JP2003504027A - ラクトバシラス・デルブリュッキイのラクトースオペロンと細菌細胞における遺伝子の転写及び/または発現のコントロールのためのその利用 - Google Patents

ラクトバシラス・デルブリュッキイのラクトースオペロンと細菌細胞における遺伝子の転写及び/または発現のコントロールのためのその利用

Info

Publication number
JP2003504027A
JP2003504027A JP2001508348A JP2001508348A JP2003504027A JP 2003504027 A JP2003504027 A JP 2003504027A JP 2001508348 A JP2001508348 A JP 2001508348A JP 2001508348 A JP2001508348 A JP 2001508348A JP 2003504027 A JP2003504027 A JP 2003504027A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
dna sequence
promoter
lac
delbrueckii
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001508348A
Other languages
English (en)
Inventor
ジェルモン、ジャック、エデュアール
ラピエール、ルシアン
モレ、ベア
Original Assignee
ソシエテ デ プロデユイ ネツスル ソシエテ アノニム
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ソシエテ デ プロデユイ ネツスル ソシエテ アノニム filed Critical ソシエテ デ プロデユイ ネツスル ソシエテ アノニム
Publication of JP2003504027A publication Critical patent/JP2003504027A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/74Vectors or expression systems specially adapted for prokaryotic hosts other than E. coli, e.g. Lactobacillus, Micromonospora
    • C12N15/746Vectors or expression systems specially adapted for prokaryotic hosts other than E. coli, e.g. Lactobacillus, Micromonospora for lactic acid bacteria (Streptococcus; Lactococcus; Lactobacillus; Pediococcus; Enterococcus; Leuconostoc; Propionibacterium; Bifidobacterium; Sporolactobacillus)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/195Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from bacteria
    • C07K14/335Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from bacteria from Lactobacillus (G)

