JP2004054439A - 顧客行動分析に基づくマーケティング戦略策定支援方法、装置、およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】事業目的を達成するためのマーケティング戦略策定の対象に関するシナリオを設定する。前記シナリオに基づき、対象期間、地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を対象商品を含む満たす代替商品群からなる全体選択肢集合の変化のシナリオを設定する。対象商品に対して購買または契約行動を取る可能性のある狭義対象顧客集合を設定する。全体選択肢集合のうち狭義対象顧客が購買または契約行動をとる可能性のある個別選択肢の集合を設定する。狭義対象顧客の選択行動モデルを推定し、個別選択肢を選択する確率を推定する。最後に、支払金額を推定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顧客行動分析に基づいたマーケティング戦略策定支援方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の顧客行動分析技術の一つに、離散選択分析が挙げられる。これは、顧客がその願望を満たすために購買を検討する商品群の中から一つを選択するメカニズムを、顧客の属性、商品群の属性、顧客と商品群を取り巻く環境の属性などを説明変数としてモデル化し、状況の変化(顧客の変化、商品群の変化、環境の変化など)に応じた顧客行動予測を行う技術である。
【0003】
この技術は設定シナリオ下における購買行動の予測や商品群の変化(新商品の参入、既存商品の属性の変化など)などに対する購買行動の感度分析を顧客単位から市場全体まで任意の単位で実施することを可能とするため、マーケティング戦略策定の基礎となる幅広い定量的情報を提供するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の技術には、以下に示すような実用上の幾つかの問題が存在した。
(1)固定電話の利用キャリアを決める際に携帯電話とのセット利用による割引を期待して携帯電話の利用キャリアに合わせるといった例のように、顧客がある商品とその代替商品とを比較評価する際にその基準とするのは必ずしもそれらの商品間の属性差とは限らず、それぞれの商品と補完的な関係にある商品間の属性差の場合もあるが、そのような状況に対応することはできなかった。
(2)ある顧客にとって固定電話と携帯電話は代替的な商品でありいずれか一方のみで用が足りるのに対して別の顧客にとってそれらは補完的な商品であり両方なくてはならないといった例のように、同じ商品群をどのように組合せて選択肢として捉えるかが顧客によって異なる場合があるが、そのような状況に対応することはできなかった。
(3)対象商品とその代替商品との間における顧客の選択行動をモデル化するに当たり、そもそも対象商品を選択肢と見なすことが可能な条件下にある顧客を対象期間における対象地域および対象商品の変化のシナリオに対応させつつ抽出する必要があるが、抽出条件の整理や定量的な情報に基づき推定する際の方法論は提案されていなかった。
(4)顧客にとっての選択肢の集合は個別に異なると同時に、対象期間における対象地域、対象商品、およびその代替商品の変化のシナリオに対応して変化すると考えるのが自然であるが、そのような状況に対応することができなかった。
(5)最適戦略の導出のための目的関数として各顧客の期待購買金額や期待総収益を設定するのが適切な場合があるが、従来のモデル適用法では各顧客の商品購買確率や顧客獲得数を設定していた。
【0005】
本発明の目的は、顧客がある商品と比較評価する商品が、それぞれの商品と補完的な関係にある場合に対応することができ、同じ商品群をどのように組合せて選択肢として捉えるかが顧客によって異なる場合にも対応することができ、抽出条件が整理され定量的な情報に基づき推定し、顧客にとっての選択肢の集合は個別に異なると同時に、対象期間における対象地域、対象商品、およびその代替商品の変化のシナリオに対応して変化する状況に対応することができ、最適戦略の導出のための目的関数として各顧客の商品購買確率や顧客獲得数に加えて各顧客の期待購買金額や期待総収益を設定する、マーケティング戦略策定支援方法、装置、およびソフトウェアを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のマーケティング戦略策定支援方法は次の7段階から構成される。
(1)マーケティング戦略策定シナリオ設定段階
事業目的を達成するためのマーケティング戦略策定の対象となる期間、地域、商品、顧客を入力装置から入力することにより設定し、また対象期間、対象地域における対象商品の販売条件の変化、対象顧客のデモグラフィック属性や集合の変化に関するシナリオを対象期間、対象地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を満たす、対象商品を含む代替商品群に関するあらゆる収集可能なデータを格納している商品データベースおよび対象顧客に関するあらゆる収集可能なデータを格納している顧客データベースに基づき欠落データは入力装置から入力することにより設定する。
(2)対象顧客の全体選択肢集合設定段階
対象期間、対象地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を満たす、対象商品を含む代替商品群からなる全体選択肢集合とその販売条件の変化に関するシナリオを、商品データベースおよび顧客データベースに基づき欠落データは入力装置から入力することにより設定する。
(3)狭義対象顧客集合設定・推定段階
対象顧客が対象商品との関係において物理制約条件(顧客が商品を購買または契約するに当たって受ける制約条件の一つであり、商品の販売条件に顧客のデモグラフィック属性が一致すること)を満たすか否か、すなわち対象商品を物理的に購買または契約可能であるか否か、および/または認知制約条件(顧客が商品を購買または契約するに当たって受ける制約条件の一つであり、商品の存在自体を顧客が認知していること)を満たすか否か、すなわち対象商品を認知しているか否かに関して、識者の意見を入力装置から入力することにより設定、あるいは顧客データベースの意識属性データという客観的な情報に基づき推定することにより、対象顧客の集合のうち物理制約条件および/または認知制約条件を満たし対象商品に対して購買または契約行動を取る可能性のある層である狭義対象顧客の集合を設定あるいは推定する。
(4)狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定段階
狭義対象顧客が全体選択肢集合の各要素商品との関係において物理制約条件および/または認知制約条件を満たすか否かに関して、識者の意見を入力装置から入力することにより設定、あるいは顧客データベースの意識属性データという客観的な情報に基づき推定することにより、全体選択肢集合のうち狭義対象顧客がその購買または契約行動を取る可能性のある個別選択肢の集合を設定あるいは推定する。
(5)狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階
個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素を比較評価し、いずれかの要素商品を選択するような行動のモデルを構築し、この選択行動モデルを顧客データベースのデモ不グラフィック属性データ、および/または意識属性データという客観的な情報に基づき推定する。
(6)狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階
狭義対象顧客の選択行動モデルに、前記マーケティング戦略策定シナリオ設定段階および前記対象顧客全体選択肢集合設定段階において設定した全体選択肢集合の販売条件の変化、対象顧客のデモグラフィック属性や集合の変化に関するシナリオを入力することにより、個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素商品を選択する確率、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である集計期待需要を推定する。
(7)狭義対象顧客個別選択肢期待支払金額推定段階
個々の狭義対象顧客が前記狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階において推定した確率に基づきその個別選択肢集合の各要素商品を購買または契約したときに期待される支払金額、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である期待収益−推定する。
【0007】
本発明は、対象商品およびその代替商品として、あるいは全体選択肢集合の要素として、単一商品だけでなく商品の組合せをも設定すること、またその組合せのタイプとしては、1)組合せて購買(または契約)することにより初めて目的が達成されるような補完的な商品同士の組合せの場合と、2)単独で購買(または契約)しても目的は達成されるため補完的とは言えないがそれでも組合せて購買(または契約)する顧客がいるような非補完的(どちらかと言えば代替的)な商品同士の組合せの場合との2通りを許容することを主要な特徴とする。
