JP2004216143A - 透析器およびその製造方法 - Google Patents
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【解決手段】 略筒状のケース2内に、複数の中空糸膜からなる中空糸束3と、該中空糸膜内腔により形成される血液流路と、該ケース2内壁と中空糸膜との間隙により形成される透析液流路とを有し、該ケース2内壁と中空糸束3の間隙に筒状の弾性チューブ4が設けられてなる透析器である。
【選択図】 図1
Description
透析器内の内部濾過量および内部逆濾過量を増加させるには、血液流路または透析液流路の圧力損失を増加させる必要がある。前記流路の圧力損失は、円管内層流の圧力損失導出式であるHagen-Posuille式で表される。
ΔP=8μLQ/πR4
(ΔP:流路の圧力損失、μ:流体の粘度、L:流路長さ、R:流路半径、
Q:体積流量)
上式より、流路の圧力損失ΔPを増大させるには、体積流量Qを増大させるか、流路断面積πR2を減少させるか流路長さLを増大させればよいことがわかる。
しかし、全長を長くした透析器は、充分な内部濾過量および内部逆濾過量促進効果を得るためには、流路長さを通常の長さの2倍以上に長くする必要があり、そのような透析器は実用的ではない。また、中空糸膜の内径を減少させた透析器は、製造時に内径寸法にばらつきが生じ、透析器使用後の中空糸膜内腔の残血が増加したりする可能性がある。
また、中空糸膜の充填率を増加させることにより透析液流路断面積を減少させる透析器として、通常よりも中空糸の本数を増加させた中空糸束を網などで収縮させてケースに挿入した透析器(例えば、特許文献2または3参照。)が提案されている。しかし、中空糸束を収縮させた透析器は、ケース内に中空糸束を挿入するために中空糸束を必要以上に縮径させることにより、中空糸膜を破損するおそれがある上に、ケースに挿入された中空糸膜の充填率は十分に高いものではない。
透析液膨潤性物質を導入した透析器は、該膨潤性物質そのものに厚みがあるため、ケース内に導入できる膨潤性物質の量に限界がある。該膨潤性物質の量が多いと中空糸束のケース内への挿入が困難になり、逆に少ないと透析液流路の断面積の減少の度合いが低くなる。筒状の膨潤性物質を導入した透析器もまた、該筒状膨潤性物質がケース内径よりもはるかに小さい内径を有するため、該中空糸束の筒状膨潤性物質内腔への挿入は困難であり、中空糸膜破損のおそれもある。さらに、袋状部材を膨張させる透析器や、ケースと共に中空糸束を圧縮する透析器は、構造が複雑な上に、袋状部材の膨張にかかる力や圧縮にかかる力がケースにもかかるため、ケースに十分な剛性を有するようにケース材料の改良が要求される。
(1)略筒状のケース内に、複数の中空糸膜からなる中空糸束と、該中空糸膜内腔により形成される血液流路と、該ケース内壁と中空糸膜との間隙及び中空糸膜同士の間隙により形成される透析液流路とを有し、該ケース内壁と中空糸束の間隙に筒状の弾性チューブが挿入されてなる透析器であって、
(2)前記弾性チューブは、外周表面に環状リブが設けられてなる上記(1)に記載の透析器及び、
(3)前記弾性チューブは、外周表面に潤滑剤が付与されてなる上記(1)または(2)に記載の透析器及び、
(4)前記弾性チューブが複数個挿入されてなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透析器及び、
(5)前記ケースは、ケース内壁に該弾性チューブを嵌合固定しうる凹部が設けられてなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の透析器であり、
(6)複数の中空糸膜からなる中空糸束を筒状の弾性チューブ内腔に挿入し、次いで略筒状のケース内に挿入してなる、上記(1)記載の透析器の製造方法及び、
(7)中空糸束を弾性チューブ内腔に挿入する際に、該弾性チューブの内径を拡大させる工程を含んでなる上記(6)記載の透析器の製造方法である。
図1は本発明の透析器の一実施例を示す斜視図であり、図7は図1の縦断面図である。(図1にある2つのキャップ22は図示しない。)図2および図3は本発明の透析器の他の実施例を示す斜視図である。また、図4は本発明の透析器における弾性チューブの一実施例を示す縦断面図である。そして図8は図4の弾性チューブを用いた本発明の他の実施例を示す縦断面図である。(図7と同様にキャップは図示しない。)図5は本発明の透析器の製造方法の説明図である。さらに図9は図7及び図8におけるX−X部分の横断面図を示し、図10は図7及び図8におけるY−Y部分の横断面図を示す。