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 本発明は細菌、望ましくはグラム陽性細菌における各種遺伝子の転写かつ/または発現をコントロールするために適したDNA配列に関するものである。特に、本発明はプロモーターと内部に配置された当該遺伝子産物をコードするDNA配列をもつラクトバシラス・デルブリュッキイのlacオペロンのlacリプレッサーをコードする遺伝子から構成されるDNA配列に関するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は細菌、望ましくはグラム陽性細菌における各種遺伝子の転写及び/ま
たは発現をコントロールするために適したDNA配列に関するものである。特に、
本発明はオペロンとの機能的関連において配置された当該遺伝子産物をコードす
るDNA配列をもつラクトバシラス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbrueck
ii)のlacオペロンのプロモーター/オペレーター部位から構成されるDNA配列に
関するものである。
【0002】 食品会社では、各種の乳酸菌を用い、主に当該細菌の発酵能を利用してチーズ
、バターミルクあるいはヨーグルトなどの食品を生産している。この目的のため
に使用する細菌は例えば連鎖球菌属や乳酸杆菌属などであり、その主な機能はラ
クトースやグルコースなどの糖を乳酸に変換し、満足のいく食感や香りを生み出
すことである。
【0003】 このような発酵に伴う問題点の1つは、代謝過程の最終産物である乳酸が過剰
に産生されることが多く、乳製品の酸味がほとんどの消費者に受け入れられない
ほど強くなってしまう、ということである。したがって、生産工程に従事する者
は、過剰発酵が食品に対して与える悪影響をなくすために、製造工程の進行をコ
ントロールするよう注意を払わなければならない。
【0004】 乳酸菌はまた、pHが低く発酵過程の間に生じる発酵産物が有害な細菌の増殖を
阻害する作用をもつという利点を利用して、食品の保存のための発酵剤としても
使用されてきた。このような場合でも、細菌の生物学的活性をコントロールし、
生産工程を望ましい段階で停止させるのは担当者の力量に任されている。
【0005】 このため、食品の生産のために使用される微生物の発酵活性をコントロールし
、担当者側があまり苦労することなく食品の生産過程の最適な段階まで発酵させ
ることを可能にする技術が必要とされる。
【0006】 近年の生産者らは、遺伝子組換え技術により発酵過程で利用する細菌に有益な
特性を付加しようと試みてきた。このために、当該ポリペプチドをコードする同
種あるいは異種の遺伝子をもつベクターが、染色体外のまま、もしくは細菌の染
色体中に挿入する形で、細菌細胞中に導入されている。次に、当該遺伝子に結合
し望みどおりコントロールすることが可能な異種プロモーターによって、発現を
調節する。
【0007】 これによって異種遺伝子の発現をコントロールすることは可能となるが、この
手段は希望する遺伝子の発現をコントロールするために使用するレギュロンがほ
とんどの場合細菌にとって外因性のものである、という短所がある。現時点では
、食品の生産に利用する細菌に外来遺伝子を使用することはまだ消費者に受け入
れられていない。
【0008】 本発明の目的は、これまでの技術で見られたような短所のない、細菌における
遺伝子の転写/発現をコントロールするための手段を提供することである。
【0009】 上述の目的は、以下のような一般的構造をもつDNA配列を提供することによっ
て解決された。 p/o−(A)n−Ry、または p/o−Ry−(A)n ただし、p/oは配列番号9に基づき特定されるDNA配列もしくはその機能的変異
体を表し、ラクトバシラス・デルブリュッキイのlacリプレッサー蛋白質に結合
する能力を保持している;Aは当該ポリペプチドをコードする遺伝子を表す;n
は0以上の整数を表す;Rは配列番号2に基づき特定されるlacZリプレッサー蛋
白質をコードする遺伝子もしくはその機能的変異体を表す;そしてYは0または
1である。
【0010】 すなわち、y=0の場合、lacリプレッサー蛋白質をコードする遺伝子は細菌
染色体のどの部位にあってもよく、何らかの適切なプロモーター領域によって決
定され、例えば構成的に発現される。
【0011】 望ましい態様として、DNA配列はそれぞれ一般的構造p/o−(A)n−Rまたはp/o−
R−(A)nで表され、p、A及びRは上述のとおりである。この場合、すなわちy=1
の場合、構築物はプロモーター/オペレーター領域、当該ポリペプチドをコード
する遺伝子、そしてlacリプレッサー蛋白質(lacR)をコードする遺伝子の3つ
の要素から構成され、それぞれのポリペプチド(A、lacR)をコードする遺伝子
の順序はどちらでもよい。lacR遺伝子は自身のプロモーター/オペレーターの支
配下にある。また、lacR蛋白質をコードする遺伝子の転写方向が当該ポリペプチ
ドをコードする遺伝子Aの方向と逆であってもかまわない。
【0012】 別の望ましい態様として、当該ポリペプチドをコードする遺伝子を、例えばデ
キストランスクラーゼ(dextransucrase)、グリコシルトランスフェラーゼ、フ
ィターゼ(phytase)、トランスグルタミナーゼ、ペプチダーゼ、フェニルアラ
ニンアンモニアリアーゼ(phenylalanine ammonia lyase)、プロテアーゼ、細
胞表面抗原、バクテリオシン類(bacteriocins)、ホルモン類、インシュリンな
どの酵素、細胞表面蛋白質または機能的ペプチドで構成されるグループから選択
する。
【0013】 プロモーター領域には異化産物反応性要素がまったく欠如していてもよいため
、特定の炭素源の存在下における抑制は影響を受けない。
【0014】 別の望ましい態様として、DNA配列を使用して微生物、望ましくはグラム陽性
細菌、さらに望ましくは乳酸球菌、乳酸杆菌、連鎖球菌、ロイコノストック(Le
uconostoc)などの乳酸菌で構成されるグループから選択される微生物の形質転
換を行う。
【0015】 DNA配列は、プラスミドまたはウイルス構築物のような適切なベクターによっ
てそれぞれの微生物中に取り込ませ、微生物の染色体外にとどまらせることが可
能である。別の望ましい態様として、接合の後プラスミドと同種染色体配列との
間でのクロスオーバー(crossing over)を行うことにより、または直接の形質
転換とシングルもしくはダブルのクロスオーバー組み込みにより、構築物を細菌
の染色体中に挿入することも可能である。
【0016】 このように、本発明に基づくDNA構築物は、RNAやポリペプチドのような遺伝子
産物の転写及び/または発現のために効果的に使用することができる。
【0017】 どの細胞系においても、その代謝及び異化によるターンオーバーを維持し、環
境の変化に対して反応するためには、遺伝子の転写及び/または翻訳が正常に制
御されることが必要条件である。栄養源の変化など、環境の変化によりよく順応
するために、微生物は転写及び/または翻訳の両レベルにおいて遺伝子発現をコ
ントロールするための各種のシステムを作り出してきた。
【0018】 グラム陰性細菌である大腸菌(Escherichia coli)に関して、このようなコン
トロールシステムのいくつかが研究されている。その結果、ラクトースの異化を
担う遺伝子、すなわちそれぞれβ−ガラクトシダーゼ(lacZ)、ラクトースパー
ミアーゼ(lactose permease)(lacY)及びトランスアセチラーゼ(lacA)をコ
ードする遺伝子が特定の構造パターンで構成されていることが明らかになり、オ
ペロンと名付けられた。このオペロンの中で、構成ポリペプチドをコードする遺
伝子は、当該遺伝子の転写を調節しリプレッサー蛋白質による負の制御を受ける
領域であるDNA領域(オペレーター)の下流に位置する。リプレッサー蛋白質を
コードする遺伝子は、別のプロモーターによって制御され、リプレッサーの構成
性発現が起こる。
【0019】 リプレッサー蛋白質は、抑制条件の下でプロモーター/オペレーター領域に結
合することによって、隣接遺伝子(lacZYA)の転写を防いでいる。しかし、誘導
物質であるラクトースやアロラクトースの存在下では、リプレッサーは誘導物質
と共に複合体を形成し、この複合体はプロモーター/オペレーターに対する親和
性があまり高くないため、遺伝子の転写を起こさせてしまう。
【0020】 乳酸菌のようなグラム陽性細菌におけるlacオペロンの調節は、リプレッサー
として作用するポリペプチドによっても媒介されることが明らかになり、これは
lacRと名付けられた遺伝子によってコードされる。この遺伝子は、Lactococcus
lactis(van Rooijen et al., J.Biol.Chemistry 265 (1990), 18499−18503)
及び黄色ブドウ球菌(Oskouian et al., J.Bacteriol. 169 (1987), 5459−5465
)において配列決定されている。これらの微生物ではまた、リプレッサーがオペ
レーターに対して高い親和性を有しており、誘導物質がなくてもそれに結合する
ため、それより下流に位置する遺伝子の転写阻害が起こる。ラクトースやガラク
トースのような誘導物質が存在しても、リプレッサーはそれ以上オペロンに結合
することができず、オペレーター領域の後ろにある構成遺伝子はすべて一緒に転
写される。
【0021】 乳酸菌においては、ラクトースを細胞中に内在化させるためのシステムが2種
類報告されている。PoolmanらはJ.Bacteriol. 171 (1989), 244−253の中で、ホ
スホエノールピルビン酸依存性のホスホトランスフェラーゼシステムとラクトー
スパーミアーゼシステムについて報告した。乳酸杆菌、連鎖球菌及びロイコノス
トック属においては、ラクトースパーミアーゼがラクトース/ガラクトース交互
輸送機構として作用することが報告されている。微生物は培地からラクトースを
遊離の糖として取り込み、これはその後加水分解されてグルコース及びガラクト
ースになる。ガラクトースはLeloir経路によってグルコース−6−リン酸に変換
されるか、あるいはパーミアーゼによって培地中に排出されるかのいずれかであ
る。
【0022】 J.Bacteriol. 171 (1989), 244−253及び173 (1991), 1951−1957の中で、S.t
hermophilus及びL.デルブリュッキイのそれぞれのラクトースパーミアーゼ遺伝
子(lacS)のクローニングと配列決定について報告されている。これらの遺伝子
は、オペロン構造の中でβ−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子(lacZ)と共
に配置されていることが明らかになった。β−ガラクトシダーゼの遺伝子は、S.
thermophilus(Schroeder et al., J.Gen.Microbiol. 137 (1991), 369−380),
L.bulgaricus(Schmidt et al., J.Bacteriol. 171 (1989), 625−635)及びL.
casei.(Chassy et al., FEMS Microbiol. Rev. 63 (1989), 157−166)など、数
種類の乳酸菌に関して開示された。
【0023】 lac遺伝子はまた、異化代謝産物抑制を受ける可能性があることが明らかにさ
れている。例えばグルコースのような特定の物質の存在下では、lacオペロンの
遺伝子は抑制された状態で維持される。この作用はcis作用性要素によって媒介
され、最初にBacillus subtilisにおいて報告されたもので(Weickert et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990), 6238−6242)、「異化代謝産物反応性
要素」(CRE)と名付けられた。この要素は、種々のグラム陽性細菌の炭素異
化代謝産物酵素をコードするさまざまな遺伝子配列の中に存在し、trans作用性
因子であるCcpA(異化代謝産物コントロール蛋白質A)及びHprによってコントロ
ールされているようである。グルコースの存在下では、これらの蛋白質はどちら
もCRE配列に結合し、転写の負の調節物質として作用する。
