【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーシング内に組み込まれて歯車装置を構成するピニオンギヤの背面とケーシング内周面との間に配設されるピニオンワッシャーに関する。好適には、デフケースの回転軸に直交して配設されるピニオン軸と該ピニオン軸に軸支されたピニオンギヤと該ピニオンギヤの両側に傘歯噛合して差動配分された駆動力を取り出す左右一対のサイドギヤとを備える差動装置の差動歯車を構成するピニオンギヤの背面とデフケース内周面との間に配設されるピニオンワッシャーに適用されるが、差動歯車装置に限定されるものではない。
【０００２】
【従来の技術】
【０００３】
ケーシング内に組み込まれて使用されるピニオンギヤの例として、図４に示した特公昭４６−８２０６号公報に開示された差動制限装置がある。これを簡単に説明すると、デフケース２１の回転駆動力を、デフケース２１の回転軸に直交して固定されたピニオン軸２２に軸支されたピニオンギヤ２３と、これの左右両側から傘歯噛合する左右のサイドギヤ２５、２６から構成される差動歯車によって、前記左右のサイドギヤ２５、２６にトルク配分して伝達するものであり、前記ピニオンギヤ２３と左右のサイドギヤ２５、２６との間の噛合反力によって互いに離反するサイドギヤ２５、２６がその背面に介設されたテーパリング２９、３０をプレッシャプレート２７、２８（それぞれデフケース２１と回転を共にする）に圧接して差動制限力を得るように構成されるとともに、前記サイドギヤ２５、２６間に介設されたばね３１によって牽引されて差動制限のためのイニシャルトルクを発生するように構成されたものである。
【０００４】
このような構成の差動制限装置によって、通常の直進走行時にはエンジンからの駆動力によりデフケース２１からの所定の駆動力を受けてピニオンギヤ２３と噛合する左右の各サイドギヤ２５、２６に均等にその駆動力が伝達される。その際、左右の駆動輪の走行抵抗がほぼ同じであり、ピニオンギヤ２３は静止状態にて噛合反力にて各サイドギヤ２５、２６を離反させ、プレッシャプレート２７、２８およびテーパリング２９、３０を介してデフケース２１との間を一体化させて、強固な駆動力が得られる。また、走行中の軽度のスリップ時には、ばね３１１によって発生したイニシャルトルクにより適度の差動制限力が得られ、さらに、車両が泥濘地等の悪路に遭遇して片輪空転等により過剰な差動作用が発生しようとした場合にも、ばね３１による予圧がピニオンギヤ２３とサイドギヤ２５、２６との間に噛合反力を効果的に生じさせて、サイドギヤ２５と２６とを離反させてプレッシャプレート２７、２８の内壁面とテーパリング２９、３０の間に差動制限力を発生させて、低速車輪側にも駆動力が伝達され、悪路での脱出性能を向上させることができる。
【０００５】
図４にて明示されるように、この差動制限装置では、一体成形されたデフケース２１に、ピニオンギヤ２３、サイドギヤ２５、２６、プレッシャプレート２７、２８およびテーパリング２９、３０等の差動歯車装置を組み込むには、直径上に対向して穿設された組込み孔３２を通じて組み込まれ、特にピニオンギヤ２３については、組込み孔３２の位置から円周上９０°回転させ、該位置でピニオン軸孔３３から挿入したピニオン軸２２をピニオンギヤ２３の軸孔に挿入固定される。
【０００６】
また、前述したような差動制限装置において、差動および差動制限動作中には、回転する差動歯車の１つであるピニオンギヤの摺動摩擦面は常に過酷な摩擦力の影響を受ける。このため、ケーシング内に組み込まれて歯車装置を構成するピニオンギヤの背面とケーシング内周面との間にピニオンワッシャーを配設する試みがなされている。このようなピニオンワッシャーは、一般に鋼材にて構成され、耐磨耗性および低摩擦性を確保するために熱処理や表面加工がなされ、いわゆる調質材として使用されてサイドギヤ背面とデフケース内周面との間の摺動摩擦面に配設されていた。それにより、サイドギヤおよびデフケースの摺動摩擦面自体には格別の処理や加工をする必要がなく、製作コストが低減される。