JP2004135673A - エネルギートランスファー機能を有する化合物を利用したdnaの塩基配列決定方法 - Google Patents

エネルギートランスファー機能を有する化合物を利用したdnaの塩基配列決定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有し、チェインターミネーター法を利用したDNAの塩基配列決定方法において、プライマーまたはイニシエーターとして使用できる化合物及びこれらを用いたDNAの塩基配列決定方法の開示。
【解決手段】エネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーター、例えば、蛍光性基を有し、かつ2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基又は3’-デオキシリボヌクレオチド残基を有する化合物。該化合物は、チェインターミネーター法のターミネーターとなり得る。二種類のレポーターは、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離を介して配置されている。チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、チェインターミネーション反応を上記ターミネーターを用いて行なう。
【選択図】なし

Description

 本発明は、エネルギートランスファー機能を有する化合物をターミネーター、プライマーまたはイニシエーターとして利用したDNAの塩基配列決定方法に関する。
 DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼを用いて、チェインターミネーション反応産物を作成し、それを分離分画することにより、塩基配列を決定する方法が知られている。また、高等動物の遺伝子配列を解明するプロジェクトが進行しているが、その中でより高速の塩基配列決定法の開発が試みられている。その為に、蛍光標識したターミネーターを用いて得たシークエンシング反応産物を電気泳動により分離分画し、得られたDNA断片をレーザーで励起し、その蛍光を検出することにより塩基配列を決定する、DNA蛍光シークエンサーが用いられている。
 また、2つの蛍光色素(ドナー色素、アクセプター色素)を用い、エネルギートランスファーの原理を用いて蛍光色素の量子収率を上げることができることが知られている。近年このエネルギートランスファーの原理を導入してオリゴヌクレオチドに2つの蛍光色素を共有結合させ、それをシークエンシング反応のプライマーとして用いるエネルギートランスファープライマーが開発された〔例えば、Nature Medicine, 2, 246-249(1996)、WO95/21266、特開平10-88124号〕。
 DNAシークエンシングを高速化する為に、一度に多数のサンプルを解析できるシステムが開発されている。特に、キャピラリー蛍光シークエンサーは、サンプルのローディングを自動化しやすく、レーンの交差もなく多本化しやすい理想的な構造である。この蛍光シークエンサーの多本化を押し進める為に2種の光学系が用いられる。
 1つはスキャン方式で、他の1つはイメージ方式である。いずれの場合も、少量のDNAでも検出できる高感度の検出計の出現が多本化を押し進める上で必要条件である。スキャン方式においては、キャピラリーの本数に係わらず一定の時間内にシークエンシングを終了する為には、キャピラリーの多本化が進めば進むほど1本のキャピラリーに割り当てられる時間が少なくなる。そのため、より高感度の検出計が必要となる。また、イメージ方式においても、検出計がカバーする視野の領域はキャピラリーの本数に係わらず一定である。キャピラリーの多本化を進めるためには光学素子の画素数を増やし、かつ1本のキャピラリーの直径を減らす必要がある。そのため、より高感度の検出計が必要となる。
 一方、DNA検出感度を高める為、前述のように、エネルギートランスファーの原理を利用した蛍光プライマーをDNAシークエンシングに用いる技術が開発されてきた。しかしながら、本方法は蛍光プライマーである為、AGCT4種の塩基おのおのにターミネーション反応を行ない、これをさらに混ぜたシークエンシング反応産物を電気泳動にかけるという非常に繁雑な工程を必要とする。また、プロモーター依存性のRNAポリメラーゼを用いた転写反応によるシークエンシング反応ではプライマーを用いないため、このエネルギートランスファープライマーを用いることはできない。
 DNAシークエンシングをより高速化するためには、多本化キャピラリーシークエンサーにおいてエネルギートランスファーのような量子収率の高い高感度検出系が必要である。しかし、それにもかかわらず、エネルギートランスファープライマーを用いる系では、前処理の繁雑さ(DNAポリメラーゼ系)やプライマーそのものを使わない( RNAポリメラーゼ系)という技術的限界がある。
 そこで本発明の目的は、エネルギートランスファープライマーを用いる系での欠点を解消し、即ち、RNAポリメラーゼを用いた転写反応系にも適応でき、さらに、前処理として別々に得たAGCT4反応産物を混合する繁雑な工程を経ることなく、エネルギートランスファーを用いた高感度検出が可能なシークエンシング方法を可能にする手段を提供することにある。
 特に本発明の目的は、高感度のエネルギートランスファーの原理を利用可能な化合物を提供すること、この化合物をターミネーターとして用い、チェインターミネーター法によって、標識されたDNA断片を高感度で検出できるDNAの塩基配列決定方法を提供することにある。
 ところで、WO95/21266に開示されているエネルギートランスファープライマーでは、エネルギートランスファーを起こす2つのレポーターを、プライマーを構成するオリゴヌクレオチドの一部をリンカーとして連結している。しかるに、このようなプライマーでは、プライマーとなるオリゴヌクレオチドの配列が異なると、その都度、異なるプライマーを合成する必要があり、実用上不利である。また、特開平10-88124号に記載のエネルギートランスファープライマーでは、2つのレポーターを、脂肪族または芳香族の残基をリンカーとして連結している。そのため、WO95/21266のプライマーのような問題はないが、2つのレポーター間の距離を離す目的でリンカーを長くしようとしても、リンカーは長鎖になってもリンカーの結合様式のため、2つのレポーター間の距離を所望の値にすることが難しいという問題がある。
 そこで、本発明の別の目的は、上記問題を解決した、即ち、プライマーの配列の一部をリンカーとして用いることなく、かつ2つのレポーター間の距離の制御が容易な、エネルギートランスファープライマーとして有用な化合物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、上記化合物をエネルギートランスファープライマーとして用いたDNAの塩基配列決定方法を提供することにある。
 ターミネーターを用いる塩基配列決定法では、例えば、T7 RNAポリメラーゼ等の RNAポリメラーゼは、リボヌクレオシド5’トリフォスフェート類並びに3’デオキシリボヌクレオチドの混合物中で反応させる。この反応において、鋳型の配列に相応した塩基を有するリボヌクレオチド及び3’デオキシリボヌクレオチドが、リボヌクレオチド配列中に逐次取り込まれることで、ポリリボヌクレオチドが合成される。さらに得られるポリリボヌクレオチド(核酸転写生成物)を分離し、得られる分離分画から核酸の配列を読み取ることでDNAの塩基配列が決定される。核酸転写のターミネーターとして、例えば、蛍光標識された3’dNTP誘導体を用い、ターミネーターが有する標識を読み取ることで塩基配列を決定する。
 ところが、3’dNTPに種々の標識を付したターミネーターは、標識の種類や標識の結合様式によっては、核酸配列に読み込まれにくい場合がある。特に、鎖の長さが長くなるとその傾向が大きくなる。そこで、ターミネーターは非標識の化合物とし、標識したイニシエーターを用いて塩基配列を決定することもできる。さらにその際、上述の標識したターミネーターの場合と同様に、標識の感度が問題となる。
 そこで、本発明のさらなる目的は、RNAポリメラーゼを用いるDNAの塩基配列決定方法であって、標識を付したターミネーターを用いることなしに塩基配列を決定する方法にイニシエーター(転写開始剤)として使用できる、エネルギートランスファー機能を有する化合物を提供することにある。
 さらに本発明の目的は、上記化合物をエネルギートランスファーイニシエーターとして用いたDNAの塩基配列決定方法を提供することにある。
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物に関する。
Figure 2004135673
(式中、Qはモノまたはオリゴヌクレオチド残基を示し、Vは−C≡C−(CH2n1−NH−または−CH=CH−(CH2n2−NH−(但し、n1及びn2は1以上の整数を示す)を示し、R1は3価の基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子若しくは炭化水素基を示すか、またはR2及びR3が互いに結合し、隣接するCH及びNHと一緒になって環を形成してもよく、W1及びW2はそれぞれ独立して蛍光性基を示し、mは1以上の整数を示す。)
 上記化合物において、W1及びW2の間の距離が10〜100Åの範囲となるように、R2、R3及びmが選ばれることが好ましい。
 さらに上記化合物において、Qは2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基又は3’-デオキシリボヌクレオチド残基であることが好ましい。この化合物は、チェインターミネーター法によるDNAの塩基配列決定方法においてターミネーターとして用いることができる。
本発明は、チェインターミネーター法によりDNAの塩基配列を決定する方法であって、Qが2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基又は3’-デオキシリボヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をターミネーターとしてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法に関する。
この方法は、Qが2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をターミネーターとして用い、かつDNAポリメラーゼを用いる方法、及びQが3’-デオキシリボヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をターミネーターとして用い、かつRNAポリメラーゼを用いる方法を包含する。
さらにこの方法では、一般式(1)で表される化合物から選ばれた、4種類の塩基に対応する4種類の化合物(但し、各化合物は、W1及びW2の少なくとも一方として異なる4種類の蛍光性基をそれぞれ有する)をターミネーターとして用い、かつ上記4種類の化合物によるチェインターミネーション反応を同一の反応系内で行うことができる。
本発明は、Qが2’−デオキシリボヌクレオチド残基を末端に有するオリゴヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物に関する。この化合物は、プライマー法によるDNAの塩基配列決定方法においてプライマーとして用いることができる。
さらに本発明は、プライマー法によりDNAの塩基配列を決定する方法であって、上記化合物をプライマーとして用いることを特徴とする方法に関し、この方法では非標識のターミネーターを用いることができる。
本発明は、Qが5'末端にフォスフェート基を持たないか、モノまたはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物に関する。この化合物は、チェインターミネーター法によるDNAの塩基配列決定方法においてイニシエーターとして用いることができる。
さらに本発明は、チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するイニシエーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法に関する。
この方法において、Qが5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をイニシエーターとして用いることができる。また、ターミネーターとして非標識のターミネーターを用いることができる。
さらに本発明は、チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するターミネーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法に関する。
この方法において、ターミネーター上の二種類のレポーターは、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離を介して配置されていることが好ましい。さらに、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離は、例えば、10〜100Åの範囲である。また、レポーターは、例えば、蛍光性を有する基、リン光を発する基、スピン標識された基、及び電子密度が高い基からなる群から選ばれる。
