JP2004155753A - 低分子アルデヒド由来前進性反応産物 - Google Patents

低分子アルデヒド由来前進性反応産物 Download PDF

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Masayoshi Takeuchi
正義 竹内
Shinji Shimizu
晋治 清水
Toshihiko Kuroda
俊彦 黒田
Nobuo Ida
伸夫 井田
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Abstract

【課題】アセトアルデヒドを反応基質とする前進性反応で、アマドリ転位反応以降の反応産物の存在は確認されておらず、製造法も不明である。該産物は、前進性反応産物の引き起こす各種疾病の病因解明、診断、治療に必要とされるものである。
【解決手段】生体内に存在する有機化合物とアルデヒド基を有する全炭素数2以下の低分子アルデヒドを混合する反応系により得られ、且つ、アマドリ転位反応以降の反応産物であることを特徴とする低分子アルデヒド由来前進性反応産物、該前進性反応産物に対する抗体およびそれらの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体内に存在する有機化合物とアルデヒド基を有する全炭素数2以下の低分子アルデヒドを混合する反応系により得られ、且つ、アマドリ転位反応以降の反応産物であることを特徴とする低分子アルデヒド由来前進性反応産物であり、該低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体の製造方法、並びに、該抗体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体内に存在する有機化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、核酸、脂質、糖及び多糖、ビタミン、及びこれら有機化合物の複合体の一部が、慢性的な環境の影響や経時的に劣化、蓄積することで、慢性的且つ難治性の疾患を引き起こす原因となることが指摘されている。特に、食品学に於ける複雑な前進性反応の総称として知られるメイラード反応は有名であり、このメイラード反応の最終産物(AGE;advanced glycation endproducts)が糖尿病合併症と言った慢性且つ難治性の疾患に関わる可能性が指摘されるようになり、医学の分野でも注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
特に最近になって、これまで注目されていた反応基質をグルコースと考えるAGE(狭義のAGE)よりも、寧ろ、グルコースよりも炭素数が少ない反応基質から得られるAGE(広義のAGE、maillard reaction endproducts)の方が、生成が遙かに短い時間で起こり(例えば、非特許文献2参照。)、従来の狭義のAGEよりも強力な細胞反応性が引き出されることも判明してきた(例えば、非特許文献3参照。)。
【0004】
上記背景から、従来の知見からは因果関係が明瞭でなかった長期大量飲酒者やアルコール依存者に高頻度に見られるアルコール性脳障害や肝障害の発症原因として、これら患者の体内で代謝発生するアセトアルデヒドなどの低分子アルデヒドを反応基質とする広義のAGE(低分子アルデヒド由来前進性反応産物、AA−AGE)が、慢性且つ難治性の疾患原因を形成する病因物質である可能性を検証する価値が出てきた。
【0005】
動物実験に於いても、ラットをアルコール飲料で長期間飼育した後、アルコール飲料を中止した後も引き続いて進行性の神経細胞脱落が起こっていることが示されている(例えば、非特許文献4参照。)。アルコール性肝障害では病理組織学的に終末肝静脈周辺領域を中心にその病変が進展しており、この領域はアルコール代謝酵素の局在と一致していることが知られている(例えば、非特許文献5参照。)。つまり、エタノールの酸化により生成したアセトアルデヒド等の低分子アルデヒドは直ちにタンパク質中の遊離のアミノ基等の塩基性官能基と結合して広義のAGE、つまり、低分子アルデヒド由来前進性反応産物を形成して、アセトアルデヒド等の低分子アルデヒドが血液中から消失した後も長期的に神経や肝細胞毒性を発揮し続けることが考えられる。
【0006】
ところが、アセトアルデヒドを反応基質としたメイラード反応産物の従来の検出方法については、メイラード反応の極初期段階の反応、つまり、第一段階のシッフ塩基形成反応体を更にNaCNBHで途中還元して前進性反応を停止させてから検出するに過ぎない方法であり、煩雑且つ前進反応性のメイラード反応を経た広義のAGEを検出する技術とは言えなかったのが現状である(例えば、特許文献1参照。)。技術的に更に詳しく述べるならば、この特許文献に記載されたアセトアルデヒドを反応基質とするメイラード反応産物は、発明の実施の形態の抗体の作成の項に記載されているように、メイラード反応を起こす際に還元剤であるNaCNBHを共存させるためにアマドリ転位反応を起こさずに途中還元されて、構造上安定なN−エチルリジン(NEL)と言う構造体になる(図1)。
【0007】
【非特許文献1】
マキタ(Makita Z),他8名, 「糖尿病性神経障害患者における前進性糖化反応産物(Advanced glycosylation end products in patients with diabetic nephropathy.)」,ザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(The New England Journal of Medicine),1991年,第325巻,p836−842
【0008】
【非特許文献2】
タケウチ(Takeuchi M), 他4名,「糖尿病患者血清中からの前進性糖化反応産物の非カルボキシメチルリジンとカルボキシメチルリジンの検出(Detection of noncarboxymethyllysine and carboxymethyllysine advanced glycation endproducts(AGE) in serum of diabetic patients.)」,モレキュラー・メディスン(Molecular Medicine),1999年,第5巻,p393−405
【0009】
【非特許文献3】
タケウチ(Takeuchi M), 他7名,「培養大脳皮質神経細胞に対する前進性糖化反応産物の神経毒性(Neurotoxicity of advanced glycation end−products for cultured cortical neurons.)」,ジャーナル・オブ・ニューロパソロジー・アンド・エクスペリメンタル・ニューロロジー(Journal of Neuropathology &Experimental Neurology),2000年,第59巻,p1094−1105
【0010】
【非特許文献4】
カデット−ライト(Cadet−Leite A.), 他2名,「慢性アルコール飼養ラットへのアルコール給餌停止は海馬下流細胞の進行性脱落を抑制しない。(Alcohol withdrawal does not impede hippocampal granule cell progressive loss in chronic alcohol−fed rats.)」,ニューロサイエンス・レターズ(NeuroscienceLetters),1988年,第86巻,p45−50
【0011】
【非特許文献5】
リーバー(Lieber C.S.),「アルコールと肝臓1984増補(Alcohol and the liver:1984 update.)」,ヘパトロジー(Hepatology),1984年,第4巻,第6号,p1243−1260
【0012】
【特許文献1】
特許第2762058号公報(第3−5頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
公知の方法では、アセトアルデヒドを反応基質としたアマドリ転位以降の反応産物を検出できていないため、該反応産物の存在は明らかにされていなかった。従って、アセトアルデヒドを反応基質とした広義のAGEがどのような物性を有し、更には、生物学的にどれくらい意味があるのかについても、全く明らかではなかった。また、図1で示された例はアセトアルデヒドについてのものであるが、反応基質がアセトアルデヒドの代わりのアルデヒド基を有する低分子誘導体であっても同様の前進性反応が引き起こされると考えられるが、これまでに明らかにされていなかった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成を有する。
「(1)生体内由来の有機化合物とアルデヒド基を有する全炭素数2以下の低分子アルデヒドを混合する反応系により得られ、且つ、アマドリ転位反応以降の反応産物であることを特徴とする低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0015】
(2)前記反応系にDTPA(Diethylenetriamine−N,N,N’,N’’,N’’’−pentaacetic acid)をさらに混合することにより得られることを特徴とする(1)に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0016】
(3)前記反応系の反応温度が10℃〜90℃の範囲であることを特徴とする(1)または(2)に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0017】
(4)前記反応系のpHが2〜12の範囲であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0018】
(5)前記反応系の反応時間が1時間以上であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0019】
(6)前記低分子アルデヒドの濃度が1nM〜10Mの範囲であることを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0020】
