JP2004068720A - 直噴エンジンの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】成層燃焼モードと均一燃焼モードとに切替えられるとともに、成層燃焼モードでは気筒2内の空気流動を利用して混合気の成層化を図るようにした直噴エンジン1において、燃焼モードの切替え時に過渡的な吸気充填量の変化に依らず混合気の適切な成層化を可能とし、これにより着火安定性を確保する。
【解決手段】エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードに移行するとき(SA2,SA4)、スロットル弁28を閉じ作動させて気筒2の吸気充填量を低下させ(SA5)、その空気充填量の低下によるタンブル流Tの強さ不足を補うよう、スロットル開度の変化に応じて燃圧を増大補正して(SA6)、燃料噴霧の貫徹力を増大させる。その際、エンジン水温に基づいて気筒2内の燃料の気化し易さの程度を求め、燃料の気化し易いときほど燃圧の増大補正の度合いを大きくする。燃圧の補正に代えて、TSCV32の制御によって吸気の流速を高めるようにしてもよい。
【選択図】 図6
【解決手段】エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードに移行するとき(SA2,SA4)、スロットル弁28を閉じ作動させて気筒2の吸気充填量を低下させ(SA5)、その空気充填量の低下によるタンブル流Tの強さ不足を補うよう、スロットル開度の変化に応じて燃圧を増大補正して(SA6)、燃料噴霧の貫徹力を増大させる。その際、エンジン水温に基づいて気筒2内の燃料の気化し易さの程度を求め、燃料の気化し易いときほど燃圧の増大補正の度合いを大きくする。燃圧の補正に代えて、TSCV32の制御によって吸気の流速を高めるようにしてもよい。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気筒内の燃焼室に燃料を直接、噴射する直噴エンジンの制御装置に関し、特に、エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間を移行するときの過渡的な制御技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の直噴エンジンでは、気筒内の燃焼室全体に略均一な混合気を形成して燃焼させる均一燃焼モードと、点火プラグの周りに混合気を偏在させた状態で燃焼させる成層燃焼モードとに切り替えられて、運転されるようになっている。前記の成層燃焼状態では点火プラグの電極付近の局所的な空燃比は理論空燃比乃至それよりもリッチな状態になるものの、スロットル弁が比較的大きく開かれていて、気筒の吸気充填効率が高くなるから、当該気筒内の平均的な空燃比は非常にリーンな状態になる(例えばA/Fで30以上)。
【0003】
そして、そのような成層燃焼状態における適切な混合気形成のために、気筒内のスワールやタンブル等の空気流動を利用して燃料噴霧を点火プラグ側に輸送するようにしたものが知られている。例えば、特開平11−141338号公報に開示されるものでは、エンジンが成層燃焼モードのときに、気筒の圧縮行程中盤以降の所定のタイミングにて高圧の燃焼室にインジェクタから燃料を噴射し、対向するタンブル流動との衝突によって燃料噴霧の微粒化や空気との混合を促しながら、その燃料噴霧を点火プラグ電極に向かうように輸送して、該電極の周りに混合気を成層化させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンの運転状態が前記成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で切り替わるとき、例えば成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、まず、スロットル弁を閉じて気筒への吸気の充填量を所定以下に減少させ、それから燃料の噴射形態を切り替えて均一燃焼状態とする。そうすると、上述の如く、成層燃焼状態と均一燃焼状態とでは吸気充填量が大きく異なるから、過渡的には、エンジンは気筒の吸気充填量が比較的少ない状態で成層燃焼状態とされることになる。
【0005】
この点について、前記従来例のように気筒内の空気流動を利用して燃料噴霧を輸送するようにしたものでは、混合気を適切に成層化するために必要な空気流動の強さというものがあるから、上述の如く気筒の吸気充填量が少なくなって空気流動が弱くなると、適切な混合気の成層化が行われなくなり、着火安定性が損なわれるという不具合が生ずる。すなわち、吸気充填量が少ないときにはその分、空気流動の運動量が低下するので、この空気流動によって燃料を気筒の点火時期までに点火プラグ電極付近に十分に輸送できなくなるのである。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気筒内の空気流動を利用して混合気の成層化を図るようにした直噴エンジンにおいて、特に、燃焼モード切替え時の過渡的な制御の手順に工夫を凝らして、気筒の吸気充填量の変化に依らず混合気の適切な成層化を可能とし、もって、着火安定性を確保することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明に係る直噴エンジンの制御装置では、燃焼モードの移行時に過渡的に、混合気の適切な成層化を図るためには吸気充填量が不足する状態になることに着目し、この空気充填量の不足分を補うように燃料噴霧の貫徹力又は吸気の流速のいずれかを増大させるようにしたものである。
【0008】
具体的に、請求項1の発明では、気筒内の燃焼室に燃料を直接、噴射する燃料噴射弁を備え、該燃料噴射弁による燃料の噴射形態を変更して、エンジンを成層燃焼モード又は均一燃焼モードのいずれかに切替えるとともに、その成層燃焼モードでは気筒内の空気流動を利用して混合気を点火プラグの電極周りに成層化させるようにした直噴エンジンの制御装置を前提とする。そして、前記燃料噴射弁による燃料噴霧の貫徹力を調節する貫徹力調節手段と、前記気筒への吸気充填量を調節する充填量調節手段と、エンジンが成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるように前記充填量調節手段を制御する充填量制御手段と、エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、気筒の吸気充填量が少ないときほど燃料噴霧の貫徹力が大きくなるように前記貫徹力調節手段を制御する貫徹力制御手段とを備える構成とする。
【0009】
前記の構成により、エンジンの運転状態が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で切り替わるとき、例えば成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、まず、充填量制御手段による充填量調節手段の制御が行われて、気筒の吸気充填量が成層燃焼状態に見合うものから均一燃焼状態に見合うものとなるように減少される。この結果、気筒内の空気流動が本来の成層燃焼モードに比べると弱い、即ち吸気流動の強さが不足する状態で成層燃焼が行われることになり、点火プラグ周りの混合気形成が遅れて着火安定性が損なわれる虞れがある。しかし、このときには貫徹力制御手段による貫徹力調節手段の制御によって、気筒の吸気充填量が少ないときほど燃料噴霧の貫徹力が大きくされ、噴霧流自体の速度が高くなることで、前記した混合気形成の遅れを解消することが可能になる。
【0010】
一方、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時には、気筒の吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものから成層燃焼状態に見合うものとなるように増大されるとともに、これにより吸気充填量が十分に大きくなる前に燃料の噴射形態が切り替えられて、エンジンが成層燃焼状態とされる。従って、このときにも気筒の吸気流動の強さが不足する状態で成層燃焼が行われることになるが、前記の如く燃料噴霧の貫徹力が増大されることで、混合気形成の遅れは解消可能となる。
【0011】
つまり、この発明によれば、燃焼モード移行時の過渡的な空気流動の不足を燃料噴霧貫徹力の増大によって補い、これにより所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明における充填量調節手段をエンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁とし、充填量制御手段は、エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときに前記スロットル弁の開度を減少させるものとする。また、貫徹力調節手段は燃料噴射弁へ供給する燃料の燃圧を調節するものとし、貫徹力制御手段は、前記スロットル弁の開度の減少に応じて燃圧が上昇するように前記貫徹力調節手段を制御するものとする。
【0013】
このことで、エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、充填量制御手段によるアクチュエータの制御によってスロットル弁の開度が減少して、気筒への吸気充填量が減少する。そして、そのスロットル弁の開度の減少に応じて貫徹力制御手段により燃圧が高められることで、吸気充填量の低下による空気流動の不足分を補完するように燃料噴霧の貫徹力が高められる。よって、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に適切な混合気の成層化が図られ、請求項1の発明の作用効果が十分に得られる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1の発明における充填量調節手段を、エンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁とし、充填量制御手段は、エンジンが均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときに前記スロットル弁の開度を増大させるものとする。また、貫徹力調節手段は燃料噴射弁へ供給する燃料の燃圧を調節するものとし、貫徹力制御手段は、前記スロットル弁の開度の増大に応じて燃圧が低下するように前記貫徹力調節手段を制御するものとする。
【0015】
このことで、エンジンが均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときには、充填量制御手段によるアクチュエータの制御によってスロットル弁の開度が増大され、気筒への吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものから成層燃焼状態に見合うものへと増大される。この際、吸気充填量が十分に大きくなる前に燃料の噴射形態が切り替えられて、エンジンが成層燃焼状態になるとともに、このときの空気流動の不足を補うように燃圧が一旦、大きく増大される。その後、前記スロットル弁の開度の増大に応じて貫徹力制御手段により燃圧が低下され、これにより、燃料噴霧の貫徹力が気筒内の空気流動の強さの変化に対応するように調節される。よって、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に適切な混合気の成層化が図られ、請求項1の発明の作用効果が十分に得られる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、気筒内での燃料の気化し易さに関連する所定の物理量を検出する検出手段を備え、貫徹力制御手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて、気筒の吸気充填量の変化に対する燃料噴霧貫徹力の変化の割合が燃料の気化し易いときほど大きくなるように貫徹力調節手段を制御するものとする。
【0017】
すなわち、一般に、気筒内に噴射された燃料は気化する前の液滴の状態の方が空気流動の影響を受け難いから、気筒内が燃料の気化し易い状態であるほど、吸気流動不足の影響を強く受けて、混合気形成の阻害される可能性が高くなる。そこで、この発明では、検出手段による検出結果に応じて、燃料の気化し易いときほど貫徹力調節手段による燃料噴霧貫徹力の増大補正の度合いを大きくすることにより、請求項1の発明の作用効果をより確実なものとすることができる。
【0018】
