%以下であることを特徴とする、(1)、(2)、(4)ないし(10)のいずれかの生ごみ処理基材。
(14)前記木材粒状物および前記樹皮粒状物からなる前記生ごみ処理基材を目開き3.35mm、2.00mm、0.85mm、0.50mm、0.25mm、および0.15mmの各篩により、7の分級に篩別した場合に、
(A’)全分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが13以下であるか、
(B’)0.00mm〜3.35mmの範囲の6分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが12以下であるか、
(C’)0.25mm〜2.00mmの範囲の3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが6以下であるか、
(D’)最大の重量比を与えた分級およびその前後に隣接する分級、計3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが6以下であるか、
少なくとも(A’)ないし(D’)のいずれか一つの条件を満たすことを特徴とする、(1)ないし(5)、(7)ないし(13)のいずれかの生ごみ処理基材。
本発明において木材粒状物とは、木材が破砕されることによって粒状に微細化したものをいい、その粒径や形状により限定されるものではない。おが粉、木材チップも木材粒状物に含まれる。また、樹皮粒状物とは、樹皮が破砕されることによって粒状に微細化したものをいい、その粒径や形状により限定されるものではない。
本発明において樹皮粒状物は、木材粒状物に後から添加されるものであってもよいし、また、原木を剥皮せずに切削および破砕することによって、木材粒状物と同時に形成されるものであってもよい。
樹皮中には、微生物による生ごみ分解を促進する機能を有するリグニンが含有されているため、樹皮粒状物を含む本発明の生ごみ処理基材は、生ごみ分解が促進される。また、杉その他の針葉樹の樹皮を用いた場合、広葉樹の樹皮と比べて自己の分解速度が小さく、生ごみ処理基材としての耐用寿命が長くなる。
本発明において粒径は、篩別された木材粒状物等の粒子の大きさであり、粒径が0.15mm〜3.35mmであるとは、目開き0.15mm(150メッシュ)から目開き3.35mm(5メッシュ)の篩を用いて篩別した場合に、粒径がこの範囲に分級される木材粒状物等であることを示す。粒度分布は、試料100gに対する、篩別による各分級の重量により求められる。
また、目開き3.35mm、2.00mm、0.85mm、0.50mm、0.25mm、および0.15mmの各篩を用いた篩別による7の分級は、
(S)3.35mm〜 、(T)3.35mm〜2.00mm、(U)2.00mm〜0.85mm、(V)0.85mm〜0.50mm、(W)0.50mm〜0.25mm、(X)0.25mm〜0.15mm、(Y)0.15mm〜 、である。また、本発明において材積とは、木材粒状物や樹皮粒状物からなる生ごみ処理基材自体の体積をいう。
本発明の生ごみ処理基材とその製造方法によれば、上述のように構成されているため、従来廃棄していた木材樹皮を有効活用し、剥皮工程を省くことによる工程数削減によりコストを低減でき生分解効果の持続性に優れ、しかも生分解率を高くし、生ごみ分解性能を高くすることができる。
また、高価なバクテリア製剤を使用する必要のない、コスト面においても有利な生ごみ処理が可能となる。
さらには、従来廃棄物として処理されてきた国内山林の汚染度の低い間伐材を資源化し、有効活用することができ、環境に配慮した生ごみ処理が可能となる。
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明の生ごみ処理基材の構成を示す概念図である。図において本生ごみ処理基材は、木材を砕いてなる木材粒状物1と、樹皮を砕いてなる樹皮粒状物2と、から構成される。該樹皮粒状物2は、杉またはその他の針葉樹の樹皮を砕いたものとすることができる。また、該木材粒状物1も、杉またはその他の針葉樹の樹皮を砕いたものとすることができる。