 この方法において、ターミネーターが有するドナーは、例えば、フルオレスセイン系色素、ローダミン系色素及び4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素からなる群から選ばれる一種であり、アクセプターはフルオレスセイン系色素、ローダミン系色素及び4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素からなる群から選ばれる一種である。
 この方法において、4種類の塩基に対応する4種類のターミネーター(但し、各ターミネーターは、アクセプターとして異なる4種類のレポーターをそれぞれ有する)を用い、かつ上記4種類のターミネーターによるチェインターミネーション反応を同一の反応系内で行うことができる。
 上記本発明の塩基配列決定方法では、チェインターミネーション反応を無機ピロフォスファターゼの存在下で行うことが好ましい。
本発明の化合物
 本発明の一般式(1)で表される化合物において、Qはモノまたはオリゴヌクレオチド残基を示す。より具体的には、Qは、例えば、リボヌクレオチド残基、2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基、2’-デオキシリボヌクレオチド残基、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、5’-デオキシリボヌクレオチド残基等のヌクレオチド残基であることができる。Qが、2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基又は3’-デオキシリボヌクレオチド残基である化合物は、チェインターミネーター法によるDNAの塩基配列決定方法においてターミネーターとして用いることができる。特に、Qが2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基である化合物は、DNAポリメラーゼを用いる方法においてターミネーターとして用いられる。また、Qが3’-デオキシリボヌクレオチド残基である化合物は、RNAポリメラーゼを用いる方法においてターミネーターとして用いられる。2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基及び3’-デオキシリボヌクレオチド残基としては、下記一般式(2)及び(3)で表されるプリンヌクレオチド残基、及び下記一般式(4)及び(5)で表されるピリミジンヌクレオチド残基を挙げることができる。
Figure 2004135673
 上記式中、R11及びR12は、いずれもが水素原子であるか、またはR11が水酸基であり、R12が水素原子であることができる。R13は、-PO3H2、-P2O6H3、-P3O9H4またはそれらの塩であることができる。塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、バリウム塩)、アンモニウム塩、有機アミン塩(例えば、トリエチルアンモニウム塩、ピリジン塩)等を挙げることができる。
 また、Qは、オリゴヌクレオチド残基であることができる。Qがオリゴヌクレオチド残基である化合物、特に2'-デオキシリボヌクレオチドを末端に有するオリゴヌクレオチド残基である化合物は、プライマー法によるDNAの塩基配列決定方法においてプライマーとして用いることができる。オリゴヌクレオチド残基の塩基配列や長さは、プライマーとしての機能を考慮して適宜決定できるが、長さとしては、例えば、5〜30塩基の範囲、好ましくは10〜30塩基の範囲である。
 さらにQは、5'末端にフォスフェート基を持たないか、モノまたはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基であることができる。このような化合物は、チェインターミネーター法によるDNAの塩基配列決定方法においてイニシエーターとして用いることができる。5'末端にフォスフェート基を持たないか、モノまたはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオシド残基、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート残基、リボヌクレオシド5’ジフォスフェート残基、一般式N1(N)n(式中、N1はリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、またはリボヌクレオシド5’ジフォスフェートであり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数である)で示されるオリゴリボヌクレオチド類残基、及び一般式N2(N)n(式中、N2は下記式(6)で示される基であり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数である)で示されるオリゴリボヌクレオチド類残基からなる群から選ばれることができる。
Figure 2004135673
上記モノまたはオリゴヌクレオチド残基としては、より具体的には、例えば、グアノシン、グアノシン5’モノフォスフェート(GMP)、グアノシン5’ジフォスフェート(GDP)、一般式N1(N)n-1G(但し、N1はリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、またはリボヌクレオシド5’ジフォスフェートであり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Gはグアノシン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類及び一般式N2(N)n-1G(式中、N2は前記式(6)で示される基であり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Gはグアノシン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類の各残基を挙げることができる。
さらに上記モノまたはオリゴヌクレオチド残基としては、より具体的には、アデノシン、アデノシン5’モノフォスフェート(AMP)、アデノシン5’ジフォスフェート(ADP)、一般式N1(N)n-1A(但し、N1はリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、またはリボヌクレオシド5’ジフォスフェートであり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Aはアデノシン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類及び一般式N2(N)n-1A(式中、N2は前記式(6)で示される基であり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Aはアデノシン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類の各残基を挙げることができる。
さらに上記モノまたはオリゴヌクレオチド残基としては、具体的には、シチジン、シチジン5’モノフォスフェート(CMP)、シチジン5’ジフォスフェート(CDP)、一般式N1(N)n-1C(但し、N1はリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、またはリボヌクレオシド5’ジフォスフェートであり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Cはシチジン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類及び一般式N2(N)n-1C(式中、N2は前記式(6)で示される基であり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Cはシチジン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類の各残基を挙げることができる。
さらに上記モノまたはオリゴヌクレオチド残基としては、具体的には、ウリジン、ウリジン5’モノフォスフェート(UMP)、ウリジン5’ジフォスフェート(UDP)、一般式N1(N)n-1U(但し、N1はリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、またはリボヌクレオシド5’ジフォスフェートであり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Uはウリジン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類及び一般式N2(N)n-1U(式中、N2は前記式(6)で示される基であり、Nはリボヌクレオシド5’モノフォスフェートであり、nは1以上の整数であり、Uはウリジン5’モノフォスフェートである)で示されるオリゴリボヌクレオチド類の各残基を挙げることができる。
 尚、上記一般式N1(N)n、N1(N)n-1G、N1(N)n-1A、N1(N)n-1C、N1(N)n-1U、N2(N)n、N2(N)n-1G、N2(N)n-1A、N2(N)n-1C、N2(N)n-1Uにおいて、N1で示されるリボヌクレオシド、リボヌクレオシド5’モノフォスフェート、及びリボヌクレオシド5’ジフォスフェートの塩基に特に制限はなく、グアニン、アデニン、シトシン、ウリジンから適宜選択でき、好ましくはグアニンである。また、Nで示されるリボヌクレオシド5’モノフォスフェートの塩基の種類及びnが2以上の場合の塩基の配列にも特に制限はない。さらに、イニシエーターの機能の面でnには上限はないが、実用上は、nはせいぜい10以下程度であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは1又は2である。
本発明の一般式(1)で表される化合物において、Vは−C≡C−(CH2n1−NH−または−CH=CH−(CH2n2−NH−を示す。n1及びn2は1以上の整数を示す。ここで、Vにおける−C≡C−または−CH=CH−の炭素原子の一端が、前述した如きQで示されるモノ又はオリゴヌクレオチド残基のうち、ピリミジンヌクレオチド残基についてはその5位に、また、プリンヌクレオチド残基についてはその7位に夫々結合する。
 また、上記−(CH2n1−及び−(CH2n2−で示されるメチレン鎖としては、例えばn1及びn2が1〜15のメチレン鎖が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
 但し、RNAポリメラーゼによるシーケンス反応のターミネーターとして用いる場合には、RNAポリメラーゼによる取り込み効率が高いという観点から、好ましくはn1及びn2は4以上、より好ましくはn1及びn2は4〜10、更に好ましくはn1及びn2は4〜8である。また、DNAポリメラーゼによるシーケンス反応のターミネーターとして用いる場合には、DNAポリメラーゼによる取り込み効率が高いという観点から、好ましくはn1及びn2は3以上、より好ましくはn1及びn2は3〜10である。また、プライマー又はイニシエーターとして使用する場合、シークエンシング反応に使用するDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼの活性を考慮してn1及びn2は適宜決定される。
1は3価の基を示し、例えば、
Figure 2004135673
(但し、R21〜R23はそれぞれ独立して結合手または2価の炭化水素基を表す)等を挙げることができる。
尚、上記2価の炭化水素基としては、脂肪族、芳香族、これらが混在しているもののいずれでも良い。2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でも良い。直鎖状及び分枝状の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基が挙げられ、具体的にはメチレン基、エチリデン基、1,2-エタンジイル基、プロピリデン基、1,2-プロパンジイル基、1,3-プロパンジイル基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、1,4-ブタンジイル基、2-メチル-1,2-プロパンジイル基、2-メチル-1,3-プロパンジイル基、ペンチリデン基、1,2-ペンタンジイル基、1,3-ペンタンジイル基、1,4-ペンタンジイル基、1,5-ペンタンジイル基、2,3-ペンタンジイル基、2,4-ペンタンジイル基、2-メチル-1,2-ブタンジイル基、2-メチル-1,3-ブタンジイル基、2-メチル-1,4-ブタンジイル基、2-メチル-1,5-ブタンジイル基、2-メチル-2,3-ブタンジイル基、2-メチル-2,4-ブタンジイル基、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジイル基、ヘキシリデン基、1,2-ヘキサンジイル基、1,3-ヘキサンジイル基、1,4-ヘキサンジイル基、1,5-ヘキサンジイル基、1,6-ヘキサンジイル基、2,3-ヘキサンジイル基、2,4-ヘキサンジイル基、3,4-ヘキサンジイル基等が挙げられ、なかでも炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。環状の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数3〜7の2価の脂肪族炭化水素基が挙げられ、具体的には1,2-シクロプロパンジイル基、1,2-シクロブタンジイル基、1,3-シクロブタンジイル基、1,2-シクロペンタンジイル基、1,3-シクロペンタンジイル基、1,2-シクロヘキサンジイル基、1,3-シクロヘキサンジイル基、1,4-シクロヘキサンジイル基、1,2-シクロヘプタンジイル基、1,3-シクロヘプタンジイル基、1,4-シクロヘプタンジイル基等が挙げられ、なかでも炭素数5〜7の2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。2価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、ビフェニレン基、トリフェニレン基等が挙げられる。