次に、請求項5の発明では、前記請求項1の発明と同じ前提構成において、気筒への吸気充填量を調節する充填量調節手段と、気筒へ流入する吸気の流速を調節する吸気流速調節手段と、エンジンが成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるように前記充填量調節手段を制御する充填量制御手段と、エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、気筒の吸気充填量が少ないときほど吸気の流速が高くなるように前記吸気流速調節手段を制御する吸気流速制御手段とを備える構成とする。
【0019】
この構成では、請求項1の発明と同様に、エンジンの燃焼モードが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で切り替わるときに、気筒の吸気充填量が過渡的に不足する状態になると、吸気流速制御手段による吸気流速調節手段の制御がわれて吸気充填量の少ないときほど、吸気の流速が高くされ、この流速の向上によって吸気流動の運動量が増大する。つまり、吸気の流速の向上によって空気充填量の不足を補い、燃焼モード移行時の過渡的な空気流動の強さの不足を解消することが可能となり、これにより所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項5の発明における充填量調節手段を、エンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁とし、充填量制御手段は、エンジンの成層燃焼モードから均一燃焼モードへの移行時には前記スロットル弁の開度を減少させる一方、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時には前記スロットル弁の開度を増大させるものとする。また、そのスロットル弁よりも下流側の吸気通路にアクチュエータにより駆動されて吸気の流れを絞る絞り弁を配設し、吸気流速制御手段は、前記充填量制御手段の制御によって前記スロットル弁が閉じられるときには前記絞り弁を開く側に作動させる一方、前記スロットル弁が開かれるときには前記絞り弁を閉じ側に作動させるものとする。
【0021】
このことで、まず、エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、充填量制御手段によるアクチュエータの制御によってスロットル弁の開度が減少して、気筒への吸気充填量が減少する。そして、そのスロットル弁の開度の減少に対応して吸気通路下流側の絞り弁が閉じられることで、吸気の流速が高められ、これにより気筒内の吸気流動の強さが概ね維持される。一方、エンジンが均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときにも、前記と同様に吸気充填量の変化による影響を打ち消すように吸気の流速が調節される。これにより、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に混合気の適切な成層化が図られて、請求項5の発明の作用効果が十分に得られる。
【0022】
請求項7の発明では、請求項5の発明において、気筒内での燃料の気化し易さに関連する所定の物理量を検出する検出手段を備え、吸気流速制御手段は、前記検出手段による検出結果に応じて、気筒の吸気充填量の変化に対する吸気流速の変化の割合が燃料の気化し易いときほど大きくなるように、吸気流速調節手段の制御を行うものとする。
【0023】
このことで、検出手段による検出結果に基づいて、燃料の気化し易いときほど、吸気流速制御手段による吸気流速の補正制御の度合いが大きくなることで、請求項5の発明の作用効果をより確実なものとすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る直噴エンジン1の制御システムの全体的な構成を示す。同図においてエンジン1は、複数の気筒2,2,…(1つのみ図示する)が直列に設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配置されたシリンダヘッド4とを有し、各気筒2内にはそれぞれピストン5が往復動可能に嵌挿されていて、そのピストン5の冠面とシリンダヘッド4の下面との間の気筒2内に燃焼室6が区画形成されている。ピストン5の往復動はコネクティングロッド7を介してクランク軸8の回転運動に変替され、このクランク軸8により出力される。また、前記シリンダブロック3には、クランク軸8の一端側においてその回転角度を検出する電磁式のクランク角センサ9と、各気筒2毎の燃焼圧の変動に基づいてノッキングを検出するためのノックセンサ10と、図示しないウオータジャケットの内部に臨んで冷却水の温度(エンジン水温)を検出する水温センサ11とがそれぞれ配設されている。
【0026】
前記シリンダヘッド4には、各気筒2毎に燃焼室6の天井面に臨んで開口するように吸気ポート12及び排気ポート13が2つずつ開口していて、その各ポート開口部に吸気及び排気弁14,15が配置されている。これら吸気弁14及び排気弁15は、それぞれシリンダヘッド4の内部に軸支された吸気側及び排気側カム軸(図示せず)によって、前記クランク軸8の回転に同期して開作動されるようになっている。また、吸気側のカム軸には、その回転角度を検出するための電磁式のカム角センサ16が付設されている。また、各気筒2毎に前記シリンダヘッド4を上下方向に貫通し且つ吸排気弁14,15に取り囲まれるようにして、点火プラグ17が配設されている。この点火プラグ17の先端の電極は燃焼室6の天井面から所定距離だけ下方に突出している。また、点火プラグ17の基端部は、ヘッドカバーを貫通するように配設された点火回路18(イグナイタ)に接続されている。
【0027】
前記燃焼室6の底部となるピストン5の冠面は、外周側の部位が燃焼室6の天井面と略平行な形状とされる一方、ピストン5冠面の略中央部には平面視で略長円形状をなす凹部5a(図3参照)が設けられている。また、燃焼室6の吸気側の周縁部に噴口を臨ませて、インジェクタ(燃料噴射弁)20が配設されている。このインジェクタ20は、例えば、燃焼室6に臨む先端部の噴口から燃料を旋回流として噴出させて、軸心の延びる方向に沿うようにホローコーン状に噴射する公知のスワールインジェクタであり、その燃料噴霧の貫徹力は燃料の噴射圧力が高いほど、大きくなる。尚、インジェクタ20としては前記スワールインジェクタに限らず、例えば、スリットタイプや多噴口タイプのものとしてもよいし、或いは芯弁を圧電素子によって動作させる構成のものを用いてもよい。
【0028】
前記インジェクタ20の基端側は全気筒2,2,…に共通の燃料分配管21に接続されていて、この燃料分配管21により高圧燃料ポンプ22から吐出される燃料が各気筒2毎のインジェクタ20に分配されるようになっている。そして、詳しくは後述するが、インジェクタ20により気筒2の圧縮行程で燃料が噴射されると、この燃料噴霧は燃焼室6内の吸気流動によって点火プラグ17側に輸送されて、該点火プラグ17の電極の周りに混合気塊を形成する。尚、前記燃料分配管21には、インジェクタ20から噴射される燃料の圧力状態(燃料噴射圧)を測定するための燃圧センサ23が配設されていて、この燃圧センサ23からの信号に基づいて、前記高圧燃料ポンプ22のスピル弁の開度が後述のECU50によりフィードバック制御されるようになっている。言い替えると、前記高圧燃料ポンプ22は、燃圧を調節することによって燃料噴霧の貫徹力を調節する貫徹力調節手段を構成している。
【0029】
エンジン1の一側面(図の右側の側面)には、各気筒2毎の吸気ポート12に連通するように吸気通路25が接続されている。この吸気通路25は、エンジン1の燃焼室6に対してエアクリーナ26で濾過した吸気を供給するものであり、その上流側から下流側に向かって順に、エンジン1への吸入空気量を検出するホットワイヤ式エアフローセンサ27と、吸気通路25の断面積を変更する電気式スロットル弁28(充填量調節手段)及びその位置を検出するスロットルセンサ29と、サージタンク30とが配設されている。前記スロットル弁28は、図外のアクセルペダルに対して機械的には連結されておらず、図示しない電動モータ(アクチュエータ)により開閉されるようになっている。
また、サージタンク30には、スロットル弁28よりも下流の吸気通路25の圧力を検出するブーストセンサ31が配設されている。
【0030】
また、前記サージタンク30よりも下流側の吸気通路25は、各気筒2毎に分岐する独立通路とされ、該各独立通路の下流端部はさらに2つに分岐してそれぞれ吸気ポート12に個別に連通する分岐路となっている。この分岐路乃至独立通路には、気筒2内へ流入する吸気の流れを絞って燃焼室6内の吸気流動の強さを調節する絞り弁32(Tunble Swirl Conrol Valve:以下、TSCVという)が配設されていて、例えばステッピングモータ等のアクチュエータによって開閉作動される。このTSCV32の弁体には一部に切り欠きが形成されており、全閉状態ではその切り欠き部のみから下流側に流れる吸気の流速が高くなって、この高速の吸気流がが燃焼室6において強い空気流動を生成する。一方、TSCV32が開かれるに従い、吸気は切り欠き部以外からも流通するようになって、その流速が徐々に低下し、気筒2内の空気流動の強さも徐々に低下するようになる。従って、TSCV32は、気筒2へ流入する吸気の流速を調節する吸気流速調節手段を構成する。
【0031】
エンジン1の他側面(図の左側の側面)には、気筒2内の燃焼室6から既燃ガス(排気ガス)を排出するための排気通路34が接続されている。この排気通路34の上流端側は、各気筒2毎の排気ポート13に繋がる排気マニホルド35により構成され、該排気マニホルド35よりも下流側の排気通路34には、排気ガス中の有害成分である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を浄化するための2つの触媒コンバータ36,37が直列に配設されている。
【0032】
前記上流側の触媒コンバータ36は、詳細は図示しないが、ケーシング内にハニカム構造の担体を収容したもので、この担体の各貫通孔の壁面にいわゆる三元触媒の触媒層が形成されている。この三元触媒(以下、上流側三元触媒36ともいう)は、従来より周知の通り、排気ガスの空燃比状態が略理論空燃比を含む所定の状態にあるときに、HC、CO、NOxを略完全に浄化可能なものである。また、下流側の触媒コンバータ37は、1つのケーシング内に2つの担体を直列に収容し、そのうちの上流側の担体の各貫通孔壁面にいわゆるNOx吸蔵タイプの触媒層を形成して、NOx触媒38を構成するとともに、下流側の担体にも同様にNOx吸蔵タイプの触媒層を形成して、下流側NOx触媒39を構成したものである。
【0033】
前記エンジン1の排気マニホルド35の集合部付近には排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ40(第1の酸素濃度センサ)が配設されており、主にこのセンサ40からの信号に基づいてエンジン1の空燃比フィードバック制御が行われるようになっている。また、前記2つの触媒コンバータ36,37の中間には上流側の三元触媒36の劣化状態を判定するための第2の酸素濃度センサ41と、NOx触媒38へ流入する排気ガスの温度を検出する排気温度センサ42とが配設され、さらに、2つのNOx触媒38,39の中間には第3の酸素濃度センサ43が配設されている。
【0034】
また、前記排気マニホルド35よりも下流側の排気通路34には、そこから分岐するようにして、排気ガスの一部を吸気通路25に還流させる排気還流通路45(以下、EGR通路という)の上流端が連通している。このEGR通路45の下流端は前記サージタンク30の内部に臨んで開口していて、該下流端近傍のEGR通路45にはデューティソレノイド弁からなるEGR弁46が配設されている。このEGR弁46によってEGR通路45における排気の還流量が調節されるようになっている。尚、符号47は、各気筒2の燃焼室6から漏れ出るブローバイガスをサージタンク30まで導くパージ通路である。
【0035】
上述した点火回路18、インジェクタ20、高圧燃料ポンプ22、スロットル弁28、TSCV32等は、いずれもエンジンコントロールユニット50(以下、ECUという)によって作動制御される。一方、このECU50には、少なくとも、前記クランク角センサ9、カム角センサ16、エアフローセンサ27、スロットルセンサ29等からの出力信号がそれぞれ入力され、さらに、アクセルペダルの操作量(以下、アクセル開度という)を検出するアクセル開度センサ51からの出力信号と、エンジン回転速度(クランク軸8の回転速度)を検出する回転速度センサ52からの出力信号とが入力されるようになっている。
