JP2004183612A - Valve drive system and valve drive device of internal combustion engine - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸気弁又は排気弁を駆動する弁駆動システム及び当該システムを構成する弁駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般の内燃機関の吸気弁及び排気弁は、内燃機関のクランク軸から取り出された動力によって開閉駆動されている。しかし、近年では電動モータによって吸気弁や排気弁を駆動することが試みられている。例えば特許文献1には、カム軸をモータで駆動して吸気弁を開閉させる弁駆動装置が開示されている。また、EGR用の弁を対象としたものであるが、バルブステムに設けたねじ機構を利用してモータの回転を弁の直線的な開閉運動に変換する弁駆動装置も知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−177536号公報
【特許文献2】
特開平10−73178号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
モータの回転をねじ機構によって弁の開閉運動に変換する装置は、弁を開閉させるために必要なモータの回転量が大きくて効率が悪いため、弁を高速かつ周期的に動作させる必要がある吸気弁や排気弁の駆動装置としては不向きである。
【0005】
一方、カム軸をモータで回転させる場合には吸気弁や排気弁を効率よく駆動することができる。しかし、車両の動力源として一般に使用される多気筒の内燃機関では、一列に並んだ複数の気筒間でカム軸が共用されている。このような共用されたカム軸をモータで駆動するだけでは、カム軸の動作の変化がそのカム軸によって駆動されるすべの吸気弁や排気弁の動作特性に影響する。従って、モータを制御することによって得られる動作特性の自由度はそれほど高くない。
【0006】
そこで、本発明は、複数の気筒を有する内燃機関の吸気弁又は排気弁をモータにて効率よく開閉させることができ、かつ、各弁の動作特性に関する自由度を従来よりも高めることができる内燃機関の弁駆動システム及び該システムに使用される弁駆動装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の弁駆動システムは、複数の気筒を有する内燃機関に適用され、各気筒に設けられた吸気用又は排気用の弁を駆動するための内燃機関の弁駆動システムであって、前記内燃機関の互いに異なる気筒の前記弁をそれぞれ駆動するように設けられ、回転運動を発生する駆動源としての電動モータ、及び前記電動モータの回転運動を駆動対象の弁の開閉運動に変換し伝達する動力伝達機構をそれぞれ備えた複数の弁駆動装置と、前記複数の弁駆動装置のそれぞれの前記電動モータの動作を前記内燃機関の運転状態に応じて制御するモータ制御手段と、を備えることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0008】
この発明の弁駆動システムによれば、複数の弁駆動装置を設けたことにより、複数の気筒の吸気弁又は排気弁のそれぞれに対して内燃機関の運転状態に応じた適切な動作特性を与えることができる。なお、本発明の弁駆動システムにおいては、複数の弁駆動装置のそれぞれが互いに異なる気筒の吸気弁又は排気弁を駆動すればよい。従って、前記弁駆動装置が気筒毎に独立して設けられていてもよいし、各気筒の吸気弁及び排気弁に対してそれぞれ独立して弁駆動装置が設けられてもよい。その一方、一部又は全部の弁駆動装置が互いに異なる二以上の気筒の吸気弁又は排気弁を駆動してもよい。特に、吸気弁の開いている期間、又は排気弁の開いている期間が重ならない気筒間であれば、それらの気筒の吸気弁又は排気弁を共通の電動モータにて駆動したとしても、各気筒の吸気弁又は排気弁の動作特性を共通の電動モータにて駆動される吸気弁又は排気弁の動作に影響されることなく変化させることができる。
【0009】
本発明の弁駆動システムにおいて、前記モータ制御手段は、前記駆動対象の弁の作用角、リフト特性、又は最大リフト量の少なくともいずれか一つの動作特性が変化するように、前記電動モータの動作を前記内燃機関の運転状態に応じて制御することができる(請求項2)。この場合には、開閉タイミングのみを変化させる従来の弁駆動装置と比較して吸気弁や排気弁の動作をより柔軟に変化させることができる。なお、吸気弁又は排気弁が開いている間の電動モータの回転速度を増減させたならば作用角が変化し、その回転速度の変化、つまり加速度を変化させたならばリフト特性が変化する。リフト特性は、吸気弁又は排気弁のリフト量とクランク角との対応関係に関する特性として把握されるものである。リフト量に関しては、吸気弁又は排気弁のリフト量が最大となる最大リフト位置に達するよりも早い段階でカムの回転方向を切り替えてカムを逆転させるように制御することにより、吸気弁又は排気弁のリフト量を最大リフト量よりも小さく制限することができる。
【0010】
本発明の弁駆動システムにおいて、動力伝達機構はカムやリンクを用いて電動モータの回転運動を吸気弁や排気弁の開閉運動に変換することができる。モータの回転運動をカムやリンクを介して吸気弁や排気弁の開閉運動に変換すれば、ねじ機構を利用する場合と比較してモータの回転量に対する弁の運動量の割合を大きく取ることができる。つまり、ねじ機構による場合にはねじを最低でも数回転以上させないと弁を十分に開閉させることができないが、カムやリンクを利用した場合にはモータの一回転によって運動の一周期が完結するので、モータを最大でも一回転させるだけで吸気弁や排気弁に所定の開閉動作を与えることができる。従って、吸気弁又は排気弁を効率よく駆動することができる。
【0011】
電動モータの回転をカムによって吸気弁又は排気弁の開閉運動に変換する弁駆動システム(請求項3)は、さらに以下の態様を含むことができる。
【0012】
前記モータ制御手段は、前記カムの回転に対して作用するフリクショントルクの変化を考慮して前記電動モータの制御量を設定してもよい(請求項4)。カムフリクショントルクを考慮せずに電動モータの動作を制御した場合には、カムフリクショントルクの影響でモータの回転速度が制御の目標値から変動し、そのために吸気弁又は排気弁の動作特性が制御目標からずれて内燃機関1の運転状態に影響が及ぶ。例えば、燃費悪化、性能低下、排気エミッションの悪化等が生じるおそれがある。電動モータの制御が不安定となるおそれもある。これらの不都合は、カムフリクショントルクを考慮して電動モータの制御量を調整することにより解消することができる。なお、本発明においてフリクショントルクとは、電動モータから吸気弁又は排気弁に至るまでの機械的構成に基づいてカムの駆動源に負荷される回転抵抗を意味する。駆動源から吸気弁又は排気弁に至るまでの機構内にて発生する摩擦力はフリクショントルクを正方向に増加させ、吸気弁及び排気弁を閉方向に押し戻すばね手段(弁スプリング)の反発力はフリクショントルクを負方向に増加させる。電動モータの制御に際してはフリクショントルクに抗してカムを回転させるために必要なトルクを出力させる必要があり、電動モータの制御は、その出力トルクと関連付けられた制御変数(パラメータ)の増減によって実現される。本発明における電動モータの制御量の設定及び調整はこうした制御変数の設定及び調整を意味するものである。
【0013】
前記モータ制御手段は、前記内燃機関の吸気又は排気の特性に関する制御状態を考慮して前記電動モータの制御量を設定してもよい(請求項5)。吸気弁又は排気弁の動作が制御の目標からずれていれば内燃機関の吸気特性や排気特性が目標通りに制御できず、燃費悪化、性能低下、排気エミッションの低下等の不都合が生じる。これに対して、吸気又は排気の特性に関する制御状態を考慮し、制御状態が目標からずれていればそのずれが減少するように電動モータの制御量を調整すればそのような不都合は解消することができる。
【0014】
吸気又は排気の特性としては、吸気弁又は排気弁の動作特性と相関する種々の状態が考慮されてよい。例えば筒内吸入空気量、筒内圧力、内部EGR量、排気温度、空燃比等が吸気又は排気の特性として考慮されてよい。空燃比の制御状態が考慮される場合において、前記モータ制御手段は前記空燃比が所定の目標値に制御されるように前記モータの制御量を補正することが望ましい(請求項6)。このような制御を行えば、空燃比のずれを吸気弁又は排気弁の動作特性の補正によって解消し、燃費向上、出力増加、排気エミッションの改善等の好結果をもたらすことができる。
【0015】
さらに、弁駆動システムにおいては、前記内燃機関の吸気又は排気の特性に関する制御状態の考慮によって与えられた前記電動モータの制御量に対する補正量に基づいて、弁駆動システムの異常の有無を判別する異常判別手段を備えてもよい(請求項7)。弁駆動システム内にて何らかの異常が生じた場合には電動モータの制御量の絶対値が過大又は過小となり、あるいは制御量の変化量が過剰となる。そこで、電動モータの制御量に関する補正量を監視すれば、異常検出用のセンサを利用することなく、弁駆動システムに異常が生じているか否かを判別できる。
【0016】
前記モータ制御手段は、前記内燃機関の運転状態の変化に基づいて前記内燃機関の回転数の変化を予測し、その予測結果を考慮して前記電動モータの制御量を設定してもよい(請求項8)。この場合には、内燃機関の回転数が急に変化するような場合に、その変化を見込んで電動モータの制御量を増減させることにより、内燃機関の回転数の変化に対するカムの回転速度の応答性を高めることができる。
【0017】
前記カムのフリクショントルクが負の値になる場合に、前記カム側の回転運動で前記電動モータを駆動して当該電動モータにより発電を行ってもよい(請求項9)。この場合には弁駆動システムの効率を高め、カムの駆動に必要なバッテリの容量を減少させたり、車両に発電機として搭載されたオルタネーターの発電能力をより小さく設定することができができる。
【0018】
前記電動モータの回転位置を検出するモータ回転位置検出手段が該電動モータに付設され、前記モータ制御手段は、前記電動モータの回転位置の検出結果に基づいて前記カムの回転位置を特定するカム位置特定手段を備えてもよい(請求項10)。モータの回転位置からカム位置を推定することにより、カム位置の検出のために別途センサ類を設ける必要がなくなる。
【0019】
前記電動モータと前記カムとの間の減速比をN:M(但し、N>M、かつN、Mは1以外に公約数を持たない整数)としたときに、Nを6以下に設定することが望ましい(請求項11)。このような設定であれば、カムの初期位置の検出が容易であり、検出誤差を抑えることができる。
【0020】
前記モータ制御手段は、前記内燃機関が所定の状態にあるときに前記電動モータを所定の条件に従って回転させ、その回転中に前記カムのフリクショントルクの変化に相関して出現する前記電動モータの駆動状態の変化に基づいて前記カムの回転位置を把握する初期化手段を備えてもよい(請求項12)。カムのフリクショントルクはカムによる吸気弁又は排気弁の開閉状態と相関し、一般には吸気弁又は排気弁のリフト量が最大となるカム位置の付近でフリクショントルクは反転する。その一方で、フリクショントルクは電動モータの駆動状態に影響を与える。例えば、電動モータの出力トルクを一定に維持すれば、フリクショントルクの増加に伴ってモータの回転速度が低下し、フリクショントルクの減少に伴ってモータの回転速度が増加する。電動モータの回転速度を一定に維持すれば、フリクショントルクの増加に伴ってモータの出力トルクが増加し、フリクショントルクの減少に伴ってモータの出力トルクは減少する。このような相関関係を利用すればモータの駆動状態を監視するだけでカムの位置を特定することができる。なお、吸気弁又は排気弁の開き始め、あるいは閉じ終わり時の回転数変化あるいは電動モータの出力トルクの変化が所定の状態になることを利用し、そのような変化が発生した時点をもってカムの位置を特定してもよい。この場合においてはカムの位置を特定するために要する駆動電力が低減できる。また、内燃機関の停止時に行う場合には、吸気弁又は排気弁とピストンとの干渉を回避することもできる。
【0021】
前記初期化手段は、前記内燃機関の停止時に前記電動モータを回転させて前記カムの回転位置を把握するとともに、把握したカムの回転位置を示す情報を前記内燃機関の停止期間中も記憶保持が可能な記憶装置に記憶させ、前記モータ制御手段は、前記内燃機関の次回の始動時に、前記記憶装置が記憶する前記情報に基づいて前記カムの回転位置を特定して前記電動モータの制御を開始してもよい(請求項13)。この場合には、内燃機関の始動時にカムの回転位置を把握すべく初期化手段による処理を行う必要がない。従って、内燃機関の迅速な始動が可能となる。
【0022】
