JP2004180565A - プロスタグランジンf合成酵素の結晶化と構造、およびその利用 - Google Patents

プロスタグランジンf合成酵素の結晶化と構造、およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置するための医薬および方法を提供すること。
【解決手段】プロスタグランジンF2αシンターゼの立体構造を解明したことにより、その構造データからプロスタグランジンF2αシンターゼのアンタゴニストまたはアゴニストを同定し、そのようなアンタゴニストまたはアゴニストを含む組成物を製造することにより上記課題を解決した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼに関する。より詳細には、プロスタグランジンF2αシンターゼの立体構造、その構造に関する情報、その情報の利用、それにより得られるプロスタグランジンF2αシンターゼの調節剤およびプロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害の処置もしくは予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロスタグランジンF2α(PGF2α)は、種々の生理学的プロセスおよび病理学的プロセスの強力なメディエイタである(非特許文献1〜4を参照)。これまでに、PGF2αは、肝臓の実質細胞から産生される糖の代謝制御や胆汁酸の分泌および血流量の調節などの実質・非実質細胞間のメディエイタとして機能することが考えられている(非特許文献5を参照)。またPGF2αは、血管緊張状態、流産、卵巣機能不全、子宮筋肉および肺動脈の収縮などを調節し(非特許文献6〜10を参照)、そして脂肪分解ホルモンとして、発情周期の間および分娩前の脂肪分解を引き起こすことも知られている(非特許文献11を参照)。さらにPGF2αは、原生寄生生物であるAmoeba proteusにおいて、液胞形成を引き起こすことによって食作用の間のシグナルを連結する役割を果たし得る(非特許文献12を参照)。現在では、PGFは、その子宮筋収縮作用に基づいて、陣痛促進剤として広く臨床応用されている。
【0003】
PGFは、以下の3つの経路により合成されることが公知であり、この3つの経路はいずれも、補因子を必要とする還元反応である:(1)PGH(プロスタノイド生合成に共通した基質であるアラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ代謝産物)からPGF2αへの経路(PGH9,11−エンドペルオキシドレダクターゼ);(2)PGEからPGF2αへの経路(PGE9−ケトレダクターゼ);および(3)PGDから9α,11β−PGFへの経路(PGD11−ケトレダクターゼ)(非特許文献13〜15を参照)。PGF2αは、最も早く発見されたプロスタノイドの1つであり、そしてその生理学的機能および生合成経路を解明しようとかなりの試みがなされてきた。しかし、PGF2αシンターゼの構造およびPGF2α合成の基本的な触媒機構は、依然として十分には解明されていない。これまでに、上記の3つのPGF合成経路を触媒するいくつかの酵素が単離されている。上記(1)の合成経路を触媒する酵素の存在は古くから示唆されていたが、単離された酵素としての報告は近年になってからである。1985年に、上記(3)の経路を触媒する酵素(ウシ肺由来PGD11−ケトレダクターゼ)が同時に上記(1)の経路を触媒することが報告されたのに続いて、1997年には、PGDの還元は触媒し得ないPGH9,11−エンドペルオキシドレダクターゼがヒツジ精嚢腺ミクロソームから単離された。上記(2)の合成経路または上記(3)の合成経路を触媒する酵素も、種々の組織から単離されており、その精製、一次アミノ酸配列決定、PGF合成を触媒する活性の検定などについて報告されている(非特許文献15を参照)。しかしこれまで、PGFシンターゼの三次元立体構造を解析して原子座標を明らかにし、その活性部位ポケットの位置および構造を決定したという報告はない。
【0004】
Trypanosoma bruceiは、ヒトにおけるアフリカ睡眠病および動物におけるナガナの病因である。本発明者らの研究室での寄生性原生動物におけるアラキドン酸(AA)代謝に関する初期の研究において、本発明者らは、アルド/ケトレダクターゼ(AKR)スーパーファミリーの5A2サブファミリーのメンバーとして、TbPGFSと称されるT.brucei PGF2αシンターゼ(EC 1.1.1.188)を同定した(非特許文献16〜17を参照)。AKRは、哺乳動物、両生類、植物、酵母、細菌および原生動物に広く分布した単量体オキシドレダクターゼを表す。AKRは、正規のロスマンフォールドモチーフを有さずに、NAD(P)(H)に結合する(非特許文献18〜21を参照)。AKRは、広範でありそして時折重複する基質特異性を示し、未だ完全には解明されていない触媒機構によって、PG、ステロイドホルモン、モノサッカリド、イソフラビノイド、脂肪族性および芳香族性のアルデヒド、ならびに多環式芳香族性炭化水素のような基質の酸化/還元を触媒することが公知である(非特許文献22〜24を参照)。T.bruceiのPGF2αシンターゼは、9,11−エンドペルオキシドPGHからPGF2αへのNADPH(NADPH=ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)依存性還元を触媒する。T.bruceiがプロスタグランジン(PG)を産生する理由は、未だ解明されていない。しかし、この生物が、この生物学的に活性な分子であるPGF2αを合成する酵素を有するという事実は、T.bruceiが、PGF2αの関連する疾患の病原において役割を果たし得ることを示唆する。従って、TbPGFS構造の解明は興味深い。なぜなら、この構造の解明は、このTbPGFS酵素の生理学的役割を研究するために必要とされる特異的インヒビターの設計に有用であり得るからである。また、このTbPGFS酵素の特異的インヒビターは、PGF2αが関与する疾患または障害の予防薬または治療薬として有望である。
【0005】
【非特許文献1】
Bygdeman,M.,Roth−Brandel,U.and Wiqvist,N.(1970)Int.J.Gynaec.Obstet.,8,162.
【非特許文献2】
Davies,P.,Bailey,P.J.,Goldenberg,M.M.and Ford−Hutchinson,A.W.(1984)Annu.Rev.Immunol.,2,335−357.
【非特許文献3】
Horton,E.W.and Poyser,N.L.(1976)Physiol.Rev.,56,595−651.
【非特許文献4】
Narumiya,S.,Sugimoto,Y.and Ushikubi,F.(1999)Physiol.Rev.,79,1193−1226.
【非特許文献5】
A.Athari,Jungermann,K.,(1989)Biochem.Biophys.Res.Commun.163,1235−1245
【非特許文献6】
Samuelsson,B.(1979−80)Harvey Lect.,75,1−40
【非特許文献7】
Mathe’,A.A.,Hedqvist,P.,Standberg,K.and Leslie,C.A.(1977)N.Engl.J.Med.,296,850−855.
【非特許文献8】
Oliw,E.,Granstroem,E.and Anggard,E.(1983)Pace−Asciak,C.and Granstroem,E.(ed.),Prostaglandins and related substances.Elsevier Science,Amsterdam,pp.11−19.
【非特許文献9】
Glew,R.H.(1992)Prostaglandins and thromboxanes.In Devlin,T.M.(ed),Wiley−Liss,Inc.,New York,pp.461−466
【非特許文献10】
Dubois,R.N.,Abramson,S.B.,Crofford,L.,Gupta,R.A.,Simon,L.S.,Van De Putte,L.B.and Lipsky,P.E.(1998)FASEB J.,12,1063−1073
【非特許文献11】
McCracken,J.A.,Carlson,J.C.,Glew,M.E.,Goding,J.R.,Baird,D.T.,Green,K.and Samuelsson,B.(1972)Nat.New Biol.,238,129−134
【非特許文献12】
Prusch,R.D.,Goette,S.M.,Haberman,P.(1989)Cell Tissue Res.,255,553−557
【非特許文献13】
Yamamoto,S.(1983).Pace−Asciak,C.andGranstroem,E.(ed.),Prostaglandins and related substances.Elsevier Science,Amsterdam,pp.171−202
【非特許文献14】
Wintergalen,N.,Thole,H.H.,Gala,H.J.and Schlegel,W.(1995)Eur.J.Biochem.,234,264−270
【非特許文献15】
Watanabe,K.,(2000)Jikken Igaku Vol.18,No.2(Extra Issue)44−52
【非特許文献16】
Kubata,B.K.,Duszenko,M.,Kabututu,Z.,Rawer,M.,Szallies,A.,Fujimori,K.,Inui,T.,Nozaki,T.,Yamashita,K.,Horii,T.,Urade,Y.and Hayaishi,O.(2000)J.Exp.Med.,192,1327−1337
【非特許文献17】
Jez,J.M.and Penning,T.M.(2001)Chem.Biol.Interact.,130−132,499−525
【非特許文献18】
Wilson,D.K.,Bohren,K.M.,Gabbay,K.H.and Quiocho,F.A.(1992)Science,257,81−84
【非特許文献19】
Hoog,S.S.,Pawlowski,J.E.,Alzari,P.M.,Penning,T.M.and Lewis,M.(1994)Proc.Natl Acad.Sci.USA,91,2517−2521
【非特許文献20】
El−Kabbani,O.,Judge,K.,Ginell,S.L.,Myles,D.A.,DeLucas,L.J.and Flynn,T.G.(1995)Nat.Struct.Biol.,2,687−692
【非特許文献21】
Wilson,D.K.,Nakano,T.,Petrash,J.M.and Quiocho,F.A.(1995)Biochemistry,34,14323−14330
【非特許文献22】
Welle,R.,Schroder,G.,Schiltz,E.,Grisebach,H.and Schroder,J.(1991)Eur.J.Biochem.,196,423−430.
【非特許文献23】
Petrash,J.M.,Tarle,I.,Wilson,D.K.and Quiocho,F.A.(1994)Diabetes,43,955−959
【非特許文献24】
Penning,T.M.,Pawlowski,J.E.,Schlegel,B.P.,Jez,J.M.,Lin,H.K.,Hoog,S.S.,Bennett,M.J.and Lewis,M.(1996)Steroids,61,508−523
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置するための医薬および方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、プロスタグランジンF2αシンターゼの立体構造を解明したことにより、その構造データからプロスタグランジンF2αシンターゼのアンタゴニストまたはアゴニストを同定し、そのようなアンタゴニストまたはアゴニストを含む組成物を製造することによって、上記課題を解決した。
【0008】
トリパノソーマ由来のプロスタグランジンF2αシンターゼ(TbPGFS)の結晶化および三次元立体構造解析により、この構造を利用してプロスタグランジンF2αシンターゼの相同体または活性調節剤(例えば、インヒビター)などの候補リード化合物をin silicoで検索することが容易となり、より正確なものを決定することができる。プロスタグランジンF2αシンターゼの立体構造は本発明によりはじめて開示された。プロスタグランジンF2αシンターゼの種間にわたる類似性などから、他の種(ヒト、ウシ、ヒツジ、ラット、マウスなどの哺乳動物)のプロスタグランジンF2αシンターゼの相同体または活性調節剤(例えば、インヒビター)などの候補リード化合物をin silicoで検索することが容易となり、より正確なものを決定することができるようになった。
【0009】
この構造解析データを利用したin silicoでの候補リード化合物の検索方法は、数十万という化合物の中からランダムスクリーニングによってインヒビターの候補リード化合物を選択し、その誘導化およびin vivoでの実験を繰り返し、より強力なインヒビターを開発するという従来の方法を飛躍的に簡便化し、かつ、より確実にする。候補リード化合物を改良開発できた化合物は、PGF2αが関与する疾患または障害の予防薬または治療薬として使用され得る。特に、本発明の方法により得られた候補リード化合物を改良開発できた化合物は、アフリカ睡眠病の病態の1つである家畜の流産の防止薬として利用できるほか、ヒトに対しても流産防止薬として利用され得る。
【0010】
従って、本発明は以下を提供する。
【0011】
(1) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標のデータで生成される、立体構造コンピュータモデル。
【0012】
(2) 上記原子座標は、図9に記載のプロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体である、項目1に記載の立体構造コンピューターモデル。
【0013】
(3) 上記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、項目1に記載の立体構造コンピューターモデル。
【0014】
(4) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標を含むデータアレイであって、ここで上記データアレイは、三次元分子モデリングアルゴリズムを使用することにより三次元構造を提示し得る、データアレイ。
【0015】
(5) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその相同体もしくは改変体である、項目4に記載のデータアレイ。
【0016】
(6) 上記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、項目4に記載のデータアレイ。
【0017】
(7) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標をコードした、コンピューター読み取り可能な記録媒体。
【0018】
(8) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその相同体もしくは改変体である、項目7に記載のコンピューター読み取り可能な記録媒体。
【0019】
(9) 上記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、項目7に記載のコンピューター読み取り可能な記録媒体。
【0020】
(10) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の立体構造解析方法を提供するためのプログラムであって、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標をコードしたデータ;および
B)三次元立体構造の解析をコンピュータに実行させるアプリケーションのコード、
を含む、プログラム。
【0021】
(11) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその相同体もしくは改変体である、項目10に記載のプログラム。
【0022】
(12) 上記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、項目10に記載のプログラム。
【0023】
(13) 上記アプリケーションは、
A)上記原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記三次元分子モデルと比較する工程をコンピュータに実行させる、項目10に記載のプログラム。
【0024】
(14) 図9に記載の原子座標によって定義される構造を有する、単離および精製された、タンパク質またはその相同体もしくは改変体。
【0025】
(15) 上記タンパク質は、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を含む、項目14に記載のタンパク質またはその相同体もしくは改変体。
【0026】
(16) 上記タンパク質は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を有する、項目14に記載のタンパク質またはその相同体もしくは改変体。
【0027】
(17) 正方晶系の空間群P42、および配列番号1に示されるアミノ酸配列、または上記アミノ酸配列に1以上の置換、付加もしくは欠失を含む配列、もしくは上記アミノ酸配列と少なくとも約30%以上の相同性を有する、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の結晶。
【0028】
(18) 上記結晶は、NADPHと複合体化されている、項目17に記載の結晶。
【0029】
(19) 上記結晶は、a=112.3±0.3Å、b=112.3±0.3Å、c=140.0±0.7Åの単位格子定数を有する、項目17に記載の結晶。
【0030】
(20) 上記結晶は、非対称単位中に2分子を有する、項目17に記載の結晶。
【0031】
(21) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性ポケットを含む、タンパク質。
【0032】
(22) 上記活性ポケットは、NADPHと複合体化されたものである、項目21に記載のタンパク質。
【0033】
(23) 上記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基47、52、77、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、項目21に記載のタンパク質。
【0034】
(24) 上記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基47、49、52、77、79、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、項目21に記載のタンパク質。
【0035】
(25) 上記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、項目21に記載のタンパク質。
【0036】
(26) 上記活性部位ポケットは、スルフェートアニオンを含む、項目21に記載のタンパク質。
【0037】
(27) 上記タンパク質は、PGH還元活性を有する、項目21に記載のタンパク質。
【0038】
(28) 項目21に記載のタンパク質のアミノ酸配列をコードする、核酸分子。
【0039】
(29) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法であって、上記方法は、候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程を包含する、方法。
【0040】
(30) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、項目29に記載の方法。
【0041】
(31) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、項目29に記載の方法。
【0042】
(32) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法であって、上記方法は、以下の工程:
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程
を包含する、方法。
【0043】
(33) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、項目32に記載の方法。
【0044】
(34) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、項目32に記載の方法。
【0045】
(35) 項目29または32に記載の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ相同体。
【0046】
(36) プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法であって、上記方法は、以下の工程:
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
を包含する、方法。
【0047】
(37) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、項目36に記載の方法。
【0048】
(38) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、項目36に記載の方法。
【0049】
(39) 上記改変体は、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が亢進されている、項目36に記載の方法。
【0050】
(40) 上記改変体は、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が低減されている、項目36に記載の方法。
【0051】
(41) 項目36に記載の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ改変体。
【0052】
(42) 項目29もしくは32に記載の方法によって同定されたプロスタグランジンF2αシンターゼ相同体のアミノ酸配列、または項目36に記載の方法によって同定されたプロスタグランジンF2αシンターゼ改変体のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
【0053】
(43) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法であって、上記方法は、以下の工程:
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
B)上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
を包含する、方法。
【0054】
(44) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、項目43に記載の方法。
【0055】
(45) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、項目43に記載の方法。
【0056】
(46) 上記相同体または改変体は、項目29、32または36に記載の方法によって得られたものである、項目41に記載の方法。
【0057】
(47) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、項目43に記載の方法。
【0058】
(48) 上記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基47、52、77、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、項目43に記載の方法。
【0059】
(49) 上記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基47、49、52、77、79、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、項目43に記載の方法。
【0060】
(50) 上記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、項目43に記載の方法。
【0061】
(51) 上記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるスルフェートアニオンまたはそれに対応するスルフェートアニオンの原子座標を含む、項目43に記載の方法。
【0062】
(52) 候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法であって、上記方法は、以下の工程:
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
B)上記三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、上記三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
を包含する、方法。
【0063】
(53) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、項目52に記載の方法。
【0064】
(54) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、項目52に記載の方法。
【0065】
(55) 上記相同体または改変体は、項目29、32または36に記載の方法によって得られたものである、項目52に記載の方法。
【0066】
(56) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、項目52に記載の方法。
【0067】
(57) 上記候補化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、項目52に記載の方法。
【0068】
(58) 上記候補化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を活性化する活性を有する、項目52に記載の方法。
【0069】
(59) 項目52に記載の方法により同定された、化合物。
【0070】
(60) 項目52に記載の方法により同定された化合物を有効成分として含む、医薬組成物。
【0071】
(61) 項目52に記載の方法により同定された化合物を有効成分として含む、プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための医薬組成物。
【0072】
(62) 項目52に記載の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベース。
【0073】
(63) 項目52に記載の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベースを含む記録媒体。
【0074】
(64) 項目52に記載の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベースを含む伝送媒体。
【0075】
(65) 以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルであって、
式I
【0076】
【化6】
Figure 2004180565
【0077】
ここで、イミダゾリウムイオンはプロトン供与体として、ペルオキシド基の1つの酸素原子をプロトン化し、上記ペルオキシド基の他方の酸素原子は、ニコチンアミド環から1つのプロトンおよび2つの電子を受容することにより還元され、Rは任意の基を表し、ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は任意であり、原子間距離は各原子の中心間の距離を示す、ファルマコフォアモデル。
【0078】
(66) 上記式において、上記ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は、5.14±0.25Åである、項目65に記載のファルマコフォアモデル。
【0079】
(67) 項目65に記載のファルマコフォアモデルの、医薬候補分子のスクリーニングにおける使用。
【0080】
(68) 項目65に記載のファルマコフォアモデルを使用したスクリーニングによって同定された医薬候補分子。
【0081】
(69) プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、項目68に記載の医薬候補分子。
【0082】
(70) 項目68または69に記載の医薬候補分子を含む、医薬組成物。
【0083】
(71) 以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルであって、
式II
【0084】
【化7】
Figure 2004180565
【0085】
ここで、Oは酸素原子を表し、Rは任意の基を表し、ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は任意であり、原子間距離は各原子の中心間の距離を示す、ファルマコフォアモデル。
【0086】
(72) 上記式において、上記ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は、5.14±0.25Åである、項目71に記載のファルマコフォアモデル。
【0087】
(73) 項目71に記載のファルマコフォアモデルの、医薬候補分子のスクリーニングにおける使用。
【0088】
(74) 項目71に記載のファルマコフォアモデルを使用したスクリーニングによって同定された医薬候補分子。
【0089】
(75) プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、項目74に記載の医薬候補分子。
【0090】
(76) 項目74または75に記載の医薬候補分子を含む、医薬組成物。
【0091】
(77) 以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルであって、
式III
【0092】
【化8】
Figure 2004180565
【0093】
ここで、原子間距離は各原子の中心間の距離を示し、A〜Eは任意の原子であるが、ただし、AおよびBが両方ともが酸素原子である場合を除く、ファルマコフォアモデル。
【0094】
(78) 上記A〜Eの少なくとも1つは非反応性の原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0095】
(79) 上記A〜Eの少なくとも1つは炭素原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0096】
(80) 上記AまたはBの少なくとも1つは非反応性の原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0097】
(81) 上記Aは、非反応性の原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0098】
(82) 上記Bは、非反応性の原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0099】
(83) 上記AまたはBの少なくとも1つは炭素原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0100】
(84) 上記Aは、炭素原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0101】
(85) 上記Bは、炭素原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0102】
(86) 上記AおよびBのいずれか一方は電子供与体原子または水素結合をし得る原子であり、他方は非反応性の原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0103】
(87) 上記電子供与体原子または水素結合をし得る原子は酸素原子である、項目86に記載のファルマコフォアモデル。
【0104】
(88) 上記非反応性の原子は炭素原子である、項目84に記載のファルマコフォアモデル。
【0105】
(89) 上記C、DおよびEは炭素原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0106】
(90) 上記Aは炭素原子であり、上記Bは酸素原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0107】
(91) 上記Aは酸素原子であり、上記Bは炭素原子である、項目77に記載のファルマコフォアモデル。
【0108】
(92) 項目77に記載のファルマコフォアモデルによって定義される、化合物またはその塩。
【0109】
(93) 以下の式
【0110】
【化9】(9,11−ジデオキシ−9α,11α−メタノエポキシプロスタグ
Figure 2004180565
【0111】
ランジンF2α
または
【0112】
【化10】(9,11−ジデオキシ−9α,11α−エポキシメタノプロスタ
Figure 2004180565
【0113】
グランジンF2α
で示される構造を有する、項目92に記載の化合物またはその塩。
【0114】
(94) 項目92に記載の化合物またはその塩を含む、医薬組成物。
【0115】
