JP2004145719A - 数値解析における境界条件設定方法、境界条件設定システム及び境界条件設定プログラム並びに媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】数値解析において、曲面形状の境界や斜めの境界などの任意の境界形状が存在する場合でも高精度な解を得ることが可能となるコンピュータによる数値解析における境界条件設定方法を提供することが課題である。
【解決手段】境界を含む要素内で、境界値を要素の内挿関数を用いて解析し、この内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数の変分がゼロとなるように境界の外側に位置する節点の値(例えば電位)を未知数とする部分連立方程式をプログラムにより求める境界条件設定方法、境界条件設定システム及びプログラムを提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】境界を含む要素内で、境界値を要素の内挿関数を用いて解析し、この内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数の変分がゼロとなるように境界の外側に位置する節点の値(例えば電位)を未知数とする部分連立方程式をプログラムにより求める境界条件設定方法、境界条件設定システム及びプログラムを提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状の異なる構造物が内在することにより曲面形状の境界や斜めの境界などの任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定方法であり、コンピュータによる数値計算技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
任意形状をした物体が存在する場での境界値問題の解析は、コンピュータの発展と共に電位分布解析や構造解析や流体解析などいろいろな現象の解析に適用されてきている。また、強度に関する設計などさまざまな分野へ適用されてきている。これらの解析は、任意形状の境界に対して一つの手段としてメッシュ(要素)を切り解析を行う方法である。
例えば、任意形状をした絶縁体に電位を付加した場合、電位分布(電界)が絶縁体を絶縁破壊する現象を解析したり、電界に耐えうるための設計強度を計算したり、一方耐えうる最大電界を解析することなどができる。高電圧トランス、マイクロモータもしくは電子回路など電界を解析して絶縁体を強化するなどに適用可能である。
また、真空内での電位分布の解析にも適用できる。真空内では、電界が大きくなると放電する可能性がある。したがって任意形状の絶縁体の電位差に関して距離を大きくするか、形状を変えるか、絶縁体を変更するとかの方法を検討しなければならない。形状を変えるには例えば半径を大きくするなどが考えられる。
さらに、任意形状の構造物に関しては、構造物に掛かる応力の解析などが考えられるが、構造物が引っ張り応力にどこまで耐えられるか、応力が構造物にどう掛かるかなどを正確に把握することができる。
流体の世界においては、例えば渦などによる渦損失を低減するための境界表面の解析を行うことができる。扇風機の羽の曲がり具合などを解析するにも適している。このように任意形状をした物体に関する解析や設計は、限界設計をするためには数値計算で精度を上げて実際に設計していく必要がある。実際に物を作って耐久テストなどをしていてはコストも時間も掛かり非効率的であることは言うまでもない。したがって数値解析における境界条件設定方法は有効な手段となっている。
【0003】
従来、任意形状をした物体がある場での境界値問題を解く方法としては、有限要素法や有限体積法がある。一方、境界非適合型の解析方法としては差分法がある。さらに、上記解析手法を改良した手法としては、有限被覆法やImmersed Boundary法などの方法がある。(例えば非特許文献1や非特許文献2参照)
【0004】
【非特許文献1】
大坪英臣、他著「有限被覆法による3次元ソリッドボクセル解析の精度コントロール」計算機工学講演会論文集、Vol.3、1998年、日本計算工学会出版
【非特許文献2】
小野謙二著「設計における直交格子法の利用」ながれ21、2002年ページ16−25、日本流体力学会出版
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来法の有限要素法或いは有限体積法では任意形状をした境界にメッシュ(要素)を適合させることにより、境界値を直接取り扱える利点があるが、メッシュ(要素)が直方体からずれるため、解析精度が悪くなるという問題点がある。一方、差分法では、従来から直交メッシュを使用しているが、直交メッシュの場合、任意曲面に適合させた境界を得ることが困難であり、任意曲面に対しては凹凸のある面で近似することになり部分的に凹凸のある解析結果となり、やはり精度を悪化させる。これに対し、上記問題点を解決する方法として有限被覆法やImmersed Boundary 法が提案されてきた。しかし、有限被覆法は部分的に小さな相似系のメッシュを曲面近傍に張る方法で、精度は改善されるがやはり凹凸が根本的に解決されるわけではなく最終的凹凸による解への影響は残る問題点がある。また、Immersed Boundary 法は境界点で境界条件を満たすように外力を導入することにより計算精度を改善する方法であるが、誤差が最小になることは保証されていない問題点がある。以上のように、従来方法では、任意曲面の近似精度を上げるとメッシュの長方形からのずれのために解析精度が悪化したり、逆に解析精度を上げるため、メッシュを直交化させると、境界面の近似精度悪化による解析精度を悪化させるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、数値解析において、曲面形状を有する境界や斜めの境界などの任意の境界形状が存在する場合、解析対象の境界面或いは境界線と、物理現象をコンピュータで数値解析するために解析対象を分割することにより生成される要素の面或いは辺が一致しない場合でも高精度な解を得ることが可能となるコンピュータによる数値解析における境界条件設定方法を提供することが課題である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムは、以下の方法で境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析できるようにしたことである。
すなわち、数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、前記境界面或いは境界線を含む要素内で、境界面或いは境界線上の値である境界値を要素の内挿関数を用いてコンピュータで解析できる。
