【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シール部材を装着した各種の転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来の転がり軸受の一種である玉軸受101の断面図である。玉軸受101は、外輪102、内輪103、転動体である複数のボール104、保持器105およびシール106を有する。
【0003】
内輪103は、軸に外嵌しており、外輪102と径方向に対向している。複数のボール104は、外輪102と内輪103のそれぞれに周方向に沿って形成された外輪軌道と内輪軌道との間に配置されている。複数のボール104は、保持器105によって略等間隔で転動自在に保持されている。ボール104の転動をスムーズに行うために、外輪102及び内輪103の外輪軌道および内輪軌道とボール104の間には潤滑剤としてのグリースが封入されている。
【0004】
シール106は、外輪102から内径側に突出配置された環状部材である。シール106は、外輪102に設けられた嵌合溝107に装着される取付嵌合部108と、内輪との間に僅かな隙間を有し、内輪に設けられたシール溝109との間でラビリンスを形成するリップ部110と、取付嵌合部108とリップ部110とを連結する連結部111とを有する。シール106を内輪103に取り付けたものもあるが、内輪103が回転部材である軸に外嵌している場合には、外輪102に取り付けるのが一般的である。取付嵌合部108は、弾性変形した状態で外輪102の嵌合溝107に押し込まれており、緊密な嵌合状態で固定されている。
【0005】
シール106は、内輪102と外輪103との間のボール104を収納する空間の両端開口部を塞いで封止している。シール106は、外部からボール収容空間へのごみ、水分、異物等の侵入、およびボール収容空間からグリースの流出を防止している。
【0006】
シール106は、全体を金属で構成したものや、連結部111が金属製で、取付嵌合部108とリップ部110が軟らかいゴムで構成されたものが知られている。また、プラスチックを使用したプラスチックシールも知られており、例えば実公平07−032985は、1種類のプラスチックのみから形成したプラスチックシールを開示している。図6は、実公平07−032985に開示の転がり軸受を示す図である。ここでは、112が、プラスチックシールである。
【0007】
図5のシール106は、非接触型のシール部材であるが、これとは別に、リップ部が内輪に設けられたシール溝面または内輪の外径面と摺接して、内輪102と外輪103との間のボール104を収納する空間の両端開口部を塞いで封止する接触型のシール部材も知られている。
【0008】
しかし、シールと内輪に設けられたシール溝面または内輪の外径面が摺接する接触型のシール部材を用いた場合、リップ部が内輪のシール溝面または外径面との摺接により摩耗してしまうという問題点がある。さらに、摺接により軸の回転トルクが大きくなるという問題点もある。さらに、接触型のシール部材は、シール音が発生するという問題点もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、内輪102との間に隙間を持った状態で装着されるシール106や112では、図5や図6に示されるようなラビリンスを形成しても、外部からの異物の侵入を防止する防塵性能、および潤滑のためのグリースおよびグリースの基油漏出を防止する密封性能が十分ではない。
シールの防塵性能および密封性能が十分ではない場合、外部から軸受のボール収容空間へのごみ、水分、異物等が容易に侵入し、軸受のボール収容空間から潤滑剤が容易に流出するため、軸受の寿命が短くなってしまうという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような状況を鑑みて為されたものであり、異物侵入を防止する防塵性能および潤滑剤の漏出を防止する密封性能に優れ、長期に渡り良好に動作し得るプラスチックシールを装着した転がり軸受を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の転がり軸受は、軸に外嵌する内輪と、前記内輪と対向する外輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置される転動体と、前記外輪の軸方向端部に設けられ、前記内輪と対向するプラスチック製のシール部材と、を有し、
前記シール部材は、前記内輪と対向するリップ部を備え、前記リップ部と対向する前記内輪の対向面上に周溝を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の転がり軸受によれば、プラスチック製のシール部材のリップ部と対向する内輪の対向面上には、周溝が形成されている。この周溝は、シール部材のリップ部と内輪の対向面間の幅を一時的に大きくする。従って、周溝は、圧力を一時的に低減し、リップ部とその対向面との間に生じる毛細管現象の抑制に寄与する。これにより、潤滑剤の外部への漏出を抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、周溝は、外部から侵入する異物を周溝内に貯めるため、外部からの異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0014】