 R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子若しくは炭化水素基を示すか、またはR2及びR3が互いに結合し、隣接するCH及びNHと一緒になって環を形成してもよい。炭化水素基としては例えば、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基(直鎖状でも分岐状でも環状でも良く、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等)等を挙げることができる。また、R2及びR3が互いに結合し、隣接するCH及びNHと一緒になって形成される環としては、更にN及びOを含んでいても良い3〜6員環が挙げられ、具体例としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等を挙げることができる。また、繰り返し数mは、1以上の整数を示す。
 本発明の化合物において、R2、R3及びmは、W1及びW2の間の距離が10〜100Åの範囲となるように選ばれることが好ましい。エネルギートランスファーの結果得られる蛍光等のシグナルは、W1及びW2の間の距離により変化する。最も強いシグナルが得られるW1及びW2の間の距離は、W1及びW2の種類により変化する。そこで、W1及びW2の種類等を考慮してR2、R3及びmを適宜選択する。
2つの蛍光性基の分子間距離として10〜100Åの範囲、好ましくは20〜60Å、より好ましくは約30〜50Åであることが適当である。R2及びR3で形成された環がピロリジン環、即ちプロリン残基の場合、20〜60Åは約5〜16残基のプロリンストレッチに相当し、30〜50Åは8〜12残基に相当する。上記mは、プロリンストレッチを含む全アミノ酸残基が、20〜60Åに相当する数、好ましくは30〜50Åに相当する数となるようにすることが適当である。
 W1及びW2はそれぞれ独立して蛍光性基を示す。ここで、蛍光性基とは、蛍光を発する性質を有する基である。
 好ましい蛍光性基としては、フルオレスセイン系色素、ローダミン系色素、4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアラニン色素等が挙げられ、中でもフルオレスセイン系色素、ローダミン系色素及び4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素が好ましい。
 より具体的には、例えば、5(または6)カルボキシフルオレッセイン(以下、FAMと略記する。)、フルオレッセイン、イソチオシアネート、5(又は6)カルボキシ4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレッセイン(以下、 JOEと略記する。)、5(または6)カルボキシ2’,4',5',7'−テトラクロロフルオレッセイン、5(または6)カルボキシ2’,4',5',7'−テトラブロモフルオレッセイン、5(または6)カルボキシ4,7−ジクロロ−2’,7'−ジメトキシフルオレッセイン、5(または6)カルボキシ4,7,4',5'−テトラクロロ−2’,7'−ジメトキシフルオレッセイン、5(または6)カルボキシ2’,7'−ジメトキシフルオレッセイン、5(または6)カルボキシ4,A7−ジクロロ−1',2’,7',8'−ジベンゾフルオレッセイン、5(または6)カルボキシ4,7−ジクロロ−1',2’,7',8'−ジベンゾフルオレッセイン、5(または6)カルボキシテトラメチルローダミン(以下、TMRと略記する。)、5(または6)カルボキシローダミンX(以下、XRと略記する。)、5(または6)カルボキシローダミン6G(以下、R6Gと略記する。)、5(または6)カルボキシローダミン110(以下、R110と略記する。)、4,4―ジフルオロ−1,3,5,7―テトラメチルー4―ボラー3a,4a−ジアザ−s−インダセン−8−プロピオン酸(以下、BODIPY493/503と略記する)、2,6―ジブロモ−4,4−ジフルオロ,5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−8−プロピオン酸(以下、BODIPY FL Br2と略記する)、4,4―ジフルオロ−5−フェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−8−プロピオン酸(以下、BODIPY R6Gと略記する)、4,4―ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−8−プロピオン酸(以下、BODIPY530/550と略記する)、6−((4,4−ジフルオロ−1,3−ジメチル−5(4−メトキシフェニル)−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−2−プロピオニル)アミノ)ヘキサン酸(以下、BODIPY TMRと略記する)、オレゴングリーン488カルボン酸、臭化エチジウム、2−メトキシ−6−クロロ−9−アミノアクリジン、4−トリフルオロメチル−7−ω−プロモプロピルアミノクマリン等の蛍光色素から誘導されたものが挙げられる。
本発明の化合物をターミネーターとして使用する場合、チェーンターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法に於いて、従来の4色蛍光ターミネーターより効率よく強いシグナル強度を実現する為に設計された4種のエネルギートランスファーターミネーターであるという点が重要である。AGCT4種の塩基について同時にターミネーション反応を実施する為には、4種のセット(ドナー色素とアクセプター色素の組み合わせ。これらを総称してレポーターと称する場合もある)が提供される。
 本発明の実施の形態に於いてW1及びW2は、いずれか一方がドナー色素として、他方がアクセプター色素として機能し、W1及びW2のセットとして、具体的には、例えば、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(FAM、JOE、TMR、XR)、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(FAM、R6G、TMR、XR)、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(R6G、TMR、XR、R110)、ドナー色素A(BODIPY 493/503)、アクセプター色素B(BODIPY FLBr2、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY 530/550)、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(BODIPY FLBr2、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY 530/550)、ドナー色素A(オレゴングリーン488)、アクセプター色素B(BODIPY FLBr2、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY 530/550)等のセットが好ましく挙げられるがこれらに限定される物ではない。
本発明の化合物は、2種の蛍光色素を1つのモノ又はオリゴヌクレオチドに結合させてあるため、これらを例えば、ターミネーターとして用いた場合、RNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼが立体障害なく取り込むことできるという利点を有する。さらに、本発明の化合物は、エネルギートランスファーの原理で感度良く検出できる為の高速な特定の高次構造をとる化学構造を有し、ターミネーター、プライマー及びイニシエーターとして有用である。
 尚、上記一般式(1)で表される本発明の化合物は、例えば、下記反応式(V)に従って下記一般式(7)で表される化合物と下記一般式(8)で表される化合物とを反応させることにより合成することができる。
Figure 2004135673
 (式中、Q及びVは前記と同じ)
Figure 2004135673
 (式中、Suはコハク酸イミド基を示し、他は前記と同じ)
Figure 2004135673
 即ち、上記反応式[V]で示されるように、一般式(7)で表される化合物と一般式(8)で表される化合物とを、例えば、DMF、DMF−水等の溶媒中、必要により例えば、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基性触媒の存在下、10〜40℃で、1〜数時間反応せさることにより、一般式(1)の化合物を得ることができる。
 尚、一般式(7)で表される化合物は、例えば、特開平10−158293号公報9〜18欄 〔0056〕〜〔0067〕にかけて記載された方法、具体的にはその〔実施例〕の項に記載された方法等により合成することができる。
 また、一般式(8)で表される化合物は、上記反応スキーム中の(I)〜(IV)に従って合成することができる。尚、反応スキーム中のPolyは樹脂(固相)を示す。即ち、固相法等の常法により合成した例えば、(Pro)m-εBoc-Lys(式中、Proはプロリン残基を表し、Lysはリジン残基を表し、Bocはt-ブチルオキシカルボニル基を表し、mは正の整数を表す。)のN末端にW1を導入し〔反応式(I)〕、次いでBoc基を脱保護し〔反応式(II)〕、フリーのアミノ基にW2を導入し〔反応式(III)〕、さらにコハク酸イミド基(Su)を導入する〔反応式(IV)〕こと等により容易に得ることができる。
塩基配列決定方法
(1)エネルギートランスファー機能を有するターミネーターを用いる方法
 エネルギートランスファー機能を有するターミネーターを用いる本発明の塩基配列決定方法には、以下の方法がある。
 チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するターミネーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なう方法(以下、この方法を第1の方法という)。
さらに、チェインターミネーター法によりDNAの塩基配列を決定する方法であって、前記一般式(1)で表される本発明の化合物をターミネーターとしてチェインターミネーション反応を行なう方法(以下、この方法を第2の方法という)。この方法には、Qが2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をターミネーターとして用い、かつDNAポリメラーゼを用いる方法とQが3’-デオキシリボヌクレオチド残基である一般式(1)で表される化合物をターミネーターとして用い、かつRNAポリメラーゼを用いる方法とがある。RNAポリメラーゼを用いる方法は、上記第1の方法と重複する。
 上記第1の方法においては、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するターミネーターを用いる。レポーターは、例えば、蛍光性基のみならず、例えば、リン光を発する基、スピン標識された基、及び電子密度が高い基からなる群からも選ぶことができる。ターミネーター上の二種類のレポーターは、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離を介して配置されることが好ましく、 ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離は、例えば、10〜100Åの範囲である。
 レポーターが蛍光性基である場合、蛍光性基としては、蛍光強度や蛍光の波長、RNAポリメラーゼによる取り込みの容易さ等を考慮して適宜選択できる。但し、蛍光性基は、アルゴンレーザーのような適切な供給源からのエネルギー吸収による刺激に引き続いて、検知可能な発光放射を生じる蛍光性基であり、蛍光性基は、一方の発光放射波長が他方の励起波長と共鳴する群から選ばれたセットであることが好ましい。
 尚、好ましい蛍光性基としては、先にW1及びW2について挙げたもの等を挙げることができる。
 レポーターが蛍光性基である場合、2つの蛍光色素(ドナー、アクセプター)の分子間距離を一定にデザインする。この分子間距離を一定に保たせる為の構造として、例えば、上述のようにプロリンのストレッチを挙げることができる。2つの蛍光色素の分子間距離として10〜100Åの範囲、好ましくは20〜60Å、より好ましくは約30〜50Åであることが適当である。プロリンストレッチの場合、20〜60Åは約5〜16残基に相当し、30〜50Åは8〜12残基に相当する。
