JP2003312489A - 中空ラック軸及びその製造方法 - Google Patents

中空ラック軸及びその製造方法

Info

Publication number
JP2003312489A
JP2003312489A JP2002126121A JP2002126121A JP2003312489A JP 2003312489 A JP2003312489 A JP 2003312489A JP 2002126121 A JP2002126121 A JP 2002126121A JP 2002126121 A JP2002126121 A JP 2002126121A JP 2003312489 A JP2003312489 A JP 2003312489A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rack shaft
hollow
rack
shaft portion
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002126121A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshimasa Iwata
吉雅 岩田
Koji Obata
幸治 小畑
Minoru Kawaguchi
実 川口
Hiroaki Murakami
博昭 村上
Akihiko Shinohara
明彦 篠原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyoda Koki KK
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyoda Koki KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyoda Koki KK filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2002126121A priority Critical patent/JP2003312489A/ja
Publication of JP2003312489A publication Critical patent/JP2003312489A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Gears, Cams (AREA)
  • Transmission Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】中空ラック軸の曲がり矯正の良好性を確保しつ
つ、中空部を区画する内周面に対する焼入検査を容易に
行うのに有利な中空ラック軸及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】中空ラック軸1は、中心側に中空部11を
もつ主軸部10と、主軸部10に同軸的に一体的に連設
されたラック軸部15とで構成されている。ラック軸部
15は、中心側に中空部11をもつと共に、外周壁に外
歯状のラック歯16を有する。ラック軸部15のラック
歯16及び主軸部10の外周側に焼入層20が設けられ
ている。主軸部10の内周側には、焼入層が形成されて
いない非焼入層22が設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は中空ラック軸及びそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】車両のステアリング装置を例にとって説
明する。車両のステアリング装置ではラック軸が使用さ
れている。このものでは、運転者がステアリングホィー
ルを回転操作させると、その回転力はピニオンに伝達さ
れ、ピニオンの回転力がこれと噛合するラック軸のラッ
ク歯に伝達され、ラック軸がこれの長さ方向に移動す
る。故に、ラック軸に繋がる車輪の向きが変わる。
【0003】上記したラック軸は中実状の軸で形成され
ている。しかしながら軽量化等の要請から、近年、特開
平10−226339号等に開示されているように、中
空部を有する中空軸形状の中空ラック軸が採用されつつ
ある。このような中空ラック軸は強化のため焼入処理が
施されている。
【0004】中空ラック軸1Xは、図9に示すように、
中心側に中空部110をもつ主軸部100と、主軸部1
00に同軸的に一体的に連設され中心側に中空部110
をもつラック軸部150とで構成されている。ラック軸
部150の外周壁には、外歯状のラック歯160が形成
されている。なお図9においてハッチング領域は焼入層
を意味する。
【0005】焼入処理の際には、中空ラック軸1Xのう
ちラック軸部150の内周面110i側まで焼入される
ようにラック軸部150の全体に焼入層200を形成す
る工程、中空ラック軸1Xの焼入未実施部を利用して中
空ラック軸1Xの曲がりを矯正する工程、軸長方向にお
いてラック軸部150と主軸部100との境界域に非焼
