JP2004037710A - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】低湿下での感度低下及び高湿下でのカブリ低下を改良した熱現像感光材料の提供。
【解決手段】支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層以外の層に加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層以外の層に加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料(以下、感光材料、感材ともいう)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷製版や医療診断の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターやレーザー・イメージャーにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる印刷や医療診断用途の熱現像型感光材料に関する技術が必要とされている。
【0003】
この種の技術として、例えば、米国特許第3,152,904号、同3,487,075号及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials, Marcel Dekker,Inc.第48頁,1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及びバインダーを含有する熱現像感光材料が知られている。
【0004】
これらの熱現像感光材料は、熱現像処理で写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(有機銀塩)、感光性ハロゲン化銀、還元剤及び必要に応じて銀の色調を抑制する色調剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。このような熱現像感光材料は常温で安定であるが、画像露光の後に高温(例えば、80℃〜140℃)に加熱することで現像される。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光でハロゲン化銀に生成した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を形成し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。この反応過程は、外部から水等の処理液を供給することなしで進行する。
【0005】
このような熱現像感光材料は、マイクロ感材やレントゲン感材に使われてきたが、印刷感材としては一部で使われているのみである。それは、得られる画像の最大濃度が低く、階調が軟調なために、印刷感材としては画質が著しく悪いからであった。
【0006】
一方、近年、レーザーや発光ダイオードの発達により、600〜800nmに発振波長を有するスキャナーへの適性を有し、感度、最大濃度が高く、かつ硬調な感光材料の開発が強く望まれていた。また、簡易処理、処理のドライ化への要望も強くなっている。
【0007】
このような要望に対して、米国特許第3,667,958号には、ポリヒドロキシベンゼン類とヒドロキシルアミン類、レダクトン類またはヒドラジン類を併用した熱現像感光材料は高い画像識別性と解像力を有することが記載されている。
【0008】
また、米国特許5,464,738号や米国特許第5,496,695号には、有機銀塩、ハロゲン化銀、ヒンダードフェノール類及びヒドラジン誘導体を含む硬調な熱現像感光材料が開示されている。
【0009】
また、黒ポツを改良したヒドラジン誘導体を用いた硬調な熱現像感光材料として特開平9−292671号、同9−304870号、同9−304871号、同9−304872号、同10−31282号等で提案されており、さらに画像の再現性を改善したヒドラジン誘導体が特開平10−62898号で提案されている。
【0010】
しかしながら、熱現像感光材料は冬場の低湿期に保存されることにより感材中の水分量が少なくなり現像反応が進みにくくなるため濃度(感度)が低く、高湿下では逆に現像反応が進みやすくなり、カブリも生じるという問題があった。
【0011】
上記の問題を解決するための技術として、塩化ビニリデンを用いて下引きを行い湿度の影響を少なくする技術が知られているが環境上問題がある。
【0012】
また保護層を厚くし、乾燥温度を変えて、湿度の影響を少なくする技術も知られているが、未だ上記問題を解決するには不十分である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低湿下での感度低下及び高湿下でのカブリ低下を改良した熱現像感光材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0015】
1.支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層以外の層に加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0016】
2.前記水を放出する化合物が100〜130℃に加熱することにより水を放出することを特徴とする前記1に記載の熱現像感光材料。
【0017】
3.前記水を放出する化合物がフタル酸及びその誘導体であることを特徴とする前記1又は2に記載の熱現像感光材料。
【0018】
4.前記水を放出する化合物がアルコキシシラン化合物であることを特徴とする前記1又は2に記載の熱現像感光材料。
【0019】
5.支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層が設けられている支持体の反対側の層が加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0020】
6.前記水を放出する化合物が100〜130℃に加熱することにより水を放出することを特徴とする前記5に記載の熱現像感光材料。
【0021】
7.前記水を放出する化合物がフタル酸及びその誘導体であることを特徴とする前記5又は6に記載の熱現像感光材料。
【0022】
8.前記水を放出する化合物がアルコキシシラン化合物であることを特徴とする前記5又は6に記載の熱現像感光材料。
【0023】
即ち、本発明者は、熱現像感光材料の感光性層以外の層(含む裏面層)に、100〜130℃に加熱することにより水を放出する化合物、具体的にはフタル酸及びその誘導体又はアルコキシシラン化合物を含有させることにより低湿下での感度低下及び高湿下でのカブリ上昇が改善されることを見いだした。
【0024】
以下に本発明を更に詳細に述べる。
本発明は、熱現像感光材料の感光層(以下、感光性層ともいう)以外の層(含む裏面層)に、加熱により、水を放出する化合物を含有することを特徴としている。
【0025】
ここでいう、感光性以外の層とは、例えば非感光性の最表面層、最表面保護層、中間層、下塗り層等である。
【0026】
裏面層としては、非感光性のバッキング層、バッキング保護層等である。
また、本発明においては、加熱温度は100〜130℃であることが好ましい。
【0027】
水を放出する化合物としては、フタル酸及びその誘導体或いはアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0028】
本発明に好ましく用いられるフタル酸誘導体としては、例えば4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、4−クロロフタル酸、2,3−ジカルボキシナフタレン等やこれらの金属塩(金属塩の金属として、好ましくはNa、K等のアルカリ金属、Ca、Mg等のアルカリ土類金属、Fe、Ni等の遷移金属等)が挙げられる。
【0029】
本発明に好ましく用いられるフタル酸及びその誘導体は溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0030】
添加量は1〜1×10−6mol/m2が好ましく、1×10−2〜1×10−5mol/m2がより好ましい。
【0031】
本発明に好ましく用いられるアルコキシシラン化合物としては、具体的には下記一般式(1a)、一般式(1b)又は一般式(1c)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
一般式(1a)、一般式(1b)において、m、oは各々、0または1、n、pは各々、2または3、X、Yは各々、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐している2価の飽和炭化水素基、R1、R2、R5およびR6は炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基、R3、R4は水素原子、炭素数20以下の脂肪族基または芳香族基を表し、R3、R4のうち少なくとも一つは炭素数20以下の脂肪族基または芳香族基を表し、R3とR4は環を形成していても良い。
【0034】
更に詳しくは、X、Yで表される炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐している2価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチレン、ジメチレン、プロピレン、ペンタメチレン、デカメチレン等が挙げられる。これらの基は、置換基を有していても良い。
【0035】
R1、R2、R5およびR6で表される炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。これらの基は、置換基を有していても良い。
【0036】
R3、R4で表される炭素数20以下の脂肪族基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0037】
R3、R4で表される芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0038】
R3とR4によって形成される環としては、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の各環があげられる。
【0039】
【化2】
【0040】
一般式(1c)において、qは0または1、rは2または3、Zは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基、R7、R6は各々、炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基を表す。
【0041】
更に詳しくは、Zで表される炭素数1〜10の直鎖又は分岐の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0042】
R7、R6によって表される炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0043】
以下に本発明に好ましく用いられるアルコキシシラン化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
【化3】
【0045】
【化4】
【0046】
【化5】
【0047】
アルコキシシラン化合物の添加量は1〜1×10−6mol/m2が好ましく、1×10−2〜1×10−4mol/m2がより好ましい。
【0048】
次ぎに、本発明に用いられる造核剤(硬調化剤ともいう)について説明する。
本発明においては、下記一般式(C1)、一般式(C2)及び一般式(C3)で表されるビニール系化合物が造核剤として好ましく用いられる。
【0049】
【化6】
【0050】
一般式(C1)において、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Zは電子吸引基又はシリル基を表し、R11とZ、R12とR13、及びR13とZとはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0051】
又、一般式(C2)において、R14は置換基を表す。又、一般式(C3)において、X及びYはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、A及びBはそれぞれ独立にアルコオキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基又はヘテロ環アミノ基を表す。一般式(C3)において、XとY及びAとBは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0052】
上記一般式(C1)、一般式(C2)及び一般式(C3)の具体的化合物としては、下記化合物が挙げられる。
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