レポーターが蛍光性基である場合、チェーンターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法に於いて、従来の4色蛍光ターミネーターより効率よく強いシグナル強度を実現する為に設計された4種のエネルギートランスファーターミネーターを選択することが好ましい。AGCT4種の塩基について同時にターミネーション反応を実施する為には、4種のセット(ドナー色素とアクセプター色素の組み合わせ)を用いる。そのようなセットとして、具体的には、例えば、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(FAM、JOE、TMR、XR)、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(FAM、R6G、TMR、XR)、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(R6G、TMR、XR、R110)、ドナー色素A(BODIPY 493/503)、アクセプター色素B(BODIPY FLBr2、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY 530/550)、ドナー色素A(FAM)、アクセプター色素B(BODIPY FLBr2、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY 530/550)、ドナー色素A(オレゴングリーン488)、アクセプター色素B(BODIPY FLBr2、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY 530/550)等のセットが好ましく挙げられるがこれらに限定される物ではない。
 このようなレポーターが蛍光性基であるターミネーターとしては、具体的には、例えば、前記一般式(1)で表される本発明化合物を挙げることができる。
 本発明の第2の塩基配列決定方法は、チェインターミネーター法による方法であって、チェインターミネーション反応を前記一般式(1)で示される本発明の化合物をターミネーターとして用いて行なうことを特徴とする。但し、本発明の第2の方法は、ポリメラーゼとしてRNAポリメラーゼを用いる方法以外に、ポリメラーゼとしてDNAポリメラーゼを用いる方法も包含する。
 本発明の第1の方法及び第2の方法において、ターミネーターとして、前記化合物を用いる以外は、公知の方法をそのまま利用することができる。ポリメラーゼとしてDNAポリメラーゼを用いる方法は、例えば、特開平1−180455号、特表平5−502371号、特表平6−510433号に開示されている。また、DNAポリメラーゼは、耐熱性を改善したポリメラーゼや塩基の種類による取り込み率の違いを改善した変異型ポリメラーゼであることもできる。
ポリメラーゼとしてDNAポリメラーゼを用い、かつターミネーターとして前記一般式(1)に記載の化合物を用いる場合、この化合物は、2’,3’-ジデオキシリボヌクレオチド残基を有し、かつn1またはn2が3以上、より好ましくは3〜10の整数であることが、DNAポリメラーゼによる取り込みが良好であり、精度が高いシークエンスデータが得られるという観点から好ましい。
 ポリメラーゼとしてRNAポリメラーゼを用いる場合、ターミネーターとして、3’−デオキシリボヌクレオチド残基を有する本発明のターミネーター、又は本発明の一般式(1)で示される3’-デオキシリボヌクレオチド残基を有する化合物を用いる。ポリメラーゼとしてRNAポリメラーゼを用いる塩基配列決定方法は、本発明のターミネーターまたは化合物を用いる以外は、例えば、WO96/14434に記載の方法を用いることができる。
即ち、RNAポリメラーゼ及び前記RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA断片の存在下、ATP、GTP、CTP及びUTP又はそれらの誘導体からなるリボヌクレオシド5'−トリフォスフェート類並びにターミネーターとして、本発明のターミネーターから選ばれる3’dATP、3’dGTP、3’dCTP、3’dUTPの誘導体からなる1種又は2種以上、好ましくは4種類の3’−デオキシリボヌクレオシド5'−トリフォスフェート(3’−dNTP誘導体)を反応させて核酸転写生成物を得、得られる核酸転写生成物を分離し、得られる分離分画から核酸の配列を読み取ることで、DNAの塩基配列を決定することができる。
 また、RNAポリメラーゼは、耐熱性を改善したポリメラーゼや塩基の種類による取り込み率の違いを改善した変異型ポリメラーゼであることもできる。鋳型となるDNA断片には、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むこと以外、制限はない。例えば、プロモーター配列を含むDNA断片がポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)により増幅したDNA生成物であることができる。さらに、増幅したDNA生成物から、ポリメラーゼ連鎖反応に用いたプライマー及び/又は2'デオキシリボヌクレオシド5’トリフォスフェート及び/又はその誘導体を除去することなしに、本発明の方法における核酸転写生成反応を行うことができる。また、プロモーター配列を含むDNA断片は、プロモーター配列と増幅対象のDNA断片とをライゲーションした後、適当な宿主を用いてクローニングされたDNA断片であることもできる。
ポリメラーゼとしてRNAポリメラーゼを用い、かつターミネーターとして前記一般式(1)に記載の化合物を用いる場合、この化合物は、3’-デオキシリボヌクレオチド残基を有し、かつn1またはn2が4以上、より好ましくは4〜10の整数であることが、RNAポリメラーゼによる取り込みが良好であり、精度が高いシークエンスデータが得られるという観点から好ましい。
 さらに本発明のDNAの塩基配列決定方法においては、上記本発明のターミネーターまたは上記一般式(1)で表される化合物から選ばれた、4種類の塩基に対応する4種類のターミネーター(但し、各ターミネーターは、アクセプターとして異なる4種類のレポーターをそれぞれ有する)を用い、かつチェインターミネーション反応を同一の反応系内で行うことができる。尚、ターミネーターとして一般式(1)で表される化合物を用いる場合、W1及びW2のいずれか一方がアクセプターとなり、各化合物は、異なる4種類のアクセプターをそれぞれ有する。この方法においては、4種のAGCTに対応するターミネーターの取り込み反応を1本のチューブで行なうことで、より少ない操作でより効率的に塩基配列の決定を行うことができる。
 さらに、本発明の方法においては、チェインターミネーション反応を後述のように無機ピロフォスファターゼの存在下で行うことが、各リボヌクレオチドに対応して得られるピークの高さの差を小さくしてシークエンスの読み取りの精度を向上させることができるという観点から好ましい。
(2)エネルギートランスファー機能を有するプライマーを用いる方法
 本発明の第3のDNAの塩基配列決定方法は、プライマー法によりDNAの塩基配列を決定する方法であって、Qがオリゴヌクレオチド残基である一般式(1)で表される本発明の化合物、中でも、Qが2‘−デオキシリボヌクレオチド残基を末端に有するオリゴヌクレオチド残基である本発明の化合物をプライマーとして用いることを特徴とする方法である。
 本発明の第3の方法では、プライマーとして上記化合物を用いる以外は、DNAポリメラーゼを用いた公知のダイデオキシ法を利用することができる。公知の方法としては、例えば、WO95/21266、特開平10-88124号に開示された方法を利用することができる。
(3)エネルギートランスファー機能を有するイニシエーターを用いる方法
 本発明の第4のDNA塩基配列決定方法は、チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するイニシエーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法である。上記イニシエーターとして、Qが5'末端にフォスフェート基を持たないか、モノまたはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基である一般式(1)で表される本発明の化合物を用いることができる。
 この方法は、より具体的には、RNAポリメラーゼ及び前記RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA断片の存在下、ATP、GTP、CTP及びUTP又はそれらの誘導体からなるリボヌクレオシド5’トリフォスフェート類並びに3’dATP、3’dGTP、3’dCTP、3’dUTP及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる1種の3’デオキシリボヌクレオシド5’トリフォスフェート(以下3’dNTP誘導体という)を反応させて核酸転写生成物を得、得られる核酸転写生成物を分離し、得られる分離分画から核酸の配列を読み取ることを含むDNAの塩基配列決定方法であって、前記核酸転写反応のイニシエーターとして、上記イニシエーターを用いる。ターミネーターとしての3’dNTP誘導体は、非標識の化合物を用いることができる。
 RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA断片を鋳型として、RNAポリメラーゼを用いて核酸転写生成物を酵素的に合成する方法、核酸転写生成物の分離方法、さらには分離された分画から核酸の配列を読み取る方法は、原理的には何れも公知の方法である。従って、これらの点に関して、いずれの公知の方法及び条件、装置等を適宜利用することができる。例えば、WO96/14434に記載されたターミネーター法に関する記載を適宜参照することができる。
 鋳型となるDNA断片には、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むこと以外、制限はない。例えば、プロモーター配列を含むDNA断片がポリメラーゼ連鎖反応により増幅したDNA生成物であることができる。さらに、増幅したDNA生成物から、PCR法に用いたプライマー及び/又は2'デオキシリボヌクレオシド5’トリフォスフェート及び/又はその誘導体を除去することなしに、本発明の方法における核酸転写生成反応を行うことができる。また、プロモーター配列を含むDNA断片は、プロモーター配列と増幅対象のDNA断片とをライゲーションした後、適当な宿主を用いてクローニングされたDNA断片であることもできる。即ち、本発明において、増幅の対象であるDNA配列、プライマー、増幅のための条件等には特に制限はない。
 例えば、プロモーター配列を含むDNA断片の増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応の反応系として、10〜50ngのゲノミックDNA又は1pgのクローンされたDNA、10μMの各プライマー、200μMの各2’デオキシリボヌクレオシド5’トリフォスフェート(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)を含む20μl容量中でDNAポリメラーゼとして、例えばTaqポリメラーゼ等を用いて行うことができる。
 但し、ポリメラーゼ連鎖反応のためのプライマーのいずれか一方又は増幅された挿入(insert)DNAが、後述するRNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含む必要がある。ダイレクト転写シークエンシング法では、PCR法において、2種類のプライマーのいずれか一方にファージプロモーター配列を持っているプライマーを用いるか、又は増幅された挿入DNA内にファージプロモーター配列を持たせることで、得られるPCR生成物はそのプロモーターにより働くRNAポリメラーゼを用いるin vitro転写に付すことができる。
 RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列は、用いるRNAポリメラーゼの種類に応じて適宜選択することができる。
 本発明の第4の方法ではプロモーター配列を含むDNA断片からRNA等の転写物を合成する。DNA断片は、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むので、このプロモーター配列が前述のRNAポリメラーゼに認識されてRNA転写物等の核酸転写物を合成する。
 RNA等の転写物の合成は、前記核酸転写開始剤及びRNAポリメラーゼの存在下、ATP、GTP、CTP及びUTP又はこれらの誘導体からなるリボヌクレオシド5’トリフォスフェート(NTP)類並びに1種の3’dNTP誘導体を反応させる。尚、3’dNTP誘導体は、本明細書においては、3’dATP、3’dGTP、3’dCTP、3’dUTP及びこれらの誘導体の総称として用いる。リボヌクレオシド5’トリフォスフェート(NTP)類としては、その一部がNTP等の誘導体である場合も含めて、塩基が異なる少なくとも4種類の化合物が転写物の合成に必要である。
 転写生成物であるRNA又は核酸の3’末端には、3’dNTP誘導体が取り込まれることにより、3’ヒドロキシ基が欠落し、RNA又は核酸の合成が阻害される。その結果、3’末端が3’dNTP誘導体である種々の長さのRNA又は核酸断片が得られる。塩基の異なる4種類の3’dNTP誘導体について、それぞれ、このようなリボヌクレオシド・アナログ体を得る。このリボヌクレオシド・アナログ体を4通り用意することで、RNA又は核酸配列の決定に用いることができる〔Vladimir D. Axelred er al. (1985) Biochemistry Vol. 24, 5716-5723 〕。
 尚、3’dNTP誘導体は、1つの核酸転写反応に1種類を用い、異なる4種類の3’dNTP誘導体を用いて4回核酸転写反応を行い、3’末端の3’dNTP誘導体の塩基の異なる4通りの転写生成物を得る。1回の核酸転写反応で、3’末端の3’dNTP誘導体は同一で、分子量の異なる種々のRNA又は核酸断片の混合物である転写生成物が得られる。得られた4通りの転写生成物について、独立に、後述する分離及び配列の読み取りに供することができる。また、4通りの転写生成物の2種以上を混合し、この混合物を分離及び配列の読み取りに供することもできる。
