JP2004201546A - ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(hiv−1)感染モデル動物 - Google Patents

ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(hiv−1)感染モデル動物 Download PDF

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敬 吉木
Raigyoku Yo
頼玉 熔
Hitoshi Ikeda
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【課題】HIV−1ウイルスに感染し,ウイルス遺伝子の転写および複製が可能なモデル動物を提供すること。
【解決手段】ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV−1)感染に関連するヒト遺伝子、すなわち、hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子を発現可能な様式で含有するを有するトランスジェニック動物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,HIV−1ウイルス感染,転写,複製のモデルとして用いることができる動物細胞およびHIV−1感染症モデル動物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在のところ,HIV−1が感染し,かつエイズを発症するモデル動物としては,霊長類(チンパンジーなど)しか用いることができない。チンパンジーは非常に高価である上,大型動物でありその飼育,取扱いが難しく,また十分な設備が整っている研究施設は非常に限られる。したがって,HIV−1感染の病因論,ウイルスと宿主との相互作用,およびHIV−1感染の治療および感染の制御を研究するためには,安価で取扱いの容易な適当な動物モデルの開発が必要とされている。
【0003】
HIV−1感染の動物モデルとしては,トランスジェニックマウスまたは実験的に感染させたウサギ(Browning, J. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94,14637-14641 (1997); Kulaga, H. et al. J. Exp. Mod. 169, 321-326 (1989);Gordon, M.R. et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. 616, 270-280 (1990); Dunn, C.S. et al. J. Gen. Virol. 76, 1327-1336. (1995))およびコトンラット(Langley, R.J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95, 14355-14360 (1998))等が報告されているが,これらの動物は,HIV−1ウイルスを安定して複製することができず,エイズの臨床症状を発症しないためHIV−1感染症のモデル動物として用いるのには適さない。
【0004】
一方,培養細胞系においては,マウスやラット細胞にヒトCD4(hCD4)遺伝子およびケモカインレセプター遺伝子を導入することによりHIV−1感染が可能であることが知られているが,この細胞系では,HIV−1プロウイルス遺伝子は転写されない。
【0005】
本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。
【特許文献1】
特願2001−191416(未公開)
【特許文献2】
WO98/58536
【特許文献3】
WO98/46734
【非特許文献1】
Browning, et al., PRNS USA 94 (26), 14637-14641, 1997
【非特許文献2】
Speck, et al., J. Virol. 72 (7), 5728-5734, 1998
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって,本発明の目的は,HIV−1ウイルスに感染し,ウイルス遺伝子の転写および複製が可能な培養細胞系ならびにモデル動物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は,hCD4,ヒトケモカインレセプター,ヒトCyclinT1(hCyclinT1)およびヒトクラスIIトランスアクチベータ―(hCIITA)遺伝子を発現可能な様式で含有することによって,HIV−1ウイルス粒子を産生しうる齧歯類動物細胞を提供する。
【0008】
別の態様においては,本発明は,HIV−1ウイルス粒子を産生しうる齧歯類動物細胞を作成する方法を提供する。該方法は,齧歯類動物細胞にhCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子を導入し,そして前記細胞にHIV−1を感染させることを含む。
【0009】
さらに別の態様においては,本発明は,HIV−1感染症を発症しうるトランスジェニック齧歯類動物,および,HIV−1ウイルスに感染させたときに,HIV−1ウイルスを複製しウイルス粒子を産生しうるトランスジェニック齧歯類動物,ならびにこれらを作成する方法を提供する。好ましくは,そのようなトランスジェニック齧歯類動物には,hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子が導入されている。
【0010】
さらに別の観点においては,本発明は,試験薬剤の抗HIV−1ウイルス活性を検定する方法を提供する。該方法は,HIV−1ウイルスを感染させた本発明の細胞と試験薬剤とを接触させ,そして前記細胞におけるHIV−1 RNAまたはウイルス蛋白質のレベルをモニターする,の各工程を含む。別の態様においては,該方法は,HIV−1ウイルスを感染させた本発明の動物に試験薬剤を投与し,そして,該動物におけるHIV−1の指標,例えば,RNA,血中ウイルス,CD4+Tリンパ球,ウイルス蛋白質,およびウイルス蛋白質に対する抗体のレベルをモニターする,の各工程を含む。