本発明によれば、内輪は、ラビリンスを形成する内輪シール溝を有し、内輪シール溝上に周溝を設けてもよい。また、内輪は、シール部材のリップ部と軸の径方向に対向する外径面を有し、前記外径面上に前記周溝を設けてもよい。
【0015】
また、本発明によれば、周溝の深さは、内輪とシールのリップ部との間の長さよりも大きいことを特徴とする。周溝の深さを内輪とリップ部間距離よりも大きく設定することにより、より効率的にグリースの漏出および異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1〜3実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る転がり軸受の一種である玉軸受1を示す断面図である。玉軸受1は、外輪2、内輪3、転動体である複数のボール4、保持器5およびシール6を有する。
【0018】
外輪2は、ハウジング等の静止部材の内径面に固定されている。外輪2は、炭素鋼等の金属材により製造されている。外輪1は、ボール4を周方向に沿ってガイドする外輪軌道2aを内径面に有する。外輪2の内径面両端部近傍には、内側面7a、外側面7cおよび内側面7aおよび外側面7cを接続する底面7bを有する断面視面略U字型のシール取付用嵌合溝7が形成されている。
【0019】
内輪3は、外輪2と同様に、炭素鋼等の金属材により製造されている。内輪3は、回転部材である軸の外径面に外嵌している。内輪3は、外輪2の外輪軌道2aに対応して、ボール4を周方向に沿ってガイドする内輪軌道3aを外径面に有する。内輪3は、軸の回転に伴い、軸と一体に回転する。
【0020】
複数のボール4は、外輪2の外輪軌道2aと内輪3の内輪軌道3aとの間に配置されている。複数のボール4は、保持器5によって略等間隔で転動自在に保持されている。ボール4の転動を円滑に行うために、外輪2および内輪3の外輪軌道および内輪軌道のそれぞれとボール4の間には潤滑剤としてのグリースが予め封入されている。
【0021】
グリースは、基油となる潤滑油に増ちょう材を分散させて半固体にした潤滑剤である。基油としては、鉱油、ジエステル系油、ポリオールエステル系油、合成炭化水素油、フェニルエーテル系油、ポリグリコール系油、フッ素系合成油、シリコーンなどを用いることができる。増ちょう材は、基油を抱き込んで保持し、基油を半固体状態にするためのものであり、Li石鹸、Li復号石鹸、カルシウム石鹸、カルシウム復号石鹸、アルミニウム複合石鹸、そしてジウレアやテトラウレア化合物等を用いることが可能である。また、これらの組み合わせを用途に応じて適時選択し、グリースとして用いることが可能である。
【0022】
シール6は、プラスチックを素材とする環状部材であり、外輪2から内径側に突出配置されている。シール6は、外輪2に設けられた嵌合溝7に装着される取付嵌合部8と、内輪3と対向するリップ部10と、取付嵌合部8とリップ部10とを連結する連結部11とを有する。
【0023】
取付嵌合部8は、嵌合溝7の外側面7aに接する先端8aと、先端8aと連続に形成され、嵌合溝7の内側面7cに接する内側面接触部8bと、軸方向外側に向けて形成され、連結部11と内側面接触部8bを接続する接続部8cとから構成される。取付嵌合部8は、上記屈曲状態で弾性変形し外輪2の嵌合溝7に押し込まれており、緊密な嵌合状態で固定されている。これにより、外輪2とシール6間は、がたつきが生じることなく強固に固定され、外輪2とシール6間を密接に封止している。
【0024】
シール6を構成するプラスチックとしては、エンジニアリングプラスチック単体を用いても良く、またはガラス繊維や炭素繊維などの短繊維を配合して強化した複合材を用いてもよい。シール6は、内輪3に取り付けてもよいが、内輪3が回転部材である軸に外嵌している場合、静止部材である外輪2に取り付けるのが一般的である。
【0025】
シール6は、内輪2と外輪3との間のボール4を収納する空間の両端開口部を塞いで封止している。シール6は、外部からボール収容空間へのごみ、水分、異物等の侵入、およびボール収容空間からグリースの流出を防止している。
【0026】
リップ部10と内輪3との間には、僅かな隙間を持ったラビリンス部9が形成されている。ラビリンス部9において、リップ部10と対向する内輪3の外径面3b上には、内輪軌道3aに平行な2本の周溝12が形成されている。
【0027】
図2は、ラビリンス部9の詳細を示す図1の拡大断面図である。2本の周溝12の深さLは、リップ部10と内輪3の外径面3bとの間のラビリンス幅Tよりも大きい。
【0028】
軸受1内で、ボール4が高速で転動すると、軸受回転に起因する遠心力および内圧により潤滑剤としてのグリースは攪拌され、グリースから基油が一部分離する。そして、一部のグリースまたはグリースの基油はラビリンス部9またはその近傍に跳ね飛ばされる。ラビリンス部9またはその近傍に跳ね飛ばされたグリースは、遠心力、内圧及び毛細管現象により、ラビリンス部9を介して外部に漏出しようとする。一般に、転がり軸受が潤滑剤不足で寿命に至る場合、潤滑剤の漏出が主原因であるが、グリース潤滑の場合、特に、グリース自体ではなくグリースの基油が分離し漏出してしまうことによることが多い。