(95) 項目77に記載のファルマコフォアモデルの、医薬候補分子のスクリーニングにおける使用。
【0116】
(96) 項目77に記載のファルマコフォアモデルを使用したスクリーニングによって同定された医薬候補分子。
【0117】
(97) プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、項目96に記載の医薬候補分子。
【0118】
(98) 項目96または97に記載の医薬候補分子を含む、医薬組成物。
【0119】
(99) プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための医薬組成物を調製する方法であって、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
B)上記三次元分子モデルと、上記医薬組成物に含まれるべき候補化合物のライブラリーとの相互作用を評価する工程;
C)上記候補化合物のうち、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する作用を有する化合物種を選択する工程;および
D)上記化合物種と、薬学的に受容可能なキャリアとを混合する工程、
を包含する、方法。
【0120】
(100) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、項目99に記載の方法。
【0121】
(101) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、項目99に記載の方法。
【0122】
(102) 上記相同体または改変体は、項目29、32または36に記載の方法によって得られたものである、項目99に記載の方法。
【0123】
(103) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、項目99に記載の方法。
【0124】
(104) 上記化合物種を合成して大量に上記化合物種を製造する工程、をさらに包含する、項目99に記載の方法。
【0125】
(105) 上記化合物種について、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性に関する生物学的試験を行う工程をさらに包含する、項目99に記載の方法。
【0126】
(106) プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための方法であって、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
B)上記三次元分子モデルに基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する手段を同定する工程;および
C)上記調節手段を上記疾患または障害に罹患するかまたはその可能性のある被検体に投与する工程、
を包含する、方法。
【0127】
(107) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、項目106に記載の方法。
【0128】
(108) 上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、項目106に記載の方法。
【0129】
(109) 上記相同体または改変体は、項目29、32または36に記載の方法によって得られたものである、項目106に記載の方法。
【0130】
(110) 上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、項目104に記載の方法。
【0131】
(111) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、上記方法は、
A)候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程、
を包含する、プログラム。
【0132】
(112) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、上記方法は、
A)候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程、
を包含する、記録媒体。
【0133】
(113) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法を実行するコンピュータであって、上記方法は、
A)候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する手段、
を包含する、コンピュータ。
【0134】
(114) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程、
を包含する、プログラム。
【0135】
(115) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程、
を包含する、記録媒体。
【0136】
(116) プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法を実行するコンピュータであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程、
を包含する、コンピュータ。
【0137】
(117) プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
を包含する、プログラム。
【0138】
(118) プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
を包含する、記録媒体。
【0139】
(119) プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法を実行するコンピュータであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
B)候補化合物の三次元分子モデルを、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
を包含する、コンピュータ。
【0140】
(120) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
B)上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
を包含する、プログラム。
【0141】
(121) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
B)上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
を包含する、記録媒体。
【0142】
(122) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法を実行するコンピュータであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
B)上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
を包含する、コンピュータ。
【0143】
(123) 候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
B)上記三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、上記三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
を包含する、プログラム。
【0144】
(124) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
B)上記三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、上記三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
を包含する、記録媒体。
【0145】
(125) プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法を実行するコンピュータであって、上記方法は、
A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
B)上記三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、上記三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
を包含する、コンピュータ。
【0146】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0147】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0148】
本明細書において、「プロスタグランジン」または「PG」とは、五員環をもつ脂肪族のC20モノカルボン酸であるプロスタン酸を基本構造とし,これに水酸基、二重結合、ケト基などの置換基または改変が導入されてできる化合物をいう。
【0149】
本明細書において「プロスタグランジンF2α」とは、以下の構造式
【0150】
【化11】
Figure 2004180565
【0151】
を有する化合物およびその等価物をいう。
【0152】
本明細書において、「プロスタグランジンF2αシンターゼ」とは、上記プロスタグランジンF2αを基質たる物質(例えば、PGD、PGH、PGEなど)から合成する酵素をいう。本明細書では、特にPGHを基質とするものをさすことがある。本明細書においてプロスタグランジンF2αシンターゼはどのような生物由来のものでもよく、脊椎動物または無脊椎動物由来のものが含まれる。1つの好ましい実施形態では、プロスタグランジンF2αシンターゼは、Trypanosoma由来であるが、それに限定されない。したがって、本発明の開示に従ってコンピュータでモデリング可能である限り、他の動物(ヒト、ウシ、ヒツジ、マウス、ラットなどの哺乳動物など)のプロスタグランジンF2αシンターゼもまた、本発明において使用され得る。したがって、別の実施形態では、その生物は、脊椎動物(例えば、哺乳動物、爬虫類、両生類、魚類、鳥類など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジなどの家畜、齧歯類(マウス、ラットなど)、霊長類(ヒトなど)など)であり得る。
【0153】
本明細書において、「プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害」とは、プロスタグランジンF2αシンターゼの内的(例えば、ヒトが宿主であれば、ヒト由来のもの)または外的(例えば、ヒトが宿主であって、その寄生体がトリパノゾーマである場合はそのトリパノゾーマ由来のもの)な要因による異常なレベルまたは性質、あるいはプロスタグランジンF2αの体内における異常なレベルよって引き起こされる疾患または障害をいう。そのような疾患または障害としては、例えば、アフリカ睡眠病、流産、気管支収縮に関する疾患、子宮筋収縮作用、消化管蠕動亢進、眼圧異常(緑内障など)などが挙げられるがそれらに限定されない。したがって、本発明では、プロスタグランジンF2αシンターゼ自体の活性が通常であっても、プロスタグランジンF2αのレベルが異常である場合は、プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害の範囲内にある。
【0154】
本明細書において「プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する」とは、あるプロスタグランジンF2αシンターゼについて使用されるとき、通常そのシンターゼが有する活性を通常有しない活性に変更することをいう。従って、調節には、シンターゼ活性の増加(亢進)または減少が含まれる。
【0155】
本明細書において「アルド/ケトレダクターゼ」または「AKR」とは、アルデヒド基またはケトン基を還元する酵素をいう。
【0156】
本明細書において「予防」(prophylaxisまたはprevention)とは、ある疾患または障害について、そのような状態が引き起こされる前に、そのような状態が起こらないように処置することをいう。
【0157】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
【0158】
本明細書において「候補化合物」とは、目的とする疾患または障害を処置するために使用され得る化合物の候補をいう。したがって、ある化合物は、目的とする疾患または障害について効果があると予測される場合は、候補化合物と呼ばれ得る。
【0159】
本明細書において「化合物種」とは、ある化合物の集合において、特定の目的とする活性を有するなど、所望の性質を有する1種の化合物についていう。例えば、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する化合物の集合において、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する化合物が特定される場合、そのような化合物は、化合物種と称され得る。
【0160】
本明細書において「ライブラリー」とは、スクリーニングをするための化合物などの一定の集合をいう。ライブラリーは、同様の性質を有する化合物の集合であっても、ランダムな化合物の集合であってもよい。好ましくは、同様の性質を有すると予測される化合物の集合が使用されるが、それに限定されない。
【0161】
本明細書において「相互作用」とは、2以上の分子が存在する場合、ある分子と別の分子との間の作用をいう。そのような相互作用としては、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、レセプター−リガンド相互作用、静電的相互作用およびホスト−ゲスト相互作用が挙げられるがそれらに限定されない。本発明のスクリーニングにおいては、特に水素結合が用いられ得る。
【0162】
本明細書において「評価」とは、スクリーニングにおいて用いられるとき、ある指標(例えば、医薬としての活性)に関して、候補化合物がそのような指標の要件を満たすかどうか決定することをいう。そのような評価は、当該分野において公知の方法を用いて行うことができ、例えば、プロスタグランジンF2αシンターゼの場合は、その基質となるPGHなどを用いて、そのPGF合成活性が変化したかどうかを見ることによって行うことができる。
【0163】
本明細書においてタンパク質の「立体構造(コンピュータ)モデル」とは、コンピュータを用いて表現された、ある化合物の立体構造のモデルをいう。そのようなモデルは、当該分野において公知のコンピュータプログラムを用いて表示することができ、そのようなプログラムとしては、例えば、CCP4でサポートされるプログラム、DENZO(HKL2000)、MolScript(Avatar Software AB)、Raster3D、PyMOL(DeLano Scientific)、TURBO−FRODO(AFMB−CNRS)、O(A.Jones、Uppsala Universitet、Sweden)、ImageMagic(John Chrysty)、RasMol(University of Massachusetts, AmherstMA USA)などがあるがそれらに限定されない。そのようなプログラムは、例えば、図9に示されるような原子座標のデータを用いてモデルを生成することができる。
【0164】
本明細書において「データアレイ」とは、原子座標を示すもののような一連のデータを示す。
【0165】
本明細書において「記録媒体」は、データを記録することができる限り、どのような媒体でも用いることができる。そのような媒体としては、例えば、MO、CD−R、CD−RW、CD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−ROM、メモリーカードなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0166】
本明細書において「伝送媒体」は、データを伝送することができる限り、どのような媒体でも用いることができる。そのような媒体としては、例えば、インターネット、イントラネット、LAN、WANなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0167】
本明細書において「アプリケーション」とは、コンピュータを利用するための, 個々の使用目的に応じたプログラムをいう。
【0168】
本明細書において「ファルマコフォア」とは、原子と官能基との組み合わせ(およびそれらの三次元的な位置)をいい、これを用いることによって薬物が特定の方式で標的タンパク質と相互作用できるようにし、その薬理学的活性を示す。薬物分子の立体(物理的)および電場によって形成される三次元の「機能的形態」であり、これにより分子の薬理学的活性が生じる。医薬のリード化合物、および特定の標的に対するリード化合物の測定可能な活性を研究する様々なアプローチ法が開発され、一連の構造活性の関係からファルマコフォアが設計され得る。
【0169】
本明細書において「生物学的試験」とは、実際の生体反応を用いてある化合物がある活性を有するかどうかを判定することをいう。生物学的試験は、インビトロおよびin vivoでの試験を包含する。したがって、生物学的試験は、in silicoとは対立する概念である。
【0170】
本明細書において「アンタゴニスト」とは、ある生体作用物質(またはアゴニスト)のレセプターへの結合に拮抗的に働らき,それ自身はその受容体を介した生理作用を現わさない物質をいう。アンタゴニストは、インヒビターの範疇に入る。
【0171】
本明細書において「インヒビター」とは、ある生体作用物質の作用を阻害する分子をいう。
【0172】
本明細書において「アゴニスト」とは、ある生体作用物質のレセプターに結合し、その物質のもつ作用と同じまたは類似の作用を現わす物質をいう。
【0173】
本明細書において「結合ポケット」とは、その形状の結果として、他の化学物質または化合物と会合する、分子または分子複合体の領域をいう。
【0174】
本明細書において「活性ポケット」とは、あるタンパク質について言及されるとき、その基質または補酵素と相互作用することができる部位を含む、分子または分子複合体の領域をいう。
【0175】
本明細書において「NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ活性部位結合ポケット」は、その形状が、一般的なリガンドと結合するために、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位結合ポケットの全てまたは任意の部分と類似する、分子もしくは分子複合体の一部を意味する。この形状の共通性は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼにおける結合ポケットを構成するアミノ酸の骨格原子の構造座標(図9中に記載される)からの例えば1.5Å以下の根二乗平均偏差により定義される。この計算を得る方法は、本明細書の別の場所に記載されるとおりである。
【0176】
NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの「活性部位結合ポケット」または「活性部位」は、9,11−エンドペルオキシドPGHからPGF2αへのNADPH依存性還元を触媒する、プロスタグランジンF2αシンターゼ酵素表面上の領域を意味する。NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの結晶構造の解明において、アミノ酸残基47、52、77、および110が、基質(9,11−エンドペルオキシドPGH)と相互作用するのに十分に近く配置されていることが測定された。より詳細には、アミノ酸残基47、49、52、77、79、および110が、基質(9,11−エンドペルオキシドPGH)と相互作用するのに十分に近く配置されていることが測定された。さらに詳細には、アミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187が、基質(9,11−エンドペルオキシドPGH)と相互作用するのに十分に近く配置されていることを測定された。これらの各アミノ酸は、図9に示されるような構造座標のセットにより定義される。
【0177】
本明細書において「構造座標」は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその複合体の原子(散乱中心)によりX線の単色ビームの回折上で得られるパターンに関する数式に由来する直交座標をいう。回折データを使用して結晶の反復単位の電子密度マップを計算する。次いで、電子密度マップを使用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの個々の原子の位置を確定する。
【0178】
プロスタグランジンF2αシンターゼなどの酵素または酵素複合体またはその一部についての構造座標のセットが、3次元における形状を定義する相対的な点のセットであることを当業者は容易に理解する。従って、座標の全体の異なるセットが類似のまたは同一の形状を定義することが可能である、さらに、個々の座標におけるわずかな変化は、全体の形状においてはほとんど影響はない。結合ポケットに関しては、これらの変化は、これらのポケットに会合し得るリガンドの性質を顕著に変化させるとは予測されない。
【0179】
本明細書において「会合する」は、化学物質または化合物、もしくはその一部と、プロスタグランジンF2αシンターゼ分子またはその一部との間の近接の条件をいう。会合は、非共有結合であり得る(ここで、結合点は、エネルギー的に水素結合またはファンデルワールスもしくは静電気的相互作用により好都合である)か、または共有結合であり得る。
【0180】
上記の座標における変化は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ構造座標の数学的操作によって生成され得る。例えば、図9に示される構造座標は、構造座標の結晶学的な置換、構造座標の分割、構造座標のセットへの整数的加算または減算、もしくは任意の上記の組合せにより操作され得る。
【0181】
(遺伝子工学の一般的説明)
遺伝子工学、分子生物学および組換えDNA技術は、例えば、Maniatis,T.et al.(1982).Molecular Cloning :A Laboratory Manual,Cold Spring Harborならびにその第二版(1987)およびその第三版(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Sambrook,J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols inMolecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium ofMethods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0182】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。オリゴヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよいが、好ましくは一本鎖が使用されるが、本発明では一本鎖に限定されるわけではない。従って、本明細書においてオリゴヌクレオチドの「誘導体」とは、上述のようなヌクレオチドの誘導体を含むオリゴヌクレオチドをいう。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0183】
用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、cDNA、mRNAの概念を包含する。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0184】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0185】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する構造遺伝子といい、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、特定の状況において、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。
【0186】
本明細書において遺伝子(例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドなど)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0187】
本明細書では配列の同一性、相同性および類似性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0188】
本発明のポリペプチドまたは核酸はまた、本明細書において具体的に野生型のアミノ酸配列または核酸配列が記載された配列(例えば、配列番号1および2など)に対して同一ではないが相同性のあるものものまた使用され得る。そのような野生型のポリペプチドまたは核酸に対して相同性を有する本発明のポリペプチドまたは核酸分子としては、核酸の場合、例えば、Blastのデフォルトパラメータを用いて比較した場合に、比較対象の配列に対して、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%の同一性または類似性を有する核酸配列を含む核酸分子、またはポリペプチドの場合少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられるが挙げられるがそれらに限定されない。
【0189】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがin vivoで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
【0190】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0191】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。そのような略号は、以下のとおりである。
【0192】
以下の略号は、本出願を通して用いられる:
A=Ala=アラニン T=Thr=トレオニン
V=Val=バリン C=Cys=システイン
L=Leu=ロイシン Y=Tyr=チロシン
I=Ile=イソロイシン N=Asn=アスパラギン
P=Pro=プロリン Q=Gln=グルタミン
F=Phe=フェニルアラニン D=Asp=アスパラギン酸
W=Trp=トリプトファン E=Glu=グルタミン酸
M=Met=メチオニン K=Lys=リジン
G=Gly=グリシン R=Arg=アルギニン
S=Ser=セリン H=His=ヒスチジン
ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0193】
本明細書において、「対応する」アミノ酸(または残基)とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸(または残基)と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸(または残基)をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、配列番号1に示されるTrypanosoma brucei由来のPGF2αシンターゼのアミノ酸配列のH110に対応するアミノ酸配列は、図1に示されるように当業者に明らかである。また、そのような対応するアミノ酸は、立体構造解析をすることによって決定することもできる。そのような立体構造解析の技術は当業者に周知である。また、そのような対応するアミノ酸は、基質などの対象のポリペプチドと相互作用する物質との複合体を解析することによっても同定することができる。そのような同定方法もまた、当業者には周知であり、そのような方法の例示はLaube,H.et al.(1992)Biochemistry 31,2735−2748にも記載されている。
【0194】
本明細書において、「対応する」遺伝子(例えば、PGF2αシンターゼ遺伝子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。
【0195】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、それぞれ1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。
【0197】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が酵素(例えば、PGF2αシンターゼ)である場合、その生物学的活性は、その酵素活性(例えば、PGF2αシンターゼ活性)を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。また、PGF2αシンターゼ活性が生物学的活性である場合は、そのような活性は、本明細書の記載にしたがって測定することができる。
【0198】
あるタンパク質におけるあるアミノ酸は、本発明において目的とする改変を導入すること(例えば、PGH2との相互作用領域における置換)に加え、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域またはエピトープ部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0199】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0200】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることは、当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0201】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0202】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものまたはその立体構造データ(または原子座標)をいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。原子座標の改変体の場合、一次配列が同じであっても、異なる原子座標を採る場合、このような改変体と呼ばれ得る。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体または相同体(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかであり、当該分野において公知のものをDDBJなどのデータベースから情報を取得することもできる。本明細書では、Trypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼが特に開示されているが、本発明ではこのような配列には限定されず、ヒトなどの哺乳動物の同様のシンターゼもまた本発明の範囲内にある。
【0203】
「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトαヘモグロビン遺伝子とマウスのαヘモグロビン遺伝子とはオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子のαヘモグロビン遺伝子とはパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、本発明のPGF2αシンターゼのオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0204】
本明細書においてPGF2αシンターゼの「野生型」とは、天然に存在するPGF2αシンターゼのうち、由来となる生物種においてもっとも広汎に存在するものをいう。通常、ある種において最初に同定されるPGF2αシンターゼは野生型といえる。野生型はまた、「天然標準型」ともいう。そのような野生型PGF2αシンターゼは、配列番号1に示す配列を有するものである。
【0205】
本発明のPGF2αシンターゼ改変体は、本発明の目的とする改変が導入されていることが1つの特徴である。本明細書では、そのような「目的とする改変」とは、例えば、PGF2αシンターゼのアミノ酸配列において、PGF αシンターゼの基質(PGHなど)または補酵素(NADPH)との相互作用をする部位またはアミノ酸残基における改変またはそのような相互作用する部位が変動するような改変をいう。
【0206】
したがって、そのような目的とする改変は、例えば、配列番号1に示されるPGF2αシンターゼの22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161および187からなる群より選択される少なくとも1つの残基に対応する、該野生型PGF2αシンターゼポリペプチドの残基において、配列番号1において示されるそれぞれの位置におけるアミノ酸以外のアミノ酸を有することを包含する。
【0207】
