JP2004154029A - トレハロース受容体並びにそれを用いるトレハロースの検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】哺乳動物におけるトレハロース受容体を解明し、それを用いて、抽出精製工程や誘導体化を必要とせず、試料中のトレハロースを直接的にかつ容易に検出する方法を提供することを課題とする。
【解決方法】特定のアミノ酸配列を有する蛋白質からなる哺乳動物のトレハロース受容体、又はそれを人為的に発現させた動物細胞によるカルシウムイオンの流入を検出することによるトレハロース検出方法を提供することにより課題を解決する。
【選択図】 なし
【解決方法】特定のアミノ酸配列を有する蛋白質からなる哺乳動物のトレハロース受容体、又はそれを人為的に発現させた動物細胞によるカルシウムイオンの流入を検出することによるトレハロース検出方法を提供することにより課題を解決する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、哺乳動物におけるトレハロース受容体並びにトレハロース受容体を用いるトレハロース検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌、第45巻、第6号、381−384頁、1998年
【非特許文献2】サイエンス、289巻、116−119頁、2000年
【非特許文献3】ネイチャー、413巻、13号、211−225頁、2001年
【非特許文献4】セル、106巻、381−390頁、2001年
【非特許文献5】ネイチャー、416巻、14号、199−202頁、2002年
【0003】
トレハロースは、澱粉原料からの生産技術が確立されたことにより、安価に製造可能となり、トレハロースを配合した食品や化粧品が市場に出回るようになった。近年、消費者保護の観点から、食品や化粧品などの配合成分のデータを表示することが求められるようになり、これはトレハロースについても同様であって、表示の正当性を確認するためにも、食品や化粧品中のトレハロースを検出する方法が必要である。従来提案されいるトレハロースの検出方法としては、非特許文献1で開示される検出方法、すなわち、食品などから糖類を抽出し、それをトリメチルシリル誘導体化した後、ガスクロマトグラフィーにより分離してトレハロースの含有量を計測するというものがある。この方法は、多くの食品に適用可能であり、ppm単位の精度で測定可能であるものの、試料から糖質成分を抽出精製する工程、トリメチルシリル誘導体化が必要であり、操作が煩雑であってより簡単な方法が求められている。
【0004】
トレハロースは、砂糖の45%の甘味度を舌により体感できることから、舌の味蕾に存在する味覚細胞により感知されていると考えられるので、トレハロース受容体の存在が示唆され、この受容体を用いれば、トレハロースの検出をより容易かつ簡便に行うことが可能になるものと思われるが、ヒトを含めた哺乳動物におけるトレハロース受容体は、その存在が未だ知られていない。すなわち、非特許文献2で開示されるように、ショウジョウバエにおいては、トレハロース受容体がクローニングされているが、本発明者等が得た知見によれば、ショウジョウバエのトレハロース受容体のDNA配列を利用して、マウスの舌組織からmRNAを調製し、遺伝子クローニングを試みたところ、ショウジョウバエで発見されたトレハロース受容体蛋白質に相当する蛋白質はマウスなどの哺乳動物において発見することはできなかった。
【0005】
非特許文献3には、スクロースの受容体をはじめとするさまざまな味覚に関する受容体が明らかにされ、例えば、非特許文献4で開示される甘味受容体としては、T1R2とT1R3のヘテロ2量体であるスクロース受容体や、非特許文献5で開示されるT1R1とT1R3のヘテロ2量体であるL−アミノ酸受容体が開示されている。また、非特許文献4には、G蛋白質のαサブユニットである、α15、α16及びαZが上記甘味受容体の反応に関与していることが記載されている。しかしながら、これらの文献はいずれもトレハロースの受容体については何らの教示を与えるものでない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような背景の下に為されたもので、哺乳動物におけるトレハロース受容体を解明するとともに、それを用いて、抽出精製工程や誘導体化を必要とせず、試料中のトレハロースを直接的にかつ容易に検出する方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、哺乳類におけるトレハロース受容体を解明すべく、研究を重ねた結果、意外にも、哺乳動物においては、スクロース受容体の一部とG蛋白質のαサブユニットとが組み合わさって、トレハロース受容体を形成していることを見出し、また、このトレハロース受容体を用いれば、トレハロースを特異的に、かつ、定量的に検出可能であることを確認し、本発明を完成するにいたった。
【0008】
すなわち、本発明は、哺乳動物におけるトレハロース受容体を提供するとともに、トレハロース受容体を発現させた細胞及びそれを用いたトレハロース検出方法を提供することにより、上記課題を解決するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明が明らかにしたトレハロース受容体とは、G蛋白質αサブユニットの一種であるα15(配列表における配列番号1)、α16(配列表における配列番号2)、αZ(配列表における配列番号3)を共発現させた細胞、若しくは、α15(配列表における配列番号1)とともに、モーディーら、モレキュラーファーマコロジー(Molecular Pharmacology)、第57巻、13−23頁、2000年に開示されるα16/Zキメラ蛋白質(配列表における配列番号4)を共発現させた細胞において、甘味受容体の一つであるT1R3(配列表における配列番号5)を発現させることにより、細胞膜上に形成される新規な組み合わせの味覚受容体である。本発明で用いられるG蛋白質αサブユニットやT1R3蛋白質は、哺乳動物由来であれば、特にそれら由来の動物種は限定されず、また、各蛋白質がそれぞれ異なる動物種のものとなってもよい。これらの蛋白質のアミノ酸配列及びそれをコードするDNA配列については、遺伝子データバンク、例えば「GENBANK」などに開示されるものを利用することができる。とりわけ、T1R3蛋白質及びα15がマウス由来、α16及びαZがヒト由来であるものが、感度に優れるので好ましい。さらに、トレハロースを感受することができる範囲内で、各蛋白質においてアミノ酸の欠失、置換、付加があってもよい。また、これらの蛋白質を、例えば、T1R3にα15、α16、α16/Zキメラ蛋白質を連結して発現させたり、それぞれの蛋白質を同一のベクターで発現させることができる。なお、上記のα16/Zキメラ蛋白質(配列表における配列番号4)は、受容体発現に必要な遺伝子数を減じる効果があり、本発明に有利に利用できる。
【0010】
