JP2004205210A - 齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具 - Google Patents
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Abstract
【課題】齲蝕の活性能、即ち歯垢からの酸の放出量をより簡単に短時間で評価できる齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具を提供する。
【解決手段】pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬と糖類とを吸収性材料に担持又は含浸させ、試験前の該吸収性材料のpH値がpH指示薬の変色域より高い状態とし、その状態で被験者から採取した歯垢をそのまま塗布し吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する。
【選択図】 なし
【解決手段】pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬と糖類とを吸収性材料に担持又は含浸させ、試験前の該吸収性材料のpH値がpH指示薬の変色域より高い状態とし、その状態で被験者から採取した歯垢をそのまま塗布し吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被験者の口腔内に於ける齲蝕の活性能を簡単に短時間で評価することができる齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
歯科に於ける齲蝕活性評価とは、齲蝕の活性能、即ち現在発症している歯牙の齲蝕が更に進行するか否か、又は現在齲蝕は発生していないが齲蝕の活性により将来齲蝕が発生する可能性があるか否かを予測・判定するものであり、口腔衛生上重要な意義を有する。
【0003】
歯牙の齲蝕の発症及び進行は、歯質に付着した歯垢に存在する齲蝕原生菌が炭水化物を代謝することにより酸を産生し、その酸により歯質中のカルシウムイオンやリン酸イオンが溶出される脱灰現象によるものと考えられている。従って、齲蝕活性を評価する方法の一つとして歯垢からの酸の放出量を測定する方法が研究されている。歯垢からの酸の放出量は、歯垢中の齲蝕原生菌の数に依存すると考えられることから歯垢中のミュータンス連鎖球菌数測定試験,乳酸桿菌数測定試験等により行われている。しかしながら、これらの方法は高価な培養設備や高度な操作技術及び長時問に及ぶ培養時間を必要とする欠点があった。
【0004】
そのため、簡易に評価できる方法が数多く提案されている(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5,特許文献6参照)。これらの方法は何れもpH指示薬と糖とを含有する水溶液の中に被験者の歯牙から採取した歯垢を添加して、その後の水溶液中のpH指示薬の示す色の変化から酸の放出量を評価する方法であり、従来の菌数測定試験と比較して歯垢を水溶液に添加するだけで齲蝕の活性能が評価できるため簡便性に優れた方法である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭50−1589号公報
【特許文献2】
特開昭54−47700号公報
【特許文献3】
特開昭56−96700号公報
【特許文献4】
特開昭56−120623号公報
【特許文献5】
特公昭57−13824号公報
【特許文献6】
特開昭59−99354号公報
【0006】
しかしながらこれらの方法は、歯垢を水溶液に添加することが必要であるため歯垢が水溶液中に分散されて歯垢中の齲蝕原生菌が産生する酸も希釈されてしまい、歯垢を添加してからpH指示薬の示す色が変化するまでに30分から48時間という長時問を要し、判定に時間がかかる問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題点を解消し、被験者の齲蝕の活性能、即ち歯垢からの酸の放出量をより簡単且つ短時問で評価できる齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、従来の水溶液中で培養する必要のあった検査に代えて、吸収性材料に特定のpH指示薬と糖類とが含浸又は担持されていてその吸収性材料のpH値が特定のpH指示薬の変色域より高いpH値を示す状態でその吸収性材料に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布すると、その歯垢から産生された酸が殆ど希釈されないためpH指示薬が短時間で鋭敏に反応して変色することを見い出し、長時問を費やして培養した後にpH指示薬の変色状態を観察せずとも短時間の観察のみで評価が可能であることを究明して本発明を完成したのである。
【0009】
即ち本発明は、
▲1▼ pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料と糖類を含む水溶液とから成り、該吸収性材料が該水溶液を所定量含浸された場合に該pH指示薬の変色域より高いpH値になる吸収性材料であり、該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後に該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させることによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価キットと、
▲2▼ 吸収性材料とpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬及び糖類を含む水溶液とから成り、該吸収性材料が該水溶液を所定量含浸された場合に該pH指示薬の変色域より高いpH値になる吸収性材料であり、該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後に該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させることによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価キットと、