 本発明の第4の方法で用いるRNAポリメラーゼは、野性型RNAポリメラーゼ及び変異型RNAポリメラーゼのいずれでも良い。RNAポリメラーゼについては、前記第1または第2の方法に関する記載を参照できる。
無機ピロフォスファターゼ
 本発明の第1〜第4の方法において、核酸転写生成反応は、無機ピロフォスファターゼ存在下で行うことが好ましい。各標識されたリボヌクレオチドに対応して得られるピークの高さ(シグナルの強弱)の差を小さくしてシークエンスの読み取りの精度を向上させて、より正確なシークエンスデータを得ることを可能にする。
ピロホスホロリシスは、DNA合成によって生じるピロリン酸塩が増加することによって起こり、結果として合成されたDNA生成物が分解する方向に反応を促進する働きをする。その結果、ピロホスホロリシスは、DNAポリメラーゼを用いたジデオキシシークエンシング法においてシークエンシングを阻害することになる。それに対して、無機ピロフォスファターゼをDNAポリメラーゼを用いたジデオキシシークエンシング法において使用すると、ピロホスホロリシスを阻害して、安定したシークエンスデータが得られることが知られている[特開平4−506002号]。
 ピロホスホロリシスは、RNAポリメラーゼを用いたシークエンシング法においても有効である。即ち、核酸転写生成反応を無機ピロフォスファターゼ存在下で行うことで、各標識されたリボヌクレオチドに対応して得られるピークの高さ(シグナルの強弱)の差を小さくでき、より安定したシークエンスデータが得られる。
 無機ピロフォスファターゼ(EC.3.6.1.1)は、市販品として入手可能であり、例えば、シクマ社からINORGANIC PYROPHOSPHATASEとして、またベーリンガー社からピロフォスファターゼとして市販されている。また、無機ピロフォスファターゼの使用量は、無機ピロフォスファターゼ及びRNAポリメラーゼの活性の程度にもよるが、例えば、RNAポリメラーゼ1単位に対して10-6〜10-2単位の範囲とすることが適当である。
 本発明によれば、蛍光色素のようなレポーターを1つしか有さない通常の蛍光標識ターミネーターに比べて、それに対応するシグナルが同一分子数で5〜20倍感度が上がる。特に、多本化キャピラリーシークエンサー等またリソグラフィーチャンネルにより、超微細リソグラフィーチャンネルによる電気泳動等による場合、特に効果を示す。特に多本化の傾向は1本の電気泳動レーンの断面積が小さくなる傾向にあり、断面積にローディングできるDNA量がほぼ比例すると考えられる。
 その為ローディングできるDNA量は電気泳動レーン直径の2乗に反比例することが考えられ、そこで多本化の為にはキャピラリーアレーもしくはリソグラフィーによる超微細な泳動チャンネルの幅は1本のキャピラリーの直径に比例し、結局キャピラリーアレー全体の幅を一定とした場合、その感度は本数の2乗に比例した感度が要求される。
 本発明はこのシークエンシングレーンの多本化に極めて効果があると考えられる。また、本発明は非常に分子量の大きな構造体を1つのターミネーターヌクレオチドに結合させる為、最終的にできたシークエンシング反応産物の電気泳動の移動度が通常のターミネーターを用いた時よりも遅れる傾向にある。その為、新たにシークエンサーのベースコールのコンピューターソフトウェアをプログラムすることが適当である。
 以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
 尚、以下の実施例において用いる略号は以下のとおりである。
Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基
Boc:t−ブチルオキシカルボニル基
Lys:リジン
Pro:プロリン
Ac:アセチル基
合成例1 FAM-(Pro)8-Lys(εTMR)の合成
(1)FAM-(Pro)8-Lysの合成
 αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、文献(ペプチド合成の基礎と実験(丸善出版)p218)記載の方法に従って、固相法により合成した。
 即ち、先ず、αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂をピペリジンにより処理してFmoc基を除去した。これと、樹脂上のLysに対して3倍当量のFmoc-Pro(和光純薬工業(株)社製)を含む1-メチルー2-ピロリドン溶液、3倍当量のHOBt、及び3倍当量のN、N'ージイソプロピルカルボジイミドを加え、室温で5時間縮合反応を行う操作により、順次アミノ酸を導入した。全アミノ酸を導入後、3倍当量5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)を縮合した。 反応終了後、樹脂をMeOH洗浄し、55%TFA-ジクロロメタンとアニソール(1ml)混液100mlを加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断すると同時にBoc基(Lysのεアミノ基の保護基)を切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)8-Lys 2.2gを得た。
(2) FAM-(Pro)8-Lys(εTMR)の合成
 合成例1−(1)で合成したFAM-(Pro)8-Lys 500mgをDMF1mlに溶解し、3倍当量のトリエチルアミンと2.5倍当量の5-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)を加え、室温で19時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)8-Lys(εTMR) 420mgを得た。
 合成例2 FAM-(Pro)8-Lys(εXR)の合成
合成例1−(1)で得たFAM-(Pro)8-Lys 500mgと2.5倍当量の5-カルボキシーX−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)とを合成例1−(2)と同じ試薬を用い、同様の操作を行って、FAM-(Pro)8-Lys(εXR) 380mgを得た。
 合成例3 FAM-(Pro)8-Lys(εR6G)の合成
合成例1−(1)で得たFAM-(Pro)8-Lys 500mgと2.5倍当量の5-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)とを合成例1−(2)と同じ試薬を用い、同様の操作を行って、FAM-(Pro)8-Lys(εR6G) 400mgを得た。
 合成例4 FAM-(Pro)8-Lys(εR110)の合成
合成例1−(1)で得たFAM-(Pro)8-Lys 500mgと3.5倍当量の5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)とを合成例1−(2)と同じ試薬を用い、反応終了後、同様の操作を行って、FAM-(Pro)8-Lys(εR110) 300mgを得た。
 合成例5 FAM-(Pro)10-Lys(εTMR)の合成
(1)FAM-(Pro)10-Lysの合成
 αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro10- Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量6.8g)。乾燥樹脂1gに対し、5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(0.6g)、 N-ヒドロキシコハク酸イミド(0.37g)およびジイソプロピルカルボジイミド(500μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルを縮合した。
 反応終了後、樹脂をDMF及びMeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8ml)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)10-Lys (0.63g)を得た。
(2) FAM-(Pro)10-Lys(εTMR)の合成
 合成例5−(1)で合成したFAM-(Pro)10-Lys (13.7mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(4.88mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)10-Lys(εTMR) (10.9mg)を得た。
 合成例6 FAM-(Pro)10-Lys(εXR)の合成
合成例5−(1)で得たFAM-(Pro)10-Lys (9.63mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシ-X−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(3.78mg)とを合成例5−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)10-Lys(εXR) (6.53mg)を得た。
 合成例7 FAM-(Pro)10-Lys(εR6G)の合成
合成例5−(1)で得たFAM-(Pro)10-Lys (3.18mg)をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と6-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(1.11mg)とを合成例5−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)10-Lys(εR6G) (2.66mg)を得た。
合成例8 FAM-(Pro)10-Lys(εR110)の合成
合成例5−(1)で得たFAM-(Pro)10-Lys (5.00mg) をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(2.07mg)とを合成例5−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)10-Lys(εR110) (3.00mg)を得た。
合成例9 FAM-(Pro)12-Lys(εTMR)の合成
(1)FAM-(Pro)12-Lysの合成
 αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro12- Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量7.2g)。乾燥樹脂1gに対し、5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(0.47g)、 N-ヒドロキシコハク酸イミド(0.27g)およびジイソプロピルカルボジイミド(330μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルをを縮合した。
 反応終了後、樹脂をDMF及びMeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8ml)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)12-Lys (0.58g)を得た。
(2) FAM-(Pro)12-Lys(εTMR)の合成
 合成例9−(1)で合成したFAM-(Pro)12-Lys (14.7mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(4.17mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)12-Lys(εTMR) (7.6mg)を得た。
 合成例10 FAM-(Pro)12-Lys(εXR)の合成
合成例9−(1)で得たFAM-(Pro)12-Lys (3.76mg)をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と6-カルボキシ-X−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(1.33mg)とを合成例9−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)12-Lys(εXR) (6.53mg)を得た。
 合成例11 FAM-(Pro)12-Lys(εR6G)の合成
合成例9−(1)で得たFAM-(Pro)12-Lys (3.18mg)をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と6-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(1.11mg)とを合成例9−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)12-Lys(εR6G) (2.75mg)を得た。
 合成例12 FAM-(Pro)12-Lys(εR110)の合成
