JP2003507439A - 薬物コンジュゲートおよびその設計方法 - Google Patents

薬物コンジュゲートおよびその設計方法

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ブレンナー,シドニー
ゴレット,フィリップ
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ブレンナー,シドニー
ゴレット,フィリップ
スタックハウス,ジョセフ
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、薬物コンジュゲートおよびその設計方法に関する。本発明の一実施形態は、きわめて多様なベクター、リンカー、およびファーマコフォアに一般的に適用できる、ベクター-リンカー-ファーマコフォア(VLP)コンジュゲートの設計方法に関する。さらに、本発明は、ファーマコフォアの患者への送達を改良する方法、ファーマコフォアの治療効力を高める方法、ならびにファーマコフォアの毒性を低下させる方法を包含する。また、本発明には、細胞中のファーマコフォアの濃度を増加させる方法も含まれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本出願は、1999年8月26日に出願された米国仮出願60/150,76
5および60/150,894ならびに、2000年2月23日に出願された米
国仮出願60/184,411および60/184,412の利益を請求するも
のである。これらの出願はすべて参照により本明細書に組み入れるものとする。
1.発明の分野 本発明は、薬物コンジュゲートを設計する方法、薬物送達を改良する方法、薬
物の治療係数を高める方法、薬物の毒性を低下させる方法、ならびに薬物コンジ
ュゲートおよび該コンジュゲートを含有する組成物に関する。
【0002】2.発明の背景 薬物の治療有効性、すなわた治療係数は、目的の作用部位に到達する能力をは
じめとする様々な要因に左右される。例えば、薬物は患者の体内の特定部位に送
達されたときに治療効果を発揮することができるが、他の部位に送達されると、
不快なまたは有害な副作用を起こす。薬物の好ましい作用部位はその標的(ター
ゲット)と呼ばれている(例えば、組織、器官、細胞、受容体、酵素、または内
在性のシグナル伝達分子)。
【0003】 薬物がその標的に正確に送達されると、薬物の効力が増加しかつ望ましくない
副作用も減るので、標的を定めた薬物送達は薬物の安全性と効力を向上させるこ
とができる一つの方法となっている。標的を定めて薬物を送達しようとする試み
として、異なる投与経路を使用することがある(例えば、経口送達に代えて局所
投与するなど)。さらに、薬理活性化合物つまり「ファーマコフォア」を、ファ
ーマコフォアを送達することが好ましい器官または組織に対して親和性を有する
成分に結合させることによる試みもなされている。標的化されたファーマコフォ
アは、ときに「薬物コンジュゲート」とも呼ばれ、その例は米国特許第5,466,68
1号、第5,502,037号、第5,723,589号、第5,739,287号、第5,827,819号および第5
,869,465号に見いだされる。
【0004】 これまで、標的化されたファーマコフォアを設計することには困難があった。
その理由は、一部には、それらを設計するための系統的かつ合理的な方法が科学
分野に欠けていたからである。小さな標的化ファーマコフォア(例えば、分子量
が約2000ダルトン以下のもの)の設計は特に困難であった。というのは、ファー
マコフォアに結合して、ファーマコフォア送達の特異性を高めると予想される成
分それ自体が望ましくない薬理作用を示すことがあるからである。そのために、
標的化ファーマコフォアの設計を簡便化するために使用できる予測可能な方法論
の必要性が存在している。
【0005】3.発明の概要 本発明は、一部には、本明細書中で「ベクター-リンカー-ファーマコフォア」
または「VLP」コンジュゲートと呼ばれる、「ベクター」と「リンカー」と「フ
ァーマコフォア」の三成分からなる化合物の設計方法に関する。
【0006】 本明細書で詳しく述べるように、各VLPコンジュゲートは少なくとも1つのフ
ァーマコフォアを含み、このファーマコフォアは「ファーマコフォア標的」(例
えば、受容体または酵素)と相互作用することでその薬理作用を奏する。各VLP
コンジュゲートはさらに、少なくとも1つのベクターを含み、該ベクターは「ベ
クター標的」に対する親和性を有する。このベクター標的は、ファーマコフォア
標的と異なるものであるが、ファーマコフォア標的に近接して位置しているか、
またはファーマコフォア標的まで(例えば、血流にのって、または拡散により)
容易に移動できるものである。各コンジュゲートの1以上のベクターと1以上の
ファーマコフォアは、少なくとも1つのリンカーへの共有結合により連結される
【0007】 VLPコンジュゲートの設計方法に加えて、本発明は、患者へのファーマコフォ
ア送達を改良する方法、ファーマコフォアの治療効力を高める方法、ならびにフ
ァーマコフォアの毒性を低下させる方法を包含する。さらに、本発明には、細胞
中または細胞上のファーマコフォアの濃度を増加させる方法も含まれる。
【0008】 本明細書で開示する方法はコンピュータと自動スクリーニング装置を使うこと
により容易に行なうことができる。したがって、本発明は、VLPコンジュゲート
を設計するための電子装置を包含する。本発明にはまた、ベクター、リンカー、
およびファーマコフォア(承認された薬物、臨床研究中の薬物、臨床研究で不合
格の薬物など)に関するデータや情報を管理および操作する方法も含まれる。か
かる方法は、既存のソフトウェアを使って既存のデータおよび情報のデータベー
スを検索し、ミックスし、マッチさせることを含む。さらに、本発明は、VLPコ
ンジュゲートを設計するのに有用な情報のデータベースまたはパッケージの作成
を含むものである。
【0009】 また、本発明はVLPコンジュゲートを包含する。本発明の好ましいVLPコンジュ
ゲートは、分子量が約2000ダルトン以下、より好ましくは約1500ダルトン以下、
最も好ましくは約1000ダルトン以下のものである。
【0010】3.1. 定義 本明細書中で用いる場合、別段の指示がないかぎり、分子(例えば、VLPコン
ジュゲート)を記載するときの「小さい」(small)という用語は、その分子が約2
000ダルトン以下、好ましくは約1500ダルトン以下、より好ましくは約1000ダル
トン以下の分子量をもつことを意味する。
【0011】 本明細書中で用いる場合、「治療係数」(therapeutic index)とは、ファーマ
コフォアが望ましくない作用を及ぼす濃度とそれが望ましい効果を及ぼす濃度の
比を指す。高い治療係数は低い治療係数よりも大きな安全域をもたらし、それゆ
えに望ましいものである。
【0012】 本明細書中で用いる化合物の「毒性係数」(toxicity index)とは、その化合物
の望ましくない作用が典型的な患者にもはや耐えられない濃度、または耐えられ
ないと評価された濃度のことである。
【0013】 本明細書中で用いる略語「MIC50」は、微生物菌株の試験培養物の増殖を50%
阻止または抑制する化合物の最低濃度を指す。
【0014】 本明細書中で用いる略語「IC50」は、受容体に結合した標識化合物の50%を置
換する抗菌性化合物の濃度を指す。この略語はまた、同一の受容体に結合する標
識化合物の50%の結合を阻止する抗菌性化合物の濃度をも意味する。
【0015】 本明細書中で用いる場合、「患者」(patient) とは、疾病または病状に罹患し
ているか、罹患していそうな植物または動物を意味する。動物の例としては、哺
乳類(例えば、ヒト)、爬虫類、鳥類、魚類を挙げることができるが、これらに
限らない。
【0016】 別段の指示がないかぎり、本明細書中で用いる「標的」(target)とは、化合物
もしくは化学的成分(例えば、ファーマコフォア)が作用する、または化合物(
例えば、ベクター)が親和性を有する、生物学的実在物を指す。標的の例として
、臓器、組織、細胞、細胞部分(例えば、リボソーム、表面受容体、DNA)、タ
ンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチドがあるが、これらに限るもの
ではない。
【0017】 別段の指示がないかぎり、化合物または化学的成分と標的との相互作用を記載
するために本明細書中で用いる「影響を与える」(affect)とは、標的の挙動、物
理的性質、または構造を改変することを意味する。例えば、ファーマコフォアは
、典型的には、その標的と会合(例えば、リガンド-受容体結合)することで該
標的に影響を与える。
【0018】 化合物または化学的成分と標的との相互作用を記載するために本明細書中で用
いる「会合する」(associate)とは、別段の指示がないかぎり、標的と結合する
ことを意味する。結合の例としては、限定するものではないが、共有結合、水素
結合(例えば、ハイブリダイゼーション)、親水性/疎水性相互作用、リガンド
-受容体結合、ファンデルワールス相互作用などがある。
【0019】 標的に関して分子または化学的成分の特性を記載するために本明細書中で用い
る「に対する親和性」(affinity for)とは、別段の指示がないかぎり、分子また
は化学的成分と標的とが、これら2者を接触させたときに会合することを意味す
る。こうした会合は、当分野で公知の技法を使って測定して、例えば速度定数ま
たは結合定数により表すことができる。典型的には、標的に対する親和性を有す
る分子または化学的成分は、約10-6モル以下、より好ましくは約10-8モル以下、
最も好ましくは約10-10モル以下の解離定数で(例えば、リガンド-受容体または
酵素-基質相互作用により)標的と結合する。しかし、所定の標的に対する分子
または化学的成分の親和性は、細胞内拡散または細胞膜を貫通する拡散などの、
標的の自然環境中に存在する諸要因のために、低下することがあることを理解す
べきである。こうして、in vivo親和性は、自然環境から分離した標的と分子ま
たは化学的成分とを接触させたときに測定される親和性よりも低くなる。
【0020】 生物学的実在物(例えば、受容体、タンパク質、または酵素)と疾病または病
状との関係を記載するために本明細書中で用いる「関連した」(associated)とは
、別段の指示がないかぎり、生物学的実在物の阻害、破壊、修飾、生産または蓄
積が疾病または病状を生じさせたり悪化させたりするか、またはその症状を生じ
させたり悪化させたりすることを意味する。
【0021】 本明細書中で第1の標的と第2の標的との関係を記載するために用いる「近傍
に位置すると考えられる」(likely to be located near) という語句は、別段の
指示がないかぎり、第1の標的が第2の標的から約10-4、10-5、10-6、または10 -7 メートル以下の距離範囲内に位置する確率が少なくとも約50、60、70、80、90
、95、または99%であることを意味する。第1および/または第2の標的が患者
体内または生物学的系内で移動性である場合、この語句は、第1の標的が第2の
標的から約10-4、10-5、10-6、または10-7メートル以下の距離範囲内を通過する
確率が少なくとも約50、60、70、80、90、95、または99%であることを意味する
【0022】3.2. 図面の簡単な説明 図面の簡単な説明については下記参照。
【0023】4.発明の詳細な説明 本発明は、ベクター−リンカー−ファーマコフォア(VLP)コンジュゲートの
開発に関して、経費を削減し、時間を短縮するために使用することができる合理
的かつ体系的な方法を包含する。VLPコンジュゲートの模式図を図1に示す。本
発明はまた、送達を改良する方法、治療効力を高める方法、およびファーマコフ
ォアのクラス、ファーマコフォア、または薬物送達分子の毒性を低下させる方法
も包含する。植物、ならびに、哺乳動物(例えば、ヒト)、爬虫類、鳥類および
魚類等の脊椎動物を含む動物における疾病および病状を治療および/または予防
するのに使用することができるVLPコンジュゲートもまた、本発明に包含される
【0024】 本発明は、少なくとも部分的に、所与のファーマコフォアの標的とは異なる標
的に対する親和性を有し、しかも、ファーマコフォア標的近傍のVLPコンジュゲ
ートの濃度を増加させるのに十分な濃度および/または位置にて存在することが
できるベクターの使用を含んでなる。このようなベクター/標的相互作用を、フ
ァーマコフォアのターゲッティングされた送達に用いるのは、新規であり、これ
まで報告されていないと考えられる。
【0025】 本発明の第1の実施形態は、患者の疾病もしくは病状の治療または予防に使用
するためのVLPコンジュゲートを設計する方法であって:疾病または病状に関連
した第1の標的に影響を与えることができ、かつ第1の標的に対して第1の親和
性を有するファーマコフォアを選択し;第1の標的の近傍に位置すると考えられ
る第2の標的に対して第2の親和性を有するベクターを選択し;そして、VLPコ
ンジュゲートを得るために第1のファーマコフォアと第1のベクターが両方とも
共有結合できるリンカーを選択することを含んでなり、ここで、第1の標的は第
2の標的と同じものではなく、かつ第2の親和性が第1の親和性より大きいか、
患者における第2の標的の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである
、上記方法を包含する。
【0026】 この実施形態の好ましい方法は、ファーマコフォアおよびベクターをリンカー
に共有結合させてコンジュゲートを得、該コンジュゲートの第1の標的に影響を
与える能力を試験することをさらに含む。
【0027】 この実施形態の別の好ましい方法では、ファーマコフォアは、作用様式;作用
標的(例えば、身体における位置、細胞または細胞内の位置、濃度、ならびに、
それと反応する分子);分子量;溶解性;有害作用のタイプおよび/または重症
度;治療係数;化学的安定性;化学反応性の(および好ましくは、修飾可能な)
部分の存在;および構造−活性相関のデータを含むがこれらに限らない群から選
ばれた、少なくとも1つの規準を用いて選択される。
【0028】 この方法を用いて、VLPコンジュゲートを設計することができ、次いで、このV
LPコンジュゲートを、少なくとも1つのファーマコフォアまたは化学的特性によ
り、ランク付けすることができる。このような特性として、限定するものではな
いが、第1の標的に対する親和性(すなわち、ファーマコフォア標的);第2の
標的に対する親和性(すなわち、ベクター標的);特定の酵素の機構指向阻害;
特定の酵素の修飾;酵素の産生、DNAまたはRNA合成、もしくはシグナル伝達を阻
害または改変する能力;化学的安定性(例えば、所定の条件下での切断耐性能)
;第1の標的の生理学的濃度;第2の標的の生理学的濃度;第1および/または
第2の標的の酵素反応速度定数;拡散特性(例えば、特定タイプの細胞に侵入す
る能力);溶解性;特定の条件下で患者に投与した場合の推定全身濃度;代謝分
解に対する抵抗;ならびに、特定の条件下で患者に投与した場合の推定全身クリ
アランスおよび代謝などが挙げられる。
【0029】 本発明の第2の実施形態は、第1の標的を有し、かつ該第1の標的に対して第
1の親和性を有するファーマコフォアのVLPコンジュゲートを設計する方法であ
って、第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親和
性を有するベクターを選択し; VLPコンジュゲートを得るために第1ファーマコ
フォアと第1ベクターが両方とも共有結合できるリンカーを選択することを含ん
でなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ第2の親和
性が第1の親和性より大きいか、VLPコンジュゲートを投与する患者における第
2の標的の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである上記方法を包含
する。
【0030】 この実施形態の好ましい方法は、ファーマコフォアおよびベクターをリンカー
に共有結合させて、前記コンジュゲートを得、該コンジュゲートの第1の標的に
影響を与える能力を試験することをさらに含む。
【0031】 本発明の第3の実施形態は、細胞の中または上に位置する第1の標的へのファ
ーマコフォアの送達を改良する方法であって:ファーマコフォアが第1標識に対
して第1の親和性を有し:第1の標的近傍に位置すると考えられる第2の標的に
対して第2の親和性を有するベクターを選択し;リンカーを選択し;ファーマコ
フォアおよびベクターをリンカーを共有結合させてコンジュゲートを得;該コン
ジュゲートの第1の標的近傍に集結する能力を試験し;第1の標的近傍に集結す
るコンジュゲートの能力が、第1の標的近傍で集結するファーマコフォア単独の
能力より低い場合には、異なるベクターを用いて上記方法を繰り返すこと;を含
んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ第2の親
和性が第1の親和性より大きいか、該細胞の中または上にある第2の標的の濃度
が、第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記方法を包含する。
【0032】 この実施形態の好ましい方法では、前記方法を繰り返す場合は、異なるベクタ
ーを選択する際に前記試験により得られた情報を用いる。
【0033】 この実施形態に包含される関連方法は、第1の標的に対して親和性を有するフ
ァーマコフォアをin vivoでターゲッティングする方法であって:ファーマコフ
ォアおよびベクターをリンカーと化学結合させてVLPコンジュゲートを得;該コ
ンジュゲートを宿主に投与すること;を含んでなり、ここで、該ベクターは約10 -6 より低い解離定数で第2の標的と会合することができ、第2の標的は第1の標
的とは異なるものであり、かつ第2の標的は第1の標的から10-4メートル以内に
位置する、上記方法である。この実施形態の好ましい方法では、第2の標的が宿
主中に第1の標的の濃度の10倍を超える濃度で存在する。
【0034】 本発明の第4の実施形態は、第1の標的、該第1標識に対する第1の親和性、
および第1の治療係数を有するファーマコフォアの治療係数を改良する方法であ
って:第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親和
性を有するベクターを選択し;リンカーを選択し;ファーマコフォアおよびベク
ターをリンカーに共有結合させて、第2の治療係数を有するコンジュゲートを得
;該コンジュゲートを試験して第2の治療係数を決定し;第2治療係数が第1治
療係数より低い場合には、上記方法を繰り返すこと;を含んでなり、ここで、第
1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ第2の親和性が第1の親和性よ
り大きいか、VPLコンジュゲートを投与する患者における第2の標的の濃度が第
1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記方法を包含する。
【0035】 この実施形態の好ましい方法では、前記を繰り返す場合、異なるベクターを選
択する際に前記試験により得られた情報を用いる。
【0036】 この実施形態に包含される特定の方法では、ファーマコフォアは、低い第1の
親和性、および許容可能な毒性係数を有する。
【0037】 この実施形態に包含される別の具体的方法は、第1の標的に対する第1の親和
性、および第1の毒性係数を有するファーマコフォアの毒性を低下させる方法で
あって:第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親
和性を有するベクターを選択し;リンカーを選択し;ファーマコフォアおよびベ
クターを該リンカーに共有結合させて、第2の毒性係数を有するコンジュゲート
を得し;該コンジュゲートを試験して、第2の毒性係数を決定し;第2の毒性係
数が第1の毒性係数より高い場合には、上記方法を繰り返すこと;を含んでなり
、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ第2の親和性が第
1の親和性より大きいか、VPLコンジュゲートを投与する患者における第2の標
的の濃度が、第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記方法である。
【0038】 本発明の第5の実施形態は、疾病の治療または予防が必要な患者に、VPLコン
ジュゲートを全身的に(例えば、経口または非経口的)または局所的に(例えば
、局所適用)投与することを含む疾病の治療または予防方法であって:該VPLコ
ンジュゲートが、該疾病に関連した標識に対して第1の親和性を有するファーマ
コフォア;該患者内で第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対
して第2の親和性を有するベクター;およびファーマコフォアとベクターを共有
結合で連結するリンカー;を含んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同
じものではなく、かつ第2の親和性が第1の親和性より大きいか、該患者におけ
る第2の標的の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記方法
を包含する。この実施形態の好ましい方法では、上記疾病は、真菌または細菌感
染である。
【0039】 1つの方法に関する本発明の各実施形態は、多数の好ましい方法を包含する。
本発明の好ましい方法では、リンカーは、生理的条件(例えば、第1および第2
の標的の典型的な周辺条件)下での化学的安定性;反応性部分のタイプおよび数
;代謝安定性;溶解性(例えば、疎水性);長さ;およびフレキシビリティーを
含むが、これらに限らない群より選択される、少なくとも1つの規準を用いて選
択される。
【0040】 本発明の別の好ましい方法では、各ベクターは、薬理作用;およびその第1の
標的に対する親和性の欠如を含むが、これらに限らない群より選択される、少な
くとも1つの規準を用いて選択される。好ましいベクターは、高い親和性でその
標的に結合するが、ファーマコフォア標的には低い親和性で結合する。好ましい
ベクターは、ファーマコフォア標的に対するベクターの親和性を表す結合定数の
約10、100もしくは1000倍を上回る結合定数で、その標的に結合する。
【0041】 別の好ましい方法では、ベクターおよびリンカーが、複数のベクター−リンカ
ーコンジュゲートをそれらの第2の標的に対する親和性についてスクリーニング
することにより得られた情報を用いて選択される。このようなベクター−リンカ
ーコンジュゲートの例として、放射性標識ベクター−リンカーコンジュゲート、
ならびに、プローブ分子(例えば、蛍光プローブ)に結合されているベクター−
リンカーコンジュゲートが挙げられる。ベクター−リンカーコンジュゲートは、
それらの成分を選択する前に、本明細書に開示したようなコンビナトリアルケミ
ストリー技法を用いて、スクリーニングすることもできる。
【0042】 同様に、ファーマコフォアおよびリンカーを選択する方法では、両方とも、複
数のファーマコフォア−リンカーコンジュゲートを第1の標的に対するその親和
性に関してスクリーニングすることで得られた情報を用いて選択することが可能
である。
【0043】 本発明の別の好ましい方法では、VLPコンジュゲートの分子量は、約2000ダル
トン未満、さらに好ましくは、約1500ダルトン未満、最も好ましくは、約1000ダ
ルトン未満である。
【0044】 本発明の他の好ましい方法では、第2の標的(すなわち、ベクター標的)が第
1の標的(すなわち、ファーマコフォア標的)を含有する細胞内に位置し、該細
胞内の第2の標的の濃度が約10-5モル以上、さらに好ましくは、約10-4モル以上
、最も好ましくは、約10-3モル以上である。
【0045】 本発明の第6の実施形態は、VLPコンジュゲート設計のための電子装置であっ
て: ベクター、リンカー、およびファーマコフォアの薬理的、化学的および/ま
たは物理的特性に関する情報を含む検索可能なデータベース;ユーザーからの指
示を受けるように構成された入力装置;少なくとも1列(string)のテキストデ
ータを表示するように構成された出力装置;データベースを保存するように構成
されたメモリ;およびデータベース中のデータエントリーをランク付け(例えば
、複数のファーマコフォア、複数のリンカー、および/または複数のベクターの
ランク付け)を実施して一緒に結合することによりVLPコンジュゲートを形成し
得るファーマコフォア、リンカー、およびベクターを識別するように構成された
プロセッサーを含んでなる、上記電子装置を包含する。
【0046】 本発明の第7実施形態は、患者における疾病もしくは病状の治療または予防に
使用できるVLPコンジュゲートであって:第1標識に対する親和性を有するファ
ーマコフォア部分;リンカー部分;および1以上の第2の標的に対する親和性を
有するベクター部分;を含んでなり、ここで、ファーマコフォア部分とベクター
部分はリンカーに共有結合しており、それぞれの第2の標的は、該疾病もしくは
病状を患っているか、患っていると思われる典型的な患者において第1の標的近
傍に位置すると考えられ、そして、第1の標的は第2の標的のいずれとも同じも
のではない、上記VLPコンジュゲートである。
【0047】 好ましいVLPコンジュゲートの分子量は、約2000ダルトン未満、さらに好まし
くは、約1500ダルトン未満、最も好ましくは、約1000ダルトン未満である。特定
の実施形態では、第2の標的は、治療しようとする疾病もしくは病状と関連して
いないが、第1の標的は関連している。しかし、第1および第2の標的は、これ
らが、本明細書に記載した規準を満たす場合には、該疾病もしくは病状と関連し
ている。
【0048】 他の好ましいVLPコンジュゲートでは、ベクターをリンカーに結合している共
有結合と、リンカーをファーマコフォアに結合している共有結合は、第1の標的
の周辺の生理的条件下では切断されない。
【0049】 本発明の特定のVLPコンジュゲートは、以下の分子:ソルダリン、ビオチン、
およびキロマイシンのうちの1つから誘導体されるベクター部分を含む。本発明
の特定のVLPコンジュゲートは、以下の分子:フルコナゾール、ペニシリン、ト
リメトプリムおよびテトラサイクリンのうちの1つから誘導体されるファーマコ
フォア成分を含む。さらに具体的なVLPコンジュゲートでは、ベクターはソルダ
リンで、ファーマコフォアは、好ましくは、コナゾール類の抗真菌剤である。さ
らに具体的なVLPコンジュゲートとして、ソルダリン−リンカー−フルコナゾー
ルコンジュゲート、ビオチン−リンカー−ペニシリンコンジュゲート、キロマイ
シン−リンカー−トリメトプリムコンジュゲート、およびキロマイシン−リンカ
ー−テトラサイクリンコンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されるわけ
ではない。
【0050】4.1.コンジュゲートの設計方法 これまで用いられてきた方法とは異なり、本発明の方法は、VLPコンジュゲー
トの設計および薬物ターゲッティングに対する、独特の体系的かつ合理的なアプ
ローチに基づく。有利なことに、本発明の方法は、特定タイプのベクター、リン
カー、またはファーマコフォアに限定されることなく、非常に多様な疾病および
病状の治療または予防に有用なVLPコンジュゲートを設計するのに用いることが
できる。さらに、本発明の方法を用いて、小さなファーマコフォアおよび小さな
ベクターのコンジュゲートを作製することも可能である。
【0051】 本発明の方法、および本明細書に開示する組成物の新しい特性は、ある化学的
部分(本明細書中では、「ベクター」と呼ぶ)の標的巨大分子と相互作用する能
力に基づく。これにより、ベクターに結合されて、患者に投与されたファーマコ
フォアは、該巨大分子の近傍に集結する。図2に示すように、このことにより、
それらの作用部位が、ベクター標的に近接していれば、該作用部位(すなわち、
標的)へのファーマコフォアの送達を改良することができる。
【0052】 本発明の一般的方法では、複数の可能性のあるベクター、ファーマコフォア、
およびリンカーに関する情報は、本明細書で、「データベース」または「表」と
呼ばれるものにアセンブルすることができる。「表」という用語は、データベー
スの一部を意味する。このデータベースは、コンピューターのメモリ、磁気媒体
(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、およびテープ)、光学媒体(
例えば、CD-ROMS)または紙に保存することができる。従って、本明細書で用い
る用語「データベース」および「表」は、情報のコレクションを意味し、保存、
操作または編集の特定の方法に限定されるわけではない。しかし、好ましいデー
タベースは、3つのサブセットに分割可能なデータを含み、これらの各々が、フ
ァーマコフォア、リンカーまたはベクターに関する。好ましくは、3つのサブセ
ットのうち少なくとも1つ、さらに好ましくは、その少なくとも2つが、複数の
化合物または化学成分についての情報を含む。例えば、データベースは、1つの
ファーマコフォアの物理的特性、化学的特性、薬理的(薬物動態、代謝、毒性、
効力、受容体結合、および酵素阻害を含む)特性、および/または生理的特性に
関する情報の1サブセットを含み、別のサブセットは、複数(例えば、少なくと
も約5、10、20、50、100または500)のリンカーに関する同様の情報を含み、第
3のサブセットは、複数(例えば、少なくとも約5、10、20、50、100または500
)のベクターに関する同様の情報を含む。
【0053】 本明細書に開示されるアルゴリズムおよび規準を用いて、データベースにおけ
る情報を編集または分類することにより、ファーマコフォア、リンカー、および
ベクターの1つ以上の組合せが得られる。これらの組合せの各々が、1つのVLP
コンジュゲートの構成成分を表し、その推定される物理的、化学的、および/ま
たは生理的特性は、ファーマコフォア単独の場合より改良されるのが好ましい。
これらの特性を用いて、特定の優先事項に従い、可能性のあるVLPコンジュゲー
トをランク付けすることができる。
【0054】 データベースにアセンブルされる情報は、分類アルゴリズムを適用する前に取
得するのが好ましい。しかし、本発明の方法により設計されるVLPコンジュゲー
トは試験するので、これらの試験で得られた情報を用いて、データベースを増加
および/または改変する。このようにして、それから得られた情報を用いてさら
に正確に可能性のあるVLPコンジュゲートの特性を推定することができる。
【0055】 有利なことには、既存のデータベースを本発明の方法に用いることができる。
市販されているデータベースの例として、限定するものではないが、Merk Index
(登録商標);Merk Manual(登録商標);Physicians’ Desk Reference(登録
商標);Lexis(登録商標)、Westlaw(登録商標)、Dialog(登録商標)(例え
ば、Medline(登録商標))、およびChemical Abstracts Service(登録商標)
等のオンラインサービスデータベース;ならびに、食品および薬物管理局(Food
and Drug Administration)、米国特許局、日本国特許庁、欧州特許局および米
国薬局方により、またはこれらを代理するものにより保存されているものなどの
各国官庁の登録事項およびデータベースが挙げられる。しかし、好ましくは、当
業者には公知のこれらの、およびその他の供給源の情報を用いて、本発明の改変
可能なデータベースをアセンブルする。
【0056】 本明細書にさらに詳しく説明するように、VLPコンジュゲートを設計するのに
使用することのできる一般的データベースは、ファーマコフォアが所定の疾病を
治療する能力、およびそれらの作用部位および作用機構等の種々のファーマコフ
ォアに関する情報を含む。このデータベースは、さらに、ベクター標的(例えば
、細胞、細胞の部分、もしくは、該ベクターが特定の親和性を有するタンパク質
)および薬理作用等の各種ベクターについての情報、ならびに、リンカーの化学
的安定性、溶解性、および長さ等の各種リンカーについての情報も含む。このよ
うな情報を本明細書に記載の方法に用いて、共有結合させると、新規かつ改善さ
れた特性を有するVLPコンジュゲートを生成し得る、ファーマコフォア、リンカ
ーおよびベクターの特定の組合せを選択する。
【0057】 本明細書に開示した方法に従い、さらに具体的なデータベースを作成および分
析することができる。例えば、データベースは、ただ1つのファーマコフォアに
ついての情報を含み、これを分析するのに使用する方法では、その送達を正確に
ターゲッティングする方法だけに的を絞ることができる。あるいは、特定のグル
ープの患者(例えば、特定の疾病または病状に罹患しているヒト)におけるその
標的の濃度および位置がわかれば、データベースおよび方法により特定のベクタ
ーのVLPコンジュゲートに絞ることも可能である。
【0058】4.1.1.データベース構築 本発明のデータベースは、少なくとも1つのファーマコフォア、少なくとも1
つのベクター、および少なくとも1つのリンカーに関する情報を含む。このよう
な情報の例を以下に記載する。
【0059】4.1.1.1.ファーマコフォアおよびその標的 ファーマコフォアは、特定の標的に対して親和性を有する分子または化学的成
分であり、従って、生物学的条件もしくは疾病症状に対する活性を有する。ファ
ーマコフォアには、限定するものではないが、医学および科学団体により安全か
つ有効と認定された医薬化合物(例えば、Physicians’ Desk Reference(登録
商標))、ならびに有害作用がその治療効果を上回る化合物などが含まれる。こ
のような化合物の例として、臨床試験の際に薬物候補としては却下になったもの
、および有害作用は少ないかまたはまったくないが、標的との相互作用が乏しい
もの等が挙げられる。
