JP2004024078A - ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーおよびタンパク質相互作用検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易で、迅速なタンパク質相互作用検出方法を提供することを課題とするものである。また、本発明は、サイズが大きく、多様性の高い、オリゴヌクレオチドライブラリーまたはオリゴペプチドライブラリーを提供することを課題とするものである。
【解決手段】コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーを作製し、ライブラリーから供給されるランダムオリゴヌクレオチドをツーハイブリッドシステムに組み込み、標的タンパク質またはベイトタンパク質として発現させ、タンパク質相互作用の検出を行う。
【選択図】 なし
【解決手段】コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーを作製し、ライブラリーから供給されるランダムオリゴヌクレオチドをツーハイブリッドシステムに組み込み、標的タンパク質またはベイトタンパク質として発現させ、タンパク質相互作用の検出を行う。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質相互作用検出方法に関し、詳しくは、タンパク質同士の相互作用を効率よく見出すことができる方法に関する。また、本発明は、タンパク質相互作用検出方法において好適に用いられるランダムオリゴヌクレオチドライブラリーなどに関する。さらに、本発明は、タンパク質相互作用検出方法を応用したタンパク質検索方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質は主要な生体構成分子であり、タンパク質とタンパク質との相互作用は、生体における代謝、シグナル伝達などの様々なプロセスにおいて不可欠なものである。また、近年のゲノム解析の進展等により、次々に新規なタンパク質が見出されている。このような状況で、タンパク質の相互作用を系統立て解析し、タンパク質の機能を解析することが、学術的のみならず、バイオテクノロジーに関わるすべての産業界において急務とされている。
【0003】
タンパク質同士の相互作用を検出するにあたっては、まず最初の段階としてオリゴペプチドなどタンパク質の一部を用いて相互作用を検出するという手法が開発されている。例えば、次のような方法がある。
【0004】
第1に、コンビナトリアルケミストリーを利用して様々なアミノ酸配列を有するオリゴペプチドを化学合成してライブラリーを作製し、そのライブラリーに含まれるオリゴペプチドを所望のタンパク質に作用させ、オリゴペプチド−標的タンパク質の複合体を形成したものを選別する方法である。
【0005】
第2に、オリゴペプチドを生物の膜表面に提示させたライブラリーを作製し、ライブラリーの中から所望のタンパク質と結合するものを選別する方法である。例えば、M13ファージの外殻タンパク質とオリゴヌクレオチドとを融合させた形態でM13ファージ表面に提示させて、外殻タンパク質と結合するものを選別する方法がある。また、大腸菌の鞭毛タンパク質とオリゴヌクレオチドを融合させたかたちで大腸菌表面に提示させるものもある。さらに、出芽酵母やヒューマン培養細胞系において、レセプタータンパク質にオリゴヌクレオチドを融合させた形態で細胞表面に提示させるシステムもある。
【0006】
第3にピューロマイシン(puromycin)などの抗生物質を利用する方法がある。DNAから転写・翻訳を行う際に、ピューロマイシンを添加しておくことにより、ポリペプチドとそのポリペプチドをコードするRNAとの複合体が生成される現象を利用した方法である。この現象を利用し、オリゴペプチド−RNA複合体のライブラリーを作製し、このライブラリーの中から標的タンパク質と結合するオリゴペプチド−RNA複合体を選抜する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1の場合のようにコンビナトリアルケミストリーを利用した方法は、現時点では化学合成しにくいアミノ酸配列パターンがあるという大きな問題がある。すなわち、化学合成されるポリペプチドの配列パターンは、あらゆるアミノ酸配列パターンを網羅できるわけではなく、また、確かめたいと考えてもそのパターンのアミノ酸配列を有するポリペプチドが得られない場合がある。また、合成を行う実験者に高い熟練度が要求されることや、費用などの点で、新たにタンパク質の相互作用を見出すために要求される大きなライブラリーを得ることが実際のところ困難である。
【0008】
合成されにくいアミノ酸配列があるという問題点に関しては、分子生物学的手法を用いた上記の第2、第3の手法は有利である。細胞内で、あるいは生体物質を用いて試験管内で、オリゴペプチドを合成する場合、基本的にはコンビナトリアルケミストリーの場合のようなアミノ酸配列パターンの制限はない。
【0009】
しかし、第1の方法も含めこれらの手法はいずれも、タンパク質相互作用のスクリーニングをin vitroで行う実験系である。したがって、相互作用するペプチドをスクリーニングするためには、相互作用を調べようとする対象となるタンパク質を生理活性が保たれた状態で精製することが必須となる。さらに、生理活性が保たれた状態で試験対象タンパク質を固層に固定化し、大量なオリゴペプチドからなるライブラリーと反応させて、結合しなかったオリゴペプチドは除去し、強固に結合するオリゴペプチドを選別してこなければならない。当然ながらこれらの処理工程の間、タンパク質の活性が保たれるようにしなければならない。タンパク質の単離、精製、生理活性の維持は、煩雑で繊細な処理がつきまとう。
【0010】
さらに、第3の手法については、オリゴペプチド−RNA複合体を安定して生成させることがまだ難しく、ピューロマイシンの添加条件などに関し、さらに改良を加えるべき余地が大きいと考えられる。
【0011】
ところで、オリゴペプチドを用いる場合を含め、タンパク質の相互作用を検出する手法として、ツーハイブリッドシステムが開発されている。FieldsおよびSong(1989)により、酵母を用いたツーハイブリッドシステムが構築され、タンパク質相互作用の同定手法に大きな進展をもたらした。
【0012】
酵母ツーハイブリッド系の一例を挙げ、ツーハイブリッドシステムの原理を説明する。酵母ツーハイブリッド系は、2つの分離可能な機能性ドメインを保有する多種多様な真核生物転写因子の特徴を利用する。2つのドメインのうちの一方は、シスエレメントを特異的に認識して結合するDNA結合ドメイン(「DBD」と略称する場合がある)であり、他方は、転写を活性化する転写活性化ドメイン(「AD」と略称される場合がある)である。このツーハイブリッド系では、DNA結合ドメイン(GAL4bdまたはlexA)と関心のあるタンパク質「A」とを含むいわゆるbaitタンパク質が酵母内で融合タンパク質として発現される。同じ酵母細胞はまた、同時に、DNA活性化ドメイン(GAL4adまたはVP16)およびタンパク質「B」を含むいわゆるfishタンパク質も発現する。baitタンパク質とfishタンパク質とが相互作用すると、これらの融合タンパク質のDNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインが近接するようになり、その結果生じるタンパク質複合体がレポーター遺伝子(例えばHIS3またはlacZ)の発現を誘発する。この発現は、ヒスチジン不含の選択培地上での該酵母細胞の培養により、またはlacZ遺伝子の活性化により容易にモニターできる。例えば未知のfishタンパク質をコードするDNA配列は、対応するプラスミドを単離し、続いて塩基配列分析を行うことにより容易に同定可能である。なお、ツーハイブリッドシステムにおいては、試験対象となる一方のタンパク質であって、探索の標的となるタンパク質のことを標的タンパク質、prey(プレイ:獲物)タンパク質またはfish(フィッシュ)タンパク質などといい、標的タンパク質の相方となるタンパク質のことをbait(ベイト:餌)タンパク質ということがある。
【0013】
さらに、ツーハイブリッド系の改変系がいくつか開発されている。生物学上の系に見られる様々な相互作用を同定、検出およびアッセイするためには、異なるツーハイブリッド系を使用しなければならないと考えられており、実際、その他のツーハイブリッド技術が発達し、タンパク質−タンパク質相互作用を別の生物体および/または異なる細胞コンパートメントの中で調査することが可能になった。
【0014】
ツーハイブリッドシステムは、相互作用を確認しようとする供試タンパク質を用意するところからタンパク質相互作用のスクリーニング段階に至るまでを、分子生物学手法により生体内で迅速に行うことが可能であり、関心のあるタンパク質の生理活性を保持しつつ単離・精製して供試するという手間を省くことができる。さらに、ツーハイブリッドシステムは、相互作用パートナーをコードする対応する核酸配列を簡易に単離可能であるという点でも優れている。すなわち、タンパク質相互作用を検出するに当たってはツーハイブリッドシステムを利用することが、迅速性、容易さ、コストなどの点で有利であると考えられる。
【0015】
本発明者らは、ツーハイブリッドシステムを利用し、新たなタンパク質相互作用をより一層効率よく検出するためには、相互作用を確かめようとするタンパク質(あるいはポリペプチド)の組み合わせパターンを多く用意する必要があり、そのためには如何にサイズが大きく、多様性の高い供試サンプルのライブラリーを作製するかが重要となるという着想に至った。
【0016】
以上のような観点から、本発明は、容易で、迅速なタンパク質相互作用検出方法を提供することを課題とするものである。また、本発明は、サイズが大きく、多様性の高い、オリゴヌクレオチドライブラリーまたはオリゴペプチドライブラリーを提供することを課題とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を進めたところ、ある所定の規則性に基づいた配列を有するランダムオリゴヌクレオチドを作製してランダムオリゴヌクレオチド等のライブラリーを得ることにより、配列のランダム性が高く、かつサイズの大きなオリゴヌクレオチドライブラリー等を得ることに成功し、このライブラリーに含まれるオリゴヌクレオチドをツーハイブリッドシステムの供試タンパク質として供給することにより、極めて効率よくタンパク質の相互作用を検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明は次の通りである。
〔1〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチド。
〔2〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)となるようにヌクレオチドを結合させて、ランダムな塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを作製する、ランダムオリゴヌクレオチド作製方法。
〔3〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドの両端に、前記ランダムオリゴヌクレオチドでは出現しない塩基配列パターンの制限酵素認識配列を含むライゲーション部を有する、ランダムオリゴヌクレオチドカセット。
〔4〕 ランダムオリゴヌクレオチドの両端にあるライゲーション部がそれぞれ異種の制限酵素認識配列を含む、請求項3に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセット。
〔5〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドが組み込まれた組換えDNA。
〔6〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドと、DNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドとが連結されたポリヌクレオチドが組み込まれた、組換えDNA。
〔7〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドと、転写活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドとが連結されたポリヌクレオチドが組み込まれた、組換えDNA。
〔8〕 上記〔5〕から〔7〕のいずれか一項に記載の組換えDNAを有する形質転換細胞。
〔9〕 上記〔1〕に記載のランダムオリゴヌクレオチド、上記〔3〕または〔4〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセット、上記〔5〕から〔7〕のいずれか一項に記載の組換えDNA、および、上記〔8〕に記載の形質転換細胞からなる群より選ばれる1種または2種以上を含み、かつ、複数種のランダムオリゴヌクレオチドが含まれる、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリー。
〔10〕 上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに含まれる組換えDNA中のランダムオリゴヌクレオチドが発現して生成された複数のランダムオリゴペプチドが含まれる、ランダムオリゴペプチドライブラリー。
〔11〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)となるようにヌクレオチドを結合させて、塩基配列がランダムなランダムオリゴヌクレオチドを作製する工程と、
前記ランダムオリゴヌクレオチドをベクターに組み込んで組換えベクターを作製する工程と、
前記組換えベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を作製する工程と、
前記形質転換体が有するランダムオリゴヌクレオチドを発現させて、ランダムオリゴペプチドを生成せしめる工程と、
を有する、ランダムオリゴペプチドライブラリー作製方法。
〔12〕 タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAおよびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAを細胞内に導入し、前記細胞内でタンパク質X−DNA結合ドメイン複合体およびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体を発現させ、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用する場合に前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性化される前記細胞内のレポーター遺伝子の転写産物を検出して、タンパク質Xとタンパク質Yとの相互作用を検出するツーハイブリッドシステムにおいて、
タンパク質Xおよびタンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが、上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドである、タンパク質相互作用検出方法。
〔13〕 前記レポーター遺伝子の発現量を測定して、タンパク質Xとタンパク質Yとの結合力を測定する、上記〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法。
〔14〕 上記〔12〕のタンパク質相互作用検出方法におけるタンパク質Xまたはタンパク質Yのいずれか一方が受容体タンパク質またはその一部であり、他方が上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドである、リガンドのスクリーニング方法。
〔15〕 上記1〔12〕のタンパク質相互作用検出方法におけるタンパク質Xまたはタンパク質Yのいずれか一方がリガンドまたはその一部であり、他方が上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドである、受容体タンパク質の結合部位のスクリーニング方法。
〔16〕 〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、
タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、解析されたアミノ酸配列をアミノ酸配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、
ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する、相互作用タンパク質検索方法。
〔17〕 上記〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、
タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードするランダムオリゴヌクレオチドが有する塩基配列を解析し、解析された塩基配列を塩基配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、
ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する、相互作用タンパク質検索方法。
〔18〕 上記〔16〕または〔17〕に記載の相互作用タンパク質検索方法によりデータベースから検出されたタンパク質中で、当該タンパク質に含まれるランダムオリゴペプチドの位置を、当該タンパク質および当該ランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を対比することにより特定して、当該タンパク質の相互作用部位を特定する、タンパク質の相互作用部位特定方法。
〔19〕 上記〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、当該アミノ酸配列の一部の配列を改変するようにオリゴヌクレオチドを作製し、改変ペプチドについて再度ツーハイブリッドシステムによる相互作用検出を行い、相互作用の有無を検出して相互作用の必須配列部位を特定することを特徴とする、タンパク質相互作用検出方法。
〔20〕 タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、
タンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、
前記DNA結合ドメインおよび前記転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子とが導入されており、
前記タンパク質Xおよび前記タンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが、上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドである、ツーハイブリッドシステム細胞。
〔21〕 前記細胞が、大腸菌である、上記〔20〕に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
〔22〕 前記細胞が、酵母である、上記〔20〕に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
〔23〕 前記細胞が、哺乳類に由来する細胞である、上記〔20〕に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
〔24〕 上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、
DNA結合ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
転写活性化ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された宿主細胞と、
を備える、タンパク質相互作用検出キット。
〔25〕 上記〔3〕または〔4〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセットを含むランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、
前記ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、DNA結合ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、転写活性化ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された細胞と、
を備える、タンパク質相互作用検出キット。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、1.ランダムオリゴヌクレオチド、2.ランダムオリゴヌクレオチドカセットおよび組換えDNA等、3.ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーおよびランダムオリゴペプチドライブラリー、4.タンパク質相互作用の検出方法およびその応用、5.タンパク質相互作用検出キットの順に説明する。なお、本発明における遺伝子工学的な処理、例えば、プラスミド、DNA断片、種々の酵素、形質転換体の作製、形質転換体の選抜などを扱う諸操作については、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, 2nd Edition, J. Sambrookら編、1989、COLD SPRING HARBOR LABORATORY PRESS等の既知の実験マニュアルを採用することができる。
【0020】
1.ランダムオリゴヌクレオチド
本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、その一本鎖の配列が、一般式(I)または(II)に示されるオリゴヌクレオチドである(図1、2)。本明細書では、「オリゴヌクレオチド」における「オリゴ」とは、生体内などに存在する大型のタンパク質(ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドのような大きな分子量のポリヌクレオチドに比べ、化学的に合成できる程度の小さい分子量であることを意味する。したがって本明細書において「オリゴ」の語句は、数値的に明確に限定されるものではないが、概算的には、アミノ酸数として1〜50個のポリペプチドまたは塩基数として3〜150bのヌクレオチド程度の大きさを意味する。どのようなサイズのオリゴペプチドを作製するかは、上記のような範囲を目安に、適宜目的に応じて定めることができる。なお、「ポリヌクレオチド」とは、2以上のヌクレオチドを有する分子であり、オリゴヌクレオチドはポリヌクレオチドの一形態に含まれる。また、「ポリペプチド」とは、2以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合した分子であり「ポリペプチド」とは、2以上のペプチド結合を有する分子である。「オリゴヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドの一形態に含まれる。