【0036】
(エンジンの運転制御の概要)
次に、前記ECU50によるエンジン1の運転制御の概要について説明する。ECU50は、上述の如く多数のセンサから入力する信号に基づいてエンジン1の運転状態を検出し、例えば図2に示すような制御マップに基づいて、エンジンの燃焼モードを決定する。より具体的には、図示の如くエンジン1の負荷状態とエンジン回転速度とによって規定される温間の全運転領域のうち、低速低負荷側の所定範囲が予め成層燃焼領域(S)とされており、ここでは、インジェクタ20により主に気筒2の圧縮行程で燃料を噴射させ、気筒内の吸気流動を利用して点火プラグ17の電極の周りに成層化させて、燃焼させる(成層燃焼モード)。
【0037】
すなわち、図3に拡大して示すように、気筒2の圧縮行程中期以降にインジェクタ20によって燃料が燃焼室6の吸気側の周縁部からその略中央部に向かってやや下向きに(ピストン5冠面向きに)噴射されると、この燃料噴霧のうちの上側(燃焼室6天井部側)の部分では、燃焼室6の天井部に沿うように流れるタンブル流Tによって、燃料液滴及び燃料蒸気が直接的に点火プラグ17の電極に向かい輸送される一方、燃料噴霧の下側の部分は、燃料の噴射タイミングにおいてピストン5冠面の凹部5aに沿って流れるタンブル流Tに対し略正対して衝突し、ピストン5冠面へ付着することなく、上向きに指向される。そして、燃料噴霧は全体としてタンブル流Tに載って点火プラグ17の電極に向かい、その間に気化霧化が促されて、気筒2の点火タイミングの近傍において点火プラグ17電極の周囲に層状に分布するようになる。
【0038】
また、前記成層燃焼モードにおいては、圧縮行程にある高圧の気筒2内に燃料を噴射できるように燃圧が相対的に高く制御される。この際、燃圧は成層燃焼領域(S)全体で略一定になるように制御してもよいし、エンジン回転速度の上昇に伴い緩やかに上昇するように制御してもよい。また、スロットル弁28は、成層燃焼モードにおいてはポンプ損失を低減するために比較的大きく開かれ、この結果、各気筒2の燃焼室6における平均的な空燃比は理論空燃比よりも大幅にリーンな状態(例えばA/F>30)になる。このスロットル弁28の開度はエンジン回転速度の変化に応じて変更される。さらに、成層燃焼モードにおいては比較的、エンジン回転速度の低いときでもタンブル流Tの流速を十分に高くできるよう、TSCV32の開度は全開状態と全閉状態との中間で全開よりも全閉に近い状態とされる。
【0039】
一方、前記成層燃焼領域(S)以外はいわゆる均一燃焼領域(H)であり、ここでは、図4に示すように、インジェクタ20により主に気筒2の吸気行程で燃料を噴射させて、燃焼室6内で吸気と燃料とを十分に混合し、該燃焼室6全体に概ね均一な混合気を形成した上で燃焼させる(均一燃焼モード)。この均一燃焼モードでは、吸気行程にある低圧の気筒2内に燃料を噴射するので、燃圧は比較的低くてよく、このため、成層燃焼領域(S)との境界の付近では成層燃焼モードのときに比べて低圧になる。そして、そこからエンジン負荷やエンジン回転速度が高くなるに連れて燃圧は上昇する。
【0040】
また、均一燃焼領域(H)のうちの大部分の領域では混合気の空燃比を略理論空燃比(A/F≒14.7)とし、特に全負荷付近では理論空燃比よりもリッチな状態(例えばA/F=12〜14)になるように制御する。このため、スロットル弁28の開度は、成層燃焼領域(S)との境界の付近では成層燃焼モードのときに比べて小さくなる一方、そこからエンジン負荷やエンジン回転速度が高くなるに連れて大きくなり、全負荷域や最高速度域では全開とされる。さらに、TSCV32は基本的には均一燃焼領域(H)において常に全開とされる。
【0041】
ところで、前記のようにエンジン1を成層燃焼モードと均一燃焼モードとに切り替えて運転するようにした場合、その切り替え途中にはエンジン1は成層燃焼状態とすることになる。すなわち、燃焼モードの切替のためにスロットル弁28の開度を変更すると、気筒2の吸気充填量は過渡的に2つの燃焼モードの中間の状態になるのだが、この状態でエンジン1を均一燃焼モードにしたのではトルクが大きくなり過ぎるからである。
【0042】
より詳しくは、例えば、車両のアクセル開度が漸増して、エンジン1が成層燃焼領域(S)から均一燃焼領域(H)に移行する場合、図5に一例を示すように、まず、エンジン負荷或いはエンジン回転速度が2つの領域(S)、(H)の境界を超えたたとき(t=t1)、同図(d)に示すようにスロットル弁28を閉じ側に作動させる。これにより、同図(e)に示すように気筒2の吸気充填量が低下して、気筒2内の平均的な空燃比がリッチ側に変化するのだが、その際、吸気充填量の低下によるトルクの低下を抑えるために、燃料噴射量をやや多めにしているので(同図(c))、空燃比は速やかにリッチ側に変化する(同図(f))。
【0043】
そして、空燃比が、A/F=約18〜20くらいになれば(t=t2)、吸気充填量は十分に少なくなっていて、エンジン1を均一燃焼モードとすることも可能になるから、その時点で、同図(b)に示すようにインジェクタ20による燃料の噴射形態を吸気行程噴射に切り替える。但し、A/F=約16〜18くらいで均一燃焼状態にすると、NOxの生成量が多くなるので、同図(c)に示すように燃料噴射量を増量して空燃比を略理論空燃比になるようにし(同図(f))、そのことによるトルク変動は例えば点火時期のリタードによって吸収する。
【0044】
反対に、均一燃焼モードから成層燃焼モードへ切替えるときには、詳しい説明は省略するが、スロットル弁28を開く側に作動させるのと略同時に燃料の噴射形態を吸気行程噴射から圧縮行程噴射に切り替えて、エンジン1を成層燃焼状態で運転するようにする。
【0045】
つまり、2つの燃焼モード間の移行時にはエンジン1は概ね成層燃焼状態になるのだが、このときの気筒2の吸気充填量は、上述したように均一燃焼状態とするには多すぎるものの、一方で、良好な成層燃焼状態を実現するには不足する状態になる。すなわち、この実施形態のようにタンブル流Tを利用して混合気を成層化させるようにしたものでは、その適切な成層化のために必要なタンブル流Tの強さというものがあり、吸気充填量が少なくてタンブル流Tの弱いときには、このタンブル流Tによって燃料を気筒2の点火時期までに点火プラグ17周りに十分に輸送できないから、適切な混合気の成層化が行われなくなって、着火安定性が低下するのである。
【0046】
そこで、この実施形態では、本発明の特徴部分として、エンジン1の燃焼モードの移行時には前記のような吸気充填量の不足分を補うように、吸気の流速や燃料噴霧の貫徹力を増大させるようにしたものである。
【0047】
(燃焼モード切替え時のスロットル弁及び燃圧の制御)
以下に、まず、燃焼モードの切替えの際に燃圧の補正制御を行うようにした例について、ECU50によるスロットル弁28及び高圧供給ポンプ22の制御手順を図6のフローチャート図に基づいて説明する。尚、このフローチャートに示す制御手順はスロットル弁28の開度と燃圧のみに関するものであるが、これと並行してECU50により、上述の如きインジェクタ20や点火回路18等の制御が行われる。
【0048】
図示のフローにおいて、スタート後のステップSA1では、クランク角センサ9、カム角センサ16、エアフローセンサ27、アクセル開度センサ51、回転速度センサ52等からの出力信号を入力し、さらにECU50のRAMに一時的に記憶されているデータを読み込む。続いて、そのようにしてECU50のRAMから読み込んだモード移行フラグの状態に基づいて、ステップSA2においてエンジン1が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間を移行する過渡的な状態にあるかどうか判定する(燃焼モード移行時?)。この判定がNOであれば、エンジン1は成層燃焼モードか均一燃焼モードかのいずれかであるから、ステップSA3に進み、選択されている燃焼モードを実現すべく、エンジン1の運転状態に対応する所定の目標値になるように、スロットル弁28の開度及び燃圧の制御をそれぞれ実行する。
【0049】
尚、前記モード移行フラグの状態の判定は、ECU50のRAMにおいて逐次、更新されているモード移行フラグのオンオフ状態を読み込んで、判定するのであるが、このモード移行フラグは、エンジン1が図2に示すような制御マップ上で成層燃焼領域(S)と均一燃焼領域(H)との境界を超えたたとき、その後の所定時間、オン状態(すなわち、モード移行時)とされるものである。
【0050】
一方、前記ステップSA2において判定がYESであれば、ステップSA4に進んで、成層燃焼モードから均一燃焼モードへの移行かどうか判定する。この判定がYESであれば、ステップSA5に進んで、気筒2の吸気充填量が成層燃焼モードに見合うものから均一燃焼モードに見合うものまで減少するように、スロットル弁28の開度を減少させ、このスロットル開度の減少に対応するように、ステップSA6において燃圧を増大補正して、しかる後にリターンする。
【0051】
つまり、エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、スロットル弁28の開度の減少に応じて燃圧を上昇させ、これにより、吸気充填量の低下によるタンブル流Tの不足分を補うように燃料噴霧の貫徹力を高めるようにしている。
【0052】
また、その際、燃圧の補正量は気筒2内の燃料の気化し易さに応じて変更する。すなわち、一般に、燃料噴霧は気化する前の液滴の状態の方が空気流動の影響を受け難いから、気筒2内が燃料の気化し易い状態であるほど、タンブル流Tの強さ不足の影響が大きくなり、混合気形成が阻害されやすい。そこで、例えば、水温センサ11(検出手段)からの出力信号とエンジン1の運転状態とに基づいて気筒2内の温度状態を推定し、温度が高くて気化しやすいときほど、燃圧の増大補正量を大きくするようにしている。
【0053】
これに対し、前記ステップSA4における判定がNOで、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行であれば、ステップSA7に進み、今度は気筒2の吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものから成層燃焼状態に見合うものへと増大するように、スロットル弁28の開度を増大させる。続いて、ステップSA8において、スロットル弁28の開度の増大に応じて燃圧を減少させ、しかる後にリターンする。
【0054】
すなわち、エンジン1が均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときには、当初のスロットル開度が最も小さく、このときの吸気充填量の不足が最も大きいので、このときのタンブル流Tの強さ不足を補うように燃圧を一旦、大幅に増大補正する。そして、その後、スロットル弁28の開度が増大するのに応じて徐々に燃圧を低下させる。これにより、インジェクタ20からの燃料噴霧の貫徹力は、常に気筒2内のタンブル流Tの不足分を補うように調節される。
【0055】
前記図6のフローチャートに示すエンジン制御の手順は、ECU50のメモリに電子的に格納されているプログラムがCPUにより実行されることによって実現されるものであり、このことで、前記ECU50は、以下の発明の構成要件をソフトウエア的に備えている。すなわち、前記フローのステップSA5、ステップSA7によって、エンジン1が成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるようにスロットル弁28の開度を制御するとともに、エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行する過渡状態にあるときにときに前記スロットル弁28の開度を減少させる一方、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時にはスロットル開度を増大させる充填量制御手段50aが構成されている。
【0056】
また、ステップSA6、ステップSA8によって、エンジン1が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるときに、スロットル開度の減少に応じて燃圧が上昇するように、また、スロットル開度の増大に応じて燃圧が低下するように、それぞれ燃圧を制御して、気筒2の吸気充填量が少ないときほど燃料噴霧の貫徹力を増大させる貫徹力制御手段50bが構成されている。そして、前記貫徹力制御手段50bは、水温センサ11からの信号に基づいて、気筒2の温度状態が高くて燃料の気化し易いときほど、燃圧の補正量を大きくする、即ち、吸気充填量の変化に対する燃料噴霧貫徹力の変化の割合が大きくなるように燃圧の制御を行うものである。