また、本発明においては、硬調化剤としてヒドラジン化合物も用いることができ、RD(リサーチディスクロージャー)第23515(1983年11月号、P.346)及びそこに引用された文献の他、米国特許第4,080,207号、同第4,269,929号、同第4,276,364号、同第4,278,748号、同第4,385,108号、同第4,459,347号、同第4,478,928号、同第4,560,638号、同第4,686,167号、同第4,912,016号、同第4,988,604号、同第4,994,365号、同第5,041,355号、同第5,104,769号、英国特許第2,011,391B号、欧州特許第217,310号、同第301,799号、同第356,898号、特開昭60−179734号、同61−170733号、同61−270744号、同62−178246号、同62−270948号、同63−29751号、同63−32538号、同63−104047号、同63−121838号、同63−129337号、同63−223744号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号、同63−294552号、同63−306438号、同64−10233号、特開平1−90439号、同1−100530号、同1−105941号、同1−105943号、同1−276128号、同1−280747号、同1−283548号、同1−283549号、同1−285940号、同2−2541号、同2−77057号、同2−139538号、同2−196234号、同2−196235号、同2−198440号、同2−198441号、同2−198442号、同2−220042号、同2−221953号、同2−221954号、同2−285342号、同2−285343号、同2−289843号、同2−302750号、同2−304550号、同3−37642号、同3−54549号、同3−125134号、同3−184039号、同3−240036号、同3−240037号、同3−259240号、同3−280038号、同3−282536号、同4−51143号、同4−56842号、同4−84134号、同2−230233号、同4−96053号、同4−216544号、同5−45761号、同5−45762号、同5−45763号、同5−45764号、同5−45765号、同6−289524号、同9−160164号等の各公報に記載された化合物等が挙げられる。
【0058】
本発明の熱現像感光材料は、支持体の片面に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤を含有する感光性層および保護層をこの順に積層されたものが好ましく、さらに、前記支持体と前記感光性層との間に中間層を設置してもよい。
【0059】
また、感光性層とは反対の面には搬送性確保や、保護層とのブロッキング防止のためにバッキング層を有する感光材料も好適に用いることができる。なお、各層は単一層でも良いし、組成が同一あるいは異なる2層以上の複数の層で形成しても良い。
【0060】
本発明の感光性層中の感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を指す。またハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下となる粒子である。
【0061】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
感光性ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0062】
またもう一つの好ましい感光性ハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくはアスペクト比が3以上50以下である。また粒径は0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01〜0.08μmが好ましい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。
【0063】
感光性ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
【0064】
本発明に用いられる乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0065】
本発明の感光性ハロゲン化銀には、周期表の6族から11族に属する金属イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0066】
これらの金属イオンは金属錯体または金属錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。これらの金属錯体または金属錯体イオンとしては、下記一般式で表される6配位金属錯体が好ましい。
【0067】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0068】
Mとしては、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)で好ましく、これらを含む遷移金属錯体イオンの具体例としては、〔RhCl6〕3−、〔RuCl6〕3−、〔ReCl6〕3−、〔RuBr6〕3−、〔OsCl6〕3−、〔IrCl6〕4−、〔Ru(NO)Cl5〕2−、〔RuBr4(H2O)〕2−、〔Ru(NO)(H2O)Cl4〕−、〔RhCl5(H2O)〕2−、〔Re(NO)Cl5〕2−、〔Re(NO)(CN)5〕2−、〔Re(NO)Cl(CN)4〕2−、〔Rh(NO)2Cl4〕−、〔Rh(NO)(H2O)Cl4〕−、〔Ru(NO)(CN)5〕2−、〔Fe(CN)6〕3−、〔Rh(NS)Cl5〕2−、〔Os(NO)Cl5〕2−、〔Cr(NO)Cl5〕2−、〔Re(NO)Cl5〕−、〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2−、〔Ru(NS)Cl5〕2−、〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2−、〔Os(NS)Cl(SCN)4〕2−、〔Ir(NO)Cl5〕2−、〔Ir(NS)Cl5〕2−等が挙げられる。
【0069】
前述した金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10−9〜1×10−2モルが適当であり、好ましくは1×10−8〜1×10−4モルである。
【0070】
これらの金属を提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。
【0071】
添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは粒子内部に分布をもたせることができる。
【0072】
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0073】
粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0074】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子は粒子形成後に脱塩してもしなくてもよいが、脱塩を施す場合、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができる。
【0075】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法を用いることができる。また金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0076】
前述の硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物を用いることができるが、特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。
【0077】
貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては、例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060号、英国特許第618,061号などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0078】
還元増感法に用いられる具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0079】
本発明の感光性層に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸である。本発明において用いられる有機酸としては、脂肪族カルボン酸、炭素環式カルボン酸、複素環式カルボン酸、複素環式化合物等があるが、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環を有する複素環式カルボン酸等が好ましく用いられる。また、配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機銀塩錯体も有用である。
【0080】
このような有機酸銀塩の例としては、Research Disclosure第17029及び29963に記載されている。中でも、脂肪酸の銀塩が好ましく用いられ、特に好ましく用いられるのは、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀およびステアリン酸銀である。
【0081】
前述の有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、等が好ましく用いられる。また、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法を用いることも可能である。
【0082】
本発明においては、有機銀塩は平均粒径が1μm以下でありかつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。平均粒径は好ましくは0.01μm〜0.8μm、特に0.05μm〜0.5μmが好ましい。また単分散とは、ハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30である。本発明においては、有機銀塩が平均粒径1μm以下の単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで濃度の高い画像が得られる。さらに有機銀塩は平板状粒子が全有機銀の60%以上有することが好ましい。本発明において平板状粒子とは平均粒径と厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上のものをいう。
【0083】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
このような有機銀粒子は必要に応じバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザなどで分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミルなどを用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0084】
本発明に用いられる有機銀粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、特にジルコニアを用いることが好ましい。
【0085】
本発明に用いられる有機銀粒子は銀1gあたり0.01〜0.5mgのZrを含有することが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3mgのZrを含有する場合である。上記分散をおこなう際の、バインダー濃度、予備分散方法、分散機運転条件、分散回数などを最適化することは、本発明に用いられる有機銀塩粒子を得る方法として非常に好ましい。
【0086】
本発明の感光性層に含有される還元剤としては、当技術分野で知られているものを用いることができ、例えば、フェノール類、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシベンゼン類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等等が挙げられる。
【0087】
