JP2004172713A - ルーティング最適化装置およびルーティング最適化方法 - Google Patents

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Toshiki Kanemichi
敏樹 金道
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Abstract

【課題】特定のネットワーク回線においてトラフィックが増大する場合に、トラフィックが増大した回線のトラフィックの一部を他の回線に振り向けることができなかった。
【解決手段】ソースsから行先tへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定手段と、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断手段と、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算手段と、仮想的に切断された回線の望ましい重みを計算する局所重み修正量計算手段と、前記局所重み修正量計算手段の出力を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正手段という構成を有するルーティング最適化装置により、特定の回線においてトラフィックが増大する場合に対応できる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インターネットなど情報通信分野において、トラフィックの増大による回線負荷を軽減させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの発展に伴い、ネットワークを流れるトラフィックは急速に増大し続けている。これに対応して、ネットワークの各所で回線の容量を上回る量のパケットが流入するという事態(回線のパンク)が発生し得る状況である。こうした回線のパンクを避けるために、ネットワークのトラフックを適切に制御する取り組みがなされており、この取り組みは、Traffic Engineeringと総称される。
【0003】
Traffic Engineeringには大きく分けで2つの方法がある。ひとつは、パケットの統計的な分布に応じてネットワークを最適化する方法であり、もうひとつはMulti−Protocol Label Switching(MPLS)を使って明示的な経路を指定することでトラフィックを制御する方法である。
【0004】
サービスの質の向上とネットワークリソースの効率的な利用を目的に、パケットの統計的な分布に応じてネットワークを最適化する試みとしては、FortsとThorupによってなされた仕事がよく知られている(非特許文献1)。Fortzらは、OSPF(Open Shortest Path First)の重みを最適化することによってトラフィックを分散させることを提案している。なお、OSPFとは、最も良く利用されているルーティングプロトコルの一つである。彼らは、パケットが入っている境界ルータsから出てゆく境界ルータtの2つのルータ間を流れるトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)のデータからOSPFの重みを最適化するアルゴリズムを与え、AT&T WorldNetのバックボーン回線を対象にその有効性を確認している。
具体的には、Fortzらは、ルータ間のリンクaを流れるトラフィックの量がl(a)、そのリンクの容量がc(a)である場合に、その回線コスト(φa(l(a),c(a)))は、[数1]で表した。
【0005】
【数1】
Figure 2004172713
【0006】
また、Fortzらは、ネットワーク全体のコスト(φ)を、[数2]で表わした。
【0007】
【数2】
Figure 2004172713
【0008】
そして、Fortzらは、回線コスト(φa(l(a),c(a)))とネットワーク全体のコスト(φ)を最小とするOSPFの重みを求めている。ここで、関数φ(l(a)/c(a))は、リンクaを流れるパケット1個に対するコストであり、この関数は[数2]で表されるという性質を持っている。
【0009】
【数3】
Figure 2004172713
【0010】
Fortzらは、引用文献の中ではこれを区分線形関数で与えている。
この種のモデルでは、OSPFの重みは、それぞれのリンクaを流れるトラフィックの量(l(a))を通じてコストΦに反映される。この点をもう少し詳細に述べる。リンクaを流れるトラフィックの量(l(a))は、[数4]と書ける。
【0011】
【数4】
Figure 2004172713
【0012】
ここで、P(a,s,t:w)は、OSPFの重みwが与えられたときに、境界ルータsから境界ルータtに至る最短経路がリンクaを通る時に1をとり、その他の場合は0である関数である。この関数によって、OSPFの重みはコスト関数に結び付けられる。
【0013】
Fortzらのアイデアは、この様に定式化されたネットワークのトラフィック状態を表すモデルを使って[1]重みwを修正する,[2]その結果、パケットの通過する経路が変化(関数Pが変化)する,[3]各リンクのトラフィックの量l(a)が変化する,[4]コストが変化するという枠組みで、ネットワーク全体のコストΦを最小化しようというものである。このアイデアを実現する上で厄介なのは、コストを小さくするためにはOSPFの重みwをどのように修正すればよいかを見つけることであり、Fortzらは一度にひとつの重みの値を変更してコストを再計算することを繰り返すことによりそれを求める方法を与えている。