また、内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析できる。
そして、前記汎関数を極小化するステップとして、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析できる。
さらに、前記汎関数の変分をゼロとするステップとして、前記汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析できるようにしたことである。
【0008】
したがって、本発明の数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムは、曲面形状の境界や斜めの境界などの任意の境界形状が存在する場合、解析対象の境界面或いは境界線と、物理現象をコンピュータで数値解析するために解析対象を分割することにより生成される要素の面或いは辺が一致しない場合でも高精度な解を得ることが可能となるコンピュータによる数値解析における境界条件設定方法及びプログラムを提供することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の数値解析における境界条件設定方法、境界条件設定システムを詳細に説明する。
[数値解析における境界条件設定システム]
図1は本発明の一実施の形態に係る境界条件設定システム1−0の構成図である。境界条件設定システム1−0は、境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定システムであって、数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合においても、高精度な解を得ることが可能となるコンピュータによる数値解析における境界条件設定システムを提供するものである。
【0010】
図1に示すように、境界条件設定システム1−0は、要素の内挿関数を用いて解析する内挿関数解析手段1−1と、要素の節点の値を求めて解析する汎関数極小化手段1−2と、汎関数変分ゼロ手段1−3と、部分連立方程式を用いて解析する部分連立方程式解析手段1−4と、境界条件入力手段1−5と、解析した結果などを表示する表示手段1−6とで構成される。また、これら境界条件入力手段1−5や、表示手段1−6などの手段を制御する制御手段1−7と、各種のデータを記憶することができる記憶手段1−8を含んで構成される。
【0011】
表示手段1−6は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode−Ray Tube)などを利用したモニタを使用することができる。制御手段1−7は、中央処理装置や記憶装置などを有し、境界条件設定プログラムなど所定のプログラムが展開・起動することで各種の処理を実現することができる。境界条件入力手段1−5は、キーボード、マウス、ペンタブレットなどで横成される。記憶手段1−8は、HDD(Hard Disk Drive)装置などにより構成される。
【0012】
内挿関数解析手段1−1は、電位分布や応力や構造物の強度などを数値解析するために、曲面形状の境界や斜めの境界などの任意の境界形状を分割することにより生成されるメッシュ(要素)の面或いは辺が境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、境界面或いは境界線を含む要素内で、境界上の値である境界値をメッシュ(要素)の内挿関数を用いて解析する手段である。内挿関数とは、メッシュ(要素)のある点から境界面方向に向かって(内挿)境界面上の任意の点とを結ぶ関数である。
【0013】
汎関数極小化手段1−2は、内挿関数解析手段1−1により内挿関数を用いて計算した境界値と、境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体(物体)の外側に位置する節点の値を求めて解析する手段である。
【0014】
汎関数変分ゼロ手段は1−3、汎関数を極小化する手段として、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析する手段である。
【0015】
部分連立方程式解析手段1−4は、汎関数の変分をゼロとする方法として、汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析する手段である。
【0016】
境界条件入力手段1−5は、数値解析するための境界条件を入力する手段であり、表示手段1−6は、境界条件入力に基づいて解析した結果などを表示する手段である。
【0017】
〔境界条件設定方法の第1の実施形態:ディリクレ境界条件での境界条件設定方法〕
本発明における実施形態を図2に示す。本実施形態は、例えば電位分布などの解析領域を直交メッシュで分割した場合である。解析領域は境界面1と境界面2により囲まれた部分である。本実施形態は、境界条件として境界面の電位を与えるディリクレ境界値問題の場合を示す。ディリクレ境界値問題とは、後述するノイマン境界やロビン境界に対して境界値として境界上の電位値のように境界値そのものを条件として与える方法である。
【0018】
なお、以下に説明する方法は、コンピュータを用いて、境界条件設定プログラムとしてコンピュータのプログラムで実現することができる。また、これら境界条件設定プログラムは、記録媒体に記録することができる。
【0019】
本発明の数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムは、境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムであって、数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、前記境界面或いは境界線を含む要素内で、境界面或いは境界線上の値である境界値を要素の内挿関数を用いて解析することを特徴としている。
【0020】
これにより、境界形状を意識することなく、任意形状の物体の境界における電位分布や応力など物理量を計算するためにメッシュ(要素)を分割生成できるため、メッシュ生成のための時間を大幅に短縮できる効果がある。
【0021】