上記還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合に好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)またはアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号若しくは英国特許第1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号若しくは特公昭51−35727号公報に記載されたポリフェノール化合物、米国特許第3,672,904号に記載されたビスナフトール類、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、更に米国特許第3,801,321号に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール類、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等を挙げることができる。
【0088】
本発明の感光性層に含有される還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モルであり、好ましくは0.1〜3モルである。又この量の範囲内において、上述した還元剤は2種以上併用されてもよい。
【0089】
さらに、本発明においては感光性層にバインダー樹脂を用いることが好ましい。
【0090】
このようなバインダー樹脂としては、従来から用いられている透明または半透明なバインダー樹脂を適時選択して用いることが出来き、そのようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロー等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリルゴム共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリポロピレン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種以上の樹脂を併用して用いても良い。
【0091】
なお、前記バインダー樹脂は本発明の目的を損なわない限り、保護層、中間層、あるいは必要にな場合に設けられるバックコート層の各層に適時選択して用いることができる。
【0092】
尚、中間層やバックコート層には、活性エネルギー線で硬化可能なエポキシ樹脂やアクリルモノマーなどを層形成バインダー樹脂として使用しても良い。
【0093】
さらに、本発明に係る感光性層には上述した必須成分、バインダー樹脂以外に、必要に応じてカブリ防止剤、調色剤、増感色素、強色増感を示す物質(以下強色増感剤と略記する)など各種添加剤を添加してもよい。
【0094】
このような、かぶり防止剤としては、米国特許第3,874,946号及び同第4,756,999号に開示されているような化合物、−C(X1)(X2)(X3)(ここでX1及びX2はハロゲン原子を表し、X3は水素またはハロゲン原子を表す)で表される置換基を1以上備えたヘテロ環状化合物、特開平9−288328号、特開平9−90550号、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号等に開示されている化合物を適時選択して用いることが出来る。
【0095】
現像後の銀色調を改良する目的で添加される色調剤としてはイミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)。好ましい色調剤としては、フタラゾン、フタラジンが挙げられる。
【0096】
なお、色調剤は本発明の目的を阻害しないのであれば後述する保護層に添加しても良い。
【0097】
また、増感色素としては、例えばアルゴンイオンレーザー光源に対しは、特開昭60−162247号、特開平2−48635号、米国特許第2,161,331号、西独特許第936,071号、特開平5−11389号等に記載のシンプルメロシアニン類、ヘリウムネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号に示された三核シアニン色素類、特開平7−287338号に記載されたメロシアニン類、LED光源及び赤外半導体レーザー光源に対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類、赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、特開昭60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類等が有利に選択される。更に赤外レーザー光源の波長が750nm以上更に好ましくは800nm以上である場合このような波長域のレーザーに対応する為には、特開平4−182639号、同5−341432号、特公平6−52387号、同3−10931号、米国特許第5,441,866号、特開平7−13295号等に記載されている増感色素が好ましく用いられる。
【0098】
また、強色増感剤としてはRD17643、特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されている化合物を適時選択して用いることができ、本発明では、下記一般式(M)で表される複素芳香族メルカプト化合物、実質的に前記のメルカプト化合物を生成する一般式(Ma)で表されるジスルフィド化合物を用いることができる。
【0099】
一般式(M) Ar−SM
一般式(Ma) Ar−S−S−Ar
一般式(M)において、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウムもしくはテルリウム原子を有する複素芳香環または縮合複素芳香環を表す。複素芳香環は、好ましくは、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリンである。
【0100】
また、一般式(Ma)において、Arは上記一般式(M)の場合と同義である。
【0101】
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I等の各原子)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有することができる。
【0102】
本発明に好ましく用いられる強色増感剤は有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲で用いるのが好ましく、特に銀1モル当たり0.01〜0.5モルの範囲にするのが好ましい。
【0103】
本発明の感光性層にはヘテロ原子を含む大環状化合物を含有させることができる。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子の少なくとも1種を含む9員環以上の大環状化合物が好ましく、12〜24員環がより好ましく、更に好ましいのは15〜21員環である。
【0104】
代表的な化合物としては、クラウンエーテルで下記のPedersonが1967年に合成し、その特異な報告以来、数多く合成されているものである。これらの化合物は、C.J.Pederson,Journal of American chemical society vol,86(2495),7017〜7036(1967),G.W.Gokel,S.H,Korzeniowski,”Macrocyclic polyethr synthesis”,Springer−Vergal,(1982)等に記載されている。
【0105】
本発明に係る感光性層には上述した添加剤以外に例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はResearch DisclosureItem17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物が好ましく用いられる。
【0106】
本発明において、感光性層は単層でも良く、組成が同一あるいは異なる複数の層で構成しても良い。なお、感光性層の膜厚は通常10〜30μmである。
【0107】
次に、本発明の熱現像感光材料に用いられる支持体と保護層について詳述する。
【0108】
本発明の熱現像感光材料に用いられる支持体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層してなる樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0109】
支持体は、潜像形成後熱で現像して画像形成することから、フィルム状に延伸しヒートセットしたものが寸法安定性の点で好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加してもよい。なお、支持体の厚みは、通常10〜500μm、好ましくは25〜250μmである。
【0110】
本発明の熱現像感光材料が有する保護層としては、上述の感光性層で記載したバインダー樹脂と必要に応じて添加される添加剤により構成され、保護層のバインダー樹脂は感光性層で記載したバインダー樹脂を適時選択して用いることができる。
【0111】
保護層に添加される添加剤としては、熱現像後の画像の傷つき防止や搬送性を確保する目的でフィラーを含有することが好ましく、フィラーを添加する場合の含有量は、層形成組成物中0.05〜30質量%含有することが好ましい。
【0112】
さらに、滑り性や帯電性を改良するために保護層には潤滑剤、帯電防止剤を含有しても良い、このような潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、(変性)シリコーンオイル、(変性)シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ化カーボン、ワックス等を挙げることができ、また、帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子帯電防止剤、金属酸化物または導電性ポリマー等、「11290の化学商品」化学工業日報社、p.875〜876等に記載の化合物、米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された化合物等を挙げることができる。
【0113】
本発明において、保護層は単層でも良く、組成が同一あるいは異なるの複数層の層で構成しても良い。なお、保護層の膜厚は通常1.0〜5.0μmである。
【0114】
本発明では、上述の感光性層、支持体および保護層以外に、支持体と感光性層との膜付を改良するために中間層を、搬送性や帯電防止を目的としてバックコート層を設置しても良く、設置する場合の中間層の厚みは通常0.05〜2.0μmであり、バッキング層の厚みは通常0.1〜10μmである。
【0115】
本発明の感光性層形成塗工液、保護層形成塗工液、必要に応じて設置される中間層およびバッキング層の形成塗工液は、上述で述べた成分を、それぞれ溶媒に溶解若しくは分散して調製する。
【0116】
溶媒としては、有機合成化学協会編の“溶剤ポケットブック”等に示されている溶解度パラメーターの値が6.0〜15.0の範囲のものであればよく、本発明において用いられる各層を形成する塗工液に用いる溶媒としては、例えば、ケトン類としてアセトン、イソフォロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。アルコール類としてメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール類としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。エーテルアルコール類としてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。エーテル類としてエチルエーテル、ジオキサン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0117】
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。炭化水素類としてn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩化物類として塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられるが、但し、本発明の効果を阻害しない範囲であればこれらに限定されない。
【0118】
また、これらの溶媒は、単独、または、数種類組合わせて使用できる。尚、画像形成材料中の上記溶媒の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整でき、熱現像感光材料中に含有される残存溶媒の量は合計量で5〜1000mg/m2が好ましく、更に好ましくは、10〜300mg/m2である。
【0119】
塗工液を形成する際に分散が必要な場合には、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザ、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等、従来から公知の分散機を適時選択してを用いることができる。
【0120】