(7)前記有機化合物が1つ以上の塩基性官能基を持つことを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0021】
(8)前記塩基性官能基がアミノ酸由来であることを特徴とする(7)に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0022】
(9)前記反応産物の物性が、以下のa)〜e)のいずれかの性質を1つ以上含むことを特徴とする(1)〜(8)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0023】
a)蛍光性
b)着色(褐色)性
c)架橋反応性
d)生物反応性
e)RAGE非結合性
(10)前記反応産物が、N−エチルリジン構造体でないことを特徴とする(1)〜(9)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0024】
(11)神経細胞の細胞死を誘導できることを特徴とする(1)〜(10)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0025】
(12)単球由来細胞の炎症反応を誘起しないことを特徴とする(1)〜(11の)何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0026】
(13)低分子アルデヒドがアセトアルデヒドであることを特徴とする(1)〜(12)の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
【0027】
(14)(1)〜(13)のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物を用いることを特徴とした低分子アルデヒド由来前進性反応産物を認識する抗体の製造方法。
【0028】
(15)(14)に記載の製造方法で製造された低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
【0029】
(16)(1)〜(13)のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
【0030】
(17)以下の構造体と反応しないことを特徴とする(15)または(16)に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
【0031】
a)N−カルボキシメチルリジン構造体
b)N−カルボキシエチルリジン構造体
c)N−エチルリジン構造体
(18)体液由来試料中の低分子アルデヒド由来前進性反応産物の検出に用いられることを特徴とする(15)〜(17)のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
【0032】
(19)低分子アルデヒド由来前進性反応産物の生物反応を中和することができる(15)〜(18)のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
【0033】
(20)低分子アルデヒド由来前進性反応産物に反応し、下記a)〜c)の各構造体に反応しない抗体の製造方法であって、下記のa)〜c)の各構造体に反応する抗体を除去する工程を含むことを特徴とする(14)に記載の抗体の製造方法。
【0034】
a)N−カルボキシメチルリジン構造体
b)N−カルボキシエチルリジン構造体
c)N−エチルリジン構造体」
(21)(15)〜(18)のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体を用いることでアルコール性障害を判定する方法。
【0035】
(22)(15)〜(18)のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体と結合する分子量150〜250kDの物質。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
本発明で言うところの前進性反応産物とは、被反応物と反応基質が非酵素的反応、つまり、化学反応して生成した反応産物が、続けて、他の反応基質と反応したり、更に、自己開裂、官能基脱離や自己酸化などの自己反応を複合的に起こして、連続的に反応産物の化学的構造が変化することができる反応産物を言う。連続的に起こる前進性反応に於いて、反応を触媒する物質(例えば、酵素や重金属化合物)が介在しても良く、また、酵素が介在しない反応、つまり、非酵素的反応と言った化学反応であっても良く、特に限定を受けない。
【0038】
被反応物とは、生体内にある物質や外部から体内に取り込んで酵素的に代謝、又は、非酵素的に化学反応した物でも良い。更に、この被反応物は、体内に存在する有機化合物であればよく、例えば、タンパク質やペプチド、アミノ酸、核酸、脂質、糖及び多糖体、ビタミンやこれらの複合体(例えば、糖タンパク質や糖脂質、リン脂質)が挙げられるが、その中でも好ましくは塩基性官能基が含まれていれば良く、前進性反応し得る被反応物ならば特に限定を受けない。本発明でいう生体由来の有機化合物とは、前記の被反応物のことである。
【0039】
更に、上記の被反応物と反応する低分子アルデヒドとは、体内で代謝されて生成する低分子アルデヒドや体外から体内に摂取される全炭素数2個のアルデヒド官能基を有する化合物であれば、特に限定を受けない。その中でも好ましくは、アセトアルデヒドである。
【0040】
本発明で言うところの低分子アルデヒド由来前進性反応産物を得るための反応系の条件においては、更なる添加物、反応温度、pH、反応時間、低分子アルデヒド濃度を適宜変更することが出来るし、記載以外の反応条件についても変更することは可能である。
【0041】
例えば、低分子アルデヒド由来前進性反応中の酸化反応を抑制する目的で、反応溶液中に極微量に含まれる銅イオン、鉄イオン等の重金属をキレートして重金属イオンが触媒する酸化反応を抑制するためにキレート剤を添加して前進性反応を進行させることが出来る。本反応系については、使用できるキレート剤を特に限定する必要はないが、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)やDTPAを使用することが可能である。好ましくは、DTPAである。
【0042】
また、本反応系での反応温度は特に記載の温度に限定される訳ではないが、10℃〜90℃の範囲であれば良く、好ましくは20℃〜50℃、更に好ましくは30℃〜40℃、最も好ましくは37℃である。
【0043】
更に、本反応系での反応溶液のpHも特に記載の温度に限定される訳ではないが、2〜12の範囲であれば良く、好ましくは4〜10、更に好ましくは6〜8、一層好ましくは6.8〜7.4である。
【0044】
本反応系の反応時間についても記載の時間に限定されない。例えば、1時間以上から数年の範囲でも良い。但し、実験室で低分子アルデヒド由来前進性反応産物を標品として得るために容易に調製するには1時間以上が好ましく、より好ましくは1日間〜10週間であり、更に好ましくは1週間〜8週間、最も好ましくは1週間前後である。
【0045】
そして、本反応系で使用できる反応基質としての低分子アルデヒドの濃度は、特に限定を受けない。例えば、ヒトの場合に血液中のアルコールが瞬時にアセトアルデヒドに代謝されると仮定するならば、0.2mg/ml〜5mg/mlの範囲が好ましい。但し、実験室で簡便に低分子アルデヒド由来反応産物を調製するには、反応時間を短縮するために反応基質である低分子アルデヒド濃度を非生理的な濃度以上に設定しても問題ない。例えば、低分子アルデヒドを1nM〜10Mの幅広い濃度で用いても構わない。より好ましくは0.01M〜1Mの範囲であり、最も好ましくは0.1M前後である。
【0046】
本発明で言うところの低分子アルデヒド由来前進性反応産物には、様々な構造が存在する可能性があるが、構造は未だ明らかではない。但し、既知の構造であるN−エチルリジンは、アマドリ転位以降の低分子アルデヒド由来前進性反応産物には含まれないことが分かっている。一方で、本発明者らは、低分子アルデヒド由来前進性反応産物の製造法と、それらが持つ物性について検討した結果、これまで調べられてきたグルコース由来の前進性反応産物のもつ種々の物性と異なる物性を有する低分子アルデヒド由来前進性反応物が存在し、従来、低分子アルデヒド由来前進性反応産物ではまだ見出されていないアマドリ転位以降の反応生成物が存在することを本発明者らは解明し、さらにそれらの製造方法を完成するに至った。アマドリ転位以降の低分子アルデヒド由来前進性反応産物の存在は、その蛍光性、着色性、架橋反応性、抗原性、生物反応性、RAGE非結合性と言った物性評価によって確認することができる。
【0047】
アマドリ転位以降の低分子アルデヒド由来前進性反応産物の存在を確認するには、以下に記載する一定の試料調製をすればよい。記載の範囲で反応させた低分子アルデヒド由来前進性反応産物を調製するには、先ず、PD−10脱塩カラムを1回通液してPBSに緩衝液置換して、更に再度、PBSを用いて4℃で3回(1回の透析時間は12時間〜24時間の範囲)の頻度で透析を行うことで、試料から過剰な反応基質の除去を行う。調製後の試料は、濾過滅菌後に4℃で無菌的に遮光保管し、1ヶ月以内に以下の物性評価に使用する。
【0048】
蛍光性については、アマドリ転位を経由して更に前進性反応を繰り返すことで、ある特定範囲の励起光に対する蛍光特性が現れる。励起光と蛍光の波長は被反応物が前進性反応を受けることで強調されることが分かる場合であればどんな波長でも良いが、本発明において、「蛍光性を有する」とは、PBSで0.5mg/mlに溶解した上記調製試料を日立850型分光蛍光光度計での測定時に、300nm以上395nm未満の範囲のいずれかの励起光(波長スリット幅:5nm)で400nm以上500nm以下の範囲で観測される最大蛍光強度(波長スリット幅:5nm)が低分子アルデヒド由来の前進性反応を受ける前後での蛍光強度比率が5%以上増加することを言い、該最大蛍光強度の増加比率は、20%以上がより好ましく、50%以上であればよりいっそう好ましい。
【0049】
