【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受用保持器及び転がり軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、転がり軸受は転動体が玉の玉軸受と転動体がころのころ軸受とに大別され、それぞれがいくつかの種類に分類される。
玉軸受には、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、スラストアンギュラ玉軸受などがあり、ころ軸受には、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円錐ころ軸受などがある。
【0003】
また、玉軸受に用いられる保持器には図5(i)の一般タイプ保持器、図5(ii)の冠型保持器、図5(iii)のアンギュラ玉軸受用保持器やスラスト玉軸受用保持器(図示せず)等があり、ころ軸受に用いられる保持器には図5(iv)の円錐ころ軸受用保持器、図5(v)の球面ころ軸受用保持器、図5(vi)の円筒ころ軸受用保持器、スラストころ軸受用保持器(図示せず)やスラスト球面軸受用保持器(図示せず)等があり、それぞれ玉やころを収容保持するポケットの形状や、ポケット同士の間の柱部分等の形状等が異なっている。
【0004】
さらに、保持器は、転動体により案内される転動体案内保持器、軸受の軌道部材の外輪により案内される外輪案内保持器、軸受の軌道部材の内輪により案内される内輪案内保持器に分類することもできる。
また、保持器を合成樹脂組成物から射出成型により形成することが広く行われている。保持器の原材料の合成樹脂組成物として、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂等のいわゆるエンジニアリングプラスチックが単体のままで、あるいは、ガラス繊維、炭素繊維等の短繊維を充填材として混入し強化した複合材料の形態で使用されてきた。これらの中で、ポリアミド樹脂は材料コストと性能とのバランスの良さから多用され、中程度の環境条件下で卓越した性能が確認されている。
【0005】
また、150℃を超える高温環境条件下で使用される保持器の原材料として、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等の超エンジニアリングプラスチックも提唱されている。さらに、フェノール樹脂も高速回転条件下で使用される保持器の原材料として使用されている。
【0006】
また、耐熱性や耐薬品性を目的として、重合段階で分子鎖を直鎖状に高分子量まで成長させた直鎖状ポニフェニレンサルファイド(直鎖状PPS)樹脂にガラス繊維を充填材として混入した合成樹脂組成物から形成された保持器が、コスト面から採用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年、加工効率と生産性を向上させるため、各種工作機械には高速化が求められており、これらの工作機械の主軸の回転速度にも高速化が要求されている。したがって、高速回転条件下での使用に耐える転がり軸受が求められている。しかしながら、エンジニアリングプラスチックを用いた保持器を高速回転条件下で使用すると、高速回転時に加わる力によって保持器が変形してしまうという不都合があった。保持器が変形すると転動体が拘束されてしまい、転動体が円滑に転動できなくなって異常昇温を起し、焼きつきや損傷の原因となる。かかる問題は軌道部材が保持器を案内する場合に較べて、転動体が保持器を案内する場合においてより発生しやすい。
【0008】
また、超エンジニアリングプラスチックは耐熱性、耐薬品性、弾性率に優れはするものの、保持器の原材料として用いるには非常に高価でありコストに問題がある。
さらに、フェノール樹脂を原材料とする保持器においては、フェノール樹脂の合成樹脂組成物から保持器を射出成型にすることができず、コストが高くなり、量産性も劣るという不具合があった。
【0009】
また、高速回転により高温となる条件下で使用される保持器に使用可能な他の原材料として分岐状ポニフェニレンサルファイド(分岐状PPS)樹脂がある。分岐状PPS樹脂は、その製造過程において、高温下での熱処理や、架橋剤や分岐剤を添加することにより部分的に架橋または分岐構造が導入されている。しかし、直鎖状PPS樹脂に較べると、分岐状PPS樹脂は靭性が低く脆弱であり柔軟性を欠いており、保持器の原材料としては機械特性上の問題がある。
【0010】
また、直鎖状PPS樹脂にガラス繊維を充填材として混入した合成樹脂組成物から形成された保持器にあっては、高速回転条件下では保持器の強度が不足して破損に至る場合があった。
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、高速回転条件下での使用に好適な転がり軸受用保持器及び転がり軸受を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明は、合成樹脂組成物から形成された転がり軸受用保持器において、当該合成樹脂組成物のマトリックスは、溶融温度が310℃、剪断速度が200/secで700ポアーズ以上の高分子量からなる直鎖状ポリフェニレンサルファイド樹脂であり、このマトリックス中に10〜40質量%の炭素繊維を充填材として含有させた転がり軸受用保持器である。
【0012】
請求項1の発明によると、直鎖状PPS樹脂をマトリックスとする合成樹脂組成物から保持器を製造しており、この保持器は直鎖状PPS樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性、耐油性を有する。このため、転がり軸受の外径と内径の平均値(mm)であるdmと転がり軸受の回転速度(min−1)であるnとの積であるdmn値が80万を超えるような高速回転条件下で、保持器が高温となっても軟化したり溶融することが防止される。そして、直鎖状PPS樹脂は分岐状PPS樹脂よりも優れた靭性等の機械的特性を有するので、保持器に必要なスナップフィット性が得られ、射出成型時や軸受組み立て時に保持器が破損することが防止される。また、直鎖状PPS樹脂は成型収縮率が小さく、保持器の寸法精度が向上する。
