【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層膜からなる赤外線センサに関するものである。特に、スパッタリングによる酸素の添加率が異なる膜を積層化し、導電率およびサーミスタ定数(以下B定数)を容易に制御できる多層膜からなるボロメータ型赤外線センサ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボロメータ型赤外線センサは抵抗体の抵抗値が温度により変化する性質を利用した赤外線センサで、白金やニッケル等の感温抵抗素材が使用されてきた。この素材についても多くの開発がなされ機器の小型化により今日ではその種類も多岐にわたるようになった。
【0003】
このなかで、ボロメータ型赤外線センサは冷却の必要性、波長の依存性がないが、低い感度や熱応答性か遅いといった課題があった。しかしながら、微細加工技術を駆使することで小型で高い断熱構造を実現すれば感度と応答性に優れたボロメータ型赤外線センサが可能との見地から本件発明者等は種々の改良を試みてきた。この結果本発明はスパッタリング技術を利用した多層膜を形成させることでこれら課題を解決したボロメータ型赤外線センサに関するもので、また、その製造方法を提供するものである。
従来、ボロメータ型赤外線センサは産業機械、家電、福祉・医療、セキュリティ分野などの多様な産業分野において広く利用されている。赤外線センサの種類としては半導体型や焦電型も多用されている。しかしながら、これら従来の赤外線センサは冷却機構や波長依存性が課題とされており、さらに機械的チョッパー機構などが必要なため、性能とコストの両立など各々の課題を抱えているのが現状であった。
【0004】
また、IT分野等でセンサの需要が高まる中で低コストで高性能な赤外線センサが望まれている。これに対して、赤外線の熱エネルギーを電気的変化としてとらえる抵抗ボロメータ型の赤外線センサは低コスト化の候補として注目されていた。ボロメータ型赤外線センサはアレイ化も可能であることから、汎用性の高い赤外線センサとして期待されている。ただし、ボロメータ型赤外線センサは感度などのセンサ特性が劣るために、この特性向上が大きな課題である。センサ部分を薄膜化することなどでセンサ性能の向上が試みられているが、著しい改善は図られていない。センサ特性に直接関わる薄膜の導電率、サーミスタ定数を同時に制御することがセンサ特性の向上につながるが、従来技術では改善方法は得られていなかった。
【0005】
近年、センサ部分を薄膜化することなどでセンサ特性の向上が試みられているが、センサとしての特性に直接起因する薄膜の導電率とサーミスタ定数の両者を高感度、小型、低コスト化されたボロメータ型赤外線センサとして成立させることが困難で、これの解決が課題であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では前記課題を解決し、ボロメータ型赤外線センサの性能向上を達成するためのものであって、多層膜からなる赤外線センサに関するものである。特に、スパッタリングによる酸素の添加率が異なる膜を積層化し、導電率およびサーミスタ定数(以下B定数)を容易に制御できる多層膜からなるボロメータ型赤外線センサ及びその製造方法に関する。この多層膜は、所望の導電率と高いB定数を両立させることを可能としたものである。すなわち、導電率が大幅に変化する薄膜材料の性質に注目して、スパッタリングにおける酸素の添加率が異なる膜を積層化する成膜方法を試みた結果、センサ膜全体の導電率を所望の値に制御することができ、かつ赤外線に対する感度が高い条件の薄膜層を最表面に設置することを可能とした。また、スパッタリングにおいて同一バッチで酸素添加量を変化させるだけで極めて容易に多層膜が成膜できるので、高性能なセンサ用薄膜を容易に低コストで形成することができた。
この結果、IT分野を始め低コストで高性能なニーズを必要とする赤外線温度センサとして多方面への応用が可能となる多層膜からなる赤外線センサ及びその製造方法に関する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は導電率およびサーミスタ定数を制御した各薄膜層からなる多層膜ボロメータ型赤外線センサであって、基板と、スパッタリング方式で前記基板上に多層に成膜させた前記各薄膜層とからなる多層膜と、前記多層膜から得られる所望の導電率とB定数とを備えた多層膜からなる赤外線センサにより提供される。
【0008】
また、前記各薄膜層とからなる多層膜のうち、サーミスタ定数の大きい薄膜層を前記基板の最上層に形成させてなる前記の多層膜からなる赤外線センサにより提供される。
【0009】
さらに、前記基板上に形成された電極面上にスパッタリングにより形成された金属酸化物薄膜層と、さらに多層化させて形成された前記薄膜層のうち最上層に上部電極面を形成させてなる前記記載の多層膜からなる赤外線センサにより効果的に提供される。
さらにまた、前記各薄膜層の数が2ないし4層からなる前記請求項1及び3のいずれか記載の多層膜からなる赤外線センサにより効果的に提供される。
【0010】
本発明の製造方法として、導電率およびサーミスタ定数を制御した各薄膜層からなる多層膜ボロメータ型赤外線センサの製造方法であって、前記基板上に下部電極面を形成させる工程と、前記電極面にスパッタリングにより金属酸化物薄膜層を形成させる工程と、さらに前記薄膜層上に順次多層となるように各薄膜層を形成させる工程と、前記薄膜層のうち最上層に上部電極面を形成させる工程と、これらから多層膜として前記薄膜層を順次重ねさせ所望の導電率とB定数とを制御させる工程とからなる多層膜からなる赤外線センサの製造方法により提供される。