【0057】
したがって、この実施形態に係る直噴エンジンの制御装置Aによると、前記の如く、エンジン1の燃焼モードの切替えの際に燃圧の補正制御を行うようにした場合、例えば、エンジン1が成層燃焼領域(S)から均一燃焼領域(H)に移行するときには、前記図5に示すように、まず、スロットル弁28が閉じ側に作動されて(t=t1)気筒2の吸気充填量が減少し、この吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものとなったとき(t=t2)、燃料噴射形態が切り替えられる。
【0058】
すなわち、燃焼モードの移行途中(T1〜T2)に、エンジン1は気筒2の吸気充填量が少なくなってタンブル流Tの強さが不足する状態で、成層燃焼状態になるが、このときには、図7に示すように、スロットル弁28の開度の減少に応じて燃圧が増大補正され、このことで、吸気充填量の低下によるタンブル流Tの強さの不足を補うように、燃料噴霧の貫徹力が高められる。しかも、その際、気筒2の温度状態に応じて、当該気筒2内で燃料の気化し易いときほど燃圧の増大補正の度合いが大きくなる。これにより、気筒2内のタンブル流Tの強さが不足していても、当該気筒2の点火時期までに燃料噴霧を点火プラグ17周りに十分に輸送して、適切に成層化させることができ、これにより、エンジン1の着火安定性を確保できる。
【0059】
また、エンジン1が均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときにも、前記と同様に気筒2のタンブル流Tの強さが不足する状態で成層燃焼が行われることに対して、スロットル弁28の開度や気筒2の温度状態に応じて燃圧の補正制御が行われることで、過渡的なタンブル流Tの強さの不足を燃料噴霧貫徹力の増大によって補い、これにより所期の混合気形成を実現してエンジン1の着火安定性を確保することができる。
【0060】
(燃焼モード切替え時のスロットル弁及びTSCVの制御)
次に、燃焼モードの切替えの際に過渡的にTSCV32を閉じ側に作動させる場合について、ECU50によるスロットル弁28及びTSCV32の制御手順を図8に示すフローチャート図に基づいて説明する。尚、このフローチャートに示すスロットル弁28やTSCV32の制御と並行して、ECU50によりインジェクタ20や点火回路18等の制御が行われる。
【0061】
図示のフローにおいて、スタート後のステップSB1〜ステップSB4までは、図6に示すフローのステップSA1〜SA4までと同じ制御手順を実行し、このステップSB4において成層燃焼モードから均一燃焼モードへの移行であるYESと判定してステップSB5に進めば、前記フローのステップSA5と同じくスロットル弁28の開度を減少させる。続いて、ステップSB6において、スロットル弁28の開度の減少に対応するようにTSCV32の開度を徐々に減少させ、これにより吸気の流速を高めて、しかる後にリターンする。
【0062】
すなわち、エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、スロットル開度の減少による吸気充填量の減少に対応して、TSCV32を閉じ側に制御することにより吸気の流速を高めて、これにより気筒2内のタンブル流Tの強さを維持するようにしている。
【0063】
一方、前記ステップSB4において均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行であるNOと判定して、ステップSB7に進めば、前記図6のフローのステップSA7と同じくスロットル弁28の開度を増大させ、続くステップSB8において、前記スロットル弁28の開度の増大に対応するようにTSCV32の開度を徐々に増大させ、これにより吸気の流速を低下させて、しかる後にリターンする。
【0064】
すなわち、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時には最初のスロットル開度が最も小さく、このときの吸気充填量の不足が最も大きいので、このときのタンブル流Tの強さ不足を補うようにTSCV32を一旦、閉じ側に大きく作動させる。そして、その後、スロットル弁28の開度が増大するのに応じて徐々にTSCV32を開いていって、吸気充填量の変化による影響を打ち消すように吸気の流速を調節するのである。
【0065】
前記図7に示すフローのステップSB5、ステップSB7によって充填量制御手段50aが構成されている。また、ステップSB6、ステップSB8によって、エンジン1が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、スロットル弁28が閉じられるときにはTSCV32を徐々に開く一方、スロットル弁28が開かれるときにはTSCV32を徐々に閉じて、気筒2の吸気充填量が少ないときほど吸気の流速が高くなるようにTSCV32の開度を制御する吸気流速制御手段50cが構成されている。
【0066】
尚、前記吸気流速制御手段50cは、水温センサ11からの信号に基づいて、気筒2内の燃料の気化し易さを検出し、燃料が気化し易いときほど、気筒2の吸気充填量の変化に対する吸気流速の変化の割合を大きくするようにするものとしてもよい。
【0067】
したがって、前記の如く、エンジン1の燃焼モードの切替えの際にTSCV32の開度を補正制御するようにした場合は、燃焼モードの移行途中に気筒2の吸気充填量が不足する状態になっても、その吸気充填量の不足分を補うように吸気の流速が高められ、これにより気筒2内のタンブル流Tの強さが所要のものに維持されるから、燃料噴霧を点火プラグ17周りに適切に成層化して、エンジン1の着火安定性を確保することができる。
【0068】
尚、本発明の構成はこの実施形態のものに限定されることはなく、その他の種々の構成をも包含するものである。一例を挙げれば、この実施形態では、インジェクタ20からの燃料噴霧の貫徹力を燃圧によって調節するようにしているが、これに限るものではなく、例えば、インジェクタ20の噴口付近に噴霧角の可変機構を設けて、噴霧角の変更によって貫徹力を調節するようにしてもよいし、或いは、燃料を複数回に分けて噴射することにより、噴霧の貫徹力を調節するようにしてもよい。
【0069】
また、この実施形態では、気筒2の吸気充填効率をスロットル弁28により調節するようにしているが、これに限らず、例えば、吸気弁の開閉作動タイミングを変更可能な可変動弁機構を設け、これにより吸気充填量を変更するようにしてもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明に係る直噴エンジンの制御装置によると、エンジンを成層燃焼モードと均一燃焼モードとに切替えるとともに、その成層燃焼モードでは気筒内の空気流動を利用して混合気の成層化を図るようにしたものにおいて、燃焼モードの切替えの際に気筒の吸気充填量が少ないときほど、燃料噴霧の貫徹力を大きくなるように制御することで、過渡的な空気流動の不足を貫徹力の増大によって補い、所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0071】
請求項2又は請求項3の発明によると、スロットル弁の開度に対応するように燃圧を変更することで、気筒内の空気流動の不足を補完するように燃料噴霧の貫徹力を高めることができ、これにより、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に適切な混合気の成層化を実現して、請求項1の発明の効果を十分に得ることができる。
【0072】
請求項4の発明によると、燃料噴霧貫徹力の増大補正の度合いを燃料の気化し易いときほど大きくすることで、請求項1の発明の効果をより確実なものとすることができる。
【0073】
また、請求項5の発明に係る直噴エンジンの制御装置によると、前記請求項1の発明と同じ前提構成において、燃焼モードの切替えの際に、気筒の吸気充填量が少ないときほど吸気の流速を高めて、過渡的な空気流動の不足を解消することにより、所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0074】
請求項6の発明によると、スロットル弁の開度に対応するように吸気の流速を変更することで、吸気充填量の変化による影響を概ね打ち消して、気筒内の吸気流動の強さを維持することができ、これにより、常に適切な混合気の成層化を実現して、請求項5の発明の効果を十分に得ることができる。
【0075】
請求項7の発明によると、吸気流速の変更の度合いを燃料の気化し易いときほど、大きくすることで、請求項5の発明の効果をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る直噴エンジンの全体構成を示す図である。
【図2】エンジンを成層燃焼状態又は均一燃焼状態とする運転領域をそれぞれ設定した制御マップの一例を示す図である。
【図3】成層燃焼モードにおける層状混合気の形成過程を示す説明図である。
【図4】均一燃焼モードにおける均一混合気の形成過程を示す説明図である。
【図5】エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードに切り替わるときのタイムチャート図である。
【図6】燃焼モードの切替え時にスロットル開度に応じて燃圧を補正制御する手順のフローチャート図である。
【図7】燃焼モード切替え時の燃圧の変化を示すタイムチャート図である。
【図8】燃焼モードの切替え時にスロットル開度に応じてTSCV開度を補正するようにした場合の図6相当図である。
【符号の説明】
A 直噴エンジンの制御装置
T タンブル流(気筒内空気流動)
1 エンジン
2 気筒
6 燃焼室
11 水温センサ(検出手段)
17 点火プラグ
20 インジェクタ(燃料噴射弁)
22 高圧供給ポンプ(貫徹力調節手段)
28 スロットル弁(充填量調節手段)
32 TSCV(吸気流速調節手段)
50 ECU(エンジンコントロールユニット)
50a 充填量制御手段
50b 貫徹力制御手段
50c 吸気流速制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、気筒内の燃焼室に燃料を直接、噴射する直噴エンジンの制御装置に関し、特に、エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間を移行するときの過渡的な制御技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の直噴エンジンでは、気筒内の燃焼室全体に略均一な混合気を形成して燃焼させる均一燃焼モードと、点火プラグの周りに混合気を偏在させた状態で燃焼させる成層燃焼モードとに切り替えられて、運転されるようになっている。前記の成層燃焼状態では点火プラグの電極付近の局所的な空燃比は理論空燃比乃至それよりもリッチな状態になるものの、スロットル弁が比較的大きく開かれていて、気筒の吸気充填効率が高くなるから、当該気筒内の平均的な空燃比は非常にリーンな状態になる(例えばA/Fで30以上)。
【0003】
そして、そのような成層燃焼状態における適切な混合気形成のために、気筒内のスワールやタンブル等の空気流動を利用して燃料噴霧を点火プラグ側に輸送するようにしたものが知られている。例えば、特開平11−141338号公報に開示されるものでは、エンジンが成層燃焼モードのときに、気筒の圧縮行程中盤以降の所定のタイミングにて高圧の燃焼室にインジェクタから燃料を噴射し、対向するタンブル流動との衝突によって燃料噴霧の微粒化や空気との混合を促しながら、その燃料噴霧を点火プラグ電極に向かうように輸送して、該電極の周りに混合気を成層化させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンの運転状態が前記成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で切り替わるとき、例えば成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、まず、スロットル弁を閉じて気筒への吸気の充填量を所定以下に減少させ、それから燃料の噴射形態を切り替えて均一燃焼状態とする。そうすると、上述の如く、成層燃焼状態と均一燃焼状態とでは吸気充填量が大きく異なるから、過渡的には、エンジンは気筒の吸気充填量が比較的少ない状態で成層燃焼状態とされることになる。
【0005】