本発明では、感光性層形成塗工液を塗工するには、エクストルージョン方式の押し出しコータ、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等の、公知の各種コータステーションを適時選択して用いることができる。これらのコータの中で、該層の厚みムラを無くすために、エクストルージョン方式の押し出しコータやリバースロールコータ等のロールコータを用いることが好ましい。
【0121】
又、保護層を塗工するには場合には、感光性層がダメージを受けないものであれば特に制限はないが、保護層形成塗工液に用いられる溶媒が、感光性層を溶解する可能性がある場合には、上述したコータステーションの中で、エクストルージョン方式の押し出しコータ、グラビアロールコータ、バーコータ等を使用することができる。尚、これらの中でグラビアロールコータ、バーコータ等接触する塗工方法を用いる場合には、搬送方向に対して、グラビアロールやバーの回転方向は順転でもリバースでも良く、また順転の場合には等速でも、周速差を設けても良い。
【0122】
更に、上述のように各層毎に塗布乾燥を繰り返してもよいが、ウェット−オン−ウェット方式で重層塗布して乾燥させても良い。その場合、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等とエクストルージョン方式の押し出しコータとの組み合わせにより塗布することができ、この様なウェット−オン−ウェット方式における重層塗布においては、下側の層が湿潤状態になったままで上側の層を塗布するので、上下層間の接着性が向上する。
【0123】
さらに、本発明では少なくとも感光性層形成塗工液を塗工後、本発明の目的を達成するために、塗膜を乾燥させる温度は65〜100℃の範囲である。
【0124】
乾燥温度が65℃未満では、反応が不十分であるため、経時による感度の変動が起こる場合が有り、また100℃を超える場合には、製造直後の熱現像感光材料自身にカブリ(着色)を生じる場合がある為好ましくない。また、乾燥時間は乾燥時の風量により一概に規定できないが、通常2〜30分の範囲で乾燥させることが好ましい。
【0125】
なお、上述の乾燥温度は、塗工後直ぐに前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させても良いし、乾燥の際に生じる塗工液のマランゴニーや、温風の乾燥風によって生じる表面近傍が初期に乾燥してしまうことによって生じるムラ(ユズ肌)を防止する目的で、初期の乾燥温度を65℃よりも低温で行い、その後前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させても良い。
【0126】
本発明に好ましく用いられるの画像記録方法としては、露光面とレーザ光のなす角度、レーザの波長、使用するレーザの数により三つの態様に大別され、それらを単独で行っても良いし、二種以上の態様を組み合わせても良い。
【0127】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャなどと原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0128】
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光の結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは2.54cm当たりのドットの数である)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0129】
また、このような、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、同一の場所に2本以上のレーザを入射角を変え露光面に集光させ画像形成する方法もある。この際の、通常の1本のレーザ(波長λ[nm])で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEである場合に、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λ[nm])、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の感光性層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が押えられる。
【0130】
なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いても良い。この場合、λ[nm]に対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0131】
画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。
【0132】
なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像感光材料に走査されるときの該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0133】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0134】
実施例1
1.下引済みポリエチレンテレフタレート(PET)支持体1の作製
2軸延伸熱固定済みの厚さ125μmのPETフィルムの両面に下記の条件でプラズマ処理を施し、次いで一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設してから乾燥させて下引層A−1とし、又反対側の面に帯電防止加工した下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設してから乾燥させて導電層としての下引層B−1とした。次いで、それぞれの下引き層表面に下記の条件でプラズマ処理を施した。
【0135】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%、5%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0136】
〈下引塗布液a−1〉
ブチルアクリレート(30質量%)、t−ブチルアクリレート(20質量%)、スチレン(25質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μm) 0.05g
コロイダルシリカ(平均粒径90μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
【0137】
【0138】
〈支持体の熱処理〉
得られた下引済み支持体の下引乾燥工程にて、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。その際に1×105Paの張力で搬送した。
【0139】
2.バック層面側の塗布
以下の組成のバック層塗布液1とバック保護層塗布液1を、それぞれ塗布前に絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、押し出しコーターで前記作製した支持体の帯電防止加工した下引層B−1面上に、合計ウェット膜厚が30μmになるよう、毎分120mの速度で同時重層塗布し、60℃で4分間乾燥を行った。
【0140】
(ハロゲン化銀粒子の調製)
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370ml、(96/4)のモル比の臭化カリウム、沃化カリウム0.436モル及び(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6モル/リットル含む水溶液370mlをpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
【0141】
(有機脂肪酸銀乳剤の調製)
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、十分攪拌した状態で1mol/Lの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1mol/Lのリン酸7.0mlを添加して十分攪拌した状態でN−ブロモこはく酸イミド0.01gを添加した。その後、あらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で攪拌しながら添加した。さらに1mol/L硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま攪拌した状態で1時間放置した。
【0142】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分攪拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。その後東ソー(株)社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更にポリビニルブチラール3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し35℃にて高速で十分攪拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
【0143】
(感光性層Em組成)
有機脂肪酸銀乳剤 1.4g(銀で)/m2
ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド 1.5×10−4mol/m2
臭化カルシウム 1.8×10−4mol/m2
2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸 1.5×10−3mol/m2
赤外増感色素1 4.2×10−6mol/m2
2−メルカプトベンズイミダゾール 3.2×10−3mol/m2
2−トリブロモメチルスルホニルキノリン 6.0×10−4mol/m2
4−メチルフタル酸 1.6×10−3mol/m2
テトラクロロフタル酸 7.9×10−4mol/m2
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−
トリメチルヘキサン 4.8×10−3mol/m2
造核剤 C−65 0.5×10−3mol/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0144】
(表面保護層組成)
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0145】
セルロースアセテートブチレート 4g/m2
フタラジン 3.2×10−3mol/m2
水を放出する化合物 表1に示す
マット剤(粒径2μm) 50mg/m2
溶媒は、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0146】
(耐湿度性の評価)
各々の試料を3分割し、23℃、48%で2時間調湿した試料を基準として、23℃、20%で2時間調湿した試料と、23℃、80%で2時間調湿した試料とを作製し、相対感度とカブリを求め、耐湿性の評価とした。結果を以下に示す。
【0147】
【化11】
【0148】
【表1】
【0149】
本発明の試料が比較の試料に比して、耐湿性が優れていることが分かる。
実施例2
水を放出する化合物を表面保護層に使用するかわりにバッキング層側に使用する以外は実施例1と同様に行ない試料を作製し、上記と同様に評価した。結果を以下に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
本発明の試料は比較に比して、耐湿性が優れていることが分かる。
【0152】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明による熱現像感光材料は、低湿下での感度低下及び高湿下でのカブリ低下が改良され、優れた効果を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料(以下、感光材料、感材ともいう)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷製版や医療診断の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターやレーザー・イメージャーにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる印刷や医療診断用途の熱現像型感光材料に関する技術が必要とされている。
【0003】
この種の技術として、例えば、米国特許第3,152,904号、同3,487,075号及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials, Marcel Dekker,Inc.第48頁,1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及びバインダーを含有する熱現像感光材料が知られている。
【0004】
