JP2004069388A - 浅部地下異常探知装置及び探知方法 - Google Patents

浅部地下異常探知装置及び探知方法 Download PDF

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小西 尚俊
Yuzuru Ashida
芦田 譲
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Abstract

【課題】地下の異常(物)と土壌との物性値の違いに着目し、複数の物性を測定することによる分解能が著しく高い浅部地下異常探知装置及び方法に関する。
【解決手段】下記記載の装置を備えたことを特徴とする浅部地下異常探知装置である。すなわち、送受信コイル間のインダクタンスの変化を測定して地下の比抵抗を求めるための電磁誘導測定装置と、送信アンテナから発信した電磁波の反射波を受信アンテナで受け、反射波の伝播時間を測定して地下の構造の違いを求めるための地中レーダと、送信コイルに低周波の交流電流を流して交流磁場を発生させ、交流磁場による磁化誘導を利用して地下の磁化率を求める磁化率計と、前記電磁誘導測定装置、前記地中レーダ、および前記磁化率計の測定値から比抵抗(ρ)、誘電率(ε)、および磁化率(κ)を求めてその結果を3次元的に表示するための処理装置である。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
地下の異常(物)と土壌との物性値の違いに着目した探知方法であり、詳しくは、複数の物性を測定することにより、分解能が著しく高い浅部の地下異常探知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地下の異常(物)、例えば、地中に埋設された地雷を探知するために、いわゆる金属探知機が広く用いられてきた。これは、電磁波を地中に向けて発信し、地中物質に渦電流を発生させ、それに起因する2次磁場の大きさを測定する電磁誘導を探査原理とするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
金属探知機(電磁誘導法)では、例えば、プラスチック製地雷のような非電導性物体を探知することは非常に困難である。金属探知機(電磁誘導法)と別に、地下浅部の探知技術として地中レーダがある。これは、地中に向けてマイクロ波(通常300MHz〜30GHz程度の周波数の電磁波)を発射し、地下異常物からの反射波を測定することにより、地中に存在する埋設物を探知する方法である。地中を伝搬する電磁波は、土壌中に誘電率の異なる物質が存在するとそこで反射するために、金属のみならず、プラスチック製地雷のような非電導性物質についても探知可能である。
【0004】
ところで、誘電率が最も大きいのは水である。そのため、地中レーダにおいて最も厄介な問題は地下水の存在である。土壌の比誘電率(真空中の誘電率との比を示す)は、その乾湿の程度に左右され、5(乾燥状態)〜30(湿った状態)〜50(湿潤状態)程度の値をとる。例えば、プラスチックの比誘電率は3〜5で、乾燥土壌の場合には、誘電率とのコントラストが小さいために、反射波の強度も小さくなり探知は困難となる。
【0005】
マイクロ波の波長と探知対象物のサイズとの比が大きいほど反射波の抽出が容易となる。しかし、電磁波は周波数が高くなるほど地中に浸透しなくなるために、探査深度の面から周波数を高くすることには制約がある。従って、対象物の大きさ、分解能および探査深度を考慮して、最適の周波数を選定することが肝要である。
【0006】
地中レーダを地面に接触させて測定する場合には問題とならないが、地面から浮かせた状態で測定する場合には、地表面からの強い反射によって地下の異常物からの反射波がマスクされてしまって識別が困難になる。地表面自体が粗い場合や、地下浅部の土壌に礫が多く含まれるなど不均質性が強い場合には、電磁波の乱反射が生じ、知りたい対象物からの反射波との識別が困難になる。
【0007】