入領域170を形成しつつ、中空ラック軸1Xのうち主
軸部100の内周面110i側まで焼入されるように主
軸部100の全体に焼入層200を形成する工程、中空
ラック軸1Xの非焼入領域170を利用して中空ラック
軸1Xの曲がりを矯正する工程を順に実施することにし
ている。このような焼入処理に伴う歪みは、焼入未実施
部、非焼入領域170により矯正される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記したよ
うに中空ラック軸1Xの中空部110を区画する内周面
110i側にまで焼入されるように、中空ラック軸1X
の主軸部100の全体に焼入層200を形成しているた
め、中空ラック軸1Xの中空部110を区画する内周面
110iが適切に焼入されているか否かの焼入検査を肉
眼または検査装置で行う必要がある。
【0007】ところで、中空ラック軸1Xのラック軸部
150の中空部110を区画する内周面110iに対す
る焼入検査は、比較的容易である。しかし、中空ラック
軸1Xの主軸部100の中空部110を区画する内周面
に対する焼入検査は、中空ラック軸1Xの軸長がかなり
長く、中空ラック軸1Xの先端からの距離も大きくな
り、必ずしも容易ではない。
【0008】本発明は上記した実情に鑑みてなされたも
のであり、中空ラック軸の曲がり矯正の良好性を確保し
つつ、中空部を区画する内周面の焼入状況を検査する面
倒な焼入検査を簡素化または廃止するのに有利な中空ラ
ック軸及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る中空ラック
軸は、中心側に中空部をもつ主軸部と、主軸部に同軸的
に一体的に連設され中心側に中空部をもつと共に外周壁
に外歯状のラック歯を有するラック軸部とで構成された
中空ラック軸において、ラック軸部のラック歯及び主軸
部の外周側に焼入層が設けられており、且つ、主軸部の
内周側には、焼入層が形成されていない非焼入層が設け
られていることを特徴とするものである。
【0010】本発明に係る中空ラック軸の製造方法は、
中心側に中空部をもつ主軸部と、主軸部に同軸的に一体
的に連設され中心側に中空部をもつと共に外周壁に外歯
状のラック歯を有するラック軸部とで構成された中空ラ
ック軸を用意する工程と、ラック軸部のラック歯及び主
軸部の外周側に焼入層を設け、且つ、主軸部の内周側に
は、焼入層が形成されていない非焼入層を設ける焼入工
程とを実施することを特徴とするものである。
【0011】焼入層により中空ラック軸の強度及び耐摩
耗性は確保される。主軸部の内周側には、焼入層が形成
されていない非焼入層が設けられているため、主軸部の
内周側の延性が確保される。故に、焼入歪みにより中空
ラック軸に曲がりが生じているときであっても、中空ラ
ック軸の矯正を良好に行うことができる。
【0012】更に前述したように、主軸部の内周側には
焼入層が形成されていないため、主軸部の中空部を区画
する内周面の焼入状況を肉眼または検査装置で検査する
面倒な焼入検査を簡素化または廃止することができる。
【0013】本発明によれば、中空ラック軸の種類によ
っては、ラック軸部の内周側に、焼入層が形成されてい
ない非焼入層が設けられている構成を採用することがで
きる。この場合、ラック軸部において、ラック歯の強
度、耐摩耗性を確保しつつ、ラック軸部の内周側の延性
が確保される。また主軸部の内周側において焼入層が形
成されていないばかりか、ラック軸部の内周側において
も焼入層が形成されていないため、中空ラック軸の中空
部の内周面の焼入状況を肉眼または検査装置で検査する
面倒な焼入検査を簡素化または廃止することができる。
【0014】本発明によれば、主軸部の内周側における
非焼入層の厚みをt3とし、ラック軸部のラック歯の内
周側における非焼入層の厚みをt4としたとき、t3が
t4よりも大きくなるように(t3>t4)設定するこ
とができる。この場合、焼入歪みを矯正する曲げ矯正工
程における矯正量は、主軸部の内周側における非焼入層
で主として確保されるため、ラック歯への負荷が軽減さ
れ、ラック歯の噛合性を良好に確保するのに有利であ
る。
【0015】また本発明によれば、主軸部の焼入層の厚
みをt2とし、主軸部の内周側における非焼入層の厚み
をt3としたとき、t3がt2よりも大きくなるように
(t3>t2)設定することができる。この場合、焼入
歪みを矯正する曲げ矯正工程における矯正量は、主軸部
の内周側における非焼入層で主として確保されるため、
ラック歯への負荷が軽減され、ラック歯の噛合性の良好
に確保するのに有利である。
【0016】本発明によれば、ラック軸部の強化の要請
が大きいときには、ラック軸部については、焼入層はラ
ック軸部の内周面に到達している構成を採用することが
できる。この場合、ラック軸部のラック歯の強度、耐摩
耗性を確保するのに有利である。なお、車両のステアリ
ング装置に適用されるときには、中空ラック軸の両端側
には直接または他の部材を介して間接的に車輪が搭載さ
れる。
