JP2004135673A - エネルギートランスファー機能を有する化合物を利用したdnaの塩基配列決定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーター、例えば、蛍光性基を有し、かつ2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基又は3’-デオキシリボヌクレオチド残基を有する化合物。該化合物は、チェインターミネーター法のターミネーターとなり得る。二種類のレポーターは、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離を介して配置されている。チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、チェインターミネーション反応を上記ターミネーターを用いて行なう。
【選択図】なし
Description
また、2つの蛍光色素(ドナー色素、アクセプター色素)を用い、エネルギートランスファーの原理を用いて蛍光色素の量子収率を上げることができることが知られている。近年このエネルギートランスファーの原理を導入してオリゴヌクレオチドに2つの蛍光色素を共有結合させ、それをシークエンシング反応のプライマーとして用いるエネルギートランスファープライマーが開発された〔例えば、Nature Medicine, 2, 246-249(1996)、WO95/21266、特開平10-88124号〕。
1つはスキャン方式で、他の1つはイメージ方式である。いずれの場合も、少量のDNAでも検出できる高感度の検出計の出現が多本化を押し進める上で必要条件である。スキャン方式においては、キャピラリーの本数に係わらず一定の時間内にシークエンシングを終了する為には、キャピラリーの多本化が進めば進むほど1本のキャピラリーに割り当てられる時間が少なくなる。そのため、より高感度の検出計が必要となる。また、イメージ方式においても、検出計がカバーする視野の領域はキャピラリーの本数に係わらず一定である。キャピラリーの多本化を進めるためには光学素子の画素数を増やし、かつ1本のキャピラリーの直径を減らす必要がある。そのため、より高感度の検出計が必要となる。
DNAシークエンシングをより高速化するためには、多本化キャピラリーシークエンサーにおいてエネルギートランスファーのような量子収率の高い高感度検出系が必要である。しかし、それにもかかわらず、エネルギートランスファープライマーを用いる系では、前処理の繁雑さ(DNAポリメラーゼ系)やプライマーそのものを使わない( RNAポリメラーゼ系)という技術的限界がある。
特に本発明の目的は、高感度のエネルギートランスファーの原理を利用可能な化合物を提供すること、この化合物をターミネーターとして用い、チェインターミネーター法によって、標識されたDNA断片を高感度で検出できるDNAの塩基配列決定方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、上記化合物をエネルギートランスファープライマーとして用いたDNAの塩基配列決定方法を提供することにある。
ターミネーターを用いる塩基配列決定法では、例えば、T7 RNAポリメラーゼ等の RNAポリメラーゼは、リボヌクレオシド5’トリフォスフェート類並びに3’デオキシリボヌクレオチドの混合物中で反応させる。この反応において、鋳型の配列に相応した塩基を有するリボヌクレオチド及び3’デオキシリボヌクレオチドが、リボヌクレオチド配列中に逐次取り込まれることで、ポリリボヌクレオチドが合成される。さらに得られるポリリボヌクレオチド(核酸転写生成物)を分離し、得られる分離分画から核酸の配列を読み取ることでDNAの塩基配列が決定される。核酸転写のターミネーターとして、例えば、蛍光標識された3’dNTP誘導体を用い、ターミネーターが有する標識を読み取ることで塩基配列を決定する。
さらに本発明の目的は、上記化合物をエネルギートランスファーイニシエーターとして用いたDNAの塩基配列決定方法を提供することにある。
さらに上記化合物において、Qは2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基又は3’-デオキシリボヌクレオチド残基であることが好ましい。この化合物は、チェインターミネーター法によるDNAの塩基配列決定方法においてターミネーターとして用いることができる。
この方法は、Qが2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をターミネーターとして用い、かつDNAポリメラーゼを用いる方法、及びQが3’-デオキシリボヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をターミネーターとして用い、かつRNAポリメラーゼを用いる方法を包含する。
この方法において、ターミネーター上の二種類のレポーターは、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離を介して配置されていることが好ましい。さらに、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離は、例えば、10〜100Åの範囲である。また、レポーターは、例えば、蛍光性を有する基、リン光を発する基、スピン標識された基、及び電子密度が高い基からなる群から選ばれる。
上記本発明の塩基配列決定方法では、チェインターミネーション反応を無機ピロフォスファターゼの存在下で行うことが好ましい。
本発明の一般式(1)で表される化合物において、Qはモノまたはオリゴヌクレオチド残基を示す。より具体的には、Qは、例えば、リボヌクレオチド残基、2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基、2’-デオキシリボヌクレオチド残基、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、5’-デオキシリボヌクレオチド残基等のヌクレオチド残基であることができる。Qが、2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基又は3’-デオキシリボヌクレオチド残基である化合物は、チェインターミネーター法によるDNAの塩基配列決定方法においてターミネーターとして用いることができる。特に、Qが2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基である化合物は、DNAポリメラーゼを用いる方法においてターミネーターとして用いられる。また、Qが3’-デオキシリボヌクレオチド残基である化合物は、RNAポリメラーゼを用いる方法においてターミネーターとして用いられる。2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基及び3’-デオキシリボヌクレオチド残基としては、下記一般式(2)及び(3)で表されるプリンヌクレオチド残基、及び下記一般式(4)及び(5)で表されるピリミジンヌクレオチド残基を挙げることができる。