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の差動制限装置等において、ピニオンギヤ背面とデフケース内周面との間にピニオンワッシャーを配設する形式を採用してこれをケーシング内に組み付けようとすると、前記図４の例のもののように、組込み孔３２を通じて組み込んだピニオンギヤ２３を、組込み孔３２の位置から円周上９０°回転させた位置でピニオン軸２２を挿入固定するような場合には、ピニオンギヤとピニオンワッシャーとの間にグリース等の粘性油を介在させるとはいえ、ピニオンワッシャーがピニオンギヤ背面から脱落してしまい、歯車装置の奥深い位置に落ち込んで取り出すことが面倒で多くの手間を要する事態に陥る虞れがあった。また、ピニオンワッシャーが配設されるピニオンギヤ背面とデフケース内周面の摺動摩擦面についてはピニオンワッシャーの存在によって格別の処理や加工をする必要がないものの、同様に摺動摩擦面を形成するピニオンギヤの軸孔内周面とピニオン軸外周面との間は依然として、耐磨耗性および低摩擦性を確保するために熱処理や表面加工をする必要があってコスト高を招いた。
【０００８】
そこで本発明では、前記従来のケーシング内に組み込まれるピニオンワッシャーの課題を解決して、ピニオンギヤとともにケーシング内に組み付ける際の脱落の虞れがなく、ピニオン軸との間の摺動摩擦面についても所定の耐磨耗性および低摩擦性能を確保できるピニオンワッシャーを提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、ケーシング内に組み込まれて歯車装置を構成するピニオンギヤの背面とケーシング内周面との間に配設されるピニオンワッシャーにおいて、該ピニオンワッシャーを予めピニオンギヤの背面に一体化して装着可能に構成したことを特徴とする。また本発明は、前記ピニオンワッシャーの一部にピニオンギヤへの脱落防止用の係止部を形成したことを特徴とする。また本発明は、前記ピニオンワッシャーが、ピニオンギヤ背面に添設される座部と、ピニオン軸孔に挿入される筒部とから構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記ワッシャーを一体化して成形したことを特徴とするもので、ピニオンワッシャーをピニオンギヤとともにケーシング内に組み込む際に、ピニオンギヤ背面から脱落することがない。また、脱落防止用の係止部としてピニオン軸孔に挿入される筒部を構成した場合は、ピニオン軸との間の摺動摩擦面についても所定の耐磨耗性および低摩擦性能が確保できる。
【００１０】
【実施の形態】
以下、本発明のピニオンワッシャーの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図１および図２は本発明のピニオンワッシャーの第１実施の形態を示し、図１（Ａ）は要部断面図、図１（Ｂ）はピニオンワッシャーの斜視図、図１（Ｃ）はピニオンワッシャーの縦断面図、図２は本発明のピニオンワッシャーが組み込まれた差動装置の全体断面図である。本発明のピニオンワッシャーは、図１に示すように、ケーシング１内に組み込まれて歯車装置を構成するピニオンギヤ３の背面とケーシング１の内周面との間に配設されるピニオンワッシャー４において、該ピニオンワッシャー４を予めピニオンギヤ３の背面に一体化して装着可能に構成したことを特徴とする。図１の第１実施の形態のものでは、ピニオンワッシャー４の一部にピニオンギヤ３への脱落防止用の係止部４Ｂを形成したものである。
【００１１】
以下に詳述する。本実施の形態のものは、図１（Ｂ）（Ｃ）に示すように、ピニオンワッシャー４の一部にピニオンギヤ３への脱落防止用の係止部として筒部４Ｂを兼用させるものである。コーン球面状を呈して、ピニオンギヤ３の背面に添設される座部４Ａ（ピニオンギヤの形状、形式によっては平板状の座部の場合もあり得る）と、ピニオンギヤ３の軸孔３Ａに挿入される筒部４Ｂとから構成され、図１（Ａ）に示すように、ケーシング（デフケース）１のピニオン軸孔１Ａに挿入固定されるピニオン軸２が筒部４Ｂ内に挿入されて組み込まれる。したがって、ピニオンギヤ３の軸孔３Ａの内周面とピニオン軸２の外周面との間の回転時の摺動摩擦面に筒部４Ｂが配設され、ピニオンギヤ３の背面とデフケース１の内周面との間の摺動摩擦面にコーン球面状の座部４Ａが配設されることになる。前記ピニオンワッシャー４はプレス成形等により一体化して簡便に成形することができるが、耐磨耗性および摩擦性能を考慮して異なった材料からなる座部４Ａと筒部４Ｂとを別部材にて構成して適宜の方式にて一体化することもできる。