【0017】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、本発明の
第1実施形態について図1〜図5を参照して具体的に説
明する。図1及び図2は中空ラック軸の要部の断面図、
図3は図1のW3−W3線に沿った断面図、図4は図1
のW4−W4線に沿った断面図を示す。図1,図2にお
いてハッチング領域は焼入層を意味する。
【0018】本実施形態に係る中空ラック軸1は、中心
側に中空部11をもつ主軸部10と、主軸部10に同軸
的に一体的に連設され中心側に中空部11をもつラック
軸部15とで構成されている。ラック軸部15の外周壁
には外歯状のラック歯16が形成されている。図3に示
すように、ラック歯16は中空ラック軸1の横断面にお
いて片側に形成されており、他の片側には形成されてい
ない。中空ラック軸1を形成する金属は鉄系であり、
C,Mn等の合金元素を含む。C,Mnは強度促進合金
元素であると共に、焼入性を高める元素でもある。
【0019】主軸部10の中空部11とラック軸部15
の中空部11とは同一径とされており、一直線状に連通
している。中空ラック軸1のラック歯16は、直円筒形
状のパイプ材を形成する周壁の一部を塑性加工すること
により形成されている。図3に示すようにラック軸部1
5には、塑性変形された辺部17が形成されており、辺
部17に複数個のラック歯16が直列に突設されてい
る。ラック歯16は、互いに配向する歯面16aと、歯
面16aの先端同士を繋ぐ歯先面16bと、歯面16a
の基端同士を繋ぐ歯底面16cとを有する。ラック歯1
6の歯先面16bは、主軸部10の外周面10aの輪郭
よりも径内方向に退避している部分をもつ。主軸部10
の外周面10aは他の部材に対して接触しながらスライ
ドするため耐摩耗性を向上させるため、高硬度及び高強
度が要請されている。ラック軸部15のラック歯16
は、ステアリングにより回転されるピニオンと噛合する
ため、高硬度及び高強度が要請されている。
【0020】図1に示すように、中空ラック軸1におい
て、ラック軸部15のラック歯16には焼入層20(歯
先面16bからの厚みt1:3〜5mm)が設けられて
いる。この焼入層20はラック歯16の内部まで形成さ
れている。
【0021】主軸部10の外周側にも焼入層20が(厚
みt2:1〜2mm)設けられている。なお主軸部10
の外周側に形成されている焼入層20は、軸長方向にお
いて厚みを実質的に均一としても良いし、軸長方向にお
いて部位によって異ならせても良い。主軸部10の内周
側には、焼入層20が形成されていない非焼入層22
(厚みt3:0.1〜3mm)が設けられている。すな
わち、主軸部10の内周面11iには焼入層20は到達
していない。これにより主軸部10の内周側の延性は確
保されている。更にラック軸部15の内周側にも、焼入
層20が形成されていない非焼入層22(厚みt4:
0.1〜2mm)が設けられている。すなわち、ラック
軸部15の内周面11iには焼入層20は到達していな
い。これによりラック軸部15の内周側の延性は確保さ
れている。 換言すると本実施形態によれば、中空ラッ
ク軸1の全長において、内周側には焼入層20が形成さ
れていない。なお焼入層20はマルサンサイトを有して
いる層をいう。非焼入層22は母材の硬度に相当するか
母材の硬度に近い領域をいう。
【0022】本実施形態によれば、焼入処理の際には、
円リング形状の1重の導電コイル3を用い、導電コイル
3に高周波電流(周波数:例えば3kHz〜300kH
z)を通電しつつ、導電コイル3を中空ラック軸1の軸
長方向に沿って矢印X1方向に相対的に移動させる。こ
れにより中空ラック軸1の外周面を誘導加熱で焼入温度
領域に加熱する。導電コイル3で加熱した加熱部分に、
直ちに、冷却手段4Aまたは4Bにより冷却水を吹き付
けて急冷し、中空ラック軸1の焼入を行う。本実施形態
によれば、主軸部10の焼入層20及びラック軸部15
の焼入層20は軸長方向において連続されており、図9
に示す従来技術とは異なり、主軸部10とラック軸部1
5との境界域に非焼入領域が形成されていないため、焼
入処理は導電コイル3を中空ラック軸1の軸長方向に沿
って移動させるだけで良い。従って焼入処理を1回で行
うことができ、焼入処理を2回に分けて行っていた図9
示す従来技術に比較して工程を簡素化できる。
【0023】前述したようにラック歯16の歯先面16
bは、主軸部10の外周面10aよりも径内方向に退避
している。そのため導電コイル3を中空ラック軸1の軸
長方向(矢印X1方向)に沿って移動させると、ラック
歯16を焼入するときに、導電コイル3の内周面とラッ
ク軸部15のラック歯16の歯先面16bとの間の距離
が増加する。そこで導電コイル3を中空ラック軸1の軸
長方向(矢印X1方向)に沿って移動させてラック歯1
6を焼入するとき、図2から理解できるように、導電コ
イル3をラック軸部15のラック歯16に向けて矢印Y
1方向に変位させることもできる。この結果、導電コイ
ル3の内周面はラック軸部15のラック歯16の歯先面