【0060】 本発明のデータベースに含まれるファーマコフォアの例として、限定するもの
ではないが、抗生物質、抗腫瘍剤、血管形成阻害剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、
代謝物と強固に結合する分子、巨大分子受容体と結合する阻害剤または活性化剤
、神経受容体のアンタゴニストまたはアゴニスト、転写因子の阻害剤または活性
化剤、酵素阻害剤または活性化剤、細胞シグナル伝達経路に含まれるタンパク質
間の結合相互作用もしくは該タンパク質の触媒活性の阻害剤または活性化剤;タ
ンパク質合成阻害剤、イオノフォア、抗原、およびDNAまたはRNAの修飾分子を挙
げることができる。
【0061】 具体的なファーマコフォアとしては、限定するものではないが、ペニシリン、
テトラサイクリン、トリメトプリム、ならびに、図3に列挙したものなどがある
。これ以外のファーマコフォアは、米国特許第4,873,088号;第5,190,969号;第
5,466,681号;第5,795,909号によって開示されており、これらはそれぞれ、本明
細書に参照として組み込まれる。考えられるファーマコフォアとして、さらに、
以下のもの:米国特許第5,639,737号(本明細書に参照として組み込む)に開示
されているものを含む細胞傷害性フェノール化合物;米国特許第5,824,805号(
本明細書に参照として組み込む)に開示されているものを含む抗体;米国特許第
5,827,819号(本明細書に参照として組み込む)に開示されているものを含む向
精神性、向神経性、および神経薬;米国特許第5,863,899号(本明細書に参照と
して組み込む)に開示されているものを含むブラジキニン(bradykinin)類似体
;米国特許第5,869,465号(本明細書に参照として組み込む)に開示されている
ものを含むリソモトロピック(lysomotropic)成分、細胞内重合成分、タンパク
質識別シグナルまたは配列、条件的膜結合ペプチド、および二価または多価受容
体架橋成分;ならびに、米国特許第5,871,753号(本明細書に参照として組み込
む)に開示されているものを含むキメラ融合タンパク質などが挙げられる。
【0062】 本発明のデータベースにおいて、各ファーマコフォアに関する情報は、その望
ましい作用部位(すなわち、その標的)に関する情報を含む。この情報は、限定
するものではないが、その標的の位置、濃度および構造、それと相互作用する他
の薬剤、それと相互作用する巨大分子、ならびに、そのファミリーのその他のメ
ンバー(例えば、類似構造または類似機能の受容体)を含む。
【0063】 疾病または病状の重症度、発作、もしくは症候にファーマコフォア標的が果た
す役割は具体的に知られているため、ファーマコフォアを疾病状態と相関させる
ことができる。疾病状態は、微生物を原因とするもの、あるいは、哺乳動物細胞
に関連するものまたは生活の質に関連するものとして、分類することができる。
微生物のクラスとしては、原核生物、単細胞真核生物、多細胞真核生物、および
ウイルスが挙げられる。哺乳動物細胞、またはクオリティオブライフに関連する
疾病状態は、細胞のタイプおよび位置によって分類することができる。従って、
本発明の方法で用いるデータベースは、目的とする疾病の原因となる生物、ある
いは疾病に関連する細胞のタイプおよび位置に関する情報を含み得る。
【0064】 データベースに保存されるファーマコフォアの情報は、さらに、ファーマコフ
ォアの分子構造;典型的に有効な最小濃度;構造−活性の相関データ;ファーマ
コフォアのMIC50;ファーマコフォアとその標的の会合のための結合および/ま
たは反応速度定数;ファーマコフォアの作用の機構または様式;その治療効果;
ならびに、その有害作用を含むことができる。構造−活性データは、例えば、誘
導体の各々が、所望の、または望ましくない作用を呈示する最小濃度(例えば、
各誘導体の治療係数)とともに、ファーマコフォアの誘導体の構造、ならびに、
標的に対する各々の結合および/または反応速度定数を含む。ファーマコフォア
のある部分に長鎖置換基を付加することから成る構造改変もまた興味深いと思わ
れる。何故なら、このような改変は、本明細書の他所で説明するように、リンカ
ーの選択に関する情報を提供するからである。
【0065】 目的とする疾病状態に対抗すべく選択されたファーマコフォアに対応するファ
ーマコフォア標的の表を作成することができる。ファーマコフォア標的は、例え
ば、既知ファーマコフォアの受容体、もしくそれを処理する酵素;既知ファーマ
コフォアの望ましくないもしくは意図しない標的;または、修飾されると薬理作
用を引き起こす機能を有する巨大分子または構造として、分類することができる
。各標的に関する情報としては、標的の細胞または細胞外存在量;標的の細胞ま
たは細胞外の位置;標的を発現する細胞タイプの位置;特定の生物における標的
の位置;ならびに、標的の細胞または生理的機能が挙げられる。タンパク質であ
る標的に関するその他の情報として、アミノ酸配列および3次元構造が挙げられ
る。データベースはまた、その自然の環境において各標的と関連する小分子およ
び大分子の正体を含んでもよい。
【0066】 ファーマコフォア標的は、従って、いくつの方法で特性決定してもよく、これ
ら特性のいずれによって、指数化、分類、または整理してもよい。ファーマコフ
ォア標的を分類または識別する方法の例として、限定するものではないが、下記
のものが挙げられる: a.修飾されると薬理作用を有し得る既知ファーマコフォアまたは化合物(プ
ロドラッグ)の標的であるか否か; b.一緒に相互作用するファーマコフォア; c.標的の細胞または生理的機能; d.標的の細胞または細胞外位置; e.標的を発現する細胞タイプの位置; f.標的がタンパク質である場合、 i.該タンパク質のアミノ酸配列; ii.該タンパク質の3次元構造; iii.天然の環境で、該タンパク質に結合するか、または該タンパク質の
基質である小分子の正体;および/または iv.天然の環境で、該タンパク質に結合するか、または該タンパク質の基
質である大分子の正体、 によって決定または特性決定することができるその分子特性; g.標的に結合するか、または標的の基質であるその他の小分子の正体;なら
びに、 h.標的の近傍に位置する分子受容体およびかかる受容体のベクター。
【0067】4.1.1.2.ベクターおよびそれらの標的 本明細書の他所で述べたように、ベクターは、ファーマコフォア標的の近傍に
位置する標的(「ベクター標的」)に対する親和性を有する化合物または成分で
ある。ベクターとその標的の相互作用は、生理的作用をほとんど起こさないか、
または、ファーマコフォアの治療効果を高める作用を起こすことが好ましい。
【0068】 細菌、真菌、哺乳動物細胞、ならびに、ウイルス感染細胞中、またはそれらの
近傍に多くの可能性のあるベクター標的が存在する。VLPコンジュゲートが所望
のとおりに機能するためには、該コンジュゲートが含むベクターの標的が、十分
に高い濃度で存在する、あるいは、十分に高い結合定数または優れた反応速度定
数で、ベクターと会合し、これによって、ベクター/ベクター標的相互作用によ
るファーマコフォアの局所濃度が、ファーマコフォアの活性を高めるのに十分と
なるようにしなければならない。
【0069】 ベクター標的は、豊富なタンパク質(好ましくは、標的細胞の質量の1%以上
を含む)であり、その結合部位は、ベクターに対し、非常に低い解離定数を有す
る。これらはまた、ベクターを基質として処理する酵素であってもよい。あるい
は、ベクター標的は、他の手段によりコンジュゲートの局所濃度を増加させる細
胞系でもよい。ベクター標的が何であれ、ファーマコフォアが好適に作用する細
胞または分子標的(すなわち、ファーマコフォア標的)に非常に近接して位置し
なければならない。
【0070】 これ以外のベクター標的として、限定するものではないが、小分子に対する巨
大分子受容体、作用機構に基づく阻害剤が知られている酵素、ポリメラーゼ、な
らびに、シンセターゼがある。特定の細胞(例えば、疾病に罹患した、または感
染した細胞)に存在する特有のタンパク質もまた可能性のあるベクター標的であ
る。ベクター標的はさらに、特定かつ豊富な、タンパク質、DNA、RNA、もしくは
病原体の構造タンパク質のような所与の病原体の多糖産物、または病原体または
疾病に罹患した細胞もしくは組織の豊富な酵素、あるいはまた、疾病におけるタ
ンパク質産物が挙げられる。これらにはまた、限定するものではないが:細菌リ
ボソーム、リボソームRNA、tRNA、およびリボソームタンパク質;ペプチジルプ
ロピルcis-トランスイソメラーゼまたはロタマーゼ;核タンパク質およびコート
タンパク質等のウイルスの構造タンパク質;ステロイドホルモン受容体およびレ
チノールおよびビタミンDの受容体等の特定の真核細胞の豊富なタンパク質;な
らびに、切断酵素が含まれる。また、可能性のあるベクター標的として、アミノ
グリコシドホスホキナーゼおよびアセチラーゼ、細菌βラクタマーゼ、ならびに
細菌トランスアミダーゼなどの、プラスミドに担持された遺伝子を有するものを
含む、抗生物質耐性エレメントを挙げることもできる。
【0071】 ベクター標的で、優先的ターゲッティングまたは集結を達成するように、ベク
ターを選択する。好適なベクターは、高い親和性で、タンパク質受容体と結合す
るか、あるいは、酵素(例えば、ポリメラーゼ)の基質であってもよい。このよ
うなベクター標的は、病原体と関連しているか、または所定の疾病に罹患した生
物に、はっきりとした細胞内分布を有する。ベクターはまた、特定の巨大分子に
高い親和性で結合する小分子であってもよい。また、いくつかの巨大分子標的に
高い親和性で結合するという唯一の特性を備えているか、または所与の酵素の基
質である新規の小分子もベクターとして用いることができる。同様に、その他の
手段により、細胞または細胞間もしくは細胞内構造の中、上、または近傍に蓄積
することが知られている小分子をVLPコンジュゲートにおけるベクターとして用
いることができる。
【0072】 本発明のデータベースに含み得る特定のベクターを図4に記載する。他のベク
ターは、米国特許第5,466,681号;第5,639,737号;第5,723,859号;第5,739,287
号;第5,824,805号;第5,827,819号、第5,837,690号、第5,863,899号、第5,869,
465号および第5,871,753号に開示されており、これらの各々は、参照として本明
細書に組み込まれる。
【0073】 本発明の方法およびコンジュゲートは、小さい分子と標的巨大分子の間の相互
作用を前提条件とする。本発明の典型的データベースは、従って、リガンドおよ
びそれらの受容体または基質、ならびにそれらに対応する酵素に関する情報を含
むことになる。薬理活性に基づいて、巨大分子と相互作用する多くの小分子が同
定されていることから、データベースへのほとんどの初期エントリーは、ファー
マコフォアおよびそれらの受容体であろう。しかし、本発明のデータベースを提
供するのに用いられるデータは、薬理作用を引き起こす分子間相互作用に限定す
る必要はなく、そうではないものは、単に、ベクターおよびそれらの標的として
特性解析することができる。
【0074】 データベースに含まれるベクター情報として用いることができるリガンドおよ
び受容体または基質および酵素の表は、限定するものではないが、以下のような
情報:小分子が結合する巨大分子または基質となる酵素の正体;このような巨大
分子の細胞における位置および濃度;小分子の分子構造;小分子とその標的受容
体または酵素との間の相互作用に関する構造活性相関のデータ;および酵素によ
って触媒される反応等を含む。ベクター情報はまた、可能性のあるベクターそれ
ぞれの薬理作用、その薬理学的に有効な濃度、その作用様式、ならびに、その副
作用を含んでもよい。特に興味深いのは、構造活性データであり、これは、リン
カーがベクターに結合すると、どのような作用が(もしあれば)、その標的に対
する親和性に及ぼされるかを決定するのに用いることができる。
【0075】 従って、ベクターおよびそれらの標的は、下記を含む(限定されるものではな
い)いくつもの方法で特性決定することができる: a.ベクターと相互作用する1次標的(例えば、タンパク質受容体、酵素、ま
たはその他の巨大分子)の正体; b.標的の位置(例えば、特定のファーマコフォア標的に関して); c.限定するものではないが、構造および分子量等の分子特性; d.各ベクターもしくはその代謝物の薬理作用; e.それぞれの標的に対する各ベクターの結合定数(例えば、標的酵素に対す
る反応速度定数);ならびに、 f.構造−活性相関のデータ。
【0076】 各標的微生物または細胞タイプに関連するベクター標的の表は、例えば、それ
らの存在量および/または細胞内もしくは細胞外の位置によって分類することが
できる。
【0077】 ベクター標的がタンパク質である場合には、本発明のデータベースの典型的な
表は、各標的に関する下記の情報部分の少なくとも1つを含む: a.標的の細胞内または細胞外存在量; b.標的の細胞内または細胞外の位置; c.多細胞生物の場合には、該生物内での標的の位置; d.標的の細胞または生理的機能; e.下記のような情報(限定するものではない)を用いて特性決定もしくは決
定することができるその分子特性: i.標的のアミノ酸配列; ii.標的の3次元構造; iii.天然の環境で、標的に結合する小分子およびこれらの結合定数;な
らびに iv.天然の環境で、標的に結合する大分子およびこれらの結合定数;なら
びに、 f.それに結合する他の小分子の正体。
【0078】 ベクター標的が酵素である場合には、本発明のデータベースの典型的な表は、
各標的に関する下記の情報部分の少なくとも1つを含む: a.酵素によって触媒される反応; b.該酵素の細胞内または細胞外の存在量および位置; c.多細胞生物の場合には、該生物内での該酵素の位置; d.該酵素の細胞または生理的機能; e.下記のような情報(限定するものではない)を用いて特性解析もしくは決
定することができる該酵素の分子特性: i.該酵素のアミノ酸配列; ii.該酵素の3次元構造; iii.天然の環境で、該酵素の基質であるか、または阻害剤である小分子
およびこれらの結合定数または反応速度定数;ならびに iv.天然の環境で、該酵素と結合するか、または相互作用する大分子(例
えば、巨大分子)およびこれらの結合定数;ならびに、 f.該酵素と相互作用することがわかっている他の小分子の正体。
【0079】 このような情報から、目的とするベクター標的に結合することがわかっている
ベクターに関する情報を含む表を作成することができる。本発明の好ましいデー
タベースには、それぞれの標的に結合した場合、ベクターが及ぼす薬理作用(も
しあれば)がさらに含まれている。
【0080】 その結果、データベースに保存されたベクター情報は、限定するものではない
が、以下のようなデータ:各ベクター標的(例えば、受容体または酵素)の正体
;その機能;その構造;その分子量;その標的に関する結合または反応速度定数
;構造活性相関のデータ;ならびに、その薬理作用を含むことができる。本発明
の好ましいデータベースは、以下の情報のうちの少なくとも1つを含んでなるベ
クターの表を含む: a.ベクター標的と相互作用することがわかっている小分子(すなわち、ベク
ター)。微生物に関連する標的については、これらの多くが、抗生物質であるこ
とが知られている; b.各ベクターの機能: i.ベクターが、受容体タンパク質に結合する分子である場合には、該受
容体がベクターの作用により活性化されるのか、阻害されるのかに留意すべきで
ある; ii.ベクターが、酵素と相互作用する分子である場合には、これが、該酵
素の基質であるか、該酵素の阻害剤であるか、あるいは、該酵素の機構に基づく
阻害剤であるかに留意すべきである; c.下記を含む、ベクターの分子特性: i.分子構造; ii.分子量; iii.その受容体に対する結合定数;および/または iv.ベクター標的が酵素である場合には、ベクター標的の反応速度定数ま
たは阻害定数; d.限定するものではないが、各構造の結合定数または阻害定数を含む、入手
可能な構造活性相関のデータ; e.ベクターの薬理作用。
【0081】4.1.1.3.リンカー リンカーは、ファーマコフォアをベクターに結合させる化学的部分である。本
明細書の典型的データベースは、所望の薬理的、化学的および/または物理的特
性を有するVLPコンジュゲートを設計するのに用いるのことができる少なくとも
1つのリンカーに関する情報を含む。
【0082】 データベースに含まれる各リンカーに関する情報は、限定するものではないが
、官能基(または「末端基」)を含み、これは、鎖の構造および鎖の中の反復単
位、末端基の多重度、妥当な鎖長さの範囲、鎖電荷および疎水性、該リンカーに
関連する代謝、代謝条件下でリンカーを切断可能か否か、コンホメーションの硬
度;ならびに、市販されているか否かを含む。
【0083】 リンカーは、その長さ、従って、コンジュゲートにおけるベクターとファーマ
コフォアとの間に許容される間隔;リンカーがコンジュゲートに付与する溶解性
;コンジュゲートが、細胞内部または細胞内区画に到達する能力にリンカーが与
える影響の程度;コンジュゲートの全身クリアランスにリンカーが影響を与える
程度;コンジュゲートの分布にリンカーが影響を与える程度;コンジュゲートの
代謝にリンカーが影響を与える程度;コンホメーションのフレキシビリティまた
は硬度;ならびに市販されているか否かまたは合成の容易さに基づいて選択する
ことができる。
【0084】 本発明の典型的リンカーは、約10オングストロームから、約50、75、100、ま
たは200オングストロームを超える長さであってよい。また、例えば、VLPコンジ
ュゲートの所望の溶解性に応じて、リンカーは、荷電されていても、極性を有す
る、または非極性のいずれでもよい。さらに、疎水性鎖または環構造を含むリン
カーを作製することによって、これらを含むコンジュゲートのコンホメーション
または運動の自由を制限することも可能である。
【0085】 好ましくは、リンカーを含むコンジュゲートと相互作用する条件下で、該リン
カーがそのまま保たれるように、リンカーを選択する。また、好ましいリンカー
は、ファーマコフォアの活性、またはファーマコフォアとその標的、ベクターと
その標的の同時相互作用を低下させないものである。さらに、好ましいリンカー
は、細胞の内部または内部区画にコンジュゲートを到達させることができる。
【0086】 リンカーの例として、限定するものではないが、ポリエチレングリコールに基
づくリンカー;ポリエチレンエニミンに基づくリンカー;リンカーアルカンに基
づくリンカー;ならびに、それらの組合せが挙げられる。これらは、限定するも
のではないが、直鎖アルカン、直鎖アルケン、アルキン、二置換および多置換フ
ェニル環、二置換および多置換ナフタレン環、二置換および多置換シクロヘキシ
ル環、多(例えば、三および二)置換デカリン環、様々なコンホメーション硬度
を有する縮合アリールまたはアルキル環、直鎖アルキルアミン、直鎖アルキルア
ルコール、ポリアルキルアミン、ポリアルキルエーテル、ならびに、ポリアルキ
ルチオエーテルであるか、またはこれらの組合せである末端基を連結する鎖を有
するものが含まれる。
【0087】 各リンカーの反応性または末端基は、同じものでも、異なるものでもよい。末
端基の例としては、限定するものではないが、アミン、イミン、酸化アミン、ヒ
ドラジン、アルコール、チオール、アゾ化合物、エーテル、チオエーテル、スル
ホキシド、スルホン、スルホンアミド、スルホニルエステル、リン酸エステル、
ホスフィン、メチレン、メチン、カルボキシルアミド、カルボキシルエステル、
およびイミデートが挙げられる。
【0088】 具体的リンカーを図5に示す。その他の例は、米国特許第4,810,784号;第5,0
34,514号、第5,466,681号;第5,502,037号;第5,723,589号;第5,739,287号;第
5,795,909号;第5,824,805号;第5,827,819号;第5,863,899号;第5,869,465号
;および第5,871,753号により開示される。尚、これらの各々は、参照として、
本明細書に組み込むものとする。
【0089】 従って、本発明のデータベースは、各リンカーに関する以下の情報のうちの少
なくとも1つを含むリンカーのデータの表を含む: a.反応性末端基; b.鎖の構造および鎖の中の反復単位; c.反応基の多重度; d.鎖の長さ; e.鎖の電荷および疎水性;ならびに、 f.in vivo条件下での代謝および化学的安定性。
【0090】4.1.2. コンジュゲート設計 本明細書で記載のように一旦データベースが形成されると、VLPコンジュゲー
トを迅速かつ効率的に設計することができる。特定の疾病の治療に適したコンジ
ュゲートの設計を目的とする本発明の一般的方法では、その治療に治療学上有効
と成り得るファーマコフォアを識別する。ファーマコフォア標的の位置に基づい
て、典型的に、その近傍に位置する1つ以上の候補ベクター標的を識別する。次
に、これら標的に結合するベクターが識別され、本明細書中に記載したような相
関を用いて、ランク付けする。
【0091】 その後、当業者には公知の、もしくは本明細書に記載した相関に従って、ベク
ター、リンカー、およびファーマコフォアの組合せを選択およびランク付けする
。例えば、定量的相関を用いることにより、VLPコンジュゲートが非コンジュゲ
ートファーマコフォアに類似した活性を呈示し得る溶液または全身濃度を推定す
ることができる。次のような相関を考慮に入れてもよい:ベクター標的の局所濃
度;該標的からの特定のベクターの解離定数、あるいは、標的が酵素であれば、
それがベクターを処理する速度;ならびに、ファーマコフォアが活性を呈示する
のに必要とする最小有効濃度。この情報から、特定のファーマコフォアがその標
的において活性を呈示するのに十分なレベルまで、特定のコンジュゲートを集結
させると推定されるベクターだけを選択する。次に、コンジュゲートの溶解性、
またはその作用部位への到達を妨害することのない適切なリンカーを選択する。
その後、全身分布、代謝分解に対する安定性、全身クリアランスの速度、合成の
容易さ、ならびに、出発材料の市場での入手可能性等の他の設計課題に取り組む
【0092】 本発明の設計方法のフローチャートを図6に示す。
【0093】4.1.2.1. ファーマコフォア選別 疾病または病状の治療もしくは予防に有用なVLPコンジュゲートの設計を目的
とする本発明の一般的方法では、データベースに含まれるファーマコフォアの表
を、好ましくは、少なくとも1つの規準により選別する。例えば、コンジュゲー
トにおけるファーマコフォアとして使用するのに適した化合物または成分は、下
記のようにして、データベースから選択することができる: a.最低分子量を有するファーマコフォアを、これより高い分子量のものの上
にランク付けする; b.長鎖置換基の結合により修飾されると、それらの標的に依然として影響を
与えるファーマコフォアを、そうではないものの上にランク付けする;および、 c.低濃度で活性を呈示するファーマコフォアを、これより高い濃度を要する
ものの上にランク付けする。
【0094】4.1.2.2. ベクター選別 また、好ましくは、データベースに含まれるベクターを選別またはランク付け
することにより、前記第4.1.2.1.節に従って同定したファーマコフォアのターゲ
ッティングされた送達を補助する可能性が最も高いベクターを同定する。
【0095】 ベクターは、典型的に、ファーマコフォアが、治療または予防効果をもたらす
のに必要なファーマコフォアの濃度を下げるように、その標的に所与のファーマ
コフォアを送達する、ベクターの適合性によりランク付けされる。これは、本明
細書に開示した定量的相関、ならびに、限定するものではないが、下記のような
情報を用いて、達成することができる: ベクター標的の濃度;およびその標的からのベクターの解離定数、もしくは、標
的が酵素の場合には、その標的に対するベクターの反応速度定数。さらに、この
ランク付けは、ファーマコフォアが、その所望の活性を呈示できる最小濃度に関
して実施することができる。
【0096】 下記のようにして、好適なベクター候補を選択、系統化、またはランク付けす
ることができる: a.ベクターは、ターゲッティングされる細胞コンパートメントにおけるそれ
らの標的の濃度によってランク付けすることができる。例えば、ペニシリンおよ
びセファロスポリンは、ターゲッティングされた病原体におけるペニシリン結合
タンパク質の濃度によってランク付けすることができる。標的濃度は、標的上で
利用可能な結合部位の数によって改変しなければならない; b.受容体に結合するベクターは、それらの標的に対する解離定数によりラン
ク付けすることができる。解離定数が低いベクターは、解離定数が高いものより
上にランク付けされる; c.酵素の基質であるベクターは、それらの標的に対する反応速度定数により
ランク付けすることができる。好ましい反応速度定数を有するベクターは、好ま
しくない定数のものより上にランク付けされる; d.長鎖置換基の結合により修飾され、それらの標的に結合する、もしくは影
響を与えるベクターは、そうではないベクターより上にランク付けされる; e.ベクターは、以下の実施例3に記載した定量的相関、および、該ファーマ
コフォアの受容体からの解離定数の情報、または、該ファーマコフォアのMIC50
を用いて、定量的もしくは半定量的にランク付けすることができる。これら数値
の閾値を用いる、または、ベクターと一緒に用いられると考えられる(ベクター
標的とファーマコフォア標的が、互いに隣接しているため)ファーマコフォアの
代表的セットから値を取得することができる。この情報は、文献に報告されてい
る; f.最低分子量のベクターは、これより分子量が高いベクターより上にランク
付けされる;および、 g.それら自身の不要な薬理作用を有するベクターは、作用がない、もしくは
有益な作用を有するものより下にランク付けしなければならない。
【0097】 また、これ以外の情報を用いて、候補ベクターをランク付けすることも可能で
ある。例えば、本明細書にさらに詳しく説明するように、ファーマコフォアを代
表するプローブ(例えば、蛍光成分)で、ベクター標的に対するベクターコンジ
ュゲートの親和性を試験するのに用いることができるプローブに候補ベクターを
結合させてもよい。プローブの例は、当業者には公知であり、図7に示したもの
が挙げられる。
【0098】4.1.2.3. ベクター−コンジュゲート対合 一旦有望なベクターおよびファーマコフォアを同定したら、本明細書に開示し
た定量的相関を用いて、これらを対合させることにより、対を形成する。最初に
、前述したように、実際のコンジュゲートにおいてどれくらい良好に機能し得る
かによって、ベクターおよびファーマコフォアを評価する。次に、各コンジュゲ
ートが、ファーマコフォア標的の近傍で集結するように、両者を対合させる。そ
の他の規準を用いて、最適のファーマコフォア/ベクター対を決定してもよい。
例えば、各ベクターの結合または反応速度定数を考慮に入れることができる。さ
らに、ベクター/ベクター標的相互作用が、薬理作用をもたらすことがわかって
いる場合、これらの作用は、ファーマコフォアの作用と適合するものでなければ
ならない。
【0099】 一旦ファーマコフォア/ベクター対を同定したら、この対を連結するのに用い
ることができる好適なリンカーについてデータベースを分析する。VLPコンジュ
ゲートの実際の合成中、ファーマコフォアの官能基を、リンカーの一端に結合さ
れた官能基と共有結合させ、リンカーの他端をベクターの官能基に結合させるこ
とにより、連結を達成する。従って、リンカーの官能基に関して、データベース
からリンカーを選択する。さらに、リンカーの長さ、フレキシビリティ、化学的
安定性、および溶解性に基づいて、リンカーを選択する。
【0100】 例えば、コンジュゲートの特性に対する影響が懸念事項である場合には、でき
る限り小さいリンカーを選択することができる。また、リンカーは、電荷、極性
、および疎水性に基づき選択することもできる。各ベクター-ファーマコフォア
対のために複数の異なるリンカーを選択することができる。さらに、ファーマコ
フォアおよびベクターは、典型的には、単一のリンカーによって連結されるが、
1つ以上のリンカーによってに連結することにより、ファーマコフォアおよびベ
クターの両方を含む環を形成するようにしてもよい。同一のもしくは異なる構造
およびサイズの複数のリンカーの使用が、1つのベクターに結合した2つ以上の
ファーマコフォア、1つのファーマコフォアに結合した2つ以上のベクター、ま
たはファーマコフォアおよびベクターのクラスターもしくは環、を含むVLPコン
ジュゲートの形成を可能にする。さらに、複数のリンカーは、構造X-VLP-Yの化
合物の形成を可能にする。上記式において、VLPは、本発明のコンジュゲートで
あり、XおよびYは同じでも異なるものでもよく、患者へのVLPの送達に有用な成
分(例えば、ポリエチレングリコール等の切断不可能もしくは切断可能な小さい
もしくは大きい分子)または基質(例えば、表面もしくは不溶性ポリマー)であ
る。
【0101】 ファーマコフォア、ベクターおよびリンカーは、集結したコンジュゲートを維
持するように選択する。コンジュゲートは、好ましくは約2000ダルトン未満、よ
り好ましくは約1500ダルトン未満、最も好ましくは約1000ダルトン未満である。
小さいサイズのコンジュゲートは、拡散により、または、ファーマコフォアを単
独で用いたのと同じ作用機序により、標的細胞または生物中への進入を容易にし
得る。さらに、より小さいコンジュゲートほど、大きいコンジュゲートと比較し
て、高い速度で吸収されやすい(例えば、腸または続く経口投与により)。
【0102】 候補ベクターおよびファーマコフォアの組合せは、好ましくは、下記のように
選択する: a.ベクターおよびファーマコフォアは、それらの受容体(すなわち、特定の
病原体に関連するもの、または特定の細胞コンパートメントに含まれるもの)の
近接度に応じて対合させることができる。ファーマコフォアの作用部位ならびに
、おそらく作用機構は、表または文献から直接、あるいは、実験または既知の類
似体の特徴に基づく推定により識別することができる。この情報を用いて、ファ
ーマコフォアの作用部位と同じ細胞または細胞外位置を有するベクター標的のデ
ータベースを検索することができる。理想的には、ベクター標的の濃度は、非コ
ンジュゲートファーマコフォアのMIC50、またはファーマコフォア標的からのフ
ァーマコフォアの解離定数の少なくとも10倍以上である必要がある。さらに、濃
度も、ファーマコフォア標的の濃度の少なくとも3倍以上であるのが好ましい。
【0103】 b.ベクターおよびファーマコフォア両方の構造活性相関を調べることができ
る。構造活性相関のデータは、それらが活性を呈示する濃度と一緒に、薬理活性
を有する分子の誘導体の構造を含んでもよい。この構造は、結合された中程度か
ら長鎖の置換基を含むが、依然として活性または親和性を呈示する構造が存在す
る場合には、それらを同定することができる。何故なら、これらの置換基は、リ
ンカーの結合に関する情報を提供できるからである。
【0104】 c.ベクターおよびファーマコフォアと類似した電荷および極性を有するリン
カーを選択するのが好ましい。さらに、ファーマコフォアおよびベクター上の結
合部位に共有結合することができる末端基を有するリンカーを選択する。
【0105】4.1.2.4. ベクター−リンカー−ファーマコフォアの分類 本発明の方法は、単一のVLPコンジュゲートを設計するのに使用する必要はな
い。実際に、好ましい方法により、候補コンジュゲート群の同定を行い、次に、
これらコンジュゲートを試験することができる。例えば、設計は、考えられる多
種のリンカー、ファーマコフォア上の様々なリンカー結合部位、多種のベクター
、ベクター上の様々なリンカー結合部位、ならびに、リンカー鎖の多様な長さお
よび組成を含むことができる。該コンジュゲートの溶解性に対する有益な寄与、
分解に対する耐性、全身クリアランス、および、組織浸透をもたらすようにリン
カーを選択するため、候補の多くは、適切な溶解性を有すること、また、いくつ
かについては、VLPコンジュゲートが、ファーマコフォアおよびベクターが単独
で到達するのと同様に、ファーマコフォアおよびベクター標的に到達できること
が予想される。リンカー鎖の長さを変えることにより、リンカーが、確実に、フ
ァーマコフォア/ファーマコフォア標的およびベクター/ベクター標的相互作用
を妨害しないようにすることができる。
【0106】 VLPコンジュゲートの設計に必要な情報を取得するには様々な手法がある。設
計中に好ましく用いられるデータは、構造−活性相関および連結化学を含む。こ
のようなデータは文献から、または実験により得ることができる。また、発表さ
れているベクターおよびファーマコフォア標的の3次元構造からデータを推定す
ることも可能である。ベクターまたはファーマコフォアの代わりにリポーター基
で試験コンジュゲートを構築することにより、さらなる情報を収集し得る。これ
らは、ベクター−リンカーおよびファーマコフォア−リンカーの組合せの予備的
スクリーニングに用いて、どれがコンジュゲート中に一緒に使用するのに適して
いるかを決定することができる。
【0107】 構造−活性相関のデータにより、それぞれの標的との相互作用を妨害すること
なく、リンカーが結合できるベクターおよびファーマコフォア上の位置を決定す
ることができる。例えば、その標的と相互作用するファーマコフォア部分は、大
きな官能基の組込みによって改変することはできない。なぜならば、このような
基は、ファーマコフォアの活性を低下させる可能性があるからである。これに対
し、それぞれの標的と相互作用しないファーマコフォア部分は、リンカーの結合
を支持し得る。多くの場合、この情報は、小さい分子と巨大分子受容体または酵
素との相互作用を改善する構造改変を識別する試みに関する文献で報告されてい
る。このような情報の収集過程では、多くの場合、小さい分子の多数の構造変種
を調製し、これらの各々と巨大分子受容体または酵素との相互作用を決定する。
このような変種は、リンカーのモデルとして役立つ、短鎖から中程度に長鎖の置
換基を有するものを含むことが多い。