▲3▼ 吸収性材料にpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬と糖類とが予め担持されており、且つ該pH指示薬と糖類とが予め担持されている吸収性材料のpH値が該pH指示薬の変色域より高いpH値になっており、被験者から採取した歯垢をそのまま塗布することによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価用具と
に関するものであり、これらの齲蝕活性評価キットや齲蝕活性評価用具において使用するpH指示薬としては、p−エトキシクリソイジン、α−ナフチルレッド、アリザリンスルホン酸ナトリウム、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、2,5―ジニトロフェノール、p−ニトロフェノール、アゾリトミン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、クロロフェノールレッド、フェノールレッド、m−ニトロフェノール、ニュートラルレッド、ロゾール酸、ブロモチモールブルー、チャイナブルー、ラクモイド、レザズリンから成る群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、また糖類としては、グルコース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、水飴、カップリングシュガーから成る群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に使用する吸収性材料は、特定のpH指示薬と糖類とが含浸又は担持されている状態でそのpH値が特定のpH指示薬の変色域より高いpH値を示すものであれば特に限定されず、例えば、濾紙,吸い取り紙,紙タオル等の紙が最も好ましく、この他にも脱脂綿,石英ウール,ガラスウール,ウール,絹,綿,麻,アクリル,レーヨン,ナイロン,ニトロセルロース,酢酸セルロース,再生セルロース,ガラス繊維等の繊維から成る布や不織布等も使用することができる。また、デキストラン,ムタン,レバン,セルロースパウダー等を固形に形成したものも使用可能である。そして、これらの素材は特定のpH指示薬と糖類とを含浸又は担持させてもそのpH値が特定のpH指示薬の変色域より高いpH値を示さないものである場合には、アルカリ液を予め担持させておくか、又は含浸させる特定のpH指示薬や糖類に予めアルカリ液を混合させておく。また、この吸収性材料の形状としては、平面形状が一辺0.3〜30cm程度の略方形又は直径0.3〜30cm程度の略円形で、厚さ0.2〜2mm程度のシート状であることが好ましく、操作性の面からは平面形状が一辺0.3〜8cm程度の略方形又は直径0.3〜8cm程度の略円形であることがより好ましく、多量に採取することが難しい歯垢をそのまま塗布することを考慮すると、平面形状が一辺0.3〜2cm程度の略方形又は直径0.3〜2cm程度の略円形であることがより好ましい。
【0011】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に用いるpH指示薬は、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つものであれば特に限定されず、例えば、p−エトキシクリソイシン(変色域:3.8〜5.4)、α−ナフチルレット(変色域:3.7〜5.0)、アリザリンスルホン酸ナトリウム(変色域:5.5〜6.8)、ブロモクレゾールグリーン(変色域:3.8〜5.9)、メチルレッド(変色域:4.4〜6.2)、2,5−ジニトロフェノール(変色域:4.0〜5.8)、p−ニトロフェノール(変色域:5.0〜7.0)、アゾリトミン(変色域:5.0〜8.0)、ブロモクレゾールパープル(変色域:5.2〜6.8)、ブロモフェノールレッド(変色域:5.2〜7.0)、クロロフェノールレッド(変色域:5.2〜6.8)、フェノールレッド(変色:6.4〜8.0)、m−ニトロフェノール(変色域:6.4〜8.8)、ニュートラルレッド(変色:6.8〜8.0)、ロゾール酸(変色域:6.8〜8.0)、ブロモチモールブルー(変色域:6.0〜7.6)、チャイナブルー(変色域:2.8〜8.0)、ラクモイド(変色域:4.4〜6.4)、レザズリン(変色域:3.8〜6.5)等を挙げることができる。これらのpH指示薬を2種以上混合して使用することも可能である。このpH指示薬の濃度としては、少なすぎると変色が不鮮明であり、多すぎると変色に時間がかかると共に色調が暗くなって変色が不鮮明となる。具体的には齲蝕活性評価キットとして水溶液の形態で用いる場合には齲蝕原生菌に影響を及ぼさず緩衝能を持たない水等の溶媒中の濃度が0.001〜10重量%の濃度であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%である。吸収性材料に乾燥した状態で担持させて使用する場合には吸収性材料の重量に対して大凡0.001〜0.5重量%程度となるように把持させることが好ましく、中でも0.005〜0.03重量%がより好ましい。