【0029】
本実施形態では、周溝12がラビリンス部9の幅を一時的に広くしている。従って、周溝12は、内部の圧力を低減し、毛細管現象を抑制するために寄与する。これにより、グリースまたはグリースの基油の漏出が抑制される。また、外部からラビリンス部内に異物が侵入した場合でも、異物はこの周溝12内に保持されてしまうため、異物の軸受内部への侵入を防止することが可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態では、プラスチック製のシール6を弾性変形させて、外輪2と緊密に嵌合固定している。従って、外輪2とシール6間においても、長期間に渡りグリースを保持し、さらに異物の軸受内部への侵入を防止することが可能となる。
【0031】
ここで、この周溝12の形状および深さLは、特に限定されるものではないが、深さはラビリンス幅T以上であると、より一層圧力の低減に寄与し毛細管現象が抑制されるため好ましい。
【0032】
また、本実施形態では、周溝を2本形成したが、これに限定されず、少なくとも一本の周溝を形成すればよい。また、3本以上の複数の周溝を形成しても良い。
【0033】
(第2実施形態)
以下、図3を参照して本発明の第2実施形態を説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る転がり軸受のラビリンス部29の詳細を示すの拡大断面図である。図3においては、内輪3には内輪シール溝を為す段部23aが形成されている。そして、内輪3の径方向側面23cとリップ部20の径方向側面20aは、径方向に対向し、かつ内輪3の軸方向側面23dとリップ部20の軸方向側面20bは、軸方向に対向することにより、ラビリンス部29が形成されている。そして、内輪3の径方向側面23cおよび軸方向側面23d上には、それぞれ深さL1およびL2を有する周溝22aおよび22bが形成されている。周溝22aおよび22bの作用は、第1実施形態の周溝12と同様である。深さL1およびL2は、ラビリンス部の幅Tよりも広く形成することが好ましい。
【0034】
本実施形態では、第1実施形態のラビリンス部9に比べ、ラビリンス部29の長さを長く構成することができる。したがって、より効果的な異物侵入を防止する防塵性能および潤滑剤の漏出を防止する密封性能を有する軸受を構成することが可能となる。
【0035】
(第3実施形態)
以下、図4を参照して本発明の第3実施形態を説明する。図4は、本発明の第3実施形態に係る転がり軸受のラビリンス部39の詳細を示す拡大断面図である。図3においては、内輪3には内輪シール溝を為す段部33aが形成されている。そして、内輪3の径方向側面33bとリップ部30の径方向側面30aが径方向に対向し、かつ内輪3の軸方向側面33cとリップ部30の軸方向側面30bが軸方向に対向することにより、ラビリンス部39が形成されている。そして、内輪3の径方向側面33bと軸方向側面33cの交線(交差部)に沿って、深さに相当する半径kの略円形状を有する周溝32が形成されている。周溝32の作用は、第1,2実施形態の周溝12,22a、22bと同様である。半径kは、ラビリンス部の幅Tよりも長く形成することが好ましい。
【0036】
本実施形態では、径方向側面33aと軸方向側面33bの交線に沿って周溝32を形成している。従って、第1,2実施形態の周溝12,22a,22bに比べ大きな周溝を形成することが可能となる。よって、第2実施形態同様にラビリンス部の長さを十分に確保しつつ大きな周溝32を形成することにより、より効果的な異物侵入を防止する防塵性能および潤滑剤の漏出を防止する密封性能を有する軸受を構成することが可能となる。
【0037】
なお、本発明のシールのリップ形状、内輪の外径形状、およびシール溝の形状は、本実施形態に限られるものではなく、リップと内輪面との間に、シール溝を設けラビリンス部が形成されたものであればよい。
【0038】
【実施例】
次に、第1実施形態、第3実施形態に係るラビリンス構造を有する転がり軸受を用意し、以下の条件にて耐久試験を行い、発明の効果を確認した。比較のため、従来の転がり軸受も用意し、同様の耐久試験を行い、比較検討を行った。
【0039】
(実施例1)
図1(2)および3に示した、内輪外径部に周溝を2本設けた軸受(第1実施形態の軸受)。
(実施例2)
図4に示した、内輪の軸方向側面と径方向側面の交差部分に周溝を1本設けた軸受(第3実施形態の軸受)。
(比較例1)
全体が金属製のシール(Z板)を装着した軸受(周溝無し)。
(比較例2)
図5において、連結部が金属製のリングで、取付嵌合部とリップ部を柔らかいゴムからなるシール(Vシール)を装着した軸受。
(比較例3)
図6に示した、ラビリンス部を形成する内輪面に周溝がない軸受。(ただし、シール外径部の取付嵌合部および外輪の嵌合溝は、図3の構造のものを用いた。)
【0040】
評価は、内径17mm、外径40mm、幅12mmの玉軸受(JIS名番6203)に1gのグリースを封入して行った。評価は具体的に以下のように行った。
【0041】
<潤滑剤(グリース及び基油)の漏出評価>