【0108】 また、構造活性データを入手できない場合もある。しかし、例えば、標的の3
次元構造が報告されている場合、特定のファーマコフォアまたはベクター上のど
こで、リンカーが、その活性または親和性に実質的に影響を与えることなく、結
合することができるかを推定することが可能になるであろう。あるいは、当業者
には公知の技術を用いて、通常の実験を行うこともできる。
【0109】4.1.2.4.1. ベクター−リンカーおよびファーマコフォア−リンカーサブコンジ ュゲート特性の実験による決定 本明細書の他所で述べたように、標識またはリポーター基を用いた実験を実施
することにより、ベクター、リンカーおよびファーマコフォアの最良の組合せを
選択することができる。例えば、標識またはリポーター基を用いることにより、
特定のベクター標的に対する所望の親和性を有すると同時に、ベクター標的に近
傍の標的を含む多数のファーマコフォアに結合することができる、最適なベクタ
ー−リンカーコンジュゲートを決定することができる。
【0110】 候補ファーマコフォアおよびベクターを様々なリンカーとコンジュゲートし試
験することにより、どの組合せが所望の相互作用を低下させないかを決定するこ
とができる。特に、ベクター、リンカー、およびモデルファーマコフォアまたは
リポーター基から構成される試験コンジュゲートを調製することができる。試験
コンジュゲートとベクター標的との相互作用の度合いを測定するために、アッセ
イを実施することができる。このアッセイでは、標識されているが、コンジュゲ
ートされていないベクターを、試験コンジュゲートの存在下で、その濃度を変え
ながら、その標的と相互作用させる。例えば、ベクターを放射性同位体で標識す
ることができるが、該放射性同位体は、その構造を変えたり、ベクター標的との
相互作用を妨害することはない。次に、試験コンジュゲートが、標識ベクターと
標的との相互作用を阻害する濃度を決定することができる。
【0111】 アッセイは、ベクター標的の単離したサンプルについて実施することができる
。これらのアッセイは、ベクターの受容体との結合の阻害、または、ベクターを
処理する酵素活性の直接測定でよい。受容体に結合するベクターについては、試
験コンジュゲートによるベクター結合の阻害の度合いは、試験コンジュゲート存
在下で、その濃度を変えながら、生じた標識ベクターのその標的との結合の減少
を測定することによりアッセイすることができる。酵素の基質であるベクターに
ついては、試験コンジュゲートの阻害定数を決定することができる。試験コンジ
ュゲート存在下で、その濃度を変えながら、生じた標識ベクターのターンオーバ
ー速度の減少を測定することにより、決定することができる。
【0112】 また、全細胞または組織サンプルについて、アッセイをin vivoで実施するこ
とにより、試験コンジュゲートがベクター標的に到達できるか否かを決定するこ
とができる。
【0113】 さらにまた、ベクターおよびリポーター基と、様々なリンカーとの組合せを試
験することにより、ベクターとその標的との相互作用を妨害しないリンカーの特
性を決定することができる。アッセイにより、様々な濃度において、細胞または
組織サンプル中の試験コンジュゲートの蓄積を直接測定することも可能である。
リポーター基(それら自体は、ファーマコフォアではない)は、候補ファーマコ
フォアの分子特性(例えば、サイズ、電荷、極性、および疎水性)の範囲に及ぶ
ように選択することができる。これは、試験コンジュゲートが、実際のコンジュ
ゲートの挙動を正確にモデル化するのを確実にし得るものである。
【0114】 精製された形態で調製することのできる標的については、好適なベクター−リ
ンカー組合せを同定するためのコンビナトリアル手法を用いることができる。コ
ンビナトリアル手法を用いることにより、試験コンジュゲートのライブラリーを
作製し、このライブラリーにおいてリンカーの構造を変化させ、試験コンジュゲ
ートは、非ベクター末端を通じて荷電結合装置(charged-coupled device)の画
素に結合させる。標的巨大分子を蛍光プローブで標識した後、個々の画素との結
合を決定することができる。この手順を用いて、リンカーがベクター/ベクター
標的相互作用を妨害しないベクター−リンカー−プローブ組合せを同定すること
ができる。
【0115】 要約すると、好適なベクター−リンカーおよびファーマコフォア−リンカー組
合せを下記のように決定することができる: a.ベクターについて: i.実験者が、リポーター基またはモデルファーマコフォアを選択する。
リポーター基は、提案されたファーマコフォアが選択されている場合には、これ
に類似したものでもよい。
【0116】 ii.提案された各リンカーを、ファーマコフォア末端でモデルファーマコ
フォアまたはリポーター基に、また、ベクター末端でベクターに連結させること
により、試験コンジュゲートを作製する。
【0117】 iii.試験コンジュゲートによる、標識ベクターとベクター標的との間の
相互作用の阻害を測定する。
【0118】 iv.あるいは、試験コンジュゲートとベクター標的との間の相互作用を、
リポーター基を用いて、直接測定する。
【0119】 b.ファーマコフォアについて: i.実験者が、リポーター基またはモデルベクターを選択する。リポータ
ー基は、提案されたベクターが選択されている場合には、これに類似したもので
もよい。
【0120】 ii.提案された各リンカーを、ベクター末端でリポーター基またはモデル
ベクターに、また、ファーマコフォア末端でファーマコフォアに連結させる。
【0121】 iii.試験コンジュゲートによる、標識ファーマコフォアとファーマコフ
ォア標的との間の相互作用の阻害を測定する。
【0122】 iv.あるいは、試験コンジュゲートとファーマコフォア標的との間の相互
作用を、リポーター基を用いて直接測定する。
【0123】 c.組合せ: i.多数の試験コンジュゲートについて、段階aおよびbの結果を検討す
る。
【0124】 ii.正常の、もしくは増強された性能を呈示するベクター−リンカーまた
はファーマコフォア−リンカー対を選択する。
【0125】4.1.3. 試験 上記の手法によって設計されたVLPコンジュゲートは、公知の方法により作製
し、所望の特性についてスクリーニングすることができる。このようなスクリー
ニングから、コンジュゲートが適当に可溶性であるか否か、および、実際にその
作用部位でファーマコフォアを集結することができるか否か等の情報を得ること
ができる。好結果の候補をさらに試験する場合には、全身分布、代謝分解に対す
る耐性、および、全身クリアランスについて実施することができる。このような
情報はすべて、本発明のデータベースに入力することができ、これにより、好適
なVLPコンジュゲートのさらに正確な推定が容易になる。コンジュゲートは、当
業者には公知の方法、ならびに、本明細書の第4.1.2.4節に記載する方法を用い
て試験するのが好ましい。
【0126】4.2. VLPコンジュゲート 本発明の方法により設計されたVLPコンジュゲートを用いて、例えば、ウイル
ス、細菌、マイコプラズマ、真菌、原生動物、寄生体、またはプリオンを原因と
する無数の疾病および病状を治療または予防することができる。コンジュゲート
のファーマコフォアの標的は、典型的には、このような原因に含まれるか、また
は、これら原因と関連する。
【0127】 ウイルスの例としては、限定するものではないが、HBV(B型肝炎ウイルス)、
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)、およびインフルエン
ザが挙げられる。細菌の例としては、限定するものではないが、結核菌、レンサ
球菌、クラミジア、ボレリア属、ヘモフィルス属、ナイセリア属、ヘリオバクタ
ー属、シゲラ属、パスツレラ属、コクシエラ属、マイコバクテリア、サルモネラ
属、フソバクテリウム属、カンピロバクテリウム属、および、ブドウ球菌が挙げ
られる。真菌の例としては、限定するものではないが、カンジダ属、クリプトコ
ッカス属、ヒストプラズマ属、スポロトリクス属、白癬菌属、小胞子菌属、およ
び、Epidermonが挙げられる。プリオンの例としては、限定するものではないが
、クロイツフェルトヤコブ病、スクレイピー、および、アルツハイマー病を引き
起こす、または、これらに関連するものが挙げられる。本発明のコンジュゲート
により治療または予防することができる具体的疾病としては、限定するものでは
ないが、癌、心臓疾患、神経変性疾患、HIV、および糖尿病が挙げられる。本発
明のコンジュゲートにより改善することのできるクオリティオブライフは、限定
するものではないが、記憶喪失、脱毛、肥満、勃起不全症、および老化が挙げら
れる。
【0128】 本発明の好ましいVLPコンジュゲートは小さく、図1に示す形態をしている。本
発明のコンジュゲートは、限定するものではないが、抗生物質;抗菌薬;抗マイ
コプラズマ薬;抗ウイルス薬;抗真菌薬;抗原生動物薬;単細胞真核生物に対し
て活性のある分子;寄生体に対して活性のある分子;代謝物と強固に結合する分
子;巨大分子受容体への結合の阻害剤または活性化剤、例えば、神経受容体のア
ンタゴニストまたはアゴニスト、および転写因子の阻害剤または活性化剤;酵素
の阻害剤または活性化剤;巨大分子間の結合相互作用の阻害剤または活性化剤;
細胞のシグナル伝達経路に含まれるタンパク質間の結合相互作用または該タンパ
ク質の触媒活性の阻害剤または活性化剤;核酸ポリメラーゼの阻害剤;タンパク
質合成の阻害剤;プロテアーゼの阻害剤または活性化剤;キナーゼおよびホスフ
ァターゼの阻害剤または活性化剤;グリコシル化阻害剤;ジヒドロ葉酸レダクタ
ーゼ阻害剤;イオノフォア;核酸突然変異原;核酸アルキル化剤;核酸切断剤;
およびその他のDNA修飾分子からなる群より選択されるファーマコフォアのコン
ジュゲートを含む。
【0129】 本発明のコンジュゲートは、限定するものではないが、ポリメラーゼ;転写酵
素;リボソーム;タンパク質の折りたたみに関係したタンパク質または他のシャ
ペロン;ウイルスの構造タンパク質;特定の真核細胞の豊富なタンパク質;抗生
物質耐性エレメント;および、例えば、細菌の細胞壁の形成において機能する細
菌性トランスアミダーゼ等の酵素と相互作用するものを含む群より選択されるベ
クターのコンジュゲートを含む。本発明のコンジュゲートはまた、ベクターと標
的酵素との共有結合により標的酵素の共有結合修飾をもたらす、または、ベクタ
ーとファーマコフォア標的の近傍にある構造との共有結合をもたらす機構指向阻
害剤であるベクターのコンジュゲートを含む。
【0130】 本発明のVLPコンジュゲートのファーマコフォアとベクター成分を連結させる
のに用いられるリンカーとしては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンエナ
ミン、または直鎖アルカン部分を含む分子; アミン、イミン、アミンオキシド、ヒドラジン、アゾ化合物、エーテル、チオ
エーテル、スルホキシド、スルホンアミド、スルホニルエステル、リン酸エステ
ル、ホスフィン、メチレン、メチン、カルボキシルアミド、カルボキシルエステ
ル、およびイミデートからなる群より選択される末端基を含む分子;ならびに、 直鎖アルカン、直鎖アルケン、アルキン、二置換および多置換フェニル環、二
置換および多置換ナフタレン環、二置換および多置換シクロヘキシル環、二置換
および多置換デカリン環、二置換および多置換ヘテロ芳香環、様々なコンホメー
ション剛性を有する縮合アリール、ヘテロ芳香環またはアルキル環、直鎖アルキ
ルアミン、直鎖アルキルアルコール、ポリアルキルアミン(ポリエチレンエナミ
ンに基づくリンカーを含む)、ポリアルキルエーテル(ポリエチレングリコール
に基づくリンカーを含む)、ならびに、ポリアルキルチオエーテルであるか、ま
たはこれらの組合せである末端基を連結する鎖を有する分子を挙げることができ
る。
【0131】 本発明の特定のVLPコンジュゲートについて、下記の実施例で説明する。
【0132】5. 実施例 5.1. 実施例1:定量的分析 当業者には公知の様々な相関を用いて、本発明のデータベースに含まれるファ
ーマコフォア、ベクター、およびリンカーをランク付けおよび選択することがで
きる。このような相関の例を図40に示す。
【0133】5.2. 実施例2:抗真菌VLPコンジュゲートの設計 これは、真菌感染の治療に有用なVLPコンジュゲートの設計および調製の一例
である。このコンジュゲートにおけるベクターは、ソルダリン(sordarin)であり
、ファーマコフォアはフルコナゾールである。
【0134】段階1:データベースの構築 i. 病状を選択する この実施例は、真菌感染を治療または予防したい場合に関する。特に、真菌に
対して活性を有するVLPコンジュゲートが望まれる。この場合、真菌は、病原生
物である。
【0135】ii. 真菌感染に関するリガンドおよび受容体または基質および酵素の初期表を 作成する 。 リガンド表を図8に示す。
【0136】iii. 真菌感染の治療に用いられるファーマコフォアの表を作成する
【0137】 真菌ファーマコフォアの表を図3に示す。
【0138】iv. ファーマコフォア標的の表を作成する。この表に、病状に有効な選択され たファーマコフォアに対応するファーマコフォア標的を入力する。 真菌標的は、図3の表に示す。
【0139】v. 真菌に関連するベクター標的の表を作成する。それらの存在量および細胞
小器官または細胞外の位置に従って、これらを分類する。 ベクター標的は、図4の表に示す。
【0140】vi. ベクターの表を作成する。この表に、ベクター標的と結合することがわか っているベクターを記入する。 ベクターは、図4の表に示す。
【0141】vii. リンカーの表を作成する
【0142】 リンカーの表は、図4に示す。
【0143】段階2:データベースからの選択の実施 i. ベクターとベクター標的 ベクター標的の選択:実験微生物として真菌を選択する。真菌のタンパク質延
長因子2(EF2, Elongation Factor 2(伸長因子2))をベクター標的として選択す
る。延長因子2は、リボソームのタンパク質合成機構の一部として機能する。こ
れは、細胞中のリボソームとほぼ同じ高コピー数で、存在する。このタンパク質
は、細胞の細胞質ゾルに存在する。すべての真核生物は、EF2の機能を有するタ
ンパク質を含んでいるが、ソルダリンファミリーの抗生物質を用いた実験研究の
結果、これらの小さい分子は、真菌タンパク質と特異的に相互作用することが明
らかになった。例えば、B. Tse、J. M. Balkovec、C. M. Blazey、M-J. Hsu、J.
NeilsenおよびD. Schmatz、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 8:2
269-2272(1998)を参照されたい。
【0144】 ベクターの選択:ソルダリンの改変版を試験ベクターとして選択する。ソルダ
リンの構造は図9に示す。ソルダリンは、EF2と特異的に相互作用すると報告さ
れている。従って、その相互作用部位は、真菌の細胞質ゾルである。これは、マ
イクロモルからナノモルの範囲の濃度で抗真菌活性を呈示する。ソルダリンとEF
2との結合が、真菌のタンパク質合成を阻害する。抗真菌効果を妨害することな
く、長い脂肪鎖をソルダリン系に結合できることを示すのに十分な構造活性相関
のデータが存在しており、これは、EF2との結合が妨害されないことを意味する
。ソルダリンは、弱い極性を有する分子であり、おそらく、真菌の細胞壁を介し
た拡散により、その作用部位に到達することができる。この分子が高度に水溶性
であることは求められない。ソルダリシン(その糖部分が除去されたソルダリン
)の分子量は332ダルトンである。
【0145】 ソルダリン誘導体化:文献にある方法は、ソルダリンからの糖部分の除去と、
長い脂肪鎖の結合について記載している。このようにして改変された分子は、抗
真菌活性を保持している。ソルダリンの改変(チオプロピルソルダリンおよびア
ミノプロピルソルダリンを生成)に対する実験計画については、段階4の実験の
節で説明する。これらの構造改変により、リンカー分子の結合が容易になり、そ
の際、結合したリンカーが、真菌EF2との分子間の相互作用を妨害しない確率は
高い。
【0146】 誘導体化ソルダリンをプローブ分子およびモデルファーマコフォアと結合させ
る。候補リンカーは、市販の供給源から取得する。図5は、代表的リンカーの表
を示す。候補プローブは、市販の供給源から取得する。図7は、代表的蛍光プロ
ーブの図を示す。リンカーを選択するが、リンカーは、VLPコンジュゲートの水
溶性、または、真菌の細胞質ゾルに拡散する能力を制限してはならない。プロー
ブ分子(モデルファーマコフォア)は、小さい蛍光分子、または放射性同位体を
組み込む小さい分子のいずれかである。これらは、市販の供給源から取得する。
ソルダリン、リンカーおよびプローブ分子を用いる、モデルVLPコンジュゲート
を構築する実験計画については、以下の段階4で説明する。
【0147】 ソルダリンおよびプローブ分子を含むモデルVLPコンジュゲートの活性のアッ
セイを、以下の段階4に記載するように実施する。
【0148】 コンジュゲートの構築および試験:ソルダリンベクターと、リンカーおよびプ
ローブ分子の組合せの抗真菌活性を決定するアッセイについては、以下の段階4
に記載する。抗真菌活性の呈示は、ソルダリンのベクターとしての作用について
は何ら不可欠ではないが、ソルダリンコンジュゲートが、真菌EF2に結合する能
力を保持することを示すことになる。ソルダリンベクターと、リンカーおよびプ
ローブ分子の組合せの集結効果を決定するアッセイについては、以下の段階4に
記載する。
【0149】ii. ファーマコフォア ファーマコフォアおよびファーマコフォア標的の選択:アゾール抗真菌剤であ
るフルコナゾールを試験ファーマコフォアとして選択した。フルコナゾールの構
造を図10に示す。フルコナゾールは、真菌の酵素ラノステロール14Cデメチラ
ーゼの競合阻害剤である。報告によれば、フルコナゾールは、マイクロモルより
小さい範囲の濃度で、酵素ラノステロール14Cデメチラーゼに結合する。この酵
素の阻害により、真菌の細胞膜の形成には不可欠のステロイドであるエルゴステ
ロールの合成が妨害される。この阻害はまた、エルゴステロールへの真菌合成経
路上に存在する中間体の有害な蓄積を招く。ファーマコフォア標的である真菌酵
素ラノステロール14Cデメチラーゼは、小胞体膜上、おそらく、この膜の細胞質
ゾル側に位置する。抗真菌効果、すなわち、ラノステロール14Cデメチラーゼと
の結合、を妨害することなく、かなりの構造改変がアゾール系に対して実施可能
であることを示す十分な構造活性相関のデータが存在する。フルコナゾールは、
中程度の極性を有する分子であり、おそらく、真菌の細胞壁を介した拡散により
、その作用部位に到達することができる。この分子は、有意に水溶性である。フ
ルコナゾールの分子量は306ダルトンである。
【0150】 フルコナゾールの合成および誘導体化:文献にある方法は、フルコナゾールお
よび類似したアゾール抗真菌剤の合成を明らかにしている。また、アゾール抗真
菌剤が、抗真菌活性は保持しながら、かなりの構造的加工(おそらくリンカー鎖
の付加を含む)を受けることができることも示している。フルコナゾールの改変
(チオブチルおよびアミノブチル側鎖を有する分子を調製)に対する実験計画に
ついては、実験の節で説明する。これらの構造改変により、リンカー分子の結合
が容易になり、その際、結合したリンカーが、該分子の抗真菌活性を妨害しない
確率は高い。
【0151】 改変フルコナゾールとプローブ分子との結合:候補リンカーは、市販の供給源
から取得する。図5は、代表的リンカーの表を示す。図7は、代表的蛍光プロー
ブ(モデルファーマコフォア)の図を示し、該プローブは、小さな蛍光分子であ
る。プローブはまた、放射性同位体を組み込む小さい分子でもよい。これらは、
市販の供給源から取得する。リンカーおよびプローブ分子のフルコナゾールへの
結合のための実験計画については、段階4に説明する。
【0152】 フルコナゾールベクターと、リンカーおよびプローブ分子との組合せの抗真菌
活性を決定するアッセイを段階4で説明する。また、フルコナゾールベクターと
、リンカーおよびプローブ分子との組合せの集結効果を決定するアッセイを段階
4で説明する。
【0153】ステップ3:VLPコンジュゲートの設計 ソルダリンとフルコナゾールとのVLPコンジュゲート : 図5は、代表的なリンカーの表を示す。ソルダリンとフルコナゾールとのコン
ジュゲートの合成の実験計画は、ステップ4に記載する。
【0154】 ソルダリンベクター、リンカー、およびフルコナゾールファーマコフォアの組
合せからなるVLPコンジュゲートの抗真菌活性を決定するアッセイは、ステップ
4に記載のように行われる。これらの構造の1つを図11に示す。
【0155】ステップ4:VLPコンジュゲートの構築および試験 図12は、ソルダリン-リンカー-フルコナゾールコンジュゲートの構築を詳細に
示し、これらの成分は本実施例の上記ステップ1〜3において選択されている。
2つの異なる長さのリンカーが提案されている。本明細書で使用する「化合物/ス
キーム」という表記は、図12に示すような合成ステップを指す。図12はまた、蛍
光プローブであるダンシル基がソルダリンベクターまたはフルコナゾールファー
マコフォアのいずれかに結合した試験(または代理)コンジュゲートの構築につい
ても詳細に示す。ここでも、2つの異なる長さのリンカーが提案される。この構
築スキームによる実験およびアッセイ法は、ソルダリン-リンカー-フルコナゾー
ル(VLP)構築物および代理コンジュゲートを試験するために提案される。
【0156】ソルダリン(化合物1、スキーム1): この材料は、D.HauserおよびH.P.Sigg, Helvetica Chimica Acta 54:1178-119
0 (1971)に報告されるようなソルダリア・アラネオサ(Sordaria araneosa)の発
酵により調製される。
【0157】ソルダリシン(sordaricin)パラメトシキベンジルエステル(化合物2、スキーム
1): この材料は、B.Tse, J.M. Balkovec, C.M. Blazey, M-J. Hsu, J. Neilsenお
よびD.Schmatz, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 8:2269-2272 (1
998)に報告される方法により調製される。
【0158】ヨードプロピルソルダリンパラメトキシベンジルエステル(化合物3、スキーム
1): この化合物は、Tseらのアルキル化の手順と同様の方法により調製される。つ
まり、ソルダリシンパラメトキシベンジルエステル(化合物2、スキーム1)(904
mg, 2 mmol)をジメチルホルムアミド(30 ml)およびジヨードプロパン(diiodopr
opane)(5.9 g、20 mmol)に溶解し、水素化ナトリウム(240 mgの60%分散液、6 mm
ol)を添加する。混合液を室温にて一晩攪拌する。エチルエーテル(100 ml)を添
加し、溶液を水(3×、100 ml)で抽出する。溶媒をロータリーエバポレーター上
で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。残留物を最小量の酢酸エチル-ペンタ
ンに溶解し、クロロホルム-酢酸エチル-ペンタンを溶出液として用いたシリカゲ
ル上でのクロマトグラフィーにかける。溶媒をロータリーエバポレーター上で除
去し、生成物を真空下で乾燥させる。
【0159】メルカプトプロピルソルダリンパラメトキシベンジルエステル(化合物4、スキ
ーム1) ヨードプロピルソルダリンパラメトキシベンジルエステル(化合物3、スキー
ム1)(1.24 g、2 mmol)を、メタノール-酢酸エチルに溶解し、最小量のメタノー
ル-水に溶解された硫酸ナトリウム(1.56 g、20 mmol)またはメタノール-酢酸エ
チルに溶解された二硫化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium bisulf
ide)(5.5 g、20 mmol)を添加する。反応物を室温にて一晩攪拌する。エチルエー
テル(100 ml)を添加し、溶液を水(3×、100 ml)で抽出する。溶媒をロータリー
エバポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。粗生成物は、次のス
テップで直接使用するか、または最小量の酢酸エチル-ペンタンに溶解し、クロ
ロホルム-酢酸エチル-ペンタンを溶出液として用いたシリカゲル上でのクロマト
グラフィーにかけてもよい。次いで、溶媒をロータリーエバポレーター上で除去
し、生成物を真空下で乾燥させる。
【0160】メルカプトプロピルソルダリン(化合物5、スキーム1): この化合物は、Tseらの手順と同様の方法により調製する。つまり、メルカプ
トプロピルソルダリンパラメトキシベンジルエステル(化合物4、スキーム1)(0
.53 g、1 mmol)をメタノール(90 ml)に溶解し、水素化触媒(例えば、木炭上(on
charcoal)の水酸化パラジウム)を添加する。混合物を水素下で攪拌する(水素バ
ルーン(hydrogen balloon)を用いて)。反応の進行状態を、シリカゲル上での薄
層クロマトグラフィーで追う。水素化が終了した後、反応混合物を濾過し、溶媒
をロータリーエバポレーター上で除去し、生成物を真空下で乾燥させる。これは
、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製されるか、または直接使用さ
れうる。
【0161】 あるいはまた、メルカプトプロピルソルダリンパラメトキシベンジルエステル
(0.53 g、1 mmol)を水-アセトン(100 ml)に溶解し、塩酸(12 N、10 ml)を添加す
る。反応混合物を室温にて攪拌するか、加熱し、反応の進行状態を薄層クロマト
グラフィーで追う。反応終了後、生成物を塩化メチレン(50 ml)に溶解し、次い
で水(3×、100 ml)で抽出する。これを、クロロホルム-酢酸エチル-ペンタンを
溶出液として用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する。
【0162】アミノプロピルソルダリンパラメトキシベンジルエステル(化合物1、スキーム
2). ヨードプロピルソルダリンパラメトキシベンジルエステル(化合物3、スキー
ム1)(1.24 g、2 mmol)をエーテルに溶解し、エーテルに溶解したアンモニアの
溶液(約0.34 g、20 mmolのアンモニア)を添加する。反応の進行状態を薄層クロ
マトグラフィーで追う。反応終了後、反応混合物を水(3×、100 ml)で抽出する
。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。
粗生成物は、次のステップで直接使用するか、または最小量の酢酸エチル-ペン
タンに溶解させて、クロロホルム-酢酸エチル-ペンタンを溶出液として用いたシ
リカゲル上でのクロマトグラフィーにかけてもよい。次いで、溶媒をロータリー
エバポレーター上で除去し、生成物を真空下で乾燥させる。
【0163】アミノプロピルソルダリン(化合物2、スキーム2): 上記メルカプトプロピルソルダリン(化合物5、スキーム1)のために用いられ
る方法により、パラメトキシベンジルエステルを、アミノプロピルソルダリンパ
ラメトキシベンジルエステル(化合物1、スキーム2)から除去する。
【0164】5-(4-メトキシベンジルチオ)バレロニトリル(化合物1、スキーム3): この化合物は、5-ブロモバレロニトリル(16.2 g、100 mmol)をクロロホルム(2
00 ml)に溶解することにより調製される。溶液を氷浴中で冷却し、クロロホルム
(200 ml)に溶解したトリエチルアミン(10.1 g、100 mmol)および4-メトキシベン
ジルメルカプタン(15.4 g、100 mmol)の溶液をゆっくりと添加する。添加終了後
、反応物を攪拌し、室温まで温める。反応の進行状態を薄層クロマトグラフィー
で追う。反応終了後、溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真
空下で乾燥させる。これを、エチルエーテル中に再懸濁させ、吸引濾過する。溶
媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を高真空圧下で乾燥させる。
粗材料をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0165】5-(4-メトキシベンジルチオ)-1-イミド吉草酸エチルエステル塩酸塩(化合物2、 スキーム3): この化合物は、ReynaudおよびMoreauの方法を適応して調製される。つまり、5
-(4-メトキシベンジルチオ)バレロニトリル(化合物1、スキーム3)(23.5 g、10
0 mmol)をトルエン(125 ml)に溶解させ、メタノール(23 ml)を添加する。溶液を
氷浴中で冷却し、塩化水素ガスを3時間にわたり大気圧下で添加する。反応混合
物を塩化水素下で室温にて一晩攪拌する。次いで、無水トルエン(100 ml)を添加
し、溶媒の大部分および全ての残留メタノールをロータリーエバポレーター上で
除去する。次に、酢酸エチルまたはエチルエーテルを添加し、反応混合物を氷上
で冷却する。その結果生じる沈殿物を吸引濾過により回収し、無水の冷トルエン
で洗浄する。粗5-(4-メトキシベンジル)チオ)-1-イミド吉草酸エチルエステルは
、それ以上精製することなく使用される。
【0166】5-(4-メトキシベンジルチオ)-1-イミド吉草酸(imidovaleric acid)ホルミルヒド ラジド(化合物3、スキーム3): この化合物は、P.Westermann、H.PaulおよびG.Hilgetag, Chemische Berichte
97:528-532(1964)の方法を適応して調製される。つまり、粗5-(4-メトキシベン
ジルチオ)-1-イミド吉草酸エチルエステル塩酸塩(化合物2、スキーム3)を無水
トルエンまたはエーテル(300 ml)に懸濁し、トリエチルアミン(10.1 g、100 mmo
l)およびホルミルヒドラジン(6.0 g、100 mmol)を添加する。反応混合物を室温
にて攪拌し、反応の進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。反応終了後、反
応混合物を濾過し、濾液を水(3×、100 ml)で洗浄する。有機溶液を硫酸マグネ
シウム上で乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーター上で除去する。残留物を
真空下で乾燥させ、生成物を、ペンタン-酢酸エチル-クロロホルムを溶出液とし
て用いたシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。
【0167】3-(4-(4-メトキシベンジルチオ)ブチル)-1,2,4-トリアゾール(化合物4、スキー ム3): この化合物は、Westermannの方法を適応することにより調製される。つまり、
5-(4-メトキシベンジルチオ)-1-イミド吉草酸ホルミルヒドラジド(化合物3、ス
キーム3)(14.75 g、50 mmol)をトルエン(500 ml)およびアニリン(12.5 g)に添
加する。反応混合物を、還流下で加熱し、反応の進行状態を薄層クロマトグラフ
ィーで追う。反応終了後、溶媒をロータリーエバポレーター上で除去する。残留
物をペンタン-酢酸エチル-クロロホルムを溶出液として用いたシリカゲル上での
クロマトグラフィーにより精製する。
【0168】5-アミノバレロニトリル: この化合物は、5-ブロモバレロニトリル(16.2 g、100 mmol)をクロロホルム(2
00 ml)に溶解することにより調製される。溶液を氷浴中で冷却し、クロロホルム
(200 ml)に溶解した無水アンモニア(17.0 g、1.0 mol)の溶液をゆっくりと添加
する。添加終了後、反応物を攪拌し、放置して室温まで温める。反応の進行状態
を薄層クロマトグラフィーで追う。反応終了後、溶媒をロータリーエバポレータ
ー上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。これを、エチルエーテルに再懸濁
させ、吸引濾過する。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を高
真空圧下で乾燥させる。粗材料は、それ以上精製することなく使用されるか、ま
たはシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製されてもよい。
【0169】5-(カルボベンジルオキシアミノ)バレロニトリル(化合物1、スキーム4): この化合物は、5-アミノバレロニトリル(9.8 g、100 mmol)をクロロホルム(20
0 ml)に溶解することにより調製される。溶液を氷浴中で冷却し、トリエチルア
ミン(10.1 g、100 mmol)を添加する。続いて、クロロホルム(200 ml)に溶解した
カルボベンジルオキシクロリド(carbobenzyloxy chloride)(17.0 g、100 mmol)
の溶液をゆっくりと添加する。添加終了後、反応物を攪拌し、放置して室温まで
温め、進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。反応終了後、反応混合液を水
(3×、100 ml)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させる。溶媒をロ
ータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。粗材料をシ
リカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する。
【0170】5-(カルボベンジルオキシアミノ)-1-イミド吉草酸エチルエステル(化合物2、ス キーム4): この化合物は、5-(4-メトキシベンジルチオ)-1-イミド吉草酸エチルエステル
塩酸塩(化合物2、スキーム3)の調製において記載されたP. ReynaudおよびR.C.