【0011】
また別の観点においては,本発明は,本発明の細胞または動物を用いて,抗HIV−1活性を有する薬剤を同定する方法,該方法により同定された薬剤,ならびに該薬剤を含む,HIV−1感染症の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0012】
また別の観点においては,本発明は,抗HIV−1活性を有する薬剤を同定するための,本発明の細胞または動物の使用に関する。
【0013】
本発明は,ヒトへの再感染が可能なHIV−1ウイルスを産生することができる動物細胞およびトランスジェニック動物を,当該技術分野において初めて提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は,HIV−1ウイルス粒子を産生しうる齧歯類動物細胞を特徴とする。本発明の動物細胞は,hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子を発現可能な様式で含有しており,このことにより,HIV−1感染,複製,およびヒト細胞に再感染しうる粒子の産生が可能である。好ましくは,ヒトケモカインレセプターはヒトCXCR4(hCXCR4)またはヒトCCR5(hCCR5)である。
【0015】
HIV−1は,感染のために種特異的かつ細胞タイプ特異的レセプターを用いて,限定された細胞に感染する。HIV−1の侵入には,コファクターとして,hCD4およびケモカインレセプター(hCXCR4またはhCCR5)の両方が必要である。
【0016】
hCD4は,ヘルパーT細胞のマーカーとして,HIV−1の細胞への侵入の主となるレセプターであるが(Dalgleish, A.G. et al. Nature 312. 763-767 (1984)),HIV−1の細胞中への侵入には,コレセプターとして働くために細胞表面に存在するケモカインレセプターもまた必要である。hCCR5は,マクロファージ(M−指向性)HIV−1株の感染のコレセプターであり(Choe, H.et al. Cell 85, 1135-1148 (1996)),hCXCR4はT−指向性HIV−1株の感染のコレセプターである(Feng, Y., et al., Science 272, 872-877 (1996))。
【0017】
ラット繊維芽細胞株中でhCD4およびケモカインレセプターを共発現させると,HIV−1の侵入およびウイルス遺伝子の宿主ゲノムへの組み込みが可能となる。しかし,hCD4およびこれらのヒトケモカインレセプターの発現は,ラット細胞においてHIV−1プロウイルスの転写およびウイルス蛋白質産生を行わせることができなかった。
【0018】
本発明においては,hCD4とケモカインレセプターに加えて,さらにhCyclinT1をHIV−1感染ラット細胞にトランスフェクションすると,細胞凝集およびプロウイルスの部分的転写を誘導することができることが見いだされた。この凝集物とヒト末梢血単核細胞(hPBMC)とを融合させることにより,融合細胞は,p24Gag蛋白質をその培養上清中に産生した。このことから,ウイルスの複製にはさらに別の因子が必要であることがわかった。
【0019】
hCyclinT1は,サイクリン依存性キナーゼ9(CDK9)とともにヒトポジティブ転写伸長因子(p−TEFb)複合体を形成し,ウイルス蛋白であるTatの活性化ドメインに結合することによりHIV−1長末端反復配列(LTR)プロモーターのTat−媒介性トランス活性化を促進する。(Wei, P, etal., Cell 92, 451-462 (1998): Garber, M.E. et al. Genes Dev. 12,3512-3527(1998))。しかし,Tatによるこの経路を介したHIV−1のトランス活性化は,ヒトおよび霊長類細胞において認められるが,齧歯類細胞においては認められない。さらに,マウスCyclinT1(mCyclinT1)はこのような特異的相互作用を行わない(Fujinaga, K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 1285-1290 (1999))。したがって,このp−TEFbとの相互作用を介したTatによるHIV−1のトランス活性化にはヒトもしくは霊長類由来CyclinT1が種特異的活性化を媒介するのに非常に重要である。しかし,hCyclinT1を強制発現させたマウス細胞においてHIV−1複製は誘導されず(Mariani, R. et al. J. Virol. 74, 3859-3870 (2000)),レセプター遺伝子およびhCyclinT1遺伝子を有するHIV−1−感染齧歯類細胞におけるHIV−1プロウイルス転写に必要なTat−非依存性活性化についてはまだ明らかではない。
【0020】
本発明においては,さらにhcyclinT1に加えて,hCIITA遺伝子を導入することにより,HIV−1感染ラット細胞中でp24が産生されることが見いだされた。
【0021】
HIV−1は,霊長類マクロファージおよび主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子を発現する活性化CD4+T細胞に感染する(Saifuddin, M. et al., J. Immunol. 164, 3941-3945 (2000); Saifuddin, M., et al., Clin. Exp. Immunol. 121, 324-331 (2000))。HIV−1発現および複製は,HLA−DR(ヒトMHCクラスII)陽性T細胞株において,HLA−DR陰性T細胞株におけるより実質的に高い(Saifuddin, M. et al., J. Immunol. 164, 3941-3945 (2000))。特異的転写活性化因子の1つである,hCIITAは,MHCクラスII遺伝子発現を制御する。一方,hCIITAはhCyclinT1のTat結合部位と同じ領域に結合し,標的遺伝子の発現のためにCDK9とともにp−TEFb複合体を形成することが示されている(Kanazawa, S., et al., Immunity 12, 61-70 (2000))。hCIITAはまた,種々のタイプのヒト細胞においてHIV−1LTR発現を促進する。このことは,hCIITAがhCyclinT1に結合することにより,p−TEFbをリクルートし,Tat非依存性活性化においてHIV−1発現を促進することを示唆する。