【0013】
また、直鎖状PPS樹脂は、重合後、高温下で熱処理を受けておらず、架橋剤や分岐剤等の添加もなされておらず、分子量の目安となる溶融粘度は、310℃で剪断速度が200/secで測定した場合700ポアーズ以上であり、実質的に分岐鎖を有しておらず、分子鎖間の絡みあいが容易なため分岐状PPS樹脂よりも靭性が大きい。かかる直鎖状PPS樹脂は呉羽化学工業株式会社より「フォートロンKPS(商品名)」として入手可能である。
【0014】
さらに、ガラス繊維は剛直である反面、弾性率が小さいが、炭素繊維の弾性率は大きいので、高速回転条件下で大きな力が保持器に作用しても保持器の変形は抑制され、転動体又は軌道部材と保持器との間の動摩擦係数も小さくなり、軸受における発熱量は低く抑えられる。
また、保持器の剛性を増加させるとともに寸法精度を向上させるために、10〜40質量%の炭素繊維を充填材として合成樹脂組成物中に含有させている。炭素繊維の含有率が10質量%より少ないと保持器の強度が不充分となり、40質量%よりも多いと保持器の射出成型時における成形性が悪くなり、寸法精度も悪くなる。より望ましくは、炭素繊維の含有率は15〜30質量%である。
【0015】
なお、保持器には転動体案内保持器、外輪案内保持器及び内輪案内保持器を含む。但し、高速回転条件下で使用される保持器については、保持器案内面の潤滑を考え、転動体案内保持器又は外輪案内保持器とすることが好ましい。さらに、保持器の振れまわりや保持器にかかる遠心力を逃がすために外輪案内保持器とすることが好ましい。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の転がり軸受用保持器を備えた転がり軸受である。
請求項2の発明によると、各種工作機械の高速回転する主軸の軸受としてこの転がり軸受をすると、高速回転条件下での転がり軸受の焼きつきや損傷の発生が防止される。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2に記載の転がり軸受であって、セラミック製の転動体を有する転がり軸受である。
請求項3の発明によると、転動体がセラミック製なので、高速回転条件下であっても転動体の変質や変形が防止され、転がり軸受における焼きつき等の発生が防止される。
【0018】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の転がり軸受であって、当該転がり軸受の外径と内径の平均値(mm)であるdmと、当該転がり軸受の回転速度(min−1)であるnとの積であるdmn値が、8×105以上となる条件下で使用される転がり軸受である。
請求項2又は請求項3に記載の転がり軸受であるので、dmn値が8×105以上となる高速回転条件下で安定して使用することが可能であり、転がり軸受の発熱量は低く抑えられ、保持器の変形も防止され、転がり軸受における焼きつき等の発生も防止される。
【0019】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の転がり軸受であって、工作機械主軸用スピンドルに使用される転がり軸受である。
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の転がり軸受であるので、高速回転が求められる工作機械主軸用スピンドルに使用して、安定した性能を発揮する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本実施の形態の構成を説明する。図1に示すように、工作機械主軸用スピンドルに使用される転がり軸受10は、合成樹脂組成物の原材料から射出成型により形成された保持器12を備えている。転がり軸受10はアンギュラ玉軸受であり、軌道部材である内輪18と外輪16、保持器12、転動体20とから構成されており、保持器12は転動体案内保持器となっている。内輪18、外輪16の各構成は従来あるものと同様の構成であり、転動体20はセラミック製の玉であり、保持器12もその原材料である合成樹脂組成物の組成を除いて、従来ある射出成型によって形成された保持器と同様の構成を有する。すなわち、図1において、保持器12はポケット14内に転動体20を収容保持し、転動体20が保持器12を案内しつつ転動し、保持器12が内輪18と外輪16の各軌道面の間を回転可能な構成となっている。
【0021】
以下、保持器12の原材料である合成樹脂組成物について説明する。合成樹脂組成物は、そのマトリックスが直鎖状PPS樹脂であり、充填材として10〜40質量%の炭素繊維を含有している。直鎖状PPS樹脂はベンゼン環と硫黄原子とが交互に結合した分子構造を構成単位とする高分子であり、重合段階で直鎖状に分子鎖を高分子量にまで成長させてあり、重合後、高温下で熱処理を受けておらず、架橋剤や分岐剤等の添加もされておらず、実質的に分岐鎖を有しておらず、分子鎖間の絡みあいが容易となっている。直鎖状PPS樹脂の分子量の目安となる溶融粘度は、310℃で剪断速度が200/secで測定した場合700ポアーズ以上である。
【0022】
また、合成樹脂組成物が充填材として含有する炭素繊維は従来あるものと同様のものであり、レーヨンやポリアクリロニトリル等の有機繊維や精製した石油ピッチを紡糸してつくった繊維を、不活性気体中で熱処理し炭化して製造したものである。充填材としての炭素繊維は、平均繊維長が0.5mm、平均繊維直径が7〜9μmの短繊維とすることが好ましい。
【0023】
本実施の形態は上記のように構成されており、次にその作用について説明する。