低分子アルデヒド由来反応産物が示す特徴である着色性についても、前進性反応の段階で経時的に変化する物であり、詳しく述べるならば、反応初期に薄黄色に着色し、更に反応が進むことにより、茶色に着色し、最終的には、茶色から褐色になる。本発明で言うところの着色性を評価するには、分光光度計(日立分光光度計)で着色度を評価する場合には、上記調製試料の濃度をPBSで0.5mg/mlに調製した時の吸光波長330nmの吸光度が、低分子アルデヒド由来の前進性反応を受ける前後で5%以上増加することを言い、更に20%以上ならば好ましく、50%以上ならばより好ましい。
【0050】
更に、低分子アルデヒド由来前進性反応産物が形成される段階で架橋反応も形成されることがある。架橋度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)の移動度の変化から評価することができる。
【0051】
本発明で言うところの架橋反応の確認は次の方法で確認できる。先ず、上記調製方法で調製された低分子アルデヒド由来反応前後の産物について、1試料当たり2μg採取する。次に、試料にSDS−PAGE用サンプル調製液(2−メルカプトエタノール含)を加えて、100℃、3分間加熱処理する。次に、SDS−PAGE用電気泳動ゲル(10ウェル、厚さ1mm、テフコ製)とLaemmli溶液とを使って電気泳動を行う。泳動条件は室温で泳動電流20mA/ゲルで泳動を行い、泳動装置はテフコ製を用いる。泳動する際に、分子量マーカーも同時に泳動することで、分子量マーカーと試料の泳動距離から分子量を導き出す。上記方法で分子量が算出できない場合、例えば、リポタンパク質のように分子量が大きすぎて泳動出来ないとか、低分子核酸のように分子量が小さすぎて十分に分画出来ない場合には、アガロースゲルを用いた電気泳動を採用する。試料の検出は、CBBコロイド染色(テフコ)で実施するが、上記方法で検出できないときは、被反応産物に対して低分子アルデヒド由来前進性反応による反応の影響をほとんど受けない特異的反応抗体を用いた免疫染色を用いてウエスタンブロット法で検出する。ウエスタンブロット法で検出時の試料は、1試量当たり0.2μg採取する。以上の方法で導き出された分子量の最大増加率が、低分子アルデヒド由来前進性反応の前後で1.5倍以上であることを言い、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上である。
【0052】
更に、鋭意研究の結果、低分子アルデヒド由来前進性反応産物は抗原性も有することが分かった。シッフ塩基形成直後にNaCNBH還元することで、N−エチルリジン構造を生成させると強い抗原性が得られるが、シッフ塩基形成後に強制的に還元することなく、アマドリ転位させて、引き続き煩雑な前進性反応を経由して出来上がった低分子アルデヒド由来反応産物も弱いながらも抗原性を有することを見出している。ここで言う抗原性の有無の確認方法とは、キャリア上に本発明で言う低分子アルデヒド由来前進性反応産物を形成させて、これを免疫原として宿主の皮下に適切なアジュバントとともに投与するといった免疫の後に得られた抗血清若しくは抗体が抗原固相化法というELISAの手法で抗原抗体反応性を評価する。上記キャリアはアルブミンを使用する。特に好ましくは宿主のアルブミンであるが、宿主のアルブミンでは抗原提示性が弱く反応性の確認が出来ない場合には、キャリアのアルブミンをウサギ、ウシ、ヒト、マウス、イヌ、ヤギから選択することが出来、このキャリアの中から低分子アルデヒド由来反応産物に最も高い抗原提示性があるアルブミンを使用する。免疫する動物はウサギ(日本白色ウサギ)を使用する。但し、ウサギで十分な反応性が見出されない場合には、マウス、ラット、イヌ、ヤギから選ばれる最も免疫原反応が高い動物を使用する。免疫するアジュバントは、FCA(和光純薬)を使用する。もし、FCAで十分な抗体力価が得られないならば、不活性化百日咳菌の死菌懸濁液(和光純薬)を用いたアラムアジュバントを初回免疫して以降の免疫にアラムアジュバントを用いた免疫方法、または、RASアジュバント(フナコシ)を使用して最も力価の高い抗体が得られるアジュバントを選択する。免疫の回数は1回あたり1週間の間隔で5回であり、5回で不十分であれば10回以下、最長でも1年以下である。その際に得られた最大力価の抗血清または抗血清から調製した抗体溶液を使用する。
【0053】
また、本発明で言う低分子アルデヒド由来前進性反応産物の生物反応性とは、あらゆる生物や細胞と低分子アルデヒド由来前進性反応産物を反応させることで引き起こされる現象を特に限定されることなく意味するが、好ましく用いられる生物反応の例としては、肝細胞や神経細胞との反応に於いて、サイトカインや成長因子の放出、細胞増殖、細胞死の誘導が挙げられる。更に上記生物反応の評価条件を詳細に述べるならば、以下の手法で一義的に評価できる。つまり、18日目のラット胎仔(Std:Wister/ST)の大脳皮質神経細胞を用いた細胞毒性試験で神経細胞を細胞死できる生物反応を用いる。大脳皮質神経細胞の採取方法は、公知の手法(オグラら,エクスペリメンタル・ブレイン・リサーチ(Experimental Brain Research),1988年,第73巻,p447−458)に従い採取する。細胞毒性試験を行う培養条件は、0.25%ポリエチレンイミンでコーティングした24穴培養プレートに細胞懸濁液(3.7×10cell/ml)を1mlずつはん種し、更に48時間培養後にグリア細胞の増殖を抑制するために最終濃度10μMのAraCで24時間処理した後で、CMF−PBSで2回洗浄後に無血清のDMEM培地に交換して、更に24時間培養後に細胞毒性試験を行う。本発明に係る低分子アルデヒド由来先進性反応産物は評価対象細胞の細胞死を50%誘導できる低分子アルデヒド由来前進性反応産物の細胞培養液添加時の初期濃度(IC50値)が、1mg/ml以下のものを指すが、より好ましくは0.5mg/ml以下であり、最も好ましくは0.35mg/ml以下であれば良い。また、細胞死を評価する方法は、全細胞数のMTT活性を定量的に評価することで表す。具体的には、はじめに培地0.5ml中に5mg/mlの濃度のMTT溶液を50μl添加して、37℃、5%CO条件下で2時間静置する。生成したMTT−フォルマザンを0.04N塩酸を含んだイソプロパノール溶液0.5mlにて抽出して、マイクロプレートリーダー(Immuno−Mini NJ−2300, InterMed社)を用いて570nmでの吸光度を測定して評価する。
【0054】
また、これら生物反応を引き起こす鍵は、ある種の受容体であり、特に限定を受けることはないが、スカベンジャー機能を持つ受容体である。従来知られている前進性反応産物(AGE)と結合し、生物反応を媒介する受容体で最も有名な物はRAGEであるが、本発明で見出された低分子アルデヒド由来前進性反応産物はRAGEとは結合せずに、特定の細胞にのみ生物活性を誘導する特徴を持つ。例えば、上記のように低分子アルデヒド由来前進性反応産物は神経細胞等の細胞死を誘導できるが、その一方で、RAGEを発現していることが知られている単球系細胞(例えば、THP−1細胞)と反応させても、従来の前進性反応産物と同様に単球系細胞のサイトカインの放出を促すことはできない特徴をもつ。つまり、低分子アルデヒド由来前進性反応産物はRAGEとは異なる受容体を介した生物反応を引き起こすことがわかる。
【0055】
本発明で言うところのRAGE非結合性を評価する方法とは、先ず、96穴マイクロプレート(NUNC)にAA−AGE−BSAとネガティブコントロールであるBSAをそれぞれ固相化する。固相化条件は、リン酸緩衝生理食塩水で20μg/mlに希釈した調製液を100μl添加して、4℃、12時間である。固相化反応後、0.5%BSAリン酸緩衝生理食塩水で室温、2時間でブロッキング処理し、ブロッキング処理後に、リン酸緩衝生理食塩水に0.05%ツイーン20(登録商標)を添加した洗浄液(PBST)で1回洗浄して、0.5μg/mlに調製した精製ヒトRAGE細胞外ドメイン溶液を100μl添加して、室温で2時間振とう反応し、反応後に、PBSTで3回洗浄して、0.1μg/mlに調製した抗His−Tag抗体溶液(QIAGEN)を室温、1時間反応させる。更にPBSTで3回洗浄後、抗マウスIgG抗体HRP標識(Zymed)を室温、30分間反応させ、反応後、3回洗浄して、発色液を入れて、室温、30分間発色させ、停止液を添加して発色反応を止めて、発色液の吸光度を測定することでRAGE結合性を評価する。発色度が、ネガティブコントロールであるBSAに対して、低分子アルデヒド由来前進性反応で5倍未満であれば結合性なしと判定する。
【0056】
上記生物反応がヒトに於いて観測される場合は、ある特定の疾患という現象で見られる。特に、これまで知られている疾患は難治性疾患が多く、俗に言う、酸化ストレスが関与する疾患が多い。具体的には、記載事項のみに限定されるわけではないが、アルコール性脳神経障害や肝臓障害に代表されるアルコール性障害、腎障害、糖尿病合併症、脳神経障害、アミロイド性疾患、遺伝性代謝性疾患が挙げられる。また、必ずしも疾患ではないが、老化現象も挙げられる。更に、低分子アルデヒドを摂取することによって、体内に吸収される中毒症状も当てはまる。その中でも特に重要な疾患が、アルコール性障害である。
【0057】
また、上記疾患で観測される低分子アルデヒド由来前進性反応産物は、特に限定を受けるわけではないが、体液や体の組織中で見出される。体液は、血液や血清、血漿、尿、リンパ液、関節液、消化液、髄膜液が挙げられ、更には、人工透析などで生じた透析液中でも見出されることがある。更に、低分子アルデヒド由来前進性反応産物が見出される組織とは、脳や神経と言った神経系全般、血管や心臓と言った循環器系全般、肝臓、腎臓、消化器、そして、皮膚や骨等の支持組織であっても良く、これら記載の事項にのみ限定を受けるものではない。
【0058】
本発明で言うところの抗体とは、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でも良く、特に限定を受けるものではない。また、抗血清や腹水、抗体を産生するハイブリドーマの培養上清でもよく、低分子アルデヒド由来前進性反応産物に反応する抗体が含まれていれば良く、抗体が含まれる試料形態に特に限定を受けるものではない。
【0059】
