JP2003210157A - 灌流型複合細胞培養装置、該装置からなるシミュレータ及び該装置を用いた生体に対する化学物質影響評価方法 - Google Patents
灌流型複合細胞培養装置、該装置からなるシミュレータ及び該装置を用いた生体に対する化学物質影響評価方法Info
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- JP2003210157A JP2003210157A JP2002009203A JP2002009203A JP2003210157A JP 2003210157 A JP2003210157 A JP 2003210157A JP 2002009203 A JP2002009203 A JP 2002009203A JP 2002009203 A JP2002009203 A JP 2002009203A JP 2003210157 A JP2003210157 A JP 2003210157A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 個体レベルでの有害物質の影響評価に不可欠
な小腸からの吸収プロセス・肝臓での物質変換プロセス
を含みつつ、人体をそのままスケールダウンするような
シミュレータを開発すること。 【解決手段】 培養小腸上皮及び肝組織を用いた小腸上
皮モデル及び肝組織モデル並びに他組織モデルを個別に
配置した少なくとも3つのコンパートメントが灌流回路
で連絡され、前記コンパートメントを旋回震盪させるた
めの旋回震盪器を備えることを特徴とする灌流型複合細
胞培養装置。装置全体を小型化、軽量化し、操作の利便
性を向上させることが可能である。
な小腸からの吸収プロセス・肝臓での物質変換プロセス
を含みつつ、人体をそのままスケールダウンするような
シミュレータを開発すること。 【解決手段】 培養小腸上皮及び肝組織を用いた小腸上
皮モデル及び肝組織モデル並びに他組織モデルを個別に
配置した少なくとも3つのコンパートメントが灌流回路
で連絡され、前記コンパートメントを旋回震盪させるた
めの旋回震盪器を備えることを特徴とする灌流型複合細
胞培養装置。装置全体を小型化、軽量化し、操作の利便
性を向上させることが可能である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト個体での物質
変換プロセスや個体システムの階層構造を再現可能な灌
流型複合細胞培養装置、該装置からなるシミュレータ及
び該装置を用いた化学物質影響評価方法に関する。本発
明の装置は、生体における化学物質の変換プロセスや臓
器間相互作用をシミュレートし、生体に対する化学物質
の影響を評価するのに有用である。より具体的には、本
発明の装置は、環境中に排出され、経口摂取された化学
物質の小腸からの吸収並びに肝での解毒や代謝活性化、
毒性発現のシミュレーションを行うことを可能にし、且
つ運転の容易さを併せ持つ。本発明の灌流型複合細胞培
養装置は、小動物を用いるin vivo化学物質投与試験を
代替する、小腸上皮及び肝組織に相当する培養細胞を用
いた、バイオハイブリッド型の吸収・代謝シミュレータ
として用いることができる。
変換プロセスや個体システムの階層構造を再現可能な灌
流型複合細胞培養装置、該装置からなるシミュレータ及
び該装置を用いた化学物質影響評価方法に関する。本発
明の装置は、生体における化学物質の変換プロセスや臓
器間相互作用をシミュレートし、生体に対する化学物質
の影響を評価するのに有用である。より具体的には、本
発明の装置は、環境中に排出され、経口摂取された化学
物質の小腸からの吸収並びに肝での解毒や代謝活性化、
毒性発現のシミュレーションを行うことを可能にし、且
つ運転の容易さを併せ持つ。本発明の灌流型複合細胞培
養装置は、小動物を用いるin vivo化学物質投与試験を
代替する、小腸上皮及び肝組織に相当する培養細胞を用
いた、バイオハイブリッド型の吸収・代謝シミュレータ
として用いることができる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】科学技
術の発展に伴い、数多くの化学物質が創り出され、医薬
品、食品、大気、水等を介して生体内に摂取されてい
る。それらの化学物質には、発ガンの要因となる変異原
性物質や、環境ホルモンとして近年注目されている内分
泌攪乱性物質など、生体内に摂取されたときに障害をも
たらす可能性を有するものもある。したがって、化学物
質の安全性に対する社会の関心は高く、化学物質が生体
内に取り込まれた際に与える影響について評価すること
が重要となっている。そのため、多種多様な化学物質の
生体への影響を迅速且つ簡便に、正確に評価することが
できる方法の確立が重要となっている。
術の発展に伴い、数多くの化学物質が創り出され、医薬
品、食品、大気、水等を介して生体内に摂取されてい
る。それらの化学物質には、発ガンの要因となる変異原
性物質や、環境ホルモンとして近年注目されている内分
泌攪乱性物質など、生体内に摂取されたときに障害をも
たらす可能性を有するものもある。したがって、化学物
質の安全性に対する社会の関心は高く、化学物質が生体
内に取り込まれた際に与える影響について評価すること
が重要となっている。そのため、多種多様な化学物質の
生体への影響を迅速且つ簡便に、正確に評価することが
できる方法の確立が重要となっている。
【0003】現在、化学物質が人体に取り込まれた際の
影響を評価する1つの方法として、マウスやラット等の
実験動物を用い、得られた薬物動態データからヒトにお
ける薬物動態を予測するin vivo試験が行われている。
この方法では、化学物質が生体個体に与える影響を包括
的に評価することができる。しかしながら、化学物質の
体内動態、特に代謝については種差・個体差が大きいの
で、実験動物のデータから人体内での動態を正確に評価
・予測することは困難である。また、労力が大きく、年
月もかかり、飼育スペースやコストの問題もある。さら
に、最近では、動物愛護等の観点から、動物実験削減の
社会的要請があり、代替となるin vitro試験法が望まれ
ている。
影響を評価する1つの方法として、マウスやラット等の
実験動物を用い、得られた薬物動態データからヒトにお
ける薬物動態を予測するin vivo試験が行われている。
この方法では、化学物質が生体個体に与える影響を包括
的に評価することができる。しかしながら、化学物質の
体内動態、特に代謝については種差・個体差が大きいの
で、実験動物のデータから人体内での動態を正確に評価
・予測することは困難である。また、労力が大きく、年
月もかかり、飼育スペースやコストの問題もある。さら
に、最近では、動物愛護等の観点から、動物実験削減の
社会的要請があり、代替となるin vitro試験法が望まれ
ている。
【0004】動物を用いないin vitro試験法としては、
評価対象となる臓器特有の性質を示す培養細胞を用いた
臓器モデルに化学物質を直接添加し、その応答から該化
学物質の毒性や安全性等を評価する方法が行われてい
る。現在、そのような単一臓器レベルのバイオアッセイ
から得られる個別の臓器における毒性情報を、生理学的
薬物動態学(PBPK)シミュレーションにリンクさせ、個
体レベルにまで積み上げることによって、ヒト個体レベ
ルに対する毒性を推察する手法が検討されている。しか
し、数理モデル化がなされていない未解明の臓器間相互
作用に由来する毒性発現を評価することはできない。特
に、変異原性物質や内分泌攪乱性物質については、生体
内での物質変換プロセスや臓器間相互作用が毒性発現に
大きく影響していることが示唆されており、臓器間相互
作用を再現することが可能な評価システムを提案する必
要がある。
評価対象となる臓器特有の性質を示す培養細胞を用いた
臓器モデルに化学物質を直接添加し、その応答から該化
学物質の毒性や安全性等を評価する方法が行われてい
る。現在、そのような単一臓器レベルのバイオアッセイ
から得られる個別の臓器における毒性情報を、生理学的
薬物動態学(PBPK)シミュレーションにリンクさせ、個
体レベルにまで積み上げることによって、ヒト個体レベ
ルに対する毒性を推察する手法が検討されている。しか
し、数理モデル化がなされていない未解明の臓器間相互
作用に由来する毒性発現を評価することはできない。特
に、変異原性物質や内分泌攪乱性物質については、生体
内での物質変換プロセスや臓器間相互作用が毒性発現に
大きく影響していることが示唆されており、臓器間相互
作用を再現することが可能な評価システムを提案する必