基質または補酵素などとの相互作用を担うドメインはまた、当該分野において周知のX線結晶構造解析の手法(例えば、BW7bビームライン(DESY/EMBL、Hamburg,Germany)を用いたX線解析、MarReseachイメージングプレート検出器を用いたデータ測定、DENZOおよびSCLAEPACKなどのプログラムを用いたデータ処理)、およびコンピュータモデリングの手法(例えば、CNSプログラム、XPLO2Dプログラム、プログラムO、PROCHECK,WHATCHECK,WHATIFなどを用いた精密化など)を用いて同定することができる。したがって、任意のPGF2αシンターゼは、上述の方法を用いて同定された基質または補酵素などとの相互作用ドメインにおいて改変を導入することによって本発明の目的の改変を導入することができる。そのような改変は、好ましくは、野生型におけるアミノ酸を他のアミノ酸に置換することを包含する。例えば、配列番号1に示されるPGF2αシンターゼの場合、110位ヒスチジンの他のアミノ酸への置換が挙げられる。本発明のPGF2αシンターゼは、補酵素または基質との相互作用ドメインにあるアミノ酸残基を改変することによって、酵素活性が高まり、副反応が減少し得る。このような相互作用ドメインは従来では不明であったことから、本発明は、従来の技術では予想不可能な効果を奏するといえる。
【0208】
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント改変を包含する。サイレント改変には、コードする核酸が変化しない「サイレント置換」と、そもそも核酸がアミノ酸をコードしない場合を包含する。ある核酸がアミノ酸をコードする場合、サイレント改変は、サイレント置換と同義である。本明細書において「サイレント置換」とは、核酸配列において、あるアミノ酸をコードする核酸配列を、同じアミノ酸をコードする別の核酸配列に置換することをいう。遺伝コード上の縮重という現象に基づき、あるアミノ酸をコードする核酸配列が複数ある場合(例えば、グリシンなど)、このようなサイレンと置換が可能である。したがって、サイレント置換により生成した核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、もとのポリペプチドと同じアミノ酸配列を有する。したがって、本発明のPGF2αシンターゼにおいて、本発明の目的とする改変(PGF2αシンターゼポリペプチドの基質(たとえば、プロスタグランジンH)と相互作用するアミノ酸残基の、野生型のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基への置換(例えば、配列番号2に示されるPGF2αシンターゼの22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187からなる群より選択される少なくとも1つの残基に対応する、該野生型PGF2αシンターゼポリペプチドの残基において、配列番号1において示されるそれぞれの位置におけるアミノ酸以外のアミノ酸を有すること))に加えて、核酸配列レベルでは、サイレント置換を含ませることも可能である。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンをコードする唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンをコードする唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
【0209】
本明細書において、本発明のPGF2αシンターゼ改変体と機能的に等価なポリペプチドを作製するために、本発明の目的の改変に加えて、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0210】
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ポリペプチドアナログ」は互換可能に使用され、ペプチドまたはポリペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドまたはポリペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。本明細書において「ポリペプチド」は、特に言及しない限り、このペプチドアナログを包含する。
【0211】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、動物個体などの宿主細胞において自律複製が可能であるか、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。本明細書において、ベクターはプラスミドであり得る。
【0212】
「発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0213】
「組換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、動物個体などの宿主細胞において自律複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0214】
「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
【0215】
本明細書において用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
【0216】
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0217】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0218】
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
【0219】
従って、本発明において同定されたタンパク質は、上述のような方法を用いて生産することができる。
【0220】
(免疫化学)
本発明のポリペプチドを認識する抗体の作製もまた当該分野において周知である。例えば、ポリクローナル抗体の作製は、取得したポリペプチドの全長または部分断片精製標品、あるいは本発明のタンパク質の一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用い、動物に投与することにより行うことができる。
【0221】
本発明では、立体構造が明らかになったことから、図9に示される原子座標を参考にしてエピトープとして適切な部位を選択することにより効率的な抗体の作製を行うことができる。
【0222】
抗体を生産する場合、投与する動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。その抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)またはウシチログロブリン等のキャリアタンパク質に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。その抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法[酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lavoratory(1988)]等で確認する。
【0223】
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、その血清より、周知技術を用いてポリクローナル抗体を分離、精製することができる。モノクローナル抗体の作製もまた当該分野において周知である。抗体産性細胞の調製のために、まず、免疫に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として使用し、骨髄腫細胞との融合により、ハイブリドーマの作製を行う。その後、酵素免疫測定法になどより、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。このようにして得たハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体は種々の目的に使用することができる。
【0224】
このような抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの免疫学的検出方法に使用することができ、本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの免疫学的検出法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法・蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法等を挙げることができる。
【0225】
また、本発明ポリペプチドの免疫学的定量方法にも使用することができる。本発明ポリペプチドの定量方法としては、液相中で本発明のポリペプチドと反応する抗体のうちエピトープが異なる2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法、 25I等の放射性同位体で標識した本発明のタンパク質と本発明のタンパク質を認識する抗体とを用いるラジオイムノアッセイ法等を挙げることができる。
【0226】
本発明ポリペプチドのmRNAの定量方法もまた、当該分野において周知である。例えば、本発明のポリヌクレオチドあるいはDNAより調製した上記オリゴヌクレオチドを用い、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法により、本発明のポリペプチドをコードするDNAの発現量をmRNAレベルで定量することができる。このような技術は、当該分野において周知であり、本明細書において列挙した文献にも記載されている。
【0227】
(結晶構造解析)
タンパク質の結晶構造解析は、当該分野において周知の方法を用いて行うことができる。そのような方法は、例えば、タンパク質のX線結晶構造解析(シュプリンガー・フェアラーク東京社)、生命科学のための結晶解析入門(丸善)などに記載されており、本明細書ではそのような方法を任意に用いることができる。
【0228】
一般に、タンパク質の結晶は、X線によりかなり損傷を受けることが知られているので、X線結晶構造解析を成功させるためには、損傷を受け難い結晶を取得することが重要である。近年では、結晶を凍結させ、凍結状態のままで回折データを測定することで高品質、高分解能の回折データを取得することがよく行われている(Methods in ENZYMOLOGY 第276巻、Macromolecular Crystallography、Part A、C.W.Carter、Jr.およびR.M.Sweet編、Practical Cryocrystallography(D.W.Rodgers))。一般に、タンパク質結晶の凍結には、凍結による結晶の崩壊を防ぐ目的で、グリセロールなどの凍結安定化剤を含む溶液で処理するなどの工夫がなされる。本発明においては、PGF2αシンターゼのネイティブ結晶(必要に応じて補酵素であるNADPHと複合体化させる)および重原子誘導体の凍結結晶は、凍結安定化剤を添加することなく、結晶化小滴あるいは浸漬溶液中の結晶を取り出し、液体窒素に直接浸漬して瞬時に凍結させることで調製し得る。凍結結晶はまた、凍結安定化剤を添加した保存液に浸漬した結晶に対して上記瞬時に凍結させる操作を行うことによっても調製し得る。
【0229】
重原子同型置換法(Methods in ENZYMOLOGY 第115巻、Diffractipn Methods for BiologicalMacromolecules、 Part B、H.W.Wyckoff、C.H.W.Hirs、およびS.N.Timasheff編、ならびにMethods in ENZYMOLOGY 第276巻、 Macromolecular Crystallography、Part A、C.W.Carter、Jr.およびR.M.Sweet編)または多波長異常分散法(S.N.Timasheff編、ならびにMethods in ENZYMOLOGY第276巻、 Macromolecular Crystallography、Part A、C.W.Carter、Jr.およびR.M.Sweet編)もまた利用して立体構造解析を行うことも可能である。ここでは、ネイティブ結晶および重原子誘導体結晶の回折データ間の回折強度差、あるいは異なる波長で測定した回折データ間の回折強度差から、電子密度を計算するための初期位相を求めることにより立体構造を決定し得る。重原子同型置換法または多波長異常分散法を適用するPGF2αシンターゼの立体構造決定においては、重金属原子として例えば水銀、金、白金、ウラン、セレン原子などを含有した重原子誘導体結晶を用い得る。例えば、水銀化合物EMTSまたはカリウムジシアノ金(I)を利用した浸漬法により得られる重原子誘導体結晶が用いられる。
【0230】
ネイティブ結晶および重原子誘導体結晶の回折データは、例えば、R−AXIS IIc(理学電機)あるいはSPring−8(西播磨大型放射光施設)のタンパク質結晶構造解析用ビームラインを用いて測定し得る。多波長異常分散法を適用するための複数波長での回折データ測定は、例えば、SPring−8のタンパク質結晶構造解析用ビームラインを用いて実施し得る。測定した回折画像データは、例えば、R−AXIS IIc付属のデータ処理プログラムまたはプログラムDENZO(マックサイエンス)または同様な画像処理プログラム(または単結晶解析用ソフトウェア)を用いて、反射強度データに処理される。ネイティブ結晶の反射強度データ、複数波長での重原子誘導体結晶の反射強度データ波長の測定により得られた反射強度データから、差Patterson図を利用して結晶中のタンパク質に結合した重金属原子の位置を求めた後、例えば、プログラムPHASES(W.Furey、University of PennsylvaniaあるいはCCP4(British Biotechnology & Biological Science Research Counsil、SERC)または同様の回折データ解析プログラムを用いて重原子位置パラメータを精密化することにより初期位相が決定される。決定された初期位相は、例えば、プログラムDM(CCP4パッケージ)または同様な位相改良プログラム(電子密度改良プログラム)を用いた溶媒平滑化法およびヒストグラムマッチング法に従って、PGF αシンターゼ結晶中の溶媒領域を例えば30〜50%として、低分解能から高分解能まで徐々に位相拡張計算を行うことにより信頼性の高い位相へと改良される。タンパク質の結晶は、その体積の30〜60%がタンパク質以外の溶媒分子(主として水分子)で占有されている。本明細書において、溶液中の溶媒分子の占める体積を「溶媒領域」とする。一般に、得られたタンパク質結晶が非結晶学的な対称を有する場合には、非結晶学的対称(NCS)平均化と呼ばれる電子密度の平均化を行うことにより、さらに位相の信頼性を高めることが可能である。PGF2αシンターゼの結晶は、結晶の密度測定の結果から非対称単位中に2分子が含まれることが判明した。溶媒平滑化法を適用した後の位相を用いて計算した電子密度図および精密化した重原子座標から、並進および回転を含む非結晶学的対称マトリックスが算出される。同時に溶媒平滑化法で得られた電子密度図から、マスクと呼ばれるタンパク質の分子が存在する領域を同定し得る。非結晶学的対称マトリックスおよびマスクを用いて、プログラムDMなどによりNCS平均化計算を行うことにより、信頼性の高い位相に改良され、立体構造モデルの構築に用いる電子密度図が得られる。
【0231】
PGF2αシンターゼの立体構造モデルは、プログラムO(オー)(A.Jones、Uppsala Universitet、Sweden)などにより3次元グラフィックス上に表示した電子密度図から、以下の手順で構築し得る。まず、特徴的なアミノ酸配列を有する複数の領域(例えば、トリプトファン残基を含む部分配列など)を電子密度図上で探し出す。次に、見出した領域を起点にしてアミノ酸配列を参照しながら、電子密度に適合するアミノ酸残基の部分構造をプログラムOを用いて3次元グラフィックス上で構築する。、順次この作業を繰り返すことにより、PGF2αシンターゼのすべてのアミノ酸残基を相当する電子密度に適合させ、分子全体の初期立体構造モデルを構築する。構築された立体構造モデルは、それを出発モデル構造として、構造精密化プログラムであるXPLOR(A.T.Brunger、Yale University)の精密化プロトコルに従って、立体構造を記述する三次元座標が精密化される。また、PGF2αシンターゼ(例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むPGF2αシンターゼ)のネイティブ結晶の立体構造およびPGF2αシンターゼ改変体(例えば、配列番号1に示される配列を有するPGF2αシンターゼ改変体)ネイティブ結晶の立体構造は、得られたEMTS誘導体結晶の立体構造を用いた分子置換法により初期位相を求め、前記の電子密度改良、モデル構築、構造精密化手順に従うことにより各々の立体構造を決定し得る。このことにより、本発明のPGF2αシンターゼの立体構造の決定が完成される。決定したPGF2αシンターゼの立体構造について、トポロジーなどの観点から、タンパク質立体構造の公的データバンクであるプロテインデータバンク(PDB)に登録されている種々のタンパク質(PGF2αシンターゼと機能において類似する酵素を含む)の立体構造との比較を行い得る。
【0232】
本明細書において、「トポロジー」とは、本明細書中において、タンパク質の二次構造単位の並びまたは空間配置のことをいう。
【0233】
本明細書において、「αヘリックス」とは、タンパク質またはポリペプチドの二次構造の一つであり、アミノ酸が3.6残基ごとに1回転したピッチが5.4Aの螺旋構造を有するエネルギー的に最も安定な構造の1つをいう。αヘリックスを形成しやすいアミノ酸としては、グルタミン酸、リジン、アラニン、およびロイシンなどが挙げられる。逆に、αヘリックスを形成しにくいアミノ酸としては、バリン、イソロイシン、プロリン、およびグリシンなどが挙げられる。また、本明細書において、「βシート」とは、タンパク質またはポリペプチドの二次構造の一つであり、ジグザグに伸びたコンフォメーションを有する二本以上のポリペプチド鎖が平行に並び、ペプチドのアミド基およびカルボニル基が、それぞれ隣接するペプチド鎖のカルボニル基およびアミド基との間に水素結合を形成することによりエネルギー的に安定なシート状により合わさった構造をいう。なお、「平行βシート」とは、βシートのうち、隣接するポリペプチド鎖のアミノ酸配列の並び方が同じ方向のものをいい、「逆平行βシート」とは、βシートのうち、隣接するポリペプチド鎖のアミノ酸の並び方が逆方向のものをいう。さらに、本明細書において、「βストランド」とは、βシートを形成するジグザグに伸びたコンフォメーションを有する1本のペプチド鎖をいう。
【0234】
従って、本発明のPGF2αシンターゼ改変体を作製する際には、上述のようなトポロジーを考慮してもよい。
【0235】
タンパク質の「立体構造データ」または「原子座標データ」とは、そのタンパク質の三次元構造に関するデータをいう。タンパク質の立体構造データには、代表的に、原子座標データ、トポロジー、分子力場定数が挙げられる。原子座標データは、代表的に、X線結晶構造解析またはNMR構造解析から得られたデータであり、このような原子座標データは、新規にX線結晶構造解析またはNMR構造解析を行って得られ得るか、または公知のデータベース(例えば、プロテイン・データ・バンク(PDB))から入手し得る。原子座標データはまた、モデリングまたは計算によって作成されたデータであり得る。
【0236】
トポロジーは、市販もしくはフリーウェアのツールプログラムを用いて算出し得るが、自作プログラムを用いてもよい。また、市販の分子力場計算プログラム(例えば、PRESTO、タンパク質工学研究所株式会社、に付属のpreparプログラム)に付属の分子トポロジー計算プログラムを使用し得る。分子力場定数(または分子力場ポテンシャル)もまた、市販もしくはフリーウェアのツールプログラムを用いて算出し得るが、自作データを用いてもよい。また、市販の分子力場計算プログラム(例えば、AMBER、Oxford Molecular)に付属の分子力場定数データを使用し得る。
【0237】
なお、PGF2αシンターゼの立体構造の具体的な座標データは、プロテインデータバンク(PDB、Protein Data Bank、The Research Collaboratory For Structual Bioinformatics(RCSB)が運営)に登録番号1MZ7として2002年10月7日に登録(公知となるべき公開は2003年10月7日予定)されており、必要に応じ本明細書中でこのデータを援用する。
【0238】
本発明のPGF2αシンターゼの立体構造決定が完成することによって、酵素の触媒活性に関与する残基を推定し得、さらに酵素単独の立体構造だけでなく、酵素に補酵素、インヒビター、アゴニストまたは基質などを結合させた複合体の立体構造モデルを分子モデリングの手法(Swiss−PDBViewer(前出)、Autodock(Oxford Molecular)、Guex、N.およびPeitsch,M.C.(1997)SWISS−MODEL and the Swiss−PDBViewer:An environmentfor comparative protein modeling、Electrophoresis 18、2714−2723;Morris,G.Mら、J.Computational Chemistry、19:1639−1662、1998;Morris,G.M.ら、J.Computaer−Aided Molecular Design、10、294−304、1996;Goodsell、D.S.ら、J.Mol.Recognition、9:1−5、1996)により容易に構築し得る。本立体構造および立体構造モデルから、活性部位に存在し、触媒反応群のアミノ酸残基に関する構造および活性部位における反応機構に関する知見を入手し得る。
【0239】
PGF2αシンターゼの活性部位は、配列番号1に示されるPGF2αシンターゼのアミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187などを包含する。110位ヒスチジンは、基質と相互作用することが知られていることから、ある実施形態では、本発明の目的とする改変は、この110位チロシンに対応する残基が他のアミノ酸に改変されていることが好ましい。
【0240】
これら立体構造より得られた知見に基づいて、PGF2αシンターゼの安定性向上または酵素活性の向上を目的とした改変設計を行い得る。本明細書において、酵素の「熱安定性」とは、通常の生体環境よりも高い温度(例えば60℃)で酵素を変性させた後でも、酵素活性が熱変性前と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも90%残存していることをいう。安定性の向上は、例えば、ΔTm(変性温度の差分)で測定し得る。本明細書において「酵素活性」とは、特に言及しない場合「PGF2αシンターゼ活性」と同義で用いられ、PGF2αシンターゼ、グルコース−6−リン酸100μM、NADPH20μM、およびグルコース−6−リン酸脱水素酵素1Uを、100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に入れ、これに14Cで標識したPGHを添加し、37℃で20分間インキュベーションし、その後、Stop溶液(30:4:1(vol/vol/vol)のジエチルエーテル:メタノール:クエン酸)をいれ、その放射能を測定することによって計測される活性をいう。
【0241】
本明細書において、改変体分子の設計は、変異前のタンパク質またはポリペプチド分子(例えば、野生型分子)のアミノ酸配列および立体構造を解析することによって、各アミノ酸がどのような特性(例えば、触媒活性、他の分子との相互作用など)を担うかを予測し、所望の特性の改変(例えば、触媒活性の向上、タンパク質の安定性の向上など)をもたらすために適切なアミノ酸変異を算出することにより行われる。設計の方法は、好ましくはコンピューターを用いて行われる。このような設計方法で用いられるコンピュータープログラムの例としては、本明細書において言及されるように、以下が挙げられる:構造を解析するプログラムとして、X線回折データの処理プログラムであるDENZO(マックサイエンス);位相を決定するための処理プログラムとして、PHASES(Univ.of Pennsylvania、PA、USA);初期位相の改良のためのプログラムとして、プログラムDM(CCP4パッケージ、SERC);3次元グラフィックスを得るためのプログラムとしてプログラムO(Uppsala Universitet、Uppsala、スウェーデン);立体構造精密化プログラムとして、XPLOR(Yale University、CT、USA);そして、変異導入モデリングのためのプログラムとして、Swiss−PDBViewer(前出)。
【0242】
本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物(例えば、インヒビター、活性化剤など)が提供されることも企図される。
【0243】
(コンピュータモデリング)
本発明は、分子設計技術の使用により、PGF2αシンターゼ(例えば、結合ポケット)に結合可能な化学物質(阻害化合物を含む)を同定、選択、および設計することを初めて可能にする。
【0244】
本発明はまた、1つの局面において、本発明において決定された結合ポケットを含むポリペプチドも提供する。
【0245】
PGF2αシンターゼ上の9,11−エンドペルオキシドPGHおよび補酵素NADPHの結合部位に関する本発明者らの解明は、PGF2αシンターゼ結合ポケットのいずれかまたはその両方と相互作用し得る新規な化学物質および化合物を設計するために必要な情報を、全部または一部について提供する。この解明はまた、TbPGFS様結合ポケットに結合する9,11−エンドペルオキシドPGHまたは他の化合物のアナログについての構造活性データの評価を可能にする。
【0246】
モデリングでは、物質が、PGF2αシンターゼ様結合ポケットに結合するか、これと会合するか、またはこれを阻害する能力に関する議論は、物質の特徴のみを議論する。化合物がPGF2αシンターゼに結合するかどうかを決定するためのアッセイは、当該分野で周知であり、例えば、Kubata B.K. et al.,J.Exp.Med. 192,1327−1337 (2000)に記載されている。
【0247】
本発明による、PGF2αシンターゼ(例えば、結合ポケット)に結合するかまたはこれを阻害する化合物の設計は、一般的に2つの要件の考慮を伴う。第1に、この物質は、PGF2αシンターゼの一部または全部と物理的および構造的に会合し得なければならない。この会合において重要な非共有結合的分子相互作用は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水的相互作用、および静電的相互作用を含む。
【0248】
第2に、この物質は、それをPGF2αシンターゼと直接会合可能にするコンフォメーションをとり得なければならない。この物質の特定の部分はこれらの会合に直接関与しないが、この物質のこれらの部分はなお、分子の全体のコンフォメーションに影響を及ぼし得る。次いで、これが効力に重大な影響を有し得る。このようなコンフォメーション要件は、結合ポケットの全部または一部に関連する化学物質の3次元構造全体および配向、あるいはPGF2αシンターゼまたはその相同体と直接相互作用するいくつかの化学物質を包含する物質の官能基間の空間的配置を含む。
【0249】
PGF2αシンターゼに対する化学物質の阻害効果または結合効果の可能性は、その実際の合成および試験の前にコンピューターモデリング技術の使用により分析され得る。所与の物質の理論的構造が、その物質とPGF2αシンターゼとの間での不十分な相互作用および会合を示唆するのであれば、物質の試験は除外される。しかし、コンピューターモデリングが強い相互作用を示すのであれば、次いで、この分子が合成され、PGF2αシンターゼへの結合能力について試験され得る。
【0250】
PGF2αシンターゼの調節因子の候補化合物は、その化学物質またはフラグメントをPGF2αシンターゼとのそれらの会合能力についてスクリーニングする工程、およびポジティブ因子を選択する工程により計算的に評価され得る。
【0251】
当業者は、PGF2αシンターゼと会合する能力について化学物質またはフラグメントをスクリーニングするためのいくつかの方法のうちの1つを使用し得る。このプロセスは、例えば、図9のPGF2αシンターゼの構造座標もしくはその改変体もしくは相同体またはコンピューター読み取り可能記録媒体から生じる同様の形状を定義する他の座標に基づく、コンピューター画面上でのTbPGFS様結合ポケットの視覚的検査により開始され得る。次いで、選択されたフラグメントまたは化学物質を、上記に定義される結合ポケット内に、種々の配向で配置させ得るか、またはドッキングさせ得る。ドッキングは、QuantaおよびSybylのようなソフトウェア、続いて、CHARMMおよびAMBERのような標準的な分子力学的力場によるエネルギー最小化および分子動力学を用いて達成され得る。
【0252】
コンピュータモデリングを行うためのコンピュータープログラムもまた、フラグメントまたは化学物質を選択するプロセスにおいて使用され得る。このようなプログラムとしては、以下が挙げられる。
【0253】
1.GRID(P.J.Goodford,「A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules」,J.Med.Chem.,28,849−857頁(1985))。GRIDは、Oxford University,Oxford,UKから入手可能である。
【0254】
2.MCSS(A.Mirankerら,「Functionality Maps of Binding Sites:A Multiple CopySimultaneous Search Method」 Proteins:Structure,Function and Genetics,11,29−34頁(1991))。MCSSは、Molecular Simulations,San Diego,CAから入手可能である。
【0255】
3.AUTODOCK(D.S.Goodsellら,「AutomatedDocking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing」,Proteins:Structure,Function,and Genetics,8,195−202頁(1990))。AUTODOCKは、Scripps ResearchInstitute,La Jolla,CAから入手可能である。
【0256】
4.DOCK(I.D.Kuntzら,「A Geometric Approach to Macromolecule−Ligand Interactions」,J.Mol.Biol.,161,269−288頁(1982))。DOCKは、University of California,San Francisco,CAから入手可能である。
【0257】
一旦、適切な化合物質またはフラグメント(化合物種)が選択されると、それらは、単一化合物または複合体にアセンブリすることができる。構築に先だって、PGF2αシンターゼの構造座標に関連してコンピューター画面上に表示される3次元イメージ上で、互いのフラグメントの関連性の視覚的検査が行われ得る。これに続き、QuantaまたはSybyl[Tripos Associates,St.Louis,MO]のようなソフトウェアを用いるマニュアルでのモデル構築が行われる。
【0258】
個々の化学物質またはフラグメントを連結させる際に使用され得る有用なプログラムは、以下を含む。
【0259】
1.CAVEAT(P.A.Bartlettら、「CAVEAT:A Program to Facilitate the Structure−Derived Design of Biologically Active Molecules」(Molecular Recognition in Chemical and Biological Problems,Special Pub.,Royal Chem.Soc.,78,182−196頁(1989));G,LauriおよびP.A.Bartlett,「CAVEAT:a Program to Facilitate the Design of Organic Molecules」,J.Comput.Aided Mol.Des.,8,51−66頁(1994))。CAVEATは、University of California,Berkeley,CAから入手可能である。
【0260】
2.ISIS(MDL Information Systems,San Leandro,CA)のような3Dデータベースシステム 。この分野は、Y.C.Martin,「3D Database Searching in Drug Design」,J.Med.Chem.,35,2145−2154頁(1992)において概説される。
【0261】
3.HOOK(M.B.Eisenら,「HOOK:A Program for Finding Novel Molecular Architectures that Satisfy the Chemical and Steric Requirements of a Macromolecule Binding Site」,Proteins:Struct.,Funct.,Genet.,19,199−221頁(1994))。HOOKは、Molecular Simulations,San Diego,CAから入手可能である。
【0262】
上記のように一度に1つのフラグメントまたは化学物質を段階的様式でPGF2αシンターゼのインヒビターなどとして構築することを進める代わりに、阻害性または他のPGF2αシンターゼ結合化合物は、空の結合部位を使用するか、または必要に応じていくつかの既知のインヒビターの部分を含めるかのいずれかで、全体的にまたはデノボで設計され得る。以下を含む、多くの新規リガンド設計方法が存在する。
【0263】
1.LUDI(H.−J.Bohm,「The Computer Program LUDI:A New Method for the De Novo Design of Enzyme Inhibitors」,J.Comp.Aid.Molec.Design,6 61−78頁(1992))。LUDIは、Molecular Simulations Incorporated,San Diego,CAから入手可能である。
【0264】