また、前記各薄膜層の数が2ないし4層からなる多層膜として形成させる前記の多層膜からなる赤外線センサの製造方法により効果的に提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、具体的に発明の実施の形態について説明する。図面を参照して説明すると、図1は本発明の赤外線センサの要部側面図であり、図の左が赤外線センサ全体の要部側面図、図の右が赤外線センサのうち、センサ膜1を薄膜層で多層化させた状態を示したものである。基板3に形成された下部電極2にセンサ膜1をニッケル(Ni)とクロム(Cr)原子を含む金属酸化物(NiO−Cr2O3)ターゲットを用いて、スパッタリング法により、基板3上に金属酸化物薄膜を成膜させるものである。このスパッタはプラズマ内のイオンが金属酸化物ターゲット近傍の陰極降下により加速されターゲットに衝突してターゲット原子をたたき出し、前記原子が基板3上に付着して薄膜層が形成される。
【0012】
また、センサ膜1には上部電極4を形成させている。図1の右ではセンサ膜1を多層化させた多層膜を拡大させた要部側面図で、基板3側から薄膜層5ないし7と表示されている多層膜からなるセンサ膜1は薄膜層1、薄膜層2及び薄膜層3の3薄膜層により形成されている。センサ膜1は薄膜層の数が複数であればよく後述するセンサの特性を厳密な制御をする上で、2ないし5薄膜層、望ましくは2ないし4薄膜層程度が製造面でも望ましい。本発明では3薄膜層で試作した。ここで、センサの特性を厳密な制御として必要なパラメータは温度測定においては使用温度領域での赤外線センサの抵抗値、B定数、感度、熱応答速度等である。
【0013】
ここで、用いられる基板として必要な特性は、センサの特性面でのスパッタ薄膜との熱膨張率の差異がないこと、経時的な安定性があり、低コストであり、製造の容易さ等から、シリコンウェハ、アルミナ・ガラス基板等を使用することができる。本発明ではシリコンウェハを使用し、大きさは赤外線センサとしては、厚さ0.3mm、長さ3.0mm、幅3.0mmに仕上げた。また、高速な熱応答性を持つ赤外線センサを得るためには、基板の形状に大きく依存することから、熱容量の小さなものの使用が望ましく、現在使用されている基板技術、LSI製造技術のほか、今後の超LSI技術での製造手段等の適用を否定するものではない。同様、センサ部分とともに小型化、量産性、用途による利用しやすい形状の選定も重要である。
【0014】
また、スパッタ装置としては、基本構成としてバッチ式、連続処理の可能なイン・ライン式、カセット・ツー・カセット式、ロードロック式が使用でき、本発明ではバッチ式スパッタ装置によった。装置内部は基板3用ホルダー(センサ用としての基板は個々のセンサに切り出されるが、説明の都合上個々のセンサとして処理の状態で説明する。)に載置した基板3、その上の図示しないシャッター、ターゲット等を備えた真空容器でスパッタ作業が実施される。排気系として粗引き用のロータリーポンプ、主排気に油拡散ポンプ、さらに真空度を上げるクライオ・ポンプ等の併用により排気効率及び真空度を制御するとともにガイスラー管、BAゲージにより真空度が測定される。
【0015】
真空容器内のいわゆるスパッタ室はカソード電極、基板ホルダー、シャツターからなり、スパッタリングとしてのターゲットが基板ホルダーに対向した位置に側面から見て平行に配置されている。スパッタリングには高周波スパッタが実施される(13.56MHz、400W)。スパッタリングは基板のセッティング、排気加熱、スパッタリング、冷却等を一連で行うバッチ式で実施した。
【0016】
以下本発明にしたがって赤外線センサの製造方法につき述べる。
本発明の基本的な考え方は次の通りである。
スパッタガスとしてアルゴンと酸素雰囲気中で成膜を行うと、スパッタリングで形成したセンサ膜は酸素の添加率によって薄膜の導電率が1.7×10−9から5.2×10(S/cm)の範囲で大幅に変化する。この関係を表1に示した。
【0017】
【表1】
【0018】
また、B定数についても−410〜4100Kの範囲で変化することが実験的に確かめられた。導電率が高くなるとB定数は低下する傾向になり、導電率が低くなると逆にB定数は上昇する傾向になることも確認された。この傾向を示したのが図2である。図2は左縦軸が導電率、右縦軸がB定数、横軸が酸素ガスとアルゴンガスのうち酸素ガス流量比(02 /(02+Ar))(%)である。ガス流量の測定はマスフローコントローラにより、導電率の測定値は30℃でのデータである。酸素ガス流量比が0%で導電率は最小、すなわち絶縁体に近く、20%でピークとなりかなり抵抗値が小さな薄膜が得られ、その後低下し50%を超えると導電率が上がる傾向が確認された。
【0019】
一方このときのB定数は0%付近で最大の負の温度係数(4100K)、すなわち抵抗温度変化率が最大付近となり、20%前後から30%台では正の温度係数となり、温度上昇に伴い抵抗値が増加する領域となっている。さらに、35%以降は負の温度係数に戻り、B定数が1500Kでピークとなり一般的なサーミスタ抵抗体と類似したレベルである。さらに100%程度で1000Kと下がる傾向が確認された。
【0020】
この結果、薄膜層を酸素ガス流量比の酸素添加率を制御することで導電率、B定数が決定されることが理解されよう。しかしながら、大きなB定数で低い抵抗体を得るには前記説明からも容易に製造することが困難で、これの解決に課題が残った。このため、本発明者等は鋭意努力の結果、膜を多層化することで、所望の導電率、B定数を得ることが可能ではないか、赤外線検出表面部分にはB定数を大きく、すなわち感度を上げ、薄膜層を薄くすることで抵抗値を下げれば、導電率が低い(抵抗値が高くなる)領域でも製造可能ではないかとの解決手段を見出した。一方、赤外線検出表面部分より奥の層はB定数が小さく、すなわち感度が鈍く、薄膜層を厚くしても抵抗値は余り上がらない、いわば薄膜強度の向上及びセンサ抵抗値の調整に好適な領域といった発想を取り入れることにした。