要がある。
【0005】培養細胞を用いるin vitro試験法として
は、複数の培養細胞を用いる方法も用いられている。例
えば、静置型複合細胞培養によるin vitro試験があり、
これは、図3に示すように、吸収過程模倣のために小腸
上皮モデルを培養した市販の培養カップ(1.0 cm2)
を、代謝過程及び標的臓器の模倣のために肝組織モデル
を培養したディッシュ(3.8 cm2)に重ね合わせたもの
である。小腸上皮膜上(小腸内腔側)に対象化学物質を
添加し、標的細胞(肝細胞)の活性を評価することによ
って、該化学物質の吸収及び代謝を考慮した影響評価を
行うことができる。このような複合培養を行うと、両細
胞の薬物代謝酵素活性 (チトクロームP-450(CYP) ) が
著しく上昇すること、肝組織が障害を受けにくくなるこ
となど、単一の標的臓器に直接負荷するバイオアッセイ
からは予測し得ない複合細胞培養独自の現象を観察する
ことが可能である。また、この培養装置は、上記のよう
に非常に小さい市販の培養カップやディッシュを使用し
た小型の装置であるために、同一の培養装置を多量に調
整しておけば、多数のサンプルの同時評価が可能である
というメリットがある。
は、複数の培養細胞を用いる方法も用いられている。例
えば、静置型複合細胞培養によるin vitro試験があり、
これは、図3に示すように、吸収過程模倣のために小腸
上皮モデルを培養した市販の培養カップ(1.0 cm2)
を、代謝過程及び標的臓器の模倣のために肝組織モデル
を培養したディッシュ(3.8 cm2)に重ね合わせたもの
である。小腸上皮膜上(小腸内腔側)に対象化学物質を
添加し、標的細胞(肝細胞)の活性を評価することによ
って、該化学物質の吸収及び代謝を考慮した影響評価を
行うことができる。このような複合培養を行うと、両細
胞の薬物代謝酵素活性 (チトクロームP-450(CYP) ) が
著しく上昇すること、肝組織が障害を受けにくくなるこ
となど、単一の標的臓器に直接負荷するバイオアッセイ
からは予測し得ない複合細胞培養独自の現象を観察する
ことが可能である。また、この培養装置は、上記のよう
に非常に小さい市販の培養カップやディッシュを使用し
た小型の装置であるために、同一の培養装置を多量に調
整しておけば、多数のサンプルの同時評価が可能である
というメリットがある。
【0006】しかしながら、その反面、あまりにも小型
であるために培養液の量が少なく、化学物質の添加後、
経時的にサンプリングを行って、細胞活性や化学物質濃
度の経時変化を測定し、その影響を評価することができ
ない。すなわち、評価対象の化学物質の生体内における
変化を速度論的に論じることができない。また、生体に
対する化学物質の影響評価を定量的に行うためには、モ
デル臓器間の細胞数比を実際の臓器間の細胞数比と合わ
せる必要があるが、市販の培養器を用いているために、
モデル臓器の細胞数比を自由に制御出来ない。例えば、
生体内において肝細胞は非常に高密度に存在している
が、ディッシュ上で培養できる細胞数には限度があり、
人体内における小腸上皮細胞と肝細胞との比を正確に再
現することはできない。さらに、生体内の各臓器は血管
等の生理学的回路によって互いに連絡されているが、こ
の培養装置では、臓器間の物理的な位置関係が実際とは
著しく異なっており、人体を正確に再現したものとは言
えない。
であるために培養液の量が少なく、化学物質の添加後、
経時的にサンプリングを行って、細胞活性や化学物質濃
度の経時変化を測定し、その影響を評価することができ
ない。すなわち、評価対象の化学物質の生体内における
変化を速度論的に論じることができない。また、生体に
対する化学物質の影響評価を定量的に行うためには、モ
デル臓器間の細胞数比を実際の臓器間の細胞数比と合わ
せる必要があるが、市販の培養器を用いているために、
モデル臓器の細胞数比を自由に制御出来ない。例えば、
生体内において肝細胞は非常に高密度に存在している
が、ディッシュ上で培養できる細胞数には限度があり、
人体内における小腸上皮細胞と肝細胞との比を正確に再
現することはできない。さらに、生体内の各臓器は血管
等の生理学的回路によって互いに連絡されているが、こ
の培養装置では、臓器間の物理的な位置関係が実際とは
著しく異なっており、人体を正確に再現したものとは言
えない。
【0007】Shulerらは、単一細胞からなるin vitro試
験をヒト個体様に階層的に接続する人体シミュレータを
構築している(Shuler, M. L. et al., Biotechnol. Bi
oeng., 52, 45-60(1996).)。このシミュレータは肺及
び肝臓の培養細胞を用いている。しかしながら、このシ
ミュレータには、経口摂取された化学物質の評価に必要
不可欠な小腸モデルが含まれておらず、化学物質の主要
な摂取経路である小腸からの吸収過程を評価することは
できない。また、培養細胞の寿命が短く、血中濃度の定
性的な再現ができたのは数時間にすぎない。また、運転
管理も煩雑である。したがって、化学物質の影響評価試
験の主流である小動物を用いたin vivo試験に対して優
位性を示すことはできず、このような複合細胞培養シス
テムの有効性を広く認識させるには至っていない。
験をヒト個体様に階層的に接続する人体シミュレータを
構築している(Shuler, M. L. et al., Biotechnol. Bi
oeng., 52, 45-60(1996).)。このシミュレータは肺及
び肝臓の培養細胞を用いている。しかしながら、このシ
ミュレータには、経口摂取された化学物質の評価に必要
不可欠な小腸モデルが含まれておらず、化学物質の主要
な摂取経路である小腸からの吸収過程を評価することは
できない。また、培養細胞の寿命が短く、血中濃度の定
性的な再現ができたのは数時間にすぎない。また、運転
管理も煩雑である。したがって、化学物質の影響評価試
験の主流である小動物を用いたin vivo試験に対して優
位性を示すことはできず、このような複合細胞培養シス
テムの有効性を広く認識させるには至っていない。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、小腸から
の物質吸収と肝臓での代謝を再現するために、膜上培養
した小腸上皮、高密度充填培養した肝組織、そして他組
織(又はリザーバ)のモデルを個別に市販のガラス製ディ
ッシュに収め、各々を生理学的回路に基づくようにチュ
ーブで連結し、数台のポンプで培養液を灌流させた複合
培養システムのプロトタイプを開発した(図4)。しか
しながら、このプロトタイプには、急速な水吸収による
小腸膜面上の枯渇や、肝細胞を高密度充填させたことに
より生じた酸素供給不足のために肝細胞機能の長期維持
が不可能であったこと等の問題点があり、長期的に安定
した運転を行うことは不可能であった。また、細胞培養
は無菌操作で行う必要があり、滅菌した装置をクリーン
ベンチ等の無菌的条件下で組み立て、それを炭酸ガスイ
ンキュベータ等に移動させるなど、手間がかかる。した
がって、インキュベータとクリーンベンチ間の煩雑な移
動や操作の利便性を改善するために、装置の小型化及び
軽量化が望まれていた。
の物質吸収と肝臓での代謝を再現するために、膜上培養
した小腸上皮、高密度充填培養した肝組織、そして他組
織(又はリザーバ)のモデルを個別に市販のガラス製ディ
ッシュに収め、各々を生理学的回路に基づくようにチュ
ーブで連結し、数台のポンプで培養液を灌流させた複合
培養システムのプロトタイプを開発した(図4)。しか
しながら、このプロトタイプには、急速な水吸収による
小腸膜面上の枯渇や、肝細胞を高密度充填させたことに
より生じた酸素供給不足のために肝細胞機能の長期維持
が不可能であったこと等の問題点があり、長期的に安定
した運転を行うことは不可能であった。また、細胞培養
は無菌操作で行う必要があり、滅菌した装置をクリーン
ベンチ等の無菌的条件下で組み立て、それを炭酸ガスイ
ンキュベータ等に移動させるなど、手間がかかる。した
がって、インキュベータとクリーンベンチ間の煩雑な移
動や操作の利便性を改善するために、装置の小型化及び
軽量化が望まれていた。
【0009】そこで、本発明者らは、さらに検討を行っ
た結果、培養液を灌流させるために使用しているポンプ
の他に、小腸膜上面に連続的に培養液を添加するための
新たなポンプや、高密度培養された肝細胞を含むコンパ
ートメント内における物質移動、特に酸素供給の改善の
ために、コンパートメント内を撹拌するための震盪装置
等を設けることによって、長期安定運転や、装置の小型