2.LEGEND(Y.Nishibataら,Tetrahedron,47,8985頁(1991))。LEGENDは、Molecular Simulations Incorporated,San Diego,CAから入手可能である。
【0265】
3.LeapFrog(Tripos Associates,St.Louis,MOから入手可能である)。
【0266】
4.SPROUT(V.Gilletら,「SPROUT:A Program for Structure Generation」,J.Comput.Aided Mol.Design,7,127−153頁(1993))。SPROUTは、University of Leeds,UKから入手可能である。
【0267】
他の分子モデリング技術もまた、本発明に従って使用され得る[例えば、N.C.Cohenら,「Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry」,J.Med.Chem.,33,883−894頁(1990)を参照のこと;M.A.NaviaおよびM.A.Murcko,「The Use of Structural Information in Drug Design」,Current Opinions in Structural Biology,2,202−210頁(1992)もまた参照のこと;L.M.Balbesら,「A Perspective of Modern Methods in Computer−Aided Drug Design」,(Reviews in Computational Chemistry,vol.5,K.B.LipkowitzおよびD.B.Boyd編,VCH,New York,337−380頁(1994));W.C.Guida,「Software For Structure−Based Drug Design」,Curr.Opin.Struct.Biology.,4,777−781頁(1994)]。
【0268】
一旦上記の方法により化合物が設計されるかまたは選択されると、その物質がTbPGFS結合ポケットに結合し得る効率が、計算による評価により試験され、そして最適化され得る。例えば、有効なTbPGFS結合ポケットインヒビターは、好ましくは、その結合状態と遊離状態との間に相対的に小さなエネルギー差(すなわち、結合の小さな変形エネルギー)を示さなければならない。従って、最も効率的なPGF2αシンターゼインヒビターは、好ましくは、約10kcal/モル以下(より好ましくは、7kcal/モル以下)結合の変形エネルギーを用いて設計されるべきである。PGF2αシンターゼインヒビターは、全結合エネルギーにおいて類似する2つ以上のコンフォメーションで結合ポケットと相互作用し得る。これらの場合、結合の変形エネルギーは、遊離物質のエネルギーとインヒビターがタンパク質に結合するとき観察されるこれらのコンフォメーションの平均エネルギーとの間の差であると考えられる。
【0269】
PGF2αシンターゼに結合するとして設計または選択される物質は、その結合状態において、好ましくは、標的酵素および周囲の水分子との静電的斥力相互作用がないように、計算によりさらに最適化され得る。このような非相補的静電的相互作用は、電荷−電荷斥力相互作用、双極子−双極子斥力相互作用および電荷−双極子斥力相互作用を含む。
【0270】
特定のコンピューターソフトウェアは、化合物変形エネルギーおよび静電的相互作用を評価する分野において入手可能である。このような使用のために設計されたプログラムの例として、以下が挙げられる:Gaussian 94,revision C(M.J.Frisch,Gaussian,Inc.,Pittsburgh,PA 1995);AMBER,version 4.1(P.A.Kollman,University of Californiaat San Francisco,1995);QUANTA/CHARMM(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);Insight II/Discover,(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA1995);DelPhi(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);およびAMSOL(Quantum Chemistry Program Exchange,Indiana University)。これらのプログラムは、例えば、Silicon Graphicsワークステーション(例えば、「IMPACT」グラフィクスを備えるIndigo)を用いて実行され得る。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージもまた、当業者に公知である。
【0271】
本発明により可能な別のアプローチは、PGF2αシンターゼに全体または部分的に結合し得る化学物質または化合物についての低分子データベースの計算的なスクリーニングである。このスクリーニングにおいて、結合部位へのこのような物質の適合の質は、形状的相補性または見積もられた相互作用エネルギーのいずれかにより判定され得る[E.C.Mengら,J.Comp.Chem.,16,505−524頁(1992)]。
【0272】
(コンビナトリアルケミストリ)
本発明で使用する化合物ライブラリは、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術、醗酵方法、植物および細胞抽出手順などが挙げられるがこれらに限定されない、いずれかの手段により、作製することができるかまたは入手することができる。コンビナトリアルライブラリを作成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、E.R.Felder,Chimia 1994,48,512−541;Gallopら、J.Med.Chem.1994,37,1233−1251;R.A.Houghten,Trends Genet.1993,9,235−239;Houghtenら、Nature 1991,354,84−86;Lamら、Nature 1991,354,82−84;Carellら、Chem.Biol.1995,3,171−183;Maddenら、Perspectives in Drug Discovery and Design2,269−282;Cwirlaら、Biochemistry 1990,87,6378−6382;Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992,89,5381−5383;Gordonら、J.Med.Chem.1994,37,1385−1401;Leblら、Biopolymers 1995,37 177−198;およびそれらで引用された参考文献を参照のこと。これらの参考文献は、その全体を、本明細書中で参考として援用する。
【0273】
(好ましい実施形態の説明)
本発明において、9,11−エンドペルオキシドPGHをPGF2αに還元する触媒機構に関して研究するために、本発明者らは、NADPHと複合体化したTrypanosoma brucei PGF2αシンターゼ(TbPGFS)の三次元(3−D)結晶構造を決定した。本明細書では、このTbPGFS−NADPH二成分複合体の結晶構造を開示する。本明細書ではまた、この構造データから推測可能な他の構造データも開示する。
【0274】
1つの実施形態において、本発明では、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標のデータで生成される、立体構造コンピュータモデルが提供される。好ましくは、この原子座標は、図9に記載のプロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその改変体であり得る。より好ましくは、前記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその改変体であってもよい。
【0275】
このような立体構造コンピュータモデル生成は、本明細書において上述されるような当該分野において周知の技術によって生成することができる。したがって、例えば、当業者は、図9に記載されるデータを入力することにより、本発明のモデルを容易に提供することができる。
【0276】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を含むデータアレイであって、ここで該データアレイは、三次元分子モデリングアルゴリズムを使用することにより三次元構造を提示し得る、データアレイを提供する。好ましくは、この原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその改変体である。別の実施形態において、この原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその改変体である。
【0277】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標をコードした、コンピューター読み取り可能な記録媒体を提供する。好ましくは、この原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその改変体である。別の実施形態において、この原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその改変体である。
【0278】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの立体構造解析方法を提供するためのプログラムであって、A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標をコードしたデータ;およびB)三次元立体構造の解析をコンピュータに実行させるアプリケーションのコード、を含む、プログラムを提供する。このようなプログラムは、本明細書において上述したような、立体構造の精密化またはモデリングのような技法を実行させるものであり得る。好ましくは、上記原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその改変体である。上記原子座標は、NADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその改変体である。
【0279】
1つの好ましい実施形態において、上記アプリケーションは、A)前記原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;およびB)候補化合物の三次元分子モデルを、該三次元分子モデルと比較する工程をコンピュータに実行させるものであり得る。そのようなモデルを比較するようなアプリケーションは、当該分野において周知であり、本明細書において上述された説明により当業者は容易に実施することができる。
【0280】
別の局面において、本発明は、図9に記載の原子座標によって定義される構造を有する、単離および精製された、タンパク質を提供する。高分解能X線結晶解析を用いて、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの3次元構造を解明したのは、本発明者らは初めてである。プロスタグランジンF2αシンターゼは従来結晶化されておらず、構造解析も行われていなかった。したがって、図9に記載されるような結晶構造を保持したタンパク質は、従来になかった構造を有するものといえる。好ましくは、このようなタンパク質は、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を含む。このような活性は、当該分野において周知の技法を用いて測定することができる。そのような活性は、例えば、PGH還元活性であり得る。従って、本発明の1つの実施形態では、プロスタグランジンF2αシンターゼの結晶が提供される。この結晶は好ましくはNADPHと複合体化されたものであり得る。好ましくは、結晶は、正方晶空間群P42を有する。より好ましくは、この結晶は、a=112.3±3Å、b=112.3±3Å、c=140.0±7Åの単位格子定数を有する。最も好ましくは、この結晶は、非対称単位中に2分子を含む。
【0281】
既知のAKR構造との比較によって、この酵素とNADPHとの結合に影響を及ぼすと考えられるいくつかの固有の特徴が示された。また、既知のAKR構造との比較により、プロスタグランジンF2αシンターゼの触媒ポケットにおいてAsp47、Tyr52、Lys77およびHis110の位置が保存されていることが明らかとなった。これらのアミノ酸残基の変異誘発研究によって、9,11−エンドペルオキシドPGHをPGF2αに還元する間にプロトン供与体として単独で作用するアミノ酸残基は、His110であることが同定された。この結果は、他のAKRについて提唱されていたような、プロトンの供与体または受容体として機能するためにチロシンがアスパラギン酸、リジン、およびヒスチジンを必要とする触媒機構とは対照的である。
【0282】
従って、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの結合ポケットまたはその一部、あるいは類似の3次元形状を有するこれらの結合ポケットの相同体もしくは改変体を含む分子もしくは分子複合体を提供する。
【0283】
本発明はまた、プロスタグランジンF2αシンターゼ(例えば、TbPGFS)の構造座標を含む、コンピューター読み取り可能な記録媒体(これは、プロスタグランジンF2αシンターゼの結合ポケットの全部または一部を含んでいる)を提供する。これらのデータでコード化されるこのような記録媒体は、コンピューター画面または同様の視覚装置上で、分子もしくは分子複合体(これは、このような結合ポケットまたは同様の形状である相同体性結合ポケットを含む)の3次元グラフィック表示を表示し得る。
【0284】
本発明はまた、上記結合ポケットの全部または一部に結合する化合物を設計、評価、および同定するための方法を提供する。このような化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体のインヒビターの候補であり得る。
【0285】
本発明はまた、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体のインヒビターとして有用な、新規なクラスの化合物およびそれらの医薬組成物を提供する。
【0286】
本発明はまた、プロスタグランジンF2αシンターゼに少なくともいくらか構造的に類似する特徴を含む分子もしくは分子複合体の3次元構造体の少なくとも一部を決定するための方法を提供する。これは、本発明によりプロスタグランジンF2αシンターゼについて得られた構造座標の少なくともいくらかを用いることにより達成される。
【0287】
本発明はまた、プロスタグランジンF2αシンターゼおよび関連する複合体を結晶化させるための方法を提供する。
【0288】
そのような結晶は、従来の技術では全く提供することができなかった。本発明では、例えば、実施例に提供されるのような条件を用いることによって初めて、プロスタグランジンF2αシンターゼの結晶化に成功し、その構造解析を行うことに成功した。従って、本発明のこのような結晶は、従来技術によっては得ることができなかったものであり、本発明は顕著な効果を奏するものといえる。なお、実施例に提供されるような条件を用いても、純度の問題からすべてが結晶化するとはいえなかった。本発明は、そのような条件を適宜改変することにより用いて、鋭意検討することにより、結晶化に成功したものである。
【0289】
本発明者らは、X線結晶解析に適切な、NADPHと複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼを含む結晶を提供した。
【0290】
本発明者は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位結合ポケットの形状および構造についての情報を初めて提供した。
【0291】
結合ポケットは、薬物の発見などの分野において重要な用途を有する。天然のリガンドまたは基質と、それらの対応するレセプターまたは酵素の結合ポケットとの会合は、多くの生物学的作用機構の基礎である。同様に、多くの薬物は、レセプターまたは酵素の結合ポケットとの会合を通じてそれらの生物学的効果を発揮する。このような会合は、結合ポケットの全てまたは任意の部分で起こり得る。このような会合を理解することは、標的レセプターまたは酵素とより好適に会合する薬物を設計し、それにより生物学的効果を改良することを導くための助けとなる。従って、この情報は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の結合ポケットのインヒビター候補を設計するのに有用である。
【0292】
従って、1つの局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性ポケットを含む、タンパク質を提供する。ここで、この活性ポケットは、NADPHと複合体化されたものであってもよい。
【0293】
好ましくは、上記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基47、52、77、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される。
【0294】
より好ましくは、上記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基47、49、52、77、79、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される。
【0295】
より好ましくは、上記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される。
【0296】
好ましくは、上記活性部位ポケットは、スルフェートアニオンを含む。
【0297】
好ましくは、上記タンパク質は、PGH還元活性を有する。
【0298】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性ポケットを含む、タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸分子、およびその情報を記録した記録媒体を提供する。当業者であれば、いったんタンパク質のアミノ酸配列を知ったならば、そのような配列をコードする核酸配列を有する核酸分子を得ることは容易に行うことができる。
【0299】
1つの局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法であって、該方法は、候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程を包含する、方法を提供する。好ましくは、このプロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されているものであり得る。より好ましくは、この原子座標は、図9に記載の原子座標を含むが、図9に記載の原子座標から合理的にモデリング可能なものであればどのような原子座標であっても使用可能である。
【0300】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法を提供する。この方法は、以下の工程:A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;およびB)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程を包含する。三次元分子モデルを得る方法は、本明細書において上述されるような技術を用いることができる。上記比較工程もまた、当該分野において周知であり、そのような技術もまた、本明細書において上述されるような技術を用いることができる。好ましくは、このプロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されたものである。別の実施形態において、上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む。
【0301】
1つの実施形態において、本発明は、上記本発明の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ相同体を提供する。
【0302】
別の実施形態において、本発明は、上記本発明の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ相同体のアミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。
【0303】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法を提供する。この方法は、以下の工程:A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;およびB)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、を包含する。三次元分子モデルを得る方法は、本明細書において上述されるような技術を用いることができる。上記比較工程もまた、当該分野において周知であり、そのような技術もまた、本明細書において上述されるような技術を用いることができる。ここで、所定のパラメータとしては、タンパク質の物性に関連するパラメータを挙げることができ、例えば、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、静電的相互作用などの相互作用が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、このプロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されたものである。別の実施形態において、上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む。
【0304】
1つの好ましい実施形態において、上記改変体は、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が亢進されている。ここで、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が亢進されているかどうかは、例えば、PGHを基質としてそのような改変体がPGF2αの生成を野生型のプロスタグランジンF2αシンターゼよりも有意に上昇させるかどうかを見ることによって判定することができる。本明細書では、そのような判定の際には、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性は、野生型PGF2αシンターゼと同様のアッセイ条件を用いることができる。
【0305】
1つの好ましい実施形態において、上記改変体は、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が低減されている。ここで、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が低減されているかどうかは、例えば、PGHを基質としてそのような改変体がPGF2αの生成を野生型のプロスタグランジンF2αシンターゼよりも有意に減少させるかどうかを見ることによって判定することができる。
【0306】
別の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ改変体を提供する。
【0307】
別の実施形態において、本発明は、上記本発明の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ改変体のアミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。
【0308】
上記のような相同体または改変体において、アミノ酸の変異、付加、置換および/または欠損に起因する結晶構造における改変、あるいは結晶を構成する任意の成分における他の変化はまた、構造座標における変化の原因であり得る。このような変化が、元の座標に比較して受容可能な標準誤差の範囲内である場合、得られる3次元形状は同じであるとみなされる。従って、例えば、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位結合ポケットに結合するリガンドはまた、別の結合ポケットに結合すると予測される。この結合ポケットの結合座標は、受容可能な誤差の範囲内におちつくような形状で定義した。このような改変複合体またはその結合ポケットはまた、本発明の範囲内である。
【0309】
このようなことを確認するために、分子またはその結合ポケット部分が、上記のプロスタグランジンF2αシンターゼ結合ポケットのすべてまたは一部に十分に類似しているかどうかを決定するコンピューター分析が必要となり得る。このような分析は、現在のソフトウェアアプリケーション(例えば、QUANTAバージョン4.1(Molecular Simulations Inc.,San Diego,CA)のMolecular Similarity アプリケーション)において、添付のユーザーズガイドに記載されるように実施され得る。
【0310】
Molecular Similarityアプリケーションは、異なる構造、同じ構造の異なるコンフォメーション、および同じ構造の異なる部分の間の比較を可能にする。構造を比較するためにMolecular Similarityにおいて使用される手順は、4つの工程に分割される:1)比較される構造をロードする;2)これらの構造における原子当量を定義する;3)適合操作を実施する;および4)結果を分析する。
【0311】
各構造は、名称で特定される。1つの構造は、標的として特定される(すなわち、固定構造);すべての残りの構造は、作業構造である(すなわち、可変構造)。原子当量は、QUANTA内でユーザーインプットにより定義されるので、本発明の目的のために、比較される2つの構造間の保存残基のすべてについて等価な原子を、タンパク質骨格原子(N、Cα、C,およびO)として本発明者らは定義する。本発明者らはまた、強固な適合操作のみを考慮する。
【0312】
強固な適合操作が使用される場合、作業構造は翻訳され、そして回転されて、標的構造との最適適合を得る。適合作業は、可変構造に適用される最適な翻訳および回転を計算するアルゴリズムを使用し、その結果、等価な原子の特定の対についての適合の根二乗平均差は絶対最低である。この数は、オングストロームで与えられ、QUANTAによって報告される。
【0313】
本発明の目的のために、図9にリストされる構造座標により記載される関連する骨格原子に重ね合わせた場合に1.5Å未満の保存された残基骨格原子(N、Cα、C,O)の根二乗平均偏差を有する任意の分子もしくは分子複合体、もしくはそれらの結合ポケットは、同一であるとみなされる。より好ましくは、根二乗平均偏差は、1.0Å未満である。
【0314】
用語「根二乗平均偏差」は、平均からの偏差の二乗の算術的平均の二乗根を意味する。これは、傾向または目的からの偏差(deviation)または偏差(variation)を表現する方法である。本発明の目的のために、「根二乗平均偏差」は、TbPGFSまたはその結合ポケット部分の骨格からのタンパク質の骨格における偏差を、本明細書に記載のTbPGFSの構造座標により定義されるように、定義する。
【0315】
1つの実施形態において、本発明は、図9に記載のアミノ酸47、52、77、および110の構造座標により定義される結合ポケットのすべてまたは一部を含む、分子もしくは分子複合体、または1.5Å以下の該アミノ酸の骨格原子からの根二乗平均偏差を有する結合ポケットを含む該分子もしくは分子複合体の相同体を提供する。
【0316】
好ましくは、前記結合ポケットが、図9に記載のアミノ酸47、49、52、77、79、および110の構造座標により定義される結合ポケットであるか、または1.5Å以下の該アミノ酸の骨格原子からの根二乗平均偏差を有する結合ポケットを含む該分子もしくは分子複合体の相同体である。
【0317】
より好ましくは、前記結合ポケットが、図9に記載のアミノ酸22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187の構造座標により定義される結合ポケットであるか、または1.5Å以下の該アミノ酸の骨格原子からの根二乗平均偏差を有する結合ポケットを含む該分子もしくは分子複合体の相同体である。
【0318】
さらにより好ましいのは、図9における構造座標の全セットにより定義される分子もしくは分子複合体、±1.5Å以下の該アミノ酸の保存された骨格原子からの根二乗平均である。代替のより好ましい本発明の実施形態は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ分子である。
【0319】
NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ分子またはその結合ポケットもしくはその相同体について生成された構造座標を使用するために、それらを3次元形状に変換することがときに必要である。これは、市販のソフトウェアの使用により達成される。このソフトウェアは、構造座標のセットから分子またはその一部の3次元グラフィック表示をし得る。
【0320】
それゆえ、本発明の別の実施形態によれば、前記のデータを使用するための命令がプログラムされた機械を使用する場合、上記の本発明の分子もしくは分子複合体のいずれかのグラフィック3次元表示を表し得る、コンピューター読み取り可能なデータでコードされるデータ記憶物質を含むコンピューター読み取り可能記録媒体が提供される。
【0321】
別の実施形態によれば、本発明は、コンピューター読み取り可能データを用いてコードされたデータ記録材料を含むコンピューター読み取り可能データ記録媒体を提供し、該データを使用するための命令を用いてプログラムされた機械を使用する場合、該コンピューター読み取り可能データ記録媒体は、分子もしくは分子複合体のグラフィック3次元表示を表示し得、該分子もしくは分子複合体は、図9に記載のアミノ酸47、52、77、および110、または該分子もしくは分子複合体の相同体の構造座標により定義される結合ポケットの全てのもしくは任意の部分を含み、ここで、該相同体は、1.5Å以下の該アミノ酸の骨格原子からの根二乗平均偏差を有する結合ポケットを含む。
【0322】
好ましくは、前記結合ポケットは、図9に記載のアミノ酸47、49、52、77、79、および110、または前記分子もしくは分子複合体の相同体の構造座標により定義され、ここで、該相同体は、1.5Å以下の該アミノ酸の骨格原子からの根二乗平均偏差を有する結合ポケットを含む。
【0323】
より好ましくは、前記結合ポケットは、図9に記載のアミノ酸22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187、または前記分子もしくは分子複合体の相同体構造座標により定義され、ここで、該相同体は、1.5Å以下の該アミノ酸の骨格原子からの根二乗平均偏差を有する結合ポケットを含む。
【0324】
さらにより好ましいのは、図9における全てのアミノ酸、±1.5Å以下の該アミノ酸の骨格原子からの根二乗平均偏差の構造座標により定義される、分子もしくは分子複合体のグラフィック3次元表示を表示し得るコンピューター読み取り可能データ記録媒体である。
【0325】
別の実施形態によれば、コンピューター読み取り可能データ記録媒体は、図9に記載の構造座標のフーリエ変換を含むコンピューター読み取り可能データの第一のセットを用いてコードされるデータ記憶物質を含み、該データを使用するための命令を用いてプログラムされた機械を使用する場合、該第一のセットは、コンピューター読み取り可能データの第二のセットと対応する構造座標の少なくとも一部を決定するために、分子もしくは分子複合体のX線回折パターンを含むコンピューター読み取り可能データの第二のセットと組み合わせられ得る。
【0326】
ここで、図10を用いて、本発明のひとつの実施形態を示す。システム10は、中央演算処理装置(「CPU」)20を含むコンピューター11、作業メモリ22(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)または「コア」メモリであり得る)、大容量記憶メモリ24(例えば、1つ以上のディスクドライブまたはCD−ROMドライブ)、1つ以上の陰極線管(「CRT」)ディスプレイ端末26、1つ以上のキーボード28、1つ以上の入力ライン30、1つ以上の出力ライン40を含み、これらの全ては従来の双方向システムバス50により相互に接続される。
【0327】
入力ライン30によりコンピューター11に接続された入力ハードウェア36は、種々の方法で実行され得る。本発明のコンピューター読み取り可能データは、電話回線または専用データ回線34により接続されたモデム32の使用を介して入力され得る。あるいはまたはさらに、入力ハードウェア36は、CD−ROMドライブまたはディスクドライブ24を含み得る。ディスプレイ端末26と共に、キーボード28もまた、入力装置として使用され得る。
【0328】
出力ライン40によりコンピューター11に接続された出力ハードウェア46は、通常の装置により同様に実行され得る。例として、出力ハードウェア46は、本明細書中で記載されるQUANTAのようなプログラムを使用して本発明の結合ポケットのグラフィック表示を表示するために、CRTディスプレイ端末26を含み得る。出力ハードウェアはまた、後の使用のためにシステム出力を保存するために、ハードコピー出力を行い得るようにプリンター42を、またはディスクドライブ24を含み得る。
【0329】
操作において、CPU 20は、種々の入力および出力装置36、46と連係し、大容量記憶装置24からデータアクセスならびに作業メモリ22へのおよびここからのアクセスと連係し、そして配列のデータ処理ステップを決定する。多数のプログラムが、本発明のコンピューター読み取り可能データを処理するために使用され得る。このようなプログラムは、本明細書中に記載されるように薬物発見のコンピューター利用方法を参照して設計される。データ記録媒体の以下の記載の全体にわたって適切であるような、ハードウェアシステム10の構成装置もまた本発明の範囲内にある。