【0008】
まず、補完的な商品同士の組合せを選択肢として設定することにより、組合された全ての単一商品の属性を顧客の選択行動モデルの説明変数として設定することになり、選択肢間の比較評価基準が各選択肢を構成するどの商品の属性であっても対応することが可能となる。また、同一の商品組合せに対して代替的と認識する顧客と補完的と認識する顧客とが存在する場合に、商品組合せとそれを構成する単一商品との全てを全体選択肢として選択行動モデルのツリー構造の葉ノードに配置し、顧客毎に認識する選択肢に到達するリンクおよびノードのみを残すことにより、これらの顧客を同一モデルで扱うことが可能となる。
【0009】
また、本発明は、対象顧客が全体選択肢集合の要素である対象商品およびその代替商品との関係において物理制約条件および認知制約条件を満たすか否かに関する識者の定性的な意見、あるいはRP(Revealed Preferences)データ、SP(Stated Preferences)データなどの定量的な情報に基づき、個々の対象顧客が対象商品を選択肢とする狭義対象顧客であるか否か、また狭義対象顧客の場合その個別選択肢集合はどのように形成されているかを対象期間における対象地域、対象商品、およびその代替商品の変化のシナリオに対応させつつ設定あるいは推定することを主要な特徴とする。
【0010】
狭義対象顧客およびその個別選択肢集合を設定あるいは推定するに当たっての条件を明確化しており、また個々の対象顧客がその条件を満たすか否かの判定を固定的に行うのではなく各対象時点における対象地域、対象商品、およびその代替商品などの周囲状況に応じて変動的に行い、特に定量的な情報に基づき推定する際には対象顧客が対象商品およびその代替商品を選択肢と見なすか否かに関する二項選択行動のモデルの説明変数としてそれらの商品の属性を設定することによりそれを実現している。
【0011】
本発明は、対象顧客が対象商品を選択肢として見なすことが可能な条件下にある狭義対象顧客であるか否か、仮に狭義対象顧客であった場合にその個別選択肢集合のラインアップ、および狭義対象顧客が実際に購買する個別選択肢が、対象顧客の属性、個別選択肢集合の元である全体選択肢集合の属性、およびそれらを取り巻く環境の属性に依存するようなメカニズムをモデルに取り入れているため、顧客の商品購買行動という顧客を取り巻く時期、地域、商品選択肢などの状況に対する依存度が高く不安定に変化する対象を、よりリアルにモデル化することが可能である。
【0012】
また、本発明は、対象商品とその代替商品から構成される全体選択肢集合、およびそれから抽出される各狭義対象顧客の個別選択肢集合の要素として、単一商品だけでなくその組合せをも許容するようなメカニズムをモデルに取り入れているため、補完的な商品同士の組合せをまとめて一つの選択肢と見なすような顧客、または他の顧客にとっては代替的な商品同士の組合せをまとめて一つの選択肢と見なすような顧客が存在するような状況をもモデル化することが可能である。
【0013】
また、本発明は、最適戦略の導出のための目的関数として、各顧客の商品購買確率や顧客獲得数だけでなく、それらを金額に換算した各顧客の期待購買金額や期待総収益をも設定することを主要な特徴とする。
【0014】
多様な目的関数の中から事業目的に適したものを選択することにより、より幅広いマーケティング戦略の策定を支援できることである。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態のマーケティング戦略策定支援装置のブロック図である。
【0016】
本実施形態のマーケティング戦略策定支援装置はデータベース管理装置1と主制御部2と入力装置3と出力装置4と入出力制御装置5で構成されている。
データベース管理装置1は商品データベース11と顧客データベース12を含む。
【0017】
商品データベース11は、全体選択肢集合の全要素商品に関するあらゆる収集可能なデータを格納している。商品に関するデータとは、各商品を定義する属性に関する履歴値、予定値、予見値、予想値を指す。商品属性とは商品名および各種販売条件を指す。販売条件とは例えば、販売期間、販売地域、販売制約、価格、品質、機能、性能、サポート体制などを指す。
【0018】
顧客データベース12は対象顧客に関するあらゆる収集可能なデータを格納している。顧客に関するデータとは、顧客単位のデモグラフィック属性(人口動態属性)に関する履歴値、予見値、予想値と、行動属性に関する履歴値と、意識属性に関する市場調査データに基づく推定値を指す。デモグラフィック属性とは例えば、性別、年齢、職業、家族構成など、客観的に判別するのが容易な顧客の特徴のことを言う。行動属性とは、全体選択肢集合に対して顧客が実際に取った購買または契約行動のことを言う。意識属性とは、全体選択肢集合に対して顧客が行動という形で顕在化していないが潜在的に有している意識のことを言う。
【0019】
主制御部2はマーケティング戦略策定シナリオ設定部21と対象顧客全体選択肢集合設定部22と狭義対象顧客集合設定・推定部23と狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定部24と狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定部25と狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部26と狭義対象顧客個別選択肢期待支払金額推定部27を含む。
【0020】
入力装置3は主制御部2に各種データを入力するための装置である。出力装置4は主制御部2に入力されたデータを表示したり、主制御部2における処理結果を表示する装置である。入出力制御部5は入力装置3、出力装置4と主制御部2間のインタフェースをとる装置である。
【0021】
マーケティング戦略策定シナリオ設定部21は事業目的を達成するためのマーケティング戦略策定の対象となる期間、地域、商品、顧客を入力装置3から入力することにより設定し、また対象期間、対象地域における対象商品の販売条件の変化、対象顧客のデモグラフィック属性や集合の変化に関するシナリオを商品データベース11および顧客データベース12に基づき欠落データは入力装置3から入力することにより設定する。
【0022】
対象顧客全体選択肢集合設定部22は対象期間、対象地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を満たす、対象商品を含む複数の代替商品からなる全体選択肢集合とその販売条件の変化に関するシナリオを、商品データベース11および顧客データベース12に基づき欠落データは入力装置3から入力することにより設定する。
【0023】
狭義対象顧客集合設定・推定部23は対象顧客が対象商品との関係において物理的条件を満たすか否か、すなわち対象商品を物理的に購買または契約可能であるか否か、および/または認知制約条件を満たすか否か、すなわち対象商品を認知しているか否かに関して、識者の意見を入力装置3から入力することにより設定、あるいは顧客データベース12との意識属性データベースという客観的な情報に基づき推定することにより、対象集合のうち物理制約条件および/または認知制約条件を満たし対象商品に対して購買または契約行動を取る可能性のある層である狭義対象顧客の集合を対象顧客集合の中から設定あるいは推定する。
【0024】
狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定部24は狭義対象顧客が全体選択肢集合の各要素商品との関係において前記物理制約条件および/または前記認知制約条件を満たすか否かに関して、識者の意見を入力装置3から入力することにより設定、あるいは顧客データベース12との意識属性データベースという客観的な情報に基づき推定することにより、全体選択肢集合のうち狭義対象顧客が購買または契約行動を取る可能性のある個別選択肢の集合を設定あるいは推定する。
【0025】
狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定部25は個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素商品を比較評価し、いずれかの要素商品を選択するような行動のモデルを構築し、この選択行動モデルを顧客データベース12、デモグラフィック属性データ、行動属性データ、および/または意識属性データという客観的な情報に基づき推定する。
【0026】
狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部26は狭義対象顧客の選択行動モデルに、マーケティング戦略策定シナリオ設定部21および対象顧客全体選択肢集合設定部22で設定された全体選択肢集合の販売条件の変化、対象顧客デモグラフィック属性や集合の変化に関するシナリオを入力することにより、個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素商品を選択する確率、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である期待需要を推定する。
【0027】
狭義対象顧客個別選択肢期待収益推定部27は個々の狭義対象顧客が狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部26で推定した確率に基づきその個別選択肢集合の各要素商品を購買または契約したときに期待される支払金額、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である期待収益を推定する。
【0028】
図2は本マーケティング戦略策定支援装置の利用法の概要を説明するものである。
【0029】
「狭義対象顧客の推定法」においては、対象商品に対して需要を発生し得る顧客層である狭義対象顧客の集合を狭義対象顧客集合設定・推定部23を用いて推定する。
【0030】
「対象顧客への対象商品の勧奨・広告方法の最適化法」においては、対象商品と対象顧客の双方が所与として対象商品の勧奨あるいは広告掲示の際に対象顧客あるいは対象顧客セグメントに対して強調すべき商品属性を狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定部24を用いて抽出する。
【0031】
「対象商品の標的顧客の抽出法」においては、対象商品が所与としてその購買確率あるいは期待購買金額が高い標的とするのに適した顧客を狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部26あるいは狭義対象顧客個別選択肢期待収益推定部27を用いて抽出する。
【0032】
「対象顧客への勧奨商品の抽出法」においては、対象商品が複数存在するとして対照顧客毎にその購買確率あるいは期待購買金額が高い勧奨するのに適した商品を狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部26あるいは狭義対象顧客個別選択肢期待収益推定部27を用いて抽出する。
【0033】
「対象商品の仕様の最適化法」において、任意の市場セグメント(個々の顧客から市場全体まで)における需要あるいは収益を最大化するような対象商品の属性値の最適組合せを狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部26あるいは狭義対象顧客個別選択肢期待収益推定部27を用いて推定する。
【0034】
次に、上記の流れにしたがって個人のユーザ向けインターネットアクセス回線のマーケティング戦略を策定する手順を示す。
【0035】
まず、マーケティング戦略策定シナリオ設定部21を用いて、対象機関を今後1年間、対象地域を東京23区、対象商品をA社のADSLサービス、対象顧客を今後1年間の任意の時点において東京23区内に居住することが推定される全ての世帯に設定する。
【0036】
ここで、対象期間における対象商品、対象地域、および対象顧客の変化について例示する。
【0037】
対象期間において対象商品が変化する例としては、対象期間開始時点における主力商品がADSLのみであるのに対して、対象期間中に光ファイバの提供を開始し主力商品を充実させるような、対象商品群のラインアップを変更する例、対象商品群の一つであるADSLの月額利用料を対象期間中に値下げするような、対象商品の提供条件を変更する例などがある。
【0038】
対象期間において対象地域が変化する例としては、対象期間中に対象商品であるADSLの提供地域を対象期間開始時点における東京都23区から東京都内全域に拡大するような、対象商品に関する変更に伴い対象地域を変更する例、対象期間中に東京と23区内の一部地域においてADSLの競合商品である無線の提供が開始されるのに伴い対象地域をADSLと無線の競合する地域に絞るような、競合承認に関する変更に伴い競合地域が変更された結果、対象地域の変更を余儀なくされる例などがある。
【0039】
対象期間において対象顧客が変化する例としては、対象期間中にADSLの提供地域を東京都23区から東京都内全域に拡大するのに伴い対象顧客が東京都23区民から東京都民全体に増加するような、対象地域の変化に伴いその地域を購買・契約行動基盤とする対象顧客の集合が変化する例、ADSLの提供地域である東京都23区において人口の流出入が発生する、あるいは対象期間中に新たに無線の提供が開始されることにより住民のADSLに対する意識が変化するような、対象地域が変化しないにも関わらずその地域を購買・契約行動基盤とする対象顧客が変化する例などがある。
【0040】
ADSLサービスは高速のインターネットアクセスを享受したいという顧客願望を満たすものであると考えられるため、対象顧客全体選択肢集合設定部22を用いて、今後1年間に東京23区内においてA社を含む競合各社が提供することが想定され、かつ個人ユーザ向けの高速アクセス回線に分類されるADSLサービス、光ファイバサービス、IMT―2000サービス、およびその組合せからなる集合(A社のADSLサービスを含む)を全体選択肢集合として設定する。
【0041】
いま単一サービスとしては、
[A社のADSL、A社の光ファイバ、A社のIMT―2000、B社の光ファ イバ、C社のADSL、C社のIMT―2000]
の6サービスが存在するものとし、またADSLサービス(2社提供)とIMT―2000サービス(2社提供)あるいは光ファイバサービス(2社提供)とIMT―2000サービス(2社提供)の2×2+2×2=8パターンに関しては組合せて契約される可能性を考慮すると、全体選択肢集合は下記の14要素から構成されるものとして設定できる。
【0042】
[A社のADSL、A社の光ファイバ、A社のIMT―2000、B社の光ファ イバ、C社のADSL、C社のIMT―2000、A社のADSLとIMT―2000、A社のADSLとC社のIMT―2000A社の光ファイバとIMT―2000、A社の光ファイバとC社のIMT―2000、A社のIMT―2000とB社の光ファイバ、A社のIMT―2000とC社のADSL、B社の光 ファイバとC社のIMT―2000、C社のADSLとIMT―2000]
ここで、戦略策定の対象商品はA社のADSLサービスであるから、そもそもこのサービスとの関係において物理制約条件と認知制約条件を満たし需要を発生し得る顧客層以外は詳細に分析する必要はない。そこで狭義対象顧客集合設定・推定部3を用いてA社のADSLサービスの狭義対象顧客を推定する。
【0043】
まず、個々の対象顧客がA社のADSLサービスに対する需要を発生し得るか否かの二項選択行動を、行動主体である対象顧客の属性、行動客体であるA社のADSLサービスの属性、およびそれらを取り巻く環境の属性を説明変数、行動結果を被説明変数としてモデル化し、回帰分析、判別分析、数量化I類、II類、相関分析、関連分析、コンジョイント分析、離散選択分析など多様な方法論のうち目的および収集データに適したものを用いてパラメータを推定し、推定されたモデルに逆に説明変数の設定値を入力することにより各対象顧客の二項選択行動(確率的モデルの場合は採用確率、確定的モデルの場合は採用如何)を出力として得る。例えば、ある属性を持つ対象顧客が、ある属性を持つ環境の影響を受けて、A社のADSLサービスを個別選択肢とする、あるいはその確率が0.9であるといった判断が可能となり、全ての対象顧客が狭義対象顧客と非狭義対象顧客とに振り分けられる。ここで、「行動客体であるA社のADSLサービスの属性」は二項選択行動モデルの説明変数である対象商品の属性に該当する。
【0044】
ADSLの例で言うと、物理制約条件とはADSLの利用が可能な居住条件にあること、認知制約条件とはADSLを認知していることである。
【0045】
これらの2条件のうち設定あるいは推定可能なものについて、個々の対象顧客が条件を満たすか否かあるいは条件を満たす確率を設定あるいは推定し、その積をとることによりADSLに対する需要を発生し得る狭義対象顧客であるか否かは狭義対象顧客である確率を設定あるいは推定する。
【0046】
識者の定性的な意見に基づき狭義対象顧客を設定するような場合、個々の対象顧客が認知制約条件を満たすか否かあるいは条件を満たす確率を設定することは困難であるから、物理制約条件のみを考慮する。このとき、個々の対象顧客がADSLの利用が可能な居住条件にあることという物理制約条件を満たすか否かあるいは条件を満たす確率が、そのまま個々の対象顧客がADSLに対する需要を発生し得る狭義対象顧客であるか否かあるいは狭義対象顧客である確率となる。
【0047】