化及び軽量化が可能となることを見出した。
た結果、培養液を灌流させるために使用しているポンプ
の他に、小腸膜上面に連続的に培養液を添加するための
新たなポンプや、高密度培養された肝細胞を含むコンパ
ートメント内における物質移動、特に酸素供給の改善の
ために、コンパートメント内を撹拌するための震盪装置
等を設けることによって、長期安定運転や、装置の小型
化及び軽量化が可能となることを見出した。
【0010】本発明の第一の発明は、培養小腸上皮及び
肝組織を用いた小腸上皮モデル及び肝組織モデルを個別
に配置した少なくとも2つのコンパートメントが灌流回
路で連絡され、前記コンパートメントを旋回震盪させる
ための旋回震盪器を備えることを特徴とする灌流型複合
細胞培養装置である。本発明の第二の発明は、培養小腸
上皮及び肝組織を用いた小腸上皮モデル及び肝組織モデ
ル並びに他組織モデルを個別に配置した少なくとも3つ
のコンパートメントが灌流回路で連絡され、前記コンパ
ートメントを旋回震盪させるための旋回震盪器を備える
ことを特徴とする灌流型複合細胞培養装置である。旋回
震盪器を用いてコンパートメントを旋回震盪させること
により、培養細胞への物質(栄養や酸素等)の供給不足
が改善され、また、各コンパートメント内を完全に混合
することができる。
肝組織を用いた小腸上皮モデル及び肝組織モデルを個別
に配置した少なくとも2つのコンパートメントが灌流回
路で連絡され、前記コンパートメントを旋回震盪させる
ための旋回震盪器を備えることを特徴とする灌流型複合
細胞培養装置である。本発明の第二の発明は、培養小腸
上皮及び肝組織を用いた小腸上皮モデル及び肝組織モデ
ル並びに他組織モデルを個別に配置した少なくとも3つ
のコンパートメントが灌流回路で連絡され、前記コンパ
ートメントを旋回震盪させるための旋回震盪器を備える
ことを特徴とする灌流型複合細胞培養装置である。旋回
震盪器を用いてコンパートメントを旋回震盪させること
により、培養細胞への物質(栄養や酸素等)の供給不足
が改善され、また、各コンパートメント内を完全に混合
することができる。
【0011】本発明の灌流型複合細胞培養装置は、さら
に、小腸上皮モデルの膜上面に連続的に培養液を添加す
るためのシリンジポンプを備える。シリンジポンプによ
り、小腸上皮膜面上の培養液量を常に一定に調節するこ
とができ、さらに、アレンジに富んだ化学物質の負荷方
法を考慮できる。
に、小腸上皮モデルの膜上面に連続的に培養液を添加す
るためのシリンジポンプを備える。シリンジポンプによ
り、小腸上皮膜面上の培養液量を常に一定に調節するこ
とができ、さらに、アレンジに富んだ化学物質の負荷方
法を考慮できる。
【0012】本発明おいて、前記小腸上皮モデルコンパ
ートメントは、好ましくは、該コンパートメント内の過
剰な培養液を肝組織モデルコンパートメントに放出する
ためのオーバーフロー手段を備える。さらに、本発明が
3つ以上のコンパートメントを備える場合、前記肝組織
モデルコンパートメントは、該コンパートメント内の過
剰な培養液を他組織モデルコンパートメントに放出する
ためのオーバーフロー手段を備える。オーバーフローを
設けることによって、過剰の培養液が自動的に下方のコ
ンパートメントに送られるので、ポンプ等によって送液
調整を行う必要がなく、灌流の自動制御を行う上で問題
の多い送液のトラブルを防ぐことができる。
ートメントは、好ましくは、該コンパートメント内の過
剰な培養液を肝組織モデルコンパートメントに放出する
ためのオーバーフロー手段を備える。さらに、本発明が
3つ以上のコンパートメントを備える場合、前記肝組織
モデルコンパートメントは、該コンパートメント内の過
剰な培養液を他組織モデルコンパートメントに放出する
ためのオーバーフロー手段を備える。オーバーフローを
設けることによって、過剰の培養液が自動的に下方のコ
ンパートメントに送られるので、ポンプ等によって送液
調整を行う必要がなく、灌流の自動制御を行う上で問題
の多い送液のトラブルを防ぐことができる。
【0013】本発明の灌流型複合細胞培養装置において
は、好ましくは、前記コンパートメントが、着脱可能で
あり且つオートクレイブ可能なスプリング付きアルミ製
トレイ上に配置される。これによって、各コンパートメ
ントを灌流回路で連結したまま、装置からはずし、オー
トクレイブ滅菌してそのまま装置に装着することが可能
である。また、スプリングを設けることによって、震盪
や持ち運びによる落下を防ぐことができる。
は、好ましくは、前記コンパートメントが、着脱可能で
あり且つオートクレイブ可能なスプリング付きアルミ製
トレイ上に配置される。これによって、各コンパートメ
ントを灌流回路で連結したまま、装置からはずし、オー
トクレイブ滅菌してそのまま装置に装着することが可能
である。また、スプリングを設けることによって、震盪
や持ち運びによる落下を防ぐことができる。
【0014】本発明では、好ましくは、小腸上皮モデル
として、半透膜上に膜状培養したヒト大腸ガン由来細胞
株Caco-2を用い、肝組織モデルとして、多孔質担体上に
高密度培養したヒト肝芽種由来細胞株Hep G2を用いる。
これらの細胞はガン由来細胞であるため、無限に増殖可
能であるので、均一な状態の細胞を大量に得ることがで
きる。それに加えて、遺伝子配列が同じであるヒト由来
の細胞を利用するので、ヒト健康リスクを評価する上で
説得力ある結果が得られる。
として、半透膜上に膜状培養したヒト大腸ガン由来細胞
株Caco-2を用い、肝組織モデルとして、多孔質担体上に
高密度培養したヒト肝芽種由来細胞株Hep G2を用いる。
これらの細胞はガン由来細胞であるため、無限に増殖可
能であるので、均一な状態の細胞を大量に得ることがで
きる。それに加えて、遺伝子配列が同じであるヒト由来
の細胞を利用するので、ヒト健康リスクを評価する上で
説得力ある結果が得られる。
【0015】本発明の装置を用いることによって、単一
臓器バイオアッセイからは予測し得ない結果(例えば、
小腸上皮との相互作用によって、肝機能が上昇し、化学
物質による障害を受けにくくなること等)を速度論的に
得ることができる。各臓器モデルの細胞数比を容易に制
御できるので、より生体に近い生理学的回路を模倣する
ことができる。したがって、例えば、生体内では、小腸
で吸収された化学物質が肝臓で代謝され、胆汁中に排泄
された代謝物が再度小腸で吸収される腸肝循環が生じて
いるが、この腸肝循環等の小腸−肝臓間の相互作用を評
価することも可能となる。他組織モデルとして、任意の
標的臓器モデルを配置することによって、より多くの臓
器間相互作用を評価することが可能となる。すなわち、
本発明の灌流型複合細胞培養装置は、生体内における化
学物質の吸収・代謝シミュレータとして用いることがで
きる。
臓器バイオアッセイからは予測し得ない結果(例えば、
小腸上皮との相互作用によって、肝機能が上昇し、化学
物質による障害を受けにくくなること等)を速度論的に
得ることができる。各臓器モデルの細胞数比を容易に制
御できるので、より生体に近い生理学的回路を模倣する
ことができる。したがって、例えば、生体内では、小腸
で吸収された化学物質が肝臓で代謝され、胆汁中に排泄
された代謝物が再度小腸で吸収される腸肝循環が生じて
いるが、この腸肝循環等の小腸−肝臓間の相互作用を評
価することも可能となる。他組織モデルとして、任意の
標的臓器モデルを配置することによって、より多くの臓
器間相互作用を評価することが可能となる。すなわち、
本発明の灌流型複合細胞培養装置は、生体内における化
学物質の吸収・代謝シミュレータとして用いることがで
きる。
【0016】本発明は、上記灌流型複合細胞培養装置を
用いた、生体に対する化学物質影響評価方法にも関し、
該方法は、該装置内に培養液を灌流させ、小腸上皮モデ
ルの膜上面に化学物質を添加し、灌流させ、該化学物質
に対するメルクマールを測定することを特徴とする。
用いた、生体に対する化学物質影響評価方法にも関し、
該方法は、該装置内に培養液を灌流させ、小腸上皮モデ
ルの膜上面に化学物質を添加し、灌流させ、該化学物質
に対するメルクマールを測定することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施態様の灌流型複合細胞培養装置
全体の概略図である。この図に示す灌流型複合細胞培養
装置は、φ100 mm のガラス製ディッシュ1組及びφ60
mm 2組のガラス製ディッシュの計3組のコンパートメン
ト1〜3と旋回震盪器4、シリンジポンプ5、ペリスタ
リックポンプ6、7を350 mm ×170 mm ×220 mmのサイ