図2において、解析領域における要素は、境界面の有無により領域内部の要素6と境界上の要素4に分類される。境界上の要素4は解析領域に含まれない仮想節点3と解析領域に含まれる実節点5とにより構成される。図3は、境界上の要素4を拡大した図である。図3に示す様に各節点に便宜上反時計方向に節点番号を1、2、3、4と付け、節点上の値、例えば電界解析における電位をφ1、φ2、φ3、φ4とする(三次元の場合はφ8まである)。また、境界上の求める点(電位)の座標を(x,h)とし、このときの内挿関数を節点番号に対応して、N1(x,h)、N2(x,h)、N3(x,h)及びN4(x,h)とすると、(三次元の場合N1(x,h,z)、N2(x,h,z)、N3(x,h,z)3‥‥N8(x,h,z))境界面が要素内の無次元座標(x,h)(三次元では(x,h,z))を通るときの境界面上の値、例えば電位φは上記節点値を用いて(1式)、(1’式)で表わせる。境界条件設定方法は、この要素の内挿関数を用いて解析することを特徴とする方法である(請求項1)。また、境界条件設定プログラムは、この要素の内挿関数を用いて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項3)。x及びhは要素の大きさを1として規格化された無次元座標である。なお、内挿関数とは、ある点から(この例ではφ)境界面方向に向かって(内挿)境界面上の任意の点とを結ぶ関数である。
【0022】
【数1】
【0023】
内挿関数の1次式の例として、二次元の場合を示すと次のようになる。
【0024】
【数2】
【0025】
また、数値解析における境界条件設定プログラムは、内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体(物体)の外側に位置する節点の値を求めて解析することを特徴とする。
【0026】
これにより、条件として与えた電位分布や応力の境界値と計算した結果得られる境界値の誤差を最小化できる効果があり、精度の高い解析が得られる。
【0027】
さて、境界上の値として、図2に示すように円筒の外面(境界面1)ではφout、また円筒の内面(境界面2)ではφinのように各面で一様に電位を与える場合を考える。ここで、境界面の値を代表してφoutを取る。この値と(1式)で決まる値の差が境界面1での境界値の誤差となる。そこで、境界面全体に渡ってこの誤差のノルム(ある空間内での距離を表す尺度であり例えば絶対値、どういった方法で距離を測るかにより2乗で測るか3乗で測るかn乗で測るかなどの測り方がある)が最小になる様に各節点値φ1、φ2、φ3、φ4を選べば良い。有限要素法では一般に2乗誤差を用いるため、ここではノルムとしては変分操作がしやすいL2ノルム(2乗誤差)を用いる。すなわち、次の汎関数を極小化する。境界条件設定プログラムは、この汎関数が極小となるように境界を形成する形成体(物体)の外側に位置する節点の値を求めて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項4)。
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、Γmは境界上を表す。すなわち、(2式)は、与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差の2乗を境界面上の全てに渡って積算したものである。これは、境界面上の与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差が最小になるように各節点を選んでメッシュ分割をすることにより各節点の値(電位φ)を精度の高いものとすることができる。
【0030】
さらに、数値解析における境界条件設定プログラムは、前記汎関数を極小化するステップとして、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析することを特徴とする。
【0031】
これにより、境界上の誤差を最小化した仮想節点の値を計算できる効果がある。すなわち、境界面上の与えた電位分布や応力と計算上の電位分布や応力との誤差が最小になるように要素の各節点を選んで、各節点の値(電位など)を精度の高いものとすることができる。
【0032】
(2式)を3次元で考え各節点の電位φ1、φ2、φ3、‥‥φ8で偏微分すると次式を得る。なお、各節点の電位φ1、φ2、φ3、‥‥φ8で偏微分することは、φ1、φ2、φ3、‥‥φ8の電位変化に対して境界面上の与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差がどう変化するかをあらわしている。
【0033】
【数4】
【0034】
(3式)をゼロと等値にすると次の(4式)の関係式を得る。すなわち境界面上の与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差がゼロになるようにして節点の値(電位)を求めようとするものである。境界条件設定プログラムは、この汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項5)。
【0035】
【数5】
【0036】
他方、領域内部の要素6内では、通常の有限要素法の関係式が適用できる。
すなわち、実節点iに関して次の式が成り立つ。ここで、添え字iは着目する節点を表し、jは着目節点iを含む要素を構成する節点を表す。
【0037】
【数6】
【0038】
ここで、Ωは要素内での体積積分を表す。また、仮想節点iでは、上式のかわりに(4式)を用いると、全ての節点に関する連立一次方程式を得る。
【0039】
【数7】
【0040】
ここで、節点iが実節点の場合は次の(a式)のように、節点iが仮想節点の場合は次の(b式)のようになる。
【0041】
【数8】
【0042】
aijは、前述の内挿関数に関係するものであり、したがって電位を与える物体の形状やメッシュ分割などによって計算される係数であり、biは、式からわかるように与えられた境界条件の値(電位φout)に係数を掛けたものである。なおφiは、求める各節点の値(電位)である。
【0043】
数値解析における境界条件設定プログラムは、前記汎関数の変分をゼロとするステップとして、前記汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析することを特徴とする。
【0044】
これにより、任意形状の境界条件を満たした物体の電界や応力など物理量をメッシュ或いは要素形状が境界に一致しない場合でも計算できる効果がある。
【0045】
(6式)を解くことにより実節点及び仮想節点上の値(例えば電位)を求めることができる。境界条件設定プログラムは、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項6)。
【0046】
図4は、(6式)を用いて解いた結果であり、φout=1000V、φin=0Vとしたときの二重円筒内の電位分布解析結果を示す図である。図4に示す様に計算の結果各等電位線は、φout及びφinの境界条件に対して平行に計算されており、正しく境界条件を反映した解が得られていることがわかる。すなわち、本発明により精度良く解析でき、解析結果を用いて効率良い設計を行うことができる。