従って、本発明は、探査対象物と周辺土壌との物性コントラストが小さい、例えば、地雷や空洞等を探知する技術について、複数の物性を測定することにより分解能が著しく高い浅部地下異常探知システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、下記記載の装置を備えたことを特徴とする浅部地下異常探知装置。
(a)送受信コイル間のインダクタンスの変化を測定して地下の比抵抗を求めるための電磁誘導測定装置と、
(b)送信アンテナから発信した電磁波の反射波を受信アンテナで受け、反射波の伝播時間を測定して地下の構造の違いを求めるための地中レーダと、
(c)送信コイルに低周波の交流電流を流して交流磁場を発生させ、交流磁場による磁化誘導を利用して地下の磁化率を求める磁化率計と、
(d)前記電磁誘導測定装置、前記地中レーダ、および前記磁化率計の測定値から比抵抗(ρ)、誘電率(ε)、および磁化率(κ)を求めてその結果を3次元的に表示するための処理装置。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記浅部地下異常探知装置は、プラスチック製の地雷、又は、人工構築物中の空洞等の、従来の探査手法では探知することが難しいものを探知するものであることを特徴とする浅部地下異常探知装置である。
【0010】
本発明の第3の態様は、以下工程で構成されることを特徴とする、電磁誘導測定装置、地中レーダ、および磁化率計を用いた浅部地下異常の探知方法である。
(a)電磁誘導測定装置により地下のσμ(σ:電導度(=1/ρ)、μ:透磁率)を測定し、
(b)地中レーダにより、地下の異常源の形状とεμとを測定し、
(c)磁化率計により磁化率κ(μ≡μ(1+κ)、μ:大気の透磁率)を測定し、
(d)ついで、前記の測定した値から影響し合う要素を分離して、ε,μ及びρを決定し、
(e)ついで、3次元のインバージョシ解析手法を用いて、これらの測定値を満足する解を求めて地下の異常を探知する。
【0011】
本発明の第4の態様は、前記電磁誘導測定装置、前記地中レーダ、及び前記磁化率計を用いて測定する際に、複数の周波数を用いて測定することを特徴とする浅部地下異常の探知方法である。
【0012】
本発明の第5の態様は、前記地中レーダにより測定する際、対象物の大きさを長さで示した場合に、周波数の1/4波長が前記対象物の長さよりも短い周波数を用いることを特徴とする浅部地下異常の探知方法である。
【0013】
本発明の第6の態様は、前記浅部地下異常が、プラスチック製の地雷、又は、人工構築物中の空洞であることを特徴とする浅部地下異常の探知方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態について説明する。本発明は、送受信コイル間のインダクタンスの変化を測定し、地下の比抵抗(電導度の逆数)を求めるための電磁誘導測定装置と、電磁波の反射波の伝播時間を測定し、地下の構造の違いを求めるための地中レーダと、交流磁場による磁化誘導を利用して地下の磁化率を求める磁化率計と、前記測定値から比抵抗(ρ)、誘電率(ε)、および磁化率(κ)を合理的に決定し、その結果を3次的に表示するための処理手段とで構成されることを特徴とする浅部の地下異常探知装置である。
【0015】
前記地下異常測定装置は、プラスチック製の地雷、又は、人工構築物中の空洞等の周辺土壌や媒質と際立った物性コントラストを示さないものの用いて効果的である。
【0016】
地下の異常状態や異常物、例えば、地中に埋設された地雷を探知する際に問題となるのは、プラスチック製の地雷と、回りの土壌や岩とでは物性値の差が小さいことである。本発明では、複合的な計測を行い、媒質の電気的な特性を規定している3つの物理量、すなわち誘電率(ε)、透磁率(μ)、及び比抵抗(ρ:電導度σの逆数)の、精度の高い3次元分布を作成することにある。
【0017】
また、本発明では異常の形状認識システムを備えるものである。これは、例えば、地雷が人工的に作られたのもであるという点に着目し、自然界に存在する岩との形状の差を認識できる、異常の形状認識システムを構築するものである。これは、3次元インバージョン手法の導入によって可能である。
【0018】