図において、本発明の生ごみ処理基材は、粒径が0.15mm〜3.35mmである前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2の含有量が、両者合わせて80重量%以上であることとすることができる。あるいは、より望ましくは、粒径が0.15mm〜3.35mmである前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2の含有量が、両者合わせて90重量%以上であることとすることができる。あるいは、粒径が0.25mm〜2.00mmである前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2の含有量が、両者合わせて80重量%以上であることとすることができる。
図において、本発明の生ごみ処理基材は、粒径が20mm以上である前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2の含有量が、両者合わせて1重量%以下であることとすることができる。また、粒径が3.35mm以上である前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2の含有量が、両者合わせて1重量%以下であることとすることができる。
図において、本発明の生ごみ処理基材は、該生ごみ処理基材中における前記樹皮粒状物2の含有量が、材積として0.4%以上0.8%以下であることとすることができる。あるいは、より望ましくは、前記樹皮粒状物2の含有量を0.5%以上0.7%以下であることとすることができる。
係る構成をとることにより、図1において本発明の生ごみ処理基材は、前記木材粒状物1の個々の粒子間、および該木材粒状物1の粒子と前記樹皮粒状物2の粒子との間において、空隙が多く形成される。そのため、生ごみの分解能力が高い好気性微生物の繁殖が促進され、生ごみの生分解作用が活発になり、生ごみの分解効率が高まる。
本発明の生ごみ処理基材に生ごみを加え、または生ごみに本基材を加えることにより、本基材に含まれる樹皮粒状物2が含有するリグニンの生ごみ分解促進作用により、特にバクテリア製剤を添加しなくても、生ごみに自然に付着するバクテリア等微生物が急速に増殖し、特に杉等の針葉樹の樹皮を用いる場合、長期にわたって安定的に生ごみ分解作用を持続できる微生物群が形成され、分解効率の低下が抑制され、生ごみ処理基材の耐用寿命が長くなる。
木材粒状物1と樹皮粒状物2の各粒子における、それらの破砕により形成される形状の相違や、形成される粒子の粒径の相違がある場合、該木材粒状物1の粒子と該樹皮粒状物2との間の空隙形成は促進される。
木材粒状物1および樹皮粒状物2の粒子の粒径は、チップソーで処理されて概ね20mm以上の粒径を有するいわゆる木材チップのような大きさでは、より小さい粒径のものに比べて相対的な表面積が小さいため生ごみの分解効率と分解能力の持続性の点で過大であり、一方おが粉のような大きさの粒径を有する粒子が過多でも生ごみの分解効率と分解能力の持続性が小さい。したがって木材粒状物1および樹皮粒状物2の粒子の粒径は、木材チップ大の粒径を有する粒子と、おが粉大の粒径を有する粒子との中間の粒径に調整することにより、生ごみの分解効率と分解能力の持続性が向上する。
前記空隙の形成および調整された粒径の粒子の形成により、前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2の各粒子は、生ごみからの水分、油脂分等の吸収による相互の固着およびそれによる凝集や固結が抑制され、基材と水分等による団子状の固結物の形成が抑制され、生ごみ分解に適した好気性微生物にとり阻害的な環境である嫌気的環境の現出が回避され、分解効率の低下および耐用寿命の短期化が抑制される。
木材粒状物1および樹皮粒状物2の粒子の粒径を、たとえばおが粉大から木材チップ大の間の範囲において、広い粒度分布を持たせることにより、前記団子状の固結物の形成が抑制される。
広い粒度分布を持たせるために、前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2からなる前記生ごみ処理基材を、目開き3.35mm、2.00mm、0.85mm、0.50mm、0.25mm、および0.15mmの各篩により、7の分級に篩別した場合に、