【0012】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に用いる糖は、齲蝕原生菌が代謝して酸を産生できるものであれば特に限定されず、例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、水飴、カップリングシュガー等が使用できる。この糖の濃度としては、少なすぎると齲蝕原生菌が産生する酸の量が少ないため短時間ではpH指示薬が変色せず、多すぎると齲蝕原生菌に浸透圧がかかり酸の産生に影響を及ぼす。具体的には、齲蝕活性評価キットとして水溶液の形態で用いる場合には齲蝕原生菌に影響を及ぼさず緩衝能を持たない水等の溶媒中の濃度が2〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。また、齲蝕活性評価用具として予め吸収性材料に担持させておく場合には、乾燥した吸収性材料の重量に対して糖類が1.0〜50重量%となるように担持させることが好ましく、中でも5〜25重量%がより好ましい。
【0013】
本発明に係る齲蝕活性評価キットにおいて、特定のpH指示薬が担持された吸収性材料と糖類を含む水溶液とから成る場合にはその吸収性材料が糖類を含む水溶液を所定量含浸された場合に特定のpH指示薬の変色域より高いpH値になるように特定のpH指示薬が担持された吸収性材料及び/又は糖類を含む水溶液を、また吸収性材料と特定のpH指示薬及び糖類を含む水溶液とから成る場合には吸収性材料及び/又は特定のpH指示薬及び糖類を含む水溶液を、そして本発明に係る齲蝕活性評価用具の場合には特定のpH指示薬及び糖類が予め担持されている吸収性材料を、用いるpH指示薬の変色域より高いpH値となるように必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等でそのpH値を調整しておくことが必要である。pH値の調整方法は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等に吸収性材料を浸漬したり噴霧したり、或いは糖類を含む水溶液や特定のpH指示薬及び糖類を含む水溶液のpH値を調整してもよい。このpH値は、予想される歯垢のpH値よりも高くしておくことが望ましい。
【0014】
本発明に係る齲蝕活性評価キットの使用方法は、請求項1に係る齲蝕活性評価キットの場合には、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料に糖類を含む水溶液を滴下等の方法で所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのままpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料に塗布した後に糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させ、一定時間後に於ける吸収性材料の示す色の変化を観察するのである。また、請求項2に係る齲蝕活性評価キットの場合には、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬及び糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は吸収性材料に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後にpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬及び糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させ、一定時間後に於ける吸収性材料の示す色の変化を観察するのである。
また、本発明に係る齲蝕活性評価用具の使用方法は、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬と糖類とが予めが担持されている吸収性材料に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布し、一定時間後に於ける吸収性材料の示す色の変化を観察するのである。この場合は予め特定のpH指示薬と糖類とが吸収性材料に含まれているため検査の手順を簡略化することが可能となる。
【0015】
即ち、吸収性材料に塗布された歯垢の中に存在する齲蝕原生菌は、吸収性材料に含まれている糖を代謝して酸を産生するため吸収性材料のpHが低下してpH指示薬の変色域を超えると吸収性材料の色が変化するのでそれを観察するのである。一定時問後に吸収性材料の示す色は、齲蝕原生菌が糖を代謝して産生する酸の量によって異なり、産生する酸の量は歯垢中に存在する齲蝕原生菌の数に依存するので、一定時間後に於ける齲蝕活性評価用具の示す色を観察することにより被験者の齲蝕活性能を評価することができるのである。
【0016】
このような本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具の使用方法に於いて、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料に糖類を含む水溶液の含浸に先んじて被験者から採取した歯垢をそのまま塗布し、しかる後に糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させて一定時間後に於ける齲蝕活性評価用具の示す色の変化を観察する場合には、先ず歯垢そのもののpH値を確認でき、その後に糖を代謝して産生する酸の量を確認するといった2段階の評価をすることもできる。
なお、吸収性材料に予め糖類を担持させておき、被験者から採取した歯垢を塗布する前後の何れかにpH指示薬の含まれた水溶液を滴下する方法も考えられるが、これは検査の精度が低下するばかりではなく検査手順が煩雑になるだけなので好ましくなく、また本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具の使用方法として、糖類を含んだ水溶液で被験者の口腔内を洗口した後に歯垢を採取してpH指示薬の担持されている吸収性材料に塗布するなどの方法も考えられるが、糖類を含んだ水溶液で洗口することは、後で再び歯みがき等で洗口しなければならず、現実的ではない。