【００１２】
図２は本実施の形態のピニオンワッシャー４が組み込まれた差動装置の全体断面図で、前記図４の従来例のように、一体型のデフケースの周面に組込み孔を穿設して、該組込み孔を通じて差動歯車を組み込んでもよいが、本実施の形態のものでは、軸方向に２分割される左右分割型のデフケースが採用されている。右デフケース内に差動歯車を構成する各部材を組み込んだ後に、左デフケースを蓋状に閉じて接合フランジをボルト等により一体締結するものである。左右の各サイドギヤ５および６を装着した左右のデフケースを一体に接合する際に、筒部４Ｂを軸孔３Ａに挿入係止して背面にピニオンワッシャー４を添設したピニオンギヤ３をこれらのサイドギヤ５および６間に噛合させて組み込む。ピニオンギヤ３を右デフケースの周面に穿設されたピニオン軸孔１Ａに整合させ、デフケース外から挿入したピニオン軸２をピニオンワッシャー４の筒部４Ｂに挿入する。ピニオン軸２は右デフケースに軸方向に穿設されたピン孔から挿入された抜止めピン７により抜止め固定される。なお、図１では抜止めピン７の図示を省略している。
【００１３】
このような構成により、ピニオンギヤ３の背面に添設されたピニオンワッシャー４は、その筒部４Ｂがピニオンギヤ３の軸孔３Ａに挿入係止されているので、左右のサイドギヤ５、６間への組込みの際にピニオンギヤ３が傾くことがあっても、ピニオンワッシャー４が脱落することがないので、脱落に懸念することなく迅速な組込みが可能となる。しかも、別途製造して耐磨耗性や低摩擦性を確保するために熱処理や表面加工をすることが容易なピニオンワッシャー４の存在により、ピニオンギヤ３の摺動摩擦面を形成するピニオンギヤおよびデフケース自体に何らの処理を施す必要がなく、低コストが実現できる。
【００１４】
図３は本発明のピニオンワッシャーの第２実施の形態を示す要部断面図である。本実施の形態では、ピニオンワッシャー４の一部にピニオンギヤ３への脱落防止用の係止部として折曲げ部４Ｃを形成したものである。本実施の形態のものは前記第１実施の形態のもののような筒部４Ｂに相当するものはないが、ピニオン軸２の挿入のガイド等のためにピニオンギヤ３の軸孔３Ａの入口部に形成される面取り部３Ｂに添設して、ピニオンワッシャー４の座部４Ａの内径側の一部（全周でもよい）を延設して折り曲げて形成した折曲げ部４Ｃが形成される。これにより、組込みの際にピニオンギヤ３が傾くことがあっても、ピニオンワッシャー４が脱落することがないので、脱落に懸念することなく迅速な組込みが可能となる。また、ピニオン軸２の外周面とピニオンギヤの軸孔３Ａの内周面には、適宜の耐磨耗性や低摩擦性を確保するために処理および加工を必要とするが、ピニオンギヤ３の背面とデフケース１の内周面との間の摺動摩擦面は、ピニオンワッシャー４の存在により、何らの処理を施す必要がなく、低コストである。
【００１５】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、デフケース等のケーシングの形状、形式、ピニオン軸の形状、配置、本数、ピニオン軸のケーシングへの抜止め等の挿入固定形態、サイドギヤの形状、形式、ピニオンワッシャーの形状（球面、錐面、平面等の座部の面形態、および筒部、折曲げ部等の係止部の形成形態）、材質およびそのピニオンギヤへの係止形態（実施の形態で説明したものはピニオンワッシャーはピニオンギヤに対して回動摺動自在に構成されているが、ピニオンワッシャーをピニオンギヤに対してホック状、その他の適宜の係止具等により固定して一体回転としてもよいし）、ならびにピニオンワッシャーの成形形態（一体か別体か、プレスか鋳造か等）、ピニオンギヤ等の歯車装置の組付け形態（一体型ケーシングの組込み孔を通じて組み付けてもよいし、分割型のデフケースの接合時に同時に歯車装置を組み込んでもよい）等については適宜採用できる。