雰囲気温度100C、回転数10000rpmで、1000時間の回転試験を行い、グリースおよび基油の減少量を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
<防塵性の評価>
試験雰囲気中に、JIS Z8901試験用粉体1の8種(関東ローム)を一定量(2g)充満させて、回転数1800rpmで5時間回転試験を行った後、内部に入った前記粉体量を調べた。結果を表1に示す。なお、表1において、○は、軸受内部に全く粉体が入っていない状態を、△は、一部粉体が軸受内部に入っている状態を、そして×は、多量の粉体が軸受内部に入っている状態を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
以上の結果から、本発明の転がり軸受は、潤滑剤の漏出比が5%以下であるのに対し、従来の転がり軸受では、10%以上の潤滑剤が外部に漏出してしまったことが分かる。
さらに、本発明の転がり軸受は、回転試験後、軸受内部にて全く粉体が確認されていないのに対し、従来の転がり軸受では、軸受内部に粉体が流入してしまったことがわかる。本発明の転がり軸受では、ラビリンス部の周溝までは粉体が流入していたが、周溝によりそれ以上内部への流入が防止されている。
【0045】
比較例1と比較例2,3を比較すると、複雑な構造を有するラビリンスを設けることにより、グリースの漏出量が減少していることがわかる。しかし、比較例3の場合には、防塵性が比較例2と比べて劣るものであり、単にラビリンスを設ければシールとしての密封性能が向上するというものではないことが分かる。さらに、実施例1,2と比較例2を比較すると、周溝を設けることにより、漏出量が半分以下に減少し、かつ防塵性においても多大な向上が見られている。
これにより、本発明の転がり軸受は、軸受内部の潤滑材の漏出に対する密封性能および軸受外部からの異物侵入を十分に防ぐに足る防塵性能を有していることが確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転がり軸受によれば、異物侵入を防止する防塵性能および潤滑剤の漏出を防止する密封性能に優れ、長期に渡り密封性能を良好に維持し得るプラスチックシールを装着した転がり軸受を提供することができる。これにより、長期に渡るグリースの劣化を抑制することが可能となり、安定して軸受を長期間使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る転がり軸受の一種である玉軸受を示す断面図
【図2】ラビリンス部の詳細を示す図1の拡大断面図
【図3】本発明の第2実施形態に係る転がり軸受のラビリンス部の詳細を示すの拡大断面図
【図4】本発明の第3実施形態に係る転がり軸受のラビリンス部の詳細を示すの拡大断面図
【図5】従来の転がり軸受の一種である玉軸受の断面図である。
【図6】従来の転がり軸受を示す図である。
【符号の説明】
1 転がり軸受
2 外輪
3 内輪
4 ボール
5 保持器
6 シール
9,29,39 ラビリンス部
10,20,30 リップ部
12,22a,22b,32 周溝[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to various rolling bearings provided with a seal member.
[0002]
[Prior art]
FIG. 5 is a cross-sectional view of a ball bearing 101 which is a kind of a conventional rolling bearing. The ball bearing 101 includes an outer ring 102, an inner ring 103, a plurality of balls 104 as rolling elements, a retainer 105, and a seal 106.
[0003]
The inner ring 103 is externally fitted to the shaft, and faces the outer ring 102 in the radial direction. The plurality of balls 104 are arranged between an outer raceway and an inner raceway formed along the circumferential direction on each of the outer race 102 and the inner race 103. The plurality of balls 104 are rotatably held at substantially equal intervals by a holder 105. In order to smoothly roll the ball 104, grease as a lubricant is sealed between the ball 104 and the outer and inner raceways of the outer ring 102 and the inner ring 103.