【0017】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具の使用に於ける、一定時間後に於ける齲蝕活性評価用具の示す色の観察は、用いるpH指示薬により色の変化が異なるが、例えばpHの高い順にレザズリンの場合には青→赤紫→桃,ラクモイドの場合には青→赤紫→桃,メチルレッドの場合には黄→桃→赤,ブロモチモールブルーの場合には青→緑→黄、ブロモクレゾールパープルの場合には紫→黄緑色→黄色と変化する。
【0018】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれ等実施例に限定されるものではない。
【0019】
《齲蝕活性評価用具及び齲蝕活性評価キットの作製》
吸収性材料として幅:10mm,長さ:10mm,厚さ:0.38mmの短冊状の濾紙(WHATMAN社製,商品名:Filter Paper 3)を準備し、表1に示す割合で調整した水溶液▲1▼〜▲4▼に浸漬した後に取り出して乾燥させたものを齲蝕活性評価用具1〜4とした。また、前述の吸収性材料を表2に示す割合で調整したpH指示薬を含む水溶液▲5▼,▲6▼に浸漬した後に取り出して乾燥させたものを齲蝕活性評価キット5及び6の吸収性材料とし、表2に示す割合で調整した糖類を含む水溶液▲5▼,▲6▼を齲蝕活性評価キット5及び6の水溶液とした。また、未処理の前述の吸収性材料を齲蝕活性評価キット7及び8の吸収性材料と、そして表2に示す割合で調整したpH指示薬を含む水溶液▲7▼,▲8▼と糖類を含む水溶液▲7▼,▲8▼との混合液を齲蝕活性評価キット7及び8の水溶液とした。
【0020】
《齲蝕活性の評価方法》
齲蝕活性評価用具1〜4及び齲蝕活性評価キット5〜8を用いて、それぞれ同じ2名について以下の方法で被験者A,Bの齲蝕活性の評価を行った。即ち、齲蝕活性評価用具1〜4に於いては、前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま吸収性材料に塗布して室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット5に於いては、吸収性材料に糖類を含む水溶液▲5▼を滴下により含浸させた後に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布して室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット6に於いては、吸収性材料に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布した後に糖類を含む水溶液▲6▼を滴下により含浸させて室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット7に於いては、吸収性材料に混合液▲7▼を滴下により含浸させた後に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布して室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット8に於いては、吸収性材料に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布した後に混合液▲8▼滴下により含浸させて室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。評価の結果をそれぞれ表1及び表2に纏めて示した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
評価の結果から被験者Aの齲蝕活性が被験者Bの齲蝕活性より高いことが分かり、実際に約1mgの歯垢中に存在するミュータンス菌数を測定した処、被験者Aが1×106CFU,被験者Bが1×105CFUであった。また、実施例では被験者間での比較による評価を行ったが、本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具は、定められた条件で準備された齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具を用いたときの菌の活性によるpH値と歯垢中の齲蝕原性菌数とを予め確認しておけば、相対的に評価することなく更に簡単な操作で正確に齲蝕の活性を評価することも可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上に詳述したように本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具は、口腔衛生上重要である齲蝕活性、即ち歯垢からの酸の放出量をより簡単且つ短時間で評価できるものであり、使用するpH指示薬と糖類との種類や量、更にはそのpH指示薬の変色域より高く調整するpH値によってその齲蝕活性を評価を判定する効能を種々変化させることも可能であり、歯科医療分野に貢献する価値の非常に大きなものである。
【産業上の利用分野】
本発明は、被験者の口腔内に於ける齲蝕の活性能を簡単に短時間で評価することができる齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
歯科に於ける齲蝕活性評価とは、齲蝕の活性能、即ち現在発症している歯牙の齲蝕が更に進行するか否か、又は現在齲蝕は発生していないが齲蝕の活性により将来齲蝕が発生する可能性があるか否かを予測・判定するものであり、口腔衛生上重要な意義を有する。
【0003】
歯牙の齲蝕の発症及び進行は、歯質に付着した歯垢に存在する齲蝕原生菌が炭水化物を代謝することにより酸を産生し、その酸により歯質中のカルシウムイオンやリン酸イオンが溶出される脱灰現象によるものと考えられている。従って、齲蝕活性を評価する方法の一つとして歯垢からの酸の放出量を測定する方法が研究されている。歯垢からの酸の放出量は、歯垢中の齲蝕原生菌の数に依存すると考えられることから歯垢中のミュータンス連鎖球菌数測定試験,乳酸桿菌数測定試験等により行われている。しかしながら、これらの方法は高価な培養設備や高度な操作技術及び長時問に及ぶ培養時間を必要とする欠点があった。