【0022】
次に,本発明の細胞におけるウイルス粒子の産生を確認するために,hCyclinT1およびhCIITAを導入したHIV−1感染ラット細胞の上清でhPBMCを処理すると,このhPBMCの培養上清にp24HIV−1蛋白が徐々に増加した。このことは,これらの遺伝子の導入により,感染ラット細胞から感染性HIV−1ウイルス粒子の産生が誘導されたことを示す。
【0023】
HIV−1ウイルス粒子を産生しうる本発明の齧歯類動物細胞は,齧歯類動物細胞にhCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子を導入した細胞にHIV−1を感染させることにより作成することができる。
【0024】
各遺伝子の配列は,Genbankから入手することができる(実施例の表1を参照)。これらの既知の配列に基づいて,適当なプライマーを選択してPCR増幅することにより,導入すべきDNAの断片を得ることができる。これらの断片を適当な発現ベクター中に,齧歯類動物細胞中で作用しうるプロモーターの下流に挿入して,遺伝子導入用のコンストラクトを構築する。
遺伝暗号の縮重により異なる塩基配列を有する遺伝子が同じ蛋白質をコードしうることは当該技術分野においてよく知られている。すなわち、本発明においては、hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITAをコードし、かつ天然のヒト遺伝子とは異なる配列を有する遺伝子を用いることができる。さらに、導入される遺伝子にコードされる、hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA蛋白質は、HIV−1により認識され、感染し、HIVウイルス粒子を産生するのに必要な活性を有する限り、天然のヒト蛋白質とは異なるアミノ酸配列を有していてもよく、天然のヒト蛋白質のアミノ酸配列から、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されていてもよい。
【0025】
hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子は,それぞれ別のコンストラクト上に含まれていてもよく,あるいは1つのコンストラクト上に含まれていてもよい。このコンストラクトを,トランスフェクション,マイクロインジェクションなど当該技術分野において知られる方法により,齧歯類動物細胞中に導入する。齧歯類動物細胞としては,マウス,ラットなどの樹立された細胞株のいずれを用いてもよい。そのような細胞としては,例えば,マウスNIH3T3やL細胞が挙げられる。
【0026】
別の観点においては,本発明は,HIV−1に感染し,エイズを発症するトランスジェニック齧歯類動物を特徴とする。このトランスジェニック動物では,hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子を全体細胞中に有しており,HIV−1に感染可能である。かつ,このトランスジェニック動物に,HIV−1ウイルスに感染させたときに,HIV−1ウイルスを複製しウイルス粒子を産生しうるHIV−1感染齧歯類動物モデルとなりうる。好ましくは,ヒトケモカインレセプターはhCXCR4またはhCCR5である。
【0027】
本発明のトランスジェニック動物は,以下のようにして作製することができる。齧歯類動物としては,マウスまたはラットを用いることができる。採卵用のマウスまたはラットに,PMSG/hCGを腹腔内投与した後,雄と交尾させる。受精卵を採取し,hCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子をマイクロインジェクションする。これらの遺伝子は,1つのコンストラクト上に含まれていてもよく,またはそれぞれの遺伝子を有する複数のコンストラクトを同時に受精卵に導入してもよい。受精卵をm−KRB培地中で数時間から一晩インキュベートした後,偽妊雌の卵管に移植する。仔が生まれたら,目的とする遺伝子が組み込まれているか否かについてスクリーニングする。スクリーニングは,各個体の尾部等から少量の血液を採取し,PCR,サザンブロッティング等の方法を用いてDNAを分析することにより行うことができる。導入遺伝子のコピー数,組み込みパターンなどを分析し,所望のトランスジンを有する個体を選択する。得られたトランスジェニック動物と,正常動物とを交配させてF1を得ることができる。
【0028】
あるいは,胚幹細胞にDNAを導入し,胚盤胞にマイクロインジェクションしてキメラを作成し,これを適切な種と交配させてトランスジェニック動物を作成してもよい。
【0029】
得られたトランスジェニック動物にHIV−1ウイルスを感染させることにより,本発明のエイズ発症を可能にするHIV−1感染モデル動物を得ることができる。
【0030】
本発明のHIV−1感染モデル動物は,ヒトHIV−1感染症の病因的研究に,HIV−1感染症の治療方法の研究に,およびHIV−1感染症の発症の予防または治療のための新規薬剤の開発に用いることができる。
【0031】
さらに別の観点においては,本発明は,試験薬剤の抗HIV−1ウイルス活性を検定する方法を提供する。該方法は,HIV−1に感染させた本発明の細胞と試験薬剤とを接触させ,そして前記細胞におけるHIV−1 RNAまたはウイルス蛋白質のレベルを測定する,の各工程を含む。