直鎖状PPS樹脂は分子鎖間の絡みあいが容易であるため、その靭性が大きく、保持器12は柔軟性を有する。射出成型に際して型から保持器12を抜出すために力が加わっても、保持器12が破損することは防止されて、生産性が良くなる。また、保持器12が有する柔軟性によって、転動体20を保持器12のポケットに収容させるに際して、保持器12が変形して破損することが防止される。
【0024】
また、直鎖状PPS樹脂は耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れるので、保持器12を有する転がり軸受10をdmn値が8×105以上となる高速回転条件下で使用して、保持器12に振れまわりによる力が作用し、転動体20と保持器12との摺接部分で温度上昇が生じて高温化しても、保持器12が軟化したり溶融することが防止される。
【0025】
さらに、保持器12を形成する合成樹脂組成物の充填材である炭素繊維は、弾性率がガラス繊維等に比し大きく、保持器12が変形しにくくなる。したがって、転がり軸受10が高速回転条件下で用いられて保持器12に大きな外力が加わっても、保持器12の変形は抑制される。そして、保持器12の変形が抑制されるので、保持器12のポケット内で転動体20の転動が円滑となり、保持器12と転動体20の間の動摩擦係数も小さく抑制され、保持器12の発熱量も少なくなる。
【0026】
したがって、直鎖状PPS樹脂に炭素繊維を充填材として含有させた合成樹脂組成物から形成される保持器12は、高速回転条件下での変形が大きく抑制され、直鎖状PPS樹脂にガラス繊維を充填材として含有させた合成樹脂組成物から形成される保持器に比べて、高速回転への対応性が飛躍的に向上し、高速回転条件下で安定した性能を発揮できる。
【0027】
また、保持器12と転動体20との間の発熱量が少なくなり、転動体20も円滑に転動するので、転がり軸受10に供給される潤滑剤の劣化も防止されることとなる。
また、転動体20はセラミック製なので、高速回転条件下でも転動体20が変質したり変形したりすることが防止される。
【0028】
また、直鎖状PPS樹脂のコストは、超エンジニアリングプラスチックのコストに較べて大幅に低いので、保持器12を低コストで製造可能となる。
なお、本実施の形態において、保持器12を転動体案内保持器としたが、外輪案内保持器または内輪案内保持器とすることが可能であることも勿論である。保持器12を外輪案内保持器又は内輪案内保持器としたときには、本実施の形態における保持器12と転動体20の間の作用と同様に、軌道部材の案内面上を保持器12は円滑に摺動し、その摺接部分での発熱量も少なくなる。
【0029】
また、本実施の形態において、転がり軸受をアンギュラ玉軸受として説明したが、他の種類の玉軸受とすることは可能であり、また、転動体は玉に限定されず、ころ軸受とすることが可能であることは勿論である。
本実施の形態にかかる転がり軸受の1変形例として、図2に保持器が外輪案内である円筒ころ軸受を示す。なお、この円筒ころ軸受の構成は、保持器を形成する合成樹脂組成物の組成を除いて従来ある円筒ころ軸受の構成と同様である。
【0030】
次に、本発明にかかる保持器の性能の評価試験を行った結果を説明する。
(1)性能評価試験1
性能評価試験1において、本発明に係る保持器を有するアンギュラ玉軸受(発明例A)と以下の比較例AないしDに示す構成の各保持器を備えるアンギュラ玉軸受で、保持器の性能評価試験を行った。
【0031】
発明例Aの保持器は、本実施の形態に説明したアンギュラ玉軸受の玉案内保持器と同様の構成を有し、保持器を形成する合成樹脂組成物のマトリックスは直鎖状PPS樹脂であり、充填材として30質量%の炭素繊維を含有する。なお、直鎖状PPS樹脂にはポリプラスチックス社製の「タフPPS樹脂:フォートロン2130A1」を用いた。
【0032】
また、比較例Aないし比較例Dの保持器は、保持器を形成する合成樹脂組成物の組成を除いて発明例Aの保持器と同様の構成を有する。比較例Aの保持器を形成する合成樹脂組成物はマトリックスがナイロン66樹脂であり、充填材として25質量%のガラス繊維を含有する。さらに、比較例Bの保持器を形成する合成樹脂組成物はマトリックスがナイロン46樹脂であり、充填材として25質量%のガラス繊維を含有する。また、比較例Cの保持器を形成する合成樹脂組成物はマトリックスが直鎖状PPS樹脂であり、充填材として30質量%のガラス繊維を含有する。なお、比較例Cの直鎖状PPS樹脂にはポリプラスチックス社製の「タフPPS樹脂:フォートロン1130A6」を用いた。また、比較例Dの保持器を形成する合成樹脂組成物はマトリックスがPEEK樹脂であり、充填材として30質量%の炭素繊維を含有する。なお、比較例DのPEEK樹脂にはVICTREX社製の「450CA30」を用いた。
【0033】
そして、発明例A及び比較例AないしDの各保持器を以下の構成を有するアンギュラ玉軸受に組み込んだ。アンギュラ玉軸受は、内径65mm、外径100mm、幅18mm、玉径7.144mm、玉数28個、接触角18°とし、玉の材質は窒化珪素球(セラミック)であり、DB組合せ定位置予圧の2列背面組み合わせとし、潤滑はグリース潤滑により行い、組込時アキシアルばね定数を100N/μmとして構成した。
【0034】
発明例A及び比較例AないしDの各保持器を有するアンギュラ玉軸受について、回転数を上昇させて外輪の温度上昇を調べた。その結果を図3に示す。図3の縦軸は外輪の温度上昇を示し、横軸は回転数を示す。
まず、図3を参照しつつ比較例Aと比較例Bの結果を比較する。両例とも回転数が16000min−1に達するまでは、外輪の温度上昇に大きな差はない。しかし、比較例Aにおいて外輪の温度上昇が30℃を超えると、その温度上昇の割合が急激に大きくなっている。そして、比較例Aの高速回転の限界は比較例Bの限界よりも低い。比較例Aが高速回転の限界に達したとき、比較例Aの保持器のポケットの面と玉とが摺接する玉もたせ部分に一部溶融を生じていた。
【0035】