このように、導電率、B定数の酸素添加率依存性に着目して、多層化の組み合わせは、センサ素子の設計に際して基本的な考え方と理解されよう。
【0021】
したがって、この傾向を利用する方法として、赤外線センサにより必要な、導電率及びB定数の値を薄膜層の積層化で、薄膜層1から薄膜層n(nは有限な数十を超えるものでも可能で制限はないが、実際上はせいぜい2〜6の範囲での製造がコスト的に適当である。)の間で各薄膜層に対するスパッタリングの程度を酸素添加率と薄膜層の厚さを設定することで解決した。なお、当然ながら、スパッタリングされる金属の種類を適宜選択することで本発明の変更が可能でありそれらを除外するものではない。
【0022】
これらの薄膜層の形成は広い範囲でこの2つの導電率、B定数パラメータを任意に設定でき、また、製作された赤外線センサの経時変化を少ない良好な赤外線センサとすることもできた。
アルゴンガスを使用した理由はスパッタ率が高いこと、空気中に1%程度含まれ、安価に利用可能からもスパッタ装置に多く利用されている。これに酸素と併用し試作した。
例えば、酸素の流量比率が5%、(02 /(02+Ar))=0.5/9.5sccm((SI単位記載で8.335×10−9/1.584×10−7m3/S(1気圧))の条件で形成した薄膜の上下に酸素流量比率が0%の薄膜を積層することで、所望の導電率で高いB定数(4100K)を有する薄膜を形成することができる。
【0023】
多層膜からなる赤外線センサ素子の抵抗値の算出例を図4に示した。ここでは多層膜が3層の例を示した。図4において、各薄膜層の膜厚をL1〜L3、各層の導電率をσ1〜σ3、センサ膜部の面積をSとすると多層センサ膜の抵抗値は図4の式1で示される。この関係を踏まえて、後述する実施例で表2に各実施例の条件で多層膜を形成し、このセンサ素子の抵抗値として算出した。その結果、センサ素子形状直径1.5mmの円盤形例では、抵抗値が4.28×105〜0.747(Ω)まで大きく変化していることが分かる。なお、これらに条件の膜厚範囲としては1.675〜1.730μmである。すなわち、センサ膜の膜厚を大きく変えることなく、センサ素子の抵抗値が制御できることが確認された。
【0024】
【実施例】
(1)多層薄膜の積層化方法
前記記載に従い以下多層薄膜の積層化方法を説明する。スパッタリングの成膜時に、アルゴンに対する酸素の添加率を可変することで行った。具体的には、スパッタリング装置付属のマスフローコントローラーで、指定された時間に酸素とアルゴンガスの流量を可変するのみで可能とした。それ以外の形成条件は一定のままで成膜を行った。すなわち、多層化は極めて簡単な成膜方法で達成されることになった。
【0025】
(2)アルゴンガスに対する酸素の添加率の範囲
スパッタガスとしてアルゴンと酸素雰囲気下で行い、成膜の程度と導電率及びB定数のパラメーター範囲を定め具体的なガス添加率としては以下の実験でその程度につき確認を行った。
実験からアルゴンに対する酸素の添加率の範囲は、0〜100(%)(全範囲)で、そのガス流量は酸素が0〜10(sccm)、アルゴンが10〜0(sccm)である。成膜は酸素の添加率が少ない条件(0,2,5(%)など)で重点的に行った。なお、表1には各膜の導電率、B定数、成膜速度、膜厚(120分成膜時)の条件も示してある。その他の形成条件としては、スパッタリング成膜において、スパッタガス圧力0.5Pa、高周波出力(RF出力)400W、基板加熱温度400℃、ターゲット−基板間距離55mmで成膜実験を行った。図3は成膜速度に及ぼす酸素添加率の影響を示したものである。これによれば、例えば酸素添加率が20%の膜では、成膜速度が0.0133(μm/min)であり、2分で0.0266、120分では1.6μmの厚さの膜が形成されることが示されている。実施例では、3つの層により多層膜を形成させた。以下各実施例1〜4の条件を表2に示した。
【0026】
【表2】
【0027】
【実施例1】このときの酸素添加率を以下に示す。すなわち、薄膜層1(下層)は0%→薄膜層2(中層)は5%→薄膜層3(上層)は0%で可変とした。薄膜層の膜厚は、0.078μm、1.6μm、0.052μmとなった。この結果、全膜厚は1.73μmとなる。このときのセンサ素子の抵抗値は0.428MΩであった。なお、それぞれの層の導電率(S/cm)は、1.71×10−9(S/cm)→1.98×10−3→1.71×10−9となった。一方、それぞれの層のB定数(K)は、4110→2300→4110となった。
なお、B定数の計算は30℃〜227℃間での計算値である。
【0028】
【実施例2】実施例1の方法と同様で酸素添加率を薄膜層1(下層)のみ2%で実施した。全膜厚は1.671μmとなり、センサ素子の抵抗値は85.4そΩであった。
【実施例3】実施例2の方法と同様で酸素添加率を薄膜層3(上層)のみ2%で実施した。全膜厚は1.675μmとなり、センサ素子の抵抗値は5.32Ωであった。
【0029】
【実施例4】実施例3の方法と同様で酸素添加率を薄膜層3(中層)のみ20%で実施した。全膜厚は1.675μmとなり、センサ素子の抵抗値は0.747Ωであった。
【0030】