さらに上記モノまたはオリゴヌクレオチド残基としては、より具体的には、アデノシン、アデノシン5’モノフォスフェート(AMP)、アデノシン5’ジフォスフェート(ADP)、一般式N1(N)n-1A(但し、N1はリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、またはリボヌクレオシド5’ジフォスフェートであり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Aはアデノシン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類及び一般式N2(N)n-1A(式中、N2は前記式(6)で示される基であり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Aはアデノシン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類の各残基を挙げることができる。
さらに上記モノまたはオリゴヌクレオチド残基としては、具体的には、シチジン、シチジン5’モノフォスフェート(CMP)、シチジン5’ジフォスフェート(CDP)、一般式N1(N)n-1C(但し、N1はリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、またはリボヌクレオシド5’ジフォスフェートであり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Cはシチジン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類及び一般式N2(N)n-1C(式中、N2は前記式(6)で示される基であり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Cはシチジン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類の各残基を挙げることができる。
R1は3価の基を示し、例えば、
W1及びW2はそれぞれ独立して蛍光性基を示す。ここで、蛍光性基とは、蛍光を発する性質を有する基である。
本発明の化合物をターミネーターとして使用する場合、チェーンターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法に於いて、従来の4色蛍光ターミネーターより効率よく強いシグナル強度を実現する為に設計された4種のエネルギートランスファーターミネーターであるという点が重要である。AGCT4種の塩基について同時にターミネーション反応を実施する為には、4種のセット(ドナー色素とアクセプター色素の組み合わせ。これらを総称してレポーターと称する場合もある)が提供される。
(1)エネルギートランスファー機能を有するターミネーターを用いる方法
エネルギートランスファー機能を有するターミネーターを用いる本発明の塩基配列決定方法には、以下の方法がある。
チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するターミネーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なう方法(以下、この方法を第1の方法という)。
尚、好ましい蛍光性基としては、先にW1及びW2について挙げたもの等を挙げることができる。
本発明の第2の塩基配列決定方法は、チェインターミネーター法による方法であって、チェインターミネーション反応を前記一般式(1)で示される本発明の化合物をターミネーターとして用いて行なうことを特徴とする。但し、本発明の第2の方法は、ポリメラーゼとしてRNAポリメラーゼを用いる方法以外に、ポリメラーゼとしてDNAポリメラーゼを用いる方法も包含する。
即ち、RNAポリメラーゼ及び前記RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA断片の存在下、ATP、GTP、CTP及びUTP又はそれらの誘導体からなるリボヌクレオシド5'−トリフォスフェート類並びにターミネーターとして、本発明のターミネーターから選ばれる3’dATP、3’dGTP、3’dCTP、3’dUTPの誘導体からなる1種又は2種以上、好ましくは4種類の3’−デオキシリボヌクレオシド5'−トリフォスフェート(3’−dNTP誘導体)を反応させて核酸転写生成物を得、得られる核酸転写生成物を分離し、得られる分離分画から核酸の配列を読み取ることで、DNAの塩基配列を決定することができる。
本発明の第3のDNAの塩基配列決定方法は、プライマー法によりDNAの塩基配列を決定する方法であって、Qがオリゴヌクレオチド残基である一般式(1)で表される本発明の化合物、中でも、Qが2‘−デオキシリボヌクレオチド残基を末端に有するオリゴヌクレオチド残基である本発明の化合物をプライマーとして用いることを特徴とする方法である。
本発明の第3の方法では、プライマーとして上記化合物を用いる以外は、DNAポリメラーゼを用いた公知のダイデオキシ法を利用することができる。公知の方法としては、例えば、WO95/21266、特開平10-88124号に開示された方法を利用することができる。
本発明の第4のDNA塩基配列決定方法は、チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するイニシエーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法である。上記イニシエーターとして、Qが5'末端にフォスフェート基を持たないか、モノまたはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基である一般式(1)で表される本発明の化合物を用いることができる。
RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列は、用いるRNAポリメラーゼの種類に応じて適宜選択することができる。
本発明の第1〜第4の方法において、核酸転写生成反応は、無機ピロフォスファターゼ存在下で行うことが好ましい。各標識されたリボヌクレオチドに対応して得られるピークの高さ(シグナルの強弱)の差を小さくしてシークエンスの読み取りの精度を向上させて、より正確なシークエンスデータを得ることを可能にする。