この点について、前記従来例のように気筒内の空気流動を利用して燃料噴霧を輸送するようにしたものでは、混合気を適切に成層化するために必要な空気流動の強さというものがあるから、上述の如く気筒の吸気充填量が少なくなって空気流動が弱くなると、適切な混合気の成層化が行われなくなり、着火安定性が損なわれるという不具合が生ずる。すなわち、吸気充填量が少ないときにはその分、空気流動の運動量が低下するので、この空気流動によって燃料を気筒の点火時期までに点火プラグ電極付近に十分に輸送できなくなるのである。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気筒内の空気流動を利用して混合気の成層化を図るようにした直噴エンジンにおいて、特に、燃焼モード切替え時の過渡的な制御の手順に工夫を凝らして、気筒の吸気充填量の変化に依らず混合気の適切な成層化を可能とし、もって、着火安定性を確保することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明に係る直噴エンジンの制御装置では、燃焼モードの移行時に過渡的に、混合気の適切な成層化を図るためには吸気充填量が不足する状態になることに着目し、この空気充填量の不足分を補うように燃料噴霧の貫徹力又は吸気の流速のいずれかを増大させるようにしたものである。
【0008】
具体的に、請求項1の発明では、気筒内の燃焼室に燃料を直接、噴射する燃料噴射弁を備え、該燃料噴射弁による燃料の噴射形態を変更して、エンジンを成層燃焼モード又は均一燃焼モードのいずれかに切替えるとともに、その成層燃焼モードでは気筒内の空気流動を利用して混合気を点火プラグの電極周りに成層化させるようにした直噴エンジンの制御装置を前提とする。そして、前記燃料噴射弁による燃料噴霧の貫徹力を調節する貫徹力調節手段と、前記気筒への吸気充填量を調節する充填量調節手段と、エンジンが成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるように前記充填量調節手段を制御する充填量制御手段と、エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、気筒の吸気充填量が少ないときほど燃料噴霧の貫徹力が大きくなるように前記貫徹力調節手段を制御する貫徹力制御手段とを備える構成とする。
【0009】
前記の構成により、エンジンの運転状態が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で切り替わるとき、例えば成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、まず、充填量制御手段による充填量調節手段の制御が行われて、気筒の吸気充填量が成層燃焼状態に見合うものから均一燃焼状態に見合うものとなるように減少される。この結果、気筒内の空気流動が本来の成層燃焼モードに比べると弱い、即ち吸気流動の強さが不足する状態で成層燃焼が行われることになり、点火プラグ周りの混合気形成が遅れて着火安定性が損なわれる虞れがある。しかし、このときには貫徹力制御手段による貫徹力調節手段の制御によって、気筒の吸気充填量が少ないときほど燃料噴霧の貫徹力が大きくされ、噴霧流自体の速度が高くなることで、前記した混合気形成の遅れを解消することが可能になる。
【0010】
一方、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時には、気筒の吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものから成層燃焼状態に見合うものとなるように増大されるとともに、これにより吸気充填量が十分に大きくなる前に燃料の噴射形態が切り替えられて、エンジンが成層燃焼状態とされる。従って、このときにも気筒の吸気流動の強さが不足する状態で成層燃焼が行われることになるが、前記の如く燃料噴霧の貫徹力が増大されることで、混合気形成の遅れは解消可能となる。
【0011】
つまり、この発明によれば、燃焼モード移行時の過渡的な空気流動の不足を燃料噴霧貫徹力の増大によって補い、これにより所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明における充填量調節手段をエンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁とし、充填量制御手段は、エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときに前記スロットル弁の開度を減少させるものとする。また、貫徹力調節手段は燃料噴射弁へ供給する燃料の燃圧を調節するものとし、貫徹力制御手段は、前記スロットル弁の開度の減少に応じて燃圧が上昇するように前記貫徹力調節手段を制御するものとする。
【0013】
このことで、エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、充填量制御手段によるアクチュエータの制御によってスロットル弁の開度が減少して、気筒への吸気充填量が減少する。そして、そのスロットル弁の開度の減少に応じて貫徹力制御手段により燃圧が高められることで、吸気充填量の低下による空気流動の不足分を補完するように燃料噴霧の貫徹力が高められる。よって、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に適切な混合気の成層化が図られ、請求項1の発明の作用効果が十分に得られる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1の発明における充填量調節手段を、エンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁とし、充填量制御手段は、エンジンが均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときに前記スロットル弁の開度を増大させるものとする。また、貫徹力調節手段は燃料噴射弁へ供給する燃料の燃圧を調節するものとし、貫徹力制御手段は、前記スロットル弁の開度の増大に応じて燃圧が低下するように前記貫徹力調節手段を制御するものとする。
【0015】
このことで、エンジンが均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときには、充填量制御手段によるアクチュエータの制御によってスロットル弁の開度が増大され、気筒への吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものから成層燃焼状態に見合うものへと増大される。この際、吸気充填量が十分に大きくなる前に燃料の噴射形態が切り替えられて、エンジンが成層燃焼状態になるとともに、このときの空気流動の不足を補うように燃圧が一旦、大きく増大される。その後、前記スロットル弁の開度の増大に応じて貫徹力制御手段により燃圧が低下され、これにより、燃料噴霧の貫徹力が気筒内の空気流動の強さの変化に対応するように調節される。よって、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に適切な混合気の成層化が図られ、請求項1の発明の作用効果が十分に得られる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、気筒内での燃料の気化し易さに関連する所定の物理量を検出する検出手段を備え、貫徹力制御手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて、気筒の吸気充填量の変化に対する燃料噴霧貫徹力の変化の割合が燃料の気化し易いときほど大きくなるように貫徹力調節手段を制御するものとする。
【0017】
すなわち、一般に、気筒内に噴射された燃料は気化する前の液滴の状態の方が空気流動の影響を受け難いから、気筒内が燃料の気化し易い状態であるほど、吸気流動不足の影響を強く受けて、混合気形成の阻害される可能性が高くなる。そこで、この発明では、検出手段による検出結果に応じて、燃料の気化し易いときほど貫徹力調節手段による燃料噴霧貫徹力の増大補正の度合いを大きくすることにより、請求項1の発明の作用効果をより確実なものとすることができる。
【0018】
次に、請求項5の発明では、前記請求項1の発明と同じ前提構成において、気筒への吸気充填量を調節する充填量調節手段と、気筒へ流入する吸気の流速を調節する吸気流速調節手段と、エンジンが成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるように前記充填量調節手段を制御する充填量制御手段と、エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、気筒の吸気充填量が少ないときほど吸気の流速が高くなるように前記吸気流速調節手段を制御する吸気流速制御手段とを備える構成とする。
【0019】
この構成では、請求項1の発明と同様に、エンジンの燃焼モードが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で切り替わるときに、気筒の吸気充填量が過渡的に不足する状態になると、吸気流速制御手段による吸気流速調節手段の制御がわれて吸気充填量の少ないときほど、吸気の流速が高くされ、この流速の向上によって吸気流動の運動量が増大する。つまり、吸気の流速の向上によって空気充填量の不足を補い、燃焼モード移行時の過渡的な空気流動の強さの不足を解消することが可能となり、これにより所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項5の発明における充填量調節手段を、エンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁とし、充填量制御手段は、エンジンの成層燃焼モードから均一燃焼モードへの移行時には前記スロットル弁の開度を減少させる一方、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時には前記スロットル弁の開度を増大させるものとする。また、そのスロットル弁よりも下流側の吸気通路にアクチュエータにより駆動されて吸気の流れを絞る絞り弁を配設し、吸気流速制御手段は、前記充填量制御手段の制御によって前記スロットル弁が閉じられるときには前記絞り弁を開く側に作動させる一方、前記スロットル弁が開かれるときには前記絞り弁を閉じ側に作動させるものとする。
【0021】
このことで、まず、エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、充填量制御手段によるアクチュエータの制御によってスロットル弁の開度が減少して、気筒への吸気充填量が減少する。そして、そのスロットル弁の開度の減少に対応して吸気通路下流側の絞り弁が閉じられることで、吸気の流速が高められ、これにより気筒内の吸気流動の強さが概ね維持される。一方、エンジンが均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときにも、前記と同様に吸気充填量の変化による影響を打ち消すように吸気の流速が調節される。これにより、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に混合気の適切な成層化が図られて、請求項5の発明の作用効果が十分に得られる。
【0022】
請求項7の発明では、請求項5の発明において、気筒内での燃料の気化し易さに関連する所定の物理量を検出する検出手段を備え、吸気流速制御手段は、前記検出手段による検出結果に応じて、気筒の吸気充填量の変化に対する吸気流速の変化の割合が燃料の気化し易いときほど大きくなるように、吸気流速調節手段の制御を行うものとする。
【0023】
このことで、検出手段による検出結果に基づいて、燃料の気化し易いときほど、吸気流速制御手段による吸気流速の補正制御の度合いが大きくなることで、請求項5の発明の作用効果をより確実なものとすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る直噴エンジン1の制御システムの全体的な構成を示す。同図においてエンジン1は、複数の気筒2,2,…(1つのみ図示する)が直列に設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配置されたシリンダヘッド4とを有し、各気筒2内にはそれぞれピストン5が往復動可能に嵌挿されていて、そのピストン5の冠面とシリンダヘッド4の下面との間の気筒2内に燃焼室6が区画形成されている。ピストン5の往復動はコネクティングロッド7を介してクランク軸8の回転運動に変替され、このクランク軸8により出力される。また、前記シリンダブロック3には、クランク軸8の一端側においてその回転角度を検出する電磁式のクランク角センサ9と、各気筒2毎の燃焼圧の変動に基づいてノッキングを検出するためのノックセンサ10と、図示しないウオータジャケットの内部に臨んで冷却水の温度(エンジン水温)を検出する水温センサ11とがそれぞれ配設されている。