【0330】
図11は、図10のシステム10のようなシステムにより実行され得るコンピューター読み取り可能データを用いてコードされ得た、磁気データ記録媒体100の横断面を示す。媒体100は、片面または両面に、従来のものであり得る適切な基材101および従来のものであり得る適切なコーティング102を有する、従来のフロッピーディスケットまたはハードディスクであり得る。これは、その極性または配向が磁気的に変化され得る磁区(目に見えない)を含む。媒体100はまた、ディスクドライブまたは他のデータ記憶装置24の軸を受けるための開口部(示さない)を有し得る。
【0331】
媒体100のコーティング102の磁区は、図10のシステム10のようなシステムによる実行のために、従来の様式で、本明細書中に記載されるようなコンピューター読み取り可能データをコードするように、極性化されるかまたは配向化される。
【0332】
図12は、図10のシステム11のようなシステムにより実行され得る、このようなコンピューター読み取り可能データまたは命令のセットを用いてまたコードされ得る光学的読み取り可能データ記録媒体110の横断面を示す。媒体110は、従来のコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、または光学的に読み取り可能でありそして光磁気的に書き込み可能である光磁気ディスクのような再書き込み可能媒体であり得る。媒体100は、好ましくは、従来のものであり得る適切な基材111、および通常は基材111の片面に従来のものであり得る適切なコーティング112を有する。
【0333】
周知であるようなCD−ROMの場合において、コーティング112は、反射的でありそしてコンピューター読み取り可能データをコードするために複数のピット113で押印される(impress)。ピットの配列は、レーザー光をコーティング112の表面に反射させる(reflect off)ことにより読まれる。好ましくは実質的に透明である保護コーティング114が、コーティング112の表面上に提供される。
【0334】
周知であるような光磁気ディスクの場合において、コーティング112は、ピット113を有さないが、レーザ(図示しない)により一定の温度を超えて加熱された場合にその極性または配向が磁気的に変化され得る、複数の磁区を有する。この区の配向は、コーティング112から反射されたレーザー光の偏光を測定することにより読み取られ得る。この区の配列は、上記のようにデータをコードする。
【0335】
本発明に従って、プロスタグランジンF2αシンターゼの全部またはその一部ならびにそれらの構造的に類似の相同体の3次元構造を表示し得るデータは、構造のグラフィック3次元表示を表示し得る機械読み取り記録媒体中に保存される。このようなデータは、薬物発見のような種々の目的のために使用され得る。
【0336】
例えば、データによりコードされる構造は、化学物質と会合するその能力について、計算的に評価され得る。プロスタグランジンF2αシンターゼと会合する化学物質は、プロスタグランジンF2αシンターゼを阻害し得る。このような物質は候補薬物である。あるいは、データによりコードされる構造は、コンピューター画面上にグラフィック3次元表示で表示され得る。このことは、構造の視覚的検査、ならびに化学物質との構造の会合の視覚的検査を可能にする。
【0337】
従って、別の実施形態によれば、本発明は、化学物質が上記の任意の分子もしくは分子複合体と会合する能力を評価するための方法に関する。本方法は以下の工程を包含する:a)計算手段を用いて、化学物質と分子もしくは分子複合体の結合ポケットとの間の適合操作を行う工程:およびb)この適合操作の結果を分析して、化学物質と結合ポケットとの間の会合を定量化する工程。本明細書中で使用される用語「化学物質」は、化学化合物、少なくとも2つの化学化合物の複合体、およびこのような化合物または複合体のフラグメントを意味する。
【0338】
(医薬および治療・予防)
本発明は、本発明の方法によって同定された医薬ならびにそれを用いた治療および予防法を提供する。
【0339】
本明細書において「予防」(prophylaxisまたはprevention)とは、ある疾患または障害について、そのような状態が引き起こされる前に、そのような状態が起こらないように処置することをいう。
【0340】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
【0341】
本発明の医薬組成物は、PGF2αシンターゼおよび/または本発明のスクリーニング方法により得られる相同体および/またはインヒビター;ならびに必要に応じて、任意の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含有する。このような組成物は、必要に応じて、他の追加薬剤を含有できる。
【0342】
医薬組成物を作製する場合には、好ましくは、当該分野において公知のLipinski因子(「Lipinskiの5原則」としても公知)を考慮する。Lipinski因子とは、良好な生体内吸収プロフィールを有する化合物を識別するための指標である。良好な生体内吸収プロフィールを有する化合物を選択するためには、Lipinskiの5原則に従い、例えば、水素供与原子数5以下、水素結合許容原子数10以下、分子量500以下、およびlogPの計算値が5以下の化合物が選択される(詳細には、Lipinski,CAら、Adv.Drug Deliv.Rev.2001 Mar 1;46(1−3):3−26を参照のこと)。
【0343】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。
【0344】
本発明の医薬組成物は、生物への移入に適した形態であれば、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、幹部への局所投与、皮膚投与、動脈内投与、滑膜内投与、胸骨内投与、胞膜内投与、病変内局注投与、および頭蓋内注射投与または注入技術など)、患部への直接投与などが挙げられる。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。本発明の医薬組成物は、全身投与されるとき、発熱物質を含ない、経口的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能なタンパク質溶液の調製は、pH、等張性、安定性などに相当な注意を払う限り、当業者の技術範囲内にある。
【0345】
本発明において医薬の処方のために使用される溶媒は、水性または非水性のいずれかの性質を有し得る。さらに、そのビヒクルは、処方物の、pH、容量オスモル濃度、粘性、明澄性、色、滅菌性、安定性、等張性、崩壊速度、または臭いを改変または維持するための他の処方物材料を含み得る。同様に、本発明の組成物は、有効成分の放出速度を改変または維持するため、または有効成分の吸収もしくは透過を促進するための他の処方物材料を含み得る。
【0346】
本発明は、医薬組成物として処方される場合、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990)と、所望の程度の純度を有する選択された組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で、保存のために調製され得る。
【0347】
そのような適切な薬学的に受容可能な薬剤としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。代表的には、本発明の医薬は、本発明の活性成分を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに組成物の形態で投与され得る。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。そのような受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))。
【0348】
注射剤は当該分野において周知の方法により調製することができる。例えば、適切な溶剤(生理食塩水、PBSのような緩衝液、滅菌水など)に溶解した後、フィルターなどで濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプルなど)に充填することにより注射剤を調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用の薬学的キャリアを含めてもよい。非侵襲的なカテーテルを用いる投与方法も使用され得る。例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、本発明の医薬は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。その溶液のpHはまた、種々のpHにおいて、本発明の活性成分の相対的溶解度に基づいて選択されるべきである。
【0349】
本発明の製剤の処方手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、投与すべきポリペプチド量および細胞量を決定することができる。
【0350】
1つの実施形態において、本発明において同定される化合物は、徐放性形態で提供され得る。徐放性形態の剤型は、本発明において使用され得る限り、当該分野で公知の任意の形態であり得る。そのような形態としては、例えば、ロッド状(ペレット状、シリンダー状、針状など)、錠剤形態、ディスク状、球状、シート状のような製剤であり得る。徐放性形態を調製する方法は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方および他の国の薬局方などに記載されている。徐放剤(持続性投与剤)を製造する方法としては、例えば、複合体から薬物の解離を利用する方法、水性懸濁注射液とする方法、油性注射液または油性懸濁注射液とする方法、乳濁製注射液(o/w型、w/o型の乳濁製注射液など)とする方法などが挙げられる。
【0351】
本発明の医薬を被検体に投与する場合、そのような医薬の有効成分は、例えば1日当たり約0.01mg/kg体重と約100mg/kg体重との間、好ましくは1日当たり約0.5mg/kg体重と約75mg/kg体重との間で投与され得る。そのような投与量は、対象とするプロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害、予防または治療の別、被検体の年齢、サイズ、性別、病歴、併用する医薬などによって変動するが、当業者はそのような変動因子を考慮して適宜適切な投与量を決定することができる。代表的には、本発明の医薬組成物を投与する頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。例えば、1日当たり約1回〜約5回投与されるか、あるいは連続的な注入方法により投与され得る。このような投与は、慢性治療または急性治療で用いられ得る。単一の投与形態を与えるためにキャリア物質と組み合わせられ得る活性成分量は、治療される宿主および特定の投与方法に応じて変化する。代表的な調製物は、約5%〜約95%(w/w)の活性化合物を含有する。好ましくは、このような調製物は、約20%〜約80%の活性化合物を含有する。
【0352】
本発明の組成物が、医薬の有効成分として1種以上の追加の医薬組成物または予防剤の組合せを含有する場合、本発明において同定された化合物種および追加薬剤の両方は、単一療法レジメンで通常投与される投薬量の約10〜100%の間、さらに好ましくは、約10〜80%の間の投薬量レベルで、与えられるべきである。
【0353】
(別の分子への応用)
図9で示した構造座標はまた、特に同じサブファミリーに属する他の結晶化分子もしくは分子複合体についての構造的な情報を得る際に、補助するのに使用できる。これは、任意の多くの分子置換を含む周知技術により、達成できる。
【0354】
従って、他の実施形態では、本発明は、構造が未知の分子もしくは分子複合体についての構造的な情報を得るために、分子置換を利用する方法を提供する。該方法は、以下の工程を包含する:
a) 未知の構造の上記分子もしくは分子複合体を結晶化する工程;
b) 上記結晶化分子もしくは分子複合体から、X線回折パターンを得る工程;および
c) 図9で示した構造座標の少なくとも一部を、上記X線回折パターンに適用して、構造が未知の上記分子もしくは分子複合体の3次元電子密度マップを得る工程。
【0355】
分子置換を使用することにより、本発明で提供される(そして図9で示す)ようなプロスタグランジンF2αシンターゼに複合体の構造座標の全部または一部は、このような情報をab initio法で決定する試みよりも迅速かつ効率的に、構造が未知の結晶化分子もしくは分子複合体の構造を決定するのに使用され得る。
【0356】
分子置換は、未知の構造の位相の正確な見積もりを提供する。位相は、直接決定できない結晶構造を解明するのに使用する式の因子である。分子置換以外の方法によって、位相の正確な値を得ることは、概算および洗練(refinement)の反復サイクルを含む多くの時間を要するプロセスであり、そして結晶構造の解明を非常に妨げる。しかしながら、少なくとも相同部分を含むタンパク質の結晶構造が解明されたとき、既知構造の位相は、未知構造の位相の予測の基礎を提供する。
【0357】
この方法は、構造が未知の分子もしくは分子複合体の結晶の観察されたX線回折パターンを最もよく説明するよう、未知の分子もしくは分子複合体の結晶の単位格子内に、図9に記載のプロスタグランジンF2αシンターゼの関連部分を配向し位置を決めることによって、構造座標が未知の分子もしくは分子複合体の予備モデルを作成することを包含する。次いで、位相がこのモデルから計算され、そして観察されたX線回折パターン振幅と組み合わせて、座標が未知の構造の電子密度マップを作成し得る。今度は、これは、任意の周知のモデル構築および構造洗練技術に供され、未知の結晶化分子もしくは分子複合体の最終的で正確な構造を提供し得る[E.Lattman、「Use of the Rotation and Translation Functions」、in Meth.Enzymol.、115、55〜77頁(1985);M.G.Rossmann編、「The Molecular Replacement Method」、Int.Sci.Rev.Ser.、No.13、Gordon &Breach、New York(1972)]。
【0358】
プロスタグランジンF2αシンターゼの任意の部分と充分に相同である任意の結晶化分子もしくは分子複合体の任意の部分の構造は、この方法により解明され得る。
【0359】
好ましい実施形態では、分子置換方法は、分子もしくは分子複合体についての構造的な情報を得るのに使用され、ここで、この複合体は、少なくとも1個のプロスタグランジンF2αシンターゼまたは相同体を含有する。
【0360】
本発明により提供されるプロスタグランジンF2αシンターゼの構造座標は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはプロスタグランジンF2αシンターゼ複合体の他の結晶形態の構造を解明するのに、特に有用である。
【0361】
さらに、本発明により提供されるプロスタグランジンF2αシンターゼの構造座標は、プロスタグランジンF2αシンターゼ変異体の構造(これは、必要に応じて、化学物質との複合体として結晶化されていてもよい)を解明するのに有用である。次いで、一連のこのような複合体の結晶構造は、分子置換により解明され、そして野生型プロスタグランジンF2αシンターゼの結晶構造と比較され得る。この酵素の種々の結合部位内での修飾部位の候補が、このように同定され得る。この情報は、プロスタグランジンF2αシンターゼと化学物質または化合物との間の最も効率的な結合相互作用(例えば、増大した疎水性相互作用)を決定するさらなる手段を提供する。
【0362】
この構造座標はまた、種々の化学物質と共複合体化したプロスタグランジンF2αシンターゼまたはプロスタグランジンF2αシンターゼ相同体の結晶構造を解明するのに、特に有用である。このアプローチは、プロスタグランジンF2αシンターゼのインヒビター候補を含む化学物質とプロスタグランジンF2αシンターゼとの間の相互作用のための最適部位の決定を可能とする。例えば、異なるタイプの溶媒に曝露した結晶から回収した高分解能X線回折データは、各タイプの溶媒分子が存在する場所の決定を可能とする。次いで、これらの部位に堅く結合する小分子が設計および合成され、そしてそれらのプロスタグランジンF2αシンターゼ阻害活性について試験され得る。
【0363】
上で述べた全ての複合体は、周知のX線回折技術を用いて研究され得、そしてコンピューターソフトウェア(例えば、X−PLOR[Yale University、1992、Molecular Simulations、Inc.により配布;例えば、Blundell および Johnson、上記;Meth.Enzymol.、114 および 115巻、H.W.Wyckoffら著、Academic Press(1985)を参照のこと])を用いて、R値約0.20以下までの分解能1.5〜3ÅのX線データと対比して、洗練され得る。それゆえ、この情報は、既知のTbPGFSインヒビターを最適化するのに、そしてより重要には、新規のTbPGFSインヒビターを設計するのに、使用され得る。
【0364】
したがって、1つの局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体に結合し得る化合物を同定する方法を提供する。このような方法は、以下の工程:a)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;およびb)上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、上記プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、を包含する。活性部位ポケットは、本発明に記載の方法によって同定することができる。そのような活性ポケットの例は、本明細書において上述したとおりである。上述の結合し得る化合物の同定もまた、当該分野において周知の技術を用いて行うことができる。そのような方法は、本明細書において上述されている。結合は、タンパク質の一部であれば、どこでもよいが、好ましくは活性部位ポケットであり得る。あるタンパク質に結合し得るかどうかは、相互作用(例えば、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、静電的相互作用など)を計算することによって行うことができる。
【0365】
上記結合し得る化合物を同定する方法において、好ましくは、上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されたものであり得る。より好ましくは、上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む。
【0366】
別の実施形態において、上記相同体または改変体は、本発明の方法によって得られたものであり得る。
【0367】
より好ましくは、上述のプロスタグランジンF2αシンターゼは、ヒト、ウシ、ヒツジなどの哺乳動物、またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む。
【0368】
上記結合し得る化合物を同定する方法の1つの実施形態において、上記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基47、52、77、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される。より好ましくは、この空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基47、49、52、77、79、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される。さらに好ましくは、この空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される。別の実施形態において、この空間座標は、図9に記載されるスルフェートアニオンまたはそれに対応するスルフェートアニオンの原子座標を含む。
【0369】
別の局面において、本発明は、候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法を提供する。この方法は、以下の工程:A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;B)上記三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;およびC)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、上記三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、を包含する。このようなモデルを得る工程および原子間の距離を検索する工程、および候補化合物種を同定する工程は、当該分野において周知であり、本明細書において上述のコンピュータによる解析を適宜用いて行うことができる。
【0370】
別の実施形態において、このプロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されたものであり得る。好ましくは、上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む。
【0371】
別の実施形態において、上記相同体または改変体は、本発明の方法によって得られたものである。
【0372】
好ましい実施形態において、使用されるプロスタグランジンF2αシンターゼは、ヒト、ウシ、ヒツジ、マウスなどの哺乳動物またはTrypanosoma
bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む。
【0373】
好ましくは、上記候補化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する。
【0374】
ある実施形態において、上記候補化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を活性化する活性を有する。
【0375】
別の局面において、本発明は、本発明の方法によって同定された化合物に関する。そのような化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのアンタゴニストまたはアゴニスト、あるいはインヒビターであり得る。そのような化合物は、いったん原子座標が決まったならば、当業者は適宜、当該分野において公知の方法を応用して合成することができる。
【0376】
別の局面において、本発明は、本発明の方法により同定された化合物を有効成分として含む医薬組成物に関する。医薬組成物の製造法は、当該分野において周知であり、本明細書において上述されたとおりである。本発明の医薬組成物は、プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するためのものであり得る。そのような疾患または障害は、当該分野において公知であり、例えば、アフリカ睡眠病、流産、気管支収縮に関する疾患などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0377】
別の局面において、本発明は、本発明の方法によって同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベースを提供する。このようなデータをコードするデータベースの生成法は当該分野において周知であり、本明細書において上述されるような方法を用いて実行され得る。
【0378】
別の局面において、本発明は、本発明の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベースを含む記録媒体を提供する。このような記録媒体は、どのような形態でもよく、例えば、MO、CD−R、CD−RW、CD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−ROM、メモリーカードであってもよい。
【0379】
別の局面において、本発明は、本発明の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベースを含む伝送媒体を提供する。そのような伝送媒体は、当該分野において周知のものが使用され得、例えば、インターネット、イントラネット、LAN、WANなどが挙げられるがそれに限定されない。
【0380】
別の局面において、本発明は、以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルを提供する:
【0381】
【化12】。
Figure 2004180565
【0382】
このファルマコフォアでは、イミダゾリウムイオンはプロトン供与体として、ペルオキシド基の1つの酸素原子をプロトン化し、該ペルオキシド基の他方の酸素原子は、ニコチンアミド環から1つのプロトンおよび2つの電子を受容することにより還元され、Rは任意の基を表し、ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は任意である。上記式において、原子間距離は各原子の中心間の距離を示す。好ましくは、上記式において、ニコチンアミド環のC4位と、イミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は、5.14±0.25Åである。
【0383】
別の局面において、本発明は、以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルを提供する:
式II
【0384】
【化13】。
Figure 2004180565
【0385】
この式において、Oは酸素原子を表し、Rは任意の基を表し、ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は任意であり、原子間距離は各原子の中心間の距離を示す。好ましくは、上記式において、ニコチンアミド環のC4位と、イミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は、5.14±0.25である。
【0386】
他の局面において、本発明は、以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルを提供する:
式III
【0387】
【化14】
Figure 2004180565
【0388】
この式において、原子間距離は各原子の中心間の距離を示し、A〜Eは任意の原子であるが、ただし、AおよびBが両方ともが酸素原子である場合は除かれる。AおよびBが両方とも酸素原子ではないものを選択することによって、酸化還元反応を阻害する効果を付与する能力が高まる。
【0389】
好ましい実施形態において、上記A〜Eの少なくとも1つは非反応性の原子であってもよい。ここで、非反応性の原子とは、本明細書において、NADPHとプロスタグランジンF2αシンターゼとの複合体における酸化還元反応において、通常の反応よりも少ない程度で反応するかまたは全く反応しない原子をいう。そのような原子としては、例えば、炭素など、酸素原子以外のものが挙げられるがそれに限定されない。別の好ましい実施形態では、A〜Eの少なくとも2つ、より好ましくは3つ、さらに好ましくは4つ、別の好ましい実施形態では5つの原子が、そのような非反応性原子であり得る。より好ましくは、A〜Eの少なくとも1つは、炭素原子であり得る。非反応性の原子を有することにより、活性複合体には結合するものの反応を抑制するような化合物を得ることができる。ある好ましい実施形態では、上記AまたはBの少なくとも1つは非反応性の原子である。別の実施形態では、Aは、非反応性の原子である。他の実施形態では、Bは、非反応性の原子である。
【0390】
1つの好ましい実施形態では、AまたはBの少なくとも1つは炭素原子である。別の好ましい実施形態では、Aは、炭素原子である。他の好ましい実施形態では、Bは、炭素原子である。他の好ましい実施形態では、AおよびBのいずれか一方は電子供与体原子または水素結合をし得る原子であり、他方は非反応性の原子である。電子供与体原子であるかどうかは、当該分野に周知の技術を用いてその原子と相互作用をする原子などとの相対的関係を考慮することに決定することができる。この電子供与体原子または水素結合をし得る原子は酸素原子であってもよい。上記実施形態において、非反応性の原子は炭素原子であってもよい。
【0391】
別の好ましい実施形態では、C、DおよびEは炭素原子であってもよい。C、DおよびEが炭素原子であることにより、PGHと類似の形態が保持されることから、反応複合体に結合する能力を保持し得るからである。
【0392】
より好ましくは、Aは炭素原子であり、Bは酸素原子である。別の好ましい実施形態では、Aは酸素原子であり、Bは炭素原子である。
【0393】
他の局面において、本発明は、式IIIのファルマコフォアモデルによって定義される化合物またはその塩を提供する。そのような化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのインヒビターとして有用であり得る。
【0394】
ある好ましい実施形態では、本発明は、
【0395】
【化15】
Figure 2004180565
【0396】
(9,11−ジデオキシ−9α,11α−メタノエポキシプロスタグランジンF2α
または
【0397】
【化16】
Figure 2004180565
【0398】
(9,11−ジデオキシ−9α,11α−エポキシメタノプロスタグランジンF2α
で示される構造を有する化合物またはその塩を提供する。このような化合物またはその塩は、プロスタグランジンF2αシンターゼのインヒビターとして有用であり、医薬組成物の有効成分として使用され得る。
【0399】
別の局面において、本発明は、本発明において同定されたファルマコフォアで規定された化合物を提供する。このような化合物は、本発明で同定されたファルマコフォアのデータを当該分野において周知の技術に適用して用いて、同定することができる。
【0400】
別の局面において、本発明は、本発明のファルマコフォアモデルの、医薬候補分子のスクリーニングにおける使用を提供する。このようなファルマコフォアを上記スクリーニングで使用する場合、本明細書において記載されるようなコンピュータ解析技術を用いることができる。
【0401】
別の局面において、本発明は、本発明のファルマコフォアモデルを使用したスクリーニングによって同定された医薬候補分子を提供する。好ましくは、この分子は、プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する。別の好ましい実施形態では、本発明は、この医薬候補分子を含む、医薬組成物を提供する。
【0402】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための医薬組成物を調製する方法を提供する。この方法は、A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;B)上記三次元分子モデルと、上記医薬組成物に含まれるべき候補化合物のライブラリーとの相互作用を評価する工程;C)上記候補化合物のうち、上記プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する作用を有する化合物種を選択する工程;およびD)上記化合物種と、薬学的に受容可能なキャリアとを混合する工程、を包含する。ここで、上記A)〜C)までは、本明細書において別の箇所において記載されるような技術を用いて行うことができる。D)混合する工程もまた、当該分野において周知の技術を用いて行うことができ、例えば、そのような方法は、日本薬局方において記載されるような技術を用いて実施することができる。好ましくは、上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されたものであり得る。より好ましくは、上記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む。別の実施形態において、上記相同体または改変体は、本発明の方法によって得られたものを利用することができる。
【0403】
好ましい実施形態において、本発明において用いられるプロスタグランジンF2αシンターゼは、ヒト、ウシ、ヒツジ、マウスなどの哺乳動物、またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む。
【0404】
好ましくは、化合物種を合成して大量に該化合物種を製造する工程、をさらに包含する。そのような大量合成方法は、いったんその化合物種の合成方法が分かれば、当業者は当該分野において周知の方法を用いて実施することができる。
【0405】
より好ましい実施形態において、本発明の上記医薬組成物において含有される化合物種について、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性に関する生物学的試験を行う工程をさらに包含する。そのような生物学的試験は、インビトロまたはインビボあるいは動物実験であってもよい。そのような生物学的試験を行う方法は、当該分野において周知である。
【0406】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための方法を提供する。この方法は、A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;B)上記三次元分子モデルに基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する手段を同定する工程;およびC)該調節手段を該疾患または障害に罹患するかまたはその可能性のある被検体に投与する工程、を包含する。好ましくは、このプロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されたものであり得る。より好ましくは、この原子座標は、図9に記載の原子座標を含む。別の実施形態において、上記相同体または改変体は、本発明の方法によって得られたものであってもよい。