また、SPデータのような定量的な情報に基づき狭義対象顧客を推定するような場合、個々の対象顧客が物理制約条件と認知制約条件を満たすか否かあるいは条件を満たす確率に関する情報を収集することが可能であるから、2条件ともに考慮する。このとき、個々の対象顧客が物理制約条件を満たすか否かに関する推定結果と認知制約条件を満たすか否かに関する推定結果の積をとることによりADSLに対する需要を発生し得る狭義対象顧客であるか否かを推定する。あるいは個々の対象顧客が物理制約条件を満たす推定確率と認知制約条件を満たす推定確率の積をとることによりADSLに対する需要を発生し得る狭義対象顧客である確率を推定する。
【0048】
次に、狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定部24を用いて、前記の全体選択肢集合の互いに異なる部分集合である各狭義対象顧客の個別選択肢集合を推定する。
【0049】
まず、個々の狭義対象顧客が全体選択肢集合の各要素を個別選択肢として採用するか否かの二項選択行動を、行動主体である狭義対象顧客の属性、行動客体である全体選択肢の属性、およびそれらを取り巻く環境の属性を説明変数、行動結果を被説明変数としてモデル化し(図3参照)、回帰分析、判別分析、数量化I類、II類、相関分析、関連分析、コンジョイント分析、離散選択分析など多様な方法論のうち目的および収集データに適したものを用いてパラメータを推定し、推定されたモデルに逆に説明変数の設定値を入力することにより各狭義対象顧客の二項選択行動(確率的モデルの場合は採用確率、確定的モデルの場合は採用如何)を出力として得る。
【0050】
まず、対象顧客(例えば東京と23区の住民)が全体選択肢集合の各要素商品との関係において物理制約条件を満たすか否かおよび認知制約条件を満たすか否かに関する二項選択行動データを収集し、このデータに基づき顧客の物理制約条件に関する二項選択行動モデルおよび認知制約条件に関する二項選択行動モデルを推定する。このモデルの説明変数は対象顧客の属性、全体選択肢集合の全要素商品の属性、およびそれらを取り巻く環境の属性である。また、モデルの推定法は回帰分析、判別分析、数量化I類、II類、関連分析、コンジョイント分析、離散選択分析などである。
【0051】
次に、このモデルに個々の狭義対象顧客(例えば東京と23区の住民のうち狭義対象顧客と推定された住民)の属性、全体選択肢集合の各要素商品の属性、およびそれらを取り巻く環境の属性を入力することにより、出力として個々の狭義対象顧客が全体選択肢集合の各要素商品との関係において物理制約条件を満たすか否かあるいは条件を満たす確率、および認知制約条件を満たすか否かあるいは条件を満たす確率を得る。物理制約条件を満たすか否かに関する0−1変数と認知制約条件を満たすか否かに関する0−1変数との積をとることにより、その狭義対象顧客がその要素商品を自らの個別選択肢とするか否かを推定することができる。また、物理制約条件を満たす確率と認知制約条件を満たす確率との積をとることにより、その狭義対象顧客がその要素商品を自らの個別選択肢とする確率を推定することができる。
【0052】
例えば、ある属性を持つ狭義対象顧客が、ある属性と持つ環境の影響を受けて、全体選択肢集合のA社のADSLサービスを除く13要素に対して(対象商品であるA社のADSLサービスに関して狭義対象顧客集合の設定・推定部3において推定済みなため、本機能で改めて推定は行わない)、下記に示すような個別選択肢としての採用如何に関する判断を下すことが推定される。
【0053】
A社のADSL 採用確率0.9|採用
A社の光ファイバ 採用確率0.2|不採用
A社のIMT―2000 採用確率0.6|採用
B社の光ファイバ 採用確率0.4|不採用
C社のADSL 採用確率0.7|採用
C社のIMT―2000 採用確率0.7|採用
A社のADSLとIMT―2000 採用確率0.5|採用
A社とADSLとC社のIMT―2000 採用確率0.6|採用
A社の光ファイバとIMT―2000 採用確率0.1|不採用
A社の光ファイバとC社のIMT―2000 採用確率0.1|不採用
A社のIMT―2000とB社の光ファイバ 採用確率0.2|不採用
A社のIMT―2000とC社のADSL 採用確率0.4|不採用
B社の光ファイバとC社のIMT―2000 採用確率0.3|不採用
C社のADSLとIMT―2000 採用確率0.5|採用
上記のような二項選択行動の推定結果により、この狭義対象顧客の個別選択肢集合は
[A社のADSL、A社のIMT―2000、C社のADSL、C社のIMT―2000、A社のADSLとIMT―2000、A社のADSLとC社のIM T―2000、C社のADSLとIMT―2000]
の7要素から構成されることを推定できる。
【0054】
また、13ものサービス組合せに対する各対象顧客の二項選択行動データを収集することが困難な場合、単一サービスに関してのみ収集したデータに基づき推定を行う。上記で例に挙げた狭義対象顧客の場合、A社のADSLを除く5ヶの単一サービスに対する個別選択肢としての採用如何は下記の通りであり、
A社のADSL 採用確率0.9|採用
A社の光ファイバ 採用確率0.2|不採用
A社のIMT―2000 採用確率0.6|採用
B社の光ファイバ 採用確率0.4|不採用
C社のADSL 採用確率0.7|採用
C社のIMT―2000 採用確率0.7|採用
その結果として複数のサービスの組合せに対する個別選択肢としての採用如何は、上記の単一サービスに対する採用確率あるいは採用如何の掛け算で表され下記の通りとなる。
【0055】
A社のADSLとIMT―2000 採用確率0.54|採用
A社のADSLとC社のIMT―2000 採用確率0.63|採用
A社の光ファイバとIMT―2000 採用確率0.12|不採用
A社の光ファイバとC社のIMT―2000 採用確率0.14|不採用
A社のIMT―2000とB社の光ファイバ 採用確率0.24|不採用
A社のIMT―2000とC社のADSL 採用確率0.42|採用
B社の光ファイバとC社のIMT―2000 採用確率0.28|不採用
C社のADSLとIMT―2000 採用確率0.49|採用
ここで、A社のIMT―2000とC社のADSLの組合わせやC社のADSLとIMT―2000の組合せに見られるように、確率的モデルに基づく推定では採用確率が0.5を下回り不採用と判定されるのに対して確定的モデルに基づく推定では採用と判定されるような、適用モデルによって推定結果が異なる場合がある。
【0056】
次に、狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定部25を用いて、全体選択肢集合のラインアップやその各要素の属性値に依存して個々の狭義対象顧客の多項選択行動結果がどのように変化するかを推定する。ここでは対象商品であるA社のADSLを個別選択肢として採用するような狭義対象顧客のみをモデル化の対象とする。したがって、前記で例に挙げた対象顧客はモデル化の対象となる。ただし、対象顧客の個別選択肢の採用如何に関する二項選択行動も対象時点、対象商品およびその代替商品から構成される全体選択肢集合などの周囲状況に関する設定条件により異なるため、この顧客が恒常的にモデル化の対象となるわけではない。
【0057】
個々の狭義対象顧客がいずれの個別選択肢を契約するかという多項選択行動を、狭義対象顧客集合設定・推定部23および狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定部24における二項選択行動の推定の場合と同様に、行動主体である狭義対象顧客の属性、行動客体である個別選択肢集合の属性、およびそれらを取り巻く環境の属性を説明変数、行動結果を被説明変数としてモデル化し、回帰分析、判別分析、数量化I類、II類、相関分析、関連分析、コンジョイント分析、離散選択分析など多様な方法論のうち目的および収集データに適したものを用いてパラメータを推定する。
【0058】
このとき構築するモデルは、必ずしも全ての個別選択肢を同列に並べ比較評価するというような単純なものとは限らない。必要に応じて二段階以上の選択行動過程からなるような複雑なメカニズムも扱う。例えば、図4にあるように狭義対象顧客が全体選択肢集合の14ヶのサービスを目の前にしたときに、まず固定サービスのみを利用するか移動体サービスのみを利用するかそれとも固定サービスと移動体サービスの双方を利用するかというように利用形態同士を比較評価し、その後に利用形態の下位概念である個人ユーザ向けの高速アクセス回線(固定サービスの下位概念はADSLまたは光ファイバ、移動体サービスの下位概念はIMT ―2000、固定サービスと移動体サービスの下位概念はADSLとIMT―2000または光ファイバとIMT―2000)同士を比較評価し、最後に個人ユーザ向けの高速アクセス回線の更なる下位概念である具体的な各社サービス同士を比較評価するというような三段階の選択行動過程からなるモデルを構築する。このような場合のパラメータ推定法は、基本的に上記の単純なモデルの場合と同じであるが、説明変数として多段階の選択行動過程の各段階における選択肢(最終的な選択肢である全体購買選択肢、あるいはその上位概念)の属性を設定し、被説明変数として各段階における行動結果を設定する。
【0059】
狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定部24を用いて狭義対象顧客毎にその個別選択肢集合を推定したが、このように各狭義対象顧客が全体選択肢集合の互いに異なる部分集合を個別選択肢集合とするような場合には、全体選択肢を葉ノードに配置したツリーを全ての狭義対象顧客に共通するモデルとして構築し、パラメータを推定する。このとき、各狭義対象顧客の選択行動過程は、この共通的なツリーの一部リンクおよびノードを削除したモデルにより表現される必要がある(図5参照)。
【0060】
狭義対象顧客の選択行動モデルは、最終的な選択単位である葉ノードにたどりつくまでに二段階以上の選択行動過程を必要とするような場合には根ノードと葉ノードの間に中間ノードが配置され、各中間ノードはそれよりも一段階下に位置しそれに直接リンクしているノードをまとめて表現した上位概念に該当する。ツリー構造の根ノードあるいは中間ノードにおける狭義対象顧客の選択行動を行動主体である狭義対象顧客の属性、行動客体である選択肢、すなわち葉ノードにより表現される個別選択肢あるいは中間ノードにより表現される個別選択肢の上位概念の属性、および狭義対象顧客と各ノードにおける選択肢を取り巻く環境の属性を説明変数としてモデル化し、そのパラメータを推定する。構築および推定される狭義対象顧客の選択行動モデルは、ツリー構造の根ノードあるいは中間ノード毎にそれよりも一段階下に位置し、それに直接リンクしているノードである選択肢のそれぞれを選択する確率を被説明変数とする確率的モデルを適用する場合と、選択するか否かの0−1変数または選択肢番号を被説明変数とする確定的モデルを適用する場合を含む。構築および推定される狭義対象顧客の選択行動モデルは、ツリー構造の根ノードあるいは中間ノードにおける狭義対象顧客の選択行動の説明変数としてそのノードよりも一段階下に位置し、それに直接リンクしているノードである選択肢の属性を採用している。構築および推定される狭義対象顧客の選択行動モデルは、そのツリー構造とノードの双方あるいはいずれか一方に関して狭義対象顧客間で異なる場合があるが、同じノードが同じ位置関係で配置された同じツリー構造の一部、すなわち一部のリンクおよびノードを削除したものを選択行動モデルとすることを条件に狭義対象顧客をセグメンテーションし、各セグメントにおいては所属する各狭義対象顧客の個別ツリー構造の元となるセグメント別ツリー構造を共通的なモデルとして構築および推定する。
【0061】
狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部26を用いて、狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定部25を用いて推定された狭義対象顧客の選択行動モデルに説明変数の設定値を入力することにより個々の狭義対象顧客の多項選択行動(確率的モデルの場合は各個別購買選択肢の購買確率、確定的モデルの場合は購買する個別購買選択肢)を出力として得る。前記で例に挙げた狭義対象顧客の場合、推定結果は下記のような形で得られる。
【0062】
A社のADSL 購買確率0.3|購買
A社のIMT―2000 購買確率0.1|不購買
C社のADSL 購買確率0.1|不購買
C社のIMT―2000 購買確率0.1|不購買
A社のADSLとIMT―2000 購買確率0.2|不購買
A社のADSLとC社のIMT―2000 購買確率0.1|不購買
C社のADSLとIMT―2000 購買確率0.1|不購買
ここで、確率的モデルの場合は個別選択肢集合の各要素の購買確率を合計すると1となり、確定的モデルの場合は1ヶの要素のみ購買となり残り全ての要素は不購買となる。
【0063】
また、必ずしも個々の狭義対象顧客単位でのみその購買確率(顧客別期待需要)を推定するとは限らず、必要に応じて任意の顧客セグメントにおいて集計を行い、セグメント別期待需要を推定する場合もある。主な集計法は、確率的モデルの基づき推定された購買確率を集計するかあるいは確定的モデルに基づき推定された購買如何を集計するかによって2分類、そのうち前者に関しては実際に集計を行うかあるいは着目している顧客セグメントにおける平均的な属性を持つ顧客の購買確率をそのセグメントにおけるシェアと見なしてそれをセグメントのサイズと掛け合わせることで集計を行ったものとするかによってさらに2分類することができ、計3パターンが考えられる。
【0064】
まず、購買確率を実際に集計していくパターンについてであるが、対象顧客集合である東京23区内居住する全ての世帯のうち、例えば特に新宿区についてのみ期待需要を推定したい場合には、新宿区に居住する全ての世帯のうち対象商品であるA社のADSLを個別選択肢とする狭義対象顧客に該当する世帯に関してプロファイリング(モデルの説明変数として取り入れる全ての属性値の設定)を行い、またその各世帯の個別選択肢集合の推定とその属性値の設定を行い、さらにその各世帯とその個別選択肢集合を取り巻く環境の属性値の設定を行った上で、各世帯が各個別選択肢を選択する確率を推定し、これを集計する。
【0065】
平均的な属性を持つ顧客の購買確率を用いるパターンの場合は、新宿区に居住する狭義対象顧客の中で平均的と思われる世帯のプロファイリングを行い、その世帯の個別選択肢集合およびその属性値の設定を行い、また環境の設定を行った上で、その平均的な世帯が各個別選択肢を選択する確率を推定し、これに新宿区に居住する狭義対象顧客の世帯数を掛け合わせる。
【0066】
また、購買如何を実際に集計していくパターンの場合は、一つ目のパターンにおける購買確率を、そのまま購買如何を意味する0―1変数に置き換えるだけである。
【0067】
狭義対象顧客個別選択肢期待収益推定部27を用いて、狭義対象顧客個別選択肢選択確定推定部26を用いて購買確率(期待需要)を推定した際にその前提となった商品価格を掛け合わせることにより期待購買金額を推定する。このとき顧客間において差別的なプライシングが行われている場合があるため、必ずしも全ての狭義対象顧客の購買確率に同価格を掛け合わせるとは限らない。例えばADSLのような定額制サービスの場合、月額費用に顧客間の差は存在しないが、工事費などの初期費用を考えると居住条件などによってバラツキが出てくる。ただしこのような顧客間の差を考慮した上で期待購買金額の推定を行うには、価格差に影響を及ぼすような顧客属性もプロファイリングに含まれている必要がある。
【0068】
以上のマーケティング戦略策定支援システムを用いてマーケティング戦略策定を支援する方法は以下に示す通りである。
【0069】
まず、対象商品の狭義対象顧客集合を推定する方法であるが、対象顧客集合である東京23区に居住する全ての世帯に関して、対象商品であるA社のADSLを個別選択肢として採用するか否かに関する二項選択行動を推定し、採用確率が0.5以上あるいは採用すると推定された世帯を狭義対象顧客として抽出する。
【0070】
次に、狭義対象顧客への対象商品の勧奨・広告方法を最適化する方法であるが、期待需要や期待収益を最大化したい狭義対象顧客セグメント毎に、その推定された選択行動モデルのパラメータや検定値に基づき、対象商品の各種属性の中から最大化目的関数に及ぼす影響がプラス方向に大きい属性を抽出する。すなわち狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定部25による選択行動モデルの構築、および説明変数の係数であるパラメータ推定を行い、狭義対象顧客の選択行動モデル説明変数である対象商品とその代替商品との属性差に、該属性差がその選択行動に与える影響度として推定されたそのモデルのパラメータで掛けた値が、対象商品が有利な方向に大きくなるように商品属性を抽出し、この商品属性を勧奨・広告の際に強調する。例えば新宿区に居住する狭義対象顧客に郵送する共通的なDMの謳い文句を決めたいような場合には、まずそれらの世帯の選択行動モデルを構築および推定する。その結果として開設スピード、初期費用、速度、月額費用、サポート体制などのサービス属性のうち、A社のADSLは速度と月額費用に関してのみ他社他サービスに勝っており、また他社他サービスとの速度差と月額費用差を比較したときに特に月額費用差において期待需要あるいは期待収益を大きくする影響度が大きいと推定された場合、配布DMで月額費用の安さを強調することが得策となる。これが関東全域の住民が視聴するようなTVCMの宣伝文句を決める場合や、世帯毎に郵送するDMの内容を変える場合には、モデルの構築単位が異なってくる。
【0071】
対象商品の標的顧客を抽出する方法については、対象顧客集合である東京23区に居住する世帯からまず狭義対象顧客集合を抽出し、これに該当する全ての世帯について対象商品であるA社のADSLの購買確率あるいは期待購買金額を算出し、いずれかの基準値に関して降順にソートし、何らかのアクションを起こすことが可能な世帯数分だけ上位から抽出するというものである。例えばDMを郵送する際に、予算の都合上その数は限定され、郵送先を選定する必要が出てくる場合がある。このとき購買確率あるいは期待購買金額が高い一部の顧客のみの郵送先とすればよい。
【0072】