Moreau, Bull Soc. Chim. France 2997-2999(1964)の方法を適応することによ
り、5-(カルボベンジルオキシアミノ)バレロニトリル(化合物1、スキーム4)か
ら調製される。
【0171】5-(カルボベンジルオキシアミノ)-1-イミド吉草酸ホルミルヒドラジド(化合物3 、スキーム4): この化合物は、5-(4-メトキシベンジルチオ)-1-イミド吉草酸ホルミルヒドラ
ジド(化合物3、スキーム3)の調製において記載されたWestermannの方法を適応
することにより、5-(カルボベンジルオキシアミノ)-1-イミド吉草酸エチルエス
テル(化合物2、スキーム4)から調製される。
【0172】3-(4-(カルボベンジルオキシアミノ)ブチル)-1,2,4-トリアゾール(化合物4、ス キーム4): この化合物は、3-(4-(4-メトキシベンジルチオ)ブチル)-1,2,4-トリアゾール(
化合物4、スキーム3)の調製において記載されたWestermannの方法を適応する
ことにより、5-(カルボベンジルオキシアミノ)-1-イミド吉草酸ホルミルヒドラ
ジド(化合物3、スキーム4)から調製される。
【0173】1-[2-(2,4-ジフルオロフェニル)-2,3-エポキシプロピル]-1H-1,2,4-トリアゾー
ルメチルスルホネート(化合物1、スキーム5) この化合物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,404,216号でK
.Richardsonが開示する方法により調製される。
【0174】2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-(4-
メトキシベンジルチオ)-ブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オ ール(化合物1、スキーム6): この化合物は、Richardsonにより報告される方法と同様の方法により調製され
る。つまり、1-[2-(2,4-ジフルオロフェニル)-2,3-エポキシプロピル]-1H-1,2,4
-トリアゾールメチルスルホネート(化合物1、スキーム5)(4.75 g、20 mmol)を
ジメチルホルムアミド(35 ml)に溶解し、3-(4-(4-メトキシベンジルチオ)ブチル
)-1,2,4-トリアゾール(化合物4、スキーム3)(6.93 g、25 mmol)および無水炭
酸カリウム(9.1 g、66 mmol)を添加する。反応混合物を、攪拌しながら90℃まで
加熱する。反応の進行状態を、シリカゲル上での薄層クロマトグラフィーにより
追う。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却する。水(180 ml)を添加し、クロ
ロホルム(2×、60 ml)で混合物を二回抽出する。合わせたクロロホルム抽出物
を水(2×、100 ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を
ロータリーエバポレーター上で除去する。生成物を、ペンタン-酢酸エチル-クロ
ロホルムを溶出液として用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製
する。
【0175】2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-チオ ブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合物2、スキー
ム6): この化合物は、2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イ
ル)-3-(3-(4-(4-メトキシベンジルチオ)ブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル
)プロパン-2-オール(化合物1、スキーム6)(5.14 g、10 mmol)を、氷冷トリフ
ルオロ酢酸(100 ml)に溶解し、それにHg(OAc)2(3.21 g、10 mmol)を添加して調
製される。反応混合物を氷上で1時間攪拌し、次いでメルカプトエタノール(3.1
2 g、40 mmol)を添加する。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留
物を真空下で乾燥させる。生成物を、ペンタン-酢酸エチル-クロロホルムを溶出
液として用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する。
【0176】 あるいはまた、2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イ
ル)-3-(3-(4-(4-メトキシベンジルチオ)ブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル
)プロパン-2-オール(化合物1、スキーム6)を、トリフルオロ酢酸に溶解し、溶
液を還流する。反応の進行状態を薄層クロマトグラフィーにより追う。反応終了
後、溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる
。生成物を、ペンタン-酢酸エチル-クロロホルムを溶出液として用いたシリカゲ
ル上でのクロマトグラフィーにより精製する。
【0177】2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-カル ボベンジルオキシアミノブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オ ール(化合物3、スキーム6): この化合物は、Richardsonにより報告される方法と同様の方法により調製され
る。つまり、1-[2-(2,4-ジフルオロフェニル)-2,3-エポキシプロピル]-1H-1,2,4
-トリアゾールメチルスルホネート(化合物1、スキーム5)(4.75 g、20 mmol)を
、ジメチルホルムアミド(35 ml)および3-(4-(カルボベンジルオキシアミノ)ブチ
ル)-1,2,4-トリアゾール(化合物4、スキーム4)(6.85 g、25 mmol)に溶解し、
無水炭酸カリウム(9.1 g、66 mmol)を添加する。反応混合物を攪拌しながら90℃
まで加熱する。反応の進行状態をシリカゲル上での薄層クロマトグラフィーで追
う。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却する。水(180 ml)を添加し、混合物
をクロロホルム(2×、60 ml)で二回抽出する。合わせたクロロホルム抽出物を
水(2×、100 ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒をロ
ータリーエバポレーター上で除去する。生成物を、ペンタン-酢酸エチル-クロロ
ホルムを溶出液として用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製す
る。
【0178】2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-アミ ノブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合物4、スキ
ーム6): この化合物は、エタノール(100 ml)に溶解した2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1
-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-(4-カルボベンジルオキシアミノブ
チル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合物3、スキーム
6)(5.11 g、10 mmol)から調製される。炭素(0.5 g)上の(on carbon)パラジウム
を添加し、攪拌しながら水素下で反応させる。反応の進行状態を薄層クロマトグ
ラフィーで追う。反応終了後、反応混合物を濾過し、濾液をエタノールで洗浄し
、溶媒を組み合わせたエタノール洗浄液からロータリーエバポレーター上で除去
する。残留物を、ペンタン-酢酸エチル-クロロホルムを溶出液として用いたシリ
カゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する。
【0179】 あるいはまた、2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イ
ル)-3-(3-(4-カルボベンジルオキシアミノブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イ
ル)プロパン-2-オール(化合物3、スキーム6)(5.11 g、10 mmol)を、アセトニ
トリル(100 ml)に溶解し、クロロトリメチルシラン(1.09 g、10 mmol)を添加す
る。反応を薄層クロマトグラフィーにより追う。終了後、反応混合物を水(3×
、100 ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させる。溶媒をロータリーエバ
ポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。残留物を、ペンタン-酢
酸エチル-クロロホルムを溶出液として用いたシリカゲル上でのクロマトグラフ
ィーにより精製する。
【0180】2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-カルボ
ベンジルオキシアミノメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オー
ル(化合物5、スキーム6): この化合物は、Richardsonが報告する方法であって、2-(2,4-ジフルオロフェ
ニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-カルボベンジルオキシアミ
ノブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合物3、スキ
ーム6)において記載した方法と同様の方法により、1-[2-(2,4-ジフルオロフェ
ニル)-2,3-エポキシプロピル]-1H-1,2,4-トリアゾールメチルスルホネート(化合
物1、スキーム5)から調製される。出発物質のトリアゾール、3-カルボベンジ
ルオキシアミノメチル-1,2,4-トリアゾールは、Westernmannの方法により調製さ
れる。
【0181】2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-アミノ
メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合物6、スキーム 6): この化合物は、2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イ
ル)-3-(3-(4-アミノブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール
(化合物4、スキーム6)において記載された方法により、2-(2,4-ジフルオロフ
ェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-カルボベンジルオキシアミノ
メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合物5、スキーム
6)から調製される。
【0182】メルカプトプロピルソルダリンと2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-ト
リアゾール-1-イル)-3-(3-(4-アミノブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プ ロパン-2-オールとのコンジュゲート(化合物1、スキーム7A、スキーム7B)
この化合物は、メルカプトプロピルソルダリン(化合物5、スキーム1)および
2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-アミ
ノブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合物4、スキ
ーム6)から調製される。つまり、スクシンイミジル6-[6-(((ヨードアセチル)ア
ミノ)ヘキサノイル)アミノ]ヘキサノエート (SIAXX、0.51 g、1.0 mmol)または
スクシンイミジル6-((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノエート(SIAX、0.39 g、1
.0 mmol)を、無水塩化メチレン(20 ml)に溶解し、メルカプトプロピルソルダリ
ン(化合物5、スキーム1)(0.37 g、1.0 mmol)を添加する。反応混合物を室温に
て攪拌し、その進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。縮合終了後、2-(2,4
-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-3-(3-(4-アミノブチ
ル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(0.38 g、1.0 mmol)を添
加する。反応物を室温にて再度攪拌し、その進行状態を薄層クロマトグラフィー
で追う。反応終了後、溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真
空下で乾燥させる。残留物を高圧液体クロマトグラフィーにより精製する。
【0183】メルカプトプロピルソルダリンとダンシルクロリドとのコンジュゲート(化合物
1、スキーム8A、スキーム8B): この化合物は、メルカプトプロピルソルダリン(化合物5、スキーム1)および
ダンシルクロリドから調製される。つまり、ダンシルクロリド(2.69 g、10 mmol
)を、無水塩化メチレン(100 ml)に溶解し、1,4-ジアミノブタン(8.8 g、100 mmo
l)を添加する。反応混合物を室温にて攪拌し、その進行状態を薄層クロマトグラ
フィーで追う。反応終了後、反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液(0.5 N)、次
いで水で洗浄する。これを硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過する。溶媒
をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。粗材料
は、それ以上精製することなく使用される。スクシンイミジル6-[6-(((ヨードア
セチル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ]ヘキサノエート(SIAXX、0.51 g、1.0 mmol
)またはスクシンイミジル6-((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノエート(SIAX、0.
39 g、1.0 mmol)を無水塩化メチレン(10 ml)に溶解し、メルカプトプロピルソル
ダリン(化合物5、スキーム1)(0.37 g、1.0 mmol)を添加する。反応混合物を室
温にて攪拌し、その進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。縮合終了後、ダ
ンシルクロリドと1,4-ジアミノブタンとの反応生成物を、塩化メチレン(10 ml)
に溶解し、この材料の10分の1(1.0 mmol)を添加する。反応物を室温にて再度攪
拌し、その進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。反応終了後、溶媒をロー
タリーエバポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。残留物を、高
圧液体クロマトグラフィーにより精製する。
【0184】メルカプトブチルフルコナゾール(fluconzole)とダンシルクロリドとのコンジュ ゲート(化合物1、スキーム9A、スキーム9B): この化合物は、(2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-
イル)-3-(3-(4-チオブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール
)(化合物2、スキーム6)およびダンシルクロリドから調製される。つまり、ダ
ンシルクロリド(2.69 g、10 mmol)を、無水塩化メチレン(100 ml)に溶解し、1,4
-ジアミノブタン(8.8 g、100 mmol)を添加する。反応混合物を室温にて攪拌し、
その進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。反応終了後、反応混合物を水酸
化ナトリウム水溶液(0.5 N)で、次いで水で洗浄する。これを、硫酸ナトリウム
上で乾燥させ、次いで濾過する。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、
残留物を真空下で乾燥させる。粗材料は、それ以上精製することなく使用される
。スクシンイミジル6-[6-(((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ]ヘキ
サノエート(SIAXX、0.51 g、1.0 mmol)またはスクシンイミジル6-((ヨードアセ
チル)アミノ)ヘキサノエート(SIAX、0.39 g、1.0 mmol)を無水塩化メチレン(20
ml)に溶解し、2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)
-3-(3-(4-チオブチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロパン-2-オール(化合
物2、スキーム6)(0.39 g、1.0 mmol)を添加する。反応混合物を室温にて攪拌
し、その進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。縮合終了後、ダンシルクロ
リドと1,4-ジアミノブタンとの反応生成物を、塩化メチレン(10 ml)に溶解し、
この材料の10分の1(1.0 mmol)を添加する。反応物を室温にて再度攪拌し、その
進行状態を薄層クロマトグラフィーで追う。反応終了後、溶媒をロータリーエバ
ポレーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。残留物を、高性能液体ク
ロマトグラフィーにより精製する。
【0185】5.3. 実施例3:抗細菌VLPコンジュゲートの設計 以下は、細菌中に高濃度で通常存在しない標的と結合するベクター部分を含む
VLPコンジュゲートの設計の実施例である。しかし、ベクター標的をコードする
遺伝子をプラスミドに入れることで細菌を改変して、標的タンパク質が細菌中で
高濃度に発現されるようにしてもよい。従って、このアプローチは、VLPコンジ
ュゲートを、非疾患細胞を除いて疾患細胞をターゲッティングするように設計で
きることを実証する。
【0186】抗細菌ベクター/ファーマコフォア表の構築 リガンド表の作成 細菌タンパク質リガンドについての情報を文献から集める。この情報は:分子
量、受容体、阻害様式、会合定数(Ka)、IC50、結合部位、およびMIC50を含むこ
とが好ましい。この情報を、表形式にまとめる。例を図13a〜dに示す。
【0187】リガンド受容体表の作成 細菌タンパク質に結合するリガンドについての情報を文献から集める。この情
報は:種、受容体濃度、分子量(ダルトン)、細胞区画(compartment)、溶解度、
天然基質、機能、および三次元構造を含むことが好ましい。例を図13eに示す。
【0188】ベクターおよびファーマコフォア表の作成 リガンドデータを収集した後、リガンドをベクターおよびファーマコフォアに
分ける。良いベクターであると考えられるリガンドについては、(1)ターゲッテ
ィングされる細胞区画において高い受容体濃度を有し、(2)受容体に対して高い
会合定数を有さなければならない。これらの要素の助力(contribution)を、リガ
ンドのベクターとしての適合性の決定のために取り入れるために、各リガンドに
ついて集結係数(concentrating factor)を計算する。集結係数は、まず、細胞中
の受容体分子の数に、受容体上のリガンド結合部位の数を掛けて、1細胞当たり
のリガンド結合部位の数を得て決定する。次に、この数を、マイクロモルに変換
し、細菌細胞の推定容量(リットル)で割り、受容部位の濃度(マイクロモル)を得
る。次に、結合部位濃度に、その部位についてのリガンドの会合定数を掛け、集
結係数を生成する。50を上回る集結係数を有するリガンドはベクターとする。50
未満の集結係数を有するリガンドは、ファーマコフォアとする。このプロセスの
例は図13fに示す。
【0189】 次に、集結係数に従ってリガンドをランク付けする。高い集結係数を有するリ
ガンドは、低い集結係数を有するリガンドよりも、広範囲のファーマコフォアを
効率的に集結させるであろう。しかし、低い集結係数を有するリガンドには、比
較的高い会合定数または低いMIC50を有するファーマコフォアに対するベクター
として作用することができる可能性がある。本実施例の目的のためには、50を上
回る集結係数を有する全てのリガンドをベクターとし、50未満の集結係数を有す
る全てのリガンドは、ファーマコフォアとする。例示のベクター表を図13gに示
す。例示のファーマコフォア表を図13hに示す。
【0190】候補抗細菌VLP対の決定 1 > 100 Kvd/([VTt]-10 Kpd) または、 ([VTt] ■ 10* MIC50)/Kvd > 100 のいずれかである、ベクター/ファーマコフォア対選択(細菌細胞質ゾル)に対す
る基準。 解離定数を会合定数に変換: KvaKpa[VTt] ■ 10Kva > 100Kpa または、 Kva[VTt] ■ 10KvaMIC50 > 100 再配列(Rearranging): Kva[VTt] > 100 + ((10 Kva)/Kpa) または、 Kva[VTt] > 100 + 10 KvaMIC50
【0191】 これらの式により、結合親和性および標的濃度が不等式を満たすベクター/フ
ァーマコフォア対を試験するための単純な検索アルゴリズムの構築が可能となる
。上記式は、[VTt] > 10[PTt]であると仮定する。つまり、リボソームファーマ
コフォアをターゲッティングするためには、ファーマコフォア標的濃度の約10倍
の濃度を有するベクター標的を有していなければならない。この場合、EF-Tuは
、細菌リボソームの濃度の約10倍で存在する。Ef-Tu(Ka = 4 x 106 M-1)に高い
親和性で結合するキロマイシンを、ベクター表から選択する。次いで、上記不等
式セットを用いて、様々なキロマイシン/ファーマコフォア対の可能性を決定す
る。例を図13iに示す。
【0192】 この表は、上記不等式を満たす可能性のあるベクター/ファーマコフォア対を
示す。同様の計算セットを、他の有望な細胞質ゾルベクターに対して行うことが
できる。可能性のあるV/P対を決定した後、長鎖の結合により活性が影響されな
いファーマコフォアに特に注目して、各ファーマコフォアについてSARデータを
収集する。これに続いて、ベクターおよびファーマコフォアの合わせた分子量に
従って、有望なV/P対をランク付けする。合わせた分子量が最も低いものを、潜
在的なVLPコンジュゲートとして調べる。
【0193】 VLPコンジュゲートの例を図14〜17に示し、以下に詳細に考察する。これらの
コンジュゲートは、まず、疾患状態(細菌感染)、次いでそれに対して活性である
と報告されるファーマコフォアを選択することで設計される。選択された抗細菌
薬としては、ペニシリン、テトラサイクリンおよびトリメトプリムが挙げられる
。各ファーマコフォアについて、活性に対して有意な妨害を生じることなくリン
カーを結合することができるファーマコフォア分子上の1つ以上の位置を上手く
推定するのに十分な構造活性データが存在する。これらの作用部位は、ペニシリ
ンについては細菌細胞周辺腔、ならびにテトラサイクリンおよびトリメトプリム
については細菌細胞質ゾルにある。従って、周辺細胞質で発現され得るもの、お
よび細胞内で発現され得るものが、モデル細菌ベクター標的として選択される。
なぜなら、これらの標的との相互作用によりそれらの作用部位においてそれぞれ
の抗生物質を蓄積させることができるからである。細菌はユニークな標的を含む
が、これらのモデル標的タンパク質をコードする遺伝子をプラスミドに導入し、
タンパク質の発現レベルを制御できる。一般的に、高レベルの発現を有するベク
ター標的が望ましく、これらの系では発現を高レベルに調節できる。
【0194】 次に、これらの標的のためのベクターを選択する。タンパク質アビジンの既知
の性質に基づいて、強固に結合する分子であるビオチンをベクターとして使用で
きる。細胞質ゾルタンパク質の既知の性質に基づいて、ガラクトース系の作用機
序に基づく(galactose based mechanism based)阻害剤である基質つまりβガラ
クトシダーゼをベクターとして使用できる。ビオチンは、約10-14モルの解離定
数でアビジンに結合する。選択された作用機序に基づくβガラクトシダーゼ阻害
剤を、1秒につき少なくとも10-9モルの結合阻害剤濃度の変化をもたらす速度で
処理できることを示す十分なデータが存在する。これにより、ファーマコフォア
を共有結合させ、従って、細菌細胞内において細菌細胞サイクルの期間(length)
内で有効レベルまで集結させることができる。両方のベクターについて、十分な
構造-活性相関のデータが存在し、活性を有意に妨害することなくリンカーを結
合できる、ベクター分子上の位置を上手く推定できる。
【0195】 その後、ファーマコフォアをそれぞれのベクターと対にする。各ファーマコフ
ォア抗生物質について、抗生物質が効果を発揮できる最小濃度が知られている。
本明細書に開示する定量情報およびこの数、ベクター標的の予想される濃度、な
らびにベクターの標的からの解離定数または酵素がその基質を処理する予想速度
を用いて、抗生物質ファーマコフォアをその作用部位において有効レベルまで集
結させることができるVLPコンジュゲートの溶液濃度を推定することが可能であ
る。これは、非コンジュゲートファーマコフォア分子が必要とする濃度よりも実
質的に低い。
【0196】 残るはリンカーの選択である。これらは、ベクターおよびファーマコフォアと
同様の極性および溶解度を有するように選択される。これは、コンジュゲートの
溶解度、またはベクター標的およびファーマコフォア標的を含む細胞区画へのコ
ンジュゲートのアクセスを限定すべきではない。15〜20の結合分のリンカーの長
さを選択する。しかし、リンカーの長さは、VLPコンジュゲートをベクター標的
およびファーマコフォア標的の両方と相互作用させるために最適化される必要が
あり得る。これは、当業者に公知の常套的な方法により達成される。
【0197】5.4. 実施例4:ビオチン/ペニシリンコンジュゲートの合成 ビオチン-ペニシリンコンジュゲートの合成(ペニシリンはファーマコフォア、
ビオチンはベクターとして)を図18に示す。本明細書に開示する全ての合成の場
合について、化合物の純度および同一性は、当技術分野で公知の方法(核磁気共
鳴(NMR)分光法および質量スペクトル分析が挙げられるが、これらに限定されな
い)を用いて決定できる。同様に、全ての溶媒および標準試薬は、販売会社から
入手可能な分析試薬等級のものである。
【0198】6-(5-オキソペンチル)アミノペニシラン酸(化合物1、図18): (+)6-アミノペニシラン酸(1.08 g、5 mmol)を水-メタノール(50ミリリットル)
に溶解し、重炭酸ナトリウム水溶液でpHを8〜9に調節する。次いで、新たに蒸留
したグルタルジアルデヒド(10.0 g、100 mmol)を過剰量添加する。混合物を室温
にて1時間攪拌し、溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真空
下で乾燥させ、塩化メチレンで洗浄し、真空下で再度乾燥させる。この材料をそ
れ以上精製することなく、次のステップで使用する。
【0199】6-(5-ビオシチンヒドラジドペンチル)アミノペニシラン酸(aminopenicillanic)( 化合物2、図18): この材料は、Greg T. Hermanson, Bioconjugate Techniques(Academic Press,
New York: 1996)(「Hermanson」)に記載の一般的な方法により調製される。上
記反応で得た粗6-(5-オキソペンチル)アミノペニシラン酸(化合物1、図18)を水
に溶解し、pHを重炭酸ナトリウム水溶液で8〜9に調節する。これに、ビオシチン
-LC-ヒドラジド(1.93 g、5 mmol)を添加する。混合物を室温にて1時間攪拌し、
次いで氷浴中で冷却する。排気フード(fume hood)内で作業し、わずかに過剰量
のメタノール中シアノ水素化ホウ素ナトリウム(sodium cyanoborohydride)溶液(
3 mmol)を添加する。混合物を0℃にて10分間攪拌し、pHが約7になり、ガス発生
が収まるまで、酢酸-水を添加して過剰量のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを破
壊(destroy)する。溶媒をロータリーエバポレーター上で除去し、残留物を真空
下で乾燥させる。この材料を、酢酸エチル-塩化メチレン-トリエチルアミンを溶
出液として用いたシリカゲル上での高性能液体クロマトグラフィー、水-アセト
ニトリルを溶出液として用いた逆相高性能液体クロマトグラフィー、または硫酸
イオンもしくはカルボン酸イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィ
ーにより精製する。
【0200】6-(5-(6-(ビオチニル)-アミノカプロイル)-ヒドラジドペンチル)-アミノペニシ
ラン酸(aminopenicillanic)(化合物3、図18): この材料は、Hermansonに記載の一般的な方法により調製される。上記反応で
得た粗6-(5-オキソペンチル)アミノペニシラン酸(化合物1、図18)を水に溶解し
、pHを重炭酸ナトリウム水溶液で8〜9に調節する。これに、ビオチン-LC-ヒドラ
ジド(1.86 g、5 mmol)を添加する。混合物を室温にて1時間攪拌し、次いで氷浴
中で約0℃まで冷却する。排気フード内で作業し、わずかに過剰量のメタノール
に溶解したシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液(3 mmol)を添加する。混合液を0
℃で10分間攪拌し、pHが約7になり、ガス発生が収まるまで、酢酸-水を添加し
て過剰量のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを破壊する。溶媒をロータリーエバポ
レーター上で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。この材料を、酢酸エチル-
塩化メチレン-トリエチルアミンを溶出液として用いたシリカゲル上での高性能
液体クロマトグラフィー、水-アセトニトリルを溶出液として用いた逆相高性能
液体クロマトグラフィー、または硫酸イオンもしくはカルボン酸イオン交換樹脂
を用いたイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。
【0201】6-(6-(ビオチニル)-アミノカプロイル)アミノペニシラン酸(6(LC-ビオチン)アミ ノペニシラン酸(化合物4、図19): この材料は、Hermansonに記載の一般的な方法により調製される。(+)6-アミノ
ペニシラン酸(1.08 g、5 mmol)を水-メタノール(50ミリリットル)に溶解し、pH
を重炭酸ナトリウム水溶液で8〜9に調節する。メタノールに溶解したNHS-LC-ビ
オチン(2.28 g、5 mmol)を添加し、混合物を、1時間または薄層クロマトグラフ
ィーが反応終了を示すまで攪拌する。重炭酸ナトリウム溶液を添加して、pHを約
8に維持する。溶媒を真空下で除去する。あるいはまた、クロロホルムに溶解し
たNHS-LC-ビオチン(2.28 g、5 mmol)の溶液に、クロロホルムに溶解した無水ト
リエチルアミン(0.5 g、5 mmol)および(+)6-アミノペニシラン酸(1.08 g、5 mmo
l)の溶液を添加する。溶液を、1時間または薄層クロマトグラフィーが反応終了
を示すまで攪拌し、その後溶媒を真空下で除去する。これらの反応から得られた
残留物を1%酢酸水溶液、次いで水で洗浄し、その後真空下で乾燥させる。この
生成物を、水-アセトニトリルの直線勾配を溶出液として用いた逆相高性能液体
クロマトグラフィー、塩化メチレン-酢酸エチル-トリエチルアミンを溶出液とし
て用いたシリカゲル上での高性能液体クロマトグラフィー、または硫酸イオンも
しくはカルボン酸イオン交換樹脂を用いた高性能イオン交換液体クロマトグラフ
ィーにより精製する。
【0202】6-(4-(2-(6-(ビオチニル)-アミノヘキシルアミノ)-アセト)-チオブチリルイミダ ート(thiobutyrylimidato)-アミノペニシラン酸(化合物5、図20): この材料は、Hermansonに記載の一般的な方法により調製される。メタノール-
水に溶解した(+)6-アミノペニシラン酸(1.08 g、5 mmol)の溶液に、トラウト試
薬(Traut’s reagent)(0.69 g、5 mmol)を添加する。反応物を室温にて1時間攪
拌し、次いでメタノールに溶解したN-ヨードアセチル-N-ビオチニルヘキシレン
ジアミン(ヨードアセチル-LC-ビオチン、2.55 g、5 mmol)を添加し、反応物をさ
らに1時間または薄層クロマトグラフィーが反応終了を示すまで攪拌する。次い
で、溶媒を真空下で除去し、この生成物を、クロロホルム-酢酸エチル-トリエチ
ルアミンを溶出液として用いたシリカゲル上での高性能液体クロマトグラフィー
、水-アセトニトリルの直線勾配を溶出液として用いたシリカゲル上での逆相高
性能液体クロマトグラフィー、または硫酸イオンもしくはカルボン酸イオン交換
樹脂を用いた高性能イオン交換液体クロマトグラフィーにより精製する。
【0203】5.5 実施例5:ビオチン/ペニシリンコンジュゲートの活性 周辺質空間中に発現され、分泌されるか、又はアスパラギン酸受容体の膜貫通
部分との融合タンパク質として外側細胞膜に送達されるクローン化された鶏のア
ビジンを含む大腸菌のK12株に対する抗菌活性について、ビオチン-ペニシリンコ
ンジュゲートを試験することができる。この試験系では、アビジンはベクターの
受容体であり、ビオチンはベクターであり、ペニシリンは抗生物質ファーマコフ
ォアである。アビジンの遺伝子は、プラスミドによって担持され、増殖培地に添
加される物質によって、このタンパク質の高濃度での発現が誘導される。増殖培
地のみにおいて、一連の徐々に増加する濃度のビオチン-ペニシリンコンジュゲ
ートを用いて、細菌の増殖の阻害試験を行う。同様に、一連の徐々に増加する濃
度の、コンジュゲートを形成していないペニシリン誘導体(アンピシリン)も試
験する。十分に高濃度の遊離ビオチンを培地に添加して、ビオチン-ペニシリン
コンジュゲートの存在下で、細菌によって発現される全てのアビジンを飽和させ
る対照実験も行う。また、一連の徐々に増加する濃度のビオチン-ペニシリンコ
ンジュゲートの存在下で、細菌の増殖度を測定し、同様の測定を、一連の徐々に
増加する濃度の、コンジュゲートを形成していないペニシリン誘導体(アンピシ
リン)を用いて行う。さらに、クローン化された鶏アビジンを発現しない大腸菌
K12株に対して、該コンジュゲートを試験する。最後に、ビオチン-ペニシリンコ
ンジュゲートをβ-ラクタマーゼで予備処理した後、上記のように試験する。ま
た、双方の場合において、アンピシリンを用いて平行実験を行う。各場合におい
て、徐々に増加する濃度のコンジュゲート又はコンジュゲートを形成していない
抗生物質の存在下での細菌の増殖を測定し、添付の図面(図21)に見られる曲線と
してプロットする。
【0204】 アビジンを発現する大腸菌株については、コンジュゲートを形成していないペ
ニシリン(アンピシリンなど)は予測される濃度範囲(約1〜10μg/ml)で細菌の増
殖を阻害するはずである。ビオチン-ペニシリンコンジュゲートは、有意により
低い濃度範囲(10〜100倍低い)で細菌の増殖を阻害するはずである。飽和濃度の
ビオチンの存在下で、又はクローン化された鶏アビジンを発現しない大腸菌K12
株を用いる場合、ビオチン-ペニシリンコンジュゲートはコンジュゲートを形成
していないペニシリンとほぼ同じ濃度範囲で細菌の増殖を阻害するはずである。
β-ラクタマーゼで予備処理した場合、ビオチン-ペニシリンも、コンジュゲート
を形成していないペニシリンも、増殖の阻害を全く示さないはずである。
【0205】5.6 実施例6:ファーマコフォアとしてのトリメトプリム誘導体の合成 2,6-ジメトキシ-4-((N,N-ジメチルアミノ)メチル)フェノールヒドロクロリド( 化合物1、図22) :この物質を、Barbara Roth, Justina Z. Strelitz, 及びBarba
ra S. Rauckman, J. Med. Chem. 23:379-84(1980)の方法によって調製する。か
くして、2,6-ジメチルフェノール(92 g, 0.6 mmol)を、2N 塩酸(315 ml, 0.63 m
mol)、25% 水性ジメチルアミン(135 g, 0.75 mmol)、及び37%ホルムアルデヒ