【0032】
薬剤のスクリーニングを行う場合には,HIV−1に感染させた本発明の細胞を例えば96ウエルプレート中で培養し,各ウエルに試験薬剤を加えて所定の時間インキュベートした後,HIV−1 RNAの転写をRT−PCRなどの方法により確認する。より定量的なアッセイを行うためには,ELISAにより各種ウイルス蛋白のレベルを測定することができる。
【0033】
さらに別の観点においては,このような検定は,本発明の動物を用いて行うことができる。HIV−1に感染させた本発明のトランスジェニック動物に試験薬剤を投与し,前記動物におけるHIV−1感染症の指標をモニターする。このような指標としては,HIV−1 RNAのレベル,血中ウイルスレベル,CD4+Tリンパ球の数,ウイルス蛋白のレベル,およびウイルス蛋白に対する抗体のレベルなどが挙げられる。
【0034】
トランスジェニック動物へのHIV−1ウイルス感染は,経粘膜或いは血行性に感染させることにより行うことができる。感染後,適当な時間間隔で(例えば2週,4週,6週)血清を採集し,例えば,RT−PCR HIV−1キット(ROCHE)を用いて,血清中のウイルスの量を評価する。あるいは,p24,p120,p56などのウイルス蛋白またはそれに対する抗体をELISAで検出してもよい。さらに,再感染可能なウイルス粒子が産生されているか否かを検出するためには,電子顕微鏡によりHIVの粒子を検出するか,または感染トランスジェニック動物の血液あるいは血清を用いて,HIV−1に感染可能なヒト末梢血リンパ球,本発明で作製したhCD4,ヒトケモカインレセプター,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子導入齧歯類動物細胞あるいは未感染トランスジェニック動物の再感染実験を行うことによってできる。
【0035】
本発明のトランスジェニック動物を用いるHIV−1感染症の病理学的研究,あるいはHIV−1感染症治療薬の試験のためには,感染させたトランスジェニック動物を長期間飼育して,CD4,CD8などリンパ球の変化,免疫能力,及びHIV−1に関連する諸症状の発症を調べる。
【0036】
さらに,本発明の動物を用いて,新規試験薬剤と種々の抗HIV−1剤(例えばプロテアーゼ阻害剤および逆転写酵素阻害剤)との組み合わせについて,HIV−1感染症の発症予防および治療効果を調べることができる。
【0037】
さらに,本発明の細胞または動物を使用するスクリーニング方法により同定された薬剤,ならびにこの薬剤を含むHIV−1感染症の予防または治療用医薬組成物もまた本発明の範囲内である。
【0038】
【実施例】
以下に,実施例により本発明をより詳細に説明するが,これらの記載は例示の目的にのみ提供されるものであり,本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0039】
実施例1 hCD4,hCXCR4,hCCR5h,hCyclinT1およびhCIITA遺伝子の発現用コンストラクトの作成
hCD4発現コンストラクトは,H.Karasuyama(東京都臨床医学総合研究所)により供与された(Yamamura, Y. et al. Int. Immunol. 3:1183-1187 (1991))。hCXCR4,hCCR5,hCyclinT1およびhCIITAのcDNAは,既知の配列に基づいてRT−PCRによりクローニングした。
【表1】
Figure 2004201546
【0040】
総RNAは,ISOGENキット(NIPPONgene,Co.,Toyama.Japan)を用いてhPBMCから単離し,Superscript RT(GIBCO−BRL,Rockville,Maryland)を用いてオリゴ−(dT)プライマーを用いるRT反応に供した。cDNA産物は,hCCR5,hCXCR4,hCyclinT1およびhCIITAの各DNA配列にしたがって設計した遺伝子特異的プライマーで増幅し,各増幅cDNAを,pUC18またはpGEM−TEasy(Promega,Madison,Wisconsin)中に,適当な制限酵素を用いてサブクローニングするか,またはTAクローニングを行った。各クローン化cDNAは,DNA配列決定により各遺伝子の正しいDNA配列であることを確認した。適当な制限酵素で消化した後,各cDNAをサイトメガロウイルスプロモターあるいはヒトelongation factor 1aプロモターを持つ発現ベクターのマルチクローニング部位中にライゲーションした。表2に,使用したプライマーおよび作成したベクターを示す。
【表2】
Figure 2004201546
【0041】
実施例2 hCD4,hCXCR4,hCCR5hのトランスフェクション
実施例1で得られたhCD4,hCXCR4,hCCR5hの発現コンストラクトを,ラット繊維芽細胞株,W31(Yagihashi, A. et al. Cancer Res. 48,2798-804 (1988))(N.Sato(札幌医科大学)より供与)にトランスフェクトした。トランスフェクションは,Super Fect(登録商標)トランスフェクション試薬(Qiagen,Valencia,California)を用いて,製造元の指針にしたがって行った。トランスフェクタントを選択し,10%ウシ胎児血清(FCS),400μg/mlのG418(GIBCO−BRL),40μg/mlのZeocin(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,California)および/または5μg/mlのブラスチシジン(Calbiochem−Novabiochem Co.,San Diego,California)を補充したRPMI−1640培地中で維持した。高レベルのトランスジン発現を有する安定なトランスフェクタントを,標準的な限界希釈法によりクローニングした。
【0042】
