JP2004026595A - 導電性ファイバー分離装置 - Google Patents
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Abstract
【構成】基板上の流路内に電極列を設け,上を絶縁膜で被覆する。電極に交流電圧を印加しつつ流路に絶縁性液体に懸濁されたファイバーを流すと,導電性のファイバーには電流が流れて瞬時に電荷が誘導され,静電力により電極へと付着する。絶縁性ファイバーには電流が流れず,半導体ファイバーには印加した交流の周期の間には十分な電荷が誘導されないので,電極に付着しない。従って,導電性ファイバーのみをより分けることができる。
【選択図】 図3
Description
【産業上の利用分野】
本発明は,導電性ファイバーを非導電性ファイバーから選別分離する装置,特に,導電性カーボンナノチューブと非導電性カーボンナノチューブを分離する装置に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】
カーボンナノチューブ(CNT)は,炭素を成分とする直径1nm〜数十nmの太さを持つ筒状構造で,その特異な機械的・電気的性質を応用して,スキャニングプローブ顕微鏡(AFMやSTM)の探針・電子放出材料・高性能電池の電極材料・ナノエレクトロニクスにおける配線材料・電界効果トランジスタに類似した電子デバイス,など,種々の方面での研究開発が行われている。CNTの電気的性質は,チューブを構成する炭素原子間の結合の様態(カイラリティー)によって,金属的電気伝導を示したり,半導体になったりする。CNTの製法には,カーボンアークによるものやケミカルベーパーデポジション(CVD)によるものなどが用いられるが,いずれの場合にも製造時にカイラリティーを制御することはできず,産物は種々のカイラリティーを持つチューブの混合物になる。しかるに,たとえばナノエレクトロニクスにおける配線材料の場合には金属的電気伝導CNT,電界効果トランジスタの場合には半導体CNTと,応用により,異なる電気的性質すなわちカイラリティーのチューブが要求される。そこで,製造された混合物から選別分離して用いることになるが,現在のところ,電圧を印加して金属的電気伝導を示すものを過電流により破壊する,など,きわめて限られた選別手段しかない。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明では,カーボンナノチューブ(CNT)などのファイバー状物質をその電気的性質によって分離するため,電界により誘導されたファイバー上の電荷と,印加した電界との相互作用を用いる。すなわち,基板上の流路内に電極列を設け,電圧を印加しつつ,この上にファイバーの懸濁液を流す。ファイバーの懸濁には,絶縁性液体,たとえばシリコンオイルやフロンを用いる。気体は,ファイバーをうまく分散させることができないことに加え,絶縁破壊強度が低いので端部で電界集中が生ずるファイバーの分離の媒体としては不適当である。
この時ファイバーに生ずる電気現象を模式的に示したのが図1である。基板1の上にある電極からは電気力線9が出る。電界中におかれたファイバー10には,もしそれが導電性であれば,この力線に誘導されて電流が流れ,電気力線の下流側に正の,上流側に負の自由電荷(または真電荷とも呼ばれる,分極電荷でない,自由に動ける電荷)11が現れる。自由電荷には,電気力線により電気力12が及ぼされ,その結果としてファイバーが電極へと引き寄せられる。ファイバーが直接電極に接触すると,上記の誘導電荷が電極に流れ込んで失われてしまうので,これを防止するために,電極上には絶縁膜のコーティング3が施されている。この膜の働きにより,ファイバーは電極上の絶縁膜の上へと堆積する。図では電極のちょうど中央にファイバーが置かれている場合が描かれているが,ちょうど中央にない場合には,ファイバーはいずれか近い方の電極へと向かって引き寄せられることになる。
図2は,このファイバーへの自由電荷の誘導の等価回路を示す。自由電荷の移動は,ファイバーの等価抵抗を通してファイバーと電極の間の静電容量を充電するプロセスである。この図からわかるように,絶縁性ファイバーには電流が流れず自由電荷の発生がないので電極へとひきよせられない。また,半導体ファイバーの場合には等価抵抗が大きく静電容量の充電に時間がかかるので,この充電の時定数より十分に早い交流電圧を印加すれば,少量の自由電荷しか発生しないことになり,やはり電極へと引き寄せられることはない。
したがって,本装置により,導電性ファイバーと,絶縁性あるいは半導体ファイバーとの分離が可能になる。
なお,本法は,外部電界の印加により誘導される自由電荷に働く力を分離の原理としており,もともとファイバーの持つ電荷に働く電気力を利用する電気泳動法とは根本的に原理を異にするものである。電気泳動法における電気泳動度は,ファイバーの導電率とは本質的に関係のないものであるのに対し,本法はファイバーの導電率に直接依存する誘導電荷の量により分離するもので,導電率を指標とした明確な分離が可能になる。
【0004】
【実施例】
図2は,本発明の実施例を基板上側から見た図,図3はそのA−A’断面図である。
この装置は,基板1の上に設けられた電極列2,それを覆う絶縁膜3,ここにファイバー懸濁液を導入するための流路壁4と流路5,懸濁液入口6,懸濁液出口7および交流電源8からなる。電極列に電圧を印加しつつファイバー懸濁液を流路に流すと,導電性のファイバーには電荷が誘導されて,その電荷が電極へと引き寄せられる結果,導電性ファイバーは電極上の絶縁膜へと付着するのに対し,絶縁性あるいは半導体ファイバーには電荷が誘導されないので,媒質の流れとともに出口から出ていくことになる。
むろん,本装置の用途は,カーボンナノチューブ(CNT)の選別のみに限定されるものではなく,導電性ファイバーの選別一般に用いることができる。
【0005】
【発明の効果】
本発明によれば,構造が単純で小形な,導電性ファイバーを非導電性ファイバーから選別分離する装置,特に,導電性カーボンナノチューブと非導電性カーボンナノチューブを分離する装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置内でのファイバーに誘導される自由電荷の説明図
【図2】ファイバー上への自由電荷の誘導の等価回路
【図3】本発明による導電性ファイバー分離装置の実施例上面図
【図4】図1のA−A’断面図
【符号の説明】
1. 基板
2. 電極列
3. 絶縁膜
4. 流路壁
5. 流路
6. 試料懸濁液入口
7. 試料懸濁液出口
8. 交流電源
9. 電気力線
10. ファイバー
11. 誘導された自由電荷
12. 自由電荷に働く電気力
13. ファイバーと電極の間の等価静電容量
14. ファイバーの等価抵抗
Claims (3)
- 基板の上に,電極列,電極列を覆う絶縁膜,および電極列の上にファイバーを分散させた懸濁液を流すための流路を持ち,電極列に電圧を印加することにより導電性の高いファイバーに自由電荷を誘導させ,これに働く電気力を利用して,導電性ファイバーを電極列へと引き寄せることにより,導電性ファイバーを非導電性のファイバーから選別分離することを特徴とする,導電性ファイバー分離装置。
- 前記のファイバーの懸濁に絶縁性液体を使用することを特徴とする請求項1記載の導電性ファイバー分離装置。
- 前記の電極列に印加する電圧が,周波数50Hz以上の交流であることを特徴とする請求項1記載の導電性ファイバー分離装置。
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