前記モータ制御手段は、前記内燃機関の停止中の所定時期において前記弁がその軸線回りに回転するように前記電動モータを駆動する弁回転実行手段を備えてもよい(請求項14)。この場合には弁を回転させることにより、弁やそのシート(弁座)に付着したカーボンを擦り落とすことができる。ロッカーアーム等の駆動部材に対する弁の接触位置を弁の軸線回りに変化させて弁の偏摩耗を防ぐこともできる。
【0023】
前記モータ制御手段は、前記弁のリフト量が、前記カムを一回転させたときに得られる最大リフト量よりも小さい所定の値に制限されるように前記電動モータを正逆転駆動させるリフト量制御手段を備えてもよい(請求項15)。この場合には、カムを正逆転させることにより、カムによって吸気弁又は排気弁に与え得る最大リフト量よりもリフト量を小さく制限して吸気弁又は排気弁を開閉させることができる。従って、高回転高負荷時の吸入空気量に合わせて設計されたカムであっても、吸入空気量が小さくて足りる低回転低負荷の運転状態に対応することが可能となる。なお、カムを正逆転させる場合の回転角度は、吸気弁又は排気弁に与えるべきリフト量に応じて増減すればよい。
【0024】
前記モータ制御手段は、前記内燃機関の運転状態に応じて前記電動モータの駆動モードを、前記電動モータを正転方向にのみ駆動する正転モードと、前記電動モータを正逆転させる正逆転モードとの間で切り替えるモード切替手段を備えていてもよい(請求項16)。この場合には、低回転低負荷時にカムを正逆転させてリフト量を制限し、高回転高負荷時にはカムを正転させてカム軸等の慣性により高速かつ小さいトルクでカムを回転駆動する等、カムの駆動状態を適宜に使い分けることができる。
【0025】
本発明の弁駆動装置は、回転運動を発生する駆動源としての電動モータと、前記電動モータの回転運動を駆動対象の弁の開閉運動に変換し伝達する動力伝達機構と、前記内燃機関の運転状態に応じて前記駆動対象の弁の作用角、リフト特性、又は最大リフト量の少なくともいずれか一つの動作特性が変化するように前記電動モータの動作を制御するモータ制御手段と、を備えることにより、上述した課題を解決する(請求項17)。このような弁駆動装置によれば、電動モータの動作制御により、吸気弁又は排気弁の作用角、リフト特性又は最大リフト量の少なくともいずれか一つを変化させることができるので、開閉タイミングのみを変化させる従来の弁駆動装置と比較して吸気弁や排気弁の動作をより柔軟に変化させることができる。なお、本発明の弁駆動装置は、上述したカムを利用する弁駆動システムの各種の好ましい態様を含み得るものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弁駆動システムが組み込まれた内燃機関1を示している。内燃機関1は、複数(図では4つ)のシリンダ(気筒)2…2が一方向に並べられ、各シリンダ2にピストン3が上下動自在に装着された多気筒直列式ガソリンエンジンとして構成されている。各シリンダ2の上方には2本の吸気弁4及び2本の排気弁5がそれぞれ設けられており、これらの吸気弁4及び排気弁5がピストン3の上下動に連動して弁駆動システム10にて開閉駆動されることにより、シリンダ2への吸気及びシリンダ2からの排気が行われる。
【0028】
弁駆動システム10は、各シリンダ2の吸気側に1つずつ設けられた弁駆動装置11A…11Aと、各シリンダ2の排気側に1つずつ設けられた弁駆動装置11B…11Bとを備えている。これらの弁駆動装置11A,11Bはいずれもカムを利用して吸気弁4又は排気弁5を駆動するものである。弁駆動装置11Aの構成は互いに等しく、また弁駆動装置11Bの構成は互いに等しい。図2は一つのシリンダ2に対応付けて設けられた吸気用及び排気用の弁駆動装置11A,11Bを示している。なお、弁駆動装置11A、11Bは互いに類似した構成を有しており、まず吸気側の弁駆動装置11Aについて説明する。
【0029】
吸気側の弁駆動装置11Aは、駆動源としての電動モータ(以下、モータと略称することがある。)12と、モータ12の回転運動を吸気弁4の直線的な開閉運動に変換する動力伝達機構13とを備えている。モータ12には、回転速度の制御が可能なDCブラシレスモータ等が使用される。モータ12には、その回転位置を検出するためのレゾルバ、ロータリエンコーダ等の回転位置検出手段が内蔵されている。
【0030】
動力伝達機構13は、一本のカム軸14Aと、モータ12の回転運動をカム軸14Aに伝達するギア列15と、吸気弁4を駆動するロッカーアーム16と、カム軸14Aとロッカーアーム16との間に介在される弁特性調整機構17とを備えている。カム軸14Aはシリンダ2毎に独立して設けられている。言い換えれば、シリンダ2毎にカム軸14Aは分かれている。ギア列15は、モータ12の出力軸(不図示)に取り付けられたモータギア18の回転を中間ギア19を介してカム軸14Aと一体のカム駆動ギア20に伝達することにより、モータ12に同期してカム軸14Aを回転させる。
【0031】
図3及び図4にも示したように、カム軸14Aには単一のカム21Aが一体に回転可能に設けられている。カム21Aはカム軸14Aと同軸のベース円の一部を膨らませた板カムの一種として形成されている。全ての弁駆動装置11Aの間でカム21Aのプロファイル(外周の輪郭)は互いに等しい。カム21Aのプロファイルはその全周に亘って負の曲率が生じないように、つまり半径方向外側に向かって凸曲面を描くように設定されている。
【0032】
ロッカーアーム16は支軸22を中心として揺動可能に設けられている。吸気弁4は弁スプリング23によってロッカーアーム16側に付勢され、それにより吸気ポートのバルブシート(不図示)に吸気弁4が密着して吸気ポートが閉じられる。ロッカーアーム16の他端部はアジャスター24と接している。アジャスター24がロッカーアーム16の他端部を押し上げることにより、ロッカーアーム16はその一端部が吸気弁4の上端部と接触した状態に保たれる。
【0033】
弁特性調整機構17は、カム21Aの回転運動をロッカーアーム16に揺動運動として伝達する仲介手段として機能するとともに、カム21Aの回転運動とロッカーアーム16の揺動運動との相関関係を変更することにより吸気弁4のリフト量及び作用角を変化させるリフト量及び作用角変更手段としても機能する。
【0034】
図5に示すように、弁特性調整機構17は、支持軸30と、その支持軸30の中心部を貫いて配置された操作軸31と、支持軸30上に配置された第1リング32と、その両側に配置された2つの第2リング33,33とを備えている。支持軸30は内燃機関1のシリンダヘッド等に固定的に取り付けられる。操作軸31は、不図示のアクチュエータにより支持軸30に対して軸線方向(図6のR方向及びF方向)に往復駆動される。第1リング32及び第2リング33は支持軸30に対して軸線方向にスライド可能かつ周方向に揺動可能に支持されている。第1リング32の外周にはローラフォロア34が回転自在に取り付けられ、第2リング33の外周にはノーズ35が形成されている。
【0035】
図6に示すように、支持軸30の外周にはスライダ36が設けられている。スライダ36は、その周方向に延びる長孔36cが操作軸31に取り付けられたピン37と噛み合うことにより、支持軸30に対して操作軸31と一体に軸線方向にスライド可能である。なお、支持軸30にはピン37の軸線方向の移動を許容する軸線方向の長孔(不図示)が形成されている。スライダ36の外周には第1のヘリカルスプライン36aと、これを挟むように配置された第2のヘリカルスプライン36b,36bとが一体に設けられている。第2のヘリカルスプライン36bの捻れ方向は第1のヘリカルスプライン36aの捻れ方向に対して逆方向である。一方、第1リング32の内周には第1のヘリカルスプライン36aと噛み合うヘリカルスプライン32aが形成され、第2リング33の内周には第2のヘリカルスプライン36bと噛み合うヘリカルスプライン33aが形成されている。
【0036】
図4から明らかなように、弁特性調整機構17は、そのローラフォロア34がカム21Aに、ノーズ35が各吸気弁4に対応するロッカーアーム16の一端部にそれぞれ対向するようにして内燃機関1に取り付けられる。カム21Aの回転に伴ってローラフォロア34がノーズ部21aと接触して押し下げられると、ローラフォロア34を支持する第1リング32が支持軸30上で回転し、その回転運動がスライダ36を介して第2リング33に伝達されて第2リング33が第1リング32と同一方向に回転する。これらの第2リング32の回転によりノーズ35がロッカーアーム16の一端部を押し下げ、それにより吸気弁4が弁スプリング23に抗して下方に変位して吸気ポートが開かれる。ノーズ部21aがローラフォロア34を乗り越えると弁スプリング23の力で吸気弁4が押し上げられて吸気ポートが閉じる。このようにしてカム軸14Aの回転運動が吸気弁4の開閉運動に変換される。
【0037】
さらに、弁特性調整機構17においては、操作軸31を軸線方向に変位させて図6に矢印R、Fで示したようにスライダ36を支持軸30に対してスライドさせると、第1リング32と第2リング33とが周方向に関して互いに逆方向に回転する。スライダ36を矢印F方向に移動させたときは第1リング32が矢印P方向に、第2リング33が矢印Q方向にそれぞれ回転してローラフォロア34とノーズ35との周方向の間隔が増加する。一方、スライダ36を矢印R方向に移動させたときは第1リング32が矢印Q方向に、第2リング33が矢印P方向にそれぞれ回転してローラフォロア34とノーズ35との周方向の間隔が減少する。ローラフォロア34とノーズ35との間隔が増加するほどノーズ35がロッカーアーム16を押し下げる量は増加し、これに伴って吸気弁4のリフト量及び作用角も増加する。従って、図6の矢印F方向に操作軸31を操作するほど吸気弁4のリフト量及び作用角が増加することになる。
【0038】
以上のように構成された弁駆動装置11Aによれば、モータ12によりカム軸14Aを、内燃機関1のクランク軸の回転速度の半分の速度(以下、これを基本速度と呼ぶ。)で一方向に連続的に駆動することにより、クランク軸からの動力で弁を駆動する一般的な機械式弁駆動装置と同様に、クランク軸の回転に同期して吸気弁4を開閉駆動することができる。また、弁特性調整機構17により吸気弁4のリフト量及び作用角を変化させることもできる。さらに、弁駆動装置11Aによれば、モータ12によるカム軸14Aの回転駆動の速度を基本速度から変化させることにより、クランク軸の位相とカム軸14Aの位相との相対関係を変化させて吸気弁4の動作特性(開弁タイミング、閉弁タイミング、リフト特性、作用角、最大リフト量)を様々に変化させることができる。
【0039】
一方、図2に示すように、排気弁5側の弁駆動装置11Bでは、弁駆動装置11Aと異なって、カム軸14Bに2つのカム21Bが設けられ、弁特性調整機構17が省略され、2つのカム21Bがロッカーアーム16をそれぞれ直接駆動している。弁駆動装置11Bのこれら以外の部分は弁駆動装置11Aと共通であり、それらの共通部分の説明は省略する。カム21Bのプロファイルはカム21Aと同様に全周に亘って凸曲面で構成されている。排気弁5に関しても、弁駆動装置11Bのモータ12によるカム軸14Bの駆動速度を種々変化させることにより、排気弁5の動作特性を様々に変化させることができる。
【0040】
図2に示すように、弁駆動装置11A,11Bのモータ12の動作特性を制御するため、弁駆動システム10にはモータ制御装置40が設けられている。モータ制御装置40はマイクロプロセッサ、及びその主記憶装置としてのRAM、ROMを備えたコンピュータとして構成されており、ROMに記憶された弁制御プログラムに従って各電動モータ12の動作を制御する。なお、図2では一つのシリンダ2の弁駆動装置11A,11Bを示しているが、モータ制御装置40は他のシリンダ2の弁駆動装置11A,11Bに対しても共用される。
【0041】
モータ制御装置40には、電動モータ12の制御に必要な情報の入力手段として、排気ガスの空燃比に対応した信号を出力するA/Fセンサ41、吸入空気量を調整するスロットルバルブの開度に対応した信号を出力するスロットル開度センサ42、アクセルペダルの開度に対応した信号を出力するアクセル開度センサ43、吸入空気量に対応した信号を出力するエアフローメータ44、クランク軸の角度に対応した信号を出力するクランク角センサ45がそれぞれ接続されている。なお、電動モータ12の制御には、これらのセンサによる実測値に代えて所定の関数式やマップから求めた値を使用してもよい。また、モータ12に内蔵された位置検出センサの出力信号もモータ制御装置40に入力される。
【0042】
次に、モータ制御装置40によるモータ12の制御について説明する。なお、以下では、一つのシリンダ2の吸気弁4を駆動するためのモータ12の制御について説明するが、他の吸気弁4を駆動するモータ12の制御についても同様である。排気弁5を駆動するモータ12についても同様である。
【0043】