【００１６】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、ケーシング内に組み込まれて歯車装置を構成するピニオンギヤの背面とケーシング内周面との間に配設されるピニオンワッシャーにおいて、該ピニオンワッシャーを予めピニオンギヤの背面に一体化して装着可能に構成したことにより、ピニオンギヤをケーシング内の歯車装置に組み込む際に傾くことがあっても、ピニオンワッシャーが落下する虞れがなく、ピニオンワッシャーを具備する形式のものを容易かつ迅速に組み立てることが可能となる。しかも、組込みが完了した後はそのままピニオンワッシャーが適正な位置に配設されることになる。
【００１７】
また、前記ピニオンワッシャーの一部にピニオンギヤへの脱落防止用の係止部を形成した場合は、より確実にピニオンワッシャーをピニオンギヤに対して保持することが可能となる。
さらに、前記ピニオンワッシャーが、ピニオンギヤ背面に添設される座部と、ピニオン軸孔に挿入される筒部とから構成された場合は、ピニオンワッシャーの筒部が深くピニオンギヤの軸孔内に挿入されて、ピニオンギヤの組込みの際のピニオンワッシャーの脱落の虞れは殆どなくなり、より迅速な組込みが可能となる上、別途製造して耐磨耗性や低摩擦性を確保するために熱処理や表面加工をすることが容易なピニオンワッシャーの存在により、ピニオンギヤ背面およびそのピニオン軸孔の内周面、ケーシング内周面、ピニオン軸外周面の各摺動摩擦面に調質のための何らの処理を施す必要がなく、低コストが実現できる。
【００１８】
さらにまた、前記ワッシャーを一体化して成形した場合は、プレス成形等により迅速かつ簡便に成形することができる。
かくして、本発明によれば、ピニオンギヤとともにケーシング内に組み付ける際の脱落の虞れがなく、ピニオン軸との間の摺動摩擦面についても所定の耐磨耗性および低摩擦性能を確保できるピニオンワッシャーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のピニオンワッシャーの第１実施の形態を示し、図１（Ａ）は要部断面図、図１（Ｂ）はピニオンワッシャーの斜視図、図１（Ｃ）はピニオンワッシャーの縦断面図である。
【図２】同、本発明のピニオンワッシャーが組み込まれた差動装置の全体断面図である。
【図３】本発明のピニオンワッシャーの第２実施の形態を示す要部断面図である。
【図４】従来の差動制限装置の全体断面図である。
【符号の説明】
１ ケーシング（デフケース
１Ａ ケーシングピニオン軸孔
２ ピニオン軸
３ ピニオンギヤ
３Ａ ピニオン軸孔
３Ｂ 面取り部
４ ピニオンワッシャー
４Ａ 座部
４Ｂ 係止部（筒部）
４Ｃ 係止部（折曲げ部）
５ 左サイドギヤ
６ 右サイドギヤ
７ 抜け止めピン[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a pinion washer that is disposed between a rear surface of a pinion gear that is incorporated in a casing to form a gear device and an inner peripheral surface of the casing. Preferably, a pinion shaft disposed orthogonally to the rotation shaft of the differential case, a pinion gear pivotally supported by the pinion shaft, and a pair of left and right to take out differentially distributed driving force by meshing bevel teeth on both sides of the pinion gear. The present invention is applied to a pinion washer disposed between a rear surface of a pinion gear constituting a differential gear of a differential device having a side gear and an inner peripheral surface of a differential case, but is not limited to the differential gear device. .
