JP2004069444A - Frp動翼強度試験用電気炉及びこれを備えた強度試験機 - Google Patents
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Abstract
【課題】FRP動翼における翼本体の基端部及びフランジを一様に100℃前後に精度よく効率的に昇温することが可能であり、且つ、安価なFRP動翼強度試験用電気炉及びこれを備えた強度試験機を提供する。
【解決手段】強度試験機1にFRP動翼強度試験用電気炉15を備える。そして、この電気炉はFRP動翼2の翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲む炉容器16と、発熱体18A〜18Dを放熱フィン19A〜19Dに取り付けてなり、炉容器の内面に断熱材21を介して固定した発熱部17A〜17Dと、翼本体の基端部及びフランジの温度を計測する温度センサ26b〜26k及び温度計測処理装置27と、発熱体に給電する電力量を個別に調整する可変抵抗器25A〜25Dとを有し、発熱部による炉容器内の空気の加熱により自然対流で翼本体の基端部及びフランジを100℃前後に昇温するように構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】強度試験機1にFRP動翼強度試験用電気炉15を備える。そして、この電気炉はFRP動翼2の翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲む炉容器16と、発熱体18A〜18Dを放熱フィン19A〜19Dに取り付けてなり、炉容器の内面に断熱材21を介して固定した発熱部17A〜17Dと、翼本体の基端部及びフランジの温度を計測する温度センサ26b〜26k及び温度計測処理装置27と、発熱体に給電する電力量を個別に調整する可変抵抗器25A〜25Dとを有し、発熱部による炉容器内の空気の加熱により自然対流で翼本体の基端部及びフランジを100℃前後に昇温するように構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はFRP動翼強度試験用電気炉及びこれを備えた強度試験機に関し、特に供試体のFRP動翼を実機での使用温度条件である100℃前後に昇温して引張強度試験を行う場合に適用して有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
発電プラントの脱硫装置には大型のファンが装備されている。この脱硫装置用のファンは径方向の長さが例えば1000mm程度の大型の動翼を回転軸の外周に30〜40枚程度取り付けたものである。
【0003】
この脱硫装置用のファンの動翼は従来インコネルなどの金属製のものであったが、耐腐食性の向上を図ることなどから、現在、FRP(fiber reinforced plastics :繊維強化プラスチック)製のもの(FRP動翼)が開発されている。FRP動翼はFRPの翼本体の基端にFRPのフランジを設けてなるものであり、フランジ部分がファンの回転軸への取り付け部分となっている。そして、このFRP動翼に対しては、FRPの繊維の方向がフランジ部分では周方向であり、翼本体部分では径方向であることなどから(図1(b)参照)、特に翼本体の付け根部分(翼本体とフランジとの間の部分)の強度を確認するための引張強度試験が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなFRP動翼の引張強度試験を行う際、実機での使用温度条件を再現するため、供試体であるFRP動翼の翼本体の付け根部分付近(翼本体の基端部及びフランジ)を実機での使用温度である100℃前後に昇温する必要があるが、従来、これに適した試験機専用の電気炉はなかった。
【0005】
つまり、FRP動翼の引張強度試験は大型の強度試験機に供試体のFRP動翼(実機サイズのもの)を取り付けて実施するが、このときに翼本体の基端部及びフランジを加熱するのに適した試験機専用の電気炉はなかった。FRP動翼は大型で且つ特異な形状をしているため、市販の電気炉を翼本体の付け根部分付近に取り付けるのは困難であり、市販の電気炉を加工して試験機専用の電気炉を製作するには費用がかかる。しかも、市販の電気炉は適正な温度制御範囲が高く(例えば200〜1000℃程度)、100℃前後の温度制御を精度よく(例えな100±5℃程度)に制御することは困難である。
【0006】
従って本発明は上記の事情に鑑み、FRP動翼における翼本体の基端部及びフランジを一様に100℃前後に精度よく効率的に昇温することが可能であり、且つ、安価なFRP動翼強度試験用電気炉及びこれを備えた強度試験機を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、翼本体の基端にフランジを設けてなるFRP動翼の供試体に対し、強度試験機で前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行う際、前記翼本体の基端部及び前記フランジを実機での使用温度条件である100℃前後に昇温するための電気炉であって、
前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲を囲む炉容器と、
給電によって発熱する発熱体を放熱フィンに取り付けてなり、前記炉容器の内部に設置した発熱部と、
前記翼本体の基端部及び前記フランジの温度を計測する温度計測手段と、
前記発熱体に給電する電力量を調整する給電調整手段とを有し、
前記発熱部による前記炉容器内の空気の加熱により自然対流で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温するように構成したことを特徴とする。
【0008】
また、第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記発熱部は断熱材を介して前記炉容器の内面に固定したことを特徴とする。
【0009】
また、第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1又は第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記翼本体の基端部が貫通する前記炉容器の開口と、前記翼本体の基端部との隙間を断熱材で塞いだことを特徴とする。
【0010】
また、第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1,第2又は第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記発熱部を前記翼本体の基端部の周囲の複数箇所に配置し、各発熱部の発熱体の発熱量を前記給電調整手段により個別に独立して調整するように構成したことを特徴とする。
【0011】