図7は、モータ制御装置40が内燃機関1の運転状態に応じてモータ12の出力トルクを変化させるために一定周期で繰り返し実行するモータ駆動制御ルーチンを示している。図7のモータ駆動制御ルーチンを実行することにより、モータ制御装置40はモータ制御手段として機能する。このモータ駆動制御ルーチンにおいて、モータ制御装置40はまずステップS1にてカム21Aの回転位置を例えばモータ12の位置検出センサと、ギア列15の減速比とに基づいて検出する。このステップS1ではモータ制御装置40がカム位置特定手段として機能する。
【0044】
次に、ステップS2において吸気弁4の動作内容を決定するために必要な内燃機関1の運転状態を検出する。例えば、内燃機関1の回転数(回転速度)、負荷率等を上述したセンサ41〜45の出力信号に基づいて検出する。続くステップS3では、内燃機関1の運転状態の検出結果に基づいて吸気弁4の動作内容を決定する。例えば、現時点の運転状態に対応して吸気弁4に与えるべきリフト量、カム軸14Aの位相、回転数等のパラメータを決定する。
【0045】
続くステップS4では、カムフリクショントルクの推定値TFを下式(1)により求める。なお、モータギア18から吸気弁4又は排気弁5に至るまでの機械的構成に基づいてモータ12に負荷される回転抵抗をここではカムフリクショントルクと呼ぶ。
【0046】
【数1】
TF(θ+θ3)=Tf+f1(Tf1,θmax−θ1,θ+θ3)+f2(Tf2,θmax+θ2,θ+θ3) ……(1)
ここで、Tfはベースフリクショントルク、f1は弁スプリング23によるカム21Aの押し戻し作用によって発生するカムフリクショントルクの変動成分を記述する多項式近似関数、f2は弁スプリング23によるカム21Aの押し出し作用によって発生するカムフリクショントルクの変動成分を記述する多項式近似関数、θは制御実行時におけるクランク角、θ3はモータ12に応じて定まる時定数である。以下、図8及び図9を参照して(1)式を説明する。
【0047】
図8はクランク角θと、バルブリフト(吸気弁4のリフト量)、カムフリクショントルクTF(θ)及びモータ12の駆動電流I(θ)との対応関係を示している。但し、カムフリクションTFは正方向、つまりカム21Aの回転に対して抵抗となる方向を図8の下方向に対応付けて示している。また、図8ではバルブリフト量を大小2段階に変化させたときのカムフリクショントルクTF及びモータ12の駆動電流Iを示している。すなわち、バルブリフト量が大きい場合を太線で、バルブリフト量が大きい場合を細線でそれぞれ示している。
【0048】
図8から明らかなように、(1)式の第1項のベースフリクショントルクTfは正方向に作用し、その値はクランク角θに拘わりなく一定である。つまり、ベースフリクショントルクTfはカム21Aを回転させる際にモータ12に負荷される基本的な回転抵抗を示している。次に、図8の横軸上の適当な位置に基準位置をとり、その基準位置からクランク角θがθmaxだけ進んだ位置(以下、これを最大リフト位置と呼ぶ。)でバルブリフトが最大値を取るとした場合、カムフリクショントルクTF(θ)は最大リフト位置θmaxに達する前の吸気弁4が開かれる過程でベースフリクショントルクTfよりも正方向に増加してピークを示し、吸気弁4が閉じられる過程でベースフリクショントルクTfよりも負方向に減少する。このようなフリクショントルクTF(θ)の変化は、カム21Aが弁スプリング23に抗して吸気弁4を開く際には弁スプリング23の反発力がカム21Aをその回転方向と反対方向に押し戻すように作用し、弁スプリング23の反発力がピークを超えた後は弁スプリング23の反発力がカム21Aを回転方向に押し出すように作用することに起因する。
【0049】
任意のクランク角θに対応するカムフリクショントルクTFのベースフリクショントルクTfからの変動量は厳密には弁駆動装置11Aの構成から力学的に又は機構学的に演算することができる。しかしながら、クランク角θとカムフリクショントルクTFの変動量との相関関係は、ベースフリクショントルクTfに対するカムフリクショントルクの変動量のピーク値Tf1,Tf2、及びそれらのピーク値Tf1,Tf2が与えられるクランク角θの最大リフト位置θmaxからのずれ量θ1,θ2を変数とする関数によって近似的に表現することができる。上述した(1)式の第2項f1、f2はそのような観点から求めた近似関数である。モータ制御装置40のROMにはそれらの近似関数を特定する情報が記録されている。
【0050】
最大リフト位置θmaxは図7のステップS3の処理において決定される。また、図9に示すように吸気弁4の最大リフト量とベースフリクショントルクTf、ピーク値Tf1,Tf2、クランク角ずれ量θ1,θ2との間には相関関係があり、これらの関係は予めモータ制御装置40のROMにマップ形式で記録されている。従って、ステップS4の処理において、モータ制御装置40はまずROM内のマップを参照して現在の最大リフト量に対応したベースフリクショントルクTf、ピーク値Tf1,Tf2、クランク角ずれ量θ1,θ2を取得し、それらの値と、クランク角センサ45の出力に基づいて特定した現在のクランク角θとを(1)式に代入してカムフリクショントルクTFを求めることになる。但し、後述するステップS10又はS11にてこれらの値が補正された場合にはその補正が反映されてカムフリクショントルクTFが求められる。
【0051】
但し、モータ12には応答遅れがあり、その応答遅れがクランク角θにして時定数θ3で与えられている場合には、現在のクランク角θよりも時定数θ3だけクランク角θが進んだときのカムフリクショントルクTFを現時点で求めておく必要がある。そのため、(1)式の第2項及び第3項はそれぞれクランク角θに対して時定数θ3が加算されている。なお、多項式近似関数f1,f2に代え、物理モデルによってカムフリクショントルクの変動成分を求めるようにしてもよい。
【0052】
図7に戻って説明を続ける。カムフリクショントルクTFの算出後はステップS5に進み、カムフリクショントルクTF(θ+θ3)に所定のゲインαを乗じて現時点で与えるべきモータ12の駆動電流I(θ)を求める。続くステップS6においてモータ12に対する駆動電流I(θ)に設定してモータ12の駆動を実行する。図8から明らかなように、ステップS6にて与えられるモータ駆動電流I(θ)には、カムフリクショントルクTF(θ)の変化がモータ時定数θ3だけ早められて反映される。従って、カムフリクショントルクTF(θ)がベースフリクショントルクTfよりも大きくなるとき(図8の下側に変化するとき)にはそれに合わせてモータ12の出力トルクも増加し、カムフリクショントルクTF(θ)がベースフリクショントルクTfよりも小さくなるとき(図8の上側に変化するとき)にはそれに合わせてモータ12の出力トルクも減少する。これにより、モータ12の出力トルクが過不足なく制御される。
【0053】
モータ12の駆動を実行した後はステップS7に進み、現在の駆動電流I(θ)と標準的な駆動電流I(θ)との差が所定の閾値λ内か否かを判断する。標準的な駆動電流I(θ)とはステップS10又はステップS11による補正を考慮せずに求められる駆動電流である。ステップS7で閾値λ内と判断したときはステップS8に進み、A/Fセンサ41が検出した空燃比(測定A/F)から目標空燃比(目標A/F)を減算した値が所定の閾値β以下か否か判断する。ここで目標A/Fは内燃機関1の運転状態に応じて設定される空燃比の目標値である。吸気弁4の動弁特性は内燃機関の運転状態に応じて適宜に設定されているので(ステップS3参照)、結局、目標A/Fは吸気弁4の動作状態が適正に制御されていれば得られるであろう空燃比に相当する。
【0054】
測定A/Fが目標A/Fよりも閾値βを超えて増加してステップS8の条件が否定された場合、すなわち目標空燃比に対して実際の空燃比がリッチ側に閾値βよりも大きくずれているときはステップS10へ進み、(1)式に代入するクランク角ずれ量θ1、θ2、及びカムフリクショントルクの変動量のピーク値Tf1、Tf2の少なくともいずれか一つのパラメータを図9のマップによって特定される値から空燃比の差に対応した量だけ減少させる。なお、ピーク値Tf1,Tf2の減少は、これらの値をベースフリクショントルクTfに近付けるように変化させることを意味する。このような変化により吸気弁4は相対的に閉じる方向に、つまりリフト量が小さくなる方向に制御される。従って、ステップS10では、吸気弁4のリフト量を減らして吸入空気量を相対的に減少させることにより、測定A/Fと目標A/Fとのずれの解消を図っている。
【0055】
一方、ステップS8の条件が肯定された場合にはステップS9へ進み、目標A/Fから測定A/Fを引き算した値が所定の閾値γ以下か否か判断する。ステップS9の条件が肯定された場合には今回のモータ駆動制御ルーチンを終える。一方、測定A/Fが目標A/Fよりも閾値γを超えて減少してステップS9の条件が否定された場合、すなわち目標空燃比に対して実際の空燃比がリーン側に閾値γよりも大きくずれているときはステップS11へ進み、(1)式に代入するクランク角ずれ量θ1、θ2、及びカムフリクショントルクの変動量のピーク値Tf1、Tf2の少なくともいずれか一つのパラメータを図9のマップによって特定される値から空燃比の差に対応した量だけ増加させる。なお、ピーク値Tf1,Tf2の増加は、これらの値をベースフリクショントルクTfから遠ざけるように変化させることを意味する。このような変化により吸気弁4は相対的に開く方向に、つまりリフト量が大きくなる方向に制御される。従って、ステップS11では、吸気弁4のリフト量を増やして吸入空気量を相対的に増加させることにより、測定A/Fと目標A/Fとのずれの解消を図っている。
【0056】
ステップS10又はS11にて変数θ1、θ2、Tf1又はTf2を補正した後はステップS12へ進む。ステップS12ではパラメータの増減量が閾値Ψよりも大きいか否かを判断する。そして、閾値Ψ以内のときはステップS4へ戻りカムフリクショントルクTFを演算する。このとき、変数θ1、θ2、Tf1及びTf2のうちステップS10又はS11にて補正されたものについては補正後の値を利用する。
【0057】
一方、ステップS12にて増減量が閾値Ψよりも大きいと判断した場合には弁駆動装置11Aの異常とみなし、ステップS13に進んで弁駆動装置11Aの異常を運転者に知らしめるべく所定の警告を行う。例えば車両の計器盤上の警告灯を点灯又は点滅させる。そして、ステップS15に進み、所定の退避走行処理を開始してモータ駆動制御ルーチンを終える。また、ステップS7にて駆動電流I(θ)の差が閾値λを超えたときはモータ12の異常とみなし、ステップS14に進んでモータ12の異常を運転者に知らしめるべく所定の警告を行う。例えば車両の計器盤上の警告灯を点灯又は点滅させる。そして、ステップS15に進む。
【0058】
以上の実施形態によれば、カムフリクショントルクの増減に対応してモータ12の出力トルクが過不足なく制御されるので、カムフリクショントルクの変動の影響によるカム軸14Aの回転速度のばらつきを抑え、カム21Aの動作特性を目標値に対して精度良く制御することができる。そのため、内燃機関1の燃費や動力性能が向上し、排気エミッションの悪化が防がれる。
【0059】
また、空燃比のずれを特定し、そのずれが補正されるようにモータ12の出力トルクを制御しているので、制御の目標値のみに依存することなく弁駆動装置11Aの実際の状態に応じてモータ12の出力トルクを適正に制御することができる。例えば、弁駆動装置11Aの個体差や経年変化により、図8の近似関数f1,f2や図9のマップの設定時とは弁駆動装置11Aの状態が相違している場合には、その相違が空燃比のずれとして出現する。従って、空燃比のずれを補正するようにモータ12の駆動電流を制御すれば、結果として、弁駆動装置11Aの状態を正しく反映して吸気弁4の動作特性を適正に制御できることになる。このようにして補正されたモータ12の駆動電流は吸気弁4のリフト量と位相とを正しく反映しているので、補正後のモータ12の駆動電流に基づいてシリンダ2内への吸入空気量を正しく算出することもできる。
【0060】
さらに、上述の実施形態によれば、モータ12の駆動電流が標準的な駆動電流に対して著しく大きく又は小さく設定された場合にはモータ12の異常と判断し(ステップS7→S14)、空燃比のずれに対応したパラメータの補正量(増減量)が許容レベルを超えて大きいときは弁駆動装置の異常と判断する(ステップS12→S13)ことにより、モータ制御装置40を異常判別手段として機能させている。モータ12の駆動電流が標準駆動電流と比して過大又は過小であればモータ12が正常に動作していない可能性が高く、駆動電流が正常であっても、空燃比のずれを解消するために必要な補正量が正方向又は負方向に過度に大きいときは弁駆動装置11Aのいずれかに異常が生じて吸気弁4が正しく駆動されていない可能性が高いため、本実施形態によれば弁駆動システム10の異常を適切に判別できる。このようにモータ12の駆動電流の補正量に基づいてモータ12及び弁駆動装置11Aの異常を判断しているので、異常診断のために弁駆動装置11Aの作動状態をモニタするセンサを別に設ける必要がなくコスト増を防止できる。