これらの熱現像感光材料は、熱現像処理で写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(有機銀塩)、感光性ハロゲン化銀、還元剤及び必要に応じて銀の色調を抑制する色調剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。このような熱現像感光材料は常温で安定であるが、画像露光の後に高温(例えば、80℃〜140℃)に加熱することで現像される。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光でハロゲン化銀に生成した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を形成し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。この反応過程は、外部から水等の処理液を供給することなしで進行する。
【0005】
このような熱現像感光材料は、マイクロ感材やレントゲン感材に使われてきたが、印刷感材としては一部で使われているのみである。それは、得られる画像の最大濃度が低く、階調が軟調なために、印刷感材としては画質が著しく悪いからであった。
【0006】
一方、近年、レーザーや発光ダイオードの発達により、600〜800nmに発振波長を有するスキャナーへの適性を有し、感度、最大濃度が高く、かつ硬調な感光材料の開発が強く望まれていた。また、簡易処理、処理のドライ化への要望も強くなっている。
【0007】
このような要望に対して、米国特許第3,667,958号には、ポリヒドロキシベンゼン類とヒドロキシルアミン類、レダクトン類またはヒドラジン類を併用した熱現像感光材料は高い画像識別性と解像力を有することが記載されている。
【0008】
また、米国特許5,464,738号や米国特許第5,496,695号には、有機銀塩、ハロゲン化銀、ヒンダードフェノール類及びヒドラジン誘導体を含む硬調な熱現像感光材料が開示されている。
【0009】
また、黒ポツを改良したヒドラジン誘導体を用いた硬調な熱現像感光材料として特開平9−292671号、同9−304870号、同9−304871号、同9−304872号、同10−31282号等で提案されており、さらに画像の再現性を改善したヒドラジン誘導体が特開平10−62898号で提案されている。
【0010】
しかしながら、熱現像感光材料は冬場の低湿期に保存されることにより感材中の水分量が少なくなり現像反応が進みにくくなるため濃度(感度)が低く、高湿下では逆に現像反応が進みやすくなり、カブリも生じるという問題があった。
【0011】
上記の問題を解決するための技術として、塩化ビニリデンを用いて下引きを行い湿度の影響を少なくする技術が知られているが環境上問題がある。
【0012】
また保護層を厚くし、乾燥温度を変えて、湿度の影響を少なくする技術も知られているが、未だ上記問題を解決するには不十分である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低湿下での感度低下及び高湿下でのカブリ低下を改良した熱現像感光材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0015】
1.支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層以外の層に加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0016】
2.前記水を放出する化合物が100〜130℃に加熱することにより水を放出することを特徴とする前記1に記載の熱現像感光材料。
【0017】
3.前記水を放出する化合物がフタル酸及びその誘導体であることを特徴とする前記1又は2に記載の熱現像感光材料。
【0018】
4.前記水を放出する化合物がアルコキシシラン化合物であることを特徴とする前記1又は2に記載の熱現像感光材料。
【0019】
5.支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層が設けられている支持体の反対側の層が加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0020】
6.前記水を放出する化合物が100〜130℃に加熱することにより水を放出することを特徴とする前記5に記載の熱現像感光材料。
【0021】
7.前記水を放出する化合物がフタル酸及びその誘導体であることを特徴とする前記5又は6に記載の熱現像感光材料。
【0022】
8.前記水を放出する化合物がアルコキシシラン化合物であることを特徴とする前記5又は6に記載の熱現像感光材料。
【0023】
即ち、本発明者は、熱現像感光材料の感光性層以外の層(含む裏面層)に、100〜130℃に加熱することにより水を放出する化合物、具体的にはフタル酸及びその誘導体又はアルコキシシラン化合物を含有させることにより低湿下での感度低下及び高湿下でのカブリ上昇が改善されることを見いだした。
【0024】
以下に本発明を更に詳細に述べる。
本発明は、熱現像感光材料の感光層(以下、感光性層ともいう)以外の層(含む裏面層)に、加熱により、水を放出する化合物を含有することを特徴としている。
【0025】
ここでいう、感光性以外の層とは、例えば非感光性の最表面層、最表面保護層、中間層、下塗り層等である。
【0026】
裏面層としては、非感光性のバッキング層、バッキング保護層等である。
また、本発明においては、加熱温度は100〜130℃であることが好ましい。
【0027】
水を放出する化合物としては、フタル酸及びその誘導体或いはアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0028】
本発明に好ましく用いられるフタル酸誘導体としては、例えば4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、4−クロロフタル酸、2,3−ジカルボキシナフタレン等やこれらの金属塩(金属塩の金属として、好ましくはNa、K等のアルカリ金属、Ca、Mg等のアルカリ土類金属、Fe、Ni等の遷移金属等)が挙げられる。
【0029】
本発明に好ましく用いられるフタル酸及びその誘導体は溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0030】
添加量は1〜1×10−6mol/m2が好ましく、1×10−2〜1×10−5mol/m2がより好ましい。
【0031】
本発明に好ましく用いられるアルコキシシラン化合物としては、具体的には下記一般式(1a)、一般式(1b)又は一般式(1c)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
一般式(1a)、一般式(1b)において、m、oは各々、0または1、n、pは各々、2または3、X、Yは各々、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐している2価の飽和炭化水素基、R1、R2、R5およびR6は炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基、R3、R4は水素原子、炭素数20以下の脂肪族基または芳香族基を表し、R3、R4のうち少なくとも一つは炭素数20以下の脂肪族基または芳香族基を表し、R3とR4は環を形成していても良い。
【0034】
更に詳しくは、X、Yで表される炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐している2価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチレン、ジメチレン、プロピレン、ペンタメチレン、デカメチレン等が挙げられる。これらの基は、置換基を有していても良い。
【0035】
R1、R2、R5およびR6で表される炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。これらの基は、置換基を有していても良い。
【0036】
R3、R4で表される炭素数20以下の脂肪族基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0037】
R3、R4で表される芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0038】
R3とR4によって形成される環としては、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の各環があげられる。
【0039】
【化2】
【0040】
一般式(1c)において、qは0または1、rは2または3、Zは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基、R7、R6は各々、炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基を表す。
【0041】
更に詳しくは、Zで表される炭素数1〜10の直鎖又は分岐の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0042】
R7、R6によって表される炭素数4以下の直鎖もしくは分岐の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0043】
以下に本発明に好ましく用いられるアルコキシシラン化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
【化3】
【0045】
【化4】
【0046】
【化5】
【0047】
アルコキシシラン化合物の添加量は1〜1×10−6mol/m2が好ましく、1×10−2〜1×10−4mol/m2がより好ましい。
【0048】
次ぎに、本発明に用いられる造核剤(硬調化剤ともいう)について説明する。
本発明においては、下記一般式(C1)、一般式(C2)及び一般式(C3)で表されるビニール系化合物が造核剤として好ましく用いられる。
【0049】
【化6】
【0050】
一般式(C1)において、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Zは電子吸引基又はシリル基を表し、R11とZ、R12とR13、及びR13とZとはそれぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0051】
又、一般式(C2)において、R14は置換基を表す。又、一般式(C3)において、X及びYはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、A及びBはそれぞれ独立にアルコオキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基又はヘテロ環アミノ基を表す。一般式(C3)において、XとY及びAとBは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0052】
上記一般式(C1)、一般式(C2)及び一般式(C3)の具体的化合物としては、下記化合物が挙げられる。
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
また、本発明においては、硬調化剤としてヒドラジン化合物も用いることができ、RD(リサーチディスクロージャー)第23515(1983年11月号、P.346)及びそこに引用された文献の他、米国特許第4,080,207号、同第4,269,929号、同第4,276,364号、同第4,278,748号、同第4,385,108号、同第4,459,347号、同第4,478,928号、同第4,560,638号、同第4,686,167号、同第4,912,016号、同第4,988,604号、同第4,994,365号、同第5,041,355号、同第5,104,769号、英国特許第2,011,391B号、欧州特許第217,310号、同第301,799号、同第356,898号、特開昭60−179734号、同61−170733号、同61−270744号、同62−178246号、同62−270948号、同63−29751号、同63−32538号、同63−104047号、同63−121838号、同63−129337号、同63−223744号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号、同63−294552号、同63−306438号、同64−10233号、特開平1−90439号、同1−100530号、同1−105941号、同1−105943号、同1−276128号、同1−280747号、同1−283548号、同1−283549号、同1−285940号、同2−2541号、同2−77057号、同2−139538号、同2−196234号、同2−196235号、同2−198440号、同2−198441号、同2−198442号、同2−220042号、同2−221953号、同2−221954号、同2−285342号、同2−285343号、同2−289843号、同2−302750号、同2−304550号、同3−37642号、同3−54549号、同3−125134号、同3−184039号、同3−240036号、同3−240037号、同3−259240号、同3−280038号、同3−282536号、同4−51143号、同4−56842号、同4−84134号、同2−230233号、同4−96053号、同4−216544号、同5−45761号、同5−45762号、同5−45763号、同5−45764号、同5−45765号、同6−289524号、同9−160164号等の各公報に記載された化合物等が挙げられる。