近年、3次元反射法地震探査では形状抽出処理技術が用いられており、2次元探査では識別不可能であつた地下の微細構造が同定されている。これは、3次元データに対する透視技術と、異常値ピッキング技術によるものである。この方法は、対象物を認誠する点からのアプローチであり、上記の物理的なアプローチと融合させることにより、より高い精度、でこれまで探知が困難とされてきた対象物、例えば、プラスチック地雷等を認識できる。
【0019】
本発明は、電磁誘導測定装置、地中レーダ、および磁化率計を用いた浅部地下異常探知方法であり、電磁誘導測定装置によりσμ(σ:電導度(=1/ρ)、μ:透磁率)を、地中レーダにより異常源の形状とεμを、磁化率計により磁化率κ(ここで、μ≡μ(1+κ)であり、μは、透磁率、μは:大気の透磁率を示す)を測定し、ついで、影響し合う要素を分離して、ε,μ及びρを決定し、ついで、3次元のインバージョシ解析手法を用いて、これらの測定値を満足する解を求めて地下の異常を探知するものである。
【0020】
ところで、電磁波の拡散・伝播には、誘電率(ε)、透磁率(μ)及び比抵抗(ρ:電導度σの逆数)が関与するが、現状の地中レーダではμ及びρ(=1/σ)の効果を軽視している。また、電磁誘導法では誘電率ε及びμの効果を軽視している。これまで、探知が困難とされてきた対象物、例えば、プラスチック地雷等の場合には、周辺土壌との物性値の差が小さいと予想されるので、複数のセンサーを用いてε、μ、及びρの3要素を正確に求め、異常源を特定することが必要となる。
【0021】
電磁波の拡散・伝播に関し、伝播定数γは、誘電率ε、透磁率μ、電導度σ、角周波数ω(=2πf)とすると次式で表される。
γ=−εμω+jσμω(ただし、j=−1)
【0022】
電磁誘導法では、比較的低周波数を用いるためにσμω>>εμωとなり、その結果、εμの効果を無視し得る。地中レーダでは、高周波数を用いるために、εμω>>σμωとなり、σμの効果を無視している。ここで、一様でない地下を対象とするためには、この中間域を考慮する必要がある。また、電磁誘導法、地中レーダ双方においてμ=μ(大気の透磁率)として扱っているが、μの違いによる影響を考慮する必要がある。
【0023】
例えば、対人地雷の探知では、特に、プラスチック製地雷は周辺土壌との物性の差が小さいと考えられるので、ε、μおよびσ(=1/ρ)の3要素をより正確に求めることが必要である。そのためには、互いに影響し合う要素を合理的に分離することが重要である。例えば、地中レーダの反射波の強度は土壌の乾湿の程度に左右されるが、乾湿の程度は比抵抗(電導度)値から評価可能である。
【0024】
また、誘電率がほぼ同じでも透磁率の違いによって反射が生じている場合があるが、磁化率測定からこの区別が可能になる。これらの点を総合的に考慮するシステムを完成させることにより、有意の反射波か否かの判定力が向上する。
【0025】
本発明の特徴は、電磁誘導測定装置、地中レーダ、および磁化率計を用いて測定することにあるが、いずれの場合においても複数周波数による測定を実施し、測定精度の一層の向上を図ることが望ましい。
【0026】
地中レーダは、探査対象物の探知分解能を高めるために1/4波長が想定される対象物の大きさよりも小さくなる周波数を用いることが望ましい。対象物の大きさは、例えば、矩形を長辺と短辺で示した場合に短辺が該当する。
【0027】
また、本発明では地下異常は、プラスチック製の地雷、又は、人工構築物中の空洞等の周辺土壌や媒質と際立った物性コントラストを示さないものであることを特徴とする。
【0028】
また、地表面からの強い反射を抑制するためにAGC(Automatic Gain Control)の機能を付加することが望ましい。
【0029】
図1には、本発明に係る地下異常探知装置について示した。これは、地下異常を探知するための測定装置等をパネルに配置させたものである。このような配置以外に、目的に応じた種々の機器等を選択し、配置することも可能である。
【0030】
電磁誘導測定装置1は、送信コイルT,受信コイルR、及び測定制御部(図示せず)で構成されている。地中レーダ2は、送信アンテナT、受信アンテナR、及び測定制御部(図示せず)で構成されている。磁化率計3は、ダブルコイル及び測定制御部(図示せず)で構成されている。また、位置評定システム4は、GPSにより構成されている。