【0061】
ステップS8〜11のモータ出力トルクの補正、及びステップS7又はS12による異常の有無の判別はフリクショントルクの推定に基づくモータ出力トルクのフィードフォワード制御に固有のものではなく、モータ12に関する様々な制御に対して組み合わせて実行してよい。例えば、クランク軸の回転数に基づくモータ12の出力トルクのフィードバック制御に対しても、図7の例と同様に出力トルクの補正や異常判別を行うことができる。
【0062】
上述の実施形態において、ステップS10又はS11にて求めた増減量はフリクショントルクTFの補正量としてモータ制御装置40内の記憶装置に記憶させることが望ましい。この場合の記憶装置は、車両のバッテリによってバックアップされたバックアップRAM、又は記憶保持用の電源の供給を必要としない書換え可能なフラッシュROMのような不揮発性メモリとすることが望ましい。このような記憶装置を利用すれば、イグニッションスイッチがオフされて内燃機関1が停止した後も補正量を保持し、次回の内燃機関1の始動時からその記憶された補正値を参照してカムフリクショントルクTFを適正に算出することができる。
【0063】
上述したカムフリクショントルクの予測に基づくモータ出力トルクのフィードフォワード制御は、モータ出力トルクに関する他の制御と並行して実行されてもよいし、単独で実行されてもよい。例えば、クランク角センサ45が検出したクランク角に基づくカム角のフィードバック制御と上述したカムフリクショントルクのフィードフォワード制御とを並行して実施してもよい。
【0064】
本実施形態の弁駆動システム10は、内燃機関1の運転状態に応じて吸気弁4及び排気弁5の動作を制御するための上述した基本的構成の他に幾つかの特徴を有している。以下順に説明する。なお、以下に説明する吸気側の弁駆動装置11Aの各種の機構又は構造は、特に断りのない限り排気側の弁駆動装置11Bにも設けられて弁駆動装置11Aと同様の作用効果を奏するものである。
【0065】
(カムの位置検出について)
本実施形態の弁駆動システム10では、モータ12の回転位置検出手段を利用してカム21Aの位置を特定している(図7のステップS1参照)。その回転位置検出手段には好適には一極対の磁極センサが使用される。磁極センサは、出力軸の周囲にS極とN極とが同数ずつ配置され、S極→N極→S極の順、又はN極→S極→N極の順に出力軸が回転する間に0°〜360°の回転信号を出力するように構成されている。通常のモータにおいて磁極センサの磁極数はモータ12の磁極数に合わせられている。例えば、モータ12が4極対(S極とN極で一対)であれば磁極センサは4極対となり、モータ12が8極対であれば磁極センサも8極対のものが使用される。しかしながら、本実施形態ではモータ12の極数に拘わりなく一極対の磁極センサをモータ12の位置検出センサとして使用する。このようにすれば、モータ12の出力軸の回転位置と位置検出センサの出力信号とが1:1に対応するのでモータ12の回転位置の割り出しを容易に行える利点がある。特にモータ12とカム軸14Aとの間の速度比が1:1であるときはモータ12の回転位置とカム21Aの回転位置とが1:1に対応するので、モータ12の回転位置がそのままカム21Aの回転位置を表すこととなって好都合である。
【0066】
一方、ギア列15の都合等によりモータ12からカム軸14Aまでの減速比が1:1に設定できない場合には、モータ12の回転位置がカム21Aのどの回転位置に対応するかを一義的に決めることができないので、両者の対応関係を特定する初期化操作を行わないとカム21Aの回転位置を制御することができない。初期化操作は実際にカム21Aを駆動して所定のカム角がモータ12のどの回転位置に対応付けられているかを検出することによって行うことができるが、モータ12からカム21Aまでの減速比がN:M(但し、N>M、かつN,Mは1以外に公約数を持たない整数)のときにカム角0〜360°のうち特定のカム角に対応するモータ12の回転位置(モータ角)はカム角0〜360°の間においてN箇所に、つまり360/N°毎に存在する。例えば、図10に示すように減速比がN:M=5:3に設定されている場合には、モータ12が5回転する間にカム21Aは3回転するから、カム21Aが一回転する間の5箇所の位置(図に黒丸で示す。)のいずれか1つの位置がカム角の0°に対応する。従って、Nが小さい程、カム位置の検出は容易となる。誤検出に対する余裕からみて、特定のカム角に対応するモータ角を60°毎又はそれ以上の角度毎に設定するとすれば、Nは6以下が好適範囲となる。
【0067】
(カムの初期化操作について)
次に、カム位置に関する初期化操作について説明する。図11はモータ制御装置40がカム位置を初期化するために実行するカム位置初期化ルーチンを示している。図11のカム位置初期化ルーチンを実行することによりモータ制御装置40は初期化手段として機能する。このルーチンにおいて、モータ制御装置40はまずステップS21でモータ12を起動してカム21Aを回転させる。このとき、回転位置センサからの位置信号等を利用してモータ12の回転速度をフィードバックし、回転速度が一定となるようにモータ12の出力トルクを制御する。出力トルクは駆動電流の増減によって制御される。続くステップS22では、フィードバック制御された駆動電流を利用してカムフリクショントルクを検出する。次のステップS23ではカム21Aの一回転に相当するだけモータ12が回転したか否かを判別し、未了であればステップS22へ戻る。カム21Aが一回転したならばステップS24でカムを停止させてステップS25へ進む。
【0068】
ステップS25では、カムフリクショントルクの検出結果に基づいてカム21Aの位置とモータ12の回転位置との対応関係を特定する。すなわち、図12(a)に示すようにモータ速度が一定であればカムフリクショントルクとモータ出力トルクとの間には相関関係があり、カム21Aが吸気弁4を開き始める位置Paからカムフリクショントルクが増加すると出力トルクも増加し、カム21Aのノーズ部21aが吸気弁4の延長線上に達する位置Pbにてカムフリクショントルク及びモータ出力トルクが反転し、吸気弁4が完全に閉じてカム21Aが離れる位置Pcにてカムフリクショントルク及びモータ出力トルクがそれぞれのベース値に収束する。但し、実際には図8に示したようにモータ時定数の影響があるが、図12ではモータ12の時定数を無視した。
【0069】
このようなカムフリクショントルクとモータ出力トルクとの関係を利用すれば、カムの位置Pa、Pb又はPcの少なくともいずれか1つを判別し、その判別した位置とモータ12の回転位置との対応関係を把握することができる。そして、この対応関係を利用して、現在のカム位置(カム角)を図11のステップS25で特定する。続くステップS26では、初期化操作によって特定されたカム位置の情報を記憶し、その後に初期化操作ルーチンを終える。
【0070】
以上の処理によれば、モータ出力トルクの変化からカム位置を特定することができるので、カム位置を検出するためのセンサを別に設ける必要がないという利点がある。但し、本発明はモータ出力トルクに基づくカム位置の特定に限定されない。例えば、図12(b)に示すようにモータ出力トルクを一定に保持してカム21Aを回転させたときはモータ12の回転速度がカムフリクショントルクに応じて変動する。従って、モータ12の回転位置センサからの信号を利用してモータ速度又は加速度を取得し、その速度又は加速度の変化からカム位置を特定してもよい。いずれにせよ、カムフリクショントルクの変化と相関関係を有する各種の物理量を監視すればカム位置は特定できる。
【0071】
上述したカム位置初期化ルーチンは、内燃機関1の始動時又は停止時に行うことができる。具体的には、イグニッションスイッチがオンされた場合に、クランキング動作に先立ってカム位置初期化ルーチンを実行するか、又はイグニッションスイッチがオフされて内燃機関1の停止が確認された場合にモータ制御装置40に対する電源供給の遮断に先立ってカム位置初期化ルーチンを実行する。イグニッションスイッチのオン時に初期化を行った場合、得られたカム位置の情報はモータ制御装置40が参照可能である限り、各種の記憶装置に記憶してよい。一方、イグニッションスイッチのオフ時に初期化を行った場合には、得られたカム位置の情報を車両のバッテリによってバックアップされたバックアップRAM、又は記憶保持用の電源の供給を必要としない書換え可能なフラッシュROMのような不揮発性メモリに記憶する。このような記憶装置を利用すれば、内燃機関1の始動時において初期化を不要とし、記憶されたカム位置を利用して直ちにカム21Aの制御を開始することができる。
【0072】
さらに、カム位置初期化ルーチンの実行時期はイグニッションスイッチのオン又はオフの直後に限定されず、内燃機関1の運転に影響を与えない状態であれば必要に応じて適宜に行ってよい。例えば、アイドリングストップの実行中にカム位置初期化ルーチンを実行してもよいし、減速等に一部のシリンダにて燃焼を休止するいわゆる減筒運転の実行中には、休止気筒(燃焼を停止したシリンダ)に対応するカム21Aに関してカム初期化ルーチンを実行してもよい。
【0073】
(カム回転を利用した発電について)
上述した図8においては、カムフリクショントルクTF(θ)が常に0よりも大きく、モータ12にはカム21Aの一回転を通じて駆動電流が供給されている。しかしながら、弁スプリング23がカム21Aを押し出す力の大きさと、ベースフリクショントルクTfとの大小関係によっては、例えば図13に示すようにカムフリクショントルクTFが負となり、弁スプリング23の反発力によってモータ12の出力軸が回転駆動されることがある。このような状態が生じるときは、図14にも示したようにモータ(モータジェネレータと呼ばれることもある。)12にて発電し、得られた電力をインバータ回路50を介してバッテリ51に充電することにより、カム21Aの回転に適正な負荷を加えるようにしてもよい。
【0074】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態を説明する。上述した第1の実施形態ではカムフリクショントルクを予測してモータ12の出力トルクを制御したが、この実施形態では内燃機関1の運転状態に基づいて内燃機関1の回転数(回転速度)の変化を予測し、その予測結果に応じてモータ12の出力トルクを制御している。なお、弁駆動装置11A、11Bの機械的構成は第1の実施形態と同様である。
【0075】
図15は本発明の第2の実施形態におけるモータ制御装置40に実装される制御系のブロック線図である。この構成はCPUとソフトウエアとの組み合わせによって実現されてもよいし、ハードウエア回路によって実現されてもよい。この実施形態では、クランク角センサ45が検出したクランク角、及び内燃機関1の運転状態に応じて要求されるバルブタイミング(要求バルブタイミング)に基づいて、制御目標値としての要求カム角が演算される。その要求カム角と、入力情報として与えられる実際のカム角(実カム角)との偏差が取得され、その偏差に基づいてモータ12の出力トルクがPID制御される。
【0076】
また、図15の制御系では内燃機関1の回転数の変化に関係する幾つかのパラメータ(例えば、ここで監視されるパラメータとしては、アクセル開度、吸入空気量、燃料噴射量)が監視され、それらのパラメータに対応する出力トルクの補正量が所定のマップを利用して求められる。車両に自動変速機が設けられている場合にはシフト位置がパラメータとして監視されてもよい。シフト位置はトランスミッションのシフト線図を参照することによって取得できる。各パラメータと補正量との対応関係はベンチ適合試験やコンピュータシミュレーションによって取得すればよい。
【0077】
そして、PID制御によって得られた出力トルクに、マップに基づいて得られた出力トルクの補正量が加算された値が要求トルクとして出力される。モータ制御装置40はその要求トルクに基づいてモータ12の駆動電流を制御する。
【0078】
以上の実施形態においては、内燃機関1の回転数の変化がアクセル開度等を介していわば間接的に予測され、その予測された結果に応じてマップからモータ出力トルクの補正量が与えられることにより、モータ12の出力トルクがフィードフォワード制御されることになる。従って、内燃機関1の回転数の変化に対するカムの駆動速度の応答性を改善できる。
【0079】
図16は、アクセル開度に基づいて回転数の変化を予測した際のカム出力トルクのフィードフォワード制御の例を示している。なお、図中においてフィードフォワードトルクとは、図15の制御系においてマップから特定した出力トルクの補正量を意味し、要求トルクそのものではない。図16の例ではアクセル開度の急増に対応して一定期間Aだけフィードフォワードトルクが所定量だけ増加している。アクセル開度の増加により内燃機関1の回転数は増加するが、仮にフィードフォワードトルクを与えなければ同図に実線で示す要求カム角に対して同図に二点鎖線で示すように実カム角は遅れを伴う。例えば、内燃機関1の回転数に基づいてモータ12の出力トルクをフィードバック制御するだけではこのようなカム角のずれが生じる可能性がある。しかしながら、フィードフォワードトルクを与えた場合には要求カム角と実カム角とをほぼ一致させてカムの応答性を改善できる。