ピロホスホロリシスは、DNA合成によって生じるピロリン酸塩が増加することによって起こり、結果として合成されたDNA生成物が分解する方向に反応を促進する働きをする。その結果、ピロホスホロリシスは、DNAポリメラーゼを用いたジデオキシシークエンシング法においてシークエンシングを阻害することになる。それに対して、無機ピロフォスファターゼをDNAポリメラーゼを用いたジデオキシシークエンシング法において使用すると、ピロホスホロリシスを阻害して、安定したシークエンスデータが得られることが知られている[特開平4−506002号]。
無機ピロフォスファターゼ(EC.3.6.1.1)は、市販品として入手可能であり、例えば、シクマ社からINORGANIC PYROPHOSPHATASEとして、またベーリンガー社からピロフォスファターゼとして市販されている。また、無機ピロフォスファターゼの使用量は、無機ピロフォスファターゼ及びRNAポリメラーゼの活性の程度にもよるが、例えば、RNAポリメラーゼ1単位に対して10-6〜10-2単位の範囲とすることが適当である。
尚、以下の実施例において用いる略号は以下のとおりである。
Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基
Boc:t−ブチルオキシカルボニル基
Lys:リジン
Pro:プロリン
Ac:アセチル基
(1)FAM-(Pro)8-Lysの合成
αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、文献(ペプチド合成の基礎と実験(丸善出版)p218)記載の方法に従って、固相法により合成した。
即ち、先ず、αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂をピペリジンにより処理してFmoc基を除去した。これと、樹脂上のLysに対して3倍当量のFmoc-Pro(和光純薬工業(株)社製)を含む1-メチルー2-ピロリドン溶液、3倍当量のHOBt、及び3倍当量のN、N'ージイソプロピルカルボジイミドを加え、室温で5時間縮合反応を行う操作により、順次アミノ酸を導入した。全アミノ酸を導入後、3倍当量5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)を縮合した。 反応終了後、樹脂をMeOH洗浄し、55%TFA-ジクロロメタンとアニソール(1ml)混液100mlを加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断すると同時にBoc基(Lysのεアミノ基の保護基)を切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)8-Lys 2.2gを得た。
合成例1−(1)で合成したFAM-(Pro)8-Lys 500mgをDMF1mlに溶解し、3倍当量のトリエチルアミンと2.5倍当量の5-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)を加え、室温で19時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)8-Lys(εTMR) 420mgを得た。
合成例1−(1)で得たFAM-(Pro)8-Lys 500mgと2.5倍当量の5-カルボキシーX−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)とを合成例1−(2)と同じ試薬を用い、同様の操作を行って、FAM-(Pro)8-Lys(εXR) 380mgを得た。
合成例1−(1)で得たFAM-(Pro)8-Lys 500mgと2.5倍当量の5-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)とを合成例1−(2)と同じ試薬を用い、同様の操作を行って、FAM-(Pro)8-Lys(εR6G) 400mgを得た。
合成例1−(1)で得たFAM-(Pro)8-Lys 500mgと3.5倍当量の5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)とを合成例1−(2)と同じ試薬を用い、反応終了後、同様の操作を行って、FAM-(Pro)8-Lys(εR110) 300mgを得た。
(1)FAM-(Pro)10-Lysの合成
αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro10- Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量6.8g)。乾燥樹脂1gに対し、5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(0.6g)、 N-ヒドロキシコハク酸イミド(0.37g)およびジイソプロピルカルボジイミド(500μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルを縮合した。
反応終了後、樹脂をDMF及びMeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8ml)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)10-Lys (0.63g)を得た。
合成例5−(1)で合成したFAM-(Pro)10-Lys (13.7mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(4.88mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)10-Lys(εTMR) (10.9mg)を得た。
合成例5−(1)で得たFAM-(Pro)10-Lys (9.63mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシ-X−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(3.78mg)とを合成例5−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)10-Lys(εXR) (6.53mg)を得た。