16bに近づくことができる。故に、ラック部のラック
歯16の歯先面16bが主軸部10の外周面10aより
も径内方向に退避しているときであっても、ラック軸部
15のラック歯16を良好に焼入することができる。
【0024】上記した焼入処理の後に、中空ラック軸1
の曲げ矯正を行う。この場合、図1に示すように、主軸
部10の内周側に、焼入層20が形成されていない非焼
入層22が設けられていると共に、ラック軸部15の内
周側にも焼入層20が形成されていない非焼入層22が
設けられている。このため、中空ラック軸1の内周側の
延性は確保されており、焼入処理における上記した中空
ラック軸1の曲げ矯正を良好に行うことができる。
【0025】本実施形態によれば、図1に示すように、
主軸部10の内周側に焼入層20が形成されていない非
焼入層22が設けられていると共に、ラック軸部15の
内周側にも焼入層20が形成されていない非焼入層22
が設けられている。このため、中空ラック軸1の中空部
11を区画する内周面11iには焼入層20が到達して
いないため、中空ラック軸1の中空部11を区画する内
周面11iの焼入状況を検査する面倒な焼入検査を簡素
化したり、または、廃止したりすることができる。
【0026】本実施形態によれば、主軸部10の内周側
における非焼入層22の厚みをt3とし、ラック軸部1
5のラック歯16の内周側における非焼入層22の厚み
をt4としたとき、t3がt4よりも大きい(t3>t
4)場合には、焼入歪みを矯正する曲げ矯正工程におけ
る矯正量は、主軸部10の内周側における非焼入層22
で主として確保されるため、ラック歯16への負荷が軽
減され、ラック歯16の噛合性が良好に確保される。
【0027】なお本実施形態によれば、ラック軸部15
の焼入層20の平均焼入硬度をH1とし、主軸部10の
焼入層20の平均焼入硬度をH2とすると、H1はH2
と同様な値でも良い(H1=H2,H1≒H2)。ある
いは、H1はH2よりも低い形態でも良い(H1<H
2)。あるいは、H1はH2よりも高い形態でも良い
(H2>H2)。
【0028】加えて本実施形態によれば、中空ラック軸
1の種類によっては、ラック軸部15を焼入するときの
焼入条件の調整により、例えば、導電コイル3に通電す
る高周波電流の周波数を高くすることにより、図5に示
すように、ラック軸部15のラック歯16の歯先面16
b、歯面16a、歯底面16cの輪郭状に沿った焼入層
20を形成することもできる。この場合には、ラック歯
16の表面硬度を高めつつラック歯16の内部の靱性を
確保するのに有利となる。
【0029】(第2実施形態)以下、本発明の第2実施
形態について図6を参照して説明する。第2実施形態は
基本的には第1実施形態と同様の構成であり、第1実施
形態と同様の作用効果を奏する。共通する部位には共通
の符号を付する。図6においてハッチング領域は焼入層
を意味する。
【0030】本実施形態に係る中空ラック軸1Bは、中
心側に中空部11をもつ主軸部10と、主軸部10に同
軸的に一体的に連設され中心側に中空部11をもつラッ
ク軸部15とで構成されている。ラック軸部15は外周
壁に外歯状のラック歯16を有する。主軸部10の中空
部11とラック軸の中空部11は同一径とされており、
一直線状に連通している。ラック軸部15のラック歯1
6は、直円筒形状のパイプ材を形成する周壁の一部を塑
性加工することにより形成されている。ラック軸部15
には、塑性変形された辺部17が形成されており、辺部
17に複数個のラック歯16が直列に突設されている。
ラック歯16は、互いに配向する歯面16aと、歯面1
6aの先端同士を繋ぐ歯先面16bと、歯面16aの基
端同士を繋ぐ歯底面16cとを有する。ラック歯16の
歯先面16bは、主軸部10の外周面10aよりも径内
方向に退避している。主軸部10の外周面10aは耐摩
耗性を向上させるため、高硬度及び高強度が要請されて
いる。ラック軸部15のラック歯16は、ステアリング
により回転されるピニオンと噛合するため、高硬度及び
高強度が要請されている。
【0031】本実施形態によれば、第1実施形態の場合
に比較して中空ラック軸1のラック軸部15には高硬度
及び高強度が要請されている。このため図6に示すよう
に、中空ラック軸1において、ラック軸部15のラック
歯16の全体には焼入層20が設けられている。従っ
て、ラック軸部15のラック歯16に形成されている焼
入層20は、ラック軸部15の中空部11を区画する内
周面11iに到達している。主軸部10の外周側にも焼
入層20が(厚みt2:1〜2mm)設けられている。
そして、主軸部10の内周側には、焼入層20が形成さ
れていない非焼入層22(厚みt3:0.1〜3mm)
が設けられており、主軸部10の内周側の延性は確保さ
れている。
【0032】本実施形態によれば、第1実施形態と同様
に、焼入処理の際に、円リング形状の導電コイル3を導
電部材として用い、導電コイル3に高周波電流(周波
数:例えば3kHz〜300kHz)を通電しつつ、導
電コイル3を中空ラック軸1の軸長方向に沿って相対的