[0004]
The seal 106 is an annular member protruding from the outer ring 102 toward the inner diameter side. The seal 106 has a small gap between the fitting portion 108 to be fitted in the fitting groove 107 provided in the outer ring 102 and the inner ring, and has a labyrinth between a seal groove 109 provided in the inner ring. And a connecting portion 111 for connecting the mounting fitting portion 108 and the lip portion 110. Although there is a seal 106 attached to the inner ring 103, when the inner ring 103 is fitted on a shaft as a rotating member, it is generally attached to the outer ring 102. The fitting portion 108 is pushed into the fitting groove 107 of the outer ring 102 in an elastically deformed state, and is fixed in a tight fitting state.
[0005]
The seal 106 seals the space between the inner ring 102 and the outer ring 103 for accommodating the ball 104 by closing the openings at both ends. The seal 106 prevents dust, moisture, foreign matter, and the like from entering the ball storage space from the outside, and prevents grease from flowing out of the ball storage space.
[0006]
It is known that the seal 106 is entirely made of metal, or that the connecting part 111 is made of metal and the mounting fitting part 108 and the lip part 110 are made of soft rubber. Also, a plastic seal using plastic is known. For example, Japanese Utility Model Publication No. 07-032985 discloses a plastic seal formed from only one kind of plastic. FIG. 6 is a diagram showing a rolling bearing disclosed in Japanese Utility Model Publication No. 07-032985. Here, 112 is a plastic seal.
[0007]
The seal 106 shown in FIG. 5 is a non-contact type seal member. Separately, the lip portion is in sliding contact with a seal groove surface provided on the inner ring or an outer diameter surface of the inner ring, so that the inner ring 102 and the outer ring 103 There is also known a contact-type seal member for closing and sealing the openings at both ends of a space for accommodating the ball 104 between them.
[0008]
However, when a contact-type seal member is used in which the seal and the seal groove surface provided on the inner ring or the outer diameter surface of the inner ring are in sliding contact, the lip portion is worn by sliding contact with the seal groove surface or the outer diameter surface of the inner ring. There is a problem that. Further, there is a problem that the rotational torque of the shaft increases due to the sliding contact. Further, the contact-type sealing member has a problem that a sealing sound is generated.
[0009]
[Problems to be solved by the invention]
However, the seals 106 and 112 attached with a gap between the inner ring 102 and the inner ring 102 prevent dust from entering from outside even if a labyrinth as shown in FIGS. 5 and 6 is formed. Insufficient performance and sealing performance to prevent grease for lubrication and base oil leakage.
If the seal does not have sufficient dustproofing and sealing performance, dust, moisture, foreign matter, etc. can easily enter the ball receiving space of the bearing from the outside, and the lubricant easily flows out of the bearing ball receiving space. There is a problem that the life of the device is shortened.
[0010]
The present invention has been made in view of such a situation, and is equipped with a plastic seal that is excellent in dustproof performance for preventing intrusion of foreign matter and sealing performance for preventing leakage of lubricant, and can operate well for a long period of time. An object of the present invention is to provide an improved rolling bearing.
[0011]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above object, a rolling bearing of the present invention includes: an inner ring externally fitted to a shaft; an outer ring facing the inner ring; a rolling element disposed between the outer ring and the inner ring; A plastic sealing member provided at an axial end portion and facing the inner ring,
The seal member includes a lip portion facing the inner ring, and a circumferential groove is provided on a facing surface of the inner ring facing the lip portion.
[0012]
According to the rolling bearing of the present invention, the circumferential groove is formed on the opposing surface of the inner ring that faces the lip portion of the plastic seal member. This circumferential groove temporarily increases the width between the lip portion of the seal member and the facing surface of the inner ring. Therefore, the circumferential groove temporarily reduces the pressure and contributes to suppression of a capillary phenomenon generated between the lip portion and the opposing surface. This makes it possible to suppress leakage of the lubricant to the outside.
[0013]
Further, the peripheral groove stores foreign matter entering from the outside in the peripheral groove, so that it is possible to suppress the entry of foreign matter from the outside.
[0014]
According to the present invention, the inner race may have an inner race seal groove forming a labyrinth, and a peripheral groove may be provided on the inner race seal groove. The inner race may have an outer diameter surface facing the lip portion of the seal member in a radial direction of the shaft, and the circumferential groove may be provided on the outer diameter surface.
[0015]
Further, according to the present invention, the depth of the circumferential groove is larger than the length between the inner ring and the lip portion of the seal. By setting the depth of the peripheral groove larger than the distance between the inner ring and the lip portion, it is possible to more efficiently suppress leakage of grease and entry of foreign matter.
[0016]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, first to third embodiments of the present invention will be described with reference to the drawings.
[0017]
(1st Embodiment)
FIG. 1 is a sectional view showing a ball bearing 1 which is a kind of a rolling bearing according to a first embodiment of the present invention. The ball bearing 1 has an outer ring 2, an inner ring 3, a plurality of balls 4 as rolling elements, a retainer 5, and a seal 6.