合成例5−(1)で得たFAM-(Pro)10-Lys (3.18mg)をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と6-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(1.11mg)とを合成例5−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)10-Lys(εR6G) (2.66mg)を得た。
合成例5−(1)で得たFAM-(Pro)10-Lys (5.00mg) をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(2.07mg)とを合成例5−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)10-Lys(εR110) (3.00mg)を得た。
(1)FAM-(Pro)12-Lysの合成
αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro12- Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量7.2g)。乾燥樹脂1gに対し、5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(0.47g)、 N-ヒドロキシコハク酸イミド(0.27g)およびジイソプロピルカルボジイミド(330μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルをを縮合した。
反応終了後、樹脂をDMF及びMeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8ml)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)12-Lys (0.58g)を得た。
合成例9−(1)で合成したFAM-(Pro)12-Lys (14.7mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(4.17mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)12-Lys(εTMR) (7.6mg)を得た。
合成例9−(1)で得たFAM-(Pro)12-Lys (3.76mg)をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と6-カルボキシ-X−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(1.33mg)とを合成例9−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)12-Lys(εXR) (6.53mg)を得た。
合成例9−(1)で得たFAM-(Pro)12-Lys (3.18mg)をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と6-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(1.11mg)とを合成例9−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)12-Lys(εR6G) (2.75mg)を得た。
合成例9−(1)で得たFAM-(Pro)12-Lys (5.00mg) をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(0.86mg)とを合成例9−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)12-Lys(εR110) (1.2mg)を得た。
(1)FAM-(Pro)4-Lysの合成
αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro4-Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量5.4g)。 乾燥樹脂400mgに対し5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(256mg)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(72g)およびジイソプロピルカルボジイミド(90μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルを縮合した。反応終了後、樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8m)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)4-Lys(66.8mg)を得た。
(1)で合成したFAM-(Pro)4-Lys(10mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.28mg)を加え、室温で19時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)4-Lys(εTMR)(9.8mg)を得た。
(1)FAM-(Pro)6-Lysの合成
αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro4-Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量5.8g)。 乾燥樹脂218mgに対し5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(128mg)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(73.7mg)およびジイソプロピルカルボジイミド(90μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルを縮合した。 反応終了後、樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8m)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)6-Lys(20.6mg)を得た。
(1)で合成したFAM-(Pro)6-Lys(12mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.5mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)6-Lys(εTMR)(9.29mg)を得た。