また、第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1,第2,第3又は第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記炉容器は複数に分割し、これら複数の分割部を前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲に囲むようにして炉容器支持部材に取り付けることより、一体的に前記炉容器を構成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、第6発明の強度試験機は、第1,第2,第3,第4又は第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉を備え、この電気炉で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温した状態で前記翼本体と前記フランジとを引っ張って前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行うように構成したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1(a)は本発明の実施の形態に係る強度試験機の要部構成を一部破断して示す正面図、図1(b)は図1(a)のA−A線矢視断面であってFRPの繊維の様子を示す説明図、図2は図1のB−B線矢視断面拡大図、図3は図1のC−C線矢視断面拡大図である。
【0015】
<構成>
図1に示す強度試験機1は実機サイズのFRP動翼2を供試体として引張強度試験を行うためのものである。FRP動翼2はFRPの翼本体3の基端にFRPのフランジ4を設けてなるFRP製のものであり、例えば発電プラントの脱硫装置用のファンなどに用いられ、フランジ4部分がファンの回転軸への取り付け部分となっている。FRP動翼2の径方向(図中上下方向)の寸法は実機では例えば1000mm程度であるが、供試体としては試験に不要な翼本体3の先端部分を切り取って例えば600mm程度となっている。また、フランジ4の直径は例えば300mm程度となっている。
【0016】
そして、このFRP動翼2に対し、強度試験機1では、図1(b)に点線で概要を示すようにFRPの繊維30の方向がフランジ4部分では周方向(図中左右方向)であり、翼本体3部分では径方向(図中上下方向)であることなどから、特に翼本体3の付け根部分(翼本体3とフランジ4との間の部分)5の強度を確認するための引張強度試験を行う。
【0017】
具体的には、図示のように供試体のFRP動翼2を立設した状態とし、翼本体3の先端部3bには翼挟持部材6をボルト7で締め付けて取り付け、フランジ4は図示しないボルトでフランジ固定部材8に固定する。翼挟持部材6にはピン9を介して連結部材10が結合され、更に連結部材10にはピン11を介して上側の棒12が結合されている。フランジ固定部材8には炉容器支持部材20を介して下側の棒13が結合されている。かかる状態のFRP動翼2に対し、上下の棒12,13を介して図示しない荷重付加装置で上下方向に引張荷重Pを加えることにより、翼本体3の付け根部分5の引張強度試験が行われる。なお、図中の14は引張荷重Pを加えたときのFRP動翼2の変位を検出するための変位計である。
【0018】
そして、この引張強度試験において実機でのFRP動翼2の使用温度条件(100℃前後)を再現するため、本実施の形態の強度試験機1には試験機専用の電気炉15が装備されている。
【0019】
図1,図2及び図3に示すように、FRP動翼強度試験用の電気炉15は炉容器16と、炉容器16の内面に固定された4つの発熱部17A,17B,17C,17Dと備えている。炉容器16は断熱板である上板16a、下板16b及び側板16c,16d,16e,16fからなる直方体状の筺体であり、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲んでいる。炉容器16は図示しないボルトで炉容器支持部材20に取り付けられている。
【0020】
炉容器16の上板16aには翼本体3の基端部3aが貫通する開口16a−1が形成され、炉容器16の下板16bにはフランジ固定部材8が貫通する開口16b−1が形成されている。上側の開口16a−1は翼本体3の基端部3aの断面形状に沿った形状で且つ同断面形状よりも若干大きく形成されており、この開口16a−1と翼本体3の基端部3aとの隙間はガラス繊維の断熱材23によって塞がれている。
【0021】
また、炉容器16は図2及び図3に示すように4箇所の分割位置24A,24B,24C,24Dにおいて4つの分割部16A,16B,16C,16Dに分割されている。そして、これらの炉容器分割部16A,16B,16C,16Dを、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲むようにして、それぞれボルトで炉容器支持部材20に固定することより、一体的に炉容器16を構成するようになっている。このとき、上側の開口16a−1や下側の開口16b−1も一体的に形成される。
【0022】
発熱部17Aは発熱体18Aを放熱フィン19Aに取り付けてなるものである。同様に他の発熱部17B,17C,17Dも、他の発熱体18B,18C,18Dを他の放熱フィン19B,19C,19Dにそれぞれ取り付けてなるものである。
【0023】
発熱体17A〜17Dはニクロム線などの電熱線を有してなるものであり、例えば半田ごてのヒータなどを利用することができる。なお、発熱体17A〜17Dとしては、必ずしもこれに限定するものではなく、給電によって発熱するものであればよい。また、ニクロム線等の発熱体17A〜17Dは翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温するのに適した適宜の発熱量のものを選定する。
【0024】
発熱部17A,17B(放熱フィン19A,19B)は側板16fの内面の左右両側部分にガラス繊維の断熱材21を介してボルト22で固定され、発熱部17C,17D(放熱フィン19C,19D)は側板16dの内面の左右両側部分に断熱材21を介してボルト22で固定されている。即ち、発熱部17A〜17Dは翼本体3の基端部3aの周囲の4箇所に配置されている。
【0025】
そして、発熱部の発熱体18A,18B,18C,18Dは、給電調整手段としての可変抵抗器(スライダック)25A,25B,25C,25Dを介して図示しない電源に電気的に接続されている。各可変抵抗器25A〜25Dは各発熱体18A〜18Dにそれぞれ個別に接続されている。従って、作業員は各可変抵抗器25A〜25Dを個別に操作して各発熱体18A〜18Dへの印加電圧(供給電力量)を個別に独立して調節することにより、各発熱体18A〜18Dの発熱量を個別に独立して調節することができる。なお、可変抵抗器25A〜25Dは翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温するのに適した適宜の容量のものを選定する。
