JP2004148458A - 微細加工装置および微細加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロン程度以下の高精度加工を可能にし、しかも三次元的な加工精度をも保証することのできる微細加工装置および微細加工方法を提供する。
【解決手段】フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物1と対向する加工用針3と、前記被加工物1と前記加工用針3との間に電流を流すための電源4と、前記加工用針3に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置において、前記加工用針3の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物1に正孔を励起することによって、前記加工用針3の近傍のみを電解研磨する。
【選択図】 図1
【解決手段】フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物1と対向する加工用針3と、前記被加工物1と前記加工用針3との間に電流を流すための電源4と、前記加工用針3に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置において、前記加工用針3の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物1に正孔を励起することによって、前記加工用針3の近傍のみを電解研磨する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSIに代表される半導体デバイスの製造プロセスに用いて好適な微細加工装置および微細加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高集積化・微細化が進むLSIやマイクロオプティックス(半導体レーザ等のオプトエレクトロニクスデバイス)といった半導体デバイスの製造プロセスでは、走査トンネル顕微鏡(以下「STM」という。)の原理を用いた微細加工技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、STMの探針を被加工物表面に接近させ、これらを電解液中に浸した状態で探針と被加工物との間に電圧を印加することにより、被加工物表面に微細加工を施すというものである。
【0003】
また、微細加工技術としては、被加工物表面の微小領域に選択的に光を照射しながら電流を流すことによる光電気化学反応を原理とした微細加工を行うことも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらには、その他にも、例えば被加工物であるn型シリコン基板の裏面から光学系で加工パターンを投影して電解研磨することによって、投影パターンの形状にn型シリコン基板をエッチングする技術も報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−297252号公報
【特許文献2】
特開平6−74899号公報
【非特許文献1】
グラニング(Gruning)他著、「ファブリケーション・オブ・2ディー・インフレアード・フォトニック・クリスタルズ・イン・マクロポーラス・シリコン:フォトニック・バンド・ギャップ・マテリアルズ(Fabrication of 2−Dinfrared Photonic Crystals in macroporous silicon:Photonic Band Gap Materials)」、クルーワー・アカデミック・パブリッシャーズ(Kluwer AcademicPublishers)、オランダ、pp.453
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の微細加工技術では、以下に述べるような難点が生じてしまうことが考えられる。
【0006】
例えば特許文献1に記載されたように、被加工物と加工針の間に電流を流すことで電解研磨を行って局所的に微細加工を施す技術では、局在電場の広がりが1nm程度まで小さくできるので、トンネル電流を利用した真に局所的な加工を行うためには、加工針を被加工物に1nm程度まで近づけなくてはならない。したがって、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロンメートル程度以下の加工を行う場合には、必ずしも好適であるとはいえない。この点については、加工針と被加工物の距離を10〜100μm程度に保って加工することも報告されているが、その場合は局在場を利用しているわけではないので、三次元的な加工精度を保証することが困難となることが考えられる。
【0007】
また、例えば特許文献2または非特許文献1に記載されたように、光学系による投影パターンの形状に加工を施す技術では、投影光学系の分解能によって加工分解能が制限されてしまう。特に、シリコンに対する透過率が高い赤外光を利用するときには、LSIの製作等で要求される分解能を満足することは不可能であるといえる。また、光学系の焦点深度方向の光強度分布が一様なので、三次元的な加工は困難であると考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロン程度以下の高精度加工を可能にし、しかも三次元的な加工精度をも保証することのできる微細加工装置および微細加工方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために案出された微細加工装置である。すなわち、フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物と対向する加工用針と、前記被加工物と前記加工用針との間に電流を流すための電源と、前記加工用針に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置において、前記加工用針の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物に正孔を励起することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された微細加工方法である。すなわち、フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物と対向する加工用針と、前記被加工物と前記加工用針との間に電流を流すための電源と、前記加工用針に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置を用いて行う、前記被加工物と対する微細加工方法であって、前記加工用針の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物に正孔を励起することによって、前記加工用針近傍のみを電解研磨することを特徴とする方法である。
【0011】
上記構成の微細加工装置および上記手順の微細加工方法によれば、加工用針の先端を尖鋭に形成していることから、その加工用針に光学系から光を入射すると、その加工用針の先端からは、伝搬光は出射しないが、入射光の波長の何分の1という微小なエバネセント(evanescent)波が染み出すように生成される。このエバネセント波は、空間を伝搬せずに針先端に局在し、その大きさは光波長には依存せず針先端の径と略同程度になる。したがって、そのエバネセント波で被加工物に正孔を励起し、そのときに加工用針と被加工物との間に電流を流して電解研磨を行えば、その電解研磨が行われる領域は、加工用針の先端近傍のみに限定されることになる。すなわち、加工用針の先端の径を細くすることでエバネセント波の大きさも小さくできるので、細い加工用針先端を高精度に位置制御することで微細加工が可能となる。また、加工用針先端に局在するエバネセント波を利用するので、加工用針を三次元的に移動することによって、高精度な三次元加工も可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係る微細加工装置および微細加工方法について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は本発明を実現した一例に過ぎず、これに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
ここでは、本発明の第1の実施の形態として、請求項1および請求項2に記載の発明に係る微細加工装置、並びに請求項19に記載の発明に係る微細加工方法について説明する。
【0014】
先ず、微細加工装置の概略構成について説明する。図1は、本発明に係る微細加工装置の第1の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。本実施形態で説明する微細加工装置は、被加工物であるn型シリコン基板(以下、単に「Si基板」と記す。)1に対して、電解研磨による微細加工を施すものである。そのために、微細加工装置では、図例のように、Si基板1が載置されるXYZステージ2と、そのXYZステージ2上のSi基板1と対向する加工用シリコン針(以下、単に「Si針」と記す。)3と、これらSi基板1、XYZステージ2およびSi針3をフッ化水素酸を含む酸溶液(以下、単に「HF溶液」と記す。)中に浸すためのフッ素樹脂容器(ただし不図示)と、Si基板1とSi針3との間に電流を流すための電源4および配線と、Si針3にレーザ光を入射するための光学系とを備えている。このうち、XYZステージ2は、Si基板1とSi針3との相対位置を変化させるため移動機構として機能するものである。また、そのSi針3にレーザ光を入射する光学系は、レーザ光の光源5と、レーザ光を導くための光ファイバ6と、そのレーザ光をSi針3に入射させるためのレンズ7とからなるものである。
【0015】
図2は、上述した微細加工装置における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、Si針3はカンチレバー8の先端に配設されており、カンチレバー8は支持台9によって支持されている。Si針3がカンチレバー8の先端に配設されているのは、原子間力顕微鏡(AFM)等で使用されるプローブと略同様の構成である。また、HF溶液10の容器11には、そのHF溶液10の液面の揺らぎによってレンズ7からのレーザ光が揺らいでしまうのを防止するために、液面を覆う透明なフッ素樹脂材12が設けられている。
【0016】
ところで、ここで説明する微細加工装置は、以上のように構成されているのに加えて、Si針3の形状に大きな特徴がある。すなわち、Si針3は、単結晶シリコン材を異方性エッチングすることによって製作されたものであり、その先端(Si基板1と対向する側の端)が尖鋭に形成され、後述するように光学系からの光の入射に応じて先端にエバネセント波が現れるように構成されている。
【0017】
続いて、以上のような構成の微細加工装置を用いて行う、Si基板1に対する微細加工について説明する。微細加工装置では、Si基板1に対する微細加工を、電解研磨を利用して行う。
【0018】
電解研磨は、一般に、Si中の正孔とHF、陰極からの電子とSiとが、それぞれ次のように反応することによって行われる。
Si+2HF+(2−n)e+→SiF2+2H++ne−
SiF2+2HF→SiF4+H2
SiF4+2HF→H2SiF6
または
Si+4HF+(4−λ)e+→SiF4+4H++λe−
SiF4+2HF→H2SiF6
ここで、n<2、λ<4、e+はレーザ光で励起された正孔、e−は電子であるである。
【0019】
本実施形態で説明する微細加工装置では、電解研磨を行うのにあたり、Si基板1に光照射することで正孔を発生させる。すなわち、Si基板1およびSi針3がHF溶液10中に存在する状態で、Si基板1を正極、Si針3を負極にして、これらの間に電流を流すとともに、Si針3のSi基板1とは反対側の端面から光を入射することで、Si基板1に対して光照射を行い、光電気化学反応を原理とした微細加工を可能とする。
【0020】
ただし、このとき、Si針3の先端が尖鋭に形成されていることから、Si針3に光を入射すると、その加工用針の先端からは、伝搬光は出射しないが、入射光の波長の何分の1という微小なエバネセント波が染み出すように生成される。したがって、Si基板1に対する光照射は、先端にエバネセント波が生成されたSi針3を、Si基板1に近接させることよって行われるのである。
【0021】
この光照射に用いられるエバネセント波は、空間を伝搬せずに針先端に局在し、その大きさは光波長には依存せず針先端の径と略同程度になるという特徴を持っている。そのため、光照射され、これにより電解研磨される領域は、Si針3の先端の極近傍のみに限定されることになる。また、エバネセント波の大きさは、Si針3の先端の径を細くすることで小さくできる。これらのことから、エバネセント波を用いた電解研磨によりSi基板1に対する加工を行えば、先端が細く形成されたSi針3を高精度に位置制御することで、従来よりも更なる微細加工を実現することが可能となる。例えば、Si針3の先端径をオングストロームオーダーまで細くすれば、Si基板1上で原子サイズの微細加工も可能であると考えられる。また、Si針3とSi基板1とを近接させる際の間隔は、エバネセント波の大きさ程度で十分であるが、さらにトンネル電流が流れる距離までSi針3を接近させれば、加工部位以外への漏れ電流を無くすことができるので、より高精度な加工も可能になる。
【0022】
Si針3の先端にエバネセント波を生成させるための光源としては、光源5から出射されるレーザ光を用いる。光源5は、Si針3での光吸収が小さい波長のレーザ光、具体的には光波長はおよそ500nm以上であるレーザ光を出射するものとする。このとき、Si針3での光吸収は長波長の方が小さいが、波長よりも細いSi針3中での伝播損失を小さくするためには、短い波長のほうが有利である。
【0023】
したがって、Si針3の先端は、そのSi針3に入射する光の波長よりも小さい(細い)ことになる。このような場合、すなわち光導波路の導波層が波長よりも薄いために伝播モードが存在しない光導波路であっても、導波機能があることが知られている。そのために、光の波長よりも小さいSi針3であっても、光を導波して、その先端にエバネセント波を生成することができるのである。なお、波長より細いと光の減衰があるため、より正確にエバネセント波の生成を予測するためには、有限要素法(FEM;Finite Element Method)や差分時間領域(FDTD;Finite Difference Time Domain)法等によるシミュレーションと実験が必要である。
【0024】
ところで、Si針3の先端が光波長よりも小さい場合には、光強度の減衰を無視できない。このような光強度の減衰を小さくするためには、Si針3の先端以外を金属でコーティングするのが有効である。ただし、Si針3は容器11内のHF溶液10中で使用するので、コーティング材料として銀やアルミニウムを使用することができない。そのため、コーティング材料としては、金や白金等を使用するのが適当である。この金属コーティングを行えば、Si針3からの散乱光を少なくすることも可能となる。そのため、加工部位以外を励起すること、すなわち加工部位以外を加工してしまうことがなくなり、より一層の加工精度の向上が期待できる。
【0025】
また、光強度の減衰は、Si針3の先端のテーパ角が大きいほど小さくなると考えられる。そのため、Si針3の先端は、被加工物であるSi基板1と干渉しなければ、およそ60°以上のテーパ角に形成することが望ましい。さらには、テーパ角を2段階で変化させれば、光強度の減衰も減少すると考えられることから、このような形状のSi針3を使用することも有効である。
【0026】
先端が細く形成されたSi針3からのエバネセント波を用いてSi基板1に対する加工を行うためには、そのSi針3を高精度に位置制御しつつ、Si基板1とSi針3との相対位置を変化させることが必要となる。相対位置の変化は、既に説明したように、XYZステージ2によって実現される。XYZステージ2では、例えば、ナノメータオーダーの高分解能な移動を行うために、板バネで移動部分を支持してピエゾトランスレータで移動させるステージを使用し、Si基板1全体に渡る広範囲の移動には、ボールガイドやローラガイドを使用した高精度ステージを使用する。これら二種類の機構を組み合わせることで、大型のSi基板1も加工可能となる。そして、XYZステージ2を用いた相対位置の変化は、Si基板1とSi針3との各々をレーザ干渉計若しくはレーザスケールまたは静電容量センサー等で測定することによって、クローズドループで制御する。これらによって、Si基板1とSi針3との相対位置は、高精度に制御されることになる。なお、XYZステージ2は、主にHF溶液10で腐食されないステンレス等の材料を用いて構成されるものとする。さらに、HF溶液10によって腐食され得るピエゾトランスレータ等の部品については、フッ素樹脂やポリ塩化ビニル樹脂等のコーティングによって保護されているものとする。