【0024】 L.デルブリュッキイの種属には主として2種類の亜種、L.lactis及びL.bulgar
icusが含まれ、いくつかの生理学的及び遺伝学的基準によって分類されている。
このような基準のうちの1つは、ラクトース(lac)オペロン発現の調節に関す
るものである。亜種lactisにおいては、発現はラクトースによって誘導されるた
め、lac遺伝子はこの糖が存在する場合にのみ発現する、ということになる。亜
種bulgaricusは牛乳を発酵させてヨーグルトを産生する能力をもつということで
大昔に選別されたもので、この亜種の場合おそらく牛乳中にラクトースが常に豊
富に存在するためにlac遺伝子発現のコントロールが欠如しており、ラクトース
の存在不在にかかわらず遺伝子は構成的に発現されている。
【0025】 本発明に至った実験においては、6種類の代表的な菌株を選択し、lacオペロ
ンによる遺伝子の調節について検討した。5種類の菌株は亜種lactisに属し、ラ
クトースの存在によって誘導し得る株をLL44、LB68、N62及びN141、そして亜種l
actisに属すると分類されるがlacオペロンが構成的に発現している株をLB10と命
名した。6番目の菌株N299はATCC 11842に相当するもので、lac遺伝子を構成的
に発現している典型的なBulgaricus菌株として選択した。
【0026】 乳酸杆菌の菌株の分析を行う間に、ラクトース(lac)オペロンの隣に位置す
る領域を分離したため、以後に続く領域の特徴解析が可能となった。
【0027】 (lacA遺伝子) lacオペロンのプロモーター領域に関する研究の間に、lacS遺伝子の上流に570 bpのオープンリーディングフレーム(open reading frame)が同一方向で存在
することを発見した。この遺伝子はL.デルブリュッキイのlactis亜種、菌株LL44
に関して完全な配列決定を行い(配列番号1)、190個のアミノ酸残基から成る
ポリペプチド(配列番号2)をコードするものである。推定上のプロモーターと
ρ−非依存性終結シグナル(ステム−ループ構造;第823位、配列番号1)が存
在することから、この遺伝子はlacオペロンには属さないことが示唆される。
【0028】 (プロモーター領域) lacAの末端とlacS(ラクトースパーミアーゼ)の開始点との間の領域の配列を
決定した結果、プロモーターとしてのいくつかの特性が示された。O1及びO2と
呼ばれる二個のパリンドローム配列(図1)が発見され、lacリプレッサー(Lac
R)結合のためのオペレーターとして働くと考えられる。実験に使用した6種類
の菌株(LL44、LB68、N62、N141、LB10及びN299)のオペロンの配列を決定した
。いくつかの差異が明らかになったが、その理由の一部はO1の逆方向反復配列
の中にIS要素が挿入されていることであり、また別の理由は配列の中に小さいヌ
クレオチドの変化が見られたことであった(図1)。O1の5’末端のTGTモチー
フの位置でISL7が正確にN141中に挿入されているが、TG塩基を保持している(図
1)。L.デルブリュッキイの亜種であるbulgaricus菌株N299では、同位置へのIS
L5の挿入によってTGTモチーフが破壊されたため、隣接遺伝子が構成的に転写さ
れていることの説明になるかもしれない。
【0029】 乳酸菌において転写が効果的に抑制されているのは、LacRが2種類のオペレー
ター配列に協同的結合をしていることによると考えられる。L.デルブリュッキイ
では、O2と呼ばれる小さいオペレーターがO1の4bp下流で発見された。分析し
た6種類の菌株の間で、配列に多少のヌクレオチド変化があったため、O2の長
さも相当にばらついていた(図1)。しかし、このオペレーター内にはIS要素は
検出されなかった。両逆方向反復配列の中心部分はヌクレオチドTGTTTA(配列番
号3)及び(配列番号4)で構成されているが、LL44だけはO2の最後のAがGで
置換されていた(配列番号5)。
【0030】 実験に使用したすべてのL.デルブリュッキイ株のlacS開始コドンの40ヌクレオ
チド上流に、異化代謝産物反応性要素(CRE)(Weickert、上述)と相同の14
個のヌクレオチド配列を発見した(図2、図3、配列番号8)。多くの細菌にお
いて異化代謝産物抑制が有効であり、負の転写コントロールによって転写レベル
で作用する。グルコースの存在下でそのコントロール下にある遺伝子の抑制を担
うcis作用性要素が関与している。これらの要素の配列は種属が異なっても温存
性が非常に高く、L.デルブリュッキイの亜種であるlactisの配列は他の要素と非
常によく似ている。
【0031】 図2及び図3に示すのは、実験に使用した菌株のうち5種類のlacオペロンの
プロモーター領域である。これらはL.デルブリュッキイ種の各種lacオペロン構
造として可能性がある配列の代表であると考えられる。誘導可能な乳酸菌菌株4
種類LL44、LB68、N62及びN141と構成性bulgaricus菌株N2991種類を代表として
挙げた。菌株LB10のプロモーター領域は、この菌株のlacプロモーター中にISL6
が存在しないことを除いてN62と同一であるため、示さなかった。N299における
転写の開始は(Leong-Morgenthaler et al., J.Bacteriol. 173 (1991), 1951−
1957)、この菌株のCRE要素中で発見された3個のヌクレオチド変化(図2及び
3)の直後にある、CRE要素の中央部で起こる。
【0032】 LL44には、そのlacオペロン領域中にIS要素がないため、標準株として選択し
た。この菌株では、lacA遺伝子の後に2個のオペレーターO1及びO2が続き、さ
らにlacS遺伝子の上流にCRE要素が存在する。他の菌株では、IS要素が存在する
ためプロモーター配列、特にO1オペレーターの配列が変化していた。
【0033】 (lacR遺伝子) 驚くべきことに、そして既知のlacオペロンの遺伝子配列とは対照的に、L.デ
ルブリュッキイの亜種である乳酸菌LL44及びLB68においてlacZ遺伝子の下流にリ
プレッサー蛋白質をコードする遺伝子が発見され、このリプレッサーはそれ自体
の転写コントロール下にあることが明らかになった。
【0034】 lacR遺伝子が含まれる領域を、以下のプライマーを用いてPCR増幅した: CGCCTGGTGATTCAGCC (配列番号6) AGCTTTACGGGGAAGTCGGG (配列番号7) これらはβ−ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子(配列番号6)及びAsn−tRNA
合成酵素(asnA)遺伝子(配列番号7)の末端に位置する。
【0035】 この領域の配列決定を行うことにより、配列番号8として特定される配列が明
らかになった。これはlacZと同一方向にある999 bpのオープンリーディングフレ
ームである。lacR遺伝子の前にはリボソーム結合部位(RBS)があり、後ろには
推定上のρ−非依存性終結シグナル(ステム−ループ構造;第1149位)が続いて
いる。この遺伝子から産生される推定上のアミノポリペプチドは、配列番号2と
して示される(333個のアミノ酸残基)。
【0036】 L.デルブリュッキイのlacR遺伝子をコンピュータ解析した結果、遺伝子の開始
部位(第4位から23位)の蛋白質二次構造がらせん−回転−らせんのモチーフで
あることが予想され、他のリプレッサーと非常に相同性の高い領域であることが
示される。この種の蛋白質二次構造は、DNA結合蛋白質に共通の特徴であり、プ
ロモーター領域内に位置するオペレーターを結合する。
【0037】 (lacオペロン) L.デルブリュッキイの各種菌株のlacオペロンの構造を図5に示す。lacオペロ
ン自体の前にチオガラクトシル−トランスアセチラーゼ(lacA遺伝子)があり、
その後ろにrho非依存性終結シグナルが続く。この遺伝子の後にlacオペロンのプ
ロモーター領域があり、これは遺伝子発現の調節に関与する逆方向反復配列(オ
ペレーター)とCRE配列から構成される。lacオペロンはパーミアーゼ(lacS)、
β−ガラクトシダーゼ(lacZ)及びリプレッサー(lacR)の3種類の遺伝子から
構成される。lacS遺伝子とlacZ遺伝子は4個のヌクレオチドで隔てられているの
に対して、lacRはlacZからヌクレオチド52個分離れている。
【0038】 lacオペロンのプロモーター及びターミネーター領域中では5個のIS要素が発
見されており、ISL3, ISL4, ISL5, ISL6及びISL7と命名された。これらの要素の
1つであるISL3については、Germondら, Mol. Gen. Genet. 248 (1995)、407
−416に報告されている。
【0039】 lacオペロン自体を構成するのはラクトースパーミアーゼ(lacS)、β−ガラ
クトシダーゼ(lacZ)及びリプレッサー(lacR)である。L.デルブリュッキイの
亜種の乳酸菌では、これら3種類の遺伝子はlacSZRオペロンとして互いに結合し
ており、間にプロモーターは入っていない。通常、lacR遺伝子はオペロンの一部
ではないため、この遺伝子配列は調節されるオペロンに共通の特徴ではない。
【0040】 L.デルブリュッキイのlacオペロンはラクトースのみによってさらに誘導され
、オペロンの一部として、誘導可能な条件下でリプレッサーの産生量が増加する
ものと考えられる。L.デルブリュッキイの亜種である典型的ヨーグルト産生菌bu
lgaricusにおいては、少数のヌクレオチド挿入と配列の欠如によってlacR遺伝子
が不活化されており、この亜種の構成性表現型となっている。
【0041】 L.デルブリュッキイの亜種である乳酸菌では、リプレッサーがlacS遺伝子の上
流に位置するプロモーター領域に結合することができる。この領域には2個の逆
方向反復配列O1及びO2が含まれ、結合を補助するものと考えられる。2個のオ
ペレーターが存在することによって、in vitroでリプレッサーとの複合体が安定
化する。これは、オペレーターとリプレッサーの各種サブユニットとの間でDNA
ルーピングが起こることによるものである。
【0042】 抑制の程度は、プロモーター領域におけるオペレーターの位置によって決まる
。−10位の要素と開始コドンとの間に結合したリプレッサーは、ポリメラーゼ分
子が−35位の要素と共に複合体を形成し得るため、ポリメラーゼと競合するのに
対して、−35位の要素の上流に位置するオペレーターはポリメラーゼを−10位の
要素及び開始部位にアクセスさせるため、あまり有効ではない。スペーサー領域
に位置するオペレーターは、オペロンのより厳しいコントロールを確実にする働
きをする。L.デルブリュッキイのO1オペレーターは−35位の要素の上流に位置
するが、O2オペレーターはスペーサー領域内に位置する。このオペレーターの
長さは非常に変動が大きく、LL44でのヌクレオチド11個からN299での22個までの
範囲である。
【0043】 in vitroにおけるプロモーター/リプレッサーシステムの機能について検討す
るため、誘導可能な菌株LL44及び構成性菌株N299のプロモーターをリプレッサー
遺伝子の存在下あるいは不在下で、リポーター遺伝子、例えばクロラムフェニコ
ールアセチルトランスフェラーゼまたはβ−グルクロニダーゼの前でクローニン
グした。E.coli及びLactococcus lactisにおいて各種の発現系を試みた。
【0044】 β−グルクロニダーゼ産生を誘導させた結果、LL44のlacRに関連する各種プロ
モーターの間で顕著な差があることが明らかになった。LL44のプロモーターをも
つプラスミド(pLL112)は1.0%のラクトースによって250 mU/mg蛋白質のレベ
ルまで完全に誘導されたが、N299のプロモーターをもつプラスミド(pLL116)は
lacR遺伝子がgusA遺伝子と反対の方向にある時、約100 mU/mg蛋白質までしか到
達しなかった。lacR遺伝子をgusA遺伝子と同一方向で導入した場合(pLL115)、
導入のレベルは40 mU/mg蛋白質程度まで低下した。これはおそらく、lacR遺伝
子の前にプロモーターがなく、lacR遺伝子がgusA遺伝子とセンスの関係にある場
合にはN299の強いlacプロモーターによってコントロールされるか、あるいはア
ンチセンスの向きにある場合にはpNZ272上に位置するはずの弱いプロモーターに
よってコントロールされるか、のいずれかであるためと考えられる。LL44に関し