ド(81 g, 1 mol)の混合物にゆっくりと添加する。この反応は発熱反応であり、
反応混合物は紫色に変化する。さらにジメチルアミン溶液(45 g、0.25 mmol)を
添加し、混合物を室温にて一晩放置する。減圧下で溶媒を除去し、得られる褐色
の固体をジエチルエーテルで洗浄した後、エタノール(1.5リットル)中に溶解し
、結晶化させる。これにより、精製産物(約122 g、82%)が得られ、その融点は
約226〜227℃であると評価される。
【0206】 2,4-ジアミノ-5-(3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジル)ピリミジン(化合物2 、図22) :この物質を、Roth, Strelitzらの方法によって調製する。かくして、
エチレングリコール(300 ml)中に溶解した2,4-ジアミノピリミジン(22 g, 0.2 m
ol)及び2,6-ジメトキシ-4-((N,N-ジメチルアミノ)-メチル)フェノールヒドロク
ロリド(化合物1、図22、49.5 g、0.2 mol)に、水酸化ナトリウム(11 g、0.203 m
ol)を添加する。この混合物を窒素下で3時間、攪拌しながら150〜160℃に加熱す
る。反応混合物を冷却し、減圧下で溶媒を除去する。残余の油状物を水、次いで
アセトンで洗浄する。これにより褐色の沈殿物が得られる。これをジメチルホル
ムアミドから再結晶すると、白色の板状結晶(約23 g、42%)が得られる。融点は
265〜267℃である。
【0207】 2,4-ジアミノ-5-(3,5-ジメトキシ-4-(3-クロロプロポキシ)ベンジル)ピリミジ ン(化合物3、図22) :この物質をBarbara Roth, Edward Aig, Barbara S. Rauckm
an, Justina Z. Strelitz, Arthur P. Phillips Robert Ferone, S.R.M. Bushby
,及びCarl W. Sigel, J. Med. Chem. 24:913-941(1981)の方法によって調製する
。かくして、2,4-ジアミノ-5-(3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジル)ピリミジ
ン(化合物2、図22、3.5 g、12.7 mmol)を、50℃に加温することにより、窒素下
で乾燥ジメチルスルホキシド(50 ml)に溶解する。溶液を冷却した後、ナトリウ
ムメトキシド(0.69 g、12.7 mmol)を窒素下で添加し、これが溶解したとき、1,3
-ジクロロプロパン(1.44 g、12.7 mmol)を窒素下で添加する。反応混合物を窒素
下で4時間放置した後、酢酸で中和する。減圧下で溶媒を除去し、残留物を水酸
化ナトリウム水溶液、次いで、水で洗浄する。減圧下で生成物を乾燥させ、場合
によっては高速液体クロマトグラフィーによって精製する。融点は163〜164℃で
ある。
【0208】 2,4-ジアミノ-5-(3,5-ジメトキシ-4-(3-ブロモプロポキシ)-ベンジル)ピリミ
ジン(化合物4、図22):この化合物を、1,3-ジブロモプロパン(2.57 g、12.7 mmo
l)を用いて、上記方法によって調製する。
【0209】 2,4-ジアミノ-5-(3,5-ジメトキシ-4-(3-メルカプトプロポキシ)-ベンジル)ピ
リミジン(化合物5、図22):エタノール又はジメチルホルムアミド(50 ml)に溶解
した、2,4-ジアミノ-5-(3,5-ジメトキシ-4-(3-クロロプロポキシ))-ベンジル)ピ
リミジン(化合物3、図22、1.06 g、3 mmol)又は2,4-ジアミノ-5-(3,5-ジメトキ
シ-4-(3-ブロモプロポキシ))-ベンジル)ピリミジン(化合物4、図17、1.19 g、3
mmol)に、同じ溶媒に溶解した硫化ナトリウム(2.34 g、30 mmol)を添加する。混
合物を数時間、室温にて放置した後、減圧下で溶媒を除去する。生成物を水で洗
浄し、減圧下で乾燥させ、高速液体クロマトグラフィーによって精製することが
できる。
【0210】5.7 実施例7:ファーマコフォアとしてのテトラサイクリン誘導体(細菌のリボソ ーム阻害剤)の合成 13-(3-メルカプトプロピルチオ)-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン( 化合物1、図23) :この化合物を、Levyの方法と同様の方法によって調製する。か
くして、エタノール(100 ml)に溶解したメタサイクリンヒドロクロリド(3.0 g、
6.2 mmol)及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、0.25 g)及び1,3-プロパ
ンチオール(6.7 g、62 mmol)の混合物を、窒素下で6時間、還流しながら加熱す
る。反応混合物を冷却し、濾過し、減圧下で1/5容量にまで濃縮する。冷エチル
エーテルを添加することにより粗生成物を沈殿させた後、エチルエーテルで洗浄
する。次いで、それをpH 5.0の温水に溶解し、クロロホルム中に抽出する。溶媒
を除去し、メタノール中の活性炭を用いて生成物を処理する。水-アセトニトリ
ルの直線勾配を用いる逆相高速液体クロマトグラフィーにより、生成物をさらに
精製する。
【0211】 13-(4-メルカプト-2,3-ジヒドロキシブチルチオ)-5-ヒドロキシ-6-デオキシテ トラサイクリン(化合物2、図23) :この化合物を、ジチオトレイトール(4.79 g、
31 mmol)を用いて上記のように調製する。
【0212】 9-ニトロ-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合物3、図24):この
化合物を、Barden, T.C.ら、J. Med. Chem. 37:3205-3211(1994)の方法により調
製する。かくして、デオキシサイクリンヒドロクロリド(14.5 g、30.1 mmol)を
、濃硫酸(50 ml)にゆっくりと添加する。気体の発生が停止した後、得られた橙
色の溶液を氷冷エチルエーテル(1リットル)中にゆっくりと滴下し、得られた亜
ジチオン酸塩を濾過により回収し、エーテルで洗浄し、窒素下で乾燥する。橙色
の粉末を室温にて硫酸(70 ml)に溶解し、2分間かけて硝酸ナトリウム(4.0 g、47
.0 mmol)を添加する。反応物を3時間攪拌した後、氷冷され、攪拌されたエチル
エーテル(2リットル)中に滴下する。濾過により沈殿物を回収する。沈殿物をエ
ーテルで洗浄し、空気乾燥させると、橙色の粉末が得られる。粗物質をさらに精
製せずに用いる。
【0213】 9-アミノ-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合物4、図24):この
化合物を、Bardenらの方法により調製する。かくして、上記の調製により得られ
た粗9-ニトロ-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合物3、図24)を、
少量のメタノールに溶解し、500ミリリットルのPaar水素化ボトル中に濾過する
。メタノールを用いて溶液を200 mlに希釈し、活性炭(1.0 g)上の10% Pdを添加
する。この系に、水素を用いて50 psiの圧力をかけ、ボトルを2時間振とうする
。濾過により触媒を除去し、濾液をメタノールで300 mlに希釈した後、攪拌した
エチルエーテル中に滴下すると、明褐色の粉末(約16 g)が得られる。Hamilton P
RP-1カラムと、0.1%トリフルオロ酢酸を添加した水-アセトニトリルの直線勾配
を用いる高速液体クロマトグラフィーにより、生成物を精製する。
【0214】 9-ブロモアセトアミド-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合物5、 図24) :この化合物を、Bardenらの方法により調製する。かくして、9-アミノ-5-
ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合物4、図24、3.43 g、7.47 mmol)
を、室温にて、N-メチルピロリジン-2-オン(40 ml)中で炭酸水素ナトリウム(2.0
g、23.8 mmol)と混合する。ブロモアセチルブロミド(0.75 ml、8.62 mmol)を添
加し、溶液を30分間攪拌する。ブロモアセチルブロミド(0.4 ml、4.6 mmol)及び
炭酸水素ナトリウム(1.0 g、11.9 mmol)をさらに添加し、攪拌を2時間継続する
。次いで、攪拌したエチルエーテル(1.5リットル)中に反応混合物を濾過し、粗
生成物(約4 g)を濾過により黄色の粉末として回収する。Hamilton PRP-1カラム
と、0.1%トリフルオロ酢酸を添加した水-アセトニトリルの直線勾配を用いる高
速液体クロマトグラフィーにより、生成物を精製する。
【0215】 9-(4-チオブチリルイミダト)-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化
合物6、図24):クロロホルム又はメタノールに溶解した9-ブロモアセトアミド-5
-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合物5、図24、0.58 g、1.0 mmol)
に、過剰の無水アンモニアを添加する。室温にて1時間、溶液を放置した後、減
圧下で溶媒を除去する。残留物をアセトン-水で洗浄し、臭化アンモニウムを除
去する。次いで、それを減圧下で乾燥する。あるいは、この物質を、溶出剤とし
てクロロホルム-メタノールを用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフ
ィーにかけ、減圧下で溶媒を除去する。次いで、該物質を水又はメタノールに溶
解し、2-イミノチオラン(Traut's試薬、0.30 g、2.2 mmol)を添加する。室温に
て1時間、溶液を攪拌し、減圧下で溶媒を除去する。粗物質をアセトン、次いで
エチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させる。Hamilton PRP-1カラムと、0.1
%トリフルオロ酢酸を添加した水-アセトニトリルの直線勾配を用いる高速液体
クロマトグラフィーにより、生成物を精製する。
【0216】 9-(4-アミノブチルアミノ)-5-ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合
物7、図24):メタノール又はクロロホルムに溶解した9-ブロモアセトアミド-5-
ヒドロキシ-6-デオキシテトラサイクリン(化合物5、図24、0.58 g、1.0 mmol)に
、1,4-ジアミノブタン(0.88 g、10 mmol)を添加する。室温にて1時間、溶液を放
置した後、減圧下で溶媒を除去する。残留物をアセトン-水で洗浄した後、減圧
下で乾燥させる。あるいは、この物質を、溶出剤としてクロロホルム-メタノー
ルを用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにかけ、減圧下で溶媒
を除去する。Hamilton PRP-1カラムと、0.1%トリフルオロ酢酸を添加した水-ア
セトニトリルの直線勾配を用いる高速液体クロマトグラフィーにより、生成物を
精製することができる。
【0217】 N-ヒドロキシメチルマレイミド(化合物8、図25):この物質を、Martell, M.J.
ら、J. Med. Chem. 10:359-363(1967)(P.O. Tawney, P.O.ら、J.O.C. 26:15(196
1)を参照)に記載の方法により調製する。かくして、マレイミド(0.97 g、10 mmo
l)及び40%水性ホルムアルデヒド(0.81 ml、11 mmol)の混合物に、水酸化ナトリ
ウム水溶液(pHを約7.5に調整するための0.3 ml)を添加する。固体を溶解させ、
室温にて3時間、溶液を放置する。次いで、減圧下で溶媒を除去して、油状物に
し、これを結晶化することができる。昇華により生成物をさらに精製することが
できる。
【0218】 7-スクシンイミドメチル-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン(化合物9、 図25) :この物質を、Martellらの方法により調製する。かくして、96%硫酸(5 m
l)中に溶解した453 mg(1.0 mmol)の6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリンヒ
ドロクロリドの溶液を、N-ヒドロキシメチルマレイミド(化合物8、図25、190 mg
、1.5 mmol)で処理する。室温にて35分間、溶液を攪拌した後、乾燥エーテル(15
0 ml)中に注ぎ入れる。得られる沈殿物を濾過により回収し、乾燥エーテルでよ
く洗浄し、減圧下で乾燥させる。沈殿物を水(18 ml)に溶解し、1 N水酸化ナトリ
ウムを用いてpHを5.0に調整する。得られた沈殿物を濾過し、水で2回洗浄し(各1
ml)、減圧下で乾燥させる。水-アセトニトリルの直線勾配を用いる逆相高速液
体クロマトグラフィーにより、生成物を精製することができる。
【0219】 7-(3-(3-メルカプトプロピル)チオ)スクシンイミドメチル-6-デメチル-6-デオ キシテトラサイクリン(化合物10、図25) :メタノール-クロロホルム(50 ml)中の
7-スクシンイミドメチル-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン(化合物9、図
25、0.26 g、0.5 mmol)の溶液に、1,3-プロパンジチオール(0.54 g、5.0 mmol)
を添加する。室温にて3時間、又は薄層クロマトグラフィーにより反応が完了し
たことが示されるまで、この溶液を攪拌し、減圧下で溶媒を除去する。残留物を
アセトンで洗浄し、減圧下で乾燥させる。水-アセトニトリルの直線勾配を用い
る逆相高速液体クロマトグラフィーにより、この物質を精製する。
【0220】 7-(3-(4-メルカプト-2,3-ヒドロキシブチル)チオ)スクシンイミドメチル-6-デ メチル-6-デオキシテトラサイクリン(化合物11、図25) :メタノール-クロロホル
ム(50 ml)中の7-スクシンイミドメチル-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリ
ン(化合物9、図25、0.26 g、0.5 mmol)の溶液に、ジチオトレイトール(0.77 g、
5.0 mmol)を添加する。室温にて3時間、又は薄層クロマトグラフィーにより反応
が完了したことが示されるまで、この溶液を攪拌し、減圧下で溶媒を除去する。
残留物をアセトンで洗浄し、減圧下で乾燥させる。水-アセトニトリルの直線勾
配を用いる逆相高速液体クロマトグラフィーにより、残留物を精製する。
【0221】5.8. 実施例8:ベクターとしてのβ-ガラクトシダーゼ機構に基づく阻害剤(MBI) の合成 1-ブロモ-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-ガラクトース(化合物1、図26):この
物質を、Halazy, S.ら、Bioorganic Chem. 18:330-344(1990)の方法と類似の方
法により調製する。かくして、1,2,3,4,6-ペンタアセチル-β-D-ガラクトース(
化合物1、図26、28.1 g、72 mmol)に、氷冷した33%臭化水素酸(275 ml)を添加
する。室温にて3時間、反応混合物を攪拌した後、クロロホルム(3 x 150 ml)で
抽出する。合わせた抽出物を、冷水で数回洗浄し(pHが6〜7に達するまで)、硫酸
ナトリウムで乾燥させた後、濾過する。減圧下で溶媒を除去すると、褐色の粘着
性の油状物(約29 g)が得られ、これをさらに精製せずに用いる。
【0222】 1-(2-オキソメチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-ガラ クトース(化合物2、図26) :この物質を、Halazy, S.ら、Bioorganic Chem. 18:3
30-344 (1990)の方法に従うJanda, K.D.ら、Science 275:945-948 (1997)の方法
により調製する。かくして、ジクロロメタン中の5-ニトロサリチルアルデヒド(7
.0 g、42 mmol)の溶液を、5%水酸化ナトリウム(70 ml)及び臭化テトラメチルア
ンモニウム(2.26 g、7 mmol)と共に、室温にて激しく攪拌する。この攪拌混合物
に、ジクロロメタン(20 ml)に溶解した1-ブロモ-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-
ガラクトース(化合物1、図26、11.5 g、27.9 mmol)を添加する。室温にて40時間
、攪拌を継続する。次いで、2相を分離させ、有機相を5%水酸化ナトリウム水溶
液(2 x 20 ml)で洗浄した後、水で数回洗浄する。その後、それを硫酸ナトリウ
ムで乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去する。粗生成物(約14 g)を、溶出剤
として7:3の比率の石油エーテル:エチルエーテルを用いてシリカゲル上でクロマ
トグラフィーにかける。これにより精製産物(約7.8 g、55%)が得られる。
【0223】 1-(2-ジフルオロメチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D- ガラクトース(化合物3、図26) :この物質を、S. Halazyらの方法に従うJandaら
の方法によって調製する。かくして、0℃にて、無水ジクロロメタン(4 ml)中の1
-(2-オキソメチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-ガラク
トース(化合物2、図26、1.0 g、2.0 mmol)の溶液に、ジエチルアミノサルファー
トリフルオリド(DAST、1 ml)をゆっくりと添加する。20℃にて18時間、反応混合
物を攪拌し、メタノール(1 ml)を用いて、0℃にてゆっくりとクエンチングし、
減圧下で溶媒を蒸発させる。残留物を、溶出剤として8:2の比率の石油エーテル:
酢酸エチルを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにかける。これにより、
精製産物(約0.99 g、95%)が得られる。
【0224】 1-(2-ジフルオロメチル-4-アミノフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D- ガラクトース(化合物4、図26) :この物質を、Jandaらの方法によって調製する。
かくして、1-(2-ジフルオロメチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチ
ル-β-D-ガラクトース(化合物3、図22、1.04 g、2 mmol)を酢酸エチルに溶解し
、500ミリリットルのPaar水素化ボトルに充填する。この溶液に活性炭(0.15 g)
上の10%Pdを添加する。この系に水素を用いて50 psiの圧力をかけ、ボトルを2
時間振とうする。濾過により触媒を除去し、減圧下で溶媒を除去すると、残留物
が得られる。残留物を、溶出剤として石油エーテル:酢酸エチルを用いてシリカ
ゲル上でクロマトグラフィーにかける。これにより、精製産物(約0.92 g、95%)
が得られる。
【0225】 1-(2-ジフルオロメチル-4-アミノフェノキシ)-β-D-ガラクトース(化合物5、
図26):この物質を、S. Halazyらの方法に従うJandaらの方法によって調製する
。かくして、1-(2-ジフルオロメチル-4-アミノフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセ
チル-β-D-ガラクトース(化合物4、図26、0.86 g、1.75 mmol)を20℃にて、ナト
リウムメトキシド(13 mg)を添加したメタノール(15 ml)に溶解する。反応混合物
を2時間放置した後、1N塩酸(0.2 ml)で中和する。減圧下で濾液から溶媒を除去
する。これにより、生成物(約0.54 g、95%)が得られる。溶出剤として水-アセ
トニトリルの直線勾配を用いる逆相クロマトグラフィーにより、この物質をさら
に精製することができる。
【0226】 1-(2-ジフルオロメチル-4-(6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)-ヘキサノイル)
アミノ)ヘキサノイル)-アミドフェノキシ)-β-D-ガラクトース(化合物6、図26)
:1-(2-ジフルオロメチル-4-アミノフェノキシ)-β-D-ガラクトース(化合物5、
図26、0.32 g、1 mmol)を、メタノール-水に溶解するか、又はそれを100 mM炭酸
水素ナトリウム溶液に溶解し、メタノールを添加する。次いで、スクシンイミジ
ル6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)-ヘキサノイル)アミノ)ヘキサノエート(0.39
g、1 mmol)を添加し、メタノール又はエタノールに溶解する。溶液を室温にて
攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反応の進行を監視する。減圧下で溶媒を
除去し、残留物を減圧下で乾燥させる。溶出剤として水-アセトニトリルの直線
勾配を用いる逆相クロマトグラフィーにより、この物質をさらに精製することが
できる。
【0227】 1-(2-ジフルオロメチル-4-(6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)-ヘキサノイル)
アミノ)ヘキサノイル)-アミドフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-ガラ
クトース(化合物7、図26):1-(2-ジフルオロメチル-4-アミノフェノキシ)-2,3,4
,6-テトラアセチル-β-D-ガラクトース(化合物4、図22、0.52 g、1 mmol)をクロ
ロホルムに溶解する。次いで、スクシンイミジル6-(6-(((ヨードアセチル)アミ
ノ)-ヘキサノイル)アミノ)ヘキサノエート(0.39 g、1 mmol)を添加する。溶液を
室温にて攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反応の進行を監視する。減圧下
で溶媒を除去し、減圧下で残留物を乾燥させる。溶出剤として石油エーテル-ク
ロロホルムを用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより、この物質をさ
らに精製する。
【0228】5.9. 実施例9:MBI/BGMコンジュゲートの合成 トリメトプリム-β-ガラクトシダーゼMBI及びテトラサイクリン-β-ガラクト
シダーゼMBIのコンジュゲートを、ベクターとしてβ-ガラクトシダーゼ機構(BGM
)に基づく阻害剤に結合させることができるファーマコフォアとして用いて、本
発明のVLPコンジュゲートを形成させることができる。
【0229】 1-(2-ジフルオロメチル-4-(6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノイル)ア
ミノ)ヘキサノイル)アミドフェノキシ)-β-D-ガラクトース(化合物6、図26)と、
テトラサイクリンのチオールもしくはアミノ誘導体(化合物2、図25、化合物6、
図24、化合物7、図24、化合物10、図25、化合物11、図25)又はトリメトプリム(
化合物5、図22)との結合を、以下の手順により達成することができる。
【0230】 1-(2-ジフルオロメチル-4-(6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)-ヘキサノイル)
アミノ)-ヘキサノイル)-アミドフェノキシ)-β-D-ガラクトース(0.72 g、1 mmol
)をメタノールもしくはメタノール-水もしくはジメチルエチレングリコールに溶
解し、テトラサイクリンチオール誘導体、テトラサイクリンアミノ誘導体、又は
トリメトプリムチオール誘導体を直ちに添加し、適当な溶媒に溶解する。室温に
て、典型的には1時間、反応混合物を攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反
応の進行を監視する。減圧下で最低限に加熱しながら溶媒を除去し、残留物を減
圧下で乾燥させる。溶出剤として水-アセトニトリルの直線勾配を用いる逆相高
速液体クロマトグラフィーにより、又は硫酸もしくはカルボン酸のイオン交換樹
脂を用いる高速イオン交換液体クロマトグラフィーにより、生成物を精製する。
粗出発物質を当該カップリング反応に用いることもできる。
【0231】 1-(2-ジフルオロメチル-4-(6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)-ヘキサノイル)
アミノ)ヘキサノイル)-アミドフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-ガラ
クトース(化合物7、図26)と、テトラサイクリンのチオール誘導体(化合物2、図2
3、化合物6、図24、化合物10、図25、化合物11、図25)又はトリメトプリム(化合
物5、図22)との結合を、以下の手順により達成することができる。
【0232】 1-(2-ジフルオロメチル-4-(6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)-ヘキサノイル)
アミノ)ヘキサノイル)-アミドフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-ガラ
クトース(0.89 g、1 mmol)をクロロホルム又はメタノール又はジメチルエチレン
グリコールに溶解し、テトラサイクリンのチオール誘導体又はトリメトプリムチ
オール誘導体を直ちに添加し、適当な溶媒に溶解する。室温にて、典型的には1
時間、反応混合物を攪拌し、薄層クロマトグラフィーにより反応の進行を監視す
る。減圧下で最低限に加熱しながら溶媒を除去し、残留物を減圧下で乾燥させる
。シリカゲル上での高速液体クロマトグラフィー、溶出剤として水-アセトニト
リルの直線勾配を用いる逆相高速液体クロマトグラフィー、又は硫酸もしくはカ
ルボン酸のイオン交換樹脂を用いる高速イオン交換液体クロマトグラフィーによ
り、生成物を精製することができる。精製の前に、生成物を以下のように脱アシ
ル化することもできる。粗出発物質を当該カップリング反応に用いることもでき
る。
【0233】 テトラサイクリンのチオールまたはアミノ誘導体(化合物2、図23、化合物6、
図24、化合物10、図25、化合物11、図25)又はトリメトプリム(化合物5、図22)と
の1-(2-ジフルオロメチル-4-(6-(6-(((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノイル)ア
ミノ)ヘキサノイル)-アミドフェノキシ)-2,3,4,6-テトラアセチル-β-D-ガラク
トース(化合物7、図26)のコンジュゲートの脱アシル化を、以下のように行う。
上記のカップリング反応から得られた物質をナトリウムメトキシド(約0.15当量)
を添加した少量のメタノール又はメタノール-水に溶解する。反応混合物を2時間
放置し、定期的にpHをチェックし、必要に応じて、さらにナトリウムメトキシド
を添加することにより、塩基性を維持するように調整する。次いで、1N塩酸を用
いて反応物を中和し、濾過する。減圧下で濾液から溶媒を除去すると、粗生成物
が得られ、溶出剤として水-アセトニトリルの直線勾配を用いる逆相高速液体ク
ロマトグラフィー、又は硫酸もしくはカルボン酸のイオン交換樹脂を用いる高速
イオン交換液体クロマトグラフィーにより、これを精製することができる。
【0234】5.10. 実施例10:MBI/BGMコンジュゲートの特性 β-ガラクトシダーゼの機構に基づく阻害剤(又はMBI)とテトラサイクリン又は
トリメトプリムとのコンジュゲートを、細菌の細胞質ゾル中で可溶性の形態で発
現されるクローン化されたβ-ガラクトシダーゼを含む大腸菌K12株に対する抗菌
活性について試験することができる。この試験系においては、β-ガラクトシダ
ーゼはベクター受容体であり、MBIガラクトース類似体はベクターであり、テト
ラサイクリン又はトリメトプリムは抗生物質ファーマコフォアである。β-ガラ
クトシダーゼの遺伝子はプラスミドによって担持され、増殖培地に添加される物
質によって高濃度での該酵素の発現が誘導される。増殖培地のみにおいて、一連
の徐々に増加する濃度のMBIガラクトース類似体-抗生物質コンジュゲートを用い
て、細菌の増殖の阻害試験を行う。平行して、一連の徐々に増加する濃度の、コ
ンジュゲートを形成していない抗生物質(テトラサイクリン又はトリメトプリム
)も試験する。十分に高濃度のラクトース、又は抗生物質に結合していないガラ
クトース類似体を培地に添加して、ベクター-抗生物質コンジュゲートの存在下
で、細菌によって発現される全てのβ-ガラクトシダーゼを飽和させる対照実験
も行う。また、一連の徐々に増加する濃度のMBIガラクトース類似体-抗生物質コ
ンジュゲートの存在下で、細菌の増殖度を測定し、それと平行して、一連の徐々
に増加する濃度の、コンジュゲートを形成していない抗生物質(テトラサイクリ
ン又はトリメトプリム)を試験する。さらに、該コンジュゲートを、β-ガラク
トシダーゼを発現しない大腸菌K12株に対して試験し、それと平行して、コンジ
ュゲートを形成していない抗生物質(テトラサイクリン又はトリメトプリム)も
試験する。各場合において、徐々に増加する濃度の該コンジュゲート、又はコン
ジュゲートを形成していない抗生物質の存在下での細菌の増殖を測定し、曲線と
してプロットする。算出された曲線を図21に示す。
【0235】 β-ガラクトシダーゼを発現する大腸菌株については、コンジュゲートを形成
していない抗生物質は、予想される濃度範囲(テトラサイクリンについては約1〜
10μg/ml、トリメトプリムについては0.01〜0.1μg/ml)で細菌の増殖を阻害する
はずである。MBIガラクトース類似体-抗生物質コンジュゲートは、有意により低
い濃度範囲(10〜100倍低い)で細菌の増殖を阻害するはずである。飽和濃度のラ
クトース、もしくは抗生物質に結合していないガラクトース類似体の存在下で、
又はβ-ガラクトシダーゼを発現しない大腸菌K12株を用いると、MBIガラクトー
ス類似体-抗生物質コンジュゲートは、それぞれのコンジュゲートを形成してい
ない抗生物質とほぼ同じ濃度範囲で細菌の増殖を阻害するはずである。
【0236】5.11. 実施例11:抗生物質活性の測定 各VLPコンジュゲートの抗生物質活性の測定を、以下の方法を用いて、いくつ
かの代表的な、非病原性のグラム陽性及びグラム陰性の細菌株に対して実施する
。実際の病原体に対して増強された抗生物質活性を有すると予想される化合物に
ついては、これらの測定は予備スクリーニング手順を構成し得る。
【0237】 冷凍培養物として保存された細菌を、必要な抗生物質を含むLB寒天プレート上
にストリークし、培養器中、37℃にて増殖させる。測定の前日に、個々のコロニ
ーを拾い、これを用いて、培養チューブ又はエルレンマイヤーフラスコ中、必要
な抗生物質又は補助栄養物質を含むLB培地(5もしくは25 ml)に接種する。これら
を37℃にて一晩振とうして、飽和培養物を生産する。測定の日に、これらの培養
物のアリコート(0.5 ml〜1 ml)を用いて、培養チューブ又は振とうフラスコ中、
必要な抗生物質又は補助栄養物質を含む新鮮な培地に接種し、550 nmで0.5の吸
光度(1 cm経路長のキュベット)になるまで培養物を増殖させる。次いで、この対
数増殖期の培養物を、以下の手順で接種原として用いる。いくつかの実験につい
ては、培養物を飽和するまで増殖させ、接種原として用いることもできる。
【0238】方法A 水又は適当な有機溶媒中で、抗生物質又は試験物質の連続希釈物を作製する。
最終的な抗生物質又は試験物質の濃度を形成するために、これらの希釈物のアリ
コートを、実験により必要とされるように、必要な追加栄養物質又は抗生物質も
しくは試験物質の活性の活性化因子もしくは阻害剤を含有するLB培地(5又は10 m
l)を含む培養チューブに添加する。細菌培養物のアリコート(50〜100μl)をチュ
ーブに接種し、通常37℃にてインキュベーター中で振とうする。数時間の間隔で
、数日までの期間、細菌の増殖についてそれらを視覚に基づいてスコア化する。
さらに、アリコートを回収し、細胞濃度のより正確な分光測光法的測定のために
、550 nmでの吸光度を測定することもできる。
【0239】方法B 水又は適当な溶媒中で、抗生物質又は試験物質の連続希釈物を作製する。実験
により必要とされるように、必要な追加栄養物質又は抗生物質もしくは試験物質
の活性の活性化因子もしくは阻害剤を含有する融解したLB寒天を調製する。それ
を60℃以下に冷却し、予め温めた培養チューブに分注する。各チューブに、抗生
物質又は試験物質の連続希釈物のセットの一つのアリコートを添加する。アリコ
ートをチューブに添加してすぐに、チューブの内容物をボルテックスミキサーを
用いて素早く混合し、ぺトリ皿に注ぐ。これを被覆し、寒天が硬化するまで放置
し、インキュベーター中で手短に乾燥させる。上記のように調製した、細菌培養
物(50〜100μl)のアリコートを、各ペトリ皿中の培地上に塗布し培養器に入れる
。24時間以上の後、各プレート上で増殖する細菌コロニーの数を計数する。
【0240】 増殖静止と反対に、細胞殺傷の程度を測定するために、増殖中又は飽和した細
菌培養物のアリコートを、増殖を停止させるのに十分な濃度の抗生物質又は試験
物質で処理する。インキュベーション期間の後、培養物の各アリコートからの細
胞を遠心分離により回収し、新鮮なLB培地(抗生物質を含まない)中で2回洗浄し
、新鮮なLB培地(抗生物質を含まない、5又は10 ml)中に再懸濁する。次いで、こ
れらの懸濁液のアリコートを、抗生物質を添加していない新鮮なLBプレート上に
塗布する。この実験の対照として、抗生物質又は試験物質を添加していない元の
培養物の一部を取得する。抗生物質又は試験物質で処理した細胞と同じ様式で該
細胞を処理する。37℃にてプレートをインキュベートし、24時間以上の後、各プ
レート上で増殖している細菌コロニーの数を計数する。
【0241】データの解釈 実験データを以下のように解釈する。大腸菌の増殖は、コンジュゲートを形成
していない抗生物質によれば、予想される濃度において阻害されるはずである。
従って、抗生物質及び細菌は正常に振舞う。培地中のコンジュゲートの濃度が十
分に高く、有意な量のベクターがベクター受容体に結合できる場合、該ベクター
によりコンジュゲート分子が(従って、ファーマコフォアが)細菌の増殖を阻害
又は殺傷し得る濃度にまで細菌中に蓄積されるため、大腸菌の増殖は有意に低い
濃度のコンジュゲートにより阻害されるはずである。これはベクター試薬に期待
される効果である。細菌中にベクター受容体がない場合、又はベクター受容体が
コンジュゲートではない分子によって飽和される場合、該コンジュゲートはベク
ター受容体に結合することができないため、周囲の培地中よりも高い濃度にまで
細菌中に蓄積され得ない。これらの条件下では、コンジュゲートが効果を発揮す
る濃度は、ファーマコフォア単独で効果を示す濃度とほぼ同じ濃度であり得る。
最後に、コンジュゲート分子の抗生物質部分(ファーマコフォア)を不活性形態に
変換する場合、該コンジュゲート分子は、細菌の増殖の阻害を示さないと予想さ
れる。これはコンジュゲートのベクター及びリンカー部分が抗生物質活性を有し
ていないことを示す。
【0242】 従って、ベクター試薬は、コンジュゲートを形成していないファーマコフォア
の薬理活性を示すが、コンジュゲートを形成していないファーマコフォアにより
必要とされる濃度よりもかなり低い濃度で薬理活性を示すことが予想される。
【0243】5.12. 実施例12:延長因子結合分子、キロマイシン この実験では、細菌の細胞質中に約10-4Mの濃度で存在する細菌の延長因子EF
Tuをベクター標的として選択する。選択したベクターは、約10-6Mの解離定数で
この延長因子と結合する抗生物質キロマイシンである。キロマイシン自身とほぼ
同じようにEF Tu延長因子と結合する改変分子の設計を可能にするための、キロ
マイシンに関する十分な構造活性相関データが存在する。報告によると、キロマ
イシンは拡散によりグラム陽性細菌の細胞質ゾルへのアクセスを獲得する。コン
ジュゲート中のベクターとして利用すると、ファーマコフォア抗生物質を細菌の
細胞質ゾル中に有効濃度にまで集結できると期待される。しかも、コンジュゲー
トの溶液濃度は、コンジュゲートを形成していないファーマコフォア分子が必要
とする濃度より約100倍低くてよい。
【0244】 この情報と共に、グラム陽性細菌によって引き起こされる疾患状態を考慮に入
れると、キロマイシン - EF Tu(ベクター - ベクター受容体)の対は、グラム
陽性細菌の細菌細胞質ゾル中の多くのファーマコフォアの濃度を増強し得るVLP
コンジュゲートにおける使用のための候補であり得る。細菌感染によって引き起
こされる疾患状態については、可能性のあるファーマコフォアは抗生物質のトリ
メトプリム及びテトラサイクリンであり得る。従って、キロマイシンとこれらの
抗生物質とのコンジュゲートは細菌感染の治療に有用である。
【0245】5.13. 実施例13:ベクターとしてのキロマイシン誘導体の合成 1-N-デスメチルゴルジンアミン(化合物1、図27)及びゴルジノン酸(化合物2、
図27):1-N-デスメチルゴルジンアミンを、Tavecchia, P.ら、Journal of Antib
iotics 49:1249-57 (1996)の方法により、そのギ酸塩として調製する。かくして
、ジオキサン(200 ml)及びギ酸(99%、50 ml)に溶解したキロマイシン(20g、25.