【0026】
前記シリンダヘッド4には、各気筒2毎に燃焼室6の天井面に臨んで開口するように吸気ポート12及び排気ポート13が2つずつ開口していて、その各ポート開口部に吸気及び排気弁14,15が配置されている。これら吸気弁14及び排気弁15は、それぞれシリンダヘッド4の内部に軸支された吸気側及び排気側カム軸(図示せず)によって、前記クランク軸8の回転に同期して開作動されるようになっている。また、吸気側のカム軸には、その回転角度を検出するための電磁式のカム角センサ16が付設されている。また、各気筒2毎に前記シリンダヘッド4を上下方向に貫通し且つ吸排気弁14,15に取り囲まれるようにして、点火プラグ17が配設されている。この点火プラグ17の先端の電極は燃焼室6の天井面から所定距離だけ下方に突出している。また、点火プラグ17の基端部は、ヘッドカバーを貫通するように配設された点火回路18(イグナイタ)に接続されている。
【0027】
前記燃焼室6の底部となるピストン5の冠面は、外周側の部位が燃焼室6の天井面と略平行な形状とされる一方、ピストン5冠面の略中央部には平面視で略長円形状をなす凹部5a(図3参照)が設けられている。また、燃焼室6の吸気側の周縁部に噴口を臨ませて、インジェクタ(燃料噴射弁)20が配設されている。このインジェクタ20は、例えば、燃焼室6に臨む先端部の噴口から燃料を旋回流として噴出させて、軸心の延びる方向に沿うようにホローコーン状に噴射する公知のスワールインジェクタであり、その燃料噴霧の貫徹力は燃料の噴射圧力が高いほど、大きくなる。尚、インジェクタ20としては前記スワールインジェクタに限らず、例えば、スリットタイプや多噴口タイプのものとしてもよいし、或いは芯弁を圧電素子によって動作させる構成のものを用いてもよい。
【0028】
前記インジェクタ20の基端側は全気筒2,2,…に共通の燃料分配管21に接続されていて、この燃料分配管21により高圧燃料ポンプ22から吐出される燃料が各気筒2毎のインジェクタ20に分配されるようになっている。そして、詳しくは後述するが、インジェクタ20により気筒2の圧縮行程で燃料が噴射されると、この燃料噴霧は燃焼室6内の吸気流動によって点火プラグ17側に輸送されて、該点火プラグ17の電極の周りに混合気塊を形成する。尚、前記燃料分配管21には、インジェクタ20から噴射される燃料の圧力状態(燃料噴射圧)を測定するための燃圧センサ23が配設されていて、この燃圧センサ23からの信号に基づいて、前記高圧燃料ポンプ22のスピル弁の開度が後述のECU50によりフィードバック制御されるようになっている。言い替えると、前記高圧燃料ポンプ22は、燃圧を調節することによって燃料噴霧の貫徹力を調節する貫徹力調節手段を構成している。
【0029】
エンジン1の一側面(図の右側の側面)には、各気筒2毎の吸気ポート12に連通するように吸気通路25が接続されている。この吸気通路25は、エンジン1の燃焼室6に対してエアクリーナ26で濾過した吸気を供給するものであり、その上流側から下流側に向かって順に、エンジン1への吸入空気量を検出するホットワイヤ式エアフローセンサ27と、吸気通路25の断面積を変更する電気式スロットル弁28(充填量調節手段)及びその位置を検出するスロットルセンサ29と、サージタンク30とが配設されている。前記スロットル弁28は、図外のアクセルペダルに対して機械的には連結されておらず、図示しない電動モータ(アクチュエータ)により開閉されるようになっている。
また、サージタンク30には、スロットル弁28よりも下流の吸気通路25の圧力を検出するブーストセンサ31が配設されている。
【0030】
また、前記サージタンク30よりも下流側の吸気通路25は、各気筒2毎に分岐する独立通路とされ、該各独立通路の下流端部はさらに2つに分岐してそれぞれ吸気ポート12に個別に連通する分岐路となっている。この分岐路乃至独立通路には、気筒2内へ流入する吸気の流れを絞って燃焼室6内の吸気流動の強さを調節する絞り弁32(Tunble Swirl Conrol Valve:以下、TSCVという)が配設されていて、例えばステッピングモータ等のアクチュエータによって開閉作動される。このTSCV32の弁体には一部に切り欠きが形成されており、全閉状態ではその切り欠き部のみから下流側に流れる吸気の流速が高くなって、この高速の吸気流がが燃焼室6において強い空気流動を生成する。一方、TSCV32が開かれるに従い、吸気は切り欠き部以外からも流通するようになって、その流速が徐々に低下し、気筒2内の空気流動の強さも徐々に低下するようになる。従って、TSCV32は、気筒2へ流入する吸気の流速を調節する吸気流速調節手段を構成する。
【0031】
エンジン1の他側面(図の左側の側面)には、気筒2内の燃焼室6から既燃ガス(排気ガス)を排出するための排気通路34が接続されている。この排気通路34の上流端側は、各気筒2毎の排気ポート13に繋がる排気マニホルド35により構成され、該排気マニホルド35よりも下流側の排気通路34には、排気ガス中の有害成分である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を浄化するための2つの触媒コンバータ36,37が直列に配設されている。
【0032】
前記上流側の触媒コンバータ36は、詳細は図示しないが、ケーシング内にハニカム構造の担体を収容したもので、この担体の各貫通孔の壁面にいわゆる三元触媒の触媒層が形成されている。この三元触媒(以下、上流側三元触媒36ともいう)は、従来より周知の通り、排気ガスの空燃比状態が略理論空燃比を含む所定の状態にあるときに、HC、CO、NOxを略完全に浄化可能なものである。また、下流側の触媒コンバータ37は、1つのケーシング内に2つの担体を直列に収容し、そのうちの上流側の担体の各貫通孔壁面にいわゆるNOx吸蔵タイプの触媒層を形成して、NOx触媒38を構成するとともに、下流側の担体にも同様にNOx吸蔵タイプの触媒層を形成して、下流側NOx触媒39を構成したものである。
【0033】
前記エンジン1の排気マニホルド35の集合部付近には排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ40(第1の酸素濃度センサ)が配設されており、主にこのセンサ40からの信号に基づいてエンジン1の空燃比フィードバック制御が行われるようになっている。また、前記2つの触媒コンバータ36,37の中間には上流側の三元触媒36の劣化状態を判定するための第2の酸素濃度センサ41と、NOx触媒38へ流入する排気ガスの温度を検出する排気温度センサ42とが配設され、さらに、2つのNOx触媒38,39の中間には第3の酸素濃度センサ43が配設されている。
【0034】
また、前記排気マニホルド35よりも下流側の排気通路34には、そこから分岐するようにして、排気ガスの一部を吸気通路25に還流させる排気還流通路45(以下、EGR通路という)の上流端が連通している。このEGR通路45の下流端は前記サージタンク30の内部に臨んで開口していて、該下流端近傍のEGR通路45にはデューティソレノイド弁からなるEGR弁46が配設されている。このEGR弁46によってEGR通路45における排気の還流量が調節されるようになっている。尚、符号47は、各気筒2の燃焼室6から漏れ出るブローバイガスをサージタンク30まで導くパージ通路である。
【0035】
上述した点火回路18、インジェクタ20、高圧燃料ポンプ22、スロットル弁28、TSCV32等は、いずれもエンジンコントロールユニット50(以下、ECUという)によって作動制御される。一方、このECU50には、少なくとも、前記クランク角センサ9、カム角センサ16、エアフローセンサ27、スロットルセンサ29等からの出力信号がそれぞれ入力され、さらに、アクセルペダルの操作量(以下、アクセル開度という)を検出するアクセル開度センサ51からの出力信号と、エンジン回転速度(クランク軸8の回転速度)を検出する回転速度センサ52からの出力信号とが入力されるようになっている。
【0036】
(エンジンの運転制御の概要)
次に、前記ECU50によるエンジン1の運転制御の概要について説明する。ECU50は、上述の如く多数のセンサから入力する信号に基づいてエンジン1の運転状態を検出し、例えば図2に示すような制御マップに基づいて、エンジンの燃焼モードを決定する。より具体的には、図示の如くエンジン1の負荷状態とエンジン回転速度とによって規定される温間の全運転領域のうち、低速低負荷側の所定範囲が予め成層燃焼領域(S)とされており、ここでは、インジェクタ20により主に気筒2の圧縮行程で燃料を噴射させ、気筒内の吸気流動を利用して点火プラグ17の電極の周りに成層化させて、燃焼させる(成層燃焼モード)。
【0037】
すなわち、図3に拡大して示すように、気筒2の圧縮行程中期以降にインジェクタ20によって燃料が燃焼室6の吸気側の周縁部からその略中央部に向かってやや下向きに(ピストン5冠面向きに)噴射されると、この燃料噴霧のうちの上側(燃焼室6天井部側)の部分では、燃焼室6の天井部に沿うように流れるタンブル流Tによって、燃料液滴及び燃料蒸気が直接的に点火プラグ17の電極に向かい輸送される一方、燃料噴霧の下側の部分は、燃料の噴射タイミングにおいてピストン5冠面の凹部5aに沿って流れるタンブル流Tに対し略正対して衝突し、ピストン5冠面へ付着することなく、上向きに指向される。そして、燃料噴霧は全体としてタンブル流Tに載って点火プラグ17の電極に向かい、その間に気化霧化が促されて、気筒2の点火タイミングの近傍において点火プラグ17電極の周囲に層状に分布するようになる。
【0038】
また、前記成層燃焼モードにおいては、圧縮行程にある高圧の気筒2内に燃料を噴射できるように燃圧が相対的に高く制御される。この際、燃圧は成層燃焼領域(S)全体で略一定になるように制御してもよいし、エンジン回転速度の上昇に伴い緩やかに上昇するように制御してもよい。また、スロットル弁28は、成層燃焼モードにおいてはポンプ損失を低減するために比較的大きく開かれ、この結果、各気筒2の燃焼室6における平均的な空燃比は理論空燃比よりも大幅にリーンな状態(例えばA/F>30)になる。このスロットル弁28の開度はエンジン回転速度の変化に応じて変更される。さらに、成層燃焼モードにおいては比較的、エンジン回転速度の低いときでもタンブル流Tの流速を十分に高くできるよう、TSCV32の開度は全開状態と全閉状態との中間で全開よりも全閉に近い状態とされる。
【0039】
一方、前記成層燃焼領域(S)以外はいわゆる均一燃焼領域(H)であり、ここでは、図4に示すように、インジェクタ20により主に気筒2の吸気行程で燃料を噴射させて、燃焼室6内で吸気と燃料とを十分に混合し、該燃焼室6全体に概ね均一な混合気を形成した上で燃焼させる(均一燃焼モード)。この均一燃焼モードでは、吸気行程にある低圧の気筒2内に燃料を噴射するので、燃圧は比較的低くてよく、このため、成層燃焼領域(S)との境界の付近では成層燃焼モードのときに比べて低圧になる。そして、そこからエンジン負荷やエンジン回転速度が高くなるに連れて燃圧は上昇する。
【0040】
また、均一燃焼領域(H)のうちの大部分の領域では混合気の空燃比を略理論空燃比(A/F≒14.7)とし、特に全負荷付近では理論空燃比よりもリッチな状態(例えばA/F=12〜14)になるように制御する。このため、スロットル弁28の開度は、成層燃焼領域(S)との境界の付近では成層燃焼モードのときに比べて小さくなる一方、そこからエンジン負荷やエンジン回転速度が高くなるに連れて大きくなり、全負荷域や最高速度域では全開とされる。さらに、TSCV32は基本的には均一燃焼領域(H)において常に全開とされる。
【0041】
ところで、前記のようにエンジン1を成層燃焼モードと均一燃焼モードとに切り替えて運転するようにした場合、その切り替え途中にはエンジン1は成層燃焼状態とすることになる。すなわち、燃焼モードの切替のためにスロットル弁28の開度を変更すると、気筒2の吸気充填量は過渡的に2つの燃焼モードの中間の状態になるのだが、この状態でエンジン1を均一燃焼モードにしたのではトルクが大きくなり過ぎるからである。
【0042】