かかる結果を生じた理由として以下の事柄が推定される。すなわち、比較例Aの保持器を形成するナイロン66樹脂の曲げ弾性率と比較例Bの保持器を形成するナイロン46樹脂の曲げ弾性率との間に大きな差はない。しかし、比較例Aのアンギュラ玉軸受の温度が50℃以上になるとナイロン66樹脂のガラス転移温度近傍となってしまう。このため、比較例Aの保持器の強度が急激に低下して変形を生じ、玉が拘束されてしまったと考えられる。したがって、ナイロン46樹脂製の保持器は、ナイロン66樹脂の保持器よりも高速回転条件下の使用に耐え得ることがわかる。
【0036】
また、比較例Bにおいて回転数が20000min−1に達すると外輪の温度上昇の割合が急激に大きくなっている。一方、比較例Cにおいては回転数が25000min−1に達するまで外輪の温度上昇の割合に急激な変化を生じず、円滑に回転が可能であった。比較例Cの保持器と比較例Bの保持器を較べると、直鎖状PPS樹脂とナイロン46樹脂との曲げ弾性率の相違から、比較例Bの保持器は強度の点で劣り、保持器が遠心力によって変形し、玉が拘束されてしまったと考えられる。したがって、直鎖状PPS樹脂製の保持器は、ナイロン46樹脂製の保持器よりも高速回転条件下の使用に適していることがわかる。
【0037】
さらに、発明例Aにおいて、外輪の温度上昇の割合は比較例A、B、Cのいずれの場合よりも穏やかで安定しており、比較例Dの場合とほぼ同様である。したがって、直鎖状PPS樹脂製の保持器はPEEK樹脂製の保持器と同等の性能を発揮していることがわかる。
以上より、本発明に係る合成樹脂組成物から形成された保持器は、ナイロン66樹脂又はナイロン46樹脂をマトリックスとする合成樹脂組成物から形成された保持器、充填材をガラス繊維とする合成樹脂組成物から形成された保持器よりも高速回転条件下の使用に適しており、PEEK樹脂をマトリックスとする合成樹脂組成物から形成された保持器と同じく高速回転条件下で使用可能であることが確認された。
(2)性能評価試験2
性能評価試験2において、本発明にかかる保持器を有する単列円筒ころ軸受(発明例B)と以下の比較例E及びFの各保持器を備える単列円筒ころ軸受とで、保持器の性能評価試験を行った。
【0038】
発明例Bの保持器は、図3に示す本実施の形態の変形にかかる円筒ころ軸受と同様の構成を有し、保持器を形成する合成樹脂組成物の組成は発明例Aの合成樹脂組成物と同じ組成を有する。比較例E及びFの各保持器は、保持器を形成する合成樹脂組成物の組成を除いて発明例Bの保持器と同様の構成を有する。比較例Eの保持器を形成する合成樹脂組成物の組成は比較例Cと同じである。比較例Fの保持器を形成する合成樹脂組成物の組成は比較例Dと同じである。
【0039】
これらの各保持器を以下の単列円筒ころ軸受に組み込んだ。この単列円筒ころ軸受は、内径60mm、外径90mm、幅18mm、ころ径8mm、ころ長さ8mm、ころ数20個、潤滑はオイルエアにより行い、組込時ラジアル隙間を0μmとして構成した。
発明例Bと比較例E及びFの各保持器を有する単列円筒ころ軸受について、回転数を上昇させて外輪の温度上昇を調べた。その結果を図4に示す。図4における結果の表示は図3の場合と同様である。
【0040】
図4において、発明例Bの外輪の温度上昇の割合は、比較例Eの場合よりも穏やかであり、比較例Fの場合とほぼ同様である。また、比較例Eの保持器は回転数が31000min−1となったときに保持器の各ポケットの間をつなぐ柱部分に破損を生じ、ポケットの面にも磨耗を生じた。
以上より、本発明に係る合成樹脂組成物から形成された保持器は、充填材をガラス繊維とする合成樹脂組成物から形成された保持器よりも高速回転条件下の使用に適しており、PEEK樹脂をマトリックスとする合成樹脂組成物から形成された保持器と同じく高速回転条件下で使用可能であることが確認された。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、上記のような転がり軸受用保持器及び転がり軸受であるので、高速回転条件下での使用に好適な転がり軸受用保持器及び転がり軸受を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる転がり軸受の軸方向部分断面図である。
【図2】本実施の形態の変形例にかかる転がり軸受の軸方向部分断面図である。
【図3】性能評価試験1の結果を示す図である。
【図4】性能評価試験2の結果を示す図である。
【図5】従来ある保持器の斜視図である。
【符号の説明】
10 軸受
12 保持器
14 保持器のポケット
15 保持器の柱部分
16 外輪
18 内輪
20 転動体[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a cage for a rolling bearing and a rolling bearing.
[0002]
[Prior art]
Generally, rolling bearings are roughly classified into ball bearings in which rolling elements are balls and roller bearings in which rolling elements are rollers, and each is classified into several types.
Ball bearings include deep groove ball bearings, angular ball bearings, and thrust angular ball bearings. Roller bearings include cylindrical roller bearings, self-aligning roller bearings, needle roller bearings, needle needle roller bearings, and tapered roller bearings. and so on.