【0021】
また、「オリゴヌクレオチド」という場合、修飾されていないRNA、DNAの他、修飾されたRNA、DNAを含む。「修飾された」とは、1又は2以上の塩基がいわゆる修飾塩基であることいい、例えば、メチル体、含硫誘導体、脱アミノ誘導体、アデノシン誘導体などの塩基誘導体が含まれる。また、「オリゴヌクレオチド」は、アンチセンス鎖(mRNAに対して相補的な関係にある鎖)、コード鎖のいずれでもよい。また、「オリゴヌクレオチド」は、一本鎖であっても、二本鎖であってもよく、さらにRNAもしくはDNAのいずれか一方からなる三本鎖領域、または、RNAとDNAの双方を含む三本鎖領域を有していてもよい。
【0022】
一般式(I)または(II)において、「N」は、A(アデニン)、C(シトシン)、G(グリシン)またはT(U)から選ばれる塩基である。「T(U)」は、DNAであればT(チミン)が該当し、RNAであればU(ウラシル)が該当する。また、「K」は、GまたはT(U)のいずれか一方である。「S」はGまたはCのいずれか一方である。
【0023】
一般式(I)または(II)に示されるように、本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、コドンの1番目、2番目の塩基としてNで表される塩基が配列されており、コドンの3番目の塩基として、Kが配置される場合と、Sが配置される場合の2形態がある。「x」は、1または2以上の整数を示す。すなわち、本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、図1および図2に示される模式配列のように、(NNK)または(NNS)の繰り返し配列を有するヌクレオチド分子である。図1中、模式配列に示される配列上部の▲1▼〜▲3▼の数値はコドンの第1〜3番目を示す。
【0024】
一般式(I)または(II)に示されるような規則性を有する配列により、コドンによりコードされる20種のアミノ酸はすべて網羅される。また、コドンには縮重があるが、一般式(I)または(II)に示されるような規則性に基づいて配列することにより、重複するコードの数を減らすことができる。すなわち、一般式(I)または(II)で示されるような規則性なしにランダムに合成する場合よりも、個々のアミノ酸の出現頻度を均等化することができる。そのため、オリゴヌクレオチドがコードするアミノ酸配列パターンが多様化しやすく、確率的にランダム性の高いオリゴヌクレオチドを得やすい。重複するコードを減らせる例としては、アルギニン(Arg)には6種の対応コドンがあるが、本発明の場合、3種の対応コドンしか現れない。したがって、オリゴヌクレオチドを合成する場合に、アルギニンの現れる確率を縮重の少ないアミノ酸の現れる確率に近づけることができる。さらに、このような配列を有するランダムオリゴヌクレオチドが複数集合して形成されるライブラリーも、対応するアミノ酸配列のパターンについてランダム性の高い複数種の分子を含む集合とすることができる。
【0025】
さらに、本発明者らは、一般式(I)または(II)で示される配列は、特定の制限酵素の認識配列が現れないことを見出した。本発明のランダムオリゴヌクレオチドを遺伝子工学的に何らかの加工、処理等を施す場合、本発明のランダムオリゴヌクレオチド配列中には制限酵素認識配列がないような酵素を用いることにより、処理中に所定のランダムオリゴヌクレオチドを切断し、ランダムオリゴヌクレオチドを損失してしまうことを抑制することができる。一般式(I)の配列では認識部位がないような制限酵素の例を表1に、一般式(II)の配列では認識部位がないような制限酵素の例を表2にそれぞれ示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
一般式(I)または(II)で示されるように複数のオリゴヌクレオチドを作製すると、TAGという停止コドンが生じ得るが、TAGという配列が不規則に生じることにより、オリゴペプチドの長さの点でもランダム性の高いオリゴヌクレオチドのライブラリーを作製することができる。
【0029】
一般式(I)または(II)で示されるランダムオリゴヌクレオチドは、DNA合成装置などを用いて、化学合成により作製することができる。「NNK」または「NNS」のように規則的な配列を有する分子を作製するには、4種のヌクレオチド分子を含む試薬貯蔵タンクと、2種のヌクレオチド分子を含む試薬貯蔵タンクとを用意し、コンピュータ制御により「N」の位置にヌクレオチド分子を結合させる際には4種のヌクレオチド誘導体を含む試薬貯蔵タンクから試薬を供給し、「K」または「S」の位置にヌクレオチド分子を結合させる際には2種のヌクレオチド誘導体が含まれる試薬貯蔵タンクから試薬を供給し、五炭糖の3’と5’との間をリン酸ジエステル結合することを繰り返し、DNA鎖を合成伸長していけばよい。また、RNAを作製する場合には、DNAを鋳型とすれば、一般式(I)または(II)の規則性を有するRNAを作製することができる。ランダムオリゴヌクレオチドの長さは、目的等に応じて適宜調節可能である。
【0030】
2.ランダムオリゴヌクレオチドカセットおよび組換えDNA等
本発明のランダムオリゴヌクレオチドカセットは、上記本発明のランダムオリゴヌクレオチドの両端に、ライゲーション部を備えたものである。本明細書において「ライゲーション部」とは、ランダムオリゴヌクレオチドを他のポリヌクレオチドとライゲーションするための配列を有するポリヌクレオチドであり、リンカー、アダプター、ホモポリマーなどのいずれでもよい。本発明においては、ライゲーション部の配列には、一般式(I)または(II)には現れない塩基配列で構成される制限酵素認識配列が含まれるようにする。このようなライゲーション部を両端に備えることにより、一般式(I)または(II)で示される塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドを切断してしまうことなく、制限酵素等を用いて容易にベクターなどに組み込むことができる。なお、制限酵素認識配列は、切断されていない状態に相当する配列を備えていても、また切断された状態に相当する配列を備えていても、本発明のカセットである。
【0031】
具体例を挙げれば、ライゲーション部は、一般式(I)の配列を有するランダムオリゴヌクレオチドに対しては表1に例示された制限酵素認識配列を内在するようにして作製することができ、一般式(II)のランダムオリゴヌクレオチドに対しては表2に例示された制限酵素認識配列を内在するようにして作製することができる。なお、表1および2中、黒三角で示す部分は切断箇所を示す。
【0032】
また、ランダムオリゴヌクレオチドカセットを作製する場合には、ランダムオリゴヌクレオチドを合成する際に、ランダム配列部分と共に最初から制限酵素認識配列が付加して作製することが好ましい。プラスミドなどのベクターに組み込むことを予定する場合には、一本鎖のランダムオリゴヌクレオチドを合成し、これを鋳型として相補的な鎖を合成して二本鎖とする。このようにして、両端には所定のライゲーション部が備えられるので、ライゲーション部に含まれる制限酵素認識配列を認識する制限酵素を用いて所定の末端を形成し、ベクターなどに組み込むことができる。
【0033】
ランダムオリゴヌクレオチドの両端に備えられるライゲーション部の種類を異なるものとすることにより、組換えDNAを作製する際に、ランダムオリゴヌクレオチドの配列の向きを特定することができる。より具体的には、制限酵素認識配列の配列または切断仕様が異なるライゲーション部をそれぞれオリゴヌクレオチドの一端に設け、切断した際の末端の形状、付着末端の場合には突出部の配列が異なるように形成する。
【0034】
ランダムオリゴヌクレオチドカセットの作製から組換えDNAの作製までについて、より具体的な例を図3に示す。図3中、「N」に相補的な塩基を「n」と、「K」に相補的な塩基を「k」として示す。まず、ランダムオリゴヌクレオチドをDNA合成装置で作製する。この際、[(NNK)x]で示されるランダム配列部分の両端には、ライゲーション部としてリンカーとなる配列が既に設計されて付加されている。また3’末端側は、プライマーを兼ねるようにポリAが付加された配列となっている。
【0035】
合成された一本鎖を二本鎖にするためのプライマーも別途合成する。このプライマーは、ランダムオリゴヌクレオチドの3’側のポリA部に相補的にポリTを有するDNA断片である。
【0036】
合成されたランダムオリゴヌクレオチドとプライマーとをアニーリングして二本鎖を形成させ、DNAポリメラーゼ I、Klenowフラグメント、Taq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼを用いてプライマー部から相補的な配列を伸長させて、二本鎖のランダムオリゴヌクレオチドカセットが得られる。図3上、左側のライゲーション部には、Bgl IIの制限酵素認識配列が含まれており、イタリックで表示している。また、図3上、右側のライゲーション部には、Dra Iの制限酵素認識配列が含まれており、同様にイタリックで表示している。
【0037】
得られたランダムオリゴヌクレオチドカセットを、プラスミドベクターpTRG2のクローニングサイトに組み込む。pTRG2は、Bam HIおよびSma Iの認識部位を備えるように加工しておく。pTRG2をBam HIおよびSma Iで処理し、他方、ランダムオリゴヌクレオチドカセットは、Bgl IIおよび Dra Iで処理し、所定の向きに、組み込むことができる。Bgl II および Dra Iは[(NNK)x]で示されるDNAを切断しないので、組換えDNAを作製するためにランダムオリゴヌクレオチドを損失することがない。
【0038】
本明細書において組換えDNAとは、2種以上のDNA同士が連結されたハイブリッド分子のことである。本発明の組換えDNAの好ましい形態としては発現ベクターが挙げられる。発現ベクターは様々な形態のものが既に知られており、また市販されているものもある。本発明では組換えDNAの形態は、用途などに応じて適宜選択してよく、市販の発現ベクターなど公知の発現ベクターを用いることができる。下記に限定されるものではないが発現ベクターに関連する具体例を示す。
【0039】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13、市販品としてpBT Vector, pTRG Vector(Stratagene社製)など)、酵母由来プラスミド(例、YEp24,YCp50など)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルス、枯草菌に好適に用いられるプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194など)などの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
【0040】
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主細胞に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが挙げられる。また、宿主細胞が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが挙げられる。宿主細胞が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。また、動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
【0041】
発現ベクターは、組換え操作についての扱いやすさの観点からマルチクローニングサイトを有することが好ましい。また、以上の他に、発現ベクターには、所望により選択マーカー、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)、ターミネーターなどを組み込むことができる。選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子(カルベジニシリン耐性遺伝子ともいわれる。以下、AmpRと略称する場合がある)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(以下、CamRと略称する場合がある)、テトラサイクリン耐性遺伝子(以下、TetRと略称する場合がある)、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、NeoRと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。また、必要に応じて、宿主細胞に合ったシグナル配列を、本発明のランダムオリゴヌクレオチドまたはカセットのN端末側に付加する。宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主細胞が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主細胞が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、Rasファルネシル化・シグナル配列などをそれぞれ利用できる。
【0042】
上記のようにランダムオリゴヌクレオチドを有する発現ベクターを作製し、これを宿主細胞に導入し、ランダムオリゴヌクレオチドでコードされたランダムオリゴヌクレオチドを発現する形質転換体を作製することができる。
【0043】
宿主細胞としては、例えば、連鎖球菌(streptococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、エシェリヒア属菌(Escherichia coli)、ストレプトミセス属菌(Streptomyces)および枯草菌(Bacillus subtilis)などの細菌細胞;酵母、アスペルギルス属(Aspergillus)などの真菌細胞;ドロソフィラS2(Drosophila S2)およびスポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、ボウズ(Bows)黒色腫細胞および血球系細胞などの動物細胞;ならびに植物細胞が挙げられる。
【0044】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986);Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)のような、多くの標準的な実験マニュアルに記載される方法により行うことができる。より具体的には、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、バイオリスティック導入(biolistics法)または感染等がある。
【0045】
形質転換体の培養は、宿主の種類等に応じて調節して行えばよい。宿主の種類は多数に上るが、いくつかの具体例を挙げると次の通りである。例えば、宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地は液体培地でも寒天培地でもよく、その中には形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他を配合する。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機塩としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。エシェリヒア属菌を培養する際の好適な培地として具体的には、酵母エキス、トリプトン、塩(NaCl)を含むLB培地などが例示される。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシドのような誘導剤を添加してもよい。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
【0046】
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、Burkholder最小培地、0.5%カザミノ酸を含有するSD培地などが挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0047】
また、宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature、195、788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0048】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地(The Journal of the American Medical Association、199巻、519(1967))、199培地(Proceeding ofthe Society for the Biological Medicine、73巻、1(1950))などが用いられる。pHは約6〜8であることが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。また必要に応じて、CO2濃度の調節を行う。
【0049】
以上のようにして、形質転換体に、ランダムオリゴヌクレオチドに対応したランダムオリゴポリペプチドを生成させることができる。
【0050】
3.ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーおよびランダムオリゴペプチドライブラリー
本発明のオリゴヌクレオチドライブラリーは、複数種のランダムオリゴヌクレオチドが含まれる集合体である。ライブラリーの形態には特に制限はなく、ランダムオリゴヌクレオチド、ランダムオリゴヌクレオチドカセット、ランダムオリゴヌクレオチドを有する組換えDNA、この組換えDNAにより形質転換された形質転換体のいずれの形態であってもよく、これらの1種によりランダムオリゴヌクレオチドの集合が構成されていても2種以上が混合されて集合が構成されていてもよい。
【0051】
上記のように、本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、所定の規則性を持って作製されており、その集合体は様々な塩基配列パターンのオリゴヌクレオチドを含み、集合体としてのランダム性は高い。また、作製するランダムオリゴヌクレオチドの長さにもよるが、上記のように本発明のランダムオリゴヌクレオチドは合成装置により自動的に合成可能である。すなわち、オリゴヌクレオチドの種類の多さ、オリゴヌクレオチドの量などについてライブラリーサイズの大きなものを容易に作製することができる。
【0052】
本発明のオリゴペプチドライブラリーは、形質転換体で構成されるランダムオリゴヌクレオチドライブラリーを用い、当該ライブラリーに含まれている各形質転換体内で、オリゴヌクレオチドを発現させることにより得ることができる。上記ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーのランダム性が高く、またアミノ酸の出現頻度を均等化されているため、本発明のランダムオリゴペプチドライブラリーのランダム性も高いものとすることができる。また、適切な形質転換体を作製することにより、オリゴペプチドの発現量を多くすることが可能である。すなわち、オリゴペプチドの種類の多さ、オリゴペプチドの量などについてライブラリーサイズの大きなものを容易に作製することができる。
【0053】
本発明のランダムオリゴペプチドライブラリーは、複数種のランダムオリゴペプチドを含んでいれば、特に形態には制限はない。上記のように、形質転換体を作製し、ランダムオリゴヌクレオチドを発現させた培養物の形態でもよいし、培養物からランダムオリゴペプチドを必要に応じて精製してもよい。
【0054】
培養物からランダムオリゴペプチドを分離・精製するには、例えば、次のような方法により行なうことができる。オリゴペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、既知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用い得る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100(登録商標)などの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にオリゴペプチドが分泌される場合には、培養終了後、既知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるポリペプチドの精製は、既知の分離・精製法を適宜組み合わせて行なうことができる。
【0055】
これらの既知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0056】
また、ランダムオリゴペプチドライブラリー中に含まれるオリゴペプチドは、既知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができる。また、形質転換体が産生するオリゴペプチドを、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、オリゴペプチドを部分的に除去してもよい。タンパク質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどを用い得る。オリゴペプチドまたはその塩の存在あるいは活性は、標識したリガンドとの結合実験および特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0057】
本発明のオリゴヌクレオチドライブラリー、オリゴペプチドライブラリーは、M13ファージの外殻タンパク質を利用したライブラリー作製、大腸菌の鞭毛タンパク質を利用したライブラリー作製、出芽酵母やヒューマン培養細胞系においてレセプタータンパク質を利用したライブラリー作製、ピューロマイシンを利用した系に於けるライブラリー作製など様々な生物化学的なライブラリーの構築に利用することができる。また、下記に、本発明のライブラリーの特に好適な用途となる、ツーハイブリッドシステムを利用したタンパク質相互作用検出方法について説明する。
【0058】
4.タンパク質相互作用の検出方法およびその応用
以下、上記の本発明のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーまたはランダムオリゴペプチドライブラリー(第「4.」章において「ランダムライブラリー」と略称する)を活用したタンパク質相互作用検出方法等について説明する。
【0059】
本発明のタンパク質相互作用検出方法は、ツーハイブリッドシステムにおいて、相互作用を調査しようとする少なくとも一方のタンパク質として、上記本発明のランダムライブラリーに含まれるランダムオリゴペプチドを供試するものである。すなわち、上記本発明のランダムライブラリーの中から、タンパク質相互作用を生じ得るオリゴペプチドを検索する。本発明のランダムライブラリーは、ランダム性が高く、大きなライブラリーとすることができるため、極めて多種多様な配列パターンのポリペプチドについて相互作用の有無を検出可能であり、新規な相互作用関係を見出す可能性が高い方法である。