[0002]
[Prior art]
[0003]
As an example of a pinion gear used by being incorporated in a casing, there is a differential limiting device disclosed in Japanese Patent Publication No. 46-8206 shown in FIG. In brief, the rotational driving force of the differential case 21 is divided into a pinion gear 23 supported by a pinion shaft 22 fixed perpendicular to the rotation axis of the differential case 21, and left and right meshing bevel teeth from both left and right sides thereof. Torque is transmitted to the left and right side gears 25 and 26 by a differential gear composed of the side gears 25 and 26 and transmitted. The meshing reaction force between the pinion gear 23 and the left and right side gears 25 and 26 causes mutual transmission. The separated side gears 25 and 26 are configured so as to obtain a differential limiting force by pressing the tapered rings 29 and 30 provided on the rear surface thereof against the pressure plates 27 and 28 (each of which rotates together with the differential case 21). At the same time, the initial torque for limiting the differential is pulled by the spring 31 interposed between the side gears 25 and 26. It is one that is configured to generate.
[0004]
With the differential limiting device having such a configuration, during normal straight running, a predetermined driving force from the differential case 21 is received by the driving force from the engine, and the left and right side gears 25 and 26 meshing with the pinion gear 23 are driven equally. Power is transmitted. At this time, the running resistances of the left and right driving wheels are substantially the same, and the pinion gear 23 separates the side gears 25 and 26 by a meshing reaction force in a stationary state, and the pinion gear 23 passes through the pressure plates 27 and 28 and the taper rings 29 and 30. Thus, a strong driving force can be obtained by integrating the differential case 21 with the differential case 21. In addition, during a slight slip during traveling, an appropriate differential limiting force can be obtained by the initial torque generated by the spring 311. Further, when the vehicle encounters a rough road such as a muddy road and an excessive difference due to one-wheel idling, etc. Even in the case where the operation gear is to be generated, the preload by the spring 31 effectively generates a meshing reaction force between the pinion gear 23 and the side gears 25 and 26, and separates the side gears 25 and 26 so that the pressure plate 27 , 28 and the taper rings 29, 30 to generate a differential limiting force, the driving force is also transmitted to the low-speed wheel side, and the escape performance on a rough road can be improved.
[0005]
As shown in FIG. 4, in this differential limiting device, a differential gear device such as a pinion gear 23, side gears 25 and 26, pressure plates 27 and 28, and taper rings 29 and 30 is integrally formed on a differential case 21. Is incorporated through an assembling hole 32 diametrically opposed to the pinion gear 23. In particular, the pinion gear 23 is rotated by 90 ° on the circumference from the position of the assembling hole 32, and from the pinion shaft hole 33 at this position. The inserted pinion shaft 22 is inserted and fixed in a shaft hole of the pinion gear 23.