本発明で用いられるトレハロース受容体を発現させる細胞としては、種類、由来動物などを問わず、本発明のトレハロース受容体が細胞膜上に形成され、かつ、それがトレハロースと結合又は反応することによって、細胞がなんらかの反応を示す限り、どのような細胞を用いてもよい。トレハロースに対する特異性を高めるために、味覚細胞などの味覚受容体を有する細胞を避け、味覚受容体を有しない細胞を用いるのが好ましい。とりわけ、ヒト胎児腎臓上皮細胞由来の293細胞株(理研ジーンバンク、RCB1637)は、味覚受容体を有しておらず、また、後述する細胞内カルシウムイオンの検出が比較的容易に行えるので、本発明において有利に用いられる。
【0011】
本発明で用いられるトレハロース受容体を発現させる方法としては、まず、上記の受容体蛋白質をコードするDNA、つまり、例えば、配列番号1乃至5に開示されるアミノ酸配列をコードするDNAを入手する必要がある。DNAを入手する方法としては、DNAの全部又は一部を化学合成により合成する方法、動物のゲノムDNA、mRNA若しくはcDNAから、ハイブリダイゼーション法やPCR法により選別採取する方法などが挙げられ、それらを適宜組み合わせて本発明に必要なDNAを得ることができる。
【0012】
上記のDNAにコードされるトレハロース受容体蛋白質を細胞膜上に発現させるには、適宜の動物細胞発現用発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞に導入すればよい。発現ベクターとしては、通常、動物細胞に用いられる発現ベクターを適宜選択すればよく、適宜の薬剤耐性遺伝子、発現プロモーター領域、ポリアデニル化部位、ポリリンカー、制限酵素切断部位、エンハンサー領域などを配した発現ベクターを用いることができ、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクターなど、どのような種類のベクターをも用いることができる。また、発現形態が一過的な発現であっても、恒常的な発現であってもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。また、各G蛋白質及び受容体蛋白質をコードするDNAをそれぞれ単一の発現ベクターに組み込んでも、単一の発現ベクター上に複数種のG蛋白質及び受容体蛋白質をコードするDNAを組み込んで発現させてもよい。
【0013】
本発明によるトレハロースの検出方法は、スクロース受容体の一部とG蛋白質αサブユニットの一部との新規な組み合わせによるトレハロース受容体を膜表面に発現させた動物細胞に対して、トレハロースが含まれていると想定される試料を添加し、その中に含まれるトレハロースがトレハロース受容体と結合することによって引き起こされる生化学的な反応を測定することにより、試料中のトレハロースを検出するというものである。本発明に用いられる生化学的な反応としては、細胞内シグナル伝達系に関与する反応が挙げられ、それに関わる物質、例えば、サイクリックAMP、サイクリックGMP、サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ、プロテインキナーゼC、カルシウムイオンなどの量の増減を測定する方法が挙げられる。とりわけ、カルシウムイオンの流入を測定する方法が最も簡便かつ感度に優れる有力な手法であり、本発明において有利に実施できる。
【0014】
細胞内におけるカルシウムイオンの測定方法としては、カルシウムイオンと結合することにより、蛍光を発する試薬、例えば、モレキュラープローブス社販売の商品名『Fluo−4.AM』などの細胞内におけるカルシウムイオン検出用試薬が挙げられ、反応させることによって発せられる蛍光を、市販のプレート式、キュベット式、フローサイトメトリー式の蛍光検出装置により測定する方法、蛍光顕微鏡などで肉眼的に観察する方法などが挙げられる。
【0015】
本発明のトレハロースの検出方法によれば、様々な食品又は化粧品などを被検対象品として、それらに含有まれるトレハロースを特異的に測定することができる。被検対象品が固体、ペースト、ゲル又は親油性液体ならば、水性溶媒により被検対象品に含まれるトレハロースを溶解し、不溶物質を除去して試料とする。また、被検対象が親水性液体ならば、そのまま、あるいは、いったん乾燥固化したものを水性溶媒で再溶解したものを用いることもできる。また、例えば、細胞毒性を有する物質、ミネラル、又は色素などの、トレハロースの検出に支障のある不純物質が試料中に混在する場合は、適宜の分離方法、例えば、活性炭吸着法、有機溶媒抽出法、遠心分離法、膜濾過法、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー法、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法などの方法で、また、不純物質を適宜の酸、アルカリ、還元剤、酸化剤などの薬剤、分解酵素などで処理し、試料からトレハロース以外の不要な物質を除去することもできる。また、必要ならば、トレハロース分解酵素であるトレハラーゼを処理した試料を陰性対象として用いれば、より正確なトレハロース含量が測定可能であり、特にバックグラウンドが高い場合は有利となる。本発明によるトレハロースの検出方法における検出感度は、試料溶液中におけるトレハロース濃度で5mM以上乃至500mMの範囲で測定可能である。したがって、試料溶液中のトレハロース濃度がこの範囲内でない場合は、試料を段階的に濃縮又は希釈することによって、上記測定範囲内になるように調節すればよい。
【0016】
本発明のトレハロースの検出方法は、上記の食品や化粧品に含まれるトレハロースの含量を測定することに用いられるほか、例えば、トレハロースなどの糖質を誘導体化することによる甘味度の増減効果を検討するといった、新規甘味料の検索にも利用できる。
【0017】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0018】
【実施例1】
<G蛋白質αサブユニット蛋白質発現用ベクターの構築>
【0019】
【実施例1−1】
<G蛋白質αサブユニット蛋白質α15をコードするDNAの調製>
マウス骨髄性白血病由来細胞株WEHI−3(ATCC No.TIB−68)から、常法にしたがい、mRNAを含むRNAを抽出精製し、このRNA1μgから、12.5pmolのランダムヘキサマーをプライマーとして、ストラタジーン製の逆転写酵素である商品名『スーパースクリプトII RT』で、42℃で50分間反応することにより、第1ストランドcDNAを合成した。引き続き、リボヌクレアーゼIにより混在するRNAを酵素分解し、PCRの鋳型用のcDNAを得た。また、G蛋白質αサブユニットα15DNA(配列表の配列番号6)の5’末端のDNA配列に制限酵素HindIII切断部位を含む塩基配列を付加したPCR用センスプライマー(配列表の配列番号7)、3’末端のDNA配列に制限酵素NotI切断部位を含む塩基配列を付加したPCR用アンチセンスプライマーを作製した(配列表における配列番号8)。上記cDNA及びPCR用プライマーを用いて、宝酒造株式会社販売の熱耐性DNAポリメラーゼである商品名『LA Taq DNAポリメラーゼ』により、常法にしたがいPCRを行い、G蛋白質α15をコードするDNAを得た。