【0026】
また、炉容器16の内部空間や翼本体3の基端部3a及びフランジ4の温度を測定するための温度計測手段として、炉容器16内の各位置には熱電対などの温度センサ26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h,26i,26j,26kが設けられ、これらの温度センサ26a〜26kは温度計測処理装置27に電気的に接続されている。温度センサ26aは炉容器16の内部空間の温度を測定し、温度センサ26b〜26eはフランジ4の4箇所の温度を測定し、温度センサ26f〜26kは翼本体3の基端部3aの6箇所の温度を測定する。温度計測処理装置27では温度センサ26a〜26kの温度計測信号を処理し、温度センサ26a〜26kで計測した各部の温度の表示や記録をする。
【0027】
従って、作業員は可変抵抗器25A〜25Dを操作して発熱体18A〜18Dの発熱量を調節する際、この温度センサ26a〜26kで測定した各部の温度の表示を見ながら、可変抵抗器25A〜25Dを操作することができる。なお、温度センサの配置は、図示例の配置に限定するものではなく、適宜設定することができる。
【0028】
<作用・効果>
以上のように、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲む炉容器16と、給電によって発熱する発熱体18A〜18Dを放熱フィン19A〜19Dに取り付けてなり、炉容器16の内部に設置した発熱部17A〜17Dと、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の温度を計測する温度センサ26b〜26kや温度計測処理装置27と、発熱体18A〜18Dに給電する電力量を調整する可変抵抗器25A〜25Dとを有し、発熱部17A〜17Dによる炉容器16内の空気の加熱により自然対流で翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温するように構成したため、翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に精度よく(例えば100±5℃程度)、効率的に昇温することが可能となる。
【0029】
詳述すると、昇温を早めるには温風ヒータを用いてファンで強制的に温風を流すことも考えられるが、この場合には翼本体3の基端部3aやフランジ4の各部に温度のむらが生じ易く、翼本体3の基端部3aやフランジ4を一様の温度にすることが難しい。そこで、本実施の形態では自然対流で昇温することにより容易に翼本体3の基端部3aやフランジ4を一様の温度にすることができるようにしており、しかも、このときの昇温をできるだけ効率的に行うため、単に発熱体18A〜18Dのみを炉容器16内に設けるのではなく、発熱体18A〜18Dを放熱フィン19A〜19Dに取り付けた発熱部17A〜17Dを炉容器16内に設けることにより放熱フィン19A〜19Dの効果で効率的に炉容器16内の空気を加熱することができるようにしている。
【0030】
更に、FRPは1度でも120℃位まで加熱されてしまうと特性が急激に低下してしまうため、精度のよい引張強度試験を行うためには加熱のし過ぎを確実に防止する必要がある。これに対し、ファンで強制的に温風を流す場合にはオーバーシュートが大きくなって加熱し過ぎるおそれがあるが、本実施の形態のように自然対流による緩やかな昇温ではこのようなおそれもない。
【0031】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、発熱部17A〜17Dは断熱材21を介して炉容器16の内面に固定したことにより、発熱部17A〜17Dの発熱が直接炉容器16に伝達されて外部に放熱されしてまうのを防止することができるため、効率的に炉容器16内の空気を加熱して翼本体3の基端部3a及びフランジ4を昇温することができる。
【0032】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、翼本体3の基端部3aが貫通する炉容器16の開口16a−1と、翼本体3の基端部3aとの隙間を断熱材23で塞いだことにより、炉容器16内の熱が前記隙間から炉容器16外へと逃げるのを防止することができるため、効率的に炉容器16内の空気を加熱して翼本体3の基端部3a及びフランジ4を昇温することができる。
【0033】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、発熱部17A〜17Dを翼本体3の基端部3aの周囲の複数箇所(図示例では4箇所)に配置し、各発熱部17A〜17Dの発熱体18A〜18Dの発熱量を可変抵抗器25A〜25Dにより個別に独立して調整するように構成したため、図3に示すように翼本体3の基端部3aの横断面形状における厚みが一様でなくても、容易に翼本体3の基端部3a全体を一様に100℃前後に昇温することができる。例えば、図3に例示するFRP動翼2の断面形状では、厚みの比較的薄い右側部分のほうが厚みの比較的厚い左側部分よりも温度が高くなり易いため、可変抵抗器25A〜25Dを個別に操作して右側の発熱体17A,17Dの発熱量を左側の発熱体17B,17Dの発熱量よりも下げることより、翼本体3の基端部3a全体を一様に100℃前後に昇温することができる。
【0034】
また、逆に一様の温度にするのではなく、翼本体3の基端部3aやフランジ4の各部の温度に差をつけたいという要望があった場合にも、各可変抵抗器25A〜25Dによって各発熱体18A〜18Dの発熱量を個別に調節することにより、容易に温度差をつけることができる。
【0035】
なお、図示例では4箇所に発熱体18A〜18D(発熱部17A〜17D)を配置しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、発熱体(発熱部)の設置個数や配置は適宜設定することができる。
【0036】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、炉容器16は複数に分割し(図示例では4分割)、これら複数の分割部16A〜16Dを翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲むようにして炉容器支持部材20に取り付けることにより、一体的に炉容器16を構成するようにしたため、FRP動翼2を強度試験機1に取り付けた状態(翼本体3に翼挟持部材6を取り付け、フランジ4をフランジ固定部材8に固定した状態)でも、容易に炉容器16を取り付けて翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲むことができる。なお、図示例では炉容器16を4分割しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、炉容器16の分割数は適宜設定することができる。
【0037】