に移動させる。これにより中空ラック軸1の外周面を誘
導加熱で焼入温度領域に加熱する。導電コイル3で加熱
した加熱部分に、直ちに、冷却手段4Aまたは4Bによ
り冷却水を吹き付けて中空ラック軸1の焼入を行う。本
実施形態によれば、ラック軸部15については焼入層2
0の厚みが厚いため、導電コイル3に通電する電流値を
増加したり、導電コイル3の相対移動速度を低速化させ
る。
【0033】本実施形態によれば、主軸部10の焼入層
20及びラック軸部15の焼入層20は軸長方向におい
て連続されており、図9に示す従来技術とは異なり、主
軸部10とラック軸部15との軸長方向における境界域
に非焼入領域が形成されていないため、焼入処理は導電
コイル3を中空ラック軸1の軸長方向に沿って移動させ
るだけで良い。従って焼入処理を1回で行うことがで
き、焼入処理を2回に分けて行っていた図9に示す従来
技術に比較して工程を簡素化できる。
【0034】本実施形態においても、導電コイル3を中
空ラック軸1の軸長方向に沿って移動させてラック歯1
6を焼入するとき、導電コイル3をラック軸部15のラ
ック歯16に向けて変位させることもできる。この結
果、導電コイル3の内周面はラック軸部15のラック歯
16の歯先面16bに近づくことができる。故に、ラッ
ク軸部15のラック歯16の歯先面16bが主軸部10
の外周面よりも径内方向に退避しているときであって
も、ラック軸部15のラック歯16を良好に焼入するこ
とができる。
【0035】上記した焼入処理の後に、中空ラック軸1
の曲げ矯正を行う。この場合、図6に示すように、主軸
部10の内周側には焼入層20が形成されていない非焼
入層22が設けられているため、中空ラック軸1の内周
側の延性は確保されており、焼入処理後における中空ラ
ック軸1の曲げ矯正を良好に行うことができる。
【0036】本実施形態によれば、図6に示すように、
ラック軸部15の内周側には焼入層20が形成されてい
るものの、主軸部10の内周側には、焼入層20が形成
されていない非焼入層22が設けられている。このた
め、中空ラック軸1の中空部11を区画する内周面11
iの焼入状況を肉眼または検査装置で検査する面倒な焼
入検査を簡素化したり、または、廃止したりすることが
できる。
【0037】加えて本実施形態によれば、中空ラック軸
1の種類によっては、第1実施形態と同様に、ラック軸
部15を焼入するときの焼入条件の調整により、例え
ば、導電コイル3に通電する高周波電流の周波数を高く
することにより、図5に示すように、ラック軸部15の
ラック歯16の歯先面16b、歯面16a、歯底面16
cの輪郭状に沿った焼入層20を形成することもでき
る。この場合、ラック歯16の表面硬度を高めつつラッ
ク歯16の内部の靱性を確保するのに有利となる。
【0038】(第3実施形態)以下、本発明の第3実施
形態について図7を参照して説明する。第3実施形態は
基本的には第1実施形態と同様の構成であり、第1実施
形態と同様の作用効果を奏する。共通する部位には共通
の符号を付する。図7においてハッチング領域は焼入層
を意味する。図7に示すように、主軸部10の外周側に
焼入層20が形成されている。主軸部10の内周側に
は、焼入層20が形成されていない非焼入層22が設け
られている。但し本実施形態によれば、主軸部10にお
いて焼入層20の厚みを、主軸部10の軸長方向におい
て部位によって異ならせている。従って、非焼入層22
の厚みは、主軸部10の軸長方向において部位によって
異なる。よって、焼入層20は、焼入層の肉厚が相対的
に薄い薄肉焼入層20rと、焼入層の肉厚が相対的に厚
い厚肉焼入層20sとを交互に有する。導電コイル3に
通電する電流量、周波数、導電コイル3の相対移動速度
のうちの少なくとも一方を変更することにより、主軸部
10に薄肉焼入層20rと厚肉焼入層20sとを交互に
形成することができる。本実施形態によれば、焼入歪み
を矯正する曲げ矯正工程において、主軸部10の曲げを
良好に行うことができ、ラック歯16への負荷が軽減さ
れ、ラック歯16の噛合性が良好に確保される。
【0039】なお図6に示す実施形態においても、焼入
層20は、薄肉焼入層20rと厚肉焼入層20sとを交
互に有する形態としても良い。
【0040】(適用形態)図8は車両としての自動車の
ステアリング装置に適用した適用例を示す。上記した中
空ラック軸1,1Bは、軸受として機能するスライド部
82を介して長筒体80に同軸的に軸長方向にスライド
可能に挿通されている。中空ラック軸1の両端部には、
車輪側に繋がるジョイント部83,84が設けられてい
る。運転者により回転操作されるステアリングホィール
とピニオン85とは接続されている。ピニオン85は中
空ラック軸1,1Bのラック歯16は噛合する。なお図
8ではラック歯16の歯、ピニオン85の歯は一部省略
されている。運転者によりステアリングホィールが回転
操作されると、ピニオン85がラック歯16と噛合しつ
つ回転し、中空ラック軸1が軸長方向(矢印X1,X2
方向)に移動し、車輪の向きを操作させる。