【0020】
【実施例1−2】
<G蛋白質α16/Zキメラ蛋白質をコードするDNAの調製>
ヒト骨髄性白血病由来細胞株HL−60(ATCC No.CCL−240)又はU937(ATCC No.CRL−1593.2)から、常法にしたがい、mRNAを含むRNAを抽出精製し、このRNA1μgから、12.5pmolのランダムヘキサマーをプライマーとして、常法にしたがい、ストラタジーン製の逆転写酵素である商品名『スーパースクリプトII RT』で、42℃で50分間反応することにより、第1ストランドcDNAを合成した。引き続き、常法にしたがい、リボヌクレアーゼIによりRNAを酵素分解し、PCRの鋳型用のcDNAを得た。また、G蛋白質α16DNA(配列表の配列番号9)及びG蛋白質αZDNA(配列表の配列番号10)を得るべく、α16の開始コドン付近のDNA配列、すなわち塩基番号202から221までの配列の5’側に、制限酵素HindIII切断部位を付加したPCR用センスプライマー(配列表の配列番号11)、α16の塩基番号1196から1211までの相補配列の5’側にαZの塩基番号946から960までの相補配列を付加したアンチセンスプライマー(配列表の配列番号12)を作製した。一方、αZDNAを得るべく、配列表における配列番号10の塩基番号946から960までの配列の5’側にα16の塩基番号1195から1211までの配列を付加したPCR用センスプライマー(配列表の配列番号13)、αZの塩基番号1068から1086までの相補配列の5’側に制限酵素NotI切断部位を付加したアンチセンスプライマー(配列表の配列番号14)を作製した。これらcDNA及びPCRプライマーを用いて、宝酒造株式会社販売の熱耐性DNAポリメラーゼである商品名『LA Taq DNAポリメラーゼ』により、常法にしたがいそれぞれPCRを行い、G蛋白質α16及びG蛋白質αZをコードするDNAを得た。これらを混ぜ合わせ、熱変成した後、オーバーラップした部分をアニーリングさせた後、さらにPCRを行い、約1200bpのα16/Zキメラ蛋白質をコードするDNAを得た。
【0021】
【実施例1−3】
<G蛋白質α15及びα16/Zキメラ蛋白質を共発現するベクターの構築>
発現ベクターとして、ピューロマイシン耐性遺伝子、EF−1α(延長因子)プロモーターなどを有するエッジ・バイオシステムズ社販売のプラスミドベクターpEAK12を採用し、その制限酵素SpeI切断部位に制限酵素EcoRV切断部位を付加した発現ベクターpEAKS1、及びpEAKS1の制限酵素切断部位BamHIにさらにEcoRV制限酵素切断部位を付加させた発現ベクターpEAKS2を常法にしたがい調製した。まず、実施例1−1で得たG蛋白質α15蛋白質をコードするDNA又は実施例1−2で得たG蛋白質α16/Zキメラ蛋白質をコードするDNAを、それぞれ制限酵素HindIII及びNotIで消化し、pEAKS1又はpEAKS2のHindIII及びNotIの位置に常法にしたがってライゲーションし、G蛋白質α15蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS1、及び、G蛋白質α16/Z蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS2を得た。次に、G蛋白質α16/Z蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS2を制限酵素EcoRVで消化し、プロモーター領域とともにG蛋白質α16/Zキメラ蛋白質をコードするDNA配列を含むDNA断片を調製し、それをG蛋白質α15蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS1のEcoRV制限酵素切断部位に、常法にしたがってライゲーションし、Gα15及びGα16/Zキメラ蛋白質を共発現するベクター『pEAK/EF2−Gα(15+16/Z)を得た(図1参照)。なお、使用したPCRプライマーの一覧表を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【実施例2】
<マウス甘味受容体蛋白質発現用ベクターの構築>
【0024】
【実施例2−1】
<T1R1、T1R2及びT1R3DNAの調製>
野生型C57BL/6マウス16匹より舌組織約2.4gを採取した。常法にしたがって、マウス舌由来のmRNAを含むRNAを調製した。この1μgから、12.5pmolのランダムヘキサマーをプライマーとして、常法にしたがい、ストラタジーン製の逆転写酵素である商品名『スーパースクリプトII RT』で、42℃で50分間反応することにより、第1ストランドcDNAを合成した。引き続き、常法にしたがい、リボヌクレアーゼIによりRNAを酵素分解し、PCRの鋳型用のcDNAを得た。次に、マウス由来の甘味受容体T1R1(配列表における配列番号16)、T1R2(配列表における配列番号17)及びT1R3(配列表における配列番号18)のDNAを得るために、GENBANKデータベースに登録されているDNA配列をもとに、開始コドン付近の塩基配列に制限酵素EcoRI切断部位を付加したセンスプライマー、及び、終始コドン付近の相補塩基配列に制限酵素NotI切断部位を付加したアンチセンスプライマーを作製した。上記cDNA及びPCR用プライマーを用いて、宝酒造株式会社販売の熱耐性DNAポリメラーゼである商品名『LA Taq DNAポリメラーゼ』により、常法にしたがいPCRを行い、5‘末端に制限酵素EcoRI切断部位を、3’末端に制限酵素NotI切断部位を有する、T1R1、T1R2及びT1R3をコードするDNAを得た。
【0025】
【実施例2−2】
<甘味受容体発現ベクターの構築>
発現ベクターは、実施例1−3で用いた発現ベクターpEAKS1において、薬剤耐性遺伝子であるピューロマイシン耐性遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子(インビトロジェン社販売の発現ベクターpREP9由来)に組み替えた発現ベクター「pEAKSN1」を常法により作製した。単独発現の場合には、実施例2−1で得たDNAをそれぞれ、制限酵素EcoRI及びNotIで消化し、pEAKSN1のEcoRI及びNotIの位置に常法にしたがってライゲーションし、甘味受容体T1R1、T1R2又はT1R3用の発現ベクターを得た(図2参照)。共発現の場合には、pEAKS2のEcoRI及びNotIの位置にいずれかの甘味受容体を導入した発現ベクターを、制限酵素EcoRVで消化して、プロモーター領域及び甘味受容体蛋白質をコードするDNAを含むDNA断片を調製し、これを甘味受容体蛋白質をコードするDNAを含むpEAKSN1のEcoRV制限酵素切断部位に、常法にしたがってライゲーションし、T1R1及びT1R2共発現ベクター、T1R1及びT1R3共発現ベクター、及びT1R2及びT1R3共発現ベクターを得た。なお、使用したPCR用プライマーの一覧表を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【実施例3】
<各種甘味受容体発現細胞の調製>