本発明で言うところの抗体製造方法とは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、トリ、ウシ等の適当な動物に、抗原である低分子アルデヒド由来前進性反応産物をアジュバントと共に投与することで低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体(抗血清)を得る工程を含む。更に、抗血清から低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体を効率よく分離するために抗原である低分子アルデヒド由来前進性反応産物を液体クロマトカラム用ビーズ等の担体に固定化したアフィニティーカラムに通液した後で、アフィニティーカラムに結合した抗体を分離回収するアフィニティー精製の工程が含まれても良い。更には、アフィニティー精製した抗体の中から更に必要な抗体の純度を上げるために、N−カルボキシメチルリジン構造体、N−カルボキシエチルリジン構造体、N−エチルリジンのアマドリ転位反応を経由せずに形成された低分子アルデヒド由来の反応産物と結合する抗体を除去する目的で、N−カルボキシメチルリジン構造体、N−カルボキシエチルリジン構造体、N−エチルリジン等の反応産物を固定化したアフィニティーカラムに通液する事で不要な抗体を除去する工程が含まれても良い。但し、抗体の製造方法は記載の方法に限定されるものではない。
【0060】
本発明の体液由来試料中の低分子アルデヒド由来前進性反応産物の検出に用いられる抗体を製造するには、上記の抗体製造法を利用することが可能である。より好ましくは、体液由来試料との非特異的反応、つまり、抗原となる低分子アルデヒド由来前進性反応産物以外との反応を最小限に抑えるために、上記製造法で得られた抗体に対して、更に、評価対象となる動物種の健常な体液由来試料を液体クロマトカラム用ビーズ等の担体に固定化したアフィニティーカラムに通液して素通りした抗体を分離回収するアフィニティー精製の工程が含まれても良い。もし、評価対象となる動物種の健常な体液由来試料が入手困難であれば、評価対象となる動物種の免疫グロブリンを固定化するだけでも効果的である。
【0061】
更に、本発明の生物反応を中和できる抗体を製造するには、上記記載の抗体製造法、または、体液由来試料中の低分子アルデヒド由来前進性反応産物の検出に用いられる抗体の製造方法を利用することが出来る。但し、より好ましくは、生物反応を中和できる抗体のみが回収できればよいので、低分子アルデヒド由来前進性反応産物を担体に固定化して、更に、この担体上に固定化された低分子アルデヒド由来前進性反応産物と生物反応を媒介するタンパク質、好ましくは受容体のリガンド結合能力が保存された受容体又は可溶性受容体で、具体例としてRAGE等のスカベンジャー受容体が挙げられるが、そのような生物反応を媒介する生体内に存在するタンパク質を結合させて、更にグルタルアルデヒド等で化学的に架橋固定化させた担体を用いたアフィニティーカラムに通液して素通りした抗体のみを回収して生物反応を中和する抗体として用いると効果的である。
【0062】
そして、本発明で言うところの抗体で中和できる生物反応の手段としては、中和対象に於いて、抗体をそのまま添加しても良く、さらに、カプセル中やヒドロゲルに包埋、結合させて用いてもよい。更に、上記記載のように液性性状として抗体を使用しても良いが、水不溶性担体と言った固体性状に固定化して使用しても良く、抗体を用いた中和手段について特に記載の内容にのみ限定を受けるものではない。
【0063】
本発明の低分子アルデヒド由来前進性反応産物は、医薬設計のためのスクリーニング材料、診断材料、食品の劣化度評価等の用途に用いることが出来る。医薬設計のためのスクリーニング用途については、低分子アルデヒド由来前進性反応産物の抗原提示性評価や細胞や動物を用いた生物活性評価の品質が安定して扱える標品として利用可能である。特に、抗体やペプチドや合成化合物等で設計し得ることが可能なアンタゴニストのスクリーニング用途には、品質が安定して大量供給可能な標品が必要であり、大いに利活用できる。また、診断材料の開発に対する用途についても、品質が安定して扱える標品を提供する形で見出すことが出来る。また、低分子アルデヒドに対する抗体を作製する免疫原や抗原としても提供可能である。一番期待できる診断用途は、アルコール性慢性疾患、例えば、アルコール性神経疾患、肝障害、代謝障害等の診断であるが、アセトアルデヒドに代表される低分子アルデヒドは、アルコール摂取以外にも代謝等で体内に発生することが十分予想され、アルコール性慢性疾患以外にも、アルツハイマー病等の一般の慢性神経疾患や腎症、糖尿病、高脂血症、透析合併症、老化、血管障害、アミロイド症等の様々な酸化ストレスが発生しうる疾患対象にも、安定した標品を提供する形で利活用できる。更には、人体以外にも、植物をはじめ肉、魚等の生食品や加工食品の劣化試験の標品としても利用できる。更には、香料等の食品、化粧品、衣類、住居等への人工添加物の影響を評価する安定した標品としても提供可能である。
【0064】
本発明の低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する抗体は、上記同様に、医薬設計のためのスクリーニング材料、診断材料、食品の劣化度評価等の用途に用いることが出来る。医薬設計のためのスクリーニング用途については、低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する抗原提示性評価の抗体標品や細胞や動物に対する生物活性評価の影響を抗体価上昇とした指標で評価する際にポジティブコントロールとしての抗体標品として利用可能である。特に、生物活性を中和する抗体は、アンタゴニストのスクリーニング用途、または、アンタゴニストそのものとして利活用可能であり、更には、品質が安定して大量供給可能な抗体標品として大いに利活用できる。また、診断材料の開発に対する用途についても、生物活性を中和することを必須条件とせずに抗体標品を提供する形で見出すことが出来る。また、低分子アルデヒド由来前進性反応産物の精製状況を微量検出する高感度測定用抗体としても提供可能である。一番期待できる診断用途は、アルコール性慢性疾患、例えば、アルコール性神経疾患、肝障害、代謝障害等の診断であるが、アセトアルデヒドに代表される低分子アルデヒドは、アルコール摂取以外にも代謝等で体内に発生することが十分予想されるため、抗体の製造方法を鋭意検討することで、アルコール性慢性疾患以外にも、アルツハイマー病等の一般の慢性神経疾患や腎症、糖尿病、高脂血症、透析合併症、老化、血管障害、アミロイド症等の様々な酸化ストレスが発生しうる疾患対象にも、抗体を用いた検出材料を提供する用途ととして利活用できる。更には、人体以外にも、植物をはじめ肉、魚等の生食品や加工食品の劣化試験の検出材料としても利用できる。更には、香料等の食品、化粧品、衣類、住居等への人工添加物の影響を評価する安定した検出標品としても提供可能である。
【0065】
【実施例】
以下、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1):各種AGE(前進性反応産物)の作製
本発明にかかる低分子アルデヒド由来前進性反応産物として、アセトアルデヒド由来AGE−rabbit serum albumin(AA−AGE−RSA)とアセトアルデヒド由来AGE−bovine serum albumin(AA−AGE−BSA)を以下のような方法で作製した。
【0066】
生体内に存在する有機化合物として、25mg/mlのRSA(rabbit serum albumin:ウサギ血清アルブミン)を0.1Mのアセトアルデヒドと5mMのDTPA(Diethylenetriamine−N,N,N’,N’’,N’’’−pentaacetic acid)と共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のアルデヒドを、PD−10脱塩カラムとPBS(phosphate buffered saline)による透析により取り除き、本発明にかかる低分子アルデヒド由来前進性反応産物(実施例1、AA−AGE−RSA)を得た。タンパク質定量は、BSAを標準物質としてDc protein assay試薬(Bio−Rad社)を用いて行った。
【0067】
25mg/mlのBSAを0.1Mのアセトアルデヒドと5mMのDTPA(Diethylenetriamine−N,N,N’,N’’,N’’’−pentaacetic acid)と共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のアルデヒドを、PD−10脱塩カラムとPBS(phosphate buffered saline)による透析により取り除き、本発明にかかる低分子アルデヒド由来前進性反応産物(実施例2、AA−AGE−BSA)を得た。25mg/mlのBSAを0.5Mのグルコースと5mMのDTPAと共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で8週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のグルコースを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例1(AGE−1)を得た。
【0068】
25mg/mlのBSAを0.1Mのグリセルアルデヒドと5mMのDTPAと共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のグリセルアルデヒドを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例2(AGE−2)を得た。
【0069】
25mg/mlのBSAを0.1Mのグリコールアルデヒドと5mMのDTPAと共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のグリコールアルデヒドを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例3(AGE−3)を得た。
【0070】