[0003]
5 (i), a crown type cage as shown in FIG. 5 (ii), an angular ball bearing cage and a thrust ball bearing shown in FIG. 5 (iii). There are a cage (not shown) and the like. The cage used for the roller bearing includes a tapered roller bearing cage of FIG. 5 (iv), a spherical roller bearing cage of FIG. 5 (v), and FIG. 5 (vi). ), Cages for cylindrical roller bearings, cages for thrust roller bearings (not shown), cages for thrust spherical bearings (not shown), and the like. The shapes of pillar portions and the like between the members are different.
[0004]
Further, the cage is classified into a rolling element guide cage guided by a rolling element, an outer ring guide cage guided by an outer ring of a bearing race member, and an inner ring guide cage guided by an inner ring of a bearing race member. You can also.
In addition, it is widely practiced to form a cage from a synthetic resin composition by injection molding. As a synthetic resin composition of the raw material of the cage, a so-called engineering plastic such as a polyamide resin, a polyacetal resin, a polybutylene terephthalate resin, a fluororesin, or the like, or a glass fiber, a short fiber such as a carbon fiber as a filler. It has been used in the form of mixed and reinforced composites. Of these, polyamide resins are frequently used because of their good balance between material cost and performance, and excellent performance has been confirmed under moderate environmental conditions.
[0005]
In addition, as a raw material of the cage used under a high temperature environment condition exceeding 150 ° C., polyether sulfone (PES) resin, polyetherimide (PEI) resin, polyamideimide (PAI) resin, polyetheretherketone (PEEK) Super engineering plastics such as resins have also been proposed. In addition, phenolic resins are also used as raw materials for cages used under high-speed rotation conditions.
[0006]
In addition, for the purpose of heat resistance and chemical resistance, glass fiber was mixed as a filler into a linear poniphenylene sulfide (linear PPS) resin in which a molecular chain was linearly grown to a high molecular weight in a polymerization stage. A cage formed from a synthetic resin composition has been employed in terms of cost.
[0007]
[Problems to be solved by the invention]
In recent years, in order to improve machining efficiency and productivity, various types of machine tools have been required to have higher speeds, and the rotational speeds of the spindles of these machine tools have also been required to be higher speeds. Therefore, there is a need for a rolling bearing that can withstand use under high-speed rotation conditions. However, when a cage using engineering plastics is used under high-speed rotation conditions, there is an inconvenience that the cage is deformed by the force applied during high-speed rotation. When the retainer is deformed, the rolling elements are restrained, and the rolling elements cannot roll smoothly, causing abnormal temperature rise, causing seizure and damage. Such a problem is more likely to occur when the rolling element guides the cage than when the track member guides the cage.
[0008]
Although super-engineering plastics are excellent in heat resistance, chemical resistance, and elasticity, they are very expensive to use as a raw material of a cage, and have a problem in cost.
Further, in a cage made of a phenolic resin as a raw material, the cage cannot be injection-molded from a synthetic resin composition of a phenolic resin, which has a disadvantage that the cost is increased and the mass productivity is poor.
[0009]
Another raw material that can be used for a cage used under high-temperature conditions due to high-speed rotation is a branched poniphenylene sulfide (branched PPS) resin. In the manufacturing process of the branched PPS resin, a crosslinked or branched structure is partially introduced by heat treatment at a high temperature or by adding a crosslinking agent or a branching agent. However, as compared with the linear PPS resin, the branched PPS resin has low toughness, is brittle, and lacks flexibility, and has a problem in mechanical properties as a raw material of the cage.
[0010]
Further, in a cage formed of a synthetic resin composition in which glass fiber is mixed into a linear PPS resin as a filler, under high-speed rotation conditions, the strength of the cage may be insufficient and the cage may be damaged. Was.
SUMMARY OF THE INVENTION The present invention has been made to eliminate the above-mentioned problems of the related art, and has as its object to provide a rolling bearing retainer and a rolling bearing suitable for use under high-speed rotation conditions. That is.
[0011]
[Means for Solving the Problems]
The present invention has the following configuration to solve the problem. The invention of claim 1 is a rolling bearing cage formed from a synthetic resin composition, wherein the matrix of the synthetic resin composition has a melting point of 310 ° C., a shear rate of 200 / sec, and a high molecular weight of 700 poise or more. And is a linear polyphenylene sulfide resin made of the above, and a cage for a rolling bearing in which 10 to 40% by mass of carbon fiber is contained as a filler in this matrix.
[0012]
According to the first aspect of the present invention, a cage is manufactured from a synthetic resin composition having a linear PPS resin as a matrix, and the retainer has excellent heat resistance, chemical resistance, and oil resistance of the linear PPS resin. Has the property. For this reason, high-speed rotation conditions in which the dmn value, which is the product of dm, which is the average value (mm) of the outer and inner diameters of the rolling bearing, and n, which is the rotation speed (min -1 ) of the rolling bearing, exceeds 800,000. Underneath, the cage is prevented from softening or melting even at high temperatures. Since the linear PPS resin has better mechanical properties such as toughness than the branched PPS resin, the snap fit required for the cage can be obtained, and the cage is broken at the time of injection molding or bearing assembly. Is prevented. Further, the linear PPS resin has a small molding shrinkage, and the dimensional accuracy of the cage is improved.
[0013]
In addition, the linear PPS resin has not been subjected to heat treatment at a high temperature after polymerization, has not been added with a crosslinking agent or a branching agent, and has a melt viscosity which is a measure of molecular weight at a shear rate of 310 ° C. Is 700 poise or more when measured at 200 / sec, has substantially no branched chains, and is easily entangled between molecular chains, and thus has higher toughness than a branched PPS resin. Such a linear PPS resin is available from Kureha Chemical Industry Co., Ltd. as "Fortron KPS (trade name)".