(A’’)全7分級において篩別された前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2を合わせた粒子の重量比の標準偏差nが14以下であるか、より望ましくは13以下であるか、
(B’’)0.00mm〜3.35mmの範囲の6分級において篩別された前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2を合わせた粒子の重量比の標準偏差nが15以下であるか、より望ましくは12以下であるか、
(C’’)0.25mm〜2.00mmの範囲の3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが9以下であるか、より望ましくは6以下であるか、
(D’’)最大の重量比を与えた分級およびその前後に隣接する分級、計3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが11以下であるか、より望ましくは6以下であるか、
少なくとも(A’’)ないし(D’’)のいずれか一つの条件を満たすように、製造工程において、該粒子の粒径を調整する手段を用いることができる。
上述のように、所定の分級に篩別した前記木材粒状物1および前記樹皮粒状物2を合わせた粒子の、全分級または選択した複数の分級における重量比についての標準偏差nが小さければ、各分級間相互における重量比の値の変動が小さい。したがって、粒子は各分級にわたってより広く分布しており、生ごみ処理基材は粒径の変動がより大きく、上述した空隙形成促進、団子状の固結物生成抑制がなされる。
粒径調整手段としては、たとえば、原木を剥皮せずにそのままで切削して粒径の比較的大きい木材切削物(生ごみ処理基材の製造方法にいう「木材切削物」は、樹皮の切削物を含むことができるものとする。)とし、さらに該木材切削物を破砕して粒径のより小さい木材粒状物とする工程を経て製造された木材粒状物1および樹皮粒状物2の混合物を、上述したような目開きの相違する複数の篩を適宜用いて篩別し、篩別された混合物の各画分を基に適宜再構成することにより、行うことができる。
その他、切削や破砕に用いる装置の切削用等刃の回転速度を、周期的または非周期的に変化させる調整をすることによって、あるいは、一度切削、破砕処理により生成した木材粒状物について再度処理を施すことによって、粒度調整手段とすることもできる。その他、粒子の粒度分布を広くして粒径の変動を大きくすることのできるあらゆる手段を、粒度調整手段とすることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<1>生ごみ生分解実験
静岡精機製家庭用生ごみ処理機(GMR−12)を使用して、3ヶ月間連続的に生ごみの処理を行った。実験に用いた生ごみ処理基材および生ごみは、次のとおりである。生ごみ処理基材としては、杉間伐材の木材粒状物であるおが粉を用いた粒径の異なる2種類の基材No.1(比較例)およびNo.2(実施例1)を調製した。また、これらにそれぞれ、杉間伐材の樹皮粒状物が混入した状態で調製された基材No.3(比較例2)およびNo.4(実施例2)も用いた。樹皮の混入は、杉間伐材の原木丸太を剥皮せずにそのまま粉砕機(森下機械製 ウグランマシン ニューシグマ)にて切削、破砕することにより行った。表1に、生ごみ処理基材No.1およびNo.2の粒度分布を示す。なお、No.3はNo.1と、No.4はNo.2と、それぞれ同等の粒度分布を示す。
Figure 2004216379
実験では、盛岡市内のホテルから排出された調理屑および残飯を生ごみとして用いた。生ごみは、これを粉砕し均質化処理した後、約1kgに小分けし、凍結保存して生ごみ試料とした。各生ごみ試料は、供試される数時間前に予め解凍し、室温に戻した。前記生ごみ処理機4台にそれぞれ、本発明の実施例および比較例である前記各基材を24リットルずつ入れ、これに各生ごみ試料を投入した。24時間ごとに1回、1回あたりの投入量を約1kgとし、毎週月曜日から金曜日まで計1週間に5回、計約5kgの生ごみ試料を各基材入りの各生ごみ処理機に投入した。バクテリア製剤等、微生物の添加は行わなかった。
<処理過程における物質収支>
3ヶ月間の生ごみ処理後の物質収支結果について、表2ないし表4に示す。
Figure 2004216379