【0027】
また、Si基板1に対する加工を行うためには、Si基板1とSi針3との相対位置を変化させるだけではなく、Si針3をSi基板1に接近させることが必要となる。その際には、Si針3を走査型近接場光学顕微鏡または原子間力顕微鏡(AFM)のプローブとして使用して、Si基板1とSi針3との間の距離を測定しながら加工を行うことが考えられる。具体的には、先ず、先端に生成されたエバネセント波がSi基板1に吸収される位置までSi針3を移動し、Si基板1とSi針3との間に通電して電解研磨を行う。このとき、電解研磨によってSi基板1の被加工部位はSi針3の先端から遠ざかるので、プローブによって加工位置を測定しながら、Si基板1とSi針3との間の距離が一定になるように制御する。被加工部位の深さ等の位置は、例えばSi針3をAFM探針として使用する場合には、そのSi針3に加わる力で測定できる。Si針3に加わる力は、Si基板1の被加工部位における光散乱の応力、ファンデルワールス力であり、カンチレバー8の撓みによって測定できる。カンチレバー8の撓みは、光テコやレーザ干渉計で測定できる。そして、測定された撓みの大きさを一定に保つように、Si基板1とSi針3との間の距離を変化させながら加工する。このように加工を進めれば、Si基板1とSi針3との接近距離を高精度に制御しつつ、レーザ測長機等による測定値が目標位置に到達したときに加工を終了するといったことも可能になる。
【0028】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置および微細加工方法によれば、Si針3の先端を尖鋭に形成して、光学系からの光の入射に応じてその先端にエバネセント波が生成されるようにしており、そのエバネセント波でSi基板1に正孔を励起することによって、Si針3近傍のみを電解研磨するようになっている。つまり、Si針3の先端に生成されたエバネセント波を利用してSi基板1に対する加工を行うため、その加工をSi針3の先端径と同程度の分解能で行うことができる。このエバネセント波の局在領域の大きさは、Si針3先端が光波長よりも十分に小さい場合には、光波長には依存せずSi針3の先端の大きさと同程度になる。したがって、加工の細かさに合わせてSi針3の先端形状を決定すれば、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロンメートル程度以下の高精度加工を行うことも可能となる。
【0029】
さらに、本実施形態の微細加工装置および微細加工方法によれば、投影光学系を使用せずに、Si針3の先端に局在するエバネセント波を利用しているので、Si基板1とSi針3との相対位置を三次元的に変化させれば、高精度な三次元加工も実現可能となる。その際には、Si針3を走査型近接場光学顕微鏡またはAFMのプローブとして使用することが可能であり、これによりSi基板1の表面を測定しながら加工することもできるようになる。
【0030】
また、本実施形態の微細加工装置および微細加工方法では、被加工物にレジストをコーティングする必要がないので、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のような凹凸のある立体的な微小部品であっても、高精度に加工することができる。しかも、被加工物がレジストで覆われないため、加工しようとする位置の観察が容易である。そのため、光学顕微鏡やAFM、近接場光学顕微鏡等と組み合わせることで、高精度に位置決めして加工することができる。また、MEMS等への追加工も容易である。
【0031】
なお、本実施形態では、被加工物がn型シリコンからなるSi基板1である場合を例に挙げて説明したが、他に炭化ケイ素(SiC)やダイヤモンド等の半導体、ガリウムヒ素(GaAs)等の化合物半導体についても、全く同様に加工可能である。また、被加工物と対向する加工用針についても、本実施形態では、n型シリコンからなるSi針3である場合を例に挙げて説明したが、HF溶液10で腐食されず、透明であり、導電性がある材料であれば、例えばSiCやダイヤモンド等の半導体、GaAs等の化合物半導体、白金(Pt)等の金属を用いることができる。つまり、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法によれば、金属よりも熱膨張率が小さく剛性が高いシリコンやダイヤモンド等を高精度に加工することが可能である。このようにして高精度に加工されたシリコンやダイヤモンド等は、例えば超高精度な金型として使用でき、その金型の使用により高精度なマイクロレンズ等を製作するといったことも可能になる。
【0032】
さらには、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法を用いて、当該微細加工装置および微細加工方法において使用するSi針3を加工する、といったことも考えられる。Si針3は、一般的には、例えばn型シリコン材に異方性エッチングによる加工を行って形成する。ところが、異方性エッチングでは、形成されたSi針3の形状が角錐状になる。そのため、角錐状先端の稜の部分での光の散乱によって、エバネセント波の減衰や不要な迷光等が生じてしまい、加工精度の低下を招いてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法を用いてSi針3を加工すれば、そのSi針3の形状を円錐状に加工できるので、エバネセント波の生成の際に光散乱が生じ難くなる。したがって、円錐状に形成されたSi針3を用いれば、被加工物の不要な部分を励起して電解研磨してしまうことがなくなり、結果として加工精度の向上が期待できるようになる。また、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法を用いれば、円錐状以外の任意の形状にもSi針3を形成することができる。つまり、被加工物に最適化された形状や、先端に効率的にエバネセント波を生成できる形状等に、Si針3の形状を形成することもできる。このような任意のSi針3の形状は、FEMやFDTD法、あるいはビーム伝搬法(BPM;Beam Propagation Method)、による電磁場の解析を行うこと等で特定が可能である。ただし、複雑な形状を加工するためのSi針3や、高効率にエバネセント波を生成できるSi針3等の形状であれば、等間隔な長方形要素しか計算できないFDTD法よりも、任意な四角形または三角形要素に分割して計算できるFEMを用いたほうが適しているといえる。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここでは、請求項3に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態では、上述した第1の実施の形態との相違点についてのみ説明を行うものとする。したがって、第1の実施の形態と同一の構成要素については、図中において同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
図3は、本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、集積化された複数のSi針3からなる加工用集積化電極(以下、単に「加工用電極」と記す。)20を備えたことを特徴とするものである。すなわち、加工用針であるSi針3をアレイ状に多数本集積したものを加工用電極20として使用する。この加工用電極20は、その両側に付設された板バネ21によって支持され、上下方向に変位できるようになっている。そして、加工用電極20では、第1の実施の形態における場合と同様に、Si基板1の被加工部位における光散乱の応力、ファンデルワールス力によって変位するので、この変位量から被加工部位の位置を検出することができる。
【0035】
このような加工用電極20に対して、エバネセント波を生成するための光を照射する光学系(以下「加工用光学系」と記す。)と、その変位量を測定するための光学系(以下「変位量測定用光学系」と記す。)とは、以下のように構成することが考えられる。図4は、本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における光学系の構成例を示す模式図である。図例のように、加工用光学系では、加工用レーザ光の光源5と、そのレーザ光を拡大するビームエクスパンダ22とを有しており、変位量測定用光学系では、測定用レーザ光の光源23と、そのレーザ光を拡大するビームエクスパンダ24とを有している。そして、各々からのレーザ光は、ダイクロイックビームスプリッタ(以下「DBS」と記す。)25で合波されて、加工用電極20に入射するようになっている。
【0036】
このとき、変位量測定用光学系では、ビームエクスパンダ24を経た測定用レーザ光に対し、偏光ビームスプリッタ(以下「PBS」と記す。)26によって光軸方向を変化させ、4分の1波長板(以下「QWP」と記す。)27および参照面28を透過させて、DBS25まで導く。そして、測定用レーザ光が加工用電極20で反射されると、その反射レーザ光は、PBS26まで戻ってくる。ただし、反射レーザ光は、QWP27を往復で二回透過しているため、偏光が90°回転している。そのために、PBS26まで戻った反射レーザ光は、PBS26によって分岐されて、光源23側ではなく、検出器29に入射することになる。
【0037】
検出器29は、例えば二次元イメージセンサからなるものであり、干渉縞の変位、回転、間隔変化から加工用電極20の変位、傾斜角を検出するようになっている。ただし、加工用電極20は、その両側が板バネ21で支持されている。そのため、加工用電極20の傾斜は、第1の実施の形態で説明したようなカンチレバーの場合よりも小さいので、無視できる程度に小さければ、傾斜角を測定しなくても良いことは勿論である。なお、加工用電極20の変位の検出は、公知技術であるサブフリンジ干渉法やヘテロダイン干渉法等を用いて行えばよい。また、光テコによって電極両側の板バネ21の傾斜角を測定することも考えられる。
【0038】
一方、加工用光学系では、光源5から出射された加工用レーザ光が、ビームエクスパンダ22によって拡大されて、加工用電極20を構成する各々のSi針3に入射することになる。これにより、アレイ状に集積された各Si針3の先端からは、第1の実施の形態の場合と全く同様にエバネセント波が染み出す。したがって、そのエバネセント波で被加工物であるSi基板1に正孔が励起され、集積化された各Si針3近傍のみで電解研磨が行われることになる。
【0039】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置によれば、単なるSi針3ではなく、複数のSi針3が集積化された加工用電極20を備えているため、一つのSi針3による一筆書き的な加工だけでなく、線状溝を一度に加工したり、複数領域を同時に加工したりすることができる。つまり、加工用電極20を被加工物の形状に合わせることによって、その被加工物に対する加工を高速に行うことができる。さらには、加工用電極20を用いた場合であっても、その加工用電極20は被加工物による光散乱の応力、ファンデルワールス力によって変位するので、この変異量から被加工物の位置を検出でき、加工精度の向上が図れるようになる。
【0040】
なお、本実施形態では、円錐状に形成されたSi針3がアレイ状に集積化して加工用電極20を構成する場合を例に挙げて説明したが、加工用電極20は被加工物に合った形状とすればよい。図5は、第2の実施の形態における他の構成例を示す模式図である。加工用電極20は、必ずしも円錐状のSi針3が集積化されたものである必要はなく、図例のように、その断面が三角形、四角形、半円等の棒状のものを配列したものであってもよい。この場合であっても、先端から染み出すエバネセント波を利用した高精度加工を行うことが可能となる。しかも、加工用電極20が棒状であるため、例えばSi基板1上に凹凸構造のグレーティングを加工する場合等、線状の加工を行う場合であっても、その加工を一度に行うことができ、結果として加工の大幅な高速化が期待できる。
つまり、加工用電極20の形状は、被加工物の形状に合わせたものであればよく、例えば被加工物における加工しようとする箇所が周期的でない場合には、形状の異なるSi針3を集積化する、といったことも考えられる。
【0041】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。ここでは、請求項4に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1および第2の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1または第2の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図6および図7は、本発明に係る微細加工装置の第3の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図6に示すように、本実施形態で説明する微細加工装置は、加工用電極30の表面に、特定の回折光を励起する分光手段として機能するフォトニック結晶31が設けられていることを特徴とするものである。
【0043】
フォトニック結晶とは、一般に光の波長と同程度の周期的な屈折率分布を持ち、光の伝藩や発生を自在に制御できるものをいう。ここで説明するフォトニック結晶31は、加工用電極30の表面に設けられた細い溝からなるもので、例えば分光器で使用されるブレーズドグレーティングと同様な構造を有するものである。
【0044】
また、フォトニック結晶31が設けられている加工用電極30の表面は、被加工物の形状に合わせて、その断面が弧を描くように下方に向けて膨出した形状の非球面に形成されている。その非球面状の表面部分に、フォトニック結晶31が配設されている。
【0045】
このような加工用電極30に対し、その上方から光が入射すると、その加工用電極30における非球面状の表面部分からは、上述した各実施形態の場合と同様に、エバネセント波が染み出す。ただし、この加工用電極30の表面には、フォトニック結晶31が設けられている。そのために、エバネセント波の染み出す厚さは、フォトニック結晶31の溝の周期が光の波長よりも大きければ当該波長程度であるが、溝の周期が光の波長よりも小さいときには、その溝周期と同程度の厚さとなる。つまり、フォトニック結晶31の溝を微細にすれば、エバネセント波の染み出しを薄くすることができ、結果として高精度な微細加工が可能になる。
【0046】
また、フォトニック結晶31が設けられた加工用電極30の表面は、非球面に形成されている。そのために、その表面から染み出すエバネセント波は、非球面の頂点から外側に向かって伝播するようになる。つまり、非球面の頂点から外側に向かってエバネセント波が進行する。したがって、非球面の頂点に励起光が集光して光強度が周辺部よりも極端に強くなることがなくなり、均一な加工が可能になる。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置によれば、加工用電極30の表面にフォトニック結晶31が設けられているので、そのフォトニック結晶31の溝周期を光の波長よりも小さくすることによって、電極表面に励起光が染み出す厚さを微細構造の周期程度にすることができ、より一層の高精度な微細加工を行うことが可能になる。
【0048】
なお、本実施形態では、加工用電極30の表面にフォトニック結晶31を設けた場合を例に挙げて説明したが、特定の回折光を励起する分光手段として機能するものであれば、例えば図7に示すように、加工用電極30の表面に鋸歯形状の微細グレーティング構造32を設けるようにしてもよく、その場合であってもエバネセント波の染み出しの厚さを小さくすることができる。
【0049】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。ここでは、請求項5に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第3の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第3の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図8は、本発明に係る微細加工装置の第4の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、第1〜第3の実施の形態の場合のようにXYZステージ2上に被加工物であるSi基板1をセットして移動させる代わりに、Si針3を並進、傾斜または回転のうちの少なくとも一つの移動機能を有したピエゾアクチュエータ40の先端に取り付け、これによりSi針3を移動させてSi基板1に対する加工を行うことを特徴とするものである。