12 mmol)を、350にて22時間攪拌する。冷却した後、混合物を半分の容量にまで
濃縮し、次いでエチルエーテル(250 ml)を添加する。溶媒をデカンテーションで
除去し、それを保存し、粘着性の残留物をエチルエーテル/酢酸エチル(1:1 v/v
)中で攪拌する。得られた固形物質をエチルエーテルで洗浄し、室温で乾燥させ
ると、ギ酸塩として1-N-デスメチルゴルジンアミン(22 mmol、87%)が得られる
【0246】 Maehr, H.ら、Canadian Journal of Chemistry 58:501-26 (1980)の手順の改
変法により、ゴルジノン酸を回収する。デカンテーションで除去した溶媒と回収
した洗浄物とを合わせ、揮発性物質を回転式エバポレーターで除去する。そして
残留物を減圧下で乾燥する。次いで、それをヘキサン-エチルエーテルで洗浄す
る。残留物を最小量のメタノールに溶解し、シラン化したシリカゲル上での逆相
クロマトグラフィー又は溶出剤としてクロロホルム-メタノールもしくはクロロ
ホルム-アセトニトリルの直線勾配を用いる逆相高速液体クロマトグラフィーに
より精製する。この手順により回収されるゴルジノン酸は、さらに精製せずに用
いることができる。
【0247】 図28に示すように、シリルエーテルとして保護されたヒドロキシル基を有する
修飾ゴルジノン酸又はゴルジノン酸類似体(1 mmol)を、無水クロロホルム(20 ml
)に溶解し、EDC(1-(3-ジメチルアミノ)プロピル)-3-エチルカルボジイミド)(155
)(155 mg、1 mmol)又はDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)(206)(206 mg、1
mmol)を添加する。反応混合物を室温にて1時間攪拌した後、イミダゾール(68)(6
8 mg、1 mmol)を添加する。反応混合物を再び1時間攪拌した後、無水クロロホル
ムに溶解したギ酸ゴルジンアミン(化合物1、図27)(546 mg、1 mmol)とトリエチ
ルアミン(101 mg、1 mmol)の溶液を添加する。反応混合物を一晩攪拌する。次い
で、エチルエーテルを添加し、得られた沈殿物をエチルエーテル及び酢酸エチル
で洗浄する。溶出剤として水-アセトニトリルの直線勾配又はアセトンを用いる
逆相高速液体クロマトグラフィーにより残留物を精製する。
【0248】 トリス-O-トリイソプロピルシリルゴルジノン酸(化合物1,図29):キロマイシ
ンのギ酸開裂物から得た精製されたゴルジノン酸ラクトン(化合物2、図27)(314)
(9.42 g、30 mmol)を、テトラヒドロフラン-クロロホルムに溶解し、トリエチル
アミン(101)(12.1 g、120 mmol)を添加する。これに、トリイソプロピルシリル
クロリド(193.5)(23.2 g、120 mmol)を添加する。反応混合物を、薄層クロマト
グラフィーがさらなる変化を示さなくなるまで、定期的に分析する。回転式エバ
ポレーターで溶媒を除去し、減圧下で残留物を乾燥させる。シリカゲル上でのフ
ラッシュクロマトグラフィーにより生成物を精製する。
【0249】 トリス-O-トリイソプロピルシリルゴルジノン酸のアミノホウ素化産物(化合物 2,図29) :精製されたトリス-O-トリイソプロピルシリルゴルジノン酸(化合物1,
図29)(785)(2.355 g、3 mmol)を窒素下で無水ジグリム(20 ml)に溶解する。フラ
スコを氷浴槽中で冷却し、テトラヒドロフラン中の9-ボラビシクロノナン(9-BBN
)(3 mmol)又はテキシルボラン(3 mmol)の溶液を添加する。反応混合物を室温に
て攪拌する。3時間後、無水ジグリム中のヒドロキシルアミン-O-スルホン酸(396
mg、3.5 mmol)の溶液を添加する。反応混合物をゆっくりと加熱し、ホウ素化付
加物の消失を、シリカゲル上での薄層クロマトグラフィーにより監視する。100
℃にて最大3時間後、反応混合物を冷却し、水(20 ml)を添加し、塩酸(1N)でpHを
4に調整する(pH試験紙により測定する)。水相をエーテルで洗浄した後、水酸化
ナトリウム溶液(1N)で中性にし、塩化ナトリウムで飽和させ、クロロホルムで抽
出する。このクロロホルム溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、回転式エバポレータ
ーで溶媒を除去する。残留物を減圧下で乾燥させる。粗生成物を次のステップで
直接使用するか、又はクロマトグラフィーにより精製することができる。シリル
エーテル保護基は後処理中に一部加水分解され、不均一な材料をもたらしてしま
う可能性があるものの、その全ては使用可能な生成物である。
【0250】 トリス-O-トリイソプロピルシリルゴルジノン酸のオレフィン開裂生成物のア
ミン付加物へのγ-チオブチロラクトンの付加(化合物4、図29):トリス-O-トリ
イソプロピルシリルゴルジノン酸のアミノホウ素化生成物(化合物2、図29)(801)
(1.602 g、2 mmol)を、クロロホルムに溶解し、γ-チオブチロラクトン(102)(20
4 mg、2 mmol)及びトリエチルアミン(101)(202 mg、2 mmol)を添加する。薄層ク
ロマトグラフィーにより全ての出発物質が反応したことを示されるまで、反応混
合物を室温にて攪拌する。反応混合物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ
る。溶媒を回転式エバポレーターで除去する。トリス-O-トリイソプロピルシリ
ル-ゴルジノン酸(化合物1、図29)に関する手順を用いて、粗物質を完全に再シリ
ル化する。水による後処理は十分に行い、形成されたシリルカルボキシエートエ
ステル又はシリルチオエーテルを完全に加水分解しなければならない。得られた
物質を、シリカゲル上での高速液体クロマトグラフィーにより精製する。
【0251】 トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン酸のオゾン分解オレフィン開
裂生成物(化合物1図30):精製トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン
酸(tris-O-triisopropylsilylgoldinoic acid)(化合物1図29)(785)(785m
g、1ミリモル)を、気体導入口、排出口、温度計、及び磁気攪拌バーを備える10
0ml丸底フラスコ内で塩化メチレン(20ml)に溶解し、ヒュームフード内に入れ
る。その溶液を、フラスコをドライアイス−アセトン浴に部分的に浸漬すること
によって約−30°に冷却し、攪拌しながら(オゾン発生器からの)オゾンガスを
含む酸素流をその溶液にバブリングする。この反応の間、温度を約−60°に低下
させる。反応の進行は薄層クロマトグラフィーによって監視する。出発物質の全
てが反応したとき、反応混合物を乾燥窒素流でパージして過剰のオゾンを蒸発さ
せる。その後、メタノール(5ml)中のジメチルスルフィド(62)(0.124g、2ミ
リモル)をドライアイス温度で添加し、その反応混合物を−10°に暖める。この
温度で1時間攪拌した後、氷浴に入れて1時間攪拌し、次いで室温で1時間攪拌す
る。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、残留物を塩化メチレンに溶解す
る。その塩化メチレン溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。ロータ
リーエバポレーターで溶媒を除去し、残留物を減圧下で乾燥させる。その粗製物
質は精製することなしに用いることができ、又はシリカゲルを用いるクロマトグ
ラフィーによって精製することができる。
【0252】 トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン酸の四酸化オスミウムオレフ
ィン開裂生成物(1図30):精製トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン
酸(化合物1図29)(785)(785mg、1ミリモル)をジオキサン(30ml)に溶解す
る。これに四酸化オスミウム(26mg、0.1ミリモル)を添加する。その溶液を暗
所において15分間攪拌し、オスミウム酸エステルを形成させる。次に、溶液を10
mlの脱イオン水で希釈し、これに、数時間にわたって暗所において、脱イオン水
15mlに溶解した過ヨウ素酸ナトリウム(504mg、2.3ミリモル)の溶液を添加する
。この添加は暗所において行い、反応の進行を薄層クロマトグラフィーによって
監視する。出発物質の全てが反応したとき、クロロホルム(40ml)を添加し、そ
の反応混合物を焼結ガラス漏斗を通して吸引濾過する。塩濾液を塩化メチレンで
洗浄する。濾液及び洗浄液を合わせたものを、洗浄液から沈殿又は色がなくなる
まで、飽和塩化ナトリウム水溶液に硫化ナトリウム(10%)を溶かした溶液で洗
浄する。その後、それらを飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム
で乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を減圧下で乾
燥させる。その粗製物質をさらに精製することなく次工程において用いる。
【0253】 トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン酸のオレフィン開裂生成物の
還元アミノ化(化合物2図30):トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン
酸の酸化オレフィン開裂から得られたアルデヒド(化合物1図30)(747)(3.73
g、5ミリモル)をメタノールに溶解し、濃アンモニア溶液を総容積の5%まで添
加する。その反応混合物をヒュームフードに入れ、1時間静置する。アリコート
のpHが10倍過剰の水に添加したときに約9(pH紙によって測定)になるまで塩酸
水溶液(1N)を添加する。その後、水素化シアノホウ素ナトリウム(63)(315m
g、5ミリモル)を添加し、反応混合物をさらに1時間攪拌する。過剰の水素化シ
アノホウ素を、塩酸で反応混合物を酸性化することによって破壊する。その反応
混合物をヒュームフード内でアスピレーターの真空下において脱気した後、ロー
タリーエバポレーターで溶媒を除去し、残留物をクロロホルムに溶解する。飽和
塩化ナトリウム溶液を添加してpHを7(pH紙によって測定)に調整し、そのクロ
ロホルム溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウ
ムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去する。その生成物はシリ
カゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製することも、次工程において直
接用いることもできる。
【0254】 トリス−O−トリイソプロピルシリル ゴルジノン酸のオレフィン開裂生成物の アミン付加物(化合物3図30)へのγ−チオブチロラクトンの付加生成物(化合
物4図30): トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン酸のオレフィン開裂
から得られたアルデヒドのアミノ化生成物(化合物2図30)(746)(1.492g、2
ミリモル)をクロロホルムに溶解し、(γ−チオブチロラクトン(102)(204mg
、2ミリモル)及びトリエチルアミン(101)(202mg、2ミリモル)を添加する。
その反応混合物を、薄層クロマトグラフィーにより出発物質の全てが反応したこ
とが示されるまで、室温で攪拌する。反応混合物を水で洗浄し、硫酸ナトリウム
で乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。その粗製物質を、
トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン酸(化合物1図29)に対する手順
を用いて十分に再シリル化する。水性の後処理は形成されるあらゆるシリルカル
ボキセート(carboxyate)エステル又はシリルチオエーテルを加水分解するのに十
分なものでなければならない。得られた物質をシリカゲルを用いる高速液体クロ
マトグラフィーによって精製する。
【0255】 N−トリイソプロピルシリル−4−ピペリドン(化合物1図31):短路蒸留器(s
hort path still)を用いて真空下(0.1mm Hg)で水和物を蒸留して無水4−ピペ
リドン(99)(9.9g、100ミリモル)を得、ドライアイス浴において冷却した、
予め風袋を測定しておいた受け器に集める。その後、そのフラスコを秤量する。
その内容物、9.9gの留出物に、クロロホルム(200ml)にトリエチルアミン(101
)(10.1g、100ミリモル)及び塩化トリイソプロピルシリル(193.5)(19.35g
、100ミリモル)を溶かした冷却溶液を添加する。その混合物を受容フラスコ内
で攪拌し、室温に暖める。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、生成物を
シリカゲルを用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
【0256】 4−アセト−4−ヒドロキシピペリジン(化合物2図31):N−トリイソプロピル
シリル−4−ピペリドン(化合物1図31)(256)(12.8g、50ミリモル)を乾燥テ
トラヒドロフラン(200ml)に溶解し、ドライアイス浴において冷却する。これ
に、同じ溶媒にtert−ブチルアセテート(116)(5.8g、50ミリモル)及び新鮮
なカリウムtert−ブトキシド(112)(6.7g、60ミリモル)を加えた混合物を、
素早く攪拌しながら添加する。攪拌を継続し、溶液を室温に暖める。出発物質の
消失を薄層クロマトグラフィーによって監視する。反応が完了したら、水を添加
し、塩酸水溶液(1N)でpHを9〜10(pH紙で測定)に調整し、溶媒をロータリー
エバポレーターで除去する。その残留物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した
後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を真空下で再度除去し、生成物をシリカ
ゲルでのクロマトグラフィーによって精製する。得られた物質を、tert−ブチル
エステル及びトリイソプロピルシリルアミンが加水分解したことが薄層クロマト
グラフィーにより示されるまで、塩酸水性−メタノール溶液(1N)及びフッ化ナ
トリウム中で暖めた後、全ての溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留
物を真空下で乾燥させる。この物質を、シリカゲルでのクロマトグラフィーによ
って、又はシラン処理シリカゲルでの逆相クロマトグラフィーによって精製する
【0257】 N−(4−チオブチリル)−4−アセト−4−ヒドロキシピペリジン(化合物3図3 1): 4−アセト−4−ヒドロキシピペリジン(化合物2図31)(159)(7.95g、50
ミリモル)を乾燥クロロホルム(200ml)に溶解し、乾燥トリエチルアミン(101
)(5.05g、50ミリモル)を添加する。次いで、(γ−チオブチロラクトン(102
)(5.1g、50ミリモル)を添加する。反応の進行を薄層クロマトグラフィーによ
って監視する。出発物質が反応したら、水を添加する。塩酸(1N)でpHを3(pH
紙によって測定)に調整し、そのクロロホルム溶液をこれで、次いで水で洗浄す
る。その後、重炭酸ナトリウム溶液(0.1N)で抽出し、エーテルで洗浄する。水
層を塩酸(1N)で酸性化し、生成物をクロロホルムで抽出する。その生成物をシ
リカゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製する。
【0258】 N−(4−チオブチリル)−4−アセト−4−トリイソプロピルシロキシピペリジ ン(化合物4図31): N−(4−チオブチリル)−4−アセト−4−ヒドロキシピペ
リジン(化合物3図31)をトリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノン酸(化
合物1図29)に用いたものと同じ手順によってシリルエーテルに転化する。水性
の後処理は形成されるあらゆるシリルカルボキセートエステル又はシリルチオエ
ーテルを加水分解するのに十分なものでなければならない。得られた物質をシリ
カゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製する。
【0259】 4−ジメチルアセト−4−ヒドロキシピペリジン(化合物5図31):この物質は
、N−トリイソプロピルシリル−4−ピペリドン(化合物1図31)及び吉草酸tert
−ブチルから、上記4−アセト−4−ヒドロキシピペリジン(化合物2図31)につ
いての手順によって調製する。
【0260】 N−(4−チオブチリル)−4−ジメチルアセト−4−ヒドロキシピペリジン(化 合物6図31): この物質は、4−ジメチルアセト−4−ヒドロキシピペリジン(化
合物5図31)から、上記N−(4−チオブチリル)−4−アセト−4−ヒドロキシピ
ペリジン(化合物3図31)についての手順によって調製する。
【0261】 N−(4−チオブチリル−4−ジメチルアセト−4−トリイソプロピルシロキシピ ペリジン(化合物7図31): この物質は、N−(4−チオブチリル)−4−ジメチル
アセト−4−ヒドロキシピペリジン(化合物6図31)から、上記N−(4−チオブチ
リル)−4−アセト−4−トリイソプロピルシロキシピペリジン(化合物4図31)
についての手順によって調製する。
【0262】 2−(トリイソプロピルシリルオキシ)酢酸メチルエステル(化合物1図32): メチルグリコレート(90)(18g、0.2モル)をクロロホルム(200ml)に溶解し
、塩化トリイソプロピルシリル(193.5)(38.7g、0.2モル)及びトリエチルア
ミン(101)(20.2g、0.2モル)で処理する。反応を薄層クロマトグラフィーに
よって監視する。出発物質が反応したら、溶媒を真空下で除去し、残留物をシリ
カゲルを用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
【0263】 ビス−1,5−トリイソプロピルシリルオキシ−2,4−ジオキソ−3,3−(S,S −シクロ−1,2−ジチオエチル)ペンタン(化合物2図32): 2−(トリイソプロ
ピルシリルオキシ)酢酸メチルエステル(化合物1図32)(247)(12.35g、0.05
モル)を、窒素下、1リットル丸底フラスコ内で乾燥テトラヒドロフラン(100ml
)に溶解する。これをドライアイス−アセトン浴において冷却する。第2のフラ
スコ内で、1,3−ジチオラン(5.3g、0.05モル)を乾燥テトラヒドロフラン(
50ml)に溶解する。これもドライアイス浴において乾燥窒素下で冷却する。これ
に、ブチルリチウム溶液(ヘキサン中0.053モルのブチルリチウム)を乾燥シリ
ンジによって添加する。この溶液を約−40°に暖め、この温度に維持しながら2
時間攪拌する。次に、シリンジにより、それを2−(トリイソプロピルシリルオ
キシ)酢酸メチルエステルに添加する。その反応混合物を−78°で2時間攪拌し
た後、室温に暖めてさらに1/2時間攪拌する。反応混合物を約−40°に再度冷却
し、追加のブチルリチウム溶液(0.053モル)を添加する。その反応混合物をこ
の温度で2時間攪拌した後、−78°に冷却する。追加の2−(トリイソプロピルシ
リルオキシ)酢酸メチルエステル(12.35g、0.05モル)を添加する。この反応混
合物を−78°で2時間攪拌した後、室温に暖めてさらに半時間攪拌する。次に、
水(400ml)を反応混合物に添加し、2相を形成するのに十分なクロロホルムを添
加する。この反応混合物をクロロホルムで抽出し、抽出物を合わせる。クロロホ
ルム層を水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバ
ポレーターで除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その生成物をシリカゲルを
用いるカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0264】 1,5−ジヒドロキシ−2,4−ジオキソ−3,3−(S,S−シクロ−1,2−ジチオ エチル)ペンタン(化合物3図32): ビス−1,5−トリイソプロピルシリルオキ
シ−2,4−ジオキソ−3,3−(S,S−シクロ−1,2−ジチオエチル)ペンタン(
化合物2図32)(536)(10.72g、20ミリモル)をメタノールに溶解し、フッ化ナ
トリウム水溶液(42)(4.2g、100ミリモル)で処理する。その反応混合物を1時
間攪拌した後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を真空下で乾
燥させる。その物質をシリカゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製する
【0265】 ビス−1,5−トリフルオロメチルスルホナト−2,4−ジオキソ−3,3−(S,S −シクロ−1,2−ジチオエチル)ペンタン(化合物4図32): 1,5−ジヒドロキ
シ−2,4−ジオキソ−3,3−(S,S−シクロ−1,2−ジチオエチル)ペンタン(
化合物3図32)(222)(4.44g、20ミリモル)を乾燥エーテルに溶解し、同様に
乾燥エーテルに溶解した乾燥トリエチルアミン(101)(4.04g、40ミリモル)及
び塩化トリフルオロメチルスルホニル(168.5)(6.75g、40ミリモル)の溶液に
徐々に添加する。その反応混合物を室温で1時間攪拌した後、ガラスフリット吸
引漏斗を通して吸引濾過し、塩化トリエチルアンモニウムの大部分を除去する。
溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を真空下で完全に乾燥させる
。その粗製物質を次工程において直接用いる。
【0266】 3,5−ジオキソ−4,4−(S,S−シクロ−1,2−ジチオエチル)ピペリジン( 化合物5図32): ビス−1,5−トリフルオロメチルスルホナト−2,4−ジオキソ
−3,3−(S,S−シクロ−1,2−ジチオエチル)ペンタン(化合物4図32)(386
)(3.86g、10ミリモル)を、3リットルの乾燥丸底フラスコ内、窒素下で1リッ
トルの乾燥クロロホルムに溶解する。無水アンモニアを予め風袋を測定した第2
の丸底フラスコ内で凝縮し、ドライアイス浴に入れる。次にこれを秤量し、ドラ
イアイス浴において冷却した乾燥クロロホルムを粉末化ドライアイスで冷却した
乾燥シリンジによって添加する。10ミリモルのアンモニアを含むこのストック溶
液のアリコートを1リットルの冷却乾燥クロロホルムに添加した後、これをビス
−1,5−トリフルオロメチルスルホナト−2,4−ジオキソ−3,3−(S,S−シク
ロ−1,2−ジチオエチル)ペンタンを含むフラスコに添加する。その反応混合物
を室温に暖め、一晩静置する。翌日、アリコートを取り出して濃縮し、薄層クロ
マトグラフィーによって分析する。出発物質が残っていたら、アンモニアをさら
に凝縮して希釈し、その10ミリモルを素早く攪拌した冷却反応混合物にシリンジ
によって直接添加する。反応が完了したら、溶媒をロータリーエバポレーターで
除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その残留物をクロロホルムに再溶解し、
水酸化ナトリウム(1N)を含む飽和塩化ナトリウム溶液、次いで飽和塩化ナトリ
ウム溶液で洗浄する。その後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリー
エバポレーターで除去し、残留物を真空下で再度乾燥させる。その生成物をシリ
カゲルを用いるクロマトグラフィーにより、又は塩酸塩の結晶化により精製する
【0267】 3,5−ジヒドロキシ−4,4−(S,S−シクロ−1,2−ジチオエチル)ピペリジ ン(化合物6図32): 3,5−ジオキソ−4,4−(S,S−シクロ−1,2−ジチオエ
チル)ピペリジン(化合物5図32)(203)(2.03g、10ミリモル)をメタノール
(50ml)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(37)(740mg、20ミリモル)を添
加する。その反応混合物を一晩混合する。その後、塩酸水溶液を添加して過剰の
ホウ水素化物を破壊する。気体の放出が止んだとき、pHを9〜10(pH紙によって
測定)に調整し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物をクロロ
ホルムに溶解し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。溶媒をロータリーエバ
ポレーターで再度除去し、その粗製物質をシリカゲルを用いるクロマトグラフィ
ーによって又は塩酸塩の結晶化によって精製する。水素化トリス−sec−ブチル
ホウ素リチウムを還元剤として用いて同様の還元を行うことができる。
【0268】 N−ベンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4,4−(S,S−シクロ−1,2−ジチ オエチル)ピペリジン(化合物7図32): 3,5−ジヒドロキシ−4,4−(S,S−
シクロ−1,2−ジチオエチル)ピペリジン(化合物6図32)(207)(2.07g、10
ミリモル)を無水テトラヒドロフラン又はジオキサンに溶解し、水素化ナトリウ
ム(24)(790mg、33ミリモル)又はソーダアミド(39)(1.287g、33ミリモル
)を乾燥窒素下で添加する。次に、臭化ベンジル(171)(5.64g、33ミリモル)
を、素早く攪拌しながら、徐々に添加する。その反応混合物を室温で攪拌し、薄
層クロマトグラフィーによって監視する。1時間後、さらなる臭化ベンジル(0.5
6g、3.3ミリモル)及び水素化ナトリウム(79mg、3.3モル)又はソーダアミド(
129mg、3.3モル)を添加し、攪拌を継続する。さらなる明白な変化がなくなるま
でこのプロセスを継続する。塩酸(1N)を添加することにより反応混合物を中和
し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。生成物をクロロホルムに溶解
し、水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)、次いで水で洗浄する。その溶液を硫酸ナ
トリウムで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。その残留物
をシリカゲルを用いるクロマトグラフィーにより、又は塩酸塩の結晶化により精
製する。
【0269】 N−ベンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4−ピペリドン(化合物8図32):N
−ベンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4,4−(S,S−シクロ−1,2−ジチオ
エチル)ピペリジン(化合物7図32)(477)(4.8g、10ミリモル)を最小容量の
テトラヒドロフランに溶解する。これを、15分間にわたって、15%テトラヒドロ
フラン水溶液(50ml)に赤色酸化水銀(224)(4.48g、20ミリモル)及び三フッ
化ホウ素エーテラート(20ミリモル)を加えた混合物に、素早く攪拌しながら窒
素下で滴下する。攪拌を添加が完了した後1時間半継続する。その後、エチルエ
ーテル(100ml)を添加し、沈殿した塩を焼結ガラス漏斗を通す吸引濾過によっ
て除去する。エーテル層を飽和重炭酸ナトリウム溶液、次いで飽和塩化ナトリウ
ム溶液で洗浄する。そのエーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒をロー
タリーエバポレーターで除去する。粗製物質をシリカゲルを用いるカラムクロマ
トグラフィーにより、又は塩酸塩の結晶化により精製する。
【0270】 N−ベンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4−アセト−4−ヒドロキシピペリジ ン(化合物9図32): N−ベンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4−ピペリドン(
化合物8図32)(401)(4.01g、10ミリモル)を乾燥ジオキサン又はテトラヒド
ロフランに溶解し、氷浴において冷却する。これに、同じ溶媒にtert−ブチルア
セテート(116)(1.28g、11ミリモル)及び新鮮なカリウムtert−ブトキシド(
112)(1.23g、11ミリモル)を加えた混合物を、素早く攪拌しながら添加する。
攪拌を継続し、溶液を室温に暖める。出発物質の消失を薄層クロマトグラフィー
によって監視する。反応が完了したら、水を添加し、塩酸水溶液(1N)でpHを9
〜10(pH紙によって測定)に調整して、溶媒をロータリーエバポレーターで除去
する。その残留物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで
乾燥させる。溶媒を真空下で再度除去し、生成物をシリカゲルを用いるクロマト
グラフィーによって精製する。得られた物質を塩酸水−メタノール溶液(1N)に
溶解し、tert−ブチルエステルが加水分解したことが薄層クロマトグラフィーに
より示されるまで暖めた後、全ての溶媒をロータリーエバポレーターで除去して
残留物を真空下で乾燥させる。この物質をクロロホルムに溶解し、水酸化ナトリ
ウム水溶液(0.1N)で抽出してトルエンで洗浄する。次いで、その水溶液を塩酸
(1N)で中和し、生成物をクロロホルムで抽出する。それを硫酸ナトリウムで乾
燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物を真空下で乾燥さ
せる。その粗製物質はシリカゲルを用いるクロマトグラフィーにより、又は塩酸
塩の結晶化により精製することができ、あるいはそれを直接用いることもできる
【0271】 4−アセト−3,4,5−トリヒドロキシピペリジン(化合物10図32):ナトリウ
ム(23)(1.4g、60ミリモル)をヒュームフード内で、乾燥窒素下、磁気攪拌バ
ーを備えた300mlの乾燥三つ口丸底フラスコに入れる。このフラスコをドライア
イス浴に入れ、無水アンモニア(約50ml)を凝縮してそこに加える。この溶液に
、テトラヒドロフラン及びtert−ブタノールに溶解したN−ベンジル−ビス−3,
5−O−ベンジル−4−アセト−4−ヒドロキシピペリジン(化合物9図32)(517)
(5.17g、10ミリモル)の溶液を徐々に滴下する。その反応混合物をドライアイ
ス温度で1時間素早く攪拌する。反応の進行に続き、反応混合物のアリコートの
反応を水中で停止させ、塩酸(0.1N)で中和し、塩化ナトリウムを飽和させ、ク
ロロホルムで抽出した後、その物質を薄層クロマトグラフィーによって分析する
。さらなる明白な変化がなくなったら、素早い攪拌を継続しながら反応混合物を
室温に暖める。アンモニアを蒸発させた後、溶液を室温でさらに1時間攪拌し、
次にエタノールを徐々に添加することにより残留するあらゆるナトリウムを破壊
する。水素の放出が止んだ後、水を慎重に添加し、その水溶液をトルエンで抽出
する。その後、塩酸水溶液(0.1N)を添加することにより中和し、塩化ナトリウ
ムを飽和させてクロロホルムで抽出する。そのクロロホルム溶液を飽和塩化ナト
リウム溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバ
ポレーターで除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その生成物はシリカゲルを
用いるクロマトグラフィーにより、又はシラン処理シリカゲルを用いる逆相クロ
マトグラフィーにより、又は塩酸塩の結晶化により精製することができる。
【0272】 N−(4−チオブチリル)−4−アセト−3,4,5−トリヒドロキシピペリジン( 化合物11図32): 4−アセト−3,4,5−トリヒドロキシピペリジン(化合物10図
32)(191)(1.91g、10ミリモル)を乾燥クロロホルム(200ml)に溶解し、乾
燥トリエチルアミン(101)(1.01g、10ミリモル)を添加する。その後、(γ−
チオブチロラクトン(102)(1.02g、10ミリモル)を添加する。反応の進行を薄
層クロマトグラフィーによって監視する。出発物質が反応したら、飽和塩化ナト
リウム溶液を添加する。塩酸(1N)でpHを3(pH紙によって測定)に調整し、ク
ロロホルム溶液をこれで、次いでさらに飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。そ
の後、重炭酸ナトリウム溶液(0.1N)で抽出し、エーテルで洗浄する。水層を塩
酸(1N)で酸性化して塩化ナトリウムを飽和させ、生成物をクロロホルムで抽出
する。その生成物をシリカゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製する。
【0273】 N−(4−チオブチリル)−4−アセト−3,4,5−トリス−トリイソプロピルシ ロキシピペリジン(化合物12図32): N−(4−チオブチリル)−4−アセト−3,
4,5−トリヒドロキシピペリジン(化合物11図32)のヒドロキシル基を、塩化ト
リイソプロピルシリルを用いて、トリス−O−トリイソプロピルシリルゴルジノ
ン酸(化合物1図29)に用いたものと同じ手順によりシリルエーテルに転化する
。水性の後処理は形成されるあらゆるシリルカルボキセートエステル又はシリル
チオエーテルを加水分解するのに十分なものでなければならない。得られた物質
をシリカゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製する。
【0274】 N−ベンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4−ジメチルアセト−4−ヒドロキシ ピペリジン(化合物13図32): この物質は、N−ベンジル−ビス−3,5−O−ベン