【0080】
図17は、シフト位置に基づいて回転数の変化を予測した際のカム出力トルクのフィードフォワード制御の例を示している。この例では、トランスミッションのシフト線図に基づいてシフトダウン要求が与えられる場合において、その要求に対応して一定期間Bだけフィードフォワードトルクが所定量だけ増加している。シフトダウンの実行により内燃機関1の回転数は増加するが、仮にフィードフォワードトルクを与えなければ同図に実線で示す要求カム角に対して同図に二点鎖線で示すように実カム角に応答遅れが生じる。しかしながら、フィードフォワードトルクを与えた場合にはシフトダウン実行時にも要求カム角と実カム角とをほぼ一致させてカムの応答性を改善できる。
【0081】
以上の他にも、内燃機関1の回転数の変化に相関する各種のパラメータを参照して回転数の変化を予測してよい。なお、回転数変化の予測に基づくモータ出力トルクのフィードフォワード制御は、モータ出力トルクに関する他の制御と並行して実行されてもよいし、単独で実行されてもよい。例えば、クランク角センサ45が検出したクランク角に基づくカム角のフィードバック制御、及び第1の実施形態におけるカムフリクショントルクの予測に基づくフィードフォワード制御との少なくともいずれか一方と第2の実施形態におけるフィードフォワード制御とを並行して実施してもよい。
【0082】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態は、内燃機関1の運転状態に応じて各弁駆動装置11A,11Bのモータ12の駆動モードを正転モードと正逆転モードとの間で切り替えるものである。なお、正転モードとはモータ12を一定方向(正転方向)に連続的に回転させるモード、正逆転モードとはモータ12の回転方向を正転方向及び逆転方向の間で適宜に切り替えるモードである。弁駆動装置11A、11Bの機械的構成は第1の実施形態と同様である。
【0083】
図18はモータ12の駆動モードに関する切り替え条件の一例を示す。この例では、内燃機関1の回転数と負荷とに基づいてモータ駆動モードが切り替えられ、高回転高負荷時には正転モード、低回転低負荷時には正逆転モードが適用される。正逆転モードでは吸気弁4又は排気弁5が開く途中の任意の位置でモータ12の回転方向を切り替えることにより、カム21A,21Bを最大リフト位置、つまり、吸気弁4又は排気弁5に最大リフト量が与えられる位置に達する前に吸気弁4又は排気弁5を閉じることができる。
【0084】
すなわち、図19に示すように、モータ12を正転モードで回転させたときの最大リフト量がLaのとき、正逆転モードでカム21A,21Bが最大リフト位置θmaxに達する前にモータ12を一旦停止させ、その後に逆転させた場合には、吸気弁4及び排気弁5の最大リフト量をより少ないLbに制限することができる。これにより、吸入空気量の過剰な増加を防止することができる。また、始動時に正逆転モードを選択して、応答性に優れたデコンプ機能(吸気弁4又は排気弁5を開けて圧縮圧力を下げる機能)を実現することもできる。一方、高負荷高回転時に正転モードを適用すれば、カム21A,21Bやギア列15等の慣性を利用して比較的小さなトルクでカム21A,21Bを高速で回転させることができる。
【0085】
なお、正逆転モードにおけるリフト量Lbは内燃機関1の運転状態に応じて適宜に変更してもよい。リフト量Lbを可変とするには、モータ制御装置40により、リフト量Lbに応じてカム21Aの回転角度を増減させればよい。
【0086】
図20は、モータ制御装置40がモータ12の駆動モードを切り替えるために内燃機関1の運転中に適宜の周期で繰り返し実行する駆動モード判別ルーチンを示している。この駆動モード判別ルーチンをモータ制御装置40が実行することにより、モータ制御装置40はリフト量制御手段及びモード切替手段として機能する。
【0087】
図20の駆動モード判別ルーチンにおいて、モータ制御装置40はステップS31で内燃機関1の回転数及び負荷を取得し、続くステップS32で図18に示した条件に従って現在の内燃機関1の運転状態が正転モードを選択する領域にあるか否かを判断する。そして、その判断結果に応じて正転モード又は正逆転モードを選択し(ステップS33又はS34)、その後に駆動モード判別ルーチンを終える。
【0088】
なお、駆動モードの判別においては、機関回転数と機関負荷に限らず、内燃機関1の運転状態に相関する各種のパラメータを参照してよい。また、正転モード及び正逆転モードの切替条件も図18の例に限らず適宜に変更してよい。正転モードにおけるモータ12の出力トルクの制御には上述した第1及び第2の実施形態のフィードフォワード制御を使用することができる。
【0089】
[第4の実施形態]
次に本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態は、内燃機関1の停止中の所定時期に図21のクリーニング制御ルーチンをモータ制御装置40に実行させることにより、モータ制御装置40を弁回転実行手段として機能させるものである。なお、弁駆動装置11A、11Bの機械的構成は第1の実施形態と同様である。
【0090】
図21のクリーニング制御ルーチンにおいて、モータ制御装置40はステップS41でモータ12の高速回転を開始させ、ステップS42でモータ12の回転開始から所定時間が経過したか否かを判断する。そして、所定時間が経過するとステップS43へ進み、モータ12を停止させる。
【0091】
以上のように、内燃機関1の停止中にモータ12を高速回転させると、図22に示すように吸気弁4が高速で開閉され、弁スプリング23のサージング現象によって吸気弁4に対する弁スプリング23の負荷が軽減されて吸気弁4がステム4aの軸線の回りに回転する。これにより、吸気弁4とバルブシート60との間に付着したカーボンが除去される。また、吸気弁4の回転に伴って、ステム上端部4bのロッカーアーム16に対する接触部分が周方向にずれるため、図23(a)にハッチング領域で示すようにステム上端部4bが周方向に関してほぼ均一の摩耗するようになる。ちなみに、ステム4aが回転しなければステム上端部4bの特定部分のみがロッカーアーム16と接触し、図23(b)にハッチング領域で示すようにステム上端部4bの偏摩耗が生じる。なお、以上では吸気弁4の場合を例にしたが、排気弁5に関しても同様に図21のクリーニング制御ルーチンが実行される。
【0092】
図21のクリーニング制御ルーチンの実行時期は、イグニッションキーが抜かれる等して内燃機関1の長期間の停止が見込める場合が好適である。但し、内燃機関1が停止する毎に図21のクリーニング制御ルーチンを実行する必要はなく、吸気弁4及び排気弁5に対するカーボンの付着状況、吸気弁4や排気弁5のステムの摩耗の進行状況に応じて適宜に実行時期を定めてよい。
【0093】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の弁駆動システムによれば、複数の弁駆動装置を設けたことにより、複数の気筒の吸気弁又は排気弁のそれぞれに対して内燃機関の運転状態に応じた適切な動作特性を与えることができる。特に、電動モータの動作制御により、吸気弁又は排気弁の作用角、リフト特性又は最大リフト量の少なくともいずれか一つを変化させた場合には、開閉タイミングのみを変化させる従来の弁駆動装置と比較して吸気弁や排気弁の動作をより柔軟に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る弁駆動システムの要部を示す斜視図。
【図2】一つの気筒に対応して設けられた弁駆動装置の構成を示す斜視図。
【図3】弁駆動装置の別方向からの斜視図。
【図4】弁駆動装置のさらに別の方向からの斜視図。
【図5】弁特性調整機構の斜視図。
【図6】弁特性調整機構を一部破断して示す斜視図。
【図7】図2の制御装置が実行するモータ駆動制御ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図8】クランク角と、バルブリフト、カムフリクショントルク及びモータ駆動電流との関係の一例を示す図。
【図9】バルブの最大リフト量とクランク角及びカムフリクショントルクとの対応関係の一例を示す図。
【図10】カム角とモータ角との対応関係の一例を示す図。
【図11】図2の制御装置が実行するカム位置初期化ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図12】モータ速度、カムフリクショントルク及びモータ出力トルクの相関関係の一例を示す図。
【図13】カムフリクショントルクが負となる例を示す図。
【図14】カム駆動用のモータにて回生発電を行うための構成を示す図。
【図15】本発明の第2の実施形態において、内燃機関の回転数の変化を予測してモータの出力トルクを制御するための制御系のブロック図。
【図16】図15の制御系によって実現される制御の一例を示す図。
【図17】図15の制御系によって実現される制御の他の例を示す図。
【図18】本発明の第3の実施形態において、モータの駆動モードを正転モードと正逆転モードとの間で切り替えるための条件を示す図。。
【図19】正転モード及び正逆転モードのそれぞれにおけるクランク角と、バルブリフト及びモータ回転数との対応関係を示す図。
【図20】駆動モードの設定のために制御装置が実行する駆動モード判別ルーチンを示す図。
【図21】吸気弁又は排気弁のクリーニングを実施するために制御装置が実行するクリーニング制御ルーチンの手順を示すフローチャート。
【図22】吸気弁を高速で動作させてクリーニングを行う様子を示す図。
【図23】クリーニング制御を実行した場合(a)と、実行しなかった場合(b)とのステム上端部の摩耗状況を対比して示す図。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 シリンダ(気筒)
4 吸気弁
5 排気弁
10 弁駆動システム
11A,11B 弁駆動装置
12 電動モータ
13 動力伝達機構
15 ギア列
21A,21B カム
23 弁スプリング
40 モータ制御装置(モータ制御手段、異常判別手段、カム位置特定手段、初期化手段、弁回転実行手段、リフト量制限手段、モード切替手段)[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a valve drive system that drives an intake valve or an exhaust valve of an internal combustion engine and a valve drive device that forms the system.
[0002]
[Prior art]
An intake valve and an exhaust valve of a general internal combustion engine are opened and closed by power taken from a crankshaft of the internal combustion engine. However, recently, an attempt has been made to drive an intake valve and an exhaust valve by an electric motor. For example,
[0003]
[Patent Document 1]
JP-A-8-177536
[Patent Document 2]
JP-A-10-73178
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
The device that converts the rotation of the motor into the opening and closing movement of the valve by a screw mechanism requires a large amount of rotation of the motor required to open and close the valve and is inefficient, so the valve needs to operate the valve at high speed and periodically. It is not suitable as a driving device for a valve or an exhaust valve.
[0005]