【0060】
「タンパク質相互作用」というが、本明細書においては、「タンパク質−タンパク質相互作用」、「ポリペプチド−タンパク質相互作用」、「ポリペプチド−ポリペプチド相互作用」のいずれの形態も含まれる。また、「ポリペプチド」の語句にはオリゴヌクレオチドが含まれることは上記の通りである。なお、「タンパク質相互作用検出方法」のことを「相互作用検出方法」と略称する場合がある。
【0061】
本発明の相互作用検出方法では、タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAおよびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAを細胞内に導入し、前記細胞内でタンパク質X−DNA結合ドメイン複合体およびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体を発現させ、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用する場合に前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性化される前記細胞内のレポーター遺伝子の転写産物を検出して、タンパク質Xとタンパク質Yとの相互作用を検出するツーハイブリッドシステムを用いる。
【0062】
図4に示す一例に沿って、ツーハイブリッドシステムについてより具体的に説明する。ツーハイブリッドシステムは、転写調節因子内に2つのドメインがあり、その機能発現のためには2つのドメインが結合している必要があるが、その結合は、ドメイン間に他のタンパク質などを挟んでいても機能し得るという性質を利用したものである。ツーハイブリッドシステムは、標的となるタンパク質を単離・精製する手間を要せず、生体内の生理条件下でタンパク質相互作用を確認できるという特性を有する。
【0063】
図4に示す例では、相互作用を確認しようする2種のタンパク質ペアのうちの一方をタンパク質X、他方をタンパク質Yという。本明細書において、タンパク質Xとは、DNA結合ドメイン(「DBD」と略称する場合がある)と複合体を形成するように設計されているほうのタンパク質またはポリペプチドをいう。タンパク質Yとは、転写活性化ドメイン(「AD」と略称する場合がある)と複合体を形成するように設計されているほうのタンパク質またはポリペプチドをいう。ツーハイブリッドシステムでは、一方のタンパク質をbaitタンパク質といい、所定のbaitタンパク質に結合し得るタンパク質を探索する場合、新たに見出そうとしているほうのタンパク質を標的(Target)タンパク質という場合がある。本発明においては、上記タンパク質XおよびYのどちらが、baitタンパク質または標的タンパク質であってもよい。
【0064】
ツーハイブリッドシステムでは、これらタンパク質Xおよびタンパク質Yが発現するような発現系を構築する。図4に示す例では、発現系を構成する組換えベクターであるpXベクターおよびpYベクターにはプラスミドベクターを用いている。pXベクターにはタンパク質XをコードするDNA(pXベクター中「protein X」と表示)が組み込まれ、他方、pYベクター中にはタンパク質YをコードするDNA(pYベクター中「protein Y」と表示)が組み込まれている。pXベクターには、さらにDBDをコードするDNAが組み込まれており、発現時に、タンパク質X−DBD複合体が生成されるように設計される。他方、pYベクターには、さらにADをコードするDNAが組み込まれており、発現時にタンパク質Y−AD複合体を形成するように設計される。これらのベクターは、上記「2.」章で説明した、本発明の組換えDNAと同様の構成、すなわち、プラスミド等の組換え体の種類、プロモーター、選択マーカーなど、発現ベクターとして用いられる種々の構成を採用することができる。
【0065】
これらの発現ベクターをレポーター遺伝子を保有する所定の宿主細胞に導入する。宿主細胞にはレポーター遺伝子が導入されている。レポーター遺伝子は、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用を生じた場合に、それを検出するために組み込まれている遺伝子である。レポーター遺伝子はADが基本転写装置を活性化することにより発現する。レポーター遺伝子は宿主細胞内で、プラスミドのように独立的に存在していても、染色体DNAに組み込まれていてもよい。レポーター遺伝子を保有する宿主細胞も、上記「2.」の章で例示した宿主細胞を採用することができ、好ましくは、酵母細胞、大腸菌細胞、哺乳動物細胞などを用いることができる。
【0066】
レポーター遺伝子は、少なくともレポーター遺伝子が転写されたことを示すmRNA、タンパク質などの転写産物を、直接または間接的に検出できるものであれば特に制限はない。すなわち、視覚的検査、放射活性、化学発光、蛍光、光度、分光、赤外線、比色、共鳴検出などの周知の方法により、定性的または定量的にレポーター遺伝子の発現を検出できるものであればよい。レポーター遺伝子としては、発現ベクターに選択マーカーとして用いられる各種の耐性遺伝子や酵素遺伝子等を用いることができる。
【0067】
pXベクターとpYベクターとが宿主細胞内で発現すると、タンパク質X−DBD複合体とタンパク質Y−AD複合体とが生成する。DBDはDBD結合部位に結合する。すると、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用する場合、「DBD−タンパク質X−タンパク質Y−AD複合体」が形成される。ADが基本転写装置を活性化して、レポーター遺伝子が発現する。レポーター遺伝子の発現の有無により、相互作用の有無を確認することができる。
【0068】
本発明の相互作用検出方法では、上記のようなpXベクター、pYベクター、レポーター遺伝子を有する宿主細胞として、周知または市販されている発現ベクター、宿主細胞等を用いることができる。また、近年、酵母、大腸菌などを用いたツーハイブリッドシステムのキットが市販されており、これらを用いることもできる。また、公知のDBD、ADを用いてpXベクター、pYベクターを作製することもできる。
【0069】
本発明の相互作用検出方法では、タンパク質XおよびYのうち少なくともいずれか一方に該当するものとして、上記本発明のランダムライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドを用いる。すなわち、タンパク質XおよびYの組み合わせとしては、次の2種の相互作用検出形態が挙げられる。
【0070】
(i)ランダムオリゴペプチド−任意のタンパク質
(ii)ランダムオリゴペプチド−ランダムオリゴペプチド
タンパク質XまたはYのうち一方のみをランダムオリゴペプチドとする場合、タンパク質XとYのどちらにランダムオリゴペプチドを割り当てるかは任意である。
【0071】
ツーハイブリッドシステムにおいては、タンパク質の相互作用を調べるため、そのタンパク質をコードするDNAを発現ベクターに組み込む。すなわち、タンパク質XまたはYのうちの少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターを作製する。このようなポリヌクレオチドとして、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに含まれるランダムオリゴヌクレオチドを用い、発現ベクターに載せて所定の細胞内で発現させて、対応するランダムオリゴペプチドの相互作用を検出する。本発明のランダムライブラリーには、複数種のオリゴヌクレオチドが含まれているため、相互作用を検出する組み合わせパターンとしては、
(a)「1つのランダムオリゴヌクレオチドに対応するランダムオリゴペプチド」−「1つの任意タンパク質」
(b)「複数種のランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」−「1つの任意タンパク質」
(c)「1つのランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」−「複数種の任意タンパク質」
(d)「複数種のランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」−「複数種のランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」
という組み合わせが挙げられる。
【0072】
本発明のランダムライブラリーは、ランダム性が高く、サイズの大きいものを容易に作製できる。また、ツーハイブリッドシステムは、タンパク質の相互作用について、タンパク質を直接単離・精製する手間を要せず、遺伝子組換え操作の通常のプラクティスレベルで実施可能である。したがって、本発明のランダムライブラリーを用いたツーハイブリッドシステムにより、極めて多様な数多くの分子ペアについての情報を容易に得ることができる。さらに、レポーター遺伝子を保有する宿主として大腸菌を用いると、極めて短時間に結果を出すことができる。大腸菌を宿主とした場合、増殖時間が1日と短期間であり、全体として約7〜10日程度で1サイクルの実験を完了させることが可能である。また、大腸菌を宿主とした場合、1サイクルに要する時間が短いことや、大腸菌の取り扱いが容易なことから、上記(a)〜(d)で挙げた組み合わせパターンの実験を同時に2、3種類、また日程をずらすことによりさらに2、3種随時行っていくことが可能である。すなわち、本発明のタンパク質相互作用検出方法は、短期間に極めて多くのタンパク質ペアについてその相互作用の有無を確認が可能であり、新規なタンパク質ペアを見いだすことができる可能性が高い方法である。
【0073】
ツーハイブリッドシステムでは、DBDとADとの間に2種のタンパク質を介在させてADが基本転写装置を活性化する。しかし、ADがうまく基本転写装置を活性化させる位置に配置されないと、タンパク質の相互作用が生じていてもレポーター遺伝子が発現しないという偽陰性を生じることがあり得る。このような場合には、DBD結合ドメインと基本転写装置との距離を調節することにより解決できる場合がある。または、タンパク質X−DBD複合体におけるタンパク質XとDBDの連結部位、あるいはタンパク質Y−AD複合体におけるタンパク質YとADの連結部位の長さを調節することによっても、偽陰性の発生を抑制できる場合がある。この連結部位の調製は、タンパク質X−DBD複合体を例にすると、組換えDNAに組み込む際に、一つの転写単位領域内でDBDとタンパク質Xとの距離を調節することにより行うことができる。
【0074】
また、本発明の具体的な実施形態例として、一方のタンパク質として、既知の受容体タンパク質を用い、この受容体タンパク質に結合するタンパク質を探索するという形態が挙げられる。すなわち、既知の受容体タンパク質をbaitタンパク質として用い、本発明のランダムライブラリー由来のオリゴペプチドを標的タンパク質とし、ランダムライブラリーの中から当該受容体タンパク質に結合するリガンドを探索する。受容体タンパク質の結合部位が既知の場合、その部分だけを用いることもできる。なお、本明細書において「受容体タンパク質」は、各種の生体物質、薬品を特異的に認識し、その作用を伝達し発現するタンパク質であり、細胞内受容体、細胞膜上受容体、ホルモン受容体などを広く含む。
【0075】
また、既にリガンドとして知られているタンパク質分子がある場合、これが結合し得る新たな受容体を探索する形態も挙げられる。すなわち、リガンドまたはその一部をbaitタンパク質として用い、本発明のランダムライブラリー由来のオリゴペプチドの中から、リガンドに結合するものを探索する。この場合、リガンドに結合するオリゴペプチドは、その大きさからして受容体タンパク質の一部である結合部位を構成している可能性が高い。
【0076】
受容体タンパク質の機能が既に明らかな場合、この受容体タンパク質に結合するリガンドは、アゴニスト候補またはアンタゴニスト候補となる。本発明の相互作用検出方法により見いだしたアゴニスト候補およびアンタゴニスト候補から、アゴニスト、アンタゴニストをスクリーニングするには、標識リガンド結合の阻害を測定する方法、細胞性応答を定量的にアッセイする方法など、既知の方法に従って行うことができる。
【0077】
本発明の相互作用検出方法により見いだされた新たな相互作用分子ペアの同定は、例えば、発現ベクター内の所定の塩基配列部分をPCRで増幅し、単離・精製して塩基配列を同定する、発現したポリペプチドを単離・精製して分析するなど、形質転換体を用いた遺伝子工学的実験において行われる、塩基配列やアミノ酸配列の解析、分析手法に従って行うことができる。
【0078】
また、本発明のタンパク質相互作用の他の実施形態としては、レポーター遺伝子の発現量を測定して、タンパク質Xとタンパク質Yとの結合力を測定することもできる。すなわち、発現量を定量的に測定し、その量をタンパク質XとYとの結合力の指標とする。この場合、レポーター遺伝子はその発現が定量的に測定しやすいものを選ぶことが好ましい。例えば、ルシフェラーゼ、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリフォスファターゼなどが挙げられる。定量法は周知の方法を用いればよい。
【0079】
さらに、本発明は、上記のタンパク質相互作用検出方法により検出されたタンパク質ペアに基づき同定したり、さらに他の相互作用の組み合わせをコンピューター検索により見いだす方法を提供する。すなわち、上記のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、解析されたアミノ酸配列をアミノ酸配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較して、ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する。あるいは、上記タンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードするランダムオリゴヌクレオチドが有する塩基配列を解析し、解析された塩基配列を塩基配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する。
【0080】
本発明の相互作用検出方法では、タンパク質ペアの一方にランダムオリゴペプチドが用いられるため、分子の大きさに鑑みると、オリゴペプチドが生体内において天然に存在するリガンドまたは受容体などの機能性タンパク質の一部分を構成する分子である場合が考えられる。このような場合、ランダムオリゴペプチドまたはランダムオリゴヌクレオチドの配列を既知の配列データベースで検索することにより、そのペプチドまたはヌクレオチドを含む全体像、あるいはそのファミリーを見いだすことが可能である。データベースは、少なくともアミノ酸配列または塩基配列について対比解析できるものであればよい。このようなデータベースには、通常、ホモロジー解析など検索のためのソフトウエアが備わっている。公開されているデータベースとしては、GenBank、EMBL、DDJB、SWISS−PORT、TrEMBL、PIRなど多数存在する(実験医学 増刊 p16−20, Vol.19−No.11, 2001など参照)。
【0081】
さらに、上記のようにデータベースに基づく解析により、タンパク質の相互作用部位を特定することもできる。すなわち、上記のようにして相互作用タンパク質検索方法により、データベースから検出されたタンパク質中で、当該タンパク質に含まれるランダムオリゴペプチドの位置を、当該タンパク質および当該ランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を対比することにより特定して、当該タンパク質の相互作用部位を特定する。
【0082】
また、相互作用することが見出されたランダムオリゴペプチドの配列の一部を改変し、同じbaitタンパク質に対して改変したランダムオリゴペプチドが相互作用をするか否かについて、再度ツーハイブリッドシステムによる検出を行うことにより、相互作用に必須となる配列部位をより詳細に特定することもできる。ランダムオリゴペプチドの配列の一部を改変するには、ランダムオリゴペプチドの配列をコードする塩基配列の一部を変更してオリゴヌクレオチドを作製すればよい。改変したオリゴヌクレオチドを作製する際も、一般式(NNK)または(NNS)に従って作製することが望ましい。塩基配列を改変したオリゴヌクレオチドをツーハイブリッドシステムにおける標的タンパク質をコードするオリゴヌクレオチドとしてTargetベクターに組み込み、改変前のオリゴペプチドが相互作用するタンパク質をbaitとしてツーハイブリッドシステムによる相互作用検出を行う。改変したオリゴヌクレオチドを多種作製し、一度に多種の改変配列について、ツーハイブリッドシステムによる検出を行うこともできる。相互作用することが確認されれば、改変前の配列部位は相互作用に必須ではない蓋然性が高いといえる。他方、相互作用しないことが確認されれば、改変前の配列部位は相互作用に必須の部位である蓋然性が高いといえる。
【0083】
次に、図5から図7に沿い、本発明のツーハイブリッドシステムのさらに別の具体的な形態例について説明する。図5に示すように、pBTベクターには、DBDであるλcIタンパク質遺伝子およびクロラムフェニコール耐性遺伝子(CamR)が組み込まれている。pBTベクターのマルチクローニングサイトにbaitとなるタンパク質をコードするDNAを組み込む。他方、pTRGベクターには、ADであるRNAPα、テトラサイクリン耐性遺伝子(TetR)が組み込まれている。このpTRGベクターのマルチクローニングサイトに、本発明のオリゴヌクレオチドライブラリーから選ばれたポリペプチドをコードするDNAを組み込む。オリゴペプチドライブラリーから複数種のポリペプチドを供給し、複数種のpTRGベクターを作製する。これらのpBTベクターおよびpTRGベクターをレポーター遺伝子を保有している大腸菌株に導入して形質転換体を作製する。本例では、レポーター遺伝子としてカルベニシリン耐性遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子)を用いる。
【0084】
得られた複数種の形質転換体をテトラサイクリン、クロラムフェニコールおよびカルベニシリンを含有する培地に塗抹して培養する。基本的には、生存してコロニーを形成していれば、テトラサイクリンなど上記3種に対して耐性を有することを示すが、精度を上げるために、3種の耐性を有することが予め確認されている菌株をポジティブクローンとして培養し、ポジティブクローンにより形成されるコロニーの大きさを比較することが好ましい。このようにしてポジティブクローンとほぼ同等の大きさを形成したコロニーがテトラサイクリン等の上記3種の耐性を有すると考えられる形質転換体により形成されたものと判別することができる。テトラサイクリン等の上記3種の耐性を有するということは、baitタンパク質およびオリゴペプチドが相互作用をしたことを示す。生存株によるコロニーが形成されたこのプレートをマスタープレートとする。
【0085】
コロニーごとに別々に、形質転換体からオリゴペプチドが組み込まれているpTRGベクターをDNAとして精製するために、さらにテトラサイクリンを含む培地で培養を繰り返し、形質転換体からpBTベクターを脱落させてテトラサイクリン耐性のみを有する菌株を作製する。生存した菌株からpTRGベクターを精製し、別の汎用大腸菌株に再度導入してテトラサイクリン耐性形質転換体を作製する。このテトラサイクリン耐性形質転換体をテトラサイクリン含有培地で培養すると共に、クロラムフェニコール含有培地でも別個に培養を行う。テトラサイクリン耐性を有し、かつ、クロラムフェニコール感受性を有する菌株が、pBTベクターを含まずpTRGベクターを含む形質転換体である。このようにして、baitタンパク質と相互作用したオリゴペプチドをコードするDNAが組み込まれたベクターのみを含む形質転換体を単離することができる。
【0086】
このようにして得られた形質転換体から、オリゴペプチドが組み込まれているpTRGベクターを精製する。これをpBTベクターと共に、再度レポーター遺伝子を保有している大腸菌に導入し、テトラサイクリン、クロラムフェニコールおよびカルベニシリンを含有する培地で形質転換体を培養し、ポジティブクローンとほぼ同等の大きさのコロニーが形成されたものが、相互作用するオリゴペプチドを発現する菌株である。相互作用するオリゴペプチドをコードするpTRGベクターは先に精製してあるので、オリゴペプチドをコードする領域の塩基配列を定法により決定し、そのペプチドのアミノ酸配列を解読することができる。
【0087】
上記のようにbaitタンパク質と相互作用する可能性の高いオリゴペプチドをコードするpTRGベクターを精製して再度ツーハイブリッドシステムによる検定を行うことにより、baitタンパク質と相互作用する可能性の高いオリゴペプチドを精度良く検出することができる。
【0088】
また、本発明の相互作用検出方法により相互作用を見いだした後、相互作用するオリゴペプチドに基づいてプローブを作製することもできる。相互作用分子ペアの少なくとも一方はランダムライブラリーに由来するオリゴペプチドである。このオリゴペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターを回収し、PCRなどの手法を用いてオリゴペプチド部分を増幅し、増幅されたDNA断片をプローブとすることができる。得られたプローブはさらにcDNAライブラリーからタンパク質をコードするDNAを新たに探索などに用いることができる。発現ベクターの回収は、レポーター遺伝子を発現するクローンを選抜し、形質転換体から発現ベクターを回収する定法により分離・回収することができる。
【0089】
近年の生化学的研究、遺伝子工学的研究、あるいは創薬研究などでは、タンパク質の相互作用を見いだすことが1つの重要な課題となっている。本発明のタンパク質相互作用検出方法等によれば、大量の組み合わせについて簡潔な操作で、短期間に試験可能であるため、相互作用ペアの組み合わせに関し大量の情報を短期間で得ることができる。このような相互作用の情報は、未知の機能性タンパク質の発見、あるいは機能不明なタンパク質の機能解析などの基礎情報とすることができる。さらに、このような情報は、アゴニスト、アンタゴニスト、アンチセンス、あるいは抗体などに基づく遺伝子工学を利用した様々な医薬品の開発にも極めて有用な情報源となるものである。
【0090】
5.タンパク質相互作用検出キット
本発明のタンパク質相互作用検出キットは、上記の第「4.」章にて説明したツーハイブリッドシステムを利用したタンパク質相互作用検出方法を実施するためのキットである。すなわち、本発明のタンパク質相互作用検出キットは、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、DBDが組み込まれた組換えベクターと、ADが組み込まれた組換えベクターと、前記DBDおよびADにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された細胞と、を備える。
【0091】
ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーは、上記「3.」章で説明したランダムオリゴヌクレオチドライブラリーが用いられる。相互作用を見いだせるか否かは、ライブラリーサイズに依存することが考えられるが、ランダムライブラリーは追加製造可能であり、ライブラリーサイズを増幅し、新規な相互作用を検出が見いだされるまで実験を繰り返せばよい。また、DBDが組み込まれた組換えベクター、ADが組み込まれた組換えベクター、前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された細胞については、上記「2.」章で説明した組換えDNA、宿主細胞を用いることができる。
【0092】
本発明のキットの好ましい一形態としては、上記「1.」章に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセットを用いる形態が挙げられる。また、好ましい形態として、一方の発現ベクターには、ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、DNA結合ドメインが組み込まれており、他方の発現ベクターには、ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、転写活性化ドメインが組み込まれているようにする。このように発現ベクターを調製しておくことにより、実験者の作業負担を大幅に軽減することができる。また、発現ベクターには必要に応じて、上記「2.」の章で説明したプロモーター、選択マーカー、エンハンサー、SV40Ori、ターミネーターなどが組み込まれる。
【0093】
上記のキットを用い、タンパク質の相互作用検出を行うために、次のようなツーハイブリッドシステム細胞が構築されることになる。すなわち、本発明のツーハイブリッドシステム細胞は、タンパク質X−DBD複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、タンパク質Y−AD複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、前記DBDおよび前記ADにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子とが導入されている。前記タンパク質Xおよび前記タンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質については、それを構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドとして、上記「1.」で説明したランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドを用いる。ツーハイブリッドシステム細胞の構築方法は、上記「4.」章に従って行うことができる。
【0094】
実験キットとしては、実験操作の容易性から、組換えDNAとしてプラスミドベクターが好ましく、また宿主細胞としては、大腸菌、酵母などが好ましい。また、実験の結果が早期に分かるという点に関しては、大腸菌が特に好ましい。ヒトなどの哺乳類における相互作用を検証する上では、その生理的な条件が近くなるように哺乳類由来の細胞を宿主として用いることが好適である。また、本発明のキットには、上記のタンパク質相互作用検出方法を実施するための容器、試薬、制限酵素、宿主細胞培養のための培地等を備えるようにしてもよい。
【0095】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーの作製
一般式「NNK」の繰り返しが12回あり、その両端に制限酵素認識配列をもつ、以下のような式で示されるオリゴヌクレオチドを合成した。
【0096】
5’ GCGGCCAGATCTGCGGGG (NNK)x TAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA 3’
ただし、x=12、 N= G, A, T, C、 K= G, T
なお試薬として、G、C、TまたはAの塩基を有するヌクレオチド誘導体を含む混合試薬1と、GまたはTの塩基を有するヌクレオチド誘導体を含む混合試薬2とを調整し、「N」の部分を合成する際には混合試薬1を、「K」の部分を合成する際には混合試薬2を供給している。
【0097】
また、この一本鎖DNAを二本鎖にするため、以下の配列をもつプライマーを別途合成した。
【0098】
5’−TTTTTTTTTTTTAAACTACTA−3’(配列番号11)
これらの合成DNAをTE(10mM Tris・HCl, pH7.5 /1mM EDTA)中にて混合し、70℃にて10分間加熱後、室温まで徐冷することによりアニーリングさせた。その後、Klenow フラグメント(タカラバイオ社)により伸張反応させ2本鎖DNAを作製した。得られた2本鎖DNA を制限酵素Bgl IIとDra Iで処理し、オリゴヌクレオチドカセットを作製した。これを制限酵素BamH IとSma Iで処理したpTRG2にT4 DNAライゲース(タカラバイオ社)を用いて連結し、大腸菌に形質転換を行い、オリゴヌクレオチドカセットのライブラリーを得た。得られた個々の形質転換体から、プラスミドDNAを抽出後、オリゴヌクレオチド部分の塩基配列を解析した。これに基づき、ペプチド配列に翻訳した結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
表3に示されるとおり、本発明のランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーは、さまざまなオリゴペプチドの配列が出現しており、配列のランダム性が高いライブラリーが得られることが確認された。
【0101】
<実施例2>
(1)概要
本発明に従い作製したオリゴヌクレオチドカセットを用いたツーハイブリッド実験により、タンパク質とオリゴペプチドの相互作用が検出可能であるかどうかを検討した。まず概要について説明する。
【0102】
アポトーシス抑制因子であるBcl−xLは、アポトーシス促進因子Bakと結合することが知られている。特にBakに関してはBcl−xLと結合する最小領域として16アミノ酸(GQVGRQLAIIGDDINR)からなる配列が同定されており、NMRによる構造解析も行われている(Sattlerら、1997;Science275:983−986)。さらにBcl−xLタンパク質精製標品と、変異を導入した合成オリゴペプチドを用いたin vitroの結合測定法(蛍光偏光測定法)により、結合に必須なアミノ酸が同定されている(7番目のロイシン)。また逆に結合に寄与していないアミノ酸もわかっている(13番目のアスパラギン酸)。
【0103】
この知見を元に、baitベクター「pBT」にBcl−xL、targetベクター「pTRG」にBak由来の16アミノ酸および変異型16アミノ酸を組み込んだプラスミドを作製し、大腸菌ツーハイブリッドの実験を行った。
【0104】
その結果、本発明に従って作製したBak由来の16アミノ酸をコードするtargetクローンを用いたツーハイブリッドの実験ではBcl−xLとの結合が検出された。また7番目のロイシンをアラニンに置換した変異型16アミノ酸をコードするtarget クローンでは結合が検出されなかった。さらに13番目のアスパラギン酸をアラニンに置換した変異型16アミノ酸をコードするtargetクローンでは結合が検出された。これらの結果は、in vitroの実験結果と一致している。
【0105】
以上のことより、ツーハイブリッドの実験によりタンパク質とオリゴペプチドの特異的な相互作用が検出可能であることが示された。これは、本発明に基づき作製したオリゴペプチドライブラリーを用いることにより、baitタンパク質と特異的に結合するオリゴペプチドを抽出してくることが可能であることを示している。
【0106】
【表4】
【0107】
(2)材料及び方法
(2−1)Bcl−xLのクローニング
ヒト胎盤cDNAライブラリー(タカラバイオ社製)を鋳型にPCRを行い、ヒトBcl−xL cDNAを得た。PCRに用いたプライマーを配列表の配列番号1および配列番号2に示す。
【0108】
BxL−N1には大腸菌ツーハイブリッド法に用いるbaitベクターであるpBTに組み込むため制限酵素NotIを、BxL−C2にはXhoIサイトを付加している。またBxL−C2は、Bcl−xLとBak由来の16アミノ酸の構造解析が、Bc1−xLの膜貫通領域(210番目から233番目)の欠損体を用いて行われている事を考慮して、209番目のアルギニンをコードするCGCの後に、終止コドンであるTAGを組み込んである。
【0109】
得られたcDNA断片は、TAクローニングベクターであるpCR2.1(Invitrogen社)に組み込み塩基配列を確認後、制限酵素NotI、XhoIで処理を行い、pBTベクターに導入した。これによりλcIタンパク質とBcl−xL(配列番号6)の膜貫通領域欠損体の融合タンパク質を発現するプラスミド、pBT−Bcl−xL△TMを得た。ヒトBcl−xLのcDNA配列を配列表の配列番号3に、そのアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0110】
(2−2)オリゴヌクレオチドカセットクローニング用targetベクターpTRG2の作製
本実験ではオリゴヌクレオチドカセットを作製する際に制限酵素の組み合わせとしてBglII、DraIを用いた。しかし大腸菌ツーハイブリッド法に使用されるtargetベクター、pTRGのクローニングサイトには平滑末端を生成する制限酵素が存在しない(DraIは平滑末端を生じる)。そこでpTRGのクローニングサイトに平滑末端でDNAを切断する制限酵素SmaIサイトを導入した。
【0111】
まず、pTRGを制限酵素EcoRIで切断後、Klenowフラグメントにより5’突出末端を平滑化した。その後、SmaIリンカー(タカラバイオ社:pSmaI linker)をライゲーションし、さらに制限酵素SmaIによる処理を行った。これをT4 DNAライゲースにより自己環状化することにより、新たにSmaIサイトを持つpTRG2を作製した。
【0112】
(2−3)オリゴヌクレオチドカセット作製とpTRG2への導入
Bak由来の16アミノ酸、GQVGRQLAIIGDDINR(以下、野生型(配列番号6))と変異型16アミノ酸、GQVGRQAAIIGDDINR(以下、変異型LA(配列番号8))、GQVGRQLAIIGDAINR(以下、変異型DA(配列番号10))をコードする様に、本発明で述べた規則(本実験ではNNK)に従い、以下の配列のオリゴヌクレオチドを合成した。
【0113】
野生型;
5’−GCGGCCAGATCTGGTCAGGTTGGTCGTCAGTTGGCTATTATTGGTGATGATATTAATCGTTAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA −3’(配列番号5)
変異型LA;
5’−GCGGCCAGATCTGGTCAGGTTGGTCGTCAGGCTGCTATTATTGGTGATGATATTAATCGTTAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA −3’(配列番号7)
変異型DA;
5’−GCGGCCAGATCTGGTCAGGTTGGTCGTCAGTTGGCTATTATTGGTGATGCTATTAATCGTTAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA −3’(配列番号9)
【0114】
これら合成DNAを各々21primer(5’−TTTTTTTTTTTTAAACTACTA−3’)(配列番号11)と混合し、70℃で10分間加熱後、室温まで徐冷することによりアニーリングさせた。その後、Klenowフラグメントにより伸張反応をさせ2本鎖DNAを作製した。得られた2本鎖DNAを制限酵素BglIIとDraIで処理し、オリゴヌクレオチドカセットを作製した。これを制限酵素BamHIとSmaIで処理したpTRG2にT4 DNAライゲースを用いて連結し、大腸菌に形質転換を行った。得られたクローンに関しては、プラスミドDNAを抽出後、塩基配列を決定し、野生型あるいは変異型のBak由来の16アミノ酸をコードするオリゴヌクレオチドカセットが、pTRG2に予想通り組み込まれていることを確認した。
【0115】
これによりRNA polymeraseαタンパク質とBak由来の16アミノ酸、及び変異型16アミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド、pTRG−Bak16WT、pTRG−Bak16LA、pTRG−Bak16DAを得た。
【0116】
(2−4)ツーハイブリッドを用いた相互作用検定
Stratagene社BacterioMatch(登録商標)Two−Hybrid System Vector Kit添付の説明書に従い、Bcl−xLと野生型(WT)あるいは変異型のBak由来の16アミノ酸との相互作用検定を行った。判定はレポーター遺伝子の発現表現型であるカルベニシリン耐性が検出されるかどうかで行った。
【0117】
相互作用検定を行ったのは、
▲1▼ pBT−Bcl−xL△TMとpTRG−Bak16WT、
▲2▼ pBT−Bcl−xL△TMとpTRG−Bak16LA、
▲3▼ pBT−Bcl−xL△TMとpTRG−Bak16DAの3種類と、
▲4▼ Negatuve ControlとしてのpBT−Bcl−xL△TMとpTRG、
の計4種類の組み合わせである。精製したDNAを各々10ngずつ大腸菌ツーハイブリッド検出用菌株、BacterioMatch(登録商標)Reporter Strainのコンピテント細胞に形質転換後、菌培養液をTCK寒天培地(LB培地にテトラサイクリンを15μg/ml、クロラムフェニコールを34μg/ml、カナマイシン50μg/mlとなるよう加えたもの)とCTCK寒天培地(LB培地にカルペニシリンを250μg/ml、テトラサイクリンを15μg/ml、ロラムフェニコールを34μg/ml、カナマイシンを50μg/mlとなるよう加えたもの)に50μlずつ塗抹した。これらを30℃で〜24時間培養後、TCK寒天培地とCTCK寒天培地、各々に生育してくる大腸菌のコロニーを比較し、相互作用の判定を行った。
【0118】
(3)結果
上記▲1▼〜▲4▼についての培養の結果を、図8〜11に示す。30℃で24時間培養後のTCK寒天培地とCTCK寒天培地上でのコロニーを比較した結果、Bcl−xL△TMとBak野生型配列、Bcl−xL△TMとBak変異型DA配列が相互作用することが示された。またBak変異型LA配列とは相互作用しないことが示された。すなわち、本発明により、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーをもちいて相互作用の検定ができることが確認される共に、相互作用をするオリゴペプチドにおいて、相互作用に必須となる配列部位、または必須とはならない部位の特定も可能であることが確認された。
【0119】
また、上記の結果を得るために要した日数は、オリゴヌクレオチドの合成にかかる日数を除いて5日であった。以上のように、一般式「NNK」で示されるオリゴヌクレオチドを用いて相互作用の検出を短期間にかつ簡便に行うことができた。
【0120】
【発明の効果】
本発明により以下のような効果が得られる。
(1)本発明により、オリゴヌクレオチドまたはオリゴペプチドの種類、量などの点でサイズの大きなライブラリーが提供される。
【0121】
(2)本発明によれば、ランダムオリゴヌクレオチドを組み換える際にランダムオリゴヌクレオチド部分が切断されてしまうことがないようにすることができるため、作製されたランダムオリゴヌクレオチドの組換えDNAの損失が少ない。
【0122】
(3)本発明により、前記オリゴヌクレオチドライブラリーを利用した、タンパク質相互作用検出方法が提供される。配列のランダム性が高く、サイズの大きなオリゴヌクレオチドライブラリーから多様なオリゴヌクレオチドが供給され多様なオリゴペプチドについて相互作用の検出試験を行うことができるため、新規なタンパク質相互作用を見出す可能性が高い。また短期間に多数の組み合わせについて相互作用の検出試験が可能である。
【0123】
(4)また、本発明により、受容体の結合部位またはリガンドのスクリーニング、タンパク質相互作用部位の特定などを効率よく行うことができる。
【0124】
(5)また、本発明により、タンパク質の相互作用にあたり必須となる配列部位または必須とはならない配列部位の検出も簡便に行うことができる。
【0125】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のランダムオリゴヌクレオチドの一形態である一般式(I)およびその模式配列を示した図である。
【図2】本発明のランダムオリゴヌクレオチドの一形態である一般式(II)およびその模式配列を示した図である。
【図3】本発明のランダムオリゴヌクレオチドの末端にライゲーション部を導入し、ランダムオリゴヌクレオチド複合体を作製するプロセスの一例を示す図である。
【図4】ツーハイブリッドシステムの原理を模式的に示す図である。
【図5】ランダムオリゴヌクレオチドを、そのまま、あるいは改変することにより組み込むことができる2種のベクターを示す図である。
【図6】タンパク質相互作用の検出方法のプロセスを模式的に示した図である。
【図7】タンパク質相互作用の検出方法のプロセスを模式的に示した図であり、図6の続きである。
【図8】pTGRベクターとして、pTRG−Bak16WTを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
【図9】pTGRベクターとして、pTRG−Bak16LAを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
【図10】pTGRベクターとして、pTRG−Bak16DAを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
【図11】ネガティブコントロールとして、pTRGを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質相互作用検出方法に関し、詳しくは、タンパク質同士の相互作用を効率よく見出すことができる方法に関する。また、本発明は、タンパク質相互作用検出方法において好適に用いられるランダムオリゴヌクレオチドライブラリーなどに関する。さらに、本発明は、タンパク質相互作用検出方法を応用したタンパク質検索方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質は主要な生体構成分子であり、タンパク質とタンパク質との相互作用は、生体における代謝、シグナル伝達などの様々なプロセスにおいて不可欠なものである。また、近年のゲノム解析の進展等により、次々に新規なタンパク質が見出されている。このような状況で、タンパク質の相互作用を系統立て解析し、タンパク質の機能を解析することが、学術的のみならず、バイオテクノロジーに関わるすべての産業界において急務とされている。
【0003】
タンパク質同士の相互作用を検出するにあたっては、まず最初の段階としてオリゴペプチドなどタンパク質の一部を用いて相互作用を検出するという手法が開発されている。例えば、次のような方法がある。
【0004】
第1に、コンビナトリアルケミストリーを利用して様々なアミノ酸配列を有するオリゴペプチドを化学合成してライブラリーを作製し、そのライブラリーに含まれるオリゴペプチドを所望のタンパク質に作用させ、オリゴペプチド−標的タンパク質の複合体を形成したものを選別する方法である。
【0005】
第2に、オリゴペプチドを生物の膜表面に提示させたライブラリーを作製し、ライブラリーの中から所望のタンパク質と結合するものを選別する方法である。例えば、M13ファージの外殻タンパク質とオリゴヌクレオチドとを融合させた形態でM13ファージ表面に提示させて、外殻タンパク質と結合するものを選別する方法がある。また、大腸菌の鞭毛タンパク質とオリゴヌクレオチドを融合させたかたちで大腸菌表面に提示させるものもある。さらに、出芽酵母やヒューマン培養細胞系において、レセプタータンパク質にオリゴヌクレオチドを融合させた形態で細胞表面に提示させるシステムもある。
【0006】
第3にピューロマイシン(puromycin)などの抗生物質を利用する方法がある。DNAから転写・翻訳を行う際に、ピューロマイシンを添加しておくことにより、ポリペプチドとそのポリペプチドをコードするRNAとの複合体が生成される現象を利用した方法である。この現象を利用し、オリゴペプチド−RNA複合体のライブラリーを作製し、このライブラリーの中から標的タンパク質と結合するオリゴペプチド−RNA複合体を選抜する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1の場合のようにコンビナトリアルケミストリーを利用した方法は、現時点では化学合成しにくいアミノ酸配列パターンがあるという大きな問題がある。すなわち、化学合成されるポリペプチドの配列パターンは、あらゆるアミノ酸配列パターンを網羅できるわけではなく、また、確かめたいと考えてもそのパターンのアミノ酸配列を有するポリペプチドが得られない場合がある。また、合成を行う実験者に高い熟練度が要求されることや、費用などの点で、新たにタンパク質の相互作用を見出すために要求される大きなライブラリーを得ることが実際のところ困難である。
【0008】
合成されにくいアミノ酸配列があるという問題点に関しては、分子生物学的手法を用いた上記の第2、第3の手法は有利である。細胞内で、あるいは生体物質を用いて試験管内で、オリゴペプチドを合成する場合、基本的にはコンビナトリアルケミストリーの場合のようなアミノ酸配列パターンの制限はない。
【0009】
しかし、第1の方法も含めこれらの手法はいずれも、タンパク質相互作用のスクリーニングをin vitroで行う実験系である。したがって、相互作用するペプチドをスクリーニングするためには、相互作用を調べようとする対象となるタンパク質を生理活性が保たれた状態で精製することが必須となる。さらに、生理活性が保たれた状態で試験対象タンパク質を固層に固定化し、大量なオリゴペプチドからなるライブラリーと反応させて、結合しなかったオリゴペプチドは除去し、強固に結合するオリゴペプチドを選別してこなければならない。当然ながらこれらの処理工程の間、タンパク質の活性が保たれるようにしなければならない。タンパク質の単離、精製、生理活性の維持は、煩雑で繊細な処理がつきまとう。
【0010】
さらに、第3の手法については、オリゴペプチド−RNA複合体を安定して生成させることがまだ難しく、ピューロマイシンの添加条件などに関し、さらに改良を加えるべき余地が大きいと考えられる。
【0011】
ところで、オリゴペプチドを用いる場合を含め、タンパク質の相互作用を検出する手法として、ツーハイブリッドシステムが開発されている。FieldsおよびSong(1989)により、酵母を用いたツーハイブリッドシステムが構築され、タンパク質相互作用の同定手法に大きな進展をもたらした。
【0012】