また、本実施の形態の強度試験機1によれば、上記のようなFRP動翼強度試験用電気炉15を備え、この電気炉15で翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温した状態で翼本体3とフランジ4とを引っ張って翼本体3の付け根部分5の引張強度試験を行うように構成したため、精度のよい引張強度試験が可能となる。
【0038】
【発明の効果】
以上、実施の形態とともに具体的に説明したように第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、翼本体の基端にフランジを設けてなるFRP動翼の供試体に対し、強度試験機で前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行う際、前記翼本体の基端部及び前記フランジを実機での使用温度条件である100℃前後に昇温するための電気炉であって、前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲を囲む炉容器と、給電によって発熱する発熱体を放熱フィンに取り付けてなり、前記炉容器の内部に設置した発熱部と、前記翼本体の基端部及び前記フランジの温度を計測する温度計測手段と、前記発熱体に給電する電力量を調整する給電調整手段とを有し、前記発熱部による前記炉容器内の空気の加熱により自然対流で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温するように構成したため、翼本体の基端部及びフランジを100℃前後に精度よく(例えば100±5℃程度)、効率的に昇温することが可能となる。
【0039】
温風ヒータを用いてファンで強制的に温風を流す場合には翼本体の基端部やフランジの各部に温度のむらが生じ易く、翼本体の基端部やフランジを一様の温度にすることが難しい。そこで、本発明では自然対流で昇温することにより容易に翼本体3の基端部3aやフランジ4を一様の温度にすることができるようにしており、しかも、このときの昇温をできるだけ効率的に行うため、単に発熱体のみを炉容器内に設けるのではなく、発熱体を放熱フィンに取り付けた発熱部を炉容器内に設けることにより放熱フィンの効果で効率的に炉容器内の空気を加熱することができるようにしている。更に、FRPは1度でも120℃位まで加熱されてしまうと特性が急激に低下してしまうため、精度のよい引張強度試験を行うためには加熱のし過ぎを確実に防止する必要があるのに対し、ファンで強制的に温風を流す場合にはオーバーシュートが大きくなって加熱し過ぎるおそれがあるが、本発明のような自然対流による緩やかな昇温ではこのようなおそれもない。
【0040】
また、第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記発熱部は断熱材を介して前記炉容器の内面に固定したことにより、発熱部の発熱が直接炉容器に伝達されて外部に放熱されしてまうのを防止することができるため、効率的に炉容器内の空気を加熱して翼本体の基端部及びフランジを昇温することができる。
【0041】
また、第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1又は第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記翼本体の基端部が貫通する前記炉容器の開口と、前記翼本体の基端部との隙間を断熱材で塞いだことにより、炉容器内の熱が前記隙間から炉容器外へと逃げるのを防止することができるため、効率的に炉容器内の空気を加熱して翼本体の基端部及びフランジを昇温することができる。
【0042】
また、第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1,第2又は第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記発熱部を前記翼本体の基端部の周囲の複数箇所に配置し、各発熱部の発熱体の発熱量を前記給電調整手段により個別に独立して調整するように構成したため、翼本体の基端部の横断面形状における厚みが一様でなくても、容易に翼本体の基端部全体を一様に100℃前後に昇温することができる。また、逆に一様の温度にするのではなく、翼本体の基端部やフランジの各部の温度に差をつけたいという要望があった場合にも、給電調整手段によって各発熱体の発熱量を個別に調節することにより、容易に温度差をつけることができる。
【0043】
また、第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1,第2,第3又は第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記炉容器は複数に分割し、これら複数の分割部を前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲に囲むようにして炉容器支持部材に取り付けることより、一体的に前記炉容器を構成するようにしたため、FRP動翼を強度試験機に取り付けた状態でも、容易に炉容器を取り付けて翼本体の基端部及びフランジの周囲を囲むことができる。
【0044】
また、第6発明の強度試験機によれば、第1,第2,第3,第4又は第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉を備え、この電気炉で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温した状態で前記翼本体と前記フランジとを引っ張って前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行うように構成したため、精度のよい引張強度試験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る強度試験機の要部構成を一部破断して示す正面図、(b)は(a)のA−A線矢視断面であってFRPの繊維の様子を示す説明図である。
【図2】図1のB−B線矢視断面拡大図である。
【図3】図1のC−C線矢視断面拡大図である。
【符号の説明】
1 強度試験機
2 FRP動翼
3 翼本体
3a 基端部
3b 先端部
4 フランジ
5 付け根部分
6 翼挟持部材
7 ボルト
8 フランジ固定部材
9 ピン
10 連結部材
11 ピン
12,13 棒
14 変位計
15 電気炉
16 炉容器
16a 上板
16a−1 開口
16b 下板
16b−1 開口
16c〜16f 側板
16A〜16D 炉容器分割部
17A〜17A 発熱部
18A〜18D 発熱体
19A〜19D 放熱フィン
20 炉容器支持部材
21 断熱材
22 ボルト
23 断熱材
24A〜24D 分割位置
25A〜25D 可変抵抗器
26a〜26k 温度センサ
27 温度計測処理装置
30 繊維
【発明の属する技術分野】