この結果、センサ形態に依存した素子の抵抗値が決定され、実施例1では428kΩのセンサ素子が得られた。一般的に赤外線温度センサ素子の回路設計値としては500kΩ程度の値が望ましいとされている。したがつて、センサ特性の向上に多層膜方法を形成することで温度計測回路の設計上に十分対応可能な抵抗値領域の確保ができた。付言すると、このセンサ素子の設計においては、必要とするB定数及び25℃での抵抗値によりある範囲内で赤外線センサが製造できることがわかった。また、これらを温度センサとしての極めて小型サイズながら、簡単な回路構成によって、高精度な赤外線温度センサを容易に取得できることがわかった。多層化数の程度はセンサ膜厚を大きく変化させることなく、素子の抵抗値を制御できることも判明した。
【0031】
評価方法
実施例1ないし4について、多層膜からなる赤外線センサの各特性は次により測定した。まず、導電特性は、処理後2時間以上経過した試料を、センサの抵抗測定用としてKEITHLEY社製ピコアンメータ(型式487)を用いて測定した。
また、センサ膜構造の評価はX線回折法により結晶構造を求めた。走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、型式JSM−6400、倍率10,000倍、加速電圧15kVで試料サイズ3.0mm角で全領域観察測定)によるセンサ膜断面観察を実施した。その結果膜欠陥は見られず良好であった。スパッタリングの基板面と薄膜層間の付着状態はテープテストでも剥離がなく、現象としてはセンサ薄膜と基板との間にいわゆる中間層が形成されたことにより安定度の高い赤外線センサが得られた。
つぎに、B定数の測定は次によった。赤外線センサを恒温槽((株)カトー製SSE−75PRO−W)に入れ、前記ピコアンメ一夕を用いて10℃から80℃まで温度を変化させた時の抵抗値を測定した。温度測定はセンサ付近に熱電対を配置し、データーロガー((株)アドバンテスト製R7326B)で行った。印加電圧は自己加熱による抵抗の減少が起きないように消費電力が0.1mW以下となる電圧とした。横軸に絶対温度の逆数をとり、縦軸に抵抗値の自然対数をとったグラフに測定データをプロットした。プロットした点を用いて最小二乗法によって直線を引き、その傾きからB定数を求めた。
【0032】
【発明の効果】
以上本発明により成膜途中に酸素添加率を可変し、この成膜時間を制御して特性が異なる多層膜とするセンサ技術を開発した。これにより、センサ膜全体の導電率を所望の値に設定し、かつB定数を向上させることができ、ボロメータ型赤外線センサの性能向上が図られた。
【0033】
本発明に係る多層膜の成膜方法は、スパッタリングにおける酸素の添加率が異なる膜を積層化した多層膜とすることにより、膜全体の導電率を所望の値に制御することができ、かつB定数の高い薄膜層を最表面に設置することができるので、熱型センサの感度や応答性の特性向上を図ることができる。また、スパッタリングにおいて同一バッチで酸素添加量を変化させるだけで極めて容易に多層膜が成膜可能であるので、高性能なセンサ用薄膜を容易に形成することができる。
【0034】
赤外線の熱エネルギーを電気的変化としてとらえるボロメータ型赤外線センサに用いるセンサ膜に対して、膜厚の範囲の選択性に余裕を持たせる方法として酸素添加率でコントロールして多層に積層する手法を取り入れた。したがって、スパッタリングで形成したセンサ膜を酸素添加率で簡易に操作することができ、任意の導電率、B定数を大幅に制御可能とした。具体的には、酸素添加率を可変可能とし、この成膜時間を制御して所期の特性を得るために異なる層を重ねる技術からなる。これにより、高導電率層と高いB定数層を併せ持つ多層膜を得ることができた。すなわち、センサ膜全体の導電率を所望の値に設定し、かつB定数を向上させることができ、ボロメータ型赤外線センサの性能向上が図られた。従来のボロメータ型赤外線センサの欠点であった感度、熱応答性をこの発明により解決でき、波長依存性がなく冷却不要な優れた特長とを併せて達成できたため、汎用性の高い赤外線センサとして利用されることが大いに期待でき、応用範囲を広げられた。
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の赤外線センサの要部側面図。図の左が赤外線センサ全体の要部側面図、図の右が赤外線センサのうち、センサ膜1が薄膜層で多層化された状態を示した要部側面図。
【図2】導電率、B定数に及ぼす酸素添加率を変化させた状態図。
【図3】成膜速度に及ぼす酸素添加率を変化させた状態図。
【図4】多層膜からなる赤外線センサ素子の抵抗値の算出例を示した図。
【符号の説明】
1 赤外線センサ膜
2 下部電極
3 基板
4 上部電極
5 薄膜層1
6 薄膜層2
7 薄膜層3
8 赤外線の入射方向[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to an infrared sensor having a multilayer film. In particular, the present invention relates to a bolometer-type infrared sensor comprising a multilayer film in which films having different oxygen addition rates due to sputtering can be easily stacked and the conductivity and the thermistor constant (hereinafter referred to as B constant) can be easily controlled, and a method of manufacturing the same.