【0058】
本発明の熱現像感光材料は、支持体の片面に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤を含有する感光性層および保護層をこの順に積層されたものが好ましく、さらに、前記支持体と前記感光性層との間に中間層を設置してもよい。
【0059】
また、感光性層とは反対の面には搬送性確保や、保護層とのブロッキング防止のためにバッキング層を有する感光材料も好適に用いることができる。なお、各層は単一層でも良いし、組成が同一あるいは異なる2層以上の複数の層で形成しても良い。
【0060】
本発明の感光性層中の感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を指す。またハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下となる粒子である。
【0061】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
感光性ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0062】
またもう一つの好ましい感光性ハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくはアスペクト比が3以上50以下である。また粒径は0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01〜0.08μmが好ましい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。
【0063】
感光性ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
【0064】
本発明に用いられる乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0065】
本発明の感光性ハロゲン化銀には、周期表の6族から11族に属する金属イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0066】
これらの金属イオンは金属錯体または金属錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。これらの金属錯体または金属錯体イオンとしては、下記一般式で表される6配位金属錯体が好ましい。
【0067】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0068】
Mとしては、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)で好ましく、これらを含む遷移金属錯体イオンの具体例としては、〔RhCl6〕3−、〔RuCl6〕3−、〔ReCl6〕3−、〔RuBr6〕3−、〔OsCl6〕3−、〔IrCl6〕4−、〔Ru(NO)Cl5〕2−、〔RuBr4(H2O)〕2−、〔Ru(NO)(H2O)Cl4〕−、〔RhCl5(H2O)〕2−、〔Re(NO)Cl5〕2−、〔Re(NO)(CN)5〕2−、〔Re(NO)Cl(CN)4〕2−、〔Rh(NO)2Cl4〕−、〔Rh(NO)(H2O)Cl4〕−、〔Ru(NO)(CN)5〕2−、〔Fe(CN)6〕3−、〔Rh(NS)Cl5〕2−、〔Os(NO)Cl5〕2−、〔Cr(NO)Cl5〕2−、〔Re(NO)Cl5〕−、〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2−、〔Ru(NS)Cl5〕2−、〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2−、〔Os(NS)Cl(SCN)4〕2−、〔Ir(NO)Cl5〕2−、〔Ir(NS)Cl5〕2−等が挙げられる。
【0069】
前述した金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10−9〜1×10−2モルが適当であり、好ましくは1×10−8〜1×10−4モルである。
【0070】
これらの金属を提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。
【0071】
添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは粒子内部に分布をもたせることができる。
【0072】
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0073】
粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0074】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子は粒子形成後に脱塩してもしなくてもよいが、脱塩を施す場合、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができる。
【0075】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法を用いることができる。また金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0076】
前述の硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物を用いることができるが、特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。
【0077】
貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては、例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060号、英国特許第618,061号などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0078】
還元増感法に用いられる具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0079】
本発明の感光性層に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸である。本発明において用いられる有機酸としては、脂肪族カルボン酸、炭素環式カルボン酸、複素環式カルボン酸、複素環式化合物等があるが、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環を有する複素環式カルボン酸等が好ましく用いられる。また、配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機銀塩錯体も有用である。
【0080】
このような有機酸銀塩の例としては、Research Disclosure第17029及び29963に記載されている。中でも、脂肪酸の銀塩が好ましく用いられ、特に好ましく用いられるのは、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀およびステアリン酸銀である。
【0081】
前述の有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、等が好ましく用いられる。また、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法を用いることも可能である。
【0082】
本発明においては、有機銀塩は平均粒径が1μm以下でありかつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。平均粒径は好ましくは0.01μm〜0.8μm、特に0.05μm〜0.5μmが好ましい。また単分散とは、ハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30である。本発明においては、有機銀塩が平均粒径1μm以下の単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで濃度の高い画像が得られる。さらに有機銀塩は平板状粒子が全有機銀の60%以上有することが好ましい。本発明において平板状粒子とは平均粒径と厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上のものをいう。
【0083】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
このような有機銀粒子は必要に応じバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザなどで分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミルなどを用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0084】
本発明に用いられる有機銀粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、特にジルコニアを用いることが好ましい。
【0085】
本発明に用いられる有機銀粒子は銀1gあたり0.01〜0.5mgのZrを含有することが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3mgのZrを含有する場合である。上記分散をおこなう際の、バインダー濃度、予備分散方法、分散機運転条件、分散回数などを最適化することは、本発明に用いられる有機銀塩粒子を得る方法として非常に好ましい。
【0086】
本発明の感光性層に含有される還元剤としては、当技術分野で知られているものを用いることができ、例えば、フェノール類、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシベンゼン類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等等が挙げられる。
【0087】
上記還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合に好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)またはアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基または硫黄によって連結されたポリフェノール類、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号若しくは英国特許第1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号若しくは特公昭51−35727号公報に記載されたポリフェノール化合物、米国特許第3,672,904号に記載されたビスナフトール類、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、更に米国特許第3,801,321号に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール類、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等を挙げることができる。
【0088】
本発明の感光性層に含有される還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モルであり、好ましくは0.1〜3モルである。又この量の範囲内において、上述した還元剤は2種以上併用されてもよい。
【0089】
さらに、本発明においては感光性層にバインダー樹脂を用いることが好ましい。
【0090】
このようなバインダー樹脂としては、従来から用いられている透明または半透明なバインダー樹脂を適時選択して用いることが出来き、そのようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロー等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリルゴム共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリポロピレン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種以上の樹脂を併用して用いても良い。