【0014】
Fortzらの方法はネットワークの重み全てを最適化するものであることから、どうしても計算量が多い。そのためネットワークを流れるトラフィック分布が時間的に安定している場合に最も有効と考えるべきである。
【0015】
【非特許文献1】
Bernard Fortz and Mikkel Thorup著 ”Internet Traffic Engineering by Optimizing OSPF Weights” Proc. IEEE INFOCOM, 2000年3月
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際のネットワークにおいては、特定の回線においてトラフィックが増大する場合がある。かかる場合、ネットワークの重み全てを最適化する上記の従来技術では、対応できない。
【0017】
こうした場合には、トラフィックが増大した回線の負荷を、できるだけ早くトラフィックの一部を他の回線に振り向けることが望まれる。このような状況は、複数の拠点を持つISPの拠点間のトラフィック制御においてしばしば発生する。
【0018】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、ソースsから行先tへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定手段と、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断手段と、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算手段と、仮想的に切断された回線の望ましい重みを計算する局所重み修正量計算手段と、前記局所重み修正量計算手段の出力を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正手段という構成を有するルーティング最適化装置である。
【0019】
かかるルーティング最適化装置により、ネットワークにおいて少数の回線の負荷が他の回線と比較して著しく高い状態にある(もしくはそうなることが予測できる)場合、具体的には、ネットワークが図3のようなトポロジーを持つ場合に、回線nのトラフィックが多く回線nの負荷が高くなっている状態において、回線の重みを適切に設定することにより、回線nを流れるパケットの一部を回線p,qに振り分けることで回線nの負荷を低減することができる。さらに簡潔に言えば、本発明の目的は、トラフィックが増大した回線の負荷をトラフィックの一部を他の回線に振り向けるためのOSPFの重み計算法を与えることである。ここで与えられる計算方法は、ネットワークの一部の重みだけを修正する方法である。なお、対象とするネットワークは複数の境界ルータがあるネットワークとする。
【0020】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、ネットワークのルーティングを最適化する装置であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定手段と、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断手段と、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算手段と、仮想的に切断された回線の望ましい重みである修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み修正量計算手段と、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正手段とを有するルーティング最適化装置であり、仮想的に切断された回線のトラフィックを均質化することによりネットワークの負荷を低減するという作用を有する。
【0021】
請求項2記載の発明は、ネットワークのルーティングを最適化する装置であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定手段と、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断手段と、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算手段と、仮想的に切断された回線の望ましい重みの方向への微小な修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み微小修正量計算手段と、微小な修正によって重みが修正が収束したか否かを判定する収束条件判定手段と、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正手段とを有するルーティング最適化装置であり、仮想的に切断された回線のトラフィックを均質化することによりネットワークの負荷を低減するという作用を有する。
【0022】
請求項3記載の発明は、ネットワークのルーティングを最適化する装置であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定ステップと、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断ステップと、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算ステップと、仮想的に切断された回線の望ましい重みである修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み修正量計算ステップと、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正ステップとを有するルーティング最適化方法であり、仮想的に切断された回線のトラフィックを均質化することによりネットワークの負荷を低減するという作用を有する。