て、gusA以外に同一センスのlacR遺伝子を得ることも不可能であった。また、Gu
sAを産生させた結果、L.デルブリュッキイのプロモーター中にCRE配列が存在す
るため、すべてのプラスミドがグルコース異化代謝産物抑制を受けることも示さ
れた。N299のCREは一部破壊されており、このプロモーターによって観察される
抑制はLL44よりも弱い。
【0045】 in vivoにおけるβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した結果、L.デルブリュッ
キイの菌株はグルコース異化代謝産物抑制をほとんど受けないことが明らかにな
った。また、β−ガラクトシダーゼ活性から、L.デルブリュッキイの亜種である
乳酸菌菌株が誘導可能な特性をもつことが確認され、bulgaricus菌株の構造性も
確認された。実際、LL44、LB68、N62及びN141は単独の炭素源としてグルコース
が存在する場合に誘導されなかったが、N299の場合にはグルコース培地中におい
てもβ−ガラクトシダーゼ活性が高かった。オペロンに誘導可能な特性があるこ
とから、菌株は1つの基質から別の基質へと代謝を迅速に切り換えることが可能
となる。
【0046】 このように、本発明に基づき、上述したp/o−(A)n−Ryあるいはp/o−Ry−(A)n の構築物を調製し、当該構築物を細菌の中に導入することによって、細菌におけ
る同種かつ/または異種の遺伝子の転写かつ/または発現を適切に得ることが可
能になると思われる。
【0047】 本発明に基づき、培養培地中のグルコースかつ/またはラクトースの含有量を
それぞれ調節することによって、特定の遺伝子ポリペプチドの転写かつ/または
発現をコントロールすることが可能である。例えば、ラクトース不在の培地中で
細菌を適度に増殖させ、次の段階としてラクトースを含有する培地に移すか、あ
るいは単純に培地にラクトースを添加する。この段階になって初めて当該遺伝子
の転写かつ/または発現に対する構築物の抑制活性が解除され、遺伝子産物が産
生されるようになる。
【0048】 構築物の誘導活性を補助するため、ラクトースパーミアーゼの遺伝子は「A」
と名付けられたポリペプチドの1つであると考えられる。このため、細菌細胞中
に一定量のラクトースが入ると、前述したプロモーターの後ろの遺伝子がポリペ
プチドのうちの1つにより転写されて発現し、それによってラクトースパーミア
ーゼとなり、残りのラクトースを積極的に細胞中に流入させる。
【0049】 さらに、異化代謝産物反応性要素が含まれる領域を欠損させ、構築物が炭素抑
制を受けないようにするのも妥当であると思われる。
【0050】 以下の例は本発明を説明するものであるが、添付した請求項の範囲を限定する
ものではない。
【0051】 (例1) (細菌の菌株と増殖条件) 乳酸杆菌をDifco乳酸杆菌用MRSブロス(DeMan et al., J.Appl.Bacteriol. 23
(1960), 130−135)またはOxoid BHIブロス中で増殖させた。乳酸球菌の菌株は
、0.5%グルコースを添加したDifco M17ブロス(Terzaghi et al., Appl.Microb
iol. 29 (1975), 807−813) (GM17)中で培養した。E.coliは、Maniatis et al.
, Molecular clonig:実験室マニュアル第2版、Cold Spring Harbor Laboratory
, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989)に従って調製した2倍のYTブロス中で増殖
させた。菌株はすべて、10%グリセロールを含有する各培地中で10倍に濃縮し、
−80℃において保存した。
【0052】 Escherichia coliにおけるプラスミドの選別及び維持のために、増殖用培地中
にアンピシリン(100 μg/ml)、クロラムフェニコール(30 μg/ml)、また
はカナマイシン(50 μg/ml)を添加した(アンピシリン及びカナマイシンはSi
gma社から、クロラムフェニコールはBoehringer Mannheim社からそれぞれ購入し
た)。Lactococcus lactis MG1363におけるプラスミドの選別及び維持のために
、増殖用培地中に12 μg/mlの濃度のクロラムフェニコールを添加した。
【0053】 (染色体DNA及びプラスミドDNAの精製) Delleyら, Appl. Environ. Microbiol. 56 (1990), 1967−1970に従って乳酸
杆菌のDNAを調製した。E.coliからのプラスミドDNAは、アルカリ溶菌法によって
精製した(Maniatis, 上述)。乳酸球菌のプラスミドDNAも同様の手順によって
調製したが、最初に培養液を10 mg/mlのリゾチームを含有するTE(10 mM Tris-
HCl, pH 8.0;1mM EDTA)中で37℃において30分間培養するという点のみ異なっ
ていた(試薬はすべてSIGMA社から購入した)。
【0054】 (DNAの操作及び細菌の形質転換) 標準的手法(Maniatis、上述)に従って、E.coliにおけるアガロースゲル電気
泳動、制限酵素による切断、連結及び形質転換を実施した。必要に応じて、切断
反応液中にT4 DNAポリメラーゼ(Boehringer-Mannheim)を直接添加し37℃にお
いて5分間反応させることによって切断したDNAの末端をブラントエンドとした
【0055】 各種のL.デルブリュッキイオペレーターをプラスミドpKK232-8(Apr, Camr,
プロモーターのないクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)
遺伝子を含有、E.coliベクター、Pharmacia)中にクローニングし、E.coli SURE
(STRATAGENEから入手)中で形質転換させた。30μg/mlのクロラムフェニコー
ルを含有するYT−寒天プレート上で形質転換株を選択した。LL44のlacR遺伝子を
プラスミドpKK223-3(Apr、強いtacプロモーターを含有、Pharmacia)中にクロ
ーニングし、E.coli SURE中で形質転換させた。100 μg/mlのアンピシリンを含
有するYT−寒天プレート上で形質転換株を選択した。lacRの過剰発現のためには
、2mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)を培地に添加し、細
胞を37℃においてさらに4〜5時間増殖させた。培養液を遠心分離し、沈渣を0.
1 M Hepes中に再懸濁した後、超音波処理を行って遠心分離した。上清をSDS/PA
GEゲルに添加した(Laemmli, Nature 227(1970)、680−685)。
【0056】 lacR遺伝子をプラスミドpET11c(STRATAGENEから入手)中にクローニングした
後、プラスミドをE.coli BL21(STRATAGENE)中で形質転換させた。100 μg/ml
のアンピシリンを含有するYT−寒天プレート上で形質転換株を選択し、1mM IPT
Gの存在下で上述のようにしてlacRを過剰発現させた。最終的に、lacR遺伝子を
プラスミドpACYC177(New England Biolabs)のアンピシリン遺伝子のPstI部位
にクローニングし、E.coli XL1-Blue(STRATAGENE)中で形質転換させた。50 μ
g/mlのカナマイシンを含有するYT−寒天プレート上で形質転換株を選択した。l
acR遺伝子を含有するプラスミドpACYC177を、別のオペレーターを含有するpKK23
2-8プラスミドと共にE.coli XL1-Blue中で形質転換させた。pKK232-8の存在を確
認するためには100 μg/mlのアンピシリン存在下で、またpACYC177の存在を確
認するためには50 μg/mlのカナマイシン存在下で、それぞれ形質転換株を選択
した。
【0057】 Holoら、Appl.Environ.Microbiol. 55(1989)、3119−3123に従って、Lactoc
occus lactis MG 1363(NCDO 712のプラスミド不在株;Gasson、M.J.、NCDO(19
83)712)及びプロトプラストによりキュアリング(curing)を誘導した後の他
の乳連鎖球菌J. Bacteriol. 154:1-9)のコンピテント細胞及び形質転換を実
施した。500 mMのショ糖及び3%グリシンを含有するGM17−ブロス中で細胞をOD 600 が0.2〜0.3になるまで増殖させ、遠心した後、500 mMのショ糖及び10%グリ
セロールを含有する溶液中で数回洗浄した。コンピテント細胞は、同溶液中で10
0倍に濃縮し、使用時まで−80℃において保存した。
【0058】 細胞(40 μl)を5 μlのプラスミドDNAと混合し、2.0 kV、25 μF及び200
Ωにおいて電気的形質転換を行った。20 mMのMgCl2及び2 mMのCaCl2を含有する
GM17−ブロス中に再懸濁し、30℃において90分間発現させた。次に、12 μg/ml
のクロラムフェニコールを含有するGM17寒天プレート上に接種した。異なる種類
のL.デルブリュッキイプロモーターをGUS遺伝子の上流にクローニングした場合
には、50 μg/mlのX-glu(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイル−β−D−
グルクロニド)(Amresco)をGM17寒天プレートに添加して、青いコロニーを選
別した。
【0059】 (DNAの増幅と配列決定) DNAの増幅は、0.2 mMの各dNTP、1 mMの各オリゴヌクレオチドプライマ
ー、適切な緩衝液及びTaqポリメラーゼ(ゴールドポリメラーゼ、Perkin-Elmer
)の存在下で、以下の条件の下に行った:94℃で1分間−55℃で2分間、及び72
℃で3分間を35サイクル。特別に作成したオリゴヌクレオチドプライマーを使用
した。DNA配列は、VISTRA Thermo配列決定キット(Amersham)を用いてPCRによ
り直接決定し(Sanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74 (1977), 5463
−5467)、その後Wisconsin大学、遺伝学コンピュータグループ(GCG)のコンピ
ュータソフトウエアパッケージ(Devereux, Nucleic Acids. Res. 12 (1984), 3
87−395)を使用して分析した。
【0060】 (自然発生リプレッサー陰性LL44突然変異株の分離) グルコース及び200 μg/mlのX-gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイ
ル−β−D−ガラクトピラノシド)(Sigma)を含有するMRS寒天プレート上でL.
デルブリュッキイの亜種である乳酸菌株LL44を分離し、そのlacオペロンの誘導
能の状態についてチェックした。白色コロニーの1つを、10%ラクトースを含有
するMRS-ブロス中で42℃において一晩、さらにインキュベートした。培養液を24
時間冷蔵庫で保存した後、10%ラクトースを含有するMRS-ブロス中に継代し、42
℃において7時間、培養した。この培養液を希釈し、グルコースと200 μg/ml
のX-galのみを含有するOxoid Reinforced Clostridial培地(RCM)寒天プレート
上に接種し、lac構造性の青い変異株を選別した。プレートは、微好気性の条件
下で40℃において72時間インキュベートした(BBL、微好気システムNo.71034)
。青いコロニーを分離してさらに培養し、上述のようにしてMRS-ブロス中で保存
した。
【0061】 (クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼアッセイ(Shaw, Meth
ods Enzymol. 43 (1975), 737−755)) 必要な抗生物質(DNAの操作及び細菌の形質転換の項を参照)を含有する2倍
のYT-ブロス中で、37℃において一晩、振とう下で細胞を増殖させた。0.5%のラ
クトースあるいは0.5%のグルコースのどちらかを含有する新鮮なYT-ブロス10 m
l中に、一晩培養した培養液1%を接種した。抗生物質としてカナマイシン(50
μg/ml)かつ/またはアンピシリン(100 μg/ml)を使用した。細胞を37℃に