対象顧客への勧奨商品を抽出する方法については以下の通りである。例えばA社はADSLだけではなく光ファイバやIMT―2000もサービス提供しているため、実際に戦略策定の対象商品として設定すべきはこれら3ヶのサービスである。そしてA社の営業担当にとってこれらの自社商品の勧奨相手が決められており自らに顧客を選択する権利のない場合は多々あると考えられる。このような場合に、勧奨相手に複数あるうち全ての自社商品を押し売りすることは得策ではなく、購買確率あるいは期待購買金額が高い商品に限定して売り込みをかけた方が効率の良い方法と言えよう。本機能では、対象顧客(モデル化の対象となる狭義対象顧客に限定される)の複数ある対象商品のそれぞれに対する購買確率あるいは期待購買金額を比較し、いずれかの基準値が大きい対象商品をその対象顧客への勧奨商品として抽出する。
【0073】
最後に、対象商品の仕様を最適化する方法については、A社がADSLサービスの提供開始、モデムレンタルメニューの開始、料金値下げ、高速メニューの開始など、サービス属性の変更に関する決定を行うに当たり、開設スピード、初期費用、速度、月額費用、サポート体制などの各種サービス属性と最大化目的関数である任意の顧客セグメントにおける期待需要あるいは期待収益との関係を定量化することにより、特定の市場セグメントにおいて一定の需要あるいは収益を見込めるようにする。ここで対象とする顧客セグメントとは、サービス属性を独自に決定することが可能な最小市場単位である。例えば一戸建て、集合住宅などの居住形態に応じて速度や月額費用などのサービス属性を変えることが可能な場合には、居住形態を基準として対象顧客セグメンテーションし、セグメント毎に目的関数の最大化を図る。
【0074】
また、以上の実施形態においては、全体選択肢集合の要素として単一商品だけでなくその組合せをも設定するような例として、ADSLとIMT―2000あるいは光ファイバとIMT―2000といったある顧客には代替的と見なされ別の顧客には補完的と見なされるようなサービス同士の組合せを擧げたが、これ以外の例として、インターネットアクセスという目的に対するアクセス回線とISPのように全ての顧客にとって補完的なサービス同士の組合せも擧げられる。このような場合、それぞれを独立した選択肢とは見なさずその組合せを選択肢としてその属性としてはアクセス回線の属性、ISPの属性を全て列挙すればよい。
【0075】
「一回完結型の商品」かつ「単一商品」としては、ほとんどすべての財貨がこれに該当するが、具体例としてパソコンを挙げる。一部のレンタル用などを除き、一般的にパソコンはいったん売買が成立するとそれ以降は供給側と需要側との間に金銭授受が発生しないという意味で一回完結型の商品である。また、スタンドアローンでパソコンを利用するユーザにとって、パソコンは単体で目的を達成することができるという意味で単一商品である。
【0076】
「一回完結型の商品」かつ「非補完的な商品同士の組合せ」の例としては、デスクトップパソコンとノートパソコンの組合せを挙げることができる。ともに一回完結型の商品であることは、前記説明の通りである。また、あるユーザにとっては在社・在宅時にはデスクトップパソコンを、外出時にはノートパソコンを利用するというような使い分けをしたいため、組合せて購買することによりはじめて目的を達成できるが、別のユーザにとってはいずれか一方であれば目的を達成できるため補完的とは言えないという意味で、非補完的な商品同士の組合せである。
【0077】
「一回完結型の商品」かつ「補完的な商品同士の組合せ」の例としては、パソコンとOSの組合せを挙げることができる。パソコンと同様にOSもいったん売買が成立するとそれ以降は需給間に金銭授受が発生せず一回完結型の商品と言うことができる。また、パソコン上で何らかのアプリケーションを動作させたいすべてのユーザにとって、パソコンにOSをインストールして初めて目的を達成できる環境が整うという意味で、パソコンとOSは補完的な商品同士の組合せである。
【0078】
なお、図1の主制御部2の処理は専用ハードウェアにより実現されるもの以外に、その機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フロッピーディスク、光磁気ディスク、CD―ROM等の記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク装置等の記憶装置を指す。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネットを介してプログラムを送信する場合のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの(伝送媒体もしくは伝送波)、その場合のサーバとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、下記のような効果がある。
(1)顧客がある商品と比較評価する商品がそれぞれの商品と補完的な関係にある商品の場合にも対応することができる。
(2)同じ商品群をどのように組合せて選択肢として捉えるかが顧客によって異なる場合にも対応することができる。
(3)対象商品とその代替商品との間における顧客の選択行動をモデル化するに当たり、そもそも対象商品を選択肢と見なすことが可能な条件下にある顧客を対象期間における対象地域および対象商品の変化のシナリオに対応させつつ抽出する抽出条件が整理され、定量的な情報に基づき推定することができる。
(4)顧客にとっての選択肢の集合が、対象期間における対象地域、対象商品、およびその代替商品の変化のシナリオに対応して変化する状況に対応することができる。
(5)最適戦略の導出のための目的関数として各顧客の商品購買確率や顧客獲得数に加えて各顧客の期待購買金額や期待総収益を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のマーケティング戦略策定支援装置のブロック図である。
【図2】マーケティング戦略策定支援法の概要を示す図である。
【図3】各狭義対象顧客が個別選択肢集合を形成する際の二項選択行動モデルの例を示す図である。
【図4】二段階以上の選択行動過程からなる多段階多項選択行動モデルの例を示す図である。
【図5】狭義対象顧客毎に異なる個別選択肢集合と多段階多項選択行動過程の例を示す図である。
【符号の説明】
1 データベース管理装置
2 主制御部
3 入力装置
4 出力装置
5 入出力制御装置
11 商品データベース
12 顧客データベース
21 マーケティング戦略策定シナリオ設定部
22 対象顧客全体選択肢集合設定部
23 狭義対象顧客集合設定・推定部
24 狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定部
25 狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定部
26 狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定部
27 狭義対象顧客個別選択肢期待収益推定部
Claims (24)
- 事業目的を達成するためのマーケティング戦略策定の対象となる期間、地域、商品、顧客を入力装置から入力することにより設定し、また対象期間、対象地域における対象商品の販売条件の変化、対象顧客のデモグラフィック属性および/または集合の変化に関するシナリオを対象期間、対象地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を満たす、対象商品を含む代替商品群に関するあらゆる収集可能なデータを格納している商品データベースおよび対象顧客に関するあらゆる収集可能なデータを格納している顧客データベースに基づき欠落データは前記入力装置から入力することにより設定するマーケティング戦略策定シナリオ設定段階と、
対象期間、対象地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を満たす、対象商品を含む代替商品群からなる全体選択肢集合とその販売条件の変化に関するシナリオを、前記商品データベースおよび前記顧客データベースに基づき欠落データは前記入力装置から入力することにより設定する対象顧客全体選択肢集合設定段階と、
対象顧客が対象商品との関係において物理制約条件を満たすか否か、すなわち対象商品を物理的に購買または契約可能であるか否か、および/または認知制約条件を満たすか否か、すなわち対象商品を認知しているか否かに関して、識者の意見を前記入力装置から入力することにより設定、あるいは顧客データベースの意識属性データという客観的な情報に基づき推定することにより、対象顧客の集合のうち物理制約条件および/または認知制約条件を満たし対象商品に対して購買または契約行動を取る可能性のある層である狭義対象顧客の集合を設定あるいは推定する狭義対象顧客集合設定・推定段階と、
狭義対象顧客が全体選択肢集合の各要素商品との関係において前記物理制約条件および/または前記認知制約条件を満たすか否かに関して、識者の意見を前記入力装置から入力することにより設定、あるいは顧客データベースの意識属性データという客観的な情報に基づき推定することにより、全体選択肢集合のうち狭義対象顧客が購買または契約行動を取る可能性のある個別選択肢の集合を設定あるいは推定する狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定段階と、