実施例1−3で得たG蛋白質α15、α16/Zキメラ蛋白質(以下、「G蛋白質αサブユニット」という)を共発現するベクターを、ヒト胎児腎臓上皮由来293細胞株(理研ジーンバンク、RCB No1637)に、常法のリポフェクション法により遺伝子導入した。導入細胞は、ピューロマイシン(エッジ・バイオシステムズ社販売、商品名『ピューロマイシン』)1mg/lを含有する10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変最小培地(D−MEM)で細胞濃度2×106個/mlで懸濁したのち、プラスチックシャーレで培養した。10〜14日後、ピューロマイシン耐性の細胞コロニーを回収し、mRNAレベルでのG蛋白質αサブユニットの発現を確認して、G蛋白質αサブユニット発現細胞株を得た。この細胞に、実施例2−2で調製した甘味受容体であるT1R1、T1R2又はT1R3を単独発現用の発現ベクター、T1R1及びT1R2、T1R1及びT1R3、又は、T1R2及びT1R3を共発現用の発現ベクターを常法のリポフェクション法で遺伝子導入した後、『ピューロマイシン』1mg/l及び『ジェネチシン』500mg/lを含有する10%ウシ胎児血清を有するD−MEMに懸濁し、細胞培養用プラスチックシャーレで培養した後、10〜14日後、両薬剤耐性の細胞コロニーを回収し、導入した遺伝子が想定したとおりに発現していることを常法のRT−PCR法により、mRNAレベルでの発現を確認し、G蛋白質と甘味受容体が発現している細胞を得た。なお、対照として、G蛋白質又は甘味受容体遺伝子を含まない発現ベクターのみを導入したものを用意した。
【0028】
【実施例4】
<甘味受容体でのトレハロース及びスクロース反応性テスト>
常法の細胞内カルシウムイオン測定方法にしたがって測定した。すなわち、実施例3で調製したG蛋白質及び甘味受容体を発現している293細胞をプラスチックシャーレでコンフルエント状態まで培養した後、0.05%トリプシン、0.53mM EDTA溶液により剥離させ、10%ウシ胎児血清を含有するD−MEM培地に細胞濃度1×106個/mlに懸濁し、細胞内カルシウム検出試薬であるモレキュラープローブス社販売の商品名『Fluo−4.AM』を最終濃度2μMとなるように添加し、37℃で30〜90分間培養することにより、カルシウム検出試薬『Fluo−4.AM』を細胞内に取り込ませた。これを、10mM HEPES(pH7.4)、130mM塩化ナトリウム、5.4mM塩化カリウム、2mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、5.5mM D−グルコース、0.1%ウシ血清アルブミン、1mMピルビン酸ナトリウムを含有するカルシウムイオン測定用緩衝液で洗浄し、細胞外の試薬を除去し、同緩衝液で細胞濃度2.67×107個/mlに懸濁し、100μmメッシュで濾過し、25℃で30分静置した後、ガラスキュベット(日立製作所(株)販売)に細胞懸濁液を2ml入れ、蛍光分光強度計(日立製作所(株)製造、商品名『HITACHI 650−40』にセットした。
【0029】
試料の糖質として、トレハロース(片山化学工業(株)販売)、対照として、スクロース(和光純薬工業(株)販売)を、上記のカルシウムイオン測定用緩衝液で1Mに溶解した。これを上記の細胞懸濁液の入ったガラスキュベットに0.67ml添加し、撹拌した後、励起波長494nm、蛍光波長516nmでの蛍光強度を測定し、反応性の有無を調べた。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
表3に示すように、G蛋白質αサブユニット及びT1R3発現細胞において、トレハロースに対する反応性が検出された。一方、対照のスクロースは、G蛋白質αサブユニット、T1R2及びT1R3発現細胞において、反応性が検出された。この結果は、トレハロース受容体においては、T1R1及びT1R2は不要であり、G蛋白質αサブユニットとともにT1R3のみが必要であること、トレハロースとスクロースは異なる受容体により認識されていることが判明した。
【0032】
【実施例5】
<トレハロース受容体における他の甘味成分の検出>
実施例4において、G蛋白質αサブユニットと甘味受容体T1R3のみを発現させた細胞における、各種甘味を有する物質に対する反応性を測定した。すなわち、表4に示す各種甘味物質について、それぞれカルシウムイオンの流入の測定を、実施例4と同様にして行った。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4に示すとおり、トレハロース受容体は、トレハロース以外の糖質には反応性がなく、トレハロースを特異的に認識することが判明した。したがって、各種甘味料が混在する状況下においても、トレハロースを特異的に検出することが可能である。
【0035】
【実施例6】
<トレハロース受容体におけるトレハロースの定量>
市販の96穴マイクロプレートに、実施例4で調製した細胞懸濁液0.1mlずつを播種し、これに、実施例4のカルシウムイオン測定用緩衝液により各種濃度に希釈したトレハロース溶液、すなわち、1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mM、100mM、200mM、500mM、1,000mM、又は2,000mMを0.1mlずつ添加し、濃度マルチプレート用自動蛍光測定装置(大日本製薬(株)販売、商品名『フルオロスキャンアセントW/DF』)により、励起波長494nm、蛍光波長516nmで測定し、蛍光強度の積分値を算出した。なお、陰性対照はトレハロース無添加の試料を用いた。結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5に示すように、トレハロース濃度5mM以上から、トレハロースの検出が可能となり、500mMまでは直線性を有していた。したがって、この結果は、トレハロース濃度5mM乃至500mMの範囲内で定量的にトレハロース濃度が測定できることを示している。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、哺乳動物における受容体の新規な組み合わせによるトレハロース受容体によって、トレハロースの検出や定量を、簡便に実施できる。また、トレハロースに特異的な受容体を利用しているので、他の糖質、例えばスクロースが混入している試料であっても測定可能である。
【0039】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるG蛋白質αサブユニットα15及びα16/Z共発現ベクターの構造を示す。
【図2】本発明によるT1R3蛋白質発現ベクターの構造を示す。
【符号の説明】
EF1 promoter:延長因子プロモーター
Gα15:G蛋白質αサブユニットα15
polyA tail:ポリA付加シグナル
Gα16/Z:G蛋白質αサブユニットα16/Zキメラ蛋白質
【発明の属する技術分野】
本発明は、哺乳動物におけるトレハロース受容体並びにトレハロース受容体を用いるトレハロース検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌、第45巻、第6号、381−384頁、1998年