[0002]
[Prior art]
A bolometer-type infrared sensor is an infrared sensor that utilizes the property that the resistance value of a resistor changes with temperature, and a temperature-sensitive resistance material such as platinum or nickel has been used. Many developments have been made on this material, and with the miniaturization of the equipment, its type has become diverse today.
[0003]
Among them, the bolometer-type infrared sensor does not require cooling and does not depend on the wavelength, but has problems such as low sensitivity and low thermal response. However, the present inventors have attempted various improvements from the viewpoint that a bolometer-type infrared sensor excellent in sensitivity and responsiveness can be realized if a small and high heat insulation structure is realized by making full use of microfabrication technology. As a result, the present invention relates to a bolometer-type infrared sensor that solves these problems by forming a multilayer film using a sputtering technique, and also provides a manufacturing method thereof.
Conventionally, bolometer-type infrared sensors have been widely used in various industrial fields such as industrial machines, home appliances, welfare / medical care, and security fields. As the type of infrared sensor, a semiconductor type and a pyroelectric type are also frequently used. However, these conventional infrared sensors are subject to cooling mechanisms and wavelength dependence, and further require mechanical chopper mechanisms, etc., and presently have various issues such as balancing performance and cost. Was.
[0004]
Also, as the demand for sensors increases in the IT field and the like, low-cost, high-performance infrared sensors are desired. On the other hand, a resistance bolometer-type infrared sensor that detects infrared thermal energy as an electrical change has attracted attention as a candidate for cost reduction. Since the bolometer type infrared sensor can be arrayed, it is expected as a highly versatile infrared sensor. However, since the bolometer type infrared sensor has poor sensor characteristics such as sensitivity, improvement of this characteristic is a major issue. Attempts have been made to improve sensor performance by reducing the thickness of the sensor portion, but no significant improvement has been made. Simultaneously controlling the conductivity of the thin film and the thermistor constant directly related to the sensor characteristics leads to an improvement in the sensor characteristics, but no improvement method has been obtained in the prior art.
[0005]
In recent years, attempts have been made to improve sensor characteristics by making the sensor part thinner, but both the conductivity and the thermistor constant of the thin film, which are directly attributable to sensor characteristics, have been reduced in sensitivity, size, and cost. It was difficult to make it a bolometer type infrared sensor, and solving this was an issue.
[0006]
[Problems to be solved by the invention]
The present invention has been made to solve the above problems and to improve the performance of a bolometer type infrared sensor, and relates to an infrared sensor having a multilayer film. In particular, the present invention relates to a bolometer-type infrared sensor comprising a multilayer film in which films having different oxygen addition rates due to sputtering can be easily stacked and the conductivity and the thermistor constant (hereinafter referred to as B constant) can be easily controlled, and a method of manufacturing the same. This multilayer film makes it possible to achieve both desired conductivity and a high B constant. In other words, focusing on the properties of the thin film material whose conductivity significantly changes, as a result of trying a film formation method of stacking films having different oxygen addition rates in sputtering, the conductivity of the entire sensor film is set to a desired value. It is possible to install a thin film layer on the outermost surface under conditions that can be controlled and have high sensitivity to infrared rays. Further, since a multilayer film can be formed very easily in the same batch only by changing the oxygen addition amount in the same batch, a high-performance sensor thin film can be easily formed at low cost.
As a result, the present invention relates to an infrared sensor comprising a multilayer film which can be applied to various fields as an infrared temperature sensor requiring low cost and high performance in the IT field, and a method of manufacturing the same.
[0007]
[Means for Solving the Problems]
The present invention relates to a multilayer bolometer-type infrared sensor comprising thin film layers each having controlled conductivity and thermistor constant, wherein the multilayer bolometer type infrared sensor comprises a substrate, and each of the thin film layers formed on the substrate by sputtering in a multilayer manner. An infrared sensor comprising a film and a multilayer film having a desired conductivity and a B constant obtained from the multilayer film is provided.
[0008]
In addition, the present invention provides an infrared sensor including the multilayer film in which a thin film layer having a large thermistor constant among the multilayer films including the respective thin film layers is formed on the uppermost layer of the substrate.
[0009]
Further, a metal oxide thin film layer formed by sputtering on an electrode surface formed on the substrate, and an upper electrode surface is formed on the uppermost layer of the thin film layers formed by further multilayering. It is effectively provided by the infrared sensor comprising the described multilayer film.
Furthermore, the present invention is effectively provided by an infrared sensor comprising a multilayer film according to any one of claims 1 and 3, wherein the number of each of the thin film layers is two to four.
[0010]
As a manufacturing method of the present invention, there is provided a method of manufacturing a multilayer bolometer-type infrared sensor comprising thin film layers in which conductivity and thermistor constant are controlled, wherein a step of forming a lower electrode surface on the substrate; A step of forming a metal oxide thin film layer by sputtering, a step of forming each thin film layer so as to be sequentially multilayered on the thin film layer, and a step of forming an upper electrode surface on the uppermost layer of the thin film layers And a step of sequentially stacking the thin film layers as a multilayer film to control a desired conductivity and a B constant, thereby providing a method for manufacturing an infrared sensor comprising a multilayer film.
Further, the present invention is effectively provided by a method of manufacturing an infrared sensor comprising the above-mentioned multilayer film formed as a multilayer film comprising two to four thin film layers.