【0047】
一方、図5は従来法により、電位分布解析を行った結果である。図5は円筒内面の部分を拡大したものである。解析条件は、図4の場合と同様であるが、メッシュの分割数はほぼ倍となっている。メッシュ分割数が増えたにも関わらず、内面近傍ではメッシュ形状の影響により、等電位線は波うっている。この影響はメッシュが境界から離れるに従い減少するが、2メッシュ程度離れたところまで及んでいる。このように、境界に対し、本発明のような対策を取らない場合、境界近傍で解の波うちが生じ解析精度が悪い。
【0048】
以上、本実施形態によれば、電位固定のディリクレ境界の場合、物理境界面と要素分割に伴う要素境界面が一致しない場合でも、要素形状の影響を受けることなく(要素形状に無関係に)解を得ることができる。
【0049】
〔境界条件設定方法の第2の実施形態:ノイマン境界条件での境界条件設定方法〕
図6は、第2の実施形態を示した図である。この場合、第1の実施形態の境界条件に加えて、境界面7及び境界面8にノイマン境界の条件を付加したものである。ノイマン境界は、解析条件として境界上での勾配を与える方法である。ノイマン境界では次の様に取り扱う。要素内の電位勾配は(1式)、又は(1’式)を微分することにより得られる。ここでは、三次元の場合を示す。
【0050】
【数9】
【0051】
境界面でのフラックス∂φ/∂nは面の法線ベクトルを(nx,ny,nz)とすると次式で表わせる。
【0052】
【数10】
【0053】
(8式)の∂φ/∂nを(2式)のφの代わりに代入して変分値をゼロと置くと次式を得る。
【0054】
【数11】
【0055】
すなわち、ノイマン境界では解くべき方程式は(9式)となる。(9式)はコンピュータの数値計算技術としてプログラムで解くことができる。この式を(6式)の仮想節点iの所に代入して計算すると解ける。図4は、図6の境界面7及び境界面8にフラックス∂φ/∂n=0を代入して得られた結果でもある。図4に示すように、境界面7及び境界面8の近傍では等電位線が境界に垂直に交わっており、この境界ではフラックスが0であることが示されている。第2の実施形態によれば、本発明はノイマン境界条件でも有効である。
【0056】
以上のように本発明は、ディリクレ(第一種)境界及びノイマン(第二種)境界に対しても有効であるので、上記二つの条件が組み合わさったロビン(第三種)境界に対しても有効である。なお、ロビン境界とは、与える条件としてディレクレ境界とノイマン境界の条件にそれぞれ係数をかけた1次式で与えるものである。
【0057】
図7は、要素分割が直交系でない場合の実施形態である。図7のように二つの板が斜めに交わって表面の一部が曲線(境界面9)をなしているような場合では、直交系で要素分割することは分割数が増えて得策でない。そこで、図7のように平行四辺形の要素を用いて分割すれば要素数が少なく効率的である。このような場合でも、仮想節点を図のように設けることにより、本発明による境界条件を設定でき、歪の少ない要素で且つ精度の良い解が得られる。
【0058】
以上説明した本発明は、前記した実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、本発明は電位分布(電界)解析を実施形態として示したが、他の物理系例えば構造解析、流体解析などにも適用できる。その適用方法は、上記(1式)から(9式)の電位φを変位ベクトルに変えることにより構造解析へ適用できる。同様に、電位φを流速ベクトルに変えることにより流体解析へも適用できる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、(1)境界の形状を気にすることなく要素分割を行うことが可能になるため、形状データ作成から解析用要素分割のデータ作成までの時間が短縮できる効果がある。(2)要素形状が数値解析上の理想形状に近い形のままにできるため、計算精度が高い効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の境界条件設定システムの構成図である。
【図2】本発明をディリクレ境界条件に適用したときの要素分割の実施形態を示す図である。
【図3】要素内に境界があるときの境界上の点における物理量の内挿方法の説明図である。
【図4】本発明の適用例の計算結果を示す図である。
【図5】従来法による計算結果を示す図である。
【図6】本発明をノイマン境界条件に適用したときの要素分割の実施形態を示す図である。
【図7】直交系以外の要素形状の場合の適用例を示す図である。
【符号の簡単な説明】
1−0 境界条件設定システム
1−1 内挿関数解析手段
1−2 汎関数極小化手段
1−3 汎関数変分ゼロ手段
1−4 部分連立方程式解析手段
1−5 境界条件入力手段
1−6 表示手段
1 境界面 ディリクレ境界φ=φout
2 境界面 ディリクレ境界φ=φin
3 仮想節点
4 境界上の要素
5 実節点
6 領域内部の要素
7 境界面 ノイマン境界 ∂φ/∂n=0
8 境界面 ノイマン境界 ∂φ/∂n=0
9 境界面
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状の異なる構造物が内在することにより曲面形状の境界や斜めの境界などの任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定方法であり、コンピュータによる数値計算技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
任意形状をした物体が存在する場での境界値問題の解析は、コンピュータの発展と共に電位分布解析や構造解析や流体解析などいろいろな現象の解析に適用されてきている。また、強度に関する設計などさまざまな分野へ適用されてきている。これらの解析は、任意形状の境界に対して一つの手段としてメッシュ(要素)を切り解析を行う方法である。
例えば、任意形状をした絶縁体に電位を付加した場合、電位分布(電界)が絶縁体を絶縁破壊する現象を解析したり、電界に耐えうるための設計強度を計算したり、一方耐えうる最大電界を解析することなどができる。高電圧トランス、マイクロモータもしくは電子回路など電界を解析して絶縁体を強化するなどに適用可能である。
また、真空内での電位分布の解析にも適用できる。真空内では、電界が大きくなると放電する可能性がある。したがって任意形状の絶縁体の電位差に関して距離を大きくするか、形状を変えるか、絶縁体を変更するとかの方法を検討しなければならない。形状を変えるには例えば半径を大きくするなどが考えられる。