【0023】
請求項4記載の発明は、ネットワークのルーティングを最適化する装置であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定ステップと、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断ステップと、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算ステップと、仮想的に切断された回線の望ましい重みの方向への微小な修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み微小修正量計算ステップと、微小な修正によって重みが修正が収束したか否かを判定する収束条件判定ステップと、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正ステップとを有するルーティング最適化方法であり、仮想的に切断された回線のトラフィックを均質化することによりネットワークの負荷を低減するという作用を有する。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図6を用いて説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1を参照しながら説明する。図1は、最適化装置のブロック図である。100は、本発明のルーティング最適化装置が最適化の対象とするネットワークであり、複数の境界ルータがあるネットワークである。本発明は、測定開始信号入力端子10から測定開始信号が入力されると前記ネットワークのルータs(ソース)からルータt(行先)へのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定手段1と、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断手段2と、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算手段3と、仮想的に切断された回線の望ましい重みを計算する局所重み修正量計算手段4と、前記局所重み修正量計算手段の出力を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正手段5という構成を有している。
【0025】
以下、上記構成の動作について説明する。
ネットワークトラフック測定手段1は、測定開始信号入力端子10から測定開始信号が入力されると、ネットワーク100のルータ間を流れるトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定し、測定結果をネットワーク状態信号NSとしてネットワーク仮想切断手段2に送る。
【0026】
なお、また、ネットワークを構成する各ルータが自身をソースとするデマンドマトリックスをネットワークトラフィック測定手段1に送信する構成をとることもできる。また、このトラフィックの測定は一定時間ごとに行われるようにすることは好ましい。
【0027】
前記ネットワーク状態信号を受けた仮想ネットワーク切断手段2の好ましい形態は、ネットワークの状態をネットワーク管理者に示すネットワーク状態表示手段と、ネットワーク管理者が最適化したい(トラフィックを減らしたい)回線を選択する仮想切断回線選択信号入力手段とからなる。この場合、仮想ネットワーク切断手段2は、ネットワーク状態表示手段にネットワークの状態を提示し、ネットワーク管理者は前記前記ネットワーク状態表示手段に表示されたネットワーク状態を見て、ネットワークを2つの部分ネットワーク(以下、部分ネットワークA,部分ネットワークBと呼ぶ)に仮想的に切断するように、負荷を低減したい回線(図3中の回線n以下、対象回線と呼ぶ)を含む複数の回線(図3中の回線p、q)を仮想的に切断する回線として選び、その結果を仮想切断回線選択信号入力手段に入力する。すなわち、図4に示した破線でネットワークを2つに仮想的に切断する。この時、切断された回線の数をNとし、対象回線以外の切断した回線をバイパス回線と、また両者をまとめて切断回線呼ぶ。仮想ネットワーク切断手段2は、仮想切断回線選択信号をコストベクトル計算手段3に送る。
【0028】
なお、仮想的に切断する回線の選択を、各回線のトラフィックから自動的に計算するように構成することも好ましい。その際に、トラフィックと回線の容量の比が最も大きいもの(回線のパンクに一番近いもの)を対象回線とすることは好ましい。
【0029】
コストベクトル計算手段3は、前記仮想切断回線選択信号を受けて、各デマンドマトリックスD(s,t)に属する各パケットがそれぞれの仮想切断回線を通る場合のコストを、部分ネットワークAのコスト、通過する切断回線のコスト、部分ネットワークBのコストに分けて計算する。以下、この計算の詳細を述べる。
【0030】
ここで、部分ネットワークAのソースsから部分ネットワークBの行先tへ送られるパケットを考える。このパケットは、部分ネットワークAから部分ネットワークBへはN本の回線のいずれかを通る。そして、パケットが回線iを通る場合のコスト(v(s,t))は、[数5]に示すように、iの接続ルータまでの部分ネットワークA内の最短経路の部分コストr (s,t)と、回線iのコストwと、部分ネットワークB内の最短経路の部分コストr (s,t)との和で与えられる。