本発明はFRP動翼強度試験用電気炉及びこれを備えた強度試験機に関し、特に供試体のFRP動翼を実機での使用温度条件である100℃前後に昇温して引張強度試験を行う場合に適用して有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
発電プラントの脱硫装置には大型のファンが装備されている。この脱硫装置用のファンは径方向の長さが例えば1000mm程度の大型の動翼を回転軸の外周に30〜40枚程度取り付けたものである。
【0003】
この脱硫装置用のファンの動翼は従来インコネルなどの金属製のものであったが、耐腐食性の向上を図ることなどから、現在、FRP(fiber reinforced plastics :繊維強化プラスチック)製のもの(FRP動翼)が開発されている。FRP動翼はFRPの翼本体の基端にFRPのフランジを設けてなるものであり、フランジ部分がファンの回転軸への取り付け部分となっている。そして、このFRP動翼に対しては、FRPの繊維の方向がフランジ部分では周方向であり、翼本体部分では径方向であることなどから(図1(b)参照)、特に翼本体の付け根部分(翼本体とフランジとの間の部分)の強度を確認するための引張強度試験が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなFRP動翼の引張強度試験を行う際、実機での使用温度条件を再現するため、供試体であるFRP動翼の翼本体の付け根部分付近(翼本体の基端部及びフランジ)を実機での使用温度である100℃前後に昇温する必要があるが、従来、これに適した試験機専用の電気炉はなかった。
【0005】
つまり、FRP動翼の引張強度試験は大型の強度試験機に供試体のFRP動翼(実機サイズのもの)を取り付けて実施するが、このときに翼本体の基端部及びフランジを加熱するのに適した試験機専用の電気炉はなかった。FRP動翼は大型で且つ特異な形状をしているため、市販の電気炉を翼本体の付け根部分付近に取り付けるのは困難であり、市販の電気炉を加工して試験機専用の電気炉を製作するには費用がかかる。しかも、市販の電気炉は適正な温度制御範囲が高く(例えば200〜1000℃程度)、100℃前後の温度制御を精度よく(例えな100±5℃程度)に制御することは困難である。
【0006】
従って本発明は上記の事情に鑑み、FRP動翼における翼本体の基端部及びフランジを一様に100℃前後に精度よく効率的に昇温することが可能であり、且つ、安価なFRP動翼強度試験用電気炉及びこれを備えた強度試験機を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、翼本体の基端にフランジを設けてなるFRP動翼の供試体に対し、強度試験機で前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行う際、前記翼本体の基端部及び前記フランジを実機での使用温度条件である100℃前後に昇温するための電気炉であって、
前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲を囲む炉容器と、
給電によって発熱する発熱体を放熱フィンに取り付けてなり、前記炉容器の内部に設置した発熱部と、
前記翼本体の基端部及び前記フランジの温度を計測する温度計測手段と、
前記発熱体に給電する電力量を調整する給電調整手段とを有し、
前記発熱部による前記炉容器内の空気の加熱により自然対流で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温するように構成したことを特徴とする。
【0008】
また、第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記発熱部は断熱材を介して前記炉容器の内面に固定したことを特徴とする。
【0009】
また、第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1又は第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記翼本体の基端部が貫通する前記炉容器の開口と、前記翼本体の基端部との隙間を断熱材で塞いだことを特徴とする。
【0010】
また、第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1,第2又は第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記発熱部を前記翼本体の基端部の周囲の複数箇所に配置し、各発熱部の発熱体の発熱量を前記給電調整手段により個別に独立して調整するように構成したことを特徴とする。
【0011】
また、第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉は、第1,第2,第3又は第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記炉容器は複数に分割し、これら複数の分割部を前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲に囲むようにして炉容器支持部材に取り付けることより、一体的に前記炉容器を構成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、第6発明の強度試験機は、第1,第2,第3,第4又は第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉を備え、この電気炉で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温した状態で前記翼本体と前記フランジとを引っ張って前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行うように構成したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1(a)は本発明の実施の形態に係る強度試験機の要部構成を一部破断して示す正面図、図1(b)は図1(a)のA−A線矢視断面であってFRPの繊維の様子を示す説明図、図2は図1のB−B線矢視断面拡大図、図3は図1のC−C線矢視断面拡大図である。
【0015】
<構成>
図1に示す強度試験機1は実機サイズのFRP動翼2を供試体として引張強度試験を行うためのものである。FRP動翼2はFRPの翼本体3の基端にFRPのフランジ4を設けてなるFRP製のものであり、例えば発電プラントの脱硫装置用のファンなどに用いられ、フランジ4部分がファンの回転軸への取り付け部分となっている。FRP動翼2の径方向(図中上下方向)の寸法は実機では例えば1000mm程度であるが、供試体としては試験に不要な翼本体3の先端部分を切り取って例えば600mm程度となっている。また、フランジ4の直径は例えば300mm程度となっている。
【0016】