酵母ツーハイブリッド系の一例を挙げ、ツーハイブリッドシステムの原理を説明する。酵母ツーハイブリッド系は、2つの分離可能な機能性ドメインを保有する多種多様な真核生物転写因子の特徴を利用する。2つのドメインのうちの一方は、シスエレメントを特異的に認識して結合するDNA結合ドメイン(「DBD」と略称する場合がある)であり、他方は、転写を活性化する転写活性化ドメイン(「AD」と略称される場合がある)である。このツーハイブリッド系では、DNA結合ドメイン(GAL4bdまたはlexA)と関心のあるタンパク質「A」とを含むいわゆるbaitタンパク質が酵母内で融合タンパク質として発現される。同じ酵母細胞はまた、同時に、DNA活性化ドメイン(GAL4adまたはVP16)およびタンパク質「B」を含むいわゆるfishタンパク質も発現する。baitタンパク質とfishタンパク質とが相互作用すると、これらの融合タンパク質のDNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインが近接するようになり、その結果生じるタンパク質複合体がレポーター遺伝子(例えばHIS3またはlacZ)の発現を誘発する。この発現は、ヒスチジン不含の選択培地上での該酵母細胞の培養により、またはlacZ遺伝子の活性化により容易にモニターできる。例えば未知のfishタンパク質をコードするDNA配列は、対応するプラスミドを単離し、続いて塩基配列分析を行うことにより容易に同定可能である。なお、ツーハイブリッドシステムにおいては、試験対象となる一方のタンパク質であって、探索の標的となるタンパク質のことを標的タンパク質、prey(プレイ:獲物)タンパク質またはfish(フィッシュ)タンパク質などといい、標的タンパク質の相方となるタンパク質のことをbait(ベイト:餌)タンパク質ということがある。
【0013】
さらに、ツーハイブリッド系の改変系がいくつか開発されている。生物学上の系に見られる様々な相互作用を同定、検出およびアッセイするためには、異なるツーハイブリッド系を使用しなければならないと考えられており、実際、その他のツーハイブリッド技術が発達し、タンパク質−タンパク質相互作用を別の生物体および/または異なる細胞コンパートメントの中で調査することが可能になった。
【0014】
ツーハイブリッドシステムは、相互作用を確認しようとする供試タンパク質を用意するところからタンパク質相互作用のスクリーニング段階に至るまでを、分子生物学手法により生体内で迅速に行うことが可能であり、関心のあるタンパク質の生理活性を保持しつつ単離・精製して供試するという手間を省くことができる。さらに、ツーハイブリッドシステムは、相互作用パートナーをコードする対応する核酸配列を簡易に単離可能であるという点でも優れている。すなわち、タンパク質相互作用を検出するに当たってはツーハイブリッドシステムを利用することが、迅速性、容易さ、コストなどの点で有利であると考えられる。
【0015】
本発明者らは、ツーハイブリッドシステムを利用し、新たなタンパク質相互作用をより一層効率よく検出するためには、相互作用を確かめようとするタンパク質(あるいはポリペプチド)の組み合わせパターンを多く用意する必要があり、そのためには如何にサイズが大きく、多様性の高い供試サンプルのライブラリーを作製するかが重要となるという着想に至った。
【0016】
以上のような観点から、本発明は、容易で、迅速なタンパク質相互作用検出方法を提供することを課題とするものである。また、本発明は、サイズが大きく、多様性の高い、オリゴヌクレオチドライブラリーまたはオリゴペプチドライブラリーを提供することを課題とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を進めたところ、ある所定の規則性に基づいた配列を有するランダムオリゴヌクレオチドを作製してランダムオリゴヌクレオチド等のライブラリーを得ることにより、配列のランダム性が高く、かつサイズの大きなオリゴヌクレオチドライブラリー等を得ることに成功し、このライブラリーに含まれるオリゴヌクレオチドをツーハイブリッドシステムの供試タンパク質として供給することにより、極めて効率よくタンパク質の相互作用を検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明は次の通りである。
〔1〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチド。
〔2〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)となるようにヌクレオチドを結合させて、ランダムな塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを作製する、ランダムオリゴヌクレオチド作製方法。
〔3〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドの両端に、前記ランダムオリゴヌクレオチドでは出現しない塩基配列パターンの制限酵素認識配列を含むライゲーション部を有する、ランダムオリゴヌクレオチドカセット。
〔4〕 ランダムオリゴヌクレオチドの両端にあるライゲーション部がそれぞれ異種の制限酵素認識配列を含む、請求項3に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセット。
〔5〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドが組み込まれた組換えDNA。
〔6〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドと、DNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドとが連結されたポリヌクレオチドが組み込まれた、組換えDNA。
〔7〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドと、転写活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドとが連結されたポリヌクレオチドが組み込まれた、組換えDNA。
〔8〕 上記〔5〕から〔7〕のいずれか一項に記載の組換えDNAを有する形質転換細胞。
〔9〕 上記〔1〕に記載のランダムオリゴヌクレオチド、上記〔3〕または〔4〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセット、上記〔5〕から〔7〕のいずれか一項に記載の組換えDNA、および、上記〔8〕に記載の形質転換細胞からなる群より選ばれる1種または2種以上を含み、かつ、複数種のランダムオリゴヌクレオチドが含まれる、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリー。
〔10〕 上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに含まれる組換えDNA中のランダムオリゴヌクレオチドが発現して生成された複数のランダムオリゴペプチドが含まれる、ランダムオリゴペプチドライブラリー。
〔11〕 コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)となるようにヌクレオチドを結合させて、塩基配列がランダムなランダムオリゴヌクレオチドを作製する工程と、
前記ランダムオリゴヌクレオチドをベクターに組み込んで組換えベクターを作製する工程と、
前記組換えベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を作製する工程と、
前記形質転換体が有するランダムオリゴヌクレオチドを発現させて、ランダムオリゴペプチドを生成せしめる工程と、
を有する、ランダムオリゴペプチドライブラリー作製方法。
〔12〕 タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAおよびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAを細胞内に導入し、前記細胞内でタンパク質X−DNA結合ドメイン複合体およびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体を発現させ、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用する場合に前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性化される前記細胞内のレポーター遺伝子の転写産物を検出して、タンパク質Xとタンパク質Yとの相互作用を検出するツーハイブリッドシステムにおいて、
タンパク質Xおよびタンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが、上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドである、タンパク質相互作用検出方法。
〔13〕 前記レポーター遺伝子の発現量を測定して、タンパク質Xとタンパク質Yとの結合力を測定する、上記〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法。
〔14〕 上記〔12〕のタンパク質相互作用検出方法におけるタンパク質Xまたはタンパク質Yのいずれか一方が受容体タンパク質またはその一部であり、他方が上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドである、リガンドのスクリーニング方法。
〔15〕 上記1〔12〕のタンパク質相互作用検出方法におけるタンパク質Xまたはタンパク質Yのいずれか一方がリガンドまたはその一部であり、他方が上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドである、受容体タンパク質の結合部位のスクリーニング方法。
〔16〕 〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、
タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、解析されたアミノ酸配列をアミノ酸配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、
ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する、相互作用タンパク質検索方法。
〔17〕 上記〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、
タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードするランダムオリゴヌクレオチドが有する塩基配列を解析し、解析された塩基配列を塩基配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、
ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する、相互作用タンパク質検索方法。
〔18〕 上記〔16〕または〔17〕に記載の相互作用タンパク質検索方法によりデータベースから検出されたタンパク質中で、当該タンパク質に含まれるランダムオリゴペプチドの位置を、当該タンパク質および当該ランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を対比することにより特定して、当該タンパク質の相互作用部位を特定する、タンパク質の相互作用部位特定方法。
〔19〕 上記〔12〕に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、当該アミノ酸配列の一部の配列を改変するようにオリゴヌクレオチドを作製し、改変ペプチドについて再度ツーハイブリッドシステムによる相互作用検出を行い、相互作用の有無を検出して相互作用の必須配列部位を特定することを特徴とする、タンパク質相互作用検出方法。
〔20〕 タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、
タンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、
前記DNA結合ドメインおよび前記転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子とが導入されており、
前記タンパク質Xおよび前記タンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが、上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドである、ツーハイブリッドシステム細胞。
〔21〕 前記細胞が、大腸菌である、上記〔20〕に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
〔22〕 前記細胞が、酵母である、上記〔20〕に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
〔23〕 前記細胞が、哺乳類に由来する細胞である、上記〔20〕に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
〔24〕 上記〔9〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、
DNA結合ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
転写活性化ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された宿主細胞と、
を備える、タンパク質相互作用検出キット。
〔25〕 上記〔3〕または〔4〕に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセットを含むランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、
前記ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、DNA結合ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、転写活性化ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された細胞と、
を備える、タンパク質相互作用検出キット。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、1.ランダムオリゴヌクレオチド、2.ランダムオリゴヌクレオチドカセットおよび組換えDNA等、3.ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーおよびランダムオリゴペプチドライブラリー、4.タンパク質相互作用の検出方法およびその応用、5.タンパク質相互作用検出キットの順に説明する。なお、本発明における遺伝子工学的な処理、例えば、プラスミド、DNA断片、種々の酵素、形質転換体の作製、形質転換体の選抜などを扱う諸操作については、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, 2nd Edition, J. Sambrookら編、1989、COLD SPRING HARBOR LABORATORY PRESS等の既知の実験マニュアルを採用することができる。
【0020】
1.ランダムオリゴヌクレオチド
本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、その一本鎖の配列が、一般式(I)または(II)に示されるオリゴヌクレオチドである(図1、2)。本明細書では、「オリゴヌクレオチド」における「オリゴ」とは、生体内などに存在する大型のタンパク質(ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドのような大きな分子量のポリヌクレオチドに比べ、化学的に合成できる程度の小さい分子量であることを意味する。したがって本明細書において「オリゴ」の語句は、数値的に明確に限定されるものではないが、概算的には、アミノ酸数として1〜50個のポリペプチドまたは塩基数として3〜150bのヌクレオチド程度の大きさを意味する。どのようなサイズのオリゴペプチドを作製するかは、上記のような範囲を目安に、適宜目的に応じて定めることができる。なお、「ポリヌクレオチド」とは、2以上のヌクレオチドを有する分子であり、オリゴヌクレオチドはポリヌクレオチドの一形態に含まれる。また、「ポリペプチド」とは、2以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合した分子であり「ポリペプチド」とは、2以上のペプチド結合を有する分子である。「オリゴヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドの一形態に含まれる。
【0021】
また、「オリゴヌクレオチド」という場合、修飾されていないRNA、DNAの他、修飾されたRNA、DNAを含む。「修飾された」とは、1又は2以上の塩基がいわゆる修飾塩基であることいい、例えば、メチル体、含硫誘導体、脱アミノ誘導体、アデノシン誘導体などの塩基誘導体が含まれる。また、「オリゴヌクレオチド」は、アンチセンス鎖(mRNAに対して相補的な関係にある鎖)、コード鎖のいずれでもよい。また、「オリゴヌクレオチド」は、一本鎖であっても、二本鎖であってもよく、さらにRNAもしくはDNAのいずれか一方からなる三本鎖領域、または、RNAとDNAの双方を含む三本鎖領域を有していてもよい。
【0022】
一般式(I)または(II)において、「N」は、A(アデニン)、C(シトシン)、G(グリシン)またはT(U)から選ばれる塩基である。「T(U)」は、DNAであればT(チミン)が該当し、RNAであればU(ウラシル)が該当する。また、「K」は、GまたはT(U)のいずれか一方である。「S」はGまたはCのいずれか一方である。
【0023】
一般式(I)または(II)に示されるように、本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、コドンの1番目、2番目の塩基としてNで表される塩基が配列されており、コドンの3番目の塩基として、Kが配置される場合と、Sが配置される場合の2形態がある。「x」は、1または2以上の整数を示す。すなわち、本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、図1および図2に示される模式配列のように、(NNK)または(NNS)の繰り返し配列を有するヌクレオチド分子である。図1中、模式配列に示される配列上部の▲1▼〜▲3▼の数値はコドンの第1〜3番目を示す。
【0024】
一般式(I)または(II)に示されるような規則性を有する配列により、コドンによりコードされる20種のアミノ酸はすべて網羅される。また、コドンには縮重があるが、一般式(I)または(II)に示されるような規則性に基づいて配列することにより、重複するコードの数を減らすことができる。すなわち、一般式(I)または(II)で示されるような規則性なしにランダムに合成する場合よりも、個々のアミノ酸の出現頻度を均等化することができる。そのため、オリゴヌクレオチドがコードするアミノ酸配列パターンが多様化しやすく、確率的にランダム性の高いオリゴヌクレオチドを得やすい。重複するコードを減らせる例としては、アルギニン(Arg)には6種の対応コドンがあるが、本発明の場合、3種の対応コドンしか現れない。したがって、オリゴヌクレオチドを合成する場合に、アルギニンの現れる確率を縮重の少ないアミノ酸の現れる確率に近づけることができる。さらに、このような配列を有するランダムオリゴヌクレオチドが複数集合して形成されるライブラリーも、対応するアミノ酸配列のパターンについてランダム性の高い複数種の分子を含む集合とすることができる。
【0025】
さらに、本発明者らは、一般式(I)または(II)で示される配列は、特定の制限酵素の認識配列が現れないことを見出した。本発明のランダムオリゴヌクレオチドを遺伝子工学的に何らかの加工、処理等を施す場合、本発明のランダムオリゴヌクレオチド配列中には制限酵素認識配列がないような酵素を用いることにより、処理中に所定のランダムオリゴヌクレオチドを切断し、ランダムオリゴヌクレオチドを損失してしまうことを抑制することができる。一般式(I)の配列では認識部位がないような制限酵素の例を表1に、一般式(II)の配列では認識部位がないような制限酵素の例を表2にそれぞれ示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
一般式(I)または(II)で示されるように複数のオリゴヌクレオチドを作製すると、TAGという停止コドンが生じ得るが、TAGという配列が不規則に生じることにより、オリゴペプチドの長さの点でもランダム性の高いオリゴヌクレオチドのライブラリーを作製することができる。
【0029】
一般式(I)または(II)で示されるランダムオリゴヌクレオチドは、DNA合成装置などを用いて、化学合成により作製することができる。「NNK」または「NNS」のように規則的な配列を有する分子を作製するには、4種のヌクレオチド分子を含む試薬貯蔵タンクと、2種のヌクレオチド分子を含む試薬貯蔵タンクとを用意し、コンピュータ制御により「N」の位置にヌクレオチド分子を結合させる際には4種のヌクレオチド誘導体を含む試薬貯蔵タンクから試薬を供給し、「K」または「S」の位置にヌクレオチド分子を結合させる際には2種のヌクレオチド誘導体が含まれる試薬貯蔵タンクから試薬を供給し、五炭糖の3’と5’との間をリン酸ジエステル結合することを繰り返し、DNA鎖を合成伸長していけばよい。また、RNAを作製する場合には、DNAを鋳型とすれば、一般式(I)または(II)の規則性を有するRNAを作製することができる。ランダムオリゴヌクレオチドの長さは、目的等に応じて適宜調節可能である。
【0030】
2.ランダムオリゴヌクレオチドカセットおよび組換えDNA等
本発明のランダムオリゴヌクレオチドカセットは、上記本発明のランダムオリゴヌクレオチドの両端に、ライゲーション部を備えたものである。本明細書において「ライゲーション部」とは、ランダムオリゴヌクレオチドを他のポリヌクレオチドとライゲーションするための配列を有するポリヌクレオチドであり、リンカー、アダプター、ホモポリマーなどのいずれでもよい。本発明においては、ライゲーション部の配列には、一般式(I)または(II)には現れない塩基配列で構成される制限酵素認識配列が含まれるようにする。このようなライゲーション部を両端に備えることにより、一般式(I)または(II)で示される塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドを切断してしまうことなく、制限酵素等を用いて容易にベクターなどに組み込むことができる。なお、制限酵素認識配列は、切断されていない状態に相当する配列を備えていても、また切断された状態に相当する配列を備えていても、本発明のカセットである。
【0031】