【非特許文献2】サイエンス、289巻、116−119頁、2000年
【非特許文献3】ネイチャー、413巻、13号、211−225頁、2001年
【非特許文献4】セル、106巻、381−390頁、2001年
【非特許文献5】ネイチャー、416巻、14号、199−202頁、2002年
【0003】
トレハロースは、澱粉原料からの生産技術が確立されたことにより、安価に製造可能となり、トレハロースを配合した食品や化粧品が市場に出回るようになった。近年、消費者保護の観点から、食品や化粧品などの配合成分のデータを表示することが求められるようになり、これはトレハロースについても同様であって、表示の正当性を確認するためにも、食品や化粧品中のトレハロースを検出する方法が必要である。従来提案されいるトレハロースの検出方法としては、非特許文献1で開示される検出方法、すなわち、食品などから糖類を抽出し、それをトリメチルシリル誘導体化した後、ガスクロマトグラフィーにより分離してトレハロースの含有量を計測するというものがある。この方法は、多くの食品に適用可能であり、ppm単位の精度で測定可能であるものの、試料から糖質成分を抽出精製する工程、トリメチルシリル誘導体化が必要であり、操作が煩雑であってより簡単な方法が求められている。
【0004】
トレハロースは、砂糖の45%の甘味度を舌により体感できることから、舌の味蕾に存在する味覚細胞により感知されていると考えられるので、トレハロース受容体の存在が示唆され、この受容体を用いれば、トレハロースの検出をより容易かつ簡便に行うことが可能になるものと思われるが、ヒトを含めた哺乳動物におけるトレハロース受容体は、その存在が未だ知られていない。すなわち、非特許文献2で開示されるように、ショウジョウバエにおいては、トレハロース受容体がクローニングされているが、本発明者等が得た知見によれば、ショウジョウバエのトレハロース受容体のDNA配列を利用して、マウスの舌組織からmRNAを調製し、遺伝子クローニングを試みたところ、ショウジョウバエで発見されたトレハロース受容体蛋白質に相当する蛋白質はマウスなどの哺乳動物において発見することはできなかった。
【0005】
非特許文献3には、スクロースの受容体をはじめとするさまざまな味覚に関する受容体が明らかにされ、例えば、非特許文献4で開示される甘味受容体としては、T1R2とT1R3のヘテロ2量体であるスクロース受容体や、非特許文献5で開示されるT1R1とT1R3のヘテロ2量体であるL−アミノ酸受容体が開示されている。また、非特許文献4には、G蛋白質のαサブユニットである、α15、α16及びαZが上記甘味受容体の反応に関与していることが記載されている。しかしながら、これらの文献はいずれもトレハロースの受容体については何らの教示を与えるものでない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような背景の下に為されたもので、哺乳動物におけるトレハロース受容体を解明するとともに、それを用いて、抽出精製工程や誘導体化を必要とせず、試料中のトレハロースを直接的にかつ容易に検出する方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、哺乳類におけるトレハロース受容体を解明すべく、研究を重ねた結果、意外にも、哺乳動物においては、スクロース受容体の一部とG蛋白質のαサブユニットとが組み合わさって、トレハロース受容体を形成していることを見出し、また、このトレハロース受容体を用いれば、トレハロースを特異的に、かつ、定量的に検出可能であることを確認し、本発明を完成するにいたった。
【0008】
すなわち、本発明は、哺乳動物におけるトレハロース受容体を提供するとともに、トレハロース受容体を発現させた細胞及びそれを用いたトレハロース検出方法を提供することにより、上記課題を解決するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明が明らかにしたトレハロース受容体とは、G蛋白質αサブユニットの一種であるα15(配列表における配列番号1)、α16(配列表における配列番号2)、αZ(配列表における配列番号3)を共発現させた細胞、若しくは、α15(配列表における配列番号1)とともに、モーディーら、モレキュラーファーマコロジー(Molecular Pharmacology)、第57巻、13−23頁、2000年に開示されるα16/Zキメラ蛋白質(配列表における配列番号4)を共発現させた細胞において、甘味受容体の一つであるT1R3(配列表における配列番号5)を発現させることにより、細胞膜上に形成される新規な組み合わせの味覚受容体である。本発明で用いられるG蛋白質αサブユニットやT1R3蛋白質は、哺乳動物由来であれば、特にそれら由来の動物種は限定されず、また、各蛋白質がそれぞれ異なる動物種のものとなってもよい。これらの蛋白質のアミノ酸配列及びそれをコードするDNA配列については、遺伝子データバンク、例えば「GENBANK」などに開示されるものを利用することができる。とりわけ、T1R3蛋白質及びα15がマウス由来、α16及びαZがヒト由来であるものが、感度に優れるので好ましい。さらに、トレハロースを感受することができる範囲内で、各蛋白質においてアミノ酸の欠失、置換、付加があってもよい。また、これらの蛋白質を、例えば、T1R3にα15、α16、α16/Zキメラ蛋白質を連結して発現させたり、それぞれの蛋白質を同一のベクターで発現させることができる。なお、上記のα16/Zキメラ蛋白質(配列表における配列番号4)は、受容体発現に必要な遺伝子数を減じる効果があり、本発明に有利に利用できる。
【0010】
本発明で用いられるトレハロース受容体を発現させる細胞としては、種類、由来動物などを問わず、本発明のトレハロース受容体が細胞膜上に形成され、かつ、それがトレハロースと結合又は反応することによって、細胞がなんらかの反応を示す限り、どのような細胞を用いてもよい。トレハロースに対する特異性を高めるために、味覚細胞などの味覚受容体を有する細胞を避け、味覚受容体を有しない細胞を用いるのが好ましい。とりわけ、ヒト胎児腎臓上皮細胞由来の293細胞株(理研ジーンバンク、RCB1637)は、味覚受容体を有しておらず、また、後述する細胞内カルシウムイオンの検出が比較的容易に行えるので、本発明において有利に用いられる。
【0011】
本発明で用いられるトレハロース受容体を発現させる方法としては、まず、上記の受容体蛋白質をコードするDNA、つまり、例えば、配列番号1乃至5に開示されるアミノ酸配列をコードするDNAを入手する必要がある。DNAを入手する方法としては、DNAの全部又は一部を化学合成により合成する方法、動物のゲノムDNA、mRNA若しくはcDNAから、ハイブリダイゼーション法やPCR法により選別採取する方法などが挙げられ、それらを適宜組み合わせて本発明に必要なDNAを得ることができる。
【0012】