おいて3時間インキュベートした後、遠心分離し、沈渣を2mlのHepes 0.1M中に
再懸濁した。懸濁液を30秒間超音波処理した後遠心分離し、上清を同一容積の2
倍濃縮緩衝液(200 mM Tris-HCl、[pH 8.0]−0.2 mMアセチルCoA−0.8 mg/ml D
TNB)と混合して、クロラムフェニコールを最終濃度0.1 mMとなるように添加し
た。混合液を37℃において4分間インキュベートし、412 nmにおけるODを測定し
た。
【0062】 実験の2サイクル目では、YT-ブロスの代わりに以下を含有する溶液を使用し
た:1/5容積の5倍M9-塩類(Na2HPO4・7H2O、450 mM−KH2PO4、110 mM−NaCl、4
5 mM−NH4Cl、93 mM)、0.5%のグルコースまたはラクトース、1mMのCaCl2、20
mMのMgCl2及び10 mMのチアミン。アッセイの他の部分は上述のとおりに実施し
た。
【0063】 (β−グルクロニダーゼ活性の測定) (Bergmeyer、酵素分析法2,1983, 206−209の改良法) 0.5%のマンノース及び12μg/mlのクロラムフェニコールを含有するM17-ブロ
ス中で30℃において一晩細菌をインキュベートすることにより、形質転換したLa
ctococcus lactisの開始菌株を調製した。各種糖類を含有する10 mlのM17に一晩
培養した培養液2%を接種し、OD660が約1.0になるまで30℃においてインキュベ
ートした。遠心分離した後、使用時まで細胞を−20℃において保存した。アッセ
イ時には、これらの細胞を0.1%Triton X100を含有する蒸留水2ml中に再懸濁し
、室温で30分間インキュベートした後、遠心分離によって回収した。次に、50
μg/mlのパラ−ニトロフェニル−β−D−グルクロニド(Clonetech)を含有す
るGUS緩衝液(50 mM NaHPO4[pH 7.0]、10 mMβ−メルカプトエタノール、1mM
EDTA、0.1% Triton X100)2ml中に細胞を再懸濁した。37℃において1時間イ
ンキュベートした後、500 μlを停止溶液(2mM Na2CO3)500 μlと混合した。
遠心分離した後、415 nmにおける吸光度を測定した。以下の等式を用いてβ−グ
ルクロニダーゼ活性を算出した: U/mg蛋白質=OD415×希釈因子/18×t×mg蛋白質/ml ただし、tは反応時間、18はパラニトロフェノールのミリモル消衰係数(extinc
tion coefficient)、そして希釈因子は0.4である。
【0064】 培養液中の蛋白質含有量は、Bradford, Anal. Biochem. 12 (1976), 248−254
により報告された方法に従い、ウシ血清アルブミンを標準物質としたBio-Rad蛋
白質アッセイを用いて測定した。培養液の試料0.1 mlを、Bio-Radの染色試薬(
蒸留水により1:4に希釈)5mlと混合した。5分間インキュベートした後、55
0 nmにおける吸光度を測定した。
【0065】 β−グルクロニダーゼを誘導するために、0.5%のマンノース及び12μg/mlの
クロラムフェニコールを含有する新鮮なM17-ブロスに開始用培養液を2%の濃度
で接種し、OD660が約0.2になるまで30℃においてインキュベートした。培養液を
分割し、各種の糖を添加した。OD660が1.0に達するまで、培養液を30℃において
さらに増殖させた。上述の方法で、60分毎にβ−グルクロニダーゼ活性を測定し
た。
【0066】 (β−ガラクトシダーゼ活性の測定 (Bergmeyer、上述の改良法)) L.デルブリュッキイをMRS-ブロス中で42℃において一晩インキュベートするこ
とによって、開始用細菌を調製した。各種の糖(表I)を含有するBHI 10 mlに、
一晩培養した細菌を2%の濃度で添加し、OD600が約1.0になるまで42℃において
インキュベートした。L.デルブリュッキイの亜種である乳酸菌菌株N141の場合に
は、ガラクトースの代わりにマンノースを使用した(ガラクトースはlacオペロ
ンを誘導したため)。遠心分離した後、使用時まで細胞を−20℃において保存し
た。アッセイのために、0.1% Triton X100を含有する蒸留水2ml中に沈渣を再
懸濁し、室温で30分間インキュベートした後、遠心分離によって回収した。2ml
のZ緩衝液(0.06 M Na2PO4;0.04 M NaH2PO4・7H2O;0.01 M KCl;0.001 M MgSO 4 ・7H2O;0.05 Mβ−メルカプトエタノール[pH 7.0])(Miller、分子遺伝学
における実験、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y., 1
972)中に細胞を再懸濁し、50 μg/mlのオルソ−ニトロフェニル−β−D−ガラ
クトピラノシド(ONPG)を含有する同緩衝液中で10倍に希釈した。42℃において
30分間インキュベートした後、200μlを停止溶液(400 mM Na2CO3;50 mM EDTA
)800 μlと混合した。遠心分離した後、420 nmにおいて吸光度を測定した。以
下の等式を用いてβ−ガラクトシダーゼ活性を算出した: U/OD600=OD420×希釈因子/3.5×t×OD600、 ただし、tは反応時間、3.5はオルソニトロフェノールのミリモル消衰係数、そ
して希釈因子は10である。
【0067】 β−ガラクトシダーゼを誘導するために、0.5%のガラクトースを含有する新
鮮なBHI-ブロスに開始用培養液を接種し、OD600が約0.2になるまで42℃において
インキュベートした。培養液を分割し、各種の糖を添加した。OD600が約1.0に達
するまで、培養液を42℃においてさらに増殖させた。上述の方法で、15分毎にβ
−ガラクトシダーゼ活性を測定した。
【0068】 (例2) (E.coliにおけるL.デルブリュッキイLL44のlacR遺伝子の発現) L.デルブリュッキイ菌株LL44のlacリプレッサー(lacR)遺伝子を、E.coliに
おいて試験的に発現させた。最初に、それぞれPst I部位とHind III部位を含む
以下のプライマーを用いてPCR増幅した。 Pst I ATATTACTGCAGAGTAAAAGCGAGT 配列番号10 Hind III ATAAATAAGCTTACAGAATGCAGCC 配列番号11 多くのコピー数を持つプラスミドpKK223-3の強力なtacプロモーターの後ろの該
当する部位に断片をクローニングし、E.coliで形質転換を行った。配列決定によ
り、得られたクローン(pLL56と命名)中にlacRが存在することを確認した。2m
MのIPTGによる誘導の際に、遺伝子を発現させることができた。
【0069】 (例3) (Escherichia coliのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺
伝子の前へのL.デルブリュッキイlacプロモーターのクローニング) L.デルブリュッキイLL44、N141及びN299のlacプロモーターを、E.coliのリポ
ーター遺伝子であるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)
遺伝子の前に試験的にクローニングした。EcoRI部位と、lacS遺伝子の中に位置
するプライマー250を含む以下のプライマーを用いてPCR増幅した。 Eco RI ATATTAGAATTCAGTGACTTAAACTGG 配列番号12 Eco RI ATATTAGAATTCAGTACTTTGACACCG 配列番号13 Eco RI ATATTAGAATTCAAGAGGCTATATCGC 配列番号14 GGTTAATGCCGCCAAAGT 配列番号15 プライマー配列及びlacSの開始コドンの170 bp下流を切断するEco RI及びBsp EI
によって、増幅した断片を切断した。制限酵素切断部位をT4 DNAポリメラーゼに
よって埋め、Sma Iで切断したpKK232-8のプロモーター不在cat遺伝子の前でクロ
ーニングし、E.coliで形質転換を行った。これらの構築物は、N299によるものを
pLL55、N141によるものをpLL57、そしてL44によるものをpLL58と命名し(表2)
、すべて配列決定によって確認した。
【0070】 (例4) (E.coli中のLL44 lacR遺伝子によるL.デルブリュッキイlacプロモーターの
コントロール) L.デルブリュッキイのlacプロモーターがE.coli中のLL44 lacRによってコント
ロールできるかどうか検討するために、E.coli lacリプレッサー(lacI)のプロ
モーターのコントロール下で、LL44のlacR遺伝子を含む少ないコピー数のプラス
ミドと共にプラスミドpLL55、pLL57及びpLL58の形質転換を行った。この構築物
を得るために、重複伸長による遺伝子スプライシング(遺伝子SOEing)法(Hort
on R., Molecular Biotechnology 3 (1995), 93−99)を用いて2つのDNA断片を
結合させた。
【0071】 以下のプライマーを用いて、最初にpET11cからlacIのプロモーターを増幅した
。 Pst I ATAAATCTGCAGTGGGTATGGTGGC 配列番号16 GATCGTTGCCACATTCACCACC 配列番号17
【0072】 配列番号18のプライマーは、lacIプロモーターの配列と、L.デルブリュッキイ
lacRの5’末端の配列から構成される。次に、以下のプライマーを用いてlacR遺
伝子全体をPCR増幅した。 GGTGAATGTGGCAACGATCAG 配列番号18 Pst I ATATTACTGCAGACAGAATGCAGCC 配列番号19
【0073】 配列番号19のプライマーの配列は、配列番号20の相補形である。両PCRを精製
し、混合して配列番号16及び配列番号19のプライマーにより再増幅し、lacIプロ
モーターとL44のlacR遺伝子を結合させた。さらに、lacR遺伝子のATG開始コドン
をlacIのようにGTGに置き換えた(図6)。構築物全体を、Pst Iで切断した低コ
ピー数プラスミドpACYC177(New England Biolabs)Pst I部位にクローニングし
、形質転換後にプラスミドpLL62を得た(図6)。pLL62の中に修正されたlacR遺
伝子が存在することを、制限酵素による分解とPCR増幅によって確認した。
【0074】 このプラスミドをpLL55、pLL57及びpLL58と共にE.coli中で形質転換し、それ
ぞれLZL63、LZL64及びLZL65の菌株(表I)を得た。得られた菌株には、LL44のla
cR遺伝子と共に各種のL.デルブリュッキイプロモーターが含まれていた。ラクト
ースあるいはグルコースの存在下でShaw、上述のクロラムフェニコールアセチル
トランスフェラーゼアッセイによりプロモーターの調節について試験した。その
結果、37℃において4分間インキュベートした後、以下の表に示すようにlacRの
存在下あるいは不在下でYT培地中もしくはM9-塩類を基本とした最小培地中で異
なるプロモーターを含有する菌株が完全に誘導されることが示された。
【0075】
【0076】 E.coli中でlacプロモーターは機能するがlacR遺伝子は機能しないグラム陽性
細菌である黄色ブドウ球菌の場合にも、同様の結果が確認された(Oskouian et
al., J.Bacteriol. 169 (1990), 5459−5465)。考えられる説明の1つは、リプ
レッサーが適切に機能するためにグラム陽性細菌にのみ存在する別の因子が必要
である、ということである。
【0077】 (例5) (Lactococcus lactisにおけるβ−グルクロニダーゼ遺伝子の前へのL.デル
ブリュッキイlacプロモーターのクローニング) LL44(誘導可能)及びN299(構造性)のlacプロモーターを、リポーター遺伝
子であるβ−グルクロニダーゼ(gusA)遺伝子の前にクローニングした。それぞ
れ配列番号12及び14のプライマーを使用して、PCR増幅を行った。このプライマ
ーはどちらも、EcoRI部位とlacS遺伝子中に位置する配列番号15のプライマーを
含有している。増幅した断片を、lacS開始コドンの170 bp下流に位置するBspEI
で切断し、T4 DNAポリメラーゼで埋めた後、EcoRIで切断した。次にこの断片を