具体例を挙げれば、ライゲーション部は、一般式(I)の配列を有するランダムオリゴヌクレオチドに対しては表1に例示された制限酵素認識配列を内在するようにして作製することができ、一般式(II)のランダムオリゴヌクレオチドに対しては表2に例示された制限酵素認識配列を内在するようにして作製することができる。なお、表1および2中、黒三角で示す部分は切断箇所を示す。
【0032】
また、ランダムオリゴヌクレオチドカセットを作製する場合には、ランダムオリゴヌクレオチドを合成する際に、ランダム配列部分と共に最初から制限酵素認識配列が付加して作製することが好ましい。プラスミドなどのベクターに組み込むことを予定する場合には、一本鎖のランダムオリゴヌクレオチドを合成し、これを鋳型として相補的な鎖を合成して二本鎖とする。このようにして、両端には所定のライゲーション部が備えられるので、ライゲーション部に含まれる制限酵素認識配列を認識する制限酵素を用いて所定の末端を形成し、ベクターなどに組み込むことができる。
【0033】
ランダムオリゴヌクレオチドの両端に備えられるライゲーション部の種類を異なるものとすることにより、組換えDNAを作製する際に、ランダムオリゴヌクレオチドの配列の向きを特定することができる。より具体的には、制限酵素認識配列の配列または切断仕様が異なるライゲーション部をそれぞれオリゴヌクレオチドの一端に設け、切断した際の末端の形状、付着末端の場合には突出部の配列が異なるように形成する。
【0034】
ランダムオリゴヌクレオチドカセットの作製から組換えDNAの作製までについて、より具体的な例を図3に示す。図3中、「N」に相補的な塩基を「n」と、「K」に相補的な塩基を「k」として示す。まず、ランダムオリゴヌクレオチドをDNA合成装置で作製する。この際、[(NNK)x]で示されるランダム配列部分の両端には、ライゲーション部としてリンカーとなる配列が既に設計されて付加されている。また3’末端側は、プライマーを兼ねるようにポリAが付加された配列となっている。
【0035】
合成された一本鎖を二本鎖にするためのプライマーも別途合成する。このプライマーは、ランダムオリゴヌクレオチドの3’側のポリA部に相補的にポリTを有するDNA断片である。
【0036】
合成されたランダムオリゴヌクレオチドとプライマーとをアニーリングして二本鎖を形成させ、DNAポリメラーゼ I、Klenowフラグメント、Taq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼを用いてプライマー部から相補的な配列を伸長させて、二本鎖のランダムオリゴヌクレオチドカセットが得られる。図3上、左側のライゲーション部には、Bgl IIの制限酵素認識配列が含まれており、イタリックで表示している。また、図3上、右側のライゲーション部には、Dra Iの制限酵素認識配列が含まれており、同様にイタリックで表示している。
【0037】
得られたランダムオリゴヌクレオチドカセットを、プラスミドベクターpTRG2のクローニングサイトに組み込む。pTRG2は、Bam HIおよびSma Iの認識部位を備えるように加工しておく。pTRG2をBam HIおよびSma Iで処理し、他方、ランダムオリゴヌクレオチドカセットは、Bgl IIおよび Dra Iで処理し、所定の向きに、組み込むことができる。Bgl II および Dra Iは[(NNK)x]で示されるDNAを切断しないので、組換えDNAを作製するためにランダムオリゴヌクレオチドを損失することがない。
【0038】
本明細書において組換えDNAとは、2種以上のDNA同士が連結されたハイブリッド分子のことである。本発明の組換えDNAの好ましい形態としては発現ベクターが挙げられる。発現ベクターは様々な形態のものが既に知られており、また市販されているものもある。本発明では組換えDNAの形態は、用途などに応じて適宜選択してよく、市販の発現ベクターなど公知の発現ベクターを用いることができる。下記に限定されるものではないが発現ベクターに関連する具体例を示す。
【0039】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13、市販品としてpBT Vector, pTRG Vector(Stratagene社製)など)、酵母由来プラスミド(例、YEp24,YCp50など)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルス、枯草菌に好適に用いられるプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194など)などの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
【0040】
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主細胞に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが挙げられる。また、宿主細胞が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが挙げられる。宿主細胞が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。また、動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
【0041】
発現ベクターは、組換え操作についての扱いやすさの観点からマルチクローニングサイトを有することが好ましい。また、以上の他に、発現ベクターには、所望により選択マーカー、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)、ターミネーターなどを組み込むことができる。選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子(カルベジニシリン耐性遺伝子ともいわれる。以下、AmpRと略称する場合がある)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(以下、CamRと略称する場合がある)、テトラサイクリン耐性遺伝子(以下、TetRと略称する場合がある)、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、NeoRと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。また、必要に応じて、宿主細胞に合ったシグナル配列を、本発明のランダムオリゴヌクレオチドまたはカセットのN端末側に付加する。宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主細胞が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主細胞が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、Rasファルネシル化・シグナル配列などをそれぞれ利用できる。
【0042】
上記のようにランダムオリゴヌクレオチドを有する発現ベクターを作製し、これを宿主細胞に導入し、ランダムオリゴヌクレオチドでコードされたランダムオリゴヌクレオチドを発現する形質転換体を作製することができる。
【0043】
宿主細胞としては、例えば、連鎖球菌(streptococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、エシェリヒア属菌(Escherichia coli)、ストレプトミセス属菌(Streptomyces)および枯草菌(Bacillus subtilis)などの細菌細胞;酵母、アスペルギルス属(Aspergillus)などの真菌細胞;ドロソフィラS2(Drosophila S2)およびスポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、ボウズ(Bows)黒色腫細胞および血球系細胞などの動物細胞;ならびに植物細胞が挙げられる。
【0044】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986);Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)のような、多くの標準的な実験マニュアルに記載される方法により行うことができる。より具体的には、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、バイオリスティック導入(biolistics法)または感染等がある。
【0045】
形質転換体の培養は、宿主の種類等に応じて調節して行えばよい。宿主の種類は多数に上るが、いくつかの具体例を挙げると次の通りである。例えば、宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地は液体培地でも寒天培地でもよく、その中には形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他を配合する。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機塩としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。エシェリヒア属菌を培養する際の好適な培地として具体的には、酵母エキス、トリプトン、塩(NaCl)を含むLB培地などが例示される。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシドのような誘導剤を添加してもよい。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
【0046】
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、Burkholder最小培地、0.5%カザミノ酸を含有するSD培地などが挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0047】
また、宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature、195、788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0048】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地(The Journal of the American Medical Association、199巻、519(1967))、199培地(Proceeding ofthe Society for the Biological Medicine、73巻、1(1950))などが用いられる。pHは約6〜8であることが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。また必要に応じて、CO2濃度の調節を行う。
【0049】
以上のようにして、形質転換体に、ランダムオリゴヌクレオチドに対応したランダムオリゴポリペプチドを生成させることができる。
【0050】
3.ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーおよびランダムオリゴペプチドライブラリー
本発明のオリゴヌクレオチドライブラリーは、複数種のランダムオリゴヌクレオチドが含まれる集合体である。ライブラリーの形態には特に制限はなく、ランダムオリゴヌクレオチド、ランダムオリゴヌクレオチドカセット、ランダムオリゴヌクレオチドを有する組換えDNA、この組換えDNAにより形質転換された形質転換体のいずれの形態であってもよく、これらの1種によりランダムオリゴヌクレオチドの集合が構成されていても2種以上が混合されて集合が構成されていてもよい。
【0051】
上記のように、本発明のランダムオリゴヌクレオチドは、所定の規則性を持って作製されており、その集合体は様々な塩基配列パターンのオリゴヌクレオチドを含み、集合体としてのランダム性は高い。また、作製するランダムオリゴヌクレオチドの長さにもよるが、上記のように本発明のランダムオリゴヌクレオチドは合成装置により自動的に合成可能である。すなわち、オリゴヌクレオチドの種類の多さ、オリゴヌクレオチドの量などについてライブラリーサイズの大きなものを容易に作製することができる。
【0052】
本発明のオリゴペプチドライブラリーは、形質転換体で構成されるランダムオリゴヌクレオチドライブラリーを用い、当該ライブラリーに含まれている各形質転換体内で、オリゴヌクレオチドを発現させることにより得ることができる。上記ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーのランダム性が高く、またアミノ酸の出現頻度を均等化されているため、本発明のランダムオリゴペプチドライブラリーのランダム性も高いものとすることができる。また、適切な形質転換体を作製することにより、オリゴペプチドの発現量を多くすることが可能である。すなわち、オリゴペプチドの種類の多さ、オリゴペプチドの量などについてライブラリーサイズの大きなものを容易に作製することができる。
【0053】
本発明のランダムオリゴペプチドライブラリーは、複数種のランダムオリゴペプチドを含んでいれば、特に形態には制限はない。上記のように、形質転換体を作製し、ランダムオリゴヌクレオチドを発現させた培養物の形態でもよいし、培養物からランダムオリゴペプチドを必要に応じて精製してもよい。
【0054】
培養物からランダムオリゴペプチドを分離・精製するには、例えば、次のような方法により行なうことができる。オリゴペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、既知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用い得る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100(登録商標)などの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にオリゴペプチドが分泌される場合には、培養終了後、既知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるポリペプチドの精製は、既知の分離・精製法を適宜組み合わせて行なうことができる。
【0055】
これらの既知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0056】
また、ランダムオリゴペプチドライブラリー中に含まれるオリゴペプチドは、既知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができる。また、形質転換体が産生するオリゴペプチドを、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、オリゴペプチドを部分的に除去してもよい。タンパク質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどを用い得る。オリゴペプチドまたはその塩の存在あるいは活性は、標識したリガンドとの結合実験および特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0057】
本発明のオリゴヌクレオチドライブラリー、オリゴペプチドライブラリーは、M13ファージの外殻タンパク質を利用したライブラリー作製、大腸菌の鞭毛タンパク質を利用したライブラリー作製、出芽酵母やヒューマン培養細胞系においてレセプタータンパク質を利用したライブラリー作製、ピューロマイシンを利用した系に於けるライブラリー作製など様々な生物化学的なライブラリーの構築に利用することができる。また、下記に、本発明のライブラリーの特に好適な用途となる、ツーハイブリッドシステムを利用したタンパク質相互作用検出方法について説明する。
【0058】
4.タンパク質相互作用の検出方法およびその応用
以下、上記の本発明のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーまたはランダムオリゴペプチドライブラリー(第「4.」章において「ランダムライブラリー」と略称する)を活用したタンパク質相互作用検出方法等について説明する。
【0059】
本発明のタンパク質相互作用検出方法は、ツーハイブリッドシステムにおいて、相互作用を調査しようとする少なくとも一方のタンパク質として、上記本発明のランダムライブラリーに含まれるランダムオリゴペプチドを供試するものである。すなわち、上記本発明のランダムライブラリーの中から、タンパク質相互作用を生じ得るオリゴペプチドを検索する。本発明のランダムライブラリーは、ランダム性が高く、大きなライブラリーとすることができるため、極めて多種多様な配列パターンのポリペプチドについて相互作用の有無を検出可能であり、新規な相互作用関係を見出す可能性が高い方法である。
【0060】
「タンパク質相互作用」というが、本明細書においては、「タンパク質−タンパク質相互作用」、「ポリペプチド−タンパク質相互作用」、「ポリペプチド−ポリペプチド相互作用」のいずれの形態も含まれる。また、「ポリペプチド」の語句にはオリゴヌクレオチドが含まれることは上記の通りである。なお、「タンパク質相互作用検出方法」のことを「相互作用検出方法」と略称する場合がある。
【0061】
本発明の相互作用検出方法では、タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAおよびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAを細胞内に導入し、前記細胞内でタンパク質X−DNA結合ドメイン複合体およびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体を発現させ、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用する場合に前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性化される前記細胞内のレポーター遺伝子の転写産物を検出して、タンパク質Xとタンパク質Yとの相互作用を検出するツーハイブリッドシステムを用いる。
【0062】
図4に示す一例に沿って、ツーハイブリッドシステムについてより具体的に説明する。ツーハイブリッドシステムは、転写調節因子内に2つのドメインがあり、その機能発現のためには2つのドメインが結合している必要があるが、その結合は、ドメイン間に他のタンパク質などを挟んでいても機能し得るという性質を利用したものである。ツーハイブリッドシステムは、標的となるタンパク質を単離・精製する手間を要せず、生体内の生理条件下でタンパク質相互作用を確認できるという特性を有する。
【0063】
図4に示す例では、相互作用を確認しようする2種のタンパク質ペアのうちの一方をタンパク質X、他方をタンパク質Yという。本明細書において、タンパク質Xとは、DNA結合ドメイン(「DBD」と略称する場合がある)と複合体を形成するように設計されているほうのタンパク質またはポリペプチドをいう。タンパク質Yとは、転写活性化ドメイン(「AD」と略称する場合がある)と複合体を形成するように設計されているほうのタンパク質またはポリペプチドをいう。ツーハイブリッドシステムでは、一方のタンパク質をbaitタンパク質といい、所定のbaitタンパク質に結合し得るタンパク質を探索する場合、新たに見出そうとしているほうのタンパク質を標的(Target)タンパク質という場合がある。本発明においては、上記タンパク質XおよびYのどちらが、baitタンパク質または標的タンパク質であってもよい。
【0064】
ツーハイブリッドシステムでは、これらタンパク質Xおよびタンパク質Yが発現するような発現系を構築する。図4に示す例では、発現系を構成する組換えベクターであるpXベクターおよびpYベクターにはプラスミドベクターを用いている。pXベクターにはタンパク質XをコードするDNA(pXベクター中「protein X」と表示)が組み込まれ、他方、pYベクター中にはタンパク質YをコードするDNA(pYベクター中「protein Y」と表示)が組み込まれている。pXベクターには、さらにDBDをコードするDNAが組み込まれており、発現時に、タンパク質X−DBD複合体が生成されるように設計される。他方、pYベクターには、さらにADをコードするDNAが組み込まれており、発現時にタンパク質Y−AD複合体を形成するように設計される。これらのベクターは、上記「2.」章で説明した、本発明の組換えDNAと同様の構成、すなわち、プラスミド等の組換え体の種類、プロモーター、選択マーカーなど、発現ベクターとして用いられる種々の構成を採用することができる。
【0065】
これらの発現ベクターをレポーター遺伝子を保有する所定の宿主細胞に導入する。宿主細胞にはレポーター遺伝子が導入されている。レポーター遺伝子は、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用を生じた場合に、それを検出するために組み込まれている遺伝子である。レポーター遺伝子はADが基本転写装置を活性化することにより発現する。レポーター遺伝子は宿主細胞内で、プラスミドのように独立的に存在していても、染色体DNAに組み込まれていてもよい。レポーター遺伝子を保有する宿主細胞も、上記「2.」の章で例示した宿主細胞を採用することができ、好ましくは、酵母細胞、大腸菌細胞、哺乳動物細胞などを用いることができる。
【0066】
レポーター遺伝子は、少なくともレポーター遺伝子が転写されたことを示すmRNA、タンパク質などの転写産物を、直接または間接的に検出できるものであれば特に制限はない。すなわち、視覚的検査、放射活性、化学発光、蛍光、光度、分光、赤外線、比色、共鳴検出などの周知の方法により、定性的または定量的にレポーター遺伝子の発現を検出できるものであればよい。レポーター遺伝子としては、発現ベクターに選択マーカーとして用いられる各種の耐性遺伝子や酵素遺伝子等を用いることができる。
【0067】
pXベクターとpYベクターとが宿主細胞内で発現すると、タンパク質X−DBD複合体とタンパク質Y−AD複合体とが生成する。DBDはDBD結合部位に結合する。すると、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用する場合、「DBD−タンパク質X−タンパク質Y−AD複合体」が形成される。ADが基本転写装置を活性化して、レポーター遺伝子が発現する。レポーター遺伝子の発現の有無により、相互作用の有無を確認することができる。
【0068】
本発明の相互作用検出方法では、上記のようなpXベクター、pYベクター、レポーター遺伝子を有する宿主細胞として、周知または市販されている発現ベクター、宿主細胞等を用いることができる。また、近年、酵母、大腸菌などを用いたツーハイブリッドシステムのキットが市販されており、これらを用いることもできる。また、公知のDBD、ADを用いてpXベクター、pYベクターを作製することもできる。
【0069】