【0407】
好ましい実施形態において、上記プロスタグランジンF2αシンターゼは、ヒト、ウシ、ヒツジ、マウス、ラットなどの哺乳動物、またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む。ヒト、ウシ、ヒツジ、マウス、ラットなどの哺乳動物、であれば、自己に由来するプロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節することによってプロスタグランジンF2αシンターゼの異常に起因する疾患または障害を処置することができるからである。また、Trypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼの場合もまた、ヒトにおけるアフリカ睡眠病および動物におけるナガナの病因であることが分かっていることから、その活性を調節することは、そのような病因を抑制または除去するのに有用であるからである。
【0408】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。他の実施形態において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。他の実施形態において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法を実行するコンピュータを提供する。1つの実施形態において、このプログラムが実行させる方法は、A)候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程、を包含する。別の実施形態において、このプログラムを実行させる方法は、A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;およびB)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程、を包含する。このような三次元分子モデルを得る技術および比較工程をコンピュータに実行させる技術は、当該分野において周知であり、本明細書において他の場所において引用したプログラムを利用することもできる。
【0409】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。他の実施形態において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。他の実施形態において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法を実行するコンピュータを提供する。1つの実施形態において、このプログラムが実行させる方法は、A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;およびB)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程を包含する。このような三次元分子モデルを得る技術および変異導入工程をコンピュータに実行させる技術は、当該分野において周知であり、本明細書において他の場所において引用したプログラムを利用することもできる。ここで、所定のパラメータには、例えば、極性、疎水性、親水性、化学的性質、化学構造、分子量、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、錯体形成能、レセプター−リガンド相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0410】
別の局面において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。他の実施形態において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。他の実施形態において、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法を実行するコンピュータを提供する。1つの実施形態において、このプログラムが実行させる方法は、A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;およびB)該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程を包含する。このような空間座標を決定する技術および電子的なスクリーニング工程をコンピュータに実行させる技術は、当該分野において周知であり、本明細書において他の場所において引用したプログラムを利用することもできる。
【0411】
別の局面において、本発明は、候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。他の実施形態において、本発明は、候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。他の実施形態において、本発明は、候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法を実行するコンピュータを提供する。1つの実施形態において、このプログラムが実行させる方法は、A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;B)該三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;およびC)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、該三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程を包含する。このような三次元分子モデルを得る技術、原子間の距離の検索、および活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程をコンピュータに実行させる技術は、当該分野において周知であり、本明細書において他の場所において引用したプログラムを利用することもできる。
【0412】
上述の記録媒体は、上記プログラムを記録することができるものであれば、どのようなものでもよく、例えば、そのような媒体としては、例えば、MO、CD−R、CD−RW、CD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−ROM、メモリーカードなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0413】
使用されるコンピュータも、上記プログラムが実行され得る限り、どのようなものでもよく、例えば、Windowsベース、UNIXベース、Mac OSベース、LINUXベースなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0414】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解されるべきである。
【0415】
【実施例】
(実施例1:プロスタグランジンF2αシンターゼの結晶化および三次元構造解析)
(材料および方法)
(結晶化およびデータ収集)
Trypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼの結晶化は、当初マルトース結合タンパク質とプロスタグランジンF2αシンターゼとの間の融合タンパク質として合成して行ったが、全く成功しなかった収量および純度のいずれかまたは両方に問題があったものと考えられた。これは、おそらく、プロテアーゼによる分解での段階の問題が考えられた。
【0416】
次に、本発明者らは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとの融合タンパク質としてこのプロスタグランジンF2αシンターゼを発現させた。発現は、当該分野において周知の方法を用いて行った。詳細な手順は、以下に一部詳述する。
【0417】
グルタチオン−S−トランスフェラーゼを用いても、疎水性が高いことにより膜などへの吸着性が高いという問題、精製の段階でのサンプル量が低減するという問題があった。したがって、このサンプルを用いた場合でも結晶化のためには詳細な条件検討を行う必要があった。
【0418】
そこで、本発明者らは、HEPESまたはTris−HClを緩衝剤として使用して、適切な緩衝溶液を選定した。すると、HEPESのほうが一般的に良好な結果を示した。同時に、硫酸アンモニウムの濃度を0.1M刻みで、およびpHを0.1刻みで振り、詳細な条件検討を行った。すると、pHでは7.4以下でも7.6以上でも有意な結晶化は行われなかったが、pH7.5のとき、2.0M(NHSOの濃度でうまく結晶化することが観察された。この(NHSOの濃度は、1.9M以下でも2.1M以上でもうまく結晶化する結果に至らなかったことにかんがみると、非常に特異な条件ということができる。
【0419】
上記結果にかんがみ、構造解析のために、100mM HEPES/NaOH(pH 7.5)中のネイティブ酵素溶液(15mg/ml)を、25℃にて1:2の比率でリザーバー溶液[2%PEG−400,2.0M(NHSOおよび100mM HEPES/NaOH(pH7.5)]を用いるハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化した。この条件下で3つの結晶を得ることができた。そのうち1つの結晶解析に成功した。
【0420】
結晶は、0.2×0.1×0.1mmの最終サイズを有し、そして正方晶に達した。この正方晶は空間群P42を有し、a=112.3±0.3Å、b=112.3±0.3Å、c=140.0±0.7Åのセル寸法(結晶格子定数)を有し、そして非対称単位中に2分子を有する。複合体の結晶は、TbPGFSのネイティブ結晶を500mM NADPH溶液にソーキングして得た。回折データを、本発明者らの研究室において室温で収集した。プログラムDENZOおよびSCALEPACK(OtwinowskiおよびMinor,1997,Methods in Enzymology,276,307−326)を用いて、すべてのデータセットを指数付けし、積分し、そしてスケーリングした。
【0421】
(構造の決定および精密化)
初期モデルとしてSus scrofaアルドースレダクターゼ(PDBコード:1AH3)の構造を使用し、プログラムAMoRe(Navaza,1994,Acta Cryst.,A50,157−163)による分子置換法によって構造を決定した。3.0Å分解能までのデータを用いて回転関数の計算の後、本発明者らは、非対称単位中に存在する2分子に対応した2つの解を得た。この結果、相関係数52.1%および信頼度因子R=46.4%を生じた。引き続いて、プログラムTURBO−FRODO(Jones T.A.,FRODO.Methods Enzymol.115:157−171(1985))を使用して構造精密化サイクルを行い、そして剛体近似最小化後にモデル構築を行うことによって、ポリペプチド鎖のトレースを完成した。構造の精密化を、プログラムCNS(Brunger,A.T.,et al.(1998),Curr.Opin.Struct.Biol.,8,606−611)で行った。この精密化手順は、以下を包含した:CNSによって提供される、シミュレートアニーリング、位置精密化、拘束温度因子精密化および最尤アルゴリズム(maximum−likelhood;マイキマムライクリフッド)。水分子を手動で挿入し、次いで、Fo−Fcマップを検査することによって調べた。NADPHおよびスルフェートアニオンは、精密化の初期サイクル後に電子密度上に明確に確認され、モデルに挿入した。非対称単位中にある両分子のすべての残基は類似しており、構造アラインメント上での0.26Åのrms偏差を示した。
【0422】
(部位特異的変異誘発)
TbPGFSにおける点変異研究のために、高度に保存されたアミノ酸残基を点変異の対象として、TbPGFS−NADPH結晶複合体の詳細な構造情報に基づいて選択した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異誘発を行って、適切に変異させたcDNAを生成した。各変異体についてのミスマッチコドンを含む、一連のセンス(F)およびアンチセンス(R)プライマーを、PCR−変異誘発のために設計した。部位特異的変異誘発を使用して、D47N、A49S、I51A、Y52F、K77L、W79F、W79Y、H110F、W111V、K77R、およびW111Fを生成するために用いたオリゴヌクレオチドプライマー対は、それぞれ、以下の通りであった:(F)5’−GCTATCGTCACATCAATACTGCAGCCATCTATAAAAATG−3’(配列番号6)および(R)5’−GTATTGATGTGACGATAGCCGC−3’(配列番号7);(F)5’−TCAGCCATCTATAAAAATGAAG−3’(配列番号8)および(R)5’−CATTTTTATAGATGGCTGAAGTATCGATGTGACGATAG−3’(配列番号9);(F)5’−GCAGCCGCCTATAAAAATGAAGAAAG−3’(配列番号10)および(R)5’−CATTTTTATAGGCGGCTGCAGTATCGATGTG−3’(配列番号11);(F)5’−GCAGCCATCTTTAAAAATGAAGAAAGCGCTGG−3’(配列番号12)および(R)5’−CATTTTTAAAGATGGCTGCAGTATCGATG−3’(配列番号13);(F)5’−GACGCTGCTTTGGAACTCCGACCAGGG−3’(配列番号14)および(R)5’−CGGAGTTCCAAAGCAGCGTCGTGACGAATAGCTC−3’(配列番号15);(F)5’−GACGAAGCTTTTCAACTCCGACCAGGGATATG−3’(配列番号16)および(R)5’−CGGAGTTGAAAAGCTTCGTCGTGACGAATAGC−3’(配列番号17);(F)5’−GACGAAGCTTTACAACTCCGACCAGGGAATG−3’(配列番号18)および(R)5’−CGGAGTTGTAAAGCTTCGTCGTGACGAATAGC−3’(配列番号19);(F)5’−ATCTTCTGGCCGGGGAAGGACAAG−3’(配列番号20)および(R)5’−TCCTTCCCCGGCCAGAAGATGAGGTATAGGTCAAC−3’(配列番号21);(F)5’−ATCCACGTGCCGGGGAAGGACAAGTTTATTG−3’(配列番号22)および(R)5’−TCCTTCCCCGGCACGTGGATGAGGTATAGGTC−3’(配列番号23);(F)5’−TCACGACGAGGCTTTGGAACTCCGAC−3’(配列番号24)および(R)5’−GTTCCAAAGCCTCGTCGTGACGAATAG−3’(配列番号25);(F)5’−CCTCATCCACTTCCCGGGGAAGGACAAG−3’(配列番号26)および(R)5’−TCCCCGGGAAGTGGATGAGGTATAG−3’(配列番号27)。下線を付したコドンは、変異させた部位を示す。pGEX4T−1からの野生型TbPGFS ORFを、pUC18中にサブクローニングした。得られたWt−pUC18プラスミドを、PCR増幅のためのテンプレートとして使用した。第1のPCR反応は、PyroBestポリメラーゼ(Takara Shuzo,Japan)で増幅させた。この第1のPCR反応は、各変異体についての遺伝子特異的センスFプライマーおよびアンチセンスM13Rプライマー、ならびに、センスM13Fプライマーおよび各変異体についての遺伝子特異的アンチセンスRプライマーの両方を用いて実施した。各変異体の第1のPCR反応から得られた生成物を混合し、そして第2のPCR反応のためのテンプレートとして使用した。この第2のPCR反応は、各変異体についての遺伝子特異的センスFプライマーおよびアンチセンスM13Rプライマー、ならびに、各変異体についての遺伝子特異的アンチセンスRプライマーおよびセンスM13Fプライマーを用いた。各変異体の第2のPCR反応からの生成物をpUC18中にクローニングし、そして配列決定した。引き続いて、ミスマッチコドンを含んだオープンリーディングフレームをpGEX4T−1中にクローニングし、そしてその配列を調べた。
【0423】
(変異体TbPGFSの発現および精製)
5’末端にそれぞれEcoRI制限部位およびSalI制限部位を有する、野生型TbPGFS cDNAおよび変異体TbPGFS cDNAのコード領域を、pGEX−4T−1発現ベクター(Amersham pharmaciaBiotech)の対応する部位にクローン化した。得られた発現ベクターを、Escherichia coli BL21(DE3)の形質転換のために用いた。形質転換された細胞を、0.5mMイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下において、30℃で8〜10時間培養した。Escherichia coli BL21(DE3)形質転換体を、遠心分離によって収集し、膵臓抽出物、プロナーゼ、サーモリシン、キモトリプシン、トリプシンおよびパパイン(CompleteTM,Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)の可逆的インヒビターおよび不可逆的インヒビター(25ml中に1錠)を含むカクテルを含有するPBSを用いて洗浄し、同じ緩衝液中に懸濁し、そして音波破砕によって破壊した。遠心分離によって細片を除去した後、上清中の組換えタンパク質を、製造業者のプロトコールに従って、GSH−Sepharose 4B樹脂(New England Biolabs,Inc.)上にてアフィニティークロマトグラフィーを行うことによって精製した。GSH−Sepharose 4Bゲルに結合した野生型TbPGFSおよび変異体TbPGFSを、トロンビンを用いてグルタチオン−S−トランスフェラーゼから切断し、そしてPBSを用いて溶出した。得られた組換えタンパク質を、20mM Tris/Cl(pH8.0)緩衝液に対して透析し、そして同一緩衝液で平衡化したDEAEアニオン交換カラムに適用した。タンパク質を、同一緩衝液中における0〜500mM NaClの増加直線勾配で溶出した。
【0424】
タンパク質濃度を、ビシンキノン酸(bicinchinonic acid)試薬(PIERCE,Rockford,Il)を使用して決定した。この決定において、製造業者のプロトコールに従ってBSAを標準として用いた。タンパク質の純度を、14%(w/v)ゲルでのSDS−PAGEによって評価した。このゲルを、Sypro Orange(Bio−Rad laboratories,Hercules,CA)またはCoomassie Brilliant Blue(Daiichi Pure Chemicals)で染色した。
【0425】
(酵素アッセイ)
PGHレダクターゼ活性を、適切な酵素アリコート、5μM[1−14C]PGH(最終濃度)、100μlの100mMリン酸ナトリウム(pH7.0)および100μM NADPH生成系(Kubata,B.K.,et al,(2000)J.Exp.Med.,192,1327−1337.)を含む反応混合物と共に、2分間37℃でインキュベートすることによって測定した。反応を停止した後、このアリコートを、以前に記載されたように(Kubataら,2000、前出)、薄層クロマトグラフィーに供した。
【0426】
(UV CD分光法)
野生型酵素および変異体酵素のCDスペクトルを、J−600分光偏光計(Jasco International Co.Ltd Tokyo)で記録した。このJ−600分光偏光計は、1mmパス長のキュベットを備えた。セルホルダー内の温度を、循環水サーモスタットによって10℃に維持した。野生型TbPGFSおよび変異体TbPGFSのスペクトルを、Tris/Cl緩衝液(pH8.0)中において記録した。記録されたスペクトルは、50nm/分での10スキャンの平均である。
【0427】
(野生型酵素および変異体酵素の動態分析)
pHの影響を、各50mMのリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムおよびAMPSOを含有するトリプル緩衝液系を使用して、pH5.0〜pH9.0まで研究した。PGH還元についてのκcatおよびKの値の測定を、100μM NADPHにて、種々の基質濃度で行った。
【0428】
(蛍光消光アッセイ)
野生型TbPGFSおよび変異体TbPGFSに対するNADPHの結合を評価するために、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含む200μlの反応混合物中において、種々の濃度のNADPH(20μl)を、TbPGFSと混合して、1.5μMの最終酵素濃度を得た。37℃での2分間のインキュベーション後に、FP−750分光蛍光計(Jasco International Co.Ltd.,Tokyo)を励起波長282nmおよび発光波長338nmで使用することにより、固有トリプトファン蛍光を測定した。各リガンドとの非特異的な相互作用によって引き起こされるトリプトファン蛍光の消光を、1.5μM N−アセチル−L−トリプトファンアミドを用いて補正した。TbPGFSに対するNADPHの結合についての解離定数(K)値およびモル比(n)を、Levine,R.L.(1977)Clin.Chem.,23,2292−2301に記載されるようにして算出した。
【0429】
(結果および考察)
(全体的な構造の説明)
本発明者らは、TbPGFS−NADPH二成分複合体の結晶構造を得た。この複合体化酵素の結晶構造を、分子置換法によって決定し、そして2.6Åの分解能において、R=0.194およびRfree=0.227まで精密化した。この複合体構造に関する精密化の他の統計学的特性および結晶学的特性を表1に示す。ラマチャンドランプロット(データは示さず)によって、87.7%の残基が大半の有利な領域内に位置付けられるのに対して、残りの残基はさらなる認められた領域内に見出されることが示された。これにより、この複合体モデルが立体化学的に高度に良質であることが実証された。
【0430】
【表1】
Figure 2004180565
【0431】
組換えTbPGFSは、276アミノ酸残基の一本鎖ポリペプチド(図1A)からなり、33kDaの分子量を有する(Kubataら,2000、前出)。TbPGFSの全体的な構造(図1AおよびB)は、2,5−ジケト−D−グルコン酸レダクターゼA(2,5DKG)(Khurana,S.,(1998)Proc.Natl Acad.Sci.USA,95,6768−6773)、ヒトアルドースレダクターゼホロ酵素(hum ADR)(Wilson,D.K.,et al.,(1995)Science,257,81−84)、ラット肝臓3α−ヒドロキシステロイド/ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ(rat 3αHSD)(Hoog,S.S.,et al.,(1994)Proc.Natl Acad.Sci.USA,91,2517−2521)などのようなAKRメンバーについて記載されていた構造位相と本質的に類似した構造位相を示した。TbPGFSはα/βバレルへと折り畳まれ、このバレルはトリオースホスフェートイソメラーゼにおいて最初に記載されていたもの(Banner,D.W.,et al.,(1975)Nature,255,609−614)と類似した。TbPGFSのα/βバレルは、βシートに対して逆方向に走る8個のαヘリックスによって囲まれた8個の平行なβ鎖の円筒形コアから構成される(図1B)。この(α/β)構造は、この分子のC末端側にある2個の過剰なαヘリックス(H1およびH2)に割り込まれる。ヘリックスH1は、β7とα7との間に位置し、一方でヘリックスH2は、α8の後ろに見出される(図1AおよびB)。このバレルの底面は、半径の小さなターンによって連結された逆平行に走る2個のさらなるβ鎖(B1およびB2;それぞれ、残基7〜9位および14〜16位に対応する(図1AおよびB))から構成されるβヘアピン様構造によって塞がれる。これらの過剰な構造H1、H2、B1およびB2はまた、AKRスーパーファミリーの他のメンバーにおいても見出された(Farber G.K.&Petsko G.A.,Trends Biochem.Sci.,15:228−234(1990);Borhani,D.W.,et al.,(1992)J.Biol.Chem.,267,24841−24847;Wilson,D.K.,et al.,(1992)Science,257,81−84)。C末端の19アミノ酸残基は、中心のβバレルのC末端面の縁周辺にリップ様構造を構築することによって、基質結合ポケットの部分の概略を作り出す(図2AおよびB)。TbPGFSといくつかの他のAKRとの間での主要な構造的差異の1つは、このTbPGFS酵素の構造にはショートループが存在する点である。TbPGFSは、2,5DKGと共にAKRスーパーファミリーの第5ファミリーに属する。このファミリーの中で、最初に3D構造が解析されたメンバーは、2,5DKGであり(Jez,J.M.and Penning,T.M.(2001)Chem.Biol.Interact.,130−132,499−525)、TbPGFSは、3D構造が解析された2番目のメンバーとなる。TbPGFSモデルとrat 3α−HSDとを、対応するCα原子からの1.5Åの平方自乗平均(r.m.s.)偏差で重ね合わせると(図2AおよびB)、hum ADR、por ADRおよびrat 3α−HSDのようなAKRの第1ファミリーの酵素において観察されるような顕著に長いループの存在とは著しく対照的な、TbPGFSにおけるループA、Bおよびβ1−α1の欠失が明らかとなった(図1Aおよび2)。TbPGFSのショートループA、Bおよびβ1−α1は、それぞれ、β4−α4の間、β7−H1の間およびβ1−α1の間に見出され、そして2,5DKGについて記載されていたものと類似した(Khuranaら,1998、前出)。このことは、このショートループの存在が、第5ファミリーのメンバーに共通した特徴である可能性が高いことを示唆する。
【0432】
(NADPH結合部位)
アルド/ケトレダクターゼは、NADPHを結合するためのロスマンフォールドを有さない。従って、ピリジンヌクレオチドは、バレルの外縁から、バレルの中心コアの深部に位置付けられたニコチンアミド環を有する内部コアまで伸長する間隙内の伸長コンフォメーションにおいて結合される。一方、アデニンおよびピロホスフェート基は、一対のβ鎖とαヘリックスとの間で、βバレルの外側の凹部表面に押し込まれる(図2)。タンパク質分子全体におけるNADPHの電子密度(図3A)および残基は、2.6Åの分解能で精密化された構造について予期されたように十分に解析された。酵素−NADPH複合体は、2,5DKGにおける場合(Khuranaら,1998、前出)と同様に、16個の水素および2つのイオン結合によって安定化される(図3B)。TbPGFSとNADPHとの間における顕著に少ない数の相互作用は、このトリパノソーマの酵素と、hum ADRおよび3α−HSDのような第1ファミリーのアルド/ケトレダクターゼとで対照的である。なぜなら、hum ADRおよび3α−HSDのような第1ファミリーのアルド/ケトレダクターゼは、補因子と、19個の水素結合、3つの塩橋、および底部における1つの芳香環スタッキングを形成するからである(Wilsonら,1992、前出)。結果的に、TbPGFSは、rat 3α−HSDについてのK=195nMと比較して非常に高いK値(134μM)を、NADPHに対して示した。このことは、補因子に対するより緩い結合を示す。これはまた、hum ADR(Bohrenら,1992、前出)のK=2μM(NADPHに対して)に対して、TbPGFSのK値がより高かったこと(NADPHに対して5.7μM)(Kubataら,2000、前出)をも説明し得る。さらに、これまでに報告されているAKRスーパーファミリーの他のメンバーとは異なり、TbPGFSは、Trp187残基の後ろにあるループBの領域中に欠失を示す。この欠失は、この領域内のタンパク質の長さを短くし、そしてTrp187残基を引き戻す。この結果として、Trp187は、ニコチンアミド環のC3−C4結合とTrp187インドール環のCG−CD2結合との間で22°の二面角を形成し、かつニコチンアミド環のアミド基とインドール環のCG−CD1結合との間で7°の二面角を形成することによって、ニコチンアミド環に対して平行なコンフォメーションをとる(図3C)。ニコチンアミド環のC3、C4およびC7原子は、それぞれTrp187のCG、CD2およびCD1原子から、わずか3.6Å、3.3Åおよび3.7Åの距離であるので、ニコチンアミド環のC4から水素化物を取り除くことにより、低い活性化エネルギーで、ニコチンアミド環とTrp187との間でπ−π相互作用が形成される。従って、TbPGFSが有するこの固有の構造的特徴は、ニコチンアミド環が、このスーパーファミリーの他の酵素において見出されるように底部からではなく、Trp187の側方にスタッキングされること(図3C)を実証する。さらに、本発明者らは、補因子のピロホスフェート基が、バレル表面上の間隙に結合することを見出した。この間隙は、一方の側面では、すべてループBに結合している残基188、190、192が内表面となり、他方の側面では、ループ8に保持されるLys230残基のみが内表面となる。ピロホスフェート基は、Ser188、Leu190、Gln192および1分子の水との特異的な水素結合性相互作用のみによって適所に保持された(図3AおよびB)。第1ファミリーのAKRでは、その結晶構造は、補因子のピロホスフェート基上で折り畳まれ、そしてピロホスフェート部分が通過する「セイフティーベルト」として公知の短いトンネルを形成する、β7/ループBのポリペプチド領域の伸長によって特徴付けられる。例えば、hum ADR(Wilsonら,1992、前出)では、この「セイフティーベルト」は、Asp216とLys21とLys262との間での塩橋によって安定化される。しかし、TbPGFSの結晶構造では、残基216はループBから欠失しており、そしてLys24(hum ADRにおけるLys21と類似する)は、ピロホスフェート基から約6.3Å離れて位置付けられる。従って、TbPGFSは「セイフティーベルト」を有さない(図2Aおよび3C)。第1ファミリーのAKRにおけるセイフティーベルト構造はNADPH補因子を覆うということ、そして、ループB領域における顕著なコンフォメーション変化が、hum ADR(Wilsonら,1992、前出)における補因子の結合および放出に必須であるように考えられていることから、本発明者らは、TbPGFSに対する補因子の結合には、このような構造的転位が関与しないことを予期した。さらに、TbPGFS−NADPH複合体の形成および解離に必要とされるループBの大きな移動もまた、アルドースレダクターゼにおけるNADPHの結合および放出の二相性動態を担うことが考えられていた(Grimshaw,C.E.,et al.,(1990)Biochemistry,29,9947−9955;Kubiseski T.J.et al.,J.Biol.Chem.267:6510−6517(1992))。しかし、本明細書中で開示された構造に基づき、本発明者らは、TbPGFSに対する補因子の結合の動態が、二相性の特徴を示さないことを予期した。
【0433】
(活性部位および推定基質結合ポケット)
TbPGFSの活性部位は、他のすべてのα/βバレル酵素において観察されているように、βバレルのC末端に位置付けられる(図4)(Farberら,1990、前出;Branden C.I.,QUARTERLY REVIEWS OF BIOPHYSICS:13:317−338(1980))。4−プロ−R水素が常にポケットの開口部を向く(図4、右側パネル)ようにニコチンアミド環が方向付けられる活性部位ポケットの切片から、活性部位ポケットは、ニコチンアミド環のC4位から約3.2Å×4.7Å×7.0Å(長さ×幅×深さ)の寸法を有することが明らかとなった。2,5DKGの活性部位ポケット[5Å×6Å×9Å](Khuranaら,1998、前出)またはhum ADRの活性部位ポケット[7Å×13Å×9Å](Wilsonら,1992、前出)と比較すると、TbPGFS活性部位の寸法は有意に小さい。Met22、Asp47、Ala49、Lys77、Ser139、Asn140、およびGln161の残基は、この活性部位ポケットの底部に見出される。一方、この活性部位ポケットの上側は、芳香族性および無極性の残基Tryp23、Ile51、Tyr52、Trp79、His110、Trp111およびTrp187から構成される。2,5−DKG、hum ADR、por ADRおよびrat 3α−HSDの構造とTbPGFSの構造との比較によって、トリパノソーマ酵素(Jez,J.M.,et al.,(1997)Biochem.J.,326,625−636)の活性部位において高度に保存された残基Asp47、Ala49、Tyr52、Lys77、His110およびTrp79が明らかとなった。しかし、AKRにおいて基質の特異性を決定することが知られている51位および111位のアミノ酸は異なっていた。TbPGFS結晶構造は、多くの点で、2,5DKGの結晶構造と類似した。しかし、この2つの酵素の間での大きな差異が、TbPGFS中には水分子が存在しないという点に見出された。2,5DKGの活性部位ポケットは、よく順序付けられた2個の水分子を含む。この水分子は、この活性部位ポケットの基質のカルボニル基およびヒドロキシル基の方向付けにおいて重要な役割を果たす(De Winter,H.L.and Von Itzstein,M.(1995)Biochemistry,34,8299−8308)。しかしTbPGFSでは、おそらくこのポケットの高度な疎水性に起因して、これらの水分子が存在しない。TbPGFSポケットは、これらの水分子の代わりに、スルフェートアニオンを含んだ。TbPGFSモデルと、hum ADR(Wilsonら,1992、前出)、porc ADR(Rondeau,J.M.,et al.,(1992)Nature,355,469−472)およびrat 3α−HSD(Hoog,S.S.,et al.,(1994)Proc.Natl Acad.Sci.USA,91,2517−2521)の構造の三成分複合体とを、NADPH分子のC4原子を対応させて、それぞれ0.20Å、0.7Å、0.20Åおよび0.24Åのrms偏差で重ね合わせると、これらの酵素における基質結合は、スルフェートアニオン結合部位に対応することが明らかとなった(図4)。この結果から、このスルフェートアニオン結合部位が、9,11−エンドペルオキシドPGH結合部位である可能性が高い部位として同定された。しかし興味深いことに、他の酵素の基質はいずれも、このTbPGFS基質結合ポケットモデルに合致し得なかった。これは、このポケットに固有の構造的配置および形状に起因する(図4、右側パネル)。これらの知見は、TbPGFSが他の基質の還元を触媒しなかったので、TbPGFSはPGHに高度に特異的であるとした本発明者らの以前の観察(Kubataら,2000、前出)とよく一致し、そしてTbPGFS酵素についての基質特異性の構造的基礎を提供する。これらの知見に基づき、本発明者らは、TbPGFSに対するPGHの結合についてのモデルを提供する(図5)。このモデルでは、PGHは、補因子のニコチンアミド環の上部の浅い楕円形間隙を横切って、伸長コンフォメーションにおいて結合する。PGHのα鎖およびω鎖は、各々反対方向に伸長してこの間隙のリップをまたぎ、一方で、9,11−エンドペルオキシド結合を有するシクロペンタン環は、ニコチンアミド環のC4の近傍に近いキャビティ内の深部に方向付けられる。