【0031】
【数5】
Figure 2004172713
【0032】
OSPFのアルゴリズムで選択される最短経路は、今考えているパケットが通る可能性のあるN本の経路のうち、[数6]で与えられる回線mを通る経路である。
【0033】
【数6】
Figure 2004172713
【0034】
ここで、関数argmin{v(s,t),i=1,2,・・・,N}は、v(s,t)が最小となる場合の数字iを値とする関数である。
さらに、切断された回線ごとに計算されるパケットのコストが張るN次元空間を導入し、かかるN次元空間(ベクトルx)を[数7]に示す。
【0035】
【数7】
Figure 2004172713
【0036】
このとき、パケットのとり得るN個のコスト(ベクトルv(s,t))は、[数8]で表される3つのベクトルの和である。
【0037】
【数8】
Figure 2004172713
【0038】
そして、部分ネットワークAから部分ネットワークBへと送られる個々のパケットのとり得るコストは、図5に示したように、このN次元空間内の一点に対応させることができる。こうして、各パケットに対応したN次元空間内の点の分布を我々は得る。以下、v(s,t)をコストベクトル、r(s,t)を部分ネットワークXの部分コストベクトル(Xは、AやBなどの値をとり得る変数)、wを回線コストベクトルと呼ぶ。
【0039】
コストベクトル計算手段3は、こうして求められた2つの部分コストベクトル信号と切断回線信号を局所重み修正量計算手段4に送る。
【0040】
次に、局所重み修正量計算手段4は、前記2つの部分コストベクトル信号と切断コストベクトル信号を受けて、切断回線の重みを修正する。以下、その処理の詳細を説明する。
【0041】
まず、望ましい回線の状態を理解するために、切断回線の数が3の場合を説明する。今、OSPFの選択は、各コストベクトルに対し、そのコストベクトルと成す角度が最も大きい軸ベクトルに自身を射影することに対応する。
【0042】
また、OSPFによって選択される回線は、N次元空間内の点の分布を各軸と成す角度を保って[数9]で示される超平面へ射影しても変わらない。
【0043】
【数9】
Figure 2004172713
【0044】
したがって、切断回線の数が3の場合には、図6の左図に示すような正三角形の値域と点で示されたパケットの分布を得る。正三角形の各頂点は、N次元空間の各軸に、すなわち一本の切断回線に対応している。図6の左図では、点は右側の2等辺三角形の内部に集中しているから、全てのパケットは左下の頂点に対応する切断回線を流れる状態にネットワークはある。
【0045】
この時、望ましい回線の状態とは右図に示されたように、全ての回線をほぼ等しくパケットが流れる状態である。したがって、我々の解くべき問題は、図6の右図ようになるように、どの方向にどのくらい分布の位置を動かせばよいかを計算する方法を与えることである。
【0046】
ここでは、切断された回線の容量が等しいという簡単な場合について説明する。このとき、パケットがバランスよく切断回線を流れるようにするためには、分布の中心を各軸から均等な角度を成す点に移動させればよい。それは、[数10]で示される分布の中心(重心)が[数11]で示される直線上にくるようにすればよいことに対応する。
【0047】
【数10】
Figure 2004172713
【0048】
【数11】
Figure 2004172713
ここで、Nの値は[数12]の式で求められる。
【0049】
【数12】
Figure 2004172713
すなわち、
【0050】
【数13】
Figure 2004172713
となればよい。
ここで、ベクトル1は、[数14]で示される。
【0051】
【数14】
Figure 2004172713
【0052】
また、<ベクトルrAB>は、[数15]で示される。
【0053】
【数15】
Figure 2004172713
【0054】
このためには、我々が設定できる切断回線コストベクトルを[数16]または[数17]と修正すればよい。
【0055】
【数16】
Figure 2004172713
【0056】
【数17】
Figure 2004172713
【0057】
ここで、tは切断コストベクトルの各成分の値がOSPFの許す範囲に収まる限り任意の値を取ることができるパラメータである。
【0058】
局所重み修正量計算手段4は、[数17]で与えられる修正切断コストベクトル信号を重み修正手段5に送る。
【0059】
重み修正手段5は、前記仮想的に切断された回線の重みを前記局所重み修正量計算手段からの修正切断コストベクトル信号の各成分の値を対応する切断回線の重みとして設定する。
【0060】
以上、本実施の形態によれば、負荷を低減したい対象回線のトラフィックをバイパス回線に流すことにより、ネットワークの負荷を低減することができる。
【0061】
なお、上の議論は、部分ネットワークでパケットコストの分布が一定の広がりをもつことを前提としている。しかし、部分ネットワークに極めて特殊な設定をした場合、複数のデマンドマトリックスの成分に対し、部分ネットワークのコストベクトルは等しいという特殊な場合もありえる。この特殊な場合においては、切断経路の重みを適切に選択することにより複数の経路が等コストになるようにすることができる。したがって、この特殊な場合であっても、等コスト経路に等しい確率でパケットを流すようなルーティング方式を用いれば、トラフィックを分散することができる。
【0062】
(実施の形態2)
回線の容量が等しくない場合は、パケットひとつあたりのコストが流れる回線の容量ごとに異なるために、パケットが流れる回線が変化するたびに「重心」を求める繰り返し計算が必要となる。