本発明の相互作用検出方法では、タンパク質XおよびYのうち少なくともいずれか一方に該当するものとして、上記本発明のランダムライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドを用いる。すなわち、タンパク質XおよびYの組み合わせとしては、次の2種の相互作用検出形態が挙げられる。
【0070】
(i)ランダムオリゴペプチド−任意のタンパク質
(ii)ランダムオリゴペプチド−ランダムオリゴペプチド
タンパク質XまたはYのうち一方のみをランダムオリゴペプチドとする場合、タンパク質XとYのどちらにランダムオリゴペプチドを割り当てるかは任意である。
【0071】
ツーハイブリッドシステムにおいては、タンパク質の相互作用を調べるため、そのタンパク質をコードするDNAを発現ベクターに組み込む。すなわち、タンパク質XまたはYのうちの少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターを作製する。このようなポリヌクレオチドとして、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに含まれるランダムオリゴヌクレオチドを用い、発現ベクターに載せて所定の細胞内で発現させて、対応するランダムオリゴペプチドの相互作用を検出する。本発明のランダムライブラリーには、複数種のオリゴヌクレオチドが含まれているため、相互作用を検出する組み合わせパターンとしては、
(a)「1つのランダムオリゴヌクレオチドに対応するランダムオリゴペプチド」−「1つの任意タンパク質」
(b)「複数種のランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」−「1つの任意タンパク質」
(c)「1つのランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」−「複数種の任意タンパク質」
(d)「複数種のランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」−「複数種のランダムオリゴヌクレオチドに対応する複数種のランダムオリゴペプチド」
という組み合わせが挙げられる。
【0072】
本発明のランダムライブラリーは、ランダム性が高く、サイズの大きいものを容易に作製できる。また、ツーハイブリッドシステムは、タンパク質の相互作用について、タンパク質を直接単離・精製する手間を要せず、遺伝子組換え操作の通常のプラクティスレベルで実施可能である。したがって、本発明のランダムライブラリーを用いたツーハイブリッドシステムにより、極めて多様な数多くの分子ペアについての情報を容易に得ることができる。さらに、レポーター遺伝子を保有する宿主として大腸菌を用いると、極めて短時間に結果を出すことができる。大腸菌を宿主とした場合、増殖時間が1日と短期間であり、全体として約7〜10日程度で1サイクルの実験を完了させることが可能である。また、大腸菌を宿主とした場合、1サイクルに要する時間が短いことや、大腸菌の取り扱いが容易なことから、上記(a)〜(d)で挙げた組み合わせパターンの実験を同時に2、3種類、また日程をずらすことによりさらに2、3種随時行っていくことが可能である。すなわち、本発明のタンパク質相互作用検出方法は、短期間に極めて多くのタンパク質ペアについてその相互作用の有無を確認が可能であり、新規なタンパク質ペアを見いだすことができる可能性が高い方法である。
【0073】
ツーハイブリッドシステムでは、DBDとADとの間に2種のタンパク質を介在させてADが基本転写装置を活性化する。しかし、ADがうまく基本転写装置を活性化させる位置に配置されないと、タンパク質の相互作用が生じていてもレポーター遺伝子が発現しないという偽陰性を生じることがあり得る。このような場合には、DBD結合ドメインと基本転写装置との距離を調節することにより解決できる場合がある。または、タンパク質X−DBD複合体におけるタンパク質XとDBDの連結部位、あるいはタンパク質Y−AD複合体におけるタンパク質YとADの連結部位の長さを調節することによっても、偽陰性の発生を抑制できる場合がある。この連結部位の調製は、タンパク質X−DBD複合体を例にすると、組換えDNAに組み込む際に、一つの転写単位領域内でDBDとタンパク質Xとの距離を調節することにより行うことができる。
【0074】
また、本発明の具体的な実施形態例として、一方のタンパク質として、既知の受容体タンパク質を用い、この受容体タンパク質に結合するタンパク質を探索するという形態が挙げられる。すなわち、既知の受容体タンパク質をbaitタンパク質として用い、本発明のランダムライブラリー由来のオリゴペプチドを標的タンパク質とし、ランダムライブラリーの中から当該受容体タンパク質に結合するリガンドを探索する。受容体タンパク質の結合部位が既知の場合、その部分だけを用いることもできる。なお、本明細書において「受容体タンパク質」は、各種の生体物質、薬品を特異的に認識し、その作用を伝達し発現するタンパク質であり、細胞内受容体、細胞膜上受容体、ホルモン受容体などを広く含む。
【0075】
また、既にリガンドとして知られているタンパク質分子がある場合、これが結合し得る新たな受容体を探索する形態も挙げられる。すなわち、リガンドまたはその一部をbaitタンパク質として用い、本発明のランダムライブラリー由来のオリゴペプチドの中から、リガンドに結合するものを探索する。この場合、リガンドに結合するオリゴペプチドは、その大きさからして受容体タンパク質の一部である結合部位を構成している可能性が高い。
【0076】
受容体タンパク質の機能が既に明らかな場合、この受容体タンパク質に結合するリガンドは、アゴニスト候補またはアンタゴニスト候補となる。本発明の相互作用検出方法により見いだしたアゴニスト候補およびアンタゴニスト候補から、アゴニスト、アンタゴニストをスクリーニングするには、標識リガンド結合の阻害を測定する方法、細胞性応答を定量的にアッセイする方法など、既知の方法に従って行うことができる。
【0077】
本発明の相互作用検出方法により見いだされた新たな相互作用分子ペアの同定は、例えば、発現ベクター内の所定の塩基配列部分をPCRで増幅し、単離・精製して塩基配列を同定する、発現したポリペプチドを単離・精製して分析するなど、形質転換体を用いた遺伝子工学的実験において行われる、塩基配列やアミノ酸配列の解析、分析手法に従って行うことができる。
【0078】
また、本発明のタンパク質相互作用の他の実施形態としては、レポーター遺伝子の発現量を測定して、タンパク質Xとタンパク質Yとの結合力を測定することもできる。すなわち、発現量を定量的に測定し、その量をタンパク質XとYとの結合力の指標とする。この場合、レポーター遺伝子はその発現が定量的に測定しやすいものを選ぶことが好ましい。例えば、ルシフェラーゼ、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリフォスファターゼなどが挙げられる。定量法は周知の方法を用いればよい。
【0079】
さらに、本発明は、上記のタンパク質相互作用検出方法により検出されたタンパク質ペアに基づき同定したり、さらに他の相互作用の組み合わせをコンピューター検索により見いだす方法を提供する。すなわち、上記のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、解析されたアミノ酸配列をアミノ酸配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較して、ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する。あるいは、上記タンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードするランダムオリゴヌクレオチドが有する塩基配列を解析し、解析された塩基配列を塩基配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する。
【0080】
本発明の相互作用検出方法では、タンパク質ペアの一方にランダムオリゴペプチドが用いられるため、分子の大きさに鑑みると、オリゴペプチドが生体内において天然に存在するリガンドまたは受容体などの機能性タンパク質の一部分を構成する分子である場合が考えられる。このような場合、ランダムオリゴペプチドまたはランダムオリゴヌクレオチドの配列を既知の配列データベースで検索することにより、そのペプチドまたはヌクレオチドを含む全体像、あるいはそのファミリーを見いだすことが可能である。データベースは、少なくともアミノ酸配列または塩基配列について対比解析できるものであればよい。このようなデータベースには、通常、ホモロジー解析など検索のためのソフトウエアが備わっている。公開されているデータベースとしては、GenBank、EMBL、DDJB、SWISS−PORT、TrEMBL、PIRなど多数存在する(実験医学 増刊 p16−20, Vol.19−No.11, 2001など参照)。
【0081】
さらに、上記のようにデータベースに基づく解析により、タンパク質の相互作用部位を特定することもできる。すなわち、上記のようにして相互作用タンパク質検索方法により、データベースから検出されたタンパク質中で、当該タンパク質に含まれるランダムオリゴペプチドの位置を、当該タンパク質および当該ランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を対比することにより特定して、当該タンパク質の相互作用部位を特定する。
【0082】
また、相互作用することが見出されたランダムオリゴペプチドの配列の一部を改変し、同じbaitタンパク質に対して改変したランダムオリゴペプチドが相互作用をするか否かについて、再度ツーハイブリッドシステムによる検出を行うことにより、相互作用に必須となる配列部位をより詳細に特定することもできる。ランダムオリゴペプチドの配列の一部を改変するには、ランダムオリゴペプチドの配列をコードする塩基配列の一部を変更してオリゴヌクレオチドを作製すればよい。改変したオリゴヌクレオチドを作製する際も、一般式(NNK)または(NNS)に従って作製することが望ましい。塩基配列を改変したオリゴヌクレオチドをツーハイブリッドシステムにおける標的タンパク質をコードするオリゴヌクレオチドとしてTargetベクターに組み込み、改変前のオリゴペプチドが相互作用するタンパク質をbaitとしてツーハイブリッドシステムによる相互作用検出を行う。改変したオリゴヌクレオチドを多種作製し、一度に多種の改変配列について、ツーハイブリッドシステムによる検出を行うこともできる。相互作用することが確認されれば、改変前の配列部位は相互作用に必須ではない蓋然性が高いといえる。他方、相互作用しないことが確認されれば、改変前の配列部位は相互作用に必須の部位である蓋然性が高いといえる。
【0083】
次に、図5から図7に沿い、本発明のツーハイブリッドシステムのさらに別の具体的な形態例について説明する。図5に示すように、pBTベクターには、DBDであるλcIタンパク質遺伝子およびクロラムフェニコール耐性遺伝子(CamR)が組み込まれている。pBTベクターのマルチクローニングサイトにbaitとなるタンパク質をコードするDNAを組み込む。他方、pTRGベクターには、ADであるRNAPα、テトラサイクリン耐性遺伝子(TetR)が組み込まれている。このpTRGベクターのマルチクローニングサイトに、本発明のオリゴヌクレオチドライブラリーから選ばれたポリペプチドをコードするDNAを組み込む。オリゴペプチドライブラリーから複数種のポリペプチドを供給し、複数種のpTRGベクターを作製する。これらのpBTベクターおよびpTRGベクターをレポーター遺伝子を保有している大腸菌株に導入して形質転換体を作製する。本例では、レポーター遺伝子としてカルベニシリン耐性遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子)を用いる。
【0084】
得られた複数種の形質転換体をテトラサイクリン、クロラムフェニコールおよびカルベニシリンを含有する培地に塗抹して培養する。基本的には、生存してコロニーを形成していれば、テトラサイクリンなど上記3種に対して耐性を有することを示すが、精度を上げるために、3種の耐性を有することが予め確認されている菌株をポジティブクローンとして培養し、ポジティブクローンにより形成されるコロニーの大きさを比較することが好ましい。このようにしてポジティブクローンとほぼ同等の大きさを形成したコロニーがテトラサイクリン等の上記3種の耐性を有すると考えられる形質転換体により形成されたものと判別することができる。テトラサイクリン等の上記3種の耐性を有するということは、baitタンパク質およびオリゴペプチドが相互作用をしたことを示す。生存株によるコロニーが形成されたこのプレートをマスタープレートとする。
【0085】
コロニーごとに別々に、形質転換体からオリゴペプチドが組み込まれているpTRGベクターをDNAとして精製するために、さらにテトラサイクリンを含む培地で培養を繰り返し、形質転換体からpBTベクターを脱落させてテトラサイクリン耐性のみを有する菌株を作製する。生存した菌株からpTRGベクターを精製し、別の汎用大腸菌株に再度導入してテトラサイクリン耐性形質転換体を作製する。このテトラサイクリン耐性形質転換体をテトラサイクリン含有培地で培養すると共に、クロラムフェニコール含有培地でも別個に培養を行う。テトラサイクリン耐性を有し、かつ、クロラムフェニコール感受性を有する菌株が、pBTベクターを含まずpTRGベクターを含む形質転換体である。このようにして、baitタンパク質と相互作用したオリゴペプチドをコードするDNAが組み込まれたベクターのみを含む形質転換体を単離することができる。
【0086】
このようにして得られた形質転換体から、オリゴペプチドが組み込まれているpTRGベクターを精製する。これをpBTベクターと共に、再度レポーター遺伝子を保有している大腸菌に導入し、テトラサイクリン、クロラムフェニコールおよびカルベニシリンを含有する培地で形質転換体を培養し、ポジティブクローンとほぼ同等の大きさのコロニーが形成されたものが、相互作用するオリゴペプチドを発現する菌株である。相互作用するオリゴペプチドをコードするpTRGベクターは先に精製してあるので、オリゴペプチドをコードする領域の塩基配列を定法により決定し、そのペプチドのアミノ酸配列を解読することができる。
【0087】
上記のようにbaitタンパク質と相互作用する可能性の高いオリゴペプチドをコードするpTRGベクターを精製して再度ツーハイブリッドシステムによる検定を行うことにより、baitタンパク質と相互作用する可能性の高いオリゴペプチドを精度良く検出することができる。
【0088】
また、本発明の相互作用検出方法により相互作用を見いだした後、相互作用するオリゴペプチドに基づいてプローブを作製することもできる。相互作用分子ペアの少なくとも一方はランダムライブラリーに由来するオリゴペプチドである。このオリゴペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターを回収し、PCRなどの手法を用いてオリゴペプチド部分を増幅し、増幅されたDNA断片をプローブとすることができる。得られたプローブはさらにcDNAライブラリーからタンパク質をコードするDNAを新たに探索などに用いることができる。発現ベクターの回収は、レポーター遺伝子を発現するクローンを選抜し、形質転換体から発現ベクターを回収する定法により分離・回収することができる。
【0089】
近年の生化学的研究、遺伝子工学的研究、あるいは創薬研究などでは、タンパク質の相互作用を見いだすことが1つの重要な課題となっている。本発明のタンパク質相互作用検出方法等によれば、大量の組み合わせについて簡潔な操作で、短期間に試験可能であるため、相互作用ペアの組み合わせに関し大量の情報を短期間で得ることができる。このような相互作用の情報は、未知の機能性タンパク質の発見、あるいは機能不明なタンパク質の機能解析などの基礎情報とすることができる。さらに、このような情報は、アゴニスト、アンタゴニスト、アンチセンス、あるいは抗体などに基づく遺伝子工学を利用した様々な医薬品の開発にも極めて有用な情報源となるものである。
【0090】
5.タンパク質相互作用検出キット
本発明のタンパク質相互作用検出キットは、上記の第「4.」章にて説明したツーハイブリッドシステムを利用したタンパク質相互作用検出方法を実施するためのキットである。すなわち、本発明のタンパク質相互作用検出キットは、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、DBDが組み込まれた組換えベクターと、ADが組み込まれた組換えベクターと、前記DBDおよびADにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された細胞と、を備える。
【0091】
ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーは、上記「3.」章で説明したランダムオリゴヌクレオチドライブラリーが用いられる。相互作用を見いだせるか否かは、ライブラリーサイズに依存することが考えられるが、ランダムライブラリーは追加製造可能であり、ライブラリーサイズを増幅し、新規な相互作用を検出が見いだされるまで実験を繰り返せばよい。また、DBDが組み込まれた組換えベクター、ADが組み込まれた組換えベクター、前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された細胞については、上記「2.」章で説明した組換えDNA、宿主細胞を用いることができる。
【0092】
本発明のキットの好ましい一形態としては、上記「1.」章に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセットを用いる形態が挙げられる。また、好ましい形態として、一方の発現ベクターには、ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、DNA結合ドメインが組み込まれており、他方の発現ベクターには、ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、転写活性化ドメインが組み込まれているようにする。このように発現ベクターを調製しておくことにより、実験者の作業負担を大幅に軽減することができる。また、発現ベクターには必要に応じて、上記「2.」の章で説明したプロモーター、選択マーカー、エンハンサー、SV40Ori、ターミネーターなどが組み込まれる。
【0093】
上記のキットを用い、タンパク質の相互作用検出を行うために、次のようなツーハイブリッドシステム細胞が構築されることになる。すなわち、本発明のツーハイブリッドシステム細胞は、タンパク質X−DBD複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、タンパク質Y−AD複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、前記DBDおよび前記ADにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子とが導入されている。前記タンパク質Xおよび前記タンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質については、それを構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドとして、上記「1.」で説明したランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドを用いる。ツーハイブリッドシステム細胞の構築方法は、上記「4.」章に従って行うことができる。
【0094】
実験キットとしては、実験操作の容易性から、組換えDNAとしてプラスミドベクターが好ましく、また宿主細胞としては、大腸菌、酵母などが好ましい。また、実験の結果が早期に分かるという点に関しては、大腸菌が特に好ましい。ヒトなどの哺乳類における相互作用を検証する上では、その生理的な条件が近くなるように哺乳類由来の細胞を宿主として用いることが好適である。また、本発明のキットには、上記のタンパク質相互作用検出方法を実施するための容器、試薬、制限酵素、宿主細胞培養のための培地等を備えるようにしてもよい。
【0095】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーの作製
一般式「NNK」の繰り返しが12回あり、その両端に制限酵素認識配列をもつ、以下のような式で示されるオリゴヌクレオチドを合成した。
【0096】
5’ GCGGCCAGATCTGCGGGG (NNK)x TAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA 3’
ただし、x=12、 N= G, A, T, C、 K= G, T
なお試薬として、G、C、TまたはAの塩基を有するヌクレオチド誘導体を含む混合試薬1と、GまたはTの塩基を有するヌクレオチド誘導体を含む混合試薬2とを調整し、「N」の部分を合成する際には混合試薬1を、「K」の部分を合成する際には混合試薬2を供給している。
【0097】
また、この一本鎖DNAを二本鎖にするため、以下の配列をもつプライマーを別途合成した。
【0098】
5’−TTTTTTTTTTTTAAACTACTA−3’(配列番号11)
これらの合成DNAをTE(10mM Tris・HCl, pH7.5 /1mM EDTA)中にて混合し、70℃にて10分間加熱後、室温まで徐冷することによりアニーリングさせた。その後、Klenow フラグメント(タカラバイオ社)により伸張反応させ2本鎖DNAを作製した。得られた2本鎖DNA を制限酵素Bgl IIとDra Iで処理し、オリゴヌクレオチドカセットを作製した。これを制限酵素BamH IとSma Iで処理したpTRG2にT4 DNAライゲース(タカラバイオ社)を用いて連結し、大腸菌に形質転換を行い、オリゴヌクレオチドカセットのライブラリーを得た。得られた個々の形質転換体から、プラスミドDNAを抽出後、オリゴヌクレオチド部分の塩基配列を解析した。これに基づき、ペプチド配列に翻訳した結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
表3に示されるとおり、本発明のランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーは、さまざまなオリゴペプチドの配列が出現しており、配列のランダム性が高いライブラリーが得られることが確認された。
【0101】
<実施例2>
(1)概要
本発明に従い作製したオリゴヌクレオチドカセットを用いたツーハイブリッド実験により、タンパク質とオリゴペプチドの相互作用が検出可能であるかどうかを検討した。まず概要について説明する。
【0102】
アポトーシス抑制因子であるBcl−xLは、アポトーシス促進因子Bakと結合することが知られている。特にBakに関してはBcl−xLと結合する最小領域として16アミノ酸(GQVGRQLAIIGDDINR)からなる配列が同定されており、NMRによる構造解析も行われている(Sattlerら、1997;Science275:983−986)。さらにBcl−xLタンパク質精製標品と、変異を導入した合成オリゴペプチドを用いたin vitroの結合測定法(蛍光偏光測定法)により、結合に必須なアミノ酸が同定されている(7番目のロイシン)。また逆に結合に寄与していないアミノ酸もわかっている(13番目のアスパラギン酸)。