[0011]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, embodiments of the present invention will be specifically described. Referring to the drawings, FIG. 1 is a side view of a main part of an infrared sensor of the present invention. The left side of the figure shows a side view of the main part of the entire infrared sensor, and the right side of FIG. FIG. 2 shows a state in which a multilayer structure is formed by thin film layers. Metal oxide containing a sensor membrane 1 to the lower electrode 2 formed on the substrate 3 and nickel (Ni) chromium (Cr) atoms (NiO-Cr 2 O 3) using a target, by sputtering, on the substrate 3 This is for forming a metal oxide thin film. In this sputtering, ions in the plasma are accelerated by the cathode fall near the metal oxide target, collide with the target and strike out target atoms, and the atoms adhere to the substrate 3 to form a thin film layer.
[0012]
Further, an upper electrode 4 is formed on the sensor film 1. The right side of FIG. 1 is an enlarged side view of a main part of a multilayer film in which the sensor film 1 is multilayered. The sensor film 1 composed of the multilayer films indicated as the thin film layers 5 to 7 from the substrate 3 side is the thin film layer 1. , A thin film layer 2 and a thin film layer 3. The sensor film 1 only needs to have a plurality of thin film layers, and in order to strictly control the characteristics of a sensor described later, it is desirable that 2 to 5 thin film layers, preferably about 2 to 4 thin film layers, be manufactured. In the present invention, a prototype was manufactured with three thin film layers. Here, parameters necessary for strict control of the characteristics of the sensor include a resistance value, a B constant, a sensitivity, a thermal response speed, and the like of the infrared sensor in a use temperature range in temperature measurement.
[0013]
Here, the characteristics required for the substrate used are that there is no difference in the coefficient of thermal expansion from the sputtered thin film in terms of the characteristics of the sensor, stability over time, low cost, ease of manufacture, etc. , A silicon wafer, an alumina / glass substrate or the like can be used. In the present invention, a silicon wafer was used, and the size of the infrared sensor was 0.3 mm in thickness, 3.0 mm in length, and 3.0 mm in width. In addition, in order to obtain an infrared sensor with high-speed thermal response, it is desirable to use an infrared sensor with a small heat capacity, since it greatly depends on the shape of the substrate. In addition to the currently used substrate technology and LSI manufacturing technology, It does not deny the application of manufacturing means and the like in the VLSI technology. Similarly, it is important to select a shape that is easy to use depending on the miniaturization, mass productivity, and application together with the sensor part.
[0014]
As the sputter device, a batch type, an in-line type capable of continuous processing, a cassette-to-cassette type, and a load lock type can be used as a basic configuration. In the present invention, a batch type sputter device is used. The inside of the apparatus is a substrate 3 placed on a substrate 3 holder (a substrate for a sensor is cut out into individual sensors, but for convenience of explanation, it will be described as an individual sensor in a processing state), and the substrate 3 thereon is not shown. The sputtering operation is performed in a vacuum vessel provided with a shutter, a target, and the like. A rotary pump for roughing as an exhaust system, an oil diffusion pump for the main exhaust, and a cryopump for increasing the degree of vacuum are used to control the exhaust efficiency and the degree of vacuum, and the degree of vacuum is measured by a Geisler tube and a BA gauge. .
[0015]
The so-called sputtering chamber in the vacuum vessel includes a cathode electrode, a substrate holder, and a shirt, and a target for sputtering is disposed in a position facing the substrate holder and parallel to the side. High frequency sputtering is performed for the sputtering (13.56 MHz, 400 W). Sputtering was carried out in a batch system in which setting of the substrate, heating of exhaust gas, sputtering, cooling and the like were performed in series.
[0016]
Hereinafter, a method for manufacturing an infrared sensor according to the present invention will be described.
The basic concept of the present invention is as follows.
When film formation is performed in an atmosphere of argon and oxygen as a sputtering gas, the sensor film formed by sputtering has a thin film conductivity of 1.7 × 10 −9 to 5.2 × 10 (S / cm) depending on the oxygen addition rate. It varies greatly within the range. This relationship is shown in Table 1.
[0017]
[Table 1]
[0018]
It has also been experimentally confirmed that the B constant changes within a range of -410 to 4100K. It was also confirmed that as the conductivity increases, the B constant tends to decrease, and as the conductivity decreases, the B constant tends to increase. FIG. 2 shows this tendency. Figure 2 is the left vertical axis conductivity, a right vertical axis B constant, the horizontal axis is the oxygen gas flow ratio of oxygen gas and argon gas (0 2 / (0 2 + Ar)) (%). The gas flow rate was measured by a mass flow controller, and the measured value of conductivity was data at 30 ° C. When the oxygen gas flow ratio is 0%, the conductivity is minimum, that is, a thin film having a very small resistance value is obtained, which is close to the insulator and peaks at 20%, and has a considerably small resistance value. Was.
[0019]
On the other hand, the B constant at this time is the maximum negative temperature coefficient (4100K) near 0%, that is, the rate of change of the resistance temperature is near the maximum, and becomes a positive temperature coefficient from about 20% to the 30% range. This is the area where the value increases. Further, after 35%, the temperature coefficient returns to a negative temperature coefficient, and the B constant peaks at 1500 K, which is a level similar to that of a general thermistor resistor. Further, the tendency to decrease to 1000K at about 100% was confirmed.