図1及び図8に示すように、本発明の一実施例である透析器1は、両端が開口した略筒状のケース2内に、複数の中空糸膜からなる中空糸束3と、弾性チューブ4が挿入されてなる。
前記ケース本体21およびキャップ22は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、硬質ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン等の硬質樹脂で構成される。透析器1内部の血液視認性を確保するため、該ケース本体21およびキャップ22を形成する材料は、透明または半透明であることが好ましい。また、血液流出入口221および222を判別するため、2つのキャップ22は異なる色に着色された材料で形成されたものであってもよい。
前記中空糸膜は、100〜12,000本程度を束ねて得られる中空糸束3の状態で前記ケース2内に収容される。透析器内の中空糸膜の有効膜面積は、好ましくは0.1〜3.0m2であり、より好ましくは0.1〜2.5m2である。また、該中空糸膜のケース2に対する充填率は、20〜80%であり、より好ましくは40〜60%である。
また、目的とする透析器内の中空糸膜の有効膜面積を獲得するために中空糸膜の長さ及び中空糸膜の本数を適宜変化させる。それに適合するようにケースの長さも変化させる。
したがって、前記弾性チューブ4は、ケース本体21内への挿入が容易で、かつケース21内で確実に固定されるように、図4に示すように弾性チューブ4外周表面に環状リブ41が設けられていてもよい。(図4A)該リブ41の数は特に限定されず、例えば図4に示すように、弾性チューブ4の両端に2個のリブ41が設けられていてもよい。
また、前記弾性チューブ4のケース本体21内への挿入を、より容易にする目的で、該弾性チューブ4の外周表面またはケース本体21内壁に、グリセリン等の潤滑剤が塗布されていてもよい。なお、このような潤滑剤は、該弾性チューブ4の内周表面にも塗布することにより、該弾性チューブ4内腔への中空糸束3の挿入をも容易にすることができる。
さらに、前記弾性チューブ4が、ケース本体21内で確実に固定されるために、ケース本体21内壁に該弾性チューブ4を嵌合固定しうる凹部42が設けられていてもさしつかえない。(図4B)
以上の工程は、弾性チューブ4を用いたことを特徴とする本発明の透析器1の製造方法における、最も特徴的な工程である。これらの工程を経て得られた、弾性チューブ4および中空糸束3が挿入されたケース本体21は、従来の透析器と同様、両端部にポッティング剤が注入されて中空糸束3がケース本体21内に固定された後、ケース本体21の両端部にキャップ22が装着されるなどの工程を経て、透析器へと製造される。
また、中空糸束3を弾性チューブ4内に挿入する工程、および弾性チューブ4およびその内腔に挿入された中空糸束3をケース本体21内に挿入する工程において、必要があれば公知の挿入用具を用いてもよい。
透析器の内部濾過および内部逆濾過は、血液流路の圧力と透析液流路の圧力との差(膜間圧力差TMP)によって生じるものである。グラフ中、血液流路圧力の線と透析液流路圧力1の線で表されるように、血液流入口付近(グラフ左側)では血液流路の圧力が透析液流路の圧力よりも大きいため内部濾過が生じ、血液流出口付近(グラフ右側)では血液流路の圧力が透析液流路の圧力よりも小さいため内部逆濾過が生じる。TMPが大きいほど大量に内部濾過および内部逆濾過が行われる。ここで、内部逆濾過量と内部濾過量の差(内部逆濾過量−内部濾過量)が除水量に相当するが、該除水量は一般的な透析装置に組み込まれている除水量制御装置によって、透析治療を受ける患者ごとに管理される。
本発明の透析器1は、前記TMPを大きくするために弾性チューブ4が用いられている。該弾性チューブ4が透析液流路の断面積を減少させることにより、透析液流路の圧力は、グラフ中の透析液流路圧力2の線で示されるように、弾性チューブ4が挿入された部分で急激に変化する。これにより、TMPが大きくなり、大量の内部濾過および内部逆濾過が行われる。
<実施例1>
内径28.5mm、外径36mm、長さ20mm(L/M=約7.35%)、リブ部分の外径37.5mmのシリコーンゴム製リブ付き弾性チューブの内腔を真空吸引機能付きの治具で拡径し、該内腔に内径200μmで外径260μmのポリエーテルスルホン製中空糸膜を約9,000本束ねて得られた中空糸束を挿入し、該弾性チューブの拡径を解除した。次いで、内腔に中空糸束が挿入された前記弾性チューブを、全長272mmで内径36.5mmのポリカーボネート製透析器ケース本体の中央部分に挿入した。本実施例において、ケース本体および弾性チューブは、ケース本体内壁および弾性チューブ外周表面に予め潤滑剤としてグリセリンが塗布されたものを用いた。その後、ケース本体の両端部にポッティング剤を注入して前記中空糸束をケース本体内に固定した。該中空糸束の有効膜面積は1.5m2であり、該中空糸束の充填率は45%であった。ケース本体の両端部にキャップを装着して透析器を製造した。該透析器において、弾性チューブ内腔における中空糸膜の充填率は79%であった。