合成例9−(1)で得たFAM-(Pro)12-Lys (5.00mg) をDMF(0.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(10μl)と5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(0.86mg)とを合成例9−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、FAM-(Pro)12-Lys(εR110) (1.2mg)を得た。
 合成例13 FAM-(Pro)4-Lys(εTMR)の合成
(1)FAM-(Pro)4-Lysの合成
 αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro4-Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量5.4g)。 乾燥樹脂400mgに対し5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(256mg)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(72g)およびジイソプロピルカルボジイミド(90μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルを縮合した。反応終了後、樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8m)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)4-Lys(66.8mg)を得た。
(2)FAM-(Pro)4-Lys(εTMR)の合成
 (1)で合成したFAM-(Pro)4-Lys(10mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.28mg)を加え、室温で19時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)4-Lys(εTMR)(9.8mg)を得た。
 合成例14 FAM-(Pro)6-Lys(εTMR)の合成
(1)FAM-(Pro)6-Lysの合成
 αFmoc-εBoc-Lys-Alko樹脂(100〜200mesh,渡辺化学工業(株)社製)5.0g(αFmoc-εBoc-Lysとして2.4mmol)を出発原料として、合成例1と同様の操作を行いH-Pro4-Lys(Boc)-Alko樹脂を合成した(得量5.8g)。 乾燥樹脂218mgに対し5-カルボキシフルオレッセイン(モレキュラープローブ社製)(128mg)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(73.7mg)およびジイソプロピルカルボジイミド(90μl)より調製した5-カルボキシフルオレッセインコハク酸イミドエステルを縮合した。 反応終了後、樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8m)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、FAM-(Pro)6-Lys(20.6mg)を得た。
(2)FAM-(Pro)6-Lys(εTMR)の合成
 (1)で合成したFAM-(Pro)6-Lys(12mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.5mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、FAM-(Pro)6-Lys(εTMR)(9.29mg)を得た。
 参考例1 Ac-(Pro)10-Lys(εTMR)の合成
(1)Ac-(Pro)10-Lysの合成
 合成例5-(1)で得たH-Pro10-Lys(Boc)-Alko樹脂(1.5g)をDMF(35ml)に膨潤させ、無水酢酸(230μl)、トリエチルアミン(336μl)を加えて20時間反応させた。反応終了後、樹脂をDMF及びMeOHで洗浄し、95%TFA-アニソール混液(8ml)を加えて室温で1時間攪拌反応させて、目的のFAM標識ポリペプチドを樹脂から切断させた。反応終了後、樹脂を濾去し、濾液を減圧濃縮後エーテルを加え反応生成物を沈殿させた。沈殿を集め、デシケーターで乾燥させ、Ac-(Pro)10-Lys (0.45g)を得た。
(2) Ac-(Pro)10-Lys(εTMR)の合成
 参考例1−(1)で合成したAc-(Pro)10-Lys (11.8mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシテトラメチルローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.7mg)を加え、室温で19時間反応させた。 反応終了後、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をゲル濾過カラム(セファデクスLH20、ファルマシア社製)を用いて精製し、Ac-(Pro)10-Lys(εTMR) (6.0mg)を得た。
 参考例2 Ac-(Pro)10-Lys(εXR)の合成
 参考例1−(1)で得たAc-(Pro)10-Lys (10mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシ-X−ローダミンコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(6.5mg)とを参考例1−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、Ac-(Pro)10-Lys(εXR) (4.2mg)を得た。
 参考例3 Ac-(Pro)10-Lys(εR6G)の合成
 参考例1−(1)で得たAc-(Pro)10-Lys (10mg)をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と6-カルボキシローダミン6Gコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(5.3mg)とを参考例1−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、Ac-(Pro)10-Lys(εR6G) (2.66mg)を得た。
 参考例4 Ac-(Pro)10-Lys(εR110)の合成
 参考例1−(1)で得たAC-(Pro)10-Lys (10.4mg) をDMF(1ml)に溶解し、トリエチルアミン(20μl)と5-カルボキシローダミン110ビス-トリフルオロアセテートコハク酸イミドエステル(モレキュラープローブ社製)(8.3mg)とを参考例1−(2)と同様の操作を行って縮合し、精製して、Ac-(Pro)10-Lys(εR110) (4.8mg)を得た。
 実験例1
 プロリン残基10の化合物のエネルギー転移色素[FAM-(Pro)10-Lys(εTMR)、FAM-(Pro)10-Lys(εXR)、FAM-(Pro)10-Lys(εR6G)、 FAM-(Pro)10-Lys(εR110)]と単一色素[Ac-(Pro)10-Lys(εTMR)、Ac-(Pro)10-Lys(εXR)、Ac-(Pro)10-Lys(εR6G)、 Ac-(Pro)10-Lys(εR110)]の40mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)中での蛍光放出強さを比較した。
 各色素溶液を日立F-4010型分光蛍光光度計を用いて励起波長488nmで励起し、蛍光波長はそれぞれ、TMR(580nm)、XR(610nm)、R6G(560nm)、R110(530nm)により測定した。得られた各色素の各相対強度を棒グラフとして図6に示す。
 図6から分かるように、エキルギー転移色素はアクセプター色素それ自体よりもかなり強い蛍光を示すことが分かる。
 実施例1
 FAM及びTMR-標識3’-デオキシウリジン-5'-トリホスフェート(FAM、TMR-標識3’-dUTP)(化合物10)の合成
 合成例1で得たFAM-(Pro)8-Lys(εTMR)(54.1mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(8.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(3.9mg)を加え室温で2時間反応させた。 反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシウリジン-5'-トリホスフェート(8μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。反応液に水(30ml)を加え希釈した後、DEAE-トヨパールイオン交換カラムクロマトグラフィー(1.7X15cm;溶出液:40%アセトニトリル含有炭酸水素トリエチルアンモニウム緩衝液(pH7.5)0.1M→0.7M直線濃度勾配(全量2L))で精製した。
 実施例2
 FAM及びXR-標識3’-デオキシシチジン-5'-トリホスフェート(FAM、XR-標識3’-dCTP)(化合物11)の合成
 合成例2で得たFAM-(Pro)8-Lys(εXR)(71.9mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(10.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(4.9mg)を加え室温で2時間反応させた。反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシシチジン-5'-トリホスフェート(10μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。生成物を実施例1と同様に精製した。
 実施例3
 FAM及びR6G-標識3’-デオキシアデノシン-5'-トリホスフェート(FAM、R6G-標識3’-dATP)(化合物12)の合成
 合成例3で得たFAM-(Pro)8-Lys(εR6G)(55.1mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(8.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(3.9mg)を加え室温で2時間反応させた。反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシアデノシン-5'-トリホスフェート(8μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。生成物を実施例1と同様に精製した。
 実施例4
 FAM及びR110-標識3’-デオキシグアノシン-5'-トリホスフェート(FAM、R110-標識3’-dGTP)(化合物13)の合成
 合成例4で得たFAM-(Pro)8-Lys(εR110)(52.4mg)のDMF(1ml)溶液に、窒素気流下N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(8.2mg)及び4-ジメチルアミノピリジン(3.9mg)を加え室温で2時間反応させた。 反応溶液を5-(6"-アミノ-1"-ヘキシニル)-3’-デオキシグアノシン-5'-トリホスフェート(8μmol)を含むDMF−水混合液に加え更に室温で一夜攪拌した。生成物を実施例1と同様に精製した。
 実施例1〜4で得られた化合物10〜13の構造式を以下に示す。
Figure 2004135673
Figure 2004135673
 参考例5
 野生型T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子のクローニングと発現プラスミドの構築
 大腸菌を宿主とするT7 ファージは、以下のように精製した。大腸菌C600をLB培地(Bacto tryptone 10g, Bacto yeast extract 5g, NaCl 5gを1リッターの水に溶かし、pH 7.5に調整したのち、オートクレーブにて滅菌した培地)200mlに植菌し、菌体濃度がOD(600nm)=1.0に達した時点で、多重感染度約2で感染させ、その後ODを経時的に測定し、ODが急激に落ちた時点で遠心操作にて、菌体残査をのぞき、NaCl及びポリエチレングリコール6000をそれぞれ最終濃度、0.5M、及び10%になるように加え、よく撹拌後、一晩、4℃にて静置し、沈殿を形成させた。この沈殿を遠心操作で集め、SM緩衝液(10 mM Tris-HCl, pH 7.5, 10 mM MgSO4, 50 mM NaCl, 0.01% gelatin)にて懸濁した。このT7 ファージの濃縮液を、次に遠心管に丁寧に重層した密度の異なるCsCl溶液上(下層から、CsCl濃度が、1.267g/ml, 0.817g/ml, 0.705g/mlである溶液)に重層し、22,000rpmで2時間、遠心することにより、ファージ層を形成させ、このファージの白いバンドを丁寧に分取し、TE緩衝液(10mM Tris-HCl, pH 7.5, 1mM EDTA)で透析し、CsCl成分を除去した。更にこのファージ溶液を、フェノール処理により、ファージ蛋白質を変性させ、T7 ファージのゲノムDNAを精製した。