そして、このFRP動翼2に対し、強度試験機1では、図1(b)に点線で概要を示すようにFRPの繊維30の方向がフランジ4部分では周方向(図中左右方向)であり、翼本体3部分では径方向(図中上下方向)であることなどから、特に翼本体3の付け根部分(翼本体3とフランジ4との間の部分)5の強度を確認するための引張強度試験を行う。
【0017】
具体的には、図示のように供試体のFRP動翼2を立設した状態とし、翼本体3の先端部3bには翼挟持部材6をボルト7で締め付けて取り付け、フランジ4は図示しないボルトでフランジ固定部材8に固定する。翼挟持部材6にはピン9を介して連結部材10が結合され、更に連結部材10にはピン11を介して上側の棒12が結合されている。フランジ固定部材8には炉容器支持部材20を介して下側の棒13が結合されている。かかる状態のFRP動翼2に対し、上下の棒12,13を介して図示しない荷重付加装置で上下方向に引張荷重Pを加えることにより、翼本体3の付け根部分5の引張強度試験が行われる。なお、図中の14は引張荷重Pを加えたときのFRP動翼2の変位を検出するための変位計である。
【0018】
そして、この引張強度試験において実機でのFRP動翼2の使用温度条件(100℃前後)を再現するため、本実施の形態の強度試験機1には試験機専用の電気炉15が装備されている。
【0019】
図1,図2及び図3に示すように、FRP動翼強度試験用の電気炉15は炉容器16と、炉容器16の内面に固定された4つの発熱部17A,17B,17C,17Dと備えている。炉容器16は断熱板である上板16a、下板16b及び側板16c,16d,16e,16fからなる直方体状の筺体であり、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲んでいる。炉容器16は図示しないボルトで炉容器支持部材20に取り付けられている。
【0020】
炉容器16の上板16aには翼本体3の基端部3aが貫通する開口16a−1が形成され、炉容器16の下板16bにはフランジ固定部材8が貫通する開口16b−1が形成されている。上側の開口16a−1は翼本体3の基端部3aの断面形状に沿った形状で且つ同断面形状よりも若干大きく形成されており、この開口16a−1と翼本体3の基端部3aとの隙間はガラス繊維の断熱材23によって塞がれている。
【0021】
また、炉容器16は図2及び図3に示すように4箇所の分割位置24A,24B,24C,24Dにおいて4つの分割部16A,16B,16C,16Dに分割されている。そして、これらの炉容器分割部16A,16B,16C,16Dを、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲むようにして、それぞれボルトで炉容器支持部材20に固定することより、一体的に炉容器16を構成するようになっている。このとき、上側の開口16a−1や下側の開口16b−1も一体的に形成される。
【0022】
発熱部17Aは発熱体18Aを放熱フィン19Aに取り付けてなるものである。同様に他の発熱部17B,17C,17Dも、他の発熱体18B,18C,18Dを他の放熱フィン19B,19C,19Dにそれぞれ取り付けてなるものである。
【0023】
発熱体17A〜17Dはニクロム線などの電熱線を有してなるものであり、例えば半田ごてのヒータなどを利用することができる。なお、発熱体17A〜17Dとしては、必ずしもこれに限定するものではなく、給電によって発熱するものであればよい。また、ニクロム線等の発熱体17A〜17Dは翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温するのに適した適宜の発熱量のものを選定する。
【0024】
発熱部17A,17B(放熱フィン19A,19B)は側板16fの内面の左右両側部分にガラス繊維の断熱材21を介してボルト22で固定され、発熱部17C,17D(放熱フィン19C,19D)は側板16dの内面の左右両側部分に断熱材21を介してボルト22で固定されている。即ち、発熱部17A〜17Dは翼本体3の基端部3aの周囲の4箇所に配置されている。
【0025】
そして、発熱部の発熱体18A,18B,18C,18Dは、給電調整手段としての可変抵抗器(スライダック)25A,25B,25C,25Dを介して図示しない電源に電気的に接続されている。各可変抵抗器25A〜25Dは各発熱体18A〜18Dにそれぞれ個別に接続されている。従って、作業員は各可変抵抗器25A〜25Dを個別に操作して各発熱体18A〜18Dへの印加電圧(供給電力量)を個別に独立して調節することにより、各発熱体18A〜18Dの発熱量を個別に独立して調節することができる。なお、可変抵抗器25A〜25Dは翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温するのに適した適宜の容量のものを選定する。
【0026】
また、炉容器16の内部空間や翼本体3の基端部3a及びフランジ4の温度を測定するための温度計測手段として、炉容器16内の各位置には熱電対などの温度センサ26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h,26i,26j,26kが設けられ、これらの温度センサ26a〜26kは温度計測処理装置27に電気的に接続されている。温度センサ26aは炉容器16の内部空間の温度を測定し、温度センサ26b〜26eはフランジ4の4箇所の温度を測定し、温度センサ26f〜26kは翼本体3の基端部3aの6箇所の温度を測定する。温度計測処理装置27では温度センサ26a〜26kの温度計測信号を処理し、温度センサ26a〜26kで計測した各部の温度の表示や記録をする。
【0027】
従って、作業員は可変抵抗器25A〜25Dを操作して発熱体18A〜18Dの発熱量を調節する際、この温度センサ26a〜26kで測定した各部の温度の表示を見ながら、可変抵抗器25A〜25Dを操作することができる。なお、温度センサの配置は、図示例の配置に限定するものではなく、適宜設定することができる。
【0028】
<作用・効果>
以上のように、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲む炉容器16と、給電によって発熱する発熱体18A〜18Dを放熱フィン19A〜19Dに取り付けてなり、炉容器16の内部に設置した発熱部17A〜17Dと、翼本体3の基端部3a及びフランジ4の温度を計測する温度センサ26b〜26kや温度計測処理装置27と、発熱体18A〜18Dに給電する電力量を調整する可変抵抗器25A〜25Dとを有し、発熱部17A〜17Dによる炉容器16内の空気の加熱により自然対流で翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温するように構成したため、翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に精度よく(例えば100±5℃程度)、効率的に昇温することが可能となる。
【0029】