【0041】パワーステアリング装置は、中空ラック軸
1の外周面と長筒体80の内周面との間に形成された油
室86と、中空ラック軸1の軸長方向の中間部に外径方
向に突設され油室86を第1油室86a及び第2油室8
6bとに仕切るピストン87とを有する。なお、第1油
室86aはピストン87と仕切部材88aとで仕切られ
ている。第2油室86bはピストン87と仕切部材88
bとで仕切られている。
【0042】運転者のステアリングホィールの操作によ
りピニオン85が一方向へ回転して中空ラック軸1が矢
印X3方向に移動するとき、図略のパワーステアリング
装置の油圧系により第1油室86aが第2油室86bよ
りも高圧となり、両者の差圧により中空ラック軸1は矢
印X3方向にアシストされる。
【0043】また運転者のステアリングホィールの操作
によりピニオン85が逆方向へ回転して中空ラック軸1
が矢印X2方向に移動するときには、図略のパワーステ
アリング装置の油圧系により第2油室86bが第1油室
86aよりも高圧となり、両者の差圧により中空ラック
軸1は矢印X2方向にアシストされる。なおジョイント
部83.84と長筒体80の端部との間には、防塵用の
蛇腹状のダストカバー90が被着されている。
【0044】(その他)前記した第1実施形態及び第2
実施形態によれば、中空ラック軸1、1Bの主軸部10
の外径及び内径は、上記した値に限定されるものではな
く、適宜変更できる。主軸部10の中空部11の内径と
ラック軸部15の中空部11の内径とは同一径とされて
いるが、これに限定されるものではなく、主軸部10の
中空部11の内径とラック軸部15の中空部11の内径
とを異径とすることもできる。また主軸部10の中空部
11の横断面形状とラック軸部15の中空部11の横断
面形状とは、図面に示したものに限定されるものではな
く、適宜変更できる。焼入層20の厚みは、上記した値
に限定されるものではなく、適宜変更できる。即ち、焼
入層20の厚みに関する上記したt1,t2,t3,t
4の値は上記した値に限定されるものではなく、中空ラ
ック軸の種類に応じて適宜変更できる。
【0045】中空ラック軸1、1Bを誘導加熱するため
の導電部材としての導電コイル3は1重リング形状とさ
れているが、これに限らず、2重リング状でも、それ以
上のリングでも良く、更にリング形状に限らず、場合に
よっては板状でも良く、要するに中空ラック軸1を高周
波焼入処理できるものであればよい。導電コイル3に通
電する高周波電流の周波数は上記した周波数域に限定さ
れるものでなく、適宜変更して実施できる。その他、本
発明は上記した実施形態のみに限定されるものではな
く、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施でき
る。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ラ
ック軸部のラック歯及び主軸部の外周側に焼入層が設け
られており、且つ、主軸部の内周側には、焼入層が形成
されていない非焼入層が設けられている。このため中空
ラック軸に要請される硬度、耐摩耗性、強度を確保しつ
つ、中空ラック軸の曲がり矯正の良好性を確保できる。
しかも、主軸部の内周側には非焼入層が設けられている
ため、つまり、主軸部の内周側には焼入層が到達してい
ないため、中空ラック軸の中空部の内周面を肉眼または
検査装置で検査する面倒な焼入検査の簡素化または廃止
に有利である。
【0047】また本発明方法によれば、主軸部の焼入層
及びラック軸部の焼入層は軸長方向において連続されて
おり、図9に示す従来技術とは異なり、主軸部とラック
軸部との境界域に非焼入領域が形成されていないため、
焼入処理は導電コイル等の導電部材を中空ラック軸の軸
長方向に沿って相対的に移動させるだけで良い。従って
焼入処理を1回で行うことができ、焼入処理を2回に分
けて行っていた図9示す従来技術に比較して工程を簡素
化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の係る中空ラック軸の要部の断面
図である。
【図2】第1実施形態の他の形態に係る中空ラック軸の
要部の断面図である。
【図3】第1実施形態の係る中空ラック軸のラック軸部
の横断面図であり、図1のW3−W3に沿った断面図で
ある。
【図4】第1実施形態の他の形態に係る中空ラック軸の
主軸部の横断面図であり、図1のW4−W4に沿った断
面図であるる。
【図5】第1実施形態の別の他の形態に係る中空ラック
軸のラック歯の断面図である。
【図6】第2実施形態の係る中空ラック軸の要部の断面
図である。
【図7】第3実施形態の係る中空ラック軸の要部の断面
図である。
【図8】適用形態の係り、中空ラック軸をパワーステア
リング装置に適用した状態の断面図である。
【図9】従来形態の係る中空ラック軸の要部の断面図で
ある。
【符号の説明】 図中、1は中空ラック軸、10は主軸部、11は中空
部、15はラック軸部、16はラック歯、20は焼入