【0091】
なお、前記バインダー樹脂は本発明の目的を損なわない限り、保護層、中間層、あるいは必要にな場合に設けられるバックコート層の各層に適時選択して用いることができる。
【0092】
尚、中間層やバックコート層には、活性エネルギー線で硬化可能なエポキシ樹脂やアクリルモノマーなどを層形成バインダー樹脂として使用しても良い。
【0093】
さらに、本発明に係る感光性層には上述した必須成分、バインダー樹脂以外に、必要に応じてカブリ防止剤、調色剤、増感色素、強色増感を示す物質(以下強色増感剤と略記する)など各種添加剤を添加してもよい。
【0094】
このような、かぶり防止剤としては、米国特許第3,874,946号及び同第4,756,999号に開示されているような化合物、−C(X1)(X2)(X3)(ここでX1及びX2はハロゲン原子を表し、X3は水素またはハロゲン原子を表す)で表される置換基を1以上備えたヘテロ環状化合物、特開平9−288328号、特開平9−90550号、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号等に開示されている化合物を適時選択して用いることが出来る。
【0095】
現像後の銀色調を改良する目的で添加される色調剤としてはイミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)。好ましい色調剤としては、フタラゾン、フタラジンが挙げられる。
【0096】
なお、色調剤は本発明の目的を阻害しないのであれば後述する保護層に添加しても良い。
【0097】
また、増感色素としては、例えばアルゴンイオンレーザー光源に対しは、特開昭60−162247号、特開平2−48635号、米国特許第2,161,331号、西独特許第936,071号、特開平5−11389号等に記載のシンプルメロシアニン類、ヘリウムネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号に示された三核シアニン色素類、特開平7−287338号に記載されたメロシアニン類、LED光源及び赤外半導体レーザー光源に対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類、赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、特開昭60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類等が有利に選択される。更に赤外レーザー光源の波長が750nm以上更に好ましくは800nm以上である場合このような波長域のレーザーに対応する為には、特開平4−182639号、同5−341432号、特公平6−52387号、同3−10931号、米国特許第5,441,866号、特開平7−13295号等に記載されている増感色素が好ましく用いられる。
【0098】
また、強色増感剤としてはRD17643、特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されている化合物を適時選択して用いることができ、本発明では、下記一般式(M)で表される複素芳香族メルカプト化合物、実質的に前記のメルカプト化合物を生成する一般式(Ma)で表されるジスルフィド化合物を用いることができる。
【0099】
一般式(M) Ar−SM
一般式(Ma) Ar−S−S−Ar
一般式(M)において、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表し、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウムもしくはテルリウム原子を有する複素芳香環または縮合複素芳香環を表す。複素芳香環は、好ましくは、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリンである。
【0100】
また、一般式(Ma)において、Arは上記一般式(M)の場合と同義である。
【0101】
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I等の各原子)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有することができる。
【0102】
本発明に好ましく用いられる強色増感剤は有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲で用いるのが好ましく、特に銀1モル当たり0.01〜0.5モルの範囲にするのが好ましい。
【0103】
本発明の感光性層にはヘテロ原子を含む大環状化合物を含有させることができる。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子の少なくとも1種を含む9員環以上の大環状化合物が好ましく、12〜24員環がより好ましく、更に好ましいのは15〜21員環である。
【0104】
代表的な化合物としては、クラウンエーテルで下記のPedersonが1967年に合成し、その特異な報告以来、数多く合成されているものである。これらの化合物は、C.J.Pederson,Journal of American chemical society vol,86(2495),7017〜7036(1967),G.W.Gokel,S.H,Korzeniowski,”Macrocyclic polyethr synthesis”,Springer−Vergal,(1982)等に記載されている。
【0105】
本発明に係る感光性層には上述した添加剤以外に例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はResearch DisclosureItem17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物が好ましく用いられる。
【0106】
本発明において、感光性層は単層でも良く、組成が同一あるいは異なる複数の層で構成しても良い。なお、感光性層の膜厚は通常10〜30μmである。
【0107】
次に、本発明の熱現像感光材料に用いられる支持体と保護層について詳述する。
【0108】
本発明の熱現像感光材料に用いられる支持体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層してなる樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0109】
支持体は、潜像形成後熱で現像して画像形成することから、フィルム状に延伸しヒートセットしたものが寸法安定性の点で好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加してもよい。なお、支持体の厚みは、通常10〜500μm、好ましくは25〜250μmである。
【0110】
本発明の熱現像感光材料が有する保護層としては、上述の感光性層で記載したバインダー樹脂と必要に応じて添加される添加剤により構成され、保護層のバインダー樹脂は感光性層で記載したバインダー樹脂を適時選択して用いることができる。
【0111】
保護層に添加される添加剤としては、熱現像後の画像の傷つき防止や搬送性を確保する目的でフィラーを含有することが好ましく、フィラーを添加する場合の含有量は、層形成組成物中0.05〜30質量%含有することが好ましい。
【0112】
さらに、滑り性や帯電性を改良するために保護層には潤滑剤、帯電防止剤を含有しても良い、このような潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、(変性)シリコーンオイル、(変性)シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ化カーボン、ワックス等を挙げることができ、また、帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子帯電防止剤、金属酸化物または導電性ポリマー等、「11290の化学商品」化学工業日報社、p.875〜876等に記載の化合物、米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された化合物等を挙げることができる。
【0113】
本発明において、保護層は単層でも良く、組成が同一あるいは異なるの複数層の層で構成しても良い。なお、保護層の膜厚は通常1.0〜5.0μmである。
【0114】
本発明では、上述の感光性層、支持体および保護層以外に、支持体と感光性層との膜付を改良するために中間層を、搬送性や帯電防止を目的としてバックコート層を設置しても良く、設置する場合の中間層の厚みは通常0.05〜2.0μmであり、バッキング層の厚みは通常0.1〜10μmである。
【0115】
本発明の感光性層形成塗工液、保護層形成塗工液、必要に応じて設置される中間層およびバッキング層の形成塗工液は、上述で述べた成分を、それぞれ溶媒に溶解若しくは分散して調製する。
【0116】
溶媒としては、有機合成化学協会編の“溶剤ポケットブック”等に示されている溶解度パラメーターの値が6.0〜15.0の範囲のものであればよく、本発明において用いられる各層を形成する塗工液に用いる溶媒としては、例えば、ケトン類としてアセトン、イソフォロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。アルコール類としてメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール類としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。エーテルアルコール類としてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。エーテル類としてエチルエーテル、ジオキサン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0117】
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。炭化水素類としてn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩化物類として塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられるが、但し、本発明の効果を阻害しない範囲であればこれらに限定されない。
【0118】
また、これらの溶媒は、単独、または、数種類組合わせて使用できる。尚、画像形成材料中の上記溶媒の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整でき、熱現像感光材料中に含有される残存溶媒の量は合計量で5〜1000mg/m2が好ましく、更に好ましくは、10〜300mg/m2である。
【0119】
塗工液を形成する際に分散が必要な場合には、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザ、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等、従来から公知の分散機を適時選択してを用いることができる。
【0120】
本発明では、感光性層形成塗工液を塗工するには、エクストルージョン方式の押し出しコータ、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等の、公知の各種コータステーションを適時選択して用いることができる。これらのコータの中で、該層の厚みムラを無くすために、エクストルージョン方式の押し出しコータやリバースロールコータ等のロールコータを用いることが好ましい。
【0121】
又、保護層を塗工するには場合には、感光性層がダメージを受けないものであれば特に制限はないが、保護層形成塗工液に用いられる溶媒が、感光性層を溶解する可能性がある場合には、上述したコータステーションの中で、エクストルージョン方式の押し出しコータ、グラビアロールコータ、バーコータ等を使用することができる。尚、これらの中でグラビアロールコータ、バーコータ等接触する塗工方法を用いる場合には、搬送方向に対して、グラビアロールやバーの回転方向は順転でもリバースでも良く、また順転の場合には等速でも、周速差を設けても良い。
【0122】
更に、上述のように各層毎に塗布乾燥を繰り返してもよいが、ウェット−オン−ウェット方式で重層塗布して乾燥させても良い。その場合、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等とエクストルージョン方式の押し出しコータとの組み合わせにより塗布することができ、この様なウェット−オン−ウェット方式における重層塗布においては、下側の層が湿潤状態になったままで上側の層を塗布するので、上下層間の接着性が向上する。