Figure 2004216379




Figure 2004216379






いずれの生ごみ処理基材を用いた場合においても、生ごみ試料投入重量の約90%が消失したが、その多くは水分の蒸発によるものであり、固形分の分解率は、約60%程度であった(表2、3、4)。
<粒度分布と分解率>
各基材を用いた場合における分解率の相違を比較すると、粒度分布のみが異なり樹皮粒状物混入の有無が共通するNo.1(比較例1)とNo.2(実施例1)との間では、粒度分布においてより粒径の小さい粒子を含むNo.2(実施例1)が60%、No.1(比較例1)が57%であり、より粒径の小さい粒子を含む実施例1の方が、より高い分解率を示した(表4)。同様に、粒度分布のみが異なり樹皮粒状物混入の有無が共通するNo.3(比較例2)とNo.4(実施例2)の比較においても、粒度分布においてより粒径の小さい粒子を含むNo.4(実施例2)が64%、No.3(比較例2)が57%であり、より粒径の小さい粒子を含む実施例2の方が、より高い分解率を示した(表4)。
また、各基材を用いた場合における分解率の相違を比較すると、粒度分布のみが異なり樹皮粒状物混入の有無が共通するNo.1(比較例1)とNo.2(実施例1)との間では、粒度分布において、粒径が0.15mm〜3.35mmである基材の含有量が80重量%以上(93.3%)であるNo.2が60%、同様に82.6%であるNo.1が57%であり、粒径が0.15mm〜3.35mmである粒子をより多く含む実施例1の方が、より高い分解率を示した(表1、表4)。
さらに、各基材を用いた場合における分解率の相違を比較すると、粒度分布のみが異なり樹皮粒状物混入の有無が共通するNo.1(比較例1)とNo.2(実施例1)との間では、粒度分布において、粒径が0.15mm〜3.35mmである基材の含有量が90重量%以上(93.3%)であるNo.2が60%、同様に82.6%であるNo.1が57%であり、粒径が0.15mm〜3.35mmである粒子をより多く含む実施例1の方が、より高い分解率を示した(表1、表4)。
さらに、各基材を用いた場合における分解率の相違を比較すると、粒度分布のみが異なり樹皮粒状物混入の有無が共通するNo.1(比較例1)とNo.2(実施例1)との間では、粒度分布において、粒径が0.25mm〜2.00mmである基材の含有量が80重量%以上(82.5%)であるNo.2が60%、同様に37.5%であるNo.1が57%であり、粒径が0.25mm〜2.00mmである粒子をより多く含む実施例1の方が、より高い分解率を示した(表1、表4)。
表5ないし8に、表1に示された基材No.1とNo.2の粒度分布における基本統計量を示す。各表において「範囲」とは、統計処理対象とする全分級からなる範囲をいう。単位はmmである。
Figure 2004216379










Figure 2004216379










Figure 2004216379










Figure 2004216379











各基材を用いた場合における分解率の相違を比較すると、粒度分布のみが異なり樹皮粒状物混入の有無が共通するNo.1(比較例1)とNo.2(実施例1)との間では、粒度分布において、
(a)全7分級において篩別された基材粒子の重量比の標準偏差nが、No.2では14以下である一方No.1では14を超えた値をとり、
(b)0.00mm〜3.35mmの範囲の6分級において篩別された基材粒子の重量比の標準偏差nが、No.2では15以下である一方No.1では、15を超えた値をとり、
(c)0.25mm〜2.00mmの範囲の3分級において篩別された基材粒子の重量比の標準偏差nが、No.2では9以下である一方No.1では、9を超えた値をとり、
(d)最大の重量比を与えた分級(階級)およびその前後に隣接する分級、計3分級において篩別された基材粒子の重量比の標準偏差nが、No.2では11以下である一方No.1では、11を超えた値をとった。
このように、各分級における重量比についての標準偏差nが小さく、各分級間相互における重量比の値の変動が小さいNo.2が60%、一方標準偏差nがより大きいNo.1が57%であり、重量比についての標準偏差nの小さい実施例1の方が、より高い分解率を示した(表4、5、6、7、8)。
<樹皮混入の効果>
粒度分布が共通し、樹皮粒状物混入の有無において相違するNo.2(実施例1)とNo.4(実施例2)の比較により、樹皮が混入しているNo.4の分解率が64%、混入していないNo.2が60%であり、樹皮の混入により分解率が高くなることが示された(表4)。
<発酵温度>
図2は、各基材における庫内温度および発酵温度の変化を示すグラフである。図中、小さい黒丸、三角形、正方形、および菱形は、それぞれ、基材No.1、2、3、4を用いた際の庫内温度を、大きい黒丸、三角形、正方形、および菱形は、それぞれ、基材No.1、2、3、4を用いた際の発酵温度を表す。また、点線は室温を表す。図において、庫内温度は生ごみ処理機内上部空間における気温、発酵温度は基材表面部から深さ10cmの基材内部の温度を、それぞれ測定した。図より、微生物の活性を示す指標の一つである発酵温度は、基材No.4(実施例2)を用いた場合に最も高くなることが示された。
<基材の持続性>
本実験は3ヶ月間にわたり継続されたが、No.1〜4のいずれの実施例においても発酵温度の低下は特に認められず、本発明の生ごみ処理基材が、微生物による分解効果を低下させない、優れた持続性を有することが示された。
<樹皮の材積>
本実験では前述のとおり、樹皮混入を、剥皮しない杉間伐材原木をそのまま切削、粉砕することによって行ったところ、良好な生ごみ処理基材を得ることができた。一般に、杉を始め原木における樹皮の材積は約0.6%程度であるため、生ごみ処理基材における樹皮粒状物の組成比は、材積0.4〜0.8%、より望ましくは0.5〜0.7%程度が良好である、と判断された。
以上より、生ごみ処理基材の粒径を小さくしたり粒度分布の変動を大きくする等、粒径を調整し、適当量の樹皮を混入させることによって、生分解率の高い生ごみ処理基材を製造できることが明らかとなった。
本発明の生ごみ処理基材とその製造方法によれば、上述のように構成されているため、従来廃棄していた木材樹皮を有効活用し、剥皮工程を省くことによる工程数削減によりコストを低減でき生分解効果の持続性に優れ、しかも生分解率を高くし、生ごみ分解性能を高くすることができる。
また、高価なバクテリア製剤を使用する必要のない、コスト面においても有利な生ごみ処理が可能となる。
さらには、従来廃棄物として処理されてきた国内山林の汚染度の低い間伐材を資源化し、有効活用することができ、環境に配慮した生ごみ処理が可能となる。
本発明の生ごみ処理基材とその製造方法によれば、従来廃棄していた木材樹皮を有効活用し、工程数削減およびコスト低減ができる。また、生分解効果の持続性、生分解率、生ごみ分解性能を高くすることができる。また、高価なバクテリア製剤が不要、さらには、間伐材資源化にも資することができ、産業上利用価値が高い発明である。
本発明の生ごみ処理基材の構成を示す概念図。 各基材における庫内温度および発酵温度の変化を示すグラフ。
符号の説明
1…木材粒状物、 2…樹皮粒状物