On the other hand, when the camshaft is rotated by a motor, the intake valve and the exhaust valve can be efficiently driven. However, in a multi-cylinder internal combustion engine generally used as a power source of a vehicle, a camshaft is shared between a plurality of cylinders arranged in a line. By simply driving such a shared camshaft with a motor, a change in the operation of the camshaft affects the operating characteristics of all intake and exhaust valves driven by the camshaft. Therefore, the degree of freedom of the operating characteristics obtained by controlling the motor is not so high.
[0006]
Therefore, the present invention provides an internal combustion engine that can efficiently open and close an intake valve or an exhaust valve of an internal combustion engine having a plurality of cylinders with a motor, and can increase the degree of freedom regarding the operating characteristics of each valve as compared with the related art. It is an object of the present invention to provide a valve drive system of an engine and a valve drive used in the system.
[0007]
[Means for Solving the Problems]
The valve drive system of the present invention is applied to an internal combustion engine having a plurality of cylinders, and is a valve drive system of an internal combustion engine for driving intake or exhaust valves provided in each cylinder, wherein the internal combustion engine An electric motor as a drive source for generating a rotational motion, and a power transmission for converting the rotational motion of the electric motor into an opening and closing motion of a valve to be driven and transmitting the electric power. A plurality of valve drive devices each including a mechanism, and motor control means for controlling the operation of the electric motor of each of the plurality of valve drive devices according to the operation state of the internal combustion engine, the above-described configuration is provided. The problem is solved (claim 1).
[0008]
According to the valve drive system of the present invention, by providing the plurality of valve drive devices, it is possible to provide each of the intake valves or the exhaust valves of the plurality of cylinders with appropriate operation characteristics according to the operation state of the internal combustion engine. Can be. In the valve drive system of the present invention, each of the plurality of valve drive devices may drive the intake valve or the exhaust valve of a different cylinder. Therefore, the valve drive device may be provided independently for each cylinder, or a valve drive device may be provided independently for the intake valve and the exhaust valve of each cylinder. On the other hand, some or all of the valve driving devices may drive the intake valves or exhaust valves of two or more different cylinders. In particular, if the intake valve is open or the exhaust valve is open between cylinders that do not overlap, even if the intake valve or exhaust valve of those cylinders is driven by a common electric motor, each cylinder Can be changed without being influenced by the operation of the intake valve or the exhaust valve driven by the common electric motor.
[0009]
In the valve drive system according to the aspect of the invention, the motor control unit controls the operation of the electric motor such that at least one operating characteristic of a valve operating angle, a lift characteristic, or a maximum lift amount of the valve to be driven changes. The control can be performed according to the operating state of the internal combustion engine (claim 2). In this case, the operation of the intake valve and the exhaust valve can be changed more flexibly than in a conventional valve drive device that changes only the opening / closing timing. If the rotational speed of the electric motor is increased or decreased while the intake valve or the exhaust valve is open, the operating angle changes, and if the rotational speed changes, that is, if the acceleration is changed, the lift characteristics change. The lift characteristics are grasped as characteristics relating to the correspondence between the lift amount of the intake valve or the exhaust valve and the crank angle. Regarding the lift amount, the intake valve or the exhaust valve is controlled by switching the rotation direction of the cam so as to reverse the cam earlier than reaching the maximum lift position where the lift amount of the intake valve or the exhaust valve is maximized. Can be limited to be smaller than the maximum lift amount.
[0010]
In the valve drive system of the present invention, the power transmission mechanism can convert the rotational motion of the electric motor into the opening and closing motion of the intake valve and the exhaust valve by using a cam and a link. If the rotational motion of the motor is converted into the opening and closing motion of the intake and exhaust valves via cams and links, the ratio of the momentum of the valve to the rotation of the motor can be increased compared to the case where a screw mechanism is used. . In other words, in the case of the screw mechanism, the valve cannot be opened and closed sufficiently without turning the screw at least a few turns.However, in the case of using a cam or link, one rotation of the motor completes one cycle of movement. In addition, a predetermined opening / closing operation can be applied to the intake valve and the exhaust valve only by rotating the motor at most once. Therefore, the intake valve or the exhaust valve can be efficiently driven.
[0011]
A valve drive system that converts rotation of an electric motor into opening and closing motion of an intake valve or an exhaust valve by a cam (claim 3) can further include the following aspects.