さらに、任意形状の構造物に関しては、構造物に掛かる応力の解析などが考えられるが、構造物が引っ張り応力にどこまで耐えられるか、応力が構造物にどう掛かるかなどを正確に把握することができる。
流体の世界においては、例えば渦などによる渦損失を低減するための境界表面の解析を行うことができる。扇風機の羽の曲がり具合などを解析するにも適している。このように任意形状をした物体に関する解析や設計は、限界設計をするためには数値計算で精度を上げて実際に設計していく必要がある。実際に物を作って耐久テストなどをしていてはコストも時間も掛かり非効率的であることは言うまでもない。したがって数値解析における境界条件設定方法は有効な手段となっている。
【0003】
従来、任意形状をした物体がある場での境界値問題を解く方法としては、有限要素法や有限体積法がある。一方、境界非適合型の解析方法としては差分法がある。さらに、上記解析手法を改良した手法としては、有限被覆法やImmersed Boundary法などの方法がある。(例えば非特許文献1や非特許文献2参照)
【0004】
【非特許文献1】
大坪英臣、他著「有限被覆法による3次元ソリッドボクセル解析の精度コントロール」計算機工学講演会論文集、Vol.3、1998年、日本計算工学会出版
【非特許文献2】
小野謙二著「設計における直交格子法の利用」ながれ21、2002年ページ16−25、日本流体力学会出版
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来法の有限要素法或いは有限体積法では任意形状をした境界にメッシュ(要素)を適合させることにより、境界値を直接取り扱える利点があるが、メッシュ(要素)が直方体からずれるため、解析精度が悪くなるという問題点がある。一方、差分法では、従来から直交メッシュを使用しているが、直交メッシュの場合、任意曲面に適合させた境界を得ることが困難であり、任意曲面に対しては凹凸のある面で近似することになり部分的に凹凸のある解析結果となり、やはり精度を悪化させる。これに対し、上記問題点を解決する方法として有限被覆法やImmersed Boundary 法が提案されてきた。しかし、有限被覆法は部分的に小さな相似系のメッシュを曲面近傍に張る方法で、精度は改善されるがやはり凹凸が根本的に解決されるわけではなく最終的凹凸による解への影響は残る問題点がある。また、Immersed Boundary 法は境界点で境界条件を満たすように外力を導入することにより計算精度を改善する方法であるが、誤差が最小になることは保証されていない問題点がある。以上のように、従来方法では、任意曲面の近似精度を上げるとメッシュの長方形からのずれのために解析精度が悪化したり、逆に解析精度を上げるため、メッシュを直交化させると、境界面の近似精度悪化による解析精度を悪化させるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、数値解析において、曲面形状を有する境界や斜めの境界などの任意の境界形状が存在する場合、解析対象の境界面或いは境界線と、物理現象をコンピュータで数値解析するために解析対象を分割することにより生成される要素の面或いは辺が一致しない場合でも高精度な解を得ることが可能となるコンピュータによる数値解析における境界条件設定方法を提供することが課題である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムは、以下の方法で境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析できるようにしたことである。
すなわち、数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、前記境界面或いは境界線を含む要素内で、境界面或いは境界線上の値である境界値を要素の内挿関数を用いてコンピュータで解析できる。
また、内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析できる。
そして、前記汎関数を極小化するステップとして、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析できる。
さらに、前記汎関数の変分をゼロとするステップとして、前記汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析できるようにしたことである。
【0008】
したがって、本発明の数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムは、曲面形状の境界や斜めの境界などの任意の境界形状が存在する場合、解析対象の境界面或いは境界線と、物理現象をコンピュータで数値解析するために解析対象を分割することにより生成される要素の面或いは辺が一致しない場合でも高精度な解を得ることが可能となるコンピュータによる数値解析における境界条件設定方法及びプログラムを提供することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の数値解析における境界条件設定方法、境界条件設定システムを詳細に説明する。
[数値解析における境界条件設定システム]
図1は本発明の一実施の形態に係る境界条件設定システム1−0の構成図である。境界条件設定システム1−0は、境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定システムであって、数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合においても、高精度な解を得ることが可能となるコンピュータによる数値解析における境界条件設定システムを提供するものである。
【0010】
図1に示すように、境界条件設定システム1−0は、要素の内挿関数を用いて解析する内挿関数解析手段1−1と、要素の節点の値を求めて解析する汎関数極小化手段1−2と、汎関数変分ゼロ手段1−3と、部分連立方程式を用いて解析する部分連立方程式解析手段1−4と、境界条件入力手段1−5と、解析した結果などを表示する表示手段1−6とで構成される。また、これら境界条件入力手段1−5や、表示手段1−6などの手段を制御する制御手段1−7と、各種のデータを記憶することができる記憶手段1−8を含んで構成される。
【0011】
表示手段1−6は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode−Ray Tube)などを利用したモニタを使用することができる。制御手段1−7は、中央処理装置や記憶装置などを有し、境界条件設定プログラムなど所定のプログラムが展開・起動することで各種の処理を実現することができる。境界条件入力手段1−5は、キーボード、マウス、ペンタブレットなどで横成される。記憶手段1−8は、HDD(Hard Disk Drive)装置などにより構成される。