106個の細胞を各分子に特異的なモノクローナル抗体で染色し,各トランスジンの発現レベルをフローサイトメトリにより確認した。フローサイトメトリは,一次抗体として,マウス抗−CCR5(2D7,Phar Mingen,San Diego,California)または抗−hCXCR4(12G5,Phar Mingen)モノクローナル抗体を用い,二次抗体としてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)−結合ウサギ抗マウスIgG抗体を用いて行った。hCD4の直接染色には,フィコエリスリン(PE)−結合抗hCD4モノクローナル抗体(DAKO,Glostrup,Denmark)を用いた。細胞は,FACScan(BD Bioscience,San Jose,California)を用いて分析した。陰性対照としては,一次抗体として正常マウスIgGを,または直接染色としてPE標識マウスIgGを用いた。図1に,hCD4およびhCXCR4またはCCR5遺伝子を有するW31の細胞表面におけるhCD4,hCXCR4またはhCCR5の発現をフローサイトメトリで示す。
【0043】
実施例3 hCD4−hCXCR4またはhCD4−hCCR5を有するW31へのHIV−1感染
hCD4−hCXCR4またはhCD4−hCCR5のいずれかを発現するW31細胞に,T−指向性HIV−1分離株であるSF33(Tateno, M. & Levy,J.A. Virology 167, 299-301 (1988)),またはM−指向性HIV−1分離株であるJRFLおよびJRCSF(O'Brien.W.A. et al. Nature 348, 69-73 (1990))(Y.Koyanagi(東北大学)より供与)を感染させた。トランスフェクタントを40μg/mlのDEAEデキストランで処理した後,リン酸緩衝化食塩水(PBS)で洗浄し,各HIV−1液(約100TCID−50/ml)とともに37℃で2時間インキュベートした。次に,トランスフェクタントをPBSで3回洗浄し,10%FCSを含有する新鮮なRPMI−1640培地を加えた。24時間ごとにトリプシン−EDTA溶液で処理することにより再播種し,これを3回繰り返した。このようにして,3つの感染W31細胞,hCD4−hCXCR4SF33,hCD4−hCCR5JRFL,およびhCD4−hCCR5JRCSFを樹立した。
【0044】
感染後5日間ごとに,これらの細胞からのDNAおよび総RNAを抽出して,HIV−1用PCR増幅キット(ABBOTT,Wiesbaden−Delkenheim,Germany)を用いてHIV−1プロウイルスのDNAまたはmRNAを測定した。
【0045】
HIV−1を感染させたW31トランスフェクタントにおけるHIV−1プロウイルスDNAは,HIV−1のLTR,gag,pol,vif,tat,rev,envおよびnef領域をカバーする一連のプライマー対を用いて,PCRにより検出した。感染の1週間後に全ての感染W31細胞のゲノム中でHIV−1プロウイルスが出現し,これは細胞を長期培養したとき,8週間以上にわたって存在していた。
【0046】
図2は,感染の1ヶ月後の例を示す。すべてのトランスフェクタントにおいてそれぞれ予測されたサイズの増幅されたバンドが存在した。レーン1;LTR(SK29/SK30(Psallidopoulos, M.C. et al. J. Virol. 63,4626-4631 (1989))),2;gag(LAV1/LAV2,Genset,Paris,France),3;pol(HIV160/HIV161(Courgnaud, V. et al. AIDS Res. Hum. Retroviruses 7, 337-341. (1991))),4;vif(HIV156/HIV157(Kwoh, D.Y. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86,1173-1177 (1989))),5;tat(HIV146/HIV148,Genset),6;env(HIV104/HIV105(Jason, J. et al. J. Infect. Dis. 160,789-794 (1989)),7;env(SK68/SK69(Plummer, F.A. et al. J. Infect. Dis. 161, 810-811 (1990))),8;env/tat/rev(HIV179/HIV180(Steuler, H., et al., AIDS Res. Hum. Retroviruses 8, 53-59 (1992)))および9;nef(HIV140/HIV141(Murakawa, G.J. et al. DNA 7, 287-295 (1988)))。Mは分子サイズマーカーである100bpラダーDNAであり,Nは陰性対照のW31細胞である。SF33感染(HUT78SF33)を有するHUT78を陽性対照として用いた。なお,hCD4,hCXCR4またはhCCR5を単独で発現するW31細胞には,HIV−1は感染しなかった(データ示さず)。
【0047】
次に,サザンブロットによりプロウイルスDNAを調べた。各感染細胞からのゲノムDNAをSmaIおよびStuIで消化し,0.8%アガロースゲル電気泳動により分離した。ナイロン膜(Amersham,Aylesbury,England)に移した後,膜を32P−放射性標識HIV−1DNAプローブとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションからオートラジオグラフィーまでの方法は,標準的な方法にしたがって行った。
【0048】
図3は,HIV−1感染の1ヶ月後における,HIV−1プローブを用いるサザンブロットを示す。env/tat領域(677bp)からのPCR産物をプローブとして用いたとき,各ゲノム中において約9kbのバンドが検出され,hCD4−CXCR4SF33,hCD4−CCR5JRCSFおよびhCD4−CCR5JRFLの各感染W31細胞のゲノム中にHIV−1プロウイルスが組み込まれていることが確認された。図中,マーカーは1kbDNAラダー分子サイズマーカーであり,NCは陰性対照のhPBMCである。HUT78は陽性対照であるヒトリンパ腫細胞株である。