[0006]
In the differential limiting device as described above, during the differential and differential limiting operations, the sliding friction surface of the pinion gear, which is one of the rotating differential gears, is always affected by severe frictional force. For this reason, attempts have been made to dispose a pinion washer between the rear surface of a pinion gear that is incorporated in a casing to form a gear device and the inner peripheral surface of the casing. Such a pinion washer is generally made of steel, and is subjected to heat treatment and surface processing to ensure abrasion resistance and low friction. Between the sliding friction surfaces. This eliminates the need for special processing and processing on the sliding friction surfaces of the side gears and the differential case itself, thereby reducing manufacturing costs.
[0007]
[Problems to be solved by the invention]
In such a conventional differential limiting device or the like, when adopting a type in which a pinion washer is disposed between the rear surface of the pinion gear and the inner peripheral surface of the differential case and assembling it in a casing, the configuration shown in FIG. In a case where the pinion shaft 22 is inserted and fixed at a position rotated by 90 ° on the circumference from the position of the mounting hole 32, the pinion gear 23 installed through the mounting hole 32 is fixed between the pinion gear and the pinion washer. Although a viscous oil such as grease is interposed in the pinion, the pinion washer may fall off from the back of the pinion gear, and it may be troublesome to take out and drop into a deep position of the gear device, which may lead to a situation requiring much trouble. . In addition, although there is no need to perform special processing and processing on the sliding friction surface between the rear surface of the pinion gear where the pinion washer is disposed and the inner peripheral surface of the differential case due to the presence of the pinion washer, the shaft of the pinion gear that similarly forms the sliding friction surface. Heat treatment and surface processing still need to be performed between the inner peripheral surface of the hole and the outer peripheral surface of the pinion shaft in order to secure wear resistance and low friction, resulting in high cost.
[0008]
Therefore, in the present invention, the problem of the pinion washer incorporated in the conventional casing is solved, and there is no danger of falling off when assembling the casing with the pinion gear. An object of the present invention is to provide a pinion washer that can ensure abrasion resistance and low friction performance.
[0009]
[Means for Solving the Problems]
Accordingly, the present invention provides a pinion washer that is disposed between a rear surface of a pinion gear that is incorporated in a casing to form a gear device and an inner peripheral surface of the casing, and that the pinion washer can be integrally mounted on the rear surface of the pinion gear in advance. It is characterized by having been constituted. Further, the present invention is characterized in that a locking portion for preventing the pinion washer from falling off is formed in a part of the pinion washer. Further, the present invention is characterized in that the pinion washer includes a seat attached to the rear surface of the pinion gear and a cylindrical portion inserted into a pinion shaft hole. Further, the present invention is characterized in that the washer is formed integrally, and when the pinion washer is incorporated into the casing together with the pinion gear, the washer does not fall off from the rear surface of the pinion gear. Further, when a cylindrical portion inserted into the pinion shaft hole is formed as a locking portion for preventing falling off, predetermined wear resistance and low friction performance can be ensured also on a sliding friction surface between the pinion shaft.
[0010]
Embodiment
Hereinafter, embodiments of a pinion washer of the present invention will be described in detail with reference to the drawings. 1 and 2 show a first embodiment of a pinion washer of the present invention. FIG. 1 (A) is a sectional view of a main part, FIG. 1 (B) is a perspective view of a pinion washer, and FIG. 1 (C) is a pinion. FIG. 2 is a longitudinal sectional view of a washer, and FIG. 2 is an overall sectional view of a differential incorporating the pinion washer of the present invention. As shown in FIG. 1, a pinion washer 4 of the present invention is provided in a pinion washer 4 that is disposed between a rear surface of a pinion gear 3 that is incorporated in a casing 1 and forms a gear device and an inner peripheral surface of the casing 1. It is characterized in that the pinion washer 4 is integrated with the back surface of the pinion gear 3 in advance so that it can be mounted. In the first embodiment shown in FIG. 1, a locking portion 4 </ b> B for preventing the pinion washer 3 from dropping is formed on a part of the pinion washer 4.