層、22は非焼入層を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小畑 幸治 愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工 機株式会社内 (72)発明者 川口 実 愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工 機株式会社内 (72)発明者 村上 博昭 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 篠原 明彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3J030 AC03 BA08 BC03 CA10 3J062 AA07 AB05 AC07 BA01 BA11 CA15 CA31

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】中心側に中空部をもつ主軸部と、前記主軸
    部に同軸的に一体的に連設され中心側に中空部をもつと
    共に外周壁に外歯状のラック歯を有するラック軸部とで
    構成された中空ラック軸において、 前記ラック軸部の前記ラック歯及び前記主軸部の外周側
    に焼入層が設けられており、且つ、前記主軸部の内周側
    には、焼入層が形成されていない非焼入層が設けられて
    いることを特徴とする中空ラック軸。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記ラック軸部の内周
    側には焼入層が形成されていない非焼入層が設けられて
    いることを特徴とする中空ラック軸。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記主軸部の内周側に
    おける非焼入層の厚みをt3とし、ラック軸部のラック
    歯の内周側における非焼入層の厚みをt4としたとき、
    t3はt4よりも大きく(t3>t4)設定されている
    ことを特徴とする中空ラック軸。
  4. 【請求項4】請求項1において、前記ラック軸部では、
    焼入層は前記ラック軸部の内周面に到達していることを
    特徴とする中空ラック軸。
  5. 【請求項5】中心側に中空部をもつ主軸部と、前記主軸
    部に同軸的に一体的に連設され中心側に中空部をもつと
    共に外周壁に外歯状のラック歯を有するラック軸部とで
    構成された中空ラック軸を用意する工程と、 前記ラック軸部の前記ラック歯及び前記主軸部の外周側
    に焼入層を設け、且つ、前記主軸部の内周側には、焼入
    層が形成されていない非焼入層を設ける焼入工程とを実
    施することを特徴とする中空ラック軸の製造方法。
JP2002126121A 2002-04-26 2002-04-26 中空ラック軸及びその製造方法 Pending JP2003312489A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002126121A JP2003312489A (ja) 2002-04-26 2002-04-26 中空ラック軸及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002126121A JP2003312489A (ja) 2002-04-26 2002-04-26 中空ラック軸及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003312489A true JP2003312489A (ja) 2003-11-06

Family

ID=29540644

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002126121A Pending JP2003312489A (ja) 2002-04-26 2002-04-26 中空ラック軸及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003312489A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008240120A (ja) * 2007-03-28 2008-10-09 High Frequency Heattreat Co Ltd 中空ラックバーの製造方法及び中空ラックバー
JP2009262694A (ja) * 2008-04-23 2009-11-12 Neturen Co Ltd ラックバー、プレス加工装置及び中空ラックバーの製造方法
JP2009263706A (ja) * 2008-04-23 2009-11-12 Neturen Co Ltd 中空ラックバーの製造方法及び中空ラックバー
JP2012154422A (ja) * 2011-01-26 2012-08-16 Kunimoto Kogyo Kk ラックバーおよびその製造方法