上記のDNAにコードされるトレハロース受容体蛋白質を細胞膜上に発現させるには、適宜の動物細胞発現用発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞に導入すればよい。発現ベクターとしては、通常、動物細胞に用いられる発現ベクターを適宜選択すればよく、適宜の薬剤耐性遺伝子、発現プロモーター領域、ポリアデニル化部位、ポリリンカー、制限酵素切断部位、エンハンサー領域などを配した発現ベクターを用いることができ、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクターなど、どのような種類のベクターをも用いることができる。また、発現形態が一過的な発現であっても、恒常的な発現であってもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。また、各G蛋白質及び受容体蛋白質をコードするDNAをそれぞれ単一の発現ベクターに組み込んでも、単一の発現ベクター上に複数種のG蛋白質及び受容体蛋白質をコードするDNAを組み込んで発現させてもよい。
【0013】
本発明によるトレハロースの検出方法は、スクロース受容体の一部とG蛋白質αサブユニットの一部との新規な組み合わせによるトレハロース受容体を膜表面に発現させた動物細胞に対して、トレハロースが含まれていると想定される試料を添加し、その中に含まれるトレハロースがトレハロース受容体と結合することによって引き起こされる生化学的な反応を測定することにより、試料中のトレハロースを検出するというものである。本発明に用いられる生化学的な反応としては、細胞内シグナル伝達系に関与する反応が挙げられ、それに関わる物質、例えば、サイクリックAMP、サイクリックGMP、サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ、プロテインキナーゼC、カルシウムイオンなどの量の増減を測定する方法が挙げられる。とりわけ、カルシウムイオンの流入を測定する方法が最も簡便かつ感度に優れる有力な手法であり、本発明において有利に実施できる。
【0014】
細胞内におけるカルシウムイオンの測定方法としては、カルシウムイオンと結合することにより、蛍光を発する試薬、例えば、モレキュラープローブス社販売の商品名『Fluo−4.AM』などの細胞内におけるカルシウムイオン検出用試薬が挙げられ、反応させることによって発せられる蛍光を、市販のプレート式、キュベット式、フローサイトメトリー式の蛍光検出装置により測定する方法、蛍光顕微鏡などで肉眼的に観察する方法などが挙げられる。
【0015】
本発明のトレハロースの検出方法によれば、様々な食品又は化粧品などを被検対象品として、それらに含有まれるトレハロースを特異的に測定することができる。被検対象品が固体、ペースト、ゲル又は親油性液体ならば、水性溶媒により被検対象品に含まれるトレハロースを溶解し、不溶物質を除去して試料とする。また、被検対象が親水性液体ならば、そのまま、あるいは、いったん乾燥固化したものを水性溶媒で再溶解したものを用いることもできる。また、例えば、細胞毒性を有する物質、ミネラル、又は色素などの、トレハロースの検出に支障のある不純物質が試料中に混在する場合は、適宜の分離方法、例えば、活性炭吸着法、有機溶媒抽出法、遠心分離法、膜濾過法、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー法、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法などの方法で、また、不純物質を適宜の酸、アルカリ、還元剤、酸化剤などの薬剤、分解酵素などで処理し、試料からトレハロース以外の不要な物質を除去することもできる。また、必要ならば、トレハロース分解酵素であるトレハラーゼを処理した試料を陰性対象として用いれば、より正確なトレハロース含量が測定可能であり、特にバックグラウンドが高い場合は有利となる。本発明によるトレハロースの検出方法における検出感度は、試料溶液中におけるトレハロース濃度で5mM以上乃至500mMの範囲で測定可能である。したがって、試料溶液中のトレハロース濃度がこの範囲内でない場合は、試料を段階的に濃縮又は希釈することによって、上記測定範囲内になるように調節すればよい。
【0016】
本発明のトレハロースの検出方法は、上記の食品や化粧品に含まれるトレハロースの含量を測定することに用いられるほか、例えば、トレハロースなどの糖質を誘導体化することによる甘味度の増減効果を検討するといった、新規甘味料の検索にも利用できる。
【0017】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0018】
【実施例1】
<G蛋白質αサブユニット蛋白質発現用ベクターの構築>
【0019】
【実施例1−1】
<G蛋白質αサブユニット蛋白質α15をコードするDNAの調製>
マウス骨髄性白血病由来細胞株WEHI−3(ATCC No.TIB−68)から、常法にしたがい、mRNAを含むRNAを抽出精製し、このRNA1μgから、12.5pmolのランダムヘキサマーをプライマーとして、ストラタジーン製の逆転写酵素である商品名『スーパースクリプトII RT』で、42℃で50分間反応することにより、第1ストランドcDNAを合成した。引き続き、リボヌクレアーゼIにより混在するRNAを酵素分解し、PCRの鋳型用のcDNAを得た。また、G蛋白質αサブユニットα15DNA(配列表の配列番号6)の5’末端のDNA配列に制限酵素HindIII切断部位を含む塩基配列を付加したPCR用センスプライマー(配列表の配列番号7)、3’末端のDNA配列に制限酵素NotI切断部位を含む塩基配列を付加したPCR用アンチセンスプライマーを作製した(配列表における配列番号8)。上記cDNA及びPCR用プライマーを用いて、宝酒造株式会社販売の熱耐性DNAポリメラーゼである商品名『LA Taq DNAポリメラーゼ』により、常法にしたがいPCRを行い、G蛋白質α15をコードするDNAを得た。
【0020】
【実施例1−2】
<G蛋白質α16/Zキメラ蛋白質をコードするDNAの調製>
ヒト骨髄性白血病由来細胞株HL−60(ATCC No.CCL−240)又はU937(ATCC No.CRL−1593.2)から、常法にしたがい、mRNAを含むRNAを抽出精製し、このRNA1μgから、12.5pmolのランダムヘキサマーをプライマーとして、常法にしたがい、ストラタジーン製の逆転写酵素である商品名『スーパースクリプトII RT』で、42℃で50分間反応することにより、第1ストランドcDNAを合成した。引き続き、常法にしたがい、リボヌクレアーゼIによりRNAを酵素分解し、PCRの鋳型用のcDNAを得た。また、G蛋白質α16DNA(配列表の配列番号9)及びG蛋白質αZDNA(配列表の配列番号10)を得るべく、α16の開始コドン付近のDNA配列、すなわち塩基番号202から221までの配列の5’側に、制限酵素HindIII切断部位を付加したPCR用センスプライマー(配列表の配列番号11)、α16の塩基番号1196から1211までの相補配列の5’側にαZの塩基番号946から960までの相補配列を付加したアンチセンスプライマー(配列表の配列番号12)を作製した。一方、αZDNAを得るべく、配列表における配列番号10の塩基番号946から960までの配列の5’側にα16の塩基番号1195から1211までの配列を付加したPCR用センスプライマー(配列表の配列番号13)、αZの塩基番号1068から1086までの相補配列の5’側に制限酵素NotI切断部位を付加したアンチセンスプライマー(配列表の配列番号14)を作製した。これらcDNA及びPCRプライマーを用いて、宝酒造株式会社販売の熱耐性DNAポリメラーゼである商品名『LA Taq DNAポリメラーゼ』により、常法にしたがいそれぞれPCRを行い、G蛋白質α16及びG蛋白質αZをコードするDNAを得た。これらを混ぜ合わせ、熱変成した後、オーバーラップした部分をアニーリングさせた後、さらにPCRを行い、約1200bpのα16/Zキメラ蛋白質をコードするDNAを得た。