[0012]
The motor control means may set a control amount of the electric motor in consideration of a change in friction torque acting on rotation of the cam (claim 4). When the operation of the electric motor is controlled without considering the cam friction torque, the rotation speed of the motor fluctuates from the control target value due to the influence of the cam friction torque, so that the operation characteristics of the intake valve or the exhaust valve are controlled. The deviation from the target affects the operating state of the
[0013]
The motor control means may set the control amount of the electric motor in consideration of a control state regarding characteristics of intake or exhaust of the internal combustion engine (claim 5). If the operation of the intake valve or the exhaust valve deviates from the target of the control, the intake characteristics and the exhaust characteristics of the internal combustion engine cannot be controlled as intended, resulting in inconveniences such as deterioration of fuel consumption, performance degradation, and reduction of exhaust emission. On the other hand, by taking into account the control state related to the characteristics of intake or exhaust, and adjusting the control amount of the electric motor to reduce the deviation if the control state deviates from the target, such a disadvantage can be solved. Can be.
[0014]
Various states that correlate with the operating characteristics of the intake or exhaust valve may be considered as the characteristics of the intake or exhaust. For example, the in-cylinder intake air amount, the in-cylinder pressure, the internal EGR amount, the exhaust temperature, the air-fuel ratio, and the like may be considered as characteristics of intake or exhaust. When the control state of the air-fuel ratio is considered, it is preferable that the motor control means corrects the control amount of the motor so that the air-fuel ratio is controlled to a predetermined target value. By performing such control, the deviation of the air-fuel ratio can be eliminated by correcting the operation characteristics of the intake valve or the exhaust valve, and good results such as improved fuel efficiency, increased output, and improved exhaust emission can be obtained.
[0015]
Further, in the valve drive system, an abnormality that determines the presence or absence of an abnormality in the valve drive system based on a correction amount with respect to the control amount of the electric motor given by considering a control state regarding intake or exhaust characteristics of the internal combustion engine. A determination means may be provided (claim 7). If any abnormality occurs in the valve drive system, the absolute value of the control amount of the electric motor becomes too large or too small, or the amount of change in the control amount becomes excessive. Therefore, by monitoring the correction amount related to the control amount of the electric motor, it is possible to determine whether or not an abnormality has occurred in the valve drive system without using a sensor for detecting abnormality.
[0016]
The motor control means may predict a change in the number of revolutions of the internal combustion engine based on a change in an operation state of the internal combustion engine, and may set a control amount of the electric motor in consideration of the prediction result. Item 8). In this case, when the rotational speed of the internal combustion engine suddenly changes, the control amount of the electric motor is increased / decreased in anticipation of the change, so that the response of the rotational speed of the cam to the change in the rotational speed of the internal combustion engine is obtained. Can be enhanced.
[0017]
When the friction torque of the cam becomes a negative value, the electric motor may be driven by the rotational movement of the cam to generate electric power by the electric motor. In this case, the efficiency of the valve drive system can be increased, the capacity of the battery required for driving the cam can be reduced, and the power generation capacity of the alternator mounted as a generator in the vehicle can be set smaller.
[0018]
Motor rotation position detection means for detecting a rotation position of the electric motor is attached to the electric motor, and the motor control means determines a rotation position of the cam based on a detection result of the rotation position of the electric motor. It may be provided with a specifying means (claim 10). By estimating the cam position from the rotation position of the motor, it is not necessary to provide a separate sensor for detecting the cam position.
[0019]
When the reduction ratio between the electric motor and the cam is N: M (where N> M, and N and M are integers having no common divisor other than 1, N is set to 6 or less. It is desirable (claim 11). With such a setting, the initial position of the cam can be easily detected, and the detection error can be suppressed.
[0020]
The motor control means rotates the electric motor according to predetermined conditions when the internal combustion engine is in a predetermined state, and drives the electric motor which appears during the rotation in correlation with a change in friction torque of the cam. An initialization means for grasping the rotation position of the cam based on a change in the state may be provided (claim 12). The friction torque of the cam correlates with the opening / closing state of the intake valve or the exhaust valve by the cam, and generally, the friction torque reverses near the cam position where the lift amount of the intake valve or the exhaust valve is maximized. On the other hand, the friction torque affects the driving state of the electric motor. For example, if the output torque of the electric motor is kept constant, the rotation speed of the motor decreases as the friction torque increases, and the rotation speed of the motor increases as the friction torque decreases. If the rotational speed of the electric motor is kept constant, the output torque of the motor increases as the friction torque increases, and the output torque of the motor decreases as the friction torque decreases. By utilizing such a correlation, the position of the cam can be specified only by monitoring the driving state of the motor. Utilizing the fact that a change in the number of revolutions or a change in the output torque of the electric motor at the start of opening or closing of the intake valve or exhaust valve is in a predetermined state, the position of the cam is determined when such a change occurs. May be specified. In this case, the driving power required to specify the position of the cam can be reduced. Further, when the operation is performed when the internal combustion engine is stopped, interference between the intake valve or the exhaust valve and the piston can be avoided.
[0021]
The initialization means is configured to rotate the electric motor when the internal combustion engine is stopped to determine the rotational position of the cam, and to store information indicating the determined rotational position of the cam even during the stop period of the internal combustion engine. The motor control means specifies the rotational position of the cam based on the information stored in the storage device and starts control of the electric motor at the next start of the internal combustion engine. (Claim 13). In this case, it is not necessary to perform the processing by the initialization means in order to grasp the rotational position of the cam when starting the internal combustion engine. Therefore, a quick start of the internal combustion engine becomes possible.
[0022]
The motor control unit may include a valve rotation execution unit that drives the electric motor such that the valve rotates around its axis at a predetermined time during the stop of the internal combustion engine (claim 14). In this case, by rotating the valve, carbon attached to the valve and its seat (valve seat) can be scraped off. The position of contact of the valve with a drive member such as a rocker arm can be changed around the axis of the valve to prevent uneven wear of the valve.
[0023]
The motor control means controls the amount of lift of the electric motor so that the amount of lift of the valve is limited to a predetermined value smaller than the maximum amount of lift obtained when the cam is rotated once. Means may be provided (claim 15). In this case, by rotating the cam forward and backward, the lift amount can be limited to be smaller than the maximum lift amount that can be given to the intake valve or the exhaust valve by the cam, and the intake valve or the exhaust valve can be opened and closed. Therefore, even if the cam is designed in accordance with the intake air amount at the time of high rotation and high load, it is possible to cope with the operation state of low rotation and low load where the intake air amount is small. The rotation angle when rotating the cam in the normal or reverse direction may be increased or decreased according to the lift amount to be given to the intake valve or the exhaust valve.
[0024]
The motor control means, the drive mode of the electric motor according to the operating state of the internal combustion engine, a forward rotation mode to drive the electric motor only in the forward direction, and a forward and reverse rotation mode to rotate the electric motor forward and reverse Mode switching means for switching between the two modes (claim 16). In this case, the cam is rotated forward and reverse at low rotation and low load to limit the lift amount, and at high rotation and high load, the cam is rotated forward and the cam is rotated at high speed and with small torque by the inertia of the camshaft or the like. The driving state of the cam can be properly used.
[0025]
The valve drive device according to the present invention includes an electric motor as a drive source that generates a rotational motion, a power transmission mechanism that converts the rotational motion of the electric motor into an opening and closing motion of a valve to be driven and transmits the same, and an operation of the internal combustion engine. Motor control means for controlling the operation of the electric motor such that at least one operating characteristic of the valve operating angle, lift characteristic, or maximum lift amount of the valve to be driven changes according to a state. The above-mentioned problem is solved (claim 17). According to such a valve drive device, by controlling the operation of the electric motor, it is possible to change at least one of the operating angle of the intake valve or the exhaust valve, the lift characteristic, or the maximum lift amount. The operation of the intake valve and the exhaust valve can be changed more flexibly as compared with a conventional valve drive device that changes the operation. In addition, the valve drive device of the present invention may include various preferable aspects of the above-described valve drive system using a cam.
[0026]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
[First Embodiment]
[0027]
FIG. 1 shows an
[0028]
The
[0029]
The intake-side
[0030]
The
[0031]
As shown in FIGS. 3 and 4, a
[0032]
The
[0033]
The valve
[0034]
As shown in FIG. 5, the valve
[0035]
As shown in FIG. 6, a
[0036]
As is clear from FIG. 4, the valve
[0037]
Further, in the valve
[0038]
According to the
[0039]
On the other hand, as shown in FIG. 2, in the
[0040]
As shown in FIG. 2, a
[0041]
An A /
[0042]
Next, control of the
[0043]
FIG. 7 shows a motor drive control routine that is repeatedly executed at regular intervals by the
[0044]
Next, in step S2, the operation state of the
[0045]
In the following step S4, an estimated value TF of the cam friction torque is obtained by the following equation (1). The rotational resistance applied to the
[0046]
(Equation 1)
TF (θ + θ3) = Tf + f1 (Tf1, θmax−θ1, θ + θ3) + f2 (Tf2, θmax + θ2, θ + θ3) (1)
Here, Tf is a base friction torque, f1 is a polynomial approximation function describing a fluctuation component of the cam friction torque generated by the push-back action of the
[0047]
FIG. 8 shows a correspondence relationship between the crank angle θ, the valve lift (the lift amount of the intake valve 4), the cam friction torque TF (θ), and the drive current I (θ) of the
[0048]
As is clear from FIG. 8, the base friction torque Tf of the first term of the equation (1) acts in the positive direction, and its value is constant irrespective of the crank angle θ. That is, the base friction torque Tf indicates a basic rotational resistance applied to the
[0049]
Strictly, the variation of the cam friction torque TF corresponding to an arbitrary crank angle θ from the base friction torque Tf can be calculated mechanically or mechanically from the configuration of the
[0050]
The maximum lift position θmax is determined in the process of step S3 in FIG. As shown in FIG. 9, there is a correlation between the maximum lift amount of the
[0051]
However, if the
[0052]
Returning to FIG. 7, the description will be continued. After the calculation of the cam friction torque TF, the process proceeds to step S5, in which the cam friction torque TF (θ + θ3) is multiplied by a predetermined gain α to obtain a drive current I (θ) of the
[0053]
After the drive of the
[0054]
When the measured A / F exceeds the target A / F by more than the threshold value β and the condition of step S8 is denied, that is, the actual air-fuel ratio deviates from the target air-fuel ratio to the rich side by more than the threshold value β. In step S10, at least one parameter of the crank angle deviations θ1 and θ2 and the peak values Tf1 and Tf2 of the cam friction torque variation to be substituted into the equation (1) is determined by using the map of FIG. It is decreased from the specified value by an amount corresponding to the difference in the air-fuel ratio. The decrease in the peak values Tf1 and Tf2 means that these values are changed so as to approach the base friction torque Tf. Due to such a change, the
[0055]
On the other hand, when the condition of step S8 is affirmed, the process proceeds to step S9, and it is determined whether or not a value obtained by subtracting the measured A / F from the target A / F is equal to or less than a predetermined threshold value γ. If the condition in step S9 is affirmed, the current motor drive control routine ends. On the other hand, if the measurement A / F is smaller than the target A / F by more than the threshold γ and the condition of step S9 is denied, that is, the actual air-fuel ratio is leaner than the threshold γ with respect to the target air-fuel ratio. If there is a large deviation, the process proceeds to step S11, and at least one of the parameters of the crank angle deviation amounts θ1 and θ2 and the peak values Tf1 and Tf2 of the cam friction torque fluctuation amount to be substituted into the equation (1) is set to the value shown in FIG. It is increased from the value specified by the map by an amount corresponding to the difference in the air-fuel ratio. The increase in the peak values Tf1 and Tf2 means that these values are changed so as to be away from the base friction torque Tf. Due to such a change, the
[0056]
After correcting the variables θ1, θ2, Tf1 or Tf2 in step S10 or S11, the process proceeds to step S12. In step S12, it is determined whether or not the amount of increase or decrease of the parameter is greater than a threshold value Ψ. If it is within the threshold Ψ, the process returns to step S4 to calculate the cam friction torque TF. At this time, for the variables θ1, θ2, Tf1, and Tf2 that have been corrected in step S10 or S11, the corrected values are used.