詳述すると、昇温を早めるには温風ヒータを用いてファンで強制的に温風を流すことも考えられるが、この場合には翼本体3の基端部3aやフランジ4の各部に温度のむらが生じ易く、翼本体3の基端部3aやフランジ4を一様の温度にすることが難しい。そこで、本実施の形態では自然対流で昇温することにより容易に翼本体3の基端部3aやフランジ4を一様の温度にすることができるようにしており、しかも、このときの昇温をできるだけ効率的に行うため、単に発熱体18A〜18Dのみを炉容器16内に設けるのではなく、発熱体18A〜18Dを放熱フィン19A〜19Dに取り付けた発熱部17A〜17Dを炉容器16内に設けることにより放熱フィン19A〜19Dの効果で効率的に炉容器16内の空気を加熱することができるようにしている。
【0030】
更に、FRPは1度でも120℃位まで加熱されてしまうと特性が急激に低下してしまうため、精度のよい引張強度試験を行うためには加熱のし過ぎを確実に防止する必要がある。これに対し、ファンで強制的に温風を流す場合にはオーバーシュートが大きくなって加熱し過ぎるおそれがあるが、本実施の形態のように自然対流による緩やかな昇温ではこのようなおそれもない。
【0031】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、発熱部17A〜17Dは断熱材21を介して炉容器16の内面に固定したことにより、発熱部17A〜17Dの発熱が直接炉容器16に伝達されて外部に放熱されしてまうのを防止することができるため、効率的に炉容器16内の空気を加熱して翼本体3の基端部3a及びフランジ4を昇温することができる。
【0032】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、翼本体3の基端部3aが貫通する炉容器16の開口16a−1と、翼本体3の基端部3aとの隙間を断熱材23で塞いだことにより、炉容器16内の熱が前記隙間から炉容器16外へと逃げるのを防止することができるため、効率的に炉容器16内の空気を加熱して翼本体3の基端部3a及びフランジ4を昇温することができる。
【0033】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、発熱部17A〜17Dを翼本体3の基端部3aの周囲の複数箇所(図示例では4箇所)に配置し、各発熱部17A〜17Dの発熱体18A〜18Dの発熱量を可変抵抗器25A〜25Dにより個別に独立して調整するように構成したため、図3に示すように翼本体3の基端部3aの横断面形状における厚みが一様でなくても、容易に翼本体3の基端部3a全体を一様に100℃前後に昇温することができる。例えば、図3に例示するFRP動翼2の断面形状では、厚みの比較的薄い右側部分のほうが厚みの比較的厚い左側部分よりも温度が高くなり易いため、可変抵抗器25A〜25Dを個別に操作して右側の発熱体17A,17Dの発熱量を左側の発熱体17B,17Dの発熱量よりも下げることより、翼本体3の基端部3a全体を一様に100℃前後に昇温することができる。
【0034】
また、逆に一様の温度にするのではなく、翼本体3の基端部3aやフランジ4の各部の温度に差をつけたいという要望があった場合にも、各可変抵抗器25A〜25Dによって各発熱体18A〜18Dの発熱量を個別に調節することにより、容易に温度差をつけることができる。
【0035】
なお、図示例では4箇所に発熱体18A〜18D(発熱部17A〜17D)を配置しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、発熱体(発熱部)の設置個数や配置は適宜設定することができる。
【0036】
また、本実施の形態のFRP動翼強度試験用電気炉15によれば、炉容器16は複数に分割し(図示例では4分割)、これら複数の分割部16A〜16Dを翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲むようにして炉容器支持部材20に取り付けることにより、一体的に炉容器16を構成するようにしたため、FRP動翼2を強度試験機1に取り付けた状態(翼本体3に翼挟持部材6を取り付け、フランジ4をフランジ固定部材8に固定した状態)でも、容易に炉容器16を取り付けて翼本体3の基端部3a及びフランジ4の周囲を囲むことができる。なお、図示例では炉容器16を4分割しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、炉容器16の分割数は適宜設定することができる。
【0037】
また、本実施の形態の強度試験機1によれば、上記のようなFRP動翼強度試験用電気炉15を備え、この電気炉15で翼本体3の基端部3a及びフランジ4を100℃前後に昇温した状態で翼本体3とフランジ4とを引っ張って翼本体3の付け根部分5の引張強度試験を行うように構成したため、精度のよい引張強度試験が可能となる。
【0038】
【発明の効果】
以上、実施の形態とともに具体的に説明したように第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、翼本体の基端にフランジを設けてなるFRP動翼の供試体に対し、強度試験機で前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行う際、前記翼本体の基端部及び前記フランジを実機での使用温度条件である100℃前後に昇温するための電気炉であって、前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲を囲む炉容器と、給電によって発熱する発熱体を放熱フィンに取り付けてなり、前記炉容器の内部に設置した発熱部と、前記翼本体の基端部及び前記フランジの温度を計測する温度計測手段と、前記発熱体に給電する電力量を調整する給電調整手段とを有し、前記発熱部による前記炉容器内の空気の加熱により自然対流で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温するように構成したため、翼本体の基端部及びフランジを100℃前後に精度よく(例えば100±5℃程度)、効率的に昇温することが可能となる。
【0039】
温風ヒータを用いてファンで強制的に温風を流す場合には翼本体の基端部やフランジの各部に温度のむらが生じ易く、翼本体の基端部やフランジを一様の温度にすることが難しい。そこで、本発明では自然対流で昇温することにより容易に翼本体3の基端部3aやフランジ4を一様の温度にすることができるようにしており、しかも、このときの昇温をできるだけ効率的に行うため、単に発熱体のみを炉容器内に設けるのではなく、発熱体を放熱フィンに取り付けた発熱部を炉容器内に設けることにより放熱フィンの効果で効率的に炉容器内の空気を加熱することができるようにしている。更に、FRPは1度でも120℃位まで加熱されてしまうと特性が急激に低下してしまうため、精度のよい引張強度試験を行うためには加熱のし過ぎを確実に防止する必要があるのに対し、ファンで強制的に温風を流す場合にはオーバーシュートが大きくなって加熱し過ぎるおそれがあるが、本発明のような自然対流による緩やかな昇温ではこのようなおそれもない。