ズに配置したものである。3組のコンパートメントは上
から,小腸上皮モデル、肝組織モデル、他組織モデルを
表し、他組織としては、他の臓器相当物を加えてもよい
し、サンプリングのために用いてもよい。また、運転時
のサンプリングを可能にするために、肝臓及び他組織コ
ンパートメントにはサンプリングポートを設けることが
できる。装置内に培養液を灌流させるとき、他組織モデ
ルコンパートメント3内の培養液は、ペリスタリックポ
ンプ6によって小腸上皮モデルコンパートメント1に送
られ、また、ペリスタリックポンプ7によって肝組織モ
デルコンパートメント2に送られる。
図2は、本発明の一実施態様の灌流型複合細胞培養装置
全体の概略図である。この図に示す灌流型複合細胞培養
装置は、φ100 mm のガラス製ディッシュ1組及びφ60
mm 2組のガラス製ディッシュの計3組のコンパートメン
ト1〜3と旋回震盪器4、シリンジポンプ5、ペリスタ
リックポンプ6、7を350 mm ×170 mm ×220 mmのサイ
ズに配置したものである。3組のコンパートメントは上
から,小腸上皮モデル、肝組織モデル、他組織モデルを
表し、他組織としては、他の臓器相当物を加えてもよい
し、サンプリングのために用いてもよい。また、運転時
のサンプリングを可能にするために、肝臓及び他組織コ
ンパートメントにはサンプリングポートを設けることが
できる。装置内に培養液を灌流させるとき、他組織モデ
ルコンパートメント3内の培養液は、ペリスタリックポ
ンプ6によって小腸上皮モデルコンパートメント1に送
られ、また、ペリスタリックポンプ7によって肝組織モ
デルコンパートメント2に送られる。
【0018】小腸部位には市販の培養カップ(Costar, 3
419)を組み込むことが可能なテフロン(登録商標)性の
ホルダーが入っており、このホルダーには小腸上皮の経
上皮電気抵抗値が測定できるような適当な溝が設けるこ
とができる。経上皮電気抵抗値は、小腸上皮細胞様に分
化した培養細胞間の結合の強さを示す指標となるもので
ある。
419)を組み込むことが可能なテフロン(登録商標)性の
ホルダーが入っており、このホルダーには小腸上皮の経
上皮電気抵抗値が測定できるような適当な溝が設けるこ
とができる。経上皮電気抵抗値は、小腸上皮細胞様に分
化した培養細胞間の結合の強さを示す指標となるもので
ある。
【0019】これらのガラスディッシュは専用の140 mm
×φ110 mmの3段のスプリング付きアルミ製トレイ8
に載せることで、他組織から小腸基底膜側及び肝臓へ灌
流させるための接続が簡便になり、また装置との取り外
しが可能であるため、そのままオートクレイブ滅菌する
こともできる。該アルミ製トレイ8にスプリングが備わ
っていることによって、各ディッシュを固定し、旋回震
盪時や運搬時のディッシュの落下を防ぐことができる。
×φ110 mmの3段のスプリング付きアルミ製トレイ8
に載せることで、他組織から小腸基底膜側及び肝臓へ灌
流させるための接続が簡便になり、また装置との取り外
しが可能であるため、そのままオートクレイブ滅菌する
こともできる。該アルミ製トレイ8にスプリングが備わ
っていることによって、各ディッシュを固定し、旋回震
盪時や運搬時のディッシュの落下を防ぐことができる。
【0020】本発明においては、小腸膜モデルとして、
ヒト大腸ガン由来細胞株Caco-2が好ましく用いられる。
Caco-2細胞は、腸管による吸収性を評価できる培養細胞
系として近年注目されている細胞で、1977年にヒト
の大腸ガンから分離、樹立された細胞である。Caco-2細
胞を多孔性のポリエステルあるいはポリカーボネート膜
上で単層培養すると、絨毛やタイトジャンクションの形
成等の形態学的、生化学的な膜の極性を示し、小腸の吸
収上皮細胞様に分化することが知られている。
ヒト大腸ガン由来細胞株Caco-2が好ましく用いられる。
Caco-2細胞は、腸管による吸収性を評価できる培養細胞
系として近年注目されている細胞で、1977年にヒト
の大腸ガンから分離、樹立された細胞である。Caco-2細
胞を多孔性のポリエステルあるいはポリカーボネート膜
上で単層培養すると、絨毛やタイトジャンクションの形
成等の形態学的、生化学的な膜の極性を示し、小腸の吸
収上皮細胞様に分化することが知られている。
【0021】本発明では、機能の面で有利な正常肝細胞
であるラット初代培養肝細胞等を用いることもできる
が、機能、特に代謝酵素はその動物種によって全く異な
るため、ヒト細胞を用いることが望ましい。Hep G2はAd
enらにより樹立されたヒト肝臓ガン由来細胞株であり、
培養の簡便な株化細胞である。株化した肝由来細胞は、
その機能の面で、正常肝細胞に大きく劣るが、ヒトの正
常肝細胞を頻繁に用いることは事実上不可能であり、注
目する機能さえ備えていれば、ヒト細胞を用いる利点は
大きい。ヒト由来のこの細胞株は、チトクロームP450
(CYP)IA1/2という代謝酵素を持っている。通常の培養
状態では生体内の10分の1以下の活性しか有していな
いが、この酵素の生成を促す誘導作用を有する化学物質
(3−メチルコラントレン等)を添加することによっ
て、活性を最大限に高めることができる。また、生体内
では、肝細胞は非常に高密度の状態で存在しており、こ
のことが肝機能の発現に大きく関与すると言われてい
る。そこで、本発明では、肝細胞を高密度培養するため
に、多孔性のマイクロキャリアを用いて培養を行うこと
が好ましい。
であるラット初代培養肝細胞等を用いることもできる
が、機能、特に代謝酵素はその動物種によって全く異な
るため、ヒト細胞を用いることが望ましい。Hep G2はAd
enらにより樹立されたヒト肝臓ガン由来細胞株であり、
培養の簡便な株化細胞である。株化した肝由来細胞は、
その機能の面で、正常肝細胞に大きく劣るが、ヒトの正
常肝細胞を頻繁に用いることは事実上不可能であり、注
目する機能さえ備えていれば、ヒト細胞を用いる利点は
大きい。ヒト由来のこの細胞株は、チトクロームP450
(CYP)IA1/2という代謝酵素を持っている。通常の培養
状態では生体内の10分の1以下の活性しか有していな
いが、この酵素の生成を促す誘導作用を有する化学物質
(3−メチルコラントレン等)を添加することによっ
て、活性を最大限に高めることができる。また、生体内
では、肝細胞は非常に高密度の状態で存在しており、こ
のことが肝機能の発現に大きく関与すると言われてい
る。そこで、本発明では、肝細胞を高密度培養するため
に、多孔性のマイクロキャリアを用いて培養を行うこと
が好ましい。
【0022】Caco-2細胞やHep G2細胞は、ガン由来細胞
であるため、無限に増殖可能であるので、均一な状態の
細胞を大量に得ることができる。それに加えて、遺伝子
配列が同じであるヒト由来の細胞を利用するので、ヒト
健康リスクを評価する上で説得力ある結果が得られる。
であるため、無限に増殖可能であるので、均一な状態の
細胞を大量に得ることができる。それに加えて、遺伝子
配列が同じであるヒト由来の細胞を利用するので、ヒト
健康リスクを評価する上で説得力ある結果が得られる。
【0023】化学物質の血中濃度の経時変化を定量的に
測定することが可能なシステムとするためには、生体内
の体液(血液)/細胞数比をおおまかにスケールダウン
することが好ましい。人体における小腸上皮細胞数(ce
lls):肝細胞数(cells):全(血)液量(mL)はそれ
ぞれ約1.5×1011(cells):2.0×1011(cel
ls):5000(mL)である。
測定することが可能なシステムとするためには、生体内
の体液(血液)/細胞数比をおおまかにスケールダウン
することが好ましい。人体における小腸上皮細胞数(ce
lls):肝細胞数(cells):全(血)液量(mL)はそれ
ぞれ約1.5×1011(cells):2.0×1011(cel
ls):5000(mL)である。
【0024】図1(A)は、本発明の一実施態様の灌流
型複合細胞培養装置の培養部の概略図である。該培養部
は、小腸上皮モデルコンパートメント1、肝組織モデル
コンパートメント2及び他組織モデルコンパートメント
3、他組織モデルコンパートメント3内の液を小腸上皮
モデルコンパートメント1及び肝組織モデルコンパート
メント2に灌流させるためのペリスタリックポンプ6及
び7によって構成される。上記コンパートメントを旋回
震盪器を用いて旋回震盪させることにより、各コンパー
トメント内の培養液中の酸素等の物質循環が改善され
る。シリンジポンプ5を備える場合には、該シリンジポ
ンプ5によって小腸上皮モデルコンパートメント1内の