【0103】
この知見を元に、baitベクター「pBT」にBcl−xL、targetベクター「pTRG」にBak由来の16アミノ酸および変異型16アミノ酸を組み込んだプラスミドを作製し、大腸菌ツーハイブリッドの実験を行った。
【0104】
その結果、本発明に従って作製したBak由来の16アミノ酸をコードするtargetクローンを用いたツーハイブリッドの実験ではBcl−xLとの結合が検出された。また7番目のロイシンをアラニンに置換した変異型16アミノ酸をコードするtarget クローンでは結合が検出されなかった。さらに13番目のアスパラギン酸をアラニンに置換した変異型16アミノ酸をコードするtargetクローンでは結合が検出された。これらの結果は、in vitroの実験結果と一致している。
【0105】
以上のことより、ツーハイブリッドの実験によりタンパク質とオリゴペプチドの特異的な相互作用が検出可能であることが示された。これは、本発明に基づき作製したオリゴペプチドライブラリーを用いることにより、baitタンパク質と特異的に結合するオリゴペプチドを抽出してくることが可能であることを示している。
【0106】
【表4】
【0107】
(2)材料及び方法
(2−1)Bcl−xLのクローニング
ヒト胎盤cDNAライブラリー(タカラバイオ社製)を鋳型にPCRを行い、ヒトBcl−xL cDNAを得た。PCRに用いたプライマーを配列表の配列番号1および配列番号2に示す。
【0108】
BxL−N1には大腸菌ツーハイブリッド法に用いるbaitベクターであるpBTに組み込むため制限酵素NotIを、BxL−C2にはXhoIサイトを付加している。またBxL−C2は、Bcl−xLとBak由来の16アミノ酸の構造解析が、Bc1−xLの膜貫通領域(210番目から233番目)の欠損体を用いて行われている事を考慮して、209番目のアルギニンをコードするCGCの後に、終止コドンであるTAGを組み込んである。
【0109】
得られたcDNA断片は、TAクローニングベクターであるpCR2.1(Invitrogen社)に組み込み塩基配列を確認後、制限酵素NotI、XhoIで処理を行い、pBTベクターに導入した。これによりλcIタンパク質とBcl−xL(配列番号6)の膜貫通領域欠損体の融合タンパク質を発現するプラスミド、pBT−Bcl−xL△TMを得た。ヒトBcl−xLのcDNA配列を配列表の配列番号3に、そのアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0110】
(2−2)オリゴヌクレオチドカセットクローニング用targetベクターpTRG2の作製
本実験ではオリゴヌクレオチドカセットを作製する際に制限酵素の組み合わせとしてBglII、DraIを用いた。しかし大腸菌ツーハイブリッド法に使用されるtargetベクター、pTRGのクローニングサイトには平滑末端を生成する制限酵素が存在しない(DraIは平滑末端を生じる)。そこでpTRGのクローニングサイトに平滑末端でDNAを切断する制限酵素SmaIサイトを導入した。
【0111】
まず、pTRGを制限酵素EcoRIで切断後、Klenowフラグメントにより5’突出末端を平滑化した。その後、SmaIリンカー(タカラバイオ社:pSmaI linker)をライゲーションし、さらに制限酵素SmaIによる処理を行った。これをT4 DNAライゲースにより自己環状化することにより、新たにSmaIサイトを持つpTRG2を作製した。
【0112】
(2−3)オリゴヌクレオチドカセット作製とpTRG2への導入
Bak由来の16アミノ酸、GQVGRQLAIIGDDINR(以下、野生型(配列番号6))と変異型16アミノ酸、GQVGRQAAIIGDDINR(以下、変異型LA(配列番号8))、GQVGRQLAIIGDAINR(以下、変異型DA(配列番号10))をコードする様に、本発明で述べた規則(本実験ではNNK)に従い、以下の配列のオリゴヌクレオチドを合成した。
【0113】
野生型;
5’−GCGGCCAGATCTGGTCAGGTTGGTCGTCAGTTGGCTATTATTGGTGATGATATTAATCGTTAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA −3’(配列番号5)
変異型LA;
5’−GCGGCCAGATCTGGTCAGGTTGGTCGTCAGGCTGCTATTATTGGTGATGATATTAATCGTTAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA −3’(配列番号7)
変異型DA;
5’−GCGGCCAGATCTGGTCAGGTTGGTCGTCAGTTGGCTATTATTGGTGATGCTATTAATCGTTAGTAGTTTAAAAAAAAAAAA −3’(配列番号9)
【0114】
これら合成DNAを各々21primer(5’−TTTTTTTTTTTTAAACTACTA−3’)(配列番号11)と混合し、70℃で10分間加熱後、室温まで徐冷することによりアニーリングさせた。その後、Klenowフラグメントにより伸張反応をさせ2本鎖DNAを作製した。得られた2本鎖DNAを制限酵素BglIIとDraIで処理し、オリゴヌクレオチドカセットを作製した。これを制限酵素BamHIとSmaIで処理したpTRG2にT4 DNAライゲースを用いて連結し、大腸菌に形質転換を行った。得られたクローンに関しては、プラスミドDNAを抽出後、塩基配列を決定し、野生型あるいは変異型のBak由来の16アミノ酸をコードするオリゴヌクレオチドカセットが、pTRG2に予想通り組み込まれていることを確認した。
【0115】
これによりRNA polymeraseαタンパク質とBak由来の16アミノ酸、及び変異型16アミノ酸との融合タンパク質を発現するプラスミド、pTRG−Bak16WT、pTRG−Bak16LA、pTRG−Bak16DAを得た。
【0116】
(2−4)ツーハイブリッドを用いた相互作用検定
Stratagene社BacterioMatch(登録商標)Two−Hybrid System Vector Kit添付の説明書に従い、Bcl−xLと野生型(WT)あるいは変異型のBak由来の16アミノ酸との相互作用検定を行った。判定はレポーター遺伝子の発現表現型であるカルベニシリン耐性が検出されるかどうかで行った。
【0117】
相互作用検定を行ったのは、
▲1▼ pBT−Bcl−xL△TMとpTRG−Bak16WT、
▲2▼ pBT−Bcl−xL△TMとpTRG−Bak16LA、
▲3▼ pBT−Bcl−xL△TMとpTRG−Bak16DAの3種類と、
▲4▼ Negatuve ControlとしてのpBT−Bcl−xL△TMとpTRG、
の計4種類の組み合わせである。精製したDNAを各々10ngずつ大腸菌ツーハイブリッド検出用菌株、BacterioMatch(登録商標)Reporter Strainのコンピテント細胞に形質転換後、菌培養液をTCK寒天培地(LB培地にテトラサイクリンを15μg/ml、クロラムフェニコールを34μg/ml、カナマイシン50μg/mlとなるよう加えたもの)とCTCK寒天培地(LB培地にカルペニシリンを250μg/ml、テトラサイクリンを15μg/ml、ロラムフェニコールを34μg/ml、カナマイシンを50μg/mlとなるよう加えたもの)に50μlずつ塗抹した。これらを30℃で〜24時間培養後、TCK寒天培地とCTCK寒天培地、各々に生育してくる大腸菌のコロニーを比較し、相互作用の判定を行った。
【0118】
(3)結果
上記▲1▼〜▲4▼についての培養の結果を、図8〜11に示す。30℃で24時間培養後のTCK寒天培地とCTCK寒天培地上でのコロニーを比較した結果、Bcl−xL△TMとBak野生型配列、Bcl−xL△TMとBak変異型DA配列が相互作用することが示された。またBak変異型LA配列とは相互作用しないことが示された。すなわち、本発明により、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーをもちいて相互作用の検定ができることが確認される共に、相互作用をするオリゴペプチドにおいて、相互作用に必須となる配列部位、または必須とはならない部位の特定も可能であることが確認された。
【0119】
また、上記の結果を得るために要した日数は、オリゴヌクレオチドの合成にかかる日数を除いて5日であった。以上のように、一般式「NNK」で示されるオリゴヌクレオチドを用いて相互作用の検出を短期間にかつ簡便に行うことができた。
【0120】
【発明の効果】
本発明により以下のような効果が得られる。
(1)本発明により、オリゴヌクレオチドまたはオリゴペプチドの種類、量などの点でサイズの大きなライブラリーが提供される。
【0121】
(2)本発明によれば、ランダムオリゴヌクレオチドを組み換える際にランダムオリゴヌクレオチド部分が切断されてしまうことがないようにすることができるため、作製されたランダムオリゴヌクレオチドの組換えDNAの損失が少ない。
【0122】
(3)本発明により、前記オリゴヌクレオチドライブラリーを利用した、タンパク質相互作用検出方法が提供される。配列のランダム性が高く、サイズの大きなオリゴヌクレオチドライブラリーから多様なオリゴヌクレオチドが供給され多様なオリゴペプチドについて相互作用の検出試験を行うことができるため、新規なタンパク質相互作用を見出す可能性が高い。また短期間に多数の組み合わせについて相互作用の検出試験が可能である。
【0123】
(4)また、本発明により、受容体の結合部位またはリガンドのスクリーニング、タンパク質相互作用部位の特定などを効率よく行うことができる。
【0124】
(5)また、本発明により、タンパク質の相互作用にあたり必須となる配列部位または必須とはならない配列部位の検出も簡便に行うことができる。
【0125】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のランダムオリゴヌクレオチドの一形態である一般式(I)およびその模式配列を示した図である。
【図2】本発明のランダムオリゴヌクレオチドの一形態である一般式(II)およびその模式配列を示した図である。
【図3】本発明のランダムオリゴヌクレオチドの末端にライゲーション部を導入し、ランダムオリゴヌクレオチド複合体を作製するプロセスの一例を示す図である。
【図4】ツーハイブリッドシステムの原理を模式的に示す図である。
【図5】ランダムオリゴヌクレオチドを、そのまま、あるいは改変することにより組み込むことができる2種のベクターを示す図である。
【図6】タンパク質相互作用の検出方法のプロセスを模式的に示した図である。
【図7】タンパク質相互作用の検出方法のプロセスを模式的に示した図であり、図6の続きである。
【図8】pTGRベクターとして、pTRG−Bak16WTを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
【図9】pTGRベクターとして、pTRG−Bak16LAを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
【図10】pTGRベクターとして、pTRG−Bak16DAを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
【図11】ネガティブコントロールとして、pTRGを導入したツーハイブリッド検出用大腸菌株をTCK寒天培地およびCTCK寒天培地で培養した結果を示す図である。
Claims (25)
- コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチド。
- コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)となるようにヌクレオチドを結合させて、ランダムな塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを作製する、ランダムオリゴヌクレオチド作製方法。
- コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドの両端に、前記ランダムオリゴヌクレオチドでは出現しない塩基配列パターンの制限酵素認識配列を含むライゲーション部を有する、ランダムオリゴヌクレオチドカセット。
- ランダムオリゴヌクレオチドの両端にあるライゲーション部がそれぞれ異種の制限酵素認識配列を含む、請求項3に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセット。
- コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドが組み込まれた組換えDNA。
- コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドと、DNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドとが連結されたポリヌクレオチドが組み込まれた、組換えDNA。
- コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)である塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドと、転写活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドとが連結されたポリヌクレオチドが組み込まれた、組換えDNA。
- 請求項5から7のいずれか一項に記載の組換えDNAを有する形質転換細胞。
- 請求項1に記載のランダムオリゴヌクレオチド、請求項3または4に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセット、請求項5から7のいずれか一項に記載の組換えDNA、および、請求項8に記載の形質転換細胞からなる群より選ばれる1種または2種以上を含み、かつ、複数種のランダムオリゴヌクレオチドが含まれる、ランダムオリゴヌクレオチドライブラリー。
- 請求項9に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに含まれる組換えDNA中のランダムオリゴヌクレオチドが発現して生成された複数のランダムオリゴペプチドが含まれる、ランダムオリゴペプチドライブラリー。
- コドンの第1番目および第2番目の各塩基がG、C、T(U)またはAのうちのいずれかであり、かつ、コドンの第3番目の塩基が、GまたはC、あるいは、GまたはT(U)となるようにヌクレオチドを結合させて、塩基配列がランダムなランダムオリゴヌクレオチドを作製する工程と、
前記ランダムオリゴヌクレオチドをベクターに組み込んで組換えベクターを作製する工程と、
前記組換えベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を作製する工程と、
前記形質転換体が有するランダムオリゴヌクレオチドを発現させて、ランダムオリゴペプチドを生成せしめる工程と、
を有する、ランダムオリゴペプチドライブラリー作製方法。 - タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAおよびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを有する組換えDNAを細胞内に導入し、前記細胞内でタンパク質X−DNA結合ドメイン複合体およびタンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体を発現させ、タンパク質Xとタンパク質Yとが相互作用する場合に前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性化される前記細胞内のレポーター遺伝子の転写産物を検出して、タンパク質Xとタンパク質Yとの相互作用を検出するツーハイブリッドシステムにおいて、
タンパク質Xおよびタンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが、請求項9に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドである、タンパク質相互作用検出方法。 - 前記レポーター遺伝子の発現量を測定して、タンパク質Xとタンパク質Yとの結合力を測定する、請求項12に記載のタンパク質相互作用検出方法。
- 請求項12のタンパク質相互作用検出方法におけるタンパク質Xまたはタンパク質Yのいずれか一方が受容体タンパク質またはその一部であり、他方が請求項9に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドである、リガンドのスクリーニング方法。
- 請求項12のタンパク質相互作用検出方法におけるタンパク質Xまたはタンパク質Yのいずれか一方がリガンドまたはその一部であり、他方が請求項9に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴペプチドである、受容体タンパク質の結合部位のスクリーニング方法。
- 請求項12に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、
タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、解析されたアミノ酸配列をアミノ酸配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、
ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する、相互作用タンパク質検索方法。 - 請求項12に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、
タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードするランダムオリゴヌクレオチドが有する塩基配列を解析し、解析された塩基配列を塩基配列データベース内に予め蓄積された配列情報と比較し、
ランダムオリゴペプチドが有するアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する、相互作用タンパク質検索方法。 - 請求項16または17に記載の相互作用タンパク質検索方法によりデータベースから検出されたタンパク質中で、当該タンパク質に含まれるランダムオリゴペプチドの位置を、当該タンパク質および当該ランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を対比することにより特定して、当該タンパク質の相互作用部位を特定する、タンパク質の相互作用部位特定方法。
- 請求項12に記載のタンパク質相互作用検出方法により相互作用が検出された細胞を採取し、タンパク質Xおよび/またはタンパク質Yをコードする塩基配列を有するランダムオリゴヌクレオチドにより特定されるランダムオリゴペプチドのアミノ酸配列を解析し、当該アミノ酸配列の一部の配列を改変するようにオリゴヌクレオチドを作製し、改変ペプチドについて再度ツーハイブリッドシステムによる相互作用検出を行い、相互作用の有無を検出して相互作用の必須配列部位を特定することを特徴とする、タンパク質相互作用検出方法。
- タンパク質X−DNA結合ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、
タンパク質Y−転写活性化ドメイン複合体をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドと、
前記DNA結合ドメインおよび前記転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子とが導入されており、
前記タンパク質Xおよび前記タンパク質Yのうち少なくとも一方のタンパク質を構成するポリペプチドをコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが、請求項9に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーに由来するランダムオリゴヌクレオチドである、ツーハイブリッドシステム細胞。 - 前記細胞が、大腸菌である、請求項20に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
- 前記細胞が、酵母である、請求項20に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
- 前記細胞が、哺乳類に由来する細胞である、請求項20に記載のツーハイブリッドシステム細胞。
- 請求項9に記載のランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、
DNA結合ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
転写活性化ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された宿主細胞と、
を備える、タンパク質相互作用検出キット。 - 請求項3または4に記載のランダムオリゴヌクレオチドカセットを含むランダムオリゴヌクレオチドライブラリーと、
前記ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、DNA結合ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記ランダムオリゴヌクレオチドカセットが有するライゲーション部の制限酵素認識配列に対応して連結可能な制限酵素認識配列、および、転写活性化ドメインが組み込まれた組換えベクターと、
前記DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインにより転写活性が調節されるレポーター遺伝子が導入された細胞と、
を備える、タンパク質相互作用検出キット。
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JP2002183456A JP2004024078A (ja) | 2002-06-24 | 2002-06-24 | ランダムオリゴヌクレオチドライブラリーおよびタンパク質相互作用検出方法 |
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JP (1) | JP2004024078A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006062173A1 (ja) * | 2004-12-08 | 2006-06-15 | Keio University | 抗癌剤作用を助長するBcl-xLへテロダイマー阻害ペプチド及びそのスクリーニング方法 |
-
2002
- 2002-06-24 JP JP2002183456A patent/JP2004024078A/ja active Pending
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