より詳しくは、例えば、車両のアクセル開度が漸増して、エンジン1が成層燃焼領域(S)から均一燃焼領域(H)に移行する場合、図5に一例を示すように、まず、エンジン負荷或いはエンジン回転速度が2つの領域(S)、(H)の境界を超えたたとき(t=t1)、同図(d)に示すようにスロットル弁28を閉じ側に作動させる。これにより、同図(e)に示すように気筒2の吸気充填量が低下して、気筒2内の平均的な空燃比がリッチ側に変化するのだが、その際、吸気充填量の低下によるトルクの低下を抑えるために、燃料噴射量をやや多めにしているので(同図(c))、空燃比は速やかにリッチ側に変化する(同図(f))。
【0043】
そして、空燃比が、A/F=約18〜20くらいになれば(t=t2)、吸気充填量は十分に少なくなっていて、エンジン1を均一燃焼モードとすることも可能になるから、その時点で、同図(b)に示すようにインジェクタ20による燃料の噴射形態を吸気行程噴射に切り替える。但し、A/F=約16〜18くらいで均一燃焼状態にすると、NOxの生成量が多くなるので、同図(c)に示すように燃料噴射量を増量して空燃比を略理論空燃比になるようにし(同図(f))、そのことによるトルク変動は例えば点火時期のリタードによって吸収する。
【0044】
反対に、均一燃焼モードから成層燃焼モードへ切替えるときには、詳しい説明は省略するが、スロットル弁28を開く側に作動させるのと略同時に燃料の噴射形態を吸気行程噴射から圧縮行程噴射に切り替えて、エンジン1を成層燃焼状態で運転するようにする。
【0045】
つまり、2つの燃焼モード間の移行時にはエンジン1は概ね成層燃焼状態になるのだが、このときの気筒2の吸気充填量は、上述したように均一燃焼状態とするには多すぎるものの、一方で、良好な成層燃焼状態を実現するには不足する状態になる。すなわち、この実施形態のようにタンブル流Tを利用して混合気を成層化させるようにしたものでは、その適切な成層化のために必要なタンブル流Tの強さというものがあり、吸気充填量が少なくてタンブル流Tの弱いときには、このタンブル流Tによって燃料を気筒2の点火時期までに点火プラグ17周りに十分に輸送できないから、適切な混合気の成層化が行われなくなって、着火安定性が低下するのである。
【0046】
そこで、この実施形態では、本発明の特徴部分として、エンジン1の燃焼モードの移行時には前記のような吸気充填量の不足分を補うように、吸気の流速や燃料噴霧の貫徹力を増大させるようにしたものである。
【0047】
(燃焼モード切替え時のスロットル弁及び燃圧の制御)
以下に、まず、燃焼モードの切替えの際に燃圧の補正制御を行うようにした例について、ECU50によるスロットル弁28及び高圧供給ポンプ22の制御手順を図6のフローチャート図に基づいて説明する。尚、このフローチャートに示す制御手順はスロットル弁28の開度と燃圧のみに関するものであるが、これと並行してECU50により、上述の如きインジェクタ20や点火回路18等の制御が行われる。
【0048】
図示のフローにおいて、スタート後のステップSA1では、クランク角センサ9、カム角センサ16、エアフローセンサ27、アクセル開度センサ51、回転速度センサ52等からの出力信号を入力し、さらにECU50のRAMに一時的に記憶されているデータを読み込む。続いて、そのようにしてECU50のRAMから読み込んだモード移行フラグの状態に基づいて、ステップSA2においてエンジン1が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間を移行する過渡的な状態にあるかどうか判定する(燃焼モード移行時?)。この判定がNOであれば、エンジン1は成層燃焼モードか均一燃焼モードかのいずれかであるから、ステップSA3に進み、選択されている燃焼モードを実現すべく、エンジン1の運転状態に対応する所定の目標値になるように、スロットル弁28の開度及び燃圧の制御をそれぞれ実行する。
【0049】
尚、前記モード移行フラグの状態の判定は、ECU50のRAMにおいて逐次、更新されているモード移行フラグのオンオフ状態を読み込んで、判定するのであるが、このモード移行フラグは、エンジン1が図2に示すような制御マップ上で成層燃焼領域(S)と均一燃焼領域(H)との境界を超えたたとき、その後の所定時間、オン状態(すなわち、モード移行時)とされるものである。
【0050】
一方、前記ステップSA2において判定がYESであれば、ステップSA4に進んで、成層燃焼モードから均一燃焼モードへの移行かどうか判定する。この判定がYESであれば、ステップSA5に進んで、気筒2の吸気充填量が成層燃焼モードに見合うものから均一燃焼モードに見合うものまで減少するように、スロットル弁28の開度を減少させ、このスロットル開度の減少に対応するように、ステップSA6において燃圧を増大補正して、しかる後にリターンする。
【0051】
つまり、エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、スロットル弁28の開度の減少に応じて燃圧を上昇させ、これにより、吸気充填量の低下によるタンブル流Tの不足分を補うように燃料噴霧の貫徹力を高めるようにしている。
【0052】
また、その際、燃圧の補正量は気筒2内の燃料の気化し易さに応じて変更する。すなわち、一般に、燃料噴霧は気化する前の液滴の状態の方が空気流動の影響を受け難いから、気筒2内が燃料の気化し易い状態であるほど、タンブル流Tの強さ不足の影響が大きくなり、混合気形成が阻害されやすい。そこで、例えば、水温センサ11(検出手段)からの出力信号とエンジン1の運転状態とに基づいて気筒2内の温度状態を推定し、温度が高くて気化しやすいときほど、燃圧の増大補正量を大きくするようにしている。
【0053】
これに対し、前記ステップSA4における判定がNOで、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行であれば、ステップSA7に進み、今度は気筒2の吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものから成層燃焼状態に見合うものへと増大するように、スロットル弁28の開度を増大させる。続いて、ステップSA8において、スロットル弁28の開度の増大に応じて燃圧を減少させ、しかる後にリターンする。
【0054】
すなわち、エンジン1が均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときには、当初のスロットル開度が最も小さく、このときの吸気充填量の不足が最も大きいので、このときのタンブル流Tの強さ不足を補うように燃圧を一旦、大幅に増大補正する。そして、その後、スロットル弁28の開度が増大するのに応じて徐々に燃圧を低下させる。これにより、インジェクタ20からの燃料噴霧の貫徹力は、常に気筒2内のタンブル流Tの不足分を補うように調節される。
【0055】
前記図6のフローチャートに示すエンジン制御の手順は、ECU50のメモリに電子的に格納されているプログラムがCPUにより実行されることによって実現されるものであり、このことで、前記ECU50は、以下の発明の構成要件をソフトウエア的に備えている。すなわち、前記フローのステップSA5、ステップSA7によって、エンジン1が成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるようにスロットル弁28の開度を制御するとともに、エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行する過渡状態にあるときにときに前記スロットル弁28の開度を減少させる一方、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時にはスロットル開度を増大させる充填量制御手段50aが構成されている。
【0056】
また、ステップSA6、ステップSA8によって、エンジン1が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるときに、スロットル開度の減少に応じて燃圧が上昇するように、また、スロットル開度の増大に応じて燃圧が低下するように、それぞれ燃圧を制御して、気筒2の吸気充填量が少ないときほど燃料噴霧の貫徹力を増大させる貫徹力制御手段50bが構成されている。そして、前記貫徹力制御手段50bは、水温センサ11からの信号に基づいて、気筒2の温度状態が高くて燃料の気化し易いときほど、燃圧の補正量を大きくする、即ち、吸気充填量の変化に対する燃料噴霧貫徹力の変化の割合が大きくなるように燃圧の制御を行うものである。
【0057】
したがって、この実施形態に係る直噴エンジンの制御装置Aによると、前記の如く、エンジン1の燃焼モードの切替えの際に燃圧の補正制御を行うようにした場合、例えば、エンジン1が成層燃焼領域(S)から均一燃焼領域(H)に移行するときには、前記図5に示すように、まず、スロットル弁28が閉じ側に作動されて(t=t1)気筒2の吸気充填量が減少し、この吸気充填量が均一燃焼状態に見合うものとなったとき(t=t2)、燃料噴射形態が切り替えられる。
【0058】
すなわち、燃焼モードの移行途中(T1〜T2)に、エンジン1は気筒2の吸気充填量が少なくなってタンブル流Tの強さが不足する状態で、成層燃焼状態になるが、このときには、図7に示すように、スロットル弁28の開度の減少に応じて燃圧が増大補正され、このことで、吸気充填量の低下によるタンブル流Tの強さの不足を補うように、燃料噴霧の貫徹力が高められる。しかも、その際、気筒2の温度状態に応じて、当該気筒2内で燃料の気化し易いときほど燃圧の増大補正の度合いが大きくなる。これにより、気筒2内のタンブル流Tの強さが不足していても、当該気筒2の点火時期までに燃料噴霧を点火プラグ17周りに十分に輸送して、適切に成層化させることができ、これにより、エンジン1の着火安定性を確保できる。
【0059】
また、エンジン1が均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときにも、前記と同様に気筒2のタンブル流Tの強さが不足する状態で成層燃焼が行われることに対して、スロットル弁28の開度や気筒2の温度状態に応じて燃圧の補正制御が行われることで、過渡的なタンブル流Tの強さの不足を燃料噴霧貫徹力の増大によって補い、これにより所期の混合気形成を実現してエンジン1の着火安定性を確保することができる。
【0060】
(燃焼モード切替え時のスロットル弁及びTSCVの制御)
次に、燃焼モードの切替えの際に過渡的にTSCV32を閉じ側に作動させる場合について、ECU50によるスロットル弁28及びTSCV32の制御手順を図8に示すフローチャート図に基づいて説明する。尚、このフローチャートに示すスロットル弁28やTSCV32の制御と並行して、ECU50によりインジェクタ20や点火回路18等の制御が行われる。
【0061】
図示のフローにおいて、スタート後のステップSB1〜ステップSB4までは、図6に示すフローのステップSA1〜SA4までと同じ制御手順を実行し、このステップSB4において成層燃焼モードから均一燃焼モードへの移行であるYESと判定してステップSB5に進めば、前記フローのステップSA5と同じくスロットル弁28の開度を減少させる。続いて、ステップSB6において、スロットル弁28の開度の減少に対応するようにTSCV32の開度を徐々に減少させ、これにより吸気の流速を高めて、しかる後にリターンする。
【0062】
すなわち、エンジン1が成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときには、スロットル開度の減少による吸気充填量の減少に対応して、TSCV32を閉じ側に制御することにより吸気の流速を高めて、これにより気筒2内のタンブル流Tの強さを維持するようにしている。
【0063】
一方、前記ステップSB4において均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行であるNOと判定して、ステップSB7に進めば、前記図6のフローのステップSA7と同じくスロットル弁28の開度を増大させ、続くステップSB8において、前記スロットル弁28の開度の増大に対応するようにTSCV32の開度を徐々に増大させ、これにより吸気の流速を低下させて、しかる後にリターンする。
【0064】
すなわち、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時には最初のスロットル開度が最も小さく、このときの吸気充填量の不足が最も大きいので、このときのタンブル流Tの強さ不足を補うようにTSCV32を一旦、閉じ側に大きく作動させる。そして、その後、スロットル弁28の開度が増大するのに応じて徐々にTSCV32を開いていって、吸気充填量の変化による影響を打ち消すように吸気の流速を調節するのである。