(1)Ac-(Pro)10-Lysの合成
合成例5-(1)で得たH-Pro10-Lys(Boc)-Alko樹脂(1.5g)をDMF(35ml)に膨潤させ、無水酢酸(230μl)、トリエチルアミン(336μl)を加えて20時間反応させた。反応終了後、樹脂をDMF及びMeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8ml)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、Ac-(Pro)10-Lys (0.45g)を得た。
(2) Ac-(Pro)10-Lys(εTMR)の合成
参考例1−(1)で合成したAc-(Pro)10-Lys (11.8mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.7mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、Ac-(Pro)10-Lys(εTMR) (6.0mg)を得た。
参考例1−(1)で得たAc-(Pro)10-Lys (10mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシ-X−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(6.5mg)とを参考例1−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、Ac-(Pro)10-Lys(εXR) (4.2mg)を得た。
参考例1−(1)で得たAc-(Pro)10-Lys (10mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.3mg)とを参考例1−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、Ac-(Pro)10-Lys(εR6G) (2.66mg)を得た。
参考例1−(1)で得たAC-(Pro)10-Lys (10.4mg) をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(8.3mg)とを参考例1−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、Ac-(Pro)10-Lys(εR110) (4.8mg)を得た。
プロリン残基10の化合物のエネルギー転移色素[FAM-(Pro)10-Lys(εTMR)、FAM-(Pro)10-Lys(εXR)、FAM-(Pro)10-Lys(εR6G)、 FAM-(Pro)10-Lys(εR110)]と単一色素[Ac-(Pro)10-Lys(εTMR)、Ac-(Pro)10-Lys(εXR)、Ac-(Pro)10-Lys(εR6G)、 Ac-(Pro)10-Lys(εR110)]の40mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)中での蛍光放出強さを比較した。
各色素溶液を日立F-4010型分光蛍光光度計を用いて励起波長488nmで励起し、蛍光波長はそれぞれ、TMR(580nm)、XR(610nm)、R6G(560nm)、R110(530nm)により測定した。得られた各色素の各相対強度を棒グラフとして図6に示す。
図6から分かるように、エキルギー転移色素はアクセプター色素それ自体よりもかなり強い蛍光を示すことが分かる。
FAM及びTMR-標識3’-デオキシウリジン-5'-トリホスフェート(FAM、TMR-標識3’-dUTP)(化合物10)の合成
合成例1で得たFAM-(Pro)8-Lys(εTMR)(54.1mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(8.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(3.9mg)を加え室温で2時間反応させた。 反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシウリジン-5'-トリホスフェート(8μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。反応液に水(30ml)を加え希釈した後、DEAE-トヨパールイオン交換カラムクロマトグラフィー(1.7X15cm;溶出液:40%アセトニトリル含有炭酸水素トリエチルアンモニウム緩衝液(pH7.5)0.1M→0.7M直線濃度勾配(全量2L))で精製した。
FAM及びXR-標識3’-デオキシシチジン-5'-トリホスフェート(FAM、XR-標識3’-dCTP)(化合物11)の合成
合成例2で得たFAM-(Pro)8-Lys(εXR)(71.9mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(10.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(4.9mg)を加え室温で2時間反応させた。反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシシチジン-5'-トリホスフェート(10μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。生成物を実施例1と同様に精製した。
FAM及びR6G-標識3’-デオキシアデノシン-5'-トリホスフェート(FAM、R6G-標識3’-dATP)(化合物12)の合成
合成例3で得たFAM-(Pro)8-Lys(εR6G)(55.1mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(8.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(3.9mg)を加え室温で2時間反応させた。反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシアデノシン-5'-トリホスフェート(8μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。生成物を実施例1と同様に精製した。
FAM及びR110-標識3’-デオキシグアノシン-5'-トリホスフェート(FAM、R110-標識3’-dGTP)(化合物13)の合成