[0020]
As a result, it will be understood that the conductivity and the B constant are determined by controlling the oxygen addition rate of the oxygen gas flow rate ratio in the thin film layer. However, it is difficult to manufacture a resistor having a large B constant and a low resistance from the above description, and the problem remains to be solved. For this reason, as a result of diligent efforts, the inventors of the present invention may not be able to obtain the desired conductivity and B constant by multilayering the film, or increase the B constant on the infrared detection surface portion, that is, the sensitivity may be increased. And found that if the resistance is reduced by thinning the thin film layer, it can be manufactured even in a region where the conductivity is low (the resistance is high). On the other hand, the layer deeper than the infrared detection surface portion has a small B constant, that is, the sensitivity is low, and the resistance value does not increase so much even if the thin film layer is thickened, that is, a region suitable for improving the thin film strength and adjusting the sensor resistance value. I decided to adopt such an idea.
In this way, focusing on the dependence of the conductivity and the B constant on the oxygen addition rate, the combination of multiple layers can be understood as a basic concept in designing a sensor element.
[0021]
Therefore, as a method of utilizing this tendency, the values of the electric conductivity and the B constant required by the infrared sensor can be determined by laminating the thin film layers from the thin film layer 1 to the thin film layer n (where n exceeds a finite number of tens). Although there is no limitation, the production in the range of at most 2 to 6 is practically appropriate in practice.) The degree of sputtering for each thin film layer is determined by the oxygen addition rate and the thickness of the thin film layer. That was solved. The present invention can of course be changed by appropriately selecting the type of metal to be sputtered, and these are not excluded.
[0022]
In the formation of these thin film layers, these two conductivity and B constant parameters can be set arbitrarily in a wide range, and a good infrared sensor with little change with time of the manufactured infrared sensor can be obtained.
The reason for using an argon gas is that the sputtering rate is high and about 1% is contained in the air. A prototype was made using this together with oxygen.
For example, oxygen flow ratio is 5%, (0 2 / ( 0 2 + Ar)) = 0.5 / 9.5sccm (( in SI units according 8.335 × 10 -9 /1.584×10 -7 m 3 / S (1 atm)), a thin film having an oxygen flow rate of 0% is laminated on and under the thin film formed under the condition of 3 / S (1 atm) to form a thin film having a desired conductivity and a high B constant (4100K). it can.
[0023]
FIG. 4 shows a calculation example of the resistance value of the infrared sensor element formed of the multilayer film. Here, an example in which the multilayer film has three layers is shown. In FIG. 4, when the thickness of each thin film layer is L1 to L3, the conductivity of each layer is σ 1 to σ 3 , and the area of the sensor film portion is S, the resistance value of the multilayer sensor film is expressed by Equation 1 in FIG. . Based on this relationship, a multilayer film was formed under the conditions of each example in Table 2 in Examples described later, and the resistance value of the sensor element was calculated. As a result, it can be seen that in the disk-shaped example having a sensor element shape of 1.5 mm in diameter, the resistance value greatly changes from 4.28 × 10 5 to 0.747 (Ω). Note that the film thickness range under these conditions is 1.675 to 1.730 μm. That is, it was confirmed that the resistance value of the sensor element could be controlled without greatly changing the thickness of the sensor film.
[0024]
【Example】
(1) Method for laminating a multilayer thin film A method for laminating a multilayer thin film will be described below in accordance with the above description. The sputtering was performed by changing the rate of addition of oxygen to argon during film formation. Specifically, it was made possible only by changing the flow rates of oxygen and argon gas at a designated time using a mass flow controller attached to the sputtering apparatus. Film formation was performed while keeping other formation conditions constant. That is, multilayering is achieved by a very simple film forming method.
[0025]
(2) Range of oxygen addition rate to argon gas The sputtering was performed in an atmosphere of argon and oxygen, and the degree of film formation and the parameter ranges of conductivity and B constant were determined. The extent was confirmed.
From experiments, the range of the oxygen addition rate to argon is 0 to 100 (%) (all ranges), and the gas flow rate is 0 to 10 (sccm) for oxygen and 10 to 0 (sccm) for argon. The film formation was mainly performed under the condition that the oxygen addition rate was small (0, 2, 5 (%), etc.). Table 1 also shows the conditions of the conductivity, the B constant, the film formation speed, and the film thickness (at the time of film formation for 120 minutes) of each film. As other forming conditions, a film forming experiment was performed at a sputtering gas pressure of 0.5 Pa, a high-frequency output (RF output) of 400 W, a substrate heating temperature of 400 ° C., and a target-substrate distance of 55 mm. FIG. 3 shows the effect of the oxygen addition rate on the film formation rate. According to this, for example, for a film having an oxygen addition rate of 20%, the film formation rate is 0.0133 (μm / min), and a film having a thickness of 0.0266 in 2 minutes and 1.6 μm in 120 minutes is formed. It is shown to be formed. In the example, a multilayer film was formed by three layers. The conditions of Examples 1 to 4 are shown in Table 2 below.
[0026]
[Table 2]
[0027]
Example 1 The oxygen addition rate at this time is shown below. That is, the thin film layer 1 (lower layer) was variable from 0% → the thin film layer 2 (middle layer) was 5% → the thin film layer 3 (upper layer) was 0%. The thicknesses of the thin film layers were 0.078 μm, 1.6 μm, and 0.052 μm. As a result, the total film thickness becomes 1.73 μm. At this time, the resistance value of the sensor element was 0.428 MΩ. The conductivity (S / cm) of each layer was 1.71 × 10 −9 (S / cm) → 1.98 × 10 −3 → 1.71 × 10 −9 . On the other hand, the B constant (K) of each layer was 4110 → 2300 → 4110.
The calculation of the B constant is a calculated value between 30 ° C and 227 ° C.
[0028]
Example 2 In the same manner as in Example 1, the oxygen addition rate was 2% for the thin film layer 1 (lower layer). The total film thickness was 1.671 μm, and the resistance value of the sensor element was 85.4 Ω.