[0014]
Furthermore, while glass fiber is rigid, the elastic modulus is small, but the elastic modulus of carbon fiber is large, so even if a large force acts on the cage under high-speed rotation conditions, deformation of the cage is suppressed, and the rolling element Alternatively, the coefficient of kinetic friction between the raceway member and the cage is also reduced, and the amount of heat generated in the bearing is kept low.
Further, in order to increase the rigidity of the cage and improve the dimensional accuracy, 10 to 40% by mass of carbon fiber is contained as a filler in the synthetic resin composition. If the content of the carbon fiber is less than 10% by mass, the strength of the cage becomes insufficient, and if it is more than 40% by mass, the moldability at the time of injection molding of the cage deteriorates, and the dimensional accuracy also deteriorates. More desirably, the content of carbon fibers is 15 to 30% by mass.
[0015]
The retainer includes a rolling element guide retainer, an outer ring guide retainer, and an inner ring guide retainer. However, the cage used under high-speed rotation conditions is preferably a rolling element guide cage or an outer ring guide cage in consideration of lubrication of the cage guide surface. Further, in order to release the whirling of the cage and the centrifugal force applied to the cage, it is preferable to use an outer ring guide cage.
[0016]
According to a second aspect of the present invention, there is provided a rolling bearing provided with the rolling bearing retainer according to the first aspect.
According to the second aspect of the present invention, when this rolling bearing is used as a bearing for a main spindle that rotates at high speed in various machine tools, seizure and damage of the rolling bearing under high-speed rotation conditions are prevented.
[0017]
A third aspect of the present invention is the rolling bearing according to the second aspect, wherein the rolling bearing includes a ceramic rolling element.
According to the third aspect of the present invention, since the rolling elements are made of ceramic, even under high-speed rotation conditions, deterioration and deformation of the rolling elements are prevented, and occurrence of seizure or the like in the rolling bearing is prevented.
[0018]
According to a fourth aspect of the present invention, there is provided the rolling bearing according to the second or third aspect, wherein dm which is an average value (mm) of an outer diameter and an inner diameter of the rolling bearing, and a rotation speed (min) of the rolling bearing -1 ) A rolling bearing used under the condition that a dmn value, which is a product of n, and 8 × 10 5 or more.
Since the rolling bearing according to claim 2 or 3 can be used stably under high-speed rotation conditions where the dmn value is 8 × 10 5 or more, the calorific value of the rolling bearing is suppressed to be low. As a result, deformation of the cage is prevented, and occurrence of seizure or the like in the rolling bearing is also prevented.
[0019]
According to a fifth aspect of the present invention, there is provided the rolling bearing according to any one of the second to fourth aspects, wherein the rolling bearing is used for a spindle for a machine tool spindle.
Since the rolling bearing according to any one of claims 2 to 4, it can be used for a spindle for a machine tool main spindle that requires high-speed rotation, and exhibits stable performance.
[0020]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
An embodiment of the present invention will be described with reference to the drawings.
First, the configuration of the present embodiment will be described. As shown in FIG. 1, a rolling bearing 10 used for a spindle for a machine tool main spindle includes a retainer 12 formed by injection molding from a raw material of a synthetic resin composition. The rolling bearing 10 is an angular ball bearing, and includes an inner race 18 and an outer race 16, which are track members, a retainer 12, and a rolling element 20, and the retainer 12 is a rolling element guide and retainer. Each configuration of the inner ring 18 and the outer ring 16 is the same as the conventional one, the rolling element 20 is a ceramic ball, and the retainer 12 is also conventional except for the composition of the synthetic resin composition which is its raw material. It has the same configuration as the cage formed by injection molding. That is, in FIG. 1, the cage 12 accommodates and holds the rolling elements 20 in the pockets 14, the rolling elements 20 roll while guiding the cages 12, and the cages 12 are raceways of the inner race 18 and the outer race 16. It is configured to be rotatable between them.
[0021]
Hereinafter, the synthetic resin composition as a raw material of the cage 12 will be described. The matrix of the synthetic resin composition is a linear PPS resin, and contains 10 to 40% by mass of carbon fibers as a filler. The linear PPS resin is a polymer having a molecular structure in which a benzene ring and a sulfur atom are alternately bonded as a constitutional unit. In the polymerization stage, the molecular chain is linearly grown to a high molecular weight, and after polymerization, No heat treatment at high temperature, no addition of a crosslinking agent, no branching agent, etc., substantially no branched chains, and easy entanglement between molecular chains. The melt viscosity, which is a measure of the molecular weight of the linear PPS resin, is 700 poise or more when measured at 310 ° C. and a shear rate of 200 / sec.
[0022]
The carbon fibers contained in the synthetic resin composition as a filler are the same as those in the related art, and organic fibers such as rayon and polyacrylonitrile and fibers made by spinning refined petroleum pitch are converted into an inert gas. It is manufactured by heat treatment and carbonization. The carbon fibers as the filler are preferably short fibers having an average fiber length of 0.5 mm and an average fiber diameter of 7 to 9 μm.
[0023]
This embodiment is configured as described above, and its operation will be described next.
Since the linear PPS resin is easily entangled between molecular chains, its toughness is large, and the cage 12 has flexibility. Even if a force is applied to extract the cage 12 from the mold during injection molding, the cage 12 is prevented from being damaged, and the productivity is improved. Further, the flexibility of the cage 12 prevents the cage 12 from being deformed and damaged when the rolling elements 20 are accommodated in the pockets of the cage 12.