【0004】
そのため、簡易に評価できる方法が数多く提案されている(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献5,特許文献6参照)。これらの方法は何れもpH指示薬と糖とを含有する水溶液の中に被験者の歯牙から採取した歯垢を添加して、その後の水溶液中のpH指示薬の示す色の変化から酸の放出量を評価する方法であり、従来の菌数測定試験と比較して歯垢を水溶液に添加するだけで齲蝕の活性能が評価できるため簡便性に優れた方法である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭50−1589号公報
【特許文献2】
特開昭54−47700号公報
【特許文献3】
特開昭56−96700号公報
【特許文献4】
特開昭56−120623号公報
【特許文献5】
特公昭57−13824号公報
【特許文献6】
特開昭59−99354号公報
【0006】
しかしながらこれらの方法は、歯垢を水溶液に添加することが必要であるため歯垢が水溶液中に分散されて歯垢中の齲蝕原生菌が産生する酸も希釈されてしまい、歯垢を添加してからpH指示薬の示す色が変化するまでに30分から48時間という長時問を要し、判定に時間がかかる問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題点を解消し、被験者の齲蝕の活性能、即ち歯垢からの酸の放出量をより簡単且つ短時問で評価できる齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、従来の水溶液中で培養する必要のあった検査に代えて、吸収性材料に特定のpH指示薬と糖類とが含浸又は担持されていてその吸収性材料のpH値が特定のpH指示薬の変色域より高いpH値を示す状態でその吸収性材料に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布すると、その歯垢から産生された酸が殆ど希釈されないためpH指示薬が短時間で鋭敏に反応して変色することを見い出し、長時問を費やして培養した後にpH指示薬の変色状態を観察せずとも短時間の観察のみで評価が可能であることを究明して本発明を完成したのである。
【0009】
即ち本発明は、
▲1▼ pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料と糖類を含む水溶液とから成り、該吸収性材料が該水溶液を所定量含浸された場合に該pH指示薬の変色域より高いpH値になる吸収性材料であり、該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後に該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させることによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価キットと、
▲2▼ 吸収性材料とpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬及び糖類を含む水溶液とから成り、該吸収性材料が該水溶液を所定量含浸された場合に該pH指示薬の変色域より高いpH値になる吸収性材料であり、該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後に該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させることによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価キットと、
▲3▼ 吸収性材料にpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬と糖類とが予め担持されており、且つ該pH指示薬と糖類とが予め担持されている吸収性材料のpH値が該pH指示薬の変色域より高いpH値になっており、被験者から採取した歯垢をそのまま塗布することによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価用具と
に関するものであり、これらの齲蝕活性評価キットや齲蝕活性評価用具において使用するpH指示薬としては、p−エトキシクリソイジン、α−ナフチルレッド、アリザリンスルホン酸ナトリウム、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、2,5―ジニトロフェノール、p−ニトロフェノール、アゾリトミン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、クロロフェノールレッド、フェノールレッド、m−ニトロフェノール、ニュートラルレッド、ロゾール酸、ブロモチモールブルー、チャイナブルー、ラクモイド、レザズリンから成る群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、また糖類としては、グルコース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、水飴、カップリングシュガーから成る群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に使用する吸収性材料は、特定のpH指示薬と糖類とが含浸又は担持されている状態でそのpH値が特定のpH指示薬の変色域より高いpH値を示すものであれば特に限定されず、例えば、濾紙,吸い取り紙,紙タオル等の紙が最も好ましく、この他にも脱脂綿,石英ウール,ガラスウール,ウール,絹,綿,麻,アクリル,レーヨン,ナイロン,ニトロセルロース,酢酸セルロース,再生セルロース,ガラス繊維等の繊維から成る布や不織布等も使用することができる。また、デキストラン,ムタン,レバン,セルロースパウダー等を固形に形成したものも使用可能である。そして、これらの素材は特定のpH指示薬と糖類とを含浸又は担持させてもそのpH値が特定のpH指示薬の変色域より高いpH値を示さないものである場合には、アルカリ液を予め担持させておくか、又は含浸させる特定のpH指示薬や糖類に予めアルカリ液を混合させておく。また、この吸収性材料の形状としては、平面形状が一辺0.3〜30cm程度の略方形又は直径0.3〜30cm程度の略円形で、厚さ0.2〜2mm程度のシート状であることが好ましく、操作性の面からは平面形状が一辺0.3〜8cm程度の略方形又は直径0.3〜8cm程度の略円形であることがより好ましく、多量に採取することが難しい歯垢をそのまま塗布することを考慮すると、平面形状が一辺0.3〜2cm程度の略方形又は直径0.3〜2cm程度の略円形であることがより好ましい。