[0018]
The outer ring 2 is fixed to an inner diameter surface of a stationary member such as a housing. The outer ring 2 is made of a metal material such as carbon steel. The outer race 1 has an outer raceway 2a for guiding the ball 4 along the circumferential direction on an inner diameter surface. In the vicinity of both ends of the inner surface of the outer ring 2, a substantially U-shaped seal mounting fitting groove 7 having a sectional view surface having an inner surface 7 a, an outer surface 7 c, and a bottom surface 7 b connecting the inner surface 7 a and the outer surface 7 c is formed. Have been.
[0019]
The inner ring 3 is made of a metal material such as carbon steel, like the outer ring 2. The inner ring 3 is externally fitted on an outer diameter surface of a shaft which is a rotating member. The inner race 3 has an inner raceway 3a on the outer diameter surface that guides the ball 4 along the circumferential direction, corresponding to the outer raceway 2a of the outer race 2. The inner ring 3 rotates integrally with the shaft as the shaft rotates.
[0020]
The plurality of balls 4 are arranged between the outer raceway 2 a of the outer race 2 and the inner raceway 3 a of the inner race 3. The plurality of balls 4 are rotatably held at substantially equal intervals by a retainer 5. In order to smoothly roll the ball 4, grease as a lubricant is sealed in advance between the ball 4 and the outer raceway and the inner raceway of the outer ring 2 and the inner ring 3.
[0021]
Grease is a semisolid lubricant in which a thickener is dispersed in a lubricating oil serving as a base oil. As the base oil, mineral oil, diester oil, polyol ester oil, synthetic hydrocarbon oil, phenyl ether oil, polyglycol oil, fluorine synthetic oil, silicone and the like can be used. Thickeners hold and hold the base oil and make the base oil into a semi-solid state. Li soap, Li decoding soap, calcium soap, calcium decoding soap, aluminum composite soap, and diurea and tetraurea Compounds and the like can be used. Further, these combinations can be selected as appropriate according to the application and used as grease.
[0022]
The seal 6 is an annular member made of plastic, and is arranged so as to protrude from the outer ring 2 toward the inner diameter side. The seal 6 includes a fitting portion 8 mounted in a fitting groove 7 provided in the outer ring 2, a lip portion 10 facing the inner ring 3, and a connecting portion connecting the fitting portion 8 and the lip portion 10. 11 is provided.
[0023]
The mounting fitting portion 8 has a tip 8a in contact with the outer surface 7a of the fitting groove 7, an inner surface contact portion 8b formed continuously with the tip 8a and in contact with the inner surface 7c of the fitting groove 7, and an axially outer portion. And a connecting portion 8c for connecting the connecting portion 11 and the inner surface contact portion 8b. The mounting fitting portion 8 is elastically deformed in the bent state and is pushed into the fitting groove 7 of the outer race 2, and is fixed in a tight fitting state. As a result, the outer ring 2 and the seal 6 are firmly fixed without rattling, and the outer ring 2 and the seal 6 are tightly sealed.
[0024]
As the plastic forming the seal 6, an engineering plastic alone may be used, or a composite material reinforced by blending short fibers such as glass fiber and carbon fiber may be used. The seal 6 may be attached to the inner ring 3, but is generally attached to the outer ring 2 as a stationary member when the inner ring 3 is fitted around a shaft as a rotating member.
[0025]
The seal 6 seals the space between the inner ring 2 and the outer ring 3 for accommodating the ball 4 by closing the openings at both ends. The seal 6 prevents dust, moisture, foreign matter, and the like from entering the ball housing space from the outside, and prevents grease from flowing out of the ball housing space.
[0026]
A labyrinth 9 having a slight gap is formed between the lip 10 and the inner ring 3. In the labyrinth portion 9, two peripheral grooves 12 parallel to the inner raceway 3a are formed on the outer diameter surface 3b of the inner race 3 facing the lip portion 10.
[0027]
FIG. 2 is an enlarged sectional view of FIG. 1 showing details of the labyrinth portion 9. The depth L of the two circumferential grooves 12 is larger than the labyrinth width T between the lip portion 10 and the outer diameter surface 3b of the inner ring 3.
[0028]
When the ball 4 rolls at high speed in the bearing 1, grease as a lubricant is agitated by centrifugal force and internal pressure caused by rotation of the bearing, and base oil is partially separated from the grease. Then, a part of the grease or the base oil of the grease is splashed to the labyrinth portion 9 or its vicinity. The grease splashed to or near the labyrinth portion 9 tends to leak out through the labyrinth portion 9 due to centrifugal force, internal pressure, and capillary action. In general, when a rolling bearing runs out of lubricant due to lack of lubricant, the main cause is leakage of lubricant.However, in the case of grease lubrication, especially when grease base oil separates and leaks instead of the grease itself. There are many.