個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素商品を比較評価し、いずれかの要素商品を選択するような行動のモデルを構築し、この選択行動モデルを前記顧客データベースのデモグラフィック属性データ、行動属性データ、および/または意識属性データという客観的な情報に基づき推定する狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階と、
狭義対象顧客の選択行動モデルに、前記マーケティング戦略策定シナリオ設定段階および前記対象顧客全体選択肢集合設定段階において設定した全体選択肢集合の販売条件の変化、対象顧客のデモグラフィック属性や集合の変化に関するシナリオを入力することにより、個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素商品を選択する確率、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である期待需要を推定する狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階と、
個々の狭義対象顧客が前記狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階において推定した確率に基づきその個別選択肢集合の各要素商品を購買または契約したときに期待される支払金額、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である期待収益を推定する狭義対象顧客個別選択肢期待支払金額推定段階を有する、顧客行動分析に基づくマーケティング戦略策定支援方法。 - 対象商品を含む代替商品には一回の売買で需給関係の完結する一回完結型の商品と継続的に需給関係が保たれる継続型の商品とが存在し、また単一商品と、複数の商品を組合せて利用することにより目的が達成される商品群とが存在し、その組合せのタイプとしては、組合せて購買または契約することにより初めて目的が達成されるような補完的な商品同士の組合せの場合と、単独で購買または契約しても目的は達成されるため補完的とは言えないがそれでも組合せて購買または契約する顧客がいるような非補完的な商品同士の組合せの場合との2通りが存在する、請求項1に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客集合設定・推定段階において、マーケティング戦略策定シナリオとして設定された期間、地域、商品、顧客に関する情報に基づき、前記物理制約条件および前記認知制約条件の2種類の制約条件のうち、個々の対象顧客あるいは対象顧客セグメント毎に条件合致の設定あるいは推定可能なものを考慮して対象顧客集合を狭義対象顧客集合に絞り込む、請求項1または2に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客集合設定・推定段階は、定量的な情報に基づき狭義対象顧客集合を推定する場合は、
前記物理制約条件および前記認知制約条件のうち考慮する全ての条件のそれぞれについて順に、対象顧客がその条件を満たすか否かの二項選択行動をモデル化し、そのパラメータを推定する段階と、
前記物理制約条件および前記認知制約条件のうち考慮する全ての条件のそれぞれについて順に、前記推定モデルに各種入力情報を代入することによって各顧客が各条件を満たすか否か、あるいはその可能性を推定する段階と、
前記物理制約条件および前記認知制約条件のうち考慮するものに関する各対象顧客の判定結果の積をとることにより、各対象顧客が対象商品に対する需要を発生するか否か、あるいはその可能性を推定する段階と、
対象商品に対する需要を発生する、あるいはその可能性がある基準を超えると推定された対象顧客の集合を狭義対象顧客集合として推定する段階を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。 - 前記狭義対象顧客集合設定・推定段階において、定量的な情報に基づき狭義対象顧客集合を推定する場合、その過程において構築および推定される対象顧客の二項選択行動モデルは、行動主体である対象顧客の属性、行動客体である対象商品の属性、およびそれらを取り巻く環境の属性を説明変数とするモデルである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客集合設定・推定段階において、定量的な情報に基づき狭義対象顧客集合を推定する場合、その過程において構築および推定される対象顧客の二項選択行動モデルとして、着目する制約条件を満たす確率を被説明変数とする確率的モデルを適用する場合と、満たすか否かを表す0−1変数を被説明変数とする確定的モデルを適用する場合を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客集合設定・推定段階において、定量的な情報に基づき狭義対象顧客集合を推定する場合、その根幹となる対象顧客の二項選択行動モデルが対象商品の属性を説明変数としている、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定段階において、個々の狭義対象顧客による全体選択肢集合の各要素の購買または契約に関して、前記物理制約条件および前記認知制約条件に基づき設定あるいは推定を行う、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定段階において、定量的な情報に基づき個別選択肢集合を推定する場合は、全体選択肢集合の各要素に関して順に、制約条件を満たすか否かの二項選択行動モデルを構築および推定し、それに基づき個々の狭義対象顧客の二項選択行動を推定し、考慮した複数の制約条件に関する二項選択行動の積をとることにより各狭義対象顧客が全体選択肢集合の各要素を個別選択肢として見なすか否か、その結果としてどのような個別選択肢集合を形成するかを推定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定段階において、定量的な情報に基づき個別選択肢集合を推定する場合、その過程において構築および推定される二項選択行動モデルの説明変数、被説明変数、およびその柔軟性は請求項5,6,7と同様であるマーケティング戦略策定支援方法。
- 前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階において構築および推定される狭義対象顧客の選択行動モデルは、個別選択肢が葉ノードに配置されるようなツリー構造により表現され、また最終的な選択単位である葉ノードにたどりつくまでに二段階以上の選択行動過程を必要とするような場合には根ノードと葉ノードの間に中間ノードが配置され、各中間ノードはそれよりも一段階下に位置しそれに直接リンクしているノードをまとめて表現した上位概念に該当する、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階において、ツリー構造の根ノードあるいは中間ノードにおける狭義対象顧客の選択行動を行動主体である狭義対象顧客の属性、行動客体である選択肢、すなわち葉ノードにより表現される個別選択肢あるいは中間ノードにより表現される個別選択肢の上位概念の属性、および狭義対象顧客と各ノードにおける選択肢を取り巻く環境の属性を説明変数としてモデル化し、そのパラメータを推定する、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階において構築および推定される狭義対象顧客の選択行動モデルは、ツリー構造の根ノードあるいは中間ノード毎にそれよりも一段階下に位置し、それに直接リンクしているノードである選択肢のそれぞれを選択する確率を被説明変数とする確率的モデルを適用する場合と、選択するか否かの0−1変数または選択肢番号を被説明変数とする確定的モデルを適用する場合を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階において構築および推定される狭義対象顧客の選択行動モデルは、ツリー構造の根ノードあるいは中間ノードにおける選択行動の説明変数としてそのノードよりも一段階下に位置し、それに直接リンクしているノードである選択肢の属性を採用している、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階において構築および推定される狭義対象顧客の選択行動モデルは、そのツリー構造とノードの双方あるいはいずれか一方に関して狭義対象顧客間で異なる場合があるが、同じノードが同じ位置関係で配置された同じツリー構造の一部、すなわち一部のリンクおよびノードを削除したものを選択行動モデルとすることを条件に狭義対象顧客をセグメンテーションし、