[0011]
Details will be described below. In the present embodiment, as shown in FIGS. 1B and 1C, a part of the pinion washer 4 also serves as a cylinder 4B as a locking portion for preventing the pinion washer 3 from falling off. It has a cone spherical shape and is inserted into the shaft hole 3A of the pinion gear 3 and a seat 4A attached to the rear surface of the pinion gear 3 (it may be a flat seat depending on the shape and type of the pinion gear). As shown in FIG. 1A, a pinion shaft 2 inserted and fixed in a pinion shaft hole 1A of a casing (differential case) 1 is inserted into and incorporated into the cylindrical portion 4B. Therefore, the cylindrical portion 4B is disposed on the sliding friction surface during rotation between the inner peripheral surface of the shaft hole 3A of the pinion gear 3 and the outer peripheral surface of the pinion shaft 2, and the rear surface of the pinion gear 3 and the inner peripheral surface of the differential case 1 The spherical spherical seat 4A is disposed on the sliding friction surface between the two. The pinion washer 4 can be easily formed integrally by press molding or the like, but the seat portion 4A and the cylindrical portion 4B made of different materials in consideration of abrasion resistance and friction performance are formed as separate members. It can also be configured and integrated by an appropriate method.
[0012]
FIG. 2 is an overall cross-sectional view of the differential device in which the pinion washer 4 of the present embodiment is incorporated. As shown in the conventional example of FIG. 4, an integral hole is formed in the peripheral surface of an integrated differential case. A differential gear may be incorporated through the installation hole, but in the present embodiment, a left / right split type differential case which is split into two in the axial direction is employed. After the members constituting the differential gear are assembled in the right differential case, the left differential case is closed like a lid, and the joining flange is integrally fastened with bolts or the like. When the left and right differential cases to which the left and right side gears 5 and 6 are attached are integrally joined, the cylindrical portion 4B is inserted and locked into the shaft hole 3A, and the pinion gear 3 with the pinion washer 4 attached to the back is connected to these side gears 5. And between 6 and 6. The pinion gear 3 is aligned with a pinion shaft hole 1A formed in the peripheral surface of the right differential case, and the pinion shaft 2 inserted from outside the differential case is inserted into the cylindrical portion 4B of the pinion washer 4. The pinion shaft 2 is retained and fixed by a retaining pin 7 inserted through a pin hole formed in the right differential case in the axial direction. In FIG. 1, illustration of the retaining pin 7 is omitted.
[0013]
With such a configuration, the pinion washer 4 attached to the back of the pinion gear 3 has its cylindrical portion 4B inserted and locked in the shaft hole 3A of the pinion gear 3, so that the pinion washer 4 is assembled between the left and right side gears 5, 6. In this case, even if the pinion gear 3 is tilted, the pinion washer 4 does not fall off, so that quick assembling becomes possible without fear of falling off. In addition, the pinion washer 4, which is easily manufactured and easily heat-treated and surface-processed in order to secure wear resistance and low friction, allows the pinion gear forming the sliding friction surface of the pinion gear 3 and the differential case itself. There is no need to perform any processing, and low cost can be realized.
[0014]
FIG. 3 is a sectional view of a principal part showing a second embodiment of the pinion washer of the present invention. In the present embodiment, a bent portion 4C is formed on a part of the pinion washer 4 as a locking portion for preventing the pinion washer 3 from falling off. The second embodiment does not correspond to the cylindrical portion 4B of the first embodiment, but is formed at the inlet of the shaft hole 3A of the pinion gear 3 for guiding the insertion of the pinion shaft 2. Along with the chamfered portion 3B to be formed, a bent portion 4C formed by extending and bending a part (or the entire circumference) of the seat portion 4A on the inner diameter side of the pinion washer 4 is formed. Thereby, even if the pinion gear 3 may be tilted at the time of installation, the pinion washer 4 does not fall off, so that quick assembling becomes possible without fear of falling off. Further, the outer peripheral surface of the pinion shaft 2 and the inner peripheral surface of the shaft hole 3A of the pinion gear require processing and processing to ensure appropriate wear resistance and low friction. The sliding friction surface between the inner peripheral surface of the differential case 1 and the pinion washer 4 eliminates the need for any treatment and is low in cost.