、Ava II(T4 DNAポリメラーゼで補充)及びEcoRIで切断したpNZ272のプロモー
ター不在gusA遺伝子(Platteeuw et al., Appl. Env. Microb. 60 (1994), 587
−593)の前にクローニングした。得られたプラスミド(LL44の場合はpLL110、N
299の場合はpLL113)をLc. lactis(MG1363、プラスミド不在)中で形質転換し
た(図7及び8)。
【0078】 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイル−β−D−グルクロニド(X-glu)の
存在下でクロラムフェニコール耐性クローンのスクリーニングを行った。X-glu
はグルクロニダーゼによって分解され、インドール基を遊離するため、青色を呈
する。両プラスミド共β−グルクロニダーゼを発現することができたため、L.デ
ルブリュッキイのlacプロモーターがLc. lactis中に機能を発揮することが示さ
れる。各種プロモーターが存在することを配列決定によってチェックした。
【0079】 (例6) (Lacococcus lactisにおけるβ−グルクロニダーゼ遺伝子の後ろへのL.デ
ルブリュッキイlacR遺伝子のクローニング。) L.デルブリュッキイのlacリプレッサーによってlacプロモーターがコントロー
ルできるかどうか試験するために、LL44のlacR遺伝子をプラスミドpLL110及びpL
L113上にクローニングした。共にXhoI部位を含有する以下のオリゴヌクレオチド
を用いてlacR遺伝子をPCR増幅した: Xho I ATAAATCTCGAGTGGTGATTCAGCC 配列番号20 Xho I ATATTACTCGAGACAGAATGCAGCC 配列番号21 遺伝子のフランキング領域を誘導するために、プライマーを選択した。すなわち
、配列番号20のオリゴヌクレオチドはlacZ遺伝子中のlacR開始コドンの80 bp上
流に位置しており、配列番号21のオリゴヌクレオチドはAsn-tRNA合成酵素(asnA
)遺伝子中のlacR停止コドンの70 bp下流に位置する。断片をXho Iで切断し、pL
L110及びpLL113のgusA遺伝子下流の同一部位にクローニングした。LL44のlacプ
ロモーターを含有するpLL110の場合1つのクローン(pLL112)が得られ、lacR遺
伝子はgusA遺伝子と反対の(rev)方向に挿入された(図7)。N299のプロモー
ターを含有するpLL113の場合、lacR遺伝子はどちらの方向でもクローニングされ
、pLL115はgusA遺伝子と同じ(for)方向に、pLL116は反対の(rev)方向に挿入
された(図8)。突然変異したLZL102のlacリプレッサー(×lacR)遺伝子をPCR
増幅し、LL44に関して前述したようにしてクローニングした結果、LL44のlacプ
ロモーターをもつpLL111とN299のプロモーターをもつpLL114が、共にgusA遺伝子
と同一方向で得られた。
【0080】 (例7) (Lactococcus lactisにおけるβ−グルクロニダーゼ活性のコントロール) L.デルブリュッキイのlacプロモーター及びリプレッサーを含有する各種の構
築物について、マンノースの存在下で形質転換したLc.lactisを増殖させること
により検討した。この糖は、サッカロースやセロビオースと比較して、乳酸球菌
のラクトース代謝に影響を及ぼさないことが示されている。指数増殖期にある細
胞を、各種濃度のラクトース及びグルコースを含有する新鮮な培地中に希釈し、
増殖させて回収した。p−ニトロフェノール−β−D−グルクロニドの存在下で
透過性細胞からβ−グルクロニダーゼ(GusA)活性を測定した。この試薬はGusA
によって切断され、パラ−ニトロフェノールを遊離して溶液を黄色に染色する。
これらの実験の結果を図9に示す。
【0081】 (例8) (L.デルブリュッキイの亜種lactis LL44のlacプロモーターの調節) LL44のプロモーター(pLL110)はLc. lactisにおいて機能を発揮するため、ラ
クトースあるいはマンノースの存在下でβ−グルクロニダーゼを産生した。ラク
トースを含有する、あるいは含有しない培地にグルコースを添加した場合、GusA
活性が5〜7倍低下するのが観察された。このことから、この系ではグルコース
異化代謝産物抑制が有効であることが示される。
【0082】
【0083】 リプレッサー遺伝子(pLL112)の存在下で、ラクトース(0.2%〜1%)を添
加した場合に、GusAの活性はpLL110と同程度であった。マンノースの場合にはほ
とんど活性が観察されなかった(表2)ことから、リプレッサーはLc. lactisに
おいて発現されており、lacプロモーターに結合し得ることが示される。lacシス
テムにおける共通の誘導物質であるガラクトースは、このシステムの誘導を示さ
なかった。プラスミドpLL112もグルコース異化代謝産物抑制を受け、活性が5〜
9倍低下した。
【0084】 LZL1012の とLL44のlacプロモーターを含有するプラスミドPLL111から驚くべき結果が得ら
れた。グルコースの存在下でも、GusAの活性はlacプロモーター単独の場合より
も2倍高かった(表II)。蛋白質の半分が翻訳されている突然変異リプレッサー
がエンハンサーとしての役割を果たすと考えられる。
【0085】 (例9) (L.デルブリュッキイの亜種bulgaricus N299のlacプロモーターの調節) N299のlacプロモーター(pLL113)は、LL44のプロモーターによって産生され
るよりほぼ2倍高いGusA活性の産生を誘導した(表II、上述)。このように、N2
99のプロモーターはLc. lactisにおいても機能する。グルコースの存在下では比
較的弱い抑制しか観察されなかったが、この理由はCREモチーフの配列が異なる
ことによって説明されるであろう。
【0086】 gusA遺伝子の後ろに双方向でクローニングしたLL44のlacR遺伝子(for:pLL11
5、rev:pLL116)が存在する場合には、マンノースの存在下でGusA活性はほとん
ど検出されなかった。この結果から、L.デルブリュッキイの亜種であるbulgaric
usのいわゆる「構造性」プロモーターがL.デルブリュッキイのlacリプレッサー
によって実際に抑制されることが示される。また、ラクトースの濃度が上昇する
につれて、GusA活性の産生も増大した。しかし、逆方向に挿入したリプレッサー
(pLL116)の場合には、1%ラクトースの存在下でも産生量はリプレッサー不在
の場合の半分にしか到達しなかった。N299はリプレッサーによって調節されるだ
けでなく、LL44よりも厳しく調節される(表V)。
【0087】 最後に、突然変異したリプレッサー(pLL114)の存在下では、GusA活性はリプ
レッサーが何も存在しない場合より3〜4倍低かった。ラクトースの存在下でも
不在下でも低い活性が観察されたため、このプロモーター上で は全般的な阻害活性をもつと考えられる。
【0088】 (例10) (Lactococcus lactisにおけるL.デルブリュッキイプロモーターのラクトー
ス誘導) 各種濃度のラクトース及びグルコースの存在下で、LL44及びN299のlacプロモ
ーターとLL44のlacR遺伝子(pLL112, pLL115及びpLL116)を含有するLc. lactis
の指数的増殖の間に、GusA活性を数回測定した(図9)。LL44のlacプロモータ
ーは1%ラクトースの存在下で最大限に誘導され、明らかにグルコース異化代謝
産物抑制を受けた。すなわち、ラクトースに加えて0.5%グルコースが存在する
場合に、この活性が半分に低下した。予想どおり、マンノース及びグルコースは
単独ではGusA活性を産生しなかった。N299のlacプロモーターを含有するプラス
ミド(for:pLL115、rev:pLL116)はほとんど誘導能をもたず、グルコースによ
って完全に阻害された。gusAと同一方向にリプレッサー遺伝子をもつプラスミド
pLL115は、ラクトースの誘導能が最も低かった。この場合には、L.デルブリュッ
キイのlacプロモーターのコントロール下でリプレッサーが大量に産生されると
仮定されるが、pLL166の場合にはpNZ273上に存在する弱いプロモーターのコント
ロール下にあるはずであり、そのために少量しか産生されない。
【0089】 (例11) (ラクトバシラス・デルブリュッキイにおけるβ−ガラクトシダーゼ活性) in situにおいてlacプロモーターとlacリプレッサーとの間の関係を調べた。
各種の糖類を含有するBHI-ブロス中で、各種L.デルブリュッキイ菌株におけるβ
−ガラクトシダーゼ(β-gal)活性を測定した。実験に使用したL.デルブリュッ
キイ亜種のlactis菌株は、マンノース/ガラクトースまたはグルコースの存在下
でβ-gal活性を示さないか、低い活性しか示さなかった。
【0090】
【0091】 実験に使用したすべての濃度のラクトース(0.02%から0.5%)において、β-
gal活性は同程度であり、ごく低い濃度のラクトースによってlacオペロンの発現
が完全に誘導されることが示された。ラクトース及びグルコースの存在下で、菌
株は異化代謝産物抑制を受けず、N62の場合にはβ-gal活性の促進さえも観察さ
れた(表3、上記)。構造性のL.デルブリュッキイ亜種bulgaricus N299は、グ
ルコースの存在下であっても、使用したすべての糖類で同程度のβ-gal活性を示
した。L.デルブリュッキイ亜種lactisの2種類の突然変異株であるLB10とLZL102
についても分析した。LL44の自然発生突然変異株であるLZL102は短いリプレッサ
ーを産生し、LB10はペプチドをまったく産生しない(図12)。どちらの場合も、
菌株は構造性であり、ガラクトース、ラクトースあるいはグルコースのどれが存
在してもβ-galの産生量は同程度であった。
【0092】 (例12) (L.デルブリュッキイにおけるラクトースによるlacプロモーターの誘導) L.デルブリュッキイの亜種lactisの菌株LL44及びbulgaricusの菌株N299の指数
的増殖の間に、β-galの誘導を数回測定した。どちらの菌株においても、活性が
最大に到達したのは15分間インキュベートした後であった(図10)。LL44の場合
、ガラクトースあるいはグルコースの存在下ではβ-gal活性が検出されなかった
が、すべての濃度のラクトース存在下で完全な誘導が認められた。グルコースの
存在下で酵素活性が若干低下した。すなわち、完全な活性が見られたのは60分後
であった。N299の場合には、すべての糖によって同程度の誘導が見られ、グルコ
ース異化代謝産物抑制は認められなかった。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 L.デルブリュッキイのプロモーター配列の比較を示す。
【図2】 L.デルブリュッキイLL44及びLB68のプロモーター領域の構成を示す。
【図3】 L.デルブリュッキイN299のプロモーター領域の構成を示す。
【図4】 L.デルブリュッキイの亜種lactis LL44 lacR遺伝子のヌクレオチド及びアミノ
酸配列を示す。
【図5】 各種L.デルブリュッキイ株のラクトースオペロンの地図を示す。
【図6】 pLL62の構築物の略図を示す。
【図7】 pLL110及びpLL112(CNCM I-2089)の構築物の略図を示す。
【図8】 pLL113、pLL115(CNCM I-2090)及びpLL116(CNCM I-2091)の略図を示す。
【図9】 本発明の構築物を用いたβ−グルクロニダーゼ発現の結果を示す。
【図10】 本発明の構築物を用いてL.デルブリュッキイ中でβ−ガラクトシダーゼを発現
させた実験の結果を示す。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成13年10月4日(2001.10.4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 モレ、ベア スイス国 ローザンヌ、アヴニュ ド レ スプラネード、9 Fターム(参考) 4B024 AA05 BA07 BA80 CA03 DA05 EA04 FA04 GA11 GA21 HA12 4B065 AA01X AA30Y AB01 AC14 BA02 BA25 CA24 CA27 CA42