各セグメントにおいては所属する各狭義対象顧客の個別ツリー構造の元となるセグメント別ツリー構造を共通的なモデルとして構築および推定する、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階において、前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階において推定された選択行動モデルに想定する条件を表す各種説明変数の設定値を入力することにより、その想定する条件下において個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素を選択する確率、確定的モデルの場合は選択する選択肢の番号、あるいはその選択確率を、マーケティング戦略策定者が着目する代替商品の需要を把握したいと考える任意の顧客単位である任意の対象顧客集合において集計した集計期待需要を出力として得る、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記狭義対象顧客個別選択肢期待収益推定段階において、前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定段階において推定された選択行動モデルの説明変数として狭義対象顧客の個別選択肢の属性が採用されていることにより、前記狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階において推定された個々の狭義対象顧客の個別選択肢の選択確率がその属性とセットになっており、各個別選択肢の選択確率と価格の積、個別選択肢が商品の組合せの場合には、それらの価格の合計を取ることにより狭義対象顧客毎にその個別選択肢の期待収益への貢献額、あるいはその貢献額を任意の対象顧客集合において集計した集計期待収益を推定する、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1の前記狭義対象顧客集合設定・推定段階により対象商品の利用検討に当たっての各種制約のレベルを考慮した狭義対象顧客を分類・抽出すると同時に、請求項1記載の前記狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階により個々の狭義対象顧客の潜在需要のレベルを数値化するマーケティング戦略策定支援方法。
- 請求項1記載の前記狭義対象顧客集合設定・推定段階により設定あるいは推定した狭義対象顧客集合の部分集合であり、かつ対象商品の勧奨・広告相手として想定する任意の狭義対象顧客小集合毎に、請求項1記載の前記狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定部による選択行動モデルの構築、および説明変数の係数であるパラメータ推定を行い、狭義対象顧客の選択行動モデル説明変数である対象商品とその代替商品との属性差に、該属性差がその選択行動に与える影響度として推定されたそのモデルのパラメータで掛けた値が、対象商品が有利な方向に大きくなるように商品属性を抽出し、この商品属性を勧奨・広告の際に強調するマーケティング戦略定支援方法。
- 請求項1記載の狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階あるいは前記狭義対象顧客個別選択肢期待支払金額推定段階により推定された対象商品の選択確率あるいは顧客別期待収益を狭義対象顧客間で比較することにより、その推定の前提となっている設定条件下において対象商品を選択する可能性が高いあるいは収益貢献額が大きいと期待される標的顧客を、全ての狭義対象顧客の中から抽出するマーケティング戦略策定支援方法。
- 対象商品が複数存在するような場合に、請求項1記載の狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階あるいは狭義対象顧客個別選択肢期待支払金額推定段階により推定された対象商品の選択確率あるいは顧客別期待収益をそれら複数の対象商品間で比較することにより、その推定の前提となっている設定条件下において個々の狭義対象顧客により選択される可能性が高いあるいは収益貢献額が大きいと期待される勧奨商品を、全ての対象商品の中から抽出するマーケティング戦略策定支援方法。
- 請求項1記載の狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定段階あるいは狭義対象顧客個別選択肢期待支払金額推定段階を用い、ある設定条件下において、すなわち各種説明変数の設定値に対して狭義対象顧客毎に推定された対象商品の選択確率あるいは期待収益貢献額、もしくは任意の対象顧客集合におけるその集計値に基づき、説明変数である対象商品とその代替商品との属性差と期待需要、すなわち選択確率、またはその集計値あるいは顧客別の期待収益、またはその集計値との関係を定量化することにより、任意の顧客単位における需要あるいは収益を最大化するために必要な説明変数の設定値を求め、対象商品の最適仕様である、各種属性値の最適組合せを推定するマーケティング戦略策定支援方法。
- 対象期間、対象地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を満たす、対象商品を含む代替商品群に関するあらゆる収集可能なデータを格納している商品データベースと、
対象顧客に関する収集可能なデータを格納している顧客データベースと、
各種データを入力するための入力装置と、
事業目的を達成するためのマーケティング戦略策定の対象となる、期間、地域、商品、顧客を前記入力装置から入力することにより設定し、また対象期間、対象地域における対象商品の販売条件の変化、対象顧客のデモグラフィック属性や集合の変化に関するシナリオを前記商品データベースおよび前記顧客データベースに基づき欠落データは入力装置から入力することにより設定するマーケティング戦略策定シナリオ設定手段と、
対象期間、対象地域において対象顧客にとって対象商品と同一の願望を満たす、対象商品を含む複数の代替商品からなる全体選択肢集合とその販売条件の変化に関するシナリオを、前記商品データベースおよび前記顧客データベースに基づき欠落データは前記入力装置から入力することにより設定する対象顧客全体選択肢集合設定手段と、
対象顧客が対象商品との関係において物理制約条件を満たすか否か、すなわち対象商品を物理的に購買または契約可能であるか否か、および/または認知制約条件を満たすか否か、すなわち対象商品を認知しているか否かに関して、識者の意見を前記入力装置から入力することにより設定、あるいは前記顧客データベースの意識属性データという客観的な情報に基づき推定することにより、対象顧客の集合のうち物理制約条件および/または認知制約条件を満たし対象商品に対して購買または契約行動を取る可能性のある層である狭義対象顧客の集合を設定あるいは推定する狭義対象顧客集合設定・推定手段と、
狭義対象顧客が全体選択肢集合の各要素商品との関係において前記物理制約条件および/または前記認知制約条件を満たすか否かに関して、識者の意見を前記入力装置から入力することにより設定、あるいは顧客データベースの意識属性データという客観的な情報に基づき推定することにより、全体選択肢集合のうち狭義対象顧客が購買または契約行動を取る可能性のある個別選択肢の集合を設定あるいは推定する狭義対象顧客個別選択肢集合設定・推定手段と、
個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素商品を比較評価し、いずれかの要素商品を選択するような行動のモデルを構築し、この選択行動モデルを前記顧客データベースのデモグラフィック属性データ、行動属性データ、および/または意識属性データという客観的な情報に基づき推定する狭義対象顧客選択行動モデル構築・推定手段と、
狭義対象顧客の選択行動モデルに、前記マーケティング戦略策定シナリオ設定手段および前記対象顧客全体選択肢集合設定手段で設定した全体選択肢集合の販売条件の変化、対象顧客のデモグラフィック属性や集合の変化に関するシナリオを入力することにより、個々の狭義対象顧客がその個別選択肢集合の各要素商品を選択する確率、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である期待需要を推定する狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定手段と、
個々の狭義対象顧客が前記狭義対象顧客個別選択肢選択確率推定手段で推定した確率に基づきその個別選択肢集合の各要素商品を購買または契約したときに期待される支払金額、あるいは任意の対象顧客集合におけるその集計値である期待収益を推定する狭義対象顧客個別選択肢期待支払金額推定手段を有する、顧客行動分析に基づくマーケティング戦略策定支援装置。 - 請求項1から22に記載のマーケティング戦略策定支援方法をコンピュータに実行させるためのマーケティング戦略策定支援プログラム。
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