【0434】
(変異誘発分析および動態学的分析)
AKRに関するいくつかの結晶学的研究、変異誘発研究および動態学的研究によって、これらの酵素の活性部位ポケットにおけるNADPHのニコチンアミド環近傍において高度に保存された多数のアミノ酸残基が同定され、そしてこれらのアミノ酸残基が種々の基質の触媒に関与することが証明されていた(Rondeauら,1992、前出;Wilsonら,1992、前出;Hoogら,1994、前出;El−Kabbani,O.,et al.,(1995)Nat.Struct.Biol.,2,687−692;Wilson,D.K.,et al.,(1995)Biochemistry,34,14323−14330;Jezら,1997、前出;Schlegelら,1998a)。TbPGFSの構造分析によって、Asp47、Tyr52、Lys77、およびHis110が、TbPGFS酵素におけるこれらの残基の対応物であることが明らかとなった。TbPGFSにおいてこれらのアミノ酸の位置が保存されていることは、すべてのAKRに共通することが公知の触媒機構を使用して、このトリパノソーマ酵素が十分に作用し得ることを示唆する。このすべてのAKRに共通することが公知の触媒機構では、Tyrが触媒中心であって、プロトンを供与/受容することにより一般酸/塩基触媒として作用し(Schlegel,B.P.,et al.,(1998)Biochemistry,37,3538−3548)、Hisは、還元の間のプロトン供与を容易にする(Schlegel,B.P.,et al.,(1998)Biochemistry,37,11003−11011)か、または活性部位において基質カルボニルを方向付け(Bohren,K.M.,et al.,(1994)Biochemistry,33,2021−2032;De WinterおよびItzstein,1995、前出)、Lysは、TyrのpK値を低下させる水素結合を作製することによって、酸化の間のTyrによるプロトン除去を容易にし、そしてAspは、Lysを安定化する塩橋を形成することが公知である(Hoogら,1994、前出;Pawlowski,J.E.and Penning,T.M.(1994)J.Biol.Chem.,269,13502−13510;Wilsonら,1995、前出)。この仮説を確証するため、そして9,11−エンドペルオキシドPGHの還元に関する分子学的基礎を解明するために、本発明者らは、この活性部位ポケットにおける5つの変異体(すなわち、D47N、Y52F、K77L、K77R、およびH110F)を作製した。また、本発明者らは、TbPGFS酵素の基質結合に関する洞察を得るために、基質を結合することが提案された残基における他の6つの変異体(すなわち、A49S、I51A、W79F、W79Y、W111V、W111F)を作製した。次いで、本発明者らは、PGHの還元に対する各変異体の影響を評価した。野生型TbPGFS酵素と比較して、変異体K77LおよびH110Fは酵素活性をすべて失ったが(図6A)、D47NおよびK77R変異体は、比活性のわずかな増加を生じた(ぞれぞれ、161%および158%)。対照的に、変異体Y52FはPGHの還元を変更しなかった。このことは、Tyr52のOH基が触媒に必須ではないことを示す。さらに、疎水性ポケットに変異を導入した6つの変異体の中では、A49SおよびI51A変異体は影響を示さず(データは示さず)、W79FおよびW111Vは、それぞれ野生型の0.1%未満および0.25%未満のみの活性を保持し、そしてW79YおよびW111Fは、それぞれ75%および78%の活性を保持した(図6A)。
【0435】
本発明者らはさらに、触媒効率(κcat/K)を決定することによって、PGHの還元に対する変異の影響を研究した。これらの変異体の動態分析(表2)によって、Y52F変異体のκcat/K値は、野生型酵素のκcat/K値と類似することが明らかとなった。このことは、これらの変異によって、κcatもKも影響を受けないことを示す。対照的に、D47N、K77R、W79YおよびW111F変異体は、主にK値の増加(それぞれ、10倍、20倍、12倍および18倍)に起因して、κcat/K値を有意に減少させた。従って、これらの結果は、これらのアミノ酸残基での変異が、触媒ではなく主にPGH結合に影響を及ぼしたことを示す。
【0436】
【表2】
Figure 2004180565
【0437】
TbPGFSの活性部位は、4個の残基(Asp47、Tyr52、Lys77およびHis110)を含む。これらの各アミノ酸は、触媒の間にプロトンを供与または受容することによって、一般酸/塩基触媒として作用し得る。Asp47およびTyr52は触媒に影響を有さなかったので、これらのアミノ酸は、NADPHからPGHへの水素化物移動を容易にするための一般酸触媒としては機能し得ない。他方で、K77LおよびH110Fが、検出不可能なκcatでPGHの還元を完全に無効にしたという知見は、触媒の間に一般酸/塩基触媒として作用し得る2つの可能な候補(Lys77およびHis110)の存在を示唆する。しかし、この2つのアミノ酸の中で、His110は、プロトン供与体である可能性が最も高いと考えられる。なぜなら、野生型TbPGFSによるPGHの還元に対するpHの影響の研究から、最大活性のためにプロトン化されなければならない約6.8のpKを有するイオン化可能基が明らかにされたからである。このpK値は、Hisのイミダゾリウムイオンのプロトン化アミノ基の解離に必要とされる6.0〜7.0のpK範囲内であり、そしてLysのプロトン化ε−アミノ基の解離に必要とされる7.6〜10.6のpK範囲外である。さらに、NADPHのニコチンアミド環のC4に対してHis110がより近傍にあること(すなわち、ニコチンアミドのC4およびスルフェートアニオン(推定基質結合部位)の酸素原子からLys77のε−アミノ基のN原子までが、それぞれ、5.9Åおよび6.6Åであるのと比較して、His110のイミダゾリウムイオンのN原子は、ニコチンアミドのC4およびスルフェートアニオンの酸素原子から、それぞれ、4.8Åおよび2.9Åに位置付けられること)は、プロトン供与体としてのHis110の役割を支持する。従って、本発明者らの知見は、TbPGFSのHis110を変異させることによって、NADPHからPGHへの水素化物移動を容易にする一般酸触媒として機能するイオン化可能基が排除されることを示し、このHis110アミノ酸残基をプロトン供与体として同定する。さらに、W79FおよびW111V変異体による完全な活性損失は、これらの残基が、基質結合に干渉し得ることを示唆する。この考えは、W79YおよびW111Fの置換が、κcatではなく主にK値を変更したという事実によって支持される。
【0438】
しかし、本研究全体を通して観察された活性損失は、触媒または基質結合に対する特定変異の特異的な影響ではなくコンフォメーション変化に起因し得ることが考えられたので、本発明者らは、これらの変異体の全体的な三次元構造、特に、そのNADPH結合部位および基質結合部位の全体的な三次元構造がインタクトであることを確認した。野生型酵素および変異体酵素のCDスペクトルは、変異体タンパク質の三次元構造のいかなる有意な変化をも示唆せず(データは示さず)、そしてこれらの変異体のNADPH結合定数(K)値は、野生型酵素について決定された値(K=134μM)の範囲内であることが見出された。このことは、これらの酵素とNADPHとの相互作用が影響を受けなかったことを示す。
【0439】
さらに、PGHは、シクロペンタン環のC9における1つの酸素原子およびC11における別の酸素原子によって化学的に特徴付けられる。次いで、これらの2つの酸素原子は共有結合して、エンドペルオキシドを作製する。プロトン受容体として機能する酸素原子を同定するために、本発明者らは、TbPGFSによるこれらの基質の還元に対するPGHアナログU−44069およびU−46619の効果を試験した。U−44069およびU−46619は、PGHレセプターのアゴニストであることが知られる。これらの構造は、以下のとおりである。
【0440】
【化17】U−46619
Figure 2004180565
【0441】
および
【0442】
【化18】U−44069
Figure 2004180565
【0443】
化学的に、これらの構造は、U−44069ではC11の酸素原子およびU−46619ではC9の酸素原子が、CH基で置換されていることを除いて、PGHと類似している。種々の濃度のU−44069との野生型TbPGFSのプレインキュベーションは、PGHの還元に対して影響を有さなかった(図6B)。対照的に、U−46619での処理は、用量依存的な様式で、TbPGFSによるPGHの還元を部分的に不活化した(図6B)。これらの結果は、PGHにおいて、C−11の酸素原子がこの基質の還元を触媒するために利用可能でなければならないことを強く示唆する。
【0444】
(PGH還元の機構)
TbPGFSによるPGH還元の触媒機構は、AKRのメンバーによる他の基質の触媒機構(Wilsonら,1992、前出;Tarle,I.,et al.,(1993)J.Biol.Chem.,268,25687−25693;Jezら,1997、前出;Khuranaら,1998、前出)とは全く異なるように思われた。図7に示したように、PGHの還元は2段階プロセスから構成される。第1段階は、His110とPGHのC11位の酸素との間での水素結合、プロトンを供与するHis110からのC11位の基質酸素のプロトン化、およびこの酸素とプロトンとの間でのエンドペルオキシドの2つの電子の移動を含む。第2段階では、エンドペルオキシド結合が開くことによって、PGHのC9位の酸素を活性化し、NADPHから1つのプロトンおよび2つの電子を受け取る。これによりNADPHの酸化およびPGF2αの形成が生じる。この反応全体は、最適にはpH7で起こる。PGH還元に関するこの触媒機構は、本研究データによりプロトン受容体としてPGHシクロペンタンのC11の酸素が同定されたという事実、化学量論的分析によって、1モルのTbPGFSには1モルのNADPHが必要とされることが明らかになったという事実、および基質を還元するために、NADPHが1つのプロトンおよび2つの電子を移動させるという事実に基づいて提案される。本発明者らの実験条件下では、NADPH単独ではPGHを還元しなかった。このことは、他のいくつかのAKR基質とは異なり(Tarleら,1993、前出;Khuranaら,1998、前出)、補因子から基質への水素化物イオン(H)の移動が、第2段階においてであることを示唆する。さらに、他のAKRメンバーによる基質還元の触媒機構では、プロトン供与体残基Tyrと残基Hisとの間での相互作用が、プロトンの除去を容易にするために必要とされることが公知である(Wilsonら,1992、前出;Tarleら,1993、前出;Jezら,1997、前出;Khuranaら,1998、前出;Schlegelら,1998、前出(3538−3548);Schlegelら,1998、前出(11003−11011))。しかし本発明者らの結果は、TbPGFSでは、そのような相互作用がPGHの還元に必要とされず、PGHはHis110単独によってプロトン化されることを示している。
【0445】
かねてからPGHの還元が知られており、そしてPGF2αが、PGHの9,11−エンドペルオキシドの還元的切断によって酵素学的に合成されることも公知であった(Hamberg,M.and Samuelsson,B.(1967)J.Biol.Chem.,242,5344−5354)。しかし、これまで、酵素がPGHの9,11−エンドペルオキシドの還元的切断に如何にして作用するかは解明されていなかった。本発明において、本発明者らは、TbPGFSが、生理的基質の還元を触媒する触媒機構を同定した。本発明によってPGHレダクターゼの構造的情報が初めて明らかとなり、そしてまた、この酵素の触媒部位の同定に関する確証的な証拠が初めて明らかとなった。本発明は、AKRの保存された触媒四分子における部位特異的変異誘発により、一般酸触媒としてヒスチジンを初めて同定した。
【0446】
(実施例2:他のプロスタグランジンF2αシンターゼのモデル)
次に、上述で得られた情報をもとに、配列番号28〜31に記載される、ヒト、ヒツジおよびウシ(肺および肝臓)の配列を基にして、ホモロジーモデリングによる方法を行い、他のプロスタグランジンF2αシンターゼの構造をモデリングした。具体的には、AutoDock 3.0(Morris,G.M.,Goodsell,D.S.,Halliday,R.S.,Huey,R.,Hart,W.E.,Belew,R.K.and Olson,A.J.(1998),J.Computational Chemistry,19:1639−1662)というプログラムを使用した。
【0447】
このプログラムにおいて、配列番号28〜31に記載されるアミノ酸配列の相同性を考慮し(図1Cを参照)、他に類似する構造または本発明のTrypanosomaの構造のアミノ酸配列から変更しながらモデリングした。その際、エネルギーの最小化により構造を決定した。構造は、プロスタグランジンF2αシンターゼに類似する。
【0448】
(実施例3:バーチャルスクリーニング)
市販の化合物のデータベース(FCD(Fine Chemical Directory)という商業ベースの化学薬品データベース)より1つずつ化合物を取り出し、コンピュータグラフィクス上で活性部位の位置へ自動で近づけた。エネルギーの最小化により、最適な方位で化合物を酵素に結合させた。このときの安定化エネルギーΔGを計算し、最もΔGのマイナス値が大きな化合物を選定した。
【0449】
次に、あるデータベース(PGHの類似体を含む)を用いたところ、
【0450】
【化19】U−46619
Figure 2004180565
【0451】
および
【0452】
【化20】U−44069
Figure 2004180565
【0453】
がプロスタグランジンF2αシンターゼのインヒビターとして好ましいことが明らかになった。このうち、化19の方がインヒビターとしてより好ましいこともわかった。この結果は実施例1の結果と相応する。
【0454】
(実施例4:インビトロスクリーニング)
次に、実施例3のバーチャルスクリーニングでインヒビターとして適切なものと判断された化合物を実際にインビトロ系で実験することによってその活性を確認した。プロスタグランジンF2αシンターゼ酵素アッセイは以下のとおり行った。
【0455】
(プロスタグランジンF2αシンターゼ酵素アッセイ)
プロスタグランジンF2αシンターゼの酵素活性を、適切な酵素アリコート、5μM[1−14C]PGH(最終濃度)、100μlの100mMリン酸ナトリウム(pH7.0)および100μM NADPH生成系(Kubataら,2000)を含む反応混合物と共に、2分間37℃でインキュベートすることによって測定した。このアリコートを、反応停止後に、以前に記載されたように(Kubataら,2000、前出)、薄層クロマトグラフィーに供した。
【0456】
PGHからのPGF2αの合成について試験するために、最終容量100μlにおいて100mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、20μM NADP、100μMグルコース−6−ホスフェート、1Uのグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、および酵素の希釈物を含む標準反応混合物を使用した。1μlの500μM 1−[14C]PGH(2.04Gbq/mmol)を添加することによって反応を開始し、そしてこの反応を、37℃で2分間にわたって行い、250μlの停止溶液(30:4:1(v/v/v)のジエチルエーテル/メタノール/2Mクエン酸)を添加することによって停止させた。PGF2αの非酵素形態形成について試験するために、酵素の非存在下において、すべての成分を含む反応混合物をインキュベートした。有機相(50μl)を、4℃で20×20cmシリカゲルプレート(Merck)に適用し、そしてこのプレートを、−20℃で90:2:1(v/v/v)のジエチルエーテル/メタノール/酢酸の溶媒系で展開した。このプレートの放射能を、Fluorescent Imaging Analyzer FLA 2000およびMac Bas V2.5ソフトウェア(Fuji Photo Film Co.)によりモニターし、そして分析した。基質特異性の評価のための反応混合物は、以下から構成された:総容量500μl中において、100mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、精製された組換え酵素、100μM NADPH、および種々の濃度の基質。この種々の濃度の基質としては、例えば、40μMの9,10−フェナントレンキノン、40μMのp−ニトロベンズアルデヒド、5μMのPGH、40μMのプロゲステロン、40μMのグルクロン酸ナトリウム、40μMのテストステロンなどが挙げられる。基質を添加することによって反応を開始し、そして340nmでの吸光度の減少を、37℃でモニターした。酵素を含まないブランクまたは基質を含まないブランクを含ませた。9,10−フェナントレンキノンレダクターゼ活性を100%の活性を表すとして選択した。1−[14C]PGDおよびPGE生成について、40μMの1−[14C]PGHを、以下のいずれかと共にインキュベートした:250μgの組換え造血性PGDS(Kanaoka,Y.ら、Cell 90:1085−1095(1997))または500μgの組換えPGES(Jakobsson,P.J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:7220−7225(1999))。25℃で5分間のインキュベーション後に、冷却酢酸エチルを使用して、得られたPGを3回抽出し、真空下において低温で乾燥させ、そしてT.bruceiプロスタグランジンF2αシンターゼ(TbPGFS)の特異性研究のための基質として使用した。
【0457】
次いで、PGの抽出および定量を行った。抽出の間の回収率を決定するためのトレーサーとして使用するための、[H]PGD、[H]PGE、および[H]PGF2α(1アッセイにつき各60Bq;NEN Life Science Products)を添加した後、トリパノソーマ培養培地(10ml)から回収されたPGおよび酵素のアリコート(300μl)の培養物からの回収物を抽出し、そして以前に記載されたようにしてHPLCにより分離した(Kubara,B.K.ら、J.Exp.Med.188:1197−1202(1998)およびUjiharaら、(1988)Arch.Biochem.Biophys.260:521−531)。得られたPGD、PGE、およびPGF2αを、その個々のEIAキット(Cayman Chemical)を用いる酵素イムノアッセイ(EIA)により定量した。
【0458】
次いで、ガスクロマトグラフィー−質量分析法を行った。ガスクロマトグラフィー選択イオンモニタリング(GC−SIM)分析を、Hitachi M−80B二重収束型質量分析装置で行った。この分析装置は、Van den Bergの溶媒を含まない注入器および接合されたシリカキャピラリーカラム(Ultra no.1;25m長、0.32mm内径、280℃カラム温度)を備えた。培養培地から回収されたPG、および酵素のアリコートをAAと共にインキュベートすることによって形成された生成物を、HPLCによって分画し、そして以前に記載された方法(Miyazaki,H.ら、Biomed.MassSpectrom 8:521−526(1981))に従って、それぞれ対応するメチルエステル(ME)ジメチルイソプロピルシリル(DMiPS)エーテルまたはME−メトキシム(MO)−DMiPSエーテル誘導体に変換した。
【0459】
(結果)
上記のアッセイの結果、実際に
【0460】
【化21】U46619
Figure 2004180565
【0461】
および
【0462】
【化22】U44069
Figure 2004180565
【0463】
がプロスタグランジンF2αシンターゼのインヒビターとして好ましいことが明らかになった。このうち、化21の方がインヒビターとしてより好ましいこともわかった(U46619は、2.0μMでは約50%の阻害が見られ、U44069では、顕著な阻害が見られなかった)。したがって、実際に、U46619の構造を有するものがよりインヒビターとして適切であることが判明した。
【0464】
このように、本発明を用いて、実際に、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する分子を得ることができた。従って、本発明は、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性調節剤のスクリーニングのほか、その実際の調製にも使用することができることが実証された。
【0465】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0466】
【発明の効果】
本発明は、従来不可能であった、コンピュータモデリングによるプロスタグランジンF2αシンターゼのアンタゴニストまたはアゴニストの設計を可能にし、それに基づく医薬を製造することを可能にした。
【0467】
【配列表】
Figure 2004180565
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【図面の簡単な説明】
【図1A】図1Aは、TbPGFSと、AKRスーパーファミリーのいくつかのメンバーとの構造アラインメントである。アラインメントを、COMPARERプログラム(www.cryst.bioc.com.ac.uk/COMPARER)を用いて算出した。このアラインメントでは、2,5−ジケト−D−グルコン酸レダクターゼA(Cb 2,5dkg)、ヒトアルドースレダクターゼ(Hum ADR)、ブタアルドースレダクターゼ(Por ADR)およびラット3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(Rat 3αHSD)について、それぞれPDB実体1A80、2ACQ、1AH3および1AFSを用いた。TbPGFSの二次構造を、このアラインメントの上部に示す。対応するアミノ酸残基を、βシートについては黄色で、αヘリックスについては青色で、ループについては茶色で、そして界面については赤色で強調した。(α/β)−バレル構造コアの部分ではないβシートおよびαヘリックスを、B1、B2、H1およびH2と名付けた。緑色アスタリスクは、試験された全ての酵素の間で位置が保存されていた残基を示す。
【図1B】図1Bは、結合したNADPH補因子を有するTbPGFSの全体構造の立体図である。左側のパネルは、βバレルのCOOH−末端とNADPH分子とを見下ろしてスティックモデルで描かれた全体構造を示す。αヘリックス(青色)とβシート(黄色)とは、界面(赤色)で互いに分離される。1個のスルフェート分子もまた、疎水性間隙中に示す。TbPGFSの全体的なフォールドは、他のAKR酵素のフォールドと類似する。右側のパネルは、α/βバレルに対して垂直から見たTbPGFSの全体構造を示し、そして結合したNADPH補因子およびスルフェート分子の位置を示す。これらの図は、プログラムMOLSCRIPTおよびRASTER3Dを用いて描いた。
【図1C】図1Cは、他の種のプロスタグランジンF2αシンターゼとのホモロジー比較の図である。上から、Trypanosoma brucei、ヒツジ、ヒト、ウシ肺およびウシ肝臓由来のものを示す。
【図2】図2は、TbPGFSに対するNADPHの結合を示す。図2Aは、ラット3α−HSD−ドメイン−テストステロン三成分複合体(赤色)とTbPGFS−NADPH二成分複合体(青色)とを重ね合わせた全体構造を見下ろした図である。この図は、3α−HSDには存在するがTbPGFSには存在しないループ(β1−α1、AおよびB)の存在を示し、そしてTbPGFSに存在しない構造的特徴であるループBが、3α−HSDにおけるNADPH結合に対して如何にして影響を与えるかを示す。図2Bは、重ね合わせた全体構造を垂直から見た図を示す。この図は、TbPGFSと3α−HSDとの間での主な構造的差異を示し、そしてTbPGFSが、浅い補因子結合部位および基質結合部位を有する理由を説明する詳細を示す。ループ(β1−α1、AおよびB)は、3α−HSDにおいて、セイフティーベルトの形成および深い基質結合部位の作製に寄与する。この重ね合わせた全体構造はまた、3α−HSDの基質(テストステロン)結合部位が、TbPGFSにおけるスルフェート結合部位に対応することを示す。このスルフェート結合部位は、TbPGFSにおける基質結合部位であり得る。3つのループの構造的差異を、プログラムMOLSCRIPTおよびRASTER3Dを用いて描いた。
【図3a】図3Aは、NADPHおよびスルフェートの電子密度表面を示す。酸素原子、窒素原子、硫黄原子、およびリン原子を、それぞれ、赤色、青色、黄色およびマゼンタ色で示す。標識された残基は、NADPHとスルフェートとの結合に関連した残基を示す。
図3Bは、NADPHとTbPGFSとの間の相互作用の概略図を示す。水素結合および静電的相互作用に加えて、Trp−187の側鎖が、補因子のニコチンアミド環との芳香環スタッキング相互作用に関与する。
【図3b】図3Cは、TbPGFSにおけるTrp−187によるNADPHの固有のスタッキングの構造的詳細を示す。
【図4】図4は、TbPGFSと他のAKR酵素とを重ね合わせた構造を示す。左側のパネルは、hum ADR、Por ADR、およびrat 3αHSDに対してそれぞれ結合したグルコース−6−ホスフェート、トルレスタット(tolrestat)、テストステロンと重ね合わせた、TbPGFS−NADPH二成分複合体の全体構造を示す。単純化するために、各リガンドは適所に残したまま、他のAKRメンバーのタンパク質構造を取り除いた。TbPGFSを、透明な表面を有する淡青色リボンとしてモデル化した。右側のパネルは、TbPGFSのリガンド結合ポケットの縦断面の近接図を示す。リガンドであるグルコース−6−ホスフェート(G6P)、トルレスタット、テストステロンを、それぞれ、桃色、緑色、および紫色で示す。NADPH分子を、マゼンタ色で示す。TbPGFSの表面を、白色で示し、そしてリガンド結合ポケットを灰色で示す。この図を、プログラムMOLSCRIPTおよびRASTER3Dを用いて描いた。
【図5】図5は、TbPGFSへのPGHの結合を見下ろして描かれた提案モデルを示す。TbPGFSおよび補因子結合モデルの表面に対する静電ポテンシャルにより、TbPGFS酵素のPGH結合ポケットを示す(左側パネル)。近接図(右側パネル)は、PGH(緑色で描かれる)が、如何にして基質結合間隙にフィットするかに関する詳細を与える。PGHのシクロペンタン環は、NADPH(球とスティックのモデルで示される)のニコチンアミド環のC4の近接に入り、次いで、PGHのα鎖およびω鎖が、細長い結合間隙内で互いに対して反対方向に位置する。PGH結合モデルに用いられた合理的説明を、反応機構の節に記載する。PGH結合モデルを、GRASP、MOLSCRIPTおよびRASTER3Dプログラムで作製した。
【図6】図6Aは、野生型酵素および変異体酵素によって触媒される、PGH還元の比活性を示す。TbPGFSの純粋な野生型または変異体(1〜2μg)を、実験手順の節において記載したように、NADPHの存在下において5μM[1−14C]PGHと共にインキュベートした。PGF2αへのPGHの変換を、薄層クロマトグラフィーによって分析した。
図6Bは、野生型TbPGFSによるPGHの還元に対する、PGH相同体U−46619およびU−44069の効果を示す。種々の濃度の相同体を、37℃で2分間にわたりTbPGFS(1〜2μg)と共にプレインキュベートし、次いで、NADPHの存在下において、5μM[1−14C]PGHと共にTbPGFS酵素をインキュベートした。残存する酵素活性を、相同体の濃度に対してプロットした。U−46619を白色バーで示し、そしてU−44069を黒色バーで示す。
【図7】図7は、PGHの酵素学的還元について提案される反応機構の概略図を示す。
【図8】
図8は、アルド/ケトレダクターゼ(AKR)スーパーファミリーに属するメンバーで、PDBに登録されているものを示す。本発明のタンパク質は、このうち5A2のサブファミリーに属する。5A2のサブファミリーに属するタンパク質の構造が明らかになったのは本発明がはじめてである。