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の一般式で表されるDNA配列 p/o−(A)n−Ry、または p/o−Ry−(A)n であって、 p/oは配列番号9に基づき特定されるDNA配列またはその機能的変異体を表し、
    ラクトバシラス・デルブリュッキイのlacリプレッサー蛋白質に結合する能力を
    保持しており; Aは当該ポリペプチドをコードする遺伝子を表し; nは0以上の整数を表し; Rは配列番号2に基づき特定されるlacリプレッサー蛋白質をコードする遺伝子
    またはその機能的変異体を表し;及び Yは0または1である 上記DNA配列。
  2. 【請求項2】 yが1である請求項1記載のDNA配列。
  3. 【請求項3】 lacリプレッサーをコードする遺伝子の読み取り枠(reading
    frame)がp/oの領域に対して逆になっている請求項1記載のDNA配列。
  4. 【請求項4】 興味あるポリペプチドをコードする遺伝子が、酵素、細胞表
    面蛋白質、または機能的ペプチドをコードする遺伝子で構成される群から選択さ
    れる請求項1記載のDNA配列。
  5. 【請求項5】 興味あるポリペプチドをコードする遺伝子が、デキストラン
    スクラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、フィターゼ、トランスグルタミナ
    ーゼ、ペプチダーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、プロテアーゼ、細
    胞表面抗原、バクテリオシン類、ホルモン類またはインスリンをコードする遺伝
    子で構成される群から選択される請求項4記載のDNA配列。
  6. 【請求項6】 異化代謝産物反応性要素のない請求項1〜5のいずれか一項
    に記載のDNA配列。
  7. 【請求項7】 配列番号2に基づき特定されるラクトバシラス・デルブリュ
    ッキイのlacリプレッサー蛋白質をコードするDNA配列または配列番号9に基づき
    特定されるDNA配列に結合する能力を保持するその機能的変異体。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか一項に記載のDNA配列を内包する(h
    arbor)遺伝子組換え微生物。
  9. 【請求項9】 グラム陽性細菌である請求項8に記載の微生物。
  10. 【請求項10】 乳酸菌で構成される群から選択される請求項8または9に
    記載の微生物。
  11. 【請求項11】 請求項1〜7に記載のDNA配列が細菌の染色体中に取り込
    まれているか、あるいは染色体外に維持されるプラスミド中に内包されている、
    請求項8〜10のいずれか一項に記載の微生物。
  12. 【請求項12】 CNCM I-2089、CNCM I-2090またはCNCM I-2091である請求
    項8に記載の微生物。
  13. 【請求項13】 ポリペプチドAの生産のための請求項1〜7のいずれか一
    項に記載のDNA配列の使用。
  14. 【請求項14】 DNA配列が染色体外に維持されるプラスミド中に内包され
    ているか、または細菌の染色体中に存在する、請求項13記載の使用。
  15. 【請求項15】 発現がグラム陽性微生物中で行われる請求項13または1
    4に記載の使用。
  16. 【請求項16】 発現が乳酸菌で構成される群から選択される微生物中で行
    われる請求項13〜15のいずれか一項に記載の使用。
  17. 【請求項17】 食品の生産のための請求項8〜11のいずれか一項に記載
    の微生物の使用。
JP2001508348A 1999-06-30 2000-06-23 ラクトバシラス・デルブリュッキイのラクトースオペロンと細菌細胞における遺伝子の転写及び/または発現のコントロールのためのその利用 Pending JP2003504027A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP99112471.0 1999-06-30
EP99112471 1999-06-30
PCT/EP2000/005834 WO2001002576A1 (en) 1999-06-30 2000-06-23 The lactose operon of lactobacillus delbrueckii and its use for controlling gene transcription and/or expression in bacterial cells