【0051】
ピエゾアクチュエータ40は、その詳細については公知であるため、ここではその説明を省略するが、並進、傾斜または回転のうちの少なくとも一つの移動機能、特に並進移動の機能を備えているものとする。ただし、ピエゾアクチュエータ40は、高精度な移動には適しているが、長距離の移動には適さない。そこで、第1〜第3の実施の形態の場合と同様に、ピエゾアクチュエータ40と、Si基板1をローラガイドやボールガイドステージで移動させるXYZステージ2とを組み合わせれば、大面積のSi基板1を加工するのに有効である。また、ピエゾアクチュエータ40そのものを、XYZステージを用いて移動させることで、大面積のSi基板1に対する加工を可能にしても構わない。
【0052】
なお、ここでは、ピエゾアクチュエータ40が移動させる加工用針がSi針3である場合を例に挙げたが、第2または第3の実施の形態で説明した加工用電極20,30を移動させるようにしてもよい。つまり、ピエゾアクチュエータ40が移動させる加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれる。ただし、加工用針が加工用電極20,30である場合には、ピエゾアクチュエータ40は並進移動の他に、傾斜および回転の全6軸についての移動機能を備えていることが望ましい。加工用電極30では、傾斜または回転の調整が必要になることもあり得るからである。
【0053】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。ここでは、請求項6に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第4の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第4の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図9は、本発明に係る微細加工装置の第5の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3がそのSi針3とSi基板1との間の距離を測定するためのプローブとしての機能をも兼ね備えることを特徴とするものである。つまり、Si針3とSi基板1との間の距離を測定するために、Si針3自体を例えば走査型近接場光学顕微鏡のプローブとして使用するようになっている。
【0055】
そのために、本実施形態における微細加工装置では、図例のように、光源5およびビームエクスパンダ22を有する加工用光学系の他に、測定用レーザ光の光源51と、そのレーザ光を拡大するビームエクスパンダ52とを有した距離測定用光学系を備えている。そして、光源5からの加工用レーザ光と光源51からの測定用レーザ光とがDBS53で合波されて、Si針3に入射するようになっている。なお、加工用レーザ光と測定用レーザ光との合波は、DBS53を使用せずに、例えばSi針3端面で両レーザ光が重なるように入射させる等、他の方法を用いて行ってもよい。
【0056】
測定用レーザ光の波長としては、Si針3での光吸収が小さい800〜10000nm程度がよい。ただし、Si針3が測定用レーザ光の波長より小さいことによって生じる減衰を小さくして高い測定感度を得るためには、800〜1500nm程度の波長の測定用レーザ光を使用するほうが望ましい。
【0057】
また、本実施形態における微細加工装置では、XYZステージ2がSi基板1の裏面側(加工部位の反対面側)に中空部54を有しており、さらにはその中空部54の下方側(Si基板1から遠い側)に、フォトディテクタ(以下「PD」と記す。)55と、そのPD55を移動させるPD用ステージ56とが配設されている。
【0058】
このような構成の微細加工装置において、Si針3がSi基板1に接近すると、加工用光学系からの光入射に応じてSi針3の先端から染み出すエバネセント波の一部が、そのSi基板1中に吸収される。このとき、Si基板1の裏面側にはPD55が配設されている。したがって、Si基板1と透過してきた光をPD55で検出すれば、Si基板1での光の吸収量を基に、Si基板1とSi針3との間の距離を測定することができる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置によれば、Si針3が距離測定用のプローブとしての機能をも兼ね備えることから、Si基板1とSi針3との間の距離を測定しながらSi基板1に対する加工を行うことができ、結果として高精度な加工が可能になるとともに、凹凸のある立体的な微小部品に対する三次元加工も容易となる。
【0060】
なお、Si針3をプローブとして使用するのは、走査型近接場光学顕微鏡のみならず、AFM等であっても適用可能であることは勿論である。
【0061】
〔第6の実施の形態〕
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。ここでは、請求項7および請求項8に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第5の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第5の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
本実施形態で説明する微細加工装置は、容器11内のHF溶液10を、超臨界状態とするための加圧または加熱手段を備えていることを特徴とするものである。超臨界状態とは、液体でも気体でもない、その中間の状態のことをいう。また、ここでいう加圧または加熱には、加圧のみ、加熱のみ、加圧および加熱の両方のいずれが該当する。なお、HF溶液10に対する加圧または加熱は、周知技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0063】
HF溶液10に対する加圧または加熱を行うと、そのHF溶液10は、超臨界状態となる。HF溶液10が超臨界状態になると、粘性が低下し拡散性が増大する。したがって、超臨界状態のHF溶液10中では、電解研磨によって発生するH2等の気体を加工部位から排気することが容易となり、また加工部位にHF溶液10を供給することも容易となる。つまり、電解研磨により発生する気体の排気や加工部位におけるHF溶液10の交換が効率的に行えるようになる。さらには、発生する気体とHF溶液10の交換が短時間かつ効率的に行えるので、例えば大型の加工用電極20,30を使用した場合であっても、被加工物であるSi基板1または加工用電極20,30にH2等の気体が吸着することによって電流の流れが阻害され電解研磨され難くなってしまうといったこと回避し得るようになる。これらのことから、HF溶液10を超臨界状態とすれば、気体が不均一に吸着することによって加工が不均一になることがないため、均一で高精度な加工が実現可能になる。
【0064】
また、超臨界状態では、反応速度が向上するので、加工速度も向上する。このため、光励起により生成した正孔が微細な穴に集中する前に電解研磨が行われるので、微細な穴が成長し難い。したがって、超臨界状態のHF溶液10中で加工を行えば、加工精度が高くなり、表面の荒れも少なくなる。
【0065】
このような超臨海状態を実現しやすくするためには、炭酸ガスをHF溶液10に混合して使用することが考えられる。すなわち、容器11内のHF溶液10が炭酸ガスを混入したものであれば、超臨海状態を低圧力で実現できるようになり、より一層容易に高精度かつ高効率な加工を行うことが可能になる。
【0066】
〔第7の実施の形態〕
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。ここでは、請求項9に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第6の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第6の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
本実施形態で説明する微細加工装置は、容器11内のHF溶液10からのガスの気化を抑制するための加圧手段を備えていることを特徴とするものである。加圧手段は、第6の実施の形態で説明した、HF溶液10を超臨界状態とするための加圧または加熱手段と兼用してもよいし、あるいはこれとは全く別のものであってもよい。なお、ガス気化抑制のための加圧手段も、周知技術を利用して実現すればよく、ここではその詳細な説明を省略する。
【0068】
ガス気化抑制のための加圧手段によってHF溶液10を加圧すれば、電解研磨によって発生するH2等が気化するのを抑制することができる。この電解研磨によって発生するH2等の気体は、被加工物であるSi基板1または加工用電極20,30に付着すると、これらの間における電流の流れを阻害してしまい、電界研磨を困難にする要因となってしまう。また、気体は気泡のように集中し易いので、Si基板1が均一に加工されずに加工精度が低下してしまい、結果として加工面が荒れた状態になってしまう。したがって、電解研磨によって発生するH2等が気化するのを抑制できれば、電界研磨を均一に行い得るようになり、加工精度が向上して、表面の荒れも減少することになる。さらには、加工時間の短縮も期待できるようになる。
【0069】
〔第8の実施の形態〕
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。ここでは、請求項10に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第7の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第7の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
本実施形態で説明する微細加工装置は、被加工物であるSi基板1とSi針3との間にパルス電流を流すことを特徴とするものである。具体的には、例えば電源4にコンデンサおよびスイッチを直列に接続した構成を備えている。この構成によって、電界研磨のための電流がパルス電流となる。パルス電流のパルス幅は、1μsec以下が望ましい。
【0071】
通常、Si基板1とSi針3との間では、電界研磨のために電流を流すと、印加した電場がSi基板1における被加工部位表面の微細な突起に集中し、その突起へ電子の集中によって正孔密度が減少する。そのため、被加工部位表面の突起部分は、電界研磨されず残存してしまい、加工精度の低下や表面の荒れの要因となるおそれがある。
【0072】
これに対して、電界研磨のための電流をパルス電流とすれば、加工電流をパルス化し、突起部分に電子が集中する前に電荷研磨を終了することが可能となる。すなわち、突起部分についても電界研磨されることになり、加工精度の低下や表面の荒れの要因を排除できるようになる。また、このときの加工深さをパルス電流のパルス数で制御でき、更なる加工精度の向上も期待できる。
【0073】
なお、本実施形態では、コンデンサおよびスイッチを用いてパルス電流を発生させる場合を例に挙げたが、パルスを発生させることができれば、他の構成による電源を用いても構わないことは勿論である。また、パルス電流が流れる加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれる。
【0074】
〔第9の実施の形態〕
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。ここでは、請求項11に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第8の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第8の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施形態で説明する微細加工装置は、加工用光学系がSi針3に入射する加工用レーザ光が、パルスレーザであることを特徴とするものである。つまり、Si針3中に正孔を励起するための光にパルスレーザ光を使用する。パルスレーザは、周知技術を利用して発生させればよい。例えば、加工用光学系における光源5として、パルスレーザに対応した周知のものを用いる。パルスレーザ光をSi針3に入射すると、Si基板1中に正孔が瞬間的に発生し、電界研磨のための電流がパルス状に流れることになる。このときのパルス幅は1μsec以下であることが望ましい。
【0076】
このような構成の微細加工装置では、Si針3に入射する加工用レーザ光をパルス化することによって、Si基板1における被加工部位表面の突起部分に電子が集中する前に電荷研磨が終了する程度の個数の正孔を瞬間的に励起する。したがって、第8の実施の形態で説明した場合と同様に、突起部分についても電界研磨されることになり、加工精度の低下や表面の荒れの要因を排除できるようになる。また、このときの加工深さをパルス電流のパルス数で制御でき、更なる加工精度の向上も期待できる。
【0077】
なお、パルスレーザ光が入射される加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれることは、上述した第8の実施の形態の場合と同様である。
【0078】
〔第10の実施の形態〕
次に、本発明の第10の実施の形態について説明する。ここでは、請求項12に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第9の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第9の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3が、液体および気体を透過する、いわゆるポーラス材料からなることを特徴とするものである。ポーラス材料としては、例えば、Si基板を低電流で電解研磨(陽極化成)することによって容易に製作できるポーラスシリコン材(以下、単に「p−Si」と記す。)が挙げられる。なお、p−Siの加工は、上述した各実施形態におけるSi針3等を使用した電解研磨によって行うことも可能である。また、ポーラス材料としては、p−Siの他にも、SiC、ダイヤモンド、GaAs等の半導体やPt等の金属を低電流で陽極化成することによって製作された材料を使用してもよい。
【0080】
このようなp−Siに代表されるポーラス材料を用いてSi針3を形成すれば、ポーラス材料は液体および気体を透過させるので、電界研磨によってH2等の気体が発生した場合であっても、発生した気体を加工部位から排気することが可能になる。したがって、被加工物であるSi基板1の表面への気体の吸着が減少するので、そのSi基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できる。また、ポーラス材料は液体および気体を透過させることから、Si針3の内部へのHF溶液10の注入、その外部へのHF溶液10の排出も行えるので、連続的に電解研磨ができるようになる。
【0081】
なお、ポーラス材料を用いて形成する加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれることは、上述した第8および第9の実施の形態の場合と同様である。特に、大型の加工用電極20,30の場合には、ポーラス材料を用いて形成すれば、電界研磨により発生する気体の排出やHF溶液10の循環が効率的に行えるので、加工速度や加工精度等を向上させる上で非常に有効なものとなる。
【0082】
〔第11の実施の形態〕
次に、本発明の第11の実施の形態について説明する。ここでは、請求項13に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第10の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第10の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図10は、本発明に係る微細加工装置の第11の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、加工用電極30がポーラス材料からなることに加えて、その一部に非貫通穴状に形成されたHF溶液10の注入経路61が設けられていることを特徴とするものである。この注入経路61には、パイプ62およびポンプ63が接続されている。そして、そのポンプ63によって強制的にHF溶液10が循環するようになっている。