 T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子はこのゲノムDNA、39,937塩基対の内、3171から5822番目にコードされている[T7ゲノム遺伝子の全塩基配列については、Dunnらによって既に報告されている(1983, J. Mol. Biol., 166(4):477-535)。但し、若干の訂正がある(GeneBank、accession No. V01148 J02518 X00411のT7 ファージDNA配列参照)]。このゲノムDNAを鋳型としてPCRを利用して増幅し、以下のように発現ベクターにクローニングした(図2参照)。すなわち、5'末端に制限酵素 Nco I 切断部位をそれぞれ含み、T7 RNA ポリメラーゼ 遺伝子のN末端アミノ酸領域上流に特異的なプライマー(T7Rpol-N 5'-ATA TTT TAG CCA TGG AGG ATT GAT ATA TGA ACA CGA TTA ACA TCG CTA AG -3’)、及び C末端アミノ酸領域下流に特異的なプライマー( T7Rpol-C 5'-ATA TTT TAG CCA TGG TAT AGT GAG TCG TAT TGA TTT GCG -3’)を用いて、この酵素遺伝子を PCR 法により増幅した。この DNA フラグメントを Nco I で消化し、1%アガロース電気泳動を行い、目的のDNAフラグメントをアガロースから切り出し、Gene Pure Kit(ニッポンジーン)を用いて精製した。 これをNco I で消化し脱リン酸化した発現ベクター pTrc99a (ファルマシア・バイオテク) と連結することで T7 RNA ポリメラーゼ を高発現する pT7R を構築した。野生型T7 RNA ポリメラーゼを発現するプラスミドpT7Rは、大腸菌DH5αに形質転換し、抗生物質アンピシリン耐性を示す大腸菌を、培養し、培養液中にIPTGを添加し、発現ベクターpT7Rに含まれるTrc プロモーターを稼働させた。IPTG添加2時間後、大腸菌を回収し、全蛋白質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析したところ、T7 RNAポリメラーゼの分子量である99kDa付近に、IPTGを添加した時のみ蛋白質のバンドが検出された。この蛋白質を更に、Zawadzki, Vら、1991, Nucl. Acids Res., 19:1948 に既に記載されている方法を一部改良した方法(詳しい方法は参考例7で例示されている変異型T7 RNA ポリメラーゼの精製法とほとんど同じ方法で行うことが出来る)で精製したところ、T7 プロモーター特異的に作用するRNAポリメラーゼの活性を有していた。
 参考例6
 変異型T7 RNAポリメラーゼを生産するための発現プラスミドの構築
  (1)変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yを生産するための発現プラスミドの構築(図3参照)
野生型T7 RNA ポリメラーゼ 遺伝子の挿入してある pT7R を鋳型にして、T7 RNA ポリメラーゼ 遺伝子のC末端側に相当する制限酵素 Hpa I , Nco I 部位 に挟まれる領域を PCR 法を利用して変異を導入した。更に詳しく例示すると、変異を導入したい塩基を境界として、左右に分け、変異の導入してある プライマーF646Y(+) (5'-GTT GAC GGA AGC CGT ACT CTT TGG AC-3’)、 F646Y(-) (5'-GTC CAA AGA GTA CGG CTT CCG TCA AC-3’) とそれぞれの制限酵素切断部位を5'末端に持つ プライマーT7RNAP-HpaI-N (5'-CGC GCG GTT AAC TTG CTT CCT AG-3’) 、pTrc99a-PstI-C (5'-GCA TGC CTG CAG GTC GAC TCT AG-3’)を用いて PCR によりそれぞれの DNA フラグメントを増幅した。これらの DNA フラグメントには相補する部分があり、これらを変性、アニール、伸長反応を繰り返すことで目的の変異の導入された DNA フラグメントを作製した。この DNA フラグメントをアガロースゲル電気泳動により、目的の大きさの DNA フラグメントのみを切り出すことで精製し、これを鋳型としてプライマーT7RNAP-HpaI-NとpTrc99a-PstI-Cを用いて再増幅し、制限酵素Hpa I , Pst I で切断した。このDNAは1%アガロース電気泳動を行い、分離した後、目的のDNAフラグメントを切り出し、精製した。この DNA フラグメントを pT7R のHpa I , Pst I DNA フラグメントと置き換えることで変異を導入し, 大腸菌DH5αに形質転換し、変異の導入されたプラスミドを選択し、最終的には塩基配列を確認することで目的の位置に変異が導入されているかどうかを確認した。そして、変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yを生産するための発現プラスミドpT7RF644Yを得た。このプラスミドからの変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yの生産は、野生型T7 RNAポリメラーゼの生産と同様、本プラスミドを含む大腸菌を培養し、IPTGを添加することにより、発現誘導可能であった。
 (2)変異型T7 RNAポリメラーゼL665P/F677Yを生産するための発現プラスミドの構築(図4及び5参照)
 変異型T7 RNA ポリメラーゼL665P/F667Yの構築は、先のF644Yの構築同様、PCR法をベースにして以下のように行った。
 先ず、野生型T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子を持つ発現ベクターpT7R中のT7 RNA ポリメラーゼ遺伝子領域内に、変異導入操作を容易にするため制限酵素XhoI (CTC GAG)を導入した。更に具体的に述べるとプライマーApaF1 (5'-CAT CTG GTC GCA TTG GGT CAC-3’)とプライマーXho-R (5'-CCA AGT GTT CTC GAG TGG AGA-3’)の組み合わせで、また、Xho-F (5'-CTA AGT CTC CAC TCG AGA ACA CTT GG-3’)とプライマーAflII-R (5'-CAG CCA GCA GCT TAG CAG CAG-3’)の組み合わせで、各々鋳型として発現ベクターpT7Rを用いて、PCRを行った。増幅した前者のDNAフラグメントは制限酵素ApaIとXhoIで、後者の増幅したDNAフラグメントは制限酵素AflIIとXhoIでそれぞれ反応し、さらに発現ベクターpT7Rを予めApaIとAflIIで処理して、全てをT4 DNA ライゲースを用いて結合させた。この反応物を大腸菌DH5αに形質転換し、抗生物質アンピシリンを含んだ寒天平板上で生育するコロニーを複数得た。このコロニーをいくつか選択し、培養、プラスミドDNAの抽出を行い、T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子領域内に制限酵素XhoI部位が生まれたプラスミドpT7R-Xhoを得た(図4参照)。このXhoI部位は、制限酵素XhoIで処理することによって、切断されること及びDNAの塩基配列決定を行い、その存在を確認可能である。このプラスミドpT7R-Xhoを鋳型として、プライマーXho-Rとプライマー667R (5'-GCT GAG TGT ACA TCG GAC CCT-3’)の組み合わせとプライマー667F (5'-GCT GAG TGT ACA TCG GAC CCT-3’)とプライマーAflIIRの組み合わせで各々PCRを行った。このPCR産物を直接鋳型として、DNAの塩基配列を決定し、プライマー667Rおよび667Fの配列を確認し後、それぞれを2%アガロース電気泳動(アガロースはニッポンジーン製のアガロースXを使用)を行い、目的の大きさのDNAフラグメントを切り出し、Gene Pure Kitを用いて、このDNAフラグメントを精製した。この精製した2つのDNAを混合し、鋳型としてプライマーXhoF及びAflIIRを用いてPCRを行い、増幅したDNAフラグメントを制限酵素マッピング、DNA塩基配列の解析により目的のフラグメントであることを確認後、制限酵素XhoIとAflIIを用いて酵素反応を行い、これを予め制限酵素XhoIおよびAflIIで処理したプラスミドpT7R-XhoにT4 DNA ライゲースを用いて結合させた。この反応物を大腸菌DH5αに形質転換し、抗生物質アンピシリンを含んだ寒天平板上で生育するコロニーを複数得た。このコロニーをいくつか選択し、培養、プラスミドDNAの抽出を行い、目的の変異が導入されているかをDNA塩基配列の決定を行い、確認し、最終的に目的の変異型T7 RNAポリメラーゼL665P/F644Yを生産するための発現プラスミドpT7RL665P/F667Yを構築した(図5参照)。このプラスミドからの変異型T7 RNAポリメラーゼL665P/F667Yの生産は、野生型T7 RNAポリメラーゼの生産と同様、本プラスミドを含む大腸菌を培養し、IPTGを添加することにより、発現誘導可能であった。
 参考例7
 変異型T7 RNA ポリメラーゼ の精製
 大腸菌に導入した変異型T7 RNA ポリメラーゼ蛋白質を精製した。
 尚、本蛋白質の野生型については既にChamberlin, M et al. Nature, 228:227-231(1970), Davanloo et al., Proc.Natl. Acad. Sci.USA., 81:2035-2039(1984)に記載されている。さらに大量生産に関しては、Zawadzki, V et al., Nucl. Acids Res., 19:1948(1991)に報告されている。
 変異型T7 RNA ポリメラーゼは基本的に全て同じ方法で精製できる。変異部位の違いにより、その発現量、カラムクロマトクラフィの挙動が若干異なることもある。以下、変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yの精製法を例示する。F644Yの発現ベクターpT7RF644Yを大腸菌DH5αに導入、抗生物質アンピシリンを含んだLB培地にて、先ず、試験管培養にてOD(600nm) =0.4〜0.6になったとき、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度0.4mMになるように加え、更に8時間培養する。このとき遠心分離により、大腸菌菌体を集め、典型的には2リッターの培養液より10gの湿重量の大腸菌が得られる。この大腸菌菌体を直ぐに使用しない時は、-20℃以下の冷凍庫で保存が可能である。
 この段階以降、酵素の精製の全ての工程は、特記しない限り、室温以下の温度、好ましくは0〜5℃にて実施する。この大腸菌は、このとき菌体重量の10倍の洗浄緩衝液(20mM Tris-HCl, pH 8.1, 130 mM NaCl, 2mM EDTANa2 at 25℃)で洗い、再び遠心分離(5,000xg、4℃にて10分間)し、10倍量のソニケーション緩衝液 [50 mM Tris-HCl, pH 8.1, 100 mM NaCl, 0.1 mM EDTANa2, 5 mM ジチオスレイトール(DTT)、0.1 mM ベンザミジン, 30μg/ml フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、10μg/ml、バシトラシン] に懸濁し、ソニファイヤー450(ブランソン社)を用い、80W、15分間超音波処理を行い菌体を破砕、粘度を低下させる。続いて、12,000xg、4℃にて10分間遠心分離し、細胞残査を除いた。得られた上清を撹拌しながら、10%硫酸ストレプトマイシンをゆっくりと滴下し、終濃度2.0%とした後、更に30分間撹拌を続けた。12,000xg。4℃にて10分間遠心分離し、沈殿を除去し、粉末硫安をゆっくり添加しながら撹拌し、沈殿を形成させる。この場合、最初に30%飽和硫安で沈殿を集め(30%硫安沈殿)、上清は更に60%飽和硫安になるように硫安を撹拌しながら添加し、再び沈殿を形成させ(30-60%硫安沈殿)、更に上清を90%飽和硫安になるように粉末硫安を加え、4℃にて1時間撹拌し、遠心し回収した。この3つの硫安画分の一部をSDS-アクリルアミドゲル電気泳動を行い、蛋白質を分析したところ、目的の変異型T7 RNA ポリメラーゼのほとんどは、30-60%硫安画分に存在し、以後この画分を用いて精製を進めた。30-60%硫安画分は少量のカラム緩衝液(20 mM KPO4, pH7.7, 100 mM NaCl, 1mM DTT, 30μg/ml PMSF)に懸濁し、同じ緩衝液500mlにて、16時間透析し、脱塩した。この透析液を、カラム体積5mlのヘパリン-セファロース(ファルマシア・バイオテク)に付加する。次いで、このカラムを同緩衝液で、280nmの紫外線吸収物質が検出されなくなるまで洗浄し、カラム体積の約40倍の体積の同一緩衝液中の0.1M〜0. 64M NaClの直線濃度勾配で溶出する。溶出液は、適当量を試験管に分画して集め、直ぐにSDS-アクリルアミドゲル電気泳動を行い、蛋白質を分析し、目的の変異型T7 RNA ポリメラーゼと思われる分子量付近に蛋白質が存在する分画を検査する。典型的な例では0.4M のNaCl付近に見いだされるはずである。この蛋白質を含む分画を集め、約1リッターのカラム緩衝液(20 mM KPO4, pH7.7, 100 mM NaCl, 1mM DTT, 30μg/ml PMSF)に対して16時間透析し、脱塩操作を行った。この透析脱塩した分画を、同緩衝液で予め平衡化した5ml のカラム体積のQ-セファロース(Q-sepharose, ファルマシア・バイオテク)に付加し、同緩衝液で、280nmの紫外線吸収物質が検出されなくなるまで洗浄し、カラム体積の約40倍の体積の同一緩衝液中の0.1M〜0.64M NaClの直線濃度勾配で溶出する。溶出液は、適当量を試験管に分画して集め、直ぐにSDS-アクリルアミドゲル電気泳動行い、蛋白質を分析し、目的の変異型T7 RNA ポリメラーゼと思われる分子量付近に蛋白質が存在する分画を検査する。典型的な例では0.24M のNaCl付近に見いだされるはずである。この蛋白質を含む分画を集め、500mlの保存用緩衝液(50% glycerol, 20 mM KPO4, pH7.7, 100 mM NaCl, 1mM DTT, 30μg/ml PMSF) に対して16時間透析し、使用まで-20℃にて保存する。この状態で、イン・ビトロのRNA合成活性、或いは混入しているリボヌクレアーゼ活性について試験する。ここでこの方法を例示すると、イン・ビトロRNA合成活性については、T7 プロモーターを含むプラスミドを鋳型として用い、野生型T7 RNA ポリメラーゼの市販品(BRL・ギブコ社)を標準品として酵素希釈法を用いて、RNA合成反応を行い、合成したRNAをアガロース電気泳動する事により、おおよその力価を推定した。このとき、合成されたRNAの分解の程度も観察されるため、同時に混入リボヌクレアーゼに関しての、簡単な検定も可能である。典型的な例として、以上のような工程を踏まえた精製法で、1リッターの培養液から2,500,000単位の変異型T7 RNA ポリメラーゼF644Y蛋白質が精製され、この標品にはほとんどRNaseの混入は認められない。