【0049】
プロウイルスのmRNA発現はRT−PCRを用いて検出した。感染細胞からのDNase処理済総RNAを,M−MLV RT(G1BCO−BRL)により,ランダムプライマーセット(TAKARA,Kyoto,Japan)を用いて転写させ,上述のプライマー対を用いてPCRにより増幅したところ,HIV−1プロウイルスの転写産物は増幅されなかった(データ示さず)。
【0050】
培養液または細胞溶解物中のp24は,ELISAキット(ABBOTT)により測定した。細胞溶解物を調製するためには,細胞をウイルス破壊バッファー(0.5MTris−HCl(pH7.8),0.15mg/mlジチオスレイトールおよび0.1%Triton−X100)により溶解し,15,000rpmで15分間遠心分離した。回収した上清を細胞溶解物として用いた。いずれの感染W31細胞の培養液においても,ウイルス性p24Gag蛋白質は認められなかった(図4)。図中,HUT78SF33は陽性対照である。
【0051】
これらの結果は,ラット繊維芽細胞株においてhCD4と,hCCR5またはhCXCR4とを共発現させると,HIV−1が侵入し,宿主ゲノム中に組み込まれるが,ウイルスRNAは転写されないことを示す。
【0052】
実施例4 hCyclinT1の導入
hCyclinT1発現コンストラクト(表1)をhCD4−hCXCR4SF33,hCD4−hCCR5JRFL,およびhCD4−hCCR5JRCSF細胞にトランスフェクトした。hCyclinT1の発現はRT−PCRにより評価し,すべてのトランスフェクタントについてmRNA発現を確認した(データ示さず)。感染W31細胞は,トランスフェクションの48時間後から凝集しはじめ,1週間後には細胞凝集塊の形成が見られた(図5)aはトランスフェクション前,bとcとdはhCyclinT1のトランスフェクション後である。aとbは,hCD4−hCXCR4SF33細胞の,cとdは,hCD4−hCCR5JRCSF細胞の結果である。
【0053】
感染W31細胞におけるHIV−1転写産物はRT−PCRにより検出した。総RNAは,トランスフェクションの1週間後に,各培養物の凝集塊から得た。すべてのトランスフェクタントについて,LTR,pol,env,env/tat/rev,およびnef領域のプライマーにより転写産物が検出されたが,gag,vifおよびtat領域の転写産物は検出されなかった(図6)。レーン番号および用いたプライマー対は,図2と同じである。Mは,分子サイズマーカーの100bpDNAラダーであり,Nは陰性対照としての,各細胞におけるRTなしのPCRである。HUT78SF33は,陽性対照である。
【0054】
次に,HIV−1−感染W31細胞における感染性HIV−1ウイルスの産生を調べるために,hCIITAおよびhCyclinT1の二重トランスフェクションの2日後に,hCD4−hCXCR4SF33細胞からの上清を回収し,PHA−活性化hPBMC培養物に加えた。一晩インキュベートした後,hPBMCをPBSで洗浄し,5%のヒトインターロイキン−2(HemagenDiagnosticInc.,Columbia.Maryland)とともに培養し,実施例3と同様に,培養液中のp24を4日ごとに測定した。培養液または細胞溶解物中には検出可能な量のp24は存在しなかった。
【0055】
これらの結果は,hCyclinT1は,感染W31細胞の凝集およびHIV−1プロウイルスの部分的転写を誘導するが,p24の産生およびウイルス複製は誘導しないことを示す。
【0056】
実施例5 hCyclinT1を有するHIV−1感染W31細胞とhPBMCまたはrPBMCとの細胞融合
組み込まれたHIV−1プロウイルスが,侵入後に複製の能力を有しているか否かを調べるために,感染細胞をPHA−処理ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)またはラットPBMC(rPBMC)と融合させた。
【0057】
hCyclinT1トランスフェクションを有するHIV−1−感染細胞を,フィトヘマグルチニン(PHA,3μg/ml)活性化hPBMCまたはrPBMC(それぞれ106個の細胞)とおだやかに混合し,1500rpmで5分間遠心分離した。上清を完全に除去した後,0.5mlのあらかじめ暖めたポリエチレングリコール1500を細胞混合物に滴加し,次に90秒間放置した。あらかじめ暖めたRPMI培地をゆっくり加えることにより反応を停止させた。融合細胞は,1500rpmで5分間遠心分離した後,10%FCSを補充したRPMI−1640培地中におだやかに再懸濁し,ペトリ皿に播種した。細胞融合の3日後における培養液中のウイルスp24Gag蛋白質産生を,実施例3と同様に,ELISAを用いて検出した。陽性対照としては,hPBMCと融合させたHUT78SF33の培養物を用いた。
【0058】
hCyclinT1を有するHIV−1感染W31は,hPBMCと融合させたとき,対照のほぼ半分のレベルのp24産生を誘導した。これに対し,rPBMCとの融合ではp24産生は見られなかった(図7)。これらの結果は,hCD4,ケモカインレセプターおよびhCyclinT1を発現するラット細胞に組み込まれたHIV−1プロウイルスが複製するためには,追加のヒト因子が必要であることを示唆する。
【0059】
実施例6 hCIITAの導入
蛍光−コンジュゲート化発現ベクターを用いてhCIITAおよびhCyclinT1遺伝子の両方をhCD4−hCXCR4SF33細胞にコトランスフェクトした。hCyclinT1およびhCIITAで二重トランスフェクトしたhCD4−hCXCR4SF33はシンシチウムを形成し,トランスフェクションの24時間後から死に始めた。蛍光測定は,細胞の核内でのhCIITAおよびhCyclinT1の二重発現を示した。
【0060】