25mg/mlのBSAを0.1Mのメチルグリオキサールと5mMのDTPAと共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のメチルグリオキサールを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例4(AGE−4)を得た。
【0071】
25mg/mlのBSAを0.1Mのグリオキサールと5mMのDTPAと共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で1週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のグリオキサールを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例5(AGE−5)を得た。
【0072】
25mg/mlのBSAを0.2Mの3−デオキシグルコゾンと5mMのDTPAと共に0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して、37℃で2週間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応の3−デオキシグルコゾンを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例6(AGE−6)を得た。比較例1〜6のタンパク質定量は、実施例1〜2のタンパク質定量と同様の手法でPD−10カラムと透析後に、行った。
【0073】
AA−AGE−BSAの蛍光スペクトルを測定した(日立850型分光蛍光光度計)。濃度は0.5mg/mlに調製した。蛍光はAA−AGE−BSAにのみ特異的に見られ(図2)、未修飾のBSAには見られなかった。AA−AGEの蛍光スペクトルのピークは励起波長が360nm、蛍光波長が440nmに観察された。これは各種AGE(AGE−1〜−6)のピーク(励起光波長範囲:360nm〜380nm、蛍光波長範囲:430nm〜450nm)と近い値であった。
(2):N−エチルリジン−BSA(NEL−BSA)、N−カルボキシメチルリジン−BSA(CML−BSA)、N−カルボキシエチルリジン−BSA(CEL−BSA)の作成
NEL−BSAは、50mg/mlのBSAを45mMのアセトアルデヒドと150mMのNaCNBHとともに0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して37℃で24時間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のアルデヒドを、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例7(NEL−BSA)を得た。
【0074】
CML−BSAは、50mg/mlのBSAを45mMのグリオキサール酸と150mMのNaCNBH3とともに0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して37℃で24時間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のグリオキサール酸を、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例8(CML−BSA)を得た。
【0075】
CEL−BSAは、50mg/mlのBSAを45mMのピルビン酸と150mMのNaCNBH3とともに0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解後、0.2μmのフィルターにより濾過滅菌して37℃で24時間インキュベートした。低分子量の反応物や未反応のピルビン酸を、PD−10脱塩カラムとPBSによる透析により取り除き、比較例9(CEL−BSA)を得た。
【0076】
NEL−BSA、CML−BSA、CEL−BSAの蛍光特性について測定した(日立850型分光蛍光光度計)。濃度は0.5mg/mlに調製した。NEL−BSA、CML−BSA、CEL−BSAには実施例1〜2及び比較例1〜6で見られた蛍光スペクトルは見られなかった(図2)。アマドリ転位以降に発生する特徴的な蛍光特性が観察されなかったことが示された。
(3)低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する抗血清の作成
アセトアルデヒドでAGE化した4mgの実施例1のAA−AGE−RSA(rabbit serum albumin)をフロイント完全アジュバント(和光純薬)と1:1の割合で乳化し、日本白色ウサギ(雌、2.5kg)の背部数カ所に皮下注射した。初回免疫後、1週間おきに5回の追加免疫を抗体価が上昇するまで行った。追加免疫後、経時的にウサギの耳静脈より少量採血し、抗体価の確認を行った。抗体価の上昇の見られた時点からさらに2週間後、最終追加免疫を行い、その10日後に抗血清の精製を行うために全採血を行い、抗血清1を得た。
(4)AA−AGE特異抗体及びNEL特異抗体の調製
得られた抗血清1の中にはAA−AGE特異抗体の他、シッフ塩基あるいはアマドリ化合物から生成するNEL構造体に対する抗体も含まれているため、2種類のアフィニティークロマトグラフィーを用いてそれぞれの抗体の分離を行った。
【0077】
まず、AA−AGE−BSAおよびNEL−BSAアフィニティーカラムを調製した。7.5gのCNBr−activated Sepharose 4B を1mM塩酸で膨潤後、2Lの1mM塩酸で洗浄した。リガンドとして100mgのAA−AGE−BSA(実施例2)またはNEL−BSA(比較例7)をCoupling buffer(pH8.3)と混合し、25mlのCNBr−activated Sepharose 4Bゲルと室温で1時間振とうしてカンプリングさせた。カップリング後、余分なリガンドはCoupling bufferで洗浄した。ゲルの活性残基は、0.1M トリス塩酸緩衝液(pH8.0)とゲルを室温で2時間振とうしてブロッキングした。ブロッキング終了後、Coupling bufferとWashing buffer(pH4.0)とで交互に3回洗浄し、更にPBSで3回洗浄することでアフィニティー樹脂を調製した。
【0078】
20mlの抗血清1をこのAA−AGE−BSA−Sepharose 4Bカラム(2.5cm×5cm)に4℃で一晩吸着させた。PBSで洗浄後、吸着画分を1M チオシアン酸カリウムを含んだ20mM リン酸緩衝液(pH7.4)で溶出した。溶出時は各フラクションを280nmの吸光度でモニターし、ピーク部分を集めてCentriprep−10で濃縮後、PD−10ゲル濾過カラムを用いて緩衝液の置換を行った。
【0079】
得られた溶出画分をさらにNEL−BSA−Sepharose 4Bカラム(1.5×5.5cm)に4℃で一晩吸着させた。カラムを30mlのPBSで洗い非吸着画分を、次に20mlの1M チオシアン酸カリウムを含んだ20mM リン酸緩衝液で吸着画分を得た。どちらも各フラクション(1ml)を280nmの吸光度でモニターし(図3)、ピーク部分を集めてCentriprep−10で濃縮後、PD−10カラムにて緩衝液の置換を行った。ここで得られた非吸着画分が、NEL以外のアセトアルデヒド由来AGE構造を認識するAA−AGE抗体(実施例3)である。一方、NEL−BSA−Sepharose 4Bカラムに対する吸着画分がNEL構造を特異的に認識するNEL抗体(比較例10)である。AA−AGE抗体及びNEL抗体は、それぞれ安定化剤として1mg/mlのBSAを添加後、−80℃にて保存した。
(5)SDS−PAGE及びWesternblot法によるAA−AGEの物性評価
AA−AGE−RSA(実施例1)並びにAA−AGE−BSA(実施例2)を7.5%SDS−polyacrylamideゲルを用いて、電気泳動を行い、タンパク質染色またはWestern−blottingを行った。
【0080】
AA−AGE−RSA並びにAA−AGE−BSAのサンプル溶液は最終的に1レーンにつきタンパク質染色を行う場合には2μg、Western−blottingを行う場合には、0.2μgのタンパク質濃度になるように調製した。必要量を25μlに希釈したAGE溶液とサンプル調製液25μlを混合し、100℃で3分間の加熱処理をした。分子量マーカーはPrestained SDS−PAGE standards Low range(Bio−Rad社)を使用した。電流はゲル板1枚につき20mAで行い、マーカーがゲルの下端から5mmの位置まで泳動した。タンパク質染色はクマシー染色液にゲルを浸し30分間室温で振とう後、脱色液に浸し、室温で振とうした。脱色液は液に色が着かなくなるまで頻繁に交換した。
【0081】
Western−blottingは泳動の終了したゲルとPolyvinyliden difluoride(PVDF)膜および各Western blotting用bufferに浸したろ紙を重ね、2.5mA/cmの電圧で30分かけて転写した。転写の終了したPVDF膜は4%スキムミルク入りのPBSにより室温で1時間ブロッキングした。洗浄後、PVDF膜と4%スキムミルク入りのPBSで希釈したAA−AGE抗体(実施例3、希釈倍率1:2000)を30℃で2時間反応させた。0.1% Tween20(登録商標)入りのPBSでの洗浄を5分間ずつ3回行った。次に4%スキムミルク入りのPBSで希釈したAlkaline phosphatase(AP)標識したヒツジ抗ウサギIgG抗体(希釈倍率1:2000)を2次抗体として加え30℃で1時間反応させた。0.1% Tween20(登録商標)入りのPBSでの洗浄を5分間ずつ5回行い、ImmunoStar Kit (和光純薬)を用いて検出した。
【0082】
図4にAA−AGE−BSA(実施例2)のSDS−PAGE及び抗AA−AGE抗体(実施例3)を用いたWesternblotting法による解析結果を示す。未修飾のBSAの場合には、分子量67kDaにバンドが現れた。それに比べAA−AGE−BSAの移動度は小さくなり、また、ブロードなバンドが観察された。つまり、低分子アルデヒド由来前進性反応による架橋反応でBSAが高分子量化した。低分子アルデヒド由来前進性反応の特徴の一つには架橋反応が含まれることが示された。また、抗AA−AGE抗体(実施例3)はNEL−BSA(比較例7)とは全く反応しなかった。