[0029]
In the present embodiment, the circumferential groove 12 temporarily increases the width of the labyrinth portion 9. Therefore, the circumferential groove 12 contributes to reducing the internal pressure and suppressing the capillary phenomenon. Thereby, leakage of the grease or the base oil of the grease is suppressed. Further, even when foreign matter enters the labyrinth from the outside, the foreign matter is retained in the peripheral groove 12, so that it is possible to prevent the foreign matter from entering the inside of the bearing.
[0030]
Furthermore, in the present embodiment, the plastic seal 6 is elastically deformed and tightly fitted and fixed to the outer ring 2. Therefore, even between the outer ring 2 and the seal 6, it is possible to retain grease for a long period of time and to prevent foreign substances from entering the inside of the bearing.
[0031]
Here, the shape and the depth L of the peripheral groove 12 are not particularly limited, but if the depth is not less than the labyrinth width T, the pressure further contributes to the reduction of the pressure and the capillary phenomenon is suppressed. preferable.
[0032]
Further, in the present embodiment, two peripheral grooves are formed, but the present invention is not limited to this, and at least one peripheral groove may be formed. Further, three or more peripheral grooves may be formed.
[0033]
(2nd Embodiment)
Hereinafter, a second embodiment of the present invention will be described with reference to FIG. FIG. 3 is an enlarged sectional view showing the details of the labyrinth portion 29 of the rolling bearing according to the second embodiment of the present invention. In FIG. 3, the inner ring 3 is formed with a stepped portion 23a forming an inner ring seal groove. The radial side surface 23c of the inner race 3 and the radial side surface 20a of the lip portion 20 face in the radial direction, and the axial side surface 23d of the inner race 3 and the axial side surface 20b of the lip portion 20 face in the axial direction. Thereby, the labyrinth portion 29 is formed. Further, circumferential grooves 22a and 22b having depths L1 and L2 are formed on the radial side surface 23c and the axial side surface 23d of the inner race 3, respectively. The operation of the peripheral grooves 22a and 22b is the same as that of the peripheral groove 12 of the first embodiment. The depths L1 and L2 are preferably formed wider than the width T of the labyrinth part.
[0034]
In the present embodiment, the labyrinth portion 29 can be configured to be longer than the labyrinth portion 9 of the first embodiment. Therefore, it is possible to configure a bearing having more effective dustproof performance for preventing foreign matter from entering and sealing performance for preventing lubricant from leaking.
[0035]
(Third embodiment)
Hereinafter, a third embodiment of the present invention will be described with reference to FIG. FIG. 4 is an enlarged sectional view showing details of the labyrinth portion 39 of the rolling bearing according to the third embodiment of the present invention. In FIG. 3, the inner ring 3 is formed with a stepped portion 33a that forms an inner ring seal groove. Then, the radial side surface 33b of the inner ring 3 and the radial side surface 30a of the lip portion 30 are radially opposed, and the axial side surface 33c of the inner ring 3 and the axial side surface 30b of the lip portion 30 are axially opposed. , A labyrinth portion 39 is formed. A circumferential groove 32 having a substantially circular shape with a radius k corresponding to the depth is formed along an intersection (intersection) between the radial side surface 33b and the axial side surface 33c of the inner ring 3. The operation of the peripheral groove 32 is the same as that of the peripheral grooves 12, 22a and 22b of the first and second embodiments. The radius k is preferably formed to be longer than the width T of the labyrinth part.
[0036]
In the present embodiment, the circumferential groove 32 is formed along the intersection of the radial side surface 33a and the axial side surface 33b. Therefore, it is possible to form a larger circumferential groove than the circumferential grooves 12, 22a, and 22b of the first and second embodiments. Therefore, similarly to the second embodiment, by forming the large circumferential groove 32 while sufficiently securing the length of the labyrinth portion, more effective dustproof performance for preventing intrusion of foreign matter and sealing performance for preventing leakage of lubricant. Can be configured.
[0037]
Note that the lip shape of the seal, the outer diameter shape of the inner ring, and the shape of the seal groove of the present invention are not limited to the present embodiment, and a labyrinth portion is formed between the lip and the inner ring surface by providing a seal groove. Whatever is done is good.