小腸上皮モデルの膜上面に連続的に培養液が添加され、
小腸上皮膜面上の培養液量が常に一定に調節することが
できる。また、化学物質の影響を評価する際には、シリ
ンジポンプ5で添加する培養液中に評価する化学物質を
溶解させて添加するなどにより、アレンジに富んだ化学
物質の負荷方法を考慮できる。
型複合細胞培養装置の培養部の概略図である。該培養部
は、小腸上皮モデルコンパートメント1、肝組織モデル
コンパートメント2及び他組織モデルコンパートメント
3、他組織モデルコンパートメント3内の液を小腸上皮
モデルコンパートメント1及び肝組織モデルコンパート
メント2に灌流させるためのペリスタリックポンプ6及
び7によって構成される。上記コンパートメントを旋回
震盪器を用いて旋回震盪させることにより、各コンパー
トメント内の培養液中の酸素等の物質循環が改善され
る。シリンジポンプ5を備える場合には、該シリンジポ
ンプ5によって小腸上皮モデルコンパートメント1内の
小腸上皮モデルの膜上面に連続的に培養液が添加され、
小腸上皮膜面上の培養液量が常に一定に調節することが
できる。また、化学物質の影響を評価する際には、シリ
ンジポンプ5で添加する培養液中に評価する化学物質を
溶解させて添加するなどにより、アレンジに富んだ化学
物質の負荷方法を考慮できる。
【0025】小腸上皮モデルコンパートメント1は、市
販の培養カップ9をガラスディッシュ上に保持させたも
のであり、該培養カップ9の底面は半透膜である。小腸
上皮モデルコンパートメント1には、該コンパートメン
ト1内の過剰な培養液を肝組織モデルコンパートメント
2に放出するためのオーバーフロー10が設けられてい
る(図1(B))。このオーバーフロー10により、該
コンパートメント1内及び培養カップ内の小腸上皮膜面
上に、常に一定量の培養液が維持される。
販の培養カップ9をガラスディッシュ上に保持させたも
のであり、該培養カップ9の底面は半透膜である。小腸
上皮モデルコンパートメント1には、該コンパートメン
ト1内の過剰な培養液を肝組織モデルコンパートメント
2に放出するためのオーバーフロー10が設けられてい
る(図1(B))。このオーバーフロー10により、該
コンパートメント1内及び培養カップ内の小腸上皮膜面
上に、常に一定量の培養液が維持される。
【0026】肝組織モデルコンパートメント2には、該
コンパートメント2内の過剰な培養液を他組織モデルコ
ンパートメント3に放出するためのオーバーフロー11
が設けられており、該オーバーフロー11は、肝細胞が
高密度培養された多孔質担体12の流出を防ぐための金
網を設けている(図1(C))。
コンパートメント2内の過剰な培養液を他組織モデルコ
ンパートメント3に放出するためのオーバーフロー11
が設けられており、該オーバーフロー11は、肝細胞が
高密度培養された多孔質担体12の流出を防ぐための金
網を設けている(図1(C))。
【0027】上記装置において、該培養カップ9内に化
学物質を添加すると、小腸上皮モデルに吸収される。吸
収された化学物質を含む培養液は、まず、オーバーフロ
ー10を介して肝臓モデルコンパートメント2に送られ
る。肝臓モデルコンパートメント2で代謝された化学物
質は、オーバーフロー11を介して他組織モデルコンパ
ートメント3に送られ、ペリスタリックポンプ6、7に
よって他のコンパートメント1、2に送られる。このよ
うに、単一細胞からなる臓器モデルを個別に配置し、そ
れらをヒト個体様に階層的に接続し、培養液を灌流させ
ることにより、生体内における臓器間相互作用を評価す
ることが可能となる。
学物質を添加すると、小腸上皮モデルに吸収される。吸
収された化学物質を含む培養液は、まず、オーバーフロ
ー10を介して肝臓モデルコンパートメント2に送られ
る。肝臓モデルコンパートメント2で代謝された化学物
質は、オーバーフロー11を介して他組織モデルコンパ
ートメント3に送られ、ペリスタリックポンプ6、7に
よって他のコンパートメント1、2に送られる。このよ
うに、単一細胞からなる臓器モデルを個別に配置し、そ
れらをヒト個体様に階層的に接続し、培養液を灌流させ
ることにより、生体内における臓器間相互作用を評価す
ることが可能となる。
【0028】本発明の化学物質影響評価方法は、上記装
置を用い、上記方法で添加、灌流させた化学物質に対す
るメルクマールを測定するメルクマールとは、例えば肝
細胞代謝に関する場合は、培養肝細胞から培養液中に放
出されるアルブミン量を選択することができる。
置を用い、上記方法で添加、灌流させた化学物質に対す
るメルクマールを測定するメルクマールとは、例えば肝
細胞代謝に関する場合は、培養肝細胞から培養液中に放
出されるアルブミン量を選択することができる。
【0029】
【実施例】(1)Caco-2細胞の培養培地
Dulbecco's modified Eagle's medium(DME、ニッス
イ)に、4.76g/LHEPESを加え、オートクレーブし
た。オートクレーブした培地に対し、1/10容量のウ
シ胎児血清、0.292mg/mL L-グルタミン、1/10
0容量の非必須アミノ酸(GIBCO)、100U/mLペ
ニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1.0
μg/mLアンフォテリシンBをそれぞれ加えたものに、
7.5%NaHCO3水溶液を1/20容量、1.0mM(最終
濃度)ピルビン酸ナトリウムを添加した。増殖時の培養方法 細胞の増殖にはスミロン細胞培養用シャーレ(住友ベー
クライト)を使用した。細胞は37℃、5%CO2下のイ
ンキュベータ内で培養を行い、培地の交換は2〜3日毎
に行った。初期播種密度は3.0×104cells/cm2を目
安とし、培養約1週間後にトリプシン処理による継代操
作を行った。トリプシン処理に関しては、0.25%ト
リプシン・EDTA溶液を培地量の約1/3程度を加え
たまま取り除かず、Caco-2細胞が完全に剥がれるまで3
7℃、5%CO2下のインキュベータ内に放置した(培養
を始めてから1週間を過ぎると、細胞同士の結合が強く
なり、トリプシンによって細胞を剥がしにくくなった
り、継代後の増殖能力に影響が表れることもあるので、
継代は早めに行うことが望ましい。)。分化・透過実験のためのメンブレン上での培養 複合培養系で使用するCaco-2細胞の培養には、コラーゲ
ンコートした市販のメンブレンカルチャーインサート
(Costar Transwell 3419、面積44cm2、孔径0.4μ
m)を使用した。Caco-2細胞は、細胞数が5.0×10
4cells/cm2となるように培養カップのメンブレン上へ播
種した。培地交換は2〜3日毎に行った。経上皮電気抵抗値(TEER)の測定 Caco-2細胞を上述のように有孔膜上で単層培養すると、
増殖とともに細胞間の結合が強くなり、培養後2〜3週
間で小腸上皮細胞様に分化し、タイトジャンクションを
形成する。この細胞間の結合の強さの指標として、TEER
の測定がある。MILLIPOREのMILLICELL-ERSによりTEER測
定を行った。メンブレンカルチャーインサートの内側
(apical側)と外側(basal側)とに電極を入れ、電気
抵抗を測定した。電気抵抗値は培養後約2週間で安定
し、その後も、Castar Transwell 3460(1.0cm2)の
場合は400〜500Ωcm2、Castar Transwell 3419
(44cm2)の場合は180〜200Ωcm2の間で一定で
あった。この状態を、Caco-2細胞が完全に分化した状態
であると考え、複合培養系に関する実験に用いた。
イ)に、4.76g/LHEPESを加え、オートクレーブし
た。オートクレーブした培地に対し、1/10容量のウ
シ胎児血清、0.292mg/mL L-グルタミン、1/10
0容量の非必須アミノ酸(GIBCO)、100U/mLペ
ニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1.0
μg/mLアンフォテリシンBをそれぞれ加えたものに、
7.5%NaHCO3水溶液を1/20容量、1.0mM(最終
濃度)ピルビン酸ナトリウムを添加した。増殖時の培養方法 細胞の増殖にはスミロン細胞培養用シャーレ(住友ベー
クライト)を使用した。細胞は37℃、5%CO2下のイ
ンキュベータ内で培養を行い、培地の交換は2〜3日毎
に行った。初期播種密度は3.0×104cells/cm2を目
安とし、培養約1週間後にトリプシン処理による継代操
作を行った。トリプシン処理に関しては、0.25%ト
リプシン・EDTA溶液を培地量の約1/3程度を加え