(7)AA−AGE抗体の特異性の検討
アフィニティーカラムにより調製したAA−AGE抗体の特異性を競合ELISA法を用いて検討した。競合剤として各種AGE−BSA(AGE−1〜−6、比較例1〜6)の他、既知構造であるNEL−BSA(比較例7)、CML−BSA(比較例8)並びにCEL−BSA(比較例9)を用いた。
【0083】
AA−AGE−BSA(実施例2)をCoating bufferに1μg/mlになるように溶解し、96ウェルのHigh binding E.I.A/R.I.A microtitration platesの各ウェルに100μlずつ加え4℃で一晩吸着させ固相化した。Washing bufferで3回洗浄後、Blocking bufferを150μl加え室温で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。洗浄後、非競合法の場合には固相化したAA−AGE−BSA(実施例2)とAA−AGE抗体(実施例3、50μl;希釈倍率1:1000)との反応にサンプル(50μl)を競合させた。どちらの場合も30℃、振とう条件下で2時間インキュベートした。洗浄後、次にDilution bufferで希釈した100μlのAlkaline phosphatase(AP)標識したヒツジ抗ウサギIgG抗体溶液(希釈倍率1:2000)を2次抗体として加え、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、100μlのAP基質キット溶液を加え37℃で1時間インキュベート後、マイクロプレートリーダー(Model550、Bio−Rad社)で405nmの吸光度を測定した。得られたAA−AGE抗体(実施例3)は、未修飾BSA、AGE−1〜−6(比較例1〜6)並びに既知の3構造体(比較例7〜9)は全く認識せず、免疫原であるAA−AGE構造を特異的に認識した(図5)。
(8)低分子アルデヒド由来前進性反応産物の生物反応評価
ラット胎仔大脳皮質神経細胞に対する細胞死誘導への影響を評価した。ラット胎仔大脳皮質神経細胞の初代培養は以下のような方法を用いて行った。妊娠18日のラット(Std:Wister/ST)をエーテル麻酔後、断頭し、子宮を摘出した。子宮から胎仔を取り出し、頭皮及び頭蓋を開き全脳を摘出した。全脳を実体顕微鏡下でメスを用いて中脳を切り離し、大脳を3枚におろした。大脳半球を伏せて軟膜を取り除き、大脳皮質後端の海馬溝を目安に海馬を取り除き大脳皮質を得た。この操作を全胎仔分行った。細かく刻んだ大脳皮質をDulbecco’s modified Eagle medium(DMEM)で軽く3回洗浄した後、0.25%トリプシン溶液と0.2%Deoxyribonuclease I(DNase I)を用いて37℃で20分間振とう条件(150strokes/min)下でインキュベートした。準胎仔ウシ血清(Semi fetal calf serum:SFCS)を添加し消化を停止後、ピペッティングにより細胞をほぐし、レンズペーパーフィルターで細胞懸濁液を濾過した。1000rpmで5min遠心し、DMEMで再懸濁を3回行い、10%SFCSを含んだDMEMにより3.7×10cells/mlの濃度に希釈して、0.25% Polyethyleneimineでコーティングした24穴のプレートに1.0mlずつはん種した。48時間、37℃、5%CO条件下で培養後、グリア細胞の増殖を抑制するために最終濃度10uMのCytosine−β−D−arabinofuranoside(Ara C)での処理を24時間、37℃、5%CO条件下で行った。処理後、Ca2+ and Mg2+ free phosphate−buffered saline(CMF−PBS)で2回洗浄し、無血清のDMEMに交換した。更に24時間培養後、各種AGE処理を次のように行った。
【0084】
AraC処理後、無血清のDMEMに交換して更に24時間培養後、AA−AGE−BSA(実施例2)により大脳皮質神経細胞を処理した。タンパク質濃度0.25〜2mg/mlのAA−AGE−BSAを培地中に添加し、37℃、5%CO条件下で培養して3〜4日間細胞の状態(細胞死誘導状況)を顕微鏡観察した(図6)。
【0085】
別途、神経細胞障害の検討は3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyl tetrazolium bromide(MTT) assay法を用いて以下のようにも行った。はじめに培地0.5ml中に5mg/mlMTT溶液50μlを添加し、37℃、5%CO条件下にて2時間静置した。生成したMTT−formazanを0.04N塩酸を含んだIsopropanol溶液0.5mlにて抽出し、マイクロプレートリーダー(Immuno−Mini NJ−2300、InterMed社)を用いて570nmでの吸光度を測定した。まず、1mg/mlのAA−AGE−BSA(実施例2)を培地に添加し72時間培養後、神経細胞に対する低分子アルデヒド由来前進性反応産物の生物反応の評価を行った。結果、AA−AGE−BSAによってMTT還元活性が有意に低下した(図7)。低分子アルデヒド由来前進性反応産物の神経細胞毒性に関するIC50値は0.35mg/mlであった。
【0086】
次に、AGEによる毒性の濃度依存性を検討した。0.25〜2mg/mlのAA−AGE−BSA(実施例2)を培地に添加し、96時間培養後、神経細胞に対するAGEの毒性の評価を行った。AA−AGE−BSAは、濃度に依存して毒性が強く現れた(図6及び図7)。形態学的にもAA−AGE−BSAの濃度に依存して、突起の長さや数が減少し、縮小した細胞の増加が認められた(図6)。
(9)未修飾タンパク質の生物反応評価
実施例7と同様の手法で、未修飾タンパク質(BSA)によるラット胎仔大脳皮質神経細胞に対する細胞死誘導への影響を評価した。結果、未修飾タンパク質による細胞誘導死は確認できなかった(図6及び図7)。NEL−BSA(比較例7)についても同様に細胞死誘導は確認できなかった(図7)。
(10)AA−AGE抗体による生物反応中和評価
更に、AA−AGE−BSA(実施例2)を用いて、AA−AGE抗体(実施例3、0.5mg/ml)による低分子アルデヒド由来前進性反応産物の神経細胞への保護作用を検討した。0.5mg/mlのAA−AGEとAA−AGE抗体を室温で1時間プレインキュベートした後、培地に添加し、72時間培養後、神経細胞に対するAA−AGEの毒性評価を行った。対照として、0.5mg/mlのBSAを用いた。AA−AGEによる細胞毒性はAA−AGE抗体により濃度依存的に抑制された(図8及び図9)。
(11)NEL抗体による生物反応中和評価
AA−AGE抗体(実施例3)の代わりにNEL抗体(比較例10、0.5mg/ml、15ul)を用いたことによる保護作用を検討した。結果、NEL抗体では全く毒性が抑制されなかった(図8及び図9)。
(12)ヒトRAGE細胞外ドメインのクローニング
ヒト肺cDNAライブラリー(宝酒造(株))を鋳型にPCR(polymerase chain reaction)を行い、細胞外領域上流及び下流の2つの断片を増幅した。PCRプライマーはヒトRAGEのデータベース配列(Genebank accession No.M91211)を基に4種類設計し、各々2種類ずつを上流及び下流増幅プライマーとして用いた。
・上流増幅プライマー:(プライマーのRAGE中の位置or 塩基番号(RAGEの開始コドンATGのAを1とした))
S(1〜29)及びAS(730〜749)
・下流増幅プライマー:(プライマーのRAGE中の位置)
S(462〜481)及びAS(1007〜1032)
(上流には制限酵素EcoRI、下流にはBglIIの切断部位を付加した。)また、プライマーの安定性と遺伝子発現効率を上げるためにいくつかの塩基は適宜置換した。さらに、RAGEを可溶型とするため、細胞外ドメインの下流末端に終止コドン(TGA)を付加した。
【0087】
2種類の反応産物をアガロースゲル電気泳動した。さらに得られた各PCR増幅断片を電気泳動のゲルから回収した後、pUC18ベクターにクローニングし、PCR産物の塩基配列確認を行った。
(13)バキュロウイルストランスファーベクターへのRAGE遺伝子挿入
バキュロウイルスベクターへのクローニングを以下のように行った。ベクターはpVL1393(pharmingen)を用いた。まず、ベクターを制限酵素EcoRIとBglIIで切断し、アルカリフォスファターゼで脱リン酸化した後精製した。実施例1で得たRAGE細胞外領域上流及び下流の2つの断片は以下に示す制限酵素で切断後、目的断片を精製した(目的断片の塩基数)。
・上流:EcoRI/FspI(666bp)
・下流:FspI/BglII(384bp)
精製した2断片をpVL1393ベクターのポリヘドリンプロモーターの下流に挿入した。得られたクローンについて電気泳動による挿入断片のサイズ確認と塩基配列決定により、目的DNAを持つクローンが構築できたことを確認した。
【0088】
上記RAGEプラスミドDNAを鋳型にPCRを行い、細胞外領域下流末端にHis−Tagを付加した断片を増幅した。PCRプライマーは、(12)ヒトRAGE細胞外ドメインのクローニングで用いた下流増幅用プライマーの終止コドンの前にHisをコードするコドン(CAT)の6回繰り返し配列を挿入したものを作製した。
・増幅プライマー:(プライマーのRAGE中の位置or 塩基番号(RAGEの開始コドンATGのAを1とした))
S(462〜481)及びAS(1007〜1032 + (CAT)6 + (TGA)2 + BglII site )
プライマーの安定性と遺伝子発現効率を上げるためにいくつかの塩基は適宜置換した。確認の結果、ヒトRAGE細胞外ドメインのC末端側にHis−Tagを融合した遺伝子配列を得た。
(14)ヒトRAGE細胞外ドメインの精製
バキュロウイルスを感染させる昆虫細胞はSf−9を用いた。バキュロウイルス感染60時間後の培養上清を回収して、4℃でリン酸緩衝生理食塩水中で十分透析した後で、濾過を行い、ヒトRAGE細胞外ドメインを含む培養液を得た。
【0089】