図8は,hCyclinT1およびhCIITAの導入によるhCD4−hCXCR4SF33のシンシチウム形成を示す。黄色(hCyclinT1について)または緑色(hCIITAについて)蛍光を有する発現ベクター(pEYFP−clまたはpEGFP−cl)を用いた。写真は,二重トランスフェクションの24時間後に,位相差顕微鏡により(a),または蛍光顕微鏡により,フィルターなし(b)または黄色(c)または緑色(d)蛍光用のフィルターを用いて撮影した。矢印は,3以上の核を有するシンシチウム細胞を示す(a)。
【0061】
二重トランスフェクションの24時間後,細胞溶解物中のp24Gag蛋白質をELISAにより検出した。図9に示されるように,hCD4−hCXCR4SF33−hCyclinT1−hCIITAの細胞溶解物からp24が検出された。HUT78SF33は陽性対照である。
【0062】
実施例7 感染性HIV−1粒子の産生
HIV−1粒子の産生を確認するために,実施例6で得られたトランスフェクタントhCD4−hCXCR4SF33−hCyclinT1−hCIITAの培養上清の存在下でhPBMCを一晩感染させた後,感染hPBMCの培養液中のp24をELISAにより測定した。p24は,感染の4日後から徐々に増加した。さらに,培養細胞プールに新鮮なPHA−処理hPBMCを加えたとき,p24の量は,陽性対照であるHIV−1−感染HUT78におけるレベルと匹敵するレベルに達した(図10)。
【0063】
実施例8 トランスジンの構築
4個のHIV−1感染関連ヒト遺伝子を有するトランスジェニックラットを作製するために,3種類のトランスジンコンストラクトを作製した。マウスH−2Kdプロモーター領域,HTLV−IpXcDNAおよびSV40ポリAシグナルを有するpH2/tax.rex発現コンストラクト(Yamada,et al.,(1995),Cancer Res 55:2524−2527)から,EcoR1消化によりpXcDNA挿入物を取り除き,次にクローニングした全長hCXCR4,hCCR5,hCIITAまたはhCyclinT1のcDNAをその部位にライゲーションした。適当な制限酵素(KpnIおよびSalI)で消化した後,H−2KdプロモーターとSV40ポリAシグナル配列との間にhCXCR4,hCCR5,hCIITAまたはhCyclinT1のcDNAを含む各発現カセットを用いて,以下に示す3種類のトランスジンを構築した。
【0064】
トランスジン1:最初に,hCyclinT1発現ユニットを有するpUC119(pUC/CycT1)は,pUC119ベクターのマルチクローニング部位のBamHIとSalI部位との間にhCyclinT1の発現カセットを挿入することにより作成した。次に,hCXCR4発現カセットをpUC/CycT1のKpnI部位にライゲーションした(図11a)。
【0065】
トランスジン2:hCCR5発現カセットをpUC/CycT1に挿入するため,pUC/CycT1のhCyclinT1発現ユニット部位の後のSalIとHindIII部位との間にマルチクローニング配列を挿入し,次にhCCR5発現カセットをマルチクローニング部位のKpnIとSalI部位との間に挿入した(図11b)。
【0066】
トランスジン3:hCD4cDNA発現用の約1kbのヒトCD4プロモーター領域(Hanna,et al.,(1994),Mol Cell Biol 14, 1084−1094;,GenBank受託番号S68043)を,PCRクローニング法を用いてヒト末梢血単核細胞のゲノムDNAからクローニングした。クローンのDNA配列が正しいものであることを確認した後,pH2/tax.rex中のマウスH−2Kdプロモーターをクローン化CD4プロモーターで置き換えた。次に,pXcDNA挿入物をクローン化全長hCD4cDNAで置き換えた。KpnIおよびSalI消化によりヒトCD4プロモーターを有するhCD4発現カセットを得た。hCIITA発現カセットおよびhCD4発現カセットをpUC119のマルチクローニング部位のEcoRIとSalI部位との間に一緒にライゲーションした(図11c)。
【0067】
ラット線維芽細胞株W31へのインビトロトランスフェクションおよびRT−PCR検出により,すべてのトランスジンコンストラクトがそれぞれのmRNAを発現することを確認した。
【0068】
実施例9 HIV−1感染に関連する4種類のヒト遺伝子を有するトランスジェニックラットの樹立
実施例8で作製した各トランスジンをSalI消化により線状とした後,T−指向性HIV−1感染についてはトランスジン1(pUC/CXCR4−CycT1)および3(pUC/CIITA−CD4)の混合物を,M−指向性HIV−1感染についてはトランスジン2(pUC/CycT1−CCR5)および3(pUC/CIITA−CD4)の混合物を,先に記載された方法(Yamada et al.,(1995)(上掲),Yamazaki et al.,(1997),Int Immunol 9:339−346)にしたがって,雌ラットの受精可能な卵子にマイクロインジェクションした。
【0069】
精管結紮法により精索を結紮した雄SDラットと交配させることにより偽妊娠ラットを作製し,マイクロインジェクションした卵子を偽妊娠ラットの卵管に移した。移植の21−22日後に仔が生まれた。各遺伝子特異的プライマーセットを用いるPCRを用いて,トランスジンのインテグレーションを検出した。トランスジン2(pUC/CycT1−CCR5)および3(pUC/CIITA−CD4)を卵子にインジェクションすることにより得られた1匹のラット(TgM122)が,4種類のヒト遺伝子,すなわち,hCD4,hCCR5,hCyclinT1およびhCIITAを有していることが確認された(図12)。ラットの末梢血単核細胞(PBMC)から全RNAを抽出し,リバーストランスクリプターゼ(RT)により処理したところ,4つの遺伝子のそれぞれの転写産物が検出された(図13)。
【0070】