US8499660B2 (en) 2007-03-20 2013-08-06 Neturen Co., Ltd. Hollow rack and hollow rack manufacturing method
CN108290600A (zh) * 2015-11-04 2018-07-17 高周波热錬株式会社 制造齿杆的方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8499660B2 (en) 2007-03-20 2013-08-06 Neturen Co., Ltd. Hollow rack and hollow rack manufacturing method
US8595936B2 (en) 2007-03-20 2013-12-03 Neturen Co., Ltd. Hollow rack end diameter reducing method
JP2008240120A (ja) * 2007-03-28 2008-10-09 High Frequency Heattreat Co Ltd 中空ラックバーの製造方法及び中空ラックバー
JP2009262694A (ja) * 2008-04-23 2009-11-12 Neturen Co Ltd ラックバー、プレス加工装置及び中空ラックバーの製造方法
JP2009263706A (ja) * 2008-04-23 2009-11-12 Neturen Co Ltd 中空ラックバーの製造方法及び中空ラックバー
JP2012154422A (ja) * 2011-01-26 2012-08-16 Kunimoto Kogyo Kk ラックバーおよびその製造方法
CN108290600A (zh) * 2015-11-04 2018-07-17 高周波热錬株式会社 制造齿杆的方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN107052720A (zh) 一种钢制车轮的制造方法及其采用该方法成型的车轮
WO2012032926A1 (ja) 等速自在継手の外側継手部材およびその摩擦圧接方法
US20110198820A1 (en) Stabilizer and a method for producing a stabilizer
CN105121055A (zh) 套圈部件的制造方法
US8956049B2 (en) Method for producing a fracture-divided component, and component produced according to the method
WO2006013730A1 (ja) 中空状動力伝達シャフト及びその製造方法
JP2001220623A (ja) かさ歯車を製造する方法
CN105396893A (zh) 用于形成由钢板构成的工件,尤其是坯料的方法
JP2003312489A (ja) 中空ラック軸及びその製造方法
EP2771595A1 (de) Funktionsoptimierte gestaltung einer zylinderlaufbuchse
US9097284B2 (en) Wheel bearing apparatus for a vehicle
JPWO2019188224A1 (ja) 中空スタビライザー製造用の電縫鋼管、中空スタビライザー、及びそれらの製造方法
JP2010038021A (ja) スプリング・リテーナ及びスプリング・システム
US20190388952A1 (en) Method for producing a vehicle wheel consisting of sheet metal
JP2002276738A (ja) トーショナルダンパ
JP2007291416A (ja) 自動車高圧配管用高張力鋼管
JP2012197070A (ja) 車輪用転がり軸受装置の製造方法及び車輪用転がり軸受装置
JP2009097716A (ja) ディファレンシャル装置
JP5509869B2 (ja) ラックアンドピニオン式ステアリング装置の製造方法
JP2003183737A (ja) ラックバー
Amborn et al. Modern side-shafts for passenger cars: Manufacturing processes II—Monobloc tube shafts
US20040166354A1 (en) Hollow molded part with closed cross-section and a reinforcement
Raedt et al. The Lightweight Forging Initiative-Phase III: Lightweight Forging Design for Hybrid Cars and Heavy-duty Trucks
US9982705B2 (en) Roller bearing mounted shaft
JP2002013613A (ja) ギヤ部分付き平板状部材