【0012】
内挿関数解析手段1−1は、電位分布や応力や構造物の強度などを数値解析するために、曲面形状の境界や斜めの境界などの任意の境界形状を分割することにより生成されるメッシュ(要素)の面或いは辺が境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、境界面或いは境界線を含む要素内で、境界上の値である境界値をメッシュ(要素)の内挿関数を用いて解析する手段である。内挿関数とは、メッシュ(要素)のある点から境界面方向に向かって(内挿)境界面上の任意の点とを結ぶ関数である。
【0013】
汎関数極小化手段1−2は、内挿関数解析手段1−1により内挿関数を用いて計算した境界値と、境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体(物体)の外側に位置する節点の値を求めて解析する手段である。
【0014】
汎関数変分ゼロ手段は1−3、汎関数を極小化する手段として、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析する手段である。
【0015】
部分連立方程式解析手段1−4は、汎関数の変分をゼロとする方法として、汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析する手段である。
【0016】
境界条件入力手段1−5は、数値解析するための境界条件を入力する手段であり、表示手段1−6は、境界条件入力に基づいて解析した結果などを表示する手段である。
【0017】
〔境界条件設定方法の第1の実施形態:ディリクレ境界条件での境界条件設定方法〕
本発明における実施形態を図2に示す。本実施形態は、例えば電位分布などの解析領域を直交メッシュで分割した場合である。解析領域は境界面1と境界面2により囲まれた部分である。本実施形態は、境界条件として境界面の電位を与えるディリクレ境界値問題の場合を示す。ディリクレ境界値問題とは、後述するノイマン境界やロビン境界に対して境界値として境界上の電位値のように境界値そのものを条件として与える方法である。
【0018】
なお、以下に説明する方法は、コンピュータを用いて、境界条件設定プログラムとしてコンピュータのプログラムで実現することができる。また、これら境界条件設定プログラムは、記録媒体に記録することができる。
【0019】
本発明の数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムは、境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定方法及び境界条件設定プログラムであって、数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、前記境界面或いは境界線を含む要素内で、境界面或いは境界線上の値である境界値を要素の内挿関数を用いて解析することを特徴としている。
【0020】
これにより、境界形状を意識することなく、任意形状の物体の境界における電位分布や応力など物理量を計算するためにメッシュ(要素)を分割生成できるため、メッシュ生成のための時間を大幅に短縮できる効果がある。
【0021】
図2において、解析領域における要素は、境界面の有無により領域内部の要素6と境界上の要素4に分類される。境界上の要素4は解析領域に含まれない仮想節点3と解析領域に含まれる実節点5とにより構成される。図3は、境界上の要素4を拡大した図である。図3に示す様に各節点に便宜上反時計方向に節点番号を1、2、3、4と付け、節点上の値、例えば電界解析における電位をφ1、φ2、φ3、φ4とする(三次元の場合はφ8まである)。また、境界上の求める点(電位)の座標を(x,h)とし、このときの内挿関数を節点番号に対応して、N1(x,h)、N2(x,h)、N3(x,h)及びN4(x,h)とすると、(三次元の場合N1(x,h,z)、N2(x,h,z)、N3(x,h,z)3‥‥N8(x,h,z))境界面が要素内の無次元座標(x,h)(三次元では(x,h,z))を通るときの境界面上の値、例えば電位φは上記節点値を用いて(1式)、(1’式)で表わせる。境界条件設定方法は、この要素の内挿関数を用いて解析することを特徴とする方法である(請求項1)。また、境界条件設定プログラムは、この要素の内挿関数を用いて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項3)。x及びhは要素の大きさを1として規格化された無次元座標である。なお、内挿関数とは、ある点から(この例ではφ)境界面方向に向かって(内挿)境界面上の任意の点とを結ぶ関数である。
【0022】
【数1】
【0023】
内挿関数の1次式の例として、二次元の場合を示すと次のようになる。
【0024】
【数2】
【0025】
また、数値解析における境界条件設定プログラムは、内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体(物体)の外側に位置する節点の値を求めて解析することを特徴とする。
【0026】
これにより、条件として与えた電位分布や応力の境界値と計算した結果得られる境界値の誤差を最小化できる効果があり、精度の高い解析が得られる。
【0027】
さて、境界上の値として、図2に示すように円筒の外面(境界面1)ではφout、また円筒の内面(境界面2)ではφinのように各面で一様に電位を与える場合を考える。ここで、境界面の値を代表してφoutを取る。この値と(1式)で決まる値の差が境界面1での境界値の誤差となる。そこで、境界面全体に渡ってこの誤差のノルム(ある空間内での距離を表す尺度であり例えば絶対値、どういった方法で距離を測るかにより2乗で測るか3乗で測るかn乗で測るかなどの測り方がある)が最小になる様に各節点値φ1、φ2、φ3、φ4を選べば良い。有限要素法では一般に2乗誤差を用いるため、ここではノルムとしては変分操作がしやすいL2ノルム(2乗誤差)を用いる。すなわち、次の汎関数を極小化する。境界条件設定プログラムは、この汎関数が極小となるように境界を形成する形成体(物体)の外側に位置する節点の値を求めて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項4)。
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、Γmは境界上を表す。すなわち、(2式)は、与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差の2乗を境界面上の全てに渡って積算したものである。これは、境界面上の与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差が最小になるように各節点を選んでメッシュ分割をすることにより各節点の値(電位φ)を精度の高いものとすることができる。