【0040】
また、第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記発熱部は断熱材を介して前記炉容器の内面に固定したことにより、発熱部の発熱が直接炉容器に伝達されて外部に放熱されしてまうのを防止することができるため、効率的に炉容器内の空気を加熱して翼本体の基端部及びフランジを昇温することができる。
【0041】
また、第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1又は第2発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記翼本体の基端部が貫通する前記炉容器の開口と、前記翼本体の基端部との隙間を断熱材で塞いだことにより、炉容器内の熱が前記隙間から炉容器外へと逃げるのを防止することができるため、効率的に炉容器内の空気を加熱して翼本体の基端部及びフランジを昇温することができる。
【0042】
また、第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1,第2又は第3発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記発熱部を前記翼本体の基端部の周囲の複数箇所に配置し、各発熱部の発熱体の発熱量を前記給電調整手段により個別に独立して調整するように構成したため、翼本体の基端部の横断面形状における厚みが一様でなくても、容易に翼本体の基端部全体を一様に100℃前後に昇温することができる。また、逆に一様の温度にするのではなく、翼本体の基端部やフランジの各部の温度に差をつけたいという要望があった場合にも、給電調整手段によって各発熱体の発熱量を個別に調節することにより、容易に温度差をつけることができる。
【0043】
また、第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉によれば、第1,第2,第3又は第4発明のFRP動翼強度試験用電気炉において、前記炉容器は複数に分割し、これら複数の分割部を前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲に囲むようにして炉容器支持部材に取り付けることより、一体的に前記炉容器を構成するようにしたため、FRP動翼を強度試験機に取り付けた状態でも、容易に炉容器を取り付けて翼本体の基端部及びフランジの周囲を囲むことができる。
【0044】
また、第6発明の強度試験機によれば、第1,第2,第3,第4又は第5発明のFRP動翼強度試験用電気炉を備え、この電気炉で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温した状態で前記翼本体と前記フランジとを引っ張って前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行うように構成したため、精度のよい引張強度試験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る強度試験機の要部構成を一部破断して示す正面図、(b)は(a)のA−A線矢視断面であってFRPの繊維の様子を示す説明図である。
【図2】図1のB−B線矢視断面拡大図である。
【図3】図1のC−C線矢視断面拡大図である。
【符号の説明】
1 強度試験機
2 FRP動翼
3 翼本体
3a 基端部
3b 先端部
4 フランジ
5 付け根部分
6 翼挟持部材
7 ボルト
8 フランジ固定部材
9 ピン
10 連結部材
11 ピン
12,13 棒
14 変位計
15 電気炉
16 炉容器
16a 上板
16a−1 開口
16b 下板
16b−1 開口
16c〜16f 側板
16A〜16D 炉容器分割部
17A〜17A 発熱部
18A〜18D 発熱体
19A〜19D 放熱フィン
20 炉容器支持部材
21 断熱材
22 ボルト
23 断熱材
24A〜24D 分割位置
25A〜25D 可変抵抗器
26a〜26k 温度センサ
27 温度計測処理装置
30 繊維
Claims (6)
- 翼本体の基端にフランジを設けてなるFRP動翼の供試体に対し、強度試験機で前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行う際、前記翼本体の基端部及び前記フランジを実機での使用温度条件である100℃前後に昇温するための電気炉であって、
前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲を囲む炉容器と、
給電によって発熱する発熱体を放熱フィンに取り付けてなり、前記炉容器の内部に設置した発熱部と、
前記翼本体の基端部及び前記フランジの温度を計測する温度計測手段と、
前記発熱体に給電する電力量を調整する給電調整手段とを有し、
前記発熱部による前記炉容器内の空気の加熱により自然対流で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温するように構成したことを特徴とするFRP動翼強度試験用電気炉。 - 請求項1に記載のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記発熱部は断熱材を介して前記炉容器の内面に固定したことを特徴とするFRP動翼強度試験用電気炉。 - 請求項1又は2に記載のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記翼本体の基端部が貫通する前記炉容器の開口と、前記翼本体の基端部との隙間を断熱材で塞いだことを特徴とするFRP動翼強度試験用電気炉。 - 請求項1,2又は3に記載のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記発熱部を前記翼本体の基端部の周囲の複数箇所に配置し、各発熱部の発熱体の発熱量を前記給電調整手段により個別に独立して調整するように構成したことを特徴とするFRP動翼強度試験用電気炉。 - 請求項1,2,3又は4に記載のFRP動翼強度試験用電気炉において、
前記炉容器は複数に分割し、これら複数の分割部を前記翼本体の基端部及び前記フランジの周囲に囲むようにして炉容器支持部材に取り付けることより、一体的に前記炉容器を構成するようにしたことを特徴とするFRP動翼強度試験用電気炉。 - 請求項1,2,3,4又は5に記載のFRP動翼強度試験用電気炉を備え、この電気炉で前記翼本体の基端部及び前記フランジを100℃前後に昇温した状態で前記翼本体と前記フランジとを引っ張って前記翼本体の付け根部分の引張強度試験を行うように構成したことを特徴とする強度試験機。
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