合成例4で得たFAM-(Pro)8-Lys(εR110)(52.4mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(8.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(3.9mg)を加え室温で2時間反応させた。 反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシグアノシン-5'-トリホスフェート(8μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。生成物を実施例1と同様に精製した。
実施例1〜4で得られた化合物10〜13の構造式を以下に示す。
野生型T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子のクローニングと発現プラスミドの構築
大腸菌を宿主とするT7 ファージは、以下のように精製した。大腸菌C600をLB培地(Bacto tryptone 10g, Bacto yeast extract 5g, NaCl 5gを1リッターの水に溶かし、pH 7.5に調整したのち、オートクレーブにて滅菌した培地)200mlに植菌し、菌体濃度がOD(600nm)=1.0に達した時点で、多重感染度約2で感染させ、その後ODを経時的に測定し、ODが急激に落ちた時点で遠心操作にて、菌体残査をのぞき、NaCl及びポリエチレングリコール6000をそれぞれ最終濃度、0.5M、及び10%になるように加え、よく撹拌後、一晩、4℃にて静置し、沈殿を形成させた。この沈殿を遠心操作で集め、SM緩衝液(10 mM Tris-HCl, pH 7.5, 10 mM MgSO4, 50 mM NaCl, 0.01% gelatin)にて懸濁した。このT7 ファージの濃縮液を、次に遠心管に丁寧に重層した密度の異なるCsCl溶液上(下層から、CsCl濃度が、1.267g/ml, 0.817g/ml, 0.705g/mlである溶液)に重層し、22,000rpmで2時間、遠心することにより、ファージ層を形成させ、このファージの白いバンドを丁寧に分取し、TE緩衝液(10mM Tris-HCl, pH 7.5, 1mM EDTA)で透析し、CsCl成分を除去した。更にこのファージ溶液を、フェノール処理により、ファージ蛋白質を変性させ、T7 ファージのゲノムDNAを精製した。
変異型T7 RNAポリメラーゼを生産するための発現プラスミドの構築
(1)変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yを生産するための発現プラスミドの構築(図3参照)
野生型T7 RNA ポリメラーゼ 遺伝子の挿入してある pT7R を鋳型にして、T7 RNA ポリメラーゼ 遺伝子のC末端側に相当する制限酵素 Hpa I , Nco I 部位 に挟まれる領域を PCR 法を利用して変異を導入した。更に詳しく例示すると、変異を導入したい塩基を境界として、左右に分け、変異の導入してある プライマーF646Y(+) (5'-GTT GAC GGA AGC CGT ACT CTT TGG AC-3’)、 F646Y(-) (5'-GTC CAA AGA GTA CGG CTT CCG TCA AC-3’) とそれぞれの制限酵素切断部位を5'末端に持つ プライマーT7RNAP-HpaI-N (5'-CGC GCG GTT AAC TTG CTT CCT AG-3’) 、pTrc99a-PstI-C (5'-GCA TGC CTG CAG GTC GAC TCT AG-3’)を用いて PCR によりそれぞれの DNA フラグメントを増幅した。これらの DNA フラグメントには相補する部分があり、これらを変性、アニール、伸長反応を繰り返すことで目的の変異の導入された DNA フラグメントを作製した。この DNA フラグメントをアガロースゲル電気泳動により、目的の大きさの DNA フラグメントのみを切り出すことで精製し、これを鋳型としてプライマーT7RNAP-HpaI-NとpTrc99a-PstI-Cを用いて再増幅し、制限酵素Hpa I , Pst I で切断した。このDNAは1%アガロース電気泳動を行い、分離した後、目的のDNAフラグメントを切り出し、精製した。この DNA フラグメントを pT7R のHpa I , Pst I DNA フラグメントと置き換えることで変異を導入し, 大腸菌DH5αに形質転換し、変異の導入されたプラスミドを選択し、最終的には塩基配列を確認することで目的の位置に変異が導入されているかどうかを確認した。そして、変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yを生産するための発現プラスミドpT7RF644Yを得た。このプラスミドからの変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yの生産は、野生型T7 RNAポリメラーゼの生産と同様、本プラスミドを含む大腸菌を培養し、IPTGを添加することにより、発現誘導可能であった。
変異型T7 RNA ポリメラーゼL665P/F667Yの構築は、先のF644Yの構築同様、PCR法をベースにして以下のように行った。
先ず、野生型T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子を持つ発現ベクターpT7R中のT7 RNA ポリメラーゼ遺伝子領域内に、変異導入操作を容易にするため制限酵素XhoI (CTC GAG)を導入した。更に具体的に述べるとプライマーApaF1 (5'-CAT CTG GTC GCA TTG GGT CAC-3’)とプライマーXho-R (5'-CCA AGT GTT CTC GAG TGG AGA-3’)の組み合わせで、また、Xho-F (5'-CTA AGT CTC CAC TCG AGA ACA CTT GG-3’)とプライマーAflII-R (5'-CAG CCA GCA GCT TAG CAG CAG-3’)の組み合わせで、各々鋳型として発現ベクターpT7Rを用いて、PCRを行った。増幅した前者のDNAフラグメントは制限酵素ApaIとXhoIで、後者の増幅したDNAフラグメントは制限酵素AflIIとXhoIでそれぞれ反応し、さらに発現ベクターpT7Rを予めApaIとAflIIで処理して、全てをT4 DNA ライゲースを用いて結合させた。この反応物を大腸菌DH5αに形質転換し、抗生物質アンピシリンを含んだ寒天平板上で生育するコロニーを複数得た。このコロニーをいくつか選択し、培養、プラスミドDNAの抽出を行い、T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子領域内に制限酵素XhoI部位が生まれたプラスミドpT7R-Xhoを得た(図4参照)。