ジル−4−ピペリドン(化合物8図32)及び吉草酸tert−ブチルから、上記N−ベ
ンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4−アセト−4−ヒドロキシピペリジン(化
合物9図32)に用いた手順によって調製する。
【0275】 4−ジメチルアセト−3,4,5−トリヒドロキシピペリジン(化合物14図32): この物質は、N−ベンジル−ビス−3,5−O−ベンジル−4−ジメチルアセト−4−
ヒドロキシピペリジン(化合物13図32)から、上記4−アセト−3,4,5−トリヒ
ドロキシピペリジン(化合物10図32)に用いた手順によって調製する。
【0276】 N−(4−チオブチリル)−4−ジメチルアセト−3,4,5−トリヒドロキシピペ リジン(化合物15図32): この物質は、4−ジメチルアセト−3,4,5−トリヒド
ロキシピペリジン(化合物14図32)及びγ−チオブチロラクトンから、上記N−
(4−チオブチリル)−4−アセト−3,4,5−トリヒドロキシピペリジン(化合
物11図32)に用いた手順によって調製する。
【0277】 N−(4−チオブチリル)−4−ジメチルアセト−3,4,5−トリス−トリイソプ ロピルシロキシピペリジン(化合物16図32): この物質は、N−(4−チオブチリ
ル)−4−ジメチルアセト−3,4,5−トリヒドロキシピペリジン(化合物15図32
)及び塩化トリイソプロピルシリルから、上記N−(4−チオブチリル)−4−ア
セト−3,4,5−トリス−トリイソプロピルシロキシピペリジン(化合物12図32
)に用いた手順によって調製する。
【0278】 尿素(カルボニル)結合によってゴルジンアミンをアニリンにカップリングす るための手順: 図33に示されるように、1−N−デスメチルゴルジンアミンホルメ
ート(化合物1図27)(546mg、1ミリモル)を乾燥クロロホルム(10ml)に溶解
する。同様にクロロホルム(10ml)に溶解したトリエチルアミン(101)(101mg
、1ミリモル)、次いでカルボニルジイミダゾール(carbonyldiimadazole)(16
2)(810mg、5ミリモル)を添加する。この反応混合物を室温で1時間攪拌した後
、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物を乾燥エチルエーテル及
び乾燥酢酸エチルで洗浄して未反応カルボニルジイミダゾールを除去した後、真
空下で乾燥させる。その残留物を乾燥クロロホルムに溶解し、アニリン誘導体(
1ミリモル)を添加する。その反応混合物をさらに1時間攪拌する。次にそれを水
で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を真空下で除去して粗製残留物を
得、それをエチルエーテル及び酢酸エチルで洗浄する。これを、水−アセトニト
リル又はアセトンの直線勾配を溶離液として用いるシリカゲルでの逆相高速液体
クロマトグラフィーによって精製する。
【0279】 2−アミノレゾルシノール(化合物1図34):2−ニトロレゾルシノール(155)
(31g、0.2モル)をメタノールに溶解し、水素化ボトルに入れる。これに、10%P
d担持チャコール(1gm)を添加する。ボトルを密封して脱気し、水素ガスを50ps
iの圧力で加える。さらなる水素の取り込みがないことが明らかになるまで反応
混合物を室温で振盪する。反応混合物を取り出して濾過し、溶媒を蒸発によって
除去して固体を得る。その粗製物質をさらに精製することなく用いる。
【0280】 2−アセチルアミノレゾルシノール(化合物2図34):粗製2−アミノレゾルシ
ノール(化合物1図34)(125)(12.5g、0.1モル)をクロロホルム(200ml)に
溶解し、トリエチルアミン(101)(10.1g、0.1ミリモル)を添加する。これに
、無水酢酸(102)(10.2g、0.1モル)を添加する。その反応混合物を3時間攪拌
した後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物をクロロホルムに
溶解し、塩酸(0.1N)で1度、次いで水で洗浄する。そのクロロホルム溶液を硫
酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで再度除去し、残
留物を真空下で乾燥させる。その粗製物質をさらに精製することなく用いる。
【0281】 N,N−ジメチル−(3,5−ジヒドロキシ−4−アセチルアミノ)−ベンジルア
ミン(化合物3図34):粗製2−アセチルアミノレゾルシノール(化合物2図34)
(167)(8.35g、50ミリモル)を37%ホルムアルデヒド水溶液(8.1ml、100ミリ
モル)及び33%ジメチルアミン水溶液(13.5ml、100ミリモル)と慎重に混合する
。その反応混合物を室温で静置し、薄層クロマトグラフィーによって定期的に分
析する。必要に応じて、全ての2−アセチルアミノレゾルシノールが反応するま
で反応混合物を加熱する。その後、揮発性物質を真空下で除去する。残留物をク
ロロホルムに溶解し、水を添加する。pHを9(pH紙によって測定)に調整し、ク
ロロホルム層をこれで、次いで再度水で洗浄する。次に、生成物を塩酸水溶液(
0.1N)で抽出する。水層をクロロホルムで洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液
(0.1N)を添加することによってpHを9〜10に調整し、生成物をクロロホルムで
抽出する。その溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレー
ターで除去して残留物を真空下で乾燥させる。その生成物をシリカゲルを用いる
クロマトグラフィーにより、又は塩酸塩の結晶化により精製する。
【0282】 3−(3,5−ジヒドロキシ−4−アセチルアミノ)−チオベンジル−1−チオプ
ロパン(化合物4図34):粗製N,N−ジメチル−(3,5−ジヒドロキシ−4−アセ
チルアミノ)−ベンジルアミン(化合物3図34)(224)(5.6g、25ミリモル)を
、還流冷却器及び水充填気泡トラップ(gas-bubbler trap)を備えた丸底フラス
コ内でジメチルホルムアミド(50ml)に溶解する。これに、1,3−ジチオプロパ
ン(108)(21.6g、200ミリモル)を添加する。この反応混合物を油浴において1
50°に加熱する。時折、気泡トラップ内の水のアリコートを取り出して滴定し、
反応によって生じたジメチルアミンの量を測定する。反応混合物のアリコートを
取り出し、薄層クロマトグラフィー(シリカゲルプレート、溶離液としての塩化
メチレン−ヘキサン)によって分析してN,N−ジメチル−(3,5−ジヒドロキシ
−4−アセチルアミノ)−ベンジルアミンの減少を追跡する。ジメチルアミンの
発生が止んだら、反応混合物を冷却し、溶媒を真空下で除去する。その残留物を
シリカゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製する。
【0283】 4−(3,5−ジヒドロキシ−4−アミノ)−チオベンジル−1−チオプロパン(
化合物5図34):メタノール(50ml)に4−(3,5−ジヒドロキシ−4−アセチル
アミノ)−チオベンジル−1−チオプロパン(化合物4図34)(303)(3.03g、10
ミリモル)を溶かした溶液にヒドラジン(28)(0.56g、20ミリモル)を添加す
る。その溶液を一晩静置する。その後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去
し、残留物をクロロホルムに溶解する。それを水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾
燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで再度除去する。その残留物をシリカ
ゲルを用いるクロマトグラフィーによって精製する。
【0284】 2−チオベンジルエチルアミン(化合物1図35):2−チオエチルアミン(76)
(15.2g、0.2モル)を丸底フラスコ内でクロロホルム(200ml)に溶解する。こ
のフラスコに、微細に粉砕した無水炭酸ナトリウム(106)(21.2g、0.2モル)
を加える。その懸濁液を素早く攪拌し、クロロホルム(200ml)に臭化ベンジル
(171)(34.2g、0.2モル)を溶かした溶液を滴下により添加する。その反応混
合物を薄層クロマトグラフィーによってアッセイし、全ての臭化ベンジルが反応
するまで攪拌を継続する。その後、反応混合物を吸引濾過し、分液漏斗内の水に
添加する。水層のpHを9〜10に調整し(pH紙によってチェック)、クロロホルム
層をこれで1回、次いで水で2回洗浄する。それを硫酸ナトリウムで乾燥させる。
溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その
粗製物質をさらに精製することなく用いる。
【0285】 N−メチル−2−チオベンジルエチルアミン(化合物2図35):2−チオベンジル
エチルアミン(化合物1図35)(167)(33.4g、0.2モル)及び新たに蒸留したホ
ルムアルデヒド(30)(9g、0.20モル)を混合する。溶解を助けるために最小容
量の無水エタノールを添加してもよい。これに、チタン(IV)イソプロポキシド
(0.25モル)を添加する。その混合物を窒素下、ヒュームフード内、室温で1時
間攪拌する。その溶液を無水エタノール(200ml)で希釈した後、水素化シアノ
ホウ素ナトリウム(63)(8.2g、0.13ミリモル)を慎重に添加し、反応混合物を
一晩攪拌する。次に水(20ml)を添加し、生じた無機沈殿をガラスフリット漏斗
による吸引濾過によって除去する。沈殿を無水エタノールで洗浄し、濾液と洗浄
液を合わせたものから真空下で揮発性物質を除去する。その粗製物質をクロロホ
ルムに溶解し、再度濾過し、水酸化ナトリウム溶液(0.1N)で洗浄し、塩酸溶液
(0.1N)で抽出した後、クロロホルムで洗浄する。水溶液を水酸化ナトリウムで
再度塩基性にし、生成物をクロロホルムで抽出する。その粗製物質はシリカゲル
を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、又は塩酸塩の分別結晶化により
精製することができる。
【0286】 N−メチル−N−(2−チオベンジルエチル)−3,5−ジヒドロキシ−4−アセチ ルアミノベンジルアミン(化合物3図35): 2−アセチルアミノレゾルシノール(
化合物1図34)(167)の一部(8.35g、50ミリモル)を37%ホルムアルデヒド水溶
液(8.1ml、100ミリモル)及びN−メチル−2−チオベンジルエチルアミン(化合
物2図35)(181)(9.05g、50ミリモル)と慎重に混合する。その反応混合物を
室温で静置し、薄層クロマトグラフィーにより定期的に分析する。必要に応じて
、全ての2−アセチルアミノレゾルシノールが反応するまでそれを加熱する。そ
の後、揮発性物質を真空下で除去する。その残留物をクロロホルムに溶解し、水
で洗浄し、塩酸水溶液(0.1N)で抽出し、クロロホルムで洗浄する。水酸化ナト
リウム水溶液(0.1N)を添加することにより水層のpHを10(pH紙によって測定)
に調整し、生成物をクロロホルムで抽出する。溶媒を真空下で除去し、残留物を
シリカゲルを用いるクロマトグラフィーによって又は塩酸塩の分別結晶化によっ
て精製する。
【0287】 N−メチル−N−(2−チオエチル)−3,5−ジヒドロキシ−4−アセチルアミノ ベンジルアミン(化合物4図35): ナトリウム(23)(2.3g、100ミリモル)を、
乾燥窒素下、ヒュームフード内で、磁気攪拌バーを備えた500mlの乾燥三つ口丸
底フラスコに入れる。そのフラスコをドライアイス浴に入れ、無水アンモニア(
約100ml)を凝縮して加える。この溶液に、テトラヒドロフラン及びtert−ブタ
ノールに溶解したN−メチル−N−(2−チオベンジルエチル)−3,5−ジヒドロ
キシ−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合物3図35)(344)(17.2g、50ミ
リモル)の溶液を徐々に滴下する。その反応混合物をドライアイス温度で1時間
素早く攪拌する。反応の進行に続いて反応混合物のアリコートの反応を水中で停
止させ、塩酸(0.1N)で中和し、塩化ナトリウムで飽和させ、クロロホルムで抽
出した後、薄層クロマトグラフィーによって物質を分析する。全ての出発物質が
反応したら、素早い攪拌を継続しながら反応混合物を室温に暖める。アンモニア
を蒸発させた後、溶液を室温でさらに1時間攪拌し、次にエタノールを徐々に添
加することによりあらゆる残留ナトリウムを破壊する。水素の放出が止んだ後、
素早く攪拌しながらメタノール、次いで水を慎重に添加する。塩酸(1N)を添加
することによりpHを9(pH紙によって測定)に調整する。その反応混合物をクロ
ロホルムで抽出した後、水で洗浄する。生成物を塩酸(0.1N)で抽出してクロロ
ホルムで洗浄した後、水溶液のpHを水酸化ナトリウム溶液(0.1N)で9〜10(pH
紙でチェック)に調整し、生成物をクロロホルムで抽出する。クロロホルム溶液
を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。そ
の残留物を真空下で乾燥させる。これをシリカゲルを用いるクロマトグラフィー
により、又は塩酸塩の結晶化により精製してもよい。
【0288】 N−メチル−N−(2−チオエチル)−3,5−ジヒドロキシ−4−アミノベンジル アミン(化合物5図35): N−メチル−N−(2−チオエチル)−3,5−ジヒドロキ
シ−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合物4図32)(254)(6.35g、25ミリ
モル)をメタノール(100ml)に溶解し、ヒドラジン(32)(3.2g、100ミリモル
)を添加する。その反応混合物を一晩攪拌した後、溶媒をロータリーエバポレー
ターで除去する。残留物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄した後、硫酸ナトリ
ウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物をヘキサ
ン−クロロホルム−トリエチルアミンを溶離液として用いるシリカゲルでのクロ
マトグラフィーにかける。
【0289】 N−メチルタウリン(化合物6図35):500mlの三つ口丸底フラスコにおいて、
タウリン(125)(25.0g、0.2モル)を最小容量のメタノールに溶解する。トリ
エチルアミン(101)(1.0g、0.01ミリモル)及び新たに蒸留したホルムアルデ
ヒド(30)(6.6g、0.22モル)を添加する。その混合物をヒュームフード内、室
温で1時間攪拌した後、添加漏斗を用いて、水素化シアノホウ素ナトリウム(63
)(8.2g、0.13ミリモル)のメタノール(100ml)溶液を慎重に添加する。その
反応混合物をさらに1時間攪拌する。ヒュームフード内で、塩酸(0.1N)で酸性
化することによって過剰の水素化シアノホウ素を破壊し、ヒュームフード内、ア
スピレーター真空下で反応混合物を簡単に脱気する。その後、溶媒をロータリー
エバポレーターで除去する。粗製残留物をクロロホルムに溶解し、飽和塩化ナト
リウム−重炭酸ナトリウム(0.1N)溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥さ
せる。これをシリカゲルを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、又は塩
酸塩の分別結晶化により精製することができる。
【0290】 N−メチル−N−(2−スルホノエチル)−3,5−ジヒドロキシ−4−アセチルア ミノベンジルアミン(化合物7図35): 2−アセチルアミノレゾルシノール(化合
物1図34)(167)の一部(8.35g、50ミリモル)を37%ホルムアルデヒド水溶液(
8.1ml、100ミリモル)及びN−メチルタウリン(化合物6図32)(139)(6.95g、
50ミリモル)と慎重に混合する。この反応混合物を室温で静置し、薄層クロマト
グラフィーにより定期的に分析する。必要に応じて、全ての2−アセチルアミノ
レゾルシノールが反応するまでそれを加熱する。その後、真空下で揮発性物質を
除去する。その残留物をクロロホルムに溶解し、水を添加してpHを中性に調整す
る(pH紙によってチェック)。水層を塩化ナトリウムで飽和させ、反応混合物を
飽和塩化ナトリウムで洗浄した後、塩酸水溶液(0.1N)で抽出して酢酸エチルで
洗浄する。水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)を添加することよって水層を中性に
(pH紙による測定でpH7に)する。これを塩化ナトリウムで飽和させ、生成物を
クロロホルムで抽出する。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を
真空下で乾燥させる。その粗製生成物はシリカゲルを用いるクロマトグラフィー
により、シラン処理シリカゲルを用いる逆相クロマトグラフィーにより、又は分
別結晶化により精製することができる。
【0291】 N−メチル−N−(2−チオエチル)−3,5−ジヒドロキシ−4−アセチルアミノ ベンジルアミン(化合物4図35): N−メチル−N−(2−スルホノエチル)−3,5
−ジヒドロキシ−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合物7図32)(346)(8
.65g、25ミリモル)を窒素下、乾燥三つ口丸底フラスコ内で無水ジグリム(100m
l)に溶解する。そのフラスコを氷浴において冷却し、溶液を素早く攪拌する。
素早く攪拌しながら水素化アルミニウムリチウム(38)(0.95g、25ミリモル)
を少しずつ添加する。攪拌を継続し、溶液を室温に暖める。反応の進行を薄層ク
ロマトグラフィーによって監視する。全ての出発物質が反応したら、メタノール
、次いで水を慎重に添加することにより過剰の水素化アルミニウムリチウムを破
壊する。pHを約9(pH紙によって測定)に調整し、クロロホルム及び2相を形成す
るのに十分な水を添加する。水層をクロロホルムで抽出する。クロロホルム抽出
物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレータ
ーで除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その粗製生成物はシリカゲルを用い
るクロマトグラフィーにより、又は塩酸塩の分別結晶化により精製することがで
きる。
【0292】 N−メチル−N−(2−チオベンジルエチル)−4−アセチルアミノベンジルアミ ン(化合物8図35): この物質は、N−メチル−2−チオベンジルエチルアミン(
化合物2図35)及びアセチルアニリンから、N−メチル−N−(2−チオベンジルエ
チル)−3,5−ジヒドロキシ−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合物3図35
)の調製に用いた方法によって調製する。
【0293】 N−メチル−N−(2−チオエチル)−4−アミノベンジルアミン(化合物10図35 ): N−メチル−N−(2−チオベンジルエチル)−4−アセチルアミノベンジルア
ミン(化合物8図35)(312)(15.6g、50ミリモル)をメタノール(100ml)に溶
解し、ヒドラジン(32)(3.2g、100ミリモル)を添加する。その反応混合物を
一晩攪拌した後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。その残留物をク
ロロホルムに溶解し、水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロ
ータリーエバポレーターで除去し、残留物を真空下で完全に乾燥させる。次に、
その粗製物質のベンジル基を、上記N−メチル−N−(2−チオエチル)−3,5−
ジヒドロキシ−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合物4図35)の調製に用い
た方法によって切断する。
【0294】 N−メチル−N−(2−スルホノエチル)−4−アセチルアミノベンジルアミン( 化合物11図35): この物質は、N−メチルタウリン(化合物6図35)及びアセチル
アニリンから、上記N−メチル−N−(2−スルホノエチル)−3,5−ジヒドロキ
シ−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合物7図35)の調製に用いた方法によ
って調製する。
【0295】 N−メチル−N−(2−チオエチル)−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合 物9図35): この物質は、N−メチル−N−(2−スルホノエチル)−4−アセチル
アミノベンジルアミン(化合物11図35)から、上記N−メチル−N−(2−スルホ
ノエチル)−3,5−ジヒドロキシ−4−アセチルアミノベンジルアミン(化合物7
図35)で用いた反応によって調製する。
【0296】 3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルチオエタノール(化合物1図36)を用いる
キロマイシンのヒドラゾン:キロマイシンのヒドラゾンは、Chinali, Gら,Bolle
ttino Societa Italiana Biologia Sperimentale 57:1706−12 (1981)の方法に
よって調製する。そこで、キロマイシンナトリウム塩(830)(0.83g、1ミリモ
ル)を最小容量の無水エタノールに溶解する。次に、同じ溶媒に溶解した3−ニ
トロ−4−ヒドラジドフェニルチオエタノール(化合物5図37)(0.22g、1ミリモ
ル)を添加する。その反応混合物を室温で一晩攪拌した後、溶媒を真空下で除去
する。その残留物をエチルエーテル及び酢酸エチルで洗浄した後、真空下で乾燥
させる。その生成物は水−アセトニトリル又はアセトンの直線勾配を溶離液とし
て用いる逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製することができ、又は結晶
化することができる。
【0297】 3−ニトロ−4−アミノフェニルエタノール(化合物1図37):4−アミノフェニ
ルエタノール(151)(30.2g、0.2モル)をジクロロベンゼン又はニトロベンゼ
ン(200ml)に溶解し、素早く攪拌しながら濃硝酸(63)(0.44モル)を徐々に
滴下する。必要に応じて、その反応混合物を氷浴において冷却する。反応混合物
を攪拌した後、氷水を添加する。水層を分離して保存し、反応混合物を水で2回
抽出する。水性抽出物を一つに合わせて、水酸化ナトリウム(1N)で塩基性にし
、生成物をクロロホルムで抽出する。これを水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで
乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を真空下で乾燥
させる。この生成物はシリカゲルを用いるクロマトグラフィーにより又は塩酸塩
の結晶化により精製することができる。
【0298】 3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルエタノール(化合物2図37):塩化メチル
スルホニル(114.5)(22.9g、0.2モル)を乾燥クロロホルム(200ml)に溶解す
る。これに、冷却しかつ素早く攪拌しながら、乾燥トリエチルアミン(101)(2
0.2g、0.2モル)を添加する。この混合物を、同じくクロロホルム(200ml)に溶
解したヒドロキシルアミン塩酸塩(69.5)(13.9g、0.2モル)の冷却し、素早く
攪拌した溶液に徐々に添加する。その反応混合物を室温で1時間攪拌した後、乾
燥クロロホルム(200ml)に溶解した3−ニトロ−4−アミノフェニルエタノール
(化合物1図37)(182)(36.4g、0.2ミリモル)及びトリエチルアミン(101)
(40.4g、0.4モル)の溶液に徐々に添加する。この反応混合物を一晩攪拌する。
水を反応混合物に添加し、必要に応じてpHをアルカリ性に調整する。クロロホル
ム層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレー
ターで除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その粗製生成物はカラムクロマト
グラフィーによって精製することができ、又は次工程において直接用いることが
できる。
【0299】 3−ニトロ−4−アセチルヒドラジドフェニルエタノール(化合物3図37):
製3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルエタノール(化合物2図34)をクロロホル
ム(200ml)に溶解し、乾燥トリエチルアミン(101)(20.2g、0.2ミリモル)を
添加する。素早く攪拌しかつ冷却しながら、無水酢酸(102)(20.4g、0.2ミリ
モル)をこの溶液に滴下する。その反応混合物を1時間攪拌する。水を添加し、
塩酸(0.1N)でpHを5〜6に調整して、クロロホルム層を塩酸(0.1N)で2回、次
いで水で洗浄する。次にそれを硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒をロータリーエ
バポレーターで除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その生成物をシリカゲル
を用いるカラムクロマトグラフィーにより、又は結晶化により精製する。
【0300】 3−ニトロ−4−アセチルヒドラジドフェニルチオエタノール(化合物4図37)
3−ニトロ−4−アセチルヒドラジドフェニルエタノール(化合物3図34)(255
)(25.5g、0.1モル)及び乾燥トリエチルアミン(101)(10.1g、0.1モル)を
クロロホルム(200ml)に溶解する。その溶液を素早く攪拌し、乾燥クロロホル
ム(50ml)中の塩化メチルスルホニル(114.5)(11.45g、0.1モル)を滴下漏斗
によって添加する。その反応混合物を1時間攪拌した後、微細に粉末化した固体
硫化ナトリウム(78)(39g、0.5モル)、最小容量の水に硫化ナトリウム(39g
、0.5モル)を溶かした溶液、又は硫化テトラブチルアンモニウム(242)(24.2
g、0.1モル)を添加する。その反応混合物を一晩攪拌した後、水で洗浄する。そ
のクロロホルム溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒をロータリーエバポ
レーターで除去する。残留物を真空下で乾燥させる。その粗製生成物はフラッシ
ュクロマトグラフィーによって精製することができ、又は次工程において直接用
いることができる。
【0301】 3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルチオエタノール(化合物5図37):粗製3−
ニトロ−4−アセチルヒドラジドフェニルチオエタノール(化合物4図37)をエタ
ノールに溶解し、ヒドラジン(32)(16g、0.5モル)を添加する。その反応混合
物を室温で一晩攪拌する。その後、それを水で洗浄する。その溶液を硫酸ナトリ
ウムで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を真空下で
乾燥させる。その生成物はシリカゲルを用いるクロマトグラフィーにより、又は
塩酸塩の結晶化により精製することができる。
【0302】 3−ニトロ−4−アミノフェニル酢酸(化合物6図37):4−アミノフェニル酢酸
(165)(33.0g、0.2モル)をジクロロベンゼン又はニトロベンゼン(200ml)に
溶解し、素早く攪拌しながら濃硝酸(63)(0.44モル)を徐々に滴下する。必要
に応じて、反応混合物を氷浴において冷却する。その反応混合物を攪拌した後、
氷水を添加する。水層を分離し、反応混合物を再度水で1回抽出する。水性抽出
物を1つに合わせて、水酸化ナトリウム(1N)で中性にし、塩化ナトリウムで飽
和させ、生成物をクロロホルムで抽出する。これを飽和塩化ナトリウム溶液で2
回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除
去し、残留物を真空下で乾燥させる。その生成物はシリカゲルを用いるクロマト
グラフィーによって又は結晶化によって精製することができる。
【0303】 3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニル酢酸(化合物7図37):塩化メチルスルホ
ニル(114.5)(22.9g、0.2モル)を乾燥クロロホルム(200ml)に溶解する。こ
れに、冷却しかつ素早く攪拌しながら、乾燥トリエチルアミン(101)(20.2g、
0.2モル)を添加する。この混合物を、同じくクロロホルム(200ml)に溶解した
ヒドロキシルアミン塩酸塩(69.5)(13.9g、0.2モル)の冷却しかつ素早く攪拌
した溶液に徐々に添加する。その反応混合物を室温で1時間攪拌した後、乾燥ク
ロロホルム(200ml)に溶解した3−ニトロ−4−アミノフェニル酢酸(化合物6図
37)(182)(36.4g、0.2ミリモル)及びトリエチルアミン(101)(40.4g、0.4
モル)の溶液に徐々に添加する。その反応混合物を一晩攪拌する。水を添加し、
必要に応じてpHを中性に調整した後、その水を塩化ナトリウムで飽和させる。そ
の溶液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる、溶媒
をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を真空下で乾燥させる。その粗製
生成物はクロマトグラフィーにより、又は結晶化により精製することができる。
【0304】 キロマイシンのスルホン酸エステルは、Maehr, H,ら, Journal of Antibiotic
s 32:361−367 (1978)の方法によって調製される。そこで、キロマイシンナトリ
ウム塩(2.2g、2.65ミリモル)をジメチルホルムアミド(25ml)に溶解し、氷浴
において冷却する。塩化スルホニル(3ミリモル)を添加し、その反応混合物を3
0分間激しく攪拌する。この後、反応混合物を十分に攪拌した飽和重炭酸ナトリ
ウム(100ml)及びクロロホルム(25ml)の混合物に添加することにより、反応
を停止させる。20分の攪拌の後、その混合物を、クロロホルム(25ml)を含む分
液漏斗に移し、相を平衡化する。水層を廃棄し、クロロホルム層を飽和重炭酸ナ
トリウムで1回、水で2回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。その溶液を
55°のロータリーエバポレーターで濃縮して油状残留物を得、それをアセトンに
溶解して逆相液体クロマトグラフィー(Sephadex LH-20カラムでアセトンを溶離
液として用いる)によって精製する。
【0305】 4−マレイミドメチレンフェニルスルホン酸(化合物1図38):4−アミノメチ
レンフェニルスルホン酸(187)(18.7g、0.1モル)をクロロホルムに溶解し、
トリエチルアミン(101)(30.3g、0.3モル)を添加する。その溶液を氷浴にお
いて冷却する。マレイルジクロリド(153)(15.3g、0.1モル)を滴下により添
加する。その溶液を1時間攪拌した後、室温に暖める。氷水を添加し、塩酸(1N
)で酸性化する。クロロホルム層を塩酸(0.1N)、次いで水で洗浄した後、硫酸
ナトリウムで乾燥させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物を
真空下で乾燥させる。その生成物はシラン処理シリカゲルを用いる逆相クロマト
グラフィーにより、又は結晶化により精製することができる。
【0306】 塩化4−マレイミドメチレンフェニルスルホニル(化合物2図38):4−マレイ
ミドメチレンフェニルスルホン酸(化合物1図38)(269)(26.9g、0.1モル)を
クロロホルムに溶解し、塩化スルホニル(119)(23.8g、0.2モル)を添加する
。その反応混合物を気体の放出が止むまで還流した後、揮発性物質をロータリー
エバポレーターで除去する。その残留物をクロロホルムに溶解し、クロロホルム
をロータリーエバポレーターで再度除去する。残留物を真空下で乾燥させる。こ
れは結晶化によって精製することができる。
【0307】5.14.実施例14:キロマイシン、3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルチオエタ
ノール、及びテトラサイクリン誘導体のコンジュゲート形成 テトラサイクリンのアミノ誘導体(化合物7図24)(0.59g、1ミリモル)をメ
タノール、メタノール−クロロホルム、又はジメチルエチレングリコールに溶解
し、6−[(ヨードアセチル)−アミノ]ヘキサン酸スクシンイミジル(0.40g、
0.1ミリモル)を添加する。その反応混合物を室温で攪拌し、反応の進行を薄層
クロマトグラフィーによって監視する。反応が完了したら、キロマイシンのヒド
ラゾン及び3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルチオエタノール(化合物1図36)
(0.97g、1ミリモル)を添加し、反応物を室温でさらに攪拌する。反応の進行を
薄層クロマトグラフィーによって再度監視する。反応が完了したら、溶媒を最小
限加熱しながら真空下で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。生成物を、水−
アセトニトリルの直線勾配を溶離液として用いる逆相高速液体クロマトグラフィ
ーによって精製し、又は結晶化することができる。この粗製キロマイシンヒドラ
ゾンもカップリング反応において用いることができる。
【0308】5.15.実施例15:キロマイシン、3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルチオエタ
ノール、及びトリメトプリム又はテトラサイクリン誘導体のコンジュゲート形成 チオール化合物、例えば、トリメトプリム誘導体(化合物5図22)(0.35g、0.