【0065】
前記図7に示すフローのステップSB5、ステップSB7によって充填量制御手段50aが構成されている。また、ステップSB6、ステップSB8によって、エンジン1が成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、スロットル弁28が閉じられるときにはTSCV32を徐々に開く一方、スロットル弁28が開かれるときにはTSCV32を徐々に閉じて、気筒2の吸気充填量が少ないときほど吸気の流速が高くなるようにTSCV32の開度を制御する吸気流速制御手段50cが構成されている。
【0066】
尚、前記吸気流速制御手段50cは、水温センサ11からの信号に基づいて、気筒2内の燃料の気化し易さを検出し、燃料が気化し易いときほど、気筒2の吸気充填量の変化に対する吸気流速の変化の割合を大きくするようにするものとしてもよい。
【0067】
したがって、前記の如く、エンジン1の燃焼モードの切替えの際にTSCV32の開度を補正制御するようにした場合は、燃焼モードの移行途中に気筒2の吸気充填量が不足する状態になっても、その吸気充填量の不足分を補うように吸気の流速が高められ、これにより気筒2内のタンブル流Tの強さが所要のものに維持されるから、燃料噴霧を点火プラグ17周りに適切に成層化して、エンジン1の着火安定性を確保することができる。
【0068】
尚、本発明の構成はこの実施形態のものに限定されることはなく、その他の種々の構成をも包含するものである。一例を挙げれば、この実施形態では、インジェクタ20からの燃料噴霧の貫徹力を燃圧によって調節するようにしているが、これに限るものではなく、例えば、インジェクタ20の噴口付近に噴霧角の可変機構を設けて、噴霧角の変更によって貫徹力を調節するようにしてもよいし、或いは、燃料を複数回に分けて噴射することにより、噴霧の貫徹力を調節するようにしてもよい。
【0069】
また、この実施形態では、気筒2の吸気充填効率をスロットル弁28により調節するようにしているが、これに限らず、例えば、吸気弁の開閉作動タイミングを変更可能な可変動弁機構を設け、これにより吸気充填量を変更するようにしてもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明に係る直噴エンジンの制御装置によると、エンジンを成層燃焼モードと均一燃焼モードとに切替えるとともに、その成層燃焼モードでは気筒内の空気流動を利用して混合気の成層化を図るようにしたものにおいて、燃焼モードの切替えの際に気筒の吸気充填量が少ないときほど、燃料噴霧の貫徹力を大きくなるように制御することで、過渡的な空気流動の不足を貫徹力の増大によって補い、所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0071】
請求項2又は請求項3の発明によると、スロットル弁の開度に対応するように燃圧を変更することで、気筒内の空気流動の不足を補完するように燃料噴霧の貫徹力を高めることができ、これにより、気筒の吸気充填量の変化に依らず常に適切な混合気の成層化を実現して、請求項1の発明の効果を十分に得ることができる。
【0072】
請求項4の発明によると、燃料噴霧貫徹力の増大補正の度合いを燃料の気化し易いときほど大きくすることで、請求項1の発明の効果をより確実なものとすることができる。
【0073】
また、請求項5の発明に係る直噴エンジンの制御装置によると、前記請求項1の発明と同じ前提構成において、燃焼モードの切替えの際に、気筒の吸気充填量が少ないときほど吸気の流速を高めて、過渡的な空気流動の不足を解消することにより、所期の混合気形成を実現して着火安定性を確保することができる。
【0074】
請求項6の発明によると、スロットル弁の開度に対応するように吸気の流速を変更することで、吸気充填量の変化による影響を概ね打ち消して、気筒内の吸気流動の強さを維持することができ、これにより、常に適切な混合気の成層化を実現して、請求項5の発明の効果を十分に得ることができる。
【0075】
請求項7の発明によると、吸気流速の変更の度合いを燃料の気化し易いときほど、大きくすることで、請求項5の発明の効果をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る直噴エンジンの全体構成を示す図である。
【図2】エンジンを成層燃焼状態又は均一燃焼状態とする運転領域をそれぞれ設定した制御マップの一例を示す図である。
【図3】成層燃焼モードにおける層状混合気の形成過程を示す説明図である。
【図4】均一燃焼モードにおける均一混合気の形成過程を示す説明図である。
【図5】エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードに切り替わるときのタイムチャート図である。
【図6】燃焼モードの切替え時にスロットル開度に応じて燃圧を補正制御する手順のフローチャート図である。
【図7】燃焼モード切替え時の燃圧の変化を示すタイムチャート図である。
【図8】燃焼モードの切替え時にスロットル開度に応じてTSCV開度を補正するようにした場合の図6相当図である。
【符号の説明】
A 直噴エンジンの制御装置
T タンブル流(気筒内空気流動)
1 エンジン
2 気筒
6 燃焼室
11 水温センサ(検出手段)
17 点火プラグ
20 インジェクタ(燃料噴射弁)
22 高圧供給ポンプ(貫徹力調節手段)
28 スロットル弁(充填量調節手段)
32 TSCV(吸気流速調節手段)
50 ECU(エンジンコントロールユニット)
50a 充填量制御手段
50b 貫徹力制御手段
50c 吸気流速制御手段
Claims (7)
- 気筒内の燃焼室に燃料を直接、噴射する燃料噴射弁を備え、該燃料噴射弁による燃料の噴射形態を変更して、エンジンを成層燃焼モード又は均一燃焼モードのいずれかに切替えるとともに、その成層燃焼モードでは気筒内の空気流動を利用して混合気を点火プラグの電極周りに成層化させるようにした直噴エンジンの制御装置において、
前記燃料噴射弁による燃料噴霧の貫徹力を調節する貫徹力調節手段と、
前記気筒への吸気充填量を調節する充填量調節手段と、
エンジンが成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるように前記充填量調節手段を制御する充填量制御手段と、
エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、気筒の吸気充填量が少ないときほど燃料噴霧の貫徹力が大きくなるように前記貫徹力調節手段を制御する貫徹力制御手段と
を備えることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。 - 請求項1において、
充填量調節手段は、エンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁であり、
充填量制御手段は、エンジンが成層燃焼モードから均一燃焼モードへ移行するときに前記スロットル弁の開度を減少させるものであり、
貫徹力調節手段は、燃料噴射弁へ供給する燃料の燃圧を調節するものであり、
貫徹力制御手段は、前記スロットル弁の開度の減少に応じて燃圧が上昇するように前記貫徹力調節手段を制御するものであることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。 - 請求項1において、
充填量調節手段は、エンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁であり、
充填量制御手段は、エンジンが均一燃焼モードから成層燃焼モードへ移行するときに前記スロットル弁の開度を増大させるものであり、
貫徹力調節手段は、燃料噴射弁へ供給する燃料の燃圧を調節するものであり、
貫徹力制御手段は、前記スロットル弁の開度の増大に応じて燃圧が低下するように前記貫徹力調節手段を制御するものであることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。 - 請求項1において、
気筒内での燃料の気化し易さに関連する所定の物理量を検出する検出手段を備え、
貫徹力制御手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて、気筒の吸気充填量の変化に対する燃料噴霧貫徹力の変化の割合が燃料の気化し易いときほど大きくなるように貫徹力調節手段を制御するものであることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。 - 気筒内の燃焼室に燃料を直接、噴射する燃料噴射弁を備え、該燃料噴射弁による燃料の噴射形態を変更して、エンジンを成層燃焼モード又は均一燃焼モードのいずれかに切替えるとともに、その成層燃焼モードでは気筒内の空気流動を利用して混合気を点火プラグの電極周りに成層化させるようにした直噴エンジンの制御装置において、
前記気筒への吸気充填量を調節する充填量調節手段と、
前記気筒へ流入する吸気の流速を調節する吸気流速調節手段と、
エンジンが成層燃焼モードのときの吸気充填量が均一燃焼モードのときよりも多くなるように前記充填量調節手段を制御する充填量制御手段と、
エンジンが成層燃焼モードと均一燃焼モードとの間で移行する過渡状態にあるとき、気筒の吸気充填量が少ないときほど吸気の流速が高くなるように前記吸気流速調節手段を制御する吸気流速制御手段と
を備えることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。 - 請求項5において、
充填量調節手段は、エンジンの吸気通路に配設されてアクチュエータにより駆動されるスロットル弁であり、
充填量制御手段は、エンジンの成層燃焼モードから均一燃焼モードへの移行時には前記スロットル弁の開度を減少させる一方、均一燃焼モードから成層燃焼モードへの移行時には前記スロットル弁の開度を増大させるものであり、
前記スロットル弁よりも下流側の吸気通路には、アクチュエータにより駆動されて吸気の流れを絞る絞り弁が配設され、
吸気流速制御手段は、前記充填量制御手段の制御によって前記スロットル弁が閉じられるときには、前記絞り弁を開く側に作動させる一方、前記スロットル弁が開かれるときには、前記絞り弁を閉じ側に作動させるように構成されていることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。 - 請求項5において、
気筒内での燃料の気化し易さに関連する所定の物理量を検出する検出手段を備え、
吸気流速制御手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて、気筒の吸気充填量の変化に対する吸気流速の変化の割合が燃料の気化し易いときほど大きくなるように吸気流速調節手段を制御するものであることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
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JP2002229944A JP2004068720A (ja) | 2002-08-07 | 2002-08-07 | 直噴エンジンの制御装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008051075A (ja) * | 2006-08-28 | 2008-03-06 | Toyota Motor Corp | 筒内噴射式火花点火内燃機関 |
JP2008215267A (ja) * | 2007-03-06 | 2008-09-18 | Toyota Motor Corp | 筒内噴射式火花点火内燃機関の制御装置 |
US7726282B2 (en) | 2006-08-04 | 2010-06-01 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Direct injection spark ignition internal combustion engine and fuel injection method for same |
JP2014136981A (ja) * | 2013-01-15 | 2014-07-28 | Toyota Motor Corp | 内燃機関 |
-
2002
- 2002-08-07 JP JP2002229944A patent/JP2004068720A/ja active Pending
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