【0011】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に用いるpH指示薬は、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つものであれば特に限定されず、例えば、p−エトキシクリソイシン(変色域:3.8〜5.4)、α−ナフチルレット(変色域:3.7〜5.0)、アリザリンスルホン酸ナトリウム(変色域:5.5〜6.8)、ブロモクレゾールグリーン(変色域:3.8〜5.9)、メチルレッド(変色域:4.4〜6.2)、2,5−ジニトロフェノール(変色域:4.0〜5.8)、p−ニトロフェノール(変色域:5.0〜7.0)、アゾリトミン(変色域:5.0〜8.0)、ブロモクレゾールパープル(変色域:5.2〜6.8)、ブロモフェノールレッド(変色域:5.2〜7.0)、クロロフェノールレッド(変色域:5.2〜6.8)、フェノールレッド(変色:6.4〜8.0)、m−ニトロフェノール(変色域:6.4〜8.8)、ニュートラルレッド(変色:6.8〜8.0)、ロゾール酸(変色域:6.8〜8.0)、ブロモチモールブルー(変色域:6.0〜7.6)、チャイナブルー(変色域:2.8〜8.0)、ラクモイド(変色域:4.4〜6.4)、レザズリン(変色域:3.8〜6.5)等を挙げることができる。これらのpH指示薬を2種以上混合して使用することも可能である。このpH指示薬の濃度としては、少なすぎると変色が不鮮明であり、多すぎると変色に時間がかかると共に色調が暗くなって変色が不鮮明となる。具体的には齲蝕活性評価キットとして水溶液の形態で用いる場合には齲蝕原生菌に影響を及ぼさず緩衝能を持たない水等の溶媒中の濃度が0.001〜10重量%の濃度であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%である。吸収性材料に乾燥した状態で担持させて使用する場合には吸収性材料の重量に対して大凡0.001〜0.5重量%程度となるように把持させることが好ましく、中でも0.005〜0.03重量%がより好ましい。
【0012】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具に用いる糖は、齲蝕原生菌が代謝して酸を産生できるものであれば特に限定されず、例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、水飴、カップリングシュガー等が使用できる。この糖の濃度としては、少なすぎると齲蝕原生菌が産生する酸の量が少ないため短時間ではpH指示薬が変色せず、多すぎると齲蝕原生菌に浸透圧がかかり酸の産生に影響を及ぼす。具体的には、齲蝕活性評価キットとして水溶液の形態で用いる場合には齲蝕原生菌に影響を及ぼさず緩衝能を持たない水等の溶媒中の濃度が2〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。また、齲蝕活性評価用具として予め吸収性材料に担持させておく場合には、乾燥した吸収性材料の重量に対して糖類が1.0〜50重量%となるように担持させることが好ましく、中でも5〜25重量%がより好ましい。
【0013】
本発明に係る齲蝕活性評価キットにおいて、特定のpH指示薬が担持された吸収性材料と糖類を含む水溶液とから成る場合にはその吸収性材料が糖類を含む水溶液を所定量含浸された場合に特定のpH指示薬の変色域より高いpH値になるように特定のpH指示薬が担持された吸収性材料及び/又は糖類を含む水溶液を、また吸収性材料と特定のpH指示薬及び糖類を含む水溶液とから成る場合には吸収性材料及び/又は特定のpH指示薬及び糖類を含む水溶液を、そして本発明に係る齲蝕活性評価用具の場合には特定のpH指示薬及び糖類が予め担持されている吸収性材料を、用いるpH指示薬の変色域より高いpH値となるように必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等でそのpH値を調整しておくことが必要である。pH値の調整方法は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等に吸収性材料を浸漬したり噴霧したり、或いは糖類を含む水溶液や特定のpH指示薬及び糖類を含む水溶液のpH値を調整してもよい。このpH値は、予想される歯垢のpH値よりも高くしておくことが望ましい。
【0014】