[0038]
【Example】
Next, rolling bearings having a labyrinth structure according to the first and third embodiments were prepared, and a durability test was performed under the following conditions to confirm the effects of the invention. For comparison, a conventional rolling bearing was also prepared, a similar durability test was performed, and a comparative study was performed.
[0039]
(Example 1)
A bearing shown in FIGS. 1 (2) and 3 in which two circumferential grooves are provided in the inner ring outer diameter portion (the bearing of the first embodiment).
(Example 2)
The bearing shown in FIG. 4 in which one circumferential groove is provided at the intersection of the axial side surface and the radial side surface of the inner ring (the bearing of the third embodiment).
(Comparative Example 1)
Bearing with metal seal (Z plate) as a whole (no circumferential groove).
(Comparative Example 2)
In FIG. 5, a bearing in which a connecting portion is a metal ring and a seal (V-seal) made of soft rubber is attached to a mounting fitting portion and a lip portion.
(Comparative Example 3)
The bearing shown in FIG. 6 having no circumferential groove on the inner ring surface forming the labyrinth portion. (However, the attachment fitting portion of the seal outer diameter portion and the fitting groove of the outer ring used the structure shown in FIG. 3.)
[0040]
The evaluation was performed by filling 1 g of grease into a ball bearing (JIS No. 6203) having an inner diameter of 17 mm, an outer diameter of 40 mm, and a width of 12 mm. The evaluation was specifically performed as follows.
[0041]
<Evaluation of leakage of lubricant (grease and base oil)>
A rotation test was performed for 1000 hours at an ambient temperature of 100 C and a rotation speed of 10,000 rpm, and the amount of reduction in grease and base oil was measured. Table 1 shows the results.
[0042]
<Evaluation of dust resistance>
A test atmosphere was filled with a fixed amount (2 g) of eight kinds of JIS Z8901 test powder 1 (Kanto Loam), and a rotation test was performed at 1800 rpm for 5 hours. Was examined. Table 1 shows the results. In Table 1, ○ indicates that no powder is contained in the bearing, Δ indicates that some powder is contained in the bearing, and x indicates that a large amount of powder is contained in the bearing. Indicates the state in which
[0043]
[Table 1]
[0044]
From the above results, it can be seen that the rolling bearing of the present invention has a lubricant leakage ratio of 5% or less, whereas the conventional rolling bearing leaks 10% or more of the lubricant to the outside. .
Furthermore, after the rotation test, no powder was confirmed inside the bearing of the rolling bearing of the present invention, whereas with the conventional rolling bearing, it was found that the powder flowed into the inside of the bearing. In the rolling bearing of the present invention, the powder flows into the circumferential groove of the labyrinth portion, but the circumferential groove prevents the powder from flowing further into the inside.
[0045]
Comparing Comparative Example 1 with Comparative Examples 2 and 3, it can be seen that the provision of a labyrinth having a complicated structure reduces the amount of grease leakage. However, in the case of Comparative Example 3, the dust resistance is inferior to that of Comparative Example 2, and it can be seen that simply providing a labyrinth does not improve the sealing performance as a seal. Furthermore, comparing Examples 1 and 2 and Comparative Example 2, it can be seen that by providing the circumferential groove, the leakage amount is reduced to less than half, and the dustproofness is greatly improved.
Accordingly, it was confirmed that the rolling bearing of the present invention had a sealing performance against leakage of the lubricant inside the bearing and a dustproof performance sufficient to sufficiently prevent foreign substances from entering from outside the bearing.
[0046]
【The invention's effect】
As described above, according to the rolling bearing of the present invention, a plastic seal that is excellent in dustproof performance for preventing intrusion of foreign matter and sealing performance for preventing leakage of lubricant and that can maintain good sealing performance for a long period of time is mounted. Rolling bearing can be provided. This makes it possible to suppress the deterioration of the grease over a long period of time, and to stably use the bearing for a long period of time.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a sectional view showing a ball bearing which is a kind of a rolling bearing according to a first embodiment of the present invention. FIG. 2 is an enlarged sectional view of FIG. 1 showing details of a labyrinth part. FIG. FIG. 4 is an enlarged sectional view showing details of a labyrinth part of the rolling bearing according to the embodiment. FIG. 4 is an enlarged sectional view showing details of a labyrinth part of a rolling bearing according to a third embodiment of the present invention. It is sectional drawing of the ball bearing which is a kind of bearing.
FIG. 6 is a view showing a conventional rolling bearing.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 Rolling bearing 2 Outer ring 3 Inner ring 4 Ball 5 Cage 6 Seal 9, 29, 39 Labyrinth part 10, 20, 30 Lip part 12, 22a, 22b, 32 Circumferential groove