[0024]
In addition, since the linear PPS resin has excellent heat resistance, oil resistance, and chemical resistance, the rolling bearing 10 having the cage 12 is used under high-speed rotation conditions where the dmn value is 8 × 10 5 or more. Even when the force due to the whirling acts on the container 12 and the temperature rises at the sliding contact portion between the rolling element 20 and the retainer 12 to increase the temperature, the retainer 12 is prevented from being softened or melted.
[0025]
Further, the carbon fiber, which is a filler of the synthetic resin composition forming the cage 12, has a higher elastic modulus than glass fiber or the like, and the cage 12 is hardly deformed. Therefore, even when the rolling bearing 10 is used under a high-speed rotation condition and a large external force is applied to the cage 12, the deformation of the cage 12 is suppressed. Then, since the deformation of the cage 12 is suppressed, the rolling of the rolling elements 20 is smooth in the pockets of the cage 12, and the coefficient of kinetic friction between the cage 12 and the rolling elements 20 is suppressed to be small. Calorific value is also reduced.
[0026]
Therefore, the cage 12 formed from the synthetic resin composition in which the linear PPS resin contains the carbon fiber as the filler is largely suppressed from being deformed under the high-speed rotation condition, and the linear PPS resin is made of the glass fiber. Compared with a cage formed from a synthetic resin composition containing as a filler, the ability to cope with high-speed rotation is dramatically improved, and stable performance can be exhibited under high-speed rotation conditions.
[0027]
Further, the calorific value between the retainer 12 and the rolling elements 20 is reduced, and the rolling elements 20 also smoothly roll, so that the deterioration of the lubricant supplied to the rolling bearings 10 is also prevented.
Further, since the rolling elements 20 are made of ceramic, the rolling elements 20 are prevented from being deteriorated or deformed even under high-speed rotation conditions.
[0028]
Further, since the cost of the linear PPS resin is significantly lower than the cost of the super engineering plastic, the cage 12 can be manufactured at a low cost.
In this embodiment, the retainer 12 is a rolling element guide retainer. However, it is needless to say that the outer ring guide retainer or the inner ring guide retainer can be used. When the cage 12 is an outer ring guide cage or an inner ring guide cage, similarly to the operation between the cage 12 and the rolling element 20 in the present embodiment, the cage 12 smoothly moves on the guide surface of the raceway member. It slides and the amount of heat generated at the sliding contact portion is reduced.
[0029]
Further, in the present embodiment, the rolling bearing has been described as an angular ball bearing, but other types of ball bearings can be used, and the rolling elements are not limited to balls, and may be roller bearings. Of course, it is possible.
As a modified example of the rolling bearing according to the present embodiment, FIG. 2 shows a cylindrical roller bearing whose retainer is an outer ring guide. The configuration of the cylindrical roller bearing is the same as the configuration of the conventional cylindrical roller bearing except for the composition of the synthetic resin composition forming the cage.
[0030]
Next, results of an evaluation test of the performance of the cage according to the present invention will be described.
(1) Performance evaluation test 1
In the performance evaluation test 1, the performance evaluation test of the cage was performed by using the angular ball bearing having the cage according to the present invention (Invention Example A) and the angular ball bearing having the cages shown in Comparative Examples A to D below. Was done.
[0031]
The cage of Invention Example A has the same configuration as the ball guide cage of the angular ball bearing described in the present embodiment, and the matrix of the synthetic resin composition forming the cage is a linear PPS resin. And 30% by mass of carbon fiber as a filler. As the linear PPS resin, “Tough PPS resin: FORTRON 2130A1” manufactured by Polyplastics was used.
[0032]
The cages of Comparative Examples A to D have the same configuration as the cage of Invention Example A except for the composition of the synthetic resin composition forming the cage. The synthetic resin composition forming the retainer of Comparative Example A has a matrix of nylon 66 resin and contains 25% by mass of glass fiber as a filler. Further, the synthetic resin composition forming the cage of Comparative Example B has a matrix of nylon 46 resin and contains 25% by mass of glass fiber as a filler. In the synthetic resin composition forming the cage of Comparative Example C, the matrix was a linear PPS resin, and contained 30% by mass of glass fiber as a filler. As the linear PPS resin of Comparative Example C, “Tough PPS resin: FORTRON 1130A6” manufactured by Polyplastics was used. The synthetic resin composition forming the retainer of Comparative Example D has a matrix of PEEK resin and contains 30% by mass of carbon fiber as a filler. In addition, "450CA30" manufactured by VICTREX was used for the PEEK resin of Comparative Example D.
[0033]
Then, the cages of Inventive Example A and Comparative Examples A to D were incorporated into angular ball bearings having the following configuration. The angular contact ball bearing has an inner diameter of 65 mm, an outer diameter of 100 mm, a width of 18 mm, a ball diameter of 7.144 mm, a number of balls of 28, a contact angle of 18 °, a ball material of a silicon nitride ball (ceramic), and a DB combination fixed position preload. , The lubrication was performed by grease lubrication, and the axial spring constant at the time of assembly was set to 100 N / μm.
[0034]
With respect to the angular ball bearings having the cages of Inventive Example A and Comparative Examples A to D, the rotation speed was increased and the temperature rise of the outer ring was examined. The result is shown in FIG. The vertical axis in FIG. 3 indicates the temperature rise of the outer ring, and the horizontal axis indicates the rotation speed.