次に,雌ラットを非トランスジェニック雄SDラットと交配させて,F1を作成し,12匹の仔を得た。生後4週目に,12匹のラットのうち4匹において4つすべてのトランスジンが確認され,4つのトランスジンの分離は認められなかった(図14)。この結果は,これらのトランスジンが一緒に同じ染色体に安定にインテグレーションされたことを示す。
【0071】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,W31の細胞表面におけるhCD4,hCXCR4またはhCCR5の発現をフローサイトメトリで示す。
【図2】図2は,HIV−1感染トランスフェクタントにおける,HIV−1プロウイルスDNAのPCRによる検出を示す電気泳動の写真図面である。
【図3】図3は,HIV−1感染トランスフェクタントにおける,HIV−1プローブを用いるサザンブロットを示す電気泳動の写真図面である。
【図4】図4は,ELISAによる,HIV−1感染トランスフェクタント培養液中のp24のレベルを示す。
【図5】図5は,hCyclinT1トランスフェクション後の,感染W31細胞を表す顕微鏡写真の写真図面である。
【図6】図6は,RT−PCRによる感染W31細胞におけるHIV−1転写産物の検出を示す電気泳動の写真図面である。
【図7】図7は,hCyclinT1およびhPBMCまたはrPBMCを有する,感染W31凝集物の融合細胞の培養液におけるウイルスp24Gag蛋白質のレベルを示す。
【図8】図8は,hCyclinT1およびhCIITAを導入した感染W31を表す顕微鏡写真の写真図面である。
【図9】図9は,hCyclinT1およびhCIITAを導入した感染W31の細胞溶解物中のp24Gag蛋白質のレベルを示す。
【図10】図10は,hCD4−hCXCR4SF33−hCyclinT1−hCIITAの培養上清で感染した後のhPBMCの培養液におけるp24のレベルを示す。
【図11】図11は,4個のHIV−1感染関連ヒト遺伝子を有するトランスジェニック動物を作製するために用いる3種類のトランスジンコンストラクトを示す。
【図12】図12は,トランスジェニックラットにおける,4種類のヒト遺伝子,すなわち,hCD4,hCCR5,hCyclinT1およびhCIITAの検出を示す写真図面である。
【図13】図13は,トランスジェニックラットにおける,4種類のヒト遺伝子,すなわち,hCD4,hCCR5,hCyclinT1およびhCIITAのそれぞれの転写産物の検出を示す写真図面である。
【図14】図14は,F1ラットにおける4種類のヒト遺伝子の検出を示す写真図面である。

Claims (13)

  1. HIV−1感染症を発症しうるトランスジェニック齧歯類動物。
  2. HIV−1ウイルスに感染させたときに,HIV−1ウイルスを複製しウイルス粒子を産生しうるトランスジェニック齧歯類動物。
  3. ヒトCD4,ヒトケモカインレセプター,ヒトCyclinT1およびヒトCIITA遺伝子が導入されているトランスジェニック齧歯類動物。
  4. ヒトケモカインレセプターがCXCR4またはCCR5である,請求項3記載の動物。
  5. HIV−1に感染しうるトランスジェニック齧歯類動物を作成する方法であって,ヒトCD4,ヒトケモカインレセプター,ヒトCyclinT1およびヒトCIITA遺伝子を齧歯類動物の胚細胞に導入し,前記胚細胞からトランスジェニック齧歯類動物を発生させることを含む方法。
  6. HIV−1感染症を発症しうるトランスジェニック齧歯類動物を作成する方法であって,ヒトCD4,ヒトケモカインレセプター,ヒトCyclinT1およびヒトCIITA遺伝子を齧歯類動物の胚細胞に導入し,前記胚細胞からトランスジェニック齧歯類動物を発生させ,そして前記動物にHIV−1を感染させることを含む方法。
  7. 試験薬剤の抗HIV−1ウイルス活性を検定する方法であって,
    試験薬剤を請求項1記載の動物に投与し,
    前記動物のHIV−1 RNA,血中ウイルス,CD4+Tリンパ球,ウイルス蛋白質,およびウイルス蛋白質に対する抗体からなる群より選択される1またはそれ以上の指標のレベルをモニターする,
    の各工程を含む方法。
  8. 試験薬剤の抗HIV−1ウイルス活性を検定する方法であって,
    請求項2−4のいずれかに記載の動物にHIV−1ウイルスを感染させ,
    試験薬剤を前記動物に投与し,
    前記動物のHIV−1 RNA,血中ウイルス,CD4+Tリンパ球,ウイルス蛋白質,およびウイルス蛋白質に対する抗体からなる群より選択される1またはそれ以上の指標のレベルをモニターする,
    の各工程を含む方法。
  9. 抗HIV−1活性を有する薬剤を同定する方法であって,
    試験薬剤を請求項1記載の動物に投与し,
    前記動物においてHIV−1感染症の1またはそれ以上の症状をモニターし,そして
    HIV−1感染症の症状を緩和しうる薬剤を抗HIV−1活性を有する薬剤として同定する,
    の各工程を含む方法。
  10. 抗HIV−1活性を有する薬剤を同定する方法であって,
    請求項2−4のいずれかに記載の動物にHIV−1を感染させ,
    試験薬剤を前記動物に投与し,
    前記動物においてHIV−1感染症の1またはそれ以上の症状をモニターし,そして
    HIV−1感染症の症状を緩和しうる薬剤を抗HIV−1活性を有する薬剤として同定する,
    の各工程を含む方法。
  11. 請求項9または10に記載の方法により同定された薬剤。
  12. 請求項9または10に記載の方法により同定された薬剤を含む,HIV−1感染症の予防または治療用医薬組成物。
  13. 抗HIV−1活性を有する薬剤を同定するための,請求項1−4のいずれかに記載の動物の使用。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110206345A (zh) * 2019-06-25 2019-09-06 阿里欧威制氧科技有限公司 一种高原微压试验舱

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