このXhoI部位は、制限酵素XhoIで処理することによって、切断されること及びDNAの塩基配列決定を行い、その存在を確認可能である。このプラスミドpT7R-Xhoを鋳型として、プライマーXho-Rとプライマー667R (5'-GCT GAG TGT ACA TCG GAC CCT-3’)の組み合わせとプライマー667F (5'-GCT GAG TGT ACA TCG GAC CCT-3’)とプライマーAflIIRの組み合わせで各々PCRを行った。このPCR産物を直接鋳型として、DNAの塩基配列を決定し、プライマー667Rおよび667Fの配列を確認し後、それぞれを2%アガロース電気泳動(アガロースはニッポンジーン製のアガロースXを使用)を行い、目的の大きさのDNAフラグメントを切り出し、Gene Pure Kitを用いて、このDNAフラグメントを精製した。この精製した2つのDNAを混合し、鋳型としてプライマーXhoF及びAflIIRを用いてPCRを行い、増幅したDNAフラグメントを制限酵素マッピング、DNA塩基配列の解析により目的のフラグメントであることを確認後、制限酵素XhoIとAflIIを用いて酵素反応を行い、これを予め制限酵素XhoIおよびAflIIで処理したプラスミドpT7R-XhoにT4 DNA ライゲースを用いて結合させた。この反応物を大腸菌DH5αに形質転換し、抗生物質アンピシリンを含んだ寒天平板上で生育するコロニーを複数得た。このコロニーをいくつか選択し、培養、プラスミドDNAの抽出を行い、目的の変異が導入されているかをDNA塩基配列の決定を行い、確認し、最終的に目的の変異型T7 RNAポリメラーゼL665P/F644Yを生産するための発現プラスミドpT7RL665P/F667Yを構築した(図5参照)。このプラスミドからの変異型T7 RNAポリメラーゼL665P/F667Yの生産は、野生型T7 RNAポリメラーゼの生産と同様、本プラスミドを含む大腸菌を培養し、IPTGを添加することにより、発現誘導可能であった。
変異型T7 RNA ポリメラーゼ の精製
大腸菌に導入した変異型T7 RNA ポリメラーゼ蛋白質を精製した。
尚、本蛋白質の野生型については既にChamberlin, M et al. Nature, 228:227-231(1970), Davanloo et al., Proc.Natl. Acad. Sci.USA., 81:2035-2039(1984)に記載されている。さらに大量生産に関しては、Zawadzki, V et al., Nucl. Acids Res., 19:1948(1991)に報告されている。
変異型T7 RNA ポリメラーゼは基本的に全て同じ方法で精製できる。変異部位の違いにより、その発現量、カラムクロマトクラフィの挙動が若干異なることもある。以下、変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yの精製法を例示する。F644Yの発現ベクターpT7RF644Yを大腸菌DH5αに導入、抗生物質アンピシリンを含んだLB培地にて、先ず、試験管培養にてOD(600nm) =0.4〜0.6になったとき、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度0.4mMになるように加え、更に8時間培養する。このとき遠心分離により、大腸菌菌体を集め、典型的には2リッターの培養液より10gの湿重量の大腸菌が得られる。この大腸菌菌体を直ぐに使用しない時は、-20℃以下の冷凍庫で保存が可能である。
この段階以降、酵素の精製の全ての工程は、特記しない限り、室温以下の温度、好ましくは0〜5℃にて実施する。この大腸菌は、このとき菌体重量の10倍の洗浄緩衝液(20mM Tris-HCl, pH 8.1, 130 mM NaCl, 2mM EDTANa2 at 25℃)で洗い、再び遠心分離(5,000xg、4℃にて10分間)し、10倍量のソニケーション緩衝液 [50 mM Tris-HCl, pH 8.1, 100 mM NaCl, 0.1 mM EDTANa2, 5 mM ジチオスレイトール(DTT)、0.1 mM ベンザミジン, 30μg/ml フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、10μg/ml、バシトラシン] に懸濁し、ソニファイヤー450(ブランソン社)を用い、80W、15分間超音波処理を行い菌体を破砕、粘度を低下させる。続いて、12,000xg、4℃にて10分間遠心分離し、細胞残査を除いた。得られた上清を撹拌しながら、10%硫酸ストレプトマイシンをゆっくりと滴下し、終濃度2.0%とした後、更に30分間撹拌を続けた。12,000xg。4℃にて10分間遠心分離し、沈殿を除去し、粉末硫安をゆっくり添加しながら撹拌し、沈殿を形成させる。この場合、最初に30%飽和硫安で沈殿を集め(30%硫安沈殿)、上清は更に60%飽和硫安になるように硫安を撹拌しながら添加し、再び沈殿を形成させ(30-60%硫安沈殿)、更に上清を90%飽和硫安になるように粉末硫安を加え、4℃にて1時間撹拌し、遠心し回収した。この3つの硫安画分の一部をSDS-アクリルアミドゲル電気泳動を行い、蛋白質を分析したところ、目的の変異型T7 RNA ポリメラーゼのほとんどは、30-60%硫安画分に存在し、以後この画分を用いて精製を進めた。30-60%硫安画分は少量のカラム緩衝液(20 mM KPO4, pH7.7, 100 mM NaCl, 1mM DTT, 30μg/ml PMSF)に懸濁し、同じ緩衝液500mlにて、16時間透析し、脱塩した。この透析液を、カラム体積5mlのヘパリン-セファロース(ファルマシア・バイオテク)に付加する。次いで、このカラムを同緩衝液で、280nmの紫外線吸収物質が検出されなくなるまで洗浄し、カラム体積の約40倍の体積の同一緩衝液中の0.1M〜0. 64M NaClの直線濃度勾配で溶出する。溶出液は、適当量を試験管に分画して集め、直ぐにSDS-アクリルアミドゲル電気泳動を行い、蛋白質を分析し、目的の変異型T7 RNA ポリメラーゼと思われる分子量付近に蛋白質が存在する分画を検査する。典型的な例では0.4M のNaCl付近に見いだされるはずである。この蛋白質を含む分画を集め、約1リッターのカラム緩衝液(20 mM KPO4, pH7.7, 100 mM NaCl, 1mM DTT, 30μg/ml PMSF)に対して16時間透析し、脱塩操作を行った。この透析脱塩した分画を、同緩衝液で予め平衡化した5ml のカラム体積のQ-セファロース(Q-sepharose, ファルマシア・バイオテク)に付加し、同緩衝液で、280nmの紫外線吸収物質が検出されなくなるまで洗浄し、カラム体積の約40倍の体積の同一緩衝液中の0.1M〜0.64M NaClの直線濃度勾配で溶出する。