弾性チューブとして、内径28.5mm、外径36mm、長さ40mm(L/M=約14.71%)、リブ部分の外径37.5mmのシリコーンゴム製リブ付き弾性チューブを用いた他は、実施例1と同様の操作により透析器を製造した。該透析器において、弾性チューブ内腔における中空糸膜の充填率は79%であった。
弾性チューブとして、内径28.5mm、外径36mm、長さ60mm(L/M=約22.06%)、リブ部分の外径37.5mmのシリコーンゴム製リブ付き弾性チューブを用いた他は、実施例1と同様の操作により透析器を製造した。該透析器において、弾性チューブ内腔における中空糸膜の充填率は79%であった。
次に弾性チューブ内腔の中空糸膜の充填率が65%となる内径及び外径を備えた長さ60mm(L/M=約22.06%)の弾性チューブを用いて実施例1と同様の操作により透析器を製造した。
次に弾性チューブ内腔の中空糸膜の充填率が65%となる内径及び外径を備えた、長さ120mm(L/M=約44.12%)の弾性チューブを用いて実施例1と同様の操作により透析器を製造した。
全長272mmで内径36.5mmのポリカーボネート製透析器ケース本体内腔に、内径200μmで外径260μmのポリエーテルスルホン製中空糸膜を約9,000本束ねて得られた中空糸束を挿入し、ケース本体の両端部にポッティング剤を注入して前記中空糸束をケース本体内に固定した。該中空糸束の有効膜面積は1.5m2であり、該中空糸束の充填率は45%であった。その後、ケース本体の両端部にキャップを装着して透析器を製造した。
また、前記実施例1〜5および比較例1で得られたそれぞれの透析器を用いて、日本透析医学会の定める血液浄化器の性能評価法と機能分類(日本透析医学会雑誌29巻8号、1231-1245、1996)に従って、β2ミクログロブリン(分子量11,800)のクリアランスを測定した。該測定は、牛血(Ht=30%、総タンパク質濃度6.5g/dL、37℃)を用いた60minの透析(血液流量200mL/min、透析液流量500mL/min、除水速度15mL/min)の後に行った。該測定は牛血(Ht=30%、総タンパク質濃度6.5g/dL、β2ミクログロブリン濃度1mg/L、37℃)を用いて行い、測定条件は、血液流量が200mL/min、透析液流量が500mL/min、除水速度が15mL/minであった。その測定結果を表1に示す。
これらの結果より、本発明の透析器は弾性チューブを設けたことにより、従来の弾性チューブを設けていない透析器(比較例1)に比べて、透析液流路の断面積が減少したことによって、内部濾過量および内部逆濾過量が増加し、クリアランスが増加したことがわかる。
2 ケース
3 中空糸束
4 弾性チューブ
5 透析液流路
6 ポッティング部
21 ケース本体
41 リブ
42 ケース内表面の凹部
L 弾性チューブの長さ
M 透析器のケースの長さ
Claims (7)
- 略筒状のケース内に、複数の中空糸膜からなる中空糸束と、該中空糸膜内腔により形成される血液流路と、該ケース内壁と中空糸膜との間隙及び中空糸膜同士の間隙により形成される透析液流路とを有し、該ケース内壁と中空糸束の間隙に筒状の弾性チューブが挿入されてなる透析器。
- 前記弾性チューブは、外周表面に環状リブが設けられてなる請求項1記載の透析器。
- 前記弾性チューブは、外周表面に潤滑剤が付与されてなる請求項1または2記載の透析器。
- 前記弾性チューブが複数個挿入されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の透析器。
- 前記ケースは、ケース内壁に該弾性チューブを嵌合固定しうる凹部が設けられてなる請求項1〜4のいずれかに記載の透析器。
- 複数の中空糸膜からなる中空糸束を筒状の弾性チューブ内腔に挿入し、次いで略筒状のケース内に挿入してなる、請求項1記載の透析器の製造方法。
- 中空糸束を弾性チューブ内腔に挿入する際に、該弾性チューブの内径を拡大させる工程を含んでなる請求項6記載の透析器の製造方法。
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