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003504027A true JP2003504027A (ja) 2003-02-04

Family

ID=8238467

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001508348A Pending JP2003504027A (ja) 1999-06-30 2000-06-23 ラクトバシラス・デルブリュッキイのラクトースオペロンと細菌細胞における遺伝子の転写及び/または発現のコントロールのためのその利用

Country Status (9)

Country Link
US (1) US6929931B1 (ja)
EP (1) EP1194562B1 (ja)
JP (1) JP2003504027A (ja)
AT (1) ATE274060T1 (ja)
AU (1) AU769084B2 (ja)
BR (1) BR0012632A (ja)
CA (1) CA2378143A1 (ja)
DE (1) DE60013135D1 (ja)
WO (1) WO2001002576A1 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003108619A (ja) * 2001-09-27 2003-04-11 Toshiba Corp 半導体集積回路の設計方法および設計プログラム
CN102504017A (zh) * 2006-04-19 2012-06-20 由农业部部长代表的美利坚合众国 新的肠球菌和链球菌菌株及细菌素
BRPI0621581A2 (pt) * 2006-04-19 2011-12-13 Us Agriculture cepas de enterococcus e streptococcus e bacteriocinas
HUE039577T2 (hu) 2011-06-01 2019-01-28 Intrexon Actobiotics Nv Policisztronos expressziós rendszer baktériumokhoz
EP3919065B9 (en) 2016-01-14 2024-01-24 Intrexon Actobiotics NV Compositions and methods for the treatment of type 1 diabetes

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1993017117A1 (en) 1992-02-27 1993-09-02 Lynxvale Limited Heterologous gene expression in lactococcus, and the expression products therefrom
AU678835B2 (en) 1993-08-26 1997-06-12 Societe Des Produits Nestle S.A. Plasmid derived from Lactobacillus Delbrueckii SP
US5676985A (en) * 1994-10-12 1997-10-14 Hsc Research And Development Limited Partnership Antifreeze polypeptide-expressing microorganisms useful in fermentation and freezing of foods

Also Published As

Publication number Publication date
AU6265100A (en) 2001-01-22
US6929931B1 (en) 2005-08-16
AU769084B2 (en) 2004-01-15
EP1194562A1 (en) 2002-04-10
DE60013135D1 (de) 2004-09-23
ATE274060T1 (de) 2004-09-15
BR0012632A (pt) 2002-06-04
EP1194562B1 (en) 2004-08-18
WO2001002576A1 (en) 2001-01-11
CA2378143A1 (en) 2001-01-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Morello et al. Lactococcus lactis, an efficient cell factory for recombinant protein production and secretion
van Rooijen et al. Characterization of the Lactococcus lactis lactose operon promoter: contribution of flanking sequences and LacR repressor to promoter activity
US8216821B2 (en) Regulation of heterologous recombinant protein expression in methylotrophic and methanotrophic bacteria
Geller et al. Cloning of a chromosomal gene required for phage infection of Lactococcus lactis subsp. lactis C2
David et al. Leuconostoc lactis beta-galactosidase is encoded by two overlapping genes
O'Sullivan et al. Development of an expression strategy using a lytic phage to trigger explosive plasmid amplification and gene expression
Hara et al. A promoter for the first nine genes of the Escherichia coli mra cluster of cell division and cell envelope biosynthesis genes, including ftsI and ftsW
Aleksandrzak-Piekarczyk et al. Genetic characterization of the CcpA-dependent, cellobiose-specific PTS system comprising CelB, PtcB and PtcA that transports lactose in Lactococcus lactis IL1403
David et al. Plasmid transformation by electroporation of Leuconostoc paramesenteroides and its use in molecular cloning
US5914248A (en) Method for controlling the gene expression in lactic acid bacteria
Kok Inducible gene expression and environmentally regulated genes in lactic acid bacteria
WO2011123139A1 (en) High level expression of recombinant crm197
EP0677110B1 (en) Recombinant lactic acid bacterium containing an inserted promoter
EP0925364B1 (en) A lactic acid bacterial regulatable expression system
Payne et al. Exploitation of a chromosomally integrated lactose operon for controlled gene expression in Lactococcus lactis
Chapot-Chartier et al. Characterization of cspB, a cold-shock-inducible gene from Lactococcus lactis, and evidence for a family of genes homologous to the Escherichia coli cspA major cold shock gene
WO1998011231A1 (en) Highly regulable promoter for heterologous gene expression
WO1998011231A9 (en) Highly regulable promoter for heterologous gene expression
Mayo et al. Cloning and expression of the plasmid encoded β-D-galactosidase gene from a Lactobacillus plantarum strain of dairy origin
JP2003504027A (ja) ラクトバシラス・デルブリュッキイのラクトースオペロンと細菌細胞における遺伝子の転写及び/または発現のコントロールのためのその利用
EP0228726A1 (en) Method for preparing proteins using transformed lactic acid bacteria
Gowrishankar et al. Molecular cloning of pheR in Escherichia coli K-12
US20050042756A1 (en) Intergenic and intragenic integration sites for foreign gene expression in recombinant S. gordonii strains
JPH10500846A (ja) 乳酸菌(lab)のファージから得ることができる誘導性複合プロモーターシステム及び所望のタンパク質の産生のためのlabにおけるその使用
US6994997B1 (en) Gram positive bacteria deprived of HtrA protease activity and their uses

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040709

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041008

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20041105