1ミリモル)をクロロホルム又はクロロホルム−メタノールに溶解し、N,N’−
ヘキサメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)(3.52g、1ミリモル)を添加する
。この反応混合物を室温で攪拌し、反応の進行を薄層クロマトグラフィーによっ
て監視する。反応が完了したら、溶媒を最小限加熱しながら真空下で除去し、残
留物を真空下で乾燥させる。その残留物をクロマトグラフィーにより過剰のN,N
’−ヘキサメチレン−ビス(ヨードアセトアミド)から精製する。この物質にキ
ロマイシンのヒドラゾン及び3−ニトロ−4−ヒドラジドフェニルチオエタノール
(化合物1図36)(0.97g、1ミリモル)を添加し、それをメタノール−ジメチル
ホルムアミドに溶解する。その反応混合物を室温で攪拌し、反応の進行を薄層ク
ロマトグラフィーによって監視する。反応が完了したら、溶媒を最小限加熱しな
がら真空下で除去し、残留物を真空下で乾燥させる。生成物を、水−アセトニト
リルの直線勾配を溶離液として用いる逆相高速液体クロマトグラフィーによって
精製し、又は結晶化することができる。粗製キロマイシンヒドラゾンもカップリ
ング反応において用いることができる。
【0309】5.16.実施例16:VLPコンジュゲートの細胞蓄積の程度の測定 ベクターとプローブ分子とのモデルコンジュゲートの細胞蓄積の程度の試験を
、代表的な非病原性微生物で以下の方法を用いて行う。これらの測定は予備スク
リーニング手順を構成する。
【0310】 コンジュゲートの連続希釈液を、水又は適切な有機溶媒で作製する。これらの
アリコートを、培養チューブに入れられている新たに増殖させた酵母又は真菌培
養物の一部(5〜10ml)と混合する。これらのチューブをインキュベーターにお
いて振盪する。10分〜数時間の間隔で、培養物のアリコートを取り出す。細胞性
物質を遠心によって集め、培地で洗浄した後、再遠心する。得られたペレットを
コンジュゲート分子の存在について分析する。対照として、ベクターとプローブ
とのコンジュゲートと同じ時間に培養培地に添加される過剰のコンジュゲートを
形成していないベクター分子で上記手順を行う。別の対照は、プローブ分子の単
独の、又はリンカーと組み合せた連続希釈液を用いる。
【0311】 蛍光プローブとのモデルVLPコンジュゲートの分析のために、洗浄した細胞ペ
レットを水又は培養培地に懸濁させる。この懸濁液に紫外線光を照射し、目視検
査により蛍光の程度を評価する。蛍光の程度をより正確に分光光度的に測定する
ため、懸濁液のアリコートを蛍光計で分析することもできる。
【0312】 放射性プローブについては、細胞ペレットを蒸留水に懸濁させ、その物質の一
部をシンチレーション液中に等分して分散させる。生じる懸濁液中の放射能(14 C、3H、又は35S)をシンチレーションカウントにより測定する。
【0313】 細胞を溶解して分画し、様々な細胞分画においてプローブの存在を測定するこ
ともできる。
【0314】 保存凍結培養物から採取した真菌又は酵母を培養チューブ又は振盪フラスコ内
、25℃で増殖させる。次に、1ミリリットル当たり約105コロニー形成単位のア
リコートをアッセイ用の接種物として用いる。培養物を25℃で、酵母では最大48
時間、糸状菌では最大120時間インキュベートし、適切な細胞密度を得る。
【0315】 上述の方法を用いて、ベクター、リンカー、及びプローブ分子の蛍光又は放射
性標識モデルコンジュゲートの蓄積の程度を、該コンジュゲートの一連の濃度で
、測定することができる。同時に、一連の濃度のコンジュゲート+過剰の遊離ベ
クターも試験し、その結果をグラフにする。
【0316】 上述の本発明の実施形態は単なる例示であり、当業者は、本明細書に記載され
た特定の材料、手順、及び装置の多くの等価物を認識し、あるいはせいぜいルー
チン的な実験を用いて確認することができるだろう。全てのそのような等価物は
本発明の範囲内にあるものとみなされ、かつ添付の請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
本発明の態様および効果は、以下の図面からさらに明らかになるだろう。
【図1】 図1は、VLPコンジュゲートの模式図である。
【図2】 図2は、VLPコンジュゲートの作用様式の模式図である。
【図3】 図3は、真菌ファーマコフォアの表である。
【図4】 図4は、真菌ベクターの表である。
【図5】 図5は、真菌リンカーの表である。
【図6】 図6は、VLPコンジュゲートの設計プロセスのフローチャートである。
【図7】 図7は、いくつかの蛍光プローブの構造を示す。
【図8】 図8は、抗真菌リガンドの表である。
【図9】 図9は、ソルダリンの化学構造を示す。
【図10】 図10は、フルコナゾールの化学構造を示す。
【図11】 図11は、ソルダリン-リンカー-フルコナゾールコンジュゲートを表す。
【図12】 図12は、ソルダリン-リンカー-フルコナゾールコンジュゲートを製造するため
の合成スキームを示す。
【図13】 図13a-iは、抗生物質特性を有するVLPコンジュゲートを設計する際に使用した
表の例を示す。
【図14】 図14は、ビオチン-ペニシリンVLPコンジュゲートの図である。
【図15】 図15は、テトラサイクリンおよびトリメトプリムと作用機序に基づいたβ-ガ
ラクトシダーゼ阻害剤とのコンジュゲートの構造を示す。
【図16】 図16は、キロマイシン-トリメトプリムコンジュゲートの化学構造を示す。
【図17】 図17は、キロマイシン-テトラサイクリンコンジュゲートの化学構造を示す。
【図18】 図18は、ビオチン-ペニシリンコンジュゲートを製造するための合成スキーム
を示す。
【図19】 図19は、ビオチン-ペニシリンコンジュゲートを製造するための合成スキーム
を示す。
【図20】 図20は、ビオチン-ペニシリンコンジュゲートを製造するための合成スキーム
を示す。
【図21】 図21は、抗生物質VLPコンジュゲートによる微生物増殖の予期された阻止を、
コンジュゲートを形成していない抗生物質ファーマコフォアのみによる阻止と比
較して示す。
【図22】 図22は、修飾したトリメトプリムファーマコフォアを製造するための合成スキ
ームを示す。
【図23】 図23は、修飾したテトラサイクリンファーマコフォアを製造するための合成ス
キームを示す。
【図24】 図24は、修飾したテトラサイクリンファーマコフォアを製造するための合成ス
キームを示す。
【図25】 図25は、修飾したテトラサイクリンファーマコフォアを製造するための合成ス
キームを示す。
【図26】 図26は、ベクターとして使用できる、作用機序に基づいたβ-ガラクトシダー
ゼ阻害剤を製造するための合成スキームを示す。
【図27】 図27は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図28】 図28は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図29】 図29は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図30】 図30は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図31】 図31は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図32】 図32は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図33】 図33は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図34】 図34は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図35】 図35は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図36】 図36は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図37】 図37は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図38】 図38は、ベクターとして有用なキロマイシン誘導体を製造するための合成スキ
ームを示す。
【図39】 図39は、キロマイシン断片の比較を示す。
【図40】 図40は、データベースの作成とVLPコンジュゲートの設計における関係を記載
したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 60/184,411 (32)優先日 平成12年2月23日(2000.2.23) (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 60/184,412 (32)優先日 平成12年2月23日(2000.2.23) (33)優先権主張国 米国(US) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,UZ,VN,YU, ZA,ZW (71)出願人 ミルワード,スティーブン,ダブリュ. アメリカ合州国 21218 メリーランド州 ボルチモア,エヌ.シャーレス ストリ ート 2850,アパートメント 15ビー (72)発明者 ブレンナー,シドニー アメリカ合州国 94704 カリフォルニア 州 バークレー,シャトゥック アヴェニ ュー 2168 (72)発明者 ゴレット,フィリップ アメリカ合州国 21202 メリーランド州 ボルチモア,エヌ.カルヴァート スト リート 1101 (72)発明者 スタックハウス,ジョセフ アメリカ合州国 21202 メリーランド州 ボルチモア,エヌ.カルヴァート スト リート 1101 (72)発明者 ミルワード,スティーブン,ダブリュ. アメリカ合州国 21218 メリーランド州 ボルチモア,エヌ.シャーレス ストリ ート 2850,アパートメント 15ビー Fターム(参考) 4B024 AA01 CA01 CA09 CA10 HA17 4C076 AA95 CC01 CC15 CC27 CC31 CC32 CC34 CC35 EE23 EE25 EE59 FF67 FF68

Claims (45)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 患者の疾病もしくは病状の治療または予防に使用するための
    VLPコンジュゲートを設計する方法であって、 疾病または病状に関連した第1の標的に影響を与えることができ、かつ第1の
    標的に対して第1の親和性を有するファーマコフォアを選択し、 第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親和性を
    有するベクターを選択し、 VLPコンジュゲートを得るために第1のファーマコフォアと第1のベクターが
    両方とも共有結合できるリンカーを選択する、 ことを含んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ
    第2の親和性が第1の親和性より大きいか、患者における第2の標的の濃度が第
    1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記方法。
  2. 【請求項2】 ファーマコフォアおよびベクターをリンカーに共有結合させ
    て前記コンジュゲートを得、該コンジュゲートの第1の標的に影響を与える能力
    を試験することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 ファーマコフォアが、作用様式、作用標的、分子量、溶解性
    、有害作用のタイプおよび/または重症度、治療係数、化学的安定性、化学的に
    反応性の部分の存在、および構造−活性相関のデータを含むがこれらに限らない
    群から選ばれた、少なくとも1つの規準を用いて選択される、請求項1に記載の
    方法。
  4. 【請求項4】 第1の標的を有し、かつ該第1の標的に対して第1の親和性
    を有するファーマコフォアのVLPコンジュゲートを設計する方法であって、 第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親和性を
    有するベクターを選択し、 VLPコンジュゲートを得るために第1のファーマコフォアと第1のベクターが
    両方とも共有結合できるリンカーを選択する、 ことを含んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ
    第2の親和性が第1の親和性より大きいか、VLPコンジュゲートを投与する患者
    における第2の標的の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上
    記方法。
  5. 【請求項5】 ファーマコフォアおよびベクターをリンカーに共有結合させ
    て前記コンジュゲートを得、該コンジュゲートの第1の標的に影響を与える能力
    を試験することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 細胞の中、上または近傍に位置する第1の標的へのファーマ
    コフォアの送達を改良する方法であって、 第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親和性を
    有するベクターを選択し、 リンカーを選択し、 ファーマコフォアおよびベクターをリンカーに共有結合させてコンジュゲート
    を得、 該コンジュゲートの第1の標的の近傍に集結する能力を試験し、 第1の標的の近傍に集結する該コンジュゲートの能力が第1の標的の近傍に集
    結するファーマコフォア単独の能力より低い場合には、異なるベクターを用いて
    上記方法を繰り返す、 ことを含んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ
    第2の親和性が第1の親和性より大きいか、該細胞の中、上または近傍にある第
    2の標的の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記方法。
  7. 【請求項7】 前記方法を繰り返す場合は、異なるベクターを選択する際に
    前記試験により得られた情報を用いる、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 第1の標的に対して親和性を有するファーマコフォアをin v
    ivoでターゲッティングする方法であって、 ファーマコフォアおよびベクターをリンカーに化学結合させてVLPコンジュゲ
    ートを得、 該VLPコンジュゲートを宿主に投与する、 ことを含んでなり、ここで、該ベクターは約10-6より低い解離定数で第2の標的
    と会合することができ、第2の標的は第1の標的と異なるものであり、かつ第2
    の標的は第1の標的の10-4メートル以内に位置する、上記方法。
  9. 【請求項9】 第2の標的が宿主中に第1の標的の濃度の10倍を超える濃度
    で存在する、請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 第1の標的、該第1の標的に対する第1の親和性、および
    第1の治療係数を有するファーマコフォアの治療係数を改良する方法であって、 第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親和性を
    有するベクターを選択し、 リンカーを選択し、 ファーマコフォアおよびベクターをリンカーに共有結合させて、第2の治療係
    数を有するコンジュゲートを得、 該コンジュゲートを試験して第2の治療係数を決定し、 第2の治療係数が第1の治療係数より低い場合には、上記方法を繰り返す、 ことを含んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ
    第2の親和性が第1の親和性より大きいか、VLPコンジュゲートを投与する患者
    における第2の標的の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上
    記方法。
  11. 【請求項11】 前記方法を繰り返す場合は、異なるベクターを選択する際
    に前記試験により得られた情報を用いる、請求項10に記載の方法。
  12. 【請求項12】 第1の標的に対する第1の親和性、および第1の毒性係数
    を有するファーマコフォアの毒性を低下させる方法であって、 第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2の親和性を
    有するベクターを選択し、 リンカーを選択し、 ファーマコフォアおよびベクターをリンカーに共有結合させて、第2の毒性係
    数を有するコンジュゲートを得、 該コンジュゲートを試験して第2の毒性係数を決定し、 第2の毒性係数が第1の毒性係数より高い場合には、上記方法を繰り返す、 ことを含んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ
    第2の親和性が第1の親和性より大きいか、VLPコンジュゲートを投与する患者
    における第2の標的の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上
    記方法。
  13. 【請求項13】 疾病の治療または予防が必要な患者に、VLPコンジュゲー
    トを全身的にまたは局所的に投与することを含む疾病の治療または予防方法であ
    って、該VLPコンジュゲートが、 該疾病に関連した標的に対して第1の親和性を有するファーマコフォア、 該患者内で第1の標的の近傍に位置すると考えられる第2の標的に対して第2
    の親和性を有するベクター、および ファーマコフォアとベクターを共有結合で連結するリンカー、 を含んでなり、ここで、第1の標的は第2の標的と同じものではなく、かつ第2
    の親和性が第1の親和性より大きいか、該患者における第2の標的の濃度が第1
    の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記方法。
  14. 【請求項14】 前記疾病が真菌または細菌感染である、請求項13に記載
    の方法。
  15. 【請求項15】 VLPコンジュゲートが約2000ダルトン以下の分子量を有す
    る、請求項1、4、6、8、10、12または13に記載の方法。
  16. 【請求項16】 リンカーが、生理的条件下での化学的安定性、反応性部分
    のタイプおよび数、代謝安定性、溶解性、長さ、およびフレキシビリティーから
    なる群より選択された、少なくとも1つの規準によりランク付けされる複数のリ
    ンカーから選択される、請求項1、4、6、8、10、12または13に記載の
    方法。
  17. 【請求項17】 ベクターが、その薬理作用およびその第1の標的に対する
    親和性の欠如からなる群より選択された、少なくとも1つの規準により選択され
    る、請求項1、4、6、8、10、12または13に記載の方法。
  18. 【請求項18】 選択されるベクターが第1の結合定数で第1の標的と結合
    し、かつ第2の結合定数で第2の標的と結合し、ここで、第2の結合定数が第1
    の結合定数の約10倍以上である、請求項1、4、6、8、10、12または13
    に記載の方法。
  19. 【請求項19】 第2の結合定数が第1の結合定数の約100倍以上である、
    請求項18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 第2の結合定数が第1の結合定数の約1000倍以上である、
    請求項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 ベクターおよびリンカーが、複数のベクター-リンカーコ
    ンジュゲートをそれらの第2の標的に対する親和性についてスクリーニングする
    ことにより得られた情報を用いて選択される、請求項1、4、6、8、10、1
    2または13に記載の方法。
  22. 【請求項22】 ベクター-リンカーコンジュゲートが放射性標識されてい
    る、請求項21に記載の方法。
  23. 【請求項23】 ベクター-リンカーコンジュゲートがプローブ分子に結合
    されている、請求項21に記載の方法。
  24. 【請求項24】 ベクター-リンカーコンジュゲートがコンビナトリアルケ
    ミストリー技法を用いてスクリーニングされる、請求項21に記載の方法。
  25. 【請求項25】 ファーマコフォアおよびリンカーが、複数のファーマコフ
    ォア-リンカーコンジュゲートを第1の標的に対するその親和性に関してスクリ
    ーニングすることで得られた情報を用いて選択される、請求項1に記載の方法。
  26. 【請求項26】 ファーマコフォア-リンカーコンジュゲートがプローブ分
    子に結合されている、請求項25に記載の方法。
  27. 【請求項27】 ファーマコフォア-リンカーコンジュゲートがコンビナト
    リアルケミストリー技法を用いてスクリーニングされる、請求項25に記載の方
    法。
  28. 【請求項28】 ファーマコフォアおよびリンカーが、複数のファーマコフ
    ォア-リンカーコンジュゲートを第1の標的に対するその親和性に関してスクリ
    ーニングすることで得られた情報を用いて選択される、請求項25に記載の方法
  29. 【請求項29】 第2の標的が第1の標的を含有する細胞内に位置し、該細
    胞内の第2の標的の濃度が約10-5モル以上である、請求項1、4、6、8、10
    、12または13に記載の方法。
  30. 【請求項30】 前記細胞内の第2の標的の濃度が約10-4モル以上である、
    請求項29に記載の方法。
  31. 【請求項31】 前記細胞内の第2の標的の濃度が約10-3モル以上である、
    請求項30に記載の方法。
  32. 【請求項32】 ファーマコフォアが、抗生物質;抗マイコプラズマ薬;抗
    ウイルス薬;抗真菌薬;抗原生動物薬;単細胞真核生物に対して活性のある分子
    ;寄生体に対して活性のある分子;代謝物と強固に結合する分子;巨大分子受容
    体への結合の阻害剤または活性化剤、例えば、神経受容体のアンタゴニストまた
    はアゴニスト、および転写因子の阻害剤または活性化剤;酵素の阻害剤または活
    性化剤;巨大分子間の結合相互作用の阻害剤または活性化剤;細胞のシグナル伝
    達経路に含まれるタンパク質間の結合相互作用または該タンパク質の触媒活性の
    阻害剤または活性化剤;核酸ポリメラーゼの阻害剤;タンパク質合成の阻害剤;
    プロテアーゼの阻害剤または活性化剤;キナーゼおよびホスファターゼの阻害剤
    または活性化剤;グリコシル化阻害剤;ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤;イオ
    ノフォア;核酸突然変異原;核酸アルキル化剤;核酸切断剤;およびその他のDN
    A修飾分子からなる群より選択される、請求項1、4、6、8、10、12また
    は13に記載の方法。
  33. 【請求項33】 リンカーが、 ポリエチレングリコール、ポリエチレンエニミン、または直鎖アルカン部分を
    含む分子; アミン、イミン、アミンオキシド、ヒドラジン、アゾ化合物、エーテル、チオ
    エーテル、スルホキシド、スルホンアミド、スルホニルエステル、リン酸エステ
    ル、ホスフィン、メチレン、メチン、カルボキシルアミド、カルボキシルエステ
    ル、およびイミデートからなる群より選択される末端基を含む分子; 直鎖アルカン、直鎖アルケン、アルキン、二置換および多置換フェニル環、二
    置換および多置換ナフタレン環、二置換および多置換シクロヘキシル環、二置換
    および多置換デカリン環、二置換および多置換ヘテロ芳香環、様々なコンホメー
    ション剛性を有する縮合アリール、ヘテロ芳香族およびアルキル環、直鎖アルキ
    ルアミン、直鎖アルキルアルコール、ポリアルキルアミン(ポリエチレンエニミ
    ンに基づくリンカーを含む)、ポリアルキルエーテル、もしくはポリアルキルチ
    オエーテルであるか、またはこれらの組合せである末端基を連結する鎖を有する
    分子; からなる群より選択される、請求項1、4、6、8、10、12または13に記
    載の方法。
  34. 【請求項34】 第2の標的が病原体の特異的かつ豊富なタンパク質または
    多糖産物である、請求項1、4、6、8、10、12または13に記載の方法。
  35. 【請求項35】 第2の標的が、ポリメラーゼ;転写酵素;リボソーム;タ
    ンパク質の折りたたみに関係したタンパク質または他のシャペロン;ウイルスの
    構造タンパク質;特定の真核細胞の豊富なタンパク質;酵素;および抗生物質耐
    性エレメントからなる群より選択される、請求項1、4、6、8、10、12ま
    たは13に記載の方法。
  36. 【請求項36】 リンカーの長さが、ファーマコフォアを第1の標的と相互
    作用させ、同時にベクターを第2の標的と相互作用させるのに十分な長さとなる
    ように、リンカーを選択する、請求項1、4、6、8、10、12または13に
    記載の方法。
  37. 【請求項37】 患者の疾病または病状の治療または予防に使用できるVLP
    コンジュゲートであって、 第1の標的に対する親和性を有するファーマコフォア成分、 リンカー成分、および 1以上の第2の標的に対する親和性を有するベクター成分、 を含んでなり、ここで、ファーマコフォア成分とベクター成分はリンカーに共有
    結合しており、それぞれの第2の標的は、該疾病または病状に罹患しているか罹
    患していそうな典型的患者において第1の標的の近傍に位置すると考えられ、そ
    して、第1の標的は第2の標的のいずれとも同じものではない、上記VLPコンジ
    ュゲート。
  38. 【請求項38】 ベクターをリンカーに結合している共有結合と、リンカー
    をファーマコフォアに結合している共有結合が、第1の標的を取り囲む生理的条
    件下で切断されない、請求項37に記載のVLPコンジュゲート。
  39. 【請求項39】 ベクター成分がソルダリン、ビオチンおよびキロマイシン
    からなる群より選択される化合物から誘導される、請求項37に記載のVLPコン
    ジュゲート。
  40. 【請求項40】 ファーマコフォア成分がフルコナゾール、ペニシリン、ト
    リメトプリム、およびテトラサイクリンからなる群より選択される化合物から誘
    導される、請求項37に記載のVLPコンジュゲート。
  41. 【請求項41】 ソルダリン-リンカー-フルコナゾールVLPコンジュゲート
  42. 【請求項42】 ビオチン-リンカー-ペニシリンVLPコンジュゲート。
  43. 【請求項43】 キロマイシン-リンカー-トリメトプリムVLPコンジュゲー
    ト。
  44. 【請求項44】 キロマイシン-リンカー-テトラサイクリンVLPコンジュゲ
    ート。
  45. 【請求項45】 VLPコンジュゲートを設計するための自動装置であって、 中央処理ユニットに作動可能に接続された入力手段、 該中央処理ユニットに作動可能に接続された出力手段、および 少なくとも1つのベクター、リンカー、ファーマコフォア、ベクター標的、お
    よびファーマコフォア標的についての物理的、薬理的、化学的、または構造的情
    報からなるデータベースを含む、該中央処理ユニットに作動可能に接続されたメ
    モリまたは記憶手段、 を含んでなり、ここで、 該中央処理ユニットは、該データベースから、第1の標的に対する第1の親和
    性を有するファーマコフォア、リンカー、および第2の標的に対する第2の親和
    性を有するベクターを選択するためにコンフィギュレーションされており、 第1の標的は第2の標的と同じものではなく、そして 第2の親和性は第1の親和性より大きいか、または、患者における第2の標的
    の濃度が第1の標的の濃度より高いかのいずれかである、上記自動装置。
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