【0030】
さらに、数値解析における境界条件設定プログラムは、前記汎関数を極小化するステップとして、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析することを特徴とする。
【0031】
これにより、境界上の誤差を最小化した仮想節点の値を計算できる効果がある。すなわち、境界面上の与えた電位分布や応力と計算上の電位分布や応力との誤差が最小になるように要素の各節点を選んで、各節点の値(電位など)を精度の高いものとすることができる。
【0032】
(2式)を3次元で考え各節点の電位φ1、φ2、φ3、‥‥φ8で偏微分すると次式を得る。なお、各節点の電位φ1、φ2、φ3、‥‥φ8で偏微分することは、φ1、φ2、φ3、‥‥φ8の電位変化に対して境界面上の与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差がどう変化するかをあらわしている。
【0033】
【数4】
【0034】
(3式)をゼロと等値にすると次の(4式)の関係式を得る。すなわち境界面上の与えた電位φoutと計算上の電位φとの誤差がゼロになるようにして節点の値(電位)を求めようとするものである。境界条件設定プログラムは、この汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項5)。
【0035】
【数5】
【0036】
他方、領域内部の要素6内では、通常の有限要素法の関係式が適用できる。
すなわち、実節点iに関して次の式が成り立つ。ここで、添え字iは着目する節点を表し、jは着目節点iを含む要素を構成する節点を表す。
【0037】
【数6】
【0038】
ここで、Ωは要素内での体積積分を表す。また、仮想節点iでは、上式のかわりに(4式)を用いると、全ての節点に関する連立一次方程式を得る。
【0039】
【数7】
【0040】
ここで、節点iが実節点の場合は次の(a式)のように、節点iが仮想節点の場合は次の(b式)のようになる。
【0041】
【数8】
【0042】
aijは、前述の内挿関数に関係するものであり、したがって電位を与える物体の形状やメッシュ分割などによって計算される係数であり、biは、式からわかるように与えられた境界条件の値(電位φout)に係数を掛けたものである。なおφiは、求める各節点の値(電位)である。
【0043】
数値解析における境界条件設定プログラムは、前記汎関数の変分をゼロとするステップとして、前記汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析することを特徴とする。
【0044】
これにより、任意形状の境界条件を満たした物体の電界や応力など物理量をメッシュ或いは要素形状が境界に一致しない場合でも計算できる効果がある。
【0045】
(6式)を解くことにより実節点及び仮想節点上の値(例えば電位)を求めることができる。境界条件設定プログラムは、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析することをコンピュータに実行させるプログラムである(請求項6)。
【0046】
図4は、(6式)を用いて解いた結果であり、φout=1000V、φin=0Vとしたときの二重円筒内の電位分布解析結果を示す図である。図4に示す様に計算の結果各等電位線は、φout及びφinの境界条件に対して平行に計算されており、正しく境界条件を反映した解が得られていることがわかる。すなわち、本発明により精度良く解析でき、解析結果を用いて効率良い設計を行うことができる。
【0047】
一方、図5は従来法により、電位分布解析を行った結果である。図5は円筒内面の部分を拡大したものである。解析条件は、図4の場合と同様であるが、メッシュの分割数はほぼ倍となっている。メッシュ分割数が増えたにも関わらず、内面近傍ではメッシュ形状の影響により、等電位線は波うっている。この影響はメッシュが境界から離れるに従い減少するが、2メッシュ程度離れたところまで及んでいる。このように、境界に対し、本発明のような対策を取らない場合、境界近傍で解の波うちが生じ解析精度が悪い。
【0048】
以上、本実施形態によれば、電位固定のディリクレ境界の場合、物理境界面と要素分割に伴う要素境界面が一致しない場合でも、要素形状の影響を受けることなく(要素形状に無関係に)解を得ることができる。
【0049】
〔境界条件設定方法の第2の実施形態:ノイマン境界条件での境界条件設定方法〕
図6は、第2の実施形態を示した図である。この場合、第1の実施形態の境界条件に加えて、境界面7及び境界面8にノイマン境界の条件を付加したものである。ノイマン境界は、解析条件として境界上での勾配を与える方法である。ノイマン境界では次の様に取り扱う。要素内の電位勾配は(1式)、又は(1’式)を微分することにより得られる。ここでは、三次元の場合を示す。
【0050】
【数9】
【0051】
境界面でのフラックス∂φ/∂nは面の法線ベクトルを(nx,ny,nz)とすると次式で表わせる。
【0052】
【数10】
【0053】
(8式)の∂φ/∂nを(2式)のφの代わりに代入して変分値をゼロと置くと次式を得る。
【0054】
【数11】
【0055】
すなわち、ノイマン境界では解くべき方程式は(9式)となる。(9式)はコンピュータの数値計算技術としてプログラムで解くことができる。この式を(6式)の仮想節点iの所に代入して計算すると解ける。図4は、図6の境界面7及び境界面8にフラックス∂φ/∂n=0を代入して得られた結果でもある。図4に示すように、境界面7及び境界面8の近傍では等電位線が境界に垂直に交わっており、この境界ではフラックスが0であることが示されている。第2の実施形態によれば、本発明はノイマン境界条件でも有効である。
【0056】
以上のように本発明は、ディリクレ(第一種)境界及びノイマン(第二種)境界に対しても有効であるので、上記二つの条件が組み合わさったロビン(第三種)境界に対しても有効である。なお、ロビン境界とは、与える条件としてディレクレ境界とノイマン境界の条件にそれぞれ係数をかけた1次式で与えるものである。
【0057】
図7は、要素分割が直交系でない場合の実施形態である。図7のように二つの板が斜めに交わって表面の一部が曲線(境界面9)をなしているような場合では、直交系で要素分割することは分割数が増えて得策でない。そこで、図7のように平行四辺形の要素を用いて分割すれば要素数が少なく効率的である。このような場合でも、仮想節点を図のように設けることにより、本発明による境界条件を設定でき、歪の少ない要素で且つ精度の良い解が得られる。