Claims (8)

  1. 木材を砕いてなる木材粒状物からなる、菌床とするための生ごみ処理基材において、樹皮を砕いてなる樹皮粒状物を含むことを特徴とする、生ごみ処理基材。
  2. 前記樹皮粒状物が、杉またはその他の針葉樹の樹皮を砕いてなるものであることを特徴とする、請求項1記載の生ごみ処理基材。
  3. 前記生ごみ処理基材において、粒径が0.15mm〜3.35mmである前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の含有量が、合わせて80重量%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生ごみ処理基材。
  4. 前記生ごみ処理基材において、粒径が20mm以上である前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の含有量が、合わせて1重量%以下であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の生ごみ処理基材。
  5. 前記生ごみ処理基材中における前記樹皮粒状物の含有量が、材積として0.4%以上0.8%以下であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の生ごみ処理基材。
  6. 前記木材粒状物および前記樹皮粒状物からなる前記生ごみ処理基材を目開き3.35mm、2.00mm、0.85mm、0.50mm、0.25mm、および0.15mmの各篩により、7の分級に篩別した場合に、
    (A)全分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが14以下であるか、
    (B)0.00mm〜3.35mmの範囲の6分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが15以下であるか、
    (C)0.25mm〜2.00mmの範囲の3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが9以下であるか、
    (D)最大の重量比を与えた分級およびその前後に隣接する分級、計3分級において篩別された前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒子の重量比の標準偏差nが11以下であるか、
    少なくとも(A)ないし(D)のいずれか一つの条件を満たすことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の生ごみ処理基材。
  7. 原木または木材を切削して木材切削物とし、次いで該木材切削物を破砕して木材粒状物とする、生ごみ処理基材の製造方法。
  8. 前記生ごみ処理基材の製造に係る工程中において、前記木材粒状物および前記樹皮粒状物の粒径を調整するための粒径調整工程を設けることを特徴とする、請求項7記載の生ごみ処理基材の製造方法。
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