【0063】
この課題を解決するために、実施の形態1の局所重み修正量計算手段4に換えて、局所重み微小修正量計算手段41と収束条件判定手段42を用いる。本実施の形態における最適化装置のブロック図を図2に示す。
【0064】
以下、局所重み微小修正量計算手段41の動作について説明する。
まず、切断回線の重みの初期値のベクトルw[0]は、[数18]とする。
【0065】
【数18】
Figure 2004172713
【0066】
また、コストベクトルの初期値(ベクトルv(s,t)[0])は、[数19]とする。
【0067】
【数19】
Figure 2004172713
【0068】
デマンドマトリックスD(s,t)のコストベクトルは、ベクトルv(s,t)[0]であり、コストベクトルが与えられたときOSPFで選択される回線m[0]とその容量の逆数(以下、密度と呼ぶ)は、[数20]、[数21]と計算される。
【0069】
【数20】
Figure 2004172713
【0070】
【数21】
Figure 2004172713
【0071】
このとき、回線の容量の違いを考慮した分布の重心の初期値は、密度を使って[数22]と計算される。
【0072】
【数22】
Figure 2004172713
【0073】
これから、分布の重心を直線上に移動させる新しい切断回線コストベクトルは[数23]となる。
【0074】
【数23】
Figure 2004172713
【0075】
しかし、パケットがどの回線を通るかで密度は変化するので、切断回線コストベクトルを上のもので置き換えると、個々のパケットの密度が大きく変化し、そのため重心は異なった場所になる。
【0076】
これを解決するために、局所重み微小修正量計算41は、新しい切断回線コストベクトルを、aを1より小さな正の値として、[数24]とし、新しいコストベクトルを[数25]とし、この新しいコストベクトルに対しOSPFで選択される回線m[1]を計算する。
【0077】
【数24】
Figure 2004172713
【0078】
【数25】
Figure 2004172713
【0079】
そして、局所重み微小修正量計算41は、[数24]で与えられる修正切断コストベクトル信号と[数25]で与えられる修正コストベクトル信号を収束条件判定手段42に送る。
【0080】
収束条件判定手段42は、前記修正コストベクトル信号を受けて、収束条件の判定を行う。収束と判定された場合には、前記修正切断コストベクトル信号を重み修正手段5に送る。収束と判定されなかった場合は、前記修正コストベクトル信号と前記修正切断コストベクトル信号を、それぞれコストベクトル信号、切断ベクトル信号として前記局所重み微小修正量計算手段42に送る。
【0081】
収束判定の好ましい方法の一例は、重心と直線との距離があらかじめ定められた値以下になった場合に収束と判定する方法である。
【0082】
以下、上記の計算を繰り返すことにより、回線容量を考慮した分布の重心を前記直線に近づけてゆくことができる。
【0083】
なお、切断回線のトラフィックの総計を最小にするためにはパラメータtは可能な限り大きな値をとればよい。なぜなら、パラメータtは、切断回線を2回以上通る経路についてのみコストとして効くパラメータであるからである。このことは極端な場合として、パラメータtをほぼ無限の値をとった場合を考えれば、直ちに明確になる。部分ネットワークAから部分ネットワークBへと流れるパケットは、いずれにしても切断回線を通り、どの回線を通るかは切断回線間のコストの差(絶対値でなく)によってのみ決まる。
【0084】
一方、部分ネットワークAから部分ネットワークBへ一度流れ、再び部分ネットワークAに戻ってくるパケットにたいしては、パラメータtは膨大なコストとして働き、こうした経路は最短経路ではなくなる。すなわち、ソースと行き先が同一部分ネットワークに属するパケットは、切断回線を通らなくなる。つまり、パラメータtは2つの部分ネットワークの分離の強さを与えるパラメータである。
【0085】
さらに、本発明のルーティング最適化装置は、デマンドマトリックスから切断回線の重みだけを変更する装置である。つまり、本発明のルーティング最適化装置は、ネットワークの局所的な重みを変更する装置である。「切断回線の重みだけを変更する」ということは、言い方を変えれば、部分ネットワーク内のコストを変えないこと(部分コストベクトルは不変)である。これは、局所トラフィック分散法は位置ベクトルの分布の形状を変化させることはできない(例えば、分布の回転はできない)ことを意味する。
【0086】
したがって、分布の等方性が極端に悪い場合、局所トラフィック分散法を一度使うだけでは、ごく一部のパケットしかバイパス回線に回らないという可能性がある。しかし、本発明は、切断回線に対してトラフィックを均質化するルーティング最適化装置である。したがって、ネットワークの切り方を変えて繰り返し使用することにより、ネットワーク全体のトラフィックを均質化することが可能である。この観点からは、本発明のルーティング最適化装置は、上述した従来技術であるFortzらの装置と比較して高速なルーティング最適化装置であるといえる。
【0087】
境界ルータへの流入量Rとそこからの流出量Rしか測定できない場合に触れる。この場合、一般的には問題は不良設定となり、何らかの仮定を導入しなければ問題を解くことができない。但し、ルータをつなぐ回線が十分多く、かつそれらの回線にパケットが流れていれば、連立1次方程式を解くことでデマンドマトリックスを求めることが可能である。
【0088】
ひとつの素直な仮定は、デマンドマトリックスを[数26][数27]の式で表すものとすることである。
【0089】
【数26】