本発明に係る齲蝕活性評価キットの使用方法は、請求項1に係る齲蝕活性評価キットの場合には、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料に糖類を含む水溶液を滴下等の方法で所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのままpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料に塗布した後に糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させ、一定時間後に於ける吸収性材料の示す色の変化を観察するのである。また、請求項2に係る齲蝕活性評価キットの場合には、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬及び糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は吸収性材料に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後にpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬及び糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させ、一定時間後に於ける吸収性材料の示す色の変化を観察するのである。
また、本発明に係る齲蝕活性評価用具の使用方法は、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬と糖類とが予めが担持されている吸収性材料に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布し、一定時間後に於ける吸収性材料の示す色の変化を観察するのである。この場合は予め特定のpH指示薬と糖類とが吸収性材料に含まれているため検査の手順を簡略化することが可能となる。
【0015】
即ち、吸収性材料に塗布された歯垢の中に存在する齲蝕原生菌は、吸収性材料に含まれている糖を代謝して酸を産生するため吸収性材料のpHが低下してpH指示薬の変色域を超えると吸収性材料の色が変化するのでそれを観察するのである。一定時問後に吸収性材料の示す色は、齲蝕原生菌が糖を代謝して産生する酸の量によって異なり、産生する酸の量は歯垢中に存在する齲蝕原生菌の数に依存するので、一定時間後に於ける齲蝕活性評価用具の示す色を観察することにより被験者の齲蝕活性能を評価することができるのである。
【0016】
このような本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具の使用方法に於いて、pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料に糖類を含む水溶液の含浸に先んじて被験者から採取した歯垢をそのまま塗布し、しかる後に糖類を含む水溶液を滴下等の方法で吸収性材料に所定量含浸させて一定時間後に於ける齲蝕活性評価用具の示す色の変化を観察する場合には、先ず歯垢そのもののpH値を確認でき、その後に糖を代謝して産生する酸の量を確認するといった2段階の評価をすることもできる。
なお、吸収性材料に予め糖類を担持させておき、被験者から採取した歯垢を塗布する前後の何れかにpH指示薬の含まれた水溶液を滴下する方法も考えられるが、これは検査の精度が低下するばかりではなく検査手順が煩雑になるだけなので好ましくなく、また本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具の使用方法として、糖類を含んだ水溶液で被験者の口腔内を洗口した後に歯垢を採取してpH指示薬の担持されている吸収性材料に塗布するなどの方法も考えられるが、糖類を含んだ水溶液で洗口することは、後で再び歯みがき等で洗口しなければならず、現実的ではない。
【0017】
本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具の使用に於ける、一定時間後に於ける齲蝕活性評価用具の示す色の観察は、用いるpH指示薬により色の変化が異なるが、例えばpHの高い順にレザズリンの場合には青→赤紫→桃,ラクモイドの場合には青→赤紫→桃,メチルレッドの場合には黄→桃→赤,ブロモチモールブルーの場合には青→緑→黄、ブロモクレゾールパープルの場合には紫→黄緑色→黄色と変化する。
【0018】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれ等実施例に限定されるものではない。
【0019】
《齲蝕活性評価用具及び齲蝕活性評価キットの作製》
吸収性材料として幅:10mm,長さ:10mm,厚さ:0.38mmの短冊状の濾紙(WHATMAN社製,商品名:Filter Paper 3)を準備し、表1に示す割合で調整した水溶液▲1▼〜▲4▼に浸漬した後に取り出して乾燥させたものを齲蝕活性評価用具1〜4とした。また、前述の吸収性材料を表2に示す割合で調整したpH指示薬を含む水溶液▲5▼,▲6▼に浸漬した後に取り出して乾燥させたものを齲蝕活性評価キット5及び6の吸収性材料とし、表2に示す割合で調整した糖類を含む水溶液▲5▼,▲6▼を齲蝕活性評価キット5及び6の水溶液とした。また、未処理の前述の吸収性材料を齲蝕活性評価キット7及び8の吸収性材料と、そして表2に示す割合で調整したpH指示薬を含む水溶液▲7▼,▲8▼と糖類を含む水溶液▲7▼,▲8▼との混合液を齲蝕活性評価キット7及び8の水溶液とした。
【0020】
《齲蝕活性の評価方法》
齲蝕活性評価用具1〜4及び齲蝕活性評価キット5〜8を用いて、それぞれ同じ2名について以下の方法で被験者A,Bの齲蝕活性の評価を行った。即ち、齲蝕活性評価用具1〜4に於いては、前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま吸収性材料に塗布して室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット5に於いては、吸収性材料に糖類を含む水溶液▲5▼を滴下により含浸させた後に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布して室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット6に於いては、吸収性材料に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布した後に糖類を含む水溶液▲6▼を滴下により含浸させて室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット7に於いては、吸収性材料に混合液▲7▼を滴下により含浸させた後に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布して室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。また、齲蝕活性評価キット8に於いては、吸収性材料に前記被験者2名から採取した歯垢約1mgをそのまま塗布した後に混合液▲8▼滴下により含浸させて室温中に5分問放置し、吸収性材料の示す色を観察した。評価の結果をそれぞれ表1及び表2に纏めて示した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