Example 3 In the same manner as in Example 2, the oxygen addition rate was 2% for the thin film layer 3 (upper layer) only. The total thickness was 1.675 μm, and the resistance value of the sensor element was 5.32Ω.
[0029]
Embodiment 4 In the same manner as in Embodiment 3, the oxygen addition ratio was set to 20% for only the thin film layer 3 (middle layer). The total film thickness was 1.675 μm, and the resistance value of the sensor element was 0.747Ω.
[0030]
As a result, the resistance value of the element depending on the sensor form was determined. In Example 1, a sensor element of 428 kΩ was obtained. Generally, it is considered that a circuit design value of the infrared temperature sensor element is preferably about 500 kΩ. Therefore, by forming the multilayer film method for improving the sensor characteristics, it was possible to secure a resistance value region which can sufficiently cope with the design of the temperature measurement circuit. In addition, in the design of this sensor element, it was found that an infrared sensor can be manufactured within a certain range by the required B constant and the resistance value at 25 ° C. In addition, it has been found that a highly accurate infrared temperature sensor can be easily obtained with a simple circuit configuration although these are extremely small in size as temperature sensors. It was also found that the degree of the number of layers can control the resistance value of the element without greatly changing the sensor film thickness.
[0031]
Evaluation Method In Examples 1 to 4, each characteristic of the infrared sensor composed of a multilayer film was measured as follows. First, the conductivity characteristics of a sample 2 hours or more after the treatment were measured using a picoammeter (model 487) manufactured by Keithley for measuring the resistance of the sensor.
The evaluation of the sensor film structure was performed by determining a crystal structure by an X-ray diffraction method. The cross section of the sensor film was observed using a scanning electron microscope (manufactured by JEOL Ltd., model JSM-6400, magnification 10,000 times, acceleration voltage 15 kV, sample size 3.0 mm square, whole area observation measurement). As a result, no film defect was observed and the film was good. The adhesion between the substrate surface and the thin film layer during the sputtering was not peeled off even in the tape test. As a phenomenon, a so-called intermediate layer was formed between the sensor thin film and the substrate, so that an infrared sensor with high stability was obtained.
Next, the measurement of the B constant was performed as follows. The infrared sensor was placed in a thermostat (SSE-75PRO-W manufactured by Kato Corporation), and the resistance value was measured when the temperature was changed from 10 ° C. to 80 ° C. using the picoammeter. The temperature was measured by placing a thermocouple near the sensor and using a data logger (R7326B manufactured by Advantest Corporation). The applied voltage was such that the power consumption was 0.1 mW or less so that the resistance did not decrease due to self-heating. The measured data was plotted on a graph in which the abscissa indicates the reciprocal of the absolute temperature and the ordinate indicates the natural logarithm of the resistance value. A straight line was drawn by the least squares method using the plotted points, and the B constant was determined from the slope.
[0032]
【The invention's effect】
As described above, the present invention has developed a sensor technology in which the oxygen addition rate is varied during film formation and the film formation time is controlled to form a multilayer film having different characteristics. As a result, the conductivity of the entire sensor film can be set to a desired value and the B constant can be improved, and the performance of the bolometer-type infrared sensor has been improved.
[0033]
The method for forming a multilayer film according to the present invention can control the conductivity of the entire film to a desired value by forming a multilayer film in which films having different oxygen addition rates in sputtering are stacked, and B Since a thin film layer having a high constant can be provided on the outermost surface, the sensitivity and response characteristics of the thermal sensor can be improved. In addition, a multilayer film can be formed very easily only by changing the amount of added oxygen in the same batch in sputtering, so that a high-performance sensor thin film can be easily formed.
[0034]
Introducing a method of controlling the oxygen addition rate and stacking multiple layers for the sensor film used in the bolometer type infrared sensor that detects the thermal energy of the infrared light as an electrical change as a method to allow a margin in the selectivity of the film thickness range. Was. Therefore, the sensor film formed by sputtering can be easily operated at the oxygen addition rate, and the arbitrary conductivity and the B constant can be largely controlled. Specifically, it is a technique in which the oxygen addition rate is made variable and different layers are stacked in order to control the film formation time and obtain desired characteristics. Thus, a multilayer film having both a high conductivity layer and a high B constant layer could be obtained. That is, the conductivity of the entire sensor film can be set to a desired value and the B constant can be improved, and the performance of the bolometer-type infrared sensor has been improved. The sensitivity and thermal responsiveness, which were the drawbacks of the conventional bolometer type infrared sensor, were solved by the present invention and combined with the excellent features of no wavelength dependency and no cooling required, it is used as a highly versatile infrared sensor. It could be expected to be done very much, and the range of application was expanded.
[0035]
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a side view of a main part of an infrared sensor according to the present invention. The left side of the figure is a main part side view of the entire infrared sensor, and the right side of the figure is a main part side view showing a state in which the sensor film 1 of the infrared sensor is multilayered with thin film layers.
FIG. 2 is a state diagram in which the oxygen addition rate affecting the conductivity and the B constant is changed.
FIG. 3 is a diagram showing a state in which an oxygen addition rate affecting a film forming rate is changed.
FIG. 4 is a diagram showing a calculation example of a resistance value of an infrared sensor element formed of a multilayer film.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 Infrared sensor film 2 Lower electrode 3 Substrate 4 Upper electrode 5 Thin film layer 1
6 Thin film layer 2
7 Thin film layer 3
8 Incident direction of infrared rays