【0123】
さらに、本発明では少なくとも感光性層形成塗工液を塗工後、本発明の目的を達成するために、塗膜を乾燥させる温度は65〜100℃の範囲である。
【0124】
乾燥温度が65℃未満では、反応が不十分であるため、経時による感度の変動が起こる場合が有り、また100℃を超える場合には、製造直後の熱現像感光材料自身にカブリ(着色)を生じる場合がある為好ましくない。また、乾燥時間は乾燥時の風量により一概に規定できないが、通常2〜30分の範囲で乾燥させることが好ましい。
【0125】
なお、上述の乾燥温度は、塗工後直ぐに前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させても良いし、乾燥の際に生じる塗工液のマランゴニーや、温風の乾燥風によって生じる表面近傍が初期に乾燥してしまうことによって生じるムラ(ユズ肌)を防止する目的で、初期の乾燥温度を65℃よりも低温で行い、その後前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させても良い。
【0126】
本発明に好ましく用いられるの画像記録方法としては、露光面とレーザ光のなす角度、レーザの波長、使用するレーザの数により三つの態様に大別され、それらを単独で行っても良いし、二種以上の態様を組み合わせても良い。
【0127】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャなどと原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0128】
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光の結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは2.54cm当たりのドットの数である)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0129】
また、このような、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、同一の場所に2本以上のレーザを入射角を変え露光面に集光させ画像形成する方法もある。この際の、通常の1本のレーザ(波長λ[nm])で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEである場合に、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λ[nm])、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の感光性層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が押えられる。
【0130】
なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いても良い。この場合、λ[nm]に対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0131】
画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。
【0132】
なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像感光材料に走査されるときの該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0133】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0134】
実施例1
1.下引済みポリエチレンテレフタレート(PET)支持体1の作製
2軸延伸熱固定済みの厚さ125μmのPETフィルムの両面に下記の条件でプラズマ処理を施し、次いで一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設してから乾燥させて下引層A−1とし、又反対側の面に帯電防止加工した下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設してから乾燥させて導電層としての下引層B−1とした。次いで、それぞれの下引き層表面に下記の条件でプラズマ処理を施した。
【0135】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%、5%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0136】
〈下引塗布液a−1〉
ブチルアクリレート(30質量%)、t−ブチルアクリレート(20質量%)、スチレン(25質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μm) 0.05g
コロイダルシリカ(平均粒径90μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
【0137】
【0138】
〈支持体の熱処理〉
得られた下引済み支持体の下引乾燥工程にて、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。その際に1×105Paの張力で搬送した。
【0139】
2.バック層面側の塗布
以下の組成のバック層塗布液1とバック保護層塗布液1を、それぞれ塗布前に絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、押し出しコーターで前記作製した支持体の帯電防止加工した下引層B−1面上に、合計ウェット膜厚が30μmになるよう、毎分120mの速度で同時重層塗布し、60℃で4分間乾燥を行った。
【0140】
(ハロゲン化銀粒子の調製)
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370ml、(96/4)のモル比の臭化カリウム、沃化カリウム0.436モル及び(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6モル/リットル含む水溶液370mlをpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
【0141】
(有機脂肪酸銀乳剤の調製)
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、十分攪拌した状態で1mol/Lの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1mol/Lのリン酸7.0mlを添加して十分攪拌した状態でN−ブロモこはく酸イミド0.01gを添加した。その後、あらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で攪拌しながら添加した。さらに1mol/L硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま攪拌した状態で1時間放置した。
【0142】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分攪拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。その後東ソー(株)社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更にポリビニルブチラール3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し35℃にて高速で十分攪拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
【0143】
(感光性層Em組成)
有機脂肪酸銀乳剤 1.4g(銀で)/m2
ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド 1.5×10−4mol/m2
臭化カルシウム 1.8×10−4mol/m2
2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸 1.5×10−3mol/m2
赤外増感色素1 4.2×10−6mol/m2
2−メルカプトベンズイミダゾール 3.2×10−3mol/m2
2−トリブロモメチルスルホニルキノリン 6.0×10−4mol/m2
4−メチルフタル酸 1.6×10−3mol/m2
テトラクロロフタル酸 7.9×10−4mol/m2
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−
トリメチルヘキサン 4.8×10−3mol/m2
造核剤 C−65 0.5×10−3mol/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0144】
(表面保護層組成)
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0145】
セルロースアセテートブチレート 4g/m2
フタラジン 3.2×10−3mol/m2
水を放出する化合物 表1に示す
マット剤(粒径2μm) 50mg/m2
溶媒は、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0146】
(耐湿度性の評価)
各々の試料を3分割し、23℃、48%で2時間調湿した試料を基準として、23℃、20%で2時間調湿した試料と、23℃、80%で2時間調湿した試料とを作製し、相対感度とカブリを求め、耐湿性の評価とした。結果を以下に示す。
【0147】
【化11】
【0148】
【表1】
【0149】
本発明の試料が比較の試料に比して、耐湿性が優れていることが分かる。
実施例2
水を放出する化合物を表面保護層に使用するかわりにバッキング層側に使用する以外は実施例1と同様に行ない試料を作製し、上記と同様に評価した。結果を以下に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
本発明の試料は比較に比して、耐湿性が優れていることが分かる。
【0152】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明による熱現像感光材料は、低湿下での感度低下及び高湿下でのカブリ低下が改良され、優れた効果を有する。
Claims (8)
- 支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層以外の層に加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記水を放出する化合物が100〜130℃に加熱することにより水を放出することを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記水を放出する化合物がフタル酸及びその誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱現像感光材料。
- 前記水を放出する化合物がアルコキシシラン化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱現像感光材料。
- 支持体上に有機銀粒子、ハロゲン化銀粒子、造核剤、還元剤を含有する感光層を有する熱現像感光材料において、該感光層が設けられている支持体の反対側の層が加熱により水を放出する化合物を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記水を放出する化合物が100〜130℃に加熱することにより水を放出することを特徴とする請求項5に記載の熱現像感光材料。
- 前記水を放出する化合物がフタル酸及びその誘導体であることを特徴とする請求項5又は6に記載の熱現像感光材料。
- 前記水を放出する化合物がアルコキシシラン化合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載の熱現像感光材料。
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JP2015105375A (ja) * | 2013-12-03 | 2015-06-08 | 株式会社Adeka | 樹脂組成物、熱伝導性硬化物、ケイ素化合物、シランカップリング剤組成物及び担持体 |
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WO2015083620A1 (ja) * | 2013-12-03 | 2015-06-11 | 株式会社Adeka | 樹脂組成物、熱伝導性硬化物、ケイ素化合物、シランカップリング剤組成物及び担持体 |
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