評価の結果から被験者Aの齲蝕活性が被験者Bの齲蝕活性より高いことが分かり、実際に約1mgの歯垢中に存在するミュータンス菌数を測定した処、被験者Aが1×106CFU,被験者Bが1×105CFUであった。また、実施例では被験者間での比較による評価を行ったが、本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具は、定められた条件で準備された齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具を用いたときの菌の活性によるpH値と歯垢中の齲蝕原性菌数とを予め確認しておけば、相対的に評価することなく更に簡単な操作で正確に齲蝕の活性を評価することも可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上に詳述したように本発明に係る齲蝕活性評価キット及び齲蝕活性評価用具は、口腔衛生上重要である齲蝕活性、即ち歯垢からの酸の放出量をより簡単且つ短時間で評価できるものであり、使用するpH指示薬と糖類との種類や量、更にはそのpH指示薬の変色域より高く調整するpH値によってその齲蝕活性を評価を判定する効能を種々変化させることも可能であり、歯科医療分野に貢献する価値の非常に大きなものである。
Claims (5)
- pH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬が担持されている吸収性材料と糖類を含む水溶液とから成り、該吸収性材料が該水溶液を所定量含浸された場合に該pH指示薬の変色域より高いpH値になる吸収性材料であり、該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後に該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させることによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価キット。
- 吸収性材料とpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬及び糖類を含む水溶液とから成り、該吸収性材料が該水溶液を所定量含浸された場合に該pH指示薬の変色域より高いpH値になる吸収性材料であり、該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させた後に被験者から採取した歯垢をそのまま塗布するか、又は被験者から採取した歯垢をそのまま塗布した後に該水溶液を該吸収性材料に所定量含浸させることによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価キット。
- 吸収性材料にpH3.5〜8.0の範囲内に変色域を持つpH指示薬と糖類とが予め担持されており、且つ該pH指示薬と糖類とが予め担持されている吸収性材料のpH値が該pH指示薬の変色域より高いpH値になっており、被験者から採取した歯垢をそのまま塗布することによって、該吸収性材料の色調の変化により齲蝕活性を評価する構成としたことを特徴とする齲蝕活性評価用具。
- pH指示薬が、p−エトキシクリソイジン、α−ナフチルレッド、アリザリンスルホン酸ナトリウム、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、2,5−ジニトロフェノール、p−ニトロフェノール、アゾリトミン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、クロロフェノールレッド、フェノールレッド、m−ニトロフェノール、ニュートラルレッド、ロゾール酸、ブロムチモールブルー、チャイナブルー、ラクモイド、レサズリンから成る群より選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし3の何れか1項に記載の齲蝕活性評価セット又は齲蝕活性評価用具。
- 糖類が、グルコース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、パノースオリゴ糖、水飴、カップリングシュガーから成る群より選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし4の何れか1項に記載の齲蝕活性評価セット又は齲蝕活性評価用具。
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JP2012024085A (ja) * | 2010-07-19 | 2012-02-09 | Ivoclar Vivadent Ag | う食原性細菌による酸の産生を検出するための方法 |
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-
2002
- 2002-12-10 JP JP2002357809A patent/JP2004205210A/ja active Pending
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