上記で得られたヒトRAGE細胞外ドメインを含む培養液から目的タンパク質を精製した。精製には、HisTrap(amersham pharmacia)を用いた。精製後のヒトRAGE細胞外ドメイン溶液は、20mMリン酸緩衝液(pH7.2)に0.15MNaClを添加した緩衝液で十分透析処理して精製ヒトRAGE細胞外ドメイン(実施例4)を得た。
(15)RAGE結合性評価
先ず、96穴マイクロプレート(NUNC)に各種AGE(AA−AGE−BSA(実施例2)、AGE3(比較例3))とネガティブコントロールであるBSA(比較例11)をそれぞれ固相化した。固相化条件は、リン酸緩衝生理食塩水で20μg/mlに希釈した調製液を100μl添加して、4℃、12時間とした。固相化反応後、0.5%BSAリン酸緩衝生理食塩水で室温、2時間でブロッキング処理した。ブロッキング処理後に、リン酸緩衝生理食塩水に0.05%Tween20(登録商標)を添加した洗浄液(PBST)で1回洗浄して、0.5μg/mlに調製した精製ヒトRAGE細胞外ドメイン溶液を100μl添加して、室温で2時間振とう反応した。反応後に、PBSTで3回洗浄して、0.1μg/mlに調製した抗His−Tag抗体溶液(QIAGEN)を室温、1時間反応させた。更にPBSTで3回洗浄後、抗マウスIgG抗体HRP標識(Zymed)を室温、30分間反応させた。反応後、3回洗浄して、発色液を入れて、室温、30分間発色させ、停止液を添加して発色反応を止めて、発色液の吸光度を測定することでRAGE結合性を評価した(図10)。ヒトRAGE細胞外ドメインは、AA−AGE−BSA(実施例2)に対して結合性を示さなかった。
(16)単球由来細胞を用いた生物反応評価
ヒト単球由来細胞株(THP−1)に対する炎症反応誘導への影響を評価した。培養液はRPMI1640に10%FCS、2−ME、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加した培地を用いた。培養器は96穴培養プレート(COSTAR)を使用した。各ウェルに細胞密度が3×10個/mlで200μlになるように撒いた。各種AGE(AA−AGE−BSA(実施例2)、AGE3(比較例3))とネガティブコントロールであるBSA(比較例11)は濃度が200μg/mlになるように培地中に添加し、37℃、5%CO条件下で24時間培養した。培養後の培養上清を回収して、培養液中に放出されたMCP−1の濃度を測定することで炎症反応誘導性を評価した(図11)。MCP−1の測定は抗MCP−1抗体を使ったサンドイッチELISAで評価した。評価した結果、AA−AGE−BSAは、ヒト単球由来細胞株の炎症反応を誘導しなかった。つまり、細胞種特異的な生物反応を示し、それはヒトRAGE細胞外ドメインとの結合性と相関する結果となった。更には、神経細胞に対する細胞死誘導は、RAGEとは異なる受容体を経由して引き起こされる生物反応であることが明らかとなった。
(17)ヒト血液中のAA−AGE量測定
アルコール依存症者(10名)と健常者(10名)の血液中のAA−AGE量を測定した。アルコール依存症者は入院後数週間断酒した状態で採血して血清を得た。健常者も同じく5日間断酒したボランティアから採血して血清を得た。AA−AGE量は抗AA−AGE抗体(実施例3)を用いた拮抗型ELISA法で評価した。詳しくは、AA−AGE−BSA(実施例2)をCoating bufferに1μg/mlになるように溶解し、96ウェルのHigh binding E.I.A/R.I.A microtitration platesの各ウェルに100μlずつ加え4℃で一晩吸着させ固相化した。Washing bufferで3回洗浄後、Blocking bufferを150μl加え室温で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。洗浄後、非競合法の場合には固相化したAA−AGE−BSA(実施例2)とAA−AGE抗体(実施例3、50μl;希釈倍率1:1000)との反応にヒト血清(50μl)を競合させた。どちらの場合も30℃、振とう条件下で2時間インキュベートした。洗浄後、次にDilution bufferで希釈した100μlのAlkaline phosphatase(AP)標識したヒツジ抗ウサギIgG抗体溶液(希釈倍率1:2000)を2次抗体として加え、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、100μlのAP基質キット溶液を加え37℃で1時間インキュベート後、マイクロプレートリーダー(Model550、Bio−Rad社)で405nmの吸光度を測定した(図12)。測定した結果をT検定した結果、アルコール依存症者で有意に高値のAA−AGE量が検出された(p<0.05)。つまり、ヒト血液中のAA−AGE量を測定することで、アルコール依存症状態を判別することができた。
(18)肝組織中のAA−AGE検出
Wister系ラットをエタノール(アルコール群)あるいは等カロリーの炭水化物(コントロール群)含有の液体試料でpair−feedingを8週間行った。ラットを飼育4〜8週目に於いて肝組織を病理組織学的に観察するとともに、AA−AGE抗体を用いて免疫組織化学的に染色した。肝組織はパラフィン処理した後で、脱パラフィン処理およびキシレンを除去してPBS洗浄を3回行った。抗原性を回復させる目的で20%硫酸亜鉛水溶液中で電子レンジを用いて10分間煮沸処理した。さらに、3%過酸化水素水で室温、10分間処理して、PBSで3回洗浄した。次いで、10%正常ヤギ血清で10分間処理して、溶液をキムワイプ(登録商標)で軽く吸い取った。次に、抗AA−AGE抗体(実施例3)を4℃、12時間静置反応して、PBS洗浄を3回行った。SLAB2キット/HRP(DAKO)を使って処理を行い、DAB発色試薬を用いてAA−AGEの存在する部分を染色した(図13)。染色結果から、アルコール群でのみ中心静脈周辺の肝組織が染色され、AA−AGEが発生、蓄積されていることがわかった。つまり、アルコール性肝障害とAA−AGEの相関性が指摘された。
(19)脳組織中のAA−AGE検出
Austro−German Brain Bank(Wuerzburg大学)から入手したヒト脳組織中のAA−AGE検出を行った。ヒト脳組織は健常者(2検体)及びアルコール依存症患者(2検体)の双方に於けるAA−AGE検出を行った。アルコール患者の病理判定は、DSM−3(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, third edition)診断基準に従い、更に、他の精神医学上の疾患及びアルコール以外の薬剤依存症がない患者のみに限定した。評価対象組織は、眼窩前頭皮質を選択した。先ず、50μgの脳組織ホモジネートを2−メルカプトエタノール不含の1%SDS溶液で処理して、5−20%TグラジエントゲルにてSDS−PAGEを行った。SDS−PAGE後のゲルをCBB染色したもの、また、SDS−PAGE後にAA−AGE抗体(実施例3)を用いて、Westernblotting法を行った結果を図14に示した。サンプルは、左から分子量マーカー、そして、レーン1及び2は健常者であり、レーン3及び4はアルコール依存症患者である。つまり、アルコール患者の脳組織にはAA−AGE(実施例3)と反応する分子量150kD〜250kD範囲の物質が存在することがわかった。
【0090】
【発明の効果】
本発明により、初めて、生物反応を引き起こすことができるアマドリ転位反応以降の低分子アルデヒド由来前進性反応産物を安定して提供することが可能となった。また、該低分子アルデヒド由来前進性反応産物を免疫原とすることで、生物反応を引き起こすアマドリ転位反応以降の低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する特異的抗体も安定して提供可能となった。更には、該抗体の製造方法を鋭意検討することで、低分子アルデヒド由来前進性反応産物の特異的検出ばかりでなく、該前進性反応産物が媒介する生物反応の中和も初めて可能となった。
【0091】
本発明で得られた低分子アルデヒド由来前進性反応産物は、医薬設計のためのスクリーニング材料、診断材料、食品の劣化度評価等の用途に用いることが出来る。医薬設計のためのスクリーニング用途については、低分子アルデヒド由来前進性反応産物の抗原提示性評価や細胞や動物を用いた生物活性評価の品質が安定して扱える標品として利用可能である。特に、抗体やペプチドや合成化合物等で設計し得ることが可能なアンタゴニストのスクリーニング用途には、品質が安定して大量供給可能な標品が必要であり、大いに利活用できる。また、診断材料の開発に対する用途についても、品質が安定して扱える標品を提供する形で見出すことが出来る。また、低分子アルデヒドに対する抗体を作製する免疫原や抗原としても提供可能である。一番期待できる診断用途は、アルコール性慢性疾患、例えば、アルコール性神経疾患、肝障害、代謝障害等の診断であるが、アセトアルデヒドに代表される低分子アルデヒドは、アルコール摂取以外にも代謝等で体内に発生することが十分予想され、アルコール性慢性疾患以外にも、アルツハイマー等の一般の慢性神経疾患や腎症、糖尿病、高脂血症、透析合併症、老化、血管障害、アミロイド症等の様々な酸化ストレスが発生しうる疾患対象にも、安定した標品を提供する形で利活用できる。更には、人体以外にも、植物をはじめ肉、魚等の生食品や加工食品の劣化試験の標品としても利用できる。更には、香料等の食品、化粧品、衣類、住居等への人工添加物の影響を評価する安定した標品としても提供可能である。
【0092】