【0031】
なお、電磁誘導測定装置1及び地中レーダ2については、3次元インバージョンに適した測定値を得るために、送信コイル・アンテナTの回りに受信コイル・アンテナRを複数個配置している。
【0032】
図2には、本発明に係る地下異常探知方法の信号及び解析のフローについて示した。電磁誘導測定装置、地中レーダ、磁化率計により測定されたデータは、信号処理装置に配信され、ここで、それぞれ独立に処理される。ここで、処理された信号は、PCで総合的に処理されて、3次元インバージョン手法により画像処理され、デイスク等に保存される。なお、位置評定装置は、測定位置を確定するためのものである。
【0033】
【発明の効果】
地下の異常(物)、例えば、プラスチック製の地雷と、回りの土壌や岩との物性値の差を、複合的な計測を行って、媒質の電気的な特性を規定している3つの物理量、すなわち、誘電率(ε)、透磁率(μ)及び比抵抗(ρ:電導度σの逆数)を正確に求めて、3次元インバージョン手法によって分解能の高い3次元分布を作成できる。その結果、地下異常について識別能力の著しいシステムが構築されていることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地下異常探知装置を配置した一例である。
【図2】本発明の地下異常探知方法の信号、及び解析のフロー例である。
【符号の説明】
1 電磁誘導測定装置
2 地中レーダ
3 磁化率計
4 位置評定装置

Claims (6)

  1. 下記記載の装置を備えたことを特徴とする浅部地下異常探知装置。
    (a)送受信コイル間のインダクタンスの変化を測定して地下の比抵抗を求めるための電磁誘導測定装置と、
    (b)送信アンテナから発信した電磁波の反射波を受信アンテナで受け、反射波の伝播時間を測定して地下の構造の違いを求めるための地中レーダと、
    (c)送信コイルに低周波の交流電流を流して交流磁場を発生させ、交流磁場による磁化誘導を利用して地下の磁化率を求める磁化率計と、
    (d)前記電磁誘導測定装置、前記地中レーダ、および前記磁化率計の測定値から比抵抗(ρ)、誘電率(ε)、および磁化率(κ)を求めてその結果を3次元的に表示するための処理装置。
  2. 前記浅部地下異常探知装置は、プラスチック製の地雷、又は、人工構築物中の空洞等の、従来の探査手法では探知することが難しいものを探知するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の浅部地下異常探知装置。
  3. 以下工程で構成されることを特徴とする、電磁誘導測定装置、地中レーダ、および磁化率計を用いた浅部地下異常の探知方法。
    (a)電磁誘導測定装置により地下のσμ(σ:電導度(=1/ρ)、μ:透磁率)を測定し、
    (b)地中レーダにより、地下の異常源の形状とεμとを測定し、
    (c)磁化率計により地下の磁化率κ(μ≡μ(1+κ)、μ:大気の透磁率)を測定し、
    (d)ついで、前記の測定した値から影響し合う要素を分離して、ε,μ及びρを決定し、
    (e)ついで、3次元のインバージョシ解析手法を用いて、これらの測定値を満足する解を求めて地下の異常を探知する。
  4. 前記電磁誘導測定装置、前記地中レーダ、及び前記磁化率計を用いて測定する際に、複数の周波数を用いて測定することを特徴とする請求項3に記載の浅部地下異常の探知方法。
  5. 前記地中レーダにより測定する際、対象物の大きさを長さで示した場合に、周波数の1/4波長が前記対象物の長さよりも短い周波数を用いることを特徴とする請求項3、又は4に記載の浅部地下異常の探知方法。
  6. 前記浅部地下異常が、プラスチック製の地雷、又は、人工構築物中の空洞であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに1項に記載の浅部地下異常の探知方法。
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