【0084】
このような構成の微細加工装置では、ポーラス材料からなる加工用電極30に、HF溶液10や発生した気体が流れ易いように非貫通穴状の注入経路61が設けられており、ポンプ63によって強制的にHF溶液10が循環するようになっているため、HF溶液10の交換や発生する気体の排気がより一層効率的に行われ、更なる加工速度の向上、加工精度の向上、表面の荒れの減少等が期待できる。
【0085】
なお、注入経路61を設ける加工用針には、加工用電極30の他に、集積化されていないSi針3も含まれるが、特に大型の加工用電極20,30の場合に適用すれば、電界研磨により発生する気体の排出やHF溶液10の循環を効率的に行う上で、非常に有効であるといえる。
【0086】
〔第12の実施の形態〕
次に、本発明の第12の実施の形態について説明する。ここでは、請求項14および請求項15に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第11の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第11の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図11は、本発明に係る微細加工装置の第12の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3または加工用電極20,30の表面に、電解研磨で発生する気体の排気を行うための溝71と、HF溶液10の交換を行うための溝72との少なくとも一方が設けられていることを特徴とするものである。
【0088】
これらの溝71,72によって、微細加工装置では、その溝71を用いて電解研磨により発生する気体を効率的に排気することができ、また溝72を用いてHF溶液10の交換を効率的に行うことができる。したがって、加工速度が向上するのに加えて、Si基板1や加工用電極20,30等の表面に気体が吸着されるのを防止できるため、加工精度も向上し、表面の荒れを有効に防止できるようになる。
【0089】
さらには、本実施形態で説明する微細加工装置は、これらの溝71,72が、疎水性を有する材料でコーティングされていることを特徴とするものである。疎水性を有する材料としては、シランカップリング剤、フッ素樹脂、フラーレン(炭素同位体)、カーボンナノチューブ(炭素原子が網目の形で結びついてできたナノメートルサイズの非常に小さなチューブ状の物質)等が挙げられる。なお、これらの材料自体はいずれも公知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。このように、各溝71,72を疎水性を有する材料でコーティングすれば、気体の通過等が非常に容易となるので、より一層の気体の排気やHF溶液10の交換等の効率化が期待できるようになる。
【0090】
なお、Si針3または加工用電極20,30の表面に溝71,72があると、その溝71,72に対応する部分が電解研磨されなくなってしまう。そのために、溝71,72を設けて上述したような効率化を図る場合には、溝位置が異なる1組の加工用電極等を用意し、それぞれの加工用電極等を交代で使用することによって、Si基板1の全面について加工を行い得るようにすることが望ましい。また、Si基板1の被加工部位の形状が回転対称またはそれに近い形状の場合には、加工用電極等を回転させるようにすることも考えられる。
【0091】
〔第13の実施の形態〕
次に、本発明の第13の実施の形態について説明する。ここでは、請求項16および請求項17に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第12の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第12の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
図12は、本発明に係る微細加工装置の第13の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3または加工用電極20,30の表面が、気体吸着機能を有する材料81でコーティングされていることを特徴とするものである。
【0093】
気体吸着機能を有する材料81としては、例えばC60、C70、C20等のフラーレンやカーボンナノチューブが挙げられる。フラーレンやカーボンナノチューブであれば、電気伝導性があるので、電界研磨のための電流を流すこともできる。これらフラーレンやカーボンナノチューブのコーティングは、真空蒸着やスパッタ等によって行うことができるが、例えばCVD法といった、その他の方法を用いて行っても構わない。ただし、フラーレンやカーボンナノチューブは、電極等の表面を平滑にするために、分子量が小さいものを使用するほうが望ましい。一般に使用されるC60やC70であってもその径は0.7nm程度であるため高精度な加工が可能であるが、C20等のより低分子量のものを使用することによって、1nm以下のより高精度な加工を実現することも可能となる。なお、コーティングする材料81は、フラーレンやカーボンナノチューブのみに限定されるわけではなく、同様な機能を有するものであれば他の材料に置換えても構わない。
【0094】
このように、Si針3または加工用電極20,30の表面が、気体吸着機能を有する材料81でコーティングされた微細加工装置では、電界研磨によってH2等の気体が発生した場合であっても、そのコーティングされた材料81の気体吸着機能によって、発生した気体を効率的に加工部位から除くことができる。したがって、被加工物であるSi基板1の表面への気体の吸着が減少するので、そのSi基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できる。
【0095】
なお、ここでは、フラーレンやカーボンナノチューブといった材料81を、Si針3または加工用電極20,30の表面にコーティングした場合を例に挙げて説明したが、これらSi針3や加工用電極20,30等の加工用針自体がフラーレンやカーボンナノチューブといった材料81で形成されていてもよく、その場合であっても、Si基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できるようになる。
【0096】
しかも、加工用針自体を気体吸着機能を有する材料81で形成した場合には、その材料81として、分子量の大きなフラーレンやカーボンナノチューブを使用すれば、ナノメータサイズだけではなく、マイクロメータサイズの加工にも対応可能となる。また、C20等の分子量が小さいフラーレンやカーボンナノチューブを使用することによって、1nm以下のより高精度な加工も可能となる。
【0097】
〔第14の実施の形態〕
次に、本発明の第14の実施の形態について説明する。ここでは、請求項18に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第13の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第13の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0098】
本実施形態で説明する微細加工装置は、HF溶液10中に気体吸着機能を有する材料が混入されていることを特徴とするものである。気体吸着機能を有する材料としては、第13の実施の形態において説明したように、フラーレンやカーボンナノチューブが挙げられる。ただし、これらの材料は、疎水性であるため、親水基を付加するか、またはHF溶液10に界面活性剤を混合して使用することが考えられる。なお、混入する材料は、フラーレンやカーボンナノチューブのみに限定されるわけではなく、同様な機能を有するものであれば他の材料に置換えても構わない。
【0099】
このように、HF溶液10中に気体吸着機能を有する材料が混入された微細加工装置では、第13の実施の形態の場合と略同様に、電界研磨によってH2等の気体が発生しても、その混入された材料の気体吸着機能によって、発生した気体を効率的に加工部位から除くことができる。したがって、被加工物であるSi基板1の表面への気体の吸着が減少するので、そのSi基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できる。
【0100】
〔第15の実施の形態〕
次に、本発明の第15の実施の形態について説明する。ここでは、上述した第1〜第14の実施の形態を適宜組み合わせて得られる微細加工装置について説明する。具体的には、大面積を同時に加工するための微細加工装置であり、被加工物の凹凸を反転した形状の加工用電極を使用して加工する微細加工装置を例に挙げて説明する。
【0101】
図13は、本発明に係る微細加工装置の第15の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。図例は、表面にグレーティング状の溝を形成したシリコン基板を加工用電極90として使用する場合を示している。このような加工用電極90を用いた微細加工装置においても、被加工物であるSi基板1に対する加工を行う際には、加工用電極90のグレーティング表面に生成したエバネセント波を利用して、Si基板1に正孔を励起して電解研磨を行う。
【0102】
このとき、微細加工装置では、Si基板1から漏洩した光をレンズ92を介して二次元イメージセンサ93で検出して、加工用電極90とSi基板1との間隔を測定する。そして、その測定結果に基づき、XYZステージ2で加工用電極90を移動させることによって、電荷研磨を行う際の制御を行う。
【0103】
一方、加工用電極90の上方側には、導光機能を有するプリズム94が透明な接着剤によって装着されている。そして、プリズム94の加工用電極90と反対側の面には、そのプリズム94よりも屈折率が低く透明なフィルム(ただし不図示)が貼付されている。このフィルムがXYZステージ2に真空吸着または静電吸着されることで、加工用電極90がXYZステージ2上に固定されることになる。
【0104】
また、被加工物であるSi基板1は、デフォーマブルホルダ95に静電吸着または真空吸着されている。デフォーマブルホルダ95は、その表面形状を変形する機能を有したものである。具体的には、例えばプラスチック等の弾性のある材料からなり、その両面に形成された電極間に電圧を印加することによって、静電気力で厚さが変化するように構成されている。
【0105】
このような構成の微細加工装置において、加工用電極90には、Si基板1に吸収されて正孔を励起するための加工用レーザ光と、加工用電極90とSi基板1との間隔および面内方向位置ずれを測定するための測定用レーザ光とが、それぞれ加工用光学系の光源5および測定用レーザ光の光源96から同時に入射する。これらの各レーザ光は、各光源5,96からそれぞれ独立して光ファイバ等でプリズム94の端面に導かれ、そのプリズム94に入射する。そして、グレーティングが加工された加工用電極90の表面とプリズム94とフィルムの界面の間で全反射を繰り返しながら伝播する。これらの過程を経て、加工用電極90におけるグレーティングの表面には、両レーザ光のエバネセント波が励起されるのである。
【0106】
このとき、加工用レーザ光によるエバネセント波を利用して、Si基板1に正孔を励起して電解研磨を行うことは、上述した各実施形態で説明した通りである。一方、測定用レーザ光は、Si基板1に加工用電極90が接近してエバネセント波が漏洩すると、そのSi基板1およびデフォーマブルホルダ95を透過して、二次元イメージセンサ93に到達する。そして、二次元イメージセンサ93では、レンズ92により被加工面が結像されて、Si基板1と加工用電極90との間隔が二次元の光強度分布として測定される。したがって、この測定結果を基に、加工面内の間隔が一様な分布になるようデフォーマブルホルダ95でSi基板1を変形させれば、そのSi基板1に対して均一な加工を行い得るようになる。
【0107】
図14は、第15の実施の形態で説明した微細加工装置によって加工した被加工物の一具体例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明した微細加工装置を用いれば、先端がナノメータサイズの針をアレイ状に配置したもの、すなわち微細加工装置における加工用電極として用いて好適なものを加工することができる。
【0108】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る微細加工装置および微細加工方法は、加工用針の先端を尖鋭に形成していることから、その加工用針に光を入射すると、その先端からエバネセント波が染み出すように生成される。したがって、そのエバネセント波で被加工物に正孔を励起し、そのときに加工用針と被加工物との間に電流を流して電解研磨を行うことで、その電解研磨を行う領域を加工用針の先端近傍のみに限定することが可能になる。つまり、加工用針先端に局在するエバネセント波を利用することで、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロン程度以下の微細加工を高精度に行うことができ、また高精度な三次元加工も行えるようになる、といった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る微細加工装置の第1の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る微細加工装置の第1の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における光学系の構成例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における他の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明に係る微細加工装置の第3の実施の形態における要部の構成例を示す模式図(その1)である。
【図7】本発明に係る微細加工装置の第3の実施の形態における要部の構成例を示す模式図(その2)である。
【図8】本発明に係る微細加工装置の第4の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図9】本発明に係る微細加工装置の第5の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。
【図10】
本発明に係る微細加工装置の第11の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図11】
本発明に係る微細加工装置の第12の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図12】
本発明に係る微細加工装置の第13の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図13】
本発明に係る微細加工装置の第15の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。
【図14】
第15の実施の形態で説明した微細加工装置によって加工した被加工物の一具体例を示す模式図である。
【符号の説明】
1…Si基板、2…XYZステージ、3…Si針、4…電源、5…光源、10…HF溶液、11…容器、20,30,90…加工用電極、31…フォトニック結晶、32…グレーティング構造、40…ピエゾアクチュエータ、61…注入経路
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSIに代表される半導体デバイスの製造プロセスに用いて好適な微細加工装置および微細加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高集積化・微細化が進むLSIやマイクロオプティックス(半導体レーザ等のオプトエレクトロニクスデバイス)といった半導体デバイスの製造プロセスでは、走査トンネル顕微鏡(以下「STM」という。)の原理を用いた微細加工技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、STMの探針を被加工物表面に接近させ、これらを電解液中に浸した状態で探針と被加工物との間に電圧を印加することにより、被加工物表面に微細加工を施すというものである。
【0003】
また、微細加工技術としては、被加工物表面の微小領域に選択的に光を照射しながら電流を流すことによる光電気化学反応を原理とした微細加工を行うことも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらには、その他にも、例えば被加工物であるn型シリコン基板の裏面から光学系で加工パターンを投影して電解研磨することによって、投影パターンの形状にn型シリコン基板をエッチングする技術も報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−297252号公報