溶出液は、適当量を試験管に分画して集め、直ぐにSDS-アクリルアミドゲル電気泳動行い、蛋白質を分析し、目的の変異型T7 RNA ポリメラーゼと思われる分子量付近に蛋白質が存在する分画を検査する。典型的な例では0.24M のNaCl付近に見いだされるはずである。この蛋白質を含む分画を集め、500mlの保存用緩衝液(50% glycerol, 20 mM KPO4, pH7.7, 100 mM NaCl, 1mM DTT, 30μg/ml PMSF) に対して16時間透析し、使用まで-20℃にて保存する。この状態で、イン・ビトロのRNA合成活性、或いは混入しているリボヌクレアーゼ活性について試験する。ここでこの方法を例示すると、イン・ビトロRNA合成活性については、T7 プロモーターを含むプラスミドを鋳型として用い、野生型T7 RNA ポリメラーゼの市販品(BRL・ギブコ社)を標準品として酵素希釈法を用いて、RNA合成反応を行い、合成したRNAをアガロース電気泳動する事により、おおよその力価を推定した。このとき、合成されたRNAの分解の程度も観察されるため、同時に混入リボヌクレアーゼに関しての、簡単な検定も可能である。典型的な例として、以上のような工程を踏まえた精製法で、1リッターの培養液から2,500,000単位の変異型T7 RNA ポリメラーゼF644Y蛋白質が精製され、この標品にはほとんどRNaseの混入は認められない。
RNase活性の混入のない無機ピロホスファターゼの精製
RNaseの混入のない、無機ピロホスファターゼ(PPase)は以下のように精製したが、以下の方法に限定されるものではない。
変異型RNAポリメラーゼを用いたイン・ビトロ転写反応におけるエネルギートランスファーターミネーターと従来のダイターミネーターを用いたシークエンシング反応例比較
3’dNTPのエネルギートランスファーターミネーターの塩基配列決定法における効果を変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yを用いたイン・ビトロ転写反応で調べた。シークエンシング反応は、Melton, D.A. (1984, Nucleic Acids Res., 12: 7035-7056)によって示された方法を用いた。さらに具体的に述べると、T7プロモーターを有するプラスミドベクターpBluescriptKS(+)(ストラタジーン社)を、制限酵素PvuIIで反応し、線状にしたものを鋳型として用いた。3’dNTPのエネルギートランスファーターミネーター誘導体としては、実施例1〜4で合成した化合物10〜13であるプロリンスペーサーを有するダイターミネーターを用いた。具体的には、4μM FAM及びR6G-標識3’-dATP, 4μM FAM及びR110-標識3’-dGTP, 80μM FAM及びXR-標識3’-dCTP及び20μM FAM及びTMR-標識3’-dUTP、500μM GTP, UTP及び250μM ATP, CTP、8mM MgCl2、2mM spermidine-(HCl)3、5mM DTT、40mM Tris/HCl pH 8.0 (BRL, ギブコ社)の条件下に、変異型T7 RNAポリメラーゼF644Y(25U)、酵母由来の無機ピロホスファターゼ( 0.045U)を加えて、合計反応体積10μlとして、37℃で一時間反応を行った。
変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yの代わりに変異型T7 RNA ポリメラーゼL665P/F667Yを用いてシークエンシングを行った結果、上記と同様の結果が得られた。
Claims (12)
- チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するイニシエーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法。
- Qが5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基である下記一般式(1)で表される化合物をイニシエーターとして用いる請求項1に記載の方法。
- W1及びW2の間の距離が10〜100Åの範囲となるように、R2、R3及びmが選ばれる請求項2または3記載の方法。
- ターミネーターとして非標識のターミネーターを用いる請求項1に記載の方法。
- チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するターミネーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法。
- ターミネーター上の二種類のレポーターが、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離を介して配置された請求項6に記載の方法。
- ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離が、10〜100Åの範囲である請求項7記載の方法。
- レポーターが蛍光性基、リン光を発する基、スピン標識された基、及び電子密度が高い基からなる群から選ばれる請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
- ドナーがフルオレスセイン系色素、ローダミン系色素及び4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素からなる群から選ばれる一種であり、アクセプターがフルオレスセイン系色素、ローダミン系色素及び4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素からなる群から選ばれる一種である請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 4種類の塩基に対応する4種類のターミネーター(但し、各ターミネーターは、アクセプターとして異なる4種類のレポーターをそれぞれ有する)を用い、かつ上記4種類のターミネーターによるチェインターミネーション反応を同一の反応系内で行う請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
- チェインターミネーション反応を無機ピロフォスファターゼの存在下で行う請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
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