本発明で得られた低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する抗体は、上記同様に、医薬設計のためのスクリーニング材料、診断材料、食品の劣化度評価等の用途に用いることが出来る。医薬設計のためのスクリーニング用途については、低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する抗原提示性評価の抗体標品や細胞や動物に対する生物活性評価の影響を抗体価上昇とした指標で評価する際にポジティブコントロールとしての抗体標品として利用可能である。特に、生物活性を中和する抗体は、アンタゴニストのスクリーニング用途、または、アンタゴニストそのものとして利活用可能であり、更には、品質が安定して大量供給可能な抗体標品として大いに利活用できる。また、診断材料の開発に対する用途についても、生物活性を中和することを必須条件とせずに抗体標品を提供する形で見出すことが出来る。また、低分子アルデヒド由来前進性反応産物の精製状況を微量検出する高感度測定用抗体としても提供可能である。一番期待できる診断用途は、アルコール性慢性疾患、例えば、アルコール性神経疾患、肝障害、代謝障害等の診断であるが、アセトアルデヒドに代表される低分子アルデヒドは、アルコール摂取以外にも代謝等で体内に発生することが十分予想されるため、抗体の製造方法を鋭意検討することで、アルコール性慢性疾患以外にも、アルツハイマー等の一般の慢性神経疾患や腎症、糖尿病、高脂血症、透析合併症、老化、血管障害、アミロイド症等の様々な酸化ストレスが発生しうる疾患対象にも、抗体を用いた検出材料を提供する用途ととして利活用できる。更には、人体以外にも、植物をはじめ肉、魚等の生食品や加工食品の劣化試験の検出材料としても利用できる。更には、香料等の食品、化粧品、衣類、住居等への人工添加物の影響を評価する安定した検出標品としても提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低分子アルデヒド由来前進性反応産物の一実施例の反応概要図である。
【図2】実施例2の低分子アルデヒド由来前進性反応産物(AA−AGE−BSA)と比較例7(NEL−BSA)、比較例8(CML−BSA)、比較例9(CEL−BSA)の蛍光特性のグラフを示す図面である。
【図3】AA−AGE−RSAで免疫したウサギから得た血清のAA−AGE−BSA−sepharose 4B吸着画分をNEL−AGE−BSA−sepharose4Bに吸着させ、溶出させた各画分の280nmの吸光度のグラフを示す図面である。
【図4】(1)未修飾のBSA、(2)NEL−BSA、(3)AA−AGE−BSAを電気泳動しCBB染色したゲル(I)およびウエスタンブロットしたメンブレン(II)の写真を示す図面である。
【図5】固相化したAA−AGE−BSAに対する抗AA−AGE抗体の反応との各種AGE−BSAの競合をELISA法で測定した結果のグラフを示す図面である。
【図6】本発明の低分子アルデヒド由来前進性反応産物のラット胎仔大脳皮質神経細胞に対する生物反応を顕微鏡で撮影した写真を示す図面である。
【図7】本発明で得られた低分子アルデヒド由来前進性反応産物の生物反応性をMTT法で測定した結果のグラフを示す図面である。
【図8】本発明で得られた低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する抗体の低分子アルデヒド由来前進性反応産物に由来する生物反応の中和作用をMTT法で測定した結果のグラフを示す図面である。
【図9】本発明で得られた低分子アルデヒド由来前進性反応産物に対する抗体の低分子アルデヒド由来前進性反応産物に由来する生物反応の中和作用を顕微鏡で撮影した写真を示す図面である。
【図10】本発明で得られた低分子アルデヒド由来前進性反応産物がRAGE非結合性である結果のグラフを示す図面である。
【図11】本発明で得られた低分子アルデヒド由来前進性反応産物がヒト単球由来細胞株の炎症反応を誘起しない結果のグラフを示す図面である。
【図12】アルコール依存症者と健常者の血液中のAA−AGE量を測定した結果を示す図面である。
【図13】アルコール多加摂取のラット肝臓の中心静脈周辺にAA−AGEが存在する写真(XV)〜(XX)を示す図面である。
【図14】(1)健常者1、(2)健常者2、(3)アルコール依存症患者1、(4)アルコール依存症患者2の脳組織ホモジネート物を電気泳動しCBB染色したゲル(XXI)およびウエスタンブロットしたメンブレン(XXII)の写真を示す図面である。
【符号の説明】
(1)未修飾BSA
(2)NEL−BSA
(3)AA−AGE−BSA
(I)電気泳動しCBB染色したゲル
(II)ウエスタンブロットしたメンブレン
(III):0.25mg/ml−BSA添加時の培養細胞
(IV):0.5mg/ml−BSA添加の培養細胞
(V):1mg/ml−BSA添加の培養細胞
(VI):2mg/ml−BSA添加の培養細胞
(VII):0.25mg/ml−AA−AGE−BSA添加の培養細胞
(VIII):0.5mg/ml−AA−AGE−BSA添加の培養細胞
(IX):1mg/ml−AA−AGE−BSA添加の培養細胞
(X):2mg/ml−AA−AGE−BSA添加の培養細胞
(XI):BSA添加の培養細胞
(XII):AA−AGE−BSA添加の培養細胞
(XIII):AA−AGE−BSA+NEL抗体共添加の培養細胞
(XIV):AA−AGE−BSA+AA−AGE抗体共添加の培養細胞
(XV):コントロール群(4週飼育、200倍)
(XVI):アルコール群(4週飼育、200倍)
(XVII):アルコール群(6週飼育、200倍)
(XVIII):アルコール群(8週飼育、200倍)
(XIX):アルコール群(8週飼育、400倍)
(XX):アルコール群(8週飼育、400倍)
(XXI)電気泳動しCBB染色したゲル
(XXII)ウエスタンブロットしたメンブレン

Claims (22)

  1. 生体由来の有機化合物とアルデヒド基を有する全炭素数2以下の低分子アルデヒドを混合する反応系により得られ、且つ、アマドリ転位反応以降の反応産物であることを特徴とする低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  2. 前記反応系にDTPA(Diethylenetriamine−N,N,N’,N’’,N’’’−pentaacetic acid)をさらに混合することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  3. 前記反応系の反応温度が10℃〜90℃の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  4. 前記反応系のpHが2〜12の範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  5. 前記反応系の反応時間が1時間以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  6. 前記低分子アルデヒドの濃度が1nM〜10Mの範囲であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  7. 前記有機化合物が1つ以上の塩基性官能基を持つことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  8. 前記塩基性官能基がアミノ酸由来であることを特徴とする請求項7に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  9. 前記反応産物の物性が、以下のa)〜e)のいずれかの性質を1つ以上含むことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
    a)蛍光性
    b)着色(褐色)性
    c)架橋反応性
    d)生物反応性
    e)RAGE非結合性
  10. 前記反応産物が、N−エチルリジン構造体でないことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  11. 神経細胞の細胞死を誘導できることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  12. 単球由来細胞の炎症反応を誘起しないことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  13. 低分子アルデヒドがアセトアルデヒドであることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物を用いることを特徴とした低分子アルデヒド由来前進性反応産物を認識する抗体の製造方法。
  15. 請求項14に記載の製造方法で製造された低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
  16. 請求項1〜13のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
  17. 以下の構造体と反応しないことを特徴とする請求項15または16に記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
    a)N−カルボキシメチルリジン構造体
    b)N−カルボキシエチルリジン構造体
    c)N−エチルリジン構造体
  18. 体液由来試料中の低分子アルデヒド由来前進性反応産物の検出に用いられることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
  19. 低分子アルデヒド由来前進性反応産物の生物反応を中和することができる請求項15〜18のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体。
  20. 請求項1〜13のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物に反応し、下記a)〜c)の各構造体に反応しない抗体の製造方法であって、下記のa)〜c)の各構造体に反応する抗体を除去する工程を含むことを特徴とする低分子アルデヒド由来前進性反応産物を認識する抗体の製造方法。
    a)N−カルボキシメチルリジン構造体
    b)N−カルボキシエチルリジン構造体
    c)N−エチルリジン構造体
  21. 請求項15〜18のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体を用いてアルコール性障害を判定する方法。
  22. 請求項15〜18のいずれかに記載の低分子アルデヒド由来前進性反応産物と反応する抗体と結合する分子量150〜250kDの物質。
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