【0058】
以上説明した本発明は、前記した実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、本発明は電位分布(電界)解析を実施形態として示したが、他の物理系例えば構造解析、流体解析などにも適用できる。その適用方法は、上記(1式)から(9式)の電位φを変位ベクトルに変えることにより構造解析へ適用できる。同様に、電位φを流速ベクトルに変えることにより流体解析へも適用できる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、(1)境界の形状を気にすることなく要素分割を行うことが可能になるため、形状データ作成から解析用要素分割のデータ作成までの時間が短縮できる効果がある。(2)要素形状が数値解析上の理想形状に近い形のままにできるため、計算精度が高い効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の境界条件設定システムの構成図である。
【図2】本発明をディリクレ境界条件に適用したときの要素分割の実施形態を示す図である。
【図3】要素内に境界があるときの境界上の点における物理量の内挿方法の説明図である。
【図4】本発明の適用例の計算結果を示す図である。
【図5】従来法による計算結果を示す図である。
【図6】本発明をノイマン境界条件に適用したときの要素分割の実施形態を示す図である。
【図7】直交系以外の要素形状の場合の適用例を示す図である。
【符号の簡単な説明】
1−0 境界条件設定システム
1−1 内挿関数解析手段
1−2 汎関数極小化手段
1−3 汎関数変分ゼロ手段
1−4 部分連立方程式解析手段
1−5 境界条件入力手段
1−6 表示手段
1 境界面 ディリクレ境界φ=φout
2 境界面 ディリクレ境界φ=φin
3 仮想節点
4 境界上の要素
5 実節点
6 領域内部の要素
7 境界面 ノイマン境界 ∂φ/∂n=0
8 境界面 ノイマン境界 ∂φ/∂n=0
9 境界面
Claims (7)
- 境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定方法であって、
数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、前記境界面或いは境界線を含む要素内で、境界面或いは境界線上の値である境界値を要素の内挿関数を用いて解析すること、
を特徴とする数値解析における境界条件設定方法。 - 境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定システムであって、
数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、前記境界面或いは境界線を含む要素内で、境界面或いは境界線上の値である境界値を要素の内挿関数を用いて解析する内挿関数解析手段と、
前記内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析する汎関数極小化手段と、
前記汎関数を極小化する手段として、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析する汎関数変分ゼロ手段と、
前記汎関数の変分をゼロとする手段として、前記汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析する部分連立方程式解析手段と、
前記数値解析するための境界条件を入力する境界条件入力手段と、
前記境界条件入力に基づいて解析した結果を表示する表示手段とを、
含むことにより解析することを特徴とする数値解析における境界条件設定システム。 - 境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定システムに用いられる境界条件設定プログラムであって、
数値解析するために場を分割することにより生成される要素の面或いは辺が前記境界形状の境界面或いは境界線と一致しない場合において、前記境界面或いは境界線を含む要素内で、境界面或いは境界線上の値である境界値を要素の内挿関数を用いて解析すること、
をコンピュータに実行させる境界条件設定プログラム。 - 前記境界条件設定プログラムは、内挿関数を用いて計算した境界値と境界条件として与えた境界値との差の2乗の境界に渡る積分である汎関数が極小となるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析すること、
をコンピュータに実行させる請求項3に記載の境界条件設定プログラム。 - 前記境界条件設定プログラムは、前記汎関数を極小化するステップとして、該汎関数の変分がゼロとなるように境界を形成する形成体の外側に位置する節点の値を求めて解析すること、
をコンピュータに実行させる請求項3又は請求項4に記載の境界条件設定プログラム。 - 前記境界条件設定プログラムは、前記汎関数の変分をゼロとするステップとして、前記汎関数を境界を含む要素の節点値により偏微分し、且つ偏微分結果をゼロと等値とすることにより得られる、節点の値を未知数とする部分連立方程式を用いて解析すること、
をコンピュータに実行させる請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の境界条件設定プログラム。 - 境界を形成する形成体が作る任意の境界形状が存在する場での物理現象をコンピュータを用いて解析する数値解析における境界条件設定システムに用いられる境界条件設定プログラムを記録する記録媒体であって、
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の境界条件設定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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Cited By (2)
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JP2011108113A (ja) * | 2009-11-19 | 2011-06-02 | Sumitomo Rubber Ind Ltd | 任意の実数群から探索点の最近傍値を探索する方法 |
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2002
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