【特許文献2】
特開平6−74899号公報
【非特許文献1】
グラニング(Gruning)他著、「ファブリケーション・オブ・2ディー・インフレアード・フォトニック・クリスタルズ・イン・マクロポーラス・シリコン:フォトニック・バンド・ギャップ・マテリアルズ(Fabrication of 2−Dinfrared Photonic Crystals in macroporous silicon:Photonic Band Gap Materials)」、クルーワー・アカデミック・パブリッシャーズ(Kluwer AcademicPublishers)、オランダ、pp.453
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の微細加工技術では、以下に述べるような難点が生じてしまうことが考えられる。
【0006】
例えば特許文献1に記載されたように、被加工物と加工針の間に電流を流すことで電解研磨を行って局所的に微細加工を施す技術では、局在電場の広がりが1nm程度まで小さくできるので、トンネル電流を利用した真に局所的な加工を行うためには、加工針を被加工物に1nm程度まで近づけなくてはならない。したがって、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロンメートル程度以下の加工を行う場合には、必ずしも好適であるとはいえない。この点については、加工針と被加工物の距離を10〜100μm程度に保って加工することも報告されているが、その場合は局在場を利用しているわけではないので、三次元的な加工精度を保証することが困難となることが考えられる。
【0007】
また、例えば特許文献2または非特許文献1に記載されたように、光学系による投影パターンの形状に加工を施す技術では、投影光学系の分解能によって加工分解能が制限されてしまう。特に、シリコンに対する透過率が高い赤外光を利用するときには、LSIの製作等で要求される分解能を満足することは不可能であるといえる。また、光学系の焦点深度方向の光強度分布が一様なので、三次元的な加工は困難であると考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロン程度以下の高精度加工を可能にし、しかも三次元的な加工精度をも保証することのできる微細加工装置および微細加工方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために案出された微細加工装置である。すなわち、フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物と対向する加工用針と、前記被加工物と前記加工用針との間に電流を流すための電源と、前記加工用針に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置において、前記加工用針の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物に正孔を励起することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された微細加工方法である。すなわち、フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物と対向する加工用針と、前記被加工物と前記加工用針との間に電流を流すための電源と、前記加工用針に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置を用いて行う、前記被加工物と対する微細加工方法であって、前記加工用針の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物に正孔を励起することによって、前記加工用針近傍のみを電解研磨することを特徴とする方法である。
【0011】
上記構成の微細加工装置および上記手順の微細加工方法によれば、加工用針の先端を尖鋭に形成していることから、その加工用針に光学系から光を入射すると、その加工用針の先端からは、伝搬光は出射しないが、入射光の波長の何分の1という微小なエバネセント(evanescent)波が染み出すように生成される。このエバネセント波は、空間を伝搬せずに針先端に局在し、その大きさは光波長には依存せず針先端の径と略同程度になる。したがって、そのエバネセント波で被加工物に正孔を励起し、そのときに加工用針と被加工物との間に電流を流して電解研磨を行えば、その電解研磨が行われる領域は、加工用針の先端近傍のみに限定されることになる。すなわち、加工用針の先端の径を細くすることでエバネセント波の大きさも小さくできるので、細い加工用針先端を高精度に位置制御することで微細加工が可能となる。また、加工用針先端に局在するエバネセント波を利用するので、加工用針を三次元的に移動することによって、高精度な三次元加工も可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係る微細加工装置および微細加工方法について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は本発明を実現した一例に過ぎず、これに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
ここでは、本発明の第1の実施の形態として、請求項1および請求項2に記載の発明に係る微細加工装置、並びに請求項19に記載の発明に係る微細加工方法について説明する。
【0014】
先ず、微細加工装置の概略構成について説明する。図1は、本発明に係る微細加工装置の第1の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。本実施形態で説明する微細加工装置は、被加工物であるn型シリコン基板(以下、単に「Si基板」と記す。)1に対して、電解研磨による微細加工を施すものである。そのために、微細加工装置では、図例のように、Si基板1が載置されるXYZステージ2と、そのXYZステージ2上のSi基板1と対向する加工用シリコン針(以下、単に「Si針」と記す。)3と、これらSi基板1、XYZステージ2およびSi針3をフッ化水素酸を含む酸溶液(以下、単に「HF溶液」と記す。)中に浸すためのフッ素樹脂容器(ただし不図示)と、Si基板1とSi針3との間に電流を流すための電源4および配線と、Si針3にレーザ光を入射するための光学系とを備えている。このうち、XYZステージ2は、Si基板1とSi針3との相対位置を変化させるため移動機構として機能するものである。また、そのSi針3にレーザ光を入射する光学系は、レーザ光の光源5と、レーザ光を導くための光ファイバ6と、そのレーザ光をSi針3に入射させるためのレンズ7とからなるものである。
【0015】
図2は、上述した微細加工装置における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、Si針3はカンチレバー8の先端に配設されており、カンチレバー8は支持台9によって支持されている。Si針3がカンチレバー8の先端に配設されているのは、原子間力顕微鏡(AFM)等で使用されるプローブと略同様の構成である。また、HF溶液10の容器11には、そのHF溶液10の液面の揺らぎによってレンズ7からのレーザ光が揺らいでしまうのを防止するために、液面を覆う透明なフッ素樹脂材12が設けられている。
【0016】
ところで、ここで説明する微細加工装置は、以上のように構成されているのに加えて、Si針3の形状に大きな特徴がある。すなわち、Si針3は、単結晶シリコン材を異方性エッチングすることによって製作されたものであり、その先端(Si基板1と対向する側の端)が尖鋭に形成され、後述するように光学系からの光の入射に応じて先端にエバネセント波が現れるように構成されている。
【0017】
続いて、以上のような構成の微細加工装置を用いて行う、Si基板1に対する微細加工について説明する。微細加工装置では、Si基板1に対する微細加工を、電解研磨を利用して行う。
【0018】
電解研磨は、一般に、Si中の正孔とHF、陰極からの電子とSiとが、それぞれ次のように反応することによって行われる。
Si+2HF+(2−n)e+→SiF2+2H++ne−
SiF2+2HF→SiF4+H2
SiF4+2HF→H2SiF6
または
Si+4HF+(4−λ)e+→SiF4+4H++λe−
SiF4+2HF→H2SiF6
ここで、n<2、λ<4、e+はレーザ光で励起された正孔、e−は電子であるである。
【0019】
本実施形態で説明する微細加工装置では、電解研磨を行うのにあたり、Si基板1に光照射することで正孔を発生させる。すなわち、Si基板1およびSi針3がHF溶液10中に存在する状態で、Si基板1を正極、Si針3を負極にして、これらの間に電流を流すとともに、Si針3のSi基板1とは反対側の端面から光を入射することで、Si基板1に対して光照射を行い、光電気化学反応を原理とした微細加工を可能とする。
【0020】
ただし、このとき、Si針3の先端が尖鋭に形成されていることから、Si針3に光を入射すると、その加工用針の先端からは、伝搬光は出射しないが、入射光の波長の何分の1という微小なエバネセント波が染み出すように生成される。したがって、Si基板1に対する光照射は、先端にエバネセント波が生成されたSi針3を、Si基板1に近接させることよって行われるのである。
【0021】
この光照射に用いられるエバネセント波は、空間を伝搬せずに針先端に局在し、その大きさは光波長には依存せず針先端の径と略同程度になるという特徴を持っている。そのため、光照射され、これにより電解研磨される領域は、Si針3の先端の極近傍のみに限定されることになる。また、エバネセント波の大きさは、Si針3の先端の径を細くすることで小さくできる。これらのことから、エバネセント波を用いた電解研磨によりSi基板1に対する加工を行えば、先端が細く形成されたSi針3を高精度に位置制御することで、従来よりも更なる微細加工を実現することが可能となる。例えば、Si針3の先端径をオングストロームオーダーまで細くすれば、Si基板1上で原子サイズの微細加工も可能であると考えられる。また、Si針3とSi基板1とを近接させる際の間隔は、エバネセント波の大きさ程度で十分であるが、さらにトンネル電流が流れる距離までSi針3を接近させれば、加工部位以外への漏れ電流を無くすことができるので、より高精度な加工も可能になる。
【0022】
Si針3の先端にエバネセント波を生成させるための光源としては、光源5から出射されるレーザ光を用いる。光源5は、Si針3での光吸収が小さい波長のレーザ光、具体的には光波長はおよそ500nm以上であるレーザ光を出射するものとする。このとき、Si針3での光吸収は長波長の方が小さいが、波長よりも細いSi針3中での伝播損失を小さくするためには、短い波長のほうが有利である。
【0023】
したがって、Si針3の先端は、そのSi針3に入射する光の波長よりも小さい(細い)ことになる。このような場合、すなわち光導波路の導波層が波長よりも薄いために伝播モードが存在しない光導波路であっても、導波機能があることが知られている。そのために、光の波長よりも小さいSi針3であっても、光を導波して、その先端にエバネセント波を生成することができるのである。なお、波長より細いと光の減衰があるため、より正確にエバネセント波の生成を予測するためには、有限要素法(FEM;Finite Element Method)や差分時間領域(FDTD;Finite Difference Time Domain)法等によるシミュレーションと実験が必要である。
【0024】
ところで、Si針3の先端が光波長よりも小さい場合には、光強度の減衰を無視できない。このような光強度の減衰を小さくするためには、Si針3の先端以外を金属でコーティングするのが有効である。ただし、Si針3は容器11内のHF溶液10中で使用するので、コーティング材料として銀やアルミニウムを使用することができない。そのため、コーティング材料としては、金や白金等を使用するのが適当である。この金属コーティングを行えば、Si針3からの散乱光を少なくすることも可能となる。そのため、加工部位以外を励起すること、すなわち加工部位以外を加工してしまうことがなくなり、より一層の加工精度の向上が期待できる。
【0025】
また、光強度の減衰は、Si針3の先端のテーパ角が大きいほど小さくなると考えられる。そのため、Si針3の先端は、被加工物であるSi基板1と干渉しなければ、およそ60°以上のテーパ角に形成することが望ましい。さらには、テーパ角を2段階で変化させれば、光強度の減衰も減少すると考えられることから、このような形状のSi針3を使用することも有効である。
【0026】
先端が細く形成されたSi針3からのエバネセント波を用いてSi基板1に対する加工を行うためには、そのSi針3を高精度に位置制御しつつ、Si基板1とSi針3との相対位置を変化させることが必要となる。相対位置の変化は、既に説明したように、XYZステージ2によって実現される。XYZステージ2では、例えば、ナノメータオーダーの高分解能な移動を行うために、板バネで移動部分を支持してピエゾトランスレータで移動させるステージを使用し、Si基板1全体に渡る広範囲の移動には、ボールガイドやローラガイドを使用した高精度ステージを使用する。これら二種類の機構を組み合わせることで、大型のSi基板1も加工可能となる。そして、XYZステージ2を用いた相対位置の変化は、Si基板1とSi針3との各々をレーザ干渉計若しくはレーザスケールまたは静電容量センサー等で測定することによって、クローズドループで制御する。これらによって、Si基板1とSi針3との相対位置は、高精度に制御されることになる。なお、XYZステージ2は、主にHF溶液10で腐食されないステンレス等の材料を用いて構成されるものとする。さらに、HF溶液10によって腐食され得るピエゾトランスレータ等の部品については、フッ素樹脂やポリ塩化ビニル樹脂等のコーティングによって保護されているものとする。
【0027】
また、Si基板1に対する加工を行うためには、Si基板1とSi針3との相対位置を変化させるだけではなく、Si針3をSi基板1に接近させることが必要となる。その際には、Si針3を走査型近接場光学顕微鏡または原子間力顕微鏡(AFM)のプローブとして使用して、Si基板1とSi針3との間の距離を測定しながら加工を行うことが考えられる。具体的には、先ず、先端に生成されたエバネセント波がSi基板1に吸収される位置までSi針3を移動し、Si基板1とSi針3との間に通電して電解研磨を行う。このとき、電解研磨によってSi基板1の被加工部位はSi針3の先端から遠ざかるので、プローブによって加工位置を測定しながら、Si基板1とSi針3との間の距離が一定になるように制御する。被加工部位の深さ等の位置は、例えばSi針3をAFM探針として使用する場合には、そのSi針3に加わる力で測定できる。Si針3に加わる力は、Si基板1の被加工部位における光散乱の応力、ファンデルワールス力であり、カンチレバー8の撓みによって測定できる。カンチレバー8の撓みは、光テコやレーザ干渉計で測定できる。そして、測定された撓みの大きさを一定に保つように、Si基板1とSi針3との間の距離を変化させながら加工する。このように加工を進めれば、Si基板1とSi針3との接近距離を高精度に制御しつつ、レーザ測長機等による測定値が目標位置に到達したときに加工を終了するといったことも可能になる。
【0028】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置および微細加工方法によれば、Si針3の先端を尖鋭に形成して、光学系からの光の入射に応じてその先端にエバネセント波が生成されるようにしており、そのエバネセント波でSi基板1に正孔を励起することによって、Si針3近傍のみを電解研磨するようになっている。つまり、Si針3の先端に生成されたエバネセント波を利用してSi基板1に対する加工を行うため、その加工をSi針3の先端径と同程度の分解能で行うことができる。このエバネセント波の局在領域の大きさは、Si針3先端が光波長よりも十分に小さい場合には、光波長には依存せずSi針3の先端の大きさと同程度になる。したがって、加工の細かさに合わせてSi針3の先端形状を決定すれば、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロンメートル程度以下の高精度加工を行うことも可能となる。
【0029】