[0057]
On the other hand, if it is determined in step S12 that the amount of increase or decrease is greater than the threshold value Ψ, it is determined that the
[0058]
According to the above embodiment, the output torque of the
[0059]
Further, since the deviation of the air-fuel ratio is specified and the output torque of the
[0060]
Furthermore, according to the above-described embodiment, when the drive current of the
[0061]
The correction of the motor output torque in steps S8 to S11 and the determination of the presence / absence of abnormality in step S7 or S12 are not unique to the feedforward control of the motor output torque based on the estimation of the friction torque, but are performed in various controls related to the
[0062]
In the above-described embodiment, it is desirable that the increase or decrease obtained in step S10 or S11 be stored in the storage device in the
[0063]
The above-described feedforward control of the motor output torque based on the prediction of the cam friction torque may be executed in parallel with other control relating to the motor output torque, or may be executed alone. For example, the feedback control of the cam angle based on the crank angle detected by the
[0064]
The
[0065]
(Cam position detection)
In the
[0066]
On the other hand, if the reduction ratio from the
[0067]
(About cam initialization)
Next, an initialization operation regarding the cam position will be described. FIG. 11 shows a cam position initialization routine executed by the
[0068]
In step S25, the correspondence between the position of the
[0069]
By utilizing such a relationship between the cam friction torque and the motor output torque, at least one of the cam positions Pa, Pb, and Pc is determined, and the correspondence between the determined position and the rotation position of the
[0070]
According to the above processing, since the cam position can be specified from the change in the motor output torque, there is an advantage that it is not necessary to separately provide a sensor for detecting the cam position. However, the present invention is not limited to specifying the cam position based on the motor output torque. For example, as shown in FIG. 12B, when the
[0071]
The above-described cam position initialization routine can be performed when the
[0072]
Further, the execution timing of the cam position initialization routine is not limited to immediately after the turning on or off of the ignition switch, and may be performed as needed as long as it does not affect the operation of the
[0073]
(About power generation using cam rotation)
In FIG. 8 described above, the cam friction torque TF (θ) is always greater than 0, and the drive current is supplied to the
[0074]
[Second embodiment]
Next, a second embodiment of the present invention will be described. In the first embodiment described above, the output torque of the
[0075]
FIG. 15 is a block diagram of a control system mounted on the
[0076]
Further, in the control system of FIG. 15, some parameters related to the change in the rotation speed of the internal combustion engine 1 (for example, the accelerator opening, the intake air amount, the fuel injection amount) are monitored. The correction amount of the output torque corresponding to these parameters is obtained using a predetermined map. When the vehicle is provided with an automatic transmission, the shift position may be monitored as a parameter. The shift position can be obtained by referring to a shift diagram of the transmission. The correspondence between each parameter and the correction amount may be obtained by a bench conformity test or computer simulation.
[0077]
Then, a value obtained by adding the correction amount of the output torque obtained based on the map to the output torque obtained by the PID control is output as the required torque. The
[0078]
In the above embodiment, the change in the rotational speed of the
[0079]
FIG. 16 illustrates an example of feedforward control of cam output torque when a change in the number of revolutions is predicted based on the accelerator opening. Note that the feedforward torque in the drawing means a correction amount of the output torque specified from the map in the control system of FIG. 15, and is not the required torque itself. In the example of FIG. 16, the feedforward torque is increased by a predetermined amount for a fixed period A in response to a rapid increase in the accelerator opening. Although the rotation speed of the
[0080]
FIG. 17 shows an example of feedforward control of the cam output torque when a change in the number of revolutions is predicted based on the shift position. In this example, when a downshift request is given based on a shift diagram of the transmission, the feedforward torque is increased by a predetermined amount for a certain period B in response to the request. Although the rotation speed of the
[0081]
In addition to the above, the change in the rotation speed may be predicted with reference to various parameters correlated with the change in the rotation speed of the
[0082]
[Third Embodiment]
Next, a third embodiment of the present invention will be described. In the present embodiment, the drive mode of the
[0083]
FIG. 18 shows an example of a switching condition regarding the drive mode of the
[0084]
That is, as shown in FIG. 19, when the maximum lift amount when the
[0085]
Note that the lift amount Lb in the forward / reverse rotation mode may be appropriately changed according to the operating state of the
[0086]
FIG. 20 shows a drive mode determination routine that the
[0087]
In the drive mode determination routine of FIG. 20, the
[0088]
In determining the drive mode, not only the engine speed and the engine load but also various parameters correlated with the operating state of the
[0089]
[Fourth embodiment]
Next, a fourth embodiment of the present invention will be described. In the present embodiment, the
[0090]
In the cleaning control routine of FIG. 21, the
[0091]
As described above, when the
[0092]
The execution timing of the cleaning control routine in FIG. 21 is preferably such that a long-term stoppage of the
[0093]
【The invention's effect】
As described above, according to the valve drive system of the present invention, by providing a plurality of valve drive devices, each of the intake valves or the exhaust valves of the plurality of cylinders is adapted to the operation state of the internal combustion engine. Appropriate operating characteristics can be provided. In particular, when at least one of the operating angle of the intake valve or the exhaust valve, the lift characteristic, or the maximum lift amount is changed by the operation control of the electric motor, a conventional valve driving device that changes only the opening / closing timing is provided. In comparison, the operations of the intake valve and the exhaust valve can be changed more flexibly.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a perspective view showing a main part of a valve drive system according to a first embodiment of the present invention.
FIG. 2 is a perspective view showing a configuration of a valve driving device provided corresponding to one cylinder.
FIG. 3 is a perspective view of the valve drive device from another direction.
FIG. 4 is a perspective view of the valve driving device from still another direction.
FIG. 5 is a perspective view of a valve characteristic adjusting mechanism.
FIG. 6 is a perspective view showing a valve characteristic adjusting mechanism partially cut away.
FIG. 7 is a flowchart illustrating a procedure of a motor drive control routine executed by the control device of FIG. 2;
FIG. 8 is a diagram illustrating an example of a relationship between a crank angle, a valve lift, a cam friction torque, and a motor drive current.
FIG. 9 is a diagram showing an example of a correspondence relationship between a maximum lift amount of a valve, a crank angle, and a cam friction torque.
FIG. 10 is a diagram illustrating an example of a correspondence relationship between a cam angle and a motor angle.
FIG. 11 is a flowchart showing the procedure of a cam position initialization routine executed by the control device of FIG. 2;
FIG. 12 is a diagram illustrating an example of a correlation among a motor speed, a cam friction torque, and a motor output torque.
FIG. 13 is a diagram showing an example in which cam friction torque is negative.
FIG. 14 is a diagram showing a configuration for performing regenerative power generation by a cam driving motor.
FIG. 15 is a block diagram of a control system for predicting a change in the rotation speed of the internal combustion engine and controlling the output torque of the motor in the second embodiment of the present invention.
FIG. 16 is a diagram showing an example of control realized by the control system of FIG.
FIG. 17 is a diagram showing another example of control realized by the control system of FIG.
FIG. 18 is a diagram showing conditions for switching a drive mode of a motor between a forward rotation mode and a forward / reverse rotation mode in a third embodiment of the present invention. .
FIG. 19 is a diagram showing a correspondence relationship between a crank angle, a valve lift, and a motor speed in each of a forward rotation mode and a forward / reverse rotation mode.
FIG. 20 is a diagram showing a drive mode determination routine executed by the control device for setting a drive mode.
FIG. 21 is a flowchart showing a procedure of a cleaning control routine executed by the control device to perform cleaning of the intake valve or the exhaust valve.
FIG. 22 is a diagram illustrating a state in which cleaning is performed by operating an intake valve at a high speed.
FIG. 23 is a diagram showing a comparison between the state of wear of the upper end portion of the stem when cleaning control is performed (a) and the case where cleaning control is not performed (b).
[Explanation of symbols]
1 Internal combustion engine
2 cylinder (cylinder)
4 Intake valve
5 Exhaust valve
10 Valve drive system
11A, 11B Valve drive device
12 Electric motor
13 Power transmission mechanism
15 Gear train
21A, 21B Cam
23 Valve spring
40 motor control device (motor control means, abnormality determination means, cam position specification means, initialization means, valve rotation execution means, lift amount restriction means, mode switching means)
Claims (17)
前記複数の弁駆動装置のそれぞれの前記電動モータの動作を前記内燃機関の運転状態に応じて制御するモータ制御手段と、
を備えていることを特徴とする内燃機関の弁駆動システム。A valve drive system for an internal combustion engine, which is applied to an internal combustion engine having a plurality of cylinders and drives intake or exhaust valves provided in each cylinder, wherein the valves of different cylinders of the internal combustion engine are provided. A plurality of valves each provided with an electric motor as a drive source for generating a rotational motion and a power transmission mechanism for converting the rotational motion of the electric motor into an opening and closing motion of a valve to be driven and transmitting the electric motor; A driving device;
Motor control means for controlling the operation of the electric motor of each of the plurality of valve drive devices according to the operating state of the internal combustion engine,
A valve drive system for an internal combustion engine, comprising:
前記電動モータの回転運動を駆動対象の弁の開閉運動に変換し伝達する動力伝達機構と、
前記内燃機関の運転状態に応じて前記駆動対象の弁の作用角、リフト特性、又は最大リフト量の少なくともいずれか一つの動作特性が変化するように前記電動モータの動作を制御するモータ制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の弁駆動装置。An electric motor as a drive source for generating rotational motion,
A power transmission mechanism that converts the rotational motion of the electric motor into an opening and closing motion of a valve to be driven and transmits the power;
Motor control means for controlling the operation of the electric motor such that at least one operating characteristic of a valve operating angle, a lift characteristic, or a maximum lift amount of the valve to be driven changes according to an operation state of the internal combustion engine. ,
A valve drive device for an internal combustion engine, comprising:
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