たまま取り除かず、Caco-2細胞が完全に剥がれるまで3
7℃、5%CO2下のインキュベータ内に放置した(培養
を始めてから1週間を過ぎると、細胞同士の結合が強く
なり、トリプシンによって細胞を剥がしにくくなった
り、継代後の増殖能力に影響が表れることもあるので、
継代は早めに行うことが望ましい。)。分化・透過実験のためのメンブレン上での培養 複合培養系で使用するCaco-2細胞の培養には、コラーゲ
ンコートした市販のメンブレンカルチャーインサート
(Costar Transwell 3419、面積44cm2、孔径0.4μ
m)を使用した。Caco-2細胞は、細胞数が5.0×10
4cells/cm2となるように培養カップのメンブレン上へ播
種した。培地交換は2〜3日毎に行った。経上皮電気抵抗値(TEER)の測定 Caco-2細胞を上述のように有孔膜上で単層培養すると、
増殖とともに細胞間の結合が強くなり、培養後2〜3週
間で小腸上皮細胞様に分化し、タイトジャンクションを
形成する。この細胞間の結合の強さの指標として、TEER
の測定がある。MILLIPOREのMILLICELL-ERSによりTEER測
定を行った。メンブレンカルチャーインサートの内側
(apical側)と外側(basal側)とに電極を入れ、電気
抵抗を測定した。電気抵抗値は培養後約2週間で安定
し、その後も、Castar Transwell 3460(1.0cm2)の
場合は400〜500Ωcm2、Castar Transwell 3419
(44cm2)の場合は180〜200Ωcm2の間で一定で
あった。この状態を、Caco-2細胞が完全に分化した状態
であると考え、複合培養系に関する実験に用いた。
【0030】(2)Hep G2細胞培地
Dulbecco's modified Eagle's medium(DME、ニッス
イ)に、4.76g/LHEPESを加え、オートクレーブし
た。オートクレーブした培地に対し、1/10容量のウ
シ胎児血清、0.292mg/mL L-グルタミン、1/10
0容量の非必須アミノ酸(GIBCO)、100U/mLペ
ニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1.0
μg/mLアンフォテリシンBをそれぞれ加えたものに、
7.5%NaHCO3水溶液を1/20容量、1.0mM(最終
濃度)ピルビン酸ナトリウムを添加した。培養方法 細胞の増殖にはスミロン細胞培養用シャーレ(住友ベー
クライト)を使用した。細胞は37℃、5%CO2下のイ
ンキュベータ内で培養を行い、培地の交換は2〜3日毎
に行った。初期播種密度は3.0×104cells/cm2を目
安とし、培養約1週間後にトリプシン処理による継代操
作を行った。トリプシン処理に関しては、0.25%ト
リプシン・EDTA溶液を加え、培養面をよく浸漬した
後、ほとんどの溶液を取り除いた。その後、37℃、5
%CO2下のインキュベータ内に放置した。マイクロキャリア上への播種 コラーゲンコートした動物細胞培養用マイクロキャリア
(キリンビールCellsnowTM-CX、粒子サイズ0.7〜
1.0mm、孔径100μm)にHep G2細胞を播種した。
100mg(1500piece)のマイクロキャリアの場
合、φ60の浮遊培養用ディッシュを用い、4×106c
ellsを播種し、増殖が飽和に達するまで緩やかに浮遊培
養した。
イ)に、4.76g/LHEPESを加え、オートクレーブし
た。オートクレーブした培地に対し、1/10容量のウ
シ胎児血清、0.292mg/mL L-グルタミン、1/10
0容量の非必須アミノ酸(GIBCO)、100U/mLペ
ニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1.0
μg/mLアンフォテリシンBをそれぞれ加えたものに、
7.5%NaHCO3水溶液を1/20容量、1.0mM(最終
濃度)ピルビン酸ナトリウムを添加した。培養方法 細胞の増殖にはスミロン細胞培養用シャーレ(住友ベー
クライト)を使用した。細胞は37℃、5%CO2下のイ
ンキュベータ内で培養を行い、培地の交換は2〜3日毎
に行った。初期播種密度は3.0×104cells/cm2を目
安とし、培養約1週間後にトリプシン処理による継代操
作を行った。トリプシン処理に関しては、0.25%ト
リプシン・EDTA溶液を加え、培養面をよく浸漬した
後、ほとんどの溶液を取り除いた。その後、37℃、5
%CO2下のインキュベータ内に放置した。マイクロキャリア上への播種 コラーゲンコートした動物細胞培養用マイクロキャリア
(キリンビールCellsnowTM-CX、粒子サイズ0.7〜
1.0mm、孔径100μm)にHep G2細胞を播種した。
100mg(1500piece)のマイクロキャリアの場
合、φ60の浮遊培養用ディッシュを用い、4×106c
ellsを播種し、増殖が飽和に達するまで緩やかに浮遊培
養した。
【0031】試験例1
図2に示す装置を用いて以下の操作を行った。小腸上皮
モデルコンパートメント1、肝組織モデルコンパートメ
ント2及び他組織モデルコンパートメント3を、140 mm
×φ110 mmの3段のアルミ製トレイ8に上から順に配
置した。ここで、小腸上皮モデルコンパートメント1
(φ100mm のガラス製ディッシュ)内には、市販のメン
ブレンカルチャーインサート(Costar, 3419)を組み込む
ことが可能なテフロン(登録商標)性のホルダーが入っ
ており、このホルダーには小腸上皮の経上皮電気抵抗値
が測定できるような適当な溝を設けた。
モデルコンパートメント1、肝組織モデルコンパートメ
ント2及び他組織モデルコンパートメント3を、140 mm
×φ110 mmの3段のアルミ製トレイ8に上から順に配
置した。ここで、小腸上皮モデルコンパートメント1
(φ100mm のガラス製ディッシュ)内には、市販のメン
ブレンカルチャーインサート(Costar, 3419)を組み込む
ことが可能なテフロン(登録商標)性のホルダーが入っ
ており、このホルダーには小腸上皮の経上皮電気抵抗値
が測定できるような適当な溝を設けた。
【0032】灌流培養から、培地は、オートクレイブ前
にD−グルコースを3.5g加えた高グルコース培地を
用いた。市販の培養カップ9が無い状態で、小腸上皮モ
デルコンパートメント1に培養液を約45mL入れて(培
養カップ9がある場合には、培養液を、小腸上皮モデル
コンパートメント1に約35mL入れ、培養カップ9を重
ねた後、培養カップ9上に10mL入れた)、培養液のみ
の灌流を開始した。それから、上述のように作成した小
腸上皮モデル(Caco-2:2×105cells/cm2)と肝組織
モデルをそれぞれコンパートメント1、2に配置した。
旋回震盪器4をもちいてアルミ製トレイ8を旋回震盪さ
せながら灌流培養を行った。図5は、本発明の装置と、
旋回震盪器を有していない図4に示す従来の装置との間
で、小腸膜面上の液量の変化を比較したものである。こ
の結果から、旋回震盪器を設けることによって小腸膜面
上の液量が一定に保たれることが示された。
にD−グルコースを3.5g加えた高グルコース培地を
用いた。市販の培養カップ9が無い状態で、小腸上皮モ
デルコンパートメント1に培養液を約45mL入れて(培
養カップ9がある場合には、培養液を、小腸上皮モデル
コンパートメント1に約35mL入れ、培養カップ9を重
ねた後、培養カップ9上に10mL入れた)、培養液のみ
の灌流を開始した。それから、上述のように作成した小
腸上皮モデル(Caco-2:2×105cells/cm2)と肝組織
モデルをそれぞれコンパートメント1、2に配置した。
旋回震盪器4をもちいてアルミ製トレイ8を旋回震盪さ
せながら灌流培養を行った。図5は、本発明の装置と、
旋回震盪器を有していない図4に示す従来の装置との間
で、小腸膜面上の液量の変化を比較したものである。こ
の結果から、旋回震盪器を設けることによって小腸膜面
上の液量が一定に保たれることが示された。
【0033】試験例2
試験例1と同様の装置を用い、培養細胞のチトクローム
P-450(CYP)IA1/2の活性を最大限に高めるために、最終
濃度で2 μM となるように3−メチルコラントレンを添
加し、24 hr灌流培養した。24 hr経過した時点を0 hrと
し、肝細胞の代謝に関する活性を測定した。肝細胞の代
謝に関する活性指標(メルクマール)として、培養液中
に放出されたアルブミン分泌量を測定した。アルブミン
分泌量の定量は、ELISA法によって行った。プレートは
ポリビニル製Micro Test Assay Plate(Falcon)を使用