さらに、本実施形態の微細加工装置および微細加工方法によれば、投影光学系を使用せずに、Si針3の先端に局在するエバネセント波を利用しているので、Si基板1とSi針3との相対位置を三次元的に変化させれば、高精度な三次元加工も実現可能となる。その際には、Si針3を走査型近接場光学顕微鏡またはAFMのプローブとして使用することが可能であり、これによりSi基板1の表面を測定しながら加工することもできるようになる。
【0030】
また、本実施形態の微細加工装置および微細加工方法では、被加工物にレジストをコーティングする必要がないので、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のような凹凸のある立体的な微小部品であっても、高精度に加工することができる。しかも、被加工物がレジストで覆われないため、加工しようとする位置の観察が容易である。そのため、光学顕微鏡やAFM、近接場光学顕微鏡等と組み合わせることで、高精度に位置決めして加工することができる。また、MEMS等への追加工も容易である。
【0031】
なお、本実施形態では、被加工物がn型シリコンからなるSi基板1である場合を例に挙げて説明したが、他に炭化ケイ素(SiC)やダイヤモンド等の半導体、ガリウムヒ素(GaAs)等の化合物半導体についても、全く同様に加工可能である。また、被加工物と対向する加工用針についても、本実施形態では、n型シリコンからなるSi針3である場合を例に挙げて説明したが、HF溶液10で腐食されず、透明であり、導電性がある材料であれば、例えばSiCやダイヤモンド等の半導体、GaAs等の化合物半導体、白金(Pt)等の金属を用いることができる。つまり、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法によれば、金属よりも熱膨張率が小さく剛性が高いシリコンやダイヤモンド等を高精度に加工することが可能である。このようにして高精度に加工されたシリコンやダイヤモンド等は、例えば超高精度な金型として使用でき、その金型の使用により高精度なマイクロレンズ等を製作するといったことも可能になる。
【0032】
さらには、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法を用いて、当該微細加工装置および微細加工方法において使用するSi針3を加工する、といったことも考えられる。Si針3は、一般的には、例えばn型シリコン材に異方性エッチングによる加工を行って形成する。ところが、異方性エッチングでは、形成されたSi針3の形状が角錐状になる。そのため、角錐状先端の稜の部分での光の散乱によって、エバネセント波の減衰や不要な迷光等が生じてしまい、加工精度の低下を招いてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法を用いてSi針3を加工すれば、そのSi針3の形状を円錐状に加工できるので、エバネセント波の生成の際に光散乱が生じ難くなる。したがって、円錐状に形成されたSi針3を用いれば、被加工物の不要な部分を励起して電解研磨してしまうことがなくなり、結果として加工精度の向上が期待できるようになる。また、本実施形態で説明した微細加工装置および微細加工方法を用いれば、円錐状以外の任意の形状にもSi針3を形成することができる。つまり、被加工物に最適化された形状や、先端に効率的にエバネセント波を生成できる形状等に、Si針3の形状を形成することもできる。このような任意のSi針3の形状は、FEMやFDTD法、あるいはビーム伝搬法(BPM;Beam Propagation Method)、による電磁場の解析を行うこと等で特定が可能である。ただし、複雑な形状を加工するためのSi針3や、高効率にエバネセント波を生成できるSi針3等の形状であれば、等間隔な長方形要素しか計算できないFDTD法よりも、任意な四角形または三角形要素に分割して計算できるFEMを用いたほうが適しているといえる。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここでは、請求項3に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態では、上述した第1の実施の形態との相違点についてのみ説明を行うものとする。したがって、第1の実施の形態と同一の構成要素については、図中において同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
図3は、本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、集積化された複数のSi針3からなる加工用集積化電極(以下、単に「加工用電極」と記す。)20を備えたことを特徴とするものである。すなわち、加工用針であるSi針3をアレイ状に多数本集積したものを加工用電極20として使用する。この加工用電極20は、その両側に付設された板バネ21によって支持され、上下方向に変位できるようになっている。そして、加工用電極20では、第1の実施の形態における場合と同様に、Si基板1の被加工部位における光散乱の応力、ファンデルワールス力によって変位するので、この変位量から被加工部位の位置を検出することができる。
【0035】
このような加工用電極20に対して、エバネセント波を生成するための光を照射する光学系(以下「加工用光学系」と記す。)と、その変位量を測定するための光学系(以下「変位量測定用光学系」と記す。)とは、以下のように構成することが考えられる。図4は、本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における光学系の構成例を示す模式図である。図例のように、加工用光学系では、加工用レーザ光の光源5と、そのレーザ光を拡大するビームエクスパンダ22とを有しており、変位量測定用光学系では、測定用レーザ光の光源23と、そのレーザ光を拡大するビームエクスパンダ24とを有している。そして、各々からのレーザ光は、ダイクロイックビームスプリッタ(以下「DBS」と記す。)25で合波されて、加工用電極20に入射するようになっている。
【0036】
このとき、変位量測定用光学系では、ビームエクスパンダ24を経た測定用レーザ光に対し、偏光ビームスプリッタ(以下「PBS」と記す。)26によって光軸方向を変化させ、4分の1波長板(以下「QWP」と記す。)27および参照面28を透過させて、DBS25まで導く。そして、測定用レーザ光が加工用電極20で反射されると、その反射レーザ光は、PBS26まで戻ってくる。ただし、反射レーザ光は、QWP27を往復で二回透過しているため、偏光が90°回転している。そのために、PBS26まで戻った反射レーザ光は、PBS26によって分岐されて、光源23側ではなく、検出器29に入射することになる。
【0037】
検出器29は、例えば二次元イメージセンサからなるものであり、干渉縞の変位、回転、間隔変化から加工用電極20の変位、傾斜角を検出するようになっている。ただし、加工用電極20は、その両側が板バネ21で支持されている。そのため、加工用電極20の傾斜は、第1の実施の形態で説明したようなカンチレバーの場合よりも小さいので、無視できる程度に小さければ、傾斜角を測定しなくても良いことは勿論である。なお、加工用電極20の変位の検出は、公知技術であるサブフリンジ干渉法やヘテロダイン干渉法等を用いて行えばよい。また、光テコによって電極両側の板バネ21の傾斜角を測定することも考えられる。
【0038】
一方、加工用光学系では、光源5から出射された加工用レーザ光が、ビームエクスパンダ22によって拡大されて、加工用電極20を構成する各々のSi針3に入射することになる。これにより、アレイ状に集積された各Si針3の先端からは、第1の実施の形態の場合と全く同様にエバネセント波が染み出す。したがって、そのエバネセント波で被加工物であるSi基板1に正孔が励起され、集積化された各Si針3近傍のみで電解研磨が行われることになる。
【0039】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置によれば、単なるSi針3ではなく、複数のSi針3が集積化された加工用電極20を備えているため、一つのSi針3による一筆書き的な加工だけでなく、線状溝を一度に加工したり、複数領域を同時に加工したりすることができる。つまり、加工用電極20を被加工物の形状に合わせることによって、その被加工物に対する加工を高速に行うことができる。さらには、加工用電極20を用いた場合であっても、その加工用電極20は被加工物による光散乱の応力、ファンデルワールス力によって変位するので、この変異量から被加工物の位置を検出でき、加工精度の向上が図れるようになる。
【0040】
なお、本実施形態では、円錐状に形成されたSi針3がアレイ状に集積化して加工用電極20を構成する場合を例に挙げて説明したが、加工用電極20は被加工物に合った形状とすればよい。図5は、第2の実施の形態における他の構成例を示す模式図である。加工用電極20は、必ずしも円錐状のSi針3が集積化されたものである必要はなく、図例のように、その断面が三角形、四角形、半円等の棒状のものを配列したものであってもよい。この場合であっても、先端から染み出すエバネセント波を利用した高精度加工を行うことが可能となる。しかも、加工用電極20が棒状であるため、例えばSi基板1上に凹凸構造のグレーティングを加工する場合等、線状の加工を行う場合であっても、その加工を一度に行うことができ、結果として加工の大幅な高速化が期待できる。
つまり、加工用電極20の形状は、被加工物の形状に合わせたものであればよく、例えば被加工物における加工しようとする箇所が周期的でない場合には、形状の異なるSi針3を集積化する、といったことも考えられる。
【0041】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。ここでは、請求項4に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1および第2の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1または第2の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図6および図7は、本発明に係る微細加工装置の第3の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図6に示すように、本実施形態で説明する微細加工装置は、加工用電極30の表面に、特定の回折光を励起する分光手段として機能するフォトニック結晶31が設けられていることを特徴とするものである。
【0043】
フォトニック結晶とは、一般に光の波長と同程度の周期的な屈折率分布を持ち、光の伝藩や発生を自在に制御できるものをいう。ここで説明するフォトニック結晶31は、加工用電極30の表面に設けられた細い溝からなるもので、例えば分光器で使用されるブレーズドグレーティングと同様な構造を有するものである。
【0044】
また、フォトニック結晶31が設けられている加工用電極30の表面は、被加工物の形状に合わせて、その断面が弧を描くように下方に向けて膨出した形状の非球面に形成されている。その非球面状の表面部分に、フォトニック結晶31が配設されている。
【0045】
このような加工用電極30に対し、その上方から光が入射すると、その加工用電極30における非球面状の表面部分からは、上述した各実施形態の場合と同様に、エバネセント波が染み出す。ただし、この加工用電極30の表面には、フォトニック結晶31が設けられている。そのために、エバネセント波の染み出す厚さは、フォトニック結晶31の溝の周期が光の波長よりも大きければ当該波長程度であるが、溝の周期が光の波長よりも小さいときには、その溝周期と同程度の厚さとなる。つまり、フォトニック結晶31の溝を微細にすれば、エバネセント波の染み出しを薄くすることができ、結果として高精度な微細加工が可能になる。
【0046】
また、フォトニック結晶31が設けられた加工用電極30の表面は、非球面に形成されている。そのために、その表面から染み出すエバネセント波は、非球面の頂点から外側に向かって伝播するようになる。つまり、非球面の頂点から外側に向かってエバネセント波が進行する。したがって、非球面の頂点に励起光が集光して光強度が周辺部よりも極端に強くなることがなくなり、均一な加工が可能になる。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置によれば、加工用電極30の表面にフォトニック結晶31が設けられているので、そのフォトニック結晶31の溝周期を光の波長よりも小さくすることによって、電極表面に励起光が染み出す厚さを微細構造の周期程度にすることができ、より一層の高精度な微細加工を行うことが可能になる。
【0048】
なお、本実施形態では、加工用電極30の表面にフォトニック結晶31を設けた場合を例に挙げて説明したが、特定の回折光を励起する分光手段として機能するものであれば、例えば図7に示すように、加工用電極30の表面に鋸歯形状の微細グレーティング構造32を設けるようにしてもよく、その場合であってもエバネセント波の染み出しの厚さを小さくすることができる。
【0049】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。ここでは、請求項5に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第3の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第3の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図8は、本発明に係る微細加工装置の第4の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、第1〜第3の実施の形態の場合のようにXYZステージ2上に被加工物であるSi基板1をセットして移動させる代わりに、Si針3を並進、傾斜または回転のうちの少なくとも一つの移動機能を有したピエゾアクチュエータ40の先端に取り付け、これによりSi針3を移動させてSi基板1に対する加工を行うことを特徴とするものである。
【0051】
ピエゾアクチュエータ40は、その詳細については公知であるため、ここではその説明を省略するが、並進、傾斜または回転のうちの少なくとも一つの移動機能、特に並進移動の機能を備えているものとする。ただし、ピエゾアクチュエータ40は、高精度な移動には適しているが、長距離の移動には適さない。そこで、第1〜第3の実施の形態の場合と同様に、ピエゾアクチュエータ40と、Si基板1をローラガイドやボールガイドステージで移動させるXYZステージ2とを組み合わせれば、大面積のSi基板1を加工するのに有効である。また、ピエゾアクチュエータ40そのものを、XYZステージを用いて移動させることで、大面積のSi基板1に対する加工を可能にしても構わない。
【0052】
なお、ここでは、ピエゾアクチュエータ40が移動させる加工用針がSi針3である場合を例に挙げたが、第2または第3の実施の形態で説明した加工用電極20,30を移動させるようにしてもよい。つまり、ピエゾアクチュエータ40が移動させる加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれる。ただし、加工用針が加工用電極20,30である場合には、ピエゾアクチュエータ40は並進移動の他に、傾斜および回転の全6軸についての移動機能を備えていることが望ましい。加工用電極30では、傾斜または回転の調整が必要になることもあり得るからである。
【0053】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。ここでは、請求項6に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第4の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第4の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図9は、本発明に係る微細加工装置の第5の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3がそのSi針3とSi基板1との間の距離を測定するためのプローブとしての機能をも兼ね備えることを特徴とするものである。つまり、Si針3とSi基板1との間の距離を測定するために、Si針3自体を例えば走査型近接場光学顕微鏡のプローブとして使用するようになっている。
【0055】