First, the results of Comparative Example A and Comparative Example B will be compared with reference to FIG. In both cases, there is no significant difference in the temperature rise of the outer ring until the rotation speed reaches 16000 min- 1 . However, when the temperature rise of the outer ring exceeds 30 ° C. in Comparative Example A, the rate of the temperature rise sharply increases. The limit of the high-speed rotation of Comparative Example A is lower than the limit of Comparative Example B. When Comparative Example A reached the limit of the high-speed rotation, a part of the ball of the cage of Comparative Example A slidingly contacted with the pocket surface of the cage had partially melted.
[0035]
The following are presumed as the reasons for such a result. That is, there is no significant difference between the bending elastic modulus of the nylon 66 resin forming the cage of Comparative Example A and the bending elastic modulus of the nylon 46 resin forming the cage of Comparative Example B. However, when the temperature of the angular contact ball bearing of Comparative Example A is 50 ° C. or higher, the temperature becomes close to the glass transition temperature of nylon 66 resin. For this reason, it is considered that the strength of the cage of Comparative Example A was suddenly reduced and deformed, and the ball was restrained. Therefore, it can be seen that the cage made of nylon 46 resin can withstand use under high-speed rotation conditions than the cage made of nylon 66 resin.
[0036]
Further, in Comparative Example B, when the number of rotations reaches 20,000 min −1 , the rate of temperature rise of the outer ring sharply increases. On the other hand, in Comparative Example C, the rate of temperature rise of the outer ring did not change suddenly until the number of revolutions reached 25000 min −1 , and smooth rotation was possible. Comparing the cage of Comparative Example C and the cage of Comparative Example B, the cage of Comparative Example B is inferior in strength due to the difference in flexural modulus between the linear PPS resin and the nylon 46 resin. Is deformed by the centrifugal force, and it is considered that the ball is restrained. Therefore, it can be seen that the cage made of linear PPS resin is more suitable for use under high-speed rotation conditions than the cage made of nylon 46 resin.
[0037]
Further, in Invention Example A, the rate of temperature rise of the outer race is gentler and more stable than any of Comparative Examples A, B, and C, and is almost the same as that of Comparative Example D. Therefore, it can be seen that the cage made of linear PPS resin exhibits the same performance as the cage made of PEEK resin.
As described above, the cage formed from the synthetic resin composition according to the present invention is a cage formed from a synthetic resin composition using a nylon 66 resin or a nylon 46 resin as a matrix, and a synthetic resin using a filler as a glass fiber. It is more suitable for use under high-speed rotation conditions than the cage formed from the composition, and can be used under high-speed rotation conditions like the cage formed from the synthetic resin composition having the PEEK resin as a matrix. confirmed.
(2) Performance evaluation test 2
In the performance evaluation test 2, the single-row cylindrical roller bearing having the cage according to the present invention (Invention Example B) and the single-row cylindrical roller bearing having the cages of Comparative Examples E and F described below showed the performance of the cage. An evaluation test was performed.
[0038]
The cage of Invention Example B has the same configuration as the cylindrical roller bearing according to the modification of the present embodiment shown in FIG. 3, and the composition of the synthetic resin composition forming the cage is the synthetic resin composition of Invention Example A. It has the same composition as the product. Each of the cages of Comparative Examples E and F has the same configuration as the cage of Invention Example B except for the composition of the synthetic resin composition forming the cage. The composition of the synthetic resin composition forming the cage of Comparative Example E is the same as that of Comparative Example C. The composition of the synthetic resin composition forming the cage of Comparative Example F is the same as that of Comparative Example D.
[0039]
Each of these cages was incorporated in the following single-row cylindrical roller bearing. This single-row cylindrical roller bearing was configured such that the inner diameter was 60 mm, the outer diameter was 90 mm, the width was 18 mm, the roller diameter was 8 mm, the roller length was 8 mm, the number of rollers was 20, lubrication was performed by oil air, and the radial gap was 0 μm when assembled.
With respect to the single-row cylindrical roller bearing having the cages of Inventive Example B and Comparative Examples E and F, the rotation speed was increased and the temperature rise of the outer ring was examined. The result is shown in FIG. The display of the result in FIG. 4 is the same as that in FIG.
[0040]
In FIG. 4, the rate of temperature rise of the outer ring of Invention Example B is gentler than that of Comparative Example E, and is almost the same as that of Comparative Example F. Further, in the cage of Comparative Example E, when the number of rotations was 31,000 min −1 , the column connecting the pockets of the cage was damaged, and the pocket surface was also worn.
As described above, the cage formed from the synthetic resin composition according to the present invention is more suitable for use under high-speed rotation conditions than the cage formed from the synthetic resin composition using glass fiber as a filler, and PEEK. It was confirmed that it can be used under high-speed rotation conditions, similarly to a cage formed from a synthetic resin composition using a resin as a matrix.
[0041]
【The invention's effect】
The present invention is a rolling bearing cage and a rolling bearing as described above, and thus has an effect of providing a rolling bearing cage and a rolling bearing suitable for use under high-speed rotation conditions.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is an axial partial cross-sectional view of a rolling bearing according to an embodiment.
FIG. 2 is a partial axial sectional view of a rolling bearing according to a modification of the present embodiment.
FIG. 3 is a diagram showing the results of a performance evaluation test 1.
FIG. 4 is a diagram showing the results of a performance evaluation test 2.
FIG. 5 is a perspective view of a conventional cage.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 10 Bearing 12 Cage 14 Cage pocket 15 Cage column part 16 Outer ring 18 Inner ring 20 Rolling element