[0015]
The embodiments of the present invention have been described above. However, within the scope of the present invention, the shape and type of the casing such as the differential case, the shape and the arrangement of the pinion shaft, the number of the casings, the retaining of the pinion shaft to the casing, etc. Insertion and fixing form, side gear shape and form, pinion washer shape (surface form of seat such as spherical surface, conical surface, flat surface, and form of engaging portion such as cylindrical portion and bent portion), material and its Locking form to pinion gear (In the embodiment described above, the pinion washer is configured to be rotatable and slidable with respect to the pinion gear, but the pinion washer is hooked to the pinion gear, and other appropriate locking. It may be fixed by a tool or the like to rotate integrally), and the form of forming the pinion washer (whether integrated or separate, pressed or cast), assembling of gear devices such as pinion gears State (which may be assembled through the installation hole of the integrated casing, incorporating a split simultaneously gear at the time of bonding of the differential case also be) for such can be employed as appropriate.
[0016]
【The invention's effect】
As described in detail above, according to the present invention, in the pinion washer provided between the rear surface of the pinion gear and the inner peripheral surface of the casing which is incorporated in the casing and constitutes the gear device, the pinion washer is provided in advance. By being configured to be integrally mounted on the rear surface of the pinion gear, even if the pinion gear may be inclined when incorporated into the gear device in the casing, there is no danger that the pinion washer will fall, and the type having the pinion washer Objects can be easily and quickly assembled. Moreover, after the assembly is completed, the pinion washer is arranged at an appropriate position.
[0017]
Further, when a locking portion for preventing the pinion washer from falling off is formed in a part of the pinion washer, the pinion washer can be more reliably held on the pinion gear.
Further, when the pinion washer includes a seat attached to the rear surface of the pinion gear and a cylindrical portion inserted into the pinion shaft hole, the cylindrical portion of the pinion washer is inserted deeply into the shaft hole of the pinion gear. In addition, there is almost no danger of the pinion washer falling off when the pinion gear is assembled, and it is possible to install the pinion gear more quickly. In addition, it is separately manufactured and heat-treated or surface-treated to ensure wear resistance and low friction. Due to the presence of a pinion washer that is easy to perform, it is necessary to perform some treatment for refining on the sliding friction surfaces on the back surface of the pinion gear, the inner peripheral surface of the pinion shaft hole, the inner peripheral surface of the casing, and the outer peripheral surface of the pinion shaft. And low cost can be realized.
[0018]
Furthermore, when the washer is integrally formed, it can be formed quickly and easily by press molding or the like.
Thus, according to the present invention, there is provided a pinion washer that can ensure a predetermined wear resistance and a low friction performance with respect to a sliding friction surface between the pinion shaft and a sliding friction surface between the pinion gear and the pinion shaft without fear of falling off when assembled into the casing together with the pinion gear. Provided.
[Brief description of the drawings]
1A and 1B show a first embodiment of a pinion washer of the present invention. FIG. 1A is a sectional view of a main part, FIG. 1B is a perspective view of the pinion washer, and FIG. It is a longitudinal cross-sectional view.
FIG. 2 is an overall sectional view of the differential gear in which the pinion washer of the present invention is incorporated.
FIG. 3 is a cross-sectional view illustrating a main part of a pinion washer according to a second embodiment of the present invention.
FIG. 4 is an overall sectional view of a conventional differential limiting device.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 Casing (Diff case 1A Casing pinion shaft hole 2 Pinion shaft 3 Pinion gear 3A Pinion shaft hole 3B Chamfer part 4 Pinion washer 4A Seat part 4B Locking part (tubular part)
4C Locking part (bent part)
5 Left side gear 6 Right side gear 7 Retaining pin