そのために、本実施形態における微細加工装置では、図例のように、光源5およびビームエクスパンダ22を有する加工用光学系の他に、測定用レーザ光の光源51と、そのレーザ光を拡大するビームエクスパンダ52とを有した距離測定用光学系を備えている。そして、光源5からの加工用レーザ光と光源51からの測定用レーザ光とがDBS53で合波されて、Si針3に入射するようになっている。なお、加工用レーザ光と測定用レーザ光との合波は、DBS53を使用せずに、例えばSi針3端面で両レーザ光が重なるように入射させる等、他の方法を用いて行ってもよい。
【0056】
測定用レーザ光の波長としては、Si針3での光吸収が小さい800〜10000nm程度がよい。ただし、Si針3が測定用レーザ光の波長より小さいことによって生じる減衰を小さくして高い測定感度を得るためには、800〜1500nm程度の波長の測定用レーザ光を使用するほうが望ましい。
【0057】
また、本実施形態における微細加工装置では、XYZステージ2がSi基板1の裏面側(加工部位の反対面側)に中空部54を有しており、さらにはその中空部54の下方側(Si基板1から遠い側)に、フォトディテクタ(以下「PD」と記す。)55と、そのPD55を移動させるPD用ステージ56とが配設されている。
【0058】
このような構成の微細加工装置において、Si針3がSi基板1に接近すると、加工用光学系からの光入射に応じてSi針3の先端から染み出すエバネセント波の一部が、そのSi基板1中に吸収される。このとき、Si基板1の裏面側にはPD55が配設されている。したがって、Si基板1と透過してきた光をPD55で検出すれば、Si基板1での光の吸収量を基に、Si基板1とSi針3との間の距離を測定することができる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態における微細加工装置によれば、Si針3が距離測定用のプローブとしての機能をも兼ね備えることから、Si基板1とSi針3との間の距離を測定しながらSi基板1に対する加工を行うことができ、結果として高精度な加工が可能になるとともに、凹凸のある立体的な微小部品に対する三次元加工も容易となる。
【0060】
なお、Si針3をプローブとして使用するのは、走査型近接場光学顕微鏡のみならず、AFM等であっても適用可能であることは勿論である。
【0061】
〔第6の実施の形態〕
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。ここでは、請求項7および請求項8に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第5の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第5の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
本実施形態で説明する微細加工装置は、容器11内のHF溶液10を、超臨界状態とするための加圧または加熱手段を備えていることを特徴とするものである。超臨界状態とは、液体でも気体でもない、その中間の状態のことをいう。また、ここでいう加圧または加熱には、加圧のみ、加熱のみ、加圧および加熱の両方のいずれが該当する。なお、HF溶液10に対する加圧または加熱は、周知技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0063】
HF溶液10に対する加圧または加熱を行うと、そのHF溶液10は、超臨界状態となる。HF溶液10が超臨界状態になると、粘性が低下し拡散性が増大する。したがって、超臨界状態のHF溶液10中では、電解研磨によって発生するH2等の気体を加工部位から排気することが容易となり、また加工部位にHF溶液10を供給することも容易となる。つまり、電解研磨により発生する気体の排気や加工部位におけるHF溶液10の交換が効率的に行えるようになる。さらには、発生する気体とHF溶液10の交換が短時間かつ効率的に行えるので、例えば大型の加工用電極20,30を使用した場合であっても、被加工物であるSi基板1または加工用電極20,30にH2等の気体が吸着することによって電流の流れが阻害され電解研磨され難くなってしまうといったこと回避し得るようになる。これらのことから、HF溶液10を超臨界状態とすれば、気体が不均一に吸着することによって加工が不均一になることがないため、均一で高精度な加工が実現可能になる。
【0064】
また、超臨界状態では、反応速度が向上するので、加工速度も向上する。このため、光励起により生成した正孔が微細な穴に集中する前に電解研磨が行われるので、微細な穴が成長し難い。したがって、超臨界状態のHF溶液10中で加工を行えば、加工精度が高くなり、表面の荒れも少なくなる。
【0065】
このような超臨海状態を実現しやすくするためには、炭酸ガスをHF溶液10に混合して使用することが考えられる。すなわち、容器11内のHF溶液10が炭酸ガスを混入したものであれば、超臨海状態を低圧力で実現できるようになり、より一層容易に高精度かつ高効率な加工を行うことが可能になる。
【0066】
〔第7の実施の形態〕
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。ここでは、請求項9に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第6の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第6の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
本実施形態で説明する微細加工装置は、容器11内のHF溶液10からのガスの気化を抑制するための加圧手段を備えていることを特徴とするものである。加圧手段は、第6の実施の形態で説明した、HF溶液10を超臨界状態とするための加圧または加熱手段と兼用してもよいし、あるいはこれとは全く別のものであってもよい。なお、ガス気化抑制のための加圧手段も、周知技術を利用して実現すればよく、ここではその詳細な説明を省略する。
【0068】
ガス気化抑制のための加圧手段によってHF溶液10を加圧すれば、電解研磨によって発生するH2等が気化するのを抑制することができる。この電解研磨によって発生するH2等の気体は、被加工物であるSi基板1または加工用電極20,30に付着すると、これらの間における電流の流れを阻害してしまい、電界研磨を困難にする要因となってしまう。また、気体は気泡のように集中し易いので、Si基板1が均一に加工されずに加工精度が低下してしまい、結果として加工面が荒れた状態になってしまう。したがって、電解研磨によって発生するH2等が気化するのを抑制できれば、電界研磨を均一に行い得るようになり、加工精度が向上して、表面の荒れも減少することになる。さらには、加工時間の短縮も期待できるようになる。
【0069】
〔第8の実施の形態〕
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。ここでは、請求項10に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第7の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第7の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
本実施形態で説明する微細加工装置は、被加工物であるSi基板1とSi針3との間にパルス電流を流すことを特徴とするものである。具体的には、例えば電源4にコンデンサおよびスイッチを直列に接続した構成を備えている。この構成によって、電界研磨のための電流がパルス電流となる。パルス電流のパルス幅は、1μsec以下が望ましい。
【0071】
通常、Si基板1とSi針3との間では、電界研磨のために電流を流すと、印加した電場がSi基板1における被加工部位表面の微細な突起に集中し、その突起へ電子の集中によって正孔密度が減少する。そのため、被加工部位表面の突起部分は、電界研磨されず残存してしまい、加工精度の低下や表面の荒れの要因となるおそれがある。
【0072】
これに対して、電界研磨のための電流をパルス電流とすれば、加工電流をパルス化し、突起部分に電子が集中する前に電荷研磨を終了することが可能となる。すなわち、突起部分についても電界研磨されることになり、加工精度の低下や表面の荒れの要因を排除できるようになる。また、このときの加工深さをパルス電流のパルス数で制御でき、更なる加工精度の向上も期待できる。
【0073】
なお、本実施形態では、コンデンサおよびスイッチを用いてパルス電流を発生させる場合を例に挙げたが、パルスを発生させることができれば、他の構成による電源を用いても構わないことは勿論である。また、パルス電流が流れる加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれる。
【0074】
〔第9の実施の形態〕
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。ここでは、請求項11に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第8の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第8の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施形態で説明する微細加工装置は、加工用光学系がSi針3に入射する加工用レーザ光が、パルスレーザであることを特徴とするものである。つまり、Si針3中に正孔を励起するための光にパルスレーザ光を使用する。パルスレーザは、周知技術を利用して発生させればよい。例えば、加工用光学系における光源5として、パルスレーザに対応した周知のものを用いる。パルスレーザ光をSi針3に入射すると、Si基板1中に正孔が瞬間的に発生し、電界研磨のための電流がパルス状に流れることになる。このときのパルス幅は1μsec以下であることが望ましい。
【0076】
このような構成の微細加工装置では、Si針3に入射する加工用レーザ光をパルス化することによって、Si基板1における被加工部位表面の突起部分に電子が集中する前に電荷研磨が終了する程度の個数の正孔を瞬間的に励起する。したがって、第8の実施の形態で説明した場合と同様に、突起部分についても電界研磨されることになり、加工精度の低下や表面の荒れの要因を排除できるようになる。また、このときの加工深さをパルス電流のパルス数で制御でき、更なる加工精度の向上も期待できる。
【0077】
なお、パルスレーザ光が入射される加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれることは、上述した第8の実施の形態の場合と同様である。
【0078】
〔第10の実施の形態〕
次に、本発明の第10の実施の形態について説明する。ここでは、請求項12に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第9の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第9の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3が、液体および気体を透過する、いわゆるポーラス材料からなることを特徴とするものである。ポーラス材料としては、例えば、Si基板を低電流で電解研磨(陽極化成)することによって容易に製作できるポーラスシリコン材(以下、単に「p−Si」と記す。)が挙げられる。なお、p−Siの加工は、上述した各実施形態におけるSi針3等を使用した電解研磨によって行うことも可能である。また、ポーラス材料としては、p−Siの他にも、SiC、ダイヤモンド、GaAs等の半導体やPt等の金属を低電流で陽極化成することによって製作された材料を使用してもよい。
【0080】
このようなp−Siに代表されるポーラス材料を用いてSi針3を形成すれば、ポーラス材料は液体および気体を透過させるので、電界研磨によってH2等の気体が発生した場合であっても、発生した気体を加工部位から排気することが可能になる。したがって、被加工物であるSi基板1の表面への気体の吸着が減少するので、そのSi基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できる。また、ポーラス材料は液体および気体を透過させることから、Si針3の内部へのHF溶液10の注入、その外部へのHF溶液10の排出も行えるので、連続的に電解研磨ができるようになる。
【0081】
なお、ポーラス材料を用いて形成する加工用針には、Si針3の他に、加工用電極20,30も含まれることは、上述した第8および第9の実施の形態の場合と同様である。特に、大型の加工用電極20,30の場合には、ポーラス材料を用いて形成すれば、電界研磨により発生する気体の排出やHF溶液10の循環が効率的に行えるので、加工速度や加工精度等を向上させる上で非常に有効なものとなる。
【0082】
〔第11の実施の形態〕
次に、本発明の第11の実施の形態について説明する。ここでは、請求項13に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第10の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第10の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図10は、本発明に係る微細加工装置の第11の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、加工用電極30がポーラス材料からなることに加えて、その一部に非貫通穴状に形成されたHF溶液10の注入経路61が設けられていることを特徴とするものである。この注入経路61には、パイプ62およびポンプ63が接続されている。そして、そのポンプ63によって強制的にHF溶液10が循環するようになっている。
【0084】
このような構成の微細加工装置では、ポーラス材料からなる加工用電極30に、HF溶液10や発生した気体が流れ易いように非貫通穴状の注入経路61が設けられており、ポンプ63によって強制的にHF溶液10が循環するようになっているため、HF溶液10の交換や発生する気体の排気がより一層効率的に行われ、更なる加工速度の向上、加工精度の向上、表面の荒れの減少等が期待できる。
【0085】
なお、注入経路61を設ける加工用針には、加工用電極30の他に、集積化されていないSi針3も含まれるが、特に大型の加工用電極20,30の場合に適用すれば、電界研磨により発生する気体の排出やHF溶液10の循環を効率的に行う上で、非常に有効であるといえる。
【0086】
〔第12の実施の形態〕
次に、本発明の第12の実施の形態について説明する。ここでは、請求項14および請求項15に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第11の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第11の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図11は、本発明に係る微細加工装置の第12の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3または加工用電極20,30の表面に、電解研磨で発生する気体の排気を行うための溝71と、HF溶液10の交換を行うための溝72との少なくとも一方が設けられていることを特徴とするものである。
【0088】
これらの溝71,72によって、微細加工装置では、その溝71を用いて電解研磨により発生する気体を効率的に排気することができ、また溝72を用いてHF溶液10の交換を効率的に行うことができる。したがって、加工速度が向上するのに加えて、Si基板1や加工用電極20,30等の表面に気体が吸着されるのを防止できるため、加工精度も向上し、表面の荒れを有効に防止できるようになる。
【0089】
さらには、本実施形態で説明する微細加工装置は、これらの溝71,72が、疎水性を有する材料でコーティングされていることを特徴とするものである。疎水性を有する材料としては、シランカップリング剤、フッ素樹脂、フラーレン(炭素同位体)、カーボンナノチューブ(炭素原子が網目の形で結びついてできたナノメートルサイズの非常に小さなチューブ状の物質)等が挙げられる。なお、これらの材料自体はいずれも公知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。このように、各溝71,72を疎水性を有する材料でコーティングすれば、気体の通過等が非常に容易となるので、より一層の気体の排気やHF溶液10の交換等の効率化が期待できるようになる。
【0090】