【0021】
【実施例1−3】
<G蛋白質α15及びα16/Zキメラ蛋白質を共発現するベクターの構築>
発現ベクターとして、ピューロマイシン耐性遺伝子、EF−1α(延長因子)プロモーターなどを有するエッジ・バイオシステムズ社販売のプラスミドベクターpEAK12を採用し、その制限酵素SpeI切断部位に制限酵素EcoRV切断部位を付加した発現ベクターpEAKS1、及びpEAKS1の制限酵素切断部位BamHIにさらにEcoRV制限酵素切断部位を付加させた発現ベクターpEAKS2を常法にしたがい調製した。まず、実施例1−1で得たG蛋白質α15蛋白質をコードするDNA又は実施例1−2で得たG蛋白質α16/Zキメラ蛋白質をコードするDNAを、それぞれ制限酵素HindIII及びNotIで消化し、pEAKS1又はpEAKS2のHindIII及びNotIの位置に常法にしたがってライゲーションし、G蛋白質α15蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS1、及び、G蛋白質α16/Z蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS2を得た。次に、G蛋白質α16/Z蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS2を制限酵素EcoRVで消化し、プロモーター領域とともにG蛋白質α16/Zキメラ蛋白質をコードするDNA配列を含むDNA断片を調製し、それをG蛋白質α15蛋白質をコードするDNAが挿入されたpEAKS1のEcoRV制限酵素切断部位に、常法にしたがってライゲーションし、Gα15及びGα16/Zキメラ蛋白質を共発現するベクター『pEAK/EF2−Gα(15+16/Z)を得た(図1参照)。なお、使用したPCRプライマーの一覧表を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【実施例2】
<マウス甘味受容体蛋白質発現用ベクターの構築>
【0024】
【実施例2−1】
<T1R1、T1R2及びT1R3DNAの調製>
野生型C57BL/6マウス16匹より舌組織約2.4gを採取した。常法にしたがって、マウス舌由来のmRNAを含むRNAを調製した。この1μgから、12.5pmolのランダムヘキサマーをプライマーとして、常法にしたがい、ストラタジーン製の逆転写酵素である商品名『スーパースクリプトII RT』で、42℃で50分間反応することにより、第1ストランドcDNAを合成した。引き続き、常法にしたがい、リボヌクレアーゼIによりRNAを酵素分解し、PCRの鋳型用のcDNAを得た。次に、マウス由来の甘味受容体T1R1(配列表における配列番号16)、T1R2(配列表における配列番号17)及びT1R3(配列表における配列番号18)のDNAを得るために、GENBANKデータベースに登録されているDNA配列をもとに、開始コドン付近の塩基配列に制限酵素EcoRI切断部位を付加したセンスプライマー、及び、終始コドン付近の相補塩基配列に制限酵素NotI切断部位を付加したアンチセンスプライマーを作製した。上記cDNA及びPCR用プライマーを用いて、宝酒造株式会社販売の熱耐性DNAポリメラーゼである商品名『LA Taq DNAポリメラーゼ』により、常法にしたがいPCRを行い、5‘末端に制限酵素EcoRI切断部位を、3’末端に制限酵素NotI切断部位を有する、T1R1、T1R2及びT1R3をコードするDNAを得た。
【0025】
【実施例2−2】
<甘味受容体発現ベクターの構築>
発現ベクターは、実施例1−3で用いた発現ベクターpEAKS1において、薬剤耐性遺伝子であるピューロマイシン耐性遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子(インビトロジェン社販売の発現ベクターpREP9由来)に組み替えた発現ベクター「pEAKSN1」を常法により作製した。単独発現の場合には、実施例2−1で得たDNAをそれぞれ、制限酵素EcoRI及びNotIで消化し、pEAKSN1のEcoRI及びNotIの位置に常法にしたがってライゲーションし、甘味受容体T1R1、T1R2又はT1R3用の発現ベクターを得た(図2参照)。共発現の場合には、pEAKS2のEcoRI及びNotIの位置にいずれかの甘味受容体を導入した発現ベクターを、制限酵素EcoRVで消化して、プロモーター領域及び甘味受容体蛋白質をコードするDNAを含むDNA断片を調製し、これを甘味受容体蛋白質をコードするDNAを含むpEAKSN1のEcoRV制限酵素切断部位に、常法にしたがってライゲーションし、T1R1及びT1R2共発現ベクター、T1R1及びT1R3共発現ベクター、及びT1R2及びT1R3共発現ベクターを得た。なお、使用したPCR用プライマーの一覧表を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【実施例3】
<各種甘味受容体発現細胞の調製>
実施例1−3で得たG蛋白質α15、α16/Zキメラ蛋白質(以下、「G蛋白質αサブユニット」という)を共発現するベクターを、ヒト胎児腎臓上皮由来293細胞株(理研ジーンバンク、RCB No1637)に、常法のリポフェクション法により遺伝子導入した。導入細胞は、ピューロマイシン(エッジ・バイオシステムズ社販売、商品名『ピューロマイシン』)1mg/lを含有する10%ウシ胎児血清含有のダルベッコ改変最小培地(D−MEM)で細胞濃度2×106個/mlで懸濁したのち、プラスチックシャーレで培養した。10〜14日後、ピューロマイシン耐性の細胞コロニーを回収し、mRNAレベルでのG蛋白質αサブユニットの発現を確認して、G蛋白質αサブユニット発現細胞株を得た。この細胞に、実施例2−2で調製した甘味受容体であるT1R1、T1R2又はT1R3を単独発現用の発現ベクター、T1R1及びT1R2、T1R1及びT1R3、又は、T1R2及びT1R3を共発現用の発現ベクターを常法のリポフェクション法で遺伝子導入した後、『ピューロマイシン』1mg/l及び『ジェネチシン』500mg/lを含有する10%ウシ胎児血清を有するD−MEMに懸濁し、細胞培養用プラスチックシャーレで培養した後、10〜14日後、両薬剤耐性の細胞コロニーを回収し、導入した遺伝子が想定したとおりに発現していることを常法のRT−PCR法により、mRNAレベルでの発現を確認し、G蛋白質と甘味受容体が発現している細胞を得た。なお、対照として、G蛋白質又は甘味受容体遺伝子を含まない発現ベクターのみを導入したものを用意した。