し、その吸光度を測定した。なお、本発明の装置を用い
て複合培養した際の効果を示すために、比較実験とし
て、従来法の形態である小腸上皮のない肝臓のみの系で
も同様の実験を行った。
P-450(CYP)IA1/2の活性を最大限に高めるために、最終
濃度で2 μM となるように3−メチルコラントレンを添
加し、24 hr灌流培養した。24 hr経過した時点を0 hrと
し、肝細胞の代謝に関する活性を測定した。肝細胞の代
謝に関する活性指標(メルクマール)として、培養液中
に放出されたアルブミン分泌量を測定した。アルブミン
分泌量の定量は、ELISA法によって行った。プレートは
ポリビニル製Micro Test Assay Plate(Falcon)を使用
し、その吸光度を測定した。なお、本発明の装置を用い
て複合培養した際の効果を示すために、比較実験とし
て、従来法の形態である小腸上皮のない肝臓のみの系で
も同様の実験を行った。
【0034】図6及び7に、そのときの肝細胞の生存率
及び肝臓コンパートメント中のアルブミン分泌量の経時
変化を示す。図6によると、旋回震盪を行うことによ
り、肝細胞の生存率が格段に改善されたことは明らかで
ある。また、肝臓のみの系では細胞の生存率はほぼ維持
されたが、これは、旋回振盪器の設置による充分な酸素
供給が行われたためと考えられる。さらに、小腸上皮の
存在する複合培養系では、肝細胞が増殖する傾向が観察
された。したがって、本発明の装置を用いることによ
り、細胞の機能を維持し、増殖させることが可能である
ことは明らかである。それゆえに、生体に対する化学物
質の影響を、急性のものだけでなく、長期的な影響を評
価することも可能であると考えられる。図7は、複合培
養にすることで肝機能が上昇するという結果を示してい
る。これらの結果は、本発明の装置において、2つの異
なる臓器由来の細胞を複合灌流培養することで、単独培
養時と比較して細胞の活性を著しく高められたことを示
している。この結果は、本発明の装置を用いることによ
って、臓器間相互作用の評価が可能となることを示すも
のである。
及び肝臓コンパートメント中のアルブミン分泌量の経時
変化を示す。図6によると、旋回震盪を行うことによ
り、肝細胞の生存率が格段に改善されたことは明らかで
ある。また、肝臓のみの系では細胞の生存率はほぼ維持
されたが、これは、旋回振盪器の設置による充分な酸素
供給が行われたためと考えられる。さらに、小腸上皮の
存在する複合培養系では、肝細胞が増殖する傾向が観察
された。したがって、本発明の装置を用いることによ
り、細胞の機能を維持し、増殖させることが可能である
ことは明らかである。それゆえに、生体に対する化学物
質の影響を、急性のものだけでなく、長期的な影響を評
価することも可能であると考えられる。図7は、複合培
養にすることで肝機能が上昇するという結果を示してい
る。これらの結果は、本発明の装置において、2つの異
なる臓器由来の細胞を複合灌流培養することで、単独培
養時と比較して細胞の活性を著しく高められたことを示
している。この結果は、本発明の装置を用いることによ
って、臓器間相互作用の評価が可能となることを示すも
のである。
【0035】試験例3
小腸膜面上からモデル化学物質ベンゾ[a]ピレンを添加
した際の臓器間相互作用の影響を比較するために、以下
の実験を行った。本発明の装置(図2)を用いてCaco-2
細胞及びHep G2細胞を培養し、誘導剤(3−メチルコラ
ントレン)を添加した。24時間後にベンゾ[a]ピレン
50μMを小腸上皮モデルの膜面上に負荷し、そのとき
の時間を0 hrとして48時間の灌流を行った。
した際の臓器間相互作用の影響を比較するために、以下
の実験を行った。本発明の装置(図2)を用いてCaco-2
細胞及びHep G2細胞を培養し、誘導剤(3−メチルコラ
ントレン)を添加した。24時間後にベンゾ[a]ピレン
50μMを小腸上皮モデルの膜面上に負荷し、そのとき
の時間を0 hrとして48時間の灌流を行った。
【0036】また、小腸上皮モデルを含まない以外は上
記と同様の系(肝臓のみの系)でも同様の実験を行っ
た。
記と同様の系(肝臓のみの系)でも同様の実験を行っ
た。
【0037】図8、 9はそれぞれ、肝細胞の生存率、
肝臓コンパートメント中のアルブミン分泌量の経時変化
を示すグラフである。図8に示すように、本発明の複合
培養系では、一旦肝細胞が増殖した後(24時間)、ベ
ンゾ[a]ピレンの毒性による障害が観察された(48時
間)が、どの時間帯においても肝臓のみの系(吸収過程
なし)と比較すると生存率は高かった。図9の結果か
ら、本発明の複合培養系では、ベンゾ[a]ピレンを添加
した場合、48時間後のアルブミン分泌量が0 hrのほぼ
3倍に増加し、肝機能の上昇が確認された。この結果
が、肝臓のみの系との間に生存率の差が現れた要因の一
つであることも推察される。図10は、ベンゾ[a]ピレ
ン負荷実験の時間に対する小腸膜面上と肝コンパートメ
ント中のベンゾ[a]ピレン原体濃度の経時変化である。
この結果から、複合培養では、小腸上皮の存在により、
系内のベンゾ[a]ピレン原体濃度がゆっくり変化してい
ることがわかる。これは、本発明の灌流型複合細胞培養
装置が、小腸上皮と肝臓との間の臓器間相互作用を表現
可能であることを示している。
肝臓コンパートメント中のアルブミン分泌量の経時変化
を示すグラフである。図8に示すように、本発明の複合
培養系では、一旦肝細胞が増殖した後(24時間)、ベ
ンゾ[a]ピレンの毒性による障害が観察された(48時
間)が、どの時間帯においても肝臓のみの系(吸収過程
なし)と比較すると生存率は高かった。図9の結果か
ら、本発明の複合培養系では、ベンゾ[a]ピレンを添加
した場合、48時間後のアルブミン分泌量が0 hrのほぼ
3倍に増加し、肝機能の上昇が確認された。この結果
が、肝臓のみの系との間に生存率の差が現れた要因の一
つであることも推察される。図10は、ベンゾ[a]ピレ
ン負荷実験の時間に対する小腸膜面上と肝コンパートメ
ント中のベンゾ[a]ピレン原体濃度の経時変化である。
この結果から、複合培養では、小腸上皮の存在により、
系内のベンゾ[a]ピレン原体濃度がゆっくり変化してい
ることがわかる。これは、本発明の灌流型複合細胞培養
装置が、小腸上皮と肝臓との間の臓器間相互作用を表現
可能であることを示している。
【0038】
【発明の効果】本発明の灌流型複合細胞培養装置を用い
ることにより、生体内での臓器間相互作用を考慮した化
学物質の生体内動態(特に吸収及び代謝)のシミュレー
ションを行い、多様な化学物質の生体に対する影響(薬
効、毒性、安全性等)を評価することが可能となる。本
発明の灌流型複合細胞培養装置はさらに、組み立てや操
作の容易さも併せ持つ。
ることにより、生体内での臓器間相互作用を考慮した化
学物質の生体内動態(特に吸収及び代謝)のシミュレー
ションを行い、多様な化学物質の生体に対する影響(薬
効、毒性、安全性等)を評価することが可能となる。本
発明の灌流型複合細胞培養装置はさらに、組み立てや操
作の容易さも併せ持つ。
【図1】 本発明の灌流型複合細胞培養装置の培養部の
一実施態様を示す概略図である。
一実施態様を示す概略図である。
【図2】 本発明の灌流型複合細胞培養装置の一実施態
様を示す概略図である。
様を示す概略図である。
【図3】 従来の静置型複合細胞培養装置の概略図であ
る。
る。
【図4】 プロトタイプの複合培養システムの概略図で
ある。
ある。
【図5】 試験例1の結果を示すグラフである。
【図6】 試験例2の肝細胞の生存率の経時変化を示す
グラフである。
グラフである。
【図7】 試験例2の肝臓コンパートメント中のアルブ
ミン分泌量の経時変化を示すグラフである。
ミン分泌量の経時変化を示すグラフである。
【図8】 試験例3の肝細胞の生存率の経時変化を示す
グラフである。
グラフである。
【図9】 試験例3の肝臓コンパートメント中のアルブ
ミン分泌量の経時変化を示すグラフである。
ミン分泌量の経時変化を示すグラフである。
【図10】 試験例3のベンゾ[a]ピレン負荷実験の時
間に対する小腸膜面上と肝コンパートメント中のベンゾ
[a]ピレン原体濃度の経時変化を示すグラフである。
間に対する小腸膜面上と肝コンパートメント中のベンゾ
[a]ピレン原体濃度の経時変化を示すグラフである。
1…小腸上皮モデルコンパートメント、2…肝組織モデ
ルコンパートメント、3…他組織モデルコンパートメン
ト、4…旋回震盪器、5…シリンジポンプ、6及び7…
ペリスタリックポンプ、8…スプリング付きアルミ製ト
レイ、9…培養カップ、10及び11…オーバーフロ