Figure 2004172713
【0090】
【数27】
Figure 2004172713
【0091】
上記の方法は、パケットのソースと行き先の統計分布は独立と考えることに対応し、一般にネットワークが大規模でトラフィックが多い場合に有効である。
【0092】
この方法の精度については、ネットワークのいくつかの回線を選びその回線を流れるトラフィックの測定値と上記デマンドマトリックスから計算される予測値の比を調べれば計測できる。
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ネットワークにおいて少数の回線の負荷が他の回線と比較して著しく高い状態にある(もしくはそうなることが予測できる)場合、具体的には、ネットワークの回線nのトラフィックが多く回線nの負荷が高くなっている状態において、回線の重みを適切に設定することにより、回線nを流れるパケットの一部を、バイパスを成す回線p,qに振り分けることで回線nの負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1におけるルーティング最適化装置のブロック図
【図2】実施の形態2におけるルーティング最適化装置のブロック図
【図3】実施の形態1におけるネットワークの概念図
【図4】実施の形態1におけるネットワークの概念図
【図5】実施の形態1における部分ネットワーク間を送信される個々のパケットのとり得るコストを示した図
【図6】実施の形態1におけるパケットの分布を説明する図
【符号の説明】
1 ネットワークトラフィック計測手段
2 ネットワーク仮想切断手段
3 コストベクトル計算手段
4 局所重み修正量計算手段
5 重み修正手段
41 局所重み微小修正量計算手段
42 収束判定手段
100 ネットワーク

Claims (4)

  1. ネットワークのルーティングを最適化するルーティング最適化装置であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定手段と、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断手段と、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算手段と、仮想的に切断された回線の望ましい重みである修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み修正量計算手段と、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正手段とを有するルーティング最適化装置。
  2. ネットワークのルーティングを最適化するルーティング最適化装置であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定手段と、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断手段と、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算手段と、仮想的に切断された回線の望ましい重みの方向への微小な修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み微小修正量計算手段と、微小な修正によって重みが修正が収束したか否かを判定する収束条件判定手段と、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正手段とを有するルーティング最適化装置。
  3. ネットワークのルーティングを最適化するルーティング最適化方法であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定ステップと、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断ステップと、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算ステップと、仮想的に切断された回線の望ましい重みである修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み修正量計算ステップと、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正ステップとを有するルーティング最適化方法。
  4. ネットワークのルーティングを最適化するルーティング最適化方法であって、ルータsからルータtへのトラフィックを表すデマンドマトリックスD(s,t)を測定するネットワークトラフック測定ステップと、ネットワークを仮想的に2つに切断するネットワーク仮想切断ステップと、仮想的に切断された2つの部分ネットワークの経路コストと仮想的に切断された回線のコストを計算するコストベクトル計算ステップと、仮想的に切断された回線の望ましい重みの方向への微小な修正切断コストベクトル信号を計算する局所重み微小修正量計算ステップと、微小な修正によって重みが修正が収束したか否かを判定する収束条件判定ステップと、前記修正切断コストベクトル信号を用いて仮想的に切断された回線の重みを修正する重み修正ステップとを有するルーティング最適化方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100450099C (zh) * 2006-08-24 2009-01-07 华为技术有限公司 一种基于光网络业务流量生成业务路由的方法

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