【0028】
【実施例4】
<甘味受容体でのトレハロース及びスクロース反応性テスト>
常法の細胞内カルシウムイオン測定方法にしたがって測定した。すなわち、実施例3で調製したG蛋白質及び甘味受容体を発現している293細胞をプラスチックシャーレでコンフルエント状態まで培養した後、0.05%トリプシン、0.53mM EDTA溶液により剥離させ、10%ウシ胎児血清を含有するD−MEM培地に細胞濃度1×106個/mlに懸濁し、細胞内カルシウム検出試薬であるモレキュラープローブス社販売の商品名『Fluo−4.AM』を最終濃度2μMとなるように添加し、37℃で30〜90分間培養することにより、カルシウム検出試薬『Fluo−4.AM』を細胞内に取り込ませた。これを、10mM HEPES(pH7.4)、130mM塩化ナトリウム、5.4mM塩化カリウム、2mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、5.5mM D−グルコース、0.1%ウシ血清アルブミン、1mMピルビン酸ナトリウムを含有するカルシウムイオン測定用緩衝液で洗浄し、細胞外の試薬を除去し、同緩衝液で細胞濃度2.67×107個/mlに懸濁し、100μmメッシュで濾過し、25℃で30分静置した後、ガラスキュベット(日立製作所(株)販売)に細胞懸濁液を2ml入れ、蛍光分光強度計(日立製作所(株)製造、商品名『HITACHI 650−40』にセットした。
【0029】
試料の糖質として、トレハロース(片山化学工業(株)販売)、対照として、スクロース(和光純薬工業(株)販売)を、上記のカルシウムイオン測定用緩衝液で1Mに溶解した。これを上記の細胞懸濁液の入ったガラスキュベットに0.67ml添加し、撹拌した後、励起波長494nm、蛍光波長516nmでの蛍光強度を測定し、反応性の有無を調べた。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
表3に示すように、G蛋白質αサブユニット及びT1R3発現細胞において、トレハロースに対する反応性が検出された。一方、対照のスクロースは、G蛋白質αサブユニット、T1R2及びT1R3発現細胞において、反応性が検出された。この結果は、トレハロース受容体においては、T1R1及びT1R2は不要であり、G蛋白質αサブユニットとともにT1R3のみが必要であること、トレハロースとスクロースは異なる受容体により認識されていることが判明した。
【0032】
【実施例5】
<トレハロース受容体における他の甘味成分の検出>
実施例4において、G蛋白質αサブユニットと甘味受容体T1R3のみを発現させた細胞における、各種甘味を有する物質に対する反応性を測定した。すなわち、表4に示す各種甘味物質について、それぞれカルシウムイオンの流入の測定を、実施例4と同様にして行った。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4に示すとおり、トレハロース受容体は、トレハロース以外の糖質には反応性がなく、トレハロースを特異的に認識することが判明した。したがって、各種甘味料が混在する状況下においても、トレハロースを特異的に検出することが可能である。
【0035】
【実施例6】
<トレハロース受容体におけるトレハロースの定量>
市販の96穴マイクロプレートに、実施例4で調製した細胞懸濁液0.1mlずつを播種し、これに、実施例4のカルシウムイオン測定用緩衝液により各種濃度に希釈したトレハロース溶液、すなわち、1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mM、100mM、200mM、500mM、1,000mM、又は2,000mMを0.1mlずつ添加し、濃度マルチプレート用自動蛍光測定装置(大日本製薬(株)販売、商品名『フルオロスキャンアセントW/DF』)により、励起波長494nm、蛍光波長516nmで測定し、蛍光強度の積分値を算出した。なお、陰性対照はトレハロース無添加の試料を用いた。結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5に示すように、トレハロース濃度5mM以上から、トレハロースの検出が可能となり、500mMまでは直線性を有していた。したがって、この結果は、トレハロース濃度5mM乃至500mMの範囲内で定量的にトレハロース濃度が測定できることを示している。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、哺乳動物における受容体の新規な組み合わせによるトレハロース受容体によって、トレハロースの検出や定量を、簡便に実施できる。また、トレハロースに特異的な受容体を利用しているので、他の糖質、例えばスクロースが混入している試料であっても測定可能である。
【0039】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるG蛋白質αサブユニットα15及びα16/Z共発現ベクターの構造を示す。
【図2】本発明によるT1R3蛋白質発現ベクターの構造を示す。
【符号の説明】
EF1 promoter:延長因子プロモーター
Gα15:G蛋白質αサブユニットα15
polyA tail:ポリA付加シグナル
Gα16/Z:G蛋白質αサブユニットα16/Zキメラ蛋白質
Claims (7)
- 配列表における配列番号1、2、3及び5に示すアミノ酸配列を有する蛋白質、又は、配列表における配列番号1、4及び5に示すアミノ酸配列を有する蛋白質からなる哺乳動物のトレハロース受容体。
- 請求項1に記載のトレハロース受容体を人為的に発現させた動物細胞。
- 配列表における配列番号1、2、3及び5に示すアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA、又は、配列表における配列番号1、4及び5に示すアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターを動物細胞に導入する工程を含む、トレハロース受容体を人為的に発現させた動物細胞の製造方法。
- 請求項1に記載のトレハロース受容体又は請求項2に記載のトレハロース受容体を人為的に発現させた動物細胞を用いることを特徴とするトレハロースの検出方法。
- トレハロース受容体にトレハロースが結合することによって起こる生化学的反応を検出することを特徴とする請求項4に記載のトレハロースの検出方法。
- 生化学的反応の検出が、カルシウムイオンの流入を測定することによって行われる請求項5に記載のトレハロースの検出方法。
- 請求項2に記載のトレハロース受容体を人為的に発現させた動物細胞と、カルシウムイオンの検出試薬を含んでなるトレハロースの検出キット。
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