なお、Si針3または加工用電極20,30の表面に溝71,72があると、その溝71,72に対応する部分が電解研磨されなくなってしまう。そのために、溝71,72を設けて上述したような効率化を図る場合には、溝位置が異なる1組の加工用電極等を用意し、それぞれの加工用電極等を交代で使用することによって、Si基板1の全面について加工を行い得るようにすることが望ましい。また、Si基板1の被加工部位の形状が回転対称またはそれに近い形状の場合には、加工用電極等を回転させるようにすることも考えられる。
【0091】
〔第13の実施の形態〕
次に、本発明の第13の実施の形態について説明する。ここでは、請求項16および請求項17に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第12の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第12の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
図12は、本発明に係る微細加工装置の第13の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明する微細加工装置は、Si針3または加工用電極20,30の表面が、気体吸着機能を有する材料81でコーティングされていることを特徴とするものである。
【0093】
気体吸着機能を有する材料81としては、例えばC60、C70、C20等のフラーレンやカーボンナノチューブが挙げられる。フラーレンやカーボンナノチューブであれば、電気伝導性があるので、電界研磨のための電流を流すこともできる。これらフラーレンやカーボンナノチューブのコーティングは、真空蒸着やスパッタ等によって行うことができるが、例えばCVD法といった、その他の方法を用いて行っても構わない。ただし、フラーレンやカーボンナノチューブは、電極等の表面を平滑にするために、分子量が小さいものを使用するほうが望ましい。一般に使用されるC60やC70であってもその径は0.7nm程度であるため高精度な加工が可能であるが、C20等のより低分子量のものを使用することによって、1nm以下のより高精度な加工を実現することも可能となる。なお、コーティングする材料81は、フラーレンやカーボンナノチューブのみに限定されるわけではなく、同様な機能を有するものであれば他の材料に置換えても構わない。
【0094】
このように、Si針3または加工用電極20,30の表面が、気体吸着機能を有する材料81でコーティングされた微細加工装置では、電界研磨によってH2等の気体が発生した場合であっても、そのコーティングされた材料81の気体吸着機能によって、発生した気体を効率的に加工部位から除くことができる。したがって、被加工物であるSi基板1の表面への気体の吸着が減少するので、そのSi基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できる。
【0095】
なお、ここでは、フラーレンやカーボンナノチューブといった材料81を、Si針3または加工用電極20,30の表面にコーティングした場合を例に挙げて説明したが、これらSi針3や加工用電極20,30等の加工用針自体がフラーレンやカーボンナノチューブといった材料81で形成されていてもよく、その場合であっても、Si基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できるようになる。
【0096】
しかも、加工用針自体を気体吸着機能を有する材料81で形成した場合には、その材料81として、分子量の大きなフラーレンやカーボンナノチューブを使用すれば、ナノメータサイズだけではなく、マイクロメータサイズの加工にも対応可能となる。また、C20等の分子量が小さいフラーレンやカーボンナノチューブを使用することによって、1nm以下のより高精度な加工も可能となる。
【0097】
〔第14の実施の形態〕
次に、本発明の第14の実施の形態について説明する。ここでは、請求項18に記載の発明に係る微細加工装置について説明する。ただし、本実施形態でも、上述した第1〜第13の実施の形態との相違点についてのみ説明を行い、第1〜第13の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0098】
本実施形態で説明する微細加工装置は、HF溶液10中に気体吸着機能を有する材料が混入されていることを特徴とするものである。気体吸着機能を有する材料としては、第13の実施の形態において説明したように、フラーレンやカーボンナノチューブが挙げられる。ただし、これらの材料は、疎水性であるため、親水基を付加するか、またはHF溶液10に界面活性剤を混合して使用することが考えられる。なお、混入する材料は、フラーレンやカーボンナノチューブのみに限定されるわけではなく、同様な機能を有するものであれば他の材料に置換えても構わない。
【0099】
このように、HF溶液10中に気体吸着機能を有する材料が混入された微細加工装置では、第13の実施の形態の場合と略同様に、電界研磨によってH2等の気体が発生しても、その混入された材料の気体吸着機能によって、発生した気体を効率的に加工部位から除くことができる。したがって、被加工物であるSi基板1の表面への気体の吸着が減少するので、そのSi基板1に対する加工精度が向上し、表面の荒れも低減できる。
【0100】
〔第15の実施の形態〕
次に、本発明の第15の実施の形態について説明する。ここでは、上述した第1〜第14の実施の形態を適宜組み合わせて得られる微細加工装置について説明する。具体的には、大面積を同時に加工するための微細加工装置であり、被加工物の凹凸を反転した形状の加工用電極を使用して加工する微細加工装置を例に挙げて説明する。
【0101】
図13は、本発明に係る微細加工装置の第15の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。図例は、表面にグレーティング状の溝を形成したシリコン基板を加工用電極90として使用する場合を示している。このような加工用電極90を用いた微細加工装置においても、被加工物であるSi基板1に対する加工を行う際には、加工用電極90のグレーティング表面に生成したエバネセント波を利用して、Si基板1に正孔を励起して電解研磨を行う。
【0102】
このとき、微細加工装置では、Si基板1から漏洩した光をレンズ92を介して二次元イメージセンサ93で検出して、加工用電極90とSi基板1との間隔を測定する。そして、その測定結果に基づき、XYZステージ2で加工用電極90を移動させることによって、電荷研磨を行う際の制御を行う。
【0103】
一方、加工用電極90の上方側には、導光機能を有するプリズム94が透明な接着剤によって装着されている。そして、プリズム94の加工用電極90と反対側の面には、そのプリズム94よりも屈折率が低く透明なフィルム(ただし不図示)が貼付されている。このフィルムがXYZステージ2に真空吸着または静電吸着されることで、加工用電極90がXYZステージ2上に固定されることになる。
【0104】
また、被加工物であるSi基板1は、デフォーマブルホルダ95に静電吸着または真空吸着されている。デフォーマブルホルダ95は、その表面形状を変形する機能を有したものである。具体的には、例えばプラスチック等の弾性のある材料からなり、その両面に形成された電極間に電圧を印加することによって、静電気力で厚さが変化するように構成されている。
【0105】
このような構成の微細加工装置において、加工用電極90には、Si基板1に吸収されて正孔を励起するための加工用レーザ光と、加工用電極90とSi基板1との間隔および面内方向位置ずれを測定するための測定用レーザ光とが、それぞれ加工用光学系の光源5および測定用レーザ光の光源96から同時に入射する。これらの各レーザ光は、各光源5,96からそれぞれ独立して光ファイバ等でプリズム94の端面に導かれ、そのプリズム94に入射する。そして、グレーティングが加工された加工用電極90の表面とプリズム94とフィルムの界面の間で全反射を繰り返しながら伝播する。これらの過程を経て、加工用電極90におけるグレーティングの表面には、両レーザ光のエバネセント波が励起されるのである。
【0106】
このとき、加工用レーザ光によるエバネセント波を利用して、Si基板1に正孔を励起して電解研磨を行うことは、上述した各実施形態で説明した通りである。一方、測定用レーザ光は、Si基板1に加工用電極90が接近してエバネセント波が漏洩すると、そのSi基板1およびデフォーマブルホルダ95を透過して、二次元イメージセンサ93に到達する。そして、二次元イメージセンサ93では、レンズ92により被加工面が結像されて、Si基板1と加工用電極90との間隔が二次元の光強度分布として測定される。したがって、この測定結果を基に、加工面内の間隔が一様な分布になるようデフォーマブルホルダ95でSi基板1を変形させれば、そのSi基板1に対して均一な加工を行い得るようになる。
【0107】
図14は、第15の実施の形態で説明した微細加工装置によって加工した被加工物の一具体例を示す模式図である。図例のように、本実施形態で説明した微細加工装置を用いれば、先端がナノメータサイズの針をアレイ状に配置したもの、すなわち微細加工装置における加工用電極として用いて好適なものを加工することができる。
【0108】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る微細加工装置および微細加工方法は、加工用針の先端を尖鋭に形成していることから、その加工用針に光を入射すると、その先端からエバネセント波が染み出すように生成される。したがって、そのエバネセント波で被加工物に正孔を励起し、そのときに加工用針と被加工物との間に電流を流して電解研磨を行うことで、その電解研磨を行う領域を加工用針の先端近傍のみに限定することが可能になる。つまり、加工用針先端に局在するエバネセント波を利用することで、LSIやマイクロオプティックス等で必要となるサブミクロン程度以下の微細加工を高精度に行うことができ、また高精度な三次元加工も行えるようになる、といった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る微細加工装置の第1の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る微細加工装置の第1の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における光学系の構成例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る微細加工装置の第2の実施の形態における他の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明に係る微細加工装置の第3の実施の形態における要部の構成例を示す模式図(その1)である。
【図7】本発明に係る微細加工装置の第3の実施の形態における要部の構成例を示す模式図(その2)である。
【図8】本発明に係る微細加工装置の第4の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図9】本発明に係る微細加工装置の第5の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。
【図10】
本発明に係る微細加工装置の第11の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図11】
本発明に係る微細加工装置の第12の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図12】
本発明に係る微細加工装置の第13の実施の形態における要部の構成例を示す模式図である。
【図13】
本発明に係る微細加工装置の第15の実施の形態における概略構成例を示す模式図である。
【図14】
第15の実施の形態で説明した微細加工装置によって加工した被加工物の一具体例を示す模式図である。
【符号の説明】
1…Si基板、2…XYZステージ、3…Si針、4…電源、5…光源、10…HF溶液、11…容器、20,30,90…加工用電極、31…フォトニック結晶、32…グレーティング構造、40…ピエゾアクチュエータ、61…注入経路
Claims (19)
- フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物と対向する加工用針と、前記被加工物と前記加工用針との間に電流を流すための電源と、前記加工用針に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置において、
前記加工用針の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物に正孔を励起する
ことを特徴とする微細加工装置。 - 前記被加工物と前記加工用針との相対位置を変化させるため移動機構を備えることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 集積化された複数の加工用針からなる加工用集積化電極を備えることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記加工用集積化電極の表面に分光手段が設けられていることを特徴とする請求項3記載の微細加工装置。
- 前記加工用針を並進、傾斜または回転のうちの少なくとも一つの移動の機能を有したアクチュエータの先端に取り付けることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記加工用針は、当該加工用針と前記被加工物との間の距離を測定するためのプローブとしての機能をも兼ね備えることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記容器内の溶液を超臨界状態とするための加圧または加熱手段を備えることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記容器内の溶液は、炭酸ガスを混入したものであることを特徴とする請求項7記載の微細加工装置。
- 前記容器内の溶液からのガスの気化を抑制するための加圧手段を備えることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記電源は、前記被加工物と前記加工用針との間にパルス電流を流すものであることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記光学系は、パルスレーザによる光を前記加工用針に入射するものであることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記加工用針は、液体および気体を透過する材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記加工用針の一部に前記溶液の注入経路が設けられていることを特徴とする請求項12記載の微細加工装置。
- 前記加工用針の表面に気体の排気または前記溶液の交換を行うための溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記溝が疎水性を有する材料でコーティングされていることを特徴とする請求項14記載の微細加工装置。
- 前記加工用針の表面が気体吸着機能を有する材料でコーティングされていることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記加工用針自体が気体吸着機能を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- 前記溶液中に気体吸着機能を有する材料が混入されていることを特徴とする請求項1記載の微細加工装置。
- フッ化水素酸を含む溶液の容器と、前記容器内の溶液中にセットされた被加工物と対向する加工用針と、前記被加工物と前記加工用針との間に電流を流すための電源と、前記加工用針に光を入射するための光学系とを備える微細加工装置を用いて行う、前記被加工物と対する微細加工方法であって、
前記加工用針の先端を尖鋭に形成して、前記光学系からの光の入射に応じて前記先端にエバネセント波が生成されるようにし、前記エバネセント波で前記被加工物に正孔を励起することによって、前記加工用針近傍のみを電解研磨する
ことを特徴とする微細加工方法。
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- 2002-10-31 JP JP2002317558A patent/JP2004148458A/ja active Pending
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