 参考例8
 RNase活性の混入のない無機ピロホスファターゼの精製
RNaseの混入のない、無機ピロホスファターゼ(PPase)は以下のように精製したが、以下の方法に限定されるものではない。
 無機ピロホスファターゼの出発材料としては、シグマ社製の酵母由来の粗精製品(シグマI-1643, EC.3.6.1.1)、4mg(680単位)を緩衝液(20mM Tris-HCl, 1 mM EDTA, pH 7.9)1mlに懸濁し、同緩衝液に対して2時間透析し、脱塩操作を行い、この透析液をカラム体積1mlのSP Sepharoseカラムクロマトグラム(ファルマシア・バイオテック)を行った。具体的には約20倍の体積の同カラム緩衝液で280nmの紫外線吸収物質が検出されなくなるまで充分洗浄し、カラム体積の約20倍の体積の同緩衝液を用いて0〜0.1MのNaCl直線濃度勾配で溶出する。溶出液は、適当量に分画して集め、直ぐにSDS-12.5%ポリアクリルアミド電気泳動を行い、分子量約32kDaの蛋白質を含む画分を検査した。典型的な例では、PPase画分は、未吸着部分に見いだされるはずである。この蛋白質を含む分画を集め、カラム体積1mlのQ-Sepharose(ファルマシア・バイオテック)に吸着させ、カラム体積の約20倍の体積の同緩衝液中を用いて0〜1.0MのNaCl直線濃度勾配で溶出する。溶出液は、適当量に分画して集め、直ぐにSDS-12.5%ポリアクリルアミド電気泳動を行い、分子量約32kDaの蛋白質を含む画分を検査した。典型的な例では、0.35MのNaCl付近に見いだされるはずである。分子量32kDaの蛋白質を含む分画を集め、500mlの保存緩衝液(20mM Tris-HCl, 1mM EDTA, 50% glycer ol, pH7.9)に対して16時間透析し、使用まで-20℃にて保存する。典型的な例では、回収率62.5%でPPase蛋白質425単位、0.425単位/μlの標品を得ることが出来る。
 この状態でRNase混入度合いを、大腸菌のrRNA(16Sと23S)8μgを基質として検査した。具体的には、大腸菌rRNAを8mM MgCl2、2mM spermidine-(HCl)3、5m M DTT、40mM Tris/HCl pH 8.0の緩衝液中で、PPase、0.17単位相当を加え、37℃、4時間反応させた。このRNAをホルムアミドが存在する変性条件下の1.0%アガロ―ス電気泳動を行い、共に添加した色素であるキシレンシアノールがアガロースゲルの約1/3に達したときに泳動を止め、紫外線(波長254nm)を照射して、写真撮影を行い、RNAの分解度合いを検査した。このとき、粗精製品と精製後のPPaseを比較したところ、粗精製品ではRNAの分解が観察されたが、精製品については、有為なRNA分解活性が検出されなかった。
 実施例5
変異型RNAポリメラーゼを用いたイン・ビトロ転写反応におけるエネルギートランスファーターミネーターと従来のダイターミネーターを用いたシークエンシング反応例比較
3’dNTPのエネルギートランスファーターミネーターの塩基配列決定法における効果を変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yを用いたイン・ビトロ転写反応で調べた。シークエンシング反応は、Melton, D.A. (1984, Nucleic Acids Res., 12: 7035-7056)によって示された方法を用いた。さらに具体的に述べると、T7プロモーターを有するプラスミドベクターpBluescriptKS(+)(ストラタジーン社)を、制限酵素PvuIIで反応し、線状にしたものを鋳型として用いた。3’dNTPのエネルギートランスファーターミネーター誘導体としては、実施例1〜4で合成した化合物10〜13であるプロリンスペーサーを有するダイターミネーターを用いた。具体的には、4μM FAM及びR6G-標識3’-dATP, 4μM FAM及びR110-標識3’-dGTP, 80μM FAM及びXR-標識3’-dCTP及び20μM FAM及びTMR-標識3’-dUTP、500μM GTP, UTP及び250μM ATP, CTP、8mM MgCl2、2mM spermidine-(HCl)3、5mM DTT、40mM Tris/HCl pH 8.0 (BRL, ギブコ社)の条件下に、変異型T7 RNAポリメラーゼF644Y(25U)、酵母由来の無機ピロホスファターゼ( 0.045U)を加えて、合計反応体積10μlとして、37℃で一時間反応を行った。
 また、比較のための1つの蛍光色素を有するダイターミネーターを用いた反応は、4μM R6G-4x-3’dATP, 4μM R110-4x-3’dGTP, 80μM XR-4x-3’dCTP, 20μM TMR-4x-3’dUTP), さらに500μM GTP, UTP及び250μM ATP, CTP、8mM MgCl2、2mM spermidine-(HCl)3、5mM DTT、40mM Tris/ HCl pH 8.0 (BRL, ギブコ社)の条件下に、変異型T7 RNAポリメラーゼF644Y(25U)、酵母由来の無機ピロホスファターゼ(0.05U)を加えて、合計反応体積10μlとして、同じく37℃で一時間反応を行った。次に反応産物中に残存している未反応のターミネーターを除去するため、セファデックスG-50カラム(ファルマシア・バイオテク製)を用いたゲル濾過法により転写産物を精製し、精製産物は遠心式エバポレーターを用いて蒸発乾固した。
 この乾燥させた反応物をABI社(Perkin Elmer Corporatio n, Applied Biosystems Division)のABI PRISM 377 DNA Sequencing System取り扱い説明書Ver.1.0に従い、ホルムアミド/EDTA/Blue dextrane loading buffer 6μlに溶解し、そのうち2μlを、6M尿素/4%ロングレンジャーTMアクリルアミド溶液(FMC社)を含むシークエンス解析用変性ゲルを用い、ABI 377 DNA Sequencer及び解析プログラム(Sequencing Analysis Ver.3.0)により解析した。
 その結果、エネルギートランスファーターミネーターを用いた場合、各シークエンスラダーの強度が高いことが判明し、ホルムアミド/EDTA /Blue dextrane loading bufferと用いて反応物を希釈し、そのうち2μlを泳動した。その結果、10倍希釈したものが、ほぼ、従来のダイ・ターミネーターを用いたときとほぼ同じピーク強度でシークエンシング出来ることが判明した。このエネルギートランスファーターミネーターを用いた反応物を10倍希釈したシークエンスパターンの典型例を、従来のダイ・ターミネーターを用いたときのシークエンスパターンと比較したものを図1に提示した。この結果より、エネルギートランスファーターミネーターを用いると従来のダイ・ターミネーターを用いたときの10倍の感度でシークエンシングが可能であることが判明した。
 変異型T7 RNAポリメラーゼF644Yの代わりに変異型T7 RNA ポリメラーゼL665P/F667Yを用いてシークエンシングを行った結果、上記と同様の結果が得られた。
 上記で用いたR6G-4x-3’dATP (14)、R110-4 x-3’dGTP(15)、XR-4x-3’dCTP (16)及びTMR-4x-3’dUTP (17)の化学構造式を以下に示す。
Figure 2004135673
Figure 2004135673
図1は、実施例5で得られたシークエンスパターンである。 図2は、野生型T7 RNAポリメラーゼを発現するプラスミド、pT7Rの構築図である。 図3は、変異型T7RNA ポリメラーゼF644Yを発現するプラスミド、pT7RF644Yの構築図である。 図4は、T7 RNA ポリメラーゼ遺伝子中に制限酵素XhoI部位を持つ、pT7Rの改良型プラスミド、pT7R-Xhoの構築図である。 図5は、変異型T7RNA ポリメラーゼL665P/F667Yを発現するプラスミド、pT7RL665P/F667Yの構築図である。 図6は、実験例1で得られた、エネルギー転移色素の蛍光強さの比較図である。

Claims (12)

  1. チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するイニシエーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法。
  2. Qが5'末端にフォスフェート基を持たないか、またはモノ若しくはジフォスフェート基を有するモノまたはオリゴヌクレオチド残基である下記一般式(1)で表される化合物をイニシエーターとして用いる請求項1に記載の方法。
    Figure 2004135673
    (式中、Qはモノまたはオリゴヌクレオチド残基を示し、Vは−C≡C−(CH2n1−NH−または−CH=CH−(CH2n2−NH−(但し、n1及びn2は1以上の整数を示す)を示し、R1は3価の基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子若しくは炭化水素基を示すか、またはR2及びR3が互いに結合し、隣接するCH及びNHと一緒になって環を形成してもよく、W1及びW2はそれぞれ独立して蛍光性基を示し、mは1以上の整数を示す。)
  3. 1
    Figure 2004135673
    (式中、R21〜R23はそれぞれ独立して結合手又は2価の炭化水素基を示す。)である請求項2記載の方法。
  4. 1及びW2の間の距離が10〜100Åの範囲となるように、R2、R3及びmが選ばれる請求項2または3記載の方法。
  5. ターミネーターとして非標識のターミネーターを用いる請求項1に記載の方法。
  6. チェインターミネーター法でDNAの塩基配列を決定する方法であって、3’-デオキシリボヌクレオチド残基、並びにエネルギートランスファーのドナー及びアクセプターになり得る二種類のレポーターを有するターミネーターとRNAポリメラーゼとを用いてチェインターミネーション反応を行なうことを特徴とする方法。
  7. ターミネーター上の二種類のレポーターが、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離を介して配置された請求項6に記載の方法。
  8. ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが生じるに十分な距離が、10〜100Åの範囲である請求項7記載の方法。
  9. レポーターが蛍光性基、リン光を発する基、スピン標識された基、及び電子密度が高い基からなる群から選ばれる請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. ドナーがフルオレスセイン系色素、ローダミン系色素及び4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素からなる群から選ばれる一種であり、アクセプターがフルオレスセイン系色素、ローダミン系色素及び4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン系色素からなる群から選ばれる一種である請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 4種類の塩基に対応する4種類のターミネーター(但し、各ターミネーターは、アクセプターとして異なる4種類のレポーターをそれぞれ有する)を用い、かつ上記4種類のターミネーターによるチェインターミネーション反応を同一の反応系内で行う請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. チェインターミネーション反応を無機ピロフォスファターゼの存在下で行う請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。

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