【図9AA】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AB】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AC】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AD】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AE】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AF】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AG】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AH】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AI】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AJ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AK】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AL】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AM】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AN】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AO】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AP】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AQ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AR】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AS】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AT】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AU】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AV】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AW】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AX】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AY】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9AZ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BA】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BB】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BC】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BD】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BE】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BF】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BG】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BH】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BI】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BJ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BK】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BL】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BM】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BN】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BO】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BP】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BQ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BR】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BS】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BT】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BU】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BV】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BW】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BX】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BY】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9BZ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CA】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CB】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CC】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CD】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CE】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CF】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CG】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CH】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CI】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CJ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CK】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CL】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CM】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CN】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CO】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CP】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図9CQ】図9(図9AA〜CQ)は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標を示す。
【図10】図10は、図11および図12の記録媒体によりコード化される命令を実行するために用いられるシステムのダイヤグラムを示す。
【図11】図11は、磁気記録媒体の断面図を示す。
【図12】図12は、光学的に読み出し可能なデータ記録媒体の断面図を示す。

Claims (125)

  1. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標のデータで生成される、立体構造コンピュータモデル。
  2. 前記原子座標は、図9に記載のプロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体である、請求項1に記載の立体構造コンピューターモデル。
  3. 前記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、請求項1に記載の立体構造コンピューターモデル。
  4. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標を含むデータアレイであって、ここで該データアレイは、三次元分子モデリングアルゴリズムを使用することにより三次元構造を提示し得る、データアレイ。
  5. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその相同体もしくは改変体である、請求項4に記載のデータアレイ。
  6. 前記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、請求項4に記載のデータアレイ。
  7. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標をコードした、コンピューター読み取り可能な記録媒体。
  8. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその相同体もしくは改変体である、請求項7に記載のコンピューター読み取り可能な記録媒体。
  9. 前記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、請求項7に記載のコンピューター読み取り可能な記録媒体。
  10. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の立体構造解析方法を提供するためのプログラムであって、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の原子座標をコードしたデータ;および
    B)三次元立体構造の解析をコンピュータに実行させるアプリケーションのコード、
    を含む、プログラム。
  11. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標であるかまたはその相同体もしくは改変体である、請求項10に記載のプログラム。
  12. 前記原子座標はNADPHの原子座標を含み、かつ、図9に記載のNADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼ原子座標またはその相同体もしくは改変体である、請求項10に記載のプログラム。
  13. 前記アプリケーションは、
    A)前記原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該三次元分子モデルと比較する工程をコンピュータに実行させる、請求項10に記載のプログラム。
  14. 図9に記載の原子座標によって定義される構造を有する、単離および精製された、タンパク質またはその相同体もしくは改変体。
  15. 前記タンパク質は、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を含む、請求項14に記載のタンパク質またはその相同体もしくは改変体。
  16. 前記タンパク質は、NADPH複合体化プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を有する、請求項14に記載のタンパク質またはその相同体もしくは改変体。
  17. 正方晶系の空間群P42、および配列番号1に示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列に1以上の置換、付加もしくは欠失を含む配列、もしくは該アミノ酸配列と少なくとも約30%以上の相同性を有する、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の結晶。
  18. 前記結晶は、NADPHと複合体化されている、請求項17に記載の結晶。
  19. 前記結晶は、a=112.3±0.3Å、b=112.3±0.3Å、c=140.0±0.7Åの単位格子定数を有する、請求項17に記載の結晶。
  20. 前記結晶は、非対称単位中に2分子を有する、請求項17に記載の結晶。
  21. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性ポケットを含む、タンパク質。
  22. 前記活性ポケットは、NADPHと複合体化されたものである、請求項21に記載のタンパク質。
  23. 前記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基47、52、77、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、請求項21に記載のタンパク質。
  24. 前記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基47、49、52、77、79、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、請求項21に記載のタンパク質。
  25. 前記活性ポケットは、図9に記載されるアミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、請求項21に記載のタンパク質。
  26. 前記活性部位ポケットは、スルフェートアニオンを含む、請求項21に記載のタンパク質。
  27. 前記タンパク質は、PGH還元活性を有する、請求項21に記載のタンパク質。
  28. 請求項21に記載のタンパク質のアミノ酸配列をコードする、核酸分子。
  29. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法であって、該方法は、候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程を包含する、方法。
  30. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、請求項29に記載の方法。
  31. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、請求項29に記載の方法。
  32. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法であって、該方法は、以下の工程:
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程
    を包含する、方法。
  33. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、請求項32に記載の方法。
  34. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、請求項32に記載の方法。
  35. 請求項29または32に記載の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ相同体。
  36. プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法であって、該方法は、以下の工程:
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
    を包含する、方法。
  37. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、請求項36に記載の方法。
  38. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、請求項36に記載の方法。
  39. 前記改変体は、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が亢進されている、請求項36に記載の方法。
  40. 前記改変体は、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性が低減されている、請求項36に記載の方法。
  41. 請求項36に記載の方法によって同定された、プロスタグランジンF2αシンターゼ改変体。
  42. 請求項29もしくは32に記載の方法によって同定されたプロスタグランジンF2αシンターゼ相同体のアミノ酸配列、または請求項36に記載の方法によって同定されたプロスタグランジンF2αシンターゼ改変体のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
  43. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
    B)該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
    を包含する、方法。
  44. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、請求項43に記載の方法。
  45. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、請求項43に記載の方法。
  46. 前記相同体または改変体は、請求項29、32または36に記載の方法によって得られたものである、請求項41に記載の方法。
  47. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、請求項43に記載の方法。
  48. 前記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基47、52、77、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、請求項43に記載の方法。
  49. 前記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基47、49、52、77、79、および110またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、請求項43に記載の方法。
  50. 前記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるアミノ酸残基22、23、47、49、51、52、77、79、110、111、139、140、161、および187またはそれに対応するアミノ酸残基の原子座標によって定義される、請求項43に記載の方法。
  51. 前記工程a)において決定された空間座標は、図9に記載されるスルフェートアニオンまたはそれに対応するスルフェートアニオンの原子座標を含む、請求項43に記載の方法。
  52. 候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
    B)該三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
    C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、該三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
    を包含する、方法。
  53. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、請求項52に記載の方法。
  54. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、請求項52に記載の方法。
  55. 前記相同体または改変体は、請求項29、32または36に記載の方法によって得られたものである、請求項52に記載の方法。
  56. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、請求項52に記載の方法。
  57. 前記候補化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、請求項52に記載の方法。
  58. 前記候補化合物は、プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を活性化する活性を有する、請求項52に記載の方法。
  59. 請求項52に記載の方法により同定された、化合物。
  60. 請求項52に記載の方法により同定された化合物を有効成分として含む、医薬組成物。
  61. 請求項52に記載の方法により同定された化合物を有効成分として含む、プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための医薬組成物。
  62. 請求項52に記載の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベース。
  63. 請求項52に記載の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベースを含む記録媒体。
  64. 請求項52に記載の方法により同定された化合物の名称および構造を含むデータをコードした、データベースを含む伝送媒体。
  65. 以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルであって、
    式I
    Figure 2004180565
    ここで、イミダゾリウムイオンはプロトン供与体として、ペルオキシド基の1つの酸素原子をプロトン化し、該ペルオキシド基の他方の酸素原子は、ニコチンアミド環から1つのプロトンおよび2つの電子を受容することにより還元され、Rは任意の基を表し、ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は任意であり、原子間距離は各原子の中心間の距離を示す、ファルマコフォアモデル。
  66. 前記式において、前記ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は、5.14±0.25Åである、請求項65に記載のファルマコフォアモデル。
  67. 請求項65に記載のファルマコフォアモデルの、医薬候補分子のスクリーニングにおける使用。
  68. 請求項65に記載のファルマコフォアモデルを使用したスクリーニングによって同定された医薬候補分子。
  69. プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、請求項68に記載の医薬候補分子。
  70. 請求項68または69に記載の医薬候補分子を含む、医薬組成物。
  71. 以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルであって、
    式II
    Figure 2004180565
    ここで、Oは酸素原子を表し、Rは任意の基を表し、ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は任意であり、原子間距離は各原子の中心間の距離を示す、ファルマコフォアモデル。
  72. 前記式において、前記ニコチンアミド環のC4位とイミダゾリウムイオンのN1位との間の距離(X)は、5.14±0.25Åである、請求項71に記載のファルマコフォアモデル。
  73. 請求項71に記載のファルマコフォアモデルの、医薬候補分子のスクリーニングにおける使用。
  74. 請求項71に記載のファルマコフォアモデルを使用したスクリーニングによって同定された医薬候補分子。
  75. プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、請求項74に記載の医薬候補分子。
  76. 請求項74または75に記載の医薬候補分子を含む、医薬組成物。
  77. 以下の式によって定義される原子の空間的配置を有するファルマコフォアモデルであって、
    式III
    Figure 2004180565
    ここで、原子間距離は各原子の中心間の距離を示し、A〜Eは任意の原子であるが、ただし、AおよびBが両方ともが酸素原子である場合を除く、
    ファルマコフォアモデル。
  78. 前記A〜Eの少なくとも1つは非反応性の原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  79. 前記A〜Eの少なくとも1つは炭素原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  80. 前記AまたはBの少なくとも1つは非反応性の原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  81. 前記Aは、非反応性の原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  82. 前記Bは、非反応性の原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  83. 前記AまたはBの少なくとも1つは炭素原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  84. 前記Aは、炭素原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  85. 前記Bは、炭素原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  86. 前記AおよびBのいずれか一方は電子供与体原子または水素結合をし得る原子であり、他方は非反応性の原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  87. 前記電子供与体原子または水素結合をし得る原子は酸素原子である、請求項86に記載のファルマコフォアモデル。
  88. 前記非反応性の原子は炭素原子である、請求項84に記載のファルマコフォアモデル。
  89. 前記C、DおよびEは炭素原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  90. 前記Aは炭素原子であり、前記Bは酸素原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  91. 前記Aは酸素原子であり、前記Bは炭素原子である、請求項77に記載のファルマコフォアモデル。
  92. 請求項77に記載のファルマコフォアモデルによって定義される、化合物またはその塩。
  93. 以下の式
    Figure 2004180565
    (9,11−ジデオキシ−9α,11α−メタノエポキシプロスタグランジンF2α
    または
    Figure 2004180565
    (9,11−ジデオキシ−9α,11α−エポキシメタノプロスタグランジンF2α
    で示される構造を有する、請求項92に記載の化合物またはその塩。
  94. 請求項92に記載の化合物またはその塩を含む、医薬組成物。
  95. 請求項77に記載のファルマコフォアモデルの、医薬候補分子のスクリーニングにおける使用。
  96. 請求項77に記載のファルマコフォアモデルを使用したスクリーニングによって同定された医薬候補分子。
  97. プロスタグランジンF2αシンターゼのPGH還元活性を阻害する活性を有する、請求項96に記載の医薬候補分子。
  98. 請求項96または97に記載の医薬候補分子を含む、医薬組成物。
  99. プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための医薬組成物を調製する方法であって、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
    B)該三次元分子モデルと、該医薬組成物に含まれるべき候補化合物のライブラリーとの相互作用を評価する工程;
    C)該候補化合物のうち、該プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する作用を有する化合物種を選択する工程;および
    D)該化合物種と、薬学的に受容可能なキャリアとを混合する工程、
    を包含する、方法。
  100. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、請求項99に記載の方法。
  101. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、請求項99に記載の方法。
  102. 前記相同体または改変体は、請求項29、32または36に記載の方法によって得られたものである、請求項99に記載の方法。
  103. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、請求項99に記載の方法。
  104. 前記化合物種を合成して大量に該化合物種を製造する工程、をさらに包含する、請求項99に記載の方法。
  105. 前記化合物種について、プロスタグランジンF2αシンターゼ活性に関する生物学的試験を行う工程をさらに包含する、請求項99に記載の方法。
  106. プロスタグランジンF2αシンターゼに関連する疾患または障害を処置または予防するための方法であって、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
    B)該三次元分子モデルに基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性を調節する手段を同定する工程;および
    C)該調節手段を該疾患または障害に罹患するかまたはその可能性のある被検体に投与する工程、
    を包含する、方法。
  107. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、NADPHと複合体化されている、請求項106に記載の方法。
  108. 前記原子座標は、図9に記載の原子座標を含む、請求項106に記載の方法。
  109. 前記相同体または改変体は、請求項29、32または36に記載の方法によって得られたものである、請求項106に記載の方法。
  110. 前記プロスタグランジンF2αシンターゼは、哺乳動物またはTrypanosoma bruceiのプロスタグランジンF2αシンターゼを含む、請求項104に記載の方法。
  111. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、
    A)候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程、
    を包含する、プログラム。
  112. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、該方法は、
    A)候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する工程、
    を包含する、記録媒体。
  113. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法を実行するコンピュータであって、該方法は、
    A)候補化合物の原子座標と、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標とを比較する手段、
    を包含する、コンピュータ。
  114. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程、
    を包含する、
    プログラム。
  115. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程、
    を包含する、記録媒体。
  116. プロスタグランジンF2αシンターゼの相同体を得る方法を実行するコンピュータであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較する工程、
    を包含する、コンピュータ。
  117. プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
    を包含する、プログラム。
  118. プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
    を包含する、記録媒体。
  119. プロスタグランジンF2αシンターゼの改変体を得る方法を実行するコンピュータであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;および
    B)候補化合物の三次元分子モデルを、該プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルと比較し、所定のパラメータに基づき変異を導入する工程、
    を包含する、コンピュータ。
  120. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
    B)該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
    を包含する、プログラム。
  121. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
    B)該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
    を包含する、記録媒体。
  122. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法を実行するコンピュータであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、プロスタグランジンF2αシンターゼの活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
    B)該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、該プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する工程、
    を包含する、コンピュータ。
  123. 候補化合物の三次元分子モデルを、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体の三次元分子モデルと比較することによって、プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
    B)該三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
    C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、該三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
    を包含する、プログラム。
  124. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
    B)該三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
    C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、該三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
    を包含する、記録媒体。
  125. プロスタグランジンF2αシンターゼまたはその相同体もしくは改変体に結合し得る化合物を同定する方法を実行するコンピュータであって、該方法は、
    A)プロスタグランジンF2αシンターゼの原子座標またはその相同体もしくは改変体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
    B)該三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、プロスタグランジンF2αシンターゼの原子間の距離を検索する工程;および
    C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、該三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、プロスタグランジンF2αシンターゼの三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補化合物種を同定する工程、
    を包含する、コンピュータ。
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