ー、12…多孔質担体
ルコンパートメント、3…他組織モデルコンパートメン
ト、4…旋回震盪器、5…シリンジポンプ、6及び7…
ペリスタリックポンプ、8…スプリング付きアルミ製ト
レイ、9…培養カップ、10及び11…オーバーフロ
ー、12…多孔質担体
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12R 1:91)
Fターム(参考) 4B029 AA03 AA11 BB11 CC02 EA16
GB03 HA09
4B063 QA05 QQ08 QR77 QS10 QS11
Claims (10)
- 【請求項1】 培養小腸上皮及び肝組織を用いた小腸上
皮モデル及び肝組織モデルを個別に配置した少なくとも
2つのコンパートメントが灌流回路で連絡され、前記コ
ンパートメントを旋回震盪させるための旋回震盪器を備
えることを特徴とする灌流型複合細胞培養装置。 - 【請求項2】 培養小腸上皮及び肝組織を用いた小腸上
皮モデル及び肝組織モデル並びに他組織モデルを個別に
配置した少なくとも3つのコンパートメントが灌流回路
で連絡され、前記コンパートメントを旋回震盪させるた
めの旋回震盪器を備えることを特徴とする灌流型複合細
胞培養装置。 - 【請求項3】 さらに、小腸上皮モデルの膜上面に連続
的に培養液を添加するためのシリンジポンプを備えるこ
とを特徴とする請求項1又は2記載の灌流型複合細胞培
養装置。 - 【請求項4】 前記小腸上皮モデルコンパートメント
が、該コンパートメント内の過剰な培養液を肝組織モデ
ルコンパートメントに放出するためのオーバーフロー手
段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれ
か1項に記載の灌流型複合細胞培養装置。 - 【請求項5】 前記肝組織モデルコンパートメントが、
該コンパートメント内の過剰な培養液を他組織モデルコ
ンパートメントに放出するためのオーバーフロー手段を
備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1
項に記載の灌流型複合細胞培養装置。 - 【請求項6】 前記コンパートメントが、着脱可能であ
り且つオートクレイブ可能なスプリング付きアルミ製ト
レイ上に配置されることを特徴とする請求項2ないし5
のいずれか1項に記載の灌流型複合細胞培養装置。 - 【請求項7】 前記小腸上皮モデルとして、半透膜上に
膜状培養したヒト大腸ガン由来細胞株Caco-2を用いるこ
とを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載
の灌流型複合細胞培養装置。 - 【請求項8】 前記肝組織モデルとして、多孔質担体上
に高密度培養したヒト肝芽種由来細胞株Hep G2を用いる
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記
載の灌流型複合細胞培養装置。 - 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1項に記載
の灌流型複合細胞培養装置からなる、生体内における化
学物質の吸収・代謝シミュレータ。 - 【請求項10】 請求項1ないし8のいずれか1項に記
載の灌流型複合細胞培養装置を用いた、生体に対する化
学物質の影響評価方法であって、該装置内に培養液を灌
流させ、小腸上皮モデルの膜上面に化学物質を添加し、
灌流させ、該化学物質に対するメルクマールを測定する
ことを特徴とする、生体に対する化学物質影響評価方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002009203A JP2003210157A (ja) | 2002-01-17 | 2002-01-17 | 灌流型複合細胞培養装置、該装置からなるシミュレータ及び該装置を用いた生体に対する化学物質影響評価方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002009203A JP2003210157A (ja) | 2002-01-17 | 2002-01-17 | 灌流型複合細胞培養装置、該装置からなるシミュレータ及び該装置を用いた生体に対する化学物質影響評価方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003210157A true JP2003210157A (ja) | 2003-07-29 |
Family
ID=27647270
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002009203A Pending JP2003210157A (ja) | 2002-01-17 | 2002-01-17 | 灌流型複合細胞培養装置、該装置からなるシミュレータ及び該装置を用いた生体に対する化学物質影響評価方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003210157A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007111034A (ja) * | 2005-09-22 | 2007-05-10 | Olympus Corp | 培養顕微鏡装置 |
JP2012526522A (ja) * | 2009-05-15 | 2012-11-01 | フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. | バイオリアクターシステム |
JP2015535688A (ja) * | 2012-09-28 | 2015-12-17 | ティスーゼ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングTissUse GmbH | 寿命及び恒常性が改善された多臓器チップ |
WO2018135572A1 (ja) * | 2017-01-18 | 2018-07-26 | 伸晃化学株式会社 | 化学物質評価用のデバイス、および、化学物質評価方法 |
-
2002
- 2002-01-17 JP JP2002009203A patent/JP2003210157A/ja active Pending
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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US8192982B2 (en) | 2005-09-22 | 2012-06-05 | Olympus Corporation | Tissue culture microscope apparatus |
JP2012526522A (ja) * | 2009-05-15 | 2012-11-01 | フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. | バイオリアクターシステム |
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CN110312786A (zh) * | 2017-01-18 | 2019-10-08 | 伸晃化学株式会社 | 化学物质评价用的装置以及化学物质评价方法 |
JPWO2018135572A1 (ja) * | 2017-01-18 | 2019-11-07 | 伸晃化学株式会社 | 化学物質評価用のデバイス、および、化学物質評価方法 |
JP7251725B2 (ja) | 2017-01-18 | 2023-04-04 | 伸晃化学株式会社 | 化学物質評価用のデバイス、および、化学物質評価方法 |
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Effective date